説明

食品保温器及び食品保温方法

【課題】 多量の加熱食品をできるだけ温かい状態で、かつ、嵩張らないように保管及び配達できる食品保温器及び食品保温方法を提供する。
【解決手段】 食品保温器1は、保温される食品が収容される本体3と蓋体4とからなり本体3の底部近傍に通気孔31が開けられた断熱性の箱2と、箱2内に配置される、空気と反応して発熱する発熱体6と、本体3の底部に置かれる凹凸を有する底敷き5を備える。複数の保温される食品Pと複数の発熱体6とが、複数段、交互に積み重ねられている。保温される食品Pと発熱体6とを交互に積み重ねているので、発熱体6と空気との接触頻度が高くなり、保温状況が安定化し、複数の食品を比較的長時間保温することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気と反応して発熱する発熱体を用い、複数の加熱食品を比較的長時間保温できる食品保温器及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
お弁当やピザの宅配サービスやケータリングサービスにおいては、加熱調理された温かい食品をできるだけ温かい状態で注文者に届けることが好ましい。業者の作業工程や配達時間などを考慮すると、食品が加熱調理されてから注文者が口にするまでかなりの時間がかかる場合もあるので、このような食品は保温した状態で保管されたり、配達される。例えば、宅配ピザは、ピザが入った紙製の箱をビニール製のケースに入れて、さらに、そのケースを、配達用のバイク等に備えられている断熱性の収容ボックスに入れて配達される。このように、1つのケースに1つの食品を保温するのが一般的である。この場合、一度に多量の食品を提供するには、ケースを多量に用意する必要があり、運搬にも手間がかかる。また、ケースが足りない場合は、一度に全部を運搬できないという問題点がある。
【0003】
また、仕出しのお弁当や給食などの多数の食品を収容・運搬するフードデリバリー業界においては、バンジュウと呼ばれる大型の樹脂製蓋付き容器が使用されることがある。このバンジュウには特に保温機能は備えられていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、多量の加熱食品をできるだけ温かい状態で、かつ、嵩張らないように保管及び配達できる食品保温器及び食品保温方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の食品保温器は、 保温される食品が収容される本体と蓋体とからなり前記本体の底部近傍に通気孔が開けられた断熱性の箱と、 該箱内に配置される、空気と反応して発熱する発熱体と、を備え、 複数の保温される食品と複数の前記発熱体とが、複数段、交互に積み重ねられていることを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、保温される食品と発熱体とを交互に積み重ねているので、発熱体と空気との接触頻度が高くなり、保温状況が安定化する。これにより、複数の食品を比較的長時間保温することができる。また、通気孔を本体の底部付近に設けると、通気孔から本体内に導入されて加熱された空気が容器内を上昇するので、本体の内部全体を加熱することができる。これらのことにより1つの容器(箱)で複数の食品の保温・収容が可能となり、ケータリングサービスや食品のデリバリーサービスにおいて搬送容器の簡素化や運搬の簡便化を図ることができる。
【0007】
なお、食品と発熱体とを直に積み重ねることができない場合(例えば、ピザや肉まんの場合)には、食品をトレイに載せて、食品と発熱体とを離間して支持する部材を使用する。
【0008】
断熱性の箱の材料としては、例えば、発泡スチロール、発泡ポリエチレンなどの発泡樹脂、ダンボール、ボール紙などの板状紙製品や紙製品、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラートなどのプラスチックなどが挙げられる。
【0009】
発熱体としては、空気と反応して発熱する発熱性組成物と、それを収容する通気性の袋体からなるものを使用できる。
