説明

頭部装着型表示装置

【課題】頭部装着型表示装置の小型化や軽量化を実現する。
【解決手段】頭部装着型表示装置1Aは、左目用画像を示す第1の偏光と右目用画像を示す第1の偏光を時間順次で射出する画像形成部2と、画像形成部2と同期して駆動され、画像形成部2から射出された左目用画像を示す第1の偏光と右目用画像を示す第1の偏光のうちの片方の第1の偏光を第2の偏光へ変換する液晶パネル3と、液晶パネル3から射出された第1の偏光と第2の偏光のうちの一方の偏光が透過するとともに他方の偏光が反射する特性の偏光分離面14を含んで構成され、偏光分離面14を透過した偏光を観察者の両眼のうちの一方へ導くとともに、偏光分離面で反射した偏光を観察者の両眼のうちの他方へ導く導光部6と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部装着型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置の1つとして、頭部装着型表示装置(ヘッドマウントディスプレイ)が知られている(例えば、特許文献1参照)。頭部装着型表示装置は、コンパクトでありながら、実質的に大画面の画像を視聴可能である。特許文献1の頭部装着型表示装置は、液晶パネルから射出される光を半透過膜分離し、分離した一方の光を左目へ導くとともに他方の光を右目へ導く構造である。
【0003】
近年、3D画像を視聴可能な頭部装着型表示装置が期待されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2の頭部装着型表示装置は、画像を外界情景に重ねて表示可能な表示部が左目用と右目用に個別に設けられており、左目と右目で異なる画像を表示可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−177785号公報
【特許文献2】特開2008−58461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2のような頭部装着型表示装置は、左目用の表示部と右目用の表示部を個別に設けるので、装置の小型化や軽量化を実現することが難しい。また、各表示部から眼球に光を導く光学系を左目用と右目用のそれぞれに設けると、光学系の構成が複雑になり、装置の小型化や軽量化を実現することが難しい。このように従来の頭部装着型表示装置は、小型化や軽量化を実現することが難しく、携帯性や利便性を実現することが困難である。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑み成されたものであって、左目と右目とで異なる画像を表示可能であり、装置の小型化や軽量化を実現可能な頭部装着型表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の頭部装着型表示装置は、左目用画像を示す第1の偏光と右目用画像を示す第1の偏光を時間順次で射出する画像形成部と、前記画像形成部と同期して駆動され、前記画像形成部から射出された前記左目用画像を示す第1の偏光と前記右目用画像を示す第1の偏光のうちの片方の第1の偏光を第2の偏光へ変換する液晶パネルと、前記液晶パネルから射出された前記第1の偏光と第2の偏光のうちの一方の偏光が透過するとともに他方の偏光が反射する特性の偏光分離面を含んで構成され、前記偏光分離面を透過した偏光を観察者の両眼のうちの一方へ導くとともに前記偏光分離面で反射した偏光を前記観察者の両眼のうちの他方へ導く導光部と、を備える。
【0008】
上記の頭部装着型表示装置において、画像形成部から射出された左目用画像を示す第1の偏光と右目用画像を示す第1の偏光のうちの片方は、液晶パネルによって第2の偏光へ変換される。左目用画像を示す偏光と右目用画像を示す偏光は、互いに異なる偏光状態となり、一方の偏光が偏光分離面を透過して観察者の両眼の片方へ導光され、他方の偏光が偏光分離面で反射して観察者の両眼のもう片方へ導光される。
【0009】
