説明

領域決定装置、観察装置または検査装置、領域決定方法および領域決定方法を用いた観察方法または検査方法

【課題】高感度検査や高精度計測を行うことが必要な部分領域を、効率的に決定する。
【解決手段】領域決定装置は、試料を検査して得た試料上の欠陥位置あるいは試料上において欠陥が発生する可能性があると予測された欠陥位置を撮像した画像を含む欠陥データの、少なくとも複数種の欠陥属性情報に基づき欠陥の発生度合いを算出する算出部と、発生度合いが所定以上となる欠陥データを抽出し、該抽出された欠陥データから観察または検査を行う試料上の領域を決定する領域決定部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料としての半導体ウェーハ上にデバイスパターンを形成する前工程において行われるウェーハ欠陥検査及びパターン計測技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造前工程における歩留りは、ウェーハ製造の各種工程での、プロセス異常の結果、発生する欠陥や、プロセス変動によって生じる回路パターンの形成不良等により大きく影響を受ける。
【0003】
発生する欠陥の例としては、ウェーハ上にランダムに発生する付着異物や、ウェーハ表面研磨によって生じるスクラッチなどがある。また、各工程でのウェーハ中央部と周辺部とでの製造条件の違い(例えば、エッチング工程におけるプラズマ状態の違いや、拡散工程における加熱状態の違いなど)に起因して、ウェーハ周辺部のみで生じるパターンの形成不良などがある。
【0004】
また、パターンの形成不良を引き起こすプロセス変動の代表例としては、リソグラフィ工程における、回路パターンを光学露光する際の露光条件(フォーカス及び露光量)の変動がある。それらの変動要因により、回路パターンの寸法や形状が変化し、その結果、デバイス特性不良などが発生する恐れがある。
【0005】
このような不良の発生を防止し、高歩留まり生産を実現するため、ウェーハ製造現場で行われる欠陥管理やプロセス管理は、ますます重要となっている。
【0006】
欠陥管理のためには、ウェーハ外観検査装置が用いられる。従来から使われている光学式のウェーハ外観検査装置は、ウェーハ上に照明光を照射した結果、発生するウェーハからの反射光や散乱光を検出することでウェーハ表面状態を画像化し、画像処理を用いてウェーハ上の欠陥の有無を調べる。数〜数十分/ウェーハ程度のスループットと、20ナノメートル程度以上の検出感度を有する。しかし、数十ナノメートルの欠陥検出条件においては、擬似欠陥(真の欠陥でないもの)も合わせて検知してしまうことが多く、真の欠陥のみを精度良く検出することは困難となっている。
【0007】
一方、光学式ウェーハ検査装置よりも高感度な検査が可能な装置として、電子ビームを用いたSEM(Scanning Electron Microscope:走査電子顕微鏡)式ウェーハ検査装置が従来から知られている。本装置は、ウェーハ表面に十数ナノメートルから数ナノメートル程度に集束させた電子ビームを照射し、発生する2次電子等を検出することでウェーハ表面の状態を画像化する。十数ナノメートルから数ナノメートル程度の検出感度を有するが、スループットは光学式ウェーハ検査に比べると圧倒的に低いことから、ウェーハの一部領域のみを検査する部分検査に使われることが多い。特許文献1及び特許文献2には、電子ビーム検査装置によるウェーハの部分検査方法について開示されている。半導体メモリのメモリマット周辺部など、検査領域を部分領域に限定し欠陥検査を行う。
【0008】
なお、これら検査装置で検出された欠陥の観察や分類のためには、レビュー装置が用いられる。プロセスの微細化が進んだ結果、歩留まりに影響を与える欠陥の大きさが、数十ナノメートルよりも小さくなりつつあることから、電子ビーム式のレビュー装置(レビューSEM)が一般的に使われている。ウェーハ検査装置から得られた欠陥位置情報を入力とし、検査時よりも高い分解能(例えば1画素あたり数ナノメートルの画素サイズ)でその箇所の画像を取得し欠陥種の同定や観察を行う。
【0009】
一方、プロセス管理の例としては、CDSEM(Critical Dimension−SEM)による、リソグラフィ工程のモニタリングがある。ウェーハ上のあらかじめ定められた箇所の回路パターンの寸法をCDSEMにより定期的に計測し、その寸法値と基準値を比較することによりプロセス管理を行っている。CDSEMは、先に述べたレビューSEMと同じく電子ビームを用いた装置であり、数ナノメートル程度の分解能の画像を取得できるが、1箇所の測定に秒オーダを要することから測定できる箇所の数は限定される。そのため、事前に決定された箇所のみを計測対象とする運用がなされる。技術文献3には、露光プロセス管理のため露光条件をチップ単位に変更させて作成したウェーハ(例えばFEM:Focus Exposure Matrixウェーハ等)を用いて、許容されるプロセス変動範囲の検証やパターン計測が必要な箇所を特定する方法が開示されている。なお、FEMウェーハとは、同一の回路パターンをウェーハ上のダイ毎にフォーカスと露光量をマトリックス状に変化させてパターン形成したウェーハである。このウェーハに対して光学式ウェーハ検査装置により検査を行うことで、実際に欠陥が発生した箇所の位置情報と、欠陥が発生しないフォーカス・露光量の条件(プロセスウィンドウを呼ばれる)を特定することが可能となる。プロセスウィンドウから外れたダイにおける欠陥発生箇所など、プロセス変動時に発生する可能性が高いと予想される箇所を計測箇所と定める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−67533号公報(米国特許US2011−0163230号公報)
【特許文献2】特開2011−119471号公報
【特許文献3】米国特許 US6902855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1では、経験的に欠陥が発生しやすい箇所として知られているメモリデバイスのメモリマット端部を検査対象とし、電子ビームを用いた高感度検査を行う事例が示されている。しかし、プロセス微細化により、新プロセスの導入や新材料の採用などが進むと、経験的に知られていない欠陥種が、経験的に知られていない箇所で発生する可能性がある。従来技術によっては、そのような場合に、電子ビーム検査における検査領域を効率的に特定することができない。つまり、経験的知識が十分得られない場合に、検査領域を決定する方法が困難となる課題がある。
【0012】
また、特許文献2では、SEMを用いて部分領域に対し、欠陥の有無の判定やパターンの寸法の測定など、異なる検査項目を実現する際の処理方式について開示されている。本文献では、他の検査装置により取得した検査結果において欠陥が集中している領域を、部分検査を行う検査領域とする旨の記述があるが、その具体的かつ詳細な方法は述べられていない。
【0013】
また、特許文献3では、リソグラフィ工程において必要となるCDSEMにおける寸法測定箇所を決定するために、経験的な知識ではなく、テスト用ウェーハに対する光学ウェーハ検査結果を用いて計測すべき箇所を決定する方法が示されている。しかし、プロセス微細化が進むにつれ、デバイスに影響を与えるパターンの変動量が十数ナノメートルより小さくなり、光学式ウェーハ検査装置の検査感度が不足すると、従来技術による方法では、CDSEM用の寸法計測箇所を精度良く決定することができなくなる。十数ナノメートルオーダの欠陥検出が可能な、検出感度がより高い検査条件(高感度モード)で光学式ウェーハ検査を行うことで、これらの微小欠陥を検出することはある程度は可能と予想されるが、この場合、真の欠陥の他に大量の擬似欠陥(検査装置の虚報)が検出されてしまうことから、擬似欠陥を含む大量の欠陥候補の中から真の欠陥を絞り込む作業負荷が大きくなるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、高感度検査や高精度計測を行うことが必要な部分領域を効率的に決定するためになされたものである。
【0015】
本発明の一態様によれば、試料を検査して得た試料上の欠陥位置あるいは当該試料上において欠陥が発生する可能性があると予測された欠陥位置を撮像した画像を含む欠陥データの、少なくとも複数種の欠陥属性情報に基づき前記欠陥の発生度合いを算出する算出部と、前記発生度合いが所定以上となる欠陥データを抽出し、該抽出された欠陥データから観察または検査を行う試料上の領域を決定する領域決定部と、を有する領域決定装置が提供される。
【0016】
