説明

食品収納容器の製造方法及び該方法に使用する装置

【課題】支持部材を金型に密着若しくは近接配置できない場合でも、フランジ部(鍔部)に不良品の発生しない食品収納容器の製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】パルプ材料から厚紙状物に形成する工程と、該厚紙状物の表裏の一方若しくは両方にヒートシール能を有する熱可塑性樹脂をコーティングする工程と、前記厚紙状物の四隅に側面片を形成する切断部を形成するか、隣接する側面片を連結する折込片を形成し、このようにして得た厚紙状物を、対向する一方の側面片を側面片裏面に当接させた支持部材で支持し、一対のプレス金型で、加熱プレスして、容器開口周縁部を外方に折曲し、その先端部を下方に折曲して加熱貼着させる食品収納容器の製造方法であって、前記支持部材は、凹金型先端の一方の対向面に突出し、凸金型で凹金型をプレスするときは、弾性体の力に抗して移動し、プレス後押圧を解いて凸金型を移動させると、弾性体の力で元の位置に復帰することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パルプ材料から形成される食品収納容器の製造方法に係り、詳記すれば、パルプ材料からプレス成形により食品収納容器を製造するに際し、不良品の発生率を著しく低減させた製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品を収容する弁当箱若しくはトレー等の食品収納容器としては、従来から発泡ポリウレタン等のプラスチック材料が使用されていた。しかしながら、プラスチック材料は使用後の後処理が容易ではないので、環境保全の観点から植物性繊維材料製食品収納容器が強く求められている。
【0003】
このような問題を解決するため本出願人は、図1に示すような、パルプ材料(パルプ又はパルプを主成分とする植物性繊維材料)から厚紙状物を形成する工程と、ヒートシール能を有する熱可塑性樹脂を内面となる面にコーティングする工程と、前記厚紙状物の四隅に側面片を形成する切断部を形成する工程と、このようにして得た厚紙状物を凹凸一対のプレス金型で加熱プレスして四隅に側面片の重合部1を有する食品収納容器2を開発し、先に特許出願した(特許文献1)。
【0004】
このパルプ材料からなる容器は、安価に形成できることと、環境保全の観点から極めて高い評価を受けている。しかしながら、図1及び図2に示すように、先に起立させる対向する側面片4,4´は、メス金型5上端6よりも高い壁7に載るので、上から凸金型8でプレスすると、容器を形成すると同時に四隅をヒートシールして容器を形成することが出来るが、壁7をメス金型側壁に接触させると、壁7は凸金型外周部にぶつかるので、メス金型側壁よりもある程度離さなければならなかったから、四隅が完全に貼着しないとか、四隅に皺が多く発生する等の不良品発生率が高くなる問題があった。
【0005】
特に図2に示すように、容器上端開口周縁部が外方に折曲し、更に先端を下方に折曲したフランジ部(鍔部)を形成する凸起10が形成されている場合は、壁7は図2に示すように、メス金型5からより遠くに位置させなければならないので、不良品の発生率が増加する問題があった。
【0006】
また、容器に魚などをいれると容器底面に血が付着するが、底面には熱可塑性樹脂がコーティングされていないので、水洗では落ちないから、汚らしい問題があった。そのため両面コーティングした容器を製造しようとすると、容器が金型に付着して取れなくなる問題が生じた。
【0007】
更に、図1に示すように、容器上端開口周縁部が外方に上昇傾斜するように折曲した上昇傾斜部3と、更にその先端を下方に折曲した下降傾斜部11とからなるフランジ部(鍔部)12を形成する場合、一方の下降傾斜部11が開いて綺麗に折曲できない問題が生じた。即ち、図1の対向する短い側面片のフランジ部が長い側面片のフランジ部よりも角度が大きく開く問題が生じた。特に、両面コーティングした容器を製造する場合に、大きな差が生じた。
【0008】
【特許文献1】特開2006−315687
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明のうち請求項1に記載の発明は、支持部材を金型に密着若しくは近接配置できない場合でも、フランジ部(鍔部)に不良品の発生しない食品収納容器の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【0010】
