説明

飲酒状態判定装置

【課題】飲酒状態を高精度に判定する飲酒状態判定装置を提供することを課題とする。
【解決手段】被験者の生理量を取得する生理量取得手段11と、生理量取得手段11で取得した被験者の生理量に基づいて被験者の飲酒状態を判定する飲酒状態判定手段31bと、被験者に刺激を付与する刺激付与手段20とを備え、飲酒状態判定手段31bは、刺激付与手段20で付与した刺激による被験者の生理量の変化に基づいて被験者の飲酒状態を判定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の飲酒状態を判定する飲酒状態判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人は、飲酒によって、判断力、注意力、運動能力などが低下する。そのため、飲酒状態で車両を運転すると、危険性が増し、事故を起こす可能性が高くなる。しかし、飲酒運転を行うドライバが存在する。そこで、飲酒運転を防止するための装置が各種開発されているが、飲酒運転を防止するためには飲酒状態を高精度に判定することが重要となる。特許文献1には、ドライバの呼気中のアルコール濃度を検知し、飲酒状態を判定することが記載されている。また、特許文献2には、ドライバの脳表面の血流量を計測し、この血流量などに基づいてドライバの意識状態を判定することが記載されている。
【特許文献1】特開2005−69742号公報
【特許文献2】特開2005−253590号公報
【特許文献3】特開平7−1987号公報
【特許文献4】特開2007−89920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
呼気で判定する場合、呼気を採取する際に呼気以外の外気が混入する可能性がある。外気が混入した場合、アルコール濃度が低下し、飲酒状態の判定精度が低下する。また、血流量の変化で判定する場合、血流量の変化には個人差が大きい。そのため、同じ条件で判定すると、単純な血流量の変化では判定精度が低下する。
【0004】
そこで、本発明は、飲酒状態を高精度に判定する飲酒状態判定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る飲酒状態判定装置は、被験者の生理量を取得する生理量取得手段と、生理量取得手段で取得した被験者の生理量に基づいて被験者の飲酒状態を判定する飲酒状態判定手段と、被験者に刺激を付与する刺激付与手段とを備え、飲酒状態判定手段は、刺激付与手段で付与した刺激による被験者の生理量の変化に基づいて被験者の飲酒状態を判定することを特徴とする。
【0006】
この飲酒状態判定装置では、刺激付与手段で被験者に刺激を付与し、生理量取得手段によりその刺激付与前や刺激付与中あるいは刺激付与後に被験者の生理量を取得する。生理量としては、刺激付与によって変化の出る生理量であり、例えば、血流量、発汗量がある。通常、人に刺激を与えると、その刺激に反応して血流量などの生理量が変化する。しかし、飲酒状態の場合、人に刺激を与えても、その刺激に対して生理量が変化し難くなる。そこで、飲酒状態判定装置では、飲酒状態判定手段により刺激付与前や刺激付与中あるいは刺激付与後の被験者の各生理量の変化に基づいて被験者の飲酒状態を判定する。このように、飲酒状態判定装置では、単純に生理量の変化だけで判定するのではなく、付与した刺激に応じた生理量の変化を判定することにより、被験者の飲酒状態を高精度に判定することができる。これによって、呼気による判定での外気混入等の外的要因による判定精度の低下を回避できる。
【0007】
本発明の上記飲酒状態判定装置では、飲酒状態判定手段は、刺激付与前の被験者の生理量と刺激付与中又は刺激付与後の被験者の生理量との差が閾値以下の場合に被験者が飲酒している状態と判定すると好適である。
【0008】
上記したように、飲酒状態の場合には、刺激に対して生理量が変化し難くなる。したがって、刺激付与前の被験者の生理量と刺激付与中あるいは刺激付与後の被験者の生理量との差は、被験者が飲酒状態の場合には小さくなる。そこで、飲酒状態判定手段では、刺激付与前の被験者の生理量と刺激付与中あるいは刺激付与後の被験者の生理量との差が閾値以下か否かを判定し、閾値以下の場合には被験者が飲酒状態と判定する。これによって、飲酒状態判定手段では、簡単に飲酒状態を判定することができる。なお、生理量の差としては、減算による単純な差の他に除算による比などの他の差を表すものでもよい。
【0009】
本発明の上記飲酒状態判定装置では、刺激付与手段は、温度による刺激を付与すると好適である。
【0010】
被験者に温度刺激を付与した場合、通常時にはその温度刺激(特に、冷却刺激)によって生理量が敏感に反応するが、飲酒状態時には温度刺激に対して生理量が殆ど反応しない。そこで、この飲酒状態判定装置では、刺激付与手段により温度刺激を付与し、生理量取得手段によりその温度刺激前や刺激中あるいは刺激後に被験者の生理量を取得する。これによって、飲酒状態判定手段では、より高精度に飲酒状態を判定することができる。
【0011】
本発明の上記飲酒状態判定装置では、被験者の周辺の温度を取得する周辺温度取得手段と、刺激付与手段による刺激の付与方法を変更する付与方法変更手段とを備え、付与方法変更手段は、周辺温度取得手段で取得した周辺温度に基づいて刺激温度を決定する構成としてもよい。
【0012】
人の温度感受性は、体外の環境温度に影響を受ける。そこで、この飲酒状態判定装置では、周辺温度取得手段により被験者の周辺の温度を取得し、付与方法変更手段によりその取得した周辺温度に基づいて刺激温度を決定する。このように、飲酒状態判定装置では、被験者の周辺温度に応じて刺激温度を決定することにより、そのときの環境温度に適した刺激温度を設定でき、より高精度に飲酒状態を判定することができる。ちなみに、周辺温度と同程度の温度刺激を付与したとしても、被験者はその温度刺激を刺激として感受することが困難である。
【0013】
本発明の上記飲酒状態判定装置では、付与方法変更手段は、温熱刺激を付与した後に冷却刺激を付与すると好適である。
【0014】
この飲酒状態判定装置では、付与方法変更手段により、刺激付与手段を用いて温熱刺激を付与し、その後に刺激付与手段を用いて冷却刺激を付与する。これによって、単に冷却刺激を付与する場合より冷却刺激を付与したときに温度差があり、被験者に付与する冷却刺激による冷却効果をより高めることができる。その結果、通常時には、その冷却刺激によって、生理量がより敏感に反応する。これによって、飲酒状態判定手段では、より高精度に飲酒状態を判定することができる。
【0015】
本発明の上記飲酒状態判定装置では、被験者の皮膚特性を取得する皮膚特性取得手段を備え、付与方法変更手段は、皮膚特性取得手段で取得した皮膚特性に基づいて刺激温度を変更する構成としてもよい。
【0016】
被験者の皮膚特性によって、温度刺激が体内に伝わり難くなる場合があるので、温度刺激による被験者の生理量の変化の仕方が変わる。そこで、この飲酒状態判定装置では、皮膚特性取得手段により被験者の皮膚特性を取得し、付与方法変更手段により皮膚特性に基づいて刺激温度を変更する。ここでは、温度刺激が体内に伝わり難い皮膚特性ほど、温度差が大きくなるように刺激温度を変更するとよい(例えば、冷却刺激の刺激温度をより低くする)。これによって、飲酒状態判定装置では、被験者の皮膚特性の影響を極力抑えて、高精度に飲酒状態を判定することができる。
【0017】
本発明の上記飲酒状態判定装置では、皮膚特性取得手段は、皮膚の硬さ又は/及び水分量を取得し、付与方法変更手段は、皮膚の硬さが硬いほど又は/及び皮膚の水分量が多いほど冷却温度の刺激温度を低くすると好適である。
【0018】
冷却刺激を体外から付与しても、皮膚の硬さが硬いほど、また皮膚の水分量が多いほど、その冷却刺激が体内に伝わり難い。そこで、この飲酒状態判定装置では、皮膚特性取得手段により皮膚の硬さや水分量を取得し、付与方法変更手段により皮膚の硬さが硬いほど又は/及び皮膚の水分量が多いほど冷却刺激の刺激温度を低く設定する。これによって、飲酒状態判定装置では、冷却刺激が体内に伝わり難い皮膚特性の場合でも、冷却効果のより高い冷却刺激を付与することができるので、高精度に飲酒状態を判定することができる。
【0019】
本発明の上記飲酒状態判定装置では、刺激付与部位を取得する刺激付与部位取得手段を備え、付与方法変更手段は、刺激付与部位取得手段で取得した刺激付与部位に基づいて刺激温度を変更する構成としてもよい。
【0020】
人の体の部位によって、温度感受性が異なるので、温度刺激による被験者の生理量の変化の仕方が変わる。そこで、この飲酒状態判定装置では、刺激付与部位取得手段により刺激付与部位を取得し、付与方法変更手段により刺激付与部位に基づいて刺激温度を変更する。ここでは、温度感受性が低い部位ほど、温度差が大きくなるように刺激温度を変更するとよい。これによって、飲酒状態判定装置では、被験者に刺激を付与する部位の影響を極力抑えて、高精度に飲酒状態を判定することができる。
【0021】
本発明の上記飲酒状態判定装置では、付与方法変更手段は、温度受容器の数が多い刺激付与部位より温度受容器の数が少ない刺激付与部位に対しては冷却刺激の刺激温度を低くすると好適である。
【0022】