また、本発明の他の一態様によれば、試料を検査して得た試料上の欠陥位置あるいは当該試料上において欠陥が発生する可能性があると予測された欠陥位置を撮像した画像を含む欠陥データの、少なくとも複数種の欠陥属性情報に基づき前記欠陥の発生度合いを算出する算出部と、前記発生度合いが所定以上となる欠陥データを抽出し、該抽出された欠陥データから観察または検査を行う試料上の領域を決定する領域決定部と、当該決定された領域情報に基づき前記欠陥位置の画像を取得する画像取得部と、を有する観察装置または検査装置が提供される。
【0017】
また、本発明の他の一態様によれば、試料を検査して得た試料上の欠陥位置あるいは当該試料上において欠陥が発生する可能性があると予測された欠陥位置を撮像した画像を含む欠陥データの、少なくとも複数種の欠陥属性情報に基づき前記欠陥の発生度合いを算出するステップと、前記発生度合いが所定以上となる欠陥データを抽出し、該抽出された欠陥データから観察または検査を行う試料上の領域を決定するステップと、を有する領域決定方法が提供される。
【0018】
また、本発明の他の一態様によれば、上述した領域決定方法を用いて、試料上の領域を決定し、前記決定された領域に対して観察または検査を行うステップを有する観察方法または検査方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、パターン計測あるいや欠陥検査を行うべき部分領域を効率的に決定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第一の実施形態にかかる検査システムの全体図である。
【図2】第一の実施形態にかかる処理フローである。
【図3】第一の実施形態における領域決定装置の内部ブロック図である。
【図4】第一の実施形態における領域決定処理フローである。
【図5A】第一の実施形態におけるチップマップの例である。
【図5B】第一の実施形態におけるチップレイアウトに対して局所領域を設定した例と、欠陥密度が高い局所領域が選択された例である。
【図6A】第一の実施形態におけるパターングルーピング結果の表示画面例である。
【図6B】第一の実施形態におけるパターングルーピング結果の他の表示画面例である。
【図7】第一の実施形態におけるデータ選別結果表示画面例である。
【図8】第一の実施形態にかかる検査システムの全体図2である。
【図9】図8に示した検査システムにおける領域決定装置のブロック図である。
【図10】第二の実施形態にかかる検査システムの全体図である。
【図11】第二の実施形態にかかるウェーハ領域分割の説明図である。
【図12A】第二の実施形態にかかる図11に示す領域1から作成したチップマップ例である。
【図12B】第二の実施形態にかかる図11に示す領域4から作成したチップマップ例である。
【図13】第二の実施形態におけるデータ選別結果表示画面例である。
【図14】第三の実施形態にかかる検査システムの全体図である。
【図15】第三の実施形態にかかる処理フローである。
【図16】第四の実施形態にかかる検査システムの全体図である。
【図17】第四の実施形態にかかる処理フローである。
【図18】第五の実施形態にかかる検査システムの全体図である。
【図19】第五の実施形態にかかる処理フローである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第一の実施形態)
まず、本実施形態では、リソグラフフィ工程におけるプロセス管理のためにCDSEMで試料を検査、具体的にはパターン計測を行う際の検査(計測)領域を決定する機能を備えた検査装置としての欠陥レビューシステムについて説明する。
【0022】
図1は、本発明の第一の実施形態にかかる検査システムの全体図であり、レビューSEM1005を含む検査システムの全体図を示している。光学式ウェーハ検査装置1001,CDSEM1002,歩留まり管理サーバ(YMS:Yield Management Server)1003、及びレビューSEM1005が、ネットワーク1004を介して接続されている。レビューSEM1005を構成する主要部は、可動ステージに搭載された試料としてのウェーハに対し電子ビームを照射し、画像を取得する一連の処理を行うSEM本体1006、画像取得における条件(照射する電子ビームの加速電圧,プローブ電流や、撮像時の視野サイズあるいは撮像倍率、S/N向上を目的に複数毎画像を加算して画像形成する際のフレーム加算)や欠陥検出のための画像処理のパラメータなどのレシピを格納するレシピ格納部1007、撮像した欠陥画像やその欠陥の座標値などのレビュー結果を格納するレビュー結果格納部1009、レビューSEM1005に対する動作指示や処理結果の表示などに用いられる表示ディスプレイ・キーボード等の入出力可能に構成される入出力部1008、レビューSEMにおける一連の動作(座標データの読み込み、レシピ格納部1007からの撮像条件のSEM本体1006への設定、画像撮像、取得画像のレビュー結果格納部1009への格納、画像処理など)のレビューSEM1005全体を制御する全体制御部1010、取得した画像に対して欠陥認識などの画像処理を行う画像処理部1011、レビュー結果を基に計測領域(検査領域)を決定する領域決定部1012を有する。これらSEM本体1006,レシピ格納部1007,入出力部1008,レビュー結果格納部1009,全体制御部1010,画像処理部1011,領域決定部1012は、各々電気的に接続されている。なお、SEM本体1006は、画像取得部として少なくとも機能する。
【0023】
図2に、本システムにおける一連の処理フローを示す。事前に、光学式ウェーハ検査装置1001を用いたFEMウェーハに対するウェーハ検査が終了しており、その結果がYMS1003に登録されているものとする。まず、その検査結果をYMS1003からレビューSEM1005が取り込み、レビュー結果格納部1009に格納若しくは記憶する(S201)。次に、レビューSEM1005を用いてレビューを行う(S202)。このレビューとは、レビューSEM1005において、YMS1003から取得した当該FEMウェーハに対する検査結果の情報に基づき、各欠陥の位置のSEM画像を取得することである。具体的には、試料ウェーハ上の欠陥座標位置が、画像取得時の撮像視野に入るように試料ウェーハを搭載したステージを移動し画像を取得する、という一連のシーケンスを、対象の欠陥を代えながら繰り返し行うものである。このレビューにより、欠陥候補の位置情報としての、チップID番号(ウェーハ上に複数あるチップそれぞれを一意に指定するためのID)およびチップ内の座標位置、並びにその位置に対応するSEM画像のセットを取得する。
【0024】
画像取得する際には、目視あるいは画像処理により欠陥の詳細解析を行うために、視野サイズを数マイクロメートル程度に設定することが必要となる。しかし、光学式ウェーハ検査装置1001が出力する欠陥座標には位置の誤差があることが知られており、その誤差量が数マイクロメートルの場合は、数マイクロメートルの視野サイズで画像取得すると欠陥が視野に入らない恐れもある。このようにウェーハ検査装置の誤差が大きい場合には、好適には、上記誤差量よりも大きい視野サイズとした条件として、視野を例えば十数マイクロメートル程度に広くした条件で一度画像を取得した後に、画像処理部1011における処理により画像から欠陥を自動検出し、検出された位置について、上記大きい視野サイズよりも小さい、数マイクロメートルの狭い視野サイズで画像取得する、といったシーケンスを実行すると効率よく欠陥を検出できる。
【0025】
なお、視野が広い画像から欠陥位置を自動検出する処理を行う際には、欠陥部位の画像の他にも良品部位の画像をも合わせて取得しておき、画像間の比較、即ち比較検査方式により自動検出すると良い。良品部位の画像は、現在着目している欠陥部位を含むチップとは異なる欠陥部位を含まないチップにおける、当該着目している欠陥部位のチップ内座標と同一の座標箇所について画像取得を行うことで得る。良品画像を取得するチップの位置は、予め、露光条件が比較的良好と思われるチップを良品画像取得用チップとして指定しておくことで可能となる。
【0026】
なお、光学式のウェーハ検査を行う段階で、参照チップとの比較検査を行っている場合は、その際に用いた比較チップの位置(通常は、検査チップに隣接する複数チップのうちのいずれか)を登録しても良い。
【0027】
以上の処理の結果、欠陥候補の位置座標情報であるチップID番号(ウェーハ上にてそのチップを一意に指定するためのID)とチップ内の座標位置、及びその位置に対応するSEM画像のセットを取得できたことになる。
【0028】
