説明

骨成長の促進及び骨健康の維持のための組成物

【課題】哺乳動物において骨の成長を促進し、骨/関節の疾患を予防、緩和、又は治療(treat)、又は骨健康の維持を意図する組成物、また、栄養製品、サプリメント、スナック又は医薬品の製造における前記組成物の使用、並びに、有効量の組成物を投与することを含む、骨成長を促進する又は骨健康の維持のための方法を提供する。
【解決手段】活性成分として骨形成タンパク質の発現を誘発させるその能力によって選択された少なくとも1種の植物又は植物抽出物を有効量で含み、植物若しくは植物抽出物がさらに骨再吸収を阻害する。植物性化合物がラクツシン、ラクツコピクリン、3−デオキシ−ラクツシン、ゲラニオール又はカルボンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨健康の維持又は骨疾患の予防、緩和及び/若しくは処置のための組成物に関する。本発明はまた、栄養製品、サプリメント又は医薬品の製造における前記組成物の使用、並びに、有効量の組成物を投与することを含む、骨成長を促進する又は骨健康を維持する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
健康な骨は、骨の形成と再吸収との間の平衡を要する有効な骨再構築を必要とする。ほとんどの骨疾病は骨再吸収の増進が原因であるので、その阻害が第1の治療目的となり、したがって、現在までに開発されているほとんどの薬剤が再吸収防止性である。例えば、エストロゲンは、破骨細胞の産生及び分化を促進するサイトカインの産生を遮断する。骨の健康に利点をもたらすと同時に乳組織又は子宮内膜組織に対する有害なホルモン効果の危険性を軽減させるSERM(選択的エストロゲン応答モジュレーター)が開発されている。これらは骨中でエストロゲンに類似の機構によって働くと考えられている。ビスホスホネート(例えばアレンドロネート、リセドロネートなど)は骨中に濃縮され、これらは現在のところ最も有効な骨再吸収阻害剤である。これらは、破骨細胞の活性及び生存に必要である重要な酵素経路を阻害する。カルシトニンは、破骨細胞の活性を遮断することによって骨再吸収を阻害する、ポリペプチドホルモンである。新しい標的には、TNF受容体/リガンドファミリーメンバー、特にRANK/RANKL及びそのシグナル伝達経路の遮断、カテプシンKなど骨特異的メタロプロテイナーゼの阻害、又は特異的キナーゼの阻害が含まれる。
【0003】
骨形成を刺激する治療剤の開発は、再吸収の治療剤の開発に後れをとっている。多少の化合物や薬剤が、ヒトにおいて骨成長を促進することで知られている。例えば、国際公開公報WO9619246号(特許文献1)は、少なくとも一カ月間、副甲状腺ホルモン、PTH関連タンパク質又は作用剤を断続的に投与することによる、ヒト患者において骨成長を促進する方法を記載している。国際公開公報WO9619501号(特許文献2)では、膵臓由来の因子が骨再吸収を阻害し、骨細胞が増殖するようにそれを刺激し、骨形成を増進させる。
【0004】
最近の大きな躍進は、骨形成の刺激における主要な存在としての骨形成タンパク質2(BMP−2)の役割の実証、及びスタチン(コレステロールの合成を阻害することによってコレステロール値を低下させるのに有効な薬物)がBMP−2の誘発に部分的に媒介されて骨形成を改善することの実証である。組換えBMP−2の送達によって骨又は軟骨の形成が誘発されることが示されている。米国特許第6150328号(特許文献3)に、骨及び軟骨の形成を誘発させる方法が、BMPをコードしているDNAで形質転換させた細胞を培養することによって産生させた精製骨形成タンパク質の投与を含むことが記載されている。また、国際公開公報WO9711095(特許文献4)は、神経腫瘍の処置及び骨成長及び創傷治癒のための骨形成タンパク質組成物の使用に関する。BMPに加えて、インスリン様GF(IGF−1)、トランスフォーミングGF−β(TGF−β)、線維芽細胞GF(FGF)などの成長因子が、骨折及び骨欠損の治癒における局部療法として調査中である。しかし、腸での代謝及び他組織に影響する可能性が原因で、全身投与には問題がある。遺伝子治療が一選択肢として提案されている。代替案は、成長因子の遺伝子又はタンパク質発現に対する食事性若しくは薬剤性の調節因子によって、その産生に対する骨芽細胞による調節を標的にすることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開公報WO9619246号
【特許文献2】国際公開公報WO9619501号
【特許文献3】米国特許第6150328号
