説明

食品生地の搬送装置及び搬送方法

【課題】
本発明は、例えばピザ生地やクッキー生地等の変形容易な食品生地を搬送速度の異なる搬送装置の間で移し換える搬送装置及び搬送方法を提供するものである。
【解決手段】
低速と高速による交互の搬送速度で食品生地を搬送する可変速コンベアと、複数のフリーローラを回動自在に備えたローラコンベアと、低速な搬送速度で食品生地を搬送する低速コンベアを直列に配列し、前記各コンベア間近傍の上方に食品生地の有無を検出する検出装置と、前記検出装置からの検出信号に基づき前記可変速コンベアの搬送速度を変速制御する制御装置を設けた食品生地の搬送装置、及び該搬送装置を用いた食品生地の搬送方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばピザ生地やクッキー生地等の食品生地を搬送速度の異なる搬送装置の間で移し換える搬送装置及び搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばピザなどの生産ラインにおいてピザ生地を搬送するために多数の搬送コンベアが用いられている。このような生産ラインにおいては各処理工程の処理サイクルに合わせて各搬送コンベアの搬送速度が各々設定される。従って、生産ラインの上流側の搬送コンベアと下流側の搬送コンベアにおいて搬送速度が相違する場合がある。搬送速度の相違する搬送コンベアを連設し、これら搬送コンベアにより搬送物としてのピザ生地を搬送すると前後の搬送コンベアの速度差により弾性のあるピザ生地は引っ張りや渋滞の作用を受け変形する問題があった。
【0003】
そこで従来より、上流側搬送コンベアと該上流側搬送コンベアと搬送速度の異なる下流側搬送コンベアの間に中間コンベアを設け、該中間コンベアの搬送速度を加減速する搬送装置がある。該搬送装置は、3本のベルトコンベア(上流側から搬入コンベア、間隔設定コンベア、間隔保持コンベア)を直列に配列し、さらに、搬送物間の距離を検出する検出手段を備えている。そして、搬入コンベアと間隔設定コンベアの速度差に応じて可変速コンベアとしての搬入コンベアの搬送速度を制御し、さらに、前記検出手段の検出信号に基づいて可変速コンベアとしての間隔設定コンベアの搬送速度を変化するよう制御して搬送物の間隔を一定値にするものである(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、生地シートを搬送装置間で移し換える搬送装置として、第1搬送装置から該第1搬送装置における下流端側の下方に配置した第2搬送装置に前記生地シートを移載する生地シートの積載装置があった。前記第1搬送装置は、その下流端側に配設した先端搬送部を搬送方向に沿って往復動可能に設けている(例えば、特許文献2)。
【0005】
また、別の搬送装置として、搬送路(上流側搬送コンベア)と該搬送路と速度差のある搬送路(下流側搬送コンベア)の間に複数のフリーローラで組成されるローラコンベアを配設するものがある(例えば、特許文献3)。
【特許文献1】特開平6−127659号公報
【特許文献2】特開平7−213216号公報
【特許文献3】特許昭43−18059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された搬送装置では、搬送物が各コンベアに移し換えが完了した後でなければ間隔設定コンベアの搬送速度を制御できないため搬送時間が短縮できないという問題がある。また、中間に設けられた間隔設定コンベアの構成が複雑であり、製造コストが高くなるという問題がある。さらに、搬送物としてピザ生地やクッキー生地などの食品生地を搬送する場合には、中間に設けたコンベアを搬送物の長さとほぼ同じかそれ以上の長さにしなければならず生産ラインの長さが短くできないという問題がある。
【0007】
また、特許文献2に開示された搬送装置では、第1搬送装置と第2搬送装置の搬送方向が互いに直交するよう配設されているが、仮に直列に配設したとしても上記特許文献1と同様に搬送物が各コンベアに移し換えが完了した後でなければ第1あるいは第2搬送装置の搬送速度を制御できないため搬送時間が短縮できないという問題がある。また、往復動する先端搬送部の構成が複雑であり、製造コストが高くなるという問題がある。
