説明

駐車支援装置

【課題】予想進路イメージに妨げられることなく車体が停車目標位置に達したことを容易に把握できる駐車支援装置を構成する。
【解決手段】車体に備えたカメラが車体後方を撮影した撮影画像をモニタ21に表示し、このようにモニタ21の撮影画像に対して車体の移動領域に対応する予想進路イメージを表示する。車体の後進時に停車すべき第1停車目標位置P1(切り返し位置)に停車指標42を表示し、車体の後進に伴い予想進路イメージのうち第1停車目標位置P1より遠方の領域を消去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車支援装置に関し、詳しくは、車体に備えたカメラ等の撮影手段が撮影した移動方向の路面の撮影画像をモニタ等の表示手段に表示すると共に、表示された撮影画像に対して車体が走行する予想進路イメージを前記車体とともに移動する形態で重畳表示する技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成された駐車支援装置として特許文献1には、撮影手段(文献ではカメラ)で撮影した撮影画像を表示手段(文献ではディスプレイ)に表示し、このように表示された撮影画像に対して予想進路イメージ(文献では走行予想進路軌跡)を重ねて表示する処理形態が示されている。この特許文献1では、予想進路イメージが、車幅に対応する幅で車体から所定の距離に対応する長さとなる枠状でステアリング舵角に対応して走行予想軌跡を示すように変形して表示される。このように予想進路イメージが表示されることにより、例えば、車体を後進させて駐車目標エリアに導入する場合にディスプレイに表示された予想進路イメージから車両が移動する領域を把握できることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11‐334470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される装置では、予想進路イメージが駐車目標エリアに向かうようにステアリングホイールの操作を行うことにより駐車目標エリアに対して車体を容易に導入できることになる。また、表示された予想進路イメージから駐車目標エリアに対する車体の導入が可能であるか否かの判断も可能となる。
【0005】
例えば、駐車目標エリアに隣接して駐車車両や電柱等の障害物が存在する環境で駐車目標エリアに車体を導入する際には、ステアリングホイールを切り返し操作することが行われる。具体的には、最初に障害物に接近させる方向に車体を後進させて停車し、ステアリングホイールの切り返しを行った後に車体を前進させて停車し、更に、ステアリングホイールの切り返しを行った後に駐車目標エリアに導入する等の形態で車体を移動させることが行われている。
【0006】
このように切り返しを行う場合に、特許文献1に記載される装置では、車体を障害物に接近させる方向に移動させた際に、予想進路イメージの先端部(車体から最も離れた位置の端部)が障害物より遠方となる領域に達することになる。
【0007】
しかしながら、予想進路イメージは、車体が移動する経路を示すものであり、この予想進路イメージの先端部が障害物に重複する位置に表示された場合には、予想進路イメージが障害物の確認を困難にすることもあり、車体の停車位置を把握し難いこともあった。特に、予想進路イメージが障害物に重複する位置に表示された場合には、予想進路イメージで表示されている領域に車体の移動が可能であると錯覚することも考えられ、改善の余地がある。
【0008】
本発明の目的は、予想進路イメージに妨げられることなく車体が停車目標位置に達したことを容易に把握できる駐車支援装置を合理的に構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の特徴は、車体の移動方向の路面を撮影する車載型の撮影手段と、前記撮影手段が撮影した撮影画像を表示する表示手段と、操舵角に基づいて車体が移動する領域を予想した予想進路イメージを生成して前記車体とともに移動する形態で前記撮影画像に重畳表示する予想進路イメージ生成手段とを備え、
この予想進路イメージ生成手段は、前記予想進路イメージのうち、予め設定された停車目標位置より遠方となる領域を消去して表示する点にある。
【0010】
この構成によると、車体を移動させた場合には、予想進路イメージが車体とともに移動する形態で表示手段に表示されると共に、このように表示される予想進路イメージのうち車体から最も離間した領域が停車目標位置に達すると即座に消去されるため、この予想進路イメージのうち、消去されずに残った領域の端部(車体から最も離間した端部)が停車目標位置であると把握できる。また、予想進路イメージのうち停車目標位置より遠方となる領域が消去されるため、予想進路イメージが停車目標位置の周辺の撮影画像を明瞭に把握できる。