発熱性組成物としては、種類に制約はなく従来公知の空気の存在によって発熱する材料であればすべて適用できる。なかでも金属粉を使用した発熱性組成物が好適に用いられる。金属粉としては鉄粉系が好ましく、組成例としては鉄粉系、反応助剤、水、保水剤及び/又は添加剤から構成される。具体的には、鉄粉、還元鉄、活性炭、アルミナ、シリカゲル、木炭、吸水性高分子、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化鉄、酢酸、クロル酢酸、水、アクリル系吸水高分子、CMC、ベントナイト、トルマリン(苦土電気石)、トリポリリン酸ソーダ、消石灰、バーミキュライト、パーライト、テラバルーン、木粉等の発熱原料を適宣配合処方した組成物の使用が好適である(特開2002−45386参照)。
なお、鉄粉系、反応助剤、水、保水剤及び/又は添加剤の配合比は、鉄粉系:60〜75wt%、反応助剤:4〜7wt%、水:20〜28wt%、保水剤及び/又は添加剤:0〜10wt%であることが好ましい。
本発明では、人体加熱用に使用される、従来公知の空気の存在によって発熱する材料を使用した場合も、後述する通気性の高い袋体を使用することにより、空気との反応性が高くなり、高い発熱温度を得ることができる。
【0010】
また、通気性袋体の材料としては、例えば、不織布、多孔質フィルム、不織布と多孔質フィルムの積層シート、不繊布とプラスチックフィルムとの積層シート、不繊布上に溶融樹脂を積層し穿孔したシート、穿孔したプラスチックフィルム等が挙げられる。前記多孔質フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン又はそれらを柔軟に改質したプラスチック類及びゴム類等からなる微細気孔を有する熱可塑性のものが一例として挙げられ、それらを単独で用いてもよく、また、補強のためにそれらに不織布等を積層してもよい。更に、また、以下に説明する非通気性包材に機械的に穿孔したもの等を単独で用いてもよく、また、補強のために不織布等を積層してもよい。非通気性包材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニリデン、塩化ビニル、ポリエステル等のプラスチックフィルムやプラスチックフィルムにSiO等の無機酸化物、又はアルミニウムなどの金属を蒸着したものやそれらを用いた積層物等が挙げられる。また、前記包材の厚みは、収納袋としての強度に問題が生じなければ、特に制限はないが、通常は、10μm〜500μm、好ましくは、20μm〜300μm、より好ましくは、20μm〜200μm、更に、好ましくは、30μm〜100μmである。
【0011】
本発明においては、 前記通気孔の面積が、前記箱の表面積の0.01〜5%であることが好ましい。
この場合、通気孔から発熱体への空気供給性と、箱内部の断熱性とを適当なバランスとすることができる。面積が0.01%未満の場合は、発熱体への空気供給量が不足して、発熱性が損なわれる。一方、5%以上であれば、箱内部の加熱された空気が外部へ漏れやすくなり、保温性が低下する。
【0012】
本発明においては、 前記複数の発熱体が載置される底敷き及び中敷きをさらに備え、 該底敷き及び中敷きが、耐熱性を有し、凹凸が付与された平板状のものであることが好ましい。
【0013】
耐熱性を有する平板状の底敷きを備えることにより、発熱体の熱が直接箱の底に接しない。このため、例えば、箱が発泡スチロールで作製されていた場合、発泡スチロールは発熱体の熱で変形し、再使用が不可能になる場合もあるが、このような底敷きを間に介することにより変形を防ぐことができる。また、底敷きを凹凸状とすることにより、発熱体の下面と底敷きとの間に空間が開き、発熱剤と空気とが良好に接触し、発熱剤の発熱性が良くなる。また、箱と直接接触しないことにより、断熱性を付与して保温性を更に高めることができる。
さらに、積み重ねられる発熱体が載せられる中敷きを備えることにより、発熱体と食品とを交互に重ねる場合に比べて、各段の発熱体へ空気を供給しやすくなり、発熱性が良好になる。
【0014】
なお、凹凸状とは、平板の一面に多数の凹部又は凸部が設けられたもの、平板全体がジグザグ状に折られたもの、加工成形により複数の凹凸を設けたものなどを含む。後述の実施例においては、底敷きとして平板の一面に凸部を設けたものを用いているが、凸部の裏面は凹部となっており、同部内の空気も断熱層として作用する。
さらに、凸部又は凹部あるいはその両方に、直径5mm程度の穴をランダムに設けることにより空気との反応をよくすることも可能である。
【0015】