このように、同一の画像形成部で時間順次で形成された左目用画像と右目用画像とが、観察者の左目と右目とに別れて観察されるので、左目用と右目用に個別に画像形成部が設けられている構成と比較して、装置の小型化や軽量化を実現することができる。また、画像形成部は、左目用画像を示す第1の偏光と右目用画像を示す第1の偏光を時間順次で射出するので、画像形成部を領域分割して左目用画像と右目用画像とを同時に形成する構成と比較して、表示された画像の画素数(情報量)が劣化しない。
【0010】
以上のように、上記の頭部装着型表示装置は、左目と右目とで異なる画像を高品質で表示可能であり、しかも装置の小型化や軽量化を実現することができる。
【0011】
上記の頭部装着型表示装置は、前記画像形成部と前記偏光分離面との間の光路に配置され、前記偏光分離面を経由した偏光を前記観察者の左目又は右目に結像させる結像部を備えていてもよい。
【0012】
このようにすれば、画像形成部と偏光分離面との間の光路に結像部が配置されているので、左目用画像を左目に結像させる光学系と右目画像を右目に結像させる光学系の少なくとも一部を共通化することができ、装置の小型化や軽量化を実現することができる。
【0013】
上記の頭部装着型表示装置において、前記導光部は、前記偏光分離面から前記一方の偏光の結像面までの光路長と前記偏光分離面から前記他方の偏光の結像面までの光路長の違いによる焦点のずれを補正する焦点補正部を含んでいてもよい。
【0014】
このようにすれば、左目用画像と右目用画像をそれぞれ同じ結像部で結像させる場合に、偏光分離面から一方の偏光の結像面までの光路長と、偏光分離面から他方の偏光の結像面までの光路長の違いに起因するピンボケ等を抑制することができる。
【0015】
上記の頭部装着型表示装置において、前記導光部は、 前記偏光分離面を透過した偏光が入射する位置に配置された1/4波長板と、前記1/4波長板を通った偏光が反射して折り返される反射ミラーと、を含んでいてもよい。
【0016】
このようにすれば、偏光分離面を透過した偏光は、反射ミラーで反射する前後で1/4波長板を2回通ることになり、1/4波長板へ入射前とは直交する偏光へ変換されて偏光分離面へ再度入射し、偏光分離面で反射する。このように、左目用画像を示す偏光と右目用画像を示す偏光は、その一方の偏光が反射ミラーを経由して偏光分離面で反射し、他方の偏光が反射ミラーを経由しないで偏光分離面で反射する。したがって、左目用画像を示す偏光と右目用画像を示す偏光は、液晶パネルから偏光分離面へ向う偏光の光路に関して互いに対称的に進行することになり、観察者の左目と右目とに分けて導光することが容易になる。
【0017】
上記の頭部装着型表示装置において、前記導光部は、前記偏光分離面を透過した偏光が入射する位置に配置され、該偏光が反射する特性の反射部材を含み、前記偏光分離面を透過して前記反射部材で反射した偏光が、前記液晶パネルから前記偏光分離面へ向う偏光の光路に関して前記偏光分離面で反射した偏光とは対称的に進行するように、前記反射部材が配置されていてもよい。
【0018】
このようにすれば、左目用画像を示す偏光と右目用画像を示す偏光は、液晶パネルから偏光分離面へ向う偏光の光路に関して互いに対称的に進行することになり、観察者の左目と右目とに分けて導光することが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態の頭部装着型表示装置を示す図である。
【図2】第1実施形態の頭部装着型表示装置を示す図である。
【図3】第2実施形態の頭部装着型表示装置を示す図である。
【図4】第2実施形態の頭部装着型表示装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態及び実施例について図面を参照しながら説明する。説明に用いる図面中の構造の寸法や縮尺は、実際と異なることがある。
【0021】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態において、右目用画像を表示するときの頭部装着型表示装置を示す図である。図2は、第1実施形態において、左目用画像を表示するときの頭部装着型表示装置を示す図である。
【0022】
