頭部保護エアバッグ装置
【課題】カーテンエアバッグのタブ部間部分の垂れ下がり(または、垂れ下がりと断面内回転との両方)を抑制できる頭部保護エアバッグ装置の提供。
【解決手段】(1)本発明の頭部保護エアバッグ装置10が畳み状態のカーテンエアバッグ20をタブ部21間で車両ボデーに支持するクリップ30を備え、該クリップが、係合部33と、カーテンエアバッグ展開力で破断する脆弱部34とを有し、1部材に形成されている。簡単な構成にてカーテンエアバッグの垂れ下がりを防止できる。(2)クリップ30は、カーテンエアバッグの一部を当接させる突起39を有する。カーテンエアバッグ20の回動を抑制して、展開方向がばらつくことを防止できる。(3)カーテンエアバッグ20を内包しカーテンエアバッグの展開力で破断する脆弱部が形成された布製カバーをさらに有している。カーテンエアバッグ20の回動をより一層抑制できる。
【解決手段】(1)本発明の頭部保護エアバッグ装置10が畳み状態のカーテンエアバッグ20をタブ部21間で車両ボデーに支持するクリップ30を備え、該クリップが、係合部33と、カーテンエアバッグ展開力で破断する脆弱部34とを有し、1部材に形成されている。簡単な構成にてカーテンエアバッグの垂れ下がりを防止できる。(2)クリップ30は、カーテンエアバッグの一部を当接させる突起39を有する。カーテンエアバッグ20の回動を抑制して、展開方向がばらつくことを防止できる。(3)カーテンエアバッグ20を内包しカーテンエアバッグの展開力で破断する脆弱部が形成された布製カバーをさらに有している。カーテンエアバッグ20の回動をより一層抑制できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常時は車両のルーフ側部に畳み(折り畳み、巻き畳み、折り畳みと巻き畳み、の何れの畳み方でもよい、以下、同じ)状態で収納され車両側面衝突時に下方に展開して乗員の頭部を保護するカーテンエアバッグを備えた頭部保護エアバッグ装置に関し、とくに畳み状態のカーテンエアバッグの取付け部間部分の垂れ下がりと回動を抑制した頭部保護エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、カーテンエアバッグ上縁部に車両前後方向に互いに間隔をおいて突出形成した複数のタブ部(取付け部)を、回り止め手段(ブラケット)を介してボデー(ルーフサイドレール)側面に固定した頭部保護エアバッグ装置を開示している。
【特許文献1】特許第2920291号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の頭部保護エアバッグ装置では、カーテンエアバッグの取付けピッチ(タブ部2間間隔)が大きい場合に、図19に示すように、畳み状態のカーテンエアバッグ1のタブ部間部分1aが垂れ下がったり、図20に示すように、畳み状態のカーテンエアバッグ1が断面内で左右方向に回動する。図19で、dは垂れ下がり量を示す。その結果、カーテンエアバッグの巻きの折り返し部3が周辺部品に、たとえば、ピラーガーニッシュ16の上端部に一体形成されたジャンプ台17とボデー11のインナーパネル12との間や、ルーフライニング15とウエザーストリップ19との間等にかみ込み、車両側面衝突時のカーテンエアバッグ1の展開挙動にバラツキや不具合がでる可能性がある。
【0004】
本発明の目的は、カーテンエアバッグのタブ部間部分の垂れ下がり(または、垂れ下がりと断面内回転との両方でもよい)を抑制できる頭部保護エアバッグ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する、または上記目的を達成する本発明はつぎのとおりである。
(1) 上縁に間隔をおいて複数設けられたタブ部を有し該タブ部で車両のルーフ側部に取付けられるカーテンエアバッグと、
畳み状態にあるカーテンエアバッグをタブ部間で保持して車両ボデーに支持するクリップとを備え、
前記クリップが、クリップ中央部に形成されタブ部間部位でカーテンエアバッグに巻き付けられる巻付け部と、クリップ一端部に形成されたボデーへの固定部と、クリップ他端部に形成され該クリップ他端部以外のクリップ部分と係合する係合部と、カーテンエアバッグ展開力で破断する脆弱部と、を有し、1部材で形成されている、頭部保護エアバッグ装置。
(2) 前記クリップは、カーテンエアバッグの一部を当接させてカーテンエアバッグの回動を抑制する突起を有する(1)記載の頭部保護エアバッグ装置。
(3) 前記カーテンエアバッグの一部が、カーテンエアバッグの畳み方向の一端部、カーテンエアバッグの畳み方向の一端部に形成された切り欠き部、カーテンエアバッグの畳み方向折り返し部、の何れかからなるカーテンエアバッグの畳み方向端部である(2)記載の頭部保護エアバッグ装置。
(4) 前記カーテンエアバッグの一部が、カーテンエアバッグに形成された、前記クリップの突起が挿通される、長孔の縁部である(2)記載の頭部保護エアバッグ装置。
(5) 畳み状態にあるカーテンエアバッグを内包しカーテンエアバッグの展開力で破断する脆弱部が形成された布製カバーをさらに有しており、該カバーに切り欠き部または長孔からなるクリップ挿通部が形成されており、該クリップ挿通部に前記クリップが挿通している(1)または(2)記載の頭部保護エアバッグ装置。
【発明の効果】
【0006】
上記(1)の頭部保護エアバッグ装置によれば、クリップで、畳み状態にあるカーテンエアバッグをタブ部間で保持して車両ボデーに支持するので、カーテンエアバッグのタブ部間部分の垂れ下がりを抑制できる。その結果、カーテンエアバッグが垂れ下がった場合に生じるかもしれないカーテンエアバッグの周辺部品へのかみ込みも抑制できる。
また、クリップが、巻付け部、固定部、係合部、脆弱部を有する1部材で形成されているので、複数部材の組み合わせからなる場合に比べて、クリップによるカーテンエアバッグの車両ボデーへの取付けが容易であり、また、クリップ自体のコストも低い。
【0007】
上記(2)の頭部保護エアバッグ装置によれば、クリップがカーテンエアバッグの一部を当接させる突起を有するので、カーテンエアバッグの断面内における突起に当接する方向の回動が規制され、カーテンエアバッグの断面内回動が抑制される。その結果、カーテンエアバッグが断面内で回動した場合に生じるかもしれない、側面衝突時のカーテンエアバッグ展開方向のばらつきとそれによるカーテンエアバッグの周辺部品へのかみ込みが抑制され、カーテンエアバッグの展開、膨張を安定化させることができる。
【0008】
上記(3)の頭部保護エアバッグ装置によれば、カーテンエアバッグの一部が、カーテンエアバッグの畳み方向の一端部、カーテンエアバッグの畳み方向の一端縁に形成された切り欠き部、カーテンエアバッグの畳み方向折り返し部、の何れであってもよいので、突起の位置の自由度が高い。その結果、カーテンエアバッグの断面内回転を抑制するのに効果的なクリップ位置に突起を設けることができる。また、カーテンエアバッグの一部が、カーテンエアバッグの畳み方向の一端縁に形成された切り欠き部である場合は、クリップによって、カーテンエアバッグの軸方向移動も規制することができる。
【0009】
上記(4)の頭部保護エアバッグ装置によれば、カーテンエアバッグに形成された長孔にクリップの突起が挿通されるので、カーテンエアバッグは断面内の左右両方向に回動を抑制される。その結果、一方向のみの回動が抑制される場合に比べてより一層、カーテンエアバッグの断面内回動が抑制され、カーテンエアバッグ展開方向のばらつきとそれによるカーテンエアバッグの周辺部品へのかみ込みが抑制される。また、カーテンエアバッグの一部が、カーテンエアバッグに形成された長孔の縁部である場合は、クリップによって、カーテンエアバッグの軸方向移動も規制することができる。
【0010】
上記(5)の頭部保護エアバッグ装置によれば、カーテンエアバッグを内包するカバーをさらに備えており、カバーにはクリップ挿通部が形成されていて、クリップ挿通部をクリップが挿通しているので、カバーの回動がクリップによって抑制される。その結果、カバーとカーテンエアバッグとの接触摩擦によって、カーテンエアバッグの断面内回動も抑制され、カーテンエアバッグ展開方向のばらつきとそれによるカーテンエアバッグの周辺部品へのかみ込みが抑制される。また、上記(5)が上記(2)に従属する場合は、クリップによるカーテンエアバッグの断面内回動の抑制と、クリップによるカバーの回動の抑制を介してのカーテンエアバッグの断面内回動の抑制との両方の効果が得られ、上記(2)の効果のみの場合に比べてより一層、カーテンエアバッグ展開方向のばらつきとそれによるカーテンエアバッグの周辺部品へのかみ込みが抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の頭部保護エアバッグ装置を、図1〜図18を参照して説明する。
