飲酒運転防止装置
【課題】体液や呼気等を濃縮する手段等を用いること無く、いわゆる「飲酒運転」を防止することが出来る飲酒運転防止装置の提供。
【解決手段】ドライバーの体液や体臭等から例えばアセトアルデヒド等の指示物質及びその濃度を検出するセンサ3と、制御手段4とを有し、該制御手段4は、前記センサ3の検出結果と許容値とを比較して、前記指示物質の濃度が許容値以上である場合には自動車を発進不能とする制御を行なう様に構成されている。
【解決手段】ドライバーの体液や体臭等から例えばアセトアルデヒド等の指示物質及びその濃度を検出するセンサ3と、制御手段4とを有し、該制御手段4は、前記センサ3の検出結果と許容値とを比較して、前記指示物質の濃度が許容値以上である場合には自動車を発進不能とする制御を行なう様に構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチルアルコールの血中濃度が所定値以上の状態にある運転者が自動車を運転すること(いわゆる「飲酒運転」)を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
エチルアルコールの血中濃度が所定値以上の状態にあると、慎重な判断が困難となり、且つ、反応が悪くなってしまう。そのため、係る状態(エチルアルコールの血中濃度が所定値以上の状態)で自動車を運転することは、大変に危険であり、重大な事故を発生してしまう恐れがある。そのため、飲酒運転は、各種法規により厳禁されている。
しかし、飲酒運転は後を絶たず、飲酒運転に起因する重大な事故の発生も後を絶たないのが現状である。
【0003】
従来技術においても、アルコールを検出した場合に自動車を運転不可能とする技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、係る従来技術は、アルコールガスの熱伝導度、電気伝導度を基礎としてアルコールの有無を検知するので、各種手段により呼気を濃縮しなければ、アルコールの検知自体が困難であるという問題を有している。
【特許文献1】特開平8−150853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、体液や呼気等を濃縮する手段等を用いること無く、エチルアルコールの血中濃度が所定値以上の状態で自動車を運転すること(いわゆる「飲酒運転」)を防止することが出来る飲酒運転防止装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者は種々研究の結果、汗その他の体液や呼気や体臭等の対象者から発する気体に、例えばアセトアルデヒドの様に血中のエチルアルコールが存在する旨を示す指示物質が含まれている場合において、測定対象者の血中に汗その他の体液に含まれる指示物質(例えばアセトアルデヒド)濃度は血中のエチルアルコール濃度と対応していることを見出した。同様に、呼気や体臭等の対象者から発する気体に含まれる指示物質(例えばアセトアルデヒド)濃度も、血中エチルアルコール濃度と対応していることも見出した。また、体液中や体臭等の例えばアセトアルデヒド等の指示物質濃度の計測は、呼気や体液の濃縮を行わなくても可能であることに着目した。
【0006】
本発明は係る見地に基づいて創作されており、本発明の飲酒運転防止装置(100)は、自動車の運転席(9)及び運転席周辺の操作系(11〜16)に配置されたセンサ(3:アセトアルデヒド等の指示物質を検知する薄膜センサ)と、制御手段(コントロールユニット4)とを有し、前記センサ(3)は運転席に座着した者(運転者、ドライバー)の発する指示物質(例えば掌や指からの汗等の体液中のアセトアルデヒドや、運転者の呼気や運転者から発散される体臭等の気体中のアセトアルデヒド)の濃度を検出する(アセトアルデヒドの有無及び濃度を検出する)機能を有しており、該指示物質は血中にエチルアルコールが存在することを示す(運転車が飲酒をしたことを示す)物質であり、前記制御手段(4)は、センサ(3)で検出された前記指示物質の濃度と閾値(飲酒運転と認められるエチルアルコールの血中濃度の限界値に相当する前記アセトアルデヒド濃度)とを比較して、前記指示物質の濃度が閾値以上である場合には自動車を発進不能とする制御を行なう機能を有している(請求項1)。
ここで、前記指示物質は、例えば、アセトアルデヒドや、エチルアルコール、その他の化合物等である。
【0007】
ここで、前記「自動車を発進不能とする制御」は、例えば、ガバナ等を制御してエンジンへの燃料供給を遮断する制御、点火系への電流供給を遮断する制御、スタータモータへの電流供給を遮断する制御、トランスミッションがニュートラル(N)位置やパーキング位置(P)以外に入らない様にする制御、サイドブレーキが解除されない様にする制御、或いは、イグニッションキーが回動しない様にする制御等を行なう様に構成されているのが好ましい。
【0008】
本発明において、前記運転席周辺のセンサ(3)の配置される操作系は、ステアリングホイール(11)と、シフトレバー(12)と、カーオーディオ用、エアコン用、及びナビゲーションシステム用操作スイッチ(14)と、運転席側室内ドアハンドル(15)と、運転席側パワーウィンドウスイッチ(16)の内の何れか(1個所或いは2個所以上)であるのが好ましい(請求項2)。
【0009】
本発明において、(センサ3で検出された)指示物質の濃度が閾値以上であっても自動車を発進可能とする操作手段(解除スイッチ5)を有しており、前記制御手段(4)は、前記操作手段(5)が作動した場合には、自動車を発進不能とする制御を行なわない機能を有するのが好ましい(請求項3)。
【0010】
本発明において、前記操作手段(5)を作動させて自動車(1)を発進させた場合に、運転者の体から発せられる指示物質の濃度(例えば掌や指からの汗等の体液中のアルデヒド濃度や、運転者の呼気や運転者から発散される体臭等の気体中のアルデヒド濃度)が閾値以上である(飲酒運転が行われている)旨を表示する表示手段(7)を有するのが好ましい(請求項4)。
或いは、前記操作手段(5)を作動させて自動車(1)を発進させた場合に、運転者の体から発せられる前記指示物質の濃度(例えば掌や指からの汗等の体液中のアルデヒド濃度や、運転者の呼気や運転者から発散される体臭等の気体中のアルデヒド濃度)が閾値以上である(飲酒運転が行われている)旨の無線信号を(例えば無線LANにより)車両外部(例えば、警察署)へ発信する機能を有しているのが好ましい(請求項5)。
【0011】
本発明において、「指示物質の濃度を検出するセンサ」としては、指示物質にのみ反応して検出するセンサ(例えばアセトアルデヒド等の指示物質と、いわゆる「1:1」の関係で反応するセンサ)、例えば薄膜センサ(3S)を用いることが好ましい。
【0012】
ここで、上述した薄膜センサ(3S)は、ナノレベルの微細孔を多数形成した多孔質材料(例えば、金属酸化物半導体)から構成されており、検出するべき物質の分子がナノレベルの微細孔を侵入することによりセンサとして機能するものが使用可能である。
【発明の効果】
【0013】
上述する構成を具備する本発明によれば、飲酒した旨を示す指示物質(例えばアセトアルデヒド)を検出するセンサ(3S:薄膜センサ)により、自動車(1)の運転席に座着した者(運転者、ドライバー)の掌や指からの汗等の体液中や、運転者の呼気或いは運転者から発散される体臭等の気体中に前記指示物質が含まれているか否かを検出している。そのため、計測対象者の体液や呼気等を濃縮しなくても十分に検出可能であるため、計測対象者の体液や呼気等を濃縮する手段を用いる必要なく、飲酒した旨を示す指示物質を検出することが出来る。
そして、計測対象者の体液や呼気等を濃縮する手段のスペースが不要となり、本発明の飲酒運転防止装置は、自動車(1)内へ容易に設置することが出来る。
【0014】
運転席周りのセンサ(3)の配置される操作系を、ステアリングホイール(11)と、シフトレバー(13)と、カーオーディオ用、エアコン用、及びナビゲーションシステム用操作スイッチ(14)と、運転席側室内ドアハンドル(15)と、運転席側パワーウィンドウスイッチ(16)の内の何れか1個所或いは2個所以上に選べば(請求項2)、これ等の個所は何れも運転者の掌や指が接触する頻度が高く、運転者の呼気や体臭等が吹き付けられ易い個所であるため、より早い段階で運転席に座った者(運転者)の血中アルコール濃度が高い状態である旨、すなわち飲酒運転を行なっている旨を検出することが可能となり、飲酒による事故が発生を抑止することが出来る。
【0015】
本発明において、前記操作手段(解除スイッチ5)を有し、前記操作手段(解除スイッチ5)が作動した場合には自動車を発進可能に構成すれば(請求項3)、ドライバーは飲酒をしていないが同乗者が飲酒しており、飲酒している当該同乗者がセンサ(3)の配置される操作系に触れてしまった場合や、外傷を負った者を病院に搬送するため飲酒をした人間が運転を行なわなければならない場合の様な緊急事態において、自動車(1)を発進させて、運転することが可能となる。
【0016】
ここで、飲酒をした人間が前記操作手段(5:請求項3参照)を作動させて自動車を運転している場合に、表示手段(7)によって飲酒運転が行われている旨を表示する様に構成すれば(請求項4)、その自動車(1)が飲酒運転中であることを周囲に警告することが出来る。その結果、当該自動車(1)周囲の運転者に注意が喚起されるので、飲酒運転による事故を未然に防止することが可能となる。