図1及び図2に示すヘッドマウントディスプレイ(頭部装着型表示装置)1Aは、互いに異なる左目用画像と右目用画像を、時間的に切替えながら観察者の左目と右目に分けて表示することができる。上記の左目用画像及び右目用画像は、例えば両目の視差を考慮した画像であり、この場合に観察者は、3D画像を観察することができる。
【0023】
ヘッドマウントディスプレイ1Aは、右目用画像を示す第1の偏光L1と左目用画像を示す第1の偏光L2とを択一的に時間順次で射出する画像形成部2と、画像形成部2から射出された左目用画像を示す第1の偏光L2を第2の偏光L3へ変換する偏光調整用の液晶パネル3と、液晶パネル3から射出された偏光が入射する位置に配置された結像部4と、結像部4を通った偏光が入射する位置に配置された偏光分離素子5を含んで構成された導光部6と、画像形成部2及び液晶パネル3を駆動する駆動部7と、を備える。
【0024】
偏光分離素子5は、第1の偏光L2と第2の偏光L3のうちの一方の偏光が透過し、かつ他方の偏光が反射する特性の偏光分離面14を有する。本実施形態では、第1の偏光L2が偏光分離面14で反射し、第2の偏光L3が偏光分離面14を透過する構成について説明する。
【0025】
上記のヘッドマウントディスプレイ1Aの各部は、実際には、ヘッドマウントディスプレイ1Aの一部を構成するメガネ状のフレームに取り付けられている。観察者がこのフレームを装着すると、観察者の左目あるいは右目と、ヘッドマウントディスプレイ1Aの各部との相対位置が固定される。導光部6は、ヘッドマウントディスプレイ1Aを装着した観察者に対して、偏光分離素子5を透過した偏光を観察者の左目へ導くとともに、偏光分離素子5で反射した偏光を観察者の右目へ導くことができる。
【0026】
本実施形態の画像形成部2は、光を射出する光源部10と、光源部10から射出された光が入射する位置に配置された入射側偏光板11と、入射側偏光板11を通った光が入射する位置に配置された画像形成用の液晶パネル12と、液晶パネル12を通った光が入射する位置に配置された射出側偏光板13を含む。画像形成部2は、ヘッドマウントディスプレイ1Aが観察者に装着されている状態で、左目と右目の中央付近に配置される。
【0027】
光源部10は、例えばバックライトであり、例えば発光ダイオード(LED)等の発光素子によって構成される。入射側偏光板11及び射出側偏光板13は、それぞれ、透過軸に平行な直線偏光が透過し、透過軸に直交する直線偏光を吸収する特性を有する。入射側偏光板11及び射出側偏光板13は、例えば、それぞれの透過軸が直交するように配置される。本実施形態において、射出側偏光板13の透過軸は、偏光分離素子5の透過軸と直交するように、配置されている。
【0028】
液晶パネル12は、2次元的に配列された複数のサブ画素を有し、各サブ画素へ入射する光の偏光状態をサブ画素ごとに制御することができる。本実施形態において、互いに隣り合う3つのサブ画素は、それぞれ、互いに異なる波長の光が透過するカラーフィルターを有し、一組でフルカラーの1画素を構成している。本実施形態の液晶パネル12は、各サブ画素に設けられた画素電極と、複数のサブ画素にわたって画素電極に対向する対向電極と、複数の画素電極と対向電極の間に配置された液晶層を含む。
【0029】
本実施形態の液晶層は、誘電異方性が負の液晶材料で形成されたVAモードの液晶層である。液晶層は、印加される電界に応じて液晶ダイレクターが変化し、屈折率異方性が変化する。液晶層は、誘電異方性が正の液晶材料で形成されていてもよい。また、液晶パネル12は、横電界によって液晶層を駆動するFFS方式やIPS方式の液晶パネルでもよい。
【0030】
画像形成部2において、光源部10から射出された光のうち入射側偏光板11を透過した直線偏光は、液晶パネル12へ入射する。複数のサブ画素のうち電界が印加されていないサブ画素の液晶層へ入射した直線偏光は、液晶層で偏光状態がほとんど変化せずに液晶パネル12から射出され、そのほぼ全部が射出側偏光板13に吸収される(ノーマリーブラック)。複数のサブ画素のうち電界が印加されているサブ画素の液晶層へ入射した直線偏光は、液晶層で電界の強さに応じて偏光状態が変化して液晶パネル12から射出され、その偏光状態に応じた光量が射出側偏光板13に吸収されて画素値に応じた階調の光になる。すなわち、液晶パネル3から射出された光のうち、射出側偏光板13の透過軸に平行な偏光(第1の偏光L1又はL2)は、射出側偏光板13を透過して左目用画像又は右目用画像を示す光になる。