また請求項9及び20に記載の発明は、上記目的に加えて、容器上端開口周縁部が外方に折曲し、更に先端を容器の下方に折曲したフランジ部(鍔部)を常に略同角度に折曲し得る食品収納容器の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【0011】
更に請求項18に記載の発明は、上記目的に加えて、両面コーティングした食品収納容器の製図装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記請求項1に記載の目的を達成するため、本発明者は、鋭意研究の結果、不良品発生率を少なくするためには、壁7は、フランジ部への折曲部に近い方が良いことを想到し、メス金型上端開口近くにあっても、プレスするときに壁7が容易に下に沈むようにすれば、成形の邪魔にならないことを想到し、本発明に到達した。
【0013】
また、上記請求項9及び20に記載の目的を達成するため、本発明者は、鋭意研究の結果、紙には繊維と同じ紙の流れ目があることを想到し、紙の流れ目と同じ方向には容易に折曲し、紙の流れ目と交差する方向に折曲するには力が必要なことを見出し、紙の流れ目に交差して折曲する場合は、より高い温度に加熱して折曲し易くすることによって、常に全体的に同じように折曲し得ることを見出し、請求項9及び18に記載の本発明に到達した。
【0014】
即ち請求項1に記載の本発明は、パルプ材料から厚紙状物に形成する工程と、該厚紙状物の表裏の一方若しくは両方にヒートシール能を有する熱可塑性樹脂をコーティングする工程と、前記厚紙状物の四隅に側面片を形成する切断部を形成するか、隣接する側面片を連結する折込片を形成し、このようにして得た厚紙状物を、対向する一方の側面片を側面片裏面に当接させた支持部材で支持し、一対のプレス金型で、加熱プレスして、容器開口周縁部は、外方に折曲し、その先端部を容器の下方に折曲して加熱貼着させる食品収納容器の製造方法であって、前記支持部材は、凹金型先端(上下にプレスする場合は上端である)の一方の対向面に突出し、凸金型で凹金型をプレスするときは、弾性体の力に抗して移動し、プレス後押圧を解いて凸金型を移動させると、弾性体の力で元の位置に復帰することを特徴とする。
前記折込片を形成した厚紙状物を、一対のプレス金型で、加熱プレスして、前記折込片が前記側面片に重合貼着させ、容器開口周縁部を外方に折曲し、その先端部を容器の下方に折曲して加熱貼着させるのが好ましい(請求項2)。
【0015】
前記支持部材は、凹金型先端の一方の対向面に突出し、凹金型に形成された穴内を往復移動するようにするのが好ましい(請求項3)。
【0016】
前記折込片は、底面コーナーに接する部分は角部に形成され、前記折込片の上方は、切欠部に形成されている場合に適している(請求項4)。折込片は、V字状とか三角形状とするのが好ましい。
【0017】
容器開口周縁折曲部は、折込片が側面片に重合した状態で、上端部を前記折込片より上方で外方に折曲し、更に先端を容器の下方に折曲した形状に形成されている場合に効果的である(請求項5)。
【0018】
前記支持具は、ロッドであり、該ロッドは、凹金型先端(上下にプレスする場合上端)の一方の対向する面のそれぞれに、複数設けるようにするのが良い(請求項6)。前記ロッドは、四隅のコーナー近くに位置しているのが好ましい(請求項7)。
【0019】
前記容器は、容器に内容物を収容した後、フィルムをラッピングして開口部と容器開口周縁折曲部上面を覆うように構成してなるトレーであるのが適している(請求項8)。
【0020】
紙の流れ目方向と交差する方向に容器開口周縁折曲部に折曲させる部分の凹金型の先端凸部を、熱可塑性樹脂の軟化温度以下で紙の流れ目方向の凹金型の先端凸部温度より高い温度に加熱する(請求項9)。前記先端凸部は、流れ目方向に折曲する部分より5〜10℃程度高い温度とするのが好ましい。
【0021】
紙の流れ目方向と交差する方向に容器開口周縁折曲部に折曲させる部分の凹金型の先端凸部を、65℃〜75℃に加熱するのが好ましい(請求項10)。
【0022】