さらに、飲酒をした人間が前記操作手段(5)を作動させて自動車を運転している旨を無線で外部(例えば、警察署8)に発信する様に構成すれば(請求項5)、飲酒運転がされた旨を受信した外部(例えば、警察署8)は、警察官を派遣する等、飲酒運転に対して抑止力のある措置を施すことが出来るので、飲酒運転に起因する悲惨な事故の発生を未然に防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図示の実施形態では、飲酒した旨を示す指示物質として、アセトアルデヒドを検出している。そして、アセトアルデヒドと、いわゆる「1:1の関係」で反応するセンサ、例えば薄膜センサを用いている。
もちろん、アセトアルデヒドは指示物質として例示されたものであり、本発明はアセトアルデヒドの検出に限定されるものではない。
【0018】
アセトアルデヒドと1:1で反応するセンサとしては、例えば、分子レベルの厚さ寸法しか有さない薄膜に、アセトアルデヒド分子の形状と同一形状の欠損部(分子レベルのサイズの孔)を複数形成し、当該薄膜を透過した分子が圧電素子に衝突するように構成されているタイプのセンサを使用する。そして、当該薄膜を透過した分子が衝突する圧電素子は、当該薄膜を透過した分子数に比例した電圧を発生させる様に構成されている。
係るセンサにおいて、アセトアルデヒド分子を包含する体液が当該薄膜に接触すると、アセトアルデヒド分子のみが薄膜を透過する。薄膜を透過したアセトアルデヒド分子は圧電素子と衝突して、電圧を発生する。
ここで、発生電圧は薄膜を透過したアセトアルデヒド分子の数、すなわちモル濃度に比例するので、当該気体中にアセトアルデヒド分子が存在するか否かのみならず、その濃度も鑑定出来る。
【0019】
或いは、アセトアルデヒドと1:1で反応するセンサは、例えば、半導体等の基板上に複数層形成された金属酸化物層と、該金属酸化物層の表面又は層内に固定化された有機化合物(ホスト化合物)とを備えた構成を有しているものを用いることが出来る。その様なセンサにおける有機化合物(ホスト化合物)は、その空間にアセトアルデヒドを選択的に取り込み(包接し)、係る選択的な取り込み(包接)が進行することにより、アセトアルデヒドが選択的に分離され、検出される。従って、アセトアルデヒドを含有する体液が係るセンサに接触すれば、有機化合物(ホスト化合物)がアセトアルデヒドを選択的に取り込む(包接する)作用が進行して、アセトアルデヒドが選択的に検出されるのである。
この様なセンサに、例えば、水晶振動子の電極に物質が付着すると、その質量に応じて周波数が減少する性質を利用した計測装置(クオーツクリスタルマイクロバランス:QCM)を組み合わせることにより、微量の体液や呼気等の質量と、運転者の体液や運転者から発散される各種気体中に包含されるアセトアルデヒドの質量を検出し、以って、血液中のアルコール濃度を求めることが可能となる。
【0020】
先ず、図1〜図10を参照して第1実施形態を説明する。
図1において、第1実施形態に係る飲酒運転防止装置100は、図示しない車両に設けられている。
飲酒運転防止装置100は、図示しない車両に搭載されているエンジン2と、ドライバーの体臭中に含まれる飲酒した旨を示すアセトアルデヒド及びその濃度を検出するセンサ3と、コントロールユニット4と、解除スイッチ5とを有している。
【0021】
アセトアルデヒドセンサ(以下、「センサ」と記載する)3は、図2に示すように、運転席(ドライバーシート)9において、シートクッション91、シートバック92、ヘッドレスト93の少なくとも一箇所に設けられている。
センサ3は、シートクッション91、シートバック92、ヘッドレスト93の何れか1箇所或いは2個所以上(全箇所を含む)に配置することが出来る。
【0022】
図3において、センサ3はステアリングホイール11に設けられており、さらに変速用シフトレバー12に設けられている。
図示の第1実施形態では、車両はマニュアルモード機能付の自動変速機搭載車両であって、シフトパドル付車両であり、センサ3は、そのシフトパドル13に設けられている。そしてセンサ3は、スイッチ14で総称するエアコン用操作スイッチ、カーオーディオ用操作スイッチ、ナビゲーションシステム用操作スイッチの表面に設けられている。
図4において、運転手席側ドアDの室内側のドアハンドル15にセンサ3が設けられており、また、運転手席側ドアDの室内側に取り付けられたパワーウィンドウ操作用スイッチ16にセンサ3が設けられている。
【0023】
図5は図2のX−X断面矢視図である。図5を参照して、図2において、ドライバーシート9のシートバック92に取り付けられているセンサ3の詳細を説明する。
図5において、シートバック92のドライバーに接する側の表皮92Fには、ドライバーの背中に生じた汗やドライバーの体臭等が透過可能な小孔が、多数設けられている。この小孔が設けられた表皮92Fの内側には、センサ本体3Sを保護するため多孔質部材3Fが埋設してあり、この多孔質部材3Fの更に内側にはセンサ本体3Sが埋設されている。多孔質部材3Fは、例えば、センサ本体3Sに接触する側が適度な柔軟性を有し、比較的脆い材料で構成されたセンサ本体3Sを、その柔軟性によって十分に保護する様になっている。
なお、センサ3は、センサ本体3Sと多孔質部材3Fとで構成されている。
【0024】
シートバック92の表皮92Fに形成された小孔と、多孔質部材3Fの孔を介して、ドライバーの背中に生じた汗や体臭等がセンサ本体3Sに到達する。そして、汗や体臭等に包含されているアセトアルデヒドのみがセンサ3で選択的に検出される。
図5の例では、シートバック92の幅方向(図5では左右方向)の全幅に渡ってセンサ3が配置されている。しかし、シートバック92の幅方向について、部分的にセンサ3を配置しても良い。
【0025】
図6を参照して、ステアリングホイール11に設けられたセンサ3の構造について説明する。
図6はステアリングホイール11の断面を示している。ステアリングホイール11の表面には、全周にわたって、センサ本体3Sが巻き付けられるように取り付けられている。センサ本体3Sの全周には、多孔質部材3Fが巻き付けられている。
この場合においても、センサ本体3Sと多孔質部材3Fにより、センサ3が構成されている。
【0026】
この多孔質部材3Fは、例えば、センサ本体3Sに接触する側が適度な柔軟性を有し、ドライバーの手に触れる側の面は、摩耗しない程度に十分な剛性を有するように形成されている。
そのように多孔質部材を構成することにより、運転操作が正確に行われると共に、センサ本体3Sを十分に保護することが出来る。
【0027】
図6では明示されていないが、ステアリング11にセンサ3を設ける場合、必ずしもホイールの全周にわたって設けることはなく、円周方向に部分的に設けることが可能である。
【0028】
シフトレバー12やシフトパドル13に設けられるセンサ3も、図6で示すのと概略同様な構成を具備している。
また、ドアハンドル15(図4参照)に設けられるセンサ3も、図6で示すのと概略同様な構成を具備している。
【0029】
図7を参照して、スイッチ14の表面に設けられたセンサ3の構造について説明する。上述した様に、「スイッチ14」なる文言は、エアコン用操作スイッチ、カーオーディオ用操作スイッチ、ナビゲーションシステム用操作スイッチを包括的に表現している。
図7は、例えば、オーディオ機器操作用のスイッチ14の表面に取り付けたセンサ3の構成を示している。
オーディオ機器操作用のスイッチ14の表面には、センサ本体3Sが貼り付けられ、その上面には多孔質部材3Fが被覆されている。多孔質部材3Fの構成は図5を参照して説明したのと同様であり、その表面には多くの小孔が形成され、手の指との接触が頻繁に行われても摩耗しないように、カバー部材(例えばフィルム)3Cで被覆されている。
【0030】
ここで、多孔質部材3Fは、孔を形成する前の素材の段階でカバー部材3Cと積層され、シート状にされた後に多数の小孔を打ち抜いて製造する事が可能である。
なお、図4で示すパワーウィンドウ操作用スイッチとナビゲーションシステム用操作スイッチに設けられるセンサ3も、図7で説明したのと概略同様な構成を具備している。
【0031】
図1において、コントロールユニット4は、センサ3からの検出信号に基づいて、ドライバーが飲酒又は酒気帯びであるか否かを判断する様に構成されている。そして解除スイッチ5は、コントロールユニット4が「ドライバーが飲酒又は酒気帯びである」と判断して運転操作を禁止する制御を行う場合に、コントロールユニット4の禁止命令を解除することが出来る機能を有している。
【0032】
コントロールユニット4は、比較回路41と、判定回路42と、記憶装置であるデータベース43とを有している。比較回路41は、センサ3からの出力信号を受信し、その受信した信号に含まれる情報とデータベース43に記憶されたデータ(飲酒運転又は酒気帯び運転であるか否かの境界を示す体液中のアセトアルデヒド濃度:閾値)とを比較し、その比較結果を判定回路42に送る。
判定回路42は、比較回路から送られた比較結果に基づいて、ドライバーが飲酒又は酒気帯びに該当するか否かを判定する。そして、飲酒又は酒気帯びに該当する場合には、エンジン2に停止する制御信号、例えば、エンジン2の図示しないインジェクションポンプからの燃料噴射を禁止する制御信号、を発信する。
【0033】
センサ3は、上述したように、アセトアルデヒドを選択的に検出することが出来るセンサ(アセトアルデヒドと1:1で反応するセンサ)であり、アセトアルデヒドが存在するか否かのみならず、その濃度も計測可能である様に構成されている。
【0034】
ドライバーの体液は、例えば汗として、ドライバーの掌や手の指から直接ドライバー周辺の操作系機器(図3〜図7参照)に接触する。ドライバーの呼気や体臭等についても同様である。