【0008】
また、特許文献3に開示された搬送装置では、前後の搬送路の中間に複数のフリーローラ配設しているが搬送物が製造工業分野における製品、つまり剛体等を対象としているため、弾性のあるピザ生地等では、搬送物が搬送路と該搬送路と速度差のある別の搬送路の両方に同時にまたがって載置すると引っ張りや渋滞の作用を受け変形する問題が依然として解決されない。
【0009】
本発明は、上記の問題を解決するものであり、例えばピザ生地やクッキー生地等の外力により変形容易な食品生地を搬送速度の異なる搬送装置の間で移し換える搬送手段として構成が簡便であり、さらには、搬送時間の短縮が可能な搬送方法及びその装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前述のごとき問題に鑑みてなされたもので、第一の発明は、低速と高速による交互の搬送速度で食品生地を搬送する可変速コンベアと、複数のフリーローラを回動自在に備えたローラコンベアと、低速な搬送速度で食品生地を搬送する低速コンベアを直列に配列し、前記各コンベア間近傍の上方に食品生地の有無を検出する検出装置と、前記検出装置からの検出信号に基づき前記可変速コンベアの搬送速度を変速制御する制御装置を設けたことを特徴とする食品生地の搬送装置である。
【0011】
また、第二の発明は、低速と高速による交互の搬送速度で食品生地を搬送する可変速コンベアと、複数のフリーローラを回動自在に備えたローラコンベアと、低速な搬送速度で食品生地を搬送する低速コンベアを直列に配列し、前記各コンベア間の内何れか一方の上方に食品生地の有無を検出する検出装置と、前記可変速コンベアまたは低速コンベアの何れか一方に食品生地の搬送距離を計測する計測装置と、前記検出装置からの検出信号と前記計測装置からの計測値に基づき前記可変速コンベアの搬送速度を変速制御する制御装置を設けたことを特徴とする食品生地の搬送装置である。
【0012】
また、第三の発明は、低速と高速による交互の搬送速度で食品生地を搬送する可変速コンベアと、複数のフリーローラを回動自在に備えたローラコンベアと、低速な搬送速度で食品生地を搬送する低速コンベアを直列に配列し、前記各コンベア間近傍の上方に食品生地の有無を検出する検出装置と、前記検出装置からの検出信号に基づき前記可変速コンベアの搬送速度を変速制御する制御装置を設けた搬送装置により食品生地を搬送するにあたり、前記2つの検出装置が同時に食品生地を感知して検出信号を前記制御装置に出力している際には前記可変速コンベアを低速な搬送速度で回転走行して前記食品生地を低速で搬送し、また、前記ローラコンベアと低速コンベア間近傍の上方に設けられた前記検出装置のみが食品生地を感知して検出信号を前記制御装置に出力している際には前記可変速コンベアを高速な搬送速度で回転走行することを特徴とする食品生地の搬送方法である。
【0013】
また、第四の発明は、低速と高速による交互の搬送速度で食品生地を搬送する可変速コンベアと、複数のフリーローラを回動自在に備えたローラコンベアと、低速な搬送速度で食品生地を搬送する低速コンベアを直列に配列し、前記各コンベア間の内何れか一方の上方に搬送生地の有無を検出する検出装置と、前記可変速コンベアまたは低速コンベアの何れか一方に食品生地の搬送距離を計測する計測装置と、前記検出装置からの検出信号と前記計測装置からの計測値に基づき前記可変速コンベアの搬送速度を変速制御する制御装置を設けた搬送装置により食品生地を搬送するにあたり、前記制御装置において前記食品生地が前記可変速コンベアと前記ローラコンベアと前記低速コンベア上に同時にまたがって載置していると判断している際には前記可変速コンベアを低速な搬送速度で回転走行して前記食品生地を低速で搬送し、また、前記食品生地が前記ローラコンベア及び低速コンベアにまたがって載置していると判断している際には前記可変速コンベアを高速な搬送速度で回転走行することを特徴とする食品生地の搬送方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来のごとく先端搬送部や間隔設定コンベアなどの複雑な構成を設けたものでなく、回動自在な複数のフリーローラを備えたローラコンベアで構成するものであるから、装置が簡便となり更には製造コストを低く抑えることが可能となる。また、従来の中間コンベアに比べローラコンベアの搬送長さを短くすることが可能となり省スペース化に効果がある。