【特許文献4】国際公開公報WO9711095
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの化合物及び薬剤化合物が骨疾患の処置において有効なことが証明されているが、哺乳動物において骨の成長を促進し、骨/関節の疾患を予防、緩和、又は治療(treat)する、安全かつ有効な栄養学的な方法を提供することが興味深いであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって第1態様では、本発明は、活性成分として骨形成タンパク質の発現を誘発させるその能力によって選択された少なくとも1種の植物又は植物抽出物を有効量で含む、哺乳動物における骨疾患の予防、緩和及び/若しくは治療、又は骨健康の維持を意図する組成物を提供する。
【0008】
驚くべきことに、今回、一部の植物若しくは植物抽出物が、骨又は軟骨組織中の内在成長因子を調節することによって骨成長を促進する能力を有することが判明した。これらは、骨の形成及び修復、骨健康の維持、又は骨疾患の予防、緩和及び/若しくは処置に正の効果を与える、invivo及び局部的な骨環境において骨形成タンパク質の発現を誘発させる能力を有する。
【0009】
本発明による組成物は、ヒト又はペット用に意図する栄養製品、サプリメント、スナック(treat)又は医薬品の製造に使用することができる。
【0010】
本発明による食品組成物を個体に投与することによって、骨折の治癒における骨の再生の改善がもたらされる。本発明の組成物は、骨再吸収を阻害するのにさらに役立つ。これは、骨形成を増進し、かつ成長中において骨塩量を増加させて最大骨量の最適化を補助する。また、この食品組成物は、骨の損失、特に哺乳動物において加齢に関連する骨の損失を軽減させるのにも役立つ。したがってこれは、加齢に伴って骨量を維持し、骨粗鬆症の危険性を軽減させるのに役立つ。
【0011】
さらにこれは、哺乳動物における軟骨の形成及びペット又はヒトにおける変形性関節症の予防に役立ち、これは、個体の活動又は運動性がより良好になることをもたらす。
【0012】
別の態様では、本発明は、哺乳動物における骨健康の維持、並びに骨疾患の予防、緩和、及び/又は治療を意図する組成物を調製するための、骨形成タンパク質を刺激する及び/又は骨再吸収を阻害する能力によって選択された植物若しくは植物抽出物の使用に関する。
【0013】
さらに、本発明は、上述の組成物を有効量で投与することを含む、骨疾患を予防、緩和及び/若しくは治療する方法又は骨健康を維持する方法を提供する。
【0014】
本発明はさらに、上述の組成物を有効量で投与することを含む、骨形成を増進し、かつ成長中において骨塩量を増加させて最大骨量を最適化し、骨粗鬆症を処置又は予防し、骨折の治癒において骨の再生を刺激する方法を提供する。
【0015】
本発明はさらに、個体に上述の組成物を与えるステップを含む、ペット及びヒトにおける変形性関節症を治療、緩和、及び/又は予防する方法に関する。
【0016】
本発明はさらに、個体に上述の組成物を与えるステップを含む、骨の損失、特にヒト又はペットにおける加齢に関連する骨の損失を軽減させる方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】Lindera benzoin(P.E.740、50μg/ml)又はCyperusRontundus(P.E.205、10μg/ml)由来の抽出物で48時間処理した後の、hPOB−tert細胞中の内在BMP−2のmRNA発現の、RT−PCRによる測定値を示す図である。これらはそれぞれ対照の3.8倍及び2.8倍のBMP−2の刺激を示している。このアッセイの妥当性検査は、陽性対照としてロバスタチン(0.5μg/ml)を用いて行った。
【図2】Ocimum gratissimum(738)、Amelanchier alnifolia(734)、Glycine max(768)、Cyperus rotundus(205)、Carthamus tinctorius(746)の抽出物における、頭蓋冠アッセイ(A)及びピットアッセイ(B)で測定された阻害値の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第1の目的に関して、本発明による植物若しくは植物抽出物は、骨形成タンパク質の発現の誘発によるタンパク質同化の潜在性を有し、さらに再吸収防止性剤であり得る植物性化合物を含む。
【0019】