ドライバーの着衣の量(厚み)や種類によって、ドライバーの汗(体液)が、衣類を透過し難く、センサ3に接触し難い場合がある。その様な場合であっても、シートクッション91、シートバック92、ヘッドレスト93の複数個所にセンサ3を設ければ、ドライバーの汗がセンサ3に接触する確率が増加する。同様に、ドライバーの呼気や体臭がセンサ3に接触する確率も増加する。
【0035】
また、ドライバーシートのみならず、操作系機器(図3〜図7参照)に取り付けたセンサ3から、直接、ドライバーの汗やドライバーの呼気や体臭を、センサ3に接触させることが出来る。
そして、着衣とは無関係にドライバーの汗をセンサ3に接触させて、汗に含まれるアセトアルデヒドの濃度を計測することにより、或いは、ドライバーの呼気や体臭に含まれるアセトアルデヒドの濃度を計測することにより、ドライバーが酩酊して危険な状態にあるか否かを検知することが出来る。
【0036】
なお、操作系機器に設けるセンサ3は、上述のように、ステアリングホイール11、変速用シフトレバー12、シフトパドル13、スイッチ14(エアコン用操作スイッチ、カーオーディオ用操作スイッチ、ナビゲーションシステム用操作スイッチ)、ドアハンドル15、パワーウィンドウ操作用スイッチ16の何れか1つにのみ設けても良いし、2つ以上の機器(全ての機器に設ける場合を含む)に設けても良い。
【0037】
上述したように、コントロールユニット4は、センサ3の出力信号電圧を、データベース43に記憶されている閾値と比較し(比較回路41)、閾値以上のアセトアルデヒド濃度であるか否かを決定し(判定回路42)、ドライバーの体液やドライバーが発する気体中のアセトアルデヒド濃度が閾値以上の場合には、自動車のエンジン2に制御信号を発生して、始動を妨げる様に構成されている。
【0038】
解除スイッチ5は、閾値以上のアセトアルデヒド濃度が検出されても、自動車のエンジン2の始動を可能とするための装置である。
詳細については、図10を参照して後述する。
【0039】
図8は、第1実施形態における作用を示した制御フローチャートである。
図8のステップS1において、コントロールユニット4は、図2〜図7で説明した各センサ3により、ドライバーの体液やドライバーが発する気体からアセトアルデヒドを検出したか否かを判断する。
ドライバーの体液やドライバーが発する気体からアセトアルデヒドを検出したならば(ステップS1がYES)、ステップS2に進む。
アセトアルデヒドを検出しない場合には(ステップS1がNO)、ステップS5でエンジンを作動可能にして、ステップS6へ進む。
【0040】
ドライバーの体液やドライバーが発する気体からアセトアルデヒドを検出した場合に(ステップS1がYES)、ステップS2において、アセトアルデヒド濃度が所定値以上か否かを判断する。アセトアルデヒド濃度が所定濃度以上であれば(ステップS2がYES)、ステップS3に進む。
アセトアルデヒド濃度が所定濃度未満であれば(ステップS2がNO)、ステップS5でエンジン作動可能にして、ステップS6まで進む。
【0041】
アセトアルデヒド濃度が所定濃度以上の場合(ステップS2がYES)、ステップS3において、コントロールユニット4はエンジンが作動しているか否かを判断する。
エンジンが作動していれば(ステップS3がYES)、ステップS4に進む。ステップS4において、コントロールユニット4は、エンジンを停止させる。
一方、エンジンが作動していなければ(ステップS3がNO)、ステップS6に進む。
【0042】
ステップS6では、制御を終了するか否かを判断する。制御を終了するのであれば(ステップS6がYES)、そのまま「エンド」となる。
一方、図示の第1実施形態に係る制御を続行するのであれば(ステップS6がNO)、ステップS1まで戻り、再びステップS1以降を繰り返す。
【0043】
上述したステップS4において、エンジン2を停止し、或いは始動を妨げる具体的な手法としては、例えば、
図示しないガバナ等を制御して、エンジン2への燃料供給を遮断する、
図示しない点火系への電流供給を遮断する、
図示しないスタータモータへの電流供給を遮断する、
図示しないトランスミッションを制御して、いわゆる「ニュートラル(N)」位置や「パーキング位置(P)」以外にはギヤが入らない様にする、
図示しないサイドブレーキが解除されない様にする、
図示しないイグニッションキーが回動しないようにする、
等が可能である。
【0044】
ここで、アセトアルデヒドが検出された場合でも、エンジン2が作動していなければ、飲酒運転が行われる恐れがないので、ステップS4の制御(エンジン2を停止する制御)は行なう必要が無い。そのため、ステップS3において、エンジンが作動していないと判断される(ステップS3がNO)場合には、ステップS4がバイパスされている。
ステップS3において、エンジンが作動しているか否かの判定に代えて、車速がゼロであるか否かを判定しても良い。車速がゼロであれば車両は停止しているので、車両の危険な走行は行なわれず、それに起因した事故は発生しない。そのため、車速がゼロの場合も、ステップS4におけるエンジンを停止する制御を行なう必要はない。
【0045】
「アセトアルデヒド濃度が所定濃度(閾値)以上であるか否か?」を判定するステップS2では、例えば図9で示す様に、経時的に変化するアセトアルデヒド濃度(線Lγ)の瞬間値(ピーク値)が閾値Lsを超えた場合には、「YES」と判定する。
危険防止の観点から、血中アルコール濃度が閾値を越えた可能性がある場合は、全て「エンジン停止」(ステップS4)の制御を行なうことが適切だからである。
【0046】
ここで、同乗者は飲酒していてもドライバーは飲酒をしていないが、同乗者の体液や呼気等に含まれるアセトアルデヒドがセンサ3によって検出されてしまった場合や、事故の被害者や突発的に発病した患者を病院に搬送するため、飲酒をしたにも拘らず自動車を運転して患者を病院に搬送しなければならない場合等において、エンジンが停止して自動車が発進出来なくなってしまうことは不都合である。
係る不都合を解消するために、解除スイッチ5は設けられている。
【0047】
図10を参照して、上述した解除スイッチ5の作用について説明する。
図10で示されている様に、解除スイッチ5を作動させると、センサ3が所定濃度以上のアセトアルデヒドを検知しても、図8で示すステップS4における「エンジン停止」の制御は行なわれなくなる。
【0048】
図10において、ステップS11では、コントロールユニット4は解除スイッチがONであるか否かを判断する。解除スイッチがONであれば(ステップS11がYES)、ステップS12に進む。一方、解除スイッチがONでなければ、ステップS11が「NO」のループを繰り返す。
【0049】
ステップS12では、解除スイッチ5をONにした日時をデータベース43に記憶し、ステップS13では、図8のステップS4の処理を解除して、制御を終了する。
【0050】
解除スイッチ5をONにした日時をデータベース43に記憶することによって、解除スイッチ5をONにした状態で事故が発生した場合に、解除スイッチ5が異常作動したのではない旨を明らかにすることが出来る。換言すれば、酩酊状態の者が故意に解除スイッチ5を作動させてしまった場合に、その旨を記録しておくことにより、その者が事故を起こした場合に、「解除スイッチが勝手に作動してしまった」等と抗弁することを事前に防止することが出来るのである。
【0051】
解除スイッチ5は、運転席から離隔した箇所に設けられていることが好ましい。すなわち、解除スイッチ5は、ドライバーが操作し難い箇所に配置されていることが好ましい。例えば、後部シートの下側や、トランクの内部に設置することが好適である。
上述した様に、解除スイッチ5は、非常時に作動されるべきものである。運転席から操作し易い位置に解除スイッチ5を配置すれば、例示した様な非常時に該当しないにも拘らず、飲酒したドライバーが操作して、車両を運転してしまう可能性が存在する。係る事態を排除するため、解除スイッチ5は、ドライバーが操作し難い箇所に配置されていることが好ましいのである。
【0052】
図10において、ステップS4(図8)の処理を解除して、自動車を発進可能にせしめた後、一定条件を満たした場合には、図10のステップS13の処理を解除して、再び図8のステップS4の処理を有効ならしめるのが好ましい。
上述した様に、解除スイッチ5を操作してドライバーが飲酒していてもエンジンを停止しないという制御は、あくまでも非常事態に対処するため限定的に発動する制御であり、非常事態に該当しない通常時においては、係る制御(図10のステップS13)は解除して、図8の制御が優先されるべきだからである。
【0053】
そして、一定条件を満たした場合(例えば、一定時間を経過した場合)には、図10のステップS13の処理を解除して、再び図8のステップS4の処理を有効ならしめる様にすれば、酩酊状態にある者が故意に解除スイッチ5を操作しても、一定時間を経過するとエンジンが停止するので、酩酊状態のドライバーが長時間の運転を行なうという危険な事態が防止される。
上述の一定条件(図8のステップS4の処理が再び有効となる条件)としては、「所定の時間が経過する」に加えて、例えば、「エンジンが停止した」、「車速がゼロの状態が所定回数以上発生した」等の条件が考えられる。
【0054】
次に、図11、図12を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。
図11、図12の第2実施形態では、解除スイッチ5が作動している場合の作用と、それに関連する構成について、第1実施形態とは異なっている。但し、解除スイッチ5が作動していない場合については、第2実施形態は第1実施形態と同様に機能する。
