説明

顕微鏡システム、観察方法および観察プログラム

【課題】広範囲に渡る試料の観察を容易に行うことができるとともに、迅速かつ正確な観察を行うことが可能な顕微鏡システム、観察方法および観察プログラムを提供する。
【解決手段】試料上の走査単位領域および観察対象領域を設定する。CPUは観察対象領域内の走査単位領域の個数および位置を設定し、各走査単位領域の形状情報を取得する(ステップS21)。CPUは、取得した形状情報に基づいて全ての走査単位領域の上面視画像を表示装置に表示させる(ステップS22)。複数の走査単位領域の上面視画像を使用者が手動で連結する場合、CPUは選択された上面視画像に対するオフセット処理を行う(ステップS27)。オフセット処理は、隣接する走査単位領域の上面視画像の重複領域の画像のピクセルの階調がほぼ等しくなるように一方の上面視画像のピクセルの階調をオフセットすることにより行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の観察位置を指定するための顕微鏡システム、観察方法および観察プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、従来の光学顕微鏡または電子顕微鏡等とは全く異なる原理を利用した走査型プローブ顕微鏡(Scanning Probe Microscope:SPM)が開発され、注目を浴びている。
【0003】
走査型プローブ顕微鏡は、プローブと呼ばれる鋭く尖った探針を自由端に有するカンチレバーを備えている。上記の走査型プローブ顕微鏡の一例である原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)においては、探針を試料に近づけると、探針の先端を構成している原子と試料を構成している原子との間に原子間力が生じる。この原子間力によりカンチレバーの自由端が変位する。
【0004】
このカンチレバーの自由端の変位を電気的に測定しながら、探針を試料に沿って走査させることにより、試料の表面形状を示す三次元的な情報を得ることができる。例えば、カンチレバーの自由端の変位を一定に保つように探針と試料との距離を制御しながら探針を走査させると、探針の先端は試料表面の凹凸に沿って移動するので、探針の先端の位置情報から試料の表面形状を示す三次元的な情報を得ることができる。
【0005】
なお、走査型プローブ顕微鏡のその他の例としては、探針の原子と試料表面の原子との間に生じる原子間力を用いる代わりに、探針と試料との間に流れるトンネル電流を利用することにより試料表面の三次元的な情報を得ることも可能な走査型トンネル顕微鏡もある。
【0006】
また、光学顕微鏡と走査型プローブ顕微鏡とが一体化されたプローブ走査装置が開発されている。
【0007】
ここで、従来のプローブ走査装置の概略を図面を参照しながら説明する。なお、下記に示すプローブ走査装置は、光学顕微鏡と走査型プローブ顕微鏡の一例である原子間力顕微鏡とが一体的に構成されたものである(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
特許文献1のプローブ走査装置を説明する。図15は、特許文献1のプローブ走査装置の構成図である。
【0009】
図15に示すように、特許文献1のプローブ走査装置は、制御装置831、光学顕微鏡817および原子間力顕微鏡800を含む。また、原子間力顕微鏡800は、カンチレバー821、探針820およびXYZ微動機構819を含む。
【0010】
このプローブ走査装置においては、試料814の表面が光学顕微鏡817により観察される。また、XYZ微動機構819に保持されたカンチレバー821により探針820が試料814の表面に沿って走査される。それにより、試料814の表面が原子間力顕微鏡800により観察される。
【0011】
光学顕微鏡817および原子間力顕微鏡800による試料814の観察結果は、制御装置831により画像化されるとともに表示装置833に表示される。
【0012】
XYZ微動機構819によるカンチレバー821の走査範囲は非常に小さい。そこで、このプローブ走査装置においては、試料814はXYステージ812上に設けられた粗動機構813上に載置される。
【0013】
制御装置831は、XYステージ812の動作を制御するXYステージ制御部831aを有する。XYステージ制御部831aからXYステージ812に所定数のパルスが与えられると、XYステージ812に設けられたステッピングモータが動作する。それにより、XYステージ812上の粗動機構813および試料814が水平方向に大きく移動する。
【0014】
したがって、上記のプローブ走査装置においては、例えばXYステージ812により試料814を移動させつつ、原子間力顕微鏡800による観察を行う。これにより、使用者は、複数回に渡って取得された観察結果を連結することにより広い範囲で原子間力顕微鏡による試料814の観察を行うことができる。
【特許文献1】特開2003−28772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、XYステージ812により試料814を移動させつつ、原子間力顕微鏡800による試料814の観察を行う際には、試料載置面のわずかな傾斜により以下のような弊害が生じる。
【0016】
図16は、試料載置面のわずかな傾斜が原子間力顕微鏡による試料814の観察結果に与える影響を説明するための図である。図16において、水平面内で直交する2方向をX方向およびY方向とし、X方向およびY方向に垂直な方向をZ方向とする。また、以下の説明では、上記のXYステージ812および粗動機構813を試料載置台STと総称する。
【0017】
図16(a)に示すように、試料載置台ST上に試料814が載置されている状態で、例えば第1の領域JA1を原子間力顕微鏡800により観察する。その後、図16(b)に示すように、試料載置台STを太線矢印で示すように大きく移動させ、第2の領域JA2を原子間力顕微鏡800により観察する。
【0018】
ここで、試料載置台STの試料載置面SFは、XY平面に平行であるべきである。しかしながら、実際には、試料載置面SFはわずかな角度θjで傾斜している場合がある。
【0019】
このように、傾斜する試料載置面SFに試料814が載置された状態で、試料814がその傾斜方向に移動されると、試料814の任意の観察点mcにおけるZ方向位置が、移動前と移動後とで所定の高さDH分変化する。
【0020】
例えば、試料載置面SFの傾斜角度θjが1/60度である場合、試料814の観察点mcがその傾斜方向に200μm移動すると、観察点mcはZ方向に約58nm移動する。
【0021】
原子間力顕微鏡800は、試料814の表面形状をZ方向における高さ情報として、数十nmのオーダで読み取る。したがって、試料載置台STで試料814を移動させることにより複数回に渡って取得された観察結果を連結する際に、数十nmの測定誤差が生じると、各観察結果の連結作業が困難となる。
【0022】
そのため、従来のプローブ走査装置では、広範囲に渡る複数の観察結果を連結する作業に熟練を要するとともに、迅速かつ正確な観察を行うことが困難であった。
【0023】
本発明の目的は、広範囲に渡る試料の観察を容易に行うことができるとともに、迅速かつ正確な観察を行うことが可能な顕微鏡システム、観察方法および観察プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
(1)第1の発明に係る顕微鏡システムは、試料が載置される試料載置台と、試料載置台に載置された試料の表面に沿って探針を走査させることにより試料の走査された領域の高さに関する情報を高さ情報として取得する走査型プローブ顕微鏡と、試料載置台に載置された試料の高さ情報を取得するための走査単位領域を重複領域を設けつつ複数の位置に設定する設定手段と、設定手段により複数の位置に設定された走査単位領域において走査型プローブ顕微鏡により取得された高さ情報を階調を有する画像としてそれぞれ表示する表示手段と、表示手段により表示された複数の走査単位領域の画像のうち隣接する走査単位領域の画像の重複領域で互いに対応する部分が等しい階調を有するように走査単位領域の画像の階調を補正する補正手段と、表示手段において隣接する走査単位領域の画像を重複領域で重ね合わせることにより隣接する走査単位領域の画像を連結するための連結手段とを備えるものである。
【0025】
この発明に係る顕微鏡システムにおいては、設定手段が、試料載置台に載置された試料の高さ情報を取得するための走査単位領域を重複領域を設けつつ複数の位置に設定する。
【0026】
設定手段により複数の位置に設定された走査単位領域において、試料載置台に載置された試料の表面に沿って探針が走査されることにより、試料の表面の高さに関する情報が高さ情報として走査型プローブ顕微鏡により取得される。
【0027】
走査型プローブ顕微鏡により取得された高さ情報が、階調を有する画像として表示手段によりそれぞれ表示される。
