説明

駆動伝達装置、定着装置及び画像形成装置

【課題】回転運動変換機構と駆動ユニットとを備え、回転運動変換機構の軸部材に撓みが生じても、経時に渡って安定して回転駆動を回転軸に直交する方向の運動に変換することが出来る駆動伝達装置、並びにこの駆動伝達装置を備えた定着装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】駆動伝達装置300は、本体フレーム11に回転可能に支持されたカム軸13の回転運動をカム軸13に直交する方向の運動に変換する接離機構200と、カム軸13の入力軸カップリング8に対して出力軸カップリング6から回転駆動を伝達する駆動ユニット210とを有し、入力軸カップリング8の本体フレーム11に対する位置が変位したときに、駆動ユニット210が入力軸カップリング8に合わせて変位できるように、駆動ユニット210は、本体フレーム11に対して自由度を有するように弾性ジョイント部材12を介して保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置に適用可能な駆動伝達装置に関するものである。詳しくは、軸部材の回転運動を該軸部材の回転軸に直交する方向の運動に変換する回転運動変換機構と、この回転運動変換機構の軸部材に回転駆動を伝達する駆動ユニットとを有する駆動伝達装置、並びに、これを備えた定着装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置として、駆動ユニットの駆動モータが出力する回転運動を回転運動変換機構によって回転軸に直交する方向の運動に変換して部材の位置を移動させる駆動伝達装置を備えたものが知られている。例えば、定着ローラに加圧ローラが当接する定着装置で、当接対象である定着ローラに対して当接部材である加圧ローラの距離を変化させる接離機構として、回転運動変換機構であるカム機構を用いた駆動伝達装置を備えた構成が知られている(特許文献1等)。
【0003】
ここで、定着ローラに対して加圧ローラの距離を変化させる接離機構を備えた従来の駆動伝達装置の一例を図3、図7及び図8を用いて説明する。
図3は、定着装置90が備える加圧ローラ10の定着ローラ91に対する当接状態を制御する駆動伝達装置300を加圧ローラ10の回転軸に平行な方向から見た正面図である。図7は、従来の駆動伝達装置300を図3中の矢印D方向から見た上面図である。また、図8は、図3中の矢印Eで示す側面方向から見たときの従来の駆動伝達装置300による加圧ローラ10の接離動作を説明する模式図である。図8(a)は、加圧ローラ10による定着ローラ91に対する加圧を解除した脱圧状態を示す模式図であり、図8(b)は、加圧ローラ10を定着ローラ91に対して加圧して当接させた加圧当接状態を示す模式図である。
【0004】
駆動伝達装置300は、定着ローラ91に対して加圧ローラ10の距離を変化させる接離機構200と、接離機構200に駆動を伝達する駆動ユニット210とを備える。
接離機構200は、加圧ローラ10と、加圧ローラ10と一体的に移動するアーム9を加圧するカム7と、カム7が固定された軸部材であるカム軸13とを有し、駆動ユニット210は、カム軸13に回転駆動を伝達する構成である。カム軸13は、プリンタ100または定着装置90の装置本体の筺体である本体フレーム11に対して、カム軸受13aを介して軸支されている。
また、カム軸13とともに回転するカム7は、その回転中心からの距離が異なる外周面上で回転中心からの距離が最も長い、カム凸部7aがアーム9と当接することでアーム9を加圧し、アーム9を介して加圧ローラ10を定着ローラ91に向けて加圧する構成となっている。
図7に示すように、駆動ユニット210は、駆動モータ1からの駆動力は、モータ軸1sに固定されたモータギヤ1gから二つの駆動伝達ギヤ2(第一駆動伝達ギヤ2a、第二駆動伝達ギヤ2b)を介して、第二駆動伝達ギヤ2bが固定された出力軸3に伝達される。
駆動ユニット210は、駆動モータ1が固定されたユニット筺体14を備え、第一駆動伝達ギヤ2aの回転軸は不図示の軸受を介し、出力軸3は出力軸受3aを介して、ユニット筺体14に対して位置が固定されている構成となっている。また、ユニット筺体14が固定ネジ15によって本体フレーム11に固定されているため、駆動ユニット210は本体フレーム11に対する位置が固定されている。
【0005】
図7及び図8に示すように、駆動伝達ギヤ2に対してユニット筺体14を挟んで反対側の出力軸3の端部には、圧縮コイルバネ5によって、挿抜可能な出力軸カップリング6を設けている。
接離機構200は、駆動ユニット210からの駆動力を入力する部位に入力軸カップリング8を有し、入力軸カップリング8はカム軸13の一端部に固定されている。入力軸カップリング8が出力軸カップリング6に嵌合した状態で、駆動モータ1が駆動すると、その駆動力が出力軸3、出力軸カップリング6及び入力軸カップリング8を介してカム軸13に回転駆動が伝達され、カム7が回転する。
【0006】
図3に示す状態では、カム7の外周面上のカム凸部7aとは異なる箇所がアーム9と接触しており、この状態ではカム7からアーム9に対して加圧力は働いておらず、図8(a)で示すように脱圧状態である。
図3に示す脱圧状態から駆動モータ1が駆動し、カム7が回転することによって、カム7の外周面上のアーム9と接する位置が変化し、カム凸部7aがアーム9と接する位置となると、図8(b)中の矢印Bで示すように、カム7がアーム9を加圧して持ち上げる。アーム9が持ち上げられることによって、加圧ローラ10も持ち上げられ、定着ローラ91に対する加圧ローラ10の距離が近くなり、加圧ローラ10が定着ローラ91に対して加圧して当接する加圧当接状態となる。この加圧当接状態で、駆動モータ1を停止することで、加圧ローラ10と定着ローラ91との当接部に定着ニップが形成された状態を維持できる。
一方、加圧当接状態から駆動モータ1が駆動し、カム7が回転することによって、カム凸部7a以外のカム7の外周面上の位置がアーム9と接する位置となると、カム7がアーム9を持ち上げる加圧が解除され脱圧状態となる。カム7による加圧が解除されると、定着ローラ91から加圧ローラ10に働く反力や重力によって加圧ローラ10が下方に下がり、定着ローラ91に対する加圧ローラ10の距離が遠くなる。
