骨病状の遺伝子治療のための組成物およびそれらの使用法
ある好ましい態様において、本発明は、低骨密度を伴う骨病状の治療のための組成物および方法を提供する。好ましい態様において、本発明は、オステオプロテジェリン反応性病状の治療のための組成物および方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、低骨密度の治療のための組成物および方法に関する。本発明はまた、オステオプロテジェリン依存性病状の治療のための組成物および方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
骨の健康および骨粗鬆症に関する米国公衆衛生総監報告(Surgeon General's Report on Bone Health and Osteoporosis)は、2020年には年齢50歳以上の米国人のおよそ半数が骨粗鬆症を有する、またはそれを発症するリスクがあると推定している。米国骨粗鬆症基金(National Osteoporosis Foundation)は、米国には骨粗鬆症を現在有する症例が約1000万人おり、うち800万人が女性、200万人が男性であり、さらに3400万人の米国人が低骨量のために骨粗鬆症の深刻なリスクを有すると推定している。骨粗鬆症は年間150万件を上回る骨折の原因となっており、これには300,000件を上回る股関節部骨折;およそ700,000件の脊椎骨折;250,000件の手関節骨折;および300,000件の他部位の骨折が含まれる。骨粗鬆症性の股関節部骨折に対する米国全体での直接的費用の推定値(病院およびナーシングホーム)は、2002年に180億ドルであった。股関節部骨折の患者は今後さらに別の骨折を経験する可能性が非常に高い。これらの統計の背後にある生活の質の低下の大きさは筆舌に尽くしがたい。さらに、急性および部位特異的な低骨密度病状には、炎症媒介性骨溶解、腫瘍誘発性骨溶解、人工インプラントの弛み、歯周病(periodonitis)または骨関節炎が含まれる。
【0003】
骨ホメオスタシスの細胞生物学
骨は、骨格内で絶え間ないリモデリング(吸収および置換)を受ける動的な組織である。骨格の維持を担う主要な細胞種は、吸収性の破骨細胞および骨合成性の骨芽細胞であり、それらはどちらもホルモン、増殖因子および炎症メディエーターによって影響される。間葉幹細胞由来の骨芽細胞による骨形成、ならびに単球/マクロファージ系列の造血前駆細胞から生じる破骨細胞によるそのモデリングおよびリモデリングは、1つの密接に調節された系である(Huang, W., et al., A rapid multiparameter approach to study factors that regulate osteoclastogenesis: Demonstration of the combinatorial dominant effects of TNF-a and TGF-β in RANKL-mediated osteoclastogenesis. Calcif. Tissue Int. 73:584-593 (2003)。正常骨量の維持は、局所性および全身性の両方の因子およびシグナルがかかわる、形成と吸収との間のホメオスタシス的な複雑な均衡に依存する。これらの2つのプロセス間に不均衡がある場合には、骨密度の上昇(大理石骨病)または低下(骨粗鬆症)が起こる。慢性の低骨密度は閉経後、加齢性および炎症性の疾患でみられ、一方、急性の低骨密度は人工関節(prosthesis)の弛みまたは腫瘍誘発性骨溶解において観察される。
【0004】
破骨細胞
破骨細胞は、特定のシグナルに応答して、単球/マクロファージ系列F4-80陽性細胞の造血前駆細胞から生じる(Boyle, W. J., et al., Osteoclast differentiation and activation. Nature 423, 337-342 (2003))。これが起こるためには、コロニー刺激因子-1(CSF-1;M-CSF)およびTNFスーパーファミリーのメンバーであるRANKL(NF-κBリガンドの受容体活性化因子;TRANCE、OPGLおよびODFとも呼ばれる)という2つの増殖因子が必要である。図1は、破骨細胞の分化に関与するシグナル伝達機構の概略図であり、ここでRANKLはその受容体であるRANKを活性化することによって破骨細胞の分化を活性化し、一方、オステオプロテジェリン(OPG、これは破骨細胞形成抑制因子としても知られる)は、RANKLを、細胞表面に対するその結合を阻止することで封鎖状態にする。
【0005】
骨格では、CSF-1およびRANKLがいずれも骨芽細胞によって供給されるが、さらなる細胞性供給源が他の組織にある。CSF-1はその受容体である原癌遺伝子c-Fmsを介して前破骨細胞と結合して、RANKL受容体であるRANKの発現を刺激し、RANKLに対する応答性をそれらの細胞に付与する。RANKの活性化は、RANK関連因子であるTRAF6を介してNF-κB依存性遺伝子の発現を刺激する上、Junキナーゼ経路およびホスホイノシトール経路も活性化する。これらの経路は一緒にアポトーシスを阻害するほか、破骨細胞に骨を吸収する準備をさせる他の細胞応答を宿主に惹起させる。これらには、吸収の部位へのケモカイン誘発型走化性、多核細胞を生じさせる細胞融合、αvβインテグリンを介した骨への付着を促進させる特化したアクチンリングの形成、骨基質を溶解するためのプロテアーゼおよびプロトンポンプの発現、ならびに、分解性分子を分泌するためならびに溶解した骨基質を摂取および輸送するための極めて活発な小胞輸送の発達が含まれる。RANKLは、これらの複数の分化段階の上流で作用してインビボでのそれらの分化を阻害する、破骨細胞活性を調節するための魅力的で可能性のある標的である。
【0006】
RANKL/RANK/OPG経路のシグナル伝達は、内皮細胞の生存、血管新生、単球または内皮細胞の動員、ならびに平滑筋細胞の骨形成および石灰化に関して、血管の生理現象および病理現象においても重要な可能性がある。諸研究の結果は、RANKLは加齢、骨粗鬆症または疾患に伴う骨塩形成(bone mineralization)の低下と同時に起こる血管の石灰化を促進しうるが、OPGはそれを防御しうると考えられることを示唆している(Collin-Osdoby, P., Regulation of vascular calcification by osteoclast regulatory factors RANKL and osteoprotegerin. Circulation Res. 2004 95(11):1046-1057)。
【0007】
オステオプロテジェリン
OPGは腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーのメンバーであり、約60kDの単量体形態およびジスルフィド結合した約120kDのホモ二量体形態として存在する分泌性で塩基性の401アミノ酸の糖タンパク質である。OPGは骨芽細胞および骨髄ストロマ細胞によって産生される。OPGは、RANKLがRANKと結合するのを妨げる可溶性「デコイ」受容体として機能することにより、破骨細胞形成を用量依存的な様式で阻害する(図1)。Schoppet, M., et al., RANK ligand and osteoprotegerin: paracrine regulators of bone metabolism and vascular function, Arterioscier Thromb Vasc Biol. 2002 Apr 1;22(4):549-53を参照。オステオプロテジェリンは1997年にSimonetらによって報告され、彼らはそれをインビトロおよびインビボで防御的な骨作用を有する腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーの分泌性メンバーとして同定し、特徴決定した(Simonet, W. S., et al. Osteoprotegerin: A Novel Secreted Protein Involved in the Regulation of Bone Density. Cell 1997 89, 309-319)。組換えOPGタンパク質の静脈内注射、およびOPG(-/-)マウスにおけるOPGのトランスジェニック性過剰発現はいずれも、OPG欠損マウスで観察される骨粗鬆症性の骨表現型を効果的に救済する。Min, H., et al., Osteoprotegerin reverses osteoporosis by inhibiting endosteal osteoclasts and prevents vascular calcification by blocking a process resembling osteoclastogenesis. J Exp Med 2000 192, 463-474を参照。
【0008】
トランスジェニックマウスにおけるOPGの過剰発現は、おそらくはRANKL/RANK相互作用を阻止することにより、骨格質量の増加ならびに破骨細胞の数および活性の低減をもたらすことが実証されており(Simonet, W. S., et al.(1997))、一方、OPGの欠損は骨粗鬆症をもたらす。Bucay, N., et al., Osteoprotegerin-deficient mice develop early onset osteoporosis and arterial calcification. Genes Dev 1998 12, 1260-1268、およびMizuno, A., et al,. Severe osteoporosis in mice lacking osteoclastogenesis inhibitory factor/osteoprotegerin. Biochem Biophys Res Commun 1998 247, 610-615を参照。
【0009】
骨粗鬆症に加えて、人工関節周囲(periprosthetic)骨溶解(Yang, S.Y., et al., Adeno-associated virus-mediated osteoprotegerin gene transfer protects against particulate polyethylene-induced osteolysis in a murine model, Arthritis Rheum. 2002 Sep; 46(9):2514-23)、腫瘍転移、若年性パジェット病、ゴーシェ病、HIVの抗ウイルス治療、廃用性骨減少症、サラセミアおよび炎症性腸疾患に伴う骨溶解を含むいくつかの他の骨病状も、骨量の損失を伴う。
【0010】
骨癌性疼痛は、乳房、前立腺または肺で生じた腫瘍が長骨、脊椎骨および/または骨盤に転移した場合に起こることが最も多い。骨にかかわる原発性および転移性の癌は、米国だけでも年間400,000例の新たな癌症例を占め、進行性の乳癌または前立腺癌の患者の70%超は骨格転移を有する。骨痛の動物モデルにおける諸研究で報告されている結果は、オステオプロテジェリン治療がそれ以上の破壊を停止させ、進行中および運動誘発性の疼痛を軽減し、脊髄の神経化学的再組織化のいくつかの局面を元の方向に戻させることを示している。Luger, N.M., et al., Osteoprotegerin diminishes advanced bone cancer pain, Cancer Res. 2001 May 15; 61 (10):4038-47を参照。
【0011】
低骨密度を是正するための治療アプローチは、骨吸収の阻害か骨形成の刺激を目標としている。低骨密度の治療および予防に対して現在承認されている薬剤の大半、すなわちビスフォスフォネート、エストロゲン、サケカルシトニンおよび選択的エストロゲン受容体モジュレーターであるラロキシフェンは、破骨細胞性の骨吸収を阻害することによって骨量を増加させるように作用するが、以下に考察するように、最近では、骨形成タンパク質(Bone morphogenic protein)およびスタチン系薬剤を含む同化促進薬剤(anabolic drug)の探索への関心が急速に高まっている。エストロゲンまたは副甲状腺ホルモンを含むホルモン療法を用いることもできる。これらの治療法は臨床的に使用されてきており、ビスフォスフォネートおよびエストロゲンの場合には数十年にわたるが、老年集団において幅広く骨粗鬆症が存続していることを考慮すると、それらの効能が限定的なことは明白である。
【0012】
アレンドロネート、リセドロネート、イバンドロン酸などのビスフォスフォネートは、ヒドロキシアパタイト骨塩中に組み込まれ、以下を含む複数の機序によって骨吸収を阻害するように作用する:a)破骨細胞の骨付着と干渉する、b)破骨細胞前駆細胞の分化を阻害する、およびc)破骨細胞による選択的な取込みの後に破骨細胞機能を阻害する。エストロゲンは、閉経後女性における骨粗鬆症の治療のために長年にわたって広く用いられている。エストロゲンの作用の機序については依然としてさらに調査を要するが、諸研究により、閉経後女性におけるエストロゲン補充が骨格リモデリングを低下させるとともにその損失を減じさせ、さらには骨梁骨量および皮質骨量の両方を増加させることさえできることが示されている。閉経後女性における骨密度に対するエストロゲン療法の有益な効果にもかかわらず、その使用は乳癌および子宮癌のリスク増大を伴い、出血、乳房圧痛および鼓腸を引き起こす。選択的エストロゲン受容体モジュレーターは、エストロゲン療法の合併症およびリスクを理由として、骨粗鬆症の治療のために開発された。エストロゲンと同様に、タモキシフェンおよびラロキシフェンなどのSERMは、骨ではエストロゲン受容体に対するアゴニストであるが、乳房組織ではエストロゲン受容体のアンタゴニストである。