【0028】
補正手段は、表示手段により表示された複数の走査単位領域の画像のうち隣接する走査単位領域の重複領域で互いに対応する部分が等しい階調を有するように走査単位領域の画像の階調を補正する。
【0029】
連結手段は、表示手段において隣接する走査単位領域の画像を重複領域で重ね合わせることにより隣接する走査単位領域の画像を連結する。
【0030】
このように、走査単位領域の画像の階調が補正されることにより、使用者が隣接する走査単位領域の重複領域のパターンを容易に認識することができる。それにより、使用者は隣接する走査単位領域の画像を重複領域で容易に連結することができる。したがって、試料の迅速かつ正確な観察が可能となる。
【0031】
また、複数の走査単位領域の画像を容易に連結することができるので、使用者は、広範囲に渡る試料の領域を容易に観察することができる。
【0032】
(2)補正手段は、連結手段による隣接する走査単位領域の画像の連結後、連結された複数の走査単位領域の画像の階調を表示装置で表示可能な階調の範囲内となるように補正してもよい。
【0033】
この場合、連結手段による隣接する走査単位領域の画像の連結後、連結された複数の走査単位領域の画像の階調が、表示装置で表示可能な階調の範囲内となるように補正手段により補正される。これにより、連結された複数の走査単位領域の画像の階調が正確に表示される。
【0034】
(3)顕微鏡システムは、試料載置台に載置された試料の画像を取得する光学顕微鏡をさらに備えてもよい。
【0035】
この場合、光学顕微鏡により試料載置台に載置された試料の画像が取得される。それにより、使用者は、試料載置台に載置された試料において観察すべき領域を光学顕微鏡により探索することができる。
【0036】
(4)表示手段は、光学顕微鏡により取得された画像を表示してもよい。この場合、光学顕微鏡により取得された画像および走査型プローブ顕微鏡により取得された高さ情報に基づく階調を有する画像が表示手段により表示される。
【0037】
それにより、使用者は、光学顕微鏡により取得された画像および走査型プローブ顕微鏡により取得された高さ情報に基づく階調を有する画像を個別の表示装置を用いることなく容易に視認することができる。
【0038】
(5)第2の発明に係る観察方法は、試料載置台に載置された試料の表面に沿って探針を走査させることにより試料の高さに関する情報を高さ情報として取得する顕微鏡システムを用いた観察方法であって、試料載置台に載置された試料の高さ情報を取得するための走査単位領域を重複領域を設けつつ複数の位置に設定するステップと、試料載置台に載置された試料の表面に沿って探針を走査させることにより試料の走査された領域の高さに関する情報を高さ情報として取得するステップと、複数の位置に設定された走査単位領域において取得された高さ情報を階調を有する画像としてそれぞれ表示するステップと、表示された複数の走査単位領域の画像のうち隣接する走査単位領域の画像の重複領域で互いに対応する部分が等しい階調を有するように走査単位領域の画像の階調を補正するステップと、隣接する走査単位領域の画像を重複領域で重ね合わせることにより隣接する走査単位領域を連結するためのステップとを備えるものである。
【0039】
この発明に係る観察方法においては、試料載置台に載置された試料の高さ情報を取得するための走査単位領域が、重複領域を設けつつ複数の位置に設定される。
【0040】
複数の位置に設定された走査単位領域において、試料載置台に載置された試料の表面に沿って探針が走査されることにより、試料の表面の高さに関する情報が高さ情報として取得される。取得された高さ情報が、階調を有する画像としてそれぞれ表示される。
【0041】
表示された複数の走査単位領域の画像のうち隣接する走査単位領域の重複領域で互いに対応する部分が等しい階調を有するように走査単位領域の画像の階調が補正される。
【0042】
隣接する走査単位領域の画像が重複領域で重ね合わせられることにより隣接する走査単位領域の画像が連結される。
【0043】
このように、走査単位領域の画像の階調が補正されることにより、使用者が隣接する走査単位領域の重複領域のパターンを容易に認識することができる。それにより、使用者は隣接する走査単位領域の画像を重複領域で容易に連結することができる。したがって、試料の迅速かつ正確な観察が可能となる。
【0044】
また、複数の走査単位領域の画像を容易に連結することができるので、使用者は、広範囲に渡る試料の領域を容易に観察することができる。
【0045】
(6)第3の発明に係る観察プログラムは、試料載置台に載置された試料の表面に沿って探針を走査させることにより試料の高さに関する情報を高さ情報として取得する顕微鏡システムを制御するコンピュータにより実行可能な観察プログラムであって、試料載置台に載置された試料の高さ情報を取得するための走査単位領域を重複領域を設けつつ複数の位置に設定する処理と、試料載置台に載置された試料の表面に沿って探針を走査させることにより試料の走査された領域の高さに関する情報を高さ情報として取得する処理と、複数の位置に設定された走査単位領域において取得された高さ情報を階調を有する画像としてそれぞれ表示する処理と、表示された複数の走査単位領域の画像のうち隣接する走査単位領域の画像の重複領域で互いに対応する部分が等しい階調を有するように走査単位領域の画像の階調を補正する処理と、隣接する走査単位領域の画像を重複領域で重ね合わせることにより隣接する走査単位領域を連結するための処理とを、コンピュータに実行させるものである。
【0046】
この発明に係る観察プログラムにおいては、試料載置台に載置された試料の高さ情報を取得するための走査単位領域が、重複領域を設けつつ複数の位置に設定される。
【0047】
複数の位置に設定された走査単位領域において、試料載置台に載置された試料の表面に沿って探針が走査されることにより、試料の表面の高さに関する情報が高さ情報として取得される。取得された高さ情報が、階調を有する画像としてそれぞれ表示される。
【0048】
表示された複数の走査単位領域の画像のうち隣接する走査単位領域の重複領域で互いに対応する部分が等しい階調を有するように走査単位領域の画像の階調が補正される。
【0049】
隣接する走査単位領域の画像が重複領域で重ね合わせられることにより隣接する走査単位領域の画像が連結される。
【0050】
このように、走査単位領域の画像の階調が補正されることにより、使用者が隣接する走査単位領域の重複領域のパターンを容易に認識することができる。それにより、使用者は隣接する走査単位領域の画像を重複領域で容易に連結することができる。したがって、試料の迅速かつ正確な観察が可能となる。
【0051】
また、複数の走査単位領域の画像を容易に連結することができるので、使用者は、広範囲に渡る試料の領域を容易に観察することができる。
【発明の効果】
【0052】
本発明に係る顕微鏡システム、観察方法および観察プログラムにおいては、試料載置台に載置された試料の高さ情報を取得するための走査単位領域が、重複領域を設けられつつ複数の位置に設定される。
【0053】
複数の位置に設定された走査単位領域において、試料載置台に載置された試料の表面に沿って探針が走査されることにより、試料の表面の高さに関する情報が高さ情報として取得される。取得された高さ情報が、階調を有する画像としてそれぞれ表示される。
【0054】
表示された複数の走査単位領域の画像のうち隣接する走査単位領域の重複領域で互いに対応する部分が等しい階調を有するように走査単位領域の画像の階調が補正される。
【0055】
隣接する走査単位領域の画像が重複領域で重ね合わせられることにより隣接する走査単位領域の画像が連結される。
【0056】
このように、走査単位領域の画像の階調が補正されることにより、使用者が隣接する走査単位領域の重複領域のパターンを容易に認識することができる。それにより、使用者は隣接する走査単位領域の画像を重複領域で容易に連結することができる。したがって、試料の迅速かつ正確な観察が可能となる。
【0057】
また、複数の走査単位領域の画像を容易に連結することができるので、使用者は、広範囲に渡る試料の領域を容易に観察することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
本発明の一実施の形態に係る顕微鏡システム、観察方法および観察プログラムについて、図面を参照しつつ説明する。
【0059】
(1) 顕微鏡システムの構成
図1は、本発明の一実施の形態に係る顕微鏡システムの外観を示す図である。図1に示すように、本実施の形態に係る顕微鏡システム1は、プローブ走査装置1Aおよびパーソナルコンピュータ1Bからなる。プローブ走査装置1Aおよびパーソナルコンピュータ1Bは、互いにケーブルcaにより接続されている。
【0060】