本発明の製造装置は、パルプ材料から形成した厚紙状物にヒートシール能を有する熱可塑性樹脂をコーティングし、前記厚紙状物の四隅に側面片を形成する切断部を形成するか、隣接する側面片を連結する折込片を形成し、このようにして得た厚紙状物を、対向する一方の側面片を側面片裏面に当接させた支持部材で支持し、一対のプレス金型で、加熱プレスして、容器開口周縁部は、外方に折曲し、その先端部を容器の下方に折曲して加熱貼着させる食品収納容器の製造装置であって、メス金型とオス金型とが当接するメス金型先端(上下にプレスする場合は上端である)の一方の対向面に、押圧されると弾性体の力に抗して移動し,押圧を解くと弾性体の力により元の位置に復帰する厚紙状物側面片支持部材を設けたことを特徴とする。
【0023】
前記隣接する側面片を連結する折込片を形成し、一対のプレス金型で、加熱プレスして、前記折込片が前記側面片に重合貼着し、容器開口周縁部を外方に折曲し、その先端部を下方に折曲してコーナー部を加熱貼着させる容器を形成するのに適している(請求項12)。
前記支持部材は、凹金型先端の一方の対向面に突出し、凸金型で凹金型をプレスするときは、弾性体の力に抗して移動し、プレス後凸金型を移動させると弾性体の力で元の位置に復帰するようにするのが好ましい(請求項13)。前記折込片は、底面コーナーに接する部分は角部に形成され、前記折込片の上方は、切欠部に形成されているのが適している(請求項14)。
【0024】
前記凹金型先端には、容器上端外周部を外方で前記折込片より上方で折曲し、更にその先端を下方に折曲した形状に形成するリング状凸起部が形成されている場合に適している(請求項15)。
【0025】
前記支持部材は、ロッドであり、該ロッドは、凹金型先端の一方の対向面のそれぞれに、複数設けられているのが好ましい(請求項16)。前記ロッドは、四隅のコーナー近くに位置しているのが好ましい(請求項17)。
【0026】
前記厚紙状物の表裏両面にはヒートシール能を有する熱可塑性樹脂がコーティングされ、凹金型は熱可塑性樹脂の軟化温度以下に加熱し、凹金型内には冷却用の液体を循環させる通路が形成され、前記容器となる上端四隅に熱風を噴射する装置が配設されている装置とすれば、両面コーティングした容器が容易に得られる(請求項18)。
【0027】
前記容器となる上端四隅に熱風を噴射する装置が、金型の四隅に形成した熱風噴出孔か、四隅の近くに配設した熱風噴射装置とするのが好ましい(請求項19)。
【0028】
紙の流れ目方向と交差する方向に容器開口周縁折曲部に折曲させる部分の凹金型の先端凸部を、紙の流れ目方向に折曲させる周縁折曲部より高い温度に加熱する加熱部材を凹金型に固定若しくは埋設するのが好ましい(請求項20)。
【0029】
前記熱可塑性樹脂がポリエチレンであり、凹金型は55℃〜65℃に加熱し、紙の流れ目方向と交差する方向に容器開口周縁折曲部に折曲させる部分の凹金型の先端凸部を、65℃〜75℃に加熱する加熱部材を凹金型に固定若しくは埋設するのが好ましい(請求項21)。
【発明の効果】
【0030】
本発明のうち請求項1に記載の発明によれば、金型上に支持部材を押圧により移動し得るように設けたので、フランジ部(鍔部)の四隅に皺が出るとか、貼着不良が生じる問題が解消された。
【0031】
また、請求項9及び20に記載の発明は、上記効果に加えて、紙の流れ目方向と交差して折曲する部分の金型のリング状凸部を加熱して、厚紙状物を折曲し易くすることによって、常に全体的に略同角度で綺麗に折曲した食品収容容器が製造できる。
【0032】
更に、請求項18に記載の発明は、上記効果に加えて、両面コーティングした食品収納容器が支障なく得られるので、容器に魚などをいれて容器底面に血が付着しても、水洗で容易に洗い流すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】公知の食品収容容器の一例を示す斜視図である。
【図2】従来の支持部材で食品収容容器を製造する装置を示す断面図である。
【図3】本発明により製造する食品容器の原料厚紙状物の一部平面図である。図は、容器の一部展開図である。
【図4】本発明に使用する凹金型の平面図である。
【図5】本発明に使用する凹金型及び凸金型の断面図である。
【図6】図3の金型で製造した食品容器の部分斜視図である。
【図7】本発明により製造する食品容器の一例を示す一部展開図である。
【図8】本発明方法による金型により食品収容容器を製造する例を示す断面図である。
【図9】図7の状態を経て本発明の食品収容容器に成形した状態を示す部分斜視図である。
