説明

順止バルブ、燃料電池システム

【課題】弁を容易に位置合わせすることができ、バルブ本体の低背化を図った順止バルブ及び燃料電池システムを提供する。
【解決手段】弁部150は、耐メタノール性の高いゴムからなる。弁部150は、弁部150が開口部147に収納されたときに弁座148に当接する弁体部151と、弁体部151が弁座148に対して接近および離間する方向へ可動自在に弁体部151を支持する支持部152と、流体(メタノール)を通過させる孔部153と、弁部150が開口部147に収納されたときにバルブ筐体130の開口部147の内周面に当接し、支持部152を固定する固定部154と、を有する。固定部154の外径Xは開口部147の径Y以上であり、固定部154の厚みTは開口部147の深さDより大きい。この弁部150を、バルブ筐体130の実装面側から開口部147に嵌めこむことにより、バルブ筐体130の開口部147に収納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の順方向の流れを制御する順止バルブ、及びこの順止バルブを備える燃料電池システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
小型の燃料電池に用いられるパッシブ駆動の減圧弁が特許文献1に開示されている。この減圧弁は、流体の圧力が設定圧力になると、圧力差を利用してバルブが自動的に開閉するように構成されている。
【0003】
図1(A),図1(B)に、特許文献1に開示されている減圧弁の断面図を示す。この減圧弁は、可動部となるダイヤフラム1、伝達機構であるピストン2、バルブ筐体7、および、弁部を形成する弁座部3、弁体部4、支持部5および固定部6からなる。弁体部4は支持部5によって周囲に支持されている。支持部5は、弾性を有する梁によって形成されている。固定部6は、支持部5をバルブ筐体7に固定する。ここで、これらの各部材は板状の部材で構成されており、当該減圧弁は各部材を接合することにより製造している。
【0004】
ダイヤフラム(可動部)1上部の圧力をP0、バルブ上流の1次圧力をP1、バルブ下流の圧力をP2とし、弁体部4の面積をS1、ダイヤフラム(可動部)1の面積をS2とする。このとき、圧力の釣り合いから、図1(B)のようにバルブが開く条件は、(P1−P2)S1<(P0−P2)S2となる。P2がこの条件の圧力より高いとバルブは閉じ、低いとバルブは開く。これによって、P2を一定に保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−59093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、ダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC)においては、燃料(メタノール)の輸送を行うポンプを備えている。一般に、弁方式のポンプには弁による逆止機能はあるが、順止機能(順方向の流れを止める機能)は無い。順止機能の無いポンプを用いると、上流側の圧力(順方向の圧力)が燃料に印加される場合に、ポンプの非作動時にも燃料が流れてしまう。
【0007】
また、燃料電池システム内に組み込まれる燃料カートリッジが、外環境によっては高温になることがあり、高圧の流体が吐出されることがある。これにより、過剰な流体が燃料セルに供給されたり、場合によってはポンプを破壊してしまうおそれがある。そこで、高圧な流体が万が一加わった時に、順方向の流れを止めるバルブ(以下、順止バルブという)が求められている。
【0008】
ところが、図1(A),図1(B)に示した特許文献1の減圧弁を製造する場合、弁体部4がダイヤフラム1の変位に応じて弁座部3と当接または離間するよう位置合わせして、支持部5をバルブ筐体7に固定する必要がある。そのため、この精密な位置合わせが必要になる。
また、特許文献1の減圧弁は支持部5を固定部6でバルブ筐体7に固定する構造であるため、固定部6の厚みの分、バルブ本体が高背化するという問題もある。
【0009】
そこで本発明は、弁を容易に位置合わせすることができ、バルブ本体の低背化を図った順止バルブ、及びこの順止バルブを備える燃料電池システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の順止バルブは、前記課題を解決するために以下の構成を備えている。
【0011】
(1)バルブ筐体と、
前記バルブ筐体内にバルブ室を構成し、前記バルブ室の流体の圧力によって変位するダイヤフラムと、
