説明

音叉型屈曲水晶振動素子

【課題】本発明は、製造時間が短く、且つ所望する周波数に正確に調整することができる音叉型屈曲水晶振動素子を提供することを課題とする。
【解決手段】基部と二本の振動腕部とを備え、各振動腕部の両主面には溝部が設けられており、前記振動腕部の一方の主面に設けられた前記溝部と前記振動腕部の他方の主面に設けられた前記溝部とは、前記振動腕部の長さ方向に交互にずらして設けられており、各振動腕部の先端部の一方の主面には周波数調整用金属膜が設けられた音叉型屈曲水晶振動素子であって、各振動腕部の一方の主面に設けられた前記周波数調整用金属膜の基部側の端部が、各振動腕部の他方の主面に設けられた励振用電極の各振動腕部の先端側の端部よりも、基部側に延出して設けられている音叉型屈曲水晶振動素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に用いられる音叉型屈曲水晶振動素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンピュータ,携帯電話又は小型情報機器等の電子機器には、電子部品の一つとして水晶振動子又は水晶発振器が搭載されている。この水晶振動子又は水晶発振器は、基準信号源やクロック信号源として用いられる。又、水晶振動子や水晶発振器には、その内部に音叉型屈曲水晶振動素子が搭載されている。
【0003】
図7は、従来の音叉型屈曲水晶振動素子の一例を示す斜視図である。図8は、従来の音叉型屈曲振動素子を構成する水晶片を示す平面図であり、(a)は一方の主面上から見た図であり、(b)は他方の主面上から見た図である。図9は、従来の音叉型屈曲振動素子を示す平面図であり、(a)は一方の主面上から見た図であり、(b)は他方の主面上から見た図である。
図7及び図9に示すように、音叉型屈曲水晶振動素子400は、水晶片410(図8を参照)と、その水晶片410の表面に設けられた励振用電極421a,421b,422a及び422bと、接続用電極423a及び423bと、周波数調整用金属膜424a及び424bと、導配線パターン425a,425b,425c,425d,425e及び425fとにより概略構成される。
【0004】
図8に示すように、水晶片410は、平面視略四角形の平板である基部411と、この基部411の一辺から同一方向に延出した第一の振動腕部412aと第二の振動腕部412bとからなる。
第一の振動腕部412aには、一方の主面に開口部を有しその開口部の長辺が第一の振動腕部412aの長さ方向に沿っている第一の溝部413aと、他方の主面に開口部を有しその開口部の長辺が第一の振動腕部412aの長さ方向に沿っている第二の溝部413bとが設けられている。この第一の溝部413aと第二の溝部413bとは、第一の溝部413a内の底面と第二の溝部413b内の底面とが第一の振動腕部412a内部で対向しないように、第一の振動腕部412aの両主面間で第一の振動腕部412aの長さ方向に交互にずらして設けられている。
【0005】
第二の振動腕部412bには、一方の主面に開口部を有し開口部の長辺が第二の振動腕部412bの長さ方向に沿っている第三の溝部413cと、他方の主面に開口部を有し開口部の長辺が第二の振動腕部412bの長さ方向に沿っている第四の溝部413dとが設けられている。この第三の溝部413cと第四の溝部413dとは、第三の溝部413c内の底面と第四の溝部413d内の底面とが第二の振動腕部412b内部で対向しないように、第二の振動腕部412bの両主面間で互い違いに第二の振動腕部412bの長さ方向にズラして設けられている。
尚、この両主面とは、基部411の表面積の最も広く形成されている面であって、一方の面と他方の面とが平行となった2つの面をいい、又、これら2つの面と同一の方向を向く第一の振動腕部412aと第二の振動腕部412bの面も含まれる。尚、図7では、図面で現われている面が「一方の主面」であり、隠れている面が「他方の主面」である(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
図7及び図9に示すように、励振用電極421aは、第一の溝部413a及び第二の溝部413bの内部表面を含む第一の振動腕部412aの対向する両主面に、同一の形状でそれぞれ設けられている。励振用電極421bは、第一の振動腕部412aの対向する両側面にそれぞれ設けられている。又、励振用電極422aは、第三の溝部413c及び第四の溝部413dの内部表面を含む第二の振動腕部412bの対向する両主面に、同一の形状でそれぞれ設けられている。更に、励振用電極422bは、第二の振動腕部412bの対向する両側面に設けられている。