【図10】本発明の食品収容容器の製造法を示す概略平面図である。
【図11】本発明の原料厚紙状物の他の例を示す平面図である。図は、容器の展開図である。
【図12】本発明に使用する金型の概略断面図である。
【図13】本発明に使用する金型の概略平面図である。
【符号の説明】
【0034】
1・・・・・・側面片の重合部
2・・・・・・食品収用容器
4,14,14´・・・・・・側面片
5・・・・・・凹金型(メス金型)
8・・・・・・凸金型(オス金型)
12・・・・・・容器のフランジ部(鍔部)
13・・・・・・切欠部
15・・・・・・折込片
16,16´・・・・・・ロッド(厚紙状物支持部材)
17・・・・・・コイルスプリング
21・・・・・・リング状凸条
22・・・・・・加熱板
29・・・・・水を循環させる通路
30・・・・・加熱エアー噴出管
33・・・・・切断部
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
【0036】
パルプ材料(パルプと植物性繊維材料との混合物を含む)から厚紙状物を製造するには公知の方法によって行えば良い。即ち、パルプ材料を水に懸濁させたものを、すき工程、みず切り工程及び乾燥工程を経て、厚紙状物とすればよい。厚紙状物の表裏面の一方若しくは両方にヒートシール能を有する熱可塑性樹脂を塗布し、形成しようとする容器の展開形状に切断する。これを凹凸一対のプレス金型で加熱プレスすれば良い。プレス金型でプレスするには、対向する一方の側面片は、先に起立させなければならない。尚、厚紙状物には、耐水剤を含有させるのが良い。尚、バージンパルプの代わりに古新聞紙のような古紙から製造したパルプを使用することもできる。
【0037】
本発明にパルプと共に使用する植物性繊維材料としては、竹、葦、サトウキビ又はケナフを使用することができるが、バージンパルプ単独、バージンパルプと竹材との混合物又は古紙からのパルプ材料とするのが、バージンパルプが強度と衛生面の点から、バージンパルプと竹材との混合物及び古紙は、価格の点から好ましい。
【0038】
ヒートシール能を有する熱可塑性樹脂をコーティングする工程は、展開形状に切断する前であっても後であってもよい。熱可塑性樹脂は、厚紙状物の一方でも良いが、魚等を収容するトレーとする場合は、表面と裏面の両方にコーティングするのが好ましい。熱可塑性樹脂をコーティングするのは、金型で容器に形成できると共に、水分、血液、液汁などの浸み込みが防止できるからであるが、内面だけでは、魚等の血が外面に付着した場合に水洗できない。熱可塑性樹脂としては、特にポリエチレン又はポリプロピレンを使用するのが好ましい。
【0039】
厚紙状物を容器の展開形状に打ち抜くと同時に(若しくはその後に)、一方の対向する側面片(好ましくは短いほうの側面片)は、若干上昇するような折り目をつけるのが好ましいが、折り目はつけなくとも差し支えない。
【0040】
このようにして形成した厚紙状物には、図3に示すように、容器開口周縁部をフランジ部(鍔部)に支障なく形成するための切欠部13を四隅に形成する。側面片14と4及び4と14´との間には、切欠部13が位置し、切欠部13の分だけ短くなったV字形の折込片15が形成されている。要するに、折込片15の上方が切欠部13になっている。折込片15両側及び底面と側面との境界に折り目を形成すると良い。折り目は、抜き金型によって形成するのが好ましいが、形成しなくとも差し支えない。折込片15は、底面コーナーに接する部分が鋭角の形状であれば良いが、三角形状(V字状)とするのが好ましい。鋭角の角度は、この実施例では10〜20度、特に14度〜16度とするのが好ましいが、容器の用途によっては、側壁を更に起立させることができるので、10〜30度程度が好ましい。
【0041】
図4及び図5は、本発明に使用する金型の一例を示すものであり、厚紙状物の先に起立させる両側面片(対向する短い辺とするのが好ましい)は、出没し得るロッド16,16´上に支持されている。ロッド16,16´は、凹金型(メス金型)5に形成された孔に嵌合し、孔内を上下動する。ロッド16,16´は、常時は、凹金型5上端より15〜30mm程度突出しているのが好ましい。孔は、好ましくは直径3〜10mm、特に好ましくは、3~7mmである。ロッド16,16´は、先端が斜面で断面四角形に形成されている。断面は多角形でも円形でも差し支えない。
【0042】