人の体の部位によって、温度受容器(体の中の温度センサに相当)の数が異なり、温度受容器の数が少ないほど温度感受性が低くなる。例えば、手のひらや腕などは温度受容器の数が多く、背中や足などは温度受容器の数が少ない。そこで、この飲酒状態判定装置では、付与方法変更手段により温度受容器の数が多い刺激付与部位より温度受容器の数が少ない刺激付与部位に対して冷却刺激の刺激温度を低く設定する。これによって、飲酒状態判定装置では、温度受容器の少ない部位に冷却刺激を付与する場合でも、冷却効果のより高い冷却刺激を付与することができるので、高精度に飲酒状態を判定することができる。
【0023】
本発明の上記飲酒状態判定装置では、被験者の年齢情報を取得する年齢情報取得手段を備え、付与方法変更手段は、年齢情報取得手段で取得した年齢情報に基づいて刺激温度を変更する構成としてもよい。
【0024】
年齢(特に、高齢の場合)によって、温度感受性が異なるので、温度刺激による被験者の生理量の変化の仕方が変わる。そこで、この飲酒状態判定装置では、年齢情報取得手段により被験者の年齢情報を取得し、付与方法変更手段により年齢情報に基づいて刺激温度を変更する。ここでは、温度感受性が低くなる年齢ほど、温度差が大きくなるように刺激温度を変更するとよい。これによって、飲酒状態判定装置では、被験者の年齢の影響を極力抑えて、高精度に飲酒状態を判定することができる。
【0025】
本発明の上記飲酒状態判定装置では、付与方法変更手段は、年齢が閾値以上の場合には年齢が高いほど冷却刺激の刺激温度を低くすると好適である。
【0026】
ある程度の年齢までは温度差を同じように感じることができるが、ある年齢以上になると年齢が高くなるほど温度差を感じ難くなる。そこで、この飲酒状態判定装置では、付与方法変更手段により年齢が閾値以上の場合には年齢が高くなるほど冷却刺激の刺激温度を低く設定する。これによって、飲酒状態判定装置では、温度差を感じ難い高齢の被験者の場合でも、冷却効果のより高い冷却刺激を付与することができるので、高精度に飲酒状態を判定することができる。
【0027】
本発明の上記飲酒状態判定装置では、刺激付与手段は、圧力による刺激を付与する構成としてもよい。
【0028】
被験者に圧力刺激を付与した場合、通常時にはその圧力刺激によって生理量が敏感に反応するが、飲酒状態時には圧力刺激に対して生理量が殆ど反応しない。そこで、この飲酒状態判定装置では、刺激付与手段により圧力刺激を付与し、生理量取得手段によりその圧力刺激前や圧力刺激中あるいは圧力刺激後に被験者の生理量を取得する。これによって、飲酒状態判定手段では、より高精度に飲酒状態を判定することができる。
【0029】
本発明の上記飲酒状態判定装置では、被験者の体型又は/及び着衣の情報を取得する被験者情報取得手段と、刺激付与手段による刺激の付与方法を変更する付与方法変更手段とを備え、付与方法変更手段は、被験者情報取得手段で取得した体型又は/及び着衣の情報に基づいて刺激圧力又は刺激パターンを決定する構成としてもよい。
【0030】
被験者の体型や着衣の状態によって、圧力刺激が体内に伝わり難くなる場合があるので、圧力刺激による被験者の生理量の変化の仕方が変わる。そこで、この飲酒状態判定装置では、被験者情報取得手段により被験者の体型や着衣の情報を取得し、付与方法変更手段により体型や着衣に基づいて刺激圧力又は刺激パターン(刺激付与時間など)を変更する。ここでは、圧力刺激が体内に伝わり難い体型や着衣ほど、刺激が大きくなるように刺激圧力や刺激付与時間などを変更するとよい。これによって、飲酒状態判定装置では、被験者の体型や着衣の影響を極力抑えて、高精度に飲酒状態を判定することができる。
【0031】
本発明の上記飲酒状態判定装置では、付与方法変更手段は、体重が重いほど又は/及び着衣が厚いほど刺激圧力を大きくすると好適である。
【0032】
圧力刺激を体外から付与しても、体重が重いほど(すなわち、皮膚が厚いほど、体脂肪が多いほど)、また着衣が厚いほど、圧力刺激が体内に伝わり難い。そこで、この飲酒状態判定装置では、被験者情報取得手段により体重や着衣の厚さを取得し、付与方法変更手段により体重が重いほど又は/及び着衣が厚いほど刺激圧力を大きく設定する。これによって、飲酒状態判定装置では、圧力刺激が体内に伝わり難い被験者の場合でも、圧力効果のより高い圧力刺激を付与することができるので、高精度に飲酒状態を判定することができる。
【0033】
本発明の上記飲酒状態判定装置では、生理量情報取得手段は、被験者の血流量を取得すると好適である。
【0034】
体内へのアルコールの摂取によって、身体内の血管の拡張収縮特性(ひいては、血流量の変化の仕方)が変わる。例えば、アルコールを摂取していない被験者の場合、冷却刺激を付与すると、血管が収縮し、血流量が減少する。しかし、アルコールを摂取している被験者の場合、冷却刺激を付与しても、血管が変化し難く、血流量も殆ど変化しない(あるいは、全く変化しない)。したがって、飲酒状態判定装置では、付与した刺激に応じた血流量の変化を判定することにより、被験者の飲酒状態をより高精度に判定することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明は、付与した刺激に応じた生理量の変化を判定することにより、被験者の飲酒状態を高精度に判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、図面を参照して、本発明に係る飲酒状態判定装置の実施の形態を説明する。
【0037】
本実施の形態では、本発明に係る飲酒状態判定装置を、車両に搭載され、ドライバの飲酒状態を判定する飲酒状態判定装置に適用する。本実施の形態に係る飲酒状態判定装置は、ドライバに対する刺激付与前と刺激付与中の血流量を計測し、その刺激付与前と刺激付与中の血流量を比較することによってドライバの飲酒状態を判定し、飲酒状態と判定した場合にはドライバに対して警報を出力する。本実施の形態には、6つの形態があり、第1〜第5の実施の形態が刺激として冷却刺激(温度刺激)を付与する形態であり、各形態で刺激温度の決定方法あるいは刺激付与方法が異なり、第6の実施の形態が圧力刺激を付与する形態である。
【0038】
図1及び図2を参照して、第1の実施の形態に係る飲酒状態判定装置1について説明する。図1は、第1の実施の形態に係る飲酒状態判定装置の構成図である。図2は、冷却刺激付与前と冷却刺激付与中の血流量の時間変化の一例であり、(a)が飲酒なしの場合であり、(b)が飲酒している場合である。
【0039】
飲酒状態判定装置1は、車室内温度に基づいて冷却刺激の刺激温度を決定し、その刺激温度による冷却刺激の付与前の血流量と付与中の血流量との比に基づいて飲酒状態か否かを判定する。そのために、飲酒状態判定装置1は、車室内温度計測部10、生理量計測部11、温度刺激付与部20、警報部21及びECU[Electronic Control Unit]31を備えており、ECU31に刺激実施部31a(刺激温度決定部31c、刺激制御部31d)と飲酒状態判断部31bが構成される。
【0040】
なお、第1の実施の形態では、車室内温度計測部10が特許請求の範囲に記載する周辺温度取得手段に相当し、生理量計測部11が特許請求の範囲に記載する生理量取得手段に相当し、温度刺激付与部20が特許請求の範囲に記載する刺激付与手段に相当し、刺激実施部31aが特許請求の範囲に記載する付与方法変更手段に相当し、飲酒状態判断部31bが特許請求の範囲に記載する飲酒状態判定手段に相当する。
【0041】
車室内温度計測部10は、車両の室内温度を計測する手段である。温度の計測手段としては、車室内温度を計測できればどのようなものを適用してもよく、例えば、カーエアコンなどで用いられる温度センサである。車室内温度計測部10では、車室内温度T0を計測し、その計測した車室内温度T0をECU31に出力する。ECU31では、車室内温度T0を入力すると、その車室内温度T0をバッファリングする。
【0042】
生理量計測部11は、ドライバの血流量を計測する手段である。血流量の計測手段としては、血流量を計測できればどのようなものを適用してもよく、例えば、ドップラ血流計、指尖脈波計がある。血流量を計測する部位としては、血流量を計測できればどこの部位でもよく、例えば、指先、上腕である。生理量計測部11では、ドライバの血流量を計測し、その計測している血流量をECU31に出力する。ECU31では、血流量を入力すると、その血流量を順次バッファリングする。
【0043】
温度刺激付与部20は、ドライバに対して温度刺激(特に、冷却刺激)を付与する手段である。温度刺激の付与手段としては、温度刺激をドライバに付与することができればどのようなものでもよく、例えば、温冷風器、ぺルチェ素子がある。温度刺激を付与する部位としては、温度刺激を付与することがきればどこの部位でもよく(但し、温度感受性が高い部位(温度受容器が多い部位)が好ましく、また、皮膚が露出している部位や着衣が薄い部位が好ましい)、例えば、指先、腕である。温度刺激付与部20では、ECU31から刺激温度と刺激付与時間が示された冷却刺激付与指令を入力すると、その刺激温度による冷却刺激を刺激付与時間の間付与する。
【0044】
警報部21は、飲酒状態と判定されたドライバに対して警報を出力する手段である。警報を出力する手段としては、ドライバに飲酒状態であることを知らせることができればどのようなものでもよく、例えば、警報音、エアコン風、インタロック(エンジンがかからなくする手段)がある。警報部21では、ECU31から警報出力指令を入力すると、警報を出力する。