図1〜図14は本発明の実施例1(カバーなしカーテンエアバッグを有する頭部保護エアバッグ装置)を示し、図15〜図18は本発明の実施例2(カバー付きカーテンエアバッグを有する頭部保護エアバッグ装置)を示す。
本発明の何れの実施例にも適用できる部分には、本発明の全実施例にわたって同じ符号を付してある。なお、図中、UPは上方を示し、FRは車両前後方向の前方、OUTは車両幅方向外側、INは車両幅方向内側をそれぞれ示す。
【0012】
〔実施例1〕
〔実施例1の構成〕
本発明の実施例1の頭部保護エアバッグ装置10の構成を、図1〜図14を参照して説明する。
図1に示すように、本発明の頭部保護エアバッグ装置10は、カーテンエアバッグ(カーテンエアバッグ袋体)20と、クリップ30とを備えている。頭部保護エアバッグ装置10は、さらに、インフレータ60を備えている。
【0013】
図1〜図3に示すように、カーテンエアバッグ20は、非展開時には畳まれて、車両のルーフ側部(ルーフサイド、またはルーフサイドとフロントピラー、またはルーフサイドとフロントピラーとリアピラーを含む)に配置されて車両に取付けられ、車両の側面衝突時(側面衝突予知時である場合やロールオーバ検出時を含む)に、乗員と車両の側部との間の空間に展開膨張して主に乗員の頭部を保護する。頭部保護エアバッグ装置10の配置空間は、ボデー11のインナーパネル12とルーフライニング15との間で、ピラーガーニッシュ16とジャンプ台17より上部の空間に配置され、ボデー11のインナーパネル12に取付けられて固定固定される。
【0014】
カーテンエアバッグ20は布製である。非展開時には、カーテンエアバッグ20は畳まれている。カーテンエアバッグ20の畳み方は、折り畳み(蛇腹折り)、巻き畳み(ロール折り)、折り畳みと巻き畳み、の何れであってもよい。カーテンエアバッグ20は、車両の側面衝突時に、膨張用ガスが供給され、畳まれた状態から非畳みの状態に展開していき、乗員と車両の側部との間の空間に展開膨張し、乗員の頭部を保護する。
【0015】
インフレータ60は、側面衝突センサーが側面衝突を検知または予知した時や、ロールオーバセンサーがロールオーバを検知した時に、起爆して、膨張用ガスをカーテンエアバッグ20に供給し、カーテンエアバッグ20を展開、膨張させる。カーテンエアバッグ20は展開される時に、ルーフライニング15を車室内側に押して変形させ、変形されたルーフライニング15とピラーガーニッシュ16との間の隙間を通して下方へ、展開し膨張する。
【0016】
カーテンエアバッグ20は、その上縁に車両前後方向に互いに間隔をおいて、上方に突出する複数のタブ部21を有する。カーテンエアバッグ20は、タブ部21で車両のボデー11に固定される。
【0017】
図4に示すように、タブ部21は、通常、互いにかしめられる2枚の金属プレート22の間に挟まれており、タブ部21と金属プレート22に設けられた孔23にボルト14を通して、そのボルト14を車両のボデー11のインナーパネル12の背面に溶接付けしたナット13に、インナーパネル12の孔を通して、ねじ込むことにより、ボデー11に固定される。
【0018】
複数のタブ部21が車両前後方向に間隔をおいて設けられているため、畳み状態にあるカーテンエアバッグ20のタブ部21間部分20aは、自重で下方に撓もうとし(図19)かつ断面内で回動しようとする(図20)。とくに、たとえば、インフレータ60の下方でピラー61間部位(たとえば、BピラーとCピラーとの間の部位)などの、カーテンエアバッグ20のタブ部21間部分20aが長い場合は、カーテンエアバッグ20のタブ部21間部分20aの垂れ下がり量も比較的大きい。もしもカーテンエアバッグ20のタブ部21間部分20aが撓んだり回動すると、周辺部品にかみ込み(たとえば、ジャンプ台17とボデー11のインナーパネル12との間や、ルーフライニング15とウエザーストリップ19との間等にかみ込み)、カーテンエアバッグ20の展開にバラツキを生じるおそれがある。
【0019】
〔カーテンエアバッグのタブ部間部分の垂れ下がり抑制のためのクリップの導入と、クリップの構造〕
カーテンエアバッグ20のタブ部21間部分の、垂れ下がり(および/または断面内回動)を抑制するために、本発明では、図1〜図3に示すように、カーテンエアバッグ20は、タブ部21間部位で、クリップ30によって、保持されるとともに、ボデー11に支持される。クリップ30の配置位置は、たとえば、タブ部21間の丁度中央位置かその近傍、または、図1に示すように、隣接ピラー61間および/またはピラー61上方である。単純な構造の、かつ、低コストの、クリップ30で、カーテンエアバッグ20のタブ部21間部分の垂れ下がりを効果的に抑制するために、クリップ30は、望ましくは、以下の構造を採る。
【0020】
クリップ30は、可撓性のある材料、たとえば樹脂材で形成されており、望ましくは1部材で形成されている。ただし、別部材に形成されたものを一体に不分離に結合して1部材としたものであってもよい。
【0021】
クリップ30は、たとえば図5〜図8に示すように、クリップ中央部に形成されタブ部間部位で畳み状態にあるカーテンエアバッグ20に巻き付けられる巻付け部31と、クリップ一端部に形成されたボデー11への固定部32と、クリップ他端部に形成された第1の部分と該クリップ他端部以外のクリップ部分に形成され第1の部分と係合し得るた第2の部分とを含む係合部33と、カーテンエアバッグ20の展開力で破断する脆弱部34と、を有する。
【0022】
図5はクリップ30がカーテンエアバッグ20に巻き付けられる前の、ストレートに展開した状態を示しており、図6はクリップ30が畳み状態にあるカーテンエアバッグ20に巻き付けられた状態を示しており、図7はクリップ30が脆弱部34で破断してカーテンエアバッグ20が展開した状態を示している。
【0023】
巻付け部31は帯状に形成されている。
クリップ30は固定部32でボデーのインナーパネル12に固定される。固定部32は、ボデーインナーパネル12のクリップ用孔18に挿通する時には、挿通方向と直交する方向のサイズが弾性的に減少し、挿通後は元のサイズに戻ることを可能にする、内部空隙35を有している。このタイプの固定部32はクリップ30のボデー11への押し込み型のワンタッチ取付けを可能にし、取付けを容易にしている。
【0024】
係合部33は、望ましくは、一方向にのみ係合するワンウエイ係合構造を有する。図5〜図7は係合部33の一例を示す。ただし、係合部33はこの構造に限るものではない。図5〜図7の構造は、クリップ30の一端部を他端部より広幅に形成して、その広幅の一端部に狭幅他端部を挿通させることが可能な孔36を形成する。孔36に挿通される狭幅他端部の一面に凹凸歯37を形成し、孔36の、凹凸歯37対向面に、凹凸歯37が挿入方向に移動する時には凹凸歯37を挿入方向に通過させるが、凹凸歯37が反挿入方向に移動する時には凹凸歯37と係合して凹凸歯37の反挿入方向の移動を拘束する凸部38を形成する。凸部38の、凹凸歯37が挿入方向に移動する時に当たる面は、歯先端にいくほど凹凸歯37の挿入方向に傾斜するテーパ面に形成され、凸部38の、凹凸歯37が反挿入方向に移動する時に当たる面は、凹凸歯37が挿入方向の挿入方向とほぼ直交する面に形成される。この構造によって、巻付け部31を畳み状態のカーテンエアバッグ20に巻き付けた後、クリップ30の狭幅他端部をクリップの広幅一端部近傍の孔36に挿入し、狭幅他端部の挿入端を手で引張り挿入方向に移動させ、カーテンエアバッグ20を締め付けた後、クリップ30の狭幅他端部から手を放しても、係合部33が自動的にロックしてクリップ30の締め付けは弛まない。ワンウエイ係合構造は、クリップ30によるカーテンエアバッグ20の締め付けを容易にしている。また、ワンウエイ係合構造は、カーテンエアバッグ20の畳み状態のサイズが変わっても、共通に使用することを可能にしている。このようなワンウエイ係合構造をタイラップと呼ぶことがある。なお、係合部33の構造は、クリップ一体式のワンウエイ係合構造であれば、図5〜図7の構造に限るものではない。
【0025】