【0015】
また、従来のごとく搬送物が各コンベアに移し換えが完了した後でなければ可変速コンベアの搬送速度を制御できないものでなく、ローラコンベアに搬送物としての生地シートが乗り移ることにより可変速コンベアの搬送速度を変速制御できるため、ローラコンベアの搬送方向の長さにおいて搬送時間の短縮が可能となる。
【0016】
また、搬送される食品生地の端部を検出する検出装置を設け、該検出装置からの検出信号に基づいて各コンベアを制御するため、食品生地に対する引っ張りや渋滞による変形がなく確実に移し換えが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の第1の実施の形態に係る搬送装置1について図面に基づき説明する。図1は、搬送装置1の概要を示す正面説明図である。図2は、生地シートDを搬送する工程を説明する正面説明図である。
【0018】
第1の実施例においては、定量に分割され丸められた生地玉DBを後述する延展装置7で偏平化した略円形の生地シートDを搬送する場合について説明する。まず、図1に示す各構成について概略的に説明する。図示されない公知の丸め装置により丸められた定量の生地玉DBをほぼ一定の間隔で搬送する搬入コンベア5とその下流側(図1において右側)に前記生地玉DBを略円形の生地シートDに延展する延展コンベア6を連設し、さらに、その下流側に本発明に係る搬送装置1を連設している。
【0019】
搬入コンベア5は無端状の搬送ベルト51と搬送ベルト51を回転する制御モータ53を備えたベルトコンベアであり、所定の搬送速度V1で回転走行する定速度コンベアである。また、延展コンベア6は無端状の搬送ベルト61と搬送ベルト61を回転する制御モータ63を備えたベルトコンベアであり、停止と回転を交互に繰り返す間欠コンベアである。延展コンベア6の搬送速度は搬入コンベア5の搬送速度V1と同一に設けている。また、延展コンベア6の側部に搬送される生地玉DBを検出する検出装置としての光電センサー65を備えている。
【0020】
延展コンベア6の上方には生地玉DBを略円形の生地シートDに延展する延展装置7を設けている。延展装置7は、公転軸CLを中心として公転しながら自転する複数の円錐ローラ71をその頂部を内側として放射状に等間隔に配置し、各円錐ローラ71の下側の母線が延展コンベア6の搬送面と平行となるよう設けている。円錐ローラ71の公転及び自転は、各々制御モータ73,75に連動連結することにより駆動している。また、延展装置7は、延展コンベア6の搬送面に対して接近離反するよう上下動可能に設けている。この上下動は、図示されない流体圧シリンダーや制御モータに連動動連結したボールネジ機構やカム機構を設けることにより制御している。本実施例では延展装置7を上下動可能に設けているが、延展コンベア6を上下動可能に設け延展装置7と相対的に接近離反することも可能である。
【0021】
搬送装置1は、上流側より可変速コンベア2、ローラコンベア3、低速コンベア4を直列に配列している。また、可変速コンベア2の下流端及びローラコンベア3の下流端の上方に生地シートDの搬送を検出する検出装置としての光電センサーS1,S2を各々設けている。ここでは、それら光電センサーS1,S2の間隔を距離P1とする。さらに、各制御モータの駆動を制御する制御装置8を備えている。
【0022】