図1では、プローブ走査装置1Aが斜視図で示され、パーソナルコンピュータ1Bは正面図で示されている。ここで、プローブ走査装置1Aの斜視図において、水平面内で直交する2方向をX方向およびY方向とし、X方向およびY方向に垂直な方向をZ方向とする。これらのX方向、Y方向およびZ方向の定義は、後述する図2、図4、図6および図14においても同様である。
【0061】
(1−a) プローブ走査装置の構成
プローブ走査装置1Aについて説明する。図2は、図1のプローブ走査装置1Aの組立て斜視図である。
【0062】
図1および図2に示すように、本実施の形態に係るプローブ走査装置1Aは、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)10および光学顕微鏡20を一体的に備える。原子間力顕微鏡10および光学顕微鏡20は、顕微鏡連結部材40に取り付けられ、ベース筐体部50により保持される。
【0063】
図2に示すように、ベース筐体部50は、XY平面に平行となるように配置される底板51を有する。底板51の四隅には、Z方向に延びる支持脚53a,53b,53c,53dが取り付けられている。また、底板51の四辺には、4つの支持脚53a,53b,53c,53dおよび底板51を取り囲むように補強板52が取り付けられている。
【0064】
プローブ走査装置1Aの組立て時において、4つの支持脚53a,53b,53c,53dの上端部には、それぞれ弾性部材54a,54b,54c,54dが取り付けられる。
【0065】
顕微鏡連結部材40は、AFM固定部材41と光学顕微鏡固定部材42とが一体的に形成された構造を有する。AFM固定部材41は、略箱形状を有し、内部に試料載置台収容空間41sを有する。光学顕微鏡固定部材42は角筒形状を有し、内部に光学顕微鏡収容空間42sを有する。
【0066】
顕微鏡連結部材40においては、AFM固定部材41に原子間力顕微鏡10が取り付けられ、光学顕微鏡固定部材42に光学顕微鏡20が取り付けられる。これにより、原子間力顕微鏡10および光学顕微鏡20が一体的に連結される。
【0067】
顕微鏡連結部材40への原子間力顕微鏡10および光学顕微鏡20の取り付けの詳細は後述する。
【0068】
原子間力顕微鏡10および光学顕微鏡20が連結された状態で、XY平面内における顕微鏡連結部材40の上端部側の四隅が被支持部43a,43b,43c,43dとして各弾性部材54a,54b,54c,54dの上端部に取り付けられる。
【0069】
これにより、図1に示すように、顕微鏡連結部材40により互いに連結された原子間力顕微鏡10および光学顕微鏡20が、ベース筐体部50により弾性的に保持される。
【0070】
原子間力顕微鏡10は、AFMスキャナ11および試料載置台30を備える。AFMスキャナ11は、顕微鏡連結部材40のAFM固定部材41上に取り付けられる。
【0071】
具体的には、図2に示すように、AFM固定部材41の上端部にAFMスキャナ支持部44が形成されている。AFMスキャナ支持部44は、平面視でL字状をなし、水平な上面を有する。この上面上にAFMスキャナ11が取り付けられる。
【0072】
AFMスキャナ11の下部には、図1に示すように、ミラーホルダ26および図示しないカンチレバー保持部が設けられている。ミラーホルダ26は光学顕微鏡20のミラー25を保持し、カンチレバー保持部は後述する探針が設けられたカンチレバーを保持する。
【0073】
原子間力顕微鏡10による試料Mの観察時には、カンチレバーのZ方向の変位、すなわち後述する圧電素子110(図4)に連結されたカンチレバー保持部のZ方向の変位がケーブルcaを通じてパーソナルコンピュータ1Bに送られる。それにより、パーソナルコンピュータ1Bは後述する表示装置にカンチレバーの変位に基づく画像を表示する。
【0074】
AFMスキャナ11のカンチレバーに設けられている探針を試料Mの表面に沿って走査させる構成の詳細は後述する。
【0075】
図2に示すように、試料載置台30は顕微鏡連結部材40の試料載置台収容空間41sに収容される。試料載置台30は、移動プレート30a、Z方向移動機構30bおよびXY方向移動機構30cを含む。
【0076】
図2によれば、XY方向移動機構30c上にZ方向移動機構30bが設けられ、Z方向移動機構30b上に移動プレート30aが設けられている。
【0077】
XY方向移動機構30cは2つのモータMa,Mbを有する。また、Z方向移動機構30bは図示しない1つのモータを有する。これらの3つのモータは、後述の図3の動作制御部81に接続されている。動作制御部81には、後述の図3のX方向電動スイッチSW1、Y方向電動スイッチSW2およびZ方向電動スイッチSW3が接続されている。図1および図2では、これらのスイッチSW1〜SW3を図示しないが、実際はプローブ走査装置1Aの正面側に各スイッチSW1〜SW3が設けられる。
【0078】
上記のX方向電動スイッチSW1、Y方向電動スイッチSW2およびZ方向電動スイッチSW3に代えて、移動プレート下降スイッチ、最下点スイッチおよび照明スイッチを設けてもよい。
【0079】
この場合、移動プレート下降スイッチは、試料Mが載置された移動プレート30aを下降させるために用いられる。最下点スイッチは、試料Mが載置された移動プレート30aを移動プレート30aがZ方向で移動可能な最下点に移動させるために用いられる。照明スイッチは、プローブ走査装置1A内に設けられる照明(図示せず)をオンまたはオフするために用いられる。
【0080】
使用者は、Z方向電動スイッチSW3を操作することによりZ方向移動機構30bを動作させる。これにより、試料Mが載置された移動プレート30aをZ方向(鉛直方向)に移動させることができる。
【0081】
また、使用者は、X方向電動スイッチSW1およびY方向電動スイッチSW2を操作することによりXY方向移動機構30cを動作させる。これにより、試料Mが載置された移動プレート30aをX方向およびY方向(水平方向)に移動させることができる。
【0082】
光学顕微鏡20は、レンズ格納部21、光軸変換部22、電動ズーム鏡筒23、CCD(電荷結合素子)カメラボックス24、ミラー25(図1)、ミラーホルダ26(図1)および遊動台座27を備える。光軸変換部22は光軸変換ミラー22aを内蔵する。
【0083】
電動ズーム鏡筒23は、後述の図3のズーム調整装置231およびフォーカス調整装置232を内蔵する。また、CCDカメラボックス24は後述の図3のCCDカメラ241を内蔵する。
【0084】
光学顕微鏡20のレンズ格納部21は、光軸変換部22に取り付けられ、光軸変換部22は、電動ズーム鏡筒23の上端部に取り付けられている。電動ズーム鏡筒23の下端部にCCDカメラボックス24が設けられている。光軸変換部22の内部では、光軸変換ミラー22aが電動ズーム鏡筒23の軸心の延長線上に配置されている。
【0085】
光学顕微鏡20の電動ズーム鏡筒23は、Z方向に平行な軸に対してやや傾斜するように遊動台座27により支持される。
【0086】
遊動台座27が、顕微鏡連結部材40の光学顕微鏡固定部材42上に取り付けられる。これにより、遊動台座27に支持された電動ズーム鏡筒23が光学顕微鏡収容空間42s内に収容される。
【0087】
なお、遊動台座27の光学顕微鏡固定部材42上への取り付けは、接続部材42c(図1)を光学顕微鏡固定部材42の上面にネジ止めし、固定された接続部材42cに遊動台座27をネジ止めすることにより行う。
【0088】
遊動台座27は、図示しない2つの移動機構を有する。一方の移動機構は、電動ズーム鏡筒23およびそれに取り付けられた各構成部をY方向に移動させることができる。また、他方の移動機構は、電動ズーム鏡筒23およびそれに取り付けられた各構成部を電動ズーム鏡筒23の軸心に沿う方向に移動させることができる。
【0089】
2つの移動機構は、ともに光学顕微鏡固定部材42上に設けられる光学顕微鏡移動操作部60に接続される。図1に示すように、光学顕微鏡移動操作部60には、Y方向操作ノブ60aおよび上下方向操作ノブ60bが設けられている。
【0090】
Y方向操作ノブ60aは遊動台座27の一方の移動機構を操作するために設けられ、上下方向操作ノブ60bは遊動台座27の他方の移動機構を操作するために設けられる。
【0091】
これにより、使用者は、Y方向操作ノブ60aを操作することにより光学顕微鏡20をY方向に移動させることができる。また、使用者は、上下方向操作ノブ60bを操作することにより光学顕微鏡20を電動ズーム鏡筒23の軸心に沿う方向に移動させることができる。
【0092】
ここで、試料Mが試料載置台30上に載置された状態で、ミラー25は試料Mの上方に位置する。この場合、図示しない光源から発せられる照明光が試料Mに照射され、その試料Mからの反射光がミラー25に照射される。
【0093】
試料Mからの反射光は、ミラー25により反射され、レンズ格納部21内のレンズを通して光軸変換部22内の光軸変換ミラー22aにより反射される。光軸変換ミラー22aによる反射光は、電動ズーム鏡筒23を通してCCDカメラボックス24に取り込まれる。それにより、CCDカメラボックス24内のCCDカメラに試料Mの画像が形成される。