図11、図12の第2実施形態では、ドライバーの体液やドライバーの発する気体から所定濃度以上のアセトアルデヒドを検知した場合において、解除スイッチ5が作動しており、且つ、自動車が走行している(車速≠0)場合には、当該車両において「飲酒運転が為されている」旨の表示が為されると共に、「飲酒運転が為されている」旨が、無線LAN等を介して、警察署等の所轄機関に対して通報される様に構成されている。
【0055】
図11において、第2実施形態に係る飲酒運転防止装置102は、エンジン2を備えた自動車1に、第1実施形態で説明されたセンサ3と、コントロールユニット4と、解除スイッチ5とが設けられている。そして、自動車1は、飲酒運転信号発生手段6と、表示手段7とを備えている。
飲酒運転信号発生手段6は、発信用アンテナ61を有している。
【0056】
図12に基づいて、第2実施形態における作用について説明する。
図12において、ステップS21では、コントロールユニット4は、センサ3により、ドライバーの汗や体臭等からアセトアルデヒドが検出されたか否かを判断する。
アセトアルデヒドを検出したならば(ステップS21がYES)ステップS22に進む。アセトアルデヒドを検出しなければ(ステップS21がNO)、ステップS24に進み、エンジンを作動可能ならしめ、ステップS29まで進む。
【0057】
ステップS22では、ドライバーの体液やドライバーの発する気体におけるアセトアルデヒド濃度が所定値以上か否かを判断する。
ドライバーの体液やドライバーの発する気体におけるアセトアルデヒド濃度が所定濃度以上であれば(ステップS22がYES)ステップS23に進む。
所定濃度未満であれば(ステップS22がNO)、ステップS24に進み、エンジンを作動可能ならしめ、ステップS29まで進む。
【0058】
ステップS23では、コントロールユニット4は、解除スイッチ5がONかOFFかを判断する。
解除スイッチ5がONであれば(ステップS23がYES)ステップS25に進み、解除スイッチ5がOFFであれば(ステップS23がNO)、ステップS27に進む。
【0059】
ステップS25では、コントロールユニット4は、車速が0ではないか否か、すなわち自動車1が走行しているか否かを判断する。
車速が0でなければ(ステップS25がYES)、すなわち自動車1が走行していれば、ステップS26で表示手段6を作動させ、飲酒信号発生手段6から飲酒信号を発信した後、ステップS29に進む。
【0060】
ステップS26において、表示手段6で「飲酒運転が為されている」旨の表示が為されれば、当該自動車の近傍を走行しているその他の車両のドライバーに、危険運転を行なう可能性がある旨を警告する事が出来るので、その他の車両のドライバーは飲酒運転に巻き込まれて事故に遭遇することがない様に、危険を予測して走行することが可能となる。
それと共に、ステップS26において、「飲酒運転が為されている」旨が、無線LAN等を介して、警察署等の所轄機関に対して通報されるので、警察車両は当該自動車を早期に停止せしめて、飲酒運転による事故を防止出来る。
例えば突発的な事故や疾病のため、飲酒した者が運転して被害者や急病人を搬送しなければならない場合には、無線LAN等を介して通報を受けた警察署等の所轄機関は、警察車両等に被害者や病人を移動して搬送し、或いは、警察車両で当該飲酒運転中の車両を先導して、事故の発生を抑制しつつ医療機関に搬送することが可能となる。
【0061】
車速が0であり(ステップS25がNO)、自動車1が走行していなければ、飲酒運転は行われておらず、危険性は少ないと判断して、ステップS26をバイパスして、表示手段6を作動させず、飲酒信号発生手段6から飲酒信号を発信せずに、ステップS29に進む。
【0062】
解除スイッチ5がOFFの場合(ステップS23がNO)、ステップS27において、コントロールユニット4は、車速が0でないか否か、すなわち自動車1が走行しているか否かを判断する。
車速が0でなければ(ステップS27がYES)、すなわち自動車1が走行しているのであれば、ステップS28でエンジン2を停止する制御を行い、ステップS29に進む。
一方、車速が0であり(ステップS27がNO)、自動車1が走行していなければ、飲酒運転は行われておらず、危険性は少ないと判断して、ステップS28をバイパスし、エンジンを停止させずにステップS29に進む。
【0063】
ステップS29では、コントロールユニット4は、制御を終了するか否かを判断する。
制御を続けるのであれば(ステップS29がNO)、ステップS21まで戻り、再びステップS21以降を繰り返す。
【0064】
図11、図12の第2実施形態によれば、酩酊状態のドライバーが解除スイッチ5を操作して自動車1を運転している場合に対して、適切に対処することが出来る。
すなわち、酩酊状態のドライバーが解除スイッチ5を操作して、自動車1を走行させてしまった場合には、コントロールユニット4から飲酒運転信号発信手段6に、飲酒運転である旨が出力され、自動車1の後部に取り付けられた表示手段7には飲酒運転中である旨の表示がなされる。そのため、当該自動車1の近傍を走行している他の自動車のドライバーが、当該自動車1が飲酒運転中であることを認識することが出来る。
【0065】
また、飲酒運転信号発信手段6のアンテナ61から、最寄りの警察署8に飲酒運転である旨の信号が発信されるので、飲酒運転である旨の信号を受信した警察署は、当該自動車1に警察官を派遣して、走行停止を命じる等の措置を取る事が可能となる。
その結果、飲酒運転による悲惨な事故を積極的に防止し、飲酒者に対して飲酒運転を抑制することが出来る。
【0066】
なお、同乗者は飲酒していてもドライバーは飲酒をしていない場合や、同乗者が何らかの理由によってアセトアルデヒドを発散している場合等は、解除スイッチ5を操作することが適正と考えられる。この様な場合において、警察署8に連絡をされたとしても、警察官に停車を命じられて職務質問をされた際に、ドライバーが事情を正確に説明すれば、ドライバーに不利益を生じることはない。
図11、図12の第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果については、図1〜図10で説明した第1実施形態と同様である。
【0067】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない旨を付記する。
例えば、図示の実施形態はアセトアルデヒドを指示物質として例示しているが、指示物質としては、エチルアルコールや、その他の化合物等を選択する事が可能である。そして、指示物質として例えばエチルアルコールを選択する場合には、図示の実施形態におけるセンサとしては、エチルアルコールと1:1の関係で感応するセンサを用いる。
また、センサとして、水晶振動子表面に有機化合物を吸着した薄膜センサを用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第1実施形態のブロック図。
【図2】第1実施形態において、運転席におけるセンサの配置を説明する図。
【図3】第1実施形態において、ステアリングホイール周辺におけるセンサの配置を説明する斜視図。
【図4】第1実施形態において、運転席側ドア内側におけるセンサの配置を説明する図。
【図5】図2のX−X断面矢視図
【図6】第1実施形態において、ステアリングホイールに取り付けられたセンサの断面図。
【図7】第1実施形態において、オーディオ機器操作用のスイッチの表面に取り付けたセンサ3の断面図。
【図8】第1実施形態の制御フローチャートを示す図。
【図9】アセトアルデヒド濃度と経過時間との特性の1例を示す図。
【図10】第1実施形態において、解除スイッチによる制御フローチャートを示す図。
【図11】本発明の第2実施形態のブロック図。
【図12】第2実施形態の制御フローチャートを示す図。
【符号の説明】
【0069】
1・・・自動車
2・・・エンジン
3・・・センサ
4・・・制御手段/コントロールユニット
5・・・解除スイッチ
6・・・飲酒運転信号発信手段
7・・・表示手段
41・・・比較回路
42・・・判定回路
43・・・データベース
100・・・飲酒運転防止装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチルアルコールの血中濃度が所定値以上の状態にある運転者が自動車を運転すること(いわゆる「飲酒運転」)を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
エチルアルコールの血中濃度が所定値以上の状態にあると、慎重な判断が困難となり、且つ、反応が悪くなってしまう。そのため、係る状態(エチルアルコールの血中濃度が所定値以上の状態)で自動車を運転することは、大変に危険であり、重大な事故を発生してしまう恐れがある。そのため、飲酒運転は、各種法規により厳禁されている。
しかし、飲酒運転は後を絶たず、飲酒運転に起因する重大な事故の発生も後を絶たないのが現状である。
【0003】
従来技術においても、アルコールを検出した場合に自動車を運転不可能とする技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、係る従来技術は、アルコールガスの熱伝導度、電気伝導度を基礎としてアルコールの有無を検知するので、各種手段により呼気を濃縮しなければ、アルコールの検知自体が困難であるという問題を有している。