可変速コンベア2は無端状の搬送ベルト21と搬送ベルト21を回転する制御モータ23を備えたベルトコンベアであり、その搬送速度が高速と低速を交互に繰り返すものである。詳述すると、高速時の搬送速度は搬入コンベア5の搬送速度V1と同速であり、低速時の搬送速度は高速時の搬送速度V1より低速度である低速コンベア4の搬送速度V2と同速に設けている。
【0023】
ローラコンベア3は、可変速コンベア2の図示されないコンベアフレームに連結した左右(図1においては紙面の前後)のフレーム31の間に5本のシャフト33を等間隔に固定し、そのシャフト33に各々駆動力を備えないフリーローラ35を回動自在に挿嵌している。したがって、生地シートDが可変速コンベア2から搬送されフリーローラ35に乗り移ると、生地シートDの移動に伴ってフリーローラ35が従動回転することになる。
【0024】
低速コンベア4は無端状の搬送ベルト41と搬送ベルト41を回転する制御モータ43を備えたベルトコンベアであり、所定の搬送速度V2で回転走行する定速度コンベアである。前述の通り搬送速度V2は搬送速度V1より低速に設けられている。また、可変速コンベア2の下流端と低速コンベア4の上流端の間の距離P1は、本実施例においては概ね生地シートDの長さ(直径)Lの半分に設定している。
【0025】
制御装置8は、前記各制御モータ等の駆動装置を駆動制御するものであり、インバータなどのモータドライバを介してシーケンサなどの演算処理装置を備えている。また、前記各検出装置と電気的に接続している。制御装置8は、各検出装置65,S1,S2からの検出信号に基づき、演算処理装置に予め設定した動作パターンイに従って前記各制御モータ等を駆動する。
【0026】
次に、生地玉DBが生地シートDに延展され、低速コンベア4に搬送されるまでの工程について説明する。生地玉DBは、ほぼ一定の間隔で搬入コンベア5上を速度V1で搬送され連設する延展コンベア6に乗り移る。光電センサー65は生地玉DBの通過を検出し、この検出信号(オン信号)が制御装置8に入力される。この検出信号に基づいて延展コンベア6の回転が停止され、生地玉DBは、上方で待機していた延展装置7の下方位置で一時停止する。この停止位置は、生地玉DBの中心と延展装置7の公転中心軸CLがほぼ一致するよう制御装置8で制御している。
【0027】
延展コンベア6の回転が停止すると、延展装置7は円錐ローラ71を自転公転させながら制御装置8に予め設定された変位パターンに従って降下する。すると、生地玉DBは回転する円錐ローラ71に押圧されながら延ばされ略円形の生地シートDに成形される。
【0028】
その後、延展装置7は再び上昇し所定の位置で次の生地玉DBが搬送されるまで待機する。また、延展コンベア6は再び搬送速度V1で回転走行し、生地シートDは搬送速度V1で回転走行する可変速コンベア2に乗り移る。
【0029】
このような延展成形において1個当りの生地玉DBの処理を短時間で行ない処理効率を向上させる場合には、搬入コンベア5や延展コンベア6の搬送時間、及び延展装置7の延展時間を可能な限り短く設けることが効果的である。したがって、本実施例においては搬送速度V1を高速に設定している。
【0030】
さらに、図2に示す搬送工程について説明する。図2(a)は、生地シートDが可変速コンベア2上を搬送速度V1で搬送される工程を示している。図2(b)は、生地シートDが可変速コンベア2の下流端部に達した工程を示している。この時、その上方に設けられた光電センサーS1が生地シートDを感知して検出信号(オン信号)を制御装置8に出力する。そして、生地シートDはさらに可変速コンベア2により搬送され、生地シートDの下流側の一部がフリーローラ35に乗り移る。
【0031】
図2(c)は、生地シートDがローラコンベア3の下流端部に達した工程を示している。この時、その上方に設けられた光電センサーS2が生地シートDを感知して検出信号(オン信号)を制御装置8に出力する。そして、光電センサーS1も生地シートDを感知している。制御装置8は、光電センサーS2からの検出信号に基づいて可変速コンベア2に減速の指令を出力し、可変速コンベア2は、搬送速度を速度V1より低速な速度V2に減速して回転走行する。生地シートDは、生地シートDの下流側の一部が低速コンベア4に乗り移り、可変速コンベア2、ローラコンベア3、低速コンベア4に同時にまたがって載置した状態で搬送速度V2で搬送される。
