説明

食品の減圧乾熱調理装置

【課題】減圧雰囲気において材料に乾熱を加えることにより、調理室の減圧状態には関係なく、加熱手段による材料の乾熱温度は一定させて、材料に煮る、焼く、乾かす等の調理を完全に速やかに施すことができるようにして、高品質の煮物、焼物、干物等が安定して量産できる減圧乾熱調理装置を提供すること。
【解決手段】調理に必要な水分等を保有して、乾熱を加えると保有する水分等で調理を行なわれる材料を調理する食品調理装置であって、この調理装置1は、吸引手段7による排気で大気圧以下の減圧雰囲気に保持される減圧調理室2と、この減圧調理室2内に配置して材料に100℃以下の乾熱を加えさせる固体の加熱手段4と、材料に対して熱線を輻射し、この熱線で材料の乾熱を行う加熱手段5とを備えさせたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理に適した水分等を保有する食品を調理する食品の減圧乾熱調理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱殺菌管に被殺菌原料と加熱用蒸気を供給して、当該蒸気流中で被殺菌原料を加熱殺菌するものにおいて、加熱殺菌管内を排気手段で減圧し、この減圧雰囲気中で殺菌処理を行なうことにより、熱損傷し易い原料を品質劣化もなく効率よく殺菌しようとする殺菌装置は知られている。(例えば特許文献1参照)
【特許文献1】特開2000−139701号(第2〜第3頁、図1)
【0003】
しかしながら、上記殺菌装置は原料へ蒸気が接触して原料を湿熱するため、加熱殺菌管内の減圧度を下げれば下げる程、加熱殺菌管内の温度が下がるため、加熱温度の不足によって、材料に煮る、焼く、乾かす等の調理を施すことは不可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記問題点を解消し、減圧雰囲気において材料に乾熱を加えることにより、調理室の減圧状態には関係なく、加熱手段による材料の乾熱温度は一定させて、材料に煮る
、焼く、乾かす等の調理を完全に速やかに施すことができるようにして、高品質の煮物、焼物、干物等が安定して量産できる減圧乾熱調理装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明に係る食品の減圧調理装置は、下記の構成を採用することを特徴とする。
調理に必要な水分等を保有して、乾熱を加えると保有する水分等で調理を行なわれる材料を調理する食品調理装置であって、この調理装置は、吸引手段による排気で大気圧以下の減圧雰囲気に保持される減圧調理室と、この減圧調理室内に配置して材料に100℃以下の乾熱を加えさせる固体の加熱手段と、材料に対して熱線を輻射し、この熱線で材料に乾熱を加えさせる加熱手段とを備えさせたこと。
【0006】
材料に100℃以下の乾熱を加えさせる固体の加熱手段を、棚状室内へ蒸気を供給して、その余剰分とドレンとを逃がすことにより、上記条件の温度設定ができる蒸気加熱式としたこと。
【0007】
材料に対して熱線を輻射する加熱手段を、材料との相対距離の調整で乾熱温度の加減ができる構造としたこと。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の効果 減圧雰囲気の調理室内で固体の加熱手段と熱線輻射の加熱手段とで材料を乾熱して調理を行なうため、調理室内の減圧度には関係なく加熱手段による乾熱の温度が一定するため、調理に必要な水分等を保有する材料であれば、時間の加減で煮る、焼く、乾かす等の調理を完全に施されて、味覚、栄養価、摂取性等が向上した高品質の煮物、焼物、干物等を得ることが可能であって、しかも、減圧雰囲気での乾熱調理は、材料中の水分等の発散が旺盛で熱量を消費しても、これを乾熱で補って成分変性に適した温度に保持されるため、蛋白質の旨み成分への変化が効果的に行なわれて食味を向上させるし、更に、減圧雰囲気での乾熱による調理は、材料から水分が活発に蒸発して温度の低下する状況にあっても、加熱手段から乾熱を与えられて活発な蒸発環境を維持するので、材料を乾かす操作が能率よく行なわれて、煮物、焼物においても調理時間の大幅な短縮が計れ、特に魚介類の干物の製造においては驚くべき時間の短縮が可能であって、その上、干物製品は調理済みであるため焼かずに食べられ、かつ、減圧雰囲気の低酸素状態で乾かすため、脂肪の酸化が抑えられて、生臭さがなくて、酸化脂肪で健康を損なうおそれもない製品を提供できる。