ロッド16,16´下端は、コイルスプリング17上端に固定した円板に固定されている。従って、ロッド16,16´が凸金型8に押されると、コイルスプリング17の力に抗して下降し、押圧を解くと、コイルスプリング17の力により元の位置に上昇復帰するようになっている。
【0043】
メス金型5の凹部18周縁部上端外周には、メス金型凹部周縁部が外方に向けて上昇傾斜した上昇傾斜部19と上昇傾斜部19先端から下降した下降傾斜部20とから略山形に形成されたリング状凸条21が形成されているので、図6に示すように、容器を形成すると同時に、四隅をヒートシールして、開口部周縁部が外方に向けた上昇傾斜部3と、その先端部が下降した下降傾斜部11からなる断面山形形状の鍔状部12を有する食品収納容器2を一工程で製造することができる。尚、上昇傾斜部3及び下降傾斜部11が円弧状であり、半円状の鍔状部12を形成するようにしても良い。
【0044】
図4及び図5に示すように、紙の流れ目方向と交差(略直交)するメス金型のリング状凸条21近傍のメス金型両側面上端には、加熱板22が固定されている。この加熱板22によって、上記下降傾斜部20が加熱されるようになっている。加熱は、凹金型の温度より高くすればよい。5〜15℃程度高くするのが好ましい。
【0045】
両面コーティングした容器とする場合は、熱可塑性樹脂の軟化温度以下に加熱しなければならない。従って、凹金型5及び上記下降傾斜部20は、軟化温度以下に加熱することになる。
【0046】
この実施例では、ポリエチレンを使用しているので、ポリエチレンの軟化温度80℃以下とする。凹金型の温度を50〜65℃とすれば、好ましくは、上記下降傾斜部20が、65〜75℃となるようにすれば良い。上記実施例では加熱板を使用したが、ヒーターのような熱源をメス金型に埋設して、上記下降傾斜部が、所定の温度となるようにしても勿論良い。上記実施例では、金型の長さ方向が、紙の流れ目方向とする。
【0047】
図4及び図5に示すように、メス金型5を挟んで壁23,23´が立設している。壁23と23´の間は、厚紙状物の幅と同じになっている。厚紙状物を滑り台のようなスロープに案内されて、メス金型上に落下し、壁23と23´に挟持されて、前方の壁24で停止するようになっている。壁23,23´,24は、位置決めの役割をするものであり、この状態でプレスする。
【0048】
厚紙状物を、対向する一方の側面片を側面片裏面に当接させた支持部材(ロッド)16,16´上に載せることにより先に起立させ、一対のプレス金型8,5で、加熱プレスして、前記折込片15が前記側面片14,14´に重合貼着し、容器開口部周縁部は、上昇傾斜部3と下降傾斜部11とからなるフランジ部12に形成されるように加熱貼着させて食品収納容器を製造する。この際、支持部材16,16´は、凸金型8と凹金型5でプレスするときは、弾性体17の力に抗して下降し、プレス後凸金型8を上昇させると弾性体17の力で元の位置に上昇復帰するようになっている。
【0049】
図3に示す厚紙状物を凹凸金型でプレスして、重合貼着させ、V字形の片15よりも上の部分を折り返すと、図7の状態を経て、図6に示すように容器開口周縁部が、外方上昇傾斜部3と該傾斜部から下降した下降傾斜部11からなる断面略山形のフランジ部(鍔状部)12を容易に形成することができる。V字形の折込片15を長くし、V字形の折込片15と一緒に折り返すと、三重になった部分を折り返すことになるから、コーナー部に皺が多く生じたり破けたりする場合が生じ、綺麗な鍔状部12が形成できない。図7に示すように、短いV字形の折込片15は、側壁14´の表面Aに貼着する。
【0050】
図8は、本発明に使用する金型の他の例を示すものであり、厚紙状物25の先に起立させる両側面片(対向する短い辺とするのが好ましい)は、出没し得るのロッド16,16´で支持されている。ロッド16,16´は、凹金型(メス金型)5に形成された孔内を上下動する。
【0051】
上記のように構成されているので、ロッド16,16´が凸金型(オス金型)8に押圧されると、ロッド16,16´は、バネ17の力に抗して下降し、凸金型8を上昇させると、バネ17の力により元の位置に復帰するようになっている。
【0052】