【0032】
図2(d)は、生地シートDの上流端が可変速コンベア2の下流端部に達した工程を示している。この直後、光電センサーS1が生地シートDを感知しなくなり、非検出信号(オフ信号)が制御装置8に入力される(言い換えれば、検出信号が制御装置8に未入力の状態となる)。制御装置8は、この非検出信号に基づいて可変速コンベア2に加速の指令を出力し、可変速コンベア2は搬送速度を速度V1にして回転する。そして、生地シートDは、搬送速度V2で搬送される。
【0033】
図2(e)は、生地シートDの上流端がローラコンベア3の下流端部を通過し生地全体が低速コンベア4に載置した工程を示している。また、光電センサーS2が生地シートDを感知しなくなり、非検出信号が制御装置8に入力される。一連の工程を繰り返すことにより、複数の生地玉DBを略円形の生地シートDに成形し順次低速コンベア4まで搬送する。
【0034】
低速コンベア4に載置して搬送される生地シートDは、例えば、連続的に運行する公知の醗酵装置(ホイロ)に移載される。このような醗酵装置においては、その処理能力が限定される場合が多く、その処理能力から搬送速度が決定される。したがって、本実施例においては、醗酵装置に起因する搬送速度が搬出コンベアの搬送速度V2となる。
【0035】
上述したように本発明による搬送装置1を用いることにより、弾性を有するピザ生地玉が略円形の生地シートDに延展され、それらの大きさが個々に若干の差異がある場合においても、2つの光電センサーS1,S2が生地シートDの上流端及び下流端を直接検出することにより生地シートDが速度差のあるコンベア間に同時にまたがって載置することがないので、生地シートDを引き延ばしや渋滞により変形することがなく確実に搬送することができる。
【0036】
次に、搬送装置1による搬送時間の短縮化について説明する。図3は、本発明の搬送装置1と比較説明するための説明図である。なお、上記第1実施例と同様な構成については同じ符号を用いて説明する。比較する搬送装置9は、上流側より高速コンベア91、可変速コンベア95、低速コンベア4を直列に配列している。また、高速コンベア91の下流端及び可変速コンベア95の下流端部の上部に生地シートDを感知する検出装置としての光電センサーS1,S2を各々設けている。ここでは、光電センサーS1,S2の間隔を距離P2とする。距離P2は、生地シートDの長さLとほぼ同じかそれ以上に設けている。
【0037】
高速コンベア91は、無端状の搬送ベルト92と搬送ベルト92を回転する制御モータ93を備えており、その搬送速度は速度V1(高速)である。可変速コンベア95は、無端状の搬送ベルト96と搬送ベルト96を回転する制御モータ97を備えたベルトコンベアであり、その搬送速度が速度V1(高速)と速度V2(低速)を交互に繰り返すものである。そして、低速コンベア4は、前記実施例と同じ構成である。
【0038】
搬送装置9における生地シートDの搬送工程について説明する。図3(a)は、生地シートDが高速コンベア91上を搬送速度V1で搬送される工程を示している。図3(b)は、生地シートDが高速コンベア91の下流端部に達した工程を示している。そして、生地シートDの下流側の一部が搬送速度V1で回転走行する可変速コンベア95に乗り移る。
【0039】
図3(c)は、生地シートDが可変速コンベア95の下流端部に達し、生地シートD全体が可変速コンベア95上に載置した工程を示している。この時、その上方に設けられた光電センサーS2が生地シートDを感知して検出信号(オン信号)を制御装置8に出力する。制御装置8は、光電センサーS2からの検出信号に基づいて可変速コンベア95に減速の指令を出力し、可変速コンベア2は、搬送速度を速度V1より低速な速度V2に減速して回転走行する。生地シートDは、生地シートDの下流側の一部が搬送速度V2(低速)で回転走行する低速コンベア4に乗り移る。