【0007】
尚、それぞれの励振用電極421bの第一の振動腕部412aの先端側の端部は、励振用電極421aの第一の振動腕部412aの先端側の端部よりも、第一の振動腕部412aの先端側に延出して設けられている。両励振用電極421bの第一の振動腕部412aの先端側の端部は、配線パターン425aにより電気的に接続している。この配線パターン425aは、第一の振動腕部412aの両主面の、励振用電極421aの第一の振動腕部412aの先端側の端部から所定の間隔を空けた位置に設けられている。
又、それぞれの励振用電極422bの第二の振動腕部412bの先端側の端部は、励振用電極422aの第二の振動腕部412bの先端側の端部よりも、第二の振動腕部412bの先端方向に延出して設けられている。両励振用電極422bの第二の振動腕部412bの先端側の端部は、配線パターン425bにより電気的に接続している。この配線パターン425bは、第二の振動腕部412bの両主面の、励振用電極422aの第二の振動腕部412bの先端側の端部から所定の間隔を空けた位置に設けられている。
【0008】
接続用電極423aは、基部411の幅方向において第一の振動腕部412aに近い側の両主面に対向させて設けられている。この接続用電極423aは励振用電極421bと電気的に接続している。又、この接続用電極423aは、基部411の一方の主面に設けられた導配線パターン425cと、励振用電極421bを介して基部411の他方の主面に設けられた導配線パターン425dとにより、第二の振動腕部412bの励振用電極422aとも電気的に接続している。
【0009】
接続用電極423bは、基部411の幅方向において第二の振動腕部412bに近い側の両主面に対向させて設けられている。この接続用電極423bは励振用電極422bと電気的に接続している。又、この接続用電極423bは、基部411の他方の主面に設けられた導配線パターン425eと、励振用電極422bを介して基部411の一方の主面に設けられた導配線パターン425fとにより、第一の振動腕部412aの励振用電極421aと電気的に接続している。
【0010】
周波数調整用金属膜424aは第一の振動腕部412aの先端部分の一方の主面と両側面に設けられている。この一方の主面に設けられた周波数調整用金属膜424aは、長さ方向の基部411側の端部が配線パターン425aと接しており、第一の振動腕部412aの先端側の端部が第一の振動腕部412aの先端縁部に位置するように設けられている。
又、周波数調整用金属膜424bは第二の振動腕部412bの先端部分の両主面に設けられている。この周波数調整用金属膜424bは、長さ方向の基部411側の端部が配線パターン425bと接しており、第二の振動腕部412bの先端側の端部が第二の振動腕部412bの先端縁部に位置するように設けられている。尚、この音叉型屈曲水晶振動素子400の周波数調整は、それぞれの振動腕部の一方の主面に設けられた周波数調整用金属膜424a及び424bの一部をレーザ等で取り除くことにより周波数の粗調整を行った後、残った周波数調整用金属膜424a及び424bにイオンビームを照射し、周波数調整用金属膜424a及び424bを構成する金属を減量させて、音叉型屈曲水晶振動素子の周波数を所望の値に微調整する。(例えば、特許文献2参照)。
【0011】
尚、このような音叉型屈曲水晶振動素子400は、例えば、一方の主面に開口部を有する凹部を有する素子搭載部材の、凹部内底面に形成された素子接続用電極パッド上に搭載され、さらに凹部の開口部は蓋体により気密封止されて水晶振動子となる。
又、このような音叉型屈曲水晶振動素子400は、例えば、一方の主面に開口部を有する凹部を有する素子搭載部材の、凹部内底面に形成された素子接続用電極パッド上に搭載され、さらに凹部の開口部は蓋体により気密封止されつつ、少なくとも発振回路を備えた集積回路素子を、搭載した音叉型屈曲水晶振動素子400と電気的に接続した構造とすると水晶発振器となる(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−252800号公報
【特許文献2】特開平10−256868号公報
【特許文献3】特開2008−301297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