従って、予想進路イメージに妨げられることなく車体が停車目標位置に達したことを容易に把握できる駐車支援装置が合理的に構成された。
【0011】
本発明は、前記予想進路イメージ生成手段は、前記予想進路イメージを前記車体の幅に対応した車幅ラインと、車体を設定距離だけ移動させた際に到達する位置を示す予想到達ラインとを備えた枠状に生成すると共に、前記車体の移動に伴い、前記車幅ラインのうち前記停車目標位置に達した部位を順次消去しても良い。
【0012】
これによると、予想進路イメージのうち車幅ラインが順次消去されるので停車目標位置を精度高く把握でき、停車目標位置の確認も可能となる。
【0013】
本発明は、前記予想進路イメージ生成手段は、前記予想到達ラインが前記停車目標位置に達したタイミングで、その予想到達ライン全てを消去しても良い。
【0014】
これによると、予想進路イメージのうち車幅ラインが順次消去された後に、予想到達ラインが一挙に消去されることになり、このような表示によっても停車目標位置の確認が可能となる。
【0015】
本発明は、前記予想進路イメージ生成手段は、前記予想進路イメージを前記車体の幅に対応した面状に生成すると共に、前記車体の移動に伴い、前記予想進路イメージのうち前記停車目標位置に達した領域を順次消去しても良い。
【0016】
これによると、面状に表示される予想進路イメージのうち停車目標位置より遠方の領域が消去されることから、停車目標位置の把握を容易に行える。
【0017】
本発明は、前記車体を駐車目標エリアに導入する誘導経路を設定すると共に、前記停車目標位置を設定する誘導経路設定手段を備え、前記停車目標位置を示す指標を前記撮影画像に重畳表示する指標イメージ生成手段を備えても良い。
【0018】
これによると、停車目標位置を示す指標が予想進路イメージで覆われることがなく、停車目標位置に表示された指標を停車目標位置として明瞭に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】車体の構成を示す斜視図である。
【図2】車内のパネル部等を示す斜視図である。
【図3】車体の構成の概略を示す平面図である。
【図4】制御系のブロック回路図である。
【図5】車体を直接誘導制御により誘導する経路を示す図である。
【図6】車体を切り返し誘導制御により誘導する経路を示す図である。
【図7】駐車目標エリアの設定開始時のモニタの表示を示す図である。
【図8】駐車目標エリアの設定完了時のモニタの表示を示す図である。
【図9】切り返し誘導制御の開始時のモニタの表示を示す図である。
【図10】第1停車目標位置に車体が到達する以前のモニタを示す図である。
【図11】第1停車目標位置に車体が達した際のモニタを示す図である。
【図12】第1停車目標位置に車体が達した後のモニタを示す図である。
【図13】最終停車目標位置に対応する指標が表示されたモニタを示す図である。
【図14】最終停車目標位置に車体が接近した際のモニタを示す図である。
【図15】最終停車目標位置に車体が達した際のモニタを示す図である。
【図16】駐車支援制御の概要を示すフローチャートである。
【図17】別実施形態(a)でモニタに表示された予想進路イメージを示す図である。
【図18】別実施形態(a)において遠方の領域が消去された予想進路イメージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔基本構成〕
本実施形態では、乗用車として構成される車両の車体30を自動操舵を含む誘導制御により駐車目標エリアFに誘導する駐車支援装置を説明する。
【0021】
図1〜図3に示すように、車体30は、前車輪31及び後車輪32を有し、ルーム内には運転座席33とステアリングホイール34とが備えられ、その前部にメータ類を有したパネル35が配置され、運転座席33の側部に変速を行うシフトレバー36が配置されている。
【0022】
ステアリングホイール34は、回転操作力を前車輪31に伝えて駆動操舵を行うパワーステアリングユニットPSと連動している。車体前部にはエンジンEと、このエンジンEからの動力を変速して前車輪31に伝えるにトルクコンバータやCVT(continuously variable transmission)等で成る変速機構Tとを配置している。運転座席33の前方には走行速度を制御するアクセルペダル37と、前車輪31と後車輪32とのブレーキ装置BKを操作して前車輪31、後車輪32に制動力を作用させるブレーキペダル38とが並列配置されている。
【0023】