底敷き及び中敷きの材料としては、例えば、アルミ箔、ダンボール、板状紙製品、紙、ポリプロピレンやポリエチレンテレフタラートなどの軟化点100℃以上のプラスチックなどを挙げることができる。なお、アルミ箔は熱伝導率が高いので前述の箱の熱変形防止の作用と矛盾するが、アルミ箔を凹凸状として凸部で発熱体と接触させるようにすることにより、発熱体と底敷きとの接触面積を少なくでき、アルミ箔への熱の伝導量を少なくすることができる。また、アルミ箔は放熱性が高いため、周囲の空気に放熱されやすくなる。
【0016】
本発明の食品保温方法は、 複数の食品を保温して収容する方法であって、 断熱性の容器に、空気と反応して発熱する発熱体と、保温される食品とを、一段以上、交互に積み重ね、 前記容器に通気スペースを開けて蓋を被せ、該通気スペースから供給される空気で前記発熱体を発熱させて発生した熱で前記食品を保温するとともに、 所定時間後に前記蓋を開閉して前記発熱体に空気を供給することを特徴とする。
【0017】
容器として一般に市販されているバンジュウを使用する場合は、バンジュウの本体と蓋との間は気密に密閉されるわけではなく、わずかの通気スペースが開いている。そこで、この通気スペースから供給される空気と発熱体とが反応して発生する熱で食品を保温することができる。また、このような通気スペースが設けられていても、バンジュウ内に空気量は減少していくので、所定時間後に蓋を開けて空気を供給すると、発熱体は再度発熱し始める。つまり、市販のバンジュウを加工することなく、保温・収容容器として使用できる。
【0018】
本発明においては、 前記発熱体が載置される底敷き及び中敷きをさらに備え、 該底敷き及び中敷きが、耐熱性を有し、凹凸が付与された平板状のものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、多量の加熱食品をできるだけ温かい状態で、かつ、嵩張らない状態で保管及び配達できる食品保温器及び食品保温方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る食品保温器の構造を説明する断面図である。
食品保温器1は、保温される食品が収容される本体3及び蓋体4とからなる断熱性の箱2と、箱本体3の底に敷かれる底敷き5、複数の(この例では2個)空気と反応して発熱する発熱体6と、を備える。この例では、密閉包装された焼き豚(1kg)を2個保温する例を説明する。
【0021】
箱2の本体3と蓋体4は、断熱性の材料(例えば、発泡スチロール(熱伝導率:約0.03W・m−1・K−1)で作製される。箱2の寸法や形状は、収容される食品の形状に合わせて選択される。この例では、密閉包装された焼き豚(1kg)を2個保温するものとして、本体3の厚さは15mm、蓋体4の厚さは35mmであり、箱2の外寸は、横230mm×縦175mm×高さ185mm、内寸は横200mm×縦145mm、高さ135mmである。
【0022】
箱本体3の周壁の底部付近には、複数の通気孔31が開けられている。この例では、通気孔31の形状は横長の長方形で、寸法は縦5mm×横30mmである。通気孔31は、箱本体3の底壁から25mmの高さ位置(箱本体3の周壁の外面の下端からの高さ)に、前後の壁に各々1ヶ所、左右の壁に各々2ヶ所開けられている。詳しくは後述するように、発熱体6は箱本体3の底壁上に置かれる。この発熱体6は空気を反応して発熱するので、発熱体6の近傍の箱本体3の周壁にこのような通気孔31を設けることにより、発熱体6に空気が供給されやすくなり、発熱反応を起こしやすくなる。また、加温された空気は箱本体3内を上昇するので、箱本体3内全体を加温することができる。
また、箱蓋体4の中央付近にも、同様の通気孔41が開けられている。
【0023】
この例では、全ての通気孔31、41の面積は9cmとなる。一方、箱2の表面積は2303.5cmである。通気孔の箱2の表面積に対する面積率は約0.4%となる。このように通気孔31、41の面積の箱2の表面積に対する面積率を0.01〜5%とすることにより、通気孔31、41から発熱体6への空気供給性と、箱2内部の断熱性とを適当なバランスとすることができる。
【0024】