この定着装置90ではカム機構を用いることによって、駆動モータ1が出力する回転運動を、加圧ローラ10を定着ローラ91に対して接離する運動に変換し、駆動モータ1の駆動を制御することによって、加圧ローラ10と定着ローラ91との当接状態を制御することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図8(a)に示す脱圧状態からカム7を回転させて加圧当接状態とすると、カム7がアーム9を加圧し、加圧ローラ10が定着ローラ91を加圧することで、定着ローラ91からの反力が加圧ローラ10やアーム9を介してカム7に作用する。このため、カム軸13は、図9で示すように、軸方向両端を本体フレーム11に支持された状態でカム7を固定した位置に矢印Aで示す力が加わることになる。カム7の位置に力が加わることでカム軸13に撓みが生じ、軸方向における二つの本体フレーム11に挟まれた範囲は矢印A方向に変位し、軸方向における本体フレーム11よりも外側の範囲は矢印A方向の反対方向(図9中の矢印C方向)に変位する。
このため、カム軸13の本体フレーム11よりも外側の端部に固定された入力軸カップリング8は矢印C方向に変位するとともに、その回転軸の角度も変化する。このとき、駆動ユニット210は本体フレーム11に対して固定されてため、図9に示すように、入力軸カップリング8と出力軸カップリング6との嵌合部では、入力軸カップリング8と出力軸カップリング6との回転中心の位置がずれ、さらに、入力軸カップリング8と出力軸カップリング6との回転軸の角度もずれてしまう。このような回転中心の位置や回転軸の角度にずれが発生すると、出力軸カップリング6に対して偏荷重がかかり、出力軸3に高負荷がかかるとともに、回転させるとねじりモーメントが加わる。この状態で、出力軸3に回転駆動を伝達し続けると、出力軸3が曲がる不具合が生じるおそれがある。さらに、偏荷重の状態でカップリングでの駆動の伝達を続けると、カップリングを構成するギヤが摩耗し、破損してしまうおそれがある。
【0008】
このような問題は、接離機構が接離を行う部材が加圧ローラのように、当接対象である定着ローラに加圧当接させたときに大きな反力が作用する接離機構を備えた駆動伝達装置の場合に顕著である。しかし、接離動作によって軸部材に反力が作用する接離機構を備えた駆動伝達装置であれば同様の問題は生じ得る。
さらに、接離機構に限らず、軸部材の回転運動を該軸部材の回転軸に直交する方向の運動に変換する回転運動変換機構を備える駆動伝達装置であれば、回転軸に直交する方向の運動に対する反力が軸部材に作用し、同様の問題が生じ得る。例えば、バネで付勢された部材をカム機構等の回転運動変換機構によってバネの付勢力に抗する方向に移動させる機構では、バネの付勢力が反力として作用し、同様の問題が生じ得る。
【0009】
また、このような問題は、駆動ユニットから回転運動変換機構へ駆動を伝達する構成が出力軸と軸部材とのカップリングに限るものではない。例えば、軸部材に固定された歯車に駆動ユニット内の歯車によって駆動を伝達する駆動伝達装置でも生じ得る。すなわち、回転駆動を駆動ユニットの駆動出力部から軸部材の駆動入力部へ伝達する駆動伝達装置であれば、駆動出力部と駆動入力部との回転中心同士の位置関係や回転軸同士の傾きにずれが生じることで、駆動出力部または駆動入力部に破損が生じることは起こり得る。そして、駆動ユニットの駆動出力部または回転運動変換機構の駆動入力部に破損が生じると、回転駆動を回転軸に直交する方向の運動に変換することが出来なくなる。
【0010】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、回転運動変換機構と駆動ユニットとを備え、回転運動変換機構の軸部材に撓みが生じても、経時に渡って安定して回転駆動を回転軸に直交する方向の運動に変換することが出来る駆動伝達装置、並びにこの駆動伝達装置を備えた定着装置及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、装置本体の本体フレームに回転可能に支持された軸部材の回転運動を該軸部材の回転軸に直交する方向の運動に変換する回転運動変換機構と、上記本体フレームに保持され、該軸部材に固定された駆動入力部に対して駆動出力部から回転駆動を伝達する駆動ユニットとを有する駆動伝達装置において、上記駆動入力部の上記本体フレームに対する位置が変位したときに、上記駆動ユニットが該駆動入力部の変位に合わせて変位できるように、該駆動ユニットは、上記本体フレームに対して自由度を有するように保持されていることを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の駆動伝達装置において、上記回転運動変換機構は、上記軸部材に固定されたカム部材を有するカム機構であることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1または2の駆動伝達装置において、上記駆動ユニットは、駆動出力部として、駆動源からの回転駆動の伝達を受けて回転する出力軸と該出力軸の端部に固定された出力軸カップリングとを備え、上記回転運動変換機構は、上記駆動入力部として入力軸カップリングを備え、該出力軸カップリングと該入力軸カップリングとが嵌合することにより、該駆動ユニットの該駆動源から上記回転運動変換機構の該軸部材まで回転駆動を伝達する構成であることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の駆動伝達装置において、上記駆動ユニットを上記本体フレームに対して保持する保持部材が、弾性部材であることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項4の駆動伝達装置において、上記弾性部材はゴム材料からなる部材であることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項4の駆動伝達装置において、上記弾性部材はコイルバネであることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の駆動伝達装置において、上記回転運動変換機構は、上記軸部材の回転軸に直交する方向の運動が伝達されることによって当接対象に対する距離が変化する当接部材を有する接離機構であることを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、二つの表面移動体を加圧当接させて定着ニップを形成し、未定