【0031】
なお、画像形成部2の構成は、適宜変更可能である。例えば、画像形成部2は、各サブ画素に有機EL素子が配置されて画像を形成可能な有機ELパネルと、有機ELパネルにより形成された画像を示す光が入射する位置に配置された射出側偏光板を含んで構成されていてもよい。また、画像形成部2は、光源部と、光源部から射出された光により画像を形成するデジタルミラーデバイスと、デジタルミラーデバイスにより形成された画像を示す光が入射する位置に配置された射出側偏光板を含んで構成されていてもよい。また、画像形成部2は、単色光で構成される画像を形成する構成でもよいし、2色又は4色以上の色光で構成される画像を形成する構成でもよい。
【0032】
偏光調整用の液晶パネル3は、互いに対向する1対の電極と、1対の電極の間に配置された液晶層を含む。液晶パネル3は、駆動部7によって駆動され、画像形成部2から射出される偏光の中心波長にするリタデーションが1/2波長の奇数倍になるモードと、リタデーションが1/2波長の偶数倍(0を含む)になるモードとを切替えることができる。
【0033】
本実施形態において、液晶パネル3は、画像形成用の液晶パネル12と異なり、サブ画素を有していない。すなわち、1対の電極は、それぞれ、画像形成部2から液晶パネル12から光が入射する領域のほぼ全体にベタ状に設けられている。なお、液晶パネル3は、複数のサブ画素を有していてもよく、液晶パネル3の各サブ画素は、画像形成用の液晶パネル12のサブ画素の1つ又は2つ以上と対応していてもよい。
【0034】
駆動部7は、ヘッドマウントディスプレイ1Aの外部のDVDプレイヤーやPC、携帯情報端末等の信号源から画像データを有線又は無線により受信することができる。駆動部7は、外部から受信した画像データに基づき、各種配線や各種スイッチング素子を介して、液晶パネル12の各サブ画素の画素電極に電圧を印加することができる。これにより、画素電極と対向電極との間に電界が印加され、この電界によって液晶層がサブ画素ごとに駆動される。
【0035】
本実施形態において、1フレームの表示期間は、右目用画像の表示期間と、左目用画像の表示期間を含む。1フレームの期間は、画像データに規定されたリフレッシュレート等によって定まり、例えばリフレッシュレートが60Hzである場合に1/60秒である。右目用画像の表示期間と左目用画像の表示期間は、互いに重複しないように設定されており、それぞれ、1。フレームの期間の半分程度に設定されている。左目用画像の表示期間と右目用画像の表示期間との間に、全黒表示の期間が設けられることもある。
【0036】
駆動部7は、右目用画像の表示期間に、外部から受信した画像データに含まれる右目用画像を示すデータに基づいて画像形成用の液晶パネル12を駆動し、画像形成部2に右目用画像を形成させる。本実施形態において、駆動部7は、右目用画像の表示期間に、画像形成部2から射出された右目用画像を示す第1の偏光L1の偏光状態が偏光調整用の液晶パネル3でほぼ変化しないように、液晶パネル3を制御する。すなわち、右目用画像の表示期間に、右目用画像を示す光は、液晶パネル3から第1の偏光として射出される。
【0037】
駆動部7は、左目用画像の表示期間に、外部から受信した画像データに含まれる左目用画像を示すデータに基づいて画像形成用の液晶パネル12を駆動し、画像形成部2に左目用画像を形成させる。本実施形態において、駆動部7は、左目用画像の表示期間に、画像形成部2から射出された左目用画像を示す第1の偏光L2が偏光調整用の液晶パネル3によって第1の偏光と直交する第2の偏光L3へ変換されるように、液晶パネル3を制御する。すなわち、左目用画像の表示期間に、左目用画像を示す光は、液晶パネル3から第2の偏光L3として射出される。
【0038】
結像部4は、導光部6を経由した左目用画像を示す光が観察者の左目で結像し、導光部6を経由した右目用画像を示す光が観察者の右目で結像するように、画像形成部2から射出されて液晶パネル3を通った偏光を屈折させる。結像部4は、複数のレンズ等によって構成される。