【0009】
請求項2の効果 棚状室へ蒸気を供給して、この蒸気の微量をドレンと共にドレン管より排出させるから、棚状室内を常に100℃以下の温度を保持する操作を、制御の装置や手数不要で簡便確実に行なうことができて、しかも、この蒸気供給方式によれば、従来の蒸気流通式に比べて驚異的な省エネも得られる。
【0010】
請求項3の効果 材料を輻射する熱線で加熱する加熱手段は、材料との相対距離を変化させれば加熱温度を加減できるため、煮る、乾かす等の調理を行うときは、材料を加熱する温度が100℃以下となる距離においてこの温度で構成物質の熱変性を行なわせるようにし、焼き調理のときは加熱手段を材料に近づけて、表面へ焦げ目が付く程度の高温加熱を行うようにすれば、外観のよい焼物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明に係る食品の減圧乾熱調理装置の実施形態を図面について説明する。
【実施例1】
【0012】
図1において符号1は、食品の減圧乾熱調理装置の一例を示すものであり、この減圧乾熱調理装置1は、調理に必要な水分等を保有して、熱を加えると保有水分等で調理が行なわれる材料を調理するものであり、材料や調理条件によって内部の圧力を大気圧より少し低い程度から真空に近い状態まで加減できる。そして、この減圧調理室2内には、材料3を100℃以下の温度で乾熱する固体の加熱手段4と、材料4に対して熱線を輻射し、この熱線で材料を乾熱する加熱手段5とを備えさせる。
【0013】
上記減圧乾熱調理装置1で調理可能な材料3は、自身が調理に必要な水分を保有するか
、これに加えて塗布や含浸等をされた調味液、その他を保有してこれらの水分や液分を加熱媒体として、煮る、焼く、乾かす等の調理ができるものであり、代表的なものとして、魚介類、獣肉類、植物等がある。
【0014】
上記食品調理装置1の減圧調理室2は、材料の必要量を収納できる容積を有して、内部の減圧に耐えられる構造の箱型等に形成し、減圧調理室2の正面側等には気密が保持される開閉扉6を設け、周壁の適所には吸引手段7の吸引管8を接続するとともに、調整弁9を備える外気の取入管10を設ける。そして、上記開閉扉6を閉じ、調整弁9を調整して吸引手段7で調理室2の空気を吸出させると、減圧調理室2内は調整弁9の調整度によって真空に近い状態から大気圧に近い状態に調整されるので、材料3の種類や調理条件等に応じて適当な減圧度を設定する。
【0015】
減圧調理室2内に設ける固体の加熱手段4は、その上へ図1のように材料3を並べて加熱する。このため、図2に示す通り棚状の中空室となるように形成して、その複数を所定
の間隔で減圧調理室2内へ上下に配置する。そして、各加熱手段4の下面11を、図2に示す通り周囲よりも中心部が低くなる傾斜面に形成し、各加熱手段4の中心部は図1に示す通りドレン排出管12で直列に接続し、最下部の加熱手段4の中心に接続したドレン排出管12は減圧加熱室2の下側へ出して排出量の調整弁13を設ける。また、各加熱手段4の中心部付近は、図1に示す通り蒸気供給管14で直列に接続し、最下部の加熱手段4の中心近くに接続した蒸気の供給管14を、減圧加熱室2の下側より外へ出して蒸気発生器15へ接続し、蒸気供給管14の適所には調整弁16を設け、この調整弁16による蒸気の供給量及び調整弁13によるドレンと蒸気の排出量を加減して、加熱手段4の加熱温度が100℃以下に保持されるようにする。
【0016】