なお、光学式ウェーハ検査装置1001によりウェーハ検査を行う際には、微小な形状欠陥、例えば数十ナノメールの形状異常を検知するため、感度が高い条件で検査を実行する場合が多い。このため、検査結果の中には、真の欠陥以外にも膨大な数の擬似欠陥(欠陥以外のノイズデータ)も混在するおそれが高い。この場合、光学式ウェーハ検査装置1001が出力する欠陥の全数を検査することは非効率であることから、好適には、何らかの方法でサンプリングした部分欠陥データのみに対してSEMレビューを行うと良い。
【0029】
次に、これらのデータを用いて、領域決定部1012にて計測領域(検査領域)を決定する(S203)。
【0030】
図3は、領域決定部1012の内部ブロック図を示している。入力される欠陥データは、各欠陥についての、チップID,チップ内座標,レビュー画像のセットであり、処理対象欠陥数だけこのセットが存在する。
【0031】
領域決定部1012の内部には、各欠陥データに対して、以下で説明する種々の属性情報を付与する属性付与部3001、その属性情報に基づいて欠陥データを選別するデータ選別部3003、選別されたデータの評価スコアを算出し、該評価スコアを付与するスコア算出部3002、及び、それらの情報を基にパターン計測領域(検査領域)を決定し出力する領域出力部3004で構成されている。なお、スコア算出部3002は、試料を検査して得た試料上の欠陥位置あるいは当該試料上において欠陥が発生する可能性があると予測された欠陥位置を撮像した画像を含む欠陥データの少なくとも複数種の属性情報に基づき前記欠陥の発生度合いとしての評価スコアを算出する算出部として少なくとも機能する。
【0032】
また、領域出力部3004は、前記発生度合いが所定以上となる欠陥データを抽出し、該抽出された欠陥データから観察または検査を行う試料上の領域を決定する領域決定部として少なくとも機能する。
【0033】
図4は、領域決定部1012における処理フローを示している。本処理の目的は、入力された欠陥データセットから、複数種の欠陥属性情報として、欠陥になりやすいパターン形状や位置に関して解析を行い、その結果からCDSEM1002においてパターン計測(試料上のパターン検査)すべき領域を決定することである。そのために、属性付与部3001において、各欠陥データに対し複数種、各種の属性情報(或いは属性値)を設定していく。まず、ウェーハ上の全チップから以降の処理に用いる評価対象チップを自動選択する(S401)。各欠陥データセットに対しては、自身が選択されたチップに存在するか否かの属性情報が設定される。チップ選択は、欠陥データに付与されたチップIDを基に各チップに対して存在する欠陥数を調べ、その数が、所定の範囲にあるチップを選択し、後続の処理対象とする。このチップ選択処理により、例えば、欠陥が所定の範囲よりも多数であるチップと、欠陥が所定の範囲よりも少数であるチップに存在する欠陥データを以降の処理から除外することが可能になる。
【0034】
次に、処理対象となったチップに含まれる欠陥について、各欠陥のチップ内座標位置を、1つのチップレイアウト上にプロットしたチップマップを作成する(S402)。図5Aはチップマップの例である。チップ上の欠陥が存在する位置をプロット表示している。このチップマップにより、チップ内部での位置の違いにおける欠陥密度の違いを可視化することができる。
【0035】
このチップマップから局所領域を設定し、この局所領域の中から欠陥密度が所定以上、あるいは、所定の範囲内にある領域を、選択する(S403)。この局所領域の設定及び検査対象領域の選択は、欠陥密度が高い箇所(欠陥が発生しやすい箇所)を特定することを目的に、チップレイアウトを複数の矩形領域に分割し、その矩形内における欠陥数が予め設定したしきい値より多い領域を選択することで行われる。図5Bは、チップレイアウトに対して局所領域を設定した例と、欠陥密度が高い局所領域が選択された例である。局所領域は点線で記されており(9×6=54個)、その内11個の領域が選択されている(太枠で記した箇所)。各欠陥については、この設定された局所領域内に存在するか否かの属性情報が付与される。次に選択された局所領域に含まれる欠陥を対象として、欠陥分類処理を行い欠陥種の属性情報を付与する(S404)。欠陥分類処理は、SEM画像に対して画像処理を行うことで、SEM画像を欠陥種別に分類する。例えば、現在、標準的なレビューSEMに搭載されている自動欠陥分類機能(ADC:Automatic Defect Classification)にて行う。これは、SEM画像に対して画像処理を行うことで、SEM画像を欠陥種別に自動分類する機能である。ここで、欠陥種とは、例えば、付着異物,パターンの短絡,パターンの断線などの欠陥の要因別に種類分けしたもの等を意味する。
【0036】
次に、欠陥属性情報の付与処理の一種として、選択された局所領域に含まれる欠陥について良品パターンに着目したパターングルーピング処理を行う(S405)。この処理は、形状が類似するパターンにおいては、類似した種類の欠陥(例えばパターン短絡や断線など)が生じる可能性が高いという特徴に着目したものであり、処理対象の欠陥データ群からそれらの回路パターンの特徴(パターンの幅や隣接パターンとの距離,レイアウトなど)が類似する欠陥同士をグルーピングする処理である。
【0037】
グルーピング処理は、以下のように行う。
【0038】
各欠陥についてSEMレビュー(S202)を行った際に、欠陥部位の画像データと合わせて良品画像データを取得しておくものとし、その良品画像データについて、その画像データ同士の類似の程度を示す定量値を、相互相関係数法により求める。そして、その類似度合いが所定以上高い欠陥同士を同一グループとみなす。
【0039】
図6Aは第一の実施形態におけるパターングルーピング結果の表示画面例として、処理の効果を模式的に示したものであり、図5Bに示した選択局所領域に含まれる欠陥データについて、そのアイコン画像をグルーピング前後で一覧表示した例である。本例では、互いに類似するパターンはグループ1,2,3の3種が存在する例である。グルーピング処理によりパターンが類似するグループ毎に画像データを整列しなおされている。なお、グルーピング結果の表示において、[その他]としているグループは、そのパターンに類似する画像が他に存在しなかった事例の集合である。
【0040】
画像同士の類似性を評価する際には、一方の画像に対して例えば、回転や拡大・縮小などの幾何的な変換を加えた画像を多数準備しておき、その多数の画像同士を比較することも可能である。また、好適には、画像の比較において、画像の全領域を用いて比較するのではなく、画像内の局所領域を用いて類似性を比較することも可能である。例えば、各欠陥データについて、その部位の画像とそれに対応する良品画像とを比較する(差画像を計算する)ことで、画像内に欠陥が存在する部位を特定し、その特定された欠陥の位置を含む部分画像領域のみで類似性を比較することが可能である。これにより、類似度計算に用いる領域を小さくすることができるため処理時間を短縮できるという効果がある。
【0041】
図6Bは、第一の実施形態におけるパターングルーピング結果の他の表示画面例である。ここではグループ毎の頻度を可視化するために、当該頻度をグラフ化するように構成される。具体的には、ヒストグラムとしてグルーピング結果を表示している。当該ヒストグラムに代えて円グラフを用いて良いし、折れ線グラフを用いても良い。また、好適には、図6Bに示すように、同一画面に、各グループの代表画像も合わせて表示すると良い。これにより、グラフ内に表記される各グループの代表画像が容易に視認することができる。
【0042】
その他の結果表示例としては、好適には、例えば、グルーピングの結果得られたグループから任意のグループを指定し、その指定されたグループに含まれる欠陥データを用いて、図5Aに例示したチップマップを作成することも可能である。これによれば、ある特定の形状を有するパターンが、チップ上でどの位置に存在するかを確認することが可能となる。これらの表示画面は、レビューSEM1005の入出力部1008に表示されるため、装置の操作者が容易に確認することができる。このパターングルーピング処理の結果、各欠陥については、いずれのグループに属するかの属性情報が付与されることになる。
【0043】
ここまで、欠陥データに対し種々の属性情報を付与するための処理の概要を述べた。具体的には、選択されたチップに含まれるか否か、チップレイアウト内に設定した局所領域に含まれるか否か、各欠陥データの欠陥種は何か、パターングルーピング処理によりいずれのグループに属すると判定されたか、といった観点で属性情報が付与されることになる。
【0044】
