説明

食材加熱装置

【課題】食材を効率的かつ所定の温度範囲で加熱することができる簡易な食材加熱装置を提供する。
【解決手段】食材加熱装置100は、液体Bが貯留された貯留槽11と所望の食材Aが投入される籠12との間に設けられ、略下方に蒸気14Bを噴出するための蒸気噴出口14Aが形成された蒸気噴出パイプ14と、籠12と蒸気噴出パイプ14との間に設けられ、略上方に気体13Bを噴出するための気体噴出口13Aが形成された気体噴出パイプ13と、液体Bの温度を検知する温度センサ21からの検知信号に基づいて、蒸気噴出口14Aから噴出する蒸気14BをON/OFF制御して、液体Bの温度を、設定温度(45〜98℃)から±2℃の範囲に所定時間維持する温度制御部20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生野菜等の食材を加熱する食材加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の食材は、その表面に付着した土砂、微生物、菌等の異物を除去することにより、所望の食品の材料となる。
食材の表面に付着した異物を除去する方法としては、洗浄液が貯留された洗浄槽に食材を投入し、この洗浄液を攪拌することにより、食材を洗浄する方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、複数の洗浄槽を直列接続し、各洗浄槽の洗浄液に面対称の旋回流を発生させ、この旋回流により食材(野菜)を洗浄する野菜洗浄方法及び装置が開示されている。
【0004】
しかし、特許文献1に記載された野菜洗浄方法及び装置には、以下に示すような問題があった。
(1)各洗浄槽の洗浄液に面対称の旋回流を形成するためには、洗浄槽内に気泡を発生させる少なくとも2つのエアレーションパイプと、気泡とは異なる方向より洗浄液を噴出する給液ノズルとを設ける必要があるので、装置が複雑化してしまう。
(2)各洗浄槽を直列接続して、食材をフロー式に洗浄するので、装置自体が大掛かりになってしまう。
(3)食材を洗浄するときに、超音波や低周波を発生させるので、食材に負担をかけてしまい、品質を損なう可能性がある。
(4)各洗浄槽毎に、洗浄に有効な品質改良剤を付与するので、コストが高くなってしまう。
【0005】
【特許文献1】特公平6−71419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、食材の洗浄や殺菌等のために、食材を効率的かつ所定の温度範囲で加熱することができる簡易な食材加熱装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施例に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、液体(B)が貯留された外容器(11)と、複数の流体通過部(12B)を有し、前記外容器(11)の内部に設けられ、所望の食材(A)が投入される内容器(12)と、前記外容器(11)と前記内容器(12)との間に設けられ、略下方に蒸気(14B)を噴出するための蒸気噴出口(14A)が形成された蒸気噴出部(14、26)と、を備えた食材加熱装置である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の食材加熱装置において、前記外容器(11)は、その底部に曲面(11A)を有し、前記蒸気噴出部(14、26)は、前記曲面(11A)に対向するように設けられていること、を特徴とする食材加熱装置である。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の食材加熱装置において、前記内容器(12)と前記蒸気噴出部(14、26)との間に設けられ、略上方に気体(13B)を噴出するための気体噴出口(13A)が形成された気体噴出部(13、23)をさらに備えたこと、を特徴とする食材加熱装置である。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の食材加熱装置において、前記外容器(11)及び/又は前記内容器(12)の液体(B)の温度を制御する温度制御部(20)をさらに備えたこと、を特徴とする食材加熱装置である。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4に記載の食材加熱装置において、前記温度制御部(20)は、前記液体(B)の温度を検知する温度検知部(21)と、前記蒸気噴出部(14、26)から噴出する蒸気(14B)のON/OFFを切換える弁(25)と、前記温度検知部(21)からの検知信号に基づいて、前記弁(25)を切換えて、前記蒸気(14B)をON/OFF制御する制御部(22)と、を備えたことを特徴とする食材加熱装置である。