小型化が進んだ音叉型屈曲水晶振動素子では、周波数調整用金属膜の面積も小さくなる。更に、周波数調整用金属膜は、周波数調整における粗調整が施されることにより、更にその面積が小さくなる。このように面積が小さくなった周波数調整用金属膜において、所望する周波数にまで調整できるための金属量を得るためには、周波数調整用金属膜の厚みを厚くして周波数調整用金属膜を構成する金属の量を確保する必要がある。
しかしながら、周波数調整用金属膜の厚みを厚くするためには成膜時間が長時間となり、素子としての製造時間が長くなる恐れがある。又、周波数調整用金属膜は、素子上にマスクを設けて振動腕部の所定の箇所のみに形成されるが、成膜時間が長時間となるとマスキングされている部分の素子表面にまで金属膜の回り込みが発生しやすくなり、この回り込みにより形成された不要な金属膜により、励振用電極間にショートが生じる恐れがある。
【0014】
更に、周波数調整用金属膜の面積が小さくなると、所望の周波数値に微調整するためのイオンビームの照射により減量できる金属の量が少なくなる。このため、所望の周波数値に調整するため照射時間が長くなり、製造時間が長時間になってしまう。又、周波数調整用金属膜に照射されるイオンビームの照射時間が多くなることにより、音叉型屈曲水晶振動素子本体の温度が上昇してしまう。この温度上昇の影響で、周波数調整中に音叉型屈曲水晶振動素子の振動周波数が変化してしまい、所望の周波数値に調整できなくなる恐れがある。
【0015】
そこで、本発明は、製造時間が短く、且つ所望する周波数に正確に調整することができる音叉型屈曲水晶振動素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するために本発明は、基部と、前記基部の側面より同一の方向に延びる二本の振動腕部とを備え、前記振動腕部の両主面には溝部が設けられており、前記振動腕部の一方の主面に設けられた前記溝部と前記振動腕部の他方の主面に設けられた前記溝部とは、前記振動腕部の一方の主面に設けられた前記溝部の内部の底面と前記振動腕部の他方の主面に設けられた前記溝部の内部の底面とが前記振動腕部の内部で対向しないように、前記振動腕部の一方の主面に設けられた前記溝部を基部側に、前記振動腕部の他方の主面に設けられた前記溝部を前記振動腕部の先端側に、前記振動腕部の長さ方向に交互にずらして設けられており、前記振動腕部の両主面には励振用電極が設けられており、前記振動腕部の先端部の一方の主面には周波数調整用金属膜が設けられた音叉型屈曲水晶振動素子であって、前記振動腕部の一方の主面に設けられた前記励振用電極の前記振動腕部の先端側の端部は、前記振動腕部の一方の主面に設けられた前記励振用電極の前記振動腕部の先端側の端部よりも、前記基部側に寄って設けられており、前記振動腕部の一方の主面に設けられた前記周波数調整用金属膜の基部側の端部が、前記振動腕部の他方の主面に設けられた前記励振用電極の各振動腕部の先端側の端部よりも、基部側に延出して設けられていることを特徴とする音叉型屈曲水晶振動素子である。
【0017】
又、本発明は、溝部が振動腕部の幅方向に平行に並んだ少なくとも2本以上の細溝部で構成されていても良い。
【発明の効果】
【0018】
このような音叉型屈曲水晶振動素子によれば、従来に比べて面積の大きい周波数調整用金属膜を設けられる。従って、所望する周波数調整量を得るために必要な周波数調整用金属膜の金属量を、従来のように周波数調整膜を厚くすることで確保する必要ない。
よって、周波数調整用金属膜の成膜時間を従来に比べ短くすることができ、素子全体としての製造時間を短縮することができる。又、周波数調整用金属膜の成膜時間が短時間ですむため、金属膜形成時の回り込みの発生を防止でき、この回り込みにより形成された不要な金属膜による励振用電極間のショートが生じる恐れがなくなる。
【0019】
更に、周波数調整用金属膜の面積を従来に比べて大きくできるので、イオンビームの照射で減量できる金属の量が大きくなる。よって、イオンビームの照射時間が短くてすみ、周波数調整に係る時間を短縮することができる。
又、周波数調整用金属膜に照射されるイオンビームの照射時間が少なくなることにより、音叉型屈曲水晶振動素子本体の温度上昇を抑制できる。従って、周波数調整中に音叉型屈曲水晶振動素子の振動周波数が変化することがなく、所望する周波数値に調整できる。
【0020】