前記ダイヤフラムの変位によって前記バルブ室への流体の流入を遮断又は開放させる弁部と、を備え、
前記バルブ筐体には、前記バルブ室へ流体が流入する流入孔と、ポンプが接続されて前記ポンプによる流体の吸引圧力によって前記バルブ室から流体が流出する流出孔と、前記流入孔と連通し、前記弁部を嵌めこむことにより前記弁部を収納する開口部と、前記流入孔の周縁に位置する弁座と、が形成され、
前記弁部は、前記弁部が前記開口部に収納されたときに前記弁座に当接する弁体と、前記弁体が前記弁座に対して接近および離間する方向へ可動自在に前記弁体を支持する支持部と、前記弁部が前記開口部に収納されたときに前記バルブ筐体の前記開口部の内周面に当接し、前記支持部を固定する固定部と、を有する。
【0012】
この構成では、弁部を、バルブ筐体の開口部に嵌めこむことにより、バルブ筐体の開口部に収納する。弁部がバルブ筐体の開口部に収納されると、弁体は弁座に当接し、支持部を固定する固定部もバルブ筐体の開口部の内周面に当接する。そして、当該支持部は上記のように可動自在に弁体を支持する。そのため、この構成の順止バルブを製造する場合、弁部を開口部に嵌めこむだけで良い。即ち、この構成の順止バルブを製造する場合、特許文献1の減圧弁のように、弁体がダイヤフラムの変位に応じて弁座と当接または離間するよう位置合わせして、支持部をバルブ筐体に固定する必要がない。よって、この構成の順止バルブの構造では、この精密な位置合わせを行う必要がない。
また、この構成の順止バルブを製造する際に弁部に異常があった場合、当該弁部をバルブ筐体の開口部から取り外して容易に交換できるため、順止バルブ全体としての歩留まりの向上も図ることができる。
従って、この構成における順止バルブによれば、精密な位置合わせが不要であるため、容易に位置合わせできる。さらに、この構成の順止バルブでは、弁部をバルブ筐体の開口部に収納する構造であるため、特許文献1の減圧弁の構造に比べて固定部の厚みの分、バルブ本体を低背化できる。
【0013】
(2)前記固定部の外径は前記開口部の径以上であることが好ましい。
【0014】
この構成では、固定部の外径が開口部の径以上であるため、順止バルブを基板(例えばシステム筐体)に位置合わせして固定する際に弁部がバルブ筐体の開口部から落下することを防ぐことができる。よって、この構成では順止バルブを基板上に実装するときの実装作業が容易になる。
【0015】
(3)前記固定部の厚みは前記開口部の深さより大きいことが好ましい。
【0016】
この構成では、固定部の厚みが開口部の深さより大きいため、順止バルブが上記基板上に固定されるとき、固定部がバルブ筐体と基板によって圧縮される。この結果、順止バルブが基板上に固定されたときの固定部と基板の上面との密着性が高くなる。そのため、流体が弁部の固定部と基板の上面との間から外側へ漏れるのを防ぐことができる。従って、この構成における順止バルブによれば、バルブ本体の信頼性を向上できる。
【0017】
(4)前記固定部は、前記弁部が前記開口部に収納されたときに、前記バルブ筐体の実装面より突出するOリング部を有することが好ましい。
【0018】
この構成の順止バルブではOリング部が、順止バルブを上記基板上に固定する際に用いられる液漏れ防止用Oリングの役割を果たすため、当該Oリングを基板に設けなくても済む。従って、この構成における順止バルブによれば、部品点数を削減できる。
【0019】
(5)前記固定部の材質はゴムであることが好ましい。
【0020】
この構成では、順止バルブが上記基板に固定されたときの固定部と基板の上面との密着性が一層高くなる。そのため、流体が弁部の固定部と基板の上面との間から外側へ漏れるのをより防ぐことができる。従って、この構成における順止バルブによれば、バルブ本体の信頼性を一層向上できる。
【0021】
また、本発明の燃料電池システムは、前記課題を解決するために以下の構成を備えている。
【0022】
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の順止バルブと、
前記順止バルブの前記流入孔に接続される燃料貯蔵部と、
前記順止バルブの前記流出孔に接続されるポンプと、を備える。
【0023】
この構成により、上記(1)〜(5)のうちいずれかに記載の順止バルブを用いることで、当該順止バルブを備える燃料電池システムにも同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、弁を容易に位置合わせすることができ、バルブ本体の低背化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】特許文献1の順止バルブの構造を説明する断面図である。