【0013】
いくつかの臨床試験により、鼻腔内サケカルシトニン療法が骨量損失を予防し、脊椎骨折の比率を低下させるために有効であることが示されている。サケカルシトニンは、骨粗鬆症および骨折既往のある閉経後女性において脊椎骨折のリスクを36%低下させ、その安全性プロファイルは長期使用を通じてプラセボと同等であることが示されている。サケカルシトニンは忍容性が良好であり、骨折の場合にはある程度の鎮痛をもたらし、ホルモン療法に代わる妥当な選択肢である。
【0014】
RANKL/OPG/RANK経路の発見は、改良された抗吸収療法を開発するための新たな機会を切り開いた。上述したように、トランスジェニックマウスにおけるOPGの恒常的な過剰発現は軽症の大理石骨病を招いており、OPG-/-マウスは重症の骨粗鬆症である。OPGのトランスジェニック性過剰発現はノックアウト表現型を救済する(Min, H., et al., 2000)。破骨細胞性の骨吸収を低下させるための、直接的なRANKL阻害または可溶性OPGのレベルを高めることのいずれかによるRANKL経路の阻害は、骨粗鬆症治療に対する有望な方法論である。
【0015】
骨形成タンパク質
最近、同化促進アプローチ、例えば、骨形成タンパク質(BMP)の、または副甲状腺ホルモンのパルス状IV注入投与の使用への関心が急速に高まっている。これらの治療戦略は大いに有望であり、BMPの初期評価は期待の持てるものである。しかし、これらの治療アプローチに、骨の過成長、骨棘、異所性骨、血管石灰化またはさらには新生物のリスクがないわけではない。
【0016】
モノクローナル抗体
最近の1件の小規模な臨床試験では、RANKLに対するヒトモノクローナル抗体の単回注射が、骨代謝回転マーカーを最長6カ月間にわたって低下させることが示されている(Bekker, P. J., et al., A single-dose placebo-controlled study of AMG 162, a fully human monoclonal antibody to RANKL, in postmenopausal women. J Bone Miner Res 2004 19, 1059-1066)。ヒトモノクローナル坑腫瘍壊死因子(TNF)抗体であるアダリムマブ(Humira(登録商標))は、関節リウマチの症状および徴候を効果的に軽減し、放射線検査で認められるびらん性関節変化の進行を予防する。
【0017】
スタチン
大部分が男性の退役軍人である大規模コホートの1件の試験では、スタチンの使用に伴って、脂質低下療法を行わない場合と比較して骨折リスクの36%の低下がみられ、他の脂質低下治療法と比較した場合には32%のリスク低下がみられた。スタチン系薬剤と、微小血管機能の改善を介した炎症軽減および新骨成長の促進を含む骨の健康状態との間の関連を説明するために、いくつかの生物学的機序が提唱されている(Scranton, R.E. (2005). Statin use and fracture risk: study of a US veterans population. Arch. Intern. Med. 165: 2007-2012)。
【0018】
ウイルスベクターを用いたオステオプロテジェリン遺伝子治療
オステオプロテジェリンは破骨細胞の形成、機能および生存の阻害によって骨吸収を防止するタンパク質であり、これらの活性のために、組換えOPGは、骨粗鬆症などの慢性的な骨吸収疾患の治療のための魅力ある薬剤候補となっている。遺伝子治療は、抗吸収性タンパク質の遺伝子を送達することによって長期的治療を実現する可能性がある。OPGはアデノ随伴ウイルスおよびアデノウイルスにより、いずれもOPGのみまたはIgG Fc鎖との融合タンパク質をコードするDNAとして送達されている。rAAV-OPG-IRES-EGFPのインビボ投与は、注射部位での筋細胞の検出可能な形質導入および注射2日後の血清OPG発現レベルの有意な増加をもたらし、骨折リモデリングの低下も伴うが、治癒中の骨折の構造強度に対してはほとんど影響を及ぼさなかった。
【0019】
抽出酵母細胞壁粒子は、容易に入手可能な、生分解性の、直径約2〜4μmである、実質的に球状の粒子である。抽出酵母細胞壁粒子の調製は当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第4,992,540号;第5,082,936号;第5,028,703号;第5,032,401号;第5,322,841号;第5,401,727号;第5,504,079号;第5,968,811号;第6,444,448 B1号;第6,476,003 B1号;公開米国出願第2003/0216346 A1号、第2004/0014715 A1号およびPCT公開出願WO 02/12348 A2号に記載されている。「全グルカン粒子」と称する抽出酵母細胞壁粒子の一形態が送達媒体として提案されているが、粒子からの有効成分の単純拡散による放出、または粒子マトリックスの生分解による全グルカン粒子と化学的に架橋された作用物質の放出のいずれも限定的である。米国特許第5,032,401号および第5,607,677号を参照。これらの限界を克服する、改良された酵母細胞壁薬物送達系が、米国公開特許出願第US2005281781号および公開PCT国際特許出願第WO2006007372 A3号に開示されている。「酵母細胞壁粒子」(YCWP)には、酵母グルカン粒子(YGP)および酵母グルカン-マンナン粒子(YGMP)が含まれる。
【0020】
GI免疫系のもう1つの重要な構成要素は、M細胞またはミクロフォールド細胞である。M細胞は、種々のタンパク質およびペプチド抗原のエンドサイトーシスを行う、腸管上皮内のリンパ濾胞上にある特殊な細胞種である。これらのタンパク質を消化する代わりに、M細胞はそれらを下方の組織に輸送し、そこでそれらは局所樹状細胞細胞およびマクロファージによって取り込まれる。
【0021】
M細胞は、分子および粒子を消化管の内腔からエンドサイトーシスまたは食作用によって取り込む。この物質は続いて細胞の内部を通って小胞内から基底細胞膜に輸送され、そこで細胞外空間に放出される。この過程はトランスサイトーシスとして知られている。その基底表面で、M細胞の細胞膜は下方のリンパ球および抗原提示細胞の周りで広範囲にわたって折りたたまれており、それらがM細胞から放出された輸送材料を取り込み、抗原提示のためにそれを処理する。
【0022】
ある研究により、パイエル板のM細胞による酵母粒子(直径3.4+/-0.8ミクロン)のトランスサイトーシスには1時間未満しか要しないことが示されている(Beier, R., & Gebert, A., Kinetics of particle uptake in the domes of Peyer's patches, Am J Physiol. 1998 Jul; 275(1 Pt 1):G130-7)。上皮内マクロファージによる明らかな食作用がないと、酵母粒子は下方に移動して2.5〜4時間以内に基底膜を通過し、そこでそれらは急速に食作用を受けてパイエル板ドームの外に輸送される。ヒト鼻咽頭リンパ組織(扁桃および咽頭扁桃)に認められるM細胞は、呼吸器感染症を引き起こすウイルスの捕集に関与することが示されている。インビトロのM細胞モデルの研究により、蛍光標識されたミクロスフェア(Fluosphere、0.2μm)およびキトサン微粒子(0.2μm)の取込みが示されている(van der Lubben I.M., et al., Transport of chitosan microparticles for mucosal vaccine delivery in a human intestinal M-cell model, J Drug Target, 2002 Sep;10(6):449-56)。レクチンの一つであるハリエニシダ凝集素1(Ulex europaeus agglutinin 1;UEA1、α-L-フコース残基に特異的)は、ポリスチレンミクロスフェア(0.5μm)または重合リポソームをM細胞(0.2μm)へと向かわせるために用いられている(Clark, M.A., et al., Targeting polymerised liposome vaccine carriers to intestinal M cells, Vaccine, 2001 Oct 12;20(12):208-17)。マウスにおけるインビボ試験では、ポリ-D,L-乳酸(PDLLA)ミクロスフェアまたはゼラチンミクロスフェア(GM)がマクロファージおよびM細胞によって効率的に取り込まれうることが報告されている(Nakase, H., et al., Biodegradable microspheres targeting mucosal immune-regulating cells: new approach for treatment of inflammatory bowel disease, J Gastroenterol. 2003 Mar;38 Suppl 15:59-62)。
【0023】
しかし、ポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド)微粒子およびリポソームを含む合成微粒子(particulate)送達媒体の取込みはばらつきが大きく、それは粒子およびM細胞の両方の物理的性質によって決まることが報告されている。Clark, M.A., et al., Exploiting M cells for drug and vaccine delivery, Adv Drug Deliv Rev. 2001 Aug 23;50(1-2):81-106。同じ研究では、粒子またはリポソームを、M細胞の表面と選択的に結合する適切なレクチン、微生物アドヘシンおよび免疫グロブリンでコーティングすることによって、送達性を向上させうることも報告されている。同じく、Florence, A.T., The oral absorption of micro- and nanoparticulates: neither exceptional nor unusual, Pharm Res. 1997 Mar; 14(3):259-66も参照のこと。
【0024】
病原体パターン認識受容体(PRR)は、微生物表面に存在する共通の構造モチーフおよび分子モチーフを認識し、先天性免疫応答の誘導に寄与する。マンノース受容体およびβグルカン受容体は真菌病原体の認識に部分的に関与する。マクロファージのサブセット上に発現される糖質結合受容体の一つであるマンノース受容体(MR)は、そのようなPRRの一つと考えられている。マクロファージは、マンノースおよびマンノース-6-リン酸の両方に対する受容体を有し、これらの糖を提示している分子と結合してそれらを内部移行させることができる。それらの分子はエンドサイトーシスによってプレリソソーム性エンドソームへの内部移行を受ける。この内部移行は、マンノース-6-リン酸で修飾され、修飾された3'末端に対するジスルフィド架橋によってオリゴデオキシヌクレオチドと結合したウシ血清アルブミンを用いて、マクロファージへのオリゴヌクレオチドの進入を向上させるために用いられている;Bonfils, E., et al., Nucl. Acids Res. 1992 20, 4621-4629を参照。マクロファージはまた、CR3(Ross, G.D., et al., Specificity of membrane complement receptor type three (CR3) for β-glucans. Complement lnflamm. 1987 4:61)、デクチン-1(Brown, G.D. and S. Gordon. Immune recognition. A new receptor for β-glucans. Nature 2001 413:36)およびラクトシルセラミド(Zimmerman J.W., et al., A novel carbohydrate-glycosphinglipid interaction between a beta-(1-3)-glucan immunomodulator, PGG-glucan, and lactosylceramide of human leukocytes. J Biol Chem. 1998 273(34):22014-20)を含む、βグルカン受容体も発現する。βグルカン受容体であるCR3は主として単球、好中球およびNK細胞上で発現されるが、デクチン-1は主としてマクロファージの細胞表面に発現される。ラクトシルセラミドはM細胞において高レベルで認められる。ミクログリアもβグルカン受容体を発現しうる(Muller, C.D., et al. Functional beta-glucan receptor expression by a microglial cell line, Res Immunol.1994 145(4):267-75)。
【0025】
マンノース受容体およびβグルカン受容体の両方に対する結合が食作用に及ぼす相加効果については証拠がある。Giaimisらは、マウスのマクロファージ様細胞株ならびにマウスの腹腔常在マクロファージによる非オプソニン化熱殺菌酵母(S. cerevisiae)の食作用が、マンノース受容体およびβグルカン受容体の両方によって媒介されることを示唆する観察所見を報告している。非オプソニン化熱殺菌酵母の最大限の食作用を実現するためには、マンノース受容体およびβグルカン受容体の両方の共発現が必要である(Giaimis, J., et al., Both mannose and beta-glucan receptors are involved in phagocytosis of unopsonized, heat-killed Saccharomyces cerevisiae by murine macrophages, J Leukoc Biol. 1993 54(6):564-71)。