脆弱部34は、カーテンエアバッグ20の展開力で破断し、かつ、係合部33の係合が外れる力より小さい力で破断する。脆弱部34は、たとえば、図5に示すようなノッチ(脆弱部と同じであるため、ノッチにも符号34を付す)からなる。ノッチ34は、図6に示すように、クリップ30の巻きの外側にあってもよいし、図13に示すように、巻きの内側にあってもよい。図7は、クリップ30が脆弱部34で破断し、カーテンエアバッグ20が展開、膨張した状態を示している。
脆弱部34がカーテンエアバッグ20の展開力で破断するため、クリップ30によるカーテンエアバッグ20の保持が、カーテンエアバッグ20の展開の支障にならない。
【0026】
〔クリップ30によるカーテンエアバッグ20のタブ部21間部分の周方向の姿勢、位置の規制〕
図5〜図9に示すように、クリップ30は、カーテンエアバッグ20の一部を当接させてカーテンエアバッグ20の断面内の回動を抑制する突起39を有する。突起39は単純突起(図9の内方突出部40のみからなる突起)であってもよいし、L字状突起(図5〜図8の突起)であってもよい。以下に、突起39の種々の例を挙げる。
【0027】
〔単純突起〕
突起39が単純突起の場合は、図9に示すように、突起39は、クリップ30のカーテンエアバッグ20への巻付けの内側に向かって延びる内方突出部40を有する。クリップ30の内方突出部40には、カーテンエアバッグ20の一部が当接し、カーテンエアバッグ20のタブ部21間部分の周方向の姿勢、位置が規制される。
【0028】
〔L字状突起〕
図5〜図8に示すように、突起39は、内方突出部40の先端で内方突出部40に対してほぼ直角に折れ曲がり、折れ曲がった後係合部33の凹凸歯37側に向かってクリップ30の長手方向に延びる長手方向延設部41を有するL字状構造を有していてもよい。
突起39が長手方向延設部41を有する場合は、巻付け部31と長手方向延設部41との間に隙間が形成され、そこにカーテンエアバッグ20の一部が差し込まれ、カーテンエアバッグ20の一部が内方突出部40に当接し、カーテンエアバッグ20のタブ部21間部分の周方向の姿勢、位置が規制される。
【0029】
〔複数の突起〕
図10に示すように、1つのクリップ30に複数の突起39がクリップ長手方向に互いに間隔をおいて形成されてもよい。これによって、カーテンエアバッグ20の複数の角度位置に対して対応することができる。
【0030】
〔突起に当接されるカーテンエアバッグ部分がカーテンエアバッグの端縁である例〕
図9に示すように、突起39に当接される、カーテンエアバッグ20部分は、カーテンエアバッグ20の端縁20bであってもよい。この場合は、端縁20bが突起39に当接される方向には、カーテンエアバッグ20の回動は規制される。端縁20bが突起39から離れる方向には、カーテンエアバッグ20の回動は規制されず、端縁20bが突起39から離れる方向へのカーテンエアバッグ20の回動の規制はカーテンエアバッグ20とクリップ30との摩擦によることになる。
【0031】
〔突起に当接される、カーテンエアバッグ部分がカーテンエアバッグの端部の切り欠きである例〕
図8に示すように、カーテンエアバッグ20の端部に切り欠き26が形成され、切り欠き26に突起39が嵌められる。そして、図6に示すように、突起39に当接される、カーテンエアバッグ20の一部は、カーテンエアバッグ20の端部の切り欠き26の、カーテンエアバッグの長手方向に延びる縁26aからなる。この場合は、切り欠き26の縁26aが突起39に当接される方向には、カーテンエアバッグ20の回動は規制される。切り欠き26の縁26aが突起39から離れる方向には、カーテンエアバッグ20の回動は規制されず、切り欠き26の縁26aが突起39から離れる方向へのカーテンエアバッグ20の回動の規制はカーテンエアバッグ20とクリップ30との摩擦によることになる。
カーテンエアバッグ20の端部に切り欠き26が形成される場合は、切り欠き26の、カーテンエアバッグの周方向に延びる縁26bが突起39とカーテンエアバッグ20の長手方向に係合し、突起39はカーテンエアバッグ20がカーテンエアバッグ長手方向に移動するのを規制する。よって、突起39が、周方向の位置決めとなるとともに、カーテンエアバッグ20の長手方向の位置決めとなる。
【0032】
〔突起に当接される、カーテンエアバッグ部分がカーテンエアバッグの折り返し部である例〕
図11に示すように、クリップ30に、カーテンエアバッグ20の折り返し部24に対応する部位に、突起39を設けて、カーテンエアバッグ20の折り返し部24を突起39に係合させることにより、カーテンエアバッグ20の周方向位置を規制してもよい。その場合は、突起39に当接される、カーテンエアバッグ20の一部は、カーテンエアバッグ20の折り返し部24となる。
【0033】
〔突起に当接される、カーテンエアバッグ部分がカーテンエアバッグの長孔の縁である例〕
図14に示すように、カーテンエアバッグ20の端部かその近傍部に、長孔25が形成される。この長孔25はカーテンエアバッグ20の長手方向(車両前後方向)に延びる。突起39は長孔25に挿通され、内方突出部40の部位で長孔25の縁と係合する。
この場合は、カーテンエアバッグ20が断面内で左右何れの方向に回動しようとしても、突起39が長孔25の長手方向縁25aに係合するので、カーテンエアバッグ20の断面内の左右両方向の回動が規制される。また、カーテンエアバッグ20が車両長手方向に位置ずれしようとしても、突起39が長孔25の長手方向縁25aと直交する周方向縁25bに係合するので、カーテンエアバッグ20の車両長手方向の移動または位置ずれが規制される。
【0034】
〔クリップ30の係合部33の変形例〕
クリップ30は、タイプラップ以外の係合部33の構造をとってもよい。図12はその一例を示すものである。クリップ30の巻付け部31を間にして隔たったクリップ両端部の対向面に、一方向(対向面に平行方向で巻付け部31の巻付け半径が小さくなる方向)には移動できるが反対方向には係合する、のこ歯形状部42、43を形成する。クリップ両端部が対向面と直交する方向に互いに離れる方向に移動すると、のこ歯形状部42、43が離れて係合が外れるが、畳んだ状態にあるカーテンエアバッグ20から、内側から押されているので、のこ歯形状部42、43が外れることはない。
上記の実施例1の構成は、本発明の他の実施例(実施例2)にも共通に適用され得る。
【0035】
〔実施例1の作用〕
本発明の実施例1の作用、効果はつぎのとおりである。
まず、クリップ30で、畳み状態にあるカーテンエアバッグ20をタブ部21間で保持して車両ボデーに支持するので、カーテンエアバッグ20のタブ部21間部分の自重による垂れ下がりを抑制できる。その結果、カーテンエアバッグ20が垂れ下がった場合に生じるかもしれないカーテンエアバッグのタブ部21間部分の周辺部品へのかみ込みを抑制できる。
【0036】
また、クリップ30が、巻付け部31、固定部32、係合部33、脆弱部34を有する1部材で形成されているので、複数部材の組み合わせからなる場合に比べて、クリップ30によるカーテンエアバッグ20の車両ボデーへの取付けが容易である。また、クリップ30自体のコストも低い。
【0037】
また、クリップ30がカーテンエアバッグ20の一部を当接させる突起39を有するので、カーテンエアバッグ20の断面内における突起39に当接する方向の回動が規制され、カーテンエアバッグ20の断面内回動が抑制される。その結果、カーテンエアバッグ20が断面内で回動した場合に生じるかもしれない、側面衝突時のカーテンエアバッグ展開方向のばらつきとそれによるカーテンエアバッグ20の周辺部品へのかみ込みが抑制され、カーテンエアバッグ20の展開、膨張を安定化させることができる。
【0038】
また、突起39に当接するカーテンエアバッグ20の一部が、カーテンエアバッグ20の畳み方向の一端部、カーテンエアバッグの畳み方向の一端縁に形成された切り欠き部26、カーテンエアバッグ20の畳み方向折り返し部24、の何れであってもよいので、突起39の位置の自由度が高い。その結果、カーテンエアバッグ20の断面内回転を抑制するのに最も効果的なクリップ位置に突起39を設けることができる。また、カーテンエアバッグ20の一部が、カーテンエアバッグ20の畳み方向の一端縁に形成された切り欠き部26である場合は、クリップ30によって、カーテンエアバッグ20の軸方向移動も規制することができる。
【0039】