【0094】
光学顕微鏡20による試料Mの観察時には、CCDカメラに形成された試料Mの画像がケーブルcaを通じてパーソナルコンピュータ1Bに送られる。それにより、パーソナルコンピュータ1Bは後述する表示装置に試料Mの画像を表示する。
【0095】
(1−b) 顕微鏡システムの制御系
顕微鏡システム1の制御系について説明する。図3は、顕微鏡システム1の制御系を説明するためのブロック図である。
【0096】
図3に示すように、本実施の形態に係る顕微鏡システム1において、プローブ走査装置1Aは、原子間力顕微鏡10、光学顕微鏡20、インターフェイス部80、動作制御部81、記憶部82、X方向電動スイッチSW1、Y方向電動スイッチSW2およびZ方向電動スイッチSW3を備える。
【0097】
原子間力顕微鏡10はAFMスキャナ11および試料載置台30を含み、光学顕微鏡20はズーム調整装置231、フォーカス調整装置232およびCCDカメラ241を含む。
【0098】
プローブ走査装置1Aにおいて、上記の各構成部は互いに電気的に接続されている。インターフェイス部80はケーブルcaを介してパーソナルコンピュータ1Bに接続されている。
【0099】
動作制御部81は、例えばCPU(中央演算処理装置)またはマイクロコンピュータ等を含み、プローブ走査装置1A内の他の構成部の動作を制御する。
【0100】
記憶部82は、例えばメモリからなり、各構成部の動作に関するプログラムを記憶する。
【0101】
試料載置台30は、X方向移動モータ、Y方向移動モータおよびZ方向移動モータを有する。これらのモータは、それぞれ、図2のモータMa、モータMbおよびZ方向移動機構30bのモータに相当する。
【0102】
使用者によりX方向電動スイッチSW1が操作されると、動作制御部81はX方向移動モータを動作させる。使用者によりY方向電動スイッチSW2およびZ方向電動スイッチSW3が操作された場合も、同様に、動作制御部81はY方向移動モータおよびZ方向移動モータを動作させる。
【0103】
その結果、上述のように、図1の試料Mが載置された移動プレート30aをX方向、Y方向およびZ方向に移動させることが可能となる。
【0104】
図3において、光学顕微鏡20に含まれるズーム調整装置231は光学顕微鏡20の倍率を調整する。また、フォーカス調整装置232は光学顕微鏡20の焦点位置を調整する。
【0105】
使用者が後述するパーソナルコンピュータ1Bの入力装置95により光学顕微鏡20の倍率を入力すると、パーソナルコンピュータ1Bから動作制御部81に光学顕微鏡20の倍率を示す信号が与えられる。これにより、動作制御部81は、与えられた信号に基づいてズーム調整装置231を動作させる。その結果、光学顕微鏡20の倍率が調整される。
【0106】
また、使用者が後述するパーソナルコンピュータ1Bの入力装置95により光学顕微鏡20の焦点位置を入力すると、パーソナルコンピュータ1Bから動作制御部81に光学顕微鏡20の焦点位置を示す信号が与えられる。これにより、動作制御部81は、与えられた信号に基づいてフォーカス調整装置232を動作させる。その結果、光学顕微鏡20の焦点位置が調整される。
【0107】
光学顕微鏡20のCCDカメラ241は、試料Mの画像をパーソナルコンピュータ1Bに出力する。これにより、後述するパーソナルコンピュータ1Bの表示装置91に光学顕微鏡20により観察される試料Mの画像が表示される。
【0108】
以下の説明において、後述する表示装置91に表示される画像のうち、光学顕微鏡20により観察された試料Mの画像を光顕画像と呼ぶ。
【0109】
パーソナルコンピュータ1Bは、インターフェイス部90、表示装置91、ROM(リードオンリメモリ)92、RAM(ランダムアクセスメモリ)93、CPU94、入力装置95、記録媒体駆動装置96および外部記憶装置97を備える。
【0110】
インターフェイス部90は、ケーブルcaを介してプローブ走査装置1Aに接続されている。
【0111】
表示装置91は、液晶表示パネルまたはCRT(陰極線管)等からなり、原子間力顕微鏡10により観察される試料Mの表面形状に基づく画像および上述の光顕画像を表示する。
【0112】
ROM92にはシステムプログラムが記憶される。記録媒体駆動装置96は、CD(コンパクトディスク)ドライブ、DVD(デジタルバーサタイルディスク)ドライブ等からなり、CD、DVDドライブ等の記録媒体98に対してデータの読み書きを行う。
【0113】
記録媒体98には、後述する設定プログラムおよび連結プログラムが記録されている。
【0114】
入力装置95は、キーボードおよびマウス等からなり、使用者が種々の指令およびデータの入力をするために用いられる。本実施の形態では、例えば原子間力顕微鏡10による後述の走査単位領域および観察対象領域の寸法がキーボードまたはマウスにより入力される。詳細は後述する。
【0115】
外部記憶装置97は、ハードディスク装置等からなり、記録媒体駆動装置96を介して記録媒体98から読み込まれた設定プログラムおよび連結プログラムを記憶する。
【0116】
CPU94は、外部記憶装置97に記憶された設定プログラムおよび連結プログラムをRAM93上で実行し、パーソナルコンピュータ1Bの各構成部を制御するとともに、プローブ走査装置1Aに種々の信号を出力する。それにより、プローブ走査装置1Aの動作制御部81を介してプローブ走査装置1Aの動作を制御することができる。
【0117】
なお、記録媒体98の代わりにROM等の半導体メモリ、ハードディスク装置等の他の記録媒体を用いてもよい。また、プログラムをインターネットを通して外部記憶装置97にダウンロードしてもよい。
【0118】
(1−c) コンタクトモードを用いる原子間力顕微鏡の制御系の詳細
プローブ走査装置1Aの原子間力顕微鏡10の制御系の詳細を説明する。ここで、コンタクトモードとは、原子間力顕微鏡10において、後述の探針を試料Mに接触する位置まで近付けて試料表面に沿って走査させる観察モードである。
【0119】
図4は、図1の原子間力顕微鏡10のコンタクトモードを用いる場合の制御系を示すブロック図である。
【0120】
原子間力顕微鏡10は、板バネ状のカンチレバー100、探針101および圧電素子110を含む。
【0121】
カンチレバー100の先端に探針101が設けられている。この探針101を試料Mに近付けると、探針101と試料Mとの間に原子間力が生じ、カンチレバー100が上下方向にたわむ。
【0122】
AFMスキャナ11内に設けられた圧電素子110により試料M表面に沿った探針101の走査が行われる。圧電素子110は、試料M表面に沿って探針101を走査させるために、カンチレバー100をX方向およびY方向に移動させる。
【0123】
なお、探針101を固定した状態で試料載置台30の移動プレート30a(図1)をX方向およびY方向に移動させることにより、試料M表面に沿った探針101の走査を行ってもよい。また、圧電素子110の代わりにボイスコイルモータを用いてもよい。
【0124】
圧電素子110は、カンチレバー100のたわみ量を一定に保つように、すなわち、探針101と試料Mとの間に生じる原子間力を一定に保つようにカンチレバー100をZ軸方向に動作させる。探針101と試料Mとの間の原子間力を一定に保つために圧電素子110に印加した電圧値の変化に基づいてZ方向におけるカンチレバー100の位置情報が取得される。この位置情報から試料Mの3次元的な表面形状に関する形状情報が取得される。これにより、その形状情報を画像化することが可能となる。
【0125】
圧電素子110によりカンチレバー100をX方向およびY方向に移動させることができる範囲は限られている。本実施の形態において、圧電素子110は、例えばX方向およびY方向にそれぞれ200μmの範囲内(200μm×200μmの矩形領域内)でカンチレバー100を移動させる。
【0126】
この場合、原子間力顕微鏡10において一回当り探針101が走査されることにより観察される試料M上の領域の最大寸法は、圧電素子110によりカンチレバー100が移動可能な200μm×200μmとなる。
【0127】
したがって、例えば使用者が、試料M上の200μm×200μmよりも大きい寸法の領域を観察したい場合には、移動プレート30aを移動させつつ探針101の走査を繰り返す。それにより、複数の領域の形状情報が取得される。そして、取得された形状情報を連結することにより、使用者は所望の領域を観察することができる。
【0128】
なお、後述するように、一回当り探針101が走査されることにより観察可能な試料M上の領域の寸法は、使用者が自由に設定可能である。したがって、使用者は、試料M上の200μm×200μmよりも小さい寸法の領域を観察したい場合でも、探針101の走査を複数回に渡って繰り返し、取得される複数の形状情報を連結して試料Mを観察してもよい。
【0129】
以下の説明において、一回当り探針101が走査されることにより観察される試料M上の領域を走査単位領域と呼ぶ。