次に、得られた属性情報を基に、データ選別部3003にて欠陥データの選別を行う(S406)。図7は、各欠陥に対して付与された属性情報を基に、データ選別した結果を入出力部1008に表示した例を示している。入力された欠陥データセットを、選択チップに含まれるか否か、選択局所領域に含まれるか否か、自動分類結果(欠陥種)、パターングルーピング結果の観点で選別した結果を示している。さらに、グルーピング結果については、各グループの代表例も合わせて表示している。また、図7の下段には、ウェーハ上のチップレイアウトと選択したチップ、また欠陥のチップマップと設定された局所領域も合わせて表示している。
【0045】
次に、選別された各データ群に対して、スコア算出部3002にてスコア値を算出し、付与する(S407)。ここで、スコア値とは、欠陥の発生度合いを算出するための値であり、そのデータ群に対して与えられる歩留まり管理・プロセス管理上の重要度を示す指標である。図7には、選別された各欠陥郡に対し付与されたスコア値も表示している。スコア値は、データ選別を行う際の基準毎に予め単体スコア値を定義しておき、最終的な選別結果を得るために適用された基準全てについて、各基準に対して定義された単体スコア値の積を計算することで得られる。例えば、チップ選択についての単体スコアを、選択データに対して10、非選択データに対して0とし、局所領域の基準については、領域内データの単体スコアを10、領域外データを0、欠陥分類結果については、パターンのショート・オープンなどの形状欠陥の単体スコアを10、異物などのその他の欠陥を5、パターングルーピング結果については、[その他]以外のグループの単体スコアを10、[その他]のグループに対する単体スコアを5とする。この場合、例えば、選択チップかつ局所領域内に存在するパターン形状欠陥でありパターングルーピングの結果グループ1と判定されたものは、スコア値10000(10×10×10×10)となる。
【0046】
なお、スコア値は、データ選別を行う際の基準毎に予め単体スコア値を定義しておき、最終的な選別結果を得るために適用された基準全てについて、各基準に対して定義された単体スコア値の積を計算しなくとも、適宜、各基準を選択し、選択された各基準に対して定義された単体スコア値の積を計算するように構成されても良い。
【0047】
ここまで、欠陥データに対して付与した種々の属性情報に基づいてデータを選別し、スコア値を付与する処理の実施形態の1つを述べたが、本発明の実施形態は、ここで述べた例には限られない。上述した属性情報の全てではなく、一部として複数の属性情報を用いるようにしても良い。また、各欠陥に付与する属性情報の他の例としては、各欠陥の寸法が一定の範囲に含まれるか否かを基準として属性情報を付与する方法や、各欠陥が背景パターンとどのように重なっているか(下地上、回路パターンと下地との境界、パターン上など)を基準として属性情報を付与することも可能である。
【0048】
ここまでの説明で、各欠陥候補において得られた属性情報に基づく単体スコア値に基づいて、最終的なスコア値を計算する処理を述べた。この単体スコア値としては、先に述べたように複数種類のものが定義されるが、複数種の欠陥属性情報に基づき欠陥の発生度合いを算出することにより、多種多様な欠陥候補から、効率的に着目する重要欠陥を特定し、検査領域を決定することになる。
【0049】
プロセスの開発段階では、大量の欠陥候補が発生する。それらには、回路パターンの形状といったパターン設計起因のものの他、使用材料あるいは製造装置の製造条件など、複数の要因に基づくものが混在する。また、プロセス開発が進むにつれ、その時点で着目する欠陥の種類も変化する。そのため、複数種の欠陥属性情報に基づいて欠陥の発生度合いを算出することで、プロセスの成熟度に応じて発生する重要欠陥の変化に対応することも容易となる。
【0050】
特に、本発明において最も重要な単体スコア値に関係する属性情報は、パターングルーピング結果に対する情報であり、好適には、このパターングルーピング結果に対する情報を上述した複数種の欠陥属性情報に基づき前記欠陥の発生度合いを算出する際の、欠陥属性情報に少なくとも含むようにする。微細化が進むリソグラフィ工程においては、欠陥候補位置での回路パターンの形状や、欠陥候補位置の周辺の回路パターン形状が重要となるからである。
【0051】
このパターングルーピング結果に対する情報は、回路パターンの設計起因による欠陥候補を選別することに特に効果がある。
【0052】
このパターングルーピング処理は、欠陥候補点を高い分解能を持つSEMで取得した画像を用いたことにより達成できるものである。
【0053】
また、欠陥種の分類情報も、多数の欠陥から効率的に欠陥候補を選別することにおいて重要であり、好適には、この欠陥種に関する情報を上述した複数種の欠陥属性情報に基づき前記欠陥の発生度合いを算出する際に、欠陥属性情報に少なくとも含むようにする。
【0054】
これにより、リソグラフィ工程に頻発するパターン形状欠陥に、混在する恐れのあるランダムに発生する表面異物欠陥を評価対象から除くことが可能になる。また、パターン形状欠陥の中でも、パターンの短絡と断線、あるいは、欠陥になりかけているパターンの細りや太りといった種類によって、その後の対処方法が同一とは限らないことから、欠陥の種別に関する属性情報の活用による欠陥の選別は、その後の解析を効率化できる。
【0055】
さらに、欠陥の試料上のチップ位置情報あるいは、チップ内における欠陥位置の情報も、多数の欠陥から効率的に欠陥候補を選別することにおいて重要であり、好適には、この欠陥種に関する情報を上述した複数種の欠陥属性情報に基づき前記欠陥の発生度合いを算出する際に、欠陥属性情報に少なくとも含むようにする。
【0056】
製造プロセスの面内均一性が保たれない場合には、ウェーハにおける位置、例えばウェーハ周辺部と中心部とで欠陥の発生の程度が変化する。よって、欠陥の位置情報を属性に含めることで、ウェーハ面内での製造プロセスのばらつきに起因して発生する欠陥を効率的に選別することが可能となる。また、チップ内部では、パターンが密集する部位とそうでない部位とが混在するのが通常であり、それぞれの領域で発生する欠陥種も異なることから、着目すべき欠陥種別に依存して、各欠陥候補をパターン密度の観点で選別することも効果がある。
【0057】
なお、本発明の実現においては、上述した重要な単体スコア値に関係する属性情報のみを用いることとし、他の重要度の低い単体スコア値に関係する属性情報は考慮せずに、欠陥候補を選別することも、もちろん可能である。
【0058】
次に、スコア値に基づき計測領域(検査領域)を決定し出力する(S408)。すなわち、欠陥の発生度合いとしてのスコア値が所定以上となる欠陥データを抽出し、該抽出された欠陥データから検査を行う試料上の検査領域を決定する。
【0059】
ここでは、CDSEM1002による計測箇所(検査箇所)を決定し、出力することを目的にしているため、出力すべきデータは、検査領域としての計測箇所の座標値となる。この目的のため、データ選別結果において、所定の値以上のスコア値をもつデータ群を選択し、そのデータ群に含まれる欠陥データの座標値を出力する。各データ群に含まれる欠陥部位は、必ずしもチップレイアウト内にて同一箇所とは限らないことから、次に、座標値を対象としたクラスタリング処理を行う。ここで、クラスタリング処理とは、各選別結果に存在するデータに対し、チップ内座標値が一定の許容誤差(例えば±100nm)範囲内であるデータを同一箇所のデータとみなす(1つのクラスタとみなす)処理である。その後、各クラスタに含まれるデータの座標の平均値を計算する。
【0060】
なお、座標データはウェーハ検査装置から得られた座標値でありウェーハ検査時の測定誤差が混入している。そのため決定された座標をCDSEM1002で観察しても、その箇所が所望の測定箇所とずれている恐れがある。この課題に対する解決方法の一例としては、測定箇所の座標データと合わせてその回路パターン画像(例えばグルーピング処理の結果得られた代表画像)をYMS1003に出力しておき、CDSEM1002側でその双方を利用する方法である。CDSEM1002では、計測点座標と合わせて取得したパターン画像を内部に記憶する。各計測点の画像を取得する際に、まず、計測点座標位置を含む広い視野で画像を取得し、その後にその画像から、パターン画像が存在する箇所をパターンマッチング処理により求める。そして、特定されたその回路パターンの部位を計測用画像として改めて取得し、その画像に対して計測処理を行う。
【0061】
また、他の解決方法としては、SEM画像データとCADパターンデータとマッチングを行うためのシステムを経由させることでレイアウトCAD上の座標値を取得する方法である。本手法を実現するための形態例を示したのが図8である。図1との違いは、領域決定部1012に、レイアウト解析部1014が接続されていることである。このレイアウト解析部1014はさらにレイアウトCADデータ1015と接続されている。