発熱体6は、通気性を有する包材で作製した袋体に、空気と反応して発熱するタイプの発熱性組成物を収容したものである。包材は、非撥水性の不織布(100%レーヨン、MR−50、国光製紙社製)で作製される。包材の一面には防水層(PP製)が押出しラミネート加工により設けられている。包材には、全面にほぼ一様な密度で針孔が開けられている。この包材の通気度を、JISP8117のガーレ試験機法(使用した試験機:ガーレ式デンソメータ(RANGE;300ミリリットル、TIMER;s、t<1、測定部直径;30mm、株式会社東洋精機製作所製、JIS P8177準拠))を用いて測定したところ、1.5s/300ミリリットルであった。なお、通気度は、0.5〜30s/300ミリリットル、好ましくは、1.0〜20s/300ミリリットル、より好ましくは、1.5〜15s/300ミリリットル、さらに好ましくは、2〜10s/300ミリリットルである。なお、この通気度は、公知の空気の存在によって発熱する材料を使用した人体加熱用の発熱体に使用される袋体よりも高い値である。したがって、公知の発熱材料を使用しても、通気性の高い袋体を使用することにより、空気との反応性が高くなり、高い発熱温度を得られる。袋体の寸法は、120mm×200mmである。
発熱性組成物は、鉄粉、活性炭、食塩及び水を、配合組成、鉄粉:67.5wt%、活性炭:5wt%、水:23.7wt%、食塩:3wt%で混合したものを使用する。この発熱性組成物を150g袋体に収容して発熱体6を作製した。発熱体6は、箱2の寸法や保温される食品を考慮して、複数個使用してもよい(この例では2個使用)。
なお、発熱体6は被使用時に発熱剤が空気と触れないように、気密性の外袋に入れて保管されている。
【0025】
底敷き5は、箱本体3の底壁とほぼ同様の寸法の長方形の平板であり、全面に凸部5aが付与されている。この例では、底敷き5は、耐熱性を有する材料(例えば、アルミ箔)で作製される。図1に示すように、このような底敷き5を、箱本体3の底壁と発熱体6との間に敷くことにより、発熱体6の熱が箱本体3の底壁に直に伝わることを防ぎ、底壁の熱による変形を防止できる。
また、凸部5aを設けることにより、底敷き5と底壁との間に空気層が形成されて断熱性が付与される。また、発熱体6と底敷き5との間にも空気が存在するので、発熱体6が空気と接触しやすくなる。なお、この例では、底敷き5を熱伝導率の高いアルミ箔で作製しているが、図1に示すように、底敷き5は凸部5aで発熱体6に接しており、発熱体6と底敷き5との接触面積は少ないので、発熱体6からアルミ箔への熱の伝導性は小さい。また、アルミ箔は放熱性が高いため、周囲の空気に放熱されやすくなる。これらのことにより、箱本体2を発泡樹脂で作製しても、発熱体6の熱による熱変形を起こさない。
【0026】
発熱体6は、底敷き5の上に置かれるが、その際、発熱体6と、箱本体3の通気孔31との間の距離は約2.5〜50mm程度となる。このように、発熱体6の近傍の箱本体3の周壁にこのような通気孔31を設けることにより、発熱体6に空気が供給されやすくなり、発熱反応を起こしやすくなる。このような空気供給性を考慮すると、発熱体6と通気孔31との距離は50mm以下であることが好ましい。
【0027】
なお、食品をトレイ7に入れて、そのトレイ7を発熱体6上に置くこともできる。トレイ7は、熱伝導性の良好な(100W・m−1・K−1以上)材料(例えば、アルミ箔(熱伝導率:238W・m−1・K−1))で作製されることが好ましい。この場合、トレイ7を介して保温される食品に発熱体6の熱が伝わりやすくなる。また、食品を直接発熱体6上に置くことが困難な場合にも好ましい。
また、食品をアルミ箔等で包むとさらに保温性が良くなる。
【0028】
さらに、積み重ねられる発熱体6が載せられる中敷きを備えてもよい。中敷きとしては、底敷き5と同じものを使用できる。発熱体6と食品Pとを交互に重ねる場合は、発熱体6と食品P(又はトレイ7)とが直接接触する場合もあるが、凹凸を有する中敷きを敷くことにより、発熱体6と食品P(又はトレイ7)とは直接接触せず、発熱体6の一面は空気と触れやすくなる。したがって、各段の発熱体6に空気を供給しやすくなり、発熱性が良好になる。
【実施例1】
【0029】
図1の食品保温器1を使用して、加熱された密閉包装された焼き豚(重さ1kg)を2個)を保温する例を説明する。