【特許文献1】特開平8−150853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、体液や呼気等を濃縮する手段等を用いること無く、エチルアルコールの血中濃度が所定値以上の状態で自動車を運転すること(いわゆる「飲酒運転」)を防止することが出来る飲酒運転防止装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者は種々研究の結果、汗その他の体液や呼気や体臭等の対象者から発する気体に、例えばアセトアルデヒドの様に血中のエチルアルコールが存在する旨を示す指示物質が含まれている場合において、測定対象者の血中に汗その他の体液に含まれる指示物質(例えばアセトアルデヒド)濃度は血中のエチルアルコール濃度と対応していることを見出した。同様に、呼気や体臭等の対象者から発する気体に含まれる指示物質(例えばアセトアルデヒド)濃度も、血中エチルアルコール濃度と対応していることも見出した。また、体液中や体臭等の例えばアセトアルデヒド等の指示物質濃度の計測は、呼気や体液の濃縮を行わなくても可能であることに着目した。
【0006】
本発明は係る見地に基づいて創作されており、本発明の飲酒運転防止装置(100)は、自動車の運転席(9)及び運転席周辺の操作系(11〜16)に配置されたセンサ(3:アセトアルデヒド等の指示物質を検知する薄膜センサ)と、制御手段(コントロールユニット4)とを有し、前記センサ(3)は運転席に座着した者(運転者、ドライバー)の発する指示物質(例えば掌や指からの汗等の体液中のアセトアルデヒドや、運転者の呼気や運転者から発散される体臭等の気体中のアセトアルデヒド)の濃度を検出する(アセトアルデヒドの有無及び濃度を検出する)機能を有しており、該指示物質は血中にエチルアルコールが存在することを示す(運転車が飲酒をしたことを示す)物質であり、前記制御手段(4)は、センサ(3)で検出された前記指示物質の濃度と閾値(飲酒運転と認められるエチルアルコールの血中濃度の限界値に相当する前記アセトアルデヒド濃度)とを比較して、前記指示物質の濃度が閾値以上である場合には自動車を発進不能とする制御を行なう機能を有している(請求項1)。
ここで、前記指示物質は、例えば、アセトアルデヒドや、エチルアルコール、その他の化合物等である。
【0007】
ここで、前記「自動車を発進不能とする制御」は、例えば、ガバナ等を制御してエンジンへの燃料供給を遮断する制御、点火系への電流供給を遮断する制御、スタータモータへの電流供給を遮断する制御、トランスミッションがニュートラル(N)位置やパーキング位置(P)以外に入らない様にする制御、サイドブレーキが解除されない様にする制御、或いは、イグニッションキーが回動しない様にする制御等を行なう様に構成されているのが好ましい。
【0008】
本発明において、前記運転席周辺のセンサ(3)の配置される操作系は、ステアリングホイール(11)と、シフトレバー(12)と、カーオーディオ用、エアコン用、及びナビゲーションシステム用操作スイッチ(14)と、運転席側室内ドアハンドル(15)と、運転席側パワーウィンドウスイッチ(16)の内の何れか(1個所或いは2個所以上)であるのが好ましい(請求項2)。
【0009】
本発明において、(センサ3で検出された)指示物質の濃度が閾値以上であっても自動車を発進可能とする操作手段(解除スイッチ5)を有しており、前記制御手段(4)は、前記操作手段(5)が作動した場合には、自動車を発進不能とする制御を行なわない機能を有するのが好ましい(請求項3)。
【0010】
本発明において、前記操作手段(5)を作動させて自動車(1)を発進させた場合に、運転者の体から発せられる指示物質の濃度(例えば掌や指からの汗等の体液中のアルデヒド濃度や、運転者の呼気や運転者から発散される体臭等の気体中のアルデヒド濃度)が閾値以上である(飲酒運転が行われている)旨を表示する表示手段(7)を有するのが好ましい(請求項4)。
或いは、前記操作手段(5)を作動させて自動車(1)を発進させた場合に、運転者の体から発せられる前記指示物質の濃度(例えば掌や指からの汗等の体液中のアルデヒド濃度や、運転者の呼気や運転者から発散される体臭等の気体中のアルデヒド濃度)が閾値以上である(飲酒運転が行われている)旨の無線信号を(例えば無線LANにより)車両外部(例えば、警察署)へ発信する機能を有しているのが好ましい(請求項5)。
【0011】
本発明において、「指示物質の濃度を検出するセンサ」としては、指示物質にのみ反応して検出するセンサ(例えばアセトアルデヒド等の指示物質と、いわゆる「1:1」の関係で反応するセンサ)、例えば薄膜センサ(3S)を用いることが好ましい。
【0012】
ここで、上述した薄膜センサ(3S)は、ナノレベルの微細孔を多数形成した多孔質材料(例えば、金属酸化物半導体)から構成されており、検出するべき物質の分子がナノレベルの微細孔を侵入することによりセンサとして機能するものが使用可能である。
【発明の効果】
【0013】
上述する構成を具備する本発明によれば、飲酒した旨を示す指示物質(例えばアセトアルデヒド)を検出するセンサ(3S:薄膜センサ)により、自動車(1)の運転席に座着した者(運転者、ドライバー)の掌や指からの汗等の体液中や、運転者の呼気或いは運転者から発散される体臭等の気体中に前記指示物質が含まれているか否かを検出している。そのため、計測対象者の体液や呼気等を濃縮しなくても十分に検出可能であるため、計測対象者の体液や呼気等を濃縮する手段を用いる必要なく、飲酒した旨を示す指示物質を検出することが出来る。
そして、計測対象者の体液や呼気等を濃縮する手段のスペースが不要となり、本発明の飲酒運転防止装置は、自動車(1)内へ容易に設置することが出来る。
【0014】
運転席周りのセンサ(3)の配置される操作系を、ステアリングホイール(11)と、シフトレバー(13)と、カーオーディオ用、エアコン用、及びナビゲーションシステム用操作スイッチ(14)と、運転席側室内ドアハンドル(15)と、運転席側パワーウィンドウスイッチ(16)の内の何れか1個所或いは2個所以上に選べば(請求項2)、これ等の個所は何れも運転者の掌や指が接触する頻度が高く、運転者の呼気や体臭等が吹き付けられ易い個所であるため、より早い段階で運転席に座った者(運転者)の血中アルコール濃度が高い状態である旨、すなわち飲酒運転を行なっている旨を検出することが可能となり、飲酒による事故が発生を抑止することが出来る。
【0015】
本発明において、前記操作手段(解除スイッチ5)を有し、前記操作手段(解除スイッチ5)が作動した場合には自動車を発進可能に構成すれば(請求項3)、ドライバーは飲酒をしていないが同乗者が飲酒しており、飲酒している当該同乗者がセンサ(3)の配置される操作系に触れてしまった場合や、外傷を負った者を病院に搬送するため飲酒をした人間が運転を行なわなければならない場合の様な緊急事態において、自動車(1)を発進させて、運転することが可能となる。
【0016】
ここで、飲酒をした人間が前記操作手段(5:請求項3参照)を作動させて自動車を運転している場合に、表示手段(7)によって飲酒運転が行われている旨を表示する様に構成すれば(請求項4)、その自動車(1)が飲酒運転中であることを周囲に警告することが出来る。その結果、当該自動車(1)周囲の運転者に注意が喚起されるので、飲酒運転による事故を未然に防止することが可能となる。
さらに、飲酒をした人間が前記操作手段(5)を作動させて自動車を運転している旨を無線で外部(例えば、警察署8)に発信する様に構成すれば(請求項5)、飲酒運転がされた旨を受信した外部(例えば、警察署8)は、警察官を派遣する等、飲酒運転に対して抑止力のある措置を施すことが出来るので、飲酒運転に起因する悲惨な事故の発生を未然に防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図示の実施形態では、飲酒した旨を示す指示物質として、アセトアルデヒドを検出している。そして、アセトアルデヒドと、いわゆる「1:1の関係」で反応するセンサ、例えば薄膜センサを用いている。
もちろん、アセトアルデヒドは指示物質として例示されたものであり、本発明はアセトアルデヒドの検出に限定されるものではない。
【0018】
アセトアルデヒドと1:1で反応するセンサとしては、例えば、分子レベルの厚さ寸法しか有さない薄膜に、アセトアルデヒド分子の形状と同一形状の欠損部(分子レベルのサイズの孔)を複数形成し、当該薄膜を透過した分子が圧電素子に衝突するように構成されているタイプのセンサを使用する。そして、当該薄膜を透過した分子が衝突する圧電素子は、当該薄膜を透過した分子数に比例した電圧を発生させる様に構成されている。
係るセンサにおいて、アセトアルデヒド分子を包含する体液が当該薄膜に接触すると、アセトアルデヒド分子のみが薄膜を透過する。薄膜を透過したアセトアルデヒド分子は圧電素子と衝突して、電圧を発生する。
ここで、発生電圧は薄膜を透過したアセトアルデヒド分子の数、すなわちモル濃度に比例するので、当該気体中にアセトアルデヒド分子が存在するか否かのみならず、その濃度も鑑定出来る。
【0019】
或いは、アセトアルデヒドと1:1で反応するセンサは、例えば、半導体等の基板上に複数層形成された金属酸化物層と、該金属酸化物層の表面又は層内に固定化された有機化合物(ホスト化合物)とを備えた構成を有しているものを用いることが出来る。その様なセンサにおける有機化合物(ホスト化合物)は、その空間にアセトアルデヒドを選択的に取り込み(包接し)、係る選択的な取り込み(包接)が進行することにより、アセトアルデヒドが選択的に分離され、検出される。従って、アセトアルデヒドを含有する体液が係るセンサに接触すれば、有機化合物(ホスト化合物)がアセトアルデヒドを選択的に取り込む(包接する)作用が進行して、アセトアルデヒドが選択的に検出されるのである。
この様なセンサに、例えば、水晶振動子の電極に物質が付着すると、その質量に応じて周波数が減少する性質を利用した計測装置(クオーツクリスタルマイクロバランス:QCM)を組み合わせることにより、微量の体液や呼気等の質量と、運転者の体液や運転者から発散される各種気体中に包含されるアセトアルデヒドの質量を検出し、以って、血液中のアルコール濃度を求めることが可能となる。