【0062】
図9は、図8に示した形態における領域決定部1012のブロック図を示している。本図では、図3に示した領域決定部1012のブロック図と比較して、領域出力部3004にレイアウト解析部1014が接続されている点、さらにレイアウト解析部1014が、レイアウトCADデータ1015と接続されている点が異なる。レイアウト解析部1014の内部は、レイアウトCADデータ1015から所定の部位の局所CADデータを切り出す(クリッピング)するためのクリッピング部904と、そのクリッピングデータを格納するクリッピングCAD格納部902、そして格納されたクリッピングデータとSEM像とをマッチングする機能をもつマッチング部903とで構成されている。
【0063】
レイアウト解析部1014では、領域出力部3004にて決定された計測箇所の座標データとその箇所のSEM画像を受け取り、マッチング部903に格納する。そして、回路パターンの設計レイアウトデータをレイアウトCADデータ1015から読み出し、さらに各計測箇所の座標データを中心として、その箇所のSEM像の視野サイズより十分広い領域のCADデータ画像をクリッピング部904にてクリッピング作成し、クリッピングCAD格納部902に保存する。次に、マッチング部903にて、取得したクリッピングデータとSEM像とのパターンマッチングを行い、クリッピングデータの中でSEM像を取得した部位と一致する箇所を認識することで、各計測箇所のCADレイアウト座標値を取得する。この方法であれば、誤差の存在しない座標データを得ることができる。なお、この方法は、上述した座標によるクラスタリング処理の前に行っても良い。
【0064】
このようにして得られた計測箇所の座標値あるいはパターン画像は、YMS1003に出力され記憶される(S204)。この計測点の座標情報は、プロセス開発作業におけるプロセス条件や設計回路パターンの評価に用いることができる。
【0065】
なお、このようにして決定された座標値はチップ内座標であることから、実際にウェーハ測定を行う際には、測定するチップの指定と、そのチップのウェーハ内座標が必要となる。例えば、計測点の決定に用いたFEMウェーハに対して、さらに画像の再取得を行う場合は、次に評価対象とするチップを指定し、そのチップ原点のウェーハ内座標と、求められた計測点のチップ内座標とを加えた座標を求めることによりウェーハ座標系における計測位置を算出することが可能となる。
【0066】
また、出力された計測点は、そのデバイスを量産する際の製造モニタリング箇所として用いることも可能である。即ち、プロセス開発段階における検査結果から欠陥が発生しやすいと判断された箇所をYMS1003に登録しておき、量産段階において、その箇所について計測を行うことが可能となる。
【0067】
(第二の実施形態)
第一の実施形態では、リソグラフィプロセスを対象にウェーハ検査装置によって検出された欠陥候補の中から計測領域を抽出する例を示した。リソグラフィ工程においては、観察するパターンは、通常の場合、レジストレイヤ一層(単層レジスト)で形成されている。また、主な欠陥はパターンの断線や短絡、細り・太りといった形状欠陥であり、その発生傾向が回路パターンの局所的な形状と強く関係しているという特徴がある。本第二の実施形態では、それ以外の工程、例えば各種パターンのエッチング工程終了後に行われるウェーハ検査を対象として、検査箇所特定情報としての検査領域を決定する事例について説明する。この場合、対象となる欠陥種も形状欠陥のみならず多様なプロセス欠陥が含まれることを前提とする。エッチング完了後の多層レイヤ構造をもつプロセスウェーハに対して欠陥管理を行う場合、欠陥発生に影響を与える要因が多数であることから、リソグラフィ工程で用いたFEMウェーハのようなテストウェーハを活用することは一般的に困難である。よって、テスト回路パターンや実回路パターンを実際の製造プロセスにて製造し、それに対するウェーハ検査を行うことで欠陥位置を特定し、さらにそのデータから検査すべき部分領域を抽出する。
【0068】
図10は、本実施形態にかかる検査システムの構成図である。第一の実施形態で説明したシステム(図1)との違いは、ネットワーク1004に、SEM式ウェーハ検査装置1013が接続されていることである。この第二の実施形態における検査箇所特定情報としての検査領域の決定処理フローは第一の実施形態の処理フローと概要は同様であり、図2に示すものと同様である。
【0069】
図2に示すとおり、まず、評価用の実プロセスウェーハに対する光学式ウェーハ検査装置1001の検査結果をYMS1003から取得し(S201)、SEMレビューを行う(S202)。本実施の形態においても、第一の実施形態と同様、SEMレビュー時に欠陥位置の画像にあわせ良品画像を取得するが、良品画像を取得するための参照チップは各欠陥が存在するチップの隣接チップとする。次に、各欠陥が存在するチップのIDとチップ内座標値及び取得された画像を用いて、検査箇所特定情報としての検査領域の設定を行う(S203)。本処理の流れも、概要は第一の実施の形態について説明した図4と同じであるが、細部については異なるため、以下、異なるところを中心に説明を行う。
【0070】
まず、ウェーハ分割領域からのチップ選択を行う(S401)。第一の実施形態では、評価データの選別をチップ単位で行った。これはFEMウェーハでは、チップ単位でプロセス条件が異なっていたためである。本実施例では、ウェーハ上の大局位置を考慮したチップ選択を行う。即ち、ウェーハをその直径方向や円周方向で複数の領域に分割し、各分割領域からチップの選択を行う。これは、ウェーハ上の位置(例えばウェーハエッジとの距離等)によって欠陥の発生傾向が異なる可能性が高いことに着目したものである。図11は、ウェーハ外周部のチップ群を方向別で4分割したものと、ウェーハ外周以外のチップ群、の計5つの領域にウェーハ上のチップを分割した例である。ウェーハ外周部のチップ群を方向別で、格子模様で示す領域1、横縞模様で示す領域2、縦縞模様で示す領域3、斜め縞模様で示す領域4、ウェーハ外周以外のチップ群として白抜きで示す領域5の5つの領域に分割している。このように分割した領域それぞれから、チップを任意数選択する。
【0071】
次に、選択されたチップに含まれる欠陥データに対する属性付けを行っていく。まず、第一の属性として、第一の実施形態と同様、処理対象チップに対してチップマップを作成し(S402)、その欠陥密度の高い部分領域を特定する(S403)。チップマップの作成は、図11に例示したウェーハ分割領域毎に行う。図12A,図12Bはチップマップの例であり、図11における領域1(ウェーハ右上の外周チップ群)から作成したチップマップの例を図12Aに、図11における領域4(ウェーハ左下の外周チップ群)から作成したチップマップを図12Bに、それぞれ示している。領域1・4の間で、チップレイアウト内で欠陥密度が高い位置が異なる様子がわかる。本例は、ウェーハの外周部に近い側の領域において欠陥密度が高いことを示唆している。部分領域の設定は、第一の実施形態において図5A、図5Bを用いて説明した方法と同一の方法で行う。
【0072】
次に、ADC(自動分類機能)によって得た欠陥種のクラス属性(属性情報)を付与する(S404)。さらに、参照画像を用いたグルーピング処理を行う(S405)。本実施例におけるグルーピング処理の目的は、例えばダミーパターンと呼ばれる回路の電気特性上意味のない回路パターンとそれ以外の回路パターンとを選別することである。ダミーパターンは、チップ内の各所に配置される可能性があるが、正方形パターンのような特徴的でかつ、通常の回路パターン形状と異なる形状となる場合が多い。このような特徴的なパターンはパターングルーピング処理により認識するのが容易という特徴もある。ダミーパターン上の欠陥は歩留まりに影響を与えないことから、このような欠陥を処理対象から除外することが可能になる。
【0073】
次に、ここまでの処理によって得られた属性情報に基づいて、欠陥データの選別を行い(S406)、各欠陥データ群に対してスコアを付与する(S407)。仕分け及びスコア付与の方式は、第一の実施形態に示した手順と同様の手順で行う。図13は、選別結果を入出力部1008に表示した画面の一例である。チップ選択は、図11に示したように、ウェーハレイアウトを複数領域に分けた後に各領域から行っていることから、選別結果は、各領域(本例では1から5)に分けて表示される(図13では領域1の部分のみ図示)。図13では、ウェーハ上の領域1に対して選択したチップにおける欠陥であって、欠陥密度を基に定義した局所領域に含まれていた欠陥が225個ある例を示している。異物欠陥は200個、それ以外の欠陥が25個であり、異物欠陥200個についてはパターングルーピングの結果、ダミーパターンのグループ1に属する欠陥が165個、その他の背景パターンに存在する欠陥が35個であった場合の例である。