【0040】
図3(d)は、生地シートDの上流端が可変速コンベア95の下流端部に達した工程を示している。この直後、光電センサーS2が生地シートDを感知しなくなり、非検出信号が制御装置8に入力される。制御装置8は、この非検出信号に基づいて可変速コンベア95に変速の指令を出力し、可変速コンベア95は搬送速度V1で回転走行する。
【0041】
実施例1に基づく搬送装置1において、センサーS1が生地シートDの下流端を感知し(図2(b)参照)してからセンサーS2が生地シートDを感知しなくなるまで(図2(e)参照)の所要時間(搬送時間)T1と、比較例に基づく搬送装置9において、センサーS1が生地シートDの下流端を感知し(図3(b)参照)してからセンサーS2が生地シートDを感知しなくなるまで(図3(d)参照)の所要時間(搬送時間)T2を比較する。上記所要時間T1,T2を各々式で表すと下記式1,式2となり、その時間差T3は下記式3となる。
式1)
T1=P1/V1 + L/V2
式2)
T2=P2/V1 + L/V2
式3)
T3=T2−T1=(P2/V1 + L/V2)−(P1/V1 + L/V2)=(P2−P1)/V1
となる。なお、前述の通り距離P2は、生地シートDの長さLとほぼ同じかそれ以上に設けている。
【0042】
式3より理解できるように、時間差T3は光電センサーS1,S2の間隔を示す距離P2と距離P1の差に比例する。また、搬送速度V1に反比例する。つまり、従来の中間コンベアに比べ距離P1(言い換えればローラコンベア3の搬送面長さ)が短い程、時間差T3の値が大きくなり搬送時間の短縮の効果が大きくなる。また、生産ラインの省スペース化の効果がある。
【0043】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る搬送装置1について図面に基づいて説明する。図4は、搬送装置1の概要を示す正面説明図である。図5は、生地片Dを搬送する工程を示す正面説明図である。なお、第一の実施例と同様な構成については同じ符号を用いて説明する。
【0044】
第2の実施例においては、搬送物の個々の長さがほぼ一定である場合に適する搬送装置1である。例えばスクリューコンベアを備えた吐出装置から押出されたクッキー生地などの連続した棒状生地から所定の長さに分割されほぼ等間隔に供給される短冊状の生地片Dを搬送する場合について説明する。まず、図4に示す各構成について概略的に説明する。可変速コンベア2は、実施例1に示した可変速コンベア2に搬送距離を計測する計測装置としてのパルスエンコーダ25を設けた構成である。パルスエンコーダ25は、搬送ベルト21を駆動する制御モータ23と歯車列などの動力伝達機構を介して連結しており、制御モータ23の回転に比例して、つまり、搬送ベルト21の搬送距離に比例してパルス信号を制御装置8に出力するものであり、前記パルス信号を搬送距離に換算するものである。
【0045】
ローラコンベア3、低速コンベア4および制御装置8は、前記実施例1と同じ構成である。また、ローラコンベア3の下流端部の上方に生地片Dを感知する検出装置としての光電センサーS2を設けている。
【0046】
図5(a)は、生地片Dが可変速コンベア2上を搬送速度V1で搬送される工程を示している。図5(b)は、生地片Dが可変速コンベア2の下流端部に達した工程を示している。そして、生地片Dはさらに可変速コンベア2により搬送され、生地片Dの下流側の一部がフリーローラ35に乗り移る。
【0047】
図5(c)は、生地片Dがローラコンベア3の下流端部に達した工程を示している。この時、その上方に設けられた光電センサーS2が生地片Dを感知して検出信号(オン信号)を制御装置8に出力する。制御装置8は、光電センサーS2からの検出信号に基づいて可変速コンベア2に減速の指令を出力し、可変速コンベア2は、搬送速度を速度V1より低速な速度V2に減速して回転走行する。また、制御装置8は、光電センサーS2からの検出信号を入力した時点からパルスエンコーダ25より入力するパルス数のカウントを開始する。その後、生地片Dは、生地片Dの下流側の一部が低速コンベア4に乗り移り、制御装置8は、生地片Dが可変速コンベア2、ローラコンベア3、低速コンベア4に同時にまたがって載置した状態であると判断し各コンベアを搬送速度V2で回転する。