【図2】順止バルブの動作原理を説明する順止バルブの模式断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る順止バルブ101を備える燃料電池システムのシステム構成図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る順止バルブ101の構造を説明する分解斜視図である。
【図5】図5(A)は、図4の順止バルブ101に備えられるキャップ部110の上面図である。図5(B)は、図4の順止バルブ101に備えられるバルブ筐体130の下面図である。
【図6】図5(A)のS−S線における断面図である。
【図7】図6に示す弁部150の拡大断面図である。
【図8】弁部150をバルブ筐体130の開口部147に嵌めた状態でシステム筐体160に固定された順止バルブ101の断面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る順止バルブ201に備えられる弁部250の拡大断面図である。
【図10】弁部250を開口部147に嵌めた状態でシステム筐体160に固定された順止バルブ201の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
《順止バルブの動作原理》
まず、小型の燃料電池に用いられるパッシブ駆動の順止バルブの動作原理について説明する。
図2(A)は、弁が閉じた状態における順止バルブ90の模式断面図であり、図2(B)は、弁が開いた状態における順止バルブ90の模式断面図である。順止バルブ90は、可動部となるダイヤフラム20、ダイヤフラム20とともにバルブ室40を構成するバルブ筐体30、バルブ筐体30に接合されたキャップ部10、および、弁体部51を有する弁部50からなる。
【0027】
バルブ筐体30には、バルブ室40へ流体が流入する流入孔43と、ポンプが接続されてポンプによる流体の吸引圧力によってバルブ室40から流体が流出する流出孔49とが形成されている。
【0028】
ダイヤフラム20は、伝達機構であるプッシャ23を有し、バルブ室40の流体の圧力によって変位する。ダイヤフラム20が弁部50に近づく方向へ変位した時、プッシャ23が弁体部51を押下する。
【0029】
弁部50は、弁体部51の流入孔43側にリング状の弁突起55が形成されており、弁突起55が流入孔43の周縁に位置する弁座48に当接するよう配置される。そして、弁体部51は、ダイヤフラム20の変位によって弁座48に対して当接または離間し、流入孔43からバルブ室40への流体の流入を遮断または開放させる。
【0030】
キャップ部10には、外気と通じる孔部15が上面に形成されている。この結果、ダイヤフラム20の上部に大気圧が加わる。
【0031】
順止バルブ90は、流体の圧力が設定圧力になると、圧力差を利用して弁部50が自動的に開閉するように構成されている。詳述すると、ダイヤフラム20上部の大気の圧力をP0、バルブ上流の1次圧力をP1、バルブ下流の圧力をP2とし、弁体部51の面積(ここでは、弁体部51にリング状の弁突起55が形成されているため弁突起55で囲まれた領域の径で決まる面積)をS1、ダイヤフラム20の面積をS2、弁体部51が上向きに付勢する力をFsとする。このとき、圧力の釣り合いから、図2(B)のように弁部50が開く条件は、(P1−P2)S1+Fs<(P0−P2)S2となる。P2がこの条件の圧力より高いと弁部50は閉じ、低いと弁部50は開く。これによって、P2を一定に保つことができる。
【0032】
《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態に係る順止バルブ101について説明する。
図3は、本発明の第1の実施形態に係る順止バルブ101を備える燃料電池システム100のシステム構成図である。燃料電池システム100は、燃料であるメタノールを貯蔵する燃料カートリッジ102と、順止バルブ101と、メタノールを輸送するポンプ103と、ポンプ103からメタノールの供給を受けて発電する発電セル104と、を備える。
【0033】
ダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC)においては、燃料であるメタノールの輸送を行うポンプ103を備えている。一般に、弁方式のポンプ103には弁による逆止機能はあるが、順止機能は無い。順止機能の無いポンプ103を用いると、上流側の圧力(順方向の圧力)がメタノールに印加される場合に、ポンプ103の非作動時にもメタノールが流れてしまう。