【0074】
そしてスコア値に基づいて検査箇所特定情報としての検査領域を決定し出力する(S408)。第一の実施形態では決定されるのは計測する位置であったが、本実施形態では一定の面積をもった領域を検査領域として決定する。その具体的な決定方法は以下の通りである。まず、ダミーパターンの領域は検査が不要であることから、ダミーパターン領域を特定する。具体的には、パターングルーピングの結果から、ダミーパターンのグループが存在するか調べる。存在する場合は、そのグループを指定し、そのグループに含まれる欠陥点の座標を中心としてその画像視野サイズと同じ視野の領域を個々のダミーパターン領域とみなす。個々のダミーパターン領域を、そのグループに含まれるすべての欠陥について調べ、その和領域を計算したものが最終的なダミーパターン領域となる。次に、局所領域の内外、あるいは欠陥種の観点で検査すべき領域を決定する。検査すべき領域は、データ選別結果に依存して設定される内容が異なることになる。例えば、局所領域の内部に存在する欠陥については、いずれの欠陥種のデータも特に重要でないと判断される場合には、局所領域内の検査を行うことは不要と考え、局所領域を除いた他の領域を次に行うべき検査領域に設定する。一方、局所領域内部に、歩留まり管理上重要な欠陥種が多発している場合には、その欠陥の発生傾向をモニタリングする必要があることから、その局所領域を検査領域に設定する。最終的には、検査すべき領域から、ダミーパターン領域を除いた領域を検査領域と決定し、YMS1003に出力する。この処理は、ウェーハ上に設定した領域(図11に示した例では5つの領域)毎に行われる。
【0075】
図12A,図12Bでは、ウェーハ上に設定した領域別にチップマップを作成した結果、欠陥密度が高い領域が領域毎に異なる例を示したが、このような場合には、最終的に設定される検査領域も、ウェーハ上の領域毎に異なる領域が設定される可能性が高くなる。例えば、ウェーハの外周チップにおいて、ウェーハの右上側に存在するチップについてはチップ内で右上に存在する回路パターン領域が、ウェーハの左上に位置するチップにおいては、チップ内の左上に存在する回路パターン領域が検査領域として設定されることも起こりえる。
【0076】
本実施形態によるシステムによって出力される検査領域は、既にウェーハ検査装置によって検査された領域に限らず、検査が行われていない領域も含めることが可能になるため、ここで設定された検査領域をSEM式ウェーハ検査装置1013により検査することで、光学式ウェーハ検査装置0001により検出できなかった欠陥をも検出できる可能性が高くなる。
【0077】
このようにして得られた検査領域情報は、YMS1003に出力され記憶される(S204)。この検査領域情報は、プロセス開発作業におけるプロセス条件や設計回路パターンの評価に用いることができる。決定される領域の情報は、チップ内座標系に対する領域情報であることから、実際にウェーハ測定を行う際には、測定するチップを特定することが必要である。例えば、検査領域の決定に用いたウェーハに対して、さらに画像の再取得を行う場合は、検査対象とするチップを指定し、そのチップ原点のウェーハ内の座標と求められた検査領域のチップ内エリア情報とから、ウェーハ座標系における検査領域を算出される。
【0078】
出力された検査領域情報は、そのデバイスを量産する際の製造モニタリング箇所として用いることも可能である。即ち、プロセス開発段階においてYMS1003に登録された検査領域情報を用いて、量産段階において、製造モニタリングのために部分領域検査を行うことが可能になる。
【0079】
なお、ここまでの説明では、ウェーハ上の欠陥候補位置の座標は、光学式検査装置により得られる例を示しているが、本発明の実施形態は、当然これには限られない。
【0080】
例えば欠陥候補位置の座標を得るためには、光学式検査装置のほかSEM式検査装置も使用可能である。先に述べたとおりSEM式検査装置のスループットは光学式検査装置よりも圧倒的に低いため、SEM式検査によってウェーハの全面を検査することは実質的に困難である。しかし、最近入手可能なSEM式検査装置は、そのスループットの改善もはかられており、また、検査感度を低くすることによって高スループット性を実現するモードを搭載しているものもある。よって、ウェーハ全面は不可能にせよ、ある程度の広い領域(例えばチップの1/100の面積)をSEM式検査装置により検査することも可能となっている。そこで、そのように領域を限定してSEM式検査を行うことで欠陥候補位置を特定し、さらに本実施形態に示す検査領域決定方式あるいは装置によりさらに詳細に検査を行うべき領域を絞り込むといった使い方も可能となる。
【0081】
また、ここまでの説明では、詳細に検査を行うべき領域を絞り込むために、得られた各欠陥候補の位置についてその画像を取得し、その画像及び座標値から各種属性を算出し、この属性を基に検査箇所特定情報としての検査領域を特定する内容を述べたが、画像撮像を行わないで座標データから、検査箇所特定情報としての計測領域・検査領域を特定することも可能である。例えば、得られた欠陥候補位置を、複数のチップについて重ね合わせることでマップを作成し、そのマップ情報のみから、検査領域を決定することも可能である。具体例としては、図5Bに示したように、チップレイアウトから、欠陥密度が高い部分領域を特定しその部位を、検査領域として設定することが可能である。このようにして特定された領域を検査するためには、それらの領域を複数回にわたって画像取得するために、その領域を視野サイズに分割することが必要となるが、領域の位置(例えば、領域を矩形とすれば、4隅のチップ内座標値)と、撮像する際の視野サイズの情報があれば、各撮像位置を算出することは容易に実現できる。
【0082】
なお、検査すべき領域は、作成されたマップにおいて欠陥密度が高い箇所とは限られないことも想定すべきである。即ち、欠陥候補位置の抽出欠陥の信頼度が低く、マップ上において欠陥密度が低い領域であっても、真に欠陥が存在することが疑われるならば、欠陥密度が低い領域を、計測・検査領域として指定する可能性も考えられる。
【0083】
(第三の実施形態)
本実施形態では、リソグラフィ工程を対象とした本発明の第一の実施形態を拡張した形態について述べる。第一の実施形態では、FEMウェーハを対象にウェーハ検査装置による検査を行い、その結果を欠陥位置候補としてSEMレビューを行った。一方、最近のプロセスシミュレーション技術の進歩により、ウェーハプロセスのプロセス条件を変更した際の、回路パターン形状の変化の様子をシミュレーションにより予測することがある程度可能になってきている。例えば、リソグラフィプロセスに関しては、露光シミュレータに対して、回路パターンの設計レイアウトデータと露光条件(フォーカス及び露光量)及びレジスト材料等を入力すると、露光されるパターンの予測形状を得ることが可能である。このシミュレータを活用することで、プロセス変動により生じるパターン形状の変化を予想することが可能であり、ウェーハ検査を行わなくとも、プロセス条件が変動した際にパターンの変化が生じる恐れがある箇所と、その形状の変化の仕方(短絡や断線など)を予測できる。そこで、このシミュレータから出力される欠陥属性情報としての欠陥候補箇所の情報を基に計測領域を決定する。
【0084】
図14は本システムの構成図である。本図は、図1に示すブロックに対し、プロセスシミュレータ(露光シミュレータ)1401が、ネットワーク1004に接続されているという点が異なる。本システムにおける処理フローを図15に示す。
【0085】
事前に、対象となるデバイスをチップ毎の露光条件を変更させて回路パターンを作成したFEMウェーハを作成しておくものとする。まず、対象となる回路パターンレイアウトをプロセスシミュレータ1401に入力し、回路パターン上の欠陥候補位置のチップ内座標データを取得する(S1501)。次に、FEMウェーハ上で評価対象とするチップを指定し、その指定されたチップにおける欠陥候補箇所のSEM画像を取得する(S1502)。また、各欠陥候補位置に対応する良品画像も、第一の実施形態と同様にプロセス状態と良好と思われるチップから取得する。その後、欠陥データ(チップ内座標、チップID,SEM像)から検査箇所特定情報としての計測領域を決定し(S1503)、決定された計測領域をYMS1003に出力する(S1504)。計測領域決定処理の具体的内容は、第一の実施形態にて示した手順と同様であり、異なる点は、各欠陥に付随する座標データが設計レイアウトデータ上の座標値である点である。このため、光学式ウェーハ検査装置で得られる座標位置のような誤差は存在せず、SEM画像と設計レイアウトデータとのパターンマッチングによる座標補正が不要となる。