また、カーテンエアバッグ20に形成された長孔25にクリップ30の突起39が挿通される場合は、カーテンエアバッグ20は断面内の左右両方向に回動を抑制される。その結果、一方向のみの回動が抑制される場合に比べてより一層、カーテンエアバッグ20の断面内回動が抑制され、カーテンエアバッグ展開方向のばらつきとそれによるカーテンエアバッグ20の周辺部品へのかみ込みが抑制される。また、カーテンエアバッグ20の一部が、カーテンエアバッグ20に形成された長孔25の縁部である場合は、クリップ30によって、カーテンエアバッグ20の軸方向移動も規制することができる。
上記の実施例1の作用、効果は、本発明の他の実施例の作用、効果にも適用される。
【0040】
〔実施例2〕 〔実施例2の構成〕
本発明の実施例の頭部保護エアバッグ装置10は、図15〜図18に示すように、畳み状態にあるカーテンエアバッグ20を内包しカーテンエアバッグ20の展開力で破断する脆弱部51が形成された布製カバー50を、さらに有している。カバー50は、畳み状態にあるカーテンエアバッグ20を、カーテンエアバッグ20の全長にわたって包んでもよいし、あるいは、カーテンエアバッグ20の長手方向の一部を包んでもよい。カバー50は、たとえば布製である。脆弱部51は、たとえばミシン目などからなり、カーテンエアバッグ20の展開力で破断する。55はカバー縫合部を示す。
【0041】
カバー50には、カバー50の端部に形成した切り欠き部53(図16)または畳み状態のカーテンエアバッグ20が解けないように保持するカバー50に形成した長孔54(図17)からなるクリップ挿通部52が形成されており、クリップ30の突起39がクリップ挿通部52を挿通している。クリップ30はカバー50の外側で、固定部32をボデー11のインナーパネル12のクリップ用孔18に差し込むことによって、ボデー11のインナーパネル12に固定される。
【0042】
クリップ挿通部52が切り欠き部53または長孔54からなるので、カバー50は、その周方向および長手方向に、クリップ30によって移動を規制され位置決めされる。カバー50が移動を抑制され位置決めされると、カバー50の内面と畳み状態のカーテンエアバッグ20の外面との摩擦によって、カーテンエアバッグ20も周方向および長手方向に移動を規制され位置決めされる。
【0043】
カーテンエアバッグ20の周方向位置規制は、つぎの何れによって行ってもよい。
(イ)クリップ30によってカバー50のみを周方向に位置規制し、カバー50の内面と畳み状態のカーテンエアバッグ20の外面との摩擦によって、結果的にカーテンエアバッグ20を周方向に位置規制する。
(ロ)クリップ30によってカーテンエアバッグ20とカバー50を周方向に同時に位置規制する。
【0044】
〔実施例2の作用〕
実施例2の頭部保護エアバッグ装置10が、カーテンエアバッグ20を内包するカバー50をさらに備えており、カバー50にはクリップ挿通部52が形成されていて、クリップ挿通部52をクリップ30の突起39が挿通しているので、カバー50の回動がクリップ30によって抑制される場合(上記(イ)の場合)は、カバー50とカーテンエアバッグ20との接触摩擦によって、カーテンエアバッグ20の断面内回動も抑制され、カーテンエアバッグ展開方向のばらつきとそれによるカーテンエアバッグ20の周辺部品へのかみ込みが抑制される。
【0045】
クリップ30によるカバー50の回動抑制とクリップ30によるカーテンエアバッグ20の回動抑制との両方が行われる場合(上記(ロ)の場合)は、クリップ30によるカーテンエアバッグ20の回動抑制のみが行われる場合(上記(イ)の場合)に比べてより一層、カーテンエアバッグ展開方向のばらつきとそれによるカーテンエアバッグ20の周辺部品へのかみ込みが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施例1の頭部保護エアバッグ装置の、カーテンエアバッグ非展開状態における、全体側面図である(図1〜図14は実施例2のカーテンエアバッグ部分にも適用可)。
【図2】本発明の実施例1の頭部保護エアバッグ装置のクリップによるカーテンエアバッグ支持部とその近傍の斜視図である。
【図3】図2の、3−3線拡大断面図である。
【図4】図2の、4−4線拡大断面図である。
【図5】図1のクリップの、直線状に展開した状態での、側面図である。
【図6】図1の、クリップとカーテンエアバッグの、カーテンエアバッグが畳み時での、断面図である。
【図7】図1の、クリップとカーテンエアバッグの、カーテンエアバッグが展開時での、断面図である。
【図8】直線状に展開した状態のクリップと、該クリップが嵌められる切り欠き部を有するカーテンエアバッグ(畳み時)の、斜視図である。
【図9】畳み時のカーテンエアバッグと、カーテンエアバッグの端縁が当接される突起(内方突出部のみを有する)をもつクリップの、拡大断面図である。
【図10】畳み時のカーテンエアバッグと、カーテンエアバッグの端部または切り欠き部が当接される突起を複数もつクリップの、拡大断面図である。
【図11】畳み時のカーテンエアバッグと、カーテンエアバッグの折り返し部が当接される突起をもつクリップの、拡大断面図である。
【図12】畳み時のカーテンエアバッグと、のこ歯状の係合部をもつクリップの、拡大断面図である。
【図13】畳み時のカーテンエアバッグと、配置を変更した脆弱部をもつクリップの、拡大断面図である。
【図14】(イ)は長孔をもつ畳み時のカーテンエアバッグの斜視図であり、(ロ)は(イ)のA−A線断面図であり、畳み時のカーテンエアバッグとその長孔に差し込まれるクリップの断面図である。
【図15】本発明の実施例2の頭部保護エアバッグ装置の、畳み時のカーテンエアバッグと、カーテンエアバッグを内包するカバーと、クリップの、拡大断面図である。
【図16】畳み時のカーテンエアバッグと、カーテンエアバッグを内包する、切り欠きを有するカバーの、斜視図である。
【図17】畳み時のカーテンエアバッグと、カーテンエアバッグを内包する、長孔を有するカバーの、斜視図である。
【図18】図17の、カーテンエアバッグと、カーテンエアバッグを内包する、長孔を有するカバーの、18−18線拡大断面図である。
【図19】タブ部間部分が垂れ下がった、従来の畳み状態のカーテンエアバッグの側面図である。
【図20】図19の20−20線拡大断面図である。
【符号の説明】
【0047】
10 頭部保護エアバッグ装置
11 ボデー
12 インナーパネル
13 ナット
14 ボルト
15 ルーフライニング
16 ピラーガーニッシュ
17 ジャンプ台
18 クリップ用孔
19 ウエザーストリップ
20 カーテンエアバッグ
20a カーテンエアバッグのタブ部間部分
20b カーテンエアバッグの端部
21 タブ部 22 金属プレート
23 孔
24 折り返し部
25 長孔
25a 長手方向縁
25b 周方向縁
26 切り欠き
26a 長手方向縁
26b 周方向縁
30 クリップ
31 巻付け部
32 固定部
33 係合部
34 脆弱部
35 内部空隙
36 孔
37 凹凸歯
38 凸部
39 突起
40 内方突出部
41 長手方向延設部
42、43 のこ歯
50 カバー
51 (カバーの)脆弱部
52 クリップ挿通部
53 (カバーの)切り欠き部
54 (カバーの長孔)
55 (カバーの)縫合部
60 インフレータ
61 ピラー
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常時は車両のルーフ側部に畳み(折り畳み、巻き畳み、折り畳みと巻き畳み、の何れの畳み方でもよい、以下、同じ)状態で収納され車両側面衝突時に下方に展開して乗員の頭部を保護するカーテンエアバッグを備えた頭部保護エアバッグ装置に関し、とくに畳み状態のカーテンエアバッグの取付け部間部分の垂れ下がりと回動を抑制した頭部保護エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、カーテンエアバッグ上縁部に車両前後方向に互いに間隔をおいて突出形成した複数のタブ部(取付け部)を、回り止め手段(ブラケット)を介してボデー(ルーフサイドレール)側面に固定した頭部保護エアバッグ装置を開示している。