そのため、ポンプ103と組み合わせて使用し、ポンプ圧力を利用して弁の開閉を行う順止バルブ101を設ける方が好ましい。
【0034】
順止バルブ101は、詳細を後述するが、ダイヤフラム120とともにバルブ室140を構成するバルブ筐体130を備える。バルブ筐体130には、燃料カートリッジ102が流入路163を介して接続される流入孔143と、ポンプ103が流出路165を介して接続される流出孔149とが形成されている。順止バルブ101は、流入路163と流出路165とが形成されたポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂製のシステム筐体160に、流漏れを防ぐOリング161、162を介して表面実装される。
【0035】
燃料電池システム100では、メタノールが燃料カートリッジ102から流入路163と流入孔143を介してバルブ室140へ流入する。そして、ポンプ103によるメタノールの吸引圧力によってバルブ室140から流出路165と流出孔149を介してポンプ103へメタノールが流出する。そして、メタノールはポンプ103によって発電セル104へ供給される。
【0036】
図4は、第1の実施形態に係る順止バルブ101の分解斜視図である。図5(A)は、図4の順止バルブ101に備えられるキャップ部110の上面図である。図5(B)は、図4の順止バルブ101に備えられるバルブ筐体130の下面図である。図6は、図5(A)のS−S線における断面図である。
【0037】
順止バルブ101は、図4に分解斜視するように、キャップ部110と、可動部となるダイヤフラム120と、バルブ筐体130と、弁部150と、を備える。
【0038】
バルブ筐体130は、略正方形板状である。バルブ筐体130には、バルブ室140へ流体が流入する流入孔143と、ポンプ103が接続されてポンプ103による流体の吸引圧力によってバルブ室140から流体が流出する流出孔149と、が形成されている。また、バルブ筐体130には、キャップ部110とバルブ筐体130をシステム筐体160に固定するためのネジ止め用の穴131と、ダイヤフラム120の周縁部121が載置される載置部134と、が形成されている。
【0039】
また、バルブ筐体130には、図4及び図6に示すように、弁部150が流入孔143からバルブ室140へのメタノールの流入を開放させたときに、ダイヤフラム120が当接する突出部144と、メタノールを突出部144の内側から外側へ通過させる流路145とが、ダイヤフラム120と対向するバルブ室140の底面141上における流入孔143の周囲に形成されている。
【0040】
また、バルブ筐体130には、図5(B)及び図6に示すように、弁部150をバルブ筐体130の実装面側から嵌めこむことにより弁部150を収納する開口部147と、流入孔143の周縁に位置する弁座148と、が形成されている。
【0041】
なお、バルブ筐体130の材質については、バルブ筐体130のメタノールと接する部分134、141、144、145、148の材質は耐メタノール性の高い樹脂、例えばPPS(Polyphenylenesulfide)樹脂等からなり、バルブ筐体130のメタノールと接しない縁132の材質は金属からなる。バルブ筐体130は、金属部分の縁132をモールド金型にインサートして射出成形するインサートモールドにより形成される。
【0042】
ダイヤフラム120は、図4及び図6に示すように、伝達機構であるプッシャ123を中心に有し、周縁部121の厚みが中央部122より厚い円板状に形成されている。ダイヤフラム120の材質は、耐メタノール性の高いゴム、例えばエチレンプロピレンゴムまたはシリコーンゴムである。ダイヤフラム120は、周縁部121がバルブ筐体130に載置されてバルブ筐体130とともにバルブ室140を構成する。ダイヤフラム120は、バルブ室140の流体の圧力によって周縁部121の内側の中央部122が変位する。ダイヤフラム120の中央部122が弁部150に近づく方向へ変位した時、プッシャ123が弁体部151を押下する。
【0043】
なお、液体を流体として順止バルブ101に使用した場合、液体の表面張力が大きいため、気体を流体として順止バルブ101に使用した場合より大きな流体の流路が必要となる。しかし、この実施形態の順止バルブ101ではダイヤフラム120の材質がゴムであるため、ダイヤフラム120をシリコンや金属で形成した場合に比べてダイヤフラム120の可動範囲が大きくなる。そのため、この実施形態の順止バルブ101では、十分なメタノールの流路を確保できる。