【0086】
なお、上記の説明では、露光シミュレータが出力した多数の欠陥候補に対してレビュー画像を用いて、CDSEM1002にて計測を行う箇所を決定する事例を示したが、同様の考え方はリソグラフィ工程のみならず、他のプロセス工程に対しても適用可能である。実プロセスにて作成したウェーハを用いて、各種のプロセスシミュレータなどを用いて欠陥が発生する恐れのある箇所の座標値について、SEM画像を取得し、その画像を用いて欠陥の属性を付与し、その結果に基づいて、検査箇所特定情報としての検査箇所あるいは計測箇所を決定することができる。
【0087】
(第四の実施形態)
ここまで欠陥候補箇所のSEMレビュー画像を基に、測定箇所や検査領域を特定するシステムについて述べてきた。本実施形態では、欠陥候補箇所が多数になった場合におけるSEMレビューの効率向上を実現するシステムについて述べる。
【0088】
本実施形態の特徴は、ウェーハ検査装置やシミュレータにより得られた大量の欠陥候補位置座標に対する画像撮像を効率化するためのもので、一度のレビュー処理にて、全ての箇所の画像取得を行うのではなく、サンプリング処理と組合せることで、複数回に分けて段階的にSEMレビューを行うことにある。図16は、本システムのブロック図である。図1に対して、特にレビューSEM1005内部に、サンプリング部1601が追加されている点で異なる。このサンプリング部は、YMS1003から入力された欠陥候補情報から、実際にSEMレビューを行う点数をサンプリングする機能を有する。また、そのサンプリング処理において、領域決定部1012によって決定された計測箇所や検査領域の内容に基づいてサンプリングを行う機能を有することに特徴がある。このシステムの動作フローを図17に示す。
【0089】
まず、YMS1003から欠陥候補箇所のデータを読み込み(S1701)、次に、サンプリング部1601において初期サンプリング処理を行う(S1702)。この初期サンプリングでは、多量の欠陥候補データから部分データを選択する。その際、ウェーハ全面に関する欠陥発生傾向を把握するため、ウェーハ上のチップ間の欠陥数比が、サンプリング前後で大きく変化しないように、欠陥をサンプリングする。例えば、全欠陥候補数の50%といったようにサンプリング後のデータ数を設定した場合、各チップから、同じ割合(本例では50%)となるようにランダムにサンプリングを行う。次に、サンプリングされた欠陥候補のSEM画像を取得する(S1703)。そして、それらのレビュー結果から、第一の実施形態、第二及び第三の実施形態で述べてきた方法で、欠陥の選別処理とスコア付与を行う(S1704)。この結果は、サンプリングされた欠陥を用いて、当該ウェーハ上の欠陥の発生傾向を解析したことを意味する。即ち、サンプリングデータを用いて、チップ内で欠陥密度が高いが集中している箇所や、欠陥が発生している特徴的な回路パターン形状や、発生している欠陥種、ダミーパターンが存在する位置などの情報を得たことになる。
【0090】
この時点で、未レビューの欠陥数が多数残っている場合は、さらにレビューを継続することとするが、その際ここまでの処理で得られている欠陥の解析結果に基づいて、未レビュー箇所の中から次にSEMレビューを行う欠陥箇所をサンプリングする(S1705)。具体的なサンプリング方法としては、ここまでの解析で、既にわかっているダミーパターン領域に存在する未レビュー箇所は、次回サンプリングから除くこととする。さらに、既に欠陥密度が高いと判定された箇所は、これ以上レビューする必要性がないと判断し、そのような領域を次回サンプリングから除く。このようにして、除外すべきサンプルを除いた後の未レビューのデータに対して、次にレビューするデータをサンプリングする。このサンプリングでは、初期サンプリングと異なり、チップ毎の欠陥候補数が一定となるようにすることは必ずしも必要ない。そして、このようにしてサンプリングされた欠陥箇所を再びSEMレビューする(S1703)。そして再び、SEMレビュー結果をもとに、各欠陥画像の仕分けとスコア付与を行う(S1704)。上記の処理を繰り返すことで、ダミーパターン領域のレビュー対象からの除外や、局部的に多量な欠陥が発生している箇所において、必要以上の数の画像データを取得することを避けつつ、確認が必要な欠陥についてのSEMレビュー結果を取得することが可能になる。
【0091】
このようにして段階的に得られたレビュー結果から、第一の実施形態から第三の実施形態に示したように検査箇所特定情報としての検査領域を決定・出力する。
【0092】
(第五の実施形態)
本実施形態では、欠陥候補箇所のレビュー画像を基に検査箇所特定情報としての計測領域・検査領域を設定した後、同一の装置を用いて、計測或いは検査を行うことが可能なレビュー装置について示す。
【0093】
図18に本実施形態にかかるレビューSEMを含む検査システムを示す。図1に対して、特にレビューSEM1005内部に、処理モード切替部としての検査・レビューモード切替部1801が追加されている点で異なる。レビューSEM1005には、検査・レビューモード切替部1801が搭載されている。この検査・レビューモード切替部1801は、レビューSEM1005における処理モードを、欠陥検査処理を行う検査モードと欠陥レビューを行うレビューモードを切り替える機能をもつ。検査モード、レビューモードともSEM本体1006によってSEM画像を撮像し、画像処理部1011にて欠陥検出処理を行うという機能は同一であるが、各種の処理条件で違いがある。検査モードでは、所定の検査箇所特定情報としての検査領域を可能な限り高いスループットの条件で行うことが必要であり、例えば、プローブ電流量を1nA程度にしてフレーム加算数を2枚程度にし、また撮像視野を数マイクロメートルという広さに設定して広視野画像を取得する。一方、レビューモードでは、欠陥候補座標の画像を高分解能で撮像することが目的であるため、プローブ電流を100pA程度にし、また高S/N像を得るためにフレーム加算数も例えば32にする。これらの条件は、レシピ格納部1007に格納されており、検査・レビューモード切替部1801が、それらの撮像条件を切り替えるように全体制御部1010に指示し、それを受けて、全体制御部が、撮像条件をレシピ格納部1007からSEM本体1006や、画像処理部1011に設定することで各モードに応じた画像取得と処理が行われる。
【0094】
図19は、本実施形態の動作を示すフロー図である。処理を開始する時点で、レビューSEM1005はレビューモードに設定されているものとする。まず、光学式ウェーハ検査装置などウェーハの広い範囲にわたって外観検査を行った結果をYMS1003から取得し(S1901)、その欠陥位置に対してSEMレビューを行う(S1902)。次に、取得データ(チップID,チップ内座標、SEM画像)を用いて、領域決定部1012にて検査箇所特定情報としての検査領域を決定する(S1903)。次に、検査・レビューモード切替部1801から全体制御部1010への指示により、検査処理を行うためのSEM本体106、画像処理部1011への条件設定を行う(S1904)。そして、決定された検査領域に対して欠陥検査を行う(S1905)。
【0095】
得られた検査結果や計測結果は、検査結果ファイルとして、YMS1003に出力される。この結果に対し、レビューSEM1005にて、レビューモードにて、より詳細な解析を行う目的でSEMレビューを行うことも可能となる。なお、ここでは欠陥検査を行う例を述べたが、同様にパターン計測を行うことも可能である。
【0096】
(他の実施形態)
ここまで第一の実施形態から第五の実施形態にて説明したものも含め、本発明の実施形態としては、特に、スループットの観点でウェーハ全面を評価対象とできない場合(例えば荷電粒子線装置としての電子ビーム装置を用いてパターン計測及び欠陥検査を行う場合)に、パターン計測や観察、検査を行うウェーハ上の部分領域を決定する機能を有する装置あるいは部分領域の決定方法、あるいはそのような領域決定機能を有する欠陥レビュー装置に関するものである。例えば、電子ビーム装置を用いて、試料全面ではなく部分領域を対象としてパターン計測や観察、欠陥検査を行う際に、(1)計測や観察あるいは検査を行うべき箇所(欠陥が発生しやすい箇所)を予想することが困難な場合や、(2)なんらかの手段により、欠陥が発生しやすい箇所の情報を得た場合であっても、その情報に真の欠陥の情報と擬似欠陥情報が混在してしまう場合に、パターン計測や観察あるいは、欠陥検査を行う部分領域を効率的に決定するためになされるものである。