【0045】
ECU31は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]などからなり、飲酒状態判定装置1を統括制御する。ECU31では、ROMに格納されるアプリケーションプログラムがRAMにロードされ、CPUで実行されることによって刺激実施部31a、飲酒状態判断部31bが構成される。
【0046】
刺激実施部31aは、車室内温度に基づいて冷却刺激の刺激温度を決定し、その決定した刺激温度の冷却刺激を付与するために温度刺激付与部20を制御する処理部である。そのために、刺激実施部31aは、刺激温度決定部31cと刺激制御部31dを有している。
【0047】
刺激温度決定部31cでは、車室内温度計測部10から入力した車室内温度T0(℃)が温度判定閾値TT(℃)以上か否かを判定する。温度判定閾値TT(℃)は、一般的な人の表面体温付近の温度が設定される。車室内温度T0(℃)が温度判定閾値TT(℃)以上の場合、刺激温度決定部31cでは、式(1)に示すように、刺激温度ST(℃)として車室内温度T0(℃)から温度差定数DT(℃)を減算した温度を設定する。人の温度感受性は体外の環境温度に影響を受けるので、ドライバの場合には車室内温度に影響を受け、車室内温度が人の表面体温付近の温度より高い場合には車室内温度を基準にして冷却刺激を与える。一方、車室内温度T0(℃)が温度判定閾値TT(℃)未満の場合、刺激温度決定部31cでは、式(2)に示すように、刺激温度ST(℃)として温度判定閾値TT(℃)から温度差定数DT(℃)を減算した温度を設定する。車室内温度が人の表面体温付近の温度より低い場合にはその表面体温付近の温度を基準にして冷却刺激を与える。温度差定数DT(℃)は、人の温度弁別閾値付近の温度が設定され、数℃程度の温度である。
【数1】

【0048】
刺激制御部31dでは、刺激温度決定部31cで決定した刺激温度ST(℃)と刺激付与時間Tを示した冷却刺激付与指令を温度刺激付与部20に出力する。刺激付与時間Tとしては、温度刺激に対する人の温度受容器を考慮して人が十分に冷却刺激を感受できる時間が設定され、数秒程度の時間が設定される。
【0049】
飲酒状態判断部31bは、ドライバが飲酒状態か否かを判定し、飲酒状態と判定した場合には警報部21を制御してドライバに飲酒状態であることを知らせる処理部である。飲酒状態判断部31bでは、バッファリングされている冷却刺激付与直前の所定区間の血流量を読み出し、その所定区間の血流量の平均値BAを算出する。また、飲酒状態判断部31bでは、バッファリングされている冷却刺激付与中の所定区間の血流量を読み出し、その所定区間の血流量の平均値BBを算出する。この所定区間としては、冷却刺激による血流量の変化を十分に判定できる時間であり、数秒程度である。
【0050】
そして、飲酒状態判断部31bでは、刺激付与前の血流量の平均値BAを刺激付与中の血流量の平均値BBで除算し、その除算値(=BA/BB)が血流量変動閾値TH以上か否かを判定する。血流量変動閾値THは、実験などによって予め設定され、1よりも大きい値である。
【0051】
体内へのアルコールの摂取によって、血管の拡張収縮特性が変わるので、血流量も変化の仕方も変わる。飲酒状態でない場合、冷却刺激を付与すると、血管が収縮し、血流量が減少する。したがって、図2(a)に示すように、冷却刺激付与中の区間Bの血流量は、冷却刺激付与前の区間Aの血流量に比べて、明らかに少なくなる。しかし、飲酒状態の場合、冷却刺激を付与しても、血管が変化し難く、血流量も殆ど変化しない(あるいは、全く変化しない)。したがって、図2(b)に示すように、冷却刺激付与中の区間Bの血流量は、冷却刺激付与前の区間Aの血流量に比べて、殆ど変化しない。
【0052】
除算値(=BA/BB)が血流量変動閾値TH以上の場合、飲酒状態判断部31bでは、ドライバは飲酒状態でないと判断する。一方、除算値(=BA/BB)が血流量変動閾値THより小さい場合、飲酒状態判断部31bでは、ドライバは飲酒状態と判断し、警報部21に警報出力指令を出力する。
【0053】
図1及び図2を参照して、飲酒状態判定装置1の動作について説明する。特に、ECU31における処理について図3のフローチャートに沿って説明する。図3は、図1のECUにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【0054】
車室内温度計測部10では、車室内温度T0を計測し、その車室内温度T0をECU31に出力している。ECU31では、車室内温度T0を入力する(S10)。そして、ECU31では、車室内温度T0が温度判定閾値TT以上か否かを判定する(S11)。さらに、ECU31では、車室内温度T0が温度判定閾値TT以上と判定した場合には車室内温度T0から温度差定数DTを減算した温度を刺激温度STとして決定し、車室内温度T0が温度判定閾値TT未満と判定した場合には温度判定閾値TTから温度差定数DTを減算した温度を刺激温度STとして決定する(S11)。
【0055】
生理量計測部11では、ドライバの血流量を計測し、その血流量をECU31に出力している。
【0056】
ECU31では、冷却刺激付与直前の所定区間の血流量を入力し、バッファリングする(S12)。ECU31では、決定した刺激温度STと刺激付与時間Tを示す冷却刺激付与指令を温度刺激付与部20に出力する(S13)。この冷却刺激付与指令を入力すると、温度刺激付与部20では、刺激付与時間Tの間、その冷却刺激付与指令に示される刺激温度STの冷却刺激をドライバに付与する。ECU31では、その冷却刺激付与中の所定区間の血流量を入力し、バッファリングする(S14)。
【0057】
そして、ECU31では、バッファリングされている冷却刺激付与直前の所定区間の血流量を読み出し、その所定区間の血流量の平均値BAを算出するとともに、バッファリングされている冷却刺激付与中の所定区間の血流量を読み出し、その所定区間の血流量の平均値BBを算出する。さらに、ECU31では、刺激付与前の血流量の平均値BAを刺激付与中の血流量の平均値BBで除算した除算値(=BA/BB)が血流量変動閾値TH以上か否かを判定する(S15)。S15で除算値BA/BBが血流量変動閾値THと判定した場合、ECU31では、飲酒状態でないと判定する。
【0058】
S15で除算値BA/BBが血流量変動閾値TH未満と判定した場合、ECU31では、飲酒状態と判定し、警報部21に警報出力指令を出力する(S16)。この警報出力指令を入力すると、警報部21では、ドライバに飲酒状態であることを知らせるための警報を出力する。
【0059】
この飲酒状態判定装置1によれば、血流量変化を誘発し易くする効果的な冷却刺激をドライバに付与し、その冷却刺激付与前と付与中の血流量の変化に基づいて飲酒状態を判定することにより、ドライバの飲酒状態を高精度に判定することができる。
【0060】
また、飲酒状態判定装置1では、冷却刺激付与前の血流量と付与中の血流量との比を閾値で判定することにより、簡単な手法で飲酒状態か否かを判定することができる。また、飲酒状態判定装置1では、温度判定閾値(人の表面体温に相当)と車室内温度に基づいて刺激温度を決定することにより、そのときのドライバの周辺環境で最適な刺激温度を設定でき、より高精度に飲酒状態を判定することができる。
【0061】
図4及び図5を参照して、第2の実施の形態に係る飲酒状態判定装置2について説明する。図4は、第2の実施の形態に係る飲酒状態判定装置の構成図である。図5は、温度刺激パターンの一例である。なお、飲酒状態判定装置2では、第1の実施の形態に係る飲酒状態判定装置1と同様の構成について同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0062】
飲酒状態判定装置2は、車室内温度に基づいて冷却刺激の刺激温度及び事前温度刺激の事前刺激温度を決定し、冷却刺激を行う前の事前刺激温度による事前温度刺激(温熱刺激)の付与中の血流量と刺激温度による冷却刺激の付与中の血流量との比に基づいて飲酒状態か否かを判定する。そのために、飲酒状態判定装置2は、車室内温度計測部10、生理量計測部11、温度刺激付与部20、警報部21及びECU32を備えており、ECU32に刺激実施部32a(刺激温度決定部32c、事前温度刺激条件決定部32d、温度刺激パターン生成部32e、刺激制御部32f)と飲酒状態判断部32bが構成される。
【0063】
なお、第2の実施の形態では、車室内温度計測部10が特許請求の範囲に記載する周辺温度取得手段に相当し、生理量計測部11が特許請求の範囲に記載する生理量取得手段に相当し、温度刺激付与部20が特許請求の範囲に記載する刺激付与手段に相当し、刺激実施部32aが特許請求の範囲に記載する付与方法変更手段に相当し、飲酒状態判断部32bが特許請求の範囲に記載する飲酒状態判定手段に相当する。
【0064】
温度刺激付与部20には、第1の実施の形態で説明した冷却刺激付与指令の代わりに温度刺激パターン付与指令が入力される。温度刺激付与部20では、ECU32から温度刺激パターンが示された温度刺激パターン付与指令を入力すると、その温度刺激パターンに示される事前刺激温度による温熱刺激を事前刺激付与時間の間付与し、その後に刺激温度による冷却刺激を刺激付与時間の間付与する。
【0065】