【0044】
弁部150は、図4及び図6に示すように、略円形状である。弁体部151は、詳細を後述するが、ダイヤフラム120の変位によって弁座148に対して当接または離間し、流入孔143からバルブ室140への流体の流入を遮断または開放させる。
【0045】
キャップ部110は、図4、図5(A)及び図6に示すように、略正方形板状であり、ステンレススチールの板に対して打ち抜きと絞りを金型により行うことで形成される。キャップ部110には、キャップ部110とバルブ筐体130をシステム筐体160に固定するためのネジ止め用の穴111が形成されている。ここで、金属製のキャップ部110の縁116は、ダイヤフラム120が載置部134に載置された状態で、バルブ筐体130の金属製の縁132と溶接により接合される。キャップ部110の周縁部位114は、接合されると、ダイヤフラム120の周縁部121を押圧して載置部134とともに周縁部121を挟持する。
【0046】
また、キャップ部110の中央部位113には、外気と通じる孔部115が形成されている。この結果、ダイヤフラム120の上部に大気圧が加わる。
ダイヤフラム120には、この大気圧とバルブ室140の内圧との差圧を受ける円形の金属からなるステンレス製の受圧板125が接合されている。
【0047】
順止バルブ101は、上述した順止バルブ90(図2参照)と同じように、流体の圧力が設定圧力になると、圧力差を利用して弁部150が自動的に開閉するように構成されている。
【0048】
以下、上記弁部150について詳述する。
図7は、図6に示す弁部150の拡大断面図である。弁部150は、図4及び図7に示すように、略円形状であり、耐メタノール性の高いゴム、例えばシリコーンゴムからなる。弁部150は、ダイヤフラム120の変位によって弁座148に対して当接または離間し、流入孔143からバルブ室140への流体(メタノール)の流入を遮断または開放させる弁体部151と、弁体部151が弁座148に対して接近および離間する方向へ可動自在に弁体部151を支持する支持部152と、メタノールを通過させる孔部153と、弁部150が開口部147に収納されたときにバルブ筐体130の開口部147の内周面に当接し、支持部152を固定する固定部154と、を有する。ここで、固定部154の外径Xは開口部147の径Y以上であり、固定部154の厚みTは開口部147の深さDより大きい。
なお、弁体部151には、弁座148とのシール性を高めるため、流入孔43側にリング状の弁突起155が形成されているが、弁突起155は必ずしも形成される必要はない。
【0049】
弁体部151は、弁部150が開口部147に収納されたときに弁体部151の弁突起155が弁座148に当接し、弁体部151が流入孔143からバルブ室140への流体の流入を遮断する方向へ弁座148を弁閉時に与圧する。そして、弁体部151は、ダイヤフラム120が下降してダイヤフラム120に押し下げられることによって弁座148から離間し、流入孔143と孔部153が連通して、バルブ室140へのメタノールの流入を開放させる。
【0050】
次に、この実施形態の順止バルブ101のシステム筐体160への実装方法について図8を参照して説明する。
図8は、弁部150をバルブ筐体130の開口部147に嵌めた状態でシステム筐体160に固定された順止バルブ101の断面図である。
【0051】
まず、弁部150を、バルブ筐体130の実装面側から開口部147に嵌めこむことにより、キャップ部110が上述の溶接により接合されたバルブ筐体130の開口部147に収納する。
次に、弁部150をバルブ筐体130の開口部147に嵌めた状態で順止バルブ101の流入孔143とシステム筐体160の流入路163、且つ順止バルブ101の流出孔149とシステム筐体160の流出路165を位置合わせする。そして、この位置合わせした状態で、キャップ部110のネジ止め用の穴111とバルブ筐体130のネジ止め用の穴131とにネジを通し(図4参照)、システム筐体160に固定する。これにより、順止バルブ101のシステム筐体160への実装が完了する。
【0052】
以上より、弁部150がバルブ筐体130の開口部147に収納されると、図7に示すように、弁体部151は弁座148に当接し、支持部152を固定する固定部154もバルブ筐体130の開口部147の内周面に当接する。そして、当該支持部152は上記のように可動自在に弁体部151を支持する。そのため、この実施形態の順止バルブ101を製造する場合、弁部150を開口部147に嵌めこむだけで良い。即ち、この実施形態の順止バルブ101を製造する場合、図1に示す特許文献1の減圧弁のように、弁体部151がダイヤフラム120の変位に応じて弁座148と当接または離間するよう位置合わせして、支持部152をバルブ筐体130に固定する必要がない。よって、この実施形態の順止バルブ101の構造では、この精密な位置合わせが不要となる。