【0039】
上記のように、ヘッドマウントディスプレイ1Aを装着した観察者の両目の位置に対する画像形成部2の相対位置は、フレームの形状や寸法等により定まる。結像部4は、画像形成部2から射出された偏光が観察者の左目あるいは右目で結像するように、観察者の両目と画像形成部2の相対位置に基づいて、適宜設計可能である。なお、結像部4は、観察者によってピンボケが認識されない程度の許容範囲をもって、画像形成部2から射出された偏光を結像させればよい。
【0040】
本実施形態の導光部6は、偏光分離面14を有する偏光分離素子5と、偏光分離面14で反射した偏光が入射する位置に配置された右目用導光部15と、偏光分離面14を透過した偏光が入射する位置に配置された左目用導光部16を含む。
【0041】
偏光分離素子5は、透過軸に平行な偏光が透過し、かつ透過軸に直交する反射軸に平行な偏光が反射する特性を有する。本実施形態の偏光分離素子5は、画像形成部2から偏光分離素子5に向う光路(光の進行方向)に直交する面内に射影した透過軸が射出側偏光板13の透過軸と直交するように配置されている。
【0042】
本実施形態の偏光分離素子5は、偏光ビームスプリッタープリズムにより構成されている。偏光ビームスプリッタープリズムは、断面がほぼ直角二等辺三角形の柱状のプリズム17を含む。以下の説明で、三角柱状のプリズムの軸方向の周囲の側面のうち、断面形状の直角二等辺三角形において互いに直交する2辺を除いた辺(斜辺)を含む面を斜面という。偏光ビームスプリッタープリズムは、1対のプリズム17の斜面を互いに貼り合わせた直方体状である。
【0043】
プリズム17の斜面には、偏光分離面14を構成する偏光ビームスプリッター膜が形成されている。本実施形態において、偏光分離面14は、結像部4の光軸に対して略45°の角度をなして傾斜している。本実施形態において、第1の偏光は、偏光分離面14に対するS偏光であり、第2の偏光は偏光分離面14に対するP偏光である。
【0044】
なお、偏光分離素子5は、ワイヤーグリッド偏光素子によって構成されていてもよい。ワイヤーグリッド偏光素子は、ガラス等の誘電体からなる基材の表面に、互いに平行に延びる複数の金属線が形成された構造である。ワイヤーグリッド偏光素子は、金属線が延びる方向が反射軸に平行であり、複数の金属線が並ぶ方向が透過軸に平行である。ワイヤーグリッド偏光素子は、反射軸に平行かつ透過軸に平行な平面が偏光分離面である。
【0045】
画像形成部2から射出された右目用画像を示す第1の偏光L1は、偏光調整用の液晶パネル3で偏光状態がほぼ変化せずに、偏光分離素子5の反射軸に平行な直線偏光(S偏光)として偏光分離素子5へ入射し、偏光分離面14で反射して右目用導光部15へ入射する。また、画像形成部2から射出された左目用画像を示す第1の偏光L2は、偏光調整用の液晶パネル3で第2の偏光L3へ変換され、偏光分離素子5の透過軸に平行な直線偏光(P偏光)として偏光分離素子5へ入射し、偏光分離面14を透過して左目用導光部16へ入射する。
【0046】
右目用導光部15は、偏光分離面14で反射した偏光が入射する位置に配置されたレンズ18と、レンズ18を通った偏光が入射する位置に配置されたミラー19を含む。レンズ18は、後述するレンズ20とともに焦点補正部21を構成している。ミラー19は、レンズ18を通った光がミラー19で反射した後に観察者の右目に向って進行するように、配置されている。
【0047】
左目用導光部16は、偏光分離面14を透過した第2の偏光L3が入射する位置に配置されて第2の偏光L3が反射する特性のプリズム22(反射部材)と、プリズム22で反射した第2の偏光L3が入射する位置に配置されたレンズ20と、レンズ20を通った第2の偏光L3が入射する位置に配置されたミラー23を含む。
【0048】
本実施形態のプリズム22は、断面形状がほぼ直角二等辺三角形の柱状であり、互いに直交する2辺の片方を含んだ面が偏光分離素子5のプリズム17の外面と接触するように、配置されている。上記の外面は、画像形成部2から射出されて偏光分離面14を透過した第2の偏光L3が偏光分離素子5から射出される面である。