ECU32は、CPU、ROM、RAMなどからなり、飲酒状態判定装置2を統括制御する。ECU32では、ROMに格納されるアプリケーションプログラムがRAMにロードされ、CPUで実行されることによって刺激実施部32a、飲酒状態判断部32bが構成される。
【0066】
刺激実施部32aは、車室内温度に基づいて冷却刺激の刺激温度及び事前温度刺激の事前刺激温度を決定し、その決定した事前刺激温度と刺激温度を付与する温度刺激パターンを生成し、その温度刺激パターンに従って温度刺激を付与するために温度刺激付与部20を制御する処理部である。そのために、刺激実施部32aは、刺激温度決定部32c、事前温度刺激条件決定部32d、温度刺激パターン生成部32eと刺激制御部32fを有している。刺激温度決定部32cは、第1の実施の形態で説明した刺激温度決定部32cと同様の処理を行うので、その説明は省略する。
【0067】
事前温度刺激条件決定部32dでは、式(3)に示すように、事前刺激温度PST(℃)として刺激温度決定部32cで決定した刺激温度ST(℃)に事前温度差定数PDT(℃)を加算した温度を設定する。事前温度差定数PDT(℃)は、温度差定数DT(℃)よりも大きな温度が設定され、例えば、温度差定数DT(℃)の2倍程度の温度である。したがって、事前刺激温度PST(℃)は、車室内温度T0(℃)が温度判定閾値TT(℃)以上の場合には車室内温度T0(℃)より高い温度となり、車室内温度T0(℃)が温度判定閾値TT(℃)未満の場合には温度判定閾値TT(℃)より高い温度となる。
【数2】

【0068】
温度刺激パターン生成部32eでは、事前刺激温度PST(℃)による事前温度刺激(温熱刺激)を付与する事前刺激付与時間T1と刺激温度ST(℃)による冷却刺激を付与する刺激付与時間T2を設定する(予め設定しておいてもよい)。この事前刺激付与時間T1と刺激付与時間T2は、温度刺激に対する人の温度受容器を考慮して人が十分に温熱刺激や冷却刺激を感受できる時間が設定され、数秒程度の時間が設定される。そして、温度刺激パターン生成部32eでは、最初に事前刺激温度PST(℃)による事前温度刺激を事前刺激付与時間T1の間付与し、刺激温度ST(℃)による冷却刺激を刺激付与時間T2の間付与する温度刺激パターンを生成する(図5参照)。このように、冷却刺激を付与する前に温熱刺激を付与することにより、冷却刺激を与えたときの温度差が大きくなり、より効果的な冷却刺激となる。
【0069】
刺激制御部32fでは、温度刺激パターン生成部32eで生成した温度刺激パターンを示した温度刺激パターン付与指令を温度刺激付与部20に出力する。
【0070】
飲酒状態判断部32bは、ドライバが飲酒状態か否かを判定し、飲酒状態と判定した場合には警報部21を制御してドライバに飲酒状態であることを知らせる処理部である。飲酒状態判断部32bでは、バッファリングされている事前温度付与中の所定区間の血流量を読み出し、その所定区間の血流量の平均値BAを算出する。また、バッファリングされている冷却刺激付与中の所定区間の血流量を読み出し、その所定区間の血流量の平均値BBを算出する。飲酒状態判断部32bにおけるこれ以降の処理は、第1の実施の形態に係る飲酒状態判断部31bと同様の処理を行うので、その説明を省略する。
【0071】
図4及び図5を参照して、飲酒状態判定装置2の動作について説明する。特に、ECU32における処理については図6を参照して説明する。図6は、図4のECUにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【0072】
車室内温度計測部10では、車室内温度T0を計測し、その車室内温度T0をECU32に出力している。ECU32では、車室内温度T0を入力する(S20)。そして、ECU32では、車室内温度T0が温度判定閾値TT以上か否かを判定する(S21)。さらに、ECU32では、車室内温度T0が温度判定閾値TT以上と判定した場合には車室内温度T0から温度差定数DTを減算した温度を冷却刺激の刺激温度STとして決定し、車室内温度T0が温度判定閾値TT未満と判定した場合には温度判定閾値TTから温度差定数DTを減算した温度を冷却刺激の刺激温度STとして決定する(S21)。
【0073】
さらに、ECU32では、その決定した冷却刺激の刺激温度STに事前温度差定数PDTを加算した温度を事前刺激温度PSTとして決定する(S22)。そして、ECU32では、最初に事前刺激温度PSTによる事前温度刺激(温熱刺激)を事前刺激付与時間T1間付与するとともにその後に刺激温度STによる冷却刺激を刺激付与時間T2の間付与する温度刺激パターンを生成する(S23)。
【0074】
生理量計測部11では、ドライバの血流量を計測し、その血流量をECU31に出力している。
【0075】
ECU32では、生成した温度刺激パターンからなる温度刺激パターン付与指令を温度刺激付与部20に出力する(S24)。この温度刺激パターン付与指令を入力すると、温度刺激付与部20では、まず、その温度刺激パターンに示される事前刺激付与時間T1の間、事前刺激温度PSTの事前温度刺激(温熱刺激)をドライバに付与する。ECU32では、その事前温度刺激付与中の所定区間の血流量を入力し、バッファリングする(S25)。事前刺激付与時間T1経過すると、温度刺激付与部20では、その温度刺激パターンに示される刺激付与時間T2の間、その温度刺激パターンに示される刺激温度の冷却刺激をドライバに付与する。ECU32では、その冷却刺激付与中の所定区間の血流量を入力し、バッファリングする(S26)。
【0076】
そして、ECU32では、バッファリングされている事前温度刺激付与中の所定区間の血流量を読み出し、その所定区間の血流量の平均値BAを算出するとともに、バッファリングされている冷却刺激付与中の所定区間の血流量を読み出し、その所定区間の血流量の平均値BBを算出する。さらに、ECU32では、事前温度刺激付与中の血流量の平均値BAを冷却刺激付与中の血流量の平均値BBで除算した除算値(=BA/BB)が血流量変動閾値TH以上か否かを判定する(S27)。S27で除算値BA/BBが血流量変動閾値TH以上と判定した場合、ECU32では、飲酒状態でないと判定する。
【0077】
S27で除算値BA/BBが血流量変動閾値TH未満と判定した場合、ECU32では、飲酒状態と判定し、警報部21に警報出力指令を出力する(S28)。この警報出力指令を入力すると、警報部21では、ドライバに飲酒状態であることを知らせるための警報を出力する。
【0078】
この飲酒状態判定装置2は、第1の実施の形態に係る飲酒状態判定装置1と同様の効果を有する上に、以下の効果も有する。飲酒状態判定装置2によれば、冷却刺激付与前に温度の高い事前温度刺激を付与することにより、より効果的な冷却刺激によってより活発な血流量の変化を誘発でき、より高精度に飲酒状態を判定することができる。
【0079】
図7及び図8を参照して、第3の実施の形態に係る飲酒状態判定装置3について説明する。図7は、第3の実施の形態に係る飲酒状態判定装置の構成図である。図8は、皮膚特性値マップの一例である。なお、飲酒状態判定装置3では、第1の実施の形態に係る飲酒状態判定装置1と同様の構成について同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0080】
飲酒状態判定装置3は、車室内温度の他にドライバの皮膚特性(皮膚の硬さと水分量)に基づいて冷却刺激の刺激温度を決定し、その刺激温度による冷却刺激の付与前の血流量と付与中の血流量との比に基づいて飲酒状態か否かを判定する。そのために、飲酒状態判定装置3は、車室内温度計測部10、生理量計測部11、皮膚状態量計測部12、温度刺激付与部20、警報部21及びECU33を備えており、ECU33に刺激実施部33a(皮膚特性算出部33c、刺激温度決定部33d、刺激制御部33e)と飲酒状態判断部33bが構成される。
【0081】
なお、第3の実施の形態では、車室内温度計測部10が特許請求の範囲に記載する周辺温度取得手段に相当し、生理量計測部11が特許請求の範囲に記載する生理量取得手段に相当し、皮膚状態量計測部12が特許請求の範囲に記載する皮膚特性取得手段に相当し、温度刺激付与部20が特許請求の範囲に記載する刺激付与手段に相当し、刺激実施部33aが特許請求の範囲に記載する付与方法変更手段に相当し、飲酒状態判断部33bが特許請求の範囲に記載する飲酒状態判定手段に相当する。
【0082】
皮膚状態量計測部12は、ドライバの皮膚状態量を計測する手段である。ここでは、皮膚状態量としては、皮膚の硬さと水分量を計測する。この皮膚状態量を計測する手段としては、各皮膚状態量を計測できればどのようなものを適用してもよく、例えば、皮膚の硬さ計測手段としては圧刺激アクチュエータと歪ゲージを組み合わせた手段であり、水分量計測手段としては発汗計である。皮膚状態量を計測する部位としては、ドライバに冷却刺激を付与する部位が望ましい。皮膚状態量計測部12では、ドライバの皮膚状態量を計測し、その計測した皮膚状態量をECU33に出力する。ECU33では、皮膚状態量を入力すると、その皮膚状態量をバッファリングする。
【0083】
ECU33は、CPU、ROM、RAMなどからなり、飲酒状態判定装置3を統括制御する。ECU33では、ROMに格納されるアプリケーションプログラムがRAMにロードされ、CPUで実行されることによって刺激実施部33a、飲酒状態判断部33bが構成される。飲酒状態判断部33bは、第1の実施の形態に係る飲酒状態判断部31bと同様の処理を行うので、その説明を省略する。