【0020】
先ず、図1〜図10を参照して第1実施形態を説明する。
図1において、第1実施形態に係る飲酒運転防止装置100は、図示しない車両に設けられている。
飲酒運転防止装置100は、図示しない車両に搭載されているエンジン2と、ドライバーの体臭中に含まれる飲酒した旨を示すアセトアルデヒド及びその濃度を検出するセンサ3と、コントロールユニット4と、解除スイッチ5とを有している。
【0021】
アセトアルデヒドセンサ(以下、「センサ」と記載する)3は、図2に示すように、運転席(ドライバーシート)9において、シートクッション91、シートバック92、ヘッドレスト93の少なくとも一箇所に設けられている。
センサ3は、シートクッション91、シートバック92、ヘッドレスト93の何れか1箇所或いは2個所以上(全箇所を含む)に配置することが出来る。
【0022】
図3において、センサ3はステアリングホイール11に設けられており、さらに変速用シフトレバー12に設けられている。
図示の第1実施形態では、車両はマニュアルモード機能付の自動変速機搭載車両であって、シフトパドル付車両であり、センサ3は、そのシフトパドル13に設けられている。そしてセンサ3は、スイッチ14で総称するエアコン用操作スイッチ、カーオーディオ用操作スイッチ、ナビゲーションシステム用操作スイッチの表面に設けられている。
図4において、運転手席側ドアDの室内側のドアハンドル15にセンサ3が設けられており、また、運転手席側ドアDの室内側に取り付けられたパワーウィンドウ操作用スイッチ16にセンサ3が設けられている。
【0023】
図5は図2のX−X断面矢視図である。図5を参照して、図2において、ドライバーシート9のシートバック92に取り付けられているセンサ3の詳細を説明する。
図5において、シートバック92のドライバーに接する側の表皮92Fには、ドライバーの背中に生じた汗やドライバーの体臭等が透過可能な小孔が、多数設けられている。この小孔が設けられた表皮92Fの内側には、センサ本体3Sを保護するため多孔質部材3Fが埋設してあり、この多孔質部材3Fの更に内側にはセンサ本体3Sが埋設されている。多孔質部材3Fは、例えば、センサ本体3Sに接触する側が適度な柔軟性を有し、比較的脆い材料で構成されたセンサ本体3Sを、その柔軟性によって十分に保護する様になっている。
なお、センサ3は、センサ本体3Sと多孔質部材3Fとで構成されている。
【0024】
シートバック92の表皮92Fに形成された小孔と、多孔質部材3Fの孔を介して、ドライバーの背中に生じた汗や体臭等がセンサ本体3Sに到達する。そして、汗や体臭等に包含されているアセトアルデヒドのみがセンサ3で選択的に検出される。
図5の例では、シートバック92の幅方向(図5では左右方向)の全幅に渡ってセンサ3が配置されている。しかし、シートバック92の幅方向について、部分的にセンサ3を配置しても良い。
【0025】
図6を参照して、ステアリングホイール11に設けられたセンサ3の構造について説明する。
図6はステアリングホイール11の断面を示している。ステアリングホイール11の表面には、全周にわたって、センサ本体3Sが巻き付けられるように取り付けられている。センサ本体3Sの全周には、多孔質部材3Fが巻き付けられている。
この場合においても、センサ本体3Sと多孔質部材3Fにより、センサ3が構成されている。
【0026】
この多孔質部材3Fは、例えば、センサ本体3Sに接触する側が適度な柔軟性を有し、ドライバーの手に触れる側の面は、摩耗しない程度に十分な剛性を有するように形成されている。
そのように多孔質部材を構成することにより、運転操作が正確に行われると共に、センサ本体3Sを十分に保護することが出来る。
【0027】
図6では明示されていないが、ステアリング11にセンサ3を設ける場合、必ずしもホイールの全周にわたって設けることはなく、円周方向に部分的に設けることが可能である。
【0028】
シフトレバー12やシフトパドル13に設けられるセンサ3も、図6で示すのと概略同様な構成を具備している。
また、ドアハンドル15(図4参照)に設けられるセンサ3も、図6で示すのと概略同様な構成を具備している。
【0029】
図7を参照して、スイッチ14の表面に設けられたセンサ3の構造について説明する。上述した様に、「スイッチ14」なる文言は、エアコン用操作スイッチ、カーオーディオ用操作スイッチ、ナビゲーションシステム用操作スイッチを包括的に表現している。
図7は、例えば、オーディオ機器操作用のスイッチ14の表面に取り付けたセンサ3の構成を示している。
オーディオ機器操作用のスイッチ14の表面には、センサ本体3Sが貼り付けられ、その上面には多孔質部材3Fが被覆されている。多孔質部材3Fの構成は図5を参照して説明したのと同様であり、その表面には多くの小孔が形成され、手の指との接触が頻繁に行われても摩耗しないように、カバー部材(例えばフィルム)3Cで被覆されている。
【0030】
ここで、多孔質部材3Fは、孔を形成する前の素材の段階でカバー部材3Cと積層され、シート状にされた後に多数の小孔を打ち抜いて製造する事が可能である。
なお、図4で示すパワーウィンドウ操作用スイッチとナビゲーションシステム用操作スイッチに設けられるセンサ3も、図7で説明したのと概略同様な構成を具備している。
【0031】
図1において、コントロールユニット4は、センサ3からの検出信号に基づいて、ドライバーが飲酒又は酒気帯びであるか否かを判断する様に構成されている。そして解除スイッチ5は、コントロールユニット4が「ドライバーが飲酒又は酒気帯びである」と判断して運転操作を禁止する制御を行う場合に、コントロールユニット4の禁止命令を解除することが出来る機能を有している。
【0032】
コントロールユニット4は、比較回路41と、判定回路42と、記憶装置であるデータベース43とを有している。比較回路41は、センサ3からの出力信号を受信し、その受信した信号に含まれる情報とデータベース43に記憶されたデータ(飲酒運転又は酒気帯び運転であるか否かの境界を示す体液中のアセトアルデヒド濃度:閾値)とを比較し、その比較結果を判定回路42に送る。
判定回路42は、比較回路から送られた比較結果に基づいて、ドライバーが飲酒又は酒気帯びに該当するか否かを判定する。そして、飲酒又は酒気帯びに該当する場合には、エンジン2に停止する制御信号、例えば、エンジン2の図示しないインジェクションポンプからの燃料噴射を禁止する制御信号、を発信する。
【0033】
センサ3は、上述したように、アセトアルデヒドを選択的に検出することが出来るセンサ(アセトアルデヒドと1:1で反応するセンサ)であり、アセトアルデヒドが存在するか否かのみならず、その濃度も計測可能である様に構成されている。
【0034】
ドライバーの体液は、例えば汗として、ドライバーの掌や手の指から直接ドライバー周辺の操作系機器(図3〜図7参照)に接触する。ドライバーの呼気や体臭等についても同様である。
ドライバーの着衣の量(厚み)や種類によって、ドライバーの汗(体液)が、衣類を透過し難く、センサ3に接触し難い場合がある。その様な場合であっても、シートクッション91、シートバック92、ヘッドレスト93の複数個所にセンサ3を設ければ、ドライバーの汗がセンサ3に接触する確率が増加する。同様に、ドライバーの呼気や体臭がセンサ3に接触する確率も増加する。
【0035】
また、ドライバーシートのみならず、操作系機器(図3〜図7参照)に取り付けたセンサ3から、直接、ドライバーの汗やドライバーの呼気や体臭を、センサ3に接触させることが出来る。
そして、着衣とは無関係にドライバーの汗をセンサ3に接触させて、汗に含まれるアセトアルデヒドの濃度を計測することにより、或いは、ドライバーの呼気や体臭に含まれるアセトアルデヒドの濃度を計測することにより、ドライバーが酩酊して危険な状態にあるか否かを検知することが出来る。
【0036】
なお、操作系機器に設けるセンサ3は、上述のように、ステアリングホイール11、変速用シフトレバー12、シフトパドル13、スイッチ14(エアコン用操作スイッチ、カーオーディオ用操作スイッチ、ナビゲーションシステム用操作スイッチ)、ドアハンドル15、パワーウィンドウ操作用スイッチ16の何れか1つにのみ設けても良いし、2つ以上の機器(全ての機器に設ける場合を含む)に設けても良い。
【0037】
上述したように、コントロールユニット4は、センサ3の出力信号電圧を、データベース43に記憶されている閾値と比較し(比較回路41)、閾値以上のアセトアルデヒド濃度であるか否かを決定し(判定回路42)、ドライバーの体液やドライバーが発する気体中のアセトアルデヒド濃度が閾値以上の場合には、自動車のエンジン2に制御信号を発生して、始動を妨げる様に構成されている。
【0038】
解除スイッチ5は、閾値以上のアセトアルデヒド濃度が検出されても、自動車のエンジン2の始動を可能とするための装置である。
詳細については、図10を参照して後述する。
【0039】
図8は、第1実施形態における作用を示した制御フローチャートである。
図8のステップS1において、コントロールユニット4は、図2〜図7で説明した各センサ3により、ドライバーの体液やドライバーが発する気体からアセトアルデヒドを検出したか否かを判断する。
ドライバーの体液やドライバーが発する気体からアセトアルデヒドを検出したならば(ステップS1がYES)、ステップS2に進む。
アセトアルデヒドを検出しない場合には(ステップS1がNO)、ステップS5でエンジンを作動可能にして、ステップS6へ進む。
【0040】