減圧調理室2内に設ける熱線を輻射する加熱手段5は、所要数のヒーターなどを昇降支持枠15へ取付けて材料3の上側へ配設したものであり、昇降支持枠15を上下移動させて材料へ接近させるほど熱線による材料3の加熱温度が高くなり、遠ざけるほど熱線による材料の加熱温度が低くなるのであって、煮る調理と、乾かす調理を行なうときは、材料3を加熱する温度が100℃以下に保持されるようにし、焼く調理を行うときは、材料3の表面へ焦目が付くように加熱温度を100℃より相当高温となるようにする。
【0017】
上記実施形態に示す加熱調理装置1は、減圧調理室2の開閉扉6を開いて、棚状室をなす固定の加熱手段4の上へ材料3を並べた後、開閉扉6を閉じて減圧調理室2を密封し、吸引手段7等を作動させて減圧調理室2内の空気を吸出させることにより、材料と調理条件等に適合した減圧雰囲気とする。そして、棚状室をなす固定の加熱手段4内へ、適量の蒸気を供給して蒸気温度が100℃以下に保持されるようにする。また、熱線輻射の加熱手段5は材料3との距離を、煮る、乾かす調理の場合は、これ等の調理に適した温度が得られる距離に設定し、焼き調理を行なう場合は、材料の表面に焦げ目が付く程度の温度が得られるように調整する。
【0018】
上記の通りの調整状態で、例えば、調味液に浸け置きにした魚介類の煮る調理を行なう場合、材料は減圧雰囲気で上下より乾熱を受けるため、6〜8分でよく煮えて味付けの煮物となり、また、開き魚の干し調理を行なう場合は、減圧雰囲気で開き魚が上下より乾熱を受けるため、材料は煮る調理を施されるとともに、減圧雰囲気で旺盛な水分蒸発が行われるため速く乾燥して、10〜30分という短時間で程よく乾燥されて、焼かなくても食べられる干物になる。更に、魚介類の焼く調理を行なう場合は、熱線輻射の加熱手段5を材料3の表面へ焦目が付く程度の温度が得られる距離まで近付けると、材料3は減圧雰囲気において下側を弱く、上側を強く乾熱されるため、9〜11分で表面に程よい焦げ目が付くように焼き調理されて焼物になる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、調理に適した水分等を保有する材料を、高品位の煮物、焼物、干物に能率よく調理するのに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】食品の減圧乾熱調理装置の構成を示す説明図。
【図2】装置における固定の加熱手段の構造を示す拡大断面図。
【符号の説明】
【0021】
1 食品の減圧乾熱調理装置
2 減圧調理室
3 材料
4 固体の加熱手段
5 熱線輻射の加熱手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理に必要な水分等を保有して、乾熱を加えると保有する水分等で調理を行なわれる材料を調理する食品調理装置であって、
この調理装置は、吸引手段による排気で大気圧以下の減圧雰囲気に保持される減圧調理室と、
この減圧調理室内に配置して材料に100℃以下の乾熱を加えさせる固体の加熱手段と、
材料に対して熱線を輻射し、この熱線で材料に乾熱を加えさせる加熱手段とを備えさせた
ことを特徴とする食品の減圧乾熱調理装置。
【請求項2】
材料に100℃以下の乾熱を加えさせる固体の加熱手段を、棚状室内へ蒸気を供給して、その余剰分とドレンとを逃がすことにより、上記条件の温度設定ができる蒸気加熱式とした
ことを特徴とする請求項1に記載の食品の減圧乾熱調理調装置。
【請求項3】
材料に対して熱線を輻射する加熱手段を、材料との相対距離の調整で乾熱温度の加減ができる構造とした
ことを特徴とする請求項1に記載の食品の減圧乾熱調理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−26213(P2006−26213A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−211606(P2004−211606)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(304004328)
【出願人】(503446084)
【Fターム(参考)】