支持部材(ロッド)16,16´は、凹金型5の孔に単に上下動し得るように設ければよいが、両面をポリエチレンでコーティングした容器を製造する場合は、凹金型5を55〜65℃程度に加熱し、容器のコーナーに熱風を当てて連続的にプレスすると、メス金型の温度が高くなり、メス金型に容器が貼着するので、図12及び図13に示すように、メス金型を冷却する必要があるから、凹金型側壁内に冷却用の水を循環させる通路29を形成する。冷却は55〜65℃程度を維持するようにすれば良い。そのため、この通路29の邪魔にならないように設ける必要がある。内面の片面をコーティングした容器を製造する場合は、外面が金型に貼着しないから、このような通路29は必要ない。
【0053】
上記金型は、図8に示すように、メス金型5の凹部上端外周に断面略山形のリング状凸条21を設けた金型を使用しているので、容器を形成すると同時に、四隅をヒートシールして、断面略山形の鍔状部を有する食品収納容器を一工程で製造することができる。図9では、断面略四角形のリング状凸条を設けた金型を使用しているので、断面コ字形の鍔状部12´を有する食品収納容器となっている。
【0054】
凹凸一対の加熱プレス金型で食品収納容器を形成するには、厚紙状物を図4、図5及び図8に示すメス金型(凹金型)5上に載置する。一方の対向する側面片は、ロッド16,16´上に支持されている。
【0055】
上記実施例では、支持部材としてロッド16,16´を使用している。ロッド16,16´は、図4、図5及び図8に示すように、四隅のコーナー近くの凹金型の孔に、嵌合している。コーナー近くというのは、好ましくはコーナー貼着部(重合部)よりも5mm〜側面片の長さの1/4程度の位置とするのが良い。ロッドは、短い両側面片に対向して設ければ、2本づつで十分であるが、容器が大きい場合は、更に中間に1本設ければよい。短い側面片に設けるのが持ち上げ易いことから好ましい。
【0056】
ロッドの変わりに板体を対向する面に、押圧により、バネの力に抗して下降し、押圧を解くと、バネの力により上昇するように、凹金型に設けた細長い孔に嵌合させても差し支えない。板体の長さは、側面片の長さの1/3以上でコーナー貼着部(重合部)よりも5mm程度の長さとするのが良い。
【0057】
支持部材は、ロッドではなく、板体をバネの力に抗して下降(移動)させ、バネの力により元の位置に復帰するようにしても差し支えない。また、板体を凹金型(メス金型)5に斜めに設けて押圧により凹金型と同一平面となり、押圧を解くとバネの力により元の位置に復帰するようにしても差し支えない。また、板体を起倒し得るように設けても良い。
【0058】
上記実施例では、弾性体として、コイルバネを使用しているが、押圧により弾性体の力に抗して下降し、押圧を解くことにより、弾性体の力により元の位置に復帰するものであるなら、どのような弾性体でもよく、特に限定されない。
【0059】
図10は、両面ポリエチレンコーティングした容器を製造する一例を示すものであり、厚紙状物の四隅には、細長い切欠部13が形成され、該切欠部13に面して、V字形の折込片15が形成されている。即ち、折込片15より上が切欠部13になっている。
【0060】
切欠部13の斜め上方(好ましくは、垂直から15〜45度傾斜)に対向して、細長い加熱エアー噴出管30が位置し、常時180〜200℃の加熱エアーを噴出している。加熱エアー噴出管30には、ヒーター内装管31が連設され、圧縮空気32がヒーターを通って180〜200℃で、加熱エアー噴出管30から噴出するように温度制御されている。加熱エアーの温度が低すぎると貼着不良が生じるし、高すぎるとこげが生じる。
【0061】
上記実施例では、常時加熱エアーを噴出しているが、プレスするときだけ噴出するように、断続的に制御しても勿論良い。
【0062】
加熱エアー噴出管30は、自在に屈曲し得るように形成され、容器の大きさに応じて、自在に噴射位置及び方向を調整できるようになっている。
【0063】
切欠部6の斜め下方(好ましくは、垂直から15〜45度傾斜)に対向して、細長い加熱エアー噴出管を位置させ、同様に加熱エアーを噴出させても差し支えない。斜め上方と斜め下方の両方から加熱エアーを噴出させても差し支えない。その場合、斜め下方からエアーを噴出させる場合は、冷却の目的で使用することも出来る。
【0064】
図8に示すように、凹金型(又は凸金型)の四隅に小孔(直径1mm程度)(熱風噴出孔)を穿設し、パイプ26を埋設して形成した加熱エアーの通路を通った加熱エアーをこの小孔から噴出させても良い。斜め上方又は/及び斜め下方からの加熱エアーの噴出と、金型からの加熱エアーの噴出とを併用しても差し支えない。図中27は、通路に加熱エアーを導入するパイプであり、パイプ26に嵌合している。