よって、本発明は、製造時間が短く、且つ所望する周波数に正確に調整することができる音叉型屈曲水晶振動素子を提供できる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子を構成する水晶片の一例を示す平面図であり、(a)は一方の主面上から見た図であり、(b)は他方の主面上から見た図である。
【図3】本発明の第一の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子の一例を示す平面図であり、(a)は一方の主面上から見た図であり、(b)は他方の主面上から見た図である。
【図4】本発明の第一の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子の変形例を示す斜視図である。
【図5】本発明の第一の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子の変形例を示す平面図であり、(a)は一方の主面上から見た図であり、(b)は他方の主面上から見た図である。
【図6】本発明の第二の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子を構成する水晶片の一例を示す平面図であり、(a)は一方の主面上から見た図であり、(b)は他方の主面上から見た図である。
【図7】従来の音叉型屈曲水晶振動素子の一例を示す斜視図である。
【図8】従来の音叉型屈曲水晶振動素子を構成する水晶片の一例を示す平面図であり、(a)は一方の主面上からみた図であり、(b)は他方の主面上から見た図である。
【図9】従来の音叉型屈曲水晶振動素子の一例を示す平面図であり、(a)は一方の主面上からみた図であり、(b)は他方の主面上から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。尚、各構成要素について状態をわかりやすくするために、誇張して図示している。特に図3、図5における音叉型屈曲振動素子の側面に設けられた電極の厚みは、著しく誇張して図示している。
【0023】
(第一の実施形態)
図1及び図3に示すように、音叉型屈曲水晶振動素子100は、水晶片110(図2を参照)と、その水晶片110の表面に設けられた励振用電極121a,121b,121c,121d,122a,122b,122c及び122dと、接続用電極123a及び123bと、周波数調整用金属膜124a及び124bと、導配線パターン125a,125b,125c,125d,125e及び125fとにより概略構成される。
【0024】
図2に示すように、水晶片110は、基部111と、第一の振動腕部112aと、第二の振動腕部112bとからなる。基部111は、結晶の軸方向として電気軸がX軸、機械軸がY軸、及び光軸がZ軸となる直交座標系としたとき、X軸周りに−5°〜+5°の範囲内で回転させたZ′軸の方向が厚み方向となる平面視略四角形の平板である。第一の振動腕部112a及び第二の振動腕部112bは、基部111の一辺からY′軸の方向に平行に延出して設けられている。
【0025】
尚、基部111の表面積の最も広く形成されている面であって一方の面と他方の面とが平行となった2つの面を、基部111の両主面という。又、これら2つの面と同一の方向を向く第一の振動腕部112aと第二の振動腕部112bの面も両主面という。図1において、図面で現われている面を「一方の主面」とし、隠れている面を「他方の主面」とする。又、図2において、(a)に図示した面を「一方の主面」とし、(b)に図示した面を「他方の主面」とする。
【0026】
図2に示すように、第一の振動腕部112aには、一方の主面に開口部を有し且つその開口部の長辺が第一の振動腕部112aの長さ方向に沿っている第一の溝部113aと、他方の主面に開口部を有し且つその開口部の長辺が第一の振動腕部112aの長さ方向に沿っている第二の溝部113bとが設けられている。この第一の溝部113aと第二の溝部113bとは、第一の溝部113aの内部の底面と第二の溝部113bの内部の底面とが第一の振動腕部112aの内部で対向しないように、第一の溝部113aを基部111側に、第二の溝部113bを第一の振動腕部112aの先端側に、第一の振動腕部112aの長さ方向に交互にずらして設けられている。
【0027】
又、第二の振動腕部112bには、一方の主面に開口部を有し且つ開口部の長辺が第二の振動腕部112bの長さ方向に沿っている第三の溝部113cと、他方の主面に開口部を有し且つ開口部の長辺が第二の振動腕部112bの長さ方向に沿っている第四の溝部113dとが設けられている。この第三の溝部113cと第四の溝部113dとは、第三の溝部113c内の底面と第四の溝部113d内の底面とが第二の振動腕部112b内部で対向しないように、第三の溝部113cを基部111側に、第四の溝部113dを第二の振動腕部112bの先端側に、第二の振動腕部112bの長さ方向に交互にずらして設けられている。
