説明

食品加熱調理方法

【課題】従来は、蒸気を加熱室に供給し食品にあてることで調理時間の短縮効果は得られるが、蒸気を多量に供給すると食品表面ばかりが加熱され、食品内部と表面温度の差が大きくなり、食品の温度変化で食品重量の予測が難しい上、所定量以上の蒸気を供給すると、加熱室内が蒸気で充満され、蒸気温度を検知することとなり赤外線センサでは食品温度を検知することができなかった。
【解決手段】マイクロ波加熱に加え、食品内部に浸透しやすい輻射エネルギーを放射する近赤外線発生手段を食品温度がマイナスの場合に併用することで食品内部の加熱を内外から均一に且つ短時間で加熱調理する。さらに、赤外線温度検出手段で食品温度を検知する場合は、近赤外線発生手段を停止し赤外線発生量を低減することでさせることで、食品の温度を正確に測定することができる。また、蒸気とは異なり、発生量を瞬時に調整することができ、食品の温度検知時の応答性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多様な食品をすみやかに良好な品質を維持しつつ、加熱調理する食品加熱調理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の加熱方法としては、図5に示すような食品加熱方法が知られている。以下、その構成について図5を参照しながら説明する。
【0003】
加熱室101には、マイクロ波発生手段であるマグネトロン102、蒸気発生室103が設けられている。蒸気発生室103の一端は流出管104により加熱室101と連結し、他端は流入管105によって水タンク106と連結している。
【0004】
高圧電源107はマグネトロン102に高圧電力を供給し、制御部109は、インバーター電源108および高圧電源107の入切りの動作、あるいはそれぞれの電源の電力制御を行う。
【0005】
加熱室11内には蒸気を通過させる開口部を有する受け皿110を設け、上面に食品111を載置する様に構成されている。そして、インバーター電源108を動作させ、短時間で、励磁コイル112で発熱金属体113を加熱し蒸気を発生するようにしている。
【0006】
さらに食品が凍っている間、すなわち食品温度がマイナス温度の間は、マイクロ波だけで加熱を行い、食品の解凍が進み冷凍が溶けて食品温度が略プラスに転じた時点から、蒸気発生器の動作を開始し、マイクロ波と蒸気により加熱調理を行っている。
【0007】
食品からの水分の蒸発は食品温度がプラス温度になってから起こりやすくなるが、加熱室内の蒸気によって食品の周囲を蒸気が包み込むことにより、水分の蒸発を防ぎ、乾燥を防止しながら加熱調理を進められるので、これもしっとりとして仕上がり状態の良い、良好な加熱調理を実現していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3558085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、蒸気を加熱室に供給し食品にあてることで調理時間の短縮効果は得られるが、蒸気を多量に供給すると、食品表面ばかりが加熱され、内部との温度差を生じやすく、食品内部と表面温度の差が大きくなり、食品の温度変化で食品重量を予測することが難しいうえ、所定量以上の蒸気を供給すると、加熱室内が蒸気で充満され、蒸気の温度を検知することとなり赤外線センサでは食品の温度を検知することができないという課題があった。
【0010】
本発明はこのような従来の課題の解消を図るもので、マイクロ波加熱に加え、食品内部に浸透しやすい輻射エネルギーを放射する近赤外線発生手段を食品温度がマイナスの場合に併用することで食品内部の加熱を内外から均一に且つ短時間で加熱調理することを目的とする。
【0011】
さらに、赤外線温度検出手段で食品温度を検知する場合は、近赤外線発生手段を停止し、赤外線発生量を限りなく低減させることで、食品の温度を正確に測定することができる。また、蒸気とは異なり、発生量を瞬時に調整することができ、食品の温度検知時の応答性が飛躍的に向上する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記従来の課題を解決するために、本発明の食品加熱調理方法は、食品を収納する加熱室と、加熱室内にマイクロ波を照射するマイクロ波発生手段と、加熱室内に蒸気を供給する蒸気発生手段と、加熱室に近赤外領域の波長をピーク特性にもつ輻射を供給する輻射発生手段と、食品の温度を検知する赤外線温度検知手段と、マイクロ波発生手段および蒸気発生手段、輻射発生手段、赤外線温度検知手段を制御する制御部を設け、食品の温度を検知する際には、輻射発生手段を動作させないように制御し、赤外線温度検出手段で食品温度を検知しながら食品加熱を行うものである。
【0013】
これによって、マイクロ波および蒸気による加熱に加え、近赤外線を中心とする輻射エネルギーを食品へ供給することができ、冷凍時の食品の加熱時間が短縮できる。
【0014】
また、加熱時間の短縮しながら、マイクロ波及び蒸気及び輻射エネルギーの投入量に対し、食品の温度上昇率を確認することで食品重量を予測し、調理時間を自動的に判定できる設定するを赤外線加熱手段で検知することで、重量を予測することができる。
【0015】