【0012】
請求項6の発明は、請求項4又は請求項5に記載の食材加熱装置において、前記温度制御部(20)は、前記液体(B)の温度を、所定値に制御すると共に、前記所定値から±2℃の範囲に所定時間維持すること、を特徴とする食材加熱装置である。
【0013】
請求項7の発明は、請求項6に記載の食材加熱装置において、前記所定値は、45〜98℃であること、を特徴とする食材加熱装置である。
【0014】
請求項8の発明は、請求項7に記載の食材加熱装置において、前記温度制御部(20)は、前記食材(A)が生野菜である場合には、前記所定値を45〜70℃に制御すること、を特徴とする食材加熱装置である。
【0015】
請求項9の発明は、請求項8に記載の食材加熱装置において、前記温度制御部(20)は、前記液体(B)の温度を、前記所定値から±2℃の範囲に1〜15分間維持すること、を特徴とする食材加熱装置である。
【0016】
請求項10の発明は、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の食材加熱装置において、前記流体通過部(12B)の面積は、前記内容器(12)の面積の略40%であること、を特徴とする食材加熱装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の食材加熱装置は、(1)液体が貯留された外容器と、所望の食材が投入される内容器との間に設けられ、略下方に蒸気を噴出するための蒸気噴出口が形成された蒸気噴出部を備えたので、蒸気噴出口から噴出した蒸気は、100℃以下の液体となって、外容器の下方の内壁に沿って拡がり、外容器や内容器の液体の温度を簡易な構成で効率的に上昇させることができる。
【0018】
(2)蒸気噴出部は、外容器の底部に形成された曲面に対向するように設けられているので、蒸気噴出口から噴出した蒸気を、外容器の曲面に沿って効率的に拡げることができ、外容器や内容器の液体の温度を効率的に上昇させることができる。
【0019】
(3)所望の食材が投入される内容器と蒸気噴出部との間に設けられ、略上方に気体を噴出するための気体噴出口が形成された気体噴出部をさらに備えたので、気体噴出口から噴出した気体は、その圧力で、気体の噴射方向に沿って流動し、さらに、液面付近で流れが変化する旋回流を液体に発生させ、内容器内の各箇所における液体の温度差を低減することができ、また、内容器に投入された食材がこの旋回流に沿って流動するので、食材の温度を略均一にすることができる。
【0020】
(4)外容器及び/又は内容器の液体の温度を制御する温度制御部をさらに備えたので、食材を所定の温度で加熱することができる。
【0021】
(5)温度制御部は、液体の温度を検知する温度検知部からの検知信号に基づいて、弁を切換えて、蒸気噴出部から噴出する蒸気をON/OFF制御する制御部を備えたので、液体の温度を迅速に制御することができる。
【0022】
(6)温度制御部は、液体の温度を、所定値から±2℃の範囲に所定時間維持するので、食材の品質を損なうことなく、食材を加熱することができる。
【0023】
(7)所定値を45〜98℃としたので、品質を損なうことなく、キュウリ等の生野菜の加熱殺菌ができるだけでなく、麺類の食材を加熱することができる。
【0024】
(8)温度制御部は、食材が生野菜である場合には、所定値を45〜70℃に制御するので、生野菜の品質を損なうことなく、生野菜を殺菌することができる。
【0025】
(9)温度制御部は、液体の温度を、所定値から±2℃の範囲に1〜15分間維持するので、生野菜を十分に殺菌することができる。
【0026】
(10)流体通過部の面積は、内容器の面積の略40%であるので、気体噴出口から噴出した気体は、流体通過部を通過して、液体に旋回流を発生させ、さらに、内容器に投入された生野菜をこの旋回流によって流動させることにより、生野菜の温度を略均一にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、食材を簡易な構成で効率的かつ所望の温度範囲で加熱するという目的を、蒸気噴出口から蒸気を略下方に噴出させ、この蒸気をON/OFF制御することによって実現する。
【実施例】
【0028】
以下、図面等を参照して、本発明の実施例をあげて、さらに詳しく説明する。