【0065】
凹金型は、図12及び図13に示すように、金型温度が55℃〜65℃になるように、循環路29を水が循環している。この温度範囲であると、効果的に成形した容器の金型への付着が防止されると共にコーナーが綺麗に貼着できる。温度が低すぎると貼着不良が生じ、高すぎると成形した容器が金型に付着する。
【0066】
プレスする凸金型の温度は。180℃前後で行っているが、170〜190℃で行うのが好ましい。低すぎると、コーナー部の貼着不良品が発生するし、高すぎると、こげ等の紙の変質が生じる。
【0067】
上記実施例では、凹凸金型で上下方向にプレスする例を示したが、凹凸金型を左右方向にプレスするように配置し、上から凹凸金型の間に厚紙状物を落下させて、横方向にプレスしても差し支えない。
【0068】
図11は、ポリエチレン両面コーティングした厚紙状物の他の例を示すものであり、四隅に側面片を形成する三角形状の切断部33を形成し、短いほうの側面片4,4´を先に起立させ、凹凸金型でプレスして隣接する側面片4と14及び14´、4´と14及び14´とを重合させ、前記と同様に折り返してフランジ部(鍔状部)を有する容器を形成することができる。
【0069】
本発明の方法により製造する食品収納容器としては、特に限定されないが、好適なものとして、魚等を収容するトレーが挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の製造方法及び製造装置を使用することによって、紙の流れ目方向と交差して折曲する部分の金型凸部を加熱して折曲し易くすることによって、常に全体的に略同じ角度に折曲した食品収容容器が製造できる。


















【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ材料から厚紙状物に形成する工程と、該厚紙状物の表裏の一方若しくは両方にヒートシール能を有する熱可塑性樹脂をコーティングする工程と、前記厚紙状物の四隅に側面片を形成する切断部を形成するか、隣接する側面片を連結する折込片を形成し、このようにして得た厚紙状物を、対向する一方の側面片を側面片裏面に当接させた支持部材で支持し、一対のプレス金型で、加熱プレスして、容器開口周縁部は、外方に折曲し、その先端部を下方に折曲して加熱貼着させる食品収納容器の製造方法であって、前記支持部材は、凹金型先端の一方の対向面に突出し、凸金型で凹金型をプレスするときは、弾性体の力に抗して移動し、プレス後押圧を解いて凸金型を移動させると、弾性体の力で元の位置に復帰することを特徴とする食品収容容器の製造方法。
【請求項2】
前記折込片を形成した厚紙状物を、一対のプレス金型で、加熱プレスして、前記折込片が前記側面片に重合貼着し、容器開口周縁部を外方に折曲し、その先端部を容器下方に折曲してコーナー部を加熱貼着させる請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記支持部材は、凹金型先端の一方の対向面に突出し、凹金型に形成された穴内を往復移動する請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
前記折込片は、底面コーナーに接する部分は角部に形成され、前記折込片の上方は、切欠部に形成されている請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
容器開口周縁折曲部は、折込片が側面片に重合した状態で、上端部を前記折込片より上方で外方に折曲し、更に先端部を下方に折曲した形状に形成されている請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記支持具は、ロッドであり、該ロッドは、凹金型先端の一方の対向する面のそれぞれに、複数設けられている請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記ロッドは、四隅のコーナー近くに位置している請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記容器は、容器に内容物を収容した後、フィルムをラッピングして開口部と前記容器開口周縁折曲部上面を覆うように構成してなるトレーである請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