運転座席33の近傍のコンソールの上部位置には、表示手段として表示面にタッチパネル21Tが形成されたモニタ21が備えられている。モニタ21は、バックライトを備えた液晶式のものである。もちろん、プラズマ表示型のものやCRT型のものであっても良い。また、タッチパネル21Tは、指などによる接触位置をロケーションデータとして出力することができる感圧式や静電式の指示入力装置である。モニタ21にはスピーカ22も備えられているが、スピーカ22はドアの内側など、他の場所に備えられても良い。尚、モニタ21はナビゲーションシステムの表示装置として用いるものを兼用しているが、駐車支援のために専用のものを備えても良い。
【0024】
本実施形態では、車両後方の周辺を撮影する撮影手段として、車体30の後端にカメラ23が備えられている。カメラ23はCCD(charge coupled device)やCIS(CMOS image sensor)などの撮像素子を内蔵するデジタルカメラであり、撮影した情報を動画情報としてリアルタイムに出力する。カメラ23は、広角レンズを有しており、水平方向に120〜140度の視野角が確保されている。また、カメラ23は、光軸に約30度程度の俯角を有して設置され、車体30の後方8m程度までの領域を撮影可能である。
【0025】
車体30には運転操作や移動状態を検出するための各種センサが備えられている。具体的に説明すると、ステアリングホイール34の操作系にはステアリング操作方向(操舵方向)と操作量(操舵量)とを計測するステアリングセンサ24を備えている。シフトレバー36の操作系にはシフト位置を判別するシフト位置センサ25を備えている。アクセルペダル37の操作系には操作量を計測するアクセルセンサ26を備えている。前記ブレーキペダル38の操作系には操作の有無を検出するブレーキセンサ27を備えている。
【0026】
後車輪32の近傍には後車輪32の回転量から車体30の移動量を計測する移動距離センサ28が備えられている。尚、この移動距離センサ28として、変速機構Tの回転系の回転量から移動量を取得するものを用いても良い。また、この移動距離センサ28は、前車輪31の回転量を計測するものでも良く、フォトインタラプタ型やピックアップ型のセンサを用いることが可能である。
【0027】
〔制御系の構成〕
車体30の中央部には、本発明の駐車支援装置の中核をなすECU20が配置されている。このECU20は、図4に示すように、情報の入出力を行うようにセンサ入力インターフェース19aと通信インターフェース19bとで成るインターフェースを備えると共に、このインターフェースを介して得られる情報を処理するマイクロプロセッサや、DSP(digital signal processor)が備えられている。
【0028】
センサ入力インターフェース19aは、運転操作や移動状態を検出するためのステアリングセンサ24等の各種センサからの情報を取得し、通信インターフェース19bはタッチパネル21T、カメラ23、パワーステアリングユニットPS、変速機構T、ブレーキ装置BKとの間で通信を行う。また、モニタ21に対しては画像処理モジュール8aを介して画像が出力され、スピーカ22に対しては音声処理モジュール8bを介して音声が出力される。
【0029】
本発明の駐車支援装置は、図4に示す如く、センサ入力インターフェース19aを介して信号を取得する系と、通信インターフェース19bを介して情報のアクセスを行う信号を取得する系と、画像処理モジュール8aと、音声処理モジュール8bとが備えられている。更に、この駐車支援装置は、撮影画像取得部1と、駐車目標エリア設定部2と、誘導モード設定部3と、誘導制御部4と、駐車支援イメージ生成部5と、位置情報取得部6と、画像処理モジュール8aと、音声処理モジュール8bとを備えている。この接続は、例えば、マイクロプロセッサ内外のデータバス、アドレスバス、コントロールバスなどを介して行われる。
【0030】
また、撮影画像取得部1、駐車目標エリア設定部2、誘導モード設定部3、誘導制御部4、駐車支援イメージ生成部5、位置情報取得部6、画像処理モジュール8a、音声処理モジュール8b夫々はソフトウエアで構成されるものであるが、例えば、ソフトウエアとハードウエアとの組み合わせで構成されるものであっても、ハードウエアのみで構成されるものでも良い。
【0031】
撮影画像取得部1は、カメラ23によって撮影された画像データを設定されたインターバル(例えば、1秒間に数コマ以上)で取得する。取得した画像情報は画像処理モジュール8aにより動画としてモニタ21に表示される。尚、カメラ23の撮影画像をモニタ21に表示する場合には、撮影画像から左右を入れ替えた鏡面反転画像が生成され表示される。これにより、運転者はルームミラーによって車体後方を確認する際と同様の感覚でモニタ21に表示された撮影画像から情報を把握できることになる。