【0048】
図5(d)は、生地シートDの上流端が可変速コンベア2の下流端部に達した工程を示している。可変速コンベア2が前記図5(c)の状態から図5(d)の状態まで生地片Dを搬送したこと(ここでは、この搬送距離をQで表す)をパルスエンコーダ25から出力されるパルス数を制御装置8でカウントすることにより判断している。つまり、制御装置8に搬送距離Qに相当するパルス数を予め入力しておき、該パルス数とカウントしたパルス数を比較することにより生地片Dが距離Q搬送したことを判断している。その後、制御装置8は可変速コンベア2の搬送速度を速度V1に変速制御する。そして、生地片Dは、低速コンベア4に搬送され生地片Dの上流端がローラコンベア3の下流端部を通過し生地全体が低速コンベア4に載置する。また、光電センサーS2が生地シートDを感知しなくなり、非検出信号が制御装置8に入力される。一連の工程を繰り返すことにより、複数の生地片Dを順次低速コンベア4まで搬送する。
【0049】
本発明の実施の形態に係る搬送装置1の説明は概ね上述した通りであるが、これに限らず特許請求の範囲内において変更が可能である。例えば、上記実施例2において可変速コンベア2にパルスエンコーダ25を設けたが、低速コンベア4にパルスエンコーダ25を設け搬送ベルト41の搬送距離を算出して可変速コンベア2の変速を行っても搬送物に対する引っ張りや渋滞による変形がなく確実に移し換えが可能となる。また、光電センサーS2でなく、可変速コンベア2の下流端部の上方に光電センサーS1を設けても制御可能である。
【0050】
また、上記実施例においては、上流側のコンベアを高速と低速で回転走行する可変速コンベアとし下流側を低速で回転走行する低速コンベアとして説明したが、これとは反対に、上流側を低速コンベアとし下流側を可変速コンベアとしても実施例と同様な発送時間の短縮が可能である。
【0051】
また、本実施例においては、可変速コンベア2の下流端と低速コンベア4の上流端の間の距離P1を概ね食品生地Dの長さLの半分に設定して説明したが、長さLの1/3や半分以上であってもよく、食品生地Dが変形することなく搬送される範囲において変更可能である。
【0052】
上述したように、本発明の搬送装置1は、複数の回転自在なフリーローラ35を備えたローラコンベア3を設けることにより従来の搬送装置に比べ構成が簡便であり、製造コストを低く抑えることが可能な搬送装置とすることができた。また、ローラコンベア3の搬送方向の長さにおいて搬送時間の短縮が可能である。また、搬送される食品生地Dの端部を検出する検出装置を設け、該検出装置からの検出信号に基づいて各コンベアを制御するため、変形容易な食品生地Dに対する引っ張りや渋滞による変形がなく確実に移し換えが可能となる。
【0053】
また、光電センサーS1,S2の取り付け場所を各コンベアの下流端部の上方に設けたが、各コンベアの上流端部の上方や各コンベア間の上方であってもよい。つまり、各コンベア間近傍の上方であれば食品生地Dを感知する検出信号を制御装置8に出力するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る搬送装置1の概要を示す正面説明図である。
【図2】搬送装置1による生地シートDを搬送する工程を示す正面説明図である。
【図3】比較例による生地シートDを搬送する工程を示す正面説明図。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る搬送装置1の概要を示す正面説明図である。
【図5】第2実施例における生地片Dを搬送する工程を示す正面説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1 搬送装置
2 可変速コンベア