【0053】
また、固定部154の外径Xが開口部147の径Y以上であるため、順止バルブ101をシステム筐体160に位置合わせして固定する際に弁部150がバルブ筐体130の開口部147から落下することを防ぐことができる。よって、この実施形態では順止バルブ101をシステム筐体160に実装するときの実装作業が容易になる。ここで、開口部147の径Yと固定部154の外径Xは、1≦Y/X≦1.2の関係を満たすことが好ましい。Y/X<1の場合は、弁部150がバルブ筐体130から落下してしまうおそれがある。一方、1.2<Y/Xの場合は、弁部150をバルブ筐体130に挿入することが困難となる。
【0054】
また、この実施形態の順止バルブ101を製造する際に弁部150に異常があった場合、当該弁部150をバルブ筐体130の開口部147から取り外して容易に交換できるため、順止バルブ101全体としての歩留まりの向上も図ることができる。
【0055】
従って、この実施形態における順止バルブ101によれば、実装作業も容易であり、また歩留まりも向上する。さらに、この実施形態の順止バルブ101では、弁部150をバルブ筐体130の開口部147に収納する構造であるため、特許文献1の減圧弁の構造に比べて固定部154の厚みの分、バルブ本体を低背化できる。
【0056】
また、この実施形態の順止バルブ101では、固定部154の材質がゴムであり、また固定部154の厚みTが開口部147の深さDより大きいため、順止バルブ101がシステム筐体160に固定されるとき、固定部154がバルブ筐体130とシステム筐体160によって圧縮される(図7、図8参照)。この結果、順止バルブ101がシステム筐体160に固定されたときの固定部154とシステム筐体160の上面との密着性が極めて高くなる。そのため、メタノールが弁部150の固定部154とシステム筐体160の上面との間から外側へ漏れるのを防ぐことができる。従って、この実施形態における順止バルブ101によれば、バルブ本体の信頼性を向上できる。ここで、固定部154の厚みTと開口部147の深さDの関係は、1<T/D≦1.5の関係を満たすことが好ましい。T/D≦1の場合は、順止バルブ101をシステム筐体160に固定したとき、弁部150をバルブ筐体130に十分に密着させることができず、弁座148に対して弁部150の与圧を十分に与えられないおそれがある。一方、1.5<T/Dの場合は、順止バルブ101をシステム筐体160に固定したときの固定部154の圧縮による変形量が大きくなり、弁座148に対する弁部150の与圧が高くなりすぎて、弁部150が開放しなくなるおそれがある。
【0057】
また、以上の構成において、バルブ筐体130のメタノールと接する部分134、141、144、145、148の材質は全て樹脂であり、ダイヤフラム120と弁部150の材質もゴムであるため、金属イオンがメタノール中に溶出することがない(図8参照)。そのため、この実施形態の順止バルブ101では、金属イオンの溶出によるDMFCの特性の劣化も起こらない。
従って、この実施形態の順止バルブ101を用いることで、当該順止バルブ101を備える燃料電池システム100においても同様の効果を奏する。
【0058】
《第2の実施形態》
図9は、本発明の第2の実施形態に係る順止バルブ201に備えられる弁部250の拡大断面図である。図10は、弁部250を開口部147に嵌めた状態でシステム筐体160に固定された順止バルブ201の断面図である。この実施形態における順止バルブ201が第1の実施形態に係る順止バルブ101と相違する点は、Oリング部156を設けた点である。
【0059】
詳述すると、固定部154は、弁部250が開口部147に収納されたときに、バルブ筐体130の実装面より突出するOリング部156を有する。Oリング部156の材質も、耐メタノール性の高いゴム、例えばシリコーンゴムからなる。そのため、この実施形態における順止バルブ201では、Oリング部156が図8に示すOリング161の役割を果たすため、Oリング161をシステム筐体160に設けなくても済む(図10参照)。
【0060】
従って、この実施形態における順止バルブ201によれば、部品点数を削減できる。また、この実施形態の順止バルブ201を用いることで、当該順止バルブ201を備える燃料電池システムにおいても同様の効果を奏する。