【0032】
駐車目標エリア設定部2は、撮影画像取得部1で取得された撮影画像から自動的な処理と人為的な操作とから駐車目標エリアFを設定する。尚、この実施の形態では駐車目標エリアFとして路面に記された2つの区画線W(駐車区画線)によって挟まれる領域が駐車目標エリアFにとして想定され、運転者が確認することにより駐車目標エリアFが設定される。
【0033】
この駐車目標エリア設定部2の具体的な処理形態を以下に説明する。駐車目標エリアFを設定する場合には、車体30を駐車目標とするエリアの近傍に停車させ、シフトレバー36をリバースに設定する。これにより駐車目標エリア設定部2が、カメラ23で撮影された車体後方周辺の撮影画像を図7に示す如くモニタ21に表示し、この撮影画像に、予想進路イメージYと、左右一対の注目領域イメージVとをスーパーインポーズ等の処理によって重畳表示される。
【0034】
注目領域イメージVは駐車目標エリア設定部2が生成し、予想進路イメージYは駐車支援イメージ生成部5が生成して車体30とともに移動する形態で撮影画像に重畳表示する。予想進路イメージYは、車体30が後進する経路を示すものであり、左右一対の車幅ラインYwと、車体30の後端から2.7m(メートル)、1m、0.5mに対応した予想到達ラインY1、Y2、Y3とを枠状に組み合わせた形状となる。左右の注目領域イメージVは、横方向で所定間隔となる矩形の枠状で表示される。
【0035】
この表示状態において、ステアリングホイール34の操作を行うことにより、予想進路イメージYがステアリング操作量に対応して湾曲すると同時に、このステアリングホイール34の操作量に対応した距離だけ注目領域イメージVが横方向に移動する。この移動により図8に示す如く、注目領域イメージVが区画線Wに重複する位置に達すると、駐車目標エリア設定部2が画像処理により区画線Wの位置を認識し、この区画線Wに挟まれる領域に枠状エリアFxを表示する。このように表示された枠状エリアFxが駐車すべき領域である場合には、モニタ21の確定ボタン41に運転者が指を接触させる等の確定操作を行うことで枠状エリアFxが駐車目標エリアF(図5、図6を参照)としてECU20の不揮発性メモリ等に記憶される。
【0036】
尚、枠状エリアFxを設定する操作形態は、これに限るものではなく、枠状エリアFxを画面に表示し、運転者がタッチパネル21Tに指を接触させてスイッチ類を操作することや、枠状エリアFxを指でドラッグする形態で移動させ、運転者が望む領域に達した時点で確定ボタン41を操作して駐車目標エリアFを確定させるもの等、処理形態はどのようなものであっても良い。このように確定した駐車目標エリアFはモニタ21に対して継続的に表示されることになる。
【0037】
誘導モード設定部3は、誘導経路設定手段3Aと停車位置設定手段3Bとで構成されている。そして、誘導経路設定手段3Aは、停車位置から駐車目標エリアFに対して車体30を、切り返すことなく後進させて直接的に誘導する「直接誘導制御」と、停車位置から駐車目標エリアFに対してステアリングホイール34の切り返し操作により車体30を誘導する「切り返し誘導制御」との何れか一方を設定する。
【0038】
この誘導経路設定手段3Aの処理形態の概要として、誘導経路設定手段3Aは、車体30の現在の停車位置と駐車目標エリアとから、車体30を後進させて駐車目標エリアFに誘導するための仮想誘導経路を複数想定する。この複数の仮想誘導経路は、操舵角や操舵タイミングが異なるものであり、この複数の仮想誘導経路のうちの1つでも、車体30のボディが駐車目標エリアFの側方に張り出すことなく(図5〜図8に示す区画線Wと重複する位置を通過することなく)誘導できるものが存在すれば、「直接誘導制御」を設定する。そして、図5に示すように、その仮想誘導経路を直接誘導経路Jに設定すると共に、停車位置設定手段3Bが、直接誘導経路Jは、車体30の後端の現在位置P0から駐車目標エリアFにおいて停車すべき最終停車目標位置Pxの間に設定する。
【0039】
これとは逆に、想定した複数の仮想誘導経路の全てに沿って車体30を移動させた場合に、車体30のボディが駐車目標エリアFの側方に張り出すことを判定した場合には、誘導経路設定手段3Aが「切り返し誘導制御」を設定すると共に、図6に示す間接誘導経路Kを設定する。
【0040】
この「切り返し誘導制御」における間接誘導経路Kを例に挙げると、図6に示す如く、間接誘導経路Kは、車体30の後端の現在位置P0から駐車目標エリアFにおいて停車すべき最終停車目標位置Pxの間に形成される第1誘導経路K1と、第2誘導経路K2と、第3誘導経路K3とで構成される。また、停車位置設定手段3Bは、第1誘導経路K1と第2誘導経路K2と間に第1停車目標位置P1を設定し、第2誘導経路K2と第3誘導経路K3との間に第2停車目標位置を設定する。更に、第3誘導経路K3の終端位置に最終停車目標位置Pxを設定する。