ドライバーの体液やドライバーが発する気体からアセトアルデヒドを検出した場合に(ステップS1がYES)、ステップS2において、アセトアルデヒド濃度が所定値以上か否かを判断する。アセトアルデヒド濃度が所定濃度以上であれば(ステップS2がYES)、ステップS3に進む。
アセトアルデヒド濃度が所定濃度未満であれば(ステップS2がNO)、ステップS5でエンジン作動可能にして、ステップS6まで進む。
【0041】
アセトアルデヒド濃度が所定濃度以上の場合(ステップS2がYES)、ステップS3において、コントロールユニット4はエンジンが作動しているか否かを判断する。
エンジンが作動していれば(ステップS3がYES)、ステップS4に進む。ステップS4において、コントロールユニット4は、エンジンを停止させる。
一方、エンジンが作動していなければ(ステップS3がNO)、ステップS6に進む。
【0042】
ステップS6では、制御を終了するか否かを判断する。制御を終了するのであれば(ステップS6がYES)、そのまま「エンド」となる。
一方、図示の第1実施形態に係る制御を続行するのであれば(ステップS6がNO)、ステップS1まで戻り、再びステップS1以降を繰り返す。
【0043】
上述したステップS4において、エンジン2を停止し、或いは始動を妨げる具体的な手法としては、例えば、
図示しないガバナ等を制御して、エンジン2への燃料供給を遮断する、
図示しない点火系への電流供給を遮断する、
図示しないスタータモータへの電流供給を遮断する、
図示しないトランスミッションを制御して、いわゆる「ニュートラル(N)」位置や「パーキング位置(P)」以外にはギヤが入らない様にする、
図示しないサイドブレーキが解除されない様にする、
図示しないイグニッションキーが回動しないようにする、
等が可能である。
【0044】
ここで、アセトアルデヒドが検出された場合でも、エンジン2が作動していなければ、飲酒運転が行われる恐れがないので、ステップS4の制御(エンジン2を停止する制御)は行なう必要が無い。そのため、ステップS3において、エンジンが作動していないと判断される(ステップS3がNO)場合には、ステップS4がバイパスされている。
ステップS3において、エンジンが作動しているか否かの判定に代えて、車速がゼロであるか否かを判定しても良い。車速がゼロであれば車両は停止しているので、車両の危険な走行は行なわれず、それに起因した事故は発生しない。そのため、車速がゼロの場合も、ステップS4におけるエンジンを停止する制御を行なう必要はない。
【0045】
「アセトアルデヒド濃度が所定濃度(閾値)以上であるか否か?」を判定するステップS2では、例えば図9で示す様に、経時的に変化するアセトアルデヒド濃度(線Lγ)の瞬間値(ピーク値)が閾値Lsを超えた場合には、「YES」と判定する。
危険防止の観点から、血中アルコール濃度が閾値を越えた可能性がある場合は、全て「エンジン停止」(ステップS4)の制御を行なうことが適切だからである。
【0046】
ここで、同乗者は飲酒していてもドライバーは飲酒をしていないが、同乗者の体液や呼気等に含まれるアセトアルデヒドがセンサ3によって検出されてしまった場合や、事故の被害者や突発的に発病した患者を病院に搬送するため、飲酒をしたにも拘らず自動車を運転して患者を病院に搬送しなければならない場合等において、エンジンが停止して自動車が発進出来なくなってしまうことは不都合である。
係る不都合を解消するために、解除スイッチ5は設けられている。
【0047】
図10を参照して、上述した解除スイッチ5の作用について説明する。
図10で示されている様に、解除スイッチ5を作動させると、センサ3が所定濃度以上のアセトアルデヒドを検知しても、図8で示すステップS4における「エンジン停止」の制御は行なわれなくなる。
【0048】
図10において、ステップS11では、コントロールユニット4は解除スイッチがONであるか否かを判断する。解除スイッチがONであれば(ステップS11がYES)、ステップS12に進む。一方、解除スイッチがONでなければ、ステップS11が「NO」のループを繰り返す。
【0049】
ステップS12では、解除スイッチ5をONにした日時をデータベース43に記憶し、ステップS13では、図8のステップS4の処理を解除して、制御を終了する。
【0050】
解除スイッチ5をONにした日時をデータベース43に記憶することによって、解除スイッチ5をONにした状態で事故が発生した場合に、解除スイッチ5が異常作動したのではない旨を明らかにすることが出来る。換言すれば、酩酊状態の者が故意に解除スイッチ5を作動させてしまった場合に、その旨を記録しておくことにより、その者が事故を起こした場合に、「解除スイッチが勝手に作動してしまった」等と抗弁することを事前に防止することが出来るのである。
【0051】
解除スイッチ5は、運転席から離隔した箇所に設けられていることが好ましい。すなわち、解除スイッチ5は、ドライバーが操作し難い箇所に配置されていることが好ましい。例えば、後部シートの下側や、トランクの内部に設置することが好適である。
上述した様に、解除スイッチ5は、非常時に作動されるべきものである。運転席から操作し易い位置に解除スイッチ5を配置すれば、例示した様な非常時に該当しないにも拘らず、飲酒したドライバーが操作して、車両を運転してしまう可能性が存在する。係る事態を排除するため、解除スイッチ5は、ドライバーが操作し難い箇所に配置されていることが好ましいのである。
【0052】
図10において、ステップS4(図8)の処理を解除して、自動車を発進可能にせしめた後、一定条件を満たした場合には、図10のステップS13の処理を解除して、再び図8のステップS4の処理を有効ならしめるのが好ましい。
上述した様に、解除スイッチ5を操作してドライバーが飲酒していてもエンジンを停止しないという制御は、あくまでも非常事態に対処するため限定的に発動する制御であり、非常事態に該当しない通常時においては、係る制御(図10のステップS13)は解除して、図8の制御が優先されるべきだからである。
【0053】
そして、一定条件を満たした場合(例えば、一定時間を経過した場合)には、図10のステップS13の処理を解除して、再び図8のステップS4の処理を有効ならしめる様にすれば、酩酊状態にある者が故意に解除スイッチ5を操作しても、一定時間を経過するとエンジンが停止するので、酩酊状態のドライバーが長時間の運転を行なうという危険な事態が防止される。
上述の一定条件(図8のステップS4の処理が再び有効となる条件)としては、「所定の時間が経過する」に加えて、例えば、「エンジンが停止した」、「車速がゼロの状態が所定回数以上発生した」等の条件が考えられる。
【0054】
次に、図11、図12を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。
図11、図12の第2実施形態では、解除スイッチ5が作動している場合の作用と、それに関連する構成について、第1実施形態とは異なっている。但し、解除スイッチ5が作動していない場合については、第2実施形態は第1実施形態と同様に機能する。
図11、図12の第2実施形態では、ドライバーの体液やドライバーの発する気体から所定濃度以上のアセトアルデヒドを検知した場合において、解除スイッチ5が作動しており、且つ、自動車が走行している(車速≠0)場合には、当該車両において「飲酒運転が為されている」旨の表示が為されると共に、「飲酒運転が為されている」旨が、無線LAN等を介して、警察署等の所轄機関に対して通報される様に構成されている。
【0055】
図11において、第2実施形態に係る飲酒運転防止装置102は、エンジン2を備えた自動車1に、第1実施形態で説明されたセンサ3と、コントロールユニット4と、解除スイッチ5とが設けられている。そして、自動車1は、飲酒運転信号発生手段6と、表示手段7とを備えている。
飲酒運転信号発生手段6は、発信用アンテナ61を有している。
【0056】
図12に基づいて、第2実施形態における作用について説明する。
図12において、ステップS21では、コントロールユニット4は、センサ3により、ドライバーの汗や体臭等からアセトアルデヒドが検出されたか否かを判断する。
アセトアルデヒドを検出したならば(ステップS21がYES)ステップS22に進む。アセトアルデヒドを検出しなければ(ステップS21がNO)、ステップS24に進み、エンジンを作動可能ならしめ、ステップS29まで進む。
【0057】
ステップS22では、ドライバーの体液やドライバーの発する気体におけるアセトアルデヒド濃度が所定値以上か否かを判断する。
ドライバーの体液やドライバーの発する気体におけるアセトアルデヒド濃度が所定濃度以上であれば(ステップS22がYES)ステップS23に進む。
所定濃度未満であれば(ステップS22がNO)、ステップS24に進み、エンジンを作動可能ならしめ、ステップS29まで進む。
【0058】
ステップS23では、コントロールユニット4は、解除スイッチ5がONかOFFかを判断する。
解除スイッチ5がONであれば(ステップS23がYES)ステップS25に進み、解除スイッチ5がOFFであれば(ステップS23がNO)、ステップS27に進む。
【0059】
ステップS25では、コントロールユニット4は、車速が0ではないか否か、すなわち自動車1が走行しているか否かを判断する。
車速が0でなければ(ステップS25がYES)、すなわち自動車1が走行していれば、ステップS26で表示手段6を作動させ、飲酒信号発生手段6から飲酒信号を発信した後、ステップS29に進む。
【0060】
ステップS26において、表示手段6で「飲酒運転が為されている」旨の表示が為されれば、当該自動車の近傍を走行しているその他の車両のドライバーに、危険運転を行なう可能性がある旨を警告する事が出来るので、その他の車両のドライバーは飲酒運転に巻き込まれて事故に遭遇することがない様に、危険を予測して走行することが可能となる。