【0130】
圧電素子110は、動作制御部81により制御される。動作制御部81は、CPU131、変位検出部132、Z方向サーボ回路133およびX−Y方向サーボ回路134を含む。
【0131】
Z方向サーボ回路133は、カンチレバー100の探針101がZ方向に動作するように圧電素子110を制御する。また、X−Y方向サーボ回路134は、カンチレバー100の探針101がX方向およびY方向に移動するように圧電素子110を制御する。変位検出部132については後述する。
【0132】
ここで、試料M表面の凹凸により生じるカンチレバー100のたわみ量を一定に保つための原子間力顕微鏡10における動作について説明する。
【0133】
カンチレバー100には、例えば歪ゲージ等を含む変位センサが内蔵される。これにより、カンチレバー100の微小なたわみ量に応じた信号が出力される。
【0134】
変位センサの出力信号は、動作制御部81の変位検出部132に与えられる。それにより、変位検出部132はカンチレバー100のたわみ量を検出する。
【0135】
動作制御部81のCPU131は、変位検出部132により検出されたカンチレバー100のたわみ量に基づいて、このたわみ量を一定に保つように圧電素子110を制御する。
【0136】
動作制御部81は、図3のインターフェイス部80を介してパーソナルコンピュータ1Bに接続されている。これにより、上述のように、カンチレバー100のZ方向の変位(カンチレバー保持部のZ方向の変位)がケーブルcaを通じてパーソナルコンピュータ1Bに送られる。それにより、パーソナルコンピュータ1Bの図3の表示装置91に、試料Mの3次元的な形状情報に基づく画像が映し出される。
【0137】
以下の説明において、表示装置91に表示される画像のうち、原子間力顕微鏡10により観察された試料Mの3次元的な形状情報に基づく画像を形状画像と呼ぶ。
【0138】
なお、本実施の形態においては、原子間力顕微鏡10の観察モードとして、コンタクトモードを用いているが、これに限定されるものではなく、探針101を試料Mに接触させることなく探針101を共振させ、試料M表面の近傍を走査させるノンコンタクトモード(ダンピングモード)を用いてもよい。
【0139】
上記では、カンチレバー100のたわみ量を検出するために、カンチレバー100に変位センサを内蔵する自己検知方式が用いられているが、レーザ光をカンチレバー100に照射し、カンチレバー100からの反射光を光検出器により検出してカンチレバー100のたわみ量を検出する光てこ方式を用いてもよい。
【0140】
(2) 顕微鏡システムの操作手順
顕微鏡システム1による試料Mの観察手順について説明する。図5は、本発明の一実施の形態に係る顕微鏡システム1の操作手順の一例を示すフローチャートである。以下の説明において、観察対象領域とは、原子間力顕微鏡10を用いて試料Mを観察するときの試料M上の領域をいう。
【0141】
図5に示すように、使用者は、図1の試料載置台30の移動プレート30a上に試料Mを載置し(ステップS1)、光学顕微鏡20による試料Mの観察を行う(ステップS2)。
【0142】
このステップS2において、使用者は、例えば原子間力顕微鏡10による試料Mの観察対象領域の探索を行う(ステップS2a)。また、使用者は光学顕微鏡20の倍率の調整等も行う。
【0143】
なお、原子間力顕微鏡10による試料Mの観察対象領域の探索時において、使用者は例えば光学顕微鏡20の位置調整を行う。具体的には、上述の圧電素子110により探針101が移動可能な領域の中心と、光学顕微鏡20による観察視野の中心とが一致するように、光学顕微鏡20の位置を調整する。この位置調整は、使用者が図1のY方向操作ノブ60aおよび上下方向操作ノブ60bを操作することにより行われる。
【0144】
次いで、使用者は、原子間力顕微鏡10による観察条件の設定を行う(ステップS3)。
【0145】
本実施の形態において、観察条件の設定には、走査単位領域の寸法設定(ステップS3a)、ならびに観察対象領域の指定および寸法設定(ステップS3b)が含まれる。
【0146】
ここで、原子間力顕微鏡10における走査単位領域の寸法設定は、例えば使用者が図3の入力装置95のキーボードを用いて所望の値を入力することにより行われる。
【0147】
原子間力顕微鏡10における観察対象領域の指定は、例えば使用者が入力装置95のマウスを用いて図3の表示装置91に表示される光顕画像の所望の領域をクリック操作またはドラッグ操作することにより行われる。この場合、使用者のクリック操作またはドラッグ操作により指定される光顕画像の領域に対応する試料Mの領域が観察対象領域として指定される。
【0148】
観察対象領域の指定は、使用者が移動プレート30aをX方向およびY方向に移動させつつ、入力装置95のマウスを用いて表示装置91に表示される光顕画像の所望の領域でクリック操作することにより指定されてもよい。
【0149】
原子間力顕微鏡10における観察対象領域の寸法設定は、例えば使用者が図3の入力装置95のキーボードを用いて所望の値を入力することにより行われる。また、この寸法設定は、使用者がマウスを用いて表示装置91に表示される光顕画像の所望の領域をクリック操作またはドラッグ操作することにより行われてもよい。
【0150】
なお、上記において、使用者が走査単位領域の寸法を設定し、観察対象領域の寸法を設定した場合には、図3のパーソナルコンピュータ1BのCPU94は、設定された観察対象領域を観察するために必要な走査単位領域の個数と、観察対象領域内での走査単位領域の位置と、後述する重複領域の寸法とを自動的に設定する。詳細は後述する。
【0151】
上記の他、使用者は原子間力顕微鏡10による観察条件の設定時に、試料M上で取得する後述の形状情報の観察ピッチを設定してもよいし、観察対象領域内で所望の個数の走査単位領域を設定したい場合に、その個数を設定してもよい。
【0152】
この場合、CPU94は、使用者により設定された観察ピッチおよび走査単位領域の個数に基づいて観察対象領域を観察するために必要な走査単位領域の個数と、後述する重複領域の寸法を設定する。
【0153】
その後、使用者は、ステップS3において設定した観察条件に基づいて原子間力顕微鏡10による試料Mの観察を行う(ステップS4)。
【0154】
上記ステップS3において、使用者が観察条件の設定を行うことにより、CPU94が観察対象領域を観察するために必要な走査単位領域を複数に設定した場合には、原子間力顕微鏡10によりそれらの複数の走査単位領域に対応する形状情報が取得され、図3の表示装置91に複数の形状画像が表示される。
【0155】
この場合、使用者は、複数の走査単位領域において取得された形状画像を手動で連結し(ステップS4a)、または自動で連結し(ステップS4b)、連結された形状画像を表示装置91に表示させる(ステップS4c)。
【0156】
例えば、複数の走査単位領域が自動的に連結された後に、使用者が連結された各走査単位領域の形状画像の位置を手動で調整して、複数の走査単位領域の形状画像をより正確に連結することができる。あるいは、使用者が複数の走査単位領域の形状画像を手動のみにより連結することもできる。
【0157】
これらの手順は、例えば使用者が入力装置95のキーボードおよびマウスを操作することにより行われる。詳細は後述する。これにより、使用者は、複数の走査単位領域を含む観察対象領域の形状画像を容易に確認することができる。
【0158】
(3) 形状情報の構成
原子間力顕微鏡10による試料Mの観察時に取得される形状情報の構成を概念的に説明する。
【0159】
図6は、形状情報の構成を説明するための概念図である。図6に示すように、試料載置台30上に載置される試料Mに対してX方向、Y方向およびZ方向を定義する。形状情報は、予め定められた試料M上の複数の観察点のX方向、Y方向およびZ方向における位置情報(X位置情報、Y位置情報およびZ位置情報)を収集することにより取得される。図6では、複数の観察点が試料M上に示される実線の交点により示されている。
【0160】
図6では、X位置情報が符号x1,x2,x3,x4,x5で表され、それらのX位置情報の間隔が符号xpで表されている。また、Y位置情報が符号y1,y2,y3,y4,y5で表され、それらのY位置情報の間隔が符号ypで表されている。
【0161】
ここで、図6に示される試料M上の観察点p1,p2,p3の各々のZ位置情報をz1,z2,z3とすると、観察点p1の形状情報は(x1,y1,z1)で表され、観察点p2の形状情報は(x2,y5,z2)で表され、観察点p3の形状情報は(x5,y3,z3)で表される。
【0162】
図6において、X方向における間隔xpはX方向における試料Mの観察ピッチを示し、Y方向における間隔ypはY方向における試料Mの観察ピッチを示す。
【0163】
上述のように、図5のステップS3において、使用者は入力装置95を操作することにより、X方向およびY方向における観察ピッチxp,ypを設定してもよい。
【0164】