図1は、本発明の実施例による食材加熱装置100を示す図である。なお、図1(a)は、食材加熱装置100の正面図であり、図1(b)は、食材加熱装置100の上面図である。
図2は、食材が投入される籠の一部を示す図である。
食材加熱装置100は、所望の食材(例えば、キュウリ)Aの品質を損なうことなく、食材Aを加熱するための装置であって、加熱部10と、温度制御部20と、旋回駆動部30等とを備えている。
【0029】
加熱部10は、貯留槽11と、食材Aが投入される籠12と、気体噴出パイプ13と、蒸気噴出パイプ14等とを備えている。
貯留槽11は、その底部に曲面11Aが形成され、液体(例えば、水)Bが貯留されている。また、貯留槽11は、曲面11Aを有するので、清掃等を容易に行うことができる。
【0030】
籠12は、所望の食材Aが投入される容器であって、貯留槽11の内部に設けられており、図2に示すように、複数の孔12Bが形成されたパンチングメタル12A等を備えている。
パンチングメタル12Aは、ステンレス等の金属からなる高強度かつ耐食性の高い板状部材であって、表面が略平坦に形成されている。パンチングメタル12Aは、液体Bを孔12Bに通過させることで、液体Bの流れを整えることができる。
孔12Bは、液体Bを通過させるものであり、食材Aがキュウリ等の生野菜である場合には、例えば、60°千鳥状に配置し、孔径10mm、ピッチ15mmとし、さらに、開孔率を略40%とする。なお、開孔率とは、パンチングメタル12Aの面積に対する孔12Bの面積の割合をいう。
【0031】
気体噴出パイプ13は、図1に示すように、籠12と蒸気噴出パイプ14との間に設けられている。気体噴出パイプ13は、貯留槽11の外部に延設されており、その端部には、ヘルール15等が接続され、取り外し可能になっている。このため、気体噴出パイプ13は、清掃等を容易に行うことができる。
また、気体噴出パイプ13の一端は、ヘルール15等を介して、後述する電磁弁28aと接続されている。
気体噴出パイプ13は、気体噴出口13A等を備え、この気体噴出口13Aは、略上方に気体(例えば、空気)13Bを噴出するように形成されている。
【0032】
この気体13Bは、籠12の孔12Bを通過し、さらに、気体13Bの噴出に伴う圧力によって、貯留槽11に貯留された液体Bに、気体13Bの噴射方向に沿って流動し、液面付近で流れが変化する旋回流Cを発生させる。
この旋回流Cは、液体Bの液面付近で流れが変化した後に、貯留槽11の底部に向かって流れ、さらに、気体13Bが噴射されている領域に近付き、再び、気体13Bの噴射方向に沿って液面に向かって流動する。このため、旋回流Cは、籠12内の各箇所における液体Bの温度差を低減させることができる。
また、旋回流Cは、その圧力によって、食材Aを回転させながら、旋回流Cの流れに沿って流動させることにより、食材Aの温度を略均一にすることができる。
【0033】
蒸気噴出パイプ14は、貯留槽11と籠12との間に設けられており、例えば、貯留槽11の底部に形成された曲面11Aに対向する位置に設けられている。
また、蒸気噴出パイプ14は、貯留槽11の外部に延設されており、その端部には、不図示のヘルール等が接続され、取り外し可能になっている。このため、蒸気噴出パイプ14は、清掃等を容易に行うことができる。
また、蒸気噴出パイプ14は、このヘルール等を介して、後述するダイヤフラム弁25と接続されている。
【0034】
蒸気噴出パイプ14は、蒸気噴出口14A等を備え、この蒸気噴出口14Aは、略下方に蒸気14Bを噴出するように形成されている。なお、蒸気とは、液体状態と共存し得る気体状態にある物質をいい、すなわち、臨界温度以下の温度にある気体をいう。
蒸気14Bは、例えば、100℃であり、蒸気噴出口14Aから噴出されると直ちに液体になり、液体Bの温度を上昇させることができる。
【0035】
蒸気噴出口14Aから略下方に噴出された蒸気14Bは、蒸気14Bの噴出に伴う圧力によって、液体Bに旋回流Dを発生させる。この旋回流Dは、貯留槽11の曲面11Aに沿って拡がり、液体Bの温度を、貯留槽11の底部から上部に向けて効率的に上昇させることができる。
したがって、旋回流Cと旋回流Dとによれば、液体Bの温度を効率的かつ略均一に上昇させることができ、さらに、籠12に投入された食材Aの温度を略均一にすることができる。
【0036】
旋回駆動部30は、支持軸31と、ウォーム減速機32と、ハンドル33等とを備えている。支持軸31は、貯留槽11と籠12と共にヒンジを形成しており、貯留槽11と籠12は、支持軸31を中心として回転可能となっている。