着画像を表面に担持する記録媒体が該定着ニップを通過することによって該記録媒体上に該未定着画像を定着させる定着装置において、上記二つの表面移動体の一方を当接部材として当接対象である他方の表面移動体に対して接離する接離機構を備えた駆動伝達機構として請求項7の駆動伝達装置を用いることを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、記録媒体上に画像を形成する画像形成装置において、回転駆動する駆動源の回転運動を回転運動とは異なる運動に変換し、装置を構成する部材の移動を制御する駆動伝達機構として、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の駆動伝達装置を用いることを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、記録媒体上に未定着画像を形成する画像形成手段と、該記録媒体上に該未定着画像を定着せしめる定着手段とを備える画像形成装置において、該定着手段として、請求項8に記載の定着装置を用いることを特徴とするものである。
【0012】
本発明においては、駆動ユニットが本体フレームに対して自由度を有するように保持されており、回転運動変換機構の軸部材に固定された駆動入力部の本体フレームに対する位置が変位したときに、駆動ユニットが駆動入力部の変位に合わせて変位できる構成となっている。このため、回転運動変換機構の軸部材に撓みが生じることで、軸部材に固定された駆動入力部の本体フレームに対する位置が変位すると、駆動ユニットも駆動入力部が変位する方向と同方向に移動する。
駆動ユニットが移動することで、駆動ユニットが備える駆動出力部が駆動入力部との位置関係を維持することができ、駆動出力部と駆動入力部との回転中心同士の位置関係や回転軸同士の傾きにずれが生じること抑制することができる。これにより、駆動出力部または駆動入力部に破損が生じることを抑制することが出来る。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、回転運動変換機構の軸部材に撓みが生じても、駆動出力部または駆動入力部に破損が生じることを抑制することができるので、経時に渡って安定して回転駆動を回転軸に直交する方向の運動に変換することが出来るという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態の駆動伝達装置による接離動作を説明する模式図、(a)は、加圧当接状態を示す模式図、(b)は、脱圧状態を示す模式図。
【図2】本実施形態に係るプリンタの概略構成図。
【図3】本実施形態の定着装置が備える駆動伝達装置の正面図。
【図4】本実施形態の駆動伝達装置の上面図。
【図5】本実施形態の駆動伝達装置の駆動ユニットが移動する状態の説明図。
【図6】駆動ユニットの保持部材としてコイルバネを用いた構成の駆動伝達装置の上面図。
【図7】従来の接離機構と駆動ユニットとの上面図。
【図8】従来の駆動伝達装置による接離動作を説明する模式図、(a)は、加圧当接状態を示す模式図、(b)は、脱圧状態を示す模式図。
【図9】従来の駆動伝達装置で軸部材に撓みが生じた状態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のカラーレーザープリンタ(以下、単にプリンタ100という)の一実施形態について説明する。
プリンタ100は、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色の画像を形成するための4組のプロセスカートリッジ18(Y,M,C,K)からなる画像形成ユニット20を備えている。各符号の数字の後に付されたY,M,C,Kは、イエロー、シアン、マゼンダ、ブラック用の部材であることを示している(以下同様)。プロセスカートリッジ18(Y,M,C,K)の他には、光書込ユニット21、中間転写ユニット80、二次転写装置22、レジストローラ対49、ベルト定着方式の定着装置90などが配設されている。
【0016】
光書込ユニット21は、図示しない光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラーなどを有し、画像データに基づいて感光体40の表面にレーザ光を照射する。
【0017】
プロセスカートリッジ18(Y,M,C,K)は、ドラム状の感光体40、帯電器32、現像装置31、ドラムクリーニング装置33、不図示の除電器などを有している。
【0018】
以下、イエロー用のプロセスカートリッジ18について説明する。
帯電手段たる帯電器32Yによって、感光体40Yの表面は一様帯電される。帯電処理が施された感光体40Yの表面には、光書込ユニット21によって変調及び偏向されたレーザ光が照射される。すると、照射部(露光部)の電位が減衰する。この減衰により、感光体40Yの表面にY用の静電潜像が形成される。形成されたY用の静電潜像は現像手段たる現像装置31Yによって現像されてYトナー像となる。
Y用の感光体40Y上に形成されたYトナー像は、後述の中間転写ベルト110に一次転写される。一次転写後の感光体40Yの表面は、ドラムクリーニング装置33Yによって転写残トナーがクリーニングされる。
Y用のプロセスカートリッジ18Yにおいて、ドラムクリーニング装置33Yによってクリーニングされた感光体40Yは、不図示の除電器によって除電される。そして、帯電器32Yによって一様帯電せしめられて、初期状態に戻る。以上のような一連のプロセスは、他のプロセスカートリッジ18(M,C,K)についても同様である。
【0019】
次に、中間転写ユニット80について説明する。
中間転写ユニット80は、中間転写ベルト110やベルトクリーニング装置17などを有している。また、張架ローラ114、駆動ローラ115、二次転写バックアップローラ116、4つの一次転写バイアスローラ62(Y,M,C,K)なども有している。
中間転写ベルト110は、張架ローラ114を含む複数のローラによってテンション張架されている。そして、図示しないベルト駆動モータによって駆動される駆動ローラ115の回転によって図中時計回りに無端移動せしめられる。
4つの一次転写バイアスローラ62(Y,M,C,K)は、それぞれ中間転写ベルト110の内周面側に接触するように配設され、図示しない電源から一次転写バイアスの印加を受ける。また、中間転写ベルト110をその内周面側から感光体40(Y,M,C,K)に向けて押圧してそれぞれ一次転写ニップを形成する。各一次転写ニップには、一次転写バイアスの影響により、感光体と一次転写バイアスローラとの間に一次転写電界が形成される。