X方向およびY方向における観察ピッチxp,ypが設定されることにより、図4の圧電素子110は、設定された観察ピッチxp,ypに基づいて試料M上の複数の観察点を決定し、それらの観察点の配列に沿うようにカンチレバー100を試料M上でX方向およびY方向に移動させる。
【0165】
また、上述のように、観察対象領域を観察するために必要な走査単位領域が複数に設定された場合には、例えば試料載置台30(図4)のX方向移動モータおよびY方向移動モータは、一の走査単位領域における探針101の走査が終了するとともに、移動プレート30aを移動させ、試料Mをほぼ走査単位領域分X方向およびY方向へ移動させる。
【0166】
本例で表示装置91に表示される形状画像は、例えば試料Mを上方から見た場合を想定した上面視画像である。
【0167】
この場合、表示装置91には形状情報のX位置情報およびY位置情報に基づいて各観察点が表示される画面上のピクセルが決定され、Z位置情報に基づいてそのピクセルの階調が決定される。
【0168】
すなわち、上面視画像においては、各ピクセルの階調がZ位置情報に対応する。なお、Z位置情報が階調の代わりに色彩で表示されてもよい。
【0169】
(4) 複数の上面視画像の連結
上述のように、観察対象領域を観察するために必要な走査単位領域が複数に設定された場合には、原子間力顕微鏡10による試料Mの観察時に走査単位領域ごとに形状情報が取得される。それにより、図3の表示装置91には、各走査単位領域で取得された形状情報に基づいて、複数の上面視画像が表示される。
【0170】
そこで、使用者は図5のステップS4a,S4bに示したように、複数の上面視画像の連結を行う。複数の上面視画像の連結について説明する。
【0171】
図7は、複数の上面視画像の連結を説明するための図である。上述のように、使用者が図3の入力装置95を操作することによる観察条件の設定時に、走査単位領域の寸法設定が行われ、観察対象領域の指定および寸法設定が行われる。
【0172】
これにより、上述のように、図3のCPU94は、設定された観察対象領域を観察するために必要な走査単位領域の個数と、観察対象領域内での走査単位領域の位置と、後述する重複領域の寸法とを自動的に設定する。さらに、CPU94は、設定した観察対象領域内における複数の走査単位領域の重複領域の寸法も設定する。
【0173】
以下の説明では、観察対象領域内に、2つの走査単位領域がそれぞれ第1および第2の走査単位領域として存在する。
【0174】
図7(a)に、試料M上に設定される第1および第2の走査単位領域および観察対象領域の例が示されている。図7(a)では、観察対象領域ARが太い実線により示され、観察対象領域AR内の第1および第2の走査単位領域D1,D2が実線および点線により示されている。
【0175】
上述のように、使用者により観察対象領域ARならびに第1および第2の走査単位領域D1,D2の寸法が設定された場合には、重複領域の寸法も自動的に設定される。図7(a)では、第1および第2の走査単位領域D1,D2間で設定される重複領域D12が一点鎖線により示されている。
【0176】
このように、試料M上の観察対象領域AR、第1および第2の走査単位領域D1,D2および重複領域D12が設定され、探針101が試料M上を走査されることにより第1および第2の走査単位領域D1,D2に対応する第1および第2の上面視画像が得られる。
【0177】
図7(b)に、図7(a)の第1および第2の走査単位領域D1,D2に対応する第1および第2の上面視画像の表示例が示されている。図7(b)に示すように、探針101の走査完了時には、第1および第2の走査単位領域D1,D2で取得された形状情報に基づいて、第1および第2の上面視画像Dp1,Dp2が表示装置91の画面911に表示される。
【0178】
この場合、第1および第2の上面視画像Dp1,Dp2の各々は、図7(a)の重複領域D12に対応する重複部上面視画像Dp12を含む。なお、図7(b)において、第1および第2の上面視画像Dp1,Dp2内の白丸印および黒丸印は、それぞれ第1および第2の上面視画像Dp1,Dp2中のピクセルを表す。
【0179】
ここで、使用者が手動により第1および第2の上面視画像Dp1,Dp2の連結を行う場合、例えば、使用者は、第2の上面視画像Dp2を選択し、第1の上面視画像Dp1の重複部上面視画像Dp12および第2の上面視画像Dp2の重複部上面視画像Dp12のパターンを比較しつつ、第1の上面視画像Dp1の重複部上面視画像Dp12に第2の上面視画像Dpの重複部上面視画像Dp12を位置合わせしながら重ね合わせる。
【0180】
それにより、図7(c)に示すように、第1および第2の上面視画像Dp1,Dp2が連結され、観察対象領域AR全体の上面視画像ARpを得ることができる。
【0181】
上記の重ね合わせ作業は、例えば、使用者が入力装置95のマウスをクリック操作およびドラッグ操作し、画面911上に表示される第1および第2の上面視画像Dp1,Dp2を選択および移動させることにより行われる。
【0182】
また、重ね合わせ作業時においては、第1および第2の上面視画像Dp1,Dp2が透過図で表示される。したがって、使用者は、第1の上面視画像Dp1の重複部上面視画像Dp12および第2の上面視画像Dp2の重複部上面視画像Dp12のパターンを見比べながら容易に重ね合わせ作業を行うことができる。
【0183】
(5) オフセット処理
第1の走査単位領域D1における探針101の走査後、移動プレート30aがY方向に移動され、第2の走査単位領域D2における探針101の走査が行われる場合には、発明が解決しようとする課題において説明したように、移動プレート30aの微小な傾斜等により試料M上の同一観察点で取得されるZ方向情報の値が変化する。
【0184】
換言すれば、試料M上の同一観察点に対応する第1および第2の上面視画像Dp1,Dp2の階調が異なる。この場合、同一の観察点に対応して表示される階調が異なるため、使用者は、第1の上面視画像Dp1の重複部上面視画像Dp12および第2の上面視画像Dp2の重複部上面視画像Dp12の同一部分を識別することが困難である。
【0185】
本実施の形態では、使用者が第1の上面視画像Dp1の重複部上面視画像Dp12および第2の上面視画像Dp2の重複部上面視画像Dp12の同一部分を容易に識別できるようにオフセット処理が行われる。
【0186】
オフセット処理では、第1の上面視画像Dp1の重複部上面視画像Dp12における階調の平均値と、第2の上面視画像Dp2の重複部上面視画像Dp12における階調の平均値とを算出し、それら2つの平均値の差分値をいずれか一方(例えば、第2の上面視画像Dp2)の全領域の階調に加算する。
【0187】
図8は、オフセット処理の一例を示す図である。図8では、Y方向に並ぶ複数の観察点に対応する複数の階調がグラフ化されている。図8において、白丸印は第1の上面視画像Dp1の各ピクセルの階調を表し、黒丸印は第2の上面視画像Dp2の各ピクセルの階調を表す。
【0188】
上記のようにオフセット処理が行われることにより、例えば点線矢印で示すように、第2の上面視画像Dp2の全てのピクセルの階調に上記の差分値DHが加算される。加算後の各ピクセルの階調が点線の丸印で示されている。
【0189】
このように、オフセット処理が行われることにより、試料M上の同一観察点に対応するピクセルの階調が、第1および第2の上面視画像Dp1,Dp2間でほぼ等しくなる。
【0190】
それにより、使用者は、第1の上面視画像Dp1の重複部上面視画像Dp12および第2の上面視画像Dp2の重複部上面視画像Dp12の同一部分を容易に識別することが可能となる。
【0191】
なお、本例では、各ピクセルの階調に基づいてオフセット処理が行われているが、これに代えて、Z位置情報に基づくオフセット処理が行われてもよい。この場合、オフセット処理されたZ位置情報が階調に変換されることにより、上記と同じ効果を得ることができる。
【0192】
(6) 階調補正処理
図3の表示装置91において、画面911で表示可能な階調の範囲には制限がある。したがって、本実施の形態では、オフセット処理後に階調補正処理が行われる。階調補正処理を説明する。
【0193】
図9は、階調補正処理を説明するための図である。図9(a)では、図8と同様にオフセット処理の一例が示されている。ここで、図9(a)中の矢印EBで示される階調の範囲は、画面911で表示可能な階調の範囲を示す。以下、この範囲を階調表示範囲EBと呼ぶ。
【0194】
図9(a)の例では、オフセット処理が行われることにより、黒丸印で示される第2の上面視画像Dp2の一部のピクセルの階調が階調表示範囲EBを超えている。この場合、表示装置91の画面911には階調表示範囲EBを超える階調が正確に表示されない。
【0195】
そこで、階調補正処理を行う。階調補正処理の一例が、図9(b)に示されている。図9(b)の例では、オフセット処理により得られる全てのピクセルの階調に所定の係数を乗算することにより、二重丸で示される新たな階調を得る。それにより、オフセット処理により得られる階調の最大値および最小値が階調表示範囲EB内に収められる。