まず、底敷き5を箱本体3の底に敷く。そして、一段目の発熱体6を外袋から出して底敷き5上に置く。加熱調理後の焼き豚P1をアルミ箔に包んでトレイ7に入れ、そのトレイ7を発熱体5上に置いた。さらに、その焼き豚P1の上に二段目の発熱体6を外袋から出して置いた。さらに、その上に、加熱調理後の焼き豚P2をアルミ箔に包んでトレイ7に入れ、そのトレイ7を発熱体5上に置いた。発熱体5は空気と反応して発熱反応を始めた。その後、箱本体3に蓋4をした。発熱反応開始後の、焼き豚P1、P2の内部温度、各発熱体6の温度を計測した。
【0030】
図2は、各温度と、測定時間との関係を示すグラフである。縦軸は温度、横軸は時間を示す。
一段目の発熱体6は、グラフの太実線に示すように、55℃程度から徐々に上昇し、約30分後に80℃以上に上がり、一時間後には85℃程度に達し、5時間後も80℃程度を維持している。二段目の発熱体6は、グラフの点線に示すように、65℃程度から徐々に上昇し、約15分後に80℃以上に上がり、5時間後も80℃程度を維持している
【0031】
一段目の食品P1の内部温度は、二点鎖線に示すように、最初は75℃程度であり、その後上昇し、30分後には80℃に達し、5時間後も80℃近くを維持している。二段目の食品P2の内部温度は、一点鎖線に示すように、最初は80℃程度であり、その後やや上昇し、6時間後も80℃近くを維持している。
このように、食品は2個とも5時間後まで80℃程度を維持することができた。
【0032】
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る食品保温器の構造を説明する断面図である。
この例では、加熱調理されたピザを3枚保温する例を説明する。図1の実施例では、密閉包装された焼き豚を保温する例であり、焼き豚の上に直に発熱体が置かれている。しかし、ピザや肉まんなどは、その上に直に発熱体を置くことができない。そこで、食品と発熱体とを離間して支持するために、中敷き5や枠部材8を備える。なお、箱2や発熱体6、底敷き5は図1の食品保温器1のものと同じであるので説明を省略する。
【0033】
中敷き5としては、底敷き5と同じ、耐熱性を有する材料(例えば、アルミ箔)で作製された、底壁とほぼ同様の寸法の長方形の平板の全面に凸部5aが付与されているものを使用できる。
【0034】
枠部材8としては、例えば、トレイ7の縁上に置かれる薄い円筒状(枠状)のものを使用できる。枠部材8の高さは、食品の厚さに若干余裕を加えた寸法とする。
【0035】
食品Pと発熱体6とを積み重ねる際は、まず、箱本体3の底壁上に底敷き5を置き、その上に一段目の発熱体6を置く。そして、その発熱体6上にトレイ7に載せた一段目のピザP1を置く。次に、トレイ7の縁に枠部材8を載せてその上に中敷き5を置く。その中敷き5上に、二段目の発熱体6を置き、その上にトレイ7に載せた二段目のピザP2を置く。同様に、枠部材8、中敷き5を置き、三段目の発熱体6と三段目のピザP3を置く。
【0036】
図4は、本発明の第3の実施の形態に係る食品保温器(バンジュウタイプ)を説明する図であり、図4(A)は側面断面図、図4(B)本体の平面図である。
この例では、市販のバンジュウ21を用いて、多数の包装されたおにぎりを保温する例を説明する。
【0037】
バンジュウ21とは、ポリプロピレンなどの樹脂で作製された平たい容器22で、容器本体23と、蓋24とを備える。蓋24と容器本体23とは気密に密閉されるわけではなく、両者の間には若干の通気性がある。
【0038】
容器本体23の底には、一面に複数(例えば6個)の発熱体6が敷き詰められている。発熱体6としては、図1の食品保温器に使用したものを使用できる。そして、この発熱体6の上に、包装された複数おにぎりPを並べる。
【0039】
蓋24と容器本体23との間のスペースから供給された空気は発熱体6に供給されて加熱され、この加熱された空気によりおにぎりPが保温されて収容される。
【実施例2】
【0040】
図4の食品保温器1を使用して、包装された18個のおにぎりを保温する例を説明する。
この例に使用したバンジュウ21はポリプロピレン製で、内径寸法は縦346mm×横533mm×高さ90mmである。このバンジュウ21の本体23の底面に発熱体6を6個敷き詰めた。そして、この発熱体6上に包装されたおにぎりPを18個並べた。その後、容器本体23に蓋24をした。
【0041】
図5は、各温度と、測定時間との関係を示すグラフである。縦軸は温度、横軸は時間を示す。
