説明

食品残渣等の連続殺菌乾燥装置

【課題】 生成された残渣物を熱により殺菌・乾燥することで後工程までの品質維持時間を稼ぐとともに輸送や保管の効率よい運用を行うため、成分品質の変化を最小限に抑えこれらを効率よく連続して低コストで行う装置を提供する。
【解決手段】 スパイラル羽根40を有する回転軸4により被処理物を押圧して押し出す排出口6を設け、排出口6は内側環6aと外側環6bとで形成される環状隙間60を通過して排出するように形成され、排出口6の温度を調節できるヒーター7を設けている食品残渣等の連続殺菌乾燥装置において、内側環6aと外側環6bとに、またはいずれかに凹状スパイラル溝6dまたは凸状スパイラル突起6cを設け、排出部の被処理物の通過をより安定させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果実等の絞りかすやオカラ等の比較的流動性のある食品残渣等で、比較的短時間で腐敗や変質のしやすいものを再利用や輸送のためできるだけ長時間品質を保持するための処理用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スパイラル羽根を有する回転軸により被処理物を圧縮するとともに排出口より押し出す装置としては特開平5−284922号公報(特許文献1)が公知である。
【0003】
特許文献1の「植物性資材の糊化装置」は、「一端に排出用開口部が形成されると共に他端側に資材投入口が形成された筒状体内に、資材投入口側より一定外径のスクリュー羽根部分と漸次縮径されたテーパ状スクリュー羽根部分と、先端軸部分とを備えた回転軸を収容し、当該スクリュー羽根部分、当該テーパ状スクリュー羽根部分及び当該先端軸部分と筒状体内壁との間に夫々資材移送部、加圧圧縮部及びスリット部を形成すると共に、当該加圧圧縮部の筒状体内壁に軸方向に伸びる突状部を設け、前記資材投入口より投入された植物性資材をスクリュー羽根部分によって資材移送部より加圧圧縮部へ移送すると共に当該加圧圧縮部に移送する前に含水処理し、この含水植物性資材を前記突状部で回動を阻止しながら当該加圧圧縮部及び当該スリット部で加圧圧縮すると共に、当該植物性資材と前記回転軸との摩擦熱によって当該植物性資材を加熱し、その後当該植物性資材を前記スリット部を介して排出用開口部より大気中に排出する」装置である。
【特許文献1】特開平5−284922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流動性のあるスラリー状の食品残渣等の場合、生成されたこれらの残渣物は大量の水分や雑菌を多く含むものが多く、生成後に短時間で腐敗や変質を起こし、再利用や輸送する場合の弊害となっていた。このことから生成された残渣物を殺菌・乾燥することで後工程までの品質維持時間を稼ぐとともに輸送や保管の効率よい運用を行うことが望まれていた。しかし、成分品質の変化を最小限に抑えこれらを効率よく連続して低コストで行う装置は知られていなかった。
【0005】
前記した文献に示される装置は、穀類を簡易かつ効率的に糊化することを目的としたもので、含水処理した被処理物をスクリュー羽根によって加圧圧縮するとともにスクリューケース内壁に設けた突状部による抵抗により摩擦熱を発生させ加熱するとともに大気中に放出して植物性資材を糊化するものである。流動性のあるスラリー状の食品残渣等の場合摩擦抵抗による摩擦熱が起きにくく、本文献では実施例の中で装置本体の外周壁に温度調整手段を設けることも開示されているが、成分品質の変化を最小限に抑え殺菌・乾燥するには残渣物の種類等により異なるきめ細かい温度管理と加熱時間と比例する排出速度の管理が必要とされ、排出口から排出される被処理物を連続して確実に指定した温度と速度で排出できない課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、スパイラル羽根を有する回転可能な回転軸と、被処理物がスパイラル羽根の回転により移動する流れの上流部に設けられる被処理物投入口と、被処理物がスパイラル羽根の回転により移動する流れの下流部に設けられる排出口とを有し、被処理物投入口側が一定内径の円筒状で、これに連続して排出口側は排出口に向かってテーパー状に内径が漸減したケーシング内に、前記スパイラル羽根を有する回転軸がスパイラル羽根外径をケーシング内壁に近接させ内装されていて、排出口はスパイラル羽根を有する回転軸に固着した又は一体となった内側環とケーシングまたはケーシングに固着した外側環とで形成される環状隙間を通過して排出されるように形成され、該排出口には排出口の温度を調節できるヒーターが設けられていて、前記環状隙間の内側環面または外側環面のいずれかに、または内側環面と外側環面に凹状のスパイラル溝を設けたことを特徴とした食品残渣等の連続殺菌乾燥装置を提案する。