【0196】
なお、特定の階調範囲における階調に所定の係数を乗算し、局部的に階調の階調補正処理を行ってもよい。
【0197】
Z位置情報に階調補正処理と同様の補正処理が行われてもよい。この場合、補正処理されたZ位置情報が階調に変換されることにより、上記と同じ効果を得ることができる。
【0198】
図10は、オフセット処理および階調補正処理が行われる場合の実際の画面表示例を示す。
【0199】
図10(a)に、探針101の走査完了時に画面911に表示される第1および第2の上面視画像Dp1,Dp2が示されている。ここで、使用者が入力装置95のマウスを操作することにより第2の上面視画像Dp2を選択し、オフセット処理を行う。それにより、第1および第2の上面視画像Dp1,Dp2の重複部上面視画像Dp12の階調がほぼ等しくなるので、使用者は正確に第1および第2の上面視画像Dp1,Dp2の連結を行うことができる。
【0200】
また、連結された上面視画像について階調補正処理を行うことにより、図10(b)に示すように、観察対象領域ARの上面視画像全体の階調が階調表示範囲EBを外れることなく表示される。
【0201】
(7) 設定プログラム
図3の外部記憶装置97に記憶される設定プログラムについて説明する。図11は、設定プログラムのフローチャートである。設定プログラムによる処理は、使用者による図5のステップS3a,S3bの操作に対応して行われる。
【0202】
初めに、図3のCPU94は、使用者が入力装置95を操作することにより走査単位領域の指定があったか否かを判別する(ステップS11)。
【0203】
走査単位領域の指定があった場合、CPU94は、指定された走査単位領域の寸法を設定する(ステップS12)。一方、走査単位領域の指定がない場合、CPU94は、予め定められた走査単位領域の寸法を設定する(ステップS13)。
【0204】
その後、CPU94は、使用者が入力装置95を操作することにより観察対象領域が指定されたか否かを判別する(ステップS14)。観察対象領域の指定があった場合、CPU94は、観察対象領域の寸法の設定を行う(ステップS15)。
【0205】
さらに、CPU94は、ステップS12またはステップS13において設定された走査単位領域の寸法、およびステップS15において設定された観察対象領域の寸法に基づいて重複領域の寸法の設定を行う(ステップS16)。これにより、設定プログラムが終了する。
【0206】
ここで、CPU94は、上記処理時に、使用者が入力装置95を操作することにより観察対象領域内の走査単位領域の個数が指定された場合には、最低限必要な重複領域の寸法を設定し、指定された個数の走査単位領域が観察対象領域に満たない場合に、図3の表示装置91または図示しない音声出力部から警告を発する。
【0207】
さらに、CPU94は、上記処理中に、使用者が入力装置95を操作することにより形状情報の観察ピッチが指定された場合には、観察対象領域の寸法に応じて最低限必要な重複領域の寸法を算出しつつ、必要な走査単位領域の個数を算出する。
【0208】
なお、上記において、走査単位領域、観察対象領域および重複領域の寸法の設定は、各領域の寸法が図3のRAM93上に記憶されることにより行われる。
【0209】
(8) 連結プログラム
図3の外部記憶装置97に記憶される連結プログラムについて説明する。図12および図13は、連結プログラムのフローチャートである。連結プログラムによる処理は、使用者による図5のステップS4a,S4b,S4cの操作に対応して行われる。
【0210】
初めに、図3のCPU94は、設定プログラムにより設定された観察対象領域内の全ての走査単位領域で探針101を走査させ、各走査単位領域の形状情報を取得する(ステップS21)。
【0211】
次に、CPU94は、取得した形状情報に基づいて、全ての走査単位領域の上面視画像を表示装置91に表示させる(ステップS22)。
【0212】
CPU94は、使用者が入力装置95を操作することにより、複数の走査単位領域の上面視画像を手動で連結する旨の指令があるか否かを判別する(ステップS23)。
【0213】
上面視画像を手動で連結する旨の指令があった場合、CPU94は、使用者が入力装置95を操作することにより一方の上面視画像に連結する他方の上面視画像が選択されたか否かを判別する(ステップS24)。
【0214】
上面視画像が選択された場合、CPU94は、使用者が入力装置95を操作することにより一方の上面視画像上に選択された他方の上面視画像の一部が重ね合わされたか否かを判別する(ステップS25)。
【0215】
CPU94は、選択された上面視画像の一部が一方の上面視画像に重ね合わされると、使用者が入力装置95を操作することによりオフセット処理する旨の指令があるか否かを判別する(ステップS26)。
【0216】
オフセット処理する旨の指令がある場合、CPU94は、選択された上面視画像に対するオフセット処理を行う(ステップS27)。そして、CPU94は、使用者が入力装置95を操作することにより位置合わせが完了した旨の指令があるか否かを判別する(ステップS28)。
【0217】
位置合わせ完了の指令がある場合、CPU94は、使用者が入力装置95を操作することにより全ての連結処理が完了した旨の指令があるか否かを判別する(ステップS29)。
【0218】
全ての連結処理が完了した旨の指令がある場合、CPU94は、連結された上面視画像全体に階調のオフセット処理を行う(ステップS30)。このオフセット処理はステップS27のオフセット処理とは異なり、観察対象領域全体の階調を最適に設定するために行われる。
【0219】
その後、CPU94は、使用者が入力装置95を操作することにより階調補正を行う旨の指令があるか否かを判別する(ステップS31)。階調補正を行う旨の指令がない場合、CPU94は後述するステップS33の動作を行う。
【0220】
階調補正を行う旨の指令がある場合、CPU94は、連結された上面視画像に対して上述の階調補正処理を行う(ステップS32)。なお、階調補正処理は、ステップS32に限らず、上記の走査単位領域の上面視画像の連結時に行われてもよい。
【0221】
最後に、CPU94は、連結された上面視画像を表示装置91に表示させるとともに、その上面視画像に対応するX位置情報、Y位置情報および階調のファイルを作成する(ステップS33)。それにより、連結プログラムが終了する。
【0222】
ステップS23において、手動で連結する旨の指令がない場合、CPU94は、自動連結処理を行う(ステップS40)。この自動連結処理は、CPU94が予め設定プログラムにより設定された走査単位領域、観察対象領域および重複領域の寸法に基づいて、試料M上の各観察点で取得されたZ位置情報のパターンマッチングを行うことにより行われる。この場合、CPU94は、自動連結処理を行った後、ステップS30の動作を行う。
【0223】
ステップS24,S25,S26の順は図12の例に限定されず、任意の順に行うことができる。
【0224】
ステップS29において、全ての連結処理が完了した旨の指令がない場合、CPU94はステップS24に戻り、ステップS24〜S29の動作を繰り返す。
【0225】
(9) 階調の傾き補正
本実施の形態においては、観察対象領域の全ての上面視画像が表示装置91に表示された後、全ての上面視画像について階調の傾きを補正してもよい。
【0226】
図14は、階調の傾き補正を説明するための図である。例えば、図14(a)に示すように、移動プレート30aの載置面30fがXY平面(水平面)に対して傾斜している場合に、使用者は予めX方向に平行な軸L1と載置面30fとがなす角θx(図14(b)参照)と、Y方向に平行な軸L2と載置面30fとがなす角θy(図14(c)参照)とを指定する。
【0227】
そして、X方向の傾斜角θxおよびY方向の傾斜角θyと、試料M上の観察点のX位置情報およびY位置情報とに基づいて各観察点に対応するピクセルの階調を補正することにより、移動プレート30aが傾斜している場合でも、その影響を受けない上面視画像を表示装置91に表示させることができる。
【0228】
また、XY平面上で極座標を定義し、使用者が載置面30fの最大傾斜方向に平行な軸L3(図14(a)参照)とその軸L3に対する載置面30fの傾斜角を指定することにより、各観察点に対応するピクセルの階調を補正してもよい。これにより、移動プレート30aが傾斜している場合でも、その影響を受けない上面視画像を表示装置91に表示させることができる。
【0229】
さらに、次のような補正を行ってもよい。例えば、特定の走査単位領域を選択し、その領域を最小二乗法等を用いて傾きが無いように補正する。その補正量を他の連結対象にも反映する。それにより、全ての上面視画像を同じように傾ける。
【0230】
また、例えば、全ての走査単位領域について、最小二乗法等を用いて傾きを補正するために必要な補正量を求め、それらの平均値を用いて全ての上面視画像を補正する。