【特許文献1】特許第2920291号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の頭部保護エアバッグ装置では、カーテンエアバッグの取付けピッチ(タブ部2間間隔)が大きい場合に、図19に示すように、畳み状態のカーテンエアバッグ1のタブ部間部分1aが垂れ下がったり、図20に示すように、畳み状態のカーテンエアバッグ1が断面内で左右方向に回動する。図19で、dは垂れ下がり量を示す。その結果、カーテンエアバッグの巻きの折り返し部3が周辺部品に、たとえば、ピラーガーニッシュ16の上端部に一体形成されたジャンプ台17とボデー11のインナーパネル12との間や、ルーフライニング15とウエザーストリップ19との間等にかみ込み、車両側面衝突時のカーテンエアバッグ1の展開挙動にバラツキや不具合がでる可能性がある。
【0004】
本発明の目的は、カーテンエアバッグのタブ部間部分の垂れ下がり(または、垂れ下がりと断面内回転との両方でもよい)を抑制できる頭部保護エアバッグ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する、または上記目的を達成する本発明はつぎのとおりである。
(1) 上縁に間隔をおいて複数設けられたタブ部を有し該タブ部で車両のルーフ側部に取付けられるカーテンエアバッグと、
畳み状態にあるカーテンエアバッグをタブ部間で保持して車両ボデーに支持するクリップとを備え、
前記クリップが、クリップ中央部に形成されタブ部間部位でカーテンエアバッグに巻き付けられる巻付け部と、クリップ一端部に形成されたボデーへの固定部と、クリップ他端部に形成され該クリップ他端部以外のクリップ部分と係合する係合部と、カーテンエアバッグ展開力で破断する脆弱部と、を有し、1部材で形成されている、頭部保護エアバッグ装置。
(2) 前記クリップは、カーテンエアバッグの一部を当接させてカーテンエアバッグの回動を抑制する突起を有する(1)記載の頭部保護エアバッグ装置。
(3) 前記カーテンエアバッグの一部が、カーテンエアバッグの畳み方向の一端部、カーテンエアバッグの畳み方向の一端部に形成された切り欠き部、カーテンエアバッグの畳み方向折り返し部、の何れかからなるカーテンエアバッグの畳み方向端部である(2)記載の頭部保護エアバッグ装置。
(4) 前記カーテンエアバッグの一部が、カーテンエアバッグに形成された、前記クリップの突起が挿通される、長孔の縁部である(2)記載の頭部保護エアバッグ装置。
(5) 畳み状態にあるカーテンエアバッグを内包しカーテンエアバッグの展開力で破断する脆弱部が形成された布製カバーをさらに有しており、該カバーに切り欠き部または長孔からなるクリップ挿通部が形成されており、該クリップ挿通部に前記クリップが挿通している(1)または(2)記載の頭部保護エアバッグ装置。
【発明の効果】
【0006】
上記(1)の頭部保護エアバッグ装置によれば、クリップで、畳み状態にあるカーテンエアバッグをタブ部間で保持して車両ボデーに支持するので、カーテンエアバッグのタブ部間部分の垂れ下がりを抑制できる。その結果、カーテンエアバッグが垂れ下がった場合に生じるかもしれないカーテンエアバッグの周辺部品へのかみ込みも抑制できる。
また、クリップが、巻付け部、固定部、係合部、脆弱部を有する1部材で形成されているので、複数部材の組み合わせからなる場合に比べて、クリップによるカーテンエアバッグの車両ボデーへの取付けが容易であり、また、クリップ自体のコストも低い。
【0007】
上記(2)の頭部保護エアバッグ装置によれば、クリップがカーテンエアバッグの一部を当接させる突起を有するので、カーテンエアバッグの断面内における突起に当接する方向の回動が規制され、カーテンエアバッグの断面内回動が抑制される。その結果、カーテンエアバッグが断面内で回動した場合に生じるかもしれない、側面衝突時のカーテンエアバッグ展開方向のばらつきとそれによるカーテンエアバッグの周辺部品へのかみ込みが抑制され、カーテンエアバッグの展開、膨張を安定化させることができる。
【0008】
上記(3)の頭部保護エアバッグ装置によれば、カーテンエアバッグの一部が、カーテンエアバッグの畳み方向の一端部、カーテンエアバッグの畳み方向の一端縁に形成された切り欠き部、カーテンエアバッグの畳み方向折り返し部、の何れであってもよいので、突起の位置の自由度が高い。その結果、カーテンエアバッグの断面内回転を抑制するのに効果的なクリップ位置に突起を設けることができる。また、カーテンエアバッグの一部が、カーテンエアバッグの畳み方向の一端縁に形成された切り欠き部である場合は、クリップによって、カーテンエアバッグの軸方向移動も規制することができる。
【0009】
上記(4)の頭部保護エアバッグ装置によれば、カーテンエアバッグに形成された長孔にクリップの突起が挿通されるので、カーテンエアバッグは断面内の左右両方向に回動を抑制される。その結果、一方向のみの回動が抑制される場合に比べてより一層、カーテンエアバッグの断面内回動が抑制され、カーテンエアバッグ展開方向のばらつきとそれによるカーテンエアバッグの周辺部品へのかみ込みが抑制される。また、カーテンエアバッグの一部が、カーテンエアバッグに形成された長孔の縁部である場合は、クリップによって、カーテンエアバッグの軸方向移動も規制することができる。
【0010】
上記(5)の頭部保護エアバッグ装置によれば、カーテンエアバッグを内包するカバーをさらに備えており、カバーにはクリップ挿通部が形成されていて、クリップ挿通部をクリップが挿通しているので、カバーの回動がクリップによって抑制される。その結果、カバーとカーテンエアバッグとの接触摩擦によって、カーテンエアバッグの断面内回動も抑制され、カーテンエアバッグ展開方向のばらつきとそれによるカーテンエアバッグの周辺部品へのかみ込みが抑制される。また、上記(5)が上記(2)に従属する場合は、クリップによるカーテンエアバッグの断面内回動の抑制と、クリップによるカバーの回動の抑制を介してのカーテンエアバッグの断面内回動の抑制との両方の効果が得られ、上記(2)の効果のみの場合に比べてより一層、カーテンエアバッグ展開方向のばらつきとそれによるカーテンエアバッグの周辺部品へのかみ込みが抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の頭部保護エアバッグ装置を、図1〜図18を参照して説明する。
図1〜図14は本発明の実施例1(カバーなしカーテンエアバッグを有する頭部保護エアバッグ装置)を示し、図15〜図18は本発明の実施例2(カバー付きカーテンエアバッグを有する頭部保護エアバッグ装置)を示す。
本発明の何れの実施例にも適用できる部分には、本発明の全実施例にわたって同じ符号を付してある。なお、図中、UPは上方を示し、FRは車両前後方向の前方、OUTは車両幅方向外側、INは車両幅方向内側をそれぞれ示す。
【0012】
〔実施例1〕
〔実施例1の構成〕
本発明の実施例1の頭部保護エアバッグ装置10の構成を、図1〜図14を参照して説明する。
図1に示すように、本発明の頭部保護エアバッグ装置10は、カーテンエアバッグ(カーテンエアバッグ袋体)20と、クリップ30とを備えている。頭部保護エアバッグ装置10は、さらに、インフレータ60を備えている。
【0013】
図1〜図3に示すように、カーテンエアバッグ20は、非展開時には畳まれて、車両のルーフ側部(ルーフサイド、またはルーフサイドとフロントピラー、またはルーフサイドとフロントピラーとリアピラーを含む)に配置されて車両に取付けられ、車両の側面衝突時(側面衝突予知時である場合やロールオーバ検出時を含む)に、乗員と車両の側部との間の空間に展開膨張して主に乗員の頭部を保護する。頭部保護エアバッグ装置10の配置空間は、ボデー11のインナーパネル12とルーフライニング15との間で、ピラーガーニッシュ16とジャンプ台17より上部の空間に配置され、ボデー11のインナーパネル12に取付けられて固定固定される。
【0014】
カーテンエアバッグ20は布製である。非展開時には、カーテンエアバッグ20は畳まれている。カーテンエアバッグ20の畳み方は、折り畳み(蛇腹折り)、巻き畳み(ロール折り)、折り畳みと巻き畳み、の何れであってもよい。カーテンエアバッグ20は、車両の側面衝突時に、膨張用ガスが供給され、畳まれた状態から非畳みの状態に展開していき、乗員と車両の側部との間の空間に展開膨張し、乗員の頭部を保護する。
【0015】
インフレータ60は、側面衝突センサーが側面衝突を検知または予知した時や、ロールオーバセンサーがロールオーバを検知した時に、起爆して、膨張用ガスをカーテンエアバッグ20に供給し、カーテンエアバッグ20を展開、膨張させる。カーテンエアバッグ20は展開される時に、ルーフライニング15を車室内側に押して変形させ、変形されたルーフライニング15とピラーガーニッシュ16との間の隙間を通して下方へ、展開し膨張する。