【0028】
図1及び図3に示すように、励振用電極121aは、水晶片110を構成する第一の振動腕部112aの一方の主面に設けられている。励振用電極121bは、第一の振動腕部112aの他方の主面に設けられている。励振用電極121cは、第一の振動腕部112aの第二の振動腕部112b側を向いた側面に設けられている。励振用電極121dは、第一の振動腕部112aの励振用電極121cが設けられた側面の反対側の側面に設けられている。励振用電極121bの第一の振動腕部112aの先端側の端部は、第二の溝部113bの第一の振動腕部112aの先端側の端部と重なる位置に設けられている。励振用電極121aの第一の振動腕部112aの先端側の端部は、励振用電極121bの第一の振動腕部112aの先端側の端部よりも、基部111側に寄って設けられている。つまり、励振用電極121aの長さは、励振用電極121bの長さに比べて短くなっている。
【0029】
又、励振用電極121c及び121dの第一の振動腕部112aの先端側の端部は、励振用電極121aの第一の振動腕部112aの先端側よりも第一の振動腕部112aの先端側で、且つ励振用電極121bの第一の振動腕部112aの先端側の端部よりも基部111側となるような位置に設けられている。又、励振用電極121cと121dの第一の振動腕部112aの先端側の端部は、配線パターン125aにより電気的に接続している。この配線パターン125aは、第一の振動腕部112aの一方の主面における、励振用電極121aの第一の振動腕部112aの先端側の端部から所定の間隔を空けた位置に設けられている。
【0030】
又、図1及び図3に示すように、励振用電極122aは、水晶片110を構成する第二の振動腕部112bの一方の主面に設けられている。励振用電極122bは、第二の振動腕部112bの他方の主面に設けられている。励振用電極122cは、第二の振動腕部112bの第一の振動腕部112a側を向いた側面に設けられている。励振用電極122dは、第二の振動腕部112bの励振用電極122cが設けられた側面の反対側の側面に設けられている。励振用電極122bの第二の振動腕部112bの先端側の端部は、第四の溝部113dの第二の振動腕部112bの先端側の端部と重なる位置に設けられている。励振用電極122aの第二の振動腕部112bの先端側の端部は、励振用電極122bの第二の振動腕部112bの先端側の端部よりも、基部111側に寄って設けられている。つまり、励振用電極122aの長さは、励振用電極122bの長さに比べて短くなっている。
【0031】
更に、励振用電極122c及び122dの第二の振動腕部112bの先端側の端部は、励振用電極122aの第二の振動腕部112bの先端側よりも第二の振動腕部112bの先端側で、且つ励振用電極122bの第二の振動腕部112bの先端側の端部よりも基部111側となるような位置に設けられている。又、励振用電極122cと122dの第二の振動腕部112bの先端側の端部は、配線パターン125bにより電気的に接続している。この配線パターン125bは、第二の振動腕部112bの一方の主面における、励振用電極122aの第二の振動腕部112bの先端側の端部から所定の間隔を空けた位置に設けられている。
【0032】
接続用電極123aは、基部111の幅方向において第一の振動腕部112aに近い側の両主面に対向させて設けられている。この接続用電極123aは励振用電極121dと電気的に接続している。又、この接続用電極123aは、基部111の一方の主面に設けられた導配線パターン125cと、励振用電極121cを介して基部111の他方の主面に設けられた導配線パターン125dとにより、第二の振動腕部112bの励振用電極122a及び122bとも電気的に接続している。
【0033】
接続用電極123bは、基部111の幅方向において第二の振動腕部112bに近い側の両主面に対向させて設けられている。この接続用電極123bは励振用電極122dと電気的に接続している。又、この接続用電極123bは、基部111の他方の主面に設けられた導配線パターン125eと、励振用電極122cを介して基部111の一方の主面に設けられた導配線パターン125fとにより、第一の振動腕部112aの励振用電極121a及び121bと電気的に接続している。