【0007】
また、スパイラル羽根を有する回転可能な回転軸と、被処理物がスパイラル羽根の回転により移動する流れの上流部に設けられる被処理物投入口と、被処理物がスパイラル羽根の回転により移動する流れの下流部に設けられる排出口とを有し、被処理物投入口側が一定内径の円筒状で、これに連続して排出口側は排出口に向かってテーパー状に内径が漸減したケーシング内に、前記スパイラル羽根を有する回転軸がスパイラル羽根外径をケーシング内壁に近接させ内装されていて、排出口はスパイラル羽根を有する回転軸に固着した又は一体となった内側環とケーシングまたはケーシングに固着した外側環とで形成される環状隙間を通過して排出されるように形成され、該排出口には排出口の温度を調節できるヒーターが設けられていて、前記環状隙間の内側環面または外側環面のいずれかに、または内側環面と外側環面に凸状のスパイラル突起を設けたことを特徴とした食品残渣等の連続殺菌乾燥装置を提案する。
【0008】
さらに、スパイラル羽根を有する回転可能な回転軸と、被処理物がスパイラル羽根の回転により移動する流れの上流部に設けられる被処理物投入口と、被処理物がスパイラル羽根の回転により移動する流れの下流部に設けられる排出口とを有し、被処理物投入口側が一定内径の円筒状で、これに連続して排出口側は排出口に向かってテーパー状に内径が漸減したケーシング内に、前記スパイラル羽根を有する回転軸がスパイラル羽根外径をケーシング内壁に近接させ内装されていて、排出口はスパイラル羽根を有する回転軸に固着した又は一体となった内側環とケーシングまたはケーシングに固着した外側環とで形成される環状隙間を通過して排出されるように形成され、該排出口には排出口の温度を調節できるヒーターが設けられていて、前記環状隙間の内側環面と外側環面に、対面する相手と異なる凹状のスパイラル溝または凸状のスパイラル突起のいずれかを設けたことを特徴とした食品残渣等の連続殺菌乾燥装置
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、排出口はスパイラル羽根を有する回転軸に固着した又は一体となった内側環とケーシングまたはケーシングに固着した外側環とで形成される環状隙間を通過して排出されるように形成され、該排出口には排出口の温度を調節できるヒーターが設けられていることにより、スパイラル羽根を有する回転軸により押圧された被処理物は、排出口の環状隙間を通過することで薄い管状となり、排出口部に設けたヒーターの熱が均一に被処理物内部に伝達される。
【0010】
また環状隙間の内側環面または外側環面または内側環面と外側環面に凹状のスパイラル溝を設けたことにより、薄板状の被処理物は内側環の回転に伴い凹状のスパイラル溝に案内され前記スパイラル羽根を有する回転軸による押し出し力との相乗効果により容易に排出されやすくなる。
【0011】
スパイラル羽根を有する回転軸を内装して排出口に向かってテーパー状に内径が漸減したケーシング部により、流動性のあるスラリー状の食品残渣等でも押し出し圧力が逃げにくく安定した圧力で排出できる。これにより殺菌・乾燥を複数の装置を使用することもなく一つの装置で容易に安定して処理する事ができる。
【0012】
また排出口の、内側環とケーシングまたはケーシングに固着した外側環とに温度を調節できるヒーターを設けると、薄い管状となって通過する被処理物の内側と外側より加熱できるため、被処理物を短時間に一定温度に均一に保持でき、より安定した被処理物の温度管理も可能となる。
【0013】
請求項2記載の発明の前記環状隙間の内側環面または外側環面または内側環面と外側環面に凸状のスパイラル突起を設けると、前記凹状のスパイラル溝と同等の効果が得られ、薄板状の被処理物は内側環の回転に伴い凸状のスパイラル突起に案内され前記スパイラル羽根を有する回転軸による押し出し力との相乗効果により容易に排出されやすくなる。
【0014】