【発明の開示】
【0026】
発明の概要
ある好ましい態様において、本発明は、骨の損失を伴う骨病状の治療のための組成物および方法を提供する。好ましい態様において、本発明は、オステオプロテジェリン反応性病状の治療のための組成物および方法を提供する。好ましい態様において、治療は、本発明の組成物および方法を用いた経口投与による、オステオプロテジェリンまたはその機能的等価物のマクロファージ標的指向性発現によって媒介される。好ましい態様において、オステオプロテジェリンまたはその機能的等価物を発現するプラスミドDNAは、酵母グルカン粒子(YGP)または酵母グルカン-マンナン粒子(YGMP)を含む組成物中に、カチオン性ポリマー-DNAナノ複合体の形態で組み入れられる。これらのYGP-DNA微粒子およびYGMP-DNA微粒子は、粒子表面のグルカンおよびマンナン多糖に対する糖質受容体の結合を介した組織、粘膜および腸管付属リンパ組織(GALT)のマクロファージへの受容体媒介性取込みにより、全身的、粘膜的および経口的な生物学的利用能を有する。食作用を受けると粒子はエンドソーム区画に飲み込まれ、そこでカチオン性ポリマーがDNAを放出し、エンドソームを膨張させてDNAを細胞質中に放出させる。YGP-DNA製剤およびYGMP-DNA製剤への添加剤の組入れは、エンドソームDNA放出および核取込みを促進する。
【0027】
好ましい態様において、本発明は、オリゴヌクレオチド、アンチセンス構築物、siRNA、酵素RNA、mRNA、組換えDNA構築物、線状DNA断片、阻害された線状DNA断片およびそれらの混合物からなる群より選択される核酸を含むペイロード(payload)分子;キトサン、ポリエチレンイミン、ポリ-L-リジン、アルギン酸塩、キサンタン、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドおよびそれらの混合物からなる群より選択されるペイロード捕捉分子;ならびに酵母グルカン粒子または酵母グルカン-マンナン粒子より選択される担体を含む組成物を提供する。特に好ましい態様において、組換えDNA構築物は、オステオプロテジェリンまたはその機能的等価物をコードするオープンリーディングフレームと機能的に連結された制御エレメントを含む発現ベクターである。ある態様において、発現ベクターはpIRES2DsRED2-hOPGである。他の態様において、発現ベクターは、SEQ ID NO:1のポリヌクレオチドを含む。他の態様において、発現ベクターは、SEQ ID NO:2のポリペプチド、本質的にSEQ ID NO:2の28〜124位の残基からなるポリペプチド、本質的にSEQ ID NO:2の124〜185位の残基からなるポリペプチド、および本質的にSEQ ID NO:2の28〜185位の残基からなるポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドをコードする。典型的には、担体は内部空間を規定しかつ約6〜約90重量パーセントのβグルカンを含む抽出酵母細胞壁である。
【0028】
好ましい態様において、本発明は、治療を必要とする対象における低骨密度を特徴とする病状を治療する方法であって、経口、口腔、舌下、肺または経粘膜用の剤形である、上記の組成物および薬学的に許容される添加剤を提供する段階を含む方法を提供する。好ましい態様において、本方法は、組成物の有効量を対象に投与する段階を含む。病状は、骨粗鬆症、人工関節周囲骨溶解、廃用性骨減少症、動脈石灰化、または、腫瘍転移、骨癌性疼痛、若年性パジェット病、ゴーシェ病、HIVの抗ウイルス治療、関節炎、サラセミアもしくは炎症性腸疾患に伴う骨溶解でありうる。
【0029】
さらなる態様において、本発明は、細胞におけるオステオプロテジェリン発現を増加させる方法であって、本発明の組成物を提供する段階および細胞を組成物と接触させる段階を含む方法を提供する。一般に、細胞は、マクロファージ、破骨細胞、破骨細胞前駆細胞、パイエル板のM細胞、単球、好中球、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、クッパー細胞、肺胞食細胞、腹腔マクロファージ、乳マクロファージ、ミクログリア細胞、好酸球、顆粒球、メサンギウム食細胞または滑膜A細胞である。好ましい態様において、本方法はさらに、オステオプロテジェリンを細胞において発現させる段階を含む。好ましい態様において、本方法はさらに、オステオプロテジェリンを細胞から分泌させる段階を含む。分泌されたオステオプロテジェリンは、細胞外液中に、好ましくは細胞と接触している細胞液中に、少なくとも2pmol/lの濃度で存在する。
【0030】
他の局面において、本組成物は、低骨密度を特徴とする病状の治療用の医薬の製造のために用いることができる。病状は、骨粗鬆症、人工関節周囲骨溶解、廃用性骨減少症、動脈石灰化、または、腫瘍転移、骨癌性疼痛、若年性パジェット病、ゴーシェ病、HIVの抗ウイルス治療、関節炎、サラセミアもしくは炎症性腸疾患に伴う骨溶解でありうる。
【0031】
さらなる態様において、本発明は、細胞におけるオステオプロテジェリン発現を増加させる方法であって、内部空間を規定しかつ約6〜約90重量パーセントのβグルカンを含む抽出酵母細胞壁、ペイロード捕捉分子およびペイロード分子を含む送達系の有効量を提供する段階であって、ペイロード分子がオリゴヌクレオチド、アンチセンス構築物、siRNA、酵素RNA、mRNA、組換えDNA構築物、線状DNA断片、阻害された線状DNA断片およびそれらの混合物からなる群より選択される核酸である段階;細胞を送達系と接触させる段階;ならびにオステオプロテジェリンを発現させる段階を含む方法を提供する。接触の段階はインビトロまたはインビボのいずれで行ってもよい。好ましくは、組換えDNA構築物は、オステオプロテジェリンまたはその機能的等価物をコードするオープンリーディングフレームと機能的に連結された制御エレメントを含む発現ベクター、例えばpIRES2DsRED2-hOPGなどである。ある態様において、発現ベクターは、SEQ ID NO:1のポリヌクレオチドを含む。好ましい態様において、発現ベクターは、SEQ ID NO:2のポリペプチド、本質的にSEQ ID NO:2の28〜124位の残基からなるポリペプチド、本質的にSEQ ID NO:2の124〜185位の残基からなるポリペプチド、および本質的にSEQ ID NO:2の28〜185位の残基からなるポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドをコードする。一般に、細胞は、マクロファージ、破骨細胞、破骨細胞前駆細胞、パイエル板のM細胞、単球、好中球、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、クッパー細胞、肺胞食細胞、腹腔マクロファージ、乳マクロファージ、ミクログリア細胞、好酸球、顆粒球、メサンギウム食細胞または滑膜A細胞である。
【0032】
さらなる態様において、本発明は、治療を必要とする対象におけるオステオプロテジェリン反応性病状を治療する方法であって、経口、口腔内、舌下、肺または経粘膜用の剤形である本発明の組成物および薬学的に許容される添加剤を提供する段階を含む方法を提供する。典型的には、本方法はまた、組成物の有効量を対象に投与する段階も含む。一般に、病状とは、骨粗鬆症、人工関節周囲骨溶解、廃用性骨減少症、動脈石灰化、または、腫瘍転移、骨癌性疼痛、若年性パジェット病、ゴーシェ病、HIVの抗ウイルス治療、関節炎、サラセミアもしくは炎症性腸疾患に伴う骨溶解である。
【0033】
さらなる別の態様において、本発明は、オステオプロテジェリン送達系を作製する方法であって、オリゴヌクレオチド、アンチセンス構築物、siRNA、酵素RNA、mRNA、組換えDNA構築物、線状DNA断片、阻害された線状DNA断片およびそれらの混合物からなる群より選択される核酸を含むペイロード分子を、キトサン、ポリエチレンイミン、ポリ-L-リジン、アルギン酸塩、キサンタン、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドおよびそれらの混合物からなる群より選択されるペイロード捕捉分子;ならびに酵母グルカン粒子または酵母グルカン-マンナン粒子より選択される担体と接触させる段階を含む方法を提供する。好ましくは、組換えDNA構築物は、オステオプロテジェリンまたはその機能的等価物をコードするオープンリーディングフレームと機能的に連結された制御エレメントを含む発現ベクターである。ある態様において、発現ベクターはpIRES2DsRED2-hOPGである。他の態様において、発現ベクターは、SEQ ID NO:1のポリヌクレオチドを含む。他の態様において、発現ベクターは、SEQ ID NO:2のポリペプチド、本質的にSEQ ID NO:2の28〜124位の残基からなるポリペプチド、本質的にSEQ ID NO:2の124〜185位の残基からなるポリペプチド、および本質的にSEQ ID NO:2の28〜185位の残基からなるポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドをコードする。典型的には、担体は、内部空間を規定しかつ約6〜約90重量パーセントのβグルカンを含む抽出酵母細胞壁である。
【0034】
ある好ましい態様において、オープンリーディングフレームによってコードされるタンパク質とは、骨粗鬆症、人工関節周囲骨溶解、廃用性骨減少症、動脈石灰化、または、腫瘍転移、骨癌性疼痛、若年性パジェット病、ゴーシェ病、HIVの抗ウイルス治療、関節炎、サラセミアもしくは炎症性腸疾患に伴う骨溶解を有する対象における治療効果を生じさせるタンパク質である。特に好ましい態様において、オープンリーディングフレームによってコードされるタンパク質はヒトオステオプロテジェリンまたはその機能的等価物である。
【0035】
他の態様において、本発明は、オステオプロテジェリンまたは機能的等価物、および薬学的に許容される添加剤を含む薬学的組成物を提供する。好ましい態様において、本組成物は経口投与に適する。他の好ましい態様において、本組成物は非経口的投与、最も好ましくは皮下または筋肉内投与のために製剤化される。他の好ましい態様において、本組成物は粘膜投与のために製剤化される。
【0036】
本発明はまた、低骨密度を伴う病状を治療する方法であって、βグルカンを含む抽出酵母細胞壁、ペイロード捕捉分子およびペイロード分子を含む治療用送達系の有効量を提供する段階であって、ペイロード分子が、欠損性の骨タンパク質、例えばオステオプロテジェリンなどをコードするオープンリーディングフレームと機能的に連結された制御エレメントを含む発現ベクターである段階;および、そのような骨タンパク質欠損を有する細胞を治療用送達系と接触させる段階を含む方法も提供する。細胞を接触させる段階は、インビトロまたはインビボのいずれで行ってもよい。好ましい態様において、治療用送達系は、典型的には食作用により、細胞への内部移行を受ける。
【0037】
適切に治療されうる細胞とは、マクロファージ、パイエル板のM細胞、単球、好中球、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、クッパー細胞、肺胞食細胞、腹腔マクロファージ、乳マクロファージ、ミクログリア細胞、好酸球、顆粒球、メサンギウム食細胞または滑膜A細胞でありうる。ある好ましい態様において、細胞は破骨細胞または破骨細胞前駆細胞である。
【0038】
本微粒子薬物送達系および方法の上記および他の特徴および利点は、さまざまな図の全体を通じて同様の参照用記号が同じ部分を指している添付の図面に例示されている通り、システムおよび方法の好ましい態様に関する以下のより詳細な説明から明らかになると考えられる。
【0039】
本発明の上記および他の目的、特徴および利点は、さまざまな図面を通じて同様の参照用記号が同じ部分を指している添付の図面に例示されている通り、本発明の好ましい態様に関する以下のより詳細な説明から明らかになると考えられる。図面は必ずしも縮尺通りではなく、むしろ本発明の原理を図式的に説明することに重点がおかれている。
【0040】
発明の詳細な説明
酵母細胞壁粒子を送達媒体として用いるOPG遺伝子治療
好ましい態様において、本発明は、低骨密度および骨粗鬆症の治療法の現在の限界を克服するための、ヒトオステオプロテジェリンをコードするDNAを含むミクロンサイズの酵母細胞壁粒子の経口投与のための組成物および方法を提供する。好ましい態様において、骨中のマクロファージおよび破骨細胞におけるオステオプロテジェリンの有効な発現がみられる。
【0041】
この送達系は、オリゴヌクレオチド、アンチセンス構築物、siRNA、発現ベクターを含むDNA構築物などの核酸、ならびにペプチドおよびタンパク質を含む、広範囲にわたるペイロード分子のインビボまたはインビトロでの送達のために有用である。マクロファージを標的とするこの革新的な送達系の潜在的な用途は、マクロファージの遺伝子発現をアップレギュレートおよびダウンレギュレートしうるペイロードを送達するYCMPの能力と、経口投与されたペイロードを感染、炎症、腫瘍または他の病態の部位に運ぶためのマクロファージ輸送の使用との組み合わせが基になって、広範囲にわたる。
【0042】