好ましい実施形態では、植物若しくは植物抽出物は植物源の任意の部分、例えば葉、塊茎、果実、種子(seeds)、根、子実(grains)、胚芽又は細胞培養物由来である。植物若しくは植物抽出物は、植物源に応じて、葉、根及び/若しくは果実の乾燥させた凍結乾燥抽出物の形態、又は新鮮な植物の形態、或いは無機若しくは有機溶媒を用いた当分野で知られている抽出方法によって得られる濃縮分画の形態であり得る。
【0020】
植物若しくは植物抽出物は、骨再吸収を阻害するかつ/又は骨形成を誘発させる能力によって選択される。具体的には、Lindera、Artemisia、Acorus、Carthamus、Carum、Cnidium、Amelanchier、Curcuma、Taraxacum、Cyperus、Juniperus、Prunus、Iris、Cichorium、Dodonaea、Epimedium、Eriogonum、Soya、Mentha、Ocimum、thymus、Tanacetum、Plantago、Spearmint、Bixa、Vitis、Rosemarinus、Tanacetum、Rhus及びAnethumからなる群から選択され得る。また、キノコであってもよい。
【0021】
最も好ましい実施形態では、これは例えばLinderabenzoinの地上部分、Artemisia vulgarisの地上部分、Acorus calamusの根茎、Carthamus tinctoriusの種子又は花、Amelanchierovalisの果実、Amelanchier alnifoliaの果実、Cichorium intybusの根、Curcuma longaの根茎、Epimedium brevicornumの地上部分、Eriogonumgiganteumの地上部分、Taraxacum officinalisの葉又は根、Cyperus rotondusの根茎、Dodoneae viscosaの葉、Iris pallidaの細胞培養物、Irisgermanica、pallida若しくはpseudacorusの根茎、Juniperuscommunisの果実、Prunus persicaの種子、soyaの細胞培養物、Mentha spicataの地上部分、Ocimum gratissimumの地上部分、Thymus属の種(スピーシーズ)の地上部分、Rhus glabraの地上部分、aneth、Bixa、Vitis viniferaの果実、Rosmarinus officinalisの地上部分、Tanacetum vulgareの地上部分、Carum carvi、Plantago major、Oxydendronarboreumの地上部分であってよい。
【0022】
植物性化合物は、ゲニステイン(genistein)、ダイゼイン(daidzein)、ラクツシン(lactucin)、ラクツコピクリン(lactucopicrin)、3−デオキシ−ラクツシン、ゲラニオール又はカルボン(carvone)であってよい。
【0023】
本発明による植物若しくは植物抽出物を食品組成物の調製に使用してもよい。前記組成物は、栄養バランス食品若しくはペットフード、食物サプリメント、スナック又は薬剤組成物の形態であってよい。
【0024】
植物若しくは植物抽出物は、単体で、或いはチコリ、茶、ココアなど他の植物と、又は他の生理活性分子、例えば抗酸化剤、脂肪酸、プレバイオティック繊維、グルコサミン、コンドロイチン硫酸などと共に使用してもよい。
【0025】
一実施形態では、ヒトが消費するための食品組成物を調製する。この組成物は、総合栄養処方(fomula)、乳製品、冷蔵された若しくは棚で安定な飲料、スープ、食物サプリメント、食事代替品、及び栄養バー(bar)又は菓子であってよい。
【0026】
栄養処方は、本発明による植物抽出物以外にタンパク質源を含んでいてもよい。タンパク質源としては食物タンパク質を使用することが好ましい。食物タンパク質は、任意の適切な食物タンパク質、例えば、動物性タンパク質(乳タンパク質、食肉タンパク質、卵タンパク質など)、植物性タンパク質(ダイズタンパク質、コムギタンパク質、コメタンパク質、エンドウマメタンパク質など)、遊離アミノ酸の混合物、又はこれらの組合せであってよい。カゼイン、ホエイタンパク質などの乳タンパク質及びダイズタンパク質が特に好ましい。また、この組成物は炭水化物及び脂肪源も含んでいてよい。
【0027】
栄養処方が脂肪源を含む場合、脂肪源は栄養処方の熱量の約5%〜約55%、例えば熱量の約20%〜約50%を提供することが好ましい。脂肪源を構成する脂質は任意の適切な脂肪又は脂肪混合物であってよい。植物性脂肪、例えばダイズ油、パーム油、ココナッツ油、ベニバナ油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、カノーラ油、レシチンなどが特に適している。所望する場合は、乳脂防などの動物性脂肪を加えてもよい。