【0041】
誘導制御部4は、直接誘導制御手段4Aと切り返し誘導制御手段4Bとで構成されている。そして、直接誘導制御手段4Aは、「直接誘導制御」において、位置情報取得部6で取得した位置情報に基づいて車体30の現在位置を参照しながら、直接誘導経路Jに沿うようにパワーステアリングユニットPSを制御し、自動操舵により車体30を後進させる制御を実行する。
【0042】
切り返し誘導制御手段4Bは、「切り返し誘導制御」において、位置情報取得部6で取得した位置情報に基づいて車体30の現在位置を参照しながら、間接誘導経路Kに沿うようにパワーステアリングユニットPSを制御し、自動操舵により車体30を進行(後進又は前進・移動)させる制御を実行する。
【0043】
このように車体30を自動操舵により進行させる際にはブレーキペダル38の操作で運転者による速度調整が可能となる。また、間接誘導経路Kは、第1誘導経路K1と、第2誘導経路K2と、第3誘導経路K3とで構成されているため、「切り返し誘導制御」の実行時には第1停車目標位置P1と第2停車目標位置P2とにおいて運転者がブレーキペダル38の操作で停車を行い、運転者がシフトレバー36の操作で進行方向(移動方向)の切り換えを行うことになる。
【0044】
特に、直接誘導制御手段4Aと切り返し誘導制御手段4Bとの何れが実行される際にも、必要なメッセージがモニタ21に表示されると共に、このメッセージがスピーカ22から音声で出力される。
【0045】
駐車支援イメージ生成部5は、予想進路イメージ生成手段5Aと、停車指標イメージ生成手段5Bとで構成されている。予想進路イメージ生成手段5Aは、図7〜図9等に示す予想進路イメージYを生成してモニタ21の撮影画像に重畳表示する。この予想進路イメージYは、車体30の後進時に車体30とともに移動するものであり、撮影画像の路面レベルに描画する形態で表示される。また、停車指標イメージ生成手段5Bは、第1停車目標位置P1と最終停車目標位置Pxとに対応する位置に図9、図10等に示すポール状の停車指標42をモニタ21の撮影画像に重畳表示する。このポール状の停車指標42は撮影画像中において路面に固定された状態となる立体的なイメージとして表示されることになるが、この停車指標42として路面上に平面状のイメージを表示しても良く、半透明な壁状に表示する等、形状はポール状に限るものではない。
【0046】
位置情報取得部6は、車体30の移動時に、車体30の誘導に必要な車体30の現在位置の情報と、車体30に対する駐車目標エリアFの相対位置の情報とを取得する。つまり、位置情報取得部6では車体30の移動に伴って変化する車体30の位置情報を検出する車両位置検出処理と、車体30の移動に伴って変化する駐車目標エリアFとの相対的な位置関係を検出する駐車目標エリア検出処理とを行う。これらの処理はカメラ23で撮影された画像データと、移動距離センサ28で取得する車体30の移動量と、ステアリングセンサ24で計測されるステアリングホイール34の操舵量とに基づいて行われる。
【0047】
本発明の駐車支援装置では、「直接誘導制御」と「切り返し誘導制御」の何れの誘導制御であってもモニタ21に表示される予想進路イメージYの表示形態に特徴を有するものであり、その制御の概要を「切り返し誘導制御」を例に挙げて以下に説明する。
【0048】
〔駐車支援制御(切り返し誘導制御)〕
この制御の概要を図16のフローチャートに示しており、図6に示される間接誘導経路Kにおいて「切り返し誘導制御」により車体30を駐車目標エリアFに誘導する際のモニタ21の表示内容を図9〜図15に示している。この制御では、モニタ21に対してカメラ23の撮影画像を表示すると共に、この撮影画像に対して予想進路イメージYを重畳表示することで、駐車支援を実現している。以下には、自動操舵により車体30の移動させる制御形態を示しているが、運転者がステアリングホイール34を人為操作して車体30を移動させる際にも予想進路イメージYを表示することも可能である。
【0049】
駐車支援制御を行う場合には、前述した操作により駐車目標エリア設定部2が駐車目標エリアFを設定した後に、誘導モード設定部3の誘導経路設定手段3Aが直接誘導経路J又は間接誘導経路Kを設定する。そして、間接誘導経路Kが設定された場合に実行される誘導制御が「切り返し誘導制御」であることの報知と、車体30の移動を促す報知が行われる(#101、#102ステップ)。
【0050】