【0016】
カーテンエアバッグ20は、その上縁に車両前後方向に互いに間隔をおいて、上方に突出する複数のタブ部21を有する。カーテンエアバッグ20は、タブ部21で車両のボデー11に固定される。
【0017】
図4に示すように、タブ部21は、通常、互いにかしめられる2枚の金属プレート22の間に挟まれており、タブ部21と金属プレート22に設けられた孔23にボルト14を通して、そのボルト14を車両のボデー11のインナーパネル12の背面に溶接付けしたナット13に、インナーパネル12の孔を通して、ねじ込むことにより、ボデー11に固定される。
【0018】
複数のタブ部21が車両前後方向に間隔をおいて設けられているため、畳み状態にあるカーテンエアバッグ20のタブ部21間部分20aは、自重で下方に撓もうとし(図19)かつ断面内で回動しようとする(図20)。とくに、たとえば、インフレータ60の下方でピラー61間部位(たとえば、BピラーとCピラーとの間の部位)などの、カーテンエアバッグ20のタブ部21間部分20aが長い場合は、カーテンエアバッグ20のタブ部21間部分20aの垂れ下がり量も比較的大きい。もしもカーテンエアバッグ20のタブ部21間部分20aが撓んだり回動すると、周辺部品にかみ込み(たとえば、ジャンプ台17とボデー11のインナーパネル12との間や、ルーフライニング15とウエザーストリップ19との間等にかみ込み)、カーテンエアバッグ20の展開にバラツキを生じるおそれがある。
【0019】
〔カーテンエアバッグのタブ部間部分の垂れ下がり抑制のためのクリップの導入と、クリップの構造〕
カーテンエアバッグ20のタブ部21間部分の、垂れ下がり(および/または断面内回動)を抑制するために、本発明では、図1〜図3に示すように、カーテンエアバッグ20は、タブ部21間部位で、クリップ30によって、保持されるとともに、ボデー11に支持される。クリップ30の配置位置は、たとえば、タブ部21間の丁度中央位置かその近傍、または、図1に示すように、隣接ピラー61間および/またはピラー61上方である。単純な構造の、かつ、低コストの、クリップ30で、カーテンエアバッグ20のタブ部21間部分の垂れ下がりを効果的に抑制するために、クリップ30は、望ましくは、以下の構造を採る。
【0020】
クリップ30は、可撓性のある材料、たとえば樹脂材で形成されており、望ましくは1部材で形成されている。ただし、別部材に形成されたものを一体に不分離に結合して1部材としたものであってもよい。
【0021】
クリップ30は、たとえば図5〜図8に示すように、クリップ中央部に形成されタブ部間部位で畳み状態にあるカーテンエアバッグ20に巻き付けられる巻付け部31と、クリップ一端部に形成されたボデー11への固定部32と、クリップ他端部に形成された第1の部分と該クリップ他端部以外のクリップ部分に形成され第1の部分と係合し得るた第2の部分とを含む係合部33と、カーテンエアバッグ20の展開力で破断する脆弱部34と、を有する。
【0022】
図5はクリップ30がカーテンエアバッグ20に巻き付けられる前の、ストレートに展開した状態を示しており、図6はクリップ30が畳み状態にあるカーテンエアバッグ20に巻き付けられた状態を示しており、図7はクリップ30が脆弱部34で破断してカーテンエアバッグ20が展開した状態を示している。
【0023】
巻付け部31は帯状に形成されている。
クリップ30は固定部32でボデーのインナーパネル12に固定される。固定部32は、ボデーインナーパネル12のクリップ用孔18に挿通する時には、挿通方向と直交する方向のサイズが弾性的に減少し、挿通後は元のサイズに戻ることを可能にする、内部空隙35を有している。このタイプの固定部32はクリップ30のボデー11への押し込み型のワンタッチ取付けを可能にし、取付けを容易にしている。
【0024】
係合部33は、望ましくは、一方向にのみ係合するワンウエイ係合構造を有する。図5〜図7は係合部33の一例を示す。ただし、係合部33はこの構造に限るものではない。図5〜図7の構造は、クリップ30の一端部を他端部より広幅に形成して、その広幅の一端部に狭幅他端部を挿通させることが可能な孔36を形成する。孔36に挿通される狭幅他端部の一面に凹凸歯37を形成し、孔36の、凹凸歯37対向面に、凹凸歯37が挿入方向に移動する時には凹凸歯37を挿入方向に通過させるが、凹凸歯37が反挿入方向に移動する時には凹凸歯37と係合して凹凸歯37の反挿入方向の移動を拘束する凸部38を形成する。凸部38の、凹凸歯37が挿入方向に移動する時に当たる面は、歯先端にいくほど凹凸歯37の挿入方向に傾斜するテーパ面に形成され、凸部38の、凹凸歯37が反挿入方向に移動する時に当たる面は、凹凸歯37が挿入方向の挿入方向とほぼ直交する面に形成される。この構造によって、巻付け部31を畳み状態のカーテンエアバッグ20に巻き付けた後、クリップ30の狭幅他端部をクリップの広幅一端部近傍の孔36に挿入し、狭幅他端部の挿入端を手で引張り挿入方向に移動させ、カーテンエアバッグ20を締め付けた後、クリップ30の狭幅他端部から手を放しても、係合部33が自動的にロックしてクリップ30の締め付けは弛まない。ワンウエイ係合構造は、クリップ30によるカーテンエアバッグ20の締め付けを容易にしている。また、ワンウエイ係合構造は、カーテンエアバッグ20の畳み状態のサイズが変わっても、共通に使用することを可能にしている。このようなワンウエイ係合構造をタイラップと呼ぶことがある。なお、係合部33の構造は、クリップ一体式のワンウエイ係合構造であれば、図5〜図7の構造に限るものではない。
【0025】
脆弱部34は、カーテンエアバッグ20の展開力で破断し、かつ、係合部33の係合が外れる力より小さい力で破断する。脆弱部34は、たとえば、図5に示すようなノッチ(脆弱部と同じであるため、ノッチにも符号34を付す)からなる。ノッチ34は、図6に示すように、クリップ30の巻きの外側にあってもよいし、図13に示すように、巻きの内側にあってもよい。図7は、クリップ30が脆弱部34で破断し、カーテンエアバッグ20が展開、膨張した状態を示している。
脆弱部34がカーテンエアバッグ20の展開力で破断するため、クリップ30によるカーテンエアバッグ20の保持が、カーテンエアバッグ20の展開の支障にならない。
【0026】
〔クリップ30によるカーテンエアバッグ20のタブ部21間部分の周方向の姿勢、位置の規制〕
図5〜図9に示すように、クリップ30は、カーテンエアバッグ20の一部を当接させてカーテンエアバッグ20の断面内の回動を抑制する突起39を有する。突起39は単純突起(図9の内方突出部40のみからなる突起)であってもよいし、L字状突起(図5〜図8の突起)であってもよい。以下に、突起39の種々の例を挙げる。
【0027】
〔単純突起〕
突起39が単純突起の場合は、図9に示すように、突起39は、クリップ30のカーテンエアバッグ20への巻付けの内側に向かって延びる内方突出部40を有する。クリップ30の内方突出部40には、カーテンエアバッグ20の一部が当接し、カーテンエアバッグ20のタブ部21間部分の周方向の姿勢、位置が規制される。
【0028】
〔L字状突起〕
図5〜図8に示すように、突起39は、内方突出部40の先端で内方突出部40に対してほぼ直角に折れ曲がり、折れ曲がった後係合部33の凹凸歯37側に向かってクリップ30の長手方向に延びる長手方向延設部41を有するL字状構造を有していてもよい。
突起39が長手方向延設部41を有する場合は、巻付け部31と長手方向延設部41との間に隙間が形成され、そこにカーテンエアバッグ20の一部が差し込まれ、カーテンエアバッグ20の一部が内方突出部40に当接し、カーテンエアバッグ20のタブ部21間部分の周方向の姿勢、位置が規制される。
【0029】
〔複数の突起〕
図10に示すように、1つのクリップ30に複数の突起39がクリップ長手方向に互いに間隔をおいて形成されてもよい。これによって、カーテンエアバッグ20の複数の角度位置に対して対応することができる。
【0030】
〔突起に当接されるカーテンエアバッグ部分がカーテンエアバッグの端縁である例〕
図9に示すように、突起39に当接される、カーテンエアバッグ20部分は、カーテンエアバッグ20の端縁20bであってもよい。この場合は、端縁20bが突起39に当接される方向には、カーテンエアバッグ20の回動は規制される。端縁20bが突起39から離れる方向には、カーテンエアバッグ20の回動は規制されず、端縁20bが突起39から離れる方向へのカーテンエアバッグ20の回動の規制はカーテンエアバッグ20とクリップ30との摩擦によることになる。