【0034】
周波数調整用金属膜124aは、第一の振動腕部112aの先端部の一方の主面と両側面に設けられている。この一方の主面に設けられた周波数調整用金属膜124aの基部111側の端部は配線パターン125aと接しており、第一の振動腕部112aの先端側の端部は第一の振動腕部112aの先端縁部に設けられている。つまり、周波数調整用金属膜124aの基部111側の端部は、第一の振動腕部112aの他方の主面に設けられた励振用電極121bの第一の振動腕部112aの先端側の端部よりも、基部111側に延出して設けられているので、周波数調整用金属膜124aの面積が従来技術における第一の振動腕部の一方の主面に設けられた周波数調整用金属膜の面積に比べ大きくなっている。
【0035】
又、周波数調整用金属膜124bは、第二の振動腕部112bの先端部の一方の主面及び両側面に設けられている。この一方の主面に設けられた周波数調整用金属膜124bの基部111側の端部は配線パターン125bと接しており、第二の振動腕部112bの先端側の端部は第二の振動腕部112bの先端縁部に設けられている。つまり、周波数調整用金属膜124bの基部111側の端部は、第二の振動腕部112bの他方の主面に設けられた励振用電極122bの第二の振動腕部112bの先端側の端部よりも、基部111側に延出して設けられているので、周波数調整用金属膜124bの面積が、従来技術における第二の振動腕部の一方の主面に設けられた周波数調整用金属膜の面積に比べ大きくなっている。
【0036】
尚、この音叉型屈曲水晶振動素子100の周波数調整は、第一の振動腕部112a及び第二の振動腕部112bの一方の主面に設けられた周波数調整用金属膜124a及び124bの一部をレーザ等で取り除くことにより周波数の粗調整を行う。その後、残った周波数調整用金属膜124a及び124bにイオンビームを照射し、周波数調整用金属膜124a及び124bを構成する金属を減量させて、音叉型屈曲水晶振動素子の周波数を所望の値に微調整する。又、本実施形態において、各励振用電極、接続用電極、周波数調整用金属膜、導配線パターンは、例えば、下地金属としてのCr層と、その下地金属の上に重ねて設けられたAu層とから構成されている。
【0037】
この音叉型屈曲水晶振動素子100を振動させる場合、接続用電極123a及び123bに交番電圧を印加する。印加後のある電気的状態を瞬間的にとらえると、例えば、第一の振動腕部112bの励振用電極121c及び121dは+(プラス)電位となり、励振用電極121a及び121bは−(マイナス)電位となり、+から−に電界が生じる。一方、このときの第二の振動腕部112bの各励振用電極は、第一の振動腕部112aの励振用電極に生じた極性とは反対の極性となる。これらの印加された電界により、第一の振動腕部112a及び第二の振動腕部112bに伸縮現象が生じ、第一の振動腕部112a及び第二の振動腕部112bに設定した共振周波数の屈曲振動を得る。
【0038】
音叉型屈曲水晶振動素子100は、水晶片110の表面に、前記した励振用電極、接続用電極、導配線パターン及び周波数調整用金属膜をフォトリソグラフィ技術及び成膜技術により形成することができる。又、音叉型屈曲水晶振動素子100は、例えば、一方の主面に開口部を有する凹部を設けた素子搭載部材の、その凹部内底面に形成された素子接続用電極パッド上に搭載され、更に凹部の開口部が蓋体により気密封止されて水晶振動子となる。
【0039】
このような音叉型屈曲水晶振動素子100によれば、従来に比べて面積の大きい周波数調整用金属膜124a及び124bを設けられる。従って、所望する周波数調整量を得るために必要な周波数調整用金属膜の金属量を、従来のように周波数調整膜を厚くすることで確保する必要ない。よって、周波数調整用金属膜124a及び124bの成膜時間を従来に比べ短くすることができ、素子全体としての製造時間を短縮することができる。又、周波数調整用金属膜124a及び124bの成膜時間が短時間ですむため、金属膜形成時の回り込みの発生を防止でき、この回り込みにより形成された不要な金属膜による励振用電極間のショートが生じる恐れがなくなる。
【0040】
更に、周波数調整用金属膜124a及び124bの面積を従来に比べ大きくできるので、イオンビームの照射で減量できる金属の量が大きくなる。よって、イオンビームの照射時間が短くてすみ、周波数調整に係る時間を短縮することができる。