このような報知は、例えば、図9に示す如く、モニタ21に対して「切り返し位置までバックして下さい」とのメッセージが表示されると同時に、このメッセージがスピーカ22から音声で出力される。特に、制御の初期には第1誘導経路K1に沿って車体30を移動させることになるので、車体30の移動を促すメッセージとして出力される「切り返し位置」とは第1停車目標位置P1のことである。
【0051】
次に、車体30を後進させる制御時には、このモニタ21に表示されている撮影画像に対して、第1停車目標位置P1に対応した位置に図9に示すポール状の停車指標42と、予想進路イメージYとが重畳表示され、直接誘導制御手段4Aによる「切り返し誘導制御」が実行される(#103〜#107ステップ)。
【0052】
#107ステップの「切り返し誘導制御」では、駐車目標エリアFを設定した直後に実行されるので、モニタ21には既に車体後方周辺の撮影画像が表示され、この撮影画像に予想進路イメージYが重畳表示された状態にある。このため、「切り返し誘導制御」が実行される際には停車指標42だけが表示される。また、駐車目標エリアFを設定する際にはブレーキペダル38が踏み込まれた状態にあるので、運転者のブレーキペダル38の踏み込み量を調節する操作により車体30の後進が開始され、この後進の際にブレーキペダル38の操作によって移動速度の調節が可能となる。尚、このように車体30を後進させる際にアクセルペダル37を操作しても良い。
【0053】
このように「切り返し誘導制御」の実行に伴い車体30の後進が開始されると、位置情報取得部6が車体30の位置情報を取得し、切り返し誘導制御手段4BがパワーステアリングユニットPSを制御して自動操舵により第1誘導経路K1に沿って車体30を移動させることになる。
【0054】
この自動操舵により第1誘導経路K1に沿って車体30を後進させる際には、車体30の移動に伴い位置情報取得部6で取得した位置情報に基づいて操舵量の調整が行われると共に、#106ステップのように予想進路イメージ生成手段5Aが、予想進路イメージYのうち第1停車目標位置P1(停車目標位置P)より遠方となる領域を消去する。このような制御では、図10に示す如く、第1停車目標位置P1(停車目標位置P・切り返し位置)に基準ラインZ(これは非表示)が想定され、位置情報取得部6で取得した車体30の現在位置から予想進路イメージYと、基準ラインZとが比較される。
【0055】
基準ラインZは、第1停車目標位置P1(停車目標位置P・切り返し位置)の路面上において車体30の進行方向と直交する姿勢で想定されるものである。このような比較により、予想進路イメージYのうち基準ラインZを超える領域が消去される。これにより、車体30から最も離間した位置(消去されずに残った領域の端部、基準ラインZと一致する位置)が停車目標位置Pであると把握できる。
【0056】
特に、予想進路イメージYのうち、停車目標位置Pより遠方の領域を消去する場合には、前述した基準ラインZを超える領域を消去することにより、車体30の後進に伴い車幅ラインYwが順次消去され、予想到達ラインY1、Y2、Y3は、基準ラインZに達した際に幅方向の全てを一挙に消去する処理が行われる。
【0057】
尚、直接誘導経路Jに沿って車体30を後進させる際には、車体30の移動に伴い位置情報取得部6で取得した位置情報に基づいて操舵量の調整が行われると共に、停車指標42の表示位置と表示サイズとが演算によって求められ、撮影画像に更新するように重畳表示される。
【0058】
そして、このように車体30の後進により第1停車目標位置P1に達すると停車を促す報知が行われる。この報知は、図11に示す如くモニタ21に対して「停車して下さい」とのメッセージが表示されると同時に、このメッセージがスピーカ22から音声で出力される。
【0059】
停車を促す報知として、例えば、車体30が第1停車目標位置P1に到達する以前に、停車位置(切り返し位置)に到達した時点で停車する必要があることを伝えるメッセージであっても良い。つまり、「切り返し誘導制御」では位置情報取得部6で取得した位置情報に基づいて停車すべき報知を行うことになるため、報知のタイミングには多少の誤差を含むことになる。従って、停車目標位置P(切り返し位置)に達する以前に停車目標位置P(切り返し位置)に接近していることを運転者に認識させる。この後に運転者が停車指標42等に基づいて停車位置に到達したことを判断し、車体30を停車させることで停止位置の精度を高めることになる。
【0060】
このような報知と、モニタ21表示されている停車指標42とに基づいて運転者がブレーキペダル38を操作して車体30を停車させた場合には、次に、シフトレバー36をドライブ位置(前進位置)にセットし、車体30の移動を促す報知が行われる(#108〜#110・#102ステップ)。
【0061】