発熱体内部の温度は、実線に示すように、最初は65℃程度であり、その後上昇し、2時間後には80℃に達するが、3時間後から徐々に下降し、4時間半後には65℃程度に下がっている。これはバンジュウ21内の空気が減少し、発熱体に十分な量の空気が供給されず、発熱体の発熱反応が停止したためである。そこで、4時間半後に蓋24を開けて空気を供給すると、温度は急上昇し、5時間後には90℃近くまで上昇し、その後9時間後も80℃近くを維持している。
【0042】
食品内部の温度は、グラフの二点鎖線に示すように、50℃程度から徐々に上昇し、1時間後には60℃以上、3時間後には75℃近くまで上昇し、その後徐々に下降している。これは、前述のように、バンジュウ内の空気不足により発熱体6の発熱反応が停止したためである。4時間半後にいったん蓋24を開けて発熱体6に空気が供給されると、発熱体6の温度の急上昇に伴って再度徐々に上昇し始め、7時間後には80℃以上となる9時間後まで80℃程度を維持している。
【0043】
図6は、図4の食品保温器(バンジュウタイプ)の他の使用例を説明する側面断面図である。
この例では、図4のバンジュウ21を用いて、多数のお弁当を保温する例を説明する。この場合、容器本体23の底に、一面に複数の発熱体6が敷き詰め、その上に一段目のお弁当P1を並べる。そして、このお弁当P1の上に複数の発熱体6を敷き詰め、さらにその上に2段目のお弁当P2を並べる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る食品保温器の構造を説明する断面図である。
【図2】各温度と、測定時間との関係を示すグラフである。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る食品保温器の構造を説明する断面図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る食品保温器(バンジュウタイプ)を説明する図であり、図4(A)は側面断面図、図4(B)本体の平面図である。
【図5】各温度と、測定時間との関係を示すグラフである。
【図6】図4の食品保温器(バンジュウタイプ)の他の使用例を説明する側面断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 食品保温器 2 箱
3 本体 4 蓋体
5 底敷き、中敷き 6 発熱体
7 トレイ 8 枠部材
21 バンジュウ 22 容器
23 容器本体 24 蓋
31、41 通気孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保温される食品が収容される本体と蓋体とからなり前記本体の底部近傍に通気孔が開けられた断熱性の箱と、
該箱内に配置される、空気と反応して発熱する発熱体と、
を備え、
複数の保温される食品と複数の前記発熱体とが、複数段、交互に積み重ねられていることを特徴とする食品保温器。
【請求項2】
前記通気孔の面積が、前記箱の表面積の0.01〜5%であることを特徴とする請求項1記載の食品保温器。
【請求項3】
前記複数の発熱体が載置される底敷き及び中敷きをさらに備え、
該底敷き及び中敷きが、耐熱性を有し、凹凸が付与された平板状のものであることを特徴とする請求項1又は2記載の食品保温器。
【請求項4】
複数の食品を保温して収容する方法であって、
断熱性の容器に、空気と反応して発熱する発熱体と、保温される食品とを、一段以上、交互に積み重ね、
前記容器に通気スペースを開けて蓋を被せ、該通気スペースから供給される空気で前記発熱体を発熱させて発生した熱で前記食品を保温するとともに、
所定時間後に前記蓋を開閉して前記発熱体に空気を供給することを特徴とする食品保温方法。
【請求項5】
前記発熱体が載置される底敷き及び中敷きをさらに備え、
該底敷き及び中敷きが、耐熱性を有し、凹凸が付与された平板状のものであることを特徴とする請求項4の食品保温方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−95449(P2009−95449A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−269050(P2007−269050)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(000113584)マイコール株式会社 (13)
【Fターム(参考)】