本発明は、βグルカンを含む抽出酵母細胞壁、ペイロード捕捉分子およびペイロード分子を含む治療用送達系であって、ペイロード分子およびペイロード捕捉分子が同じ溶媒系の中に可溶性であり、ペイロード分子が欠損性の抗破骨細胞形成性骨タンパク質の機能を補うような治療用送達系を提供する。特に好ましいタンパク質はオステオプロジェリンである。本発明はさらに、治療用送達系を作製する方法および使用する方法も提供する。
【0043】
好都合なことに、本発明の組成物および方法は、本質的にマクロファージを直接に標的とし、好ましい態様においては、抗破骨細胞形成性タンパク質を提供する。特に好ましい抗破骨細胞形成性タンパク質はOPGである。経口的または粘膜的または非経口的な経路による本発明の治療用送達系の投与は、静脈内への酵素またはタンパク質補充療法の有害作用を回避するのに役立つ。コードされるタンパク質それ自体の代わりに発現ベクターを供給することによってタンパク質欠乏を補うことは、抗原反応を最小化または回避するために役立つ。
【0044】
好都合なことに、マクロファージおよび他の貪食細胞を標的とすることにより、本発明は、治療システムを骨、腎臓、肺、胃腸管および脳といった多様な範囲にわたる位置に送達する手段を提供する。特定の理論に固執するわけではないが、ある部位へのマクロファージおよび他の貪食細胞の遊走は、部分的には、炎症、脂質または他の生理的マクロファージ誘引物質といった1つまたは複数の刺激によって決定されると考えられている。このモデルの下では、任意の特定の組織における本発明の治療用送達系を保有する貪食細胞の集団は、他の組織中の同様の集団との動的平衡状態にあると考えられる。このため、任意の特定の組織における治療用送達系を保有しかつそれ故に欠損性タンパク質の補給を受ける貪食細胞の集団は、少なくとも一部には、マクロファージおよび他の貪食細胞の分布および活性を調節するように作用する生理的影響に応答して経時的に変動すると思われる。
【0045】
一般に、本発明の組成物および方法は、好ましくは経口投与によって、インビボにおける治療薬の簡単で有効かつ効率的な送達を提供する。本組成物は、入手可能な組成物に比べて改良された安定性を有し、患者の利便性(およびそれ故に患者のコンプライアンス)、より低いコスト、ならびに副作用の低下または軽減というさらなる利点も有する。
【0046】
定義
「対象」とは、哺乳動物および非哺乳動物を意味する。「哺乳動物」とは、ヒト、チンパンジーおよび他の無尾猿(ape)および有尾猿(monkey)種などの非ヒト霊長動物;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギおよびブタなどの家畜;ウサギ、イヌおよびネコなどのペット(domestic animal);ラット、マウスおよびモルモットなどの齧歯動物を含む実験動物などを非限定的に含む、哺乳綱の任意のメンバーを意味する。非哺乳動物の例には、鳥類などが非限定的に含まれる。「対象」という用語は、特定の年齢または性別を表さない。
【0047】
「治療効果」とは、症状の改善または疾患の進行の低下を意味するが、破骨細胞形成制御において、「治療効果」とは、骨量または骨密度の検出可能な増加を意味する。「治療有効量」とは、疾患を治療するために対象に投与された場合に、そのような治療効果を引き起こすのに十分な化合物の量を意味する。「治療有効量」は、化合物、治療される疾病状態、治療される疾患または重症度、対象の年齢および相対的健康度、投与の経路および形態、担当する医師または獣医の判断、ならびに他の因子に応じて異なると考えられる。タンパク質の「機能的等価物」とは、そのタンパク質と構造的に異なるが等しい条件下でそのタンパク質と同じ機能を果たす分子、タンパク質、または非タンパク質を意味する。オステオプロテジェリンの「機能的等価物」とは、オステオプロテジェリンタンパク質と構造的に異なりかつ等しい条件下でRANKLを封鎖するように作用する分子、タンパク質、または非タンパク質を意味する。オステオプロテジェリンは、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバーである。オステオプロテジェリンタンパク質の好ましい機能的等価物には、本質的にSEQ ID NO:2の28〜124位の残基からなるポリペプチド、本質的にSEQ ID NO:2の124〜185位の残基からなるポリペプチド、および本質的にSEQ ID NO:2の28〜185位の残基からなるポリペプチドといった、少なくとも1つの腫瘍壊死因子(TNTFR)ドメインを含むタンパク質が含まれる。
【0048】
本明細書で用いる場合、「ポリプレックス(polyplex)」とは、高分子電解質複合体、特に、プラスミドDNAなどのポリヌクレオチドおよびカチオン性ポリマーなどの多価イオンポリマーを含む高分子電解質複合体を意味する。本発明の好ましいポリプレックスは、オープンリーディングフレームと機能的に連結された制御エレメントを含む発現ベクターを含むペイロード分子、およびペイロード捕捉分子を含む。
【0049】
ペイロード捕捉分子
ペイロード捕捉分子は、好ましくは、薬学的に許容される添加剤である。ペイロードおよび捕捉分子はいずれも溶媒系の中に可溶性である;溶媒系は、酵母細胞粒子糖質マトリックスを通して吸収されて、ペイロードおよび捕捉ポリマーの吸収を可能にしなければならない。ペイロードおよび捕捉分子は水溶性であることが好ましい。好ましい態様において、捕捉分子は生分解性である。
【0050】
所定のペイロードとの捕捉反応の作用機序が、ペイロード捕捉分子の選択を決定づける。静電相互作用のためには、ペイロードと反対の電荷を持つ荷電ペイロード捕捉分子が必要である。物理的封じ込めのためには、ペイロード捕捉分子は、ペイロードの拡散を低下させるマトリックスの形成に関与することが好適である。他の態様において、ペイロード捕捉分子は、ペイロードの保持に寄与する疎水結合特性に寄与する。さらなる態様において、ペイロード捕捉分子はペイロードと選択的に結合し、ペイロードの保持に寄与する親和性相互作用を与える。
【0051】
一般に、高分子電解質は適切なペイロード捕捉分子となりうる。いくつかの適切な高分子電解質が米国特許第6,133,229号に開示されている。高分子電解質は、カチオン性またはアニオン性の高分子電解質であってよい。両性高分子電解質を用いることもできる。カチオン性高分子電解質とは、好ましくは、分子鎖に沿って分布したカチオン基を有するポリマーである。カチオン基は、ある態様においては4級アンモニウム由来部分を含むことができ、これは鎖から張り出して側鎖中に配置されてもよく、またはその内部に組み込まれてもよい。カチオン性高分子電解質の例には以下が含まれる:ビニルピロリドンと4級メタクリル酸メチルとのコポリマー、例えば、ISPから入手可能なGAFQUAT(登録商標)シリーズ(755N、734、HS-100);置換ポリアクリルアミド;ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミンおよび置換誘導体;ポリアミンホモポリマー(GOLCHEM(登録商標)CL118);ポリアミンコポリマー(例えば、エピクロロヒドリンとモノメチルアミンまたはジメチルアミンとの縮合物);ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(polyDADMAC);置換デキストラン;変性グアーガム(ヒドロキシプロピトリモニウムクロリドにより置換);置換タンパク質(例えば、ダイズタンパク質および加水分解コラーゲン上に4級基が置換);ポリアミノ酸(例えば、ポリリジン);低分子量ポリアミノ化合物(例えば、スペルミンおよびスペルミジン)。天然または人工のポリマーのいずれを用いてもよい。MWが150〜5,000,000、好ましくは5000〜500,000、より好ましくは5000〜100,000であるカチオン性高分子電解質を用いることができる。0.01〜10%の量が好ましく、より好ましくは0.1〜2%w/v、特に0.05〜5%である。
【0052】
アニオン性高分子電解質とは、好ましくは、分子鎖に沿って分布したアニオン基を有するポリマーである。アニオン基は、カルボン酸基、スルホン酸基、硫酸基または他の負に荷電したイオン化しうる基を含むことができ、これは鎖から張り出して基の上に配置されてもよく、またはポリマー骨格と直接結合していてもよい。天然または人工のポリマーを用いてもよい。
【0053】
アニオン性高分子電解質の例には以下が含まれる:メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー、メチルビニルエーテルとマレイン酸とのコポリマー(それぞれGantrez ANシリーズおよびSシリーズ、International Specialty Products, Wayne, NJ);アルギン酸および塩;カルボキシメチルセルロースおよび塩;置換 ポリアクリルアミド(例えば、カルボン酸基により置換);ポリアクリル酸および塩;ポリスチレンスルホン酸および塩;デキストラン硫酸;置換糖類、例えば、オクト硫酸スクロース(sucrose octosulfate);ヘパリン。MWが150〜5,000,000、好ましくは5000〜500,000、より好ましくは5000〜100,000であるアニオン性高分子電解質を用いることができる。0.01%〜10%の量が好ましく、特に0.05〜5%、より特別には0.1〜2%w/vである。
【0054】
多糖などの生体ポリマーは、好ましい捕捉ポリマーである。好ましくは、ポリマーは100,000ダルトン未満の平均分子量となるように処理される。ポリマーは好ましくは、カチオン性またはアニオン性の特徴を与えるために誘導体化される。適切な多糖には、キトサン(脱アセチル化キチン)、アルギン酸塩、2-(ジエチルアミノ)エチルエーテルデキストラン(DEAE-デキストラン)およびデキストラン硫酸などのデキストラン、キサンタン、ローカストビーンガムならびにグアーガムが含まれる。
【0055】
以下の2つの一般的クラスのカチオン性分子が、核酸などの負に荷電したペイロードに対する捕捉分子として用いるために適している:カチオン性ポリマーおよびカチオン性脂質。
【0056】
多岐にわたるカチオン性ポリマーがインビトロのトランスフェクションを媒介することが示されており、これはタンパク質[ヒストン(Fritz, J. D., et al, (1996) Hum. Gene Ther. 7, 1395-1404)および高速移動群(HMG)タンパク質(Mistry, A. R., et al. (1997) BioTechniques 22, 718-729)など]およびポリペプチド[ポリリジン(Wu, G. Y. & Wu, C. H. (1987) J. Biol. Chem. 262,4429-4432, Wagner, E., et al., (1991) Bioconjugate Chem. 2, 226-231)、短い合成ペプチド(Gottschalk, S.,et al., (1996) Gene Ther. 3, 448-457;Wadhwa, M. S., et al., (1997) Bioconjugate Chem. 8, 81-88)およびらせん状両親媒性ペプチド(Legendre, J. Y., et al., (1997) Bioconjugate Chem. 8,57-63;Wyman, T. B., et al., (1997) Biochemistry 36,3008-3017)など]から、合成ポリマー[ポリエチレンイミン(Boussif, O., et al., (1996) Gene Ther. 3, 1074-1080)、カチオン性デンドリマー(Tang, M. X., et al., (1996) Bioconjugate Chem. 7, 703-714;Haensler, J. et al., (1993) Bioconjugate Chem. 4, 372-379)およびグルカラミドポリマー (Goldman, C. K., et al., (1997) Nat. Biotech. 15, 462-466)など]までの範囲にわたる。その他の適切なカチオン性ポリマーには、N-置換グリシンオリゴマー(ペプトイド)(Murphy, J.E., et al, A combinatorial approach to the discovery of efficient cationic peptoid reagents for gene delivery, Proc Natl Acad Sci. USA, 1998 95 (4)1517-1522)、pDAMAと略記されるポリ(2-メチル-アクリル酸2-[(2-ジメチルアミノ)エチル)-メチル-アミノ]-エチルエーテル)およびポリ(2-ジメチルアミノエチル)-メタクリレート(pDMAEMA)(Funhoff, A.M., et al., 2004 Biomacromolecules, 5, 32-39)が含まれる。
【0057】