この前進を促す報知は、図12に示す如くモニタ21に対して、例えば、「シフトをDにセットし、切り返し位置まで前進させて下さい」とのメッセージが表示されると同時に、このメッセージがスピーカ22から音声で出力される。
【0062】
次に、シフトレバー36がD(ドライブ)にセットされることにより、「切り返し誘導制御」が継続的に実行されることになり、運転者のブレーキペダル38の踏み込み量を調節する操作により車体30の前進が開始され、この前進の際にブレーキペダル38の操作によって移動速度の調節が可能となる。この車体30の前進においても位置情報取得部6が車体30の位置情報を取得し、切り返し誘導制御手段4BがパワーステアリングユニットPSを制御して自動操舵により第2誘導経路K2に沿って車体30を移動させる(#103、#107ステップ)。
【0063】
このようにシフトレバー36がD(ドライブ)にセットされた状態で「切り返し誘導制御」が実行される場合には、モニタ21にはカメラ23の撮影画像は表示されない状態にある。
【0064】
この「切り返し誘導制御」で車体30が前進し、第2停車目標位置P2(切り返し位置)に達した場合には、停車すべきメッセージの報知(図示せず)が行われる(#107ステップ)。
【0065】
尚、車体30の前端に車体前方周辺を撮影するカメラを備えているものでは、そのカメラの撮影画像をモニタ21に表示しても良い。このように車体前方周辺の撮影画像を表示する場合には、その撮影画像に対して第2停車目標位置P2に対応する停車指標を表示しても良い。
【0066】
そして、運転者がブレーキペダル38を操作して車体30を停車させた場合には、次に、車体30の後進を促す報知(図示せず)が行われる(#108、#109、#102ステップ)。この報知においても、シフトレバー36をリバースR(後進位置)にセットする必要がある旨のメッセージが、前述報知と同様にモニタ21とスピーカ22から出力されることになる。
【0067】
次に、シフトレバー36がR(リバース)にセットされることにより、「切り返し誘導制御」が継続的に実行されることになり、運転者のブレーキペダル38の踏み込み量を調節する操作により車体30の後進が開始され、この後進の際にブレーキペダル38の操作によって移動速度の調節が可能となる。この車体30の後進においても位置情報取得部6が車体30の位置情報を取得し、切り返し誘導制御手段4BがパワーステアリングユニットPSを制御して自動操舵により第3誘導経路K3に沿って車体30を移動させる(#103、#107ステップ)。
【0068】
具体的に説明すると、最終停車目標位置Pxに向けて車体30を後進させる際には、図13に示すように、モニタ21には最終停車目標位置Pxに対応した位置に停車指標42が表示され、予想進路イメージYが表示される。このため、車体30を後進させた場合には図14に示すように、この予想進路イメージYのうち、最終停車目標位置Pxより遠方の領域は消去される。
【0069】
また、最終停車目標位置Pxに車体30を移動させる際には、第1誘導経路K1に沿って車体30を移動させる場合と同様に、予想進路イメージYのうち最終停車目標位置Px(停車目標位置P)より遠方となる領域を消去する。このような制御では、図14に示す如く、最終停車目標位置Px(停車目標位置P)に基準ラインZ(これは非表示)が想定され、位置情報取得部6で取得した車体30の現在位置から予想進路イメージYと、基準ラインZとが比較され、予想進路イメージYのうち基準ラインZを超える領域が消去されるのである。
【0070】
そして、車体30が、最終停車目標位置Pxに到達すると、停車を促す報知として、図15に示すように、モニタ21に対して「停車して下さい」とのメッセージが表示されると同時に、このメッセージがスピーカ22から音声で出力されることになる。この報知に従い、車体30を停車させ、所定の操作(例えば、モニタ21に表示されるスイッチ等)を操作することにより制御は終了する(#108、109ステップ)。
【0071】
また、「直接誘導制御」で車体30を駐車目標エリアFに誘導する際の制御形態は説明していないが、この「直接誘導制御」でも図13〜図15と同様にモニタ21に対して予想進路イメージYと停車指標42とが表示されることになる。
【0072】
特に、本発明では「直接誘導制御」と「切り返し誘導制御」との何れで車体30を駐車目標エリアFに誘導する際にも必ずしも、停車指標42を表示する必要はない。
【0073】
〔実施形態の効果〕
このように本発明によると、「直接誘導制御」と「切り返し誘導制御」との何れの誘導制御においても、停車目標位置Pを示す停車指標42をモニタ21の撮影画像に重畳表示すると共に、予想進路イメージYを表示するものである。特に、車体30を移動させた場合に予想進路イメージYのうち停車目標位置Pより遠方となる領域を消去する処理が行われる。これにより、車体30から最も離間した位置(消去されずに残った領域の端部、基準ラインZと一致する位置)が停車目標位置Pであると把握できる。