ウォーム減速機32は、作業者等により回転駆動されるハンドル33の回転に連動して、支持軸31を回転させ、籠12を、支持軸31を中心として旋回させるための装置である。なお、この旋回は、適宜のモータ等の駆動によってもよい。
【0037】
したがって、旋回駆動部30によれば、食材Aを所定時間加熱した後に、籠12を貯留槽11の外部に旋回させて、籠12に投入された食材Aを取り出すことができる。
【0038】
温度制御部20は、貯留槽11の液体Bの温度を制御するものであって、温度センサ21と、CPU22と、コンプレッサ23と、圧縮空気用配管24と、ダイヤフラム弁25と、ボイラ26と、蒸気用配管27と、電磁弁28a,28b等とを備えている。
【0039】
温度センサ21は、液体Bの温度を検知するセンサであり、液体Bの温度を示す検知信号をCPU22に送信する。温度センサ21は、例えば、温度変化に応じて電気抵抗が変化する測温抵抗体を有するセンサであって、温度特性が良好で経時変化が少ない白金(例えば、0℃のときに、100Ω)を測温抵抗体として用いたセンサが好適に用いられ得る。
【0040】
CPU22は、温度センサ21からの検知信号に基づいて、電磁弁28aを制御して、気体噴出パイプ13から噴出する気体13Bを制御し、さらに、電磁弁28bを制御して、ダイヤフラム弁25を切換えて、蒸気噴出パイプ14から噴出する蒸気14BをON/OFF制御する(詳細は、後述)。
【0041】
コンプレッサ23は、圧縮された気体を送り出すための装置であって、圧縮空気用配管24に接続されている。この圧縮空気用配管24は、分岐しており、電磁弁28aを介して気体噴出パイプ13に接続され、また、電磁弁28bを介してダイヤフラム弁25に接続されている。
このため、コンプレッサ23は、その圧縮空気を電磁弁28aを介して、バブリング用圧縮空気(すなわち、気体13B)として気体噴出パイプ13に吐出することができ、さらに、その圧縮空気を電磁弁28bを介して、弁駆動用圧縮空気としてダイヤフラム弁25に吐出することができる。
【0042】
ボイラ26は、その内部に供給された適宜の液体を加熱することにより、蒸気14Bを発生させる装置である。
ダイヤフラム弁25は、蒸気噴出パイプ14と接続されており、さらに、上述したように圧縮空気用配管24を介してコンプレッサ23と接続され、蒸気用配管27を介してボイラ26と接続されている。
ダイヤフラム弁25は、不図示のダイヤフラム等を備え、蒸気噴出パイプ14に蒸気14Bを送り出すための流路を形成する。ダイヤフラムは、可撓性の膜であって、コンプレッサ23から送り出され、電磁弁28bを介して吐出する弁駆動用圧縮空気により変位し、流路を全開又は全閉とする。
【0043】
このため、ダイヤフラム弁25は、コンプレッサ23から送り出された圧縮空気により、ボイラ26で発生した蒸気14Bを、蒸気噴出パイプ14に吐出又は遮断することができる。
【0044】
また、ダイヤフラム弁25は、コンプレッサ23から送り出された圧縮空気により駆動されるので、機構を簡略化できると共に、食材Aを液体Bで加熱した後に、食材Aを籠12から取り出すような水を扱う環境であっても、安全性を確保することができる。
また、ダイヤフラム弁25は、流路の全開又は全閉により蒸気14BのON/OFFを切換えるので、追従性がよく、そのために、液体Bの温度を迅速に制御することができる。
【0045】
つぎに、温度制御部20の動作について説明する。
CPU22は、温度センサ21より、液体Bの温度が設定温度(例えば、45〜98℃)よりも0.5℃上昇したことを示す検知信号を受信すると、直ちに、電磁弁28bを制御して、ダイヤフラム弁25に送り出す弁駆動用圧縮空気を調整することにより、ダイヤフラム弁25の流路を全閉とし、ボイラ26で発生した蒸気14Bが蒸気噴出パイプ14に送り出されないようにする。
【0046】
また、CPU22は、液体Bの温度が設定温度よりも0.5℃下降したことを示す検知信号を受信すると、直ちに、電磁弁28bを制御して、ダイヤフラム弁25の流路を全開とし、ボイラ26で発生した蒸気14Bを、蒸気噴出パイプ14に送り出す。さらに、CPU22は、タイマー機能を備えている。
したがって、温度制御部20は、ダイヤフラム弁25の流路を全閉又は全開することにより、液体B(例えば、20℃の水)の温度を、迅速かつ確実に設定温度(例えば、45〜98℃)に制御できると共に、設定温度から所定範囲内に所定時間維持することができる。
また、温度制御部20は、蒸気14Bの熱量を必要以上に放出する制御を行わないので、蒸気14Bを節約できる。