【0028】
栄養処方に炭水化物源を加えてもよい。これは、栄養組成物の熱量の約40%〜約80%を提供することが好ましい。任意の適切な炭水化物、例えばショ糖、乳糖、ブドウ糖、果糖、固形コーンシロップ及びマルトデキストリン、並びにそれらの混合物を使用し得る。所望する場合は、食物繊維を加えてもよい。食物繊維を使用する場合は、栄養処方の熱量の約5%を構成することが好ましい。食物繊維は、例えばダイズ、エンドウマメ、カラスムギ、ペクチン、グアールガム、アラビアガム及びフラクトオリゴ糖を含めた任意の適切な起源由来であり得る。適切なビタミン及びミネラルを、適正な指針に合う量で栄養フォーミュラに含めてもよい。
【0029】
所望する場合は、栄養処方に1種又は複数種の食品グレードの乳化剤、例えばモノ−又はジ−グリセリドのジアセチル酒石酸エステル、レシチン並びにモノ−及びジ−グリセリドを取り込ませてもよい。同様に、適切な塩及び安定剤を含めてもよい。ビタミン及びミネラルを植物抽出物と混合してもよい。
【0030】
栄養組成物は、散剤、錠剤、カプセル、濃縮液、固形製品又はすぐ飲める飲料の形態で経腸投与が可能であることが好ましい。散剤の形態の栄養処方を生成することを所望する場合は、均質化した混合物を噴霧乾燥機や凍結乾燥機などの適切な乾燥装置に移して散剤に変換する。
【0031】
別の実施形態では、栄養組成物は乳ベースの穀類と共にプレバイオティック製剤を含む。好ましくは、乳ベースの穀類はプレバイオティック製剤の担体として働く乳児用穀類(infantcereal)である。
【0032】
別の実施形態では、通常の食品製品を本発明による少なくとも1種の植物若しくは植物抽出物で富化してもよい。これには、例えば発酵乳、ヨーグルト、フレッシュチーズ、レンネット処理した乳、菓子製品、例えば甘い若しくは甘くした飲料、菓子バー、朝食用の穀類フレーク若しくはバー、飲物、粉末乳、ダイズベースの製品、乳製品でない発酵製品又は臨床栄養のための栄養サプリメントがある。
【0033】
組成物中の植物若しくは植物抽出物の量は、植物源及びその利用方法に応じて変動し得る。好ましい実施形態では、有効な一日用量は少なくとも一日あたり約1mg、より好ましくは1mg〜200mgの活性分子である。
【0034】
一実施形態では、少なくとも上述の抽出物又は植物性化合物を個体において所望の効果を達成するのに十分な量で含む、薬剤組成物を調製することができる。この組成物は錠剤、液体、カプセル、軟カプセル、ペースト若しくはトローチ(pastille)、ガム、又は飲用可能な溶液若しくは乳濁液、ドライ経口サプリメント、ウェット経口サプリメントであり得る。この薬剤組成物はさらに、様々な性質のそれぞれの活性分子を標的組織に送達するのに適した担体及び賦形剤を含むであろう。担体/賦形剤の種類及びその量は、その物質の性質及び薬物の送達方法並びに/又は企図される投与に依存するであろう。当分野の技術者が自身の知識に基づいて適正な成分及び生薬形態を選択するであろうことは理解されよう。
【0035】
本発明による植物若しくは植物抽出物をペットフード組成物の調製に使用してもよい。前記組成物は、通常の食餌のサプリメントとして、又は総合栄養ペットフードの成分として、より好ましくは高カロリーペットフード中でペットに投与してもよい。薬剤組成物であってもよい。
【0036】
植物若しくは植物抽出物は、単体で、或いはチコリ、茶、ココアなど他の植物と、又は他の生理活性分子、例えば抗酸化剤、脂肪酸、プレバイオティック繊維、グルコサミン、コンドロイチン硫酸などと共に使用してもよい。
【0037】
好ましくは、ペットフード組成物は15kgの犬用のドライペットフード1gあたり約0.01〜0.5gの乾燥植物を含み、15kgの犬用のウェットペットフード1gあたり0.001〜0.1gの乾燥植物を含む。
【0038】
本発明による総合栄養ペットフード組成物は、粉末の乾燥形態、スナックの形態、又はウェットな、冷蔵されている若しくは棚で安定なペットフード製品の形態であり得る。これは、冷蔵されているか、又は棚で安定な製品として提供され得る。これらのペットフードは、当分野で知られている方法によって製造し得る。
【0039】
ペットフードは、任意選択でプレバイオティック、プロバイオティック微生物又は他の活性物質、例えば長鎖脂肪酸を含んでいてもよい。ペットフード中のプレバイオティックの量は、好ましくは10重量%未満である。例えば、プレバイオティックはペットフードの約0.1重量%〜約5重量%を構成し得る。プレバイオティック源としてチコリを使用するペットフードでは、チコリが餌混合物の約0.5重量%〜約10重量%、より好ましくは約1重量%〜約5重量%を構成するようにそれを含ませてよい。