【0084】
刺激実施部33aは、車室内温度及び皮膚状態量に基づいて冷却刺激の刺激温度を決定し、その決定した刺激温度の冷却刺激を付与するために温度刺激付与部20を制御する処理部である。そのために、刺激実施部33aは、皮膚特性値算出部33c、刺激温度決定部33dと刺激制御部33eを有している。刺激制御部33eは、第1の実施の形態に係る刺激制御部31dと同様の処理を行うので、その説明を省略する。
【0085】
皮膚特性値算出部33cでは、皮膚状態量計測部12から入力した皮膚の硬さと水分量から皮膚特性値ES(℃)を算出する。皮膚特性値ES(℃)は、刺激温度ST(℃)を求める際の皮膚特性に応じた温度特性値であり、0〜数℃程度までの値である。皮膚特性値ES(℃)は、図8に示すように、皮膚の硬さが硬いほど大きき値であり、また、皮膚の水分量が多いほど大きい値であり、刺激温度ST(℃)を低くする方向に作用する特性を持つ。これは、血流量を変化させる要因となる血管収縮に必要な冷却刺激を体外から付与しても、皮膚が硬かったり、皮膚の水分量が多かったりすると、その冷却刺激が体内に伝わり難くなるからである。そこで、このような場合には、皮膚特性値ES(℃)によって刺激温度ST(℃)をより低い温度にする。皮膚特性値ES(℃)の算出方法としては、どのような方法を適用してもよく、例えば、皮膚特性数理モデルへの当てはめる方法、図8に示すような予め設定された皮膚特性マップM(データベース)を利用する方法がある。
【0086】
刺激温度決定部33dでは、車室内温度計測部10から入力した車室内温度T0(℃)が温度判定閾値TT(℃)以上か否かを判定する。車室内温度T0(℃)が温度判定閾値TT(℃)以上の場合、刺激温度決定部33dでは、式(4)に示すように、刺激温度ST(℃)として車室内温度T0(℃)から温度差定数DT(℃)と皮膚特性値ES(℃)を減算した温度を設定する。一方、車室内温度T0(℃)が温度判定閾値TT(℃)未満の場合、刺激温度決定部33dでは、式(5)に示すように、刺激温度ST(℃)として温度判定閾値TT(℃)から温度差定数DT(℃)と皮膚特性値ES(℃)を減算した温度を設定する。
【数3】

【0087】
図7及び図8を参照して、飲酒状態判定装置3の動作について説明する。特に、ECU33における処理については図9を参照して説明する。図9は、図7のECUにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【0088】
皮膚状態量計測部12では、ドライバの皮膚状態量(硬さ、水分量)を計測し、その皮膚状態量をECU33に送信している。ECU33では、そのドライバの皮膚状態量を入力する(S30)。そして、ECU33では、その皮膚状態量に基づいて皮膚特性値ESを算出する(S31)。
【0089】
車室内温度計測部10では、車室内温度T0を計測し、その車室内温度T0をECU33に出力している。ECU33では、車室内温度T0を入力する(S32)。そして、ECU33では、車室内温度T0が温度判定閾値TT以上か否かを判定する(S33)。さらに、ECU33では、車室内温度T0が温度判定閾値TT以上と判定した場合には車室内温度T0から温度差定数DTと皮膚特性値ESを減算した温度を刺激温度STとして決定し、車室内温度T0が温度判定閾値TT未満と判定した場合には温度判定閾値TTから温度差定数DTと皮膚特性値ESを減算した温度を刺激温度STとして決定する(S33)。
【0090】
この刺激温度STを決定以降の動作については、飲酒状態判定装置3では第1の実施の形態に係る飲酒状態判定装置と同様の動作を行うので(特に、ECU33(S34〜S38の各処理)では第1の実施の形態に係るECU31(S12〜S16の各処理)と同様の処理を行うので)、その説明を省略する。
【0091】
この飲酒状態判定装置3は、第1の実施の形態に係る飲酒状態判定装置1と同様の効果を有する上に、以下の効果も有する。飲酒状態判定装置3によれば、ドライバの皮膚特性も考慮して刺激温度を決定することにより、ドライバの皮膚特性の影響を極力抑えて、高精度に飲酒状態を判定することができる。
【0092】
図10及び図11を参照して、第4の実施の形態に係る飲酒状態判定装置4について説明する。図10は、第4の実施の形態に係る飲酒状態判定装置の構成図である。図11は、刺激付与部位と刺激付与部位変化係数の対応表の一例である。なお、飲酒状態判定装置4では、第1の実施の形態に係る飲酒状態判定装置1と同様の構成について同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0093】
飲酒状態判定装置4は、車室内温度の他に刺激付与部位に基づいて冷却刺激の刺激温度を決定し、その刺激温度による冷却刺激の付与前の血流量と付与中の血流量との比に基づいて飲酒状態か否かを判定する。そのために、飲酒状態判定装置4は、車室内温度計測部10、生理量計測部11、温度刺激付与部20、警報部21及びECU34を備えており、ECU34に刺激実施部34a(刺激付与部位決定部34c、刺激温度決定部34d、刺激制御部34e)と飲酒状態判断部34bが構成される。
【0094】
なお、第4の実施の形態では、車室内温度計測部10が特許請求の範囲に記載する周辺温度取得手段に相当し、生理量計測部11が特許請求の範囲に記載する生理量取得手段に相当し、刺激付与部位決定部34cが特許請求の範囲に記載する刺激付与部位取得手段に相当し、温度刺激付与部20が特許請求の範囲に記載する刺激付与手段に相当し、刺激実施部34aが特許請求の範囲に記載する付与方法変更手段に相当し、飲酒状態判断部34bが特許請求の範囲に記載する飲酒状態判定手段に相当する。
【0095】
ECU34は、CPU、ROM、RAMなどからなり、飲酒状態判定装置3を統括制御する。ECU34では、ROMに格納されるアプリケーションプログラムがRAMにロードされ、CPUで実行されることによって刺激実施部34a、飲酒状態判断部34bが構成される。飲酒状態判断部34bは、第1の実施の形態に係る飲酒状態判断部31bと同様の処理を行うので、その説明を省略する。
【0096】
刺激実施部34aは、車室内温度及び刺激付与部位に基づいて冷却刺激の刺激温度を決定し、その決定した刺激温度の冷却刺激を付与するために温度刺激付与部20を制御する処理部である。そのために、刺激実施部34aは、刺激付与部位決定部34c、刺激温度決定部34dと刺激制御部34eを有している。刺激制御部34eは、第1の実施の形態に係る刺激制御部31dと同様の処理を行うので、その説明を省略する。
【0097】
刺激付与部位決定部34cでは、温度刺激付与部20でドライバに対して温度刺激を付与可能な体の部位の中から冷却刺激を付与する部位を決定する。ここでは、ドライバの状態に応じて冷却刺激を感受し易い部位(ひいては、血流量が変化し易い部位)を決定するようにし、例えば、皮膚が露出している部位や着衣が薄い部位を選択するようにする。例えば、ドライバが手袋をしている場合には前腕などを選択し、ドライバが長袖を着ている場合には指先などを選択する。
【0098】
ちなみに、体の部位によって温度受容器(体内の温度センサに相当)の数が異なり、温度受容器の数が多いほど温度感受性が高い。したがって、人は、体の部位によって温度弁別閾値が異なる。例えば、手のひらや前腕は、背中や足に比べて温度受容器の数が多く、温度感受性が高い。
【0099】
刺激温度決定部34dでは、刺激付与部位決定部34cで決定した刺激付与部位を引数として、刺激付与部位と刺激付与部位変化係数との対応表に基づいて刺激付与部位変化係数DPを決定する。刺激付与部位変化係数DPは、1以上の値であり、その値が大きくなるほど刺激温度STを低下させる機能を持つ係数である。このように、刺激温度STを低下させる理由としては、人の温度弁別閾値が体の部位によって異なるからである。図11には、刺激付与部位と刺激付与部位変化係数との対応表の一例を示しており、腕の温度弁別閾値を基準(刺激付与部位変化係数DP=1)として、体の他の部位の温度弁別閾値を変化させる表である。したがって、腕より温度受容器の数が少ない(温度感受性が低い)背中や足の場合、刺激付与部位変化係数DPが大きくなり、刺激温度STをより低下させる。
【0100】
そして、刺激温度決定部34dでは、車室内温度計測部10から入力した車室内温度T0(℃)が温度判定閾値TT(℃)以上か否かを判定する。車室内温度T0(℃)が温度判定閾値TT(℃)以上の場合、刺激温度決定部34dでは、式(6)に示すように、刺激温度ST(℃)として車室内温度T0(℃)から(温度差定数DT(℃)×刺激付与部位変化係数DP)を減算した温度を設定する。一方、車室内温度T0(℃)が温度判定閾値TT(℃)未満の場合、刺激温度決定部34dでは、式(7)に示すように、刺激温度ST(℃)として温度判定閾値TT(℃)から(温度差定数DT(℃)×刺激付与部位変化係数DP)を減算した温度を設定する。なお、温度差定数DT(℃)は、数℃程度の温度であるが、第1の実施の形態の温度差定数DTよりも小さい値とする。
【数4】

【0101】
図10及び図11を参照して、飲酒状態判定装置4の動作について説明する。特に、ECU34における処理については図12を参照して説明する。図12は、図10のECUにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【0102】