【0049】
プリズム22は、ガラス等の誘電体からなり、例えば偏光分離素子5のプリズム17と屈折率がほぼ同じである。すなわち、プリズム17とプリズム22は、光学的にほぼ連続しており、プリズム17とプリズム22の間の界面での光の屈折や反射等が抑制されている。
【0050】
プリズム22の斜面24は、偏光分離素子5の偏光分離面14と直交しており、偏光分離素子5の偏光分離面14を透過した光の進行方向に対して略45°の角度をなして傾斜している。偏光分離面14を透過した光は、斜面24で全反射条件を満たすことによって、斜面24で反射する。
【0051】
レンズ18とレンズ20(焦点補正部21)は、偏光分離面14で反射した右目用画像を示す第1の偏光L1の結像面(右目)と偏光分離面14との間の光路長と、偏光分離面14を透過した左目用画像を示す第2の偏光L3の結像面(左目)と偏光分離面14との間の光路長の違いによる焦点のずれを補正するように設けられている。焦点補正部21は、必要に応じて設けられ、省略される場合もある。ミラー23は、レンズ20を通った光がミラー23で反射した後に観察者の左目に向って進行するように、配置されている。
【0052】
本実施形態のヘッドマウントディスプレイ1Aにおいて、画像形成部2から射出された右目用画像を示す第1の偏光L1は、偏光分離面14で反射して右目用導光部15を介して観察者の右目へ導光され、右目で結像する。これにより、観察者は、右目で右目用画像を観察することができる。また、画像形成部2から射出された左目用画像を示す第1の偏光L2は、液晶パネル3で変換されて第2の偏光L3となり、第2の偏光L3は、偏光分離面14を透過して左目用導光部16を介して、観察者の左目へ導光されて左目で結像する。これにより、観察者は、左目で左目用画像を観察することができる。このようにして、観察者は、例えば3D画像を観察することができる。
【0053】
以上のような構成のヘッドマウントディスプレイ1Aは、同一の画像形成部2で時間順次で形成された左目用画像と右目用画像を、それぞれ、左目と右目で別々に観察することができる。したがって、左目用の画像形成部と右目用の画像形成部が別途設けられている構成と比較して、装置の小型化や軽量化を実現することができる。
【0054】
また、画像形成部は、右目用画像を示す第1の偏光L1と左目用画像を示す第1の偏光L2とを時間順次で射出するので、画像形成部を領域分割して左目用画像と右目用画像とを同時に形成する構成と比較して、表示された画像の画素数(情報量)が劣化しない。このように、ヘッドマウントディスプレイ1Aは、左目と右目とで異なる画像を高品質で表示可能であり、しかも装置の小型化や軽量化を実現することができる。
【0055】
また、画像形成部2と偏光分離素子5との間の光路に結像部4が配置されているので、左目用画像を左目に結像させる光学系と右目用画像を右目に結像させる光学系の少なくとも一部を共通化することができ、装置の小型化や軽量化を実現することができる。また、焦点補正部21は、偏光分離面14から左目用画像の結像面までの光路長と偏光分離面14から右目用画像の結像面までの光路長の違いによる焦点のずれを補正するので、左目用画像と右目用画像のいずれについても左目に至る光路長と右目に至る光路長の違いによるピンボケ等を抑制することができる。
【0056】
また、画像形成部2は、ヘッドマウントディスプレイ1Aが観察者に装着されている状態で、左目と右目の中央付近に配置されており、偏光分離面14を透過してプリズム22の斜面24で反射した第2の偏光L3は、液晶パネル3から偏光分離素子5へ向う偏光の光路に関して、偏光分離面14で反射した第1の偏光L1とは対称的に進行する。したがって、左目用画像を示す第2の偏光L3を左目に導くとともに右目用画像を示す第1の偏光L1を右目に導くことが容易になる。
【0057】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態において第1実施形態と同様の構成要素については、第1実施形態と同じ符号を付してその説明を簡略化あるいは省略することがある。第2実施形態の頭部装着型表示装置(ヘッドマウントディスプレイ)は、導光部の構成が第1実施形態と異なっている。