【0040】
プロバイオティック微生物を使用する場合は、ペットフードは、ペットフード1グラムあたり約10〜約1010個のプロバイオティック微生物細胞を含むことが好ましく、より好ましくは、1gあたり約10〜約10個のプロバイオティック微生物細胞を含む。ペットフードは、混合物の約0.5重量%〜約20重量%、好ましくは約1重量%〜約6重量%、例えば約3重量%〜約6重量%のプロバイオティック微生物を含み得る。
【0041】
必要な場合は、栄養的に完全になるように、ペットフードにミネラル及びビタミンを添加する。さらに、様々な他の材料、例えば糖、塩、香辛料、調味料、香料などを、所望に応じてペットフードに取り込ませてもよい。
【0042】
別の実施形態では、ペットフードの品質を改善するために食品添加物を調製してもよい。食品添加物は、主食がウェットであれドライであれ、カプセルで包まれているか散剤形態で提供され、主食と一緒に又は個別に梱包され得る。例として、本発明による抽出物を含む散剤を散剤形態で或いはゲル若しくは脂質又は他の適切な担体中でサシェ(sachet)に詰めてもよい。これら個別に梱包された単位を、取扱説明書に応じて主食と一緒に又は主食若しくはスナックと共に使用する複数単位パックで提供し得る。
【0043】
有益な効果を得るためにペットが消費すべきペットフードの量は、ペットの大きさ、ペットの種類、ペットの年齢に依存する。しかし、通常体重1kgあたり約0.5〜5gの乾燥植物を提供する量のペットフードが、犬及び猫で十分であろう。
【0044】
ヒト又は動物に上述の食品又はペットフード組成物を投与することにより、骨折の治癒において骨の再生の改善がもたらされる。これは、骨形成を刺激し、かつ成長中において骨塩量を刺激して最大骨量の最適化を補助する。具体的には、これは幼少期において最適な骨の成長をもたらし得る。この食品組成物は、骨の損失、特に哺乳動物における加齢に関連する骨の損失又は長期間の入院に関連する骨の損失を予防するのに役立つ。これは骨粗鬆症の危険性を軽減させ、骨折後の回復を改善させる。さらにこれは、哺乳動物における軟骨の形成、並びにペット及びヒトにおける変形性関節症の予防に役立ち、これは個体の活動又は運動性がより良好になることをもたらす。
【0045】
以下の実施例は、例示目的のみで示し、決して本出願の主題を限定するものとして解釈されるべきでない。別段に示さない限り、すべてのパーセンテージは重量パーセントで示す。実施例の前に図面の簡単な説明を記載する。
【実施例】
【0046】
実施例1 骨形成アッセイ及び骨再吸収アッセイ
1.骨形成
骨形成についてはBMP−2(骨形成タンパク質)遺伝子リポーターアッセイによって、また骨再吸収については頭蓋冠アッセイによって、91個の抽出物をスクリーニングした。これら91個の抽出物は、30種の異なる植物に対応する。
【0047】
材料及び方法
・スクリーニングアッセイ用の抽出物の調製
粉砕した植物材料をヘキサンで脱脂し、その後、水のパーセンテージが10〜90%で異なる、好ましくは50%である、アルコールと水との混合物で抽出した。アルコールはメチルアルコール又はエチルアルコールでよく、抽出物1aを得た。
【0048】
この第1抽出の残渣の一定量で、α及びβグルコシダーゼを用いて酵素的加水分解を行った。酵素を酸性条件で置き換えることができる。この操作は穏やかな条件下(室温)で行うか、又は様々な酸濃度を用いて還流によって行い得る。加水分解した水相を非混和性の溶媒、好ましくは酢酸エチルで抽出して抽出物2aを得た。
【0049】
抽出物を乾燥させるか、凍結乾燥させるか、又は液状形態として供給することができる。一部の場合では、ポリビニルポリピロリドン(PVPP)処理によってポリフェノールを廃棄して、スクリーニングアッセイにおける人工物質を避けることができる。
【0050】
抽出物の調製に次いで、各抽出物を秤量し、ジメチルスルホキシド(DMSO)に最終濃度20mg/mlで再溶解させ、一定量に分割して−20℃で保存した。これをストック溶液として使用し、後に各アッセイにおいて媒体で希釈した。アッセイシステムで様々な用量を試験した。
【0051】
・骨形成アッセイ
BMP−2ルシフェラーゼアッセイ−ルシフェラーゼ遺伝子に動作可能に連結されたBMP−2のプロモーターを含む2T3細胞を使用して、抽出物の活性を決定した。細胞溶解液におけるルシフェラーゼ活性の増大は、BMP−2プロモーター活性の増大を反映している。開始希釈物100μg/mlから、0.2μg/mlまで1/2に希釈して、抽出物をアッセイした。細胞抽出物のルシフェラーゼ活性を測定することによってBMP−2プロモーター活性を測定した。