車室内温度計測部10では、車室内温度T0を計測し、その車室内温度T0をECU34に出力している。ECU34では、車室内温度T0を入力する(S40)。
【0103】
また、ECU34では、ドライバの状態などに基づいて刺激付与部位を決定する(S41)。
【0104】
ECU34では、刺激付与部位に応じて刺激付与部位変化係数DPを決定する(S42)そして、ECU34では、車室内温度T0が温度判定閾値TT以上か否かを判定する(S42)。さらに、ECU34では、車室内温度T0が温度判定閾値TT以上と判定した場合には車室内温度T0から(温度差定数DT×刺激付与部位変化係数DP)を減算した温度を刺激温度STとして決定し、車室内温度T0が温度判定閾値TT未満と判定した場合には温度判定閾値TTから(温度差定数DT×刺激付与部位変化係数DP)を減算した温度を刺激温度STとして決定する(S42)。
【0105】
この刺激温度STを決定以降の動作については、飲酒状態判定装置4では第1の実施の形態に係る飲酒状態判定装置と同様の動作を行うので(特に、ECU34(S43〜S47の各処理)では第1の実施の形態に係るECU31(S12〜S16の各処理)と同様の処理を行うので)、その説明を省略する。
【0106】
この飲酒状態判定装置4は、第1の実施の形態に係る飲酒状態判定装置1と同様の効果を有する上に、以下の効果も有する。飲酒状態判定装置4によれば、刺激付与部位を考慮して刺激温度を決定することにより、ドライバに刺激を付与する部位の影響を極力抑えて、高精度に飲酒状態を判定することができる。
【0107】
図13及び図14を参照して、第5の実施の形態に係る飲酒状態判定装置5について説明する。図13は、第5の実施の形態に係る飲酒状態判定装置の構成図である。図14は、年齢と刺激年齢変化係数の対応表の一例である。なお、飲酒状態判定装置5では、第1の実施の形態に係る飲酒状態判定装置1と同様の構成について同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0108】
飲酒状態判定装置5は、車室内温度の他にドライバの年齢に基づいて冷却刺激の刺激温度を決定し、その刺激温度による冷却刺激の付与前の血流量と付与中の血流量との比に基づいて飲酒状態か否かを判定する。そのために、飲酒状態判定装置5は、車室内温度計測部10、生理量計測部11、年齢入力部13、温度刺激付与部20、警報部21及びECU35を備えており、ECU35に刺激実施部35a(刺激温度決定部35c、刺激制御部35d)と飲酒状態判断部35bが構成される。
【0109】
なお、第5の実施の形態では、車室内温度計測部10が特許請求の範囲に記載する周辺温度取得手段に相当し、生理量計測部11が特許請求の範囲に記載する生理量取得手段に相当し、年齢入力部13が特許請求の範囲に記載する年齢情報取得手段に相当し、温度刺激付与部20が特許請求の範囲に記載する刺激付与手段に相当し、刺激実施部34aが特許請求の範囲に記載する付与方法変更手段に相当し、飲酒状態判断部34bが特許請求の範囲に記載する飲酒状態判定手段に相当する。
【0110】
年齢入力部13は、ドライバの年齢を入力する手段である。年齢の入力手段としては、年齢を入力できればどのようなものを適用してもよく、例えば、テンキーでの押しボタンの入力手段、音声認識による入力手段がある。ドライバが年齢入力部13で年齢を入力すると、年齢入力部13では、その入力された年齢をECU35に出力する。ECU35では、年齢を入力すると、その年齢をバッファリングする。
【0111】
ECU35は、CPU、ROM、RAMなどからなり、飲酒状態判定装置5を統括制御する。ECU35では、ROMに格納されるアプリケーションプログラムがRAMにロードされ、CPUで実行されることによって刺激実施部35a、飲酒状態判断部35bが構成される。飲酒状態判断部35bは、第1の実施の形態に係る飲酒状態判断部31bと同様の処理を行うので、その説明を省略する。
【0112】
刺激実施部35aは、車室内温度及びドライバの年齢に基づいて冷却刺激の刺激温度を決定し、その決定した刺激温度の冷却刺激を付与するために温度刺激付与部20を制御する処理部である。そのために、刺激実施部35aは、刺激温度決定部35cと刺激制御部35dを有している。刺激制御部35dは、第1の実施の形態に係る刺激制御部31dと同様の処理を行うので、その説明を省略する。
【0113】
刺激温度決定部35cは、年齢入力部13によって入力されたドライバの年齢を引数として、年齢と刺激年齢変化係数との対応表に基づいて刺激年齢変化係数DAを決定する。刺激年齢変化係数DAは、60歳以上において年齢が増すほど段階的に刺激温度STを低下させる機能を持つ係数である。このように、刺激温度STを低下させる理由としては、加齢により温度弁別閾値が大きくなる(温度差を感じ難くなる)からである。図14には、年齢と刺激年齢変化係数との対応表の一例を示しており、60歳未満の温度弁別閾値を基準(刺激年齢変化係数DA=1)として、60歳以上において10歳毎に他の温度弁別閾値を変化させる表である。
【0114】
そして、刺激温度決定部35cでは、車室内温度計測部10から入力した車室内温度T0(℃)が温度判定閾値TT(℃)以上か否かを判定する。車室内温度T0(℃)が温度判定閾値TT(℃)以上の場合、刺激温度決定部35cでは、式(8)に示すように、刺激温度ST(℃)として車室内温度T0(℃)から(温度差定数DT(℃)×刺激年齢変化係数DA)を減算した温度を設定する。一方、車室内温度T0(℃)が温度判定閾値TT(℃)未満の場合、刺激温度決定部35cでは、式(9)に示すように、刺激温度ST(℃)として温度判定閾値TT(℃)から(温度差定数DT(℃)×刺激年齢変化係数DA)を減算した温度を設定する。なお、温度差定数DT(℃)は、数℃程度の温度であるが、第1の実施の形態の温度差定数DTよりも小さい値とする。
【数5】

【0115】
図13及び図14を参照して、飲酒状態判定装置5の動作について説明する。特に、ECU35における処理については図15を参照して説明する。図15は、図13のECUにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【0116】
ドライバが、年齢入力部13によって年齢を入力する。年齢入力部13では、その年齢をECU35に出力する。ECU35では、ドライバの年齢を入力する(S50)。
【0117】
車室内温度計測部10では、車室内温度T0を計測し、その車室内温度T0をECU35に出力している。ECU35では、車室内温度T0を入力する(S51)。
【0118】
ECU35では、ドライバの年齢に応じて刺激年齢変化係数DAを設定する(S52)。そして、ECU35では、車室内温度T0が温度判定閾値TT以上か否かを判定する(S52)。さらに、ECU35では、車室内温度T0が温度判定閾値TT以上と判定した場合には車室内温度T0から(温度差定数DT×刺激年齢変化係数DA)を減算した温度を刺激温度STとして決定し、車室内温度T0が温度判定閾値TT未満と判定した場合には温度判定閾値TTから(温度差定数DT×刺激年齢変化係数DA)を減算した温度を刺激温度STとして決定する(S52)。
【0119】
この刺激温度STを決定以降の動作については、飲酒状態判定装置5では第1の実施の形態に係る飲酒状態判定装置と同様の動作を行うので(特に、ECU35(S53〜S57の各処理)では第1の実施の形態に係るECU31(S12〜S16の各処理)と同様の処理を行うので)、その説明を省略する。
【0120】
この飲酒状態判定装置5は、第1の実施の形態に係る飲酒状態判定装置1と同様の効果を有する上に、以下の効果も有する。飲酒状態判定装置5によれば、ドライバの年齢も考慮して刺激温度を決定することにより、ドライバの年齢の影響を極力抑えて、高精度に飲酒状態を判定することができる。
【0121】
図16〜図18を参照して、第6の実施の形態に係る飲酒状態判定装置6について説明する。図16は、第6の実施の形態に係る飲酒状態判定装置の構成図である。図17は、圧力刺激強度マップの一例である。図18は、圧力刺激パターンの一例である。なお、飲酒状態判定装置6では、第1の実施の形態に係る飲酒状態判定装置1と同様の構成について同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0122】
飲酒状態判定装置6は、ドライバの情報(体重と着衣の厚さ)に基づいて圧力刺激の刺激強度を決定し、その刺激強度による圧力刺激の付与前の血流量と付与中の血流量との比に基づいて飲酒状態か否かを判定する。そのために、飲酒状態判定装置6は、生理量計測部11、ドライバ情報取得部14、警報部21、圧力刺激付与部22及びECU36を備えており、ECU36に刺激実施部36a(圧力刺激強度決定部36c、圧力刺激パターン決定部36d、刺激制御部36e)と飲酒状態判断部36bが構成される。
【0123】
なお、第6の実施の形態では、ドライバ情報取得部14が特許請求の範囲に記載する被験者情報取得手段に相当し、生理量計測部11が特許請求の範囲に記載する生理量取得手段に相当し、圧力刺激付与部22が特許請求の範囲に記載する刺激付与手段に相当し、刺激実施部36aが特許請求の範囲に記載する付与方法変更手段に相当し、飲酒状態判断部36bが特許請求の範囲に記載する飲酒状態判定手段に相当する。