カチオン性脂質もトランスフェクションに適していることが当技術分野で公知である。Feigner, P.Ll, et al., Lipofection: a highly efficient, lipid-mediated DNA-transfection procedure.Proc Natl Acad Sci U S A. 1987 84(21):7413-7。適切なカチオン性脂質には、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、[N,N,N',N'-テトラメチル-N,N'-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2,3-ジ(オレオイルオキシ)-1,4-ブタンジアンモニウムヨージド](Promega Madison, WI, USA)、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(Promega Madison, WI, USA)、N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)]-N,N,N-トリメチルアンモニウムプロパンメチルスルフェート(DOTAP)、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド、1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、ジミリストオレオイルホスホメチルトリメチルアンモニウム(DMPTA)(Floch et al. 1997. Cationic phosphonolipids as non-viral vectors for DNA transfection in hematopoietic cell lines and CD34+ cells. Blood Cells, Molec.& Diseases 23: 69-87を参照)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(7-ニトロ-2-1,3-ベンゾオキサジアゾール-4-イル)、アンモニウム塩(Avanti Polar Lipids, Inc. Alabaster, AL, US)、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパンクロリド(Avanti Polar Lipids, Inc. Alabaster, AL, US)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(Avanti Polar Lipids, Inc. Alabaster, AL, US)および1,3-ジオレオイルオキシ-2-(6-カルボキシスペルミル)プロピルアミド(DOSPER)が含まれる。
【0058】
カチオン性捕捉分子として適切なポリアミンは、米国特許第6,379,965号および第6,372,499号に記載されている。
【0059】
ペイロード分子
本発明の微粒子送達系は、オリゴヌクレオチド、アンチセンス構築物、siRNA、酵素RNA、および発現ベクターを含む組換えDNA構築物などの核酸を非限定的に含むペイロード分子のインビボまたはインビトロにおける送達のために有用である。
【0060】
他の好ましい態様において、本発明の微粒子送達系は、アミノ酸、ペプチドおよびタンパク質などのペイロード分子のインビボまたはインビトロにおける送達のために有用である。「タンパク質」とは、より高レベルの三次および/または四次構造を生じるのに十分な鎖長を有するアミノ酸の配列を意味する。これはそのような構造を持たない「ペプチド」または他の低分子量薬物と区別するためである。典型的には、本明細書中のタンパク質は少なくとも約15〜20kD、好ましくは少なくとも約20kDの分子量を有する。
【0061】
本明細書における定義の範囲に含まれるタンパク質の例には、哺乳動物タンパク質、例えば、オステオプロテジェリン、ヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモンおよびGHスーパー遺伝子ファミリーの他のメンバーを含む成長ホルモン(GH);成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α-1-アンチトリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;第VIIIC因子、第IX組織因子およびフォンビルブラント因子などの凝固因子;プロテインCなどの抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺サーファクタント;ウロキナーゼまたは組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)などのプラスミノーゲン活性化因子;ボンバジン;トロンビン;腫瘍壊死因子α、腫瘍壊死因子β;エンケファリナーゼ;RANTES(regulated on activation normally T cell expressed and secreted);ヒトマクロファージ炎症タンパク質(MIP-1-α);ヒト血清アルブミンなどの血清アルブミン;ミューラー管阻害物質;リラキシンA鎖;リラキシンB鎖;プロリラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;DNase;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子(VEGF);ホルモンまたは増殖因子に対する受容体;インテグリン;プロテインAまたはD;リウマトイド因子;骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、-4、-5もしくは-6(NT-3、NT-4、NT-5またはNT-6)などの神経栄養因子、またはNGF-βなどの神経成長因子;血小板由来増殖因子(PDGF);aFGFおよびbFGFなどの線維芽細胞増殖因子;上皮増殖因子(EGF);TGF-α、およびTGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4またはTGF-β5を含むTGF-βなどのトランスフォーミング増殖因子(TGF);インスリン様増殖因子-Iおよび-II(IGF-IおよびIGF-II);des(1-3)-IGF-I(脳IGF-D;インスリン様増殖因子結合タンパク質;CD3、CD4、CD8、CD19およびCD20などのCDタンパク質;骨誘導因子;イムノトキシン;骨形成タンパク質(BMP);T細胞受容体;表面膜タンパク質;崩壊促進因子(DAF);ウイルス抗原、例えば、AIDSエンベロープの一部分など;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;調節タンパク質;イムノアドヘシン;抗体;ならびに以上に列記したポリペプチドのいずれかの生物活性断片または変異体が含まれる。好ましい態様において、タンパク質はオステオプロテジェリンまたはその機能的等価物である。
【0062】
GHスーパー遺伝子ファミリーのメンバーには、成長ホルモン、プロラクチン、胎盤性ラクトゲン、エリスロポエチン、トロンボポエチン、インターロイキン-2、インターロイキン-3、インターロイキン-4、インターロイキン-5、インターロイキン-6、インターロイキン-7、インターロイキン-9、インターロイキン-10、インターロイキン-11、インターロイキン-12(p35サブユニット)、インターロイキン-13、インターロイキン-15、オンコスタチンM、毛様体神経栄養因子、白血病抑制因子、αインターフェロン、βインターフェロン、γインターフェロン、ωインターフェロン、τインターフェロン、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、カルジオトロフィン-1、ならびにファミリーのメンバーとして同定および分類された他のタンパク質が含まれる。
【0063】
タンパク質ペイロード分子は、好ましくは本質的に純粋であり、望ましくは本質的に均質である(すなわち、混入性のタンパク質などを含まない)。「本質的に純粋な」タンパク質とは、組成物の総重量を基準にして、タンパク質を重量比で少なくとも90%、好ましくは重量比で少なくとも約95%含む組成物を意味する。「本質的に均質な」タンパク質とは、組成物の総重量を基準にして、タンパク質を重量比で少なくとも約99%含む組成物を意味する。タンパク質は天然供給源に由来してもよく、または組換え技術によって産生されうる。タンパク質には、アミノ酸置換によってまたは定方向的タンパク質進化(Kurtzman, A.L., et al., Advances in directed protein evolution by recursive genetic recombination: applications to therapeutic proteins, Curr Opin Biotechnol. 2001 12(4): 361-70)によって作製されたタンパク質変異体、ならびにPEG化タンパク質などの誘導体が含まれる。
【0064】
抗体
ある態様において、タンパク質ペイロード分子は抗体である。本明細書で用いる場合、「抗体」(Ab)または「モノクローナル抗体」(Mab)という用語は、無傷の分子、ならびにタンパク質と特異的に結合しうる抗体断片(例えば、Fab断片およびF(ab')2断片など)を含むことを意味する。Fab断片およびF(ab')2断片は、無傷の抗体のFc断片を欠いており、循環血中からより急速に消失し、無傷の抗体よりも非特異的組織結合性が低い可能性がある。したがって、これらの断片が好ましく、Fabまたは他の免疫グロブリン発現ライブラリーの生成物も同様である。さらに、本発明の抗体にはキメラ抗体、一本鎖抗体およびヒト化抗体も含まれる。
【0065】
抗体は、当技術分野で公知の任意のいくつかのさまざまな手法を用いて調製することができる。適切な手法については以下に簡単に考察する。抗体はポリクローナル性でもモノクローナル性でもよい。ポリクローナル抗体は、産生の迅速さおよび複数のエピトープに対する特異性、強力な免疫蛍光染色および抗原捕捉が保証されることを含め、初期開発のためには大きな利点がある。モノクローナル抗体は大規模産生に対して適応可能である;好ましい態様には、標的抗原のエピトープに特異的な少なくとも1つのモノクローナル抗体が含まれる。ポリクローナル調製物は大規模産生のために容易に再産生することはできないため、別の態様は少なくとも4種のモノクローナル抗体の混合物を用いている。
【0066】
一本鎖Fv(「scFv」または「sFv」)ポリペプチドとは、直接的に連結された、またはペプチドをコードするリンカーによって連結された、VHおよびVLをコードする配列を含む核酸から発現されうる、共有結合したVH:VLヘテロ二量体のことである。Huston, et al. Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 85: 5879-5883 (1988)。抗体V領域由来の自然に凝集しているが化学的には分離している軽鎖および重鎖ポリペプチドを、抗原結合部位の構造と実質的に同様な三次元構造にフォールディングするscFv分子へと変換するためのさまざまな構造。例えば、米国特許第6,512,097号、第5,091,513号および第5,132,405号および第4,956,778号を参照。
【0067】
1つのクラスの態様においては、組換え体の設計方法を用いて、抗体可変領域由来の2つの自然に会合しているが化学的に分離している重鎖および軽鎖ポリペプチドを、本来の抗体構造と実質的に同様な三次元構造へとフォールディングするsFv分子へと変換するための適切な化学構造(リンカー)を開発することができる。設計の基準には、一方の鎖のC末端ともう一方の鎖のN末端との間の距離を埋めるための適切な長さの決定が含まれ、この際、リンカーは一般に、らせん化および二次構造を形成する傾向のない小型の親水性アミノ酸残基から形成される。このような方法は当技術分野で記載されている。例えば、Hustonらに対する米国特許第5,091,513号および第5,132,405号;ならびにLadnerらに対する米国特許第4,946,778号を参照のこと。
【0068】
この点に関して、リンカー設計の最初の一般的な段階は、連結するのにふさわしい部位の同定を含む。VHおよびVLポリペプチドドメインのそれぞれにおける適切な連結部位には、ポリペプチドドメインからの残基の損失を最小限にし、かつ分子安定性に対する要求と合致する最小限の数の残基を含むリンカーを必要とするものが含まれる。一対の部位が、連結される「ギャップ」を規定する。1つのドメインのC末端を隣のドメインのN末端とつなぐリンカーは一般に、生理的溶液中で構造化されていない配置をとる親水性アミノ酸を含み、好ましくは、VHおよびVL鎖の適正なフォールディングを妨げる恐れのある大きな側基を有する残基を含まない。したがって、本発明における適切なリンカーは一般に、グリシン残基およびセリン残基が交互になったセットでできたポリペプチド鎖を含み、溶解性を向上させるためにグルタミン酸残基およびリジン残基を含んでもよい。このようなリンカー部分をコードするヌクレオチド配列は、当技術分野で公知のさまざまなオリゴヌクレオチド合成手法を用いて容易に得ることができる。
【0069】
または、ヒト化抗体断片が、マウスモノクローナル抗体の抗原結合部位、およびヒト抗体由来の可変領域断片(抗原結合部位を欠く)を含んでもよい。キメラおよびそのほかの人工改変モノクローナル抗体の作製のための手順には、Riechmann et al.(Nature 332: 323,1988), Liu et al.(PNAS 84 3439,1987)、Larrick et al.(Bio Technology 7: 934,1989)、およびWinter and Harris (TIPS 14: 139, May, 1993)に記載されたものが含まれる。
【0070】