一方、CPU22は、必要に応じて、電磁弁28aを制御して、コンプレッサ23から吐出された圧縮空気を、気体13Bとして気体噴出パイプ13に吐出し、上述した旋回流Cを発生させることができる。
さらにまた、温度制御部20は、設定温度を45〜98℃としたので、液体Bの温度を、所望の食材Aの品質を損なわずに、食材Aを加熱することができる最適な温度に制御することができる。なお、食材Aが生野菜である場合には、設定温度を45〜70℃とし、所定時間を1〜15分間とすることが好ましい。
【0047】
以下、具体的な食材Aを挙げると共に、食材Aの品質について説明する。
ここでは、食材加熱装置100を温度が20℃である部屋に設置し、その容積が0.15m3、材質がSUS304、板厚が3mm、比熱が0.5J/g・kである貯留槽11を用いて、常温で保管されていたキュウリを籠12に投入した場合について説明する。
食材Aの品質は、食材Aを加熱するときの温度や時間等によって、損なわれることがある。このために、食材Aを加熱する温度、温度範囲、時間を適切な値に制御することにより、その品質を損なうことなく、食材Aを加熱することができる。
したがって、食材Aを加熱する温度、温度範囲、時間を管理することにより、食材Aの品質管理を行うことができる。
【0048】
図3は、食材加熱装置100により加熱されたキュウリの品質を示す図である。
図3(a)は、キュウリの品質を各条件下で比較した結果を示す図であって、キュウリの表面から菌を除去する加熱時間を10分とし、設定温度をそれぞれ50、60、70℃とし、さらに、設定温度範囲を±2、±4、±6℃としたものである。すなわち、CPU22は、液体Bの温度が所定値の±0.5℃となるように、電磁弁28a,28bに制御信号を出力した結果、実際には、設定温度から±2℃の範囲内に収めることができた。なお、キュウリの品質(ここでは、鮮度・食感をいう)としては、「◎」を極めて良好、「○」を良好、「△」をやや不良、「×」を不良とした。
【0049】
図3(a)に示すように、キュウリの品質は、加熱時間を10分とした場合では、温度範囲を狭い範囲(すなわち、±2℃)に調整し、さらに、設定温度を60℃にすることにより、その品質を損なわずに、殺菌を行うことができた。
【0050】
図3(b)に示した結果は、図3(a)に示した結果と比べると、加熱時間を12分にした点が異なり、全体として、キュウリの品質が低下したことを示している。
例えば、キュウリは、設定温度50℃、温度範囲±6℃であるときには、鮮度・食感を保つことはできたが、殺菌が不十分であったために、「×」であった。
また、キュウリは、設定温度70℃、温度範囲±2℃であるときには、殺菌を行うことはできたが、鮮度・食感を保つことはできなかったために、「×」であった。
【0051】
このため、温度制御部20は、食材Aがキュウリである場合には、設定温度を60℃に制御すると共に、温度範囲を±2℃として、この状態を10分間維持することにより、キュウリの品質を損なうことなく、殺菌を行うことができる。
【0052】
したがって、本実施例による食材加熱装置100によれば、液体Bの温度を設定温度(45〜98℃)に迅速に制御できると共に、この設定温度を±2℃の範囲に所定時間維持することができるので、キュウリ等の生野菜の品質を損なうことなく、加熱殺菌を行うことができる。
【0053】
(変形例)
以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の均等の範囲内である。
(1)食材Aは、キュウリ等の生野菜としたが、これに限られず、麺類であってもよい。なお、麺類の品質は、麺類の茹で汁の濁り具合である濁度を用いて評価した。この理由は、麺類の表面から成分が溶け出すと茹で汁が濁り、それと麺類の表面の荒れとに正の相関があるからである。
この装置を用いれば、調理者等は、設定温度を正確に設定でき、しかも変動幅が少ないので、茹でる時間を管理するだけで、表面具合が良好に保たれた麺類を得ることができる。
(2)籠12は、パンチングメタルとしたが、異物が付着し難く、清掃等が容易であれば、これに限られず、網等、適宜の形状のものでもよい。
(3)貯留槽11に貯留される液体Bは、食材Aの品質を損なうことなく、食材Aを加熱できるのであれば、水に限らず、洗浄液等、適宜の液体でもよい。
(4)気体噴出パイプ13や蒸気噴出パイプ14は、気体13Bや蒸気14Bを噴出するための噴出口を有するのであれば、パイプに限られず、筒状の先端の細孔から気体13Bや蒸気14Bを噴出するノズル等であってもよい。