【0124】
ドライバ情報取得部14は、ドライバの情報を取得する手段である。ここでは、ドライバの情報としては、ドライバの体重と着衣の厚さ(あるいは、着衣の種類)を取得する。このドライバの情報を取得する手段としては、各情報を計測できればどのようなものを適用してもよく、例えば、体重の取得手段としては座席の圧力から推定する手段、シートベルトの引き出し長さから推定する手段、ドライバを撮像した画像から推定する手段、ドライバが体重を入力する手段であり、着衣の厚さの取得手段としてはドライバを撮像した画像から推定する手段、ドライバが着衣を入力する手段である。ドライバ情報取得部14では、ドライバの情報を取得し、その取得したドライバの情報をECU36に出力する。ECU36では、ドライバの情報を入力すると、そのドライバの情報をバッファリングする。
【0125】
圧力刺激付与部22は、ドライバに対して圧力刺激を付与する手段である。圧力刺激の付与手段としては、座席に着座したドライバの胴体に圧力刺激を付与できればどのような手段を適用してもよく、例えば、シートベルトの引き込み機能を利用する手段、座席のリクライニング機能やランバサポート機能を利用する手段、エンジンの振動を利用する手段、専用の刺激付与機器を利用する手段がある。ここでは、刺激機器としてシートベルトを適用し、刺激強度としてシートベルトの締め圧力(シートベルトの引き込み量に応じて締め圧力が変化する)とする。圧力刺激付与部22では、ECU36から圧力刺激パターンからなる圧力刺激パターン付与指令を入力すると、その圧力刺激パターンに示される刺激強度(締め圧力)を発生させるために必要な引き込み量分のシートベルトを引き込み、シートベルトの引き込みによる圧力刺激を刺激付与時間の間付与する。
【0126】
ECU36は、CPU、ROM、RAMなどからなり、飲酒状態判定装置6を統括制御する。ECU36では、ROMに格納されるアプリケーションプログラムがRAMにロードされ、CPUで実行されることによって刺激実施部36a、飲酒状態判断部36bが構成される。
【0127】
刺激実施部36aは、ドライバの情報に基づいて圧力刺激の刺激強度を決定し、その決定した刺激強度を付与する圧力刺激パターンを生成し、その圧力刺激パターンに従って圧力刺激を付与するために圧力刺激付与部22を制御する処理部である。そのために、刺激実施部36aは、圧力刺激強度決定部36c、圧力刺激パターン決定部36dと刺激制御部36eを有している。
【0128】
圧力刺激強度決定部36cでは、ドライバ情報取得部14から入力したドライバの体重と着衣の厚さから刺激強度P(Pa)を算出する。刺激強度P(Pa)は、0〜コンマ数気圧程度までの圧力値である。刺激強度P(Pa)は、図17に示すように、ドライバの体重が重いほど大きき値であり、また、ドライバの着衣の厚さが厚い多いほど大きい値である。これは、血流量を変化させる要因となる血管収縮に必要な圧力刺激を体外から付与しても、体重が重かったり、着衣が厚かったりすると、その圧力刺激(シートベルトによる締め圧力)が体脂肪や衣類によって吸収され、体内に伝わり難くなるからである。そこで、このような場合には、刺激強度P(Pa)をより大きくする。刺激強度P(Pa)の算出方法としては、どのような方法を適用してもよく、例えば、圧力刺激特性数理モデルへの当てはめる方法、図17に示すような予め設定された圧力刺激特性マップM(データベース)を利用する方法がある。
【0129】
圧力刺激パターン決定部36dでは、圧力刺激強度決定部36cで決定した刺激圧力P(Pa)による圧力刺激を連続して付与する刺激付与時間Tを設定する(予め設定しておいてもよい)。この刺激付与時間Tとしては、圧力刺激に対する人の自律神経特性(圧力受容器反射)を考慮して人が十分に圧力刺激に対して圧受容器反射が起こる時間が設定され、数秒程度の時間が設定される。そして、圧力刺激パターン決定部36dでは、刺激強度P(Pa)による圧力刺激を刺激付与時間Tの間付与する圧力刺激パターンを生成する(図18参照)。
【0130】
刺激制御部36eでは、圧力刺激パターン決定部36dで決定した圧力刺激パターンを示した圧力刺激パターン付与指令を圧力刺激付与部22に出力する。
【0131】
飲酒状態判断部36bでは、ドライバが飲酒状態か否かを判定し、飲酒状態と判定した場合には警報部21を制御してドライバに飲酒状態であることを知らせる処理部である。飲酒状態判断部36bでは、バッファリングされている圧力刺激付与直前の所定区間の血流量を読み出し、その所定区間の血流量の平均値BAを算出する。また、飲酒状態判断部36bでは、バッファリングされている圧力刺激付与中の所定区間の血流量を読み出し、その所定区間の血流量の平均値BBを算出する。飲酒状態判断部36bにおけるこれ以降の処理は、第1の実施の形態に係る飲酒状態判断部31bと同様の処理なので、その説明を省略する。
【0132】
図16〜図18を参照して、飲酒状態判定装置6の動作について説明する。特に、ECU36における処理については図19を参照して説明する。図19は、図16のECUにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【0133】
ドライバ情報取得部14では、ドライバの情報(体重、着衣の厚さ)を取得し、そのドライバの情報をECU36に送信している。ECU36では、そのドライバの情報を入力する(S60)。そして、ECU36では、そのドライバの情報に基づいて圧力刺激の刺激強度Pを決定する(S61)。さらに、ECU36では、その刺激強度Pによる圧力刺激を刺激付与時間Tの間付与する圧力刺激パターンを生成する(S62)。
【0134】
生理量計測部11では、ドライバの血流量を計測し、その血流量をECU36に出力している。
【0135】
ECU36では、圧力刺激付与直前の所定区間の血流量を入力し、バッファリングする(S63)。そして、ECU36では、決定した圧力刺激パターンを示す圧力刺激パターン付与指令を圧力刺激付与部22に出力する(S64)。この圧力刺激パターン付与指令を入力すると、圧力刺激付与部22では、その圧力刺激パターンに示される刺激付与時間Tの間、刺激強度Pの圧力刺激(シートベルトの引き込みによる締め圧力)をドライバに付与する。ECU36では、その圧力刺激付与中の所定区間の血流量を入力し、バッファリングする(S65)。
【0136】
そして、ECU36では、バッファリングされている圧力刺激付与直前の所定区間の血流量を読み出し、その所定区間の血流量の平均値BAを算出するとともに、バッファリングされている圧力刺激付与中の所定区間の血流量を読み出し、その所定区間の血流量の平均値BBを算出する。さらに、ECU36では、刺激付与前の血流量の平均値BAを刺激付与中の血流量の平均値BBで除算した除算値(=BA/BB)が血流量変動閾値TH以上か否かを判定する(S66)。S66で除算値BA/BBが血流量変動閾値TH以上と判定した場合、ECU36では、飲酒状態でないと判定する。
【0137】
S66で除算値BA/BBが血流量変動閾値TH未満と判定した場合、ECU36では、飲酒状態と判定し、警報部21に警報出力指令を出力する(S67)。この警報出力指令を入力すると、警報部21では、ドライバに飲酒状態であることを知らせるための警報を出力する。
【0138】
この飲酒状態判定装置6によれば、血流量変化を誘発し易くする効果的な圧力刺激をドライバに付与し、その圧力刺激付与前と付与中の血流量の変化に基づいて飲酒状態を判定することにより、ドライバの飲酒状態を高精度に判定することができる。さらに、飲酒状態判定装置6では、ドライバの体重と着衣の厚さに基づいて刺激強度を決定することにより、ドライバに応じた最適な刺激強度を設定でき、ドライバ個々の影響を極力抑えて、より高精度に飲酒状態を判定することができる。
【0139】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【0140】
例えば、本実施の形態では車両に搭載され、ドライバの飲酒状態を判定する飲酒状態判定装置に適用したが、他の乗り物のドライバなどの様々な人の飲酒状態を判定するために利用してよい。
【0141】
また、本実施の形態では生理量として血流量を適用したが、発汗量などの他の生理量でもよい。
【0142】
また、本実施の形態では付与刺激として温度刺激と圧力刺激を適用したが、他の刺激でもよい。
【0143】
また、本実施の形態では刺激付与前(温熱刺激付与中)の血流量を刺激付与中の血流量で除算した値を閾値で比較することによって飲酒状態か否かを判定する構成としたが、飲酒状態の判定方法としては他の判定方法でもよく、例えば、刺激付与前の血流量と刺激付与中の血流量との差を用いて判定してもよいし、刺激付与中の血流量の代わりに刺激付与直後の血流量を用いて判定してもよいし、複数の閾値でそれぞれ判定し、飲酒状態を複数段階で判定してもよい。
【0144】
また、第1の実施の形態では温度判定閾値と車室内温度を用いた刺激温度の決定方法の一例を示したが、他の決定方法でもよい。例えば、ドライバの体温を検出し、体温に基づいて刺激温度を決定する方法、実験などによって予め好適な冷却温度を求めて記憶しておき、その記憶された冷却温度を設定する方法がある。
【0145】