Y用の感光体40Y上に形成された上述のYトナー像は、この一次転写電界やニップ圧の影響によって中間転写ベルト110上に一次転写される。このYトナー像の上には、M,C,K用の感光体40(M,C,K)上に形成されたM,C,Kトナー像が順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト110上には多重トナー像たる4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
中間転写ベルト110上に重ね合わせ転写された4色トナー像は、後述の二次転写ニップで図示しない記録体たる転写紙Pに二次転写される。二次転写ニップ通過後の中間転写ベルト110の表面に残留する転写残トナーは、図中左側の駆動ローラ115との間にベルトを挟み込むベルトクリーニング装置17によってクリーニングされる。
【0020】
次に、二次転写装置22について説明する。
中間転写ユニット80の図中下方には、二次転写ローラ220を有する二次転写装置22を備える。二次転写ローラ220は、中間転写ユニット80の二次転写バックアップローラ116との間に、中間転写ベルト110を挟み込んでいる。この挟み込みにより、中間転写ユニット80の中間転写ベルト110と、二次転写装置22の二次転写ローラ220とが接触する二次転写ニップが形成されている。そして、二次転写ローラ220には、トナーと逆極性の二次転写バイアスが図示しない電源によって印加される。この二次転写バイアスの印加により、二次転写ニップには中間転写ユニット80の中間転写ベルト110上の4色トナー像をベルト側から二次転写ローラ220側に向けて静電移動させる二次転写電界が形成される。後述のレジストローラ対49によって中間転写ベルト110上の4色トナー像に同期するように二次転写ニップに送り込まれた転写紙Pには、この二次転写電界やニップ圧の影響を受けた4色トナー像が二次転写せしめられる。なお、このように二次転写ローラ220に二次転写バイアスを印加する二次転写方式に代えて、転写紙Pを非接触でチャージさせるチャージャを設けてもよい。
【0021】
プリンタ100の下部に設けられた給紙装置400には、内部に複数の転写紙Pを紙束の状態で複数枚重ねて収容可能な給紙カセット44が、鉛直方向に複数重なるように配設されている。それぞれの給紙カセット44は、紙束の一番上の転写紙Pに給紙ローラ42を押し当てている。そして、給紙ローラ42を回転させることにより、一番上の転写紙Pを給紙路46に向けて送り出される。
【0022】
給紙カセット44から送り出された転写紙Pを受け入れる給紙路46は、複数の搬送ローラ対47と、その搬送路内の末端付近に設けられたレジストローラ対49とを有している。そして、転写紙Pをレジストローラ対49に向けて搬送する。レジストローラ対49に向けて搬送された転写紙Pは、レジストローラ対49のローラ間に挟まれる。一方、中間転写ユニット80において、中間転写ベルト110上に形成された4色トナー像は、ベルトの無端移動に伴って上記二次転写ニップに進入する。レジストローラ対49は、ローラ間に挟み込んだ転写紙Pを二次転写ニップにて4色トナー像に密着させ得るタイミングで送り出す。これにより、二次転写ニップでは、中間転写ベルト110上の4色トナー像が転写紙Pに密着する。そして、転写紙P上に二次転写されて、白色の転写紙P上でフルカラー画像となる。
【0023】
このようにしてフルカラー画像が形成された転写紙Pは、二次転写ニップを通過して二次転写装置22の図中左側に配置された紙搬送ベルト24の表面に受け渡される。紙搬送ベルト24は、2本の張架ローラ23によって張架され、少なくとも何れか一方の張架ローラ23の回転駆動に伴って、図中反時計回りに無端移動せしめられる。
二次転写ニップを通過して紙搬送ベルト24の表面に受け渡された転写紙Pは、紙搬送ベルト24の無端移動に伴って紙搬送ベルト24上から定着装置90に送られる。
【0024】
定着装置90は、定着ローラ91と加熱ローラ92との2本のローラによって張架されながら無端移動する定着ベルト26と、この定着ベルト26を挟んで定着ローラ91に向けて押圧される加圧ローラ10とを備えている。定着ベルト26と加圧ローラ10とは互いに当接して定着ニップを形成しており、紙搬送ベルト24から受け取った転写紙Pをここに挟み込む。加熱ローラ92は内部に図示しない熱源を有しており、これの発熱によって定着ベルト26を加熱する。加熱された定着ベルト26は、定着ニップに挟み込まれた転写紙Pを加熱する。この加熱やニップ圧の影響により、フルカラー画像が転写紙Pに定着せしめられる。
【0025】
定着装置90内で定着処理が施された転写紙Pは、プリンタ100の筐体の図中左側板の外側に設けたスタック部57上にスタックされるか、もう一方の面にもトナー像を形成するために上述の二次転写ニップに戻されるかする。
【0026】
次に、本実施形態の定着装置90における定着ローラ91に対する加圧ローラ10の距離を変化させて、2つのローラ部材の当接状態を制御する駆動伝達装置について説明する。
図3は、本実施形態の定着装置90が備える加圧ローラ10の定着ローラ91に対する当接状態を制御する駆動伝達装置300を加圧ローラ10の回転軸に平行な方向から見た正面図である。図4は、駆動伝達装置300を図3中の矢印D方向から見た上面図である。また、図1は、図3中の矢印Eで示す側面方向から見たときの駆動伝達装置300による接離動作を説明する模式図である。図1(a)は、加圧ローラ10による定着ローラ91に対する加圧を解除した脱圧状態を示す模式図であり、図1(b)は、加圧ローラ10を定着ローラ91に対して加圧して当接させた加圧当接状態を示す模式図である。また、図1は各部材を簡略化して示しており、後述する第一駆動伝達ギヤ2aと第二駆動伝達ギヤ2bとの二つのギヤを一つの駆動伝達ギヤ2で表している。
駆動伝達装置300は、加圧ローラ10を定着ローラ91に対して接離する接離機構200と、接離機構200に駆動を伝達する駆動ユニット210とを有する。
【0027】