請求項3の発明においては、前記環状隙間の内側環面と外側環面に、凹状のスパイラル溝または凸状のスパイラル突起の相手と異なるいずれかを設けることで、凹状のスパイラル溝と凸状のスパイラル突起の相乗作用により薄板状の被処理物は容易に排出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1はこの発明の一実施例を示す装置全体断面図で、図2は排出口部分の要部断面図、図3は排出口部分の内側環と外側環を分解した斜視図である。
【0016】
図1において全体構成を説明する。フレーム1上には、動力源となるモーター等から動力を伝達される入力プーリ20を有した減速機2が設けられ、該減速機2により減速された動力は、該減速機2出力軸である減速機出力軸22によりカップリング21を介して本発明の装置に動力が伝達される。
【0017】
伝達された動力は、スパイラル羽根40を有して回転可能に設けられた回転軸4に伝達される。被処理物がスパイラル羽根40の回転により移動する流れの上流部には被処理物を投入する投入口3が設けられていて、被処理物がスパイラル羽根40の回転により移動する流れの下流部には被処理物が排出される排出口6が設けられている。
【0018】
回転可能に設けられた回転軸4のスパイラル羽根40は、被処理物投入口3側が一定外径の円筒状で、これに連続して排出口6側は排出口6に向かってテーパー状に外径が漸減した形状に形成されていて、これを覆うケーシング5内壁はスパイラル羽根40外径に近接して沿うように形成されている。
【0019】
投入口3より投入された被処理物は、投入口3下方の回転するスパイラル羽根40により排出口6側へ送られるとともに、排出口6に向かってテーパー状に外径が漸減した形状のスパイラル羽根40を有して回転可能に設けられた回転軸4部分とケーシング5内壁により圧縮されつつ排出口6側へ押圧される。
【0020】
排出口6はスパイラル羽根40を有する回転軸4に固着した又は一体となった内側環6aとケーシング5またはケーシングに固着した外側環6bとで形成される環状隙間60を被処理物が通過して排出されるように形成され、排出口6部には環状隙間60を通過する被処理物の温度を調節できるヒーター7が設けられている。本例においては内側環6aとケーシング5またはケーシングに固着した外側環6bにヒーター7が設けられているが、外部からの温度変化に影響されにくい内側環6aのみに設けてもよい。内側環6aに設けたヒーター7の電源は、回転軸4外端部に設けたブラシ7aにより外部と導通され通電される。
【0021】
被処理物の種類により異なる殺菌や乾燥条件の調整は、通過時間や通過量及び圧力を調節すると共にヒーターの温度を調節しながら排出させ殺菌および乾燥を行う。通過時間や通過量及び圧力は、内側環6aとケーシング5またはケーシングに固着した外側環6bとで形成される環状隙間60の大きさや長さを調整することや回転軸4の回転数又はスパイラル羽根40のピッチを調整することで可能である。
【0022】
排出口6の環状隙間60で被処理物をパイプ状にすることで薄板状の被処理物を加熱することができ、短時間で被処理物の内部まで均一に希望の温度に加熱処理が可能となる。また、水分の多い被処理物を処理する際に、スパイラル羽根40による圧縮圧力と圧縮部の温度を調節することで被処理物を加水分解させることも可能で、その後連続して殺菌や乾燥を行い排出することも可能である。
【0023】
また、内側環6aを回転軸4とともに回転させ、回転しない外側環6bとで環状隙間60を形成していることで、被処理物の押し出し抵抗が緩和され詰まり等の不具合を発生させにくい。
【0024】
図2は排出口6部分の要部断面図で、内側環6aと外側環6bとで形成される環状隙間60の被処理物が通過する内外面にはスパイラル状の溝や突起が設けてあり、本例においては内側環6aにスパイラル溝6dが、外側環6bにはスパイラル突起6cがそれぞれ設けてあり、内側環6aが回転することにより被処理物内側面が内側環6aのスパイラル溝6dに誘導されるとともに、被処理物外側面が外側環6bのスパイラル突起6cに誘導され排出口6の外方向へ被処理物がスムーズに排出される。
【0025】
排出口6後部端は回転軸4の軸方向に直接排出しても良いし、図2のように内側環6a出口部を立ち上げて、回転軸4の軸方向と交差する方向に排出することで通過抵抗を発生させ圧力や通過時間を調節することもできる。
【0026】