ヒト抗体を作製するための1つの方法は、トランスジェニックマウスなどの非ヒト動物に標的抗原による免疫処置を行って、前記動物において標的抗原を対象とする抗体を産生させることを含む。非ヒト動物においてヒト抗体を産生させるための手順が開発されている。抗体は部分的にヒト性であってもよく、または好ましくは、完全にヒト性であってもよい。1つまたは複数のヒト免疫グロブリン鎖をコードする遺伝材料が導入された非ヒト動物(トランスジェニックマウスなど)を用いることもできる。このようなトランスジェニックマウスは、さまざまなやり方で遺伝的に改変されうる。遺伝的操作は、免疫処置の後に動物によって産生される少なくとも一部(好ましくは事実上すべて)の抗体において、内因性免疫グロブリン鎖をヒト免疫グロブリンポリペプチド鎖で置き換えうる。標的抗原でトランスジェニック動物を免疫処置することによって産生される抗体は本明細書中に提供される。
【0071】
1つまたは複数の内因性免疫グロブリン遺伝子がさまざまな手段によって不活性化されたマウスが作製されている。不活性化されたマウス遺伝子を置き換えるためにヒト免疫グロブリン遺伝子がマウスに導入されている。それらの動物で産生される抗体は、動物に導入されたヒト遺伝材料によってコードされるヒト免疫グロブリンポリペプチド鎖を組み込んでいる。このようなトランスジェニック動物の作製および使用のための手法の例は、米国特許第5,814,318号、第5,569,825号および第5,545,806号に記載されており、それらは参照により本明細書に組み入れられる。
【0072】
モノクローナル抗体は、従来の手順によって、例えば、免疫処置スケジュールの完了後にトランスジェニック動物から収集した脾細胞を不死化させることによって作製することができる。脾細胞を、従来の手順により、骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを作製することができる。
【0073】
ハイブリドーマ細胞株を作製するための方法は、そのようなトランスジェニック動物に対して標的抗原の少なくとも7個の連続したアミノ酸残基を含む免疫原による免疫処置を行う段階;免疫処置を受けた動物から脾細胞を収集する段階;収集した脾細胞を骨髄腫細胞株と融合させ、それによってハイブリドーマ細胞を生じさせる段階;および、標的抗原と結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定する段階を含む。そのようなハイブリドーマ細胞株およびそれらから産生されるモノクローナル抗体は、本発明の範囲に含まれる。ハイブリドーマ細胞株によって分泌されたモノクローナル抗体は従来の手法によって精製する。
【0074】
もう1つの態様においては、競合性の抗体セットの存在下における、1つのセットの抗原に対する非免疫性ファージディスプレイ抗体レパートリーの選択によって、抗体断片を作製する(Stausbol-Gron, B., et al., De novo identification of cell-type specific antibody-antigen pairs by phage display subtraction. Isolation of a human single chain antibody fragment against human keratin 14. Eur J Biochem 2001 May;268(10):3099-107)。このアプローチは、標的抗原を対象とするファージ抗体を作製するために用いることができる。このプロトコールは概ね、Stausbol-Gron, B., et al., 2001に記載されたものを基にしている。手短に述べると、免疫処置を受けていない半合成ファージディスプレイ抗体レパートリーを用いる。このレパートリーは、loxライブラリー由来の重鎖および軽鎖領域を再クローニングすることによって構築された一本鎖Fv(scFv)ファージミドレパートリーである(Griffiths, A.D., et al. (1994) Isolation of high affinity human antibodies directly from large synthetic repertoires. EMBO J. 13, 3245-3260)。大腸菌(Escherichia coli)TG1(supE hsdD5 Δ(lac-proAB)thi F'{traD36 proAB+ lacIq lacZAM15])はアンバーサプレッサー株(supE)であり、ファージ粒子の増殖のために用いられる。大腸菌HB2151(ara Δ(lac-proAB)thi F'{proAB+ lacIq lacZΔM15])は非サプレッサー株であり、可溶性scFvの発現のために用いられる。もう1つの態様において、ヒト一本鎖Fv(scFv)ライブラリーを増幅させてレスキューすることもできる(Gao, at al., Making chemistry selectable by linking it to infectivity, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 94, pp. 11777-11782, October 1997)。このライブラリーを、PBS(10mMリン酸、150mM NaCl、pH 7.4)中に懸濁した標的抗原に対してパニングし、陽性scFv-ファージを固相酵素免疫アッセイ(ELISA)によって選択する。
【0075】
他の好ましい態様において、抗体は、組換え抗体、好ましくは一本鎖Fv抗体をコードする発現ベクターを提供することによって供給される。
【0076】
遺伝子治療
ヒトゲノムプロジェクトによって、疾患の遺伝的基盤に関する本発明者らの知識が増加した。全般については、http://www.ornl.gov/sci/techresources/Human_Genome/medicine/assist.shtmlを参照のこと。好ましい態様において、本発明は、遺伝性障害または遺伝要素を有する病状の治療のための組成物および方法を提供する。さらなる好ましい態様において、本発明は、遺伝性障害または遺伝要素を有する病状の治療用の医薬の製造のために有用な組成物を提供する。
【0077】
好ましい態様において、本発明の微粒子送達系は、代償性遺伝子を含む少なくとも1つの核酸を投与するために用いられる。他の好ましい態様において、本発明の微粒子送達系は、欠失遺伝子の遺伝子産物をコードする少なくとも1つの核酸を投与するために用いられ、この際、遺伝子産物の発現は、遺伝性障害の、または病状の遺伝要素の治療において有用である。好ましい態様において、所望のペイロード分子を含む本発明の微粒子送達系は、遺伝性障害の、または病状の遺伝要素の治療用の医薬の製造において有用である。そのような医薬品は、経口的、直腸的、非経口的(例えば、静脈内、筋肉内または皮下)、槽内、腟内、腹腔内、膀胱内、局所的(例えば、粉剤、軟膏または滴剤)に、または口腔もしくは鼻への噴霧薬として投与するのに好適である。医薬品は好ましくは経口的、口腔内および非経口的に、より好ましくは経口的に投与される。併用療法のためには、種々のペイロード、例えば、核酸、核酸発現ベクターまたは低分子治療薬が装入された粒子を適切な比率で混合し、例えばカプセル中にて一緒に投与することができる。
【0078】
遺伝子治療に関係する本発明の諸局面において、核酸組成物は、代償性遺伝子、または治療用タンパク質をコードする遺伝子のいずれかを含む。代償性遺伝子の例には、ジストロフィンまたは機能的断片をコードする遺伝子、嚢胞性線維症に罹患した対象における欠損遺伝子を代償するための遺伝子、ADAに罹患した対象における欠損遺伝子を代償するための遺伝子、および第VIII因子をコードする遺伝子が含まれる。治療用タンパク質をコードする遺伝子の例には、オステオプロテジェリン、エリスロポエチン、インターフェロン、LDL受容体、GM-CSF、IL-2、IL-4またはTNFをコードする遺伝子が含まれる。好ましい態様において、タンパク質はオステオプロテジェリンまたはその機能的等価物である。
【0079】
投与の経路
投与の経路には、経口的、口腔内、舌下、肺、経皮的、経粘膜的、ならびに皮下、腹腔内、静脈内および筋肉内注射が非限定的に含まれる。好ましい投与の経路は、経口的、口腔内、舌下、肺および経粘膜的である。
【0080】
本発明の微粒子送達系は、対象に対して治療有効量で投与される。微粒子送達系は、単独で、または薬学的に許容される組成物の一部として投与することができる。加えて、化合物または組成物は、例えばボーラス注射によってすべて一度に、一連の錠剤などによって複数回にわたり、または例えば制御放出製剤を用いてある期間にわたって実質的に均一に送達することができる。化合物の投与量を経時的に変化させうることも知られている。微粒子送達系は、即時放出製剤、制御放出製剤またはそれらの組み合わせを用いて投与することができる。「制御放出」という用語は、持続放出、遅延放出およびそれらの組み合わせを含む。
【0081】
本発明の薬学的組成物は、一回単位用量として、または複数の一回単位用量として、大量に調製すること、包装すること、または販売することができる。本明細書で用いる場合、「単位用量」とは、あらかじめ決定された量の有効成分を含む、薬学的組成物の離散的な量である。有効成分の量は一般に、対象に対して投与されると考えられる有効成分の用量、またはそのような用量の好都合な割合、例えばそのような用量の2分の1または3分の1と等しい。
【0082】
本発明の薬学的組成物における有効成分、薬学的に許容される担体および任意の付加的な成分の相対的な量は、治療されるヒトの独自性、サイズおよび状態によって、さらには組成物が投与される経路によっても異なると考えられる。一例として、組成物は、0.1%〜100%(w/w)の有効成分を含みうる。本発明の薬学的組成物の単位用量は一般に約100ミリグラム〜約2グラムの有効成分を含むと考えられ、好ましくは約200ミリグラム〜約1.0グラムの有効成分を含む。
【0083】
加えて、本発明の微粒子送達系は、単独で、種々のペイロードを用いた微粒子送達系と、または他の薬学活性化合物と併用して投与することができる。他の薬学活性化合物は、微粒子送達系と同じ病状または異なる病状を治療するために選択することができる。
【0084】
対象が複数の薬学活性化合物を投与される予定であるかまたは投与されている場合には、それらの化合物を同時にまたは任意の順序で逐次的に投与することができる。例えば、錠剤の場合には、複数の活性化合物が1つの錠剤中に存在しても別々の錠剤中に存在してもよく、それらを一度に投与しても任意の順序で逐次的に投与してもよい。加えて、組成物は複数の異なる形態でありうることが認識されるべきである。例えば、1つまたは複数の化合物を錠剤を介して送達する一方で、別の化合物を、注射を介してまたはシロップ剤として経口的に投与してもよい。
【0085】
本発明のもう1つの局面は、本発明の薬学的組成物および説明用材料を含むキットに関する。説明用材料には、ヒトにおける本明細書中に示された目的の1つに関する本発明の薬学的組成物の有用性を伝えるために用いられる、刊行物、記録、図表または任意の他の表現媒体が含まれる。説明用材料はまた、例えば、本発明の薬学的組成物の適切な用量を記載することもできる。本発明のキットの説明用材料は、例えば、本発明の薬学的組成物を含む容器に添付すること、または薬学的組成物を含む容器と一緒に出荷することができる。または、説明用材料および薬学的組成物が受取人によって協同的に用いられることを意図して、説明用材料を容器とは別個に出荷することもできる。
【0086】
本発明はまた、本発明の薬学的組成物、および組成物をヒトに対して送達するための送達デバイスを含むキットも含む。一例として、送達デバイスは、スクイーズ噴霧ボトル、定量噴霧ボトル、エアロゾル噴霧デバイス、アトマイザ、乾燥粉末送達デバイス、自己噴霧式溶媒/粉末分配デバイス、シリンジ、針、タンポンまたは計量式容器でありうる。キットはさらに、本明細書に記載した説明用材料を含むことができる。
【0087】
例えば、キットは、微粒子送達系および薬学的に許容される担体を含む第1の組成物;ならびに第2の薬学活性化合物および薬学的に許容される担体を含む組成物をそれぞれ含む、2つの別個の薬学的組成物を含んでもよい。キットはまた、別個の組成物のための容器、例えば、分割されたボトルまたは分割されたホイールパケットを含む。容器のそのほかの例には、シリンジ、箱、バッグなどが含まれる。典型的には、キットは、別個の成分の投与のための指示を含む。このキット形態は、別個の成分が好ましくは異なる剤形で(例えば、経口的および非経口的に)投与される場合、異なる投与間隔で投与される場合、または処方医が組み合わせの個々の成分の滴定を所望する場合に、特に有益である。
【0088】
キットの一例は、ブリスターパックである。ブリスターパックは包装産業で周知であり、医薬品の単位用量剤形(錠剤、カプセル剤など)の包装に広く用いられている。ブリスターパックは一般に、好ましくは透明な合成樹脂材料のホイールで覆われた比較的堅い材料のシートからなる。包装の工程中に、くぼみが合成樹脂ホイールに形成される。くぼみは、包装される錠剤またはカプセル剤のサイズおよび形状を有する。次に、錠剤またはカプセル剤をくぼみの中に入れ、比較的堅い材料のシートを、くぼみが形成された向きとは反対にあるホイール面で合成樹脂ホイルに対して封止する。その結果として、錠剤およびカプセル剤は、合成樹脂ホイールとシートとの間のくぼみの中に密封される。好ましくは、シートの強度は、くぼみに手で圧力を与えることによって錠剤またはカプセル剤をブリスターパックから取り出すことのできる程度であり、それによってシート中のくぼみの場所に開口部が形成される。錠剤またはカプセル剤をその後、前記開口部を介して取り出すことができる。
【0089】