しかも、食品加熱の時間の判定後は、多量の蒸気を供給しながら加熱することもできるため、加熱による食品の乾燥を防ぎ、しっとりとして仕上がりの状態の良い加熱調理を実現できる。また蒸気、輻射の発生と停止をすることが出来、それぞれの食品の状態あるいは食品の違いに応じて、各熱源を加熱調理できるので、多様な食品を最適の状態に良好に加熱調理する作用を実現する。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、輻射加熱手段は、蒸気供給手段と比較して動作の応答性がよく食品温度の判定時に赤外線温度検知手段の検知性能が向上する。このため、食品温度を検知する際に、マイクロ波および少々の蒸気に加え、輻射エネルギーを供給しながら食品を加熱することができ、調理時間が短縮できる。
【0017】
特に、冷凍食品の解凍調理を行う場合、加熱調理の初めはマイクロ波と少量の蒸気と、輻射を組み合わせて加熱を行い、食品の解凍が進み冷凍が溶けて食品温度が略プラスに転じた時点で、食品の量を判定し加熱時間を決定してから、蒸気発生器の動作を開始し、マイクロ波と多量の蒸気により加熱調理を行うことができる。
【0018】
この調理方法によると、食品からの水分の蒸発は食品温度がプラス温度になってから起こりやすくなるが、加熱室内の蒸気によって食品の周囲を蒸気が包み込むことにより、食品からの水分の蒸発を防ぎ、乾燥を防止しながら加熱調理を進められるので、これもしっとりとして仕上がり状態の良い、良好な加熱調理を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の食品加熱方法に係る加熱調理器の断面図
【図2】本発明の加熱調理時の食品温度を検知する際の動作シーケンス図
【図3】本発明の加熱方法に係る冷凍食品の加熱調理の食品温度とマイクロ波発生手段、輻射加熱手段、蒸気発生手段の動作シーケンス図
【図4】本発明の加熱方法に係る加熱終了に対する近赤外線輻射加熱の動作シーケンスを示した図
【図5】従来の加熱方法に係る加熱調理器の断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1の発明は、食品を収納する加熱室と、加熱室内にマイクロ波を照射するマイクロ波発生手段と、加熱室内に蒸気を供給する蒸気発生手段と、加熱室に近赤外領域の波長をピーク特性にもつ輻射を供給する輻射発生手段と、食品の温度を検知する赤外線温度検知手段と、マイクロ波発生手段および蒸気発生手段、輻射発生手段、赤外線温度検知手段を制御する制御部を設け、制御部は、赤外線温度検出手段で、食品の温度を検知する際には、輻射発生手段を動作させないようにし、マイクロ波と輻射と少量の蒸気により加熱調理を行うものである。これにより、赤外線温度検出手段で食品の温度を正確に検知しながら、加熱時間を短縮することができる。
【0021】
また、食品の解凍が進み冷凍が溶けて食品温度が略プラスに転じた時点から、蒸気発生手段の通電量を増加させて食品加熱調理を行うものである。これにより、食品からの水分の蒸発は食品温度がプラス温度になってから起こりやすくなるが、加熱室内の蒸気によって食品の周囲を蒸気が包み込むことにより、食品からの水分の蒸発を防ぎ、乾燥を防止しながら加熱調理を進められるので、これもしっとりとして仕上がり状態の良い、良好な加熱調理を実現できることになる。
【0022】
第2の発明は、制御部が、加熱時間終了前に輻射発生手段の動作を停止させる停止時間Tffを確保して、再度マイクロ波のみで食品を加熱するようにしたことで、輻射手段が過熱した状態で食品の加熱調理が終えるのではなく、輻射手段をあらかじめの所定温度以下にした状態で食品の加熱を終えるものである。
【0023】
これにより、使用者が解凍や解凍あたためなど比較的低い温度の調理をした際に加熱室内部に触れた場合でも火傷などを防止することができる。
【0024】
第3の発明は、輻射発生手段の動作時間Tfnが所定時間Tfより長い場合は停止時間Tffを短くし、動作時間Tfnが所定時間Tfより短い場合は停止時間Tffを長くするようにしたことで、輻射加熱手段の過熱による安全性の確保をしながら、最大の輻射加熱効果が得られる。
【0025】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0026】
(実施の形態1)
図1は本発明の食品加熱方法に係わる加熱調理器の断面図である。加熱室11にはマイクロ波発生手段であるマグネトロン12を設け、加熱室11内にマイクロ波を照射する構成とする。
【0027】
加熱室11の底面にはアルミダイキャストヒータを加熱源とする蒸発部13が設けられており、水タンク14の水をポンプ15で蒸発部13に供給する供給管16が設けられている。加熱室の上方には1〜2μmの波長を中心とする輻射加熱手段17であるハロゲン或いはアルゴンヒータが設けられている。
【0028】
赤外線温度検知手段18は、加熱室の外側側面に開口部19を介して設けられ、食品の温度を検知する。制御部20は、マグネトロン12やアルゴンヒータ17など加熱源及び赤外線温度検知手段18の制御を行う。加熱室11内にはマイクロ波を下方側から透過する受け皿21が設けられ、上面に食品22を載置できるようになっている。
【0029】
図2は本発明の加熱調理時の食品温度を検知する際の動作シーケンスを示した図である