また、第2の実施の形態では1つの温熱温度による温熱刺激と1つの冷却温度による冷却刺激との1サイクルで温度刺激を付与する構成としたが、刺激温度や温度刺激サイクルを複数用意し、様々な刺激温度や様々な刺激温度付与時間からなる様々な温度刺激サイクルを組み合わせて温度刺激を付与してもよい。このように様々なパターンの温度刺激を付与するようにすることにより、特定の個人だけでなく、万人に有効な温度刺激を付与することができる。
【0146】
また、第3の実施の形態では皮膚特性として皮膚の硬さと水分量を適用したが、このいずれか一方あるいは他の皮膚特性でもよい。
【0147】
また、第4の実施の形態では刺激付与部位として手のひら、前腕、背中、足を例に挙げたが、他の部位でもよい。
【0148】
また、第4の実施の形態では刺激付与部位をECUで決定する構成としたが、ドライバなどが入力する構成としてもよい。
【0149】
また、第5の実施の形態では60歳以上の各年齢において年齢が増すほど段階的に刺激温度を低くする刺激温度の決定方法の一例を示したが、年齢に応じた刺激温度の決定方法について他の方法でもよい。
【0150】
また、第5の実施の形態ではドライバの年齢を入力する構成としたが、ドライバの顔の撮像画像などに基づいてECU側でドライバの年齢を推定する構成としてもよい。
【0151】
また、第3〜第5の実施の形態では冷却刺激だけを付与する構成としたが、第2の実施の形態のように冷却刺激の前に温熱刺激を付与するようにしてもよい。また、第3〜第5の実施の形態では車室内温度の他に皮膚特性、刺激付与部位、年齢をそれぞれ考慮して刺激温度を決定する構成としたが、車室内温度の他に皮膚特性、刺激付与部位、年齢のうちの2つ以上のパラメータを考慮して刺激温度を決定するようにしてもよいし、あるいは、他のパラメータを考慮して刺激温度を決定するようにしてもよい。
【0152】
また、第6の実施の形態ではドライバの情報を用いた刺激強度の決定方法の一例を示したが、他の決定方法でもよく、例えば、実験などによって予め好適な刺激強度を求めて記憶しておき、その記憶された刺激強度を設定する方法がある。また、ドライバの情報に基づいて刺激付与時間などの刺激パターンを設定してもよい。
【0153】
また、第6の実施の形態ではドライバの情報として体重と着衣の厚さに基づいて刺激強度を決定する構成としたが、このいずれか一方あるいは体型や着衣に関する他の情報に基づいて刺激強度を決定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】第1の実施の形態に係る飲酒状態判定装置の構成図である。
【図2】冷却刺激付与前と冷却刺激付与中の血流量の時間変化の一例であり、(a)が飲酒なしの場合であり、(b)が飲酒している場合である。
【図3】図1のECUにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】第2の実施の形態に係る飲酒状態判定装置の構成図である。
【図5】温度刺激パターンの一例である。
【図6】図4のECUにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】第3の実施の形態に係る飲酒状態判定装置の構成図である。
【図8】皮膚特性値マップの一例である。
【図9】図7のECUにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】第4の実施の形態に係る飲酒状態判定装置の構成図である。
【図11】刺激付与部位と刺激付与部位変化係数の対応表の一例である。
【図12】図10のECUにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】第5の実施の形態に係る飲酒状態判定装置の構成図である。
【図14】年齢と刺激年齢変化係数の対応表の一例である。
【図15】図13のECUにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【図16】第6の実施の形態に係る飲酒状態判定装置の構成図である。
【図17】圧力刺激強度マップの一例である。
【図18】圧力刺激パターンの一例である。
【図19】図16のECUにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0155】
1,2,3,4,5,6…飲酒状態判定装置、10…車室内温度計測部、11…生理量計測部、12…皮膚状態量計測部、13…年齢入力部、14…ドライバ情報取得部、20…温度刺激付与部、21…警報部、22…圧力刺激付与部、31,32,33,34,35,36…ECU、31a,32a,33a,34a,35a,36a…刺激実施部、31b,32b,33b,34b,35b,36b…飲酒状態判断部、31c,32c,33d,34d,35c…刺激温度決定部、31d,32f,33e,34e,35d,36e…刺激制御部、32d…事前温度刺激条件決定部、32e…温度刺激パターン生成部、33c…皮膚特性値算出部、34c…刺激付与部位決定部、36c…圧力刺激強度決定部、36d…圧力刺激パターン決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の生理量を取得する生理量取得手段と、
前記生理量取得手段で取得した被験者の生理量に基づいて被験者の飲酒状態を判定する飲酒状態判定手段と、
被験者に刺激を付与する刺激付与手段と
を備え、
前記飲酒状態判定手段は、前記刺激付与手段で付与した刺激による被験者の生理量の変化に基づいて被験者の飲酒状態を判定することを特徴とする飲酒状態判定装置。
【請求項2】
前記飲酒状態判定手段は、刺激付与前の被験者の生理量と刺激付与中又は刺激付与後の被験者の生理量との差が閾値以下の場合に被験者が飲酒している状態と判定することを特徴とする請求項1に記載する飲酒状態判定装置。
【請求項3】
前記刺激付与手段は、温度による刺激を付与することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載する飲酒状態判定装置。
【請求項4】
被験者の周辺の温度を取得する周辺温度取得手段と、
前記刺激付与手段による刺激の付与方法を変更する付与方法変更手段と
を備え、
前記付与方法変更手段は、前記周辺温度取得手段で取得した周辺温度に基づいて刺激温度を決定することを特徴とする請求項3に記載する飲酒状態判定装置。
【請求項5】
前記付与方法変更手段は、温熱刺激を付与した後に冷却刺激を付与することを特徴とする請求項4に記載する飲酒状態判定装置。
【請求項6】
被験者の皮膚特性を取得する皮膚特性取得手段を備え、
前記付与方法変更手段は、前記皮膚特性取得手段で取得した皮膚特性に基づいて刺激温度を変更することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載する飲酒状態判定装置。
【請求項7】
前記皮膚特性取得手段は、皮膚の硬さ又は/及び水分量を取得し、
前記付与方法変更手段は、皮膚の硬さが硬いほど又は/及び皮膚の水分量が多いほど冷却刺激の刺激温度を低くすることを特徴とする請求項6に記載する飲酒状態判定装置。
【請求項8】
刺激付与部位を取得する刺激付与部位取得手段を備え、
前記付与方法変更手段は、前記刺激付与部位取得手段で取得した刺激付与部位に基づいて刺激温度を変更することを特徴とする請求項4〜請求項7のいずれか1項に記載する飲酒状態判定装置。
【請求項9】
前記付与方法変更手段は、温度受容器の数が多い刺激付与部位より温度受容器の数が少ない刺激付与部位に対しては冷却刺激の刺激温度を低くすることを特徴とする請求項8に記載する飲酒状態判定装置。
【請求項10】
被験者の年齢情報を取得する年齢情報取得手段を備え、
前記付与方法変更手段は、前記年齢情報取得手段で取得した年齢情報に基づいて刺激温度を変更することを特徴とする請求項4〜請求項9のいずれか1項に記載する飲酒状態判定装置。
【請求項11】
前記付与方法変更手段は、年齢が閾値以上の場合には年齢が高いほど刺激温度を低くすることを特徴とする請求項10に記載する飲酒状態判定装置。
【請求項12】
前記刺激付与手段は、圧力による刺激を付与することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載する飲酒状態判定装置。
【請求項13】
被験者の体型又は/及び着衣の情報を取得する被験者情報取得手段と、
前記刺激付与手段による刺激の付与方法を変更する付与方法変更手段と
を備え、
前記付与方法変更手段は、前記被験者情報取得手段で取得した体型又は/及び着衣の情報に基づいて刺激圧力又は刺激パターンを決定することを特徴とする請求項12に記載する飲酒状態判定装置。
【請求項14】
前記付与方法変更手段は、体重が重いほど又は/及び着衣が厚いほど刺激圧力を大きくすることを特徴とする請求項13に記載する飲酒状態判定装置。
【請求項15】
前記生理量情報取得手段は、被験者の血流量を取得することを特徴とする請求項1〜請求項14のいずれか1項に記載する飲酒状態判定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2010−138(P2010−138A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−159461(P2008−159461)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】