キット上に記憶補助物を、例えば、錠剤またはカプセル剤の隣に数字の形態で、その数字が指定された錠剤またはカプセル剤を服用すべきレジメン中の日程と対応するように提供することが望ましいこともある。このような記憶補助物の別の例には、カード上に印刷されたカレンダーがあり、これは例えば「第1週、月曜日、火曜日等々・・第2週、月曜日、火曜日」のようなものである。記憶補助物の他の変形物は容易に明らかとなろう。「一日量」とは、所定の日に摂取されるべき1個の錠剤もしくはカプセル剤またはいくつかの丸剤もしくはカプセル剤でありうる。また、微粒子送達系の一日量が1つの錠剤またはカプセル剤からなり、同時に第2の化合物の一日量がいくつかの錠剤またはカプセル剤からなることもでき、その反対も可能である。記憶補助物はこれを反映して、正しい投与の手助けとなるべきである。
【0090】
本発明のもう1つの態様においては、意図された使用の順に一度に1回、一日量を分配するように設計されたディスペンサーが提供される。好ましくは、ディスペンサーは、投薬レジメンの遵守をさらに促すように記憶補助物を備えている。このような記憶補助物の一例は機械的カウンターであり、これは分配された一日量の数を示す。このような記憶補助物の別の例は、例えば、最後の一日量が摂取された日を表示する、および/または次の投与をいつ摂取すべきかを思い出させる、液晶表示または音響式通知信号と連結された電池式マイクロチップメモリである。
【0091】
微粒子送達系は、任意で他の薬学活性化合物を含んでもよく、対象に対して、経口、直腸、非経口(例えば、静脈内、筋内内、または皮下)、槽内、膣内、腹腔内、局所的(例えば、粉剤、軟膏または滴剤)、または口腔もしくは鼻への噴霧薬として投与することができる。
【0092】
薬学的組成物の非経口投与には、ヒトの組織の物理的侵害、および組織中の侵害部を通しての薬学的組成物の投与を特徴とする、任意の投与経路が含まれる。このため、非経口投与には、組成物の注射、外科的切開を介した組成物の適用、組織を貫通する非外科的創傷を介した組成物の適用などによる薬学的組成物の投与が含まれる。特に、非経口投与には、皮下、腹腔内、静脈内、動脈内、筋内内または胸骨内注射、および静脈内、動脈内または腎臓透析注入法が含まれる。
【0093】
非経口的注射に適した組成物は、生理的に許容される無菌の水性または非水性の溶液、分散液、懸濁液もしくは乳濁液のような薬学的に許容される担体と組み合わされた有効成分を含み、または無菌の注射可能な溶液または分散液中での再構成のための無菌粉剤を含んでもよい。適切な水性および非水性の担体、希釈剤、溶媒または媒体の例には、水、等張食塩水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールなど)、適切なそれらの混合物、オリーブ油などの植物油を含むトリグリセリド、オレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが含まれる。例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合には要求される粒度の維持によって、および/または界面活性剤の使用によって、適正な流動性を維持することができる。このような製剤は、ボーラス投与または連続投与に適した形態で調製され、包装され、または販売されうる。注射可能な製剤は、単位用量形態、例えばアンプル、保存剤を含む多回用量容器、または自己注射もしくは医師による注射のための単回使用デバイスとして調製、包装または販売することができる。
【0094】
非経口投与のための製剤には、懸濁剤、液剤、油性または水性媒体中の乳剤、ペースト剤、および埋め込み型の持続放出性または生分解性の製剤が含まれる。このような製剤はさらに、懸濁化剤、安定化剤または分散剤を含む、1つまたは複数の成分を含むことができる。非経口投与のための製剤の1つの態様において、有効成分は、再構成組成物の非経口投与前の適切な媒体(例えば、発熱物質非含有無菌水)による再構成のための、乾燥した(すなわち、粉末または顆粒状の)形態で提供される。薬学的組成物は、無菌の注射可能な水性または油性の懸濁液または溶液の形態で調製、包装または販売することができる。この懸濁液または溶液は公知の技術に従って製剤化することができ、有効成分に加えて、付加的な成分、例えば、本明細書に記載された分散剤、湿潤剤または懸濁化剤を含むことができる。このような無菌の注射可能な製剤は、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒、例えば、水または1,3-ブタンジオールなどを用いて調製することができる。他の許容される希釈剤または溶媒には、リンゲル液、等張塩化ナトリウム溶液、および合成モノグリセリドまたはジグリセリドなどの不揮発性油が含まれる。有用である他の非経口的に投与可能な製剤には、微結晶形態の、リポソーム調製物中の、または生分解性ポリマー系の一成分としての、有効成分を含むものが含まれる。持続放出性または埋め込み型の組成物は、薬学的に許容される重合性または疎水性の材料、例えば乳濁液、イオン交換樹脂、難溶性ポリマーまたは難溶性塩などを含むことができる。
【0095】
これらの組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤および/または分散剤などの補助剤を含んでもよい。組成物の微生物汚染の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの添加によって達成することができる。また、等張剤、例えば、糖類、塩化ナトリウムなどを含めることが望まれることもある。注射可能な薬学的組成物の持続吸収は、吸収を遅らせることが可能な薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよび/またはゼラチンの使用によってもたらすことができる。
【0096】
剤形には、固体または注射可能なインプラントまたはデポー剤が含まれうる。好ましい態様において、インプラントは、微粒子送達系および生分解性ポリマーのアリコートを含む。好ましい態様において、適切な生分解性ポリマーは、ポリアスパラギン酸塩、ポリグルタミン酸塩、ポリ(L-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ案ヒドリド、ポリ(β-ヒドロキシ酪酸)、ポリ(オルトエステル)およびポリホスファゼンからなる群より選択することができる。
【0097】
経口投与のための固形剤形には、カプセル剤、錠剤、粉剤および顆粒剤が含まれる。このような固体剤形では、微粒子送達系は任意で、クエン酸ナトリウムもしくは第二リン酸カルシウムなどの少なくとも1つの不活性な慣例的な添加剤(または担体)、または(a)充填剤もしくは増量剤、例えば、スターチ、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはケイ酸;(b)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースまたはアラビアゴム;(c)保湿剤、例えば、グリセロール;(d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカのデンプン、アルギン酸、ある種の複合ケイ酸塩または炭酸ナトリウム;(e)溶解遅延剤(solution retarder)、例えば、パラフィン;(f)吸収促進剤、例えば、第4級アンモニウム化合物;(g)湿潤剤、例えば、セチルアルコールまたはモノステアリン酸グリセロール;(h)吸着剤、例えば、カオリンまたはベントナイト;および/または(i)潤滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、またはそれらの混合物と混合される。カプセル剤および錠剤の場合には、剤形が緩衝剤を含んでもよい。
【0098】
微粒子送達系を含む錠剤は、例えば、有効成分を、任意で1つまたは複数の付加的な成分とともに、圧縮または成形することによって作製することができる。圧縮錠剤は、粉末または顆粒調製物などの自由流動形態の有効成分を、任意で1つまたは複数の結合剤、潤滑剤、添加剤、表面活性剤および分散剤と混合して、適切なデバイス内で圧縮することによって、調製することができる。成形錠剤は、有効成分、薬学的に許容される担体および混合物を湿らせるのに少なくとも十分な液体の混合物を適切なデバイス内で成形することによって、作製することができる。錠剤の製造に用いられる薬学的に許容される添加剤には、不活性な希釈剤、造粒剤および崩壊剤、結合剤ならびに潤滑剤が含まれる。公知の分散剤には、ジャガイモデンプンおよびデンプングリコール酸ナトリウムが含まれる。公知の表面活性剤にはラウリル硫酸ナトリウムが含まれる。公知の希釈剤には、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムラクトース、微結晶性セルロース、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウムおよびリン酸ナトリウムが含まれる。公知の造粒剤および崩壊剤には、コーンスターチおよびアルギン酸が含まれる。公知の結合剤には、ゼラチン、アラビアゴム、アルファ化トウモロコシ(maize)デンプン、ポリビニルピロリドンおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースが含まれる。公知の潤滑剤には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、シリカおよびタルクが含まれる。
【0099】
錠剤は、コーティングしなくともよく、または、ヒトの胃腸管における遅延崩壊を実現し、それにより、例えば小腸内のパイエル板の領域における微粒子送達系の持続的な放出および吸収を提供するために、公知の方法を用いてコーティングすることもできる。一例として、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの材料を、錠剤をコーティングするために用いることができる。さらなる一例として、錠剤を、浸透圧性放出制御錠剤を形成するために、米国特許第4,256,108号;第4,160,452号;および第4,265,874号に記載された方法を用いてコーティングすることもできる。錠剤は、薬学的に上品で口当たりのよい調剤品を提供するために、甘味剤、香味剤、着色剤、保存剤またはこれらのいくつかの組み合わせをさらに含むことができる。
【0100】
錠剤、糖衣錠、カプセル剤および顆粒剤などの固体剤形は、腸溶性コーティングおよび当技術分野で周知の他のものなどのコーティングまたは外殻(shell)を用いて調製することができる。それらはまた乳白剤(opacifying agent)を含んでもよく、また、それらが遅延された様式で微粒子送達系を放出するような組成物であってもよい。用いうる包埋組成物の例には、ポリマー性物質および蝋状物質がある。有効成分はまた、1つまたは複数の上述した添加剤を適宜伴う、マイクロカプセル化形態にあってもよい。
【0101】
また、類似したタイプの固体組成物を、ラクトースまたは乳糖、ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどのような添加剤を用いて軟質または硬質充填ゼラチンカプセルの充填剤として用いることもできる。微粒子送達系を含む硬質カプセル剤は、ゼラチンなどの生理的に分解しうる組成物を用いて作製することができる。このような硬質カプセル剤は微粒子送達系を含み、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンなどの不活性な固体希釈剤を含む付加的な成分をさらに含むこともできる。微粒子送達系を含む軟質ゼラチンカプセル剤は、ゼラチンなどの生理的に分解しうる組成物を用いて作製することができる。このような軟質カプセル剤は微粒子送達系を含み、水、またはピーナッツ油、流動パラフィンもしくはオリーブ油などの油性媒体と混合することができる。
【0102】
経口投与された薬剤をヒト対象の小腸または大腸において特異的に放出する経口用組成物を、公知の技術を用いて作製することができる。例えば、結腸を含む胃腸系への送達のための製剤は、ポリマーが小腸に入ってから初めて溶解し始めるようにpH6およびそれ以上でのみ可溶性である、例えばポリ(メタクリル酸、メタクリル酸メチル)などのメタクリレートコポリマーを基剤とする腸溶コーティングされた系を含む。このようなポリマー製剤が崩壊する部位は、腸管輸送の速度および存在するポリマーの量に依存する。例えば、比較的厚いポリマーコーティングは、近位結腸への送達のために用いられる(Hardy et al., 1987 Aliment. Pharmacol. Therap. 1:273-280)。部位特異的な結腸輸送をもたらしうるポリマーを用いることもでき、この際、このポリマーは大腸の細菌叢に依拠してポリマーコーティングの酵素的分解およびそれ故に薬物放出をもたらす。例えば、アゾポリマー(米国特許第4,663,308号)、グリコシド(Friend et al., 1984, J. Med. Chem. 27:261-268)ならびに種々の天然に入手可能かつ修飾された多糖類(PCT出願PCT/GB89/00581号を参照)を、このような製剤に用いることができる。
【0103】
米国特許第4,777,049号に記載されたものなどのパルス放出技術を、胃腸管内部の特定の場所に微粒子送達系を投与するために用いることもできる。このようなシステムはあらかじめ決定された時点における送達を可能にし、かつこれを使用して、任意で、安定性および取込みを促進するために局所微小環境を変化させうる他の添加剤ととともに、インビボ放出を与えるために水の存在以外の外部条件に依拠することなしに直接に、微粒子送達系を送達することができる。