さらに、気体噴出パイプ13や蒸気噴出パイプ14の径や数は、食材加熱装置100に要求される性能等に応じて、変化させてもよい。
(5)温度制御部20では、ダイヤフラム弁25を用いたが、安全性を確保できれば、電磁弁やモータ駆動弁等の適宜の弁を用いてもよい。
(6)貯留槽11は、その底部に曲面11Aが形成されているとしたが、これに限られず、底部が平坦で、隅に曲面が形成されていてもよく、また、半球状の球面を有するものや鏡板であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施例による食材加熱装置100を示す図である。
【図2】食材が投入される籠の一部を示す図である。
【図3】食材加熱装置100により加熱されたキュウリの品質を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
10 加熱部
11 貯留槽(外容器)
12 籠(内容器)
12B 孔(流体通過部)
13 気体噴出パイプ
13A 気体噴出口
13B 気体
14 蒸気噴出パイプ
14A 蒸気噴出口
14B 蒸気
20 温度制御部
21 温度センサ
22 CPU
23 コンプレッサ
25 ダイヤフラム弁
26 ボイラ
28a,28b 電磁弁
30 旋回駆動部
100 食材加熱装置
A 食材
B 液体
C、D 旋回流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が貯留された外容器と、
複数の流体通過部を有し、前記外容器の内部に設けられ、所望の食材が投入される内容器と、
前記外容器と前記内容器との間に設けられ、略下方に蒸気を噴出するための蒸気噴出口が形成された蒸気噴出部と、
を備えた食材加熱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の食材加熱装置において、
前記外容器は、その底部に曲面を有し、
前記蒸気噴出部は、前記曲面に対向するように設けられていること、
を特徴とする食材加熱装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の食材加熱装置において、
前記内容器と前記蒸気噴出部との間に設けられ、略上方に気体を噴出するための気体噴出口が形成された気体噴出部をさらに備えたこと、
を特徴とする食材加熱装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の食材加熱装置において、
前記外容器及び/又は前記内容器の液体の温度を制御する温度制御部をさらに備えたこと、
を特徴とする食材加熱装置。
【請求項5】
請求項4に記載の食材加熱装置において、
前記温度制御部は、
前記液体の温度を検知する温度検知部と、
前記蒸気噴出部から噴出する蒸気のON/OFFを切換える弁と、
前記温度検知部からの検知信号に基づいて、前記弁を切換えて、前記蒸気をON/OFF制御する制御部と、
を備えたこと特徴とする食材加熱装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の食材加熱装置において、
前記温度制御部は、前記液体の温度を、所定値に制御すると共に、前記所定値から±2℃の範囲に所定時間維持すること、
を特徴とする食材加熱装置。
【請求項7】
請求項6に記載の食材加熱装置において、
前記所定値は、45〜98℃であること、
を特徴とする食材加熱装置。
【請求項8】
請求項7に記載の食材加熱装置において、
前記温度制御部は、前記食材が生野菜である場合には、前記所定値を45〜70℃に制御すること、
を特徴とする食材加熱装置。
【請求項9】
請求項8に記載の食材加熱装置において、
前記温度制御部は、前記液体の温度を、前記所定値から±2℃の範囲に1〜15分間維持すること、
を特徴とする食材加熱装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の食材加熱装置において、
前記流体通過部の面積は、前記内容器の面積の略40%であること、
を特徴とする食材加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−6798(P2006−6798A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191305(P2004−191305)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000226998)株式会社日清製粉グループ本社 (125)
【Fターム(参考)】