図3は排出口部分の内側環6aと外側環6bを分解した斜視図で、内側環6aの外周には該内側環6aを回転させると被処理物が排出される方向にねじれたスパイラル溝6dが設けられていて、外側環6bの内周にはスパイラル突起6cが同じく設けられている。これらの溝や突起の誘導作用により薄板状の被処理物は停滞や詰りをすることがなく安定してスムーズに排出される。これにより加熱時間や温度調整を精密に管理できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の一実施例を示す装置全体断面図。
【図2】排出口部分の要部断面図。
【図3】排出口部分の内側環と外側環を分解した斜視図。
【符号の説明】
【0028】
1 フレーム
2 減速機
20 入力プーリ
21 カップリング
22 減速機出力軸
3 投入口
4 回転軸
40 スパイラル羽根
5 ケーシング
6 排出口
6a 内側環
6b 外側環
6c スパイラル突起
6d スパイラル溝
60 環状隙間
7 ヒーター
7a ブラシ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパイラル羽根を有する回転可能な回転軸と、被処理物がスパイラル羽根の回転により移動する流れの上流部に設けられる被処理物投入口と、被処理物がスパイラル羽根の回転により移動する流れの下流部に設けられる排出口とを有し、被処理物投入口側が一定内径の円筒状で、これに連続して排出口側は排出口に向かってテーパー状に内径が漸減したケーシング内に、前記スパイラル羽根を有する回転軸がスパイラル羽根外径をケーシング内壁に近接させ内装されていて、排出口はスパイラル羽根を有する回転軸に固着した又は一体となった内側環とケーシングまたはケーシングに固着した外側環とで形成される環状隙間を通過して排出されるように形成され、該排出口には排出口の温度を調節できるヒーターが設けられていて、前記環状隙間の内側環面または外側環面のいずれかに、または内側環面と外側環面に凹状のスパイラル溝を設けたことを特徴とした食品残渣等の連続殺菌乾燥装置。
【請求項2】
スパイラル羽根を有する回転可能な回転軸と、被処理物がスパイラル羽根の回転により移動する流れの上流部に設けられる被処理物投入口と、被処理物がスパイラル羽根の回転により移動する流れの下流部に設けられる排出口とを有し、被処理物投入口側が一定内径の円筒状で、これに連続して排出口側は排出口に向かってテーパー状に内径が漸減したケーシング内に、前記スパイラル羽根を有する回転軸がスパイラル羽根外径をケーシング内壁に近接させ内装されていて、排出口はスパイラル羽根を有する回転軸に固着した又は一体となった内側環とケーシングまたはケーシングに固着した外側環とで形成される環状隙間を通過して排出されるように形成され、該排出口には排出口の温度を調節できるヒーターが設けられていて、前記環状隙間の内側環面または外側環面のいずれかに、または内側環面と外側環面に凸状のスパイラル突起を設けたことを特徴とした食品残渣等の連続殺菌乾燥装置。
【請求項3】
スパイラル羽根を有する回転可能な回転軸と、被処理物がスパイラル羽根の回転により移動する流れの上流部に設けられる被処理物投入口と、被処理物がスパイラル羽根の回転により移動する流れの下流部に設けられる排出口とを有し、被処理物投入口側が一定内径の円筒状で、これに連続して排出口側は排出口に向かってテーパー状に内径が漸減したケーシング内に、前記スパイラル羽根を有する回転軸がスパイラル羽根外径をケーシング内壁に近接させ内装されていて、排出口はスパイラル羽根を有する回転軸に固着した又は一体となった内側環とケーシングまたはケーシングに固着した外側環とで形成される環状隙間を通過して排出されるように形成され、該排出口には排出口の温度を調節できるヒーターが設けられていて、前記環状隙間の内側環面と外側環面に、対面する相手と異なる凹状のスパイラル溝または凸状のスパイラル突起のいずれかを設けたことを特徴とした食品残渣等の連続殺菌乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−117795(P2007−117795A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−309584(P2005−309584)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(000171746)株式会社ササキコーポレーション (192)
【Fターム(参考)】