【0031】
〔突起に当接される、カーテンエアバッグ部分がカーテンエアバッグの端部の切り欠きである例〕
図8に示すように、カーテンエアバッグ20の端部に切り欠き26が形成され、切り欠き26に突起39が嵌められる。そして、図6に示すように、突起39に当接される、カーテンエアバッグ20の一部は、カーテンエアバッグ20の端部の切り欠き26の、カーテンエアバッグの長手方向に延びる縁26aからなる。この場合は、切り欠き26の縁26aが突起39に当接される方向には、カーテンエアバッグ20の回動は規制される。切り欠き26の縁26aが突起39から離れる方向には、カーテンエアバッグ20の回動は規制されず、切り欠き26の縁26aが突起39から離れる方向へのカーテンエアバッグ20の回動の規制はカーテンエアバッグ20とクリップ30との摩擦によることになる。
カーテンエアバッグ20の端部に切り欠き26が形成される場合は、切り欠き26の、カーテンエアバッグの周方向に延びる縁26bが突起39とカーテンエアバッグ20の長手方向に係合し、突起39はカーテンエアバッグ20がカーテンエアバッグ長手方向に移動するのを規制する。よって、突起39が、周方向の位置決めとなるとともに、カーテンエアバッグ20の長手方向の位置決めとなる。
【0032】
〔突起に当接される、カーテンエアバッグ部分がカーテンエアバッグの折り返し部である例〕
図11に示すように、クリップ30に、カーテンエアバッグ20の折り返し部24に対応する部位に、突起39を設けて、カーテンエアバッグ20の折り返し部24を突起39に係合させることにより、カーテンエアバッグ20の周方向位置を規制してもよい。その場合は、突起39に当接される、カーテンエアバッグ20の一部は、カーテンエアバッグ20の折り返し部24となる。
【0033】
〔突起に当接される、カーテンエアバッグ部分がカーテンエアバッグの長孔の縁である例〕
図14に示すように、カーテンエアバッグ20の端部かその近傍部に、長孔25が形成される。この長孔25はカーテンエアバッグ20の長手方向(車両前後方向)に延びる。突起39は長孔25に挿通され、内方突出部40の部位で長孔25の縁と係合する。
この場合は、カーテンエアバッグ20が断面内で左右何れの方向に回動しようとしても、突起39が長孔25の長手方向縁25aに係合するので、カーテンエアバッグ20の断面内の左右両方向の回動が規制される。また、カーテンエアバッグ20が車両長手方向に位置ずれしようとしても、突起39が長孔25の長手方向縁25aと直交する周方向縁25bに係合するので、カーテンエアバッグ20の車両長手方向の移動または位置ずれが規制される。
【0034】
〔クリップ30の係合部33の変形例〕
クリップ30は、タイプラップ以外の係合部33の構造をとってもよい。図12はその一例を示すものである。クリップ30の巻付け部31を間にして隔たったクリップ両端部の対向面に、一方向(対向面に平行方向で巻付け部31の巻付け半径が小さくなる方向)には移動できるが反対方向には係合する、のこ歯形状部42、43を形成する。クリップ両端部が対向面と直交する方向に互いに離れる方向に移動すると、のこ歯形状部42、43が離れて係合が外れるが、畳んだ状態にあるカーテンエアバッグ20から、内側から押されているので、のこ歯形状部42、43が外れることはない。
上記の実施例1の構成は、本発明の他の実施例(実施例2)にも共通に適用され得る。
【0035】
〔実施例1の作用〕
本発明の実施例1の作用、効果はつぎのとおりである。
まず、クリップ30で、畳み状態にあるカーテンエアバッグ20をタブ部21間で保持して車両ボデーに支持するので、カーテンエアバッグ20のタブ部21間部分の自重による垂れ下がりを抑制できる。その結果、カーテンエアバッグ20が垂れ下がった場合に生じるかもしれないカーテンエアバッグのタブ部21間部分の周辺部品へのかみ込みを抑制できる。
【0036】
また、クリップ30が、巻付け部31、固定部32、係合部33、脆弱部34を有する1部材で形成されているので、複数部材の組み合わせからなる場合に比べて、クリップ30によるカーテンエアバッグ20の車両ボデーへの取付けが容易である。また、クリップ30自体のコストも低い。
【0037】
また、クリップ30がカーテンエアバッグ20の一部を当接させる突起39を有するので、カーテンエアバッグ20の断面内における突起39に当接する方向の回動が規制され、カーテンエアバッグ20の断面内回動が抑制される。その結果、カーテンエアバッグ20が断面内で回動した場合に生じるかもしれない、側面衝突時のカーテンエアバッグ展開方向のばらつきとそれによるカーテンエアバッグ20の周辺部品へのかみ込みが抑制され、カーテンエアバッグ20の展開、膨張を安定化させることができる。
【0038】
また、突起39に当接するカーテンエアバッグ20の一部が、カーテンエアバッグ20の畳み方向の一端部、カーテンエアバッグの畳み方向の一端縁に形成された切り欠き部26、カーテンエアバッグ20の畳み方向折り返し部24、の何れであってもよいので、突起39の位置の自由度が高い。その結果、カーテンエアバッグ20の断面内回転を抑制するのに最も効果的なクリップ位置に突起39を設けることができる。また、カーテンエアバッグ20の一部が、カーテンエアバッグ20の畳み方向の一端縁に形成された切り欠き部26である場合は、クリップ30によって、カーテンエアバッグ20の軸方向移動も規制することができる。
【0039】
また、カーテンエアバッグ20に形成された長孔25にクリップ30の突起39が挿通される場合は、カーテンエアバッグ20は断面内の左右両方向に回動を抑制される。その結果、一方向のみの回動が抑制される場合に比べてより一層、カーテンエアバッグ20の断面内回動が抑制され、カーテンエアバッグ展開方向のばらつきとそれによるカーテンエアバッグ20の周辺部品へのかみ込みが抑制される。また、カーテンエアバッグ20の一部が、カーテンエアバッグ20に形成された長孔25の縁部である場合は、クリップ30によって、カーテンエアバッグ20の軸方向移動も規制することができる。
上記の実施例1の作用、効果は、本発明の他の実施例の作用、効果にも適用される。
【0040】
〔実施例2〕 〔実施例2の構成〕
本発明の実施例の頭部保護エアバッグ装置10は、図15〜図18に示すように、畳み状態にあるカーテンエアバッグ20を内包しカーテンエアバッグ20の展開力で破断する脆弱部51が形成された布製カバー50を、さらに有している。カバー50は、畳み状態にあるカーテンエアバッグ20を、カーテンエアバッグ20の全長にわたって包んでもよいし、あるいは、カーテンエアバッグ20の長手方向の一部を包んでもよい。カバー50は、たとえば布製である。脆弱部51は、たとえばミシン目などからなり、カーテンエアバッグ20の展開力で破断する。55はカバー縫合部を示す。
【0041】
カバー50には、カバー50の端部に形成した切り欠き部53(図16)または畳み状態のカーテンエアバッグ20が解けないように保持するカバー50に形成した長孔54(図17)からなるクリップ挿通部52が形成されており、クリップ30の突起39がクリップ挿通部52を挿通している。クリップ30はカバー50の外側で、固定部32をボデー11のインナーパネル12のクリップ用孔18に差し込むことによって、ボデー11のインナーパネル12に固定される。
【0042】
クリップ挿通部52が切り欠き部53または長孔54からなるので、カバー50は、その周方向および長手方向に、クリップ30によって移動を規制され位置決めされる。カバー50が移動を抑制され位置決めされると、カバー50の内面と畳み状態のカーテンエアバッグ20の外面との摩擦によって、カーテンエアバッグ20も周方向および長手方向に移動を規制され位置決めされる。
【0043】
カーテンエアバッグ20の周方向位置規制は、つぎの何れによって行ってもよい。
(イ)クリップ30によってカバー50のみを周方向に位置規制し、カバー50の内面と畳み状態のカーテンエアバッグ20の外面との摩擦によって、結果的にカーテンエアバッグ20を周方向に位置規制する。
(ロ)クリップ30によってカーテンエアバッグ20とカバー50を周方向に同時に位置規制する。
【0044】
〔実施例2の作用〕