定着装置90では、加圧ローラ10が定着ローラ91に当接し、定着ローラ91が変形することで定着ニップを形成している。良好な定着性を得るためには所望のニップ幅の定着ニップを形成する必要がある。しかし、定着装置90が停止ししているときまで、加圧ローラ10を定着ローラ91に加圧し続けると、回転を停止した定着ローラ91の特定の箇所が定着ニップを形成して変形したままの状態となり、再び、定着ローラ91を回転させて特定の箇所への加圧を解除しても、変形が元に戻らなくなる場合がある。このため、本実施形態の定着装置90では、定着動作が終了した後は、定着ローラ91に対する加圧ローラ10の加圧を解除して脱圧状態とする。すなわち、定着装置90では、駆動ユニット210が接離機構200を駆動させることで、加圧ローラ10が定着ローラ91に対して加圧当接して、定着ニップを形成する加圧当接状態と、定着ローラ91に対する加圧ローラ10の加圧を解除して脱圧状態とを切り替える構成である。
【0028】
接離機構200は、加圧ローラ10と、アーム9を介して加圧ローラ10を加圧するカム7と、カム7が固定されたカム軸13とを有し、駆動ユニット210は、カム軸13に回転駆動を伝達する構成である。カム軸13は、プリンタ100または定着装置90の装置本体の筺体である本体フレーム11に対して、カム軸受13aを介して軸支されている。
また、カム軸13とともに回転するカム7は、その回転中心からの距離が異なる外周面上で、回転中心からの距離が最も長い、カム凸部7aがアーム9と当接することでアーム9を加圧し、アーム9を介して加圧ローラ10を定着ローラ91に向けて加圧する構成となっている。
図4に示すように、駆動ユニット210は、駆動モータ1からの駆動力は、モータギヤ1gから二つの駆動伝達ギヤ2(第一駆動伝達ギヤ2a、第二駆動伝達ギヤ2b)を介して、第二駆動伝達ギヤ2bが固定された出力軸3に伝達される。
駆動ユニット210は、駆動モータ1が固定されたベース4を備え、第一駆動伝達ギヤ2aの回転軸は不図示の軸受を介し、出力軸3は出力軸受3aを介して、ベース4に対して位置が固定されている構成となっている。
【0029】
第二駆動伝達ギヤ2bに対してベース4を挟んで反対側の出力軸3の端部には、圧縮コイルバネ5によって、挿抜可能な出力軸カップリング6を設けている。
接離機構200は、駆動ユニット210からの駆動力を入力する部位に入力軸カップリング8を有し、入力軸カップリング8はカム軸13の一端部に固定されている。入力軸カップリング8が出力軸カップリング6に嵌合した状態で、駆動モータ1が駆動すると、その駆動力が出力軸3、出力軸カップリング6及び入力軸カップリング8を介してカム軸13に回転駆動が伝達され、カム7が回転する。
【0030】
図3に示す状態では、カム7の外周面上のカム凸部7aとは異なる箇所がアーム9と接触しており、この状態ではカム7からアーム9に対して加圧力は働いておらず、図1(a)で示すように脱圧状態である。
図3に示す脱圧状態から駆動モータ1が駆動し、カム7が回転することによって、カム7の外周面上のアーム9と接する位置が変化し、カム凸部7aがアーム9と接する位置となると、カム7がアーム9を加圧して持ち上げる。アーム9が持ち上げられることによって、図1(b)に示すように加圧ローラ10も持ち上げられ、定着ローラ91に対して加圧する。
【0031】
カム7またはカム軸13には、カム7の回転位置を検出する不図示のエンコーダが設けられており、このエンコーダを不図示の回転位置検出センサで検知することにより、カム7の回転位置を検出する。具体的には、カム7の回転位置が図3に示すように、カム凸部7aがカム軸13を挟んでアーム9とは反対側に位置する回転位置となった状態と、カム凸部7aがアーム9に当接する回転位置となった状態とを検出する。
【0032】
定着装置90が停止しているときには、図3に示す状態であり、定着装置90の不図示の制御部がプリンタ100の不図示の本体制御部からプリント開始信号を受信すると、駆動モータ1の駆動を開始する。駆動モータ1を駆動することでカム7が回転し、カム7の回転位置が、カム凸部7aがアーム9に当接する回転位置となったことを検出すると駆動モータ1の駆動を停止する。
これにより、カム7がアーム9を加圧し、アーム9を介して加圧ローラ10を定着ローラ91に向けて加圧することで、加圧ローラ10と定着ローラ91との当接部に定着に適した定着ニップが形成される。このような定着ニップが形成された後、プリンタ100での画像形成が開始され、定着装置90では定着ローラ91が回転駆動し、定着動作が実行される。
【0033】
プリンタ100での画像形成が終了して、定着装置90の制御部が本体制御部からプリント停止信号を受信すると、定着装置90では定着ローラ91の回転駆動が停止し、駆動モータ1の駆動を開始する。駆動モータ1を駆動することでカム7が回転し、カム7の回転位置が、カム凸部7aがアーム9に当接する回転位置から図3に示す状態の回転位置となったことを検出すると駆動モータ1の駆動を停止する。
このように、定着装置90では、定着動作の開始時及び終了時に、カム7の回転位置を制御することにより、定着ニップを形成する加圧当接状態と、定着ローラ91に対する加圧ローラ10の加圧を解除して脱圧状態とを切り替えることができる。
【0034】
次に、本実施形態の駆動伝達装置300の特徴部について説明する。
接離機構200に駆動を伝達する駆動ユニット210を構成する各部材(駆動モータ1、第一駆動伝達ギヤ2aとその回転軸、第二駆動伝達ギヤ2b、及び、出力軸3)がベース4に対して位置が固定されており、ベース4は本体フレーム11に対してゴム材料からなる弾性ジョイント部材12によって取り付けられている。このような構成により、ベース4に力が加わる弾性ジョイント部材12が変形してベース4が本体フレーム11に対して変位可能な構成となっている。すなわち、ベース4に位置が固定された各部材によって構成される駆動ユニット210を本体フレーム11に対して上下、左右に自由度をもたせたフローティング構造となっている。
【0035】
脱圧状態からカム7を回転させて加圧当接状態とすると、カム7がアーム9を加圧するため、カム7に対して図中の矢印Aで示すような力が加わる。このため、カム軸13は、図1(b)で示すように、軸方向両端を本体フレーム11に支持された状態でカム7を固定した位置に矢印Aで示す力が加わることになり、撓みが生じ、軸方向の本体フレーム11の間の範囲は、矢印A方向に変位し、軸方向の本体フレーム11よりも外側は矢印A方向とは反対方向(図中の矢印C方向)に変位する。