。図2において、食品に対し加熱操作を行うと、赤外線温度検知手段18で食品温度を検知(S1)する。その後マイクロ波加熱と少量の蒸気発生、近赤外線輻射を併用しながら所定時間(T1)加熱する。その後輻射加熱手段17が停止し、マイクロ加熱と少量の蒸気発生で所定時間(T2)動作する。
【0030】
これと同時に、赤外線温度検出手段18も所定時間T2動作させ食品温度を検知する。この温度検知により、エネルギー投入量と食品温度の温度上昇率から食品量が判定される。そして、食品量に応じて所定の加熱(T1+T2:1サイクル)を所定回数繰り返し、赤外線温度検出手段で食品温度を検知(S2)し、所定温度に加熱されていれば、加熱を終了する。
【0031】
この際、赤外線温度検知手段18を動作させる際に輻射加熱手段17を停止させているため、赤外線温度検知手段に輻射発生手段17から放射される赤外線量を検知させることなく食品量を判定できる。少量の蒸気を発生させているため、加熱室11内の湿度を高めることができ、マイクロ波加熱の際の食品23からの水分の蒸散を低減することができる。
【0032】
図3は本発明の加熱方法による冷凍食品の加熱調理の食品温度とマイクロ波発生手段12、輻射加熱手段17、蒸気発生手段13の動作シーケンスを示した図である。図3において食品が凍っている間、すなわち食品温度がマイナス温度の間は、マイクロ波が食品の中まで透過しやすいので、マイクロ波を主体的に、蒸気加熱、近赤外線を用いた輻射加熱を併用して食品加熱を行う。
【0033】
特にマイクロ波は下方側から供給するようにしているため上面より底面が加熱しやすいが、近赤外線輻射加熱を上方から行うことで、上面を補うことができ食品全体から均一に加熱することができる。そして食品の解凍が進み冷凍が溶けて食品温度が略プラスに転じた時点から、蒸気発生手段の動作を開始し、マイクロ波や近赤外線輻射加熱に加え、食品全体を蒸気で包み込むように加熱調理を行う。
【0034】
食品からの水分の蒸発は食品温度がプラス温度になってから起こりやすくなるが、加熱室内の蒸気によって食品の周囲を蒸気が包み込むことにより、食品からの水分の蒸発を防ぎ、乾燥を防止しながら加熱調理を進められるので、これもしっとりとして仕上がり状態の良い、良好な加熱調理を実現できることになる。
【0035】
図4は、本発明の加熱方法に係わる加熱終了に対する輻射加熱の動作シーケンスを示したものである。図4に記載するように加熱終了に対し、輻射発生手段17の停止時間Tffを確保して、マイクロ波のみで食品を加熱するようにしている。これにより、加熱調理終了時には輻射加熱手段17の温度を所定温度Tb以下にすることが可能となるうえ、蒸気発生部13での蒸気発生量が少ない場合は赤外線温度検知手段18で、食品温度を検知して最適な仕上がり温度に終了させることもできる。
【0036】
また、輻射加熱手段17の動作時間Tfnが所定時間Tfより長い場合は停止時間Tffは短く、動作時間Tfnが所定時間Tfより短い場合は停止時間Tffを長くするように調整しているこれにより、加熱終了時の輻射加熱手段の温度をTb以下に保ちながら輻射加熱のエネルギーを最大限利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上詳細に説明してきたように、本発明にかかる食品加熱調理方法は、電子レンジ等の高周波加熱装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
11 加熱室
12 マグネトロン
13 蒸発部
14 水タンク
15 ポンプ
17 輻射加熱手段(アルゴンヒータ)
18 赤外線温度検知手段
19 高圧電源
20 制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を収納する加熱室と、前記加熱室内にマイクロ波を照射するマイクロ波発生手段と、前記加熱室内に蒸気を供給する蒸気発生手段と、前記加熱室に近赤外領域の波長をピーク特性にもつ輻射を供給する輻射発生手段と、前記食品の温度を検知する赤外線温度検知手段と、前記マイクロ波発生手段および蒸気発生手段、輻射発生手段、赤外線温度検知手段を制御する制御部を設け、前記制御部は、食品温度がマイナス温度の間は、高出力のマイクロ波と低出力の蒸気発生手段の出力で加熱を行い、食品の解凍が進み冷凍が溶けて食品温度が略プラスに転じた時点から、マイクロ波出力を落とすとともに、輻射手段を動作する加熱調理を行う食品加熱調理方法。
【請求項2】
制御部が、加熱時間終了前に輻射発生手段および蒸気発生手段の動作を停止させる停止時間Tffを確保して、再度マイクロ波のみで食品を加熱する請求項1に記載の食品加熱調理方法。
【請求項3】
輻射発生手段の動作時間Tfnが所定時間Tfより長い場合は停止時間Tffを短くし、動作時間Tfnが所定時間Tfより短い場合は停止時間Tffを長くする請求項2に記載の食品加熱調理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−125258(P2011−125258A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286139(P2009−286139)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】