【0058】
図3は、第2実施形態において、右目用画像を表示するときのヘッドマウントディスプレイを示す図である。図4は、第2実施形態において、左目用画像を表示するときのヘッドマウントディスプレイを示す図である。
【0059】
図3及び図4に示すヘッドマウントディスプレイ1Bは、導光部30を備える。導光部30は、第1実施形態と同様の右目用導光部15と、左目用導光部31を含む。左目用導光部31は、偏光分離面14を透過した偏光が入射する位置に配置された1/4波長板32と、1/4波長板32を通った偏光が反射して折り返される反射ミラー33と、第1実施形態と同様のレンズ20及びミラー23を含む。
【0060】
本実施形態の1/4波長板32は、その片面が偏光分離素子5のプリズム17の外面と接触するように、配置されている。上記の外面は、画像形成部2から射出されて偏光分離面14を透過した偏光が偏光分離素子5から射出される面である。液晶パネル3から偏光分離面14へ入射する偏光の進行方向に直交する面に射影した1/4波長板32の進相軸は、偏光分離面14の透過軸とほぼ45°の角度をなしている。
【0061】
本実施形態の反射ミラー33は、金属等の光反射材料からなる平面状の鏡面を有する。反射ミラー33は、1/4波長板32において偏光分離素子5と接触する面の反対面に接触している。反射ミラー33は、その鏡面が画像形成部2から偏光分離素子5へ向う偏光の進行方向に直交するように、配置されている。
【0062】
画像形成部2で形成された左目用画像を示す第1の偏光L2は、第1実施形態と同様に、偏光調整用の液晶パネル3で第2の偏光L3へ変換され、第2の偏光L3は、結像部4を通った後に偏光分離面14を透過する。
【0063】
偏光分離面14を透過した左目用画像を示す偏光は、1/4波長板32を通って反射ミラー33へ入射し、反射ミラー33で反射する。反射ミラー33で反射した左目用画像を示す偏光は、反射ミラー33での反射前とは進行方向が反転し、1/4波長板32を再度通って偏光分離面14へ再度入射する。左目用画像を示す偏光は、反射ミラー33での反射前後に1/4波長板32を二回通ることになり、反射ミラー33で反射した後に偏光分離面14へ入射するときに第1の偏光L4へ変換されている。
【0064】
反射ミラー33から偏光分離面14へ入射した左目用画像を示す第1の偏光L4は、偏光分離面14で反射し、液晶パネル3から偏光分離素子5へ向う偏光の光路に関して右目用画像を示す第1の偏光L1とは対称的に、進行する。偏光分離面14で反射した左目用画像を示す第1の偏光L4は、レンズ20及びミラー23を経由して観察者の左目に結像する。これにより、観察者は、左目で左目用画像を観察することができる。なお、観察者は、第1実施形態と同様に、右目で右目用画像を観察することができる。
【0065】
以上のような構成のヘッドマウントディスプレイ1Bは、同一の画像形成部2で時間順次で形成された左目用画像と右目用画像を、それぞれ、左目と右目で別々に観察することができ、装置の小型化や軽量化を実現することができる。
【0066】
また、偏光分離面14を透過した左目用画像を示す偏光が1/4波長板32を通って反射ミラー33で折り返されるように構成されているので、例えば第1実施形態のプリズム22を省くことができ、画像形成部2から偏光分離素子5へ向う偏光の進行方向における装置サイズを小型にすることができる。また、偏光分離素子から射出された右目用画像を示す第1の偏光L1の光線束の中心軸と、左目用画像を示す第1の偏光L4の光線束の中心軸を近づけることができる。したがって、偏光分素子Aから観察者の右目又は左目までの光路に配置される光学部品、例えばレンズ19やレンズ20の光軸をほぼ同軸になるように近づけることができる。よって、画像形成部2から偏光分離素子5へ向う偏光の進行方向における装置サイズを小型にすることができる。また、左目用画像を示す偏光と右目用画像を示す偏光の光路長の差を減らすことができ、左目用画像あるいは右目用画像のピンボケを抑制することができる。
【0067】