これにより、カム軸13の本体フレーム11よりも外側の端部に固定された入力軸カップリング8は矢印C方向に変位するとともに、その回転軸の角度も変化する。このとき、駆動ユニット210が本体フレーム11に対して固定されていると、図9に示すように、入力軸カップリング8と出力軸カップリング6との嵌合部では、入力軸カップリング8と出力軸カップリング6との回転中心の位置がずれ、さらに、入力軸カップリング8と出力軸カップリング6との回転軸の角度もずれてしまう。このような回転中心の位置や回転軸の角度にずれが発生すると、出力軸カップリング6に対して偏荷重がかかり、出力軸3に高負荷がかかるとともに、回転させるとねじりモーメントが加わる。また、この状態で、出力軸3に回転駆動を伝達し続けると、出力軸3が曲がる不具合が生じるおそれがある。さらに、偏荷重の状態でカップリングでの駆動の伝達を続けると、カップリングを構成するギヤが摩耗し、破損してしまうおそれがある。
【0036】
これに対して、本実施形態の駆動伝達装置300では、駆動ユニット210を本体フレーム11に対して上下、左右に自由度をもたせたフローティング構造となっている。このため、カム軸13に撓みが生じることで、入力軸カップリング8が矢印C方向に変位すると、ベース4も入力軸カップリング8が変位する方向と同方向に移動し、ベース4に位置が固定された各部材(駆動モータ1、第一駆動伝達ギヤ2aとその回転軸、第二駆動伝達ギヤ2b、及び、出力軸3)も同方向に移動する。
このため、カム軸13が撓むことによって入力軸カップリング8の位置が変位し、その回転軸の角度も変化しても、図1(b)に示すように、出力軸カップリング6の位置やその回転軸の角度が入力軸カップリング8に倣うように移動する。
【0037】
図5は、カム軸13の軸方向に平行な方向から見た駆動ユニット210が移動する状態の説明図である。カム7がアーム9を加圧する前の状態では、図5中の二点鎖線で示す位置にある。この状態から、カム7が回転してアーム9を加圧することで、アーム9から矢印Aで示す方向の反力がカム7に作用して、カム軸13に撓みが生じる。この撓みによってカム軸13の端部が矢印C方向に変位すると、カム軸13の端部に固定された入力軸カップリング8の変位に倣うように、駆動ユニット210が矢印C方向に移動し、図5中の二点差線で示す位置から実線で示す位置に移動する。
【0038】
これにより、入力軸カップリング8と出力軸カップリング6との嵌合部で回転中心の位置や回転軸の角度にずれが生じることを防止し、これらのずれに起因する出力軸3の曲げやカップリングを構成するギヤの破損といった不具合の発生を防止できる。よって、加圧当接状態と脱圧状態との切り替えを経時に渡って安定して行うことができる。なお、加圧当接状態のカム軸13の撓み量は実際には僅かであるが、図1(b)では、説明に用いるため、各部材に対するカム軸13や弾性ジョイント部材12の撓みを大きく示している。
【0039】
また、駆動ユニット210のベース4を本体フレーム11に取り付ける保持部材としては、上述した実施形態のようにゴム材料からなる弾性ジョイント部材12に限るものではない。
図6に示す駆動伝達装置300のように、駆動ユニット210が本体フレーム11に対して自由度を持つフローティング構造を実現する保持部材としてコイルバネ16を用いてもよい。
また、図6に示すように保持部材としてコイルバネ16を用いる構成では、コイルバネ16は圧縮コイルバネ5に対してバネ定数が十分に大きく、圧縮コイルバネ5の付勢力ではコイルバネ16の長さがほとんど変化しない構成となっている。
【0040】
また、接離機構200としては、カムを用いたカム機構に限らず、リンク機構など、駆動源から軸部材に回転駆動を伝達し、軸部材の回転運動を回転軸に直交する方向の運動に変換する機構であれば、駆動源を備える駆動ユニットを本体筺体に対して自由度を持たせることによって、同様の効果を得ることが出来る。
【0041】
また、軸部材を回転させる接離機構への駆動ユニットからの駆動伝達機構であって、接離機構に入力軸カップリングを設け、駆動ユニットには出力軸カップリングを設け、入力軸カップリングと出力軸カップリングとが噛み合うような連結機構では、部品精度や組立精度を向上させても、現実的には連結部は偏心や偏角してしまう。これは、部品精度や組立精度を向上させても、出力軸カップリングや入力軸カップリングの所望の位置からの変位が公差の範囲であっても連結部では偏心や偏角が生じるためである。
このように連結部に偏心や偏角が生じている状態で、出力軸に回転駆動を伝達すると、出力軸側には高負荷がかかるとともにねじりモーメントが加わるため出力軸の回転運動が、曲げの作用になってしまい、駆動ユニット内にギヤ機構を設けた場合ギヤ軸が倒れてしまい、ギヤ同士の噛み合いが狂うことでギヤが摩耗し、破損してしまう問題がある。また駆動ユニットをアルミダイキャストのような剛性体で保持すると、このような問題の対応として、各部品の剛性化、及びそれらの保持部品を高剛性の金属材料で一体成形加工されたものなどを用いる方策があるが、部品の小型・軽量化及び価格の面で不利となってしまう。
このような問題に対して、本実施形態の駆動伝達装置300のように、駆動ユニット210を本体フレーム11に対して自由度を持たせる構成とすることで、出力軸カップリングや入力軸カップリングに所望の位置から変位が生じていても、連結部に偏心や偏角が生じないように、駆動ユニット210が変位する。これにより、出力軸カップリングが入力軸カップリングに対して偏心や偏角が生じない位置に移動し、偏心や偏角に起因する不具合の発生を防止できる。
【0042】
また、本実施形態の駆動伝達装置300では、駆動ユニット210から接離機構200への駆動を伝達する機構として、接離機構200に入力軸カップリング8を設け、駆動ユニット210に出力軸カップリング6を設けている。そして、入力軸カップリング8と出力軸カップリング6とが噛み合うことでカム7に回転駆動を伝達する構成である。駆動ユニット210から接離機構200への駆動を伝達する機構としては、カップリングの構成に限るものではない。
例えば、駆動ユニットの駆動モータの駆動ギヤと、接離機構の軸部材に固定された伝達ギヤとによって構成される駆動を伝達する機構であっても、駆動ユニットを本体フレームに対して変位可能な構成とすることで同様の効果を得ることが出来る。すなわち、軸部材に撓みが生じて伝達ギヤの位置が変位したときに、駆動ユニットが本体フレームに固定された構成であると、伝達ギヤと駆動ギヤとのかみ合わせが変化し、破損するおそれがある。これに対して、駆動ユニットを本体フレームに対して変位可能な構成とすることで、軸部材に撓みが生じて伝達ギヤの位置が変位したときに、伝達ギヤと駆動ギヤとのかみ合わせを維持するように駆動ユニットが変位するため、伝達ギヤまたは駆動ギヤに破損が生じることを防止できる。