3 ローラコンベア
35 フリーローラ
4 低速コンベア
5 搬入コンベア
6 延展コンベア
7 延展装置
8 制御装置
9 搬送装置
91 高速コンベア
95 可変速コンベア
D 食品生地(生地シート、生地片)
L 食品生地D(生地シート、生地片)の長さ
P1,P2 距離(S1とS2の間隔)
S1,S2 光電センサー
T1,T2 所要時間
T3 時間差
V1,V2 搬送速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低速と高速による交互の搬送速度で食品生地を搬送する可変速コンベアと、複数のフリーローラを回動自在に備えたローラコンベアと、低速な搬送速度で食品生地を搬送する低速コンベアを直列に配列し、前記各コンベア間近傍の上方に食品生地の有無を検出する検出装置と、前記検出装置からの検出信号に基づき前記可変速コンベアの搬送速度を変速制御する制御装置を設けたことを特徴とする食品生地の搬送装置。
【請求項2】
低速と高速による交互の搬送速度で食品生地を搬送する可変速コンベアと、複数のフリーローラを回動自在に備えたローラコンベアと、低速な搬送速度で食品生地を搬送する低速コンベアを直列に配列し、前記各コンベア間の内何れか一方の上方に食品生地の有無を検出する検出装置と、前記可変速コンベアまたは低速コンベアの何れか一方に食品生地の搬送距離を計測する計測装置と、前記検出装置からの検出信号と前記計測装置からの計測値に基づき前記可変速コンベアの搬送速度を変速制御する制御装置を設けたことを特徴とする食品生地の搬送装置。
【請求項3】
低速と高速による交互の搬送速度で食品生地を搬送する可変速コンベアと、複数のフリーローラを回動自在に備えたローラコンベアと、低速な搬送速度で食品生地を搬送する低速コンベアを直列に配列し、前記各コンベア間近傍の上方に食品生地の有無を検出する検出装置と、前記検出装置からの検出信号に基づき前記可変速コンベアの搬送速度を変速制御する制御装置を設けた搬送装置により食品生地を搬送するにあたり、前記2つの検出装置が同時に食品生地を感知して検出信号を前記制御装置に出力している際には前記可変速コンベアを低速な搬送速度で回転走行して前記食品生地を低速で搬送し、また、前記ローラコンベアと低速コンベア間近傍の上方に設けられた前記検出装置のみが食品生地を感知して検出信号を前記制御装置に出力している際には前記可変速コンベアを高速な搬送速度で回転走行することを特徴とする食品生地の搬送方法。
【請求項4】
低速と高速による交互の搬送速度で食品生地を搬送する可変速コンベアと、複数のフリーローラを回動自在に備えたローラコンベアと、低速な搬送速度で食品生地を搬送する低速コンベアを直列に配列し、前記各コンベア間の内何れか一方の上方に搬送生地の有無を検出する検出装置と、前記可変速コンベアまたは低速コンベアの何れか一方に食品生地の搬送距離を計測する計測装置と、前記検出装置からの検出信号と前記計測装置からの計測値に基づき前記可変速コンベアの搬送速度を変速制御する制御装置を設けた搬送装置により食品生地を搬送するにあたり、前記制御装置において前記食品生地が前記可変速コンベアと前記ローラコンベアと前記低速コンベア上に同時にまたがって載置していると判断している際には前記可変速コンベアを低速な搬送速度で回転走行して前記食品生地を低速で搬送し、また、前記食品生地が前記ローラコンベア及び低速コンベアにまたがって載置していると判断している際には前記可変速コンベアを高速な搬送速度で回転走行することを特徴とする食品生地の搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−60936(P2007−60936A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−248346(P2005−248346)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000115924)レオン自動機株式会社 (98)
【Fターム(参考)】