【0052】
13種の植物がBMP−2発現の刺激において有意な陽性結果を示した(表1)。
【0053】
【表1】



【0054】
BMP−2を刺激する、同じ植物の新しい調製物及びその細分画の例は以下のとおりである。
Lindera benzoin、活性抽出物/番号 酢酸エチル/740/2059;活性細分画/番号 2060
Taraxacum officinalis、活性抽出物/番号 酢酸エチル/750/2034;活性細分画/番号 2035
Cyperus rotundus、活性抽出物/番号 酢酸エチル/205/2011;活性細分画/番号 2012、2013
Iris pallida、活性抽出物/番号 MeOH/水/239;活性細分画/番号 760/762/2021、2022
【0055】
細分画は、異なる極性の溶媒によって溶出させた、逆相シリカゲルカートリッジでの分画化によって調製した。純粋なダイズイソフラボンのゲニステイン及びダイゼイン(10−6M)はBMP−2を刺激したが、エストラジオールは刺激しなかった。
【0056】
BMP−2の誘発は、植物エストロゲンによって刺激されるがエストロゲン自体には刺激されないので、エストロゲン様活性に限定されていないと考えられる。これは、植物エストロゲン(ゲニステイン及びダイゼインなど)がエストロゲン性でない機構に媒介されているかもしれないことを意味する。BMP−2プロモーター活性はエストラジオールによって刺激されないので、この試験においては、植物化合物のエストロゲン性は活性である必要がない。
【0057】
【表2】





【0058】
使用した方法は、Science286:1946〜1949(1999年)に記載されている。抽出物を、4日間のinvitro新生仔ネズミ頭蓋冠アッセイで評価した。骨を抽出物と共に4日間の間中にインキュベートした。骨形成は組織学によって評価した。
【0059】
2.骨再吸収、頭蓋冠アッセイ
IL−1(10−10M)に刺激される骨再吸収を阻害する抽出物の能力を新生仔骨再吸収アッセイで評価した。各抽出物について、10μg/mlで骨の再吸収を阻害する能力を評価した。
【0060】
IL−1(10−10M)に刺激される骨再吸収を阻害する、実施例1で調製した抽出物の能力を、新生仔骨再吸収アッセイで評価した。各抽出物について、10μg/mlで骨の再吸収を阻害する能力を評価した。
【0061】
陽性と判明した植物抽出物を表2に示す。
【0062】
【表3】



【0063】
Amelanchier alnifolia、Ocimum gratissimum並びにCarthamus tinctorius及びGlycinemaxの植物は骨再吸収アッセイで活性であった。Cyperus rotundusは骨の再吸収を阻害し、BMP−2を誘発させた。
【0064】
実施例2 ヒト骨芽細胞における、内在BMP−2発現に対する植物抽出物の効果
実施例1でBMP−2の誘発に陽性と判明した植物を、BMP−2の内因性発現を誘発させる能力について、ヒト骨膜/前骨芽細胞系であるhPOB−tertでさらに試験した。骨芽細胞におけるこの試験により、実施例1で示した結果が確認された。
【0065】
例えば、Lindera benzoinの抽出物(抽出物740、50μg/ml)及びCyperusrotundusの抽出物(抽出物205、10μg/ml)で48時間、hPOB−tert細胞を処理することにより、BMP−2発現が対照の3.8及び2.8倍刺激された(図1参照)。このアッセイの妥当性検証は、2.5倍のBMP−2誘発を示す陽性対照としてロバスタチン(0.5μg/ml)を用いて行った。
【0066】
コンフルエントな状態で、細胞を0.05μg/mlのロバスタチン又は植物抽出物と共にインキュベートした。TRIzol Reagent(Gibco)を用いて全RNAを抽出した。1st Strand cDNASynthesis Kit(Boehringer)を使用して、10μgのRNAを逆転写した。アニーリング温度55℃で、特異的オリゴヌクレオチドプライマー(5’:TTGCGGCTGCTCAGCATGTT;3’:CATCTTGCATCTGTTCTCGGAA)を使用して、BMP−2のcDNA配列を35サイクル増幅した。PCR産物をアガロースゲル電気泳動で分離し、臭化エチジウム染色によって検出した。定量はNIHImage Softwareを用いて行い、アクチンをハウスキーピング遺伝子として結果を正規化した。
【0067】