【0061】
なお、この実施形態の順止バルブ201でも、Oリング部156を含む固定部154の材質がゴムであり、また固定部154の厚みが開口部147の深さより大きいため、順止バルブ201がシステム筐体160に固定されたときの固定部154とシステム筐体160の上面との密着性が高い。
よって、この実施形態における順止バルブ201も上記順止バルブ101と同様の効果を奏する。
【0062】
《その他の実施形態》
以上の実施形態では活性の高い流体としてメタノールを用いているが、当該流体が、気体や、液体、気液混合流、固液混合流、固気混合流などのいずれであっても適用できる。
【0063】
なお、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0064】
1…ダイヤフラム
2…ピストン
3…弁座部
4…弁体部
5…支持部
6…固定部
7…バルブ筐体
10…キャップ部
15…孔部
20…ダイヤフラム
23…プッシャ
30…バルブ筐体
40…バルブ室
43…流入孔
48…弁座
49…流出孔
50…弁部
51…弁体部
55…弁突起
90…順止バルブ
100…燃料電池システム
101、201…順止バルブ
102…燃料カートリッジ
103…ポンプ
104…発電セル
110…キャップ部
111…穴
113…中央部位
114…周縁部位
115…孔部
116…縁
120…ダイヤフラム
121…周縁部
122…中央部
123…プッシャ
125…受圧板
130…バルブ筐体
131…穴
132…縁
134…載置部
140…バルブ室
141…底面
143…流入孔
144…突出部
145…流路
147…開口部
148…弁座
149…流出孔
150、250…弁部
151…弁体部
152…支持部
153…孔部
154…固定部
155…弁突起
156…Oリング部
160…システム筐体
161…リング
163…流入路
165…流出路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブ筐体と、
前記バルブ筐体内にバルブ室を構成し、前記バルブ室の流体の圧力によって変位するダイヤフラムと、
前記ダイヤフラムの変位によって前記バルブ室への流体の流入を遮断又は開放させる弁部と、を備え、
前記バルブ筐体には、前記バルブ室へ流体が流入する流入孔と、ポンプが接続されて前記ポンプによる流体の吸引圧力によって前記バルブ室から流体が流出する流出孔と、前記流入孔と連通し、前記弁部を嵌めこむことにより前記弁部を収納する開口部と、前記流入孔の周縁に位置する弁座と、が形成され、
前記弁部は、前記弁部が前記開口部に収納されたときに前記弁座に当接する弁体と、前記弁体が前記弁座に対して接近および離間する方向へ可動自在に前記弁体を支持する支持部と、前記弁部が前記開口部に収納されたときに前記バルブ筐体の前記開口部の内周面に当接し、前記支持部を固定する固定部と、を有する順止バルブ。
【請求項2】
前記固定部の外径は前記開口部の径以上である、請求項1に記載の順止バルブ。
【請求項3】
前記固定部の厚みは前記開口部の深さより大きい、請求項1又は2に記載の順止バルブ。
【請求項4】
前記固定部は、前記弁部が前記開口部に収納されたときに、前記バルブ筐体の実装面より突出するOリング部を有する、請求項3に記載の順止バルブ。
【請求項5】
前記固定部の材質はゴムである、請求項3又は4に記載の順止バルブ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の順止バルブと、
前記順止バルブの前記流入孔に接続される燃料貯蔵部と、
前記順止バルブの前記流出孔に接続されるポンプと、を備える燃料電池システム。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図2】
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【図3】
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【図8】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−43255(P2012−43255A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184875(P2010−184875)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】