【0097】
また、本発明の別の一態様としては、欠陥となる可能性があるウェーハ上の位置情報、あるいは、それらの位置情報とその位置を撮像した画像データから、真に欠陥が発生しやすい箇所の特徴を抽出し、その特徴に基づいて、パターン計測や観察、欠陥検査を行う部分領域を特定するための装置及びその方法が提供されるものである。本装置及び方法では、欠陥が発生しやすい箇所の特徴を、実際に欠陥が発生したチップの位置、欠陥部のチップ内座標、発生した欠陥種の情報、欠陥が発生した位置の回路パターン形状の属性情報等をもって定義づけすることに特徴がある。
【0098】
さらに、本発明の別の他の態様では、欠陥となる可能性があるウェーハ上の位置情報を入力として、その位置の画像を撮像する機能と、その欠陥の位置情報と画像情報から、検査すべき領域を特定する機能とを有する観察装置または検査装置としての欠陥レビュー装置が提供されるものである。
【0099】
さらに、本発明の別の他の態様では、欠陥となる可能性があるウェーハ上の位置情報を入力として、その位置の画像を撮像する機能と、その欠陥の位置情報と画像情報から検査すべき領域を特定する機能と、特定された領域を検査する機能を有する装置、即ち、レビュー機能と検査機能の双方を有する電子ビーム式レビュー装置が提供されるものである。
【0100】
本形態によれば、欠陥の発生領域を経験的な知識から予想することが困難な場合や、他の手段にて欠陥が発生しやすい箇所の候補を検出することが可能であるものの真に検査すべき欠陥箇所の情報が大量の擬似欠陥情報に混在してしまう場合に、パターン計測あるいや欠陥検査を行うべき部分領域を効率的に決定することが可能となる。決定された領域のみに対して、電子ビーム装置を用いた欠陥検査やパターン計測を行うことで、効率的に欠陥管理やプロセス管理を行うことが可能となるものである。
【0101】
さらに、欠陥となる可能性があるウェーハ上の位置情報を入力として、その位置の画像を撮像する機能と、その位置情報と画像情報から検査すべき領域を特定する機能との双方を有する本発明によるレビュー装置によれば、欠陥となる可能性があるウェーハ上の位置が多数である場合に、その一部のデータに対してその位置の画像を撮像し、その画像データを基に欠陥になりやすい領域の特徴を抽出し、さらにその抽出された情報に一致する欠陥候補位置のデータを、まだ画像撮像を行っていない欠陥候補データの中から選択し、その選択されたデータのみに対し画像を取得することが可能になる。このように、入力された欠陥候補データに対し一度に全ての箇所の画像データを取得する必要はなく、効率的な画像取得が可能となるものである。
【0102】
さらに、欠陥となる可能性があるウェーハ上の位置情報を入力として、その位置の画像を撮像する機能とその位置情報と画像情報から検査すべき領域を特定する機能と特定された領域を検査する機能を有するレビュー機能と検査機能を有した装置によれば、1台の装置において、欠陥候補部位の画像取得と欠陥になりやすい箇所の特定と特定された箇所に対する検査を連続実行でき、最終的な検査結果を得るまでの時間を短縮できるという効果があるものである。
【符号の説明】
【0103】
1001 光学式ウェーハ検査装置
1002 CDSEM
1003 YMS
1004 ネットワーク
1005 レビューSEM
1006 SEM本体
1007 レシピ格納部
1008 入出力部
1009 レビュー結果格納部
1010 全体制御部
1011 画像処理部
1012 領域決定部
1013 SEM式ウェーハ検査装置
1014 レイアウト解析部
1015 レイアウトCADデータ
1401 プロセスシミュレータ
1601 サンプリング部
1801 検査・レビューモード切替部
3001 属性付与部
3002 スコア算出部
3003 データ選別部
3004 領域出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を検査して得た試料上の欠陥位置あるいは当該試料上において欠陥が発生する可能性があると予測された欠陥位置を撮像した画像を含む欠陥データの、少なくとも複数種の欠陥属性情報に基づき前記欠陥の発生度合いを算出する算出部と、
前記発生度合いが所定以上となる欠陥データを抽出し、該抽出された欠陥データから観察または検査を行う試料上の領域を決定する領域決定部と、を有する領域決定装置。
【請求項2】
前記複数種の欠陥属性情報は、少なくともその一種が欠陥データのパターングルーピング情報である請求項1に記載の領域決定装置。
【請求項3】
前記複数種の欠陥属性情報は、少なくともその一種が欠陥種の分類情報である請求項2に記載の領域決定装置。
【請求項4】
前記複数種の欠陥属性情報は、少なくともその一種が前記欠陥の試料上のチップ位置情報あるいは、チップ内における欠陥位置の情報である請求項2に記載の領域決定装置。
【請求項5】
試料を検査して得た試料上の欠陥位置あるいは当該試料上において欠陥が発生する可能性があると予測された欠陥位置を撮像した画像を含む欠陥データの、少なくとも複数種の欠陥属性情報に基づき前記欠陥の発生度合いを算出する算出部と、
前記発生度合いが所定以上となる欠陥データを抽出し、該抽出された欠陥データから観察または検査を行う試料上の領域を決定する領域決定部と、
当該決定された領域情報に基づき前記欠陥位置の画像を取得する画像取得部と、
を有する観察装置または検査装置。
【請求項6】
前記複数種の欠陥属性情報は、少なくともその一種が欠陥データのパターングルーピング情報である請求項5に記載の観察装置または検査装置。
【請求項7】
前記複数種の欠陥属性情報は、少なくともその一種が欠陥種の分類情報である請求項6に記載の観察装置または検査装置。
【請求項8】
前記複数種の欠陥属性情報は、少なくともその一種が前記欠陥の試料上のチップ位置情報あるいは、チップ内における欠陥位置の情報である請求項6に記載の観察装置または検査装置。
【請求項9】
前記領域決定部で決定された領域情報に基づいて、当該試料上の欠陥位置あるいは欠陥が発生する可能性があると予測された箇所から欠陥データのサンプリングを行うサンプリング部を有する請求項5に記載の観察装置または検査装置。
【請求項10】
欠陥検査処理を行うモードと欠陥レビュー処理を行うモードとを切り替える処理モード切替え部と、
欠陥レビューモードによって、前記領域決定部において領域を決定した後に、
検査処理モードにおいて、決定された領域の検査を行う制御部と、をさらに有する請求項5記載の観察装置または検査装置。
【請求項11】
試料を検査して得た試料上の欠陥位置あるいは当該試料上において欠陥が発生する可能性があると予測された欠陥位置を撮像した画像を含む欠陥データの、少なくとも複数種の欠陥属性情報に基づき前記欠陥の発生度合いを算出するステップと、
前記発生度合いが所定以上となる欠陥データを抽出し、該抽出された欠陥データから観察または検査を行う試料上の領域を決定するステップと、
を有する領域決定方法。
【請求項12】
請求項11における領域決定方法を用いて、試料上の領域を決定し、前記決定された領域に対して観察または検査を行うステップを有する観察方法または検査方法。
【請求項13】
請求項11における領域決定方法を用いて、試料上の領域を決定し、前記決定された領域の情報を基に、画像データを取得する欠陥座標位置を選択するステップと、
該選択された欠陥座標位置の画像データと取得するステップと、
を有する観察方法または検査方法。
【請求項14】
前記複数種の欠陥属性情報は、少なくともその一種が欠陥データのパターングルーピング情報である請求項11乃至請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記複数種の欠陥属性情報は、少なくともその一種が欠陥種の分類情報である請求項11乃至請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記複数種の欠陥属性情報は、少なくともその一種が前記欠陥の試料上のチップ位置情報あるいは、チップ内における欠陥位置の情報である請求項11乃至請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−58508(P2013−58508A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194506(P2011−194506)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】