結果を図1に示す。
【0068】
骨の再吸収
頭蓋冠アッセイで陽性と判明した植物抽出物を、骨再吸収の第2アッセイ、すなわちウシ骨切片上で培養したウサギ骨混合細胞を使用したピットアッセイ(TezukaK.他、1992年、Biochem.Biophys.Res.Commun.、186(2):911〜7及びLorgetF.他、2000年、Biochem.Biophys.Res.Commun.、268(3):899〜903)で再度試験した。TRAP(酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ)染色によって再吸収ピットを可視化した。陽性細胞を数えた。
【0069】
2つのアッセイシステムにおける、10μg/mlの抽出物の活性の比較を図2に示す。
【0070】
実施例3 ドライペットフード
餌混合物は、約58重量%のトウモロコシ、約5.5重量%のコーングルテン、約22重量%のチキンミール、2.5%の乾燥チコリ、約10%のCyperusrotondusの塊茎からなり、残りは塩、ビタミン及びミネラルからなる。
【0071】
餌混合物をプレコンディショナーに供給し、湿らせる。その後、湿らせた供給物を押出成形器−調理器に供給してゼラチン化する。押出成形器を出て行くゼラチン化したマトリックスをダイに通して押出成形する。押出成形された物を、犬に与えるのに適切な小片に切断し、約110℃で約20分間乾燥させ、冷却してペレットを形成する。
【0072】
この乾燥ドッグフードは骨及び軟骨の健康に正の効果を与え、その運動性を増加させる。
【0073】
実施例4 ウェット缶詰ペットフードとサプリメント
混合物を73%の鶏の屠体、豚の肺及び牛のレバー(粉砕)、16%の小麦粉、2%の色素、ビタミン、及び無機塩から調製する。この混合物を12℃で乳化し、プディングの形態で押出成形し、その後、90℃で調理する。これを30℃に冷却し、チャンクに切断する。これらのチャンクのうち45%を、98%の水、1%の色素、及び1%のグアールガムから調製したソース55%と混合する。ブリキ缶に充填し、125℃で40分間滅菌する。
【0074】
与える前にペットフードを混合するサプリメントとして、追加のパッケージ(例えばサシェ)は、1日のペットフードに加えるための粉末にしたCyperusRotundusの地上部分25gを含む。ペット用の対応する量は約25g/日であり、これは、缶と一緒に(例えば缶の上に)サプリメントとして供給することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト及びペットにおける骨疾患の予防、緩和及び/又は治療、並びに骨健康の維持を意図する食品組成物であって、活性成分として、骨形成タンパク質の発現を誘発する能力を有する植物性化合物を含む植物若しくは植物抽出物の少なくとも一種を有効量で含む食品組成物。
【請求項2】
前記植物若しくは植物抽出物がさらに骨再吸収を阻害する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記植物が該植物源の任意の部分、すなわち葉、塊茎、果実、種子、根、子実、胚芽又は細胞培養物である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記植物若しくは植物抽出物がLindera、Artemisia、Acorus、Carthamus、Carum、Cnidium、Amelanchier、Curcuma、Taraxacum、Cyperus、Juniperus、Prunus、Iris、Cichorium、Dodonaea、Epimedium、Eriogonum、Soya、Mentha、Ocimum、thymus、Tanacetum、Plantago、Spearmint、Bixa、Vitis、Rosemarinus、Tanacetum、Rhus及びAnethumを含む群から選択される、請求項1から3までの一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記植物若しくは植物抽出物がLinderabenzoinの地上部分、Artemisia vulgarisの地上部分、Acorus calamusの根茎、Carthamus tinctoriusの種子又は花、Amelanchierovalisの果実、Amelanchier alnifoliaの果実、Cichorium intybusの根、Curcuma longaの根茎、Epimedium brevicornumの地上部分、Eriogonumgiganteumの地上部分、Taraxacum