【0043】
また、本実施形態では、本発明の特徴部を備えた駆動伝達装置300を、定着ローラ91に対して加圧ローラ10の接離を行う接離機構200を備える駆動伝達機構に適用した構成について説明した。本発明を適用可能な構成は、接離機構に限らず、軸部材の回転運動を該軸部材の回転軸に直交する方向の運動に変換する回転運動変換機構を備えた駆動伝達機構では、回転軸に直交する方向の運動に対する反力が軸部材に作用するため、この反力によって軸部材に撓みが生じる駆動伝達機構であれば、本発明を適用可能である。
【0044】
以上、本実施形態の駆動伝達装置300では、装置本体の本体フレーム11に回転可能に支持された軸部材であるカム軸13の回転運動をカム軸13の回転軸に直交する方向の運動に変換する回転運動変換機構である接離機構200と、本体フレーム11に保持され、カム軸13に固定された駆動入力部である入力軸カップリング8に対して駆動出力部である出力軸カップリング6から回転駆動を伝達する駆動ユニット210とを有する。このような駆動伝達装置300で、入力軸カップリング8の本体フレーム11に対する位置が変位したときに、駆動ユニット210が入力軸カップリング8の変位に合わせて変位できるように、駆動ユニット210は、本体フレーム11に対して自由度を有するように保持されている。このため、接離機構200のカム軸13に撓みが生じることで、カム軸13に固定された入力軸カップリング8の本体フレーム11に対する位置が変位すると、駆動ユニット210も入力軸カップリング8が変位する方向と同方向に移動する。駆動ユニット210が移動することで、駆動ユニット210が備える出力軸カップリング6が入力軸カップリング8との位置関係を維持することができ、出力軸カップリング6と入力軸カップリング8との回転中心同士の位置関係や回転軸同士の傾きにずれが生じること抑制することができる。これにより、出力軸カップリング6または入力軸カップリング8に破損が生じることを抑制することが出来る。このように、カム軸13に撓みが生じても、出力軸カップリング6または入力軸カップリング8に破損が生じることを抑制することができるので、定着ローラ91に対する加圧ローラ10の接離動作を経時に渡って安定して行うことができる。
【0045】
また、駆動伝達装置300では、回転運動変換機構である接離機構200は、カム軸13に固定されたカム部材であるカム7を有するカム機構であるため、回転駆動を回転軸に直交する方向の運動に変換する構成を、簡易な構造で実現することができる。
【0046】
また、駆動ユニット210は、駆動出力部として、駆動源である駆動モータ1からの回転駆動の伝達を受けて回転する出力軸3と出力軸3の端部に固定された出力軸カップリング6とを備え、接離機構200は、駆動入力部として入力軸カップリング8を備え、出力軸カップリング6と入力軸カップリング8とが嵌合することにより、駆動ユニット210の駆動モータ1から接離機構200のカム軸13まで回転駆動を伝達する構成である。出力軸カップリング6と入力軸カップリング8とが嵌合する駆動伝達機構では、出力軸カップリング6と入力軸カップリング8との回転中心同士の位置や回転軸同士の傾きにズレが生じると、出力軸カップリング6と入力軸カップリング8との間で駆動を伝達するギヤに破損が生じるおそれがある。これに対して、本実施形態の駆動伝達装置300では、入力軸カップリング8の位置に出力軸カップリング6の位置を合わせるように駆動ユニット210が変位するため、出力軸カップリング6と入力軸カップリング8との回転中心同士の位置や回転軸同士の傾きにズレが生じることを防止し、ギヤに破損が生じることを防止することができる。
【0047】
また、駆動伝達装置300では、駆動ユニット210を本体フレーム11に対して保持する保持部材が、弾性部材であることにより、駆動ユニット210が本体フレーム11に対して変位可能となり、駆動ユニット210が入力軸カップリング8の変位に合わせて変位する構成を実現できる。
【0048】
また、図1及び図4を用いて説明した構成では、駆動ユニット210を本体フレーム11に対して保持する保持部材が、ゴム材料からなる弾性ジョイント部材12である。このようなゴム材料からなる保持部材を用いることにより、駆動ユニット210が入力軸カップリング8の変位に合わせて変位する構成を実現できる。
【0049】
また、図6に示す構成では、駆動ユニット210を本体フレーム11に対して保持する保持部材が、コイルバネ16である。このようなコイルバネ16を保持部材に用いることにより、駆動ユニット210が入力軸カップリング8の変位に合わせて変位する構成を実現できる。
【0050】
また、駆動伝達装置300では、本発明の特徴部を備えた回転運動変換機構を、軸部材の回転軸に直交する方向の運動が伝達されることによって当接対象である定着ローラ91に対する距離が変化する当接部材である加圧ローラ10を有する接離機構200を備える構成に適用したものである。これにより、経時に渡って安定した接離動作を行うことが出来る。
【0051】
また、本実施形態の定着装置90は、二つの表面移動体である定着ローラ91と加圧ローラ10とを加圧当接させて定着ニップを形成し、未定着画像を表面に担持する記録媒体である転写紙Pが定着ニップを通過することによって転写紙P上に未定着画像を定着させる構成である。このような、定着装置90で、二つの表面移動体の一方である加圧ローラ10を当接部材として当接対象である他方の表面移動体である定着ローラ91に対して接離する接離機構を備えた駆動伝達機構として、本実施形態の駆動伝達装置300を用いている。これにより、経時に渡って安定した接離動作を行うことができ、加圧当接状態のときの定着ニップを安定させることができる。よって、経時に渡って安定した定着性を維持することが出来る。
【0052】