紙の流れ目方向と交差する方向に容器開口周縁折曲部に折曲させる部分の凹金型の先端凸部を、熱可塑性樹脂の軟化温度以下で紙の流れ目方向の凹金型の先端凸部温度より高い温度に加熱する請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂がポリエチレンであり、紙の流れ目方向と交差する方向に容器開口周縁折曲部に折曲させる部分の凹金型の先端凸部を、65℃〜75℃に加熱する請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
パルプ材料から形成した厚紙状物にヒートシール能を有する熱可塑性樹脂をコーティングし、前記厚紙状物の四隅に側面片を形成する切断部を形成するか、隣接する側面片を連結する折込片を形成し、このようにして得た厚紙状物を、対向する一方の側面片を側面片裏面に当接させた支持部材で支持し、一対のプレス金型で、加熱プレスして、容器開口周縁部を外方に折曲し、その先端部を下方に折曲して加熱貼着させる食品収納容器の製造装置であって、メス金型とオス金型とが当接するメス金型先端の一方の対向面に、押圧されると弾性体の力に抗して移動し,押圧を解くと弾性体の力により元の位置に復帰する厚紙状物側面片支持部材を設けたことを特徴とする食品収容容器の製造装置。
【請求項12】
前記隣接する側面片を連結する折込片を形成し、一対のプレス金型で、加熱プレスして、前記折込片が前記側面片に重合貼着し、容器開口周縁折曲部は、外方に折曲し、その先端部を下方に折曲してコーナー部を加熱貼着させる請求項11に記載の製造装置。
【請求項13】
前記支持部材は、凹金型先端の一方の対向面に突出し、凸金型で凹金型をプレスするときは、弾性体の力に抗して移動し、プレス後凸金型を移動させると弾性体の力で元の位置に復帰する請求項11又は12に記載の製造装置。
【請求項14】
前記折込片は、底面コーナーに接する部分は角部に形成され、前記折込片の上方は、切欠部に形成されている請求項11〜13のいずれかに記載の製造装置。
【請求項15】
前記凹金型先端には、容器上端部を外方で前記折込片より上方で折曲し、更にその先端を下方に折曲した形状に形成する凸起部が形成されている請求項11〜14のいずれかに記載の製造装置。
【請求項16】
前記支持部材は、ロッドであり、該ロッドは、凹金型先端の一方の対向面のそれぞれに、複数設けられている請求項11〜15のいずれかに記載の製造装置。
【請求項17】
前記ロッドは、四隅のコーナー近くに位置している請求項11〜16に記載の製造装置。
【請求項18】
前記厚紙状物の表裏両面にはヒートシール能を有する熱可塑性樹脂がコーティングされ、凹金型は熱可塑性樹脂の軟化温度以下に加熱し、凹金型内には冷却用の液体を循環させる通路が形成され、前記容器となる先端四隅の近くには四隅に熱風を噴射する装置が配設されている請求項11〜17のいずれかに記載の製造装置。
【請求項19】
前記容器となる上端四隅に熱風を噴射する装置が、金型の四隅に形成した熱風噴出孔か、四隅の近くに配設した熱風噴射装置である請求項18記載の製造装置。
【請求項20】
紙の流れ目方向と交差する方向に容器開口周縁折曲部に折曲させる部分の凹金型の先端凸部を、紙の流れ目方向に折曲させる周縁折曲部より高い温度に加熱する加熱部材を凹金型に固定若しくは埋設した請求項11〜18のいずれかに記載の製造装置。
【請求項21】
前記熱可塑性樹脂がポリエチレンであり、凹金型は55℃〜65℃に加熱し、紙の流れ目方向と交差する方向に容器開口周縁折曲部に折曲させる部分の凹金型の先端凸部を、65℃〜75℃に加熱する加熱部材を凹金型に固定若しくは埋設した請求項18記載の製造装置。





【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−189727(P2011−189727A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163611(P2010−163611)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(503181705)
【Fターム(参考)】