それと共に、ステップS26において、「飲酒運転が為されている」旨が、無線LAN等を介して、警察署等の所轄機関に対して通報されるので、警察車両は当該自動車を早期に停止せしめて、飲酒運転による事故を防止出来る。
例えば突発的な事故や疾病のため、飲酒した者が運転して被害者や急病人を搬送しなければならない場合には、無線LAN等を介して通報を受けた警察署等の所轄機関は、警察車両等に被害者や病人を移動して搬送し、或いは、警察車両で当該飲酒運転中の車両を先導して、事故の発生を抑制しつつ医療機関に搬送することが可能となる。
【0061】
車速が0であり(ステップS25がNO)、自動車1が走行していなければ、飲酒運転は行われておらず、危険性は少ないと判断して、ステップS26をバイパスして、表示手段6を作動させず、飲酒信号発生手段6から飲酒信号を発信せずに、ステップS29に進む。
【0062】
解除スイッチ5がOFFの場合(ステップS23がNO)、ステップS27において、コントロールユニット4は、車速が0でないか否か、すなわち自動車1が走行しているか否かを判断する。
車速が0でなければ(ステップS27がYES)、すなわち自動車1が走行しているのであれば、ステップS28でエンジン2を停止する制御を行い、ステップS29に進む。
一方、車速が0であり(ステップS27がNO)、自動車1が走行していなければ、飲酒運転は行われておらず、危険性は少ないと判断して、ステップS28をバイパスし、エンジンを停止させずにステップS29に進む。
【0063】
ステップS29では、コントロールユニット4は、制御を終了するか否かを判断する。
制御を続けるのであれば(ステップS29がNO)、ステップS21まで戻り、再びステップS21以降を繰り返す。
【0064】
図11、図12の第2実施形態によれば、酩酊状態のドライバーが解除スイッチ5を操作して自動車1を運転している場合に対して、適切に対処することが出来る。
すなわち、酩酊状態のドライバーが解除スイッチ5を操作して、自動車1を走行させてしまった場合には、コントロールユニット4から飲酒運転信号発信手段6に、飲酒運転である旨が出力され、自動車1の後部に取り付けられた表示手段7には飲酒運転中である旨の表示がなされる。そのため、当該自動車1の近傍を走行している他の自動車のドライバーが、当該自動車1が飲酒運転中であることを認識することが出来る。
【0065】
また、飲酒運転信号発信手段6のアンテナ61から、最寄りの警察署8に飲酒運転である旨の信号が発信されるので、飲酒運転である旨の信号を受信した警察署は、当該自動車1に警察官を派遣して、走行停止を命じる等の措置を取る事が可能となる。
その結果、飲酒運転による悲惨な事故を積極的に防止し、飲酒者に対して飲酒運転を抑制することが出来る。
【0066】
なお、同乗者は飲酒していてもドライバーは飲酒をしていない場合や、同乗者が何らかの理由によってアセトアルデヒドを発散している場合等は、解除スイッチ5を操作することが適正と考えられる。この様な場合において、警察署8に連絡をされたとしても、警察官に停車を命じられて職務質問をされた際に、ドライバーが事情を正確に説明すれば、ドライバーに不利益を生じることはない。
図11、図12の第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果については、図1〜図10で説明した第1実施形態と同様である。
【0067】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない旨を付記する。
例えば、図示の実施形態はアセトアルデヒドを指示物質として例示しているが、指示物質としては、エチルアルコールや、その他の化合物等を選択する事が可能である。そして、指示物質として例えばエチルアルコールを選択する場合には、図示の実施形態におけるセンサとしては、エチルアルコールと1:1の関係で感応するセンサを用いる。
また、センサとして、水晶振動子表面に有機化合物を吸着した薄膜センサを用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第1実施形態のブロック図。
【図2】第1実施形態において、運転席におけるセンサの配置を説明する図。
【図3】第1実施形態において、ステアリングホイール周辺におけるセンサの配置を説明する斜視図。
【図4】第1実施形態において、運転席側ドア内側におけるセンサの配置を説明する図。
【図5】図2のX−X断面矢視図
【図6】第1実施形態において、ステアリングホイールに取り付けられたセンサの断面図。
【図7】第1実施形態において、オーディオ機器操作用のスイッチの表面に取り付けたセンサ3の断面図。
【図8】第1実施形態の制御フローチャートを示す図。
【図9】アセトアルデヒド濃度と経過時間との特性の1例を示す図。
【図10】第1実施形態において、解除スイッチによる制御フローチャートを示す図。
【図11】本発明の第2実施形態のブロック図。
【図12】第2実施形態の制御フローチャートを示す図。
【符号の説明】
【0069】
1・・・自動車
2・・・エンジン
3・・・センサ
4・・・制御手段/コントロールユニット
5・・・解除スイッチ
6・・・飲酒運転信号発信手段
7・・・表示手段
41・・・比較回路
42・・・判定回路
43・・・データベース
100・・・飲酒運転防止装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の運転席(9)及び運転席周辺の操作系(11〜16)に配置されたセンサ(3)と、制御手段(4)とを有し、前記センサ(3)は運転席に座着した者の発する指示物質の濃度を検出する機能を有しており、該指示物質は血中にエチルアルコールが存在することを示す物質であり、前記制御手段(4)は、センサ(3)で検出された前記指示物質の濃度と閾値とを比較して、前記指示物質の濃度が閾値以上である場合には自動車を発進不能とする制御を行なう機能を有することを特徴とする飲酒運転防止装置。
【請求項2】
前記運転席周辺のセンサ(3)の配置される操作系は、ステアリングホイール(11)と、シフトレバー(12)と、カーオーディオ用、エアコン用、及びナビゲーションシステム用操作スイッチ(14)と、運転席側室内ドアハンドル(15)と、運転席側パワーウィンドウスイッチ(16)の内の何れかである請求項1の飲酒運転防止装置。
【請求項3】
前記指示物質の濃度が閾値以上であっても自動車を発進可能とする操作手段(5)を有しており、前記制御手段(4)は、前記操作手段(5)が作動した場合には、自動車を発進不能とする制御を行なわない機能を有する請求項1、2の何れかの飲酒運転防止装置。
【請求項4】
前記操作手段(5)を作動させて自動車を発進させた場合に、運転者の体から発せられる前記指示物質の濃度が閾値以上である旨を表示する表示手段(7)を有する請求項3の飲酒運転防止装置。
【請求項5】
前記操作手段(5)を作動させて自動車を発進させた場合に、運転者の体から発せられる前記指示物質の濃度が閾値以上である旨の無線信号を車両外部へ発信する機能を有している請求項3、4の何れかの飲酒運転防止装置。
【請求項1】
自動車の運転席(9)及び運転席周辺の操作系(11〜16)に配置されたセンサ(3)と、制御手段(4)とを有し、前記センサ(3)は運転席に座着した者の発する指示物質の濃度を検出する機能を有しており、該指示物質は血中にエチルアルコールが存在することを示す物質であり、前記制御手段(4)は、センサ(3)で検出された前記指示物質の濃度と閾値とを比較して、前記指示物質の濃度が閾値以上である場合には自動車を発進不能とする制御を行なう機能を有することを特徴とする飲酒運転防止装置。
【請求項2】
前記運転席周辺のセンサ(3)の配置される操作系は、ステアリングホイール(11)と、シフトレバー(12)と、カーオーディオ用、エアコン用、及びナビゲーションシステム用操作スイッチ(14)と、運転席側室内ドアハンドル(15)と、運転席側パワーウィンドウスイッチ(16)の内の何れかである請求項1の飲酒運転防止装置。
【請求項3】
前記指示物質の濃度が閾値以上であっても自動車を発進可能とする操作手段(5)を有しており、前記制御手段(4)は、前記操作手段(5)が作動した場合には、自動車を発進不能とする制御を行なわない機能を有する請求項1、2の何れかの飲酒運転防止装置。
【請求項4】
前記操作手段(5)を作動させて自動車を発進させた場合に、運転者の体から発せられる前記指示物質の濃度が閾値以上である旨を表示する表示手段(7)を有する請求項3の飲酒運転防止装置。
【請求項5】
前記操作手段(5)を作動させて自動車を発進させた場合に、運転者の体から発せられる前記指示物質の濃度が閾値以上である旨の無線信号を車両外部へ発信する機能を有している請求項3、4の何れかの飲酒運転防止装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−269431(P2009−269431A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120084(P2008−120084)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(501048930)株式会社シームス (34)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(501048930)株式会社シームス (34)
【Fターム(参考)】
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