【0074】
また、予想進路イメージYのうち停車目標位置Pより遠方となる領域が消去されるため、予想進路イメージYが停車目標位置の周辺の撮影画像を覆うような状況に陥ることがなく、停車目標位置Pより遠方の状況を明瞭に把握できるのである。そして、予想進路イメージYで表示されている領域に車体30の移動が可能であると錯覚する不都合を招くこともない。
【0075】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い(この別実施形態では前記実施形態と同じ機能を有するものには、前記実施形態と共通の番号、符号を付している)。
【0076】
(a)図17、図18に示すように予想進路イメージYを半透明となる面状でモニタ21に表示し、この予想進路イメージYの停車目標位置Pより遠方となる領域を消去するように表示する。この予想進路イメージYは、路面上において車体30の車幅に略等しい幅で所定の前後長さを有し、半透明で表示されることから、予想進路イメージYと重複する位置の路面の状況をモニタ21を介して視認することも可能となる。
【0077】
このように面状に表示される予想進路イメージYは、図18に示す如く、車体30の後進に伴い、停車目標位置P(基準ラインZ)より遠方の領域が順次消去されることになる。
【0078】
(b)「切り返し誘導制御」として、自動操舵は行わずにモニタ21に撮影画像を表示し、必要な情報の報知だけを行うように誘導制御部4の制御形態を設定しても良い。このように制御形態を設定することにより、運転者が人為的にステアリングホイール34を操作しながら車体30を後進させる状況においても、モニタ21には予想進路イメージYと、停車指標42とが表示されることになり、この表示から運転者は適正な位置で停車できることになる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、駐車時に車体を目標位置まで移動させて停車させる際に、停車目標位置で高い精度で車体を停車させる制御に利用できる。
【符号の説明】
【0080】
3A 誘導経路設定手段
5A 予想進路イメージ生成手段
5B 指標イメージ生成手段
21 表示手段(モニタ)
23 撮影手段(カメラ)
30 車体
F 駐車目標エリア
Y 予想進路イメージ
Yw 車幅ライン
Y1 予想到達ライン
Y2 予想到達ライン
Y3 予想到達ライン
P 停車目標位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の移動方向の路面を撮影する車載型の撮影手段と、前記撮影手段が撮影した撮影画像を表示する表示手段と、操舵角に基づいて車体が移動する領域を予想した予想進路イメージを生成して前記車体とともに移動する形態で前記撮影画像に重畳表示する予想進路イメージ生成手段とを備え、
この予想進路イメージ生成手段は、前記予想進路イメージのうち、予め設定された停車目標位置より遠方となる領域を消去して表示する駐車支援装置。
【請求項2】
前記予想進路イメージ生成手段は、前記予想進路イメージを前記車体の幅に対応した車幅ラインと、車体を設定距離だけ移動させた際に到達する位置を示す予想到達ラインとを備えた枠状に生成すると共に、前記車体の移動に伴い、前記車幅ラインのうち前記停車目標位置に達した部位を順次消去する請求項1記載の駐車支援装置。
【請求項3】
前記予想進路イメージ生成手段は、前記予想到達ラインが前記停車目標位置に達したタイミングで、その予想到達ライン全てを消去する請求項2記載の駐車支援装置。
【請求項4】
前記予想進路イメージ生成手段は、前記予想進路イメージを前記車体の幅に対応した面状に生成すると共に、前記車体の移動に伴い、前記予想進路イメージのうち前記停車目標位置に達した領域を順次消去する請求項1記載の駐車支援装置。
【請求項5】
前記車体を駐車目標エリアに導入する誘導経路を設定すると共に、前記停車目標位置を設定する誘導経路設定手段を備え、前記停車目標位置を示す指標を前記撮影画像に重畳表示する指標イメージ生成手段を備えている請求項1〜4のいずれか一項に記載の駐車支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−255812(P2011−255812A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132897(P2010−132897)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】