又、周波数調整用金属膜124a及び124bに照射されるイオンビームの照射時間が少なくなることにより、音叉型屈曲水晶振動素子100本体の温度上昇を抑制できる。従って、周波数調整中に音叉型屈曲水晶振動素子100の振動周波数が変化することがなく、所望する周波数値に調整できる。
【0041】
(変形例)
図4及び図5は、本発明の第一の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子の変形例を示す。本発明の第一の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子の第一の変形例は、以下のような構成となっている。
励振用電極121aの第一の振動腕部112aの先端側の端部は、第一の溝部113aの第一の振動腕部112aの先端側の端部に対応した位置に設けられている。配線パターン125aは、この励振用電極121aの第一の振動腕部112aの先端側の端部から所定の間隔を空けて設けられており、励振用電極121cと励振用電極121dとを電気的に接続している。第一の振動腕部112aの周波数調整用金属膜124aは、基部111側の端部がこの配線パターン125aと接するように、基部111の方向に更に延出して設けられている。
【0042】
励振用電極122aの第二の振動腕部112bの先端側の端部は、第三の溝部113cの第二の振動腕部112bの先端側の端部に対応した位置に設けられている。配線パターン125bは、この励振用電極122aの第二の振動腕部112bの先端側の端部から所定の間隔を空けて設けられており、励振用電極122cと励振用電極122dとを電気的に接続している。周波数調整用金属膜124bは、その長さ方向の基部111側の一方の端部が配線パターン125bと接するように、基部111の方向に更に延出して設けられている。
【0043】
この変形例では、第一の振動腕部112a及び第二の振動腕部112bの一方の主面に更に大きな周波数調整用金属膜124a及び124bが設けられている。従って、このような音叉型屈曲水晶振動素子の変形例を構成しても、本発明の第一の実施形態と同様の効果を奏する。
【0044】
(第二の実施形態)
図6は、本発明の第二の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子を構成する水晶片を示す平面図である。本発明の第二の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子は、第一の実施形態に比べて、第一の溝部、第二の溝部、第三の溝部、及び第四の溝部の形状が異なっている。
図6に示すように、本発明の第二の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子を構成する水晶片210は、基部111と、この基部111から延出する第一の振動腕部112aと第二の振動腕部112bとを備えている。
【0045】
第一の振動腕部112aの一方の主面には、第一の振動腕部112aの幅方向に並んだ2本一対の細溝部214aで構成された第一の溝部213aが設けられている。又、第一の振動腕部112aの他方の主面には、第一の振動腕部112aの幅方向に並んだ2本一対の細溝部214bで構成された第二の溝部213bが設けられている。この第一の溝部213aと第二の溝部213bとは、各細溝部214aの底面と各細溝部214b内の底面とが、第一の振動腕部112a内部で対向しないように、第一の溝部213aを基部111側に、第二の溝部213bを第一の振動腕部112aの先端側に、第一の振動腕部112aの長さ方向に交互にずらして設けられている。
【0046】
又、第二の振動腕部112bの一方の主面には、第二の振動腕部112bの幅方向に並んだ2本一対の細溝部214cで構成された第三の溝部213cが設けられている。又、第二の振動腕部112bの他方の主面には、第二の振動腕部112bの幅方向に並んだ2本一対の細溝部214dで構成された第四の溝部213dが設けられている。この第三の溝部213cと第四の溝部213dとは、各細溝部214cの底面と各細溝部214d内の底面とが、第二の振動腕部112b内部で対向しないように、第三の溝部213cを基部111側に、第四の溝部213dを第二の振動腕部112bの先端側に、第二の振動腕部112bの長さ方向に交互にずらして設けられている。
【0047】