実施例2の頭部保護エアバッグ装置10が、カーテンエアバッグ20を内包するカバー50をさらに備えており、カバー50にはクリップ挿通部52が形成されていて、クリップ挿通部52をクリップ30の突起39が挿通しているので、カバー50の回動がクリップ30によって抑制される場合(上記(イ)の場合)は、カバー50とカーテンエアバッグ20との接触摩擦によって、カーテンエアバッグ20の断面内回動も抑制され、カーテンエアバッグ展開方向のばらつきとそれによるカーテンエアバッグ20の周辺部品へのかみ込みが抑制される。
【0045】
クリップ30によるカバー50の回動抑制とクリップ30によるカーテンエアバッグ20の回動抑制との両方が行われる場合(上記(ロ)の場合)は、クリップ30によるカーテンエアバッグ20の回動抑制のみが行われる場合(上記(イ)の場合)に比べてより一層、カーテンエアバッグ展開方向のばらつきとそれによるカーテンエアバッグ20の周辺部品へのかみ込みが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施例1の頭部保護エアバッグ装置の、カーテンエアバッグ非展開状態における、全体側面図である(図1〜図14は実施例2のカーテンエアバッグ部分にも適用可)。
【図2】本発明の実施例1の頭部保護エアバッグ装置のクリップによるカーテンエアバッグ支持部とその近傍の斜視図である。
【図3】図2の、3−3線拡大断面図である。
【図4】図2の、4−4線拡大断面図である。
【図5】図1のクリップの、直線状に展開した状態での、側面図である。
【図6】図1の、クリップとカーテンエアバッグの、カーテンエアバッグが畳み時での、断面図である。
【図7】図1の、クリップとカーテンエアバッグの、カーテンエアバッグが展開時での、断面図である。
【図8】直線状に展開した状態のクリップと、該クリップが嵌められる切り欠き部を有するカーテンエアバッグ(畳み時)の、斜視図である。
【図9】畳み時のカーテンエアバッグと、カーテンエアバッグの端縁が当接される突起(内方突出部のみを有する)をもつクリップの、拡大断面図である。
【図10】畳み時のカーテンエアバッグと、カーテンエアバッグの端部または切り欠き部が当接される突起を複数もつクリップの、拡大断面図である。
【図11】畳み時のカーテンエアバッグと、カーテンエアバッグの折り返し部が当接される突起をもつクリップの、拡大断面図である。
【図12】畳み時のカーテンエアバッグと、のこ歯状の係合部をもつクリップの、拡大断面図である。
【図13】畳み時のカーテンエアバッグと、配置を変更した脆弱部をもつクリップの、拡大断面図である。
【図14】(イ)は長孔をもつ畳み時のカーテンエアバッグの斜視図であり、(ロ)は(イ)のA−A線断面図であり、畳み時のカーテンエアバッグとその長孔に差し込まれるクリップの断面図である。
【図15】本発明の実施例2の頭部保護エアバッグ装置の、畳み時のカーテンエアバッグと、カーテンエアバッグを内包するカバーと、クリップの、拡大断面図である。
【図16】畳み時のカーテンエアバッグと、カーテンエアバッグを内包する、切り欠きを有するカバーの、斜視図である。
【図17】畳み時のカーテンエアバッグと、カーテンエアバッグを内包する、長孔を有するカバーの、斜視図である。
【図18】図17の、カーテンエアバッグと、カーテンエアバッグを内包する、長孔を有するカバーの、18−18線拡大断面図である。
【図19】タブ部間部分が垂れ下がった、従来の畳み状態のカーテンエアバッグの側面図である。
【図20】図19の20−20線拡大断面図である。
【符号の説明】
【0047】
10 頭部保護エアバッグ装置
11 ボデー
12 インナーパネル
13 ナット
14 ボルト
15 ルーフライニング
16 ピラーガーニッシュ
17 ジャンプ台
18 クリップ用孔
19 ウエザーストリップ
20 カーテンエアバッグ
20a カーテンエアバッグのタブ部間部分
20b カーテンエアバッグの端部
21 タブ部 22 金属プレート
23 孔
24 折り返し部
25 長孔
25a 長手方向縁
25b 周方向縁
26 切り欠き
26a 長手方向縁
26b 周方向縁
30 クリップ
31 巻付け部
32 固定部
33 係合部
34 脆弱部
35 内部空隙
36 孔
37 凹凸歯
38 凸部
39 突起
40 内方突出部
41 長手方向延設部
42、43 のこ歯
50 カバー
51 (カバーの)脆弱部
52 クリップ挿通部
53 (カバーの)切り欠き部
54 (カバーの長孔)
55 (カバーの)縫合部
60 インフレータ
61 ピラー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上縁に間隔をおいて複数設けられたタブ部を有し該タブ部で車両のルーフ側部に取付けられるカーテンエアバッグと、
畳み状態にあるカーテンエアバッグをタブ部間で保持して車両ボデーに支持するクリップとを備え、
前記クリップが、クリップ中央部に形成されタブ部間部位でカーテンエアバッグに巻き付けられる巻付け部と、クリップ一端部に形成されたボデーへの固定部と、クリップ他端部に形成され該クリップ他端部以外のクリップ部分と係合する係合部と、カーテンエアバッグ展開力で破断する脆弱部と、を有し、1部材で形成されている、頭部保護エアバッグ装置。
【請求項2】
前記クリップは、カーテンエアバッグの一部を当接させてカーテンエアバッグの回動を抑制する突起を有する請求項1記載の頭部保護エアバッグ装置。
【請求項3】
前記カーテンエアバッグの一部が、カーテンエアバッグの畳み方向の一端部、カーテンエアバッグの畳み方向の一端部に形成された切り欠き部、カーテンエアバッグの畳み方向折り返し端部、の何れかからなるカーテンエアバッグの畳み方向端部である請求項2記載の頭部保護エアバッグ装置。
【請求項4】
前記カーテンエアバッグの一部が、カーテンエアバッグに形成された、前記クリップの突起が挿通される、長孔の縁部である請求項2記載の頭部保護エアバッグ装置。
【請求項5】
畳み状態にあるカーテンエアバッグを内包しカーテンエアバッグの展開力で破断する脆弱部が形成された布製カバーをさらに有しており、該カバーに切り欠き部または長孔からなるクリップ挿通部が形成されており、該クリップ挿通部に前記クリップが挿通している請求項1または請求項2記載の頭部保護エアバッグ装置。
【請求項1】
上縁に間隔をおいて複数設けられたタブ部を有し該タブ部で車両のルーフ側部に取付けられるカーテンエアバッグと、
畳み状態にあるカーテンエアバッグをタブ部間で保持して車両ボデーに支持するクリップとを備え、
前記クリップが、クリップ中央部に形成されタブ部間部位でカーテンエアバッグに巻き付けられる巻付け部と、クリップ一端部に形成されたボデーへの固定部と、クリップ他端部に形成され該クリップ他端部以外のクリップ部分と係合する係合部と、カーテンエアバッグ展開力で破断する脆弱部と、を有し、1部材で形成されている、頭部保護エアバッグ装置。
【請求項2】
前記クリップは、カーテンエアバッグの一部を当接させてカーテンエアバッグの回動を抑制する突起を有する請求項1記載の頭部保護エアバッグ装置。
【請求項3】
前記カーテンエアバッグの一部が、カーテンエアバッグの畳み方向の一端部、カーテンエアバッグの畳み方向の一端部に形成された切り欠き部、カーテンエアバッグの畳み方向折り返し端部、の何れかからなるカーテンエアバッグの畳み方向端部である請求項2記載の頭部保護エアバッグ装置。
【請求項4】
前記カーテンエアバッグの一部が、カーテンエアバッグに形成された、前記クリップの突起が挿通される、長孔の縁部である請求項2記載の頭部保護エアバッグ装置。
【請求項5】
畳み状態にあるカーテンエアバッグを内包しカーテンエアバッグの展開力で破断する脆弱部が形成された布製カバーをさらに有しており、該カバーに切り欠き部または長孔からなるクリップ挿通部が形成されており、該クリップ挿通部に前記クリップが挿通している請求項1または請求項2記載の頭部保護エアバッグ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2009−78620(P2009−78620A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−247754(P2007−247754)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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