本実施形態のプリンタ100は、記録媒体である転写紙P上に画像を形成する画像形成装置であり、回転駆動する駆動源である駆動モータ1の回転運動を回転運動とは異なる運動に変換し、装置を構成する部材である加圧ローラ10の移動を制御する駆動伝達機構として、本実施形態の駆動伝達装置300を用いている。これにより、移動対象である加圧ローラ10が経時に渡って安定した移動動作を行うことができる。なお、移動対象となる部材は加圧ローラ10に限るものではなく、他の部材を移動させる構成としても駆動伝達装置300と同様の駆動伝達機構を適用可能である。
【0053】
本実施形態のプリンタ100は、記録媒体である転写紙P上に未定着画像を形成する画像形成手段である画像形成ユニット20と、転写紙P上に未定着画像を定着せしめる定着手段とを備える画像形成装置であり、定着手段として、本実施形態の定着装置90を用いることにより、経時に渡って安定した定着性を維持することが出来るため、経時に渡って画像品質を維持することが出来る。
【符号の説明】
【0054】
1g モータギヤ
1s モータ軸
1 駆動モータ
2a 第一駆動伝達ギヤ
2b 第二駆動伝達ギヤ
2 駆動伝達ギヤ
3 出力軸
3a 出力軸受
4 ベース
5 圧縮コイルバネ
6 出力軸カップリング
7 カム
7a カム凸部
8 入力軸カップリング
9 アーム
10 加圧ローラ
11 本体フレーム
12 弾性ジョイント部材
13 カム軸
13a カム軸受
14 ユニット筺体
15 固定ネジ
16 コイルバネ
17 ベルトクリーニング装置
18 プロセスカートリッジ
20 画像形成ユニット
21 光書込ユニット
22 二次転写装置
23 張架ローラ
24 紙搬送ベルト
26 定着ベルト
31 現像装置
32 帯電器
33 ドラムクリーニング装置
40 感光体
42 給紙ローラ
44 給紙カセット
46 給紙路
47 搬送ローラ対
49 レジストローラ対
57 スタック部
62 一次転写バイアスローラ
80 中間転写ユニット
90 定着装置
91 定着ローラ
92 加熱ローラ
100 プリンタ
110 中間転写ベルト
114 張架ローラ
115 駆動ローラ
116 二次転写バックアップローラ
200 接離機構
210 駆動ユニット
220 二次転写ローラ
300 駆動伝達装置
400 給紙装置
P 転写紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0055】
【特許文献1】特開平05−011661号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体の本体フレームに回転可能に支持された軸部材の回転運動を該軸部材の回転軸に直交する方向の運動に変換する回転運動変換機構と、
上記本体フレームに保持され、該軸部材に固定された駆動入力部に対して駆動出力部から回転駆動を伝達する駆動ユニットとを有する駆動伝達装置において、
上記駆動入力部の上記本体フレームに対する位置が変位したときに、上記駆動ユニットが該駆動入力部の変位に合わせて変位できるように、該駆動ユニットは、上記本体フレームに対して自由度を有するように保持されていることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項2】
請求項1の駆動伝達装置において、
上記回転運動変換機構は、上記軸部材に固定されたカム部材を有するカム機構であることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項3】
請求項1または2の駆動伝達装置において、
上記駆動ユニットは、駆動出力部として、駆動源からの回転駆動の伝達を受けて回転する出力軸と該出力軸の端部に固定された出力軸カップリングとを備え、
上記回転運動変換機構は、上記駆動入力部として入力軸カップリングを備え、
該出力軸カップリングと該入力軸カップリングとが嵌合することにより、該駆動ユニットの該駆動源から上記回転運動変換機構の該軸部材まで回転駆動を伝達する構成であることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の駆動伝達装置において、
上記駆動ユニットを上記本体フレームに対して保持する保持部材が、弾性部材であることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項5】
請求項4の駆動伝達装置において、
上記弾性部材はゴム材料からなる部材であることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項6】
請求項4の駆動伝達装置において、
上記弾性部材はコイルバネであることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の駆動伝達装置において、
上記回転運動変換機構は、上記軸部材の回転軸に直交する方向の運動が伝達されることによって当接対象に対する距離が変化する当接部材を有する接離機構であることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項8】
二つの表面移動体を加圧当接させて定着ニップを形成し、
未定着画像を表面に担持する記録媒体が該定着ニップを通過することによって該記録媒体上に該未定着画像を定着させる定着装置において、
上記二つの表面移動体の一方を当接部材として当接対象である他方の表面移動体に対して接離する接離機構を備えた駆動伝達機構として請求項7の駆動伝達装置を用いることを特徴とする定着装置。
【請求項9】
記録媒体上に画像を形成する画像形成装置において、
回転駆動する駆動源の回転運動を回転運動とは異なる運動に変換し、装置を構成する部材の移動を制御する駆動伝達機構として、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の駆動伝達装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
記録媒体上に未定着画像を形成する画像形成手段と、
該記録媒体上に該未定着画像を定着せしめる定着手段とを備える画像形成装置において、
該定着手段として、請求項8に記載の定着装置を用いることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−197113(P2011−197113A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61247(P2010−61247)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】