第二の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子は、このような構成の水晶片210に、第一の実施形態と同様な励振用電極、接続用電極、周波数調整用金属膜及び配線パターンを設けることによりなる。このような構成の第二の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子においても、第一の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0048】
尚、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、適宜、変更可能である。
例えば、本実施形態では、基部として平面視略四角形の形状とし、その基部で音叉型屈曲水晶振動素子を支持する構成を開示したが、別の形態として、この基部から延出して設けられた突起部を設け、その突起部において音叉型屈曲水晶振動子を支持する構成としても良い。又、基部の平面視形状についても、本発明の効果を奏するのであれば、本実施形態に開示したものに限定されるものではない。
又、本実施形態では各振動腕部の一方の主面及び両側面に周波数調整用金属膜を設けた構成を開示したが、各振動腕部の両主面及び両側面に周波数調整用金属膜を設けた構成でも構わない。
又、本実施形態では、励振用電極、接続用電極及び配線パターンと周波数調整用金属膜とを同じ金属で設けた構成を示したが、周波数調整用金属膜を励振用電極、接続用電極及び配線パターンとは異なる金属で設けても良い。その場合は、周波数調整用金属膜の基部側の端部と、各振動腕部の両側面に設けられた励振用電極及びそれを電気的に接続している配線パターンとの間に、所定の間隔を空けておくことが望ましい。
又、前記した本実施形態では、水晶片を用いた場合を説明したが、他の圧電素材として、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム又は、圧電セラミックスを圧電素材として用いた圧電振動素子でも構わない。
【符号の説明】
【0049】
100・・・音叉型屈曲水晶振動素子
110,210・・・水晶片
111・・・基部
112a・・・第一の振動腕部
112b・・・第二の振動腕部
113a,213a・・・第一の溝部
113b,213b・・・第二の溝部
113c,213c・・・第三の溝部
113d,213d・・・第四の溝部
121a,121b,121c,121d,122a,122b,122c,122d・・・励振用電極
124a,124b・・・周波数調整用金属膜
214a,214b,214c,214d・・・細溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、前記基部の側面より同一の方向に延びる二本の振動腕部とを備え、
前記振動腕部の両主面には溝部が設けられており、
前記振動腕部の一方の主面に設けられた前記溝部と前記振動腕部の他方の主面に設けられた前記溝部とは、前記振動腕部の一方の主面に設けられた前記溝部の内部の底面と前記振動腕部の他方の主面に設けられた前記溝部の内部の底面とが前記振動腕部の内部で対向しないように、前記振動腕部の一方の主面に設けられた前記溝部を基部側に、前記振動腕部の他方の主面に設けられた前記溝部を前記振動腕部の先端側に、前記振動腕部の長さ方向に交互にずらして設けられており、
前記振動腕部の両主面には前記振動腕部の長さ方向に沿った励振用電極が設けられており、
前記振動腕部の先端部の一方の主面には周波数調整用金属膜が設けられた音叉型屈曲水晶振動素子であって、
前記振動腕部の一方の主面に設けられた前記励振用電極の前記振動腕部の先端側の端部は、前記振動腕部の一方の主面に設けられた前記励振用電極の前記振動腕部の先端側の端部よりも、前記基部側に寄って設けられており、
前記振動腕部の一方の主面に設けられた前記周波数調整用金属膜の基部側の端部が、前記振動腕部の他方の主面に設けられた前記励振用電極の各振動腕部の先端側の端部よりも、基部側に延出して設けられていることを特徴とする音叉型屈曲水晶振動素子。
【請求項2】
前記溝部が、前記振動腕部の幅方向に平行に並んだ少なくとも2本以上の細溝部で構成されている特徴とする請求項1に記載の音叉型屈曲水晶振動素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−234200(P2011−234200A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103737(P2010−103737)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】