【0231】
(10) 効果
本実施の形態に係る顕微鏡システム1においては、使用者が図3の入力装置95を操作することにより観察対象領域が指定され、その寸法が設定される。
【0232】
また、使用者が入力装置95を操作することにより走査単位領域の寸法が設定され、設定された観察対象領域を観察するために必要な走査単位領域の個数と、観察対象領域内での走査単位領域の位置と、各走査単位領域の重複領域の寸法とが図3のCPU94により自動的に設定される。
【0233】
CPU94により複数の位置に設定された走査単位領域において、試料載置台30に載置された試料Mの表面に沿って探針101が走査されることにより、試料Mの形状情報が原子間力顕微鏡10により取得される。
【0234】
原子間力顕微鏡10により取得された形状情報のうちZ位置情報が、階調を有するピクセルで表された上面視画像が走査単位領域ごとに表示装置91に表示される。
【0235】
CPU94は、表示装置91により表示された複数の上面視画像のうち隣接する走査単位領域の重複領域で互いに対応する部分のピクセルが等しい階調を示すように上面視画像の階調を補正する。
【0236】
CPU94は、使用者が入力装置95を操作することにより、表示装置91において隣接する走査単位領域の上面視画像を重複部上面視画像で重ね合わせることにより隣接する走査単位領域の上面視画像を連結する。
【0237】
このように、走査単位領域の上面視画像の階調が補正されることにより、使用者が隣接する走査単位領域の重複領域のパターンを容易に認識することができる。それにより、使用者は隣接する走査単位領域の上面視画像を重複部上面視画像で容易に連結することができる。したがって、試料Mの迅速かつ正確な観察が可能となる。
【0238】
また、複数の走査単位領域の上面視画像を容易に連結することができるので、使用者は、広範囲に渡る試料Mの領域を容易に観察することができる。
【0239】
(11) 請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以上、本発明の一実施の形態に係る顕微鏡システム、観察方法および観察プログラムにおいて、形状情報のうちZ位置情報は高さ情報に相当し、原子間力顕微鏡10は走査型プローブ顕微鏡に相当し、CPU94は設定手段に相当する。
【0240】
また、上面視画像は階調を有する画像に相当し、表示装置91は表示手段に相当し、CPU94は補正手段および連結手段に相当し、階調表示範囲EBは表示装置で表示可能な階調の範囲に相当する。
【0241】
さらに、設定プログラムおよび連結プログラムは観察プログラムに相当する。
【産業上の利用可能性】
【0242】
本発明は、光学顕微鏡、原子間力顕微鏡および走査型電子顕微鏡等を用いる顕微鏡システムに有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0243】
【図1】本発明の一実施の形態に係る顕微鏡システムの外観を示す図である。
【図2】図1のプローブ走査装置の組立て斜視図である。
【図3】顕微鏡システムの制御系を説明するためのブロック図である。
【図4】図1の原子間力顕微鏡のコンタクトモードを用いる場合の制御系を示すブロック図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る顕微鏡システムの操作手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】形状情報の構成を説明するための概念図である。
【図7】複数の上面視画像の連結を説明するための図である。
【図8】オフセット処理の一例を示す図である。
【図9】階調補正処理を説明するための図である。
【図10】オフセット処理および階調補正処理が行われる場合の実際の画面表示例を示す。
【図11】設定プログラムのフローチャートである。
【図12】連結プログラムのフローチャートである。
【図13】連結プログラムのフローチャートである。
【図14】階調の傾き補正を説明するための図である。
【図15】特許文献1のプローブ走査装置の構成図である。
【図16】試料載置面のわずかな傾斜が原子間力顕微鏡による試料の観察結果に与える影響を説明するための図である。
【符号の説明】
【0244】
1 顕微鏡システム
1A プローブ走査装置
1B パーソナルコンピュータ
10 原子間力顕微鏡
20 光学顕微鏡
30 試料載置台
81 動作制御部
91 表示装置
94 CPU
95 入力装置
101 探針
110 圧電素子
AR 観察対象領域
D1,D2 走査単位領域
D12 重複領域
Dp1,Dp2 上面視画像
Dp12 重複部上面視画像
EB 階調表示範囲
M 試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料が載置される試料載置台と、
前記試料載置台に載置された試料の表面に沿って探針を走査させることにより前記試料の走査された領域の高さに関する情報を高さ情報として取得する走査型プローブ顕微鏡と、
前記試料載置台に載置された試料の高さ情報を取得するための走査単位領域を重複領域を設けつつ複数の位置に設定する設定手段と、
前記設定手段により複数の位置に設定された走査単位領域において前記走査型プローブ顕微鏡により取得された高さ情報を階調を有する画像としてそれぞれ表示する表示手段と、
前記表示手段により表示された複数の走査単位領域の画像のうち隣接する走査単位領域の画像の重複領域で互いに対応する部分が等しい階調を有するように走査単位領域の画像の階調を補正する補正手段と、
前記表示手段において隣接する走査単位領域の画像を重複領域で重ね合わせることにより前記隣接する走査単位領域の画像を連結するための連結手段とを備えることを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項2】
前記補正手段は、前記連結手段による隣接する走査単位領域の画像の連結後、連結された複数の走査単位領域の画像の階調を前記表示装置で表示可能な階調の範囲内となるように補正することを特徴とする請求項1記載の顕微鏡システム。
【請求項3】
前記試料載置台に載置された試料の画像を取得する光学顕微鏡をさらに備えることを特徴とする請求項1または2記載の顕微鏡システム。
【請求項4】
前記表示手段は、前記光学顕微鏡により取得された画像を表示することを特徴とする請求項3記載の顕微鏡システム。
【請求項5】
試料載置台に載置された試料の表面に沿って探針を走査させることにより試料の高さに関する情報を高さ情報として取得する顕微鏡システムを用いた観察方法であって、
前記試料載置台に載置された試料の高さ情報を取得するための走査単位領域を重複領域を設けつつ複数の位置に設定するステップと、
前記試料載置台に載置された試料の表面に沿って探針を走査させることにより前記試料の走査された領域の高さに関する情報を高さ情報として取得するステップと、
複数の位置に設定された走査単位領域において取得された高さ情報を階調を有する画像としてそれぞれ表示するステップと、
表示された複数の走査単位領域の画像のうち隣接する走査単位領域の画像の重複領域で互いに対応する部分が等しい階調を有するように走査単位領域の画像の階調を補正するステップと、
隣接する走査単位領域の画像を重複領域で重ね合わせることにより前記隣接する走査単位領域の画像を連結するためのステップとを備えることを特徴とする観察方法。
【請求項6】
試料載置台に載置された試料の表面に沿って探針を走査させることにより試料の高さに関する情報を高さ情報として取得する顕微鏡システムを制御するコンピュータにより実行可能な観察プログラムであって、
前記試料載置台に載置された試料の高さ情報を取得するための走査単位領域を重複領域を設けつつ複数の位置に設定する処理と、
前記試料載置台に載置された試料の表面に沿って探針を走査させることにより前記試料の走査された領域の高さに関する情報を高さ情報として取得する処理と、
複数の位置に設定された走査単位領域において取得された高さ情報を階調を有する画像としてそれぞれ表示する処理と、
表示された複数の走査単位領域の画像のうち隣接する走査単位領域の画像の重複領域で互いに対応する部分が等しい階調を有するように走査単位領域の画像の階調を補正する処理と、
隣接する走査単位領域の画像を重複領域で重ね合わせることにより前記隣接する走査単位領域の画像を連結するための処理とを、
前記コンピュータに実行させることを特徴とする観察プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−170873(P2007−170873A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−365579(P2005−365579)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】