officinalisの葉又は根、Cyperus rotondusの根茎、Dodoneae viscosaの葉、Iris pallidaの細胞培養物、Irisgermanica、pallida若しくはpseudacorusの根茎、Juniperuscommunisの果実、Prunus persicaの種子、soyaの細胞培養物、Mentha spicataの地上部分、Ocimum gratissimumの地上部分、Thymus属の種の地上部分、Rhus glabraの地上部分、aneth、Bixa、Vitis viniferaの果実、Rosmarinusofficinalisの地上部分、Tanacetum vulgareの地上部分、Carum carvi、Plantago major、Oxydendronarboreumの地上部分から選択される、請求項1から4までの一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記植物性化合物がラクツシン、ラクツコピクリン、3−デオキシ−ラクツシン、ゲラニオール又はカルボンである、請求項1から5までの一項に記載の組成物。
【請求項7】
栄養バランス食品若しくはペットフード、食物サプリメント、スナック又は薬剤組成物の形態にある、請求項1から6までの一項に記載の組成物。
【請求項8】
骨折の治癒において骨の再生を補助し、骨形成を増進し、かつ成長中において骨塩量を増加させ、最大骨量を最適化し又は骨の損失、特にヒト若しくはペットにおける加齢に関連する骨の損失を軽減する、請求項1から7までの一項に記載の組成物。
【請求項9】
ヒト又はペットにおいて軟骨の形成を補助する請求項1から8までの一項に記載の組成物。
【請求項10】
ヒト又はペットにおいて変形性関節症を予防するのに役立ち、これが該個体の活動又は運動性がより良好になることをもたらす、請求項1から9までの一項に記載の組成物。
【請求項11】
ヒト又はペットにおける骨疾患の前記予防、前記緩和及び/若しくは前記治療又は骨健康の維持を意図する食品又はペットフード組成物を調製するための、骨形成タンパク質を刺激するかつ/又は骨の再吸収を阻害する能力を有する植物性化合物を含む植物若しくは植物抽出物の使用。
【請求項12】
前記組成物が請求項1から10までに記載されたものである、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記植物若しくは植物抽出物を単体で、或いはチコリ、茶、ココアなど他の植物と、又は他の生理活性分子、例えば抗酸化剤、脂肪酸、プレバイオティック繊維、グルコサミン、コンドロイチン硫酸などと共に使用する、請求項11又は12に記載の使用。
【請求項14】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の組成物を有効量で投与することを含む、骨疾患を治療、緩和若しくは予防する、又は骨健康を維持する方法。
【請求項15】
個体に請求項1から7までのいずれかに記載の組成物を与えるステップを含む、ヒト又はペットにおいて骨形成を増進し、かつ成長中において骨塩量を増加させて最大骨量を最適化する方法。
【請求項16】
前記個体に請求項1から7までに記載の組成物を与えるステップを含む、ペット及びヒトにおける変形性関節症を治療、緩和、及び/又は予防する方法。
【請求項17】
請求項1から7までのいずれか一項に記載の組成物を有効量で投与することを含む、骨粗鬆症を治療又は予防する方法。
【請求項18】
個体に請求項1から7までのいずれかに記載の組成物を与えるステップを含む、骨折の治癒において骨の再生を刺激する方法。
【請求項19】
前記個体に請求項1から7までのいずれかに記載の組成物を与えるステップを含む、骨の損失、特にヒト又はペットにおける加齢に関連する骨の損失を軽減させる方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−88442(P2010−88442A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276785(P2009−276785)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【分割の表示】特願2003−553934(P2003−553934)の分割
【原出願日】平成14年12月10日(2002.12.10)
【出願人】(590002013)ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー (31)
【Fターム(参考)】