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではない。上記の実施形態で説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、上記の実施形態で説明した要件の少なくとも1つは、省略されることある。本発明の主旨を逸脱しない範囲内で多様な変形が可能である。
【0068】
偏光調整用の液晶パネル3は、右目用画像を示す第1の偏光を第2の偏光へ変換し、左目用の画像を示す第1の偏光の偏光状態を実質的に変えなくてもよい。この場合に、導光部6は、例えば右目用導光部と左目用導光部を、画像形成部2から偏光分離素子5へ向う偏光の進行方向を対称軸として反転させた構成に変更される。
【0069】
また、画像形成部2は、第1の偏光として偏光分離面14に対するP偏光を射出し、液晶パネル3は、左目用画像を示す第1の偏光又は右目用画像を示す第1の偏光を偏光分離面14に対するS偏光(第2の偏光)へ変換してもよい。第1の偏光が偏光分離面14に対するP偏光であって、液晶パネル3が左目用画像を示す第1の偏光を偏光分離面14に対するS偏光へ変換する場合に、導光部6は、例えば右目用導光部と左目用導光部を、画像形成部2から偏光分離素子5へ向う偏光の進行方向を対称軸として反転させた構成に変更される。
【符号の説明】
【0070】
1A、1B・・・ヘッドマウントディスプレイ(頭部装着型表示装置)、2・・・画像形成部、3・・・液晶パネル、4・・・結像部、5・・・偏光分離素子、6・・・導光部、14・・・偏光分離面、21・・・焦点補正部、30・・・導光部、32・・・1/4波長板、33・・・反射ミラー、L1・・・第1の偏光、L2・・・第1の偏光、L3・・・第2の偏光、L4・・・第1の偏光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左目用画像を示す第1の偏光と右目用画像を示す第1の偏光を時間順次で射出する画像形成部と、
前記画像形成部と同期して駆動され、前記画像形成部から射出された前記左目用画像を示す第1の偏光と前記右目用画像を示す第1の偏光のうちの片方の第1の偏光を第2の偏光へ変換する液晶パネルと、
前記液晶パネルから射出された前記第1の偏光と第2の偏光のうちの一方の偏光が透過するとともに他方の偏光が反射する特性の偏光分離面を含んで構成され、前記偏光分離面を透過した偏光を観察者の両眼のうちの一方へ導くとともに前記偏光分離面で反射した偏光を前記観察者の両眼のうちの他方へ導く導光部と、を備える頭部装着型表示装置。
【請求項2】
前記画像形成部と前記偏光分離面との間の光路に配置され、前記偏光分離面を経由した偏光を前記観察者の左目又は右目に結像させる結像部を備える請求項1に記載の頭部装着型表示装置。
【請求項3】
前記導光部は、前記偏光分離面から前記一方の偏光の結像面までの光路長と前記偏光分離面から前記他方の偏光の結像面までの光路長の違いによる焦点のずれを補正する焦点補正部を含む請求項2に記載の頭部装着型表示装置。
【請求項4】
前記導光部は、
前記偏光分離面を透過した偏光が入射する位置に配置された1/4波長板と、
前記1/4波長板を通った偏光が反射して折り返される反射ミラーと、を含む請求項1から3のいずれか一項に記載の頭部装着型表示装置。
【請求項5】
前記導光部は、前記偏光分離面を透過した偏光が入射する位置に配置され、該偏光が反射する特性の反射部材を含み、
前記偏光分離面を透過して前記反射部材で反射した偏光が、前記液晶パネルから前記偏光分離面へ向う偏光の光路に関して前記偏光分離面で反射した偏光とは対称的に進行するように、前記反射部材が配置されている請求項1から3のいずれか一項に記載の頭部装着型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−220774(P2012−220774A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87498(P2011−87498)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】