【0104】
経口投与用の液体剤形には、薬学的に許容される乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が含まれる。活性化合物に加えて、液体剤形は、当技術分野で一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば、水もしくは他の溶媒、等張食塩水、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油、特にアーモンド油、ラッカセイ油、ココナッツ油、綿実油、ピーナッツ油、コーン胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ油、MIGLYOL(商標)、グリセロール、分画された植物油、流動パラフィンなどの鉱油、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタンの脂肪酸エステル、またはこれらの物質の混合物などを含みうる。このような不活性な希釈剤のほかに、組成物はまた、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、粘滑剤、保存剤、緩衝剤、塩、甘味剤、香味剤、着色剤および芳香剤などの補助剤も含むことができる。懸濁剤は、活性化合物に加えて、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールもしくはソルビタンエステル、微結晶性セルロース、水素化食用脂、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、アラビアゴム、寒天、およびセルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含んでもよい。経口投与に適した本発明の薬学的組成物の液体製剤は、液体の形態、または使用前に水もしくは別の適切な媒体による再構成を意図した乾燥生成物の形態のいずれかで調製、包装および販売することができる。
【0105】
公知の分散剤または湿潤剤には、レシチンなどの天然に存在するリン脂質、アルキレンオキシドと脂肪酸との、直鎖脂肪族アルコールとの、脂肪酸およびヘキシトールから誘導される部分的エステルとの、または脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導される部分的エステルとの縮合物(それぞれ、例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ヘプタデカエチレンエオキシセタノール、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビトール、およびモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)が含まれる。公知の乳化剤にはレシチンおよびアラビアゴムが含まれる。公知の保存剤には、メチル、エチル、またはn-プロピル-パラ-ヒドロキシベンゾエート、アスコルビン酸およびソルビン酸が含まれる。公知の甘味剤には、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、スクロースおよびサッカリンが含まれる。油性懸濁剤のための公知の増粘剤には、例えば、蜜蝋、硬質パラフィンおよびセチルアルコールが含まれる。
【0106】
他の態様において、薬学的組成物は、栄養補助食品として、すなわち、食物(例えば、直接的な消費を意図した加工品)、または食材(例えば、摂取前に食物に組み入れることを意図した可食成分)の形態の、またはそれに添加されるものとして調製することができる。適切な食物の例には、棒付きキャンディー、焼いた食品、例えばクラッカー、パン、クッキーおよびスナックケーキ、丸ごとの、裏ごししたまたは茹でたフルーツおよび野菜、飲料、ならびに加工された肉製品が含まれる。適切な食材の例には、製粉機にかけられた穀物および糖類、スパイスおよび他の調味料、ならびにシロップが含まれる。本明細書に記載した微粒子送達系は、化合物の分解を最小限にするために、長期間にわたって高い調理温度にさらさないことが好ましい。
【0107】
通常の室温では固体であるが体温では液体となり、そのため直腸または膣の内腔で融解して微粒子送達系を放出する、カカオ脂、ポリエチレングリコールまたは座剤ワックスなどの安定な非刺激性の添加剤または担体と、微粒子送達系とを混合することによって、直腸内または膣内投与のための組成物を調製することができる。このような組成物は、例えば、座剤、停留浣腸製剤、および直腸または結腸洗浄用の液剤の形態でありうる。座剤製剤はさらに、抗酸化剤および保存剤を含む種々の付加的な成分を含みうる。停留浣腸製剤または直腸もしくは結腸洗浄用の液剤は、有効成分を薬学的に許容される液体担体と組み合わせることによって調製することができる。当技術分野で公知であるように、浣腸製剤は、ヒトの直腸の解剖学的構造に適合した送達デバイスを用いて投与することができ、その内部に包装することができる。浣腸製剤はさらに、抗酸化剤および保存剤を含む種々の付加的な成分を含むことができる。
【0108】
本発明の薬学的組成物は、口腔を介した肺投与に適した製剤として調製、包装または販売することができる。このような組成物は、粉末を分散させるために噴射剤の流れを向けることができる乾燥粉末貯蔵部を含むデバイスを用いる、または密封された容器内に低沸点噴射剤中に懸濁化された微粒子送達系を含むデバイスなどの自己噴霧式溶媒/粉末分配容器を用いる、投与のための乾燥粉末形態であることが好都合である。乾燥粉末組成物は糖などの固体微粉末希釈剤を含んでもよく、単位用量剤形で提供されることが好都合である。低沸点噴射剤には一般に、大気圧下での沸点が華氏65度未満である液体噴射剤が含まれる。一般に噴射剤は、組成物の50〜99.9%(w/w)を構成することができ、有効成分は組成物の0.1〜20%(w/w)を構成することができる。噴射剤はさらに、液体非イオン性もしくは固体アニオン性の界面活性剤または固体希釈剤(好ましくは、微粒子送達系を含む粒子と同じ程度の粒度を有する)などの付加的な成分を含むことができる。
【0109】
肺送達のために製剤化される本発明の薬学的組成物はまた、溶液または懸濁液の液滴の形態で有効成分を提供することもできる。このような製剤は、微粒子送達系を含む、任意で無菌の水性または希アルコール性溶液として調製、包装または販売することができ、任意の霧化または微粒化装置を用いて投与しうることが好都合である。このような製剤はさらに、サッカリンナトリウムなどの香味剤、精油、緩衝剤、界面活性剤またはメチルヒドロキシベンゾエートなどの保存剤を含む、1つまたは複数の付加的な成分を含むことができる。
【0110】
肺送達のために有用である本明細書に記載した製剤はまた、本発明の薬学的組成物の鼻腔内送達のためにも有用である。鼻腔内投与に適したもう1つの製剤は、微粒子送達系を含む粗粉末である。このような製剤は、鼻から吸う様式で、すなわち、鼻孔近くに保持した粉末の容器からの鼻腔を介した急速吸入により、投与される。
【0111】
本発明の薬学的組成物は、口腔内投与に適した製剤として調製、包装または販売することができる。このような製剤は、例えば、従来の方法を用いて作製された錠剤またはロゼンジ剤の形態であることができ、例えば0.1〜20%(w/w)の微粒子送達系、経口的に溶解または分解しうる組成物を含む残りのもの(balance)、および任意で、本明細書に記載した1つまたは複数の付加的な成分を含むことができる。または、口腔内投与に適した製剤が、微粒子送達系を含む粉末またはエアロゾル化もしくは微粒化された液体または懸濁液を含むこともできる。
【0112】
低骨密度に対する治療法の評価のための動物モデル
骨減少性C57Bl/6Jマウス
ヒト集団におけるばらつきは最大骨塩密度および骨格量の著しい違いに結び付いており、これらの違いの70%ほどが遺伝的差異を原因とする。驚くことではないが、最大骨塩密度と骨粗鬆症のリスクとの間には逆相関関係がある。骨塩密度、機械的強度および骨の質的パラメーターもまた、マウスの異なる近交系の間で極めて著しい違いがあり、これはこのような11種の系統の表現型の綿密な比較によって明らかになっている(Turner, C. H., et al., (2001) Variation in bone biomechanical properties, microstructure, and density in BXH recombinant inbred mice. J Bone Miner Res 16, 206-213;Beamer, W. G., et al., (1996). Genetic variability in adult bone density among inbred系統s of mice. Bone 18, 397-403)。これらの違いの遺伝的基盤は調べられており、骨格の成長および維持の遺伝的制御には数多くの遺伝子座が必要であること、またさらに、脊椎および肢などの別々の骨格部位での骨量は、別々の遺伝因子に影響されることが明白になっている。全体的にみて、調べられた系統の中で最も低い骨密度、最も低い骨梁体積分率、および最も薄い皮質骨がみられたのはC57Bl/6J(B6)系統であり、最も高かったのはC3H/HEJ系統であった。B6の総大腿骨骨塩密度はC3H/HEJ(C3H)の66%未満であり、一方、骨長および総体質量に有意な違いはなかった。さらなる研究により、インビボにおける骨形成および骨塩付着の速度として、ならびにインビトロにおけるアルカリホスファターゼ活性および石灰化結節形成速度として測定した骨芽細胞活性も、B6の方がC3Hに比して低いことが示された(Sheng, M. H., et al., (2004). In vivo and in vitro evidence that the high osteoblastic activity in C3H/HeJ mice compared to C57BL/6J mice is intrinsic to bone cells. Bone 35, 711-719)。したがって、B6系統は、全身性骨減少症に対する有用かつ十分に特徴決定されたモデルである。この種の成体低骨量によって骨粗鬆症のリスクが最も大きいヒト集団も同定されるので、B6系統は治療的および/または予防的な戦略を検証するための適切なモデルとなる。
【0113】
3カ月齢の雄性および雌性C57B1/J6マウスをこの試験に用いる(The Jackson Laboratory, Bar Harbor, ME)。hOPG発現構築物(YCWP-hOPG)を装入した酵母細胞壁粒子(YCWP)の経口投与の効果を、X線撮影、マイクロCTおよびpQCTにより、ならびに免疫組織化学および酵素組織化学によって決定する。YCWPまたは酵母細胞壁粒子は、YGMPおよびYGPを包含する粒子の一般的記述である。
【0114】
動物を対照群または実験群に無作為に割り当てる。少なくとも10匹の動物で構成される1つの群には、下記のように設計したYCWP-hOPG構築物を摂取させ、もう1つの群にはベクターDNAを装入したYCWPを摂取させる。適切な用量はおおよそ約400μg/日であり、所望の結果を得るために必要に応じて変更する。進行をモニターするためにX線像を2週毎に撮影する。治療を2カ月間続け、その時点で大腿骨のマイクロCT分析および脛骨の組織学的分析のために動物を安楽死させる。高分解能の全身X線像を入手し(Faxitron Micro 50)、大腿骨を外部組織を除いて摘出し、冷ホルムアミドのPBS溶液で一晩固定し、その後にマイクロCT分析のためにそれらを70%エタノールで交換する。脛骨を長軸方向に分割し、4%パラホルムアミド中で固定し、EDTA中で脱灰して、その後の免疫化学分析および組織化学分析のためにパラフィン包埋用の処理を行う。いくつかの切片をhOPG発現およびマクロファージF4/80マーカーに関して免疫染色し、hOPGのマクロファージ発現に関してFACSによって分析する。他の切片を破骨細胞マーカーTRAPに関して染色し、近位脛骨骨幹端におけるTRAP陽性細胞を算定する。近位脛骨骨幹端の2つの固定領域におけるTRAP陽性細胞を、各動物由来の少なくとも3つの切片において少なくとも2人の観察者によって算定し、実験群からの結果をt検定によって平均の有意差に関して検定する。大腿骨の総骨塩密度および体積骨塩密度を、Stratec XCT 960M装置を用いる末梢骨定量コンピュータ断層法(pQCT)によって測定する。非骨組織を他の組織と区別し、さらに皮質骨を低密度骨と区別するため、ならびに総皮質幅を計算するための閾値は、この種の骨減少性マウスに関して以前に記載された通りにする。骨微細構造は、同じく記載された通りに(Turner et al., 2001)、卓上マイクロCT装置(iCT 20, Scanco Medical, Basserdorf, Switzerland)を用いるマイクロCTによって評価する。得られるパラメーターは、骨体積密度、骨表面密度、骨梁数、骨梁幅、骨梁間隙および骨梁数である。組織学的検査を脛骨に対して行う。
【0115】
卵巣切除マウス
卵巣切除(OVX)マウスは、閉経後骨粗鬆症を模した低骨量を研究するための、十分に確立され広く利用されているもう1つのモデルである。若齢(典型的には、9〜16週齡)成体雌性マウスからの卵巣の除去は、破骨細胞性骨吸収の促進のために数週間以内で再現性のある骨粗鬆症を引き起こす。低骨密度は最も多くの場合、大腿骨または脛骨のいずれかの骨塩密度として、骨体積/総体積ならびに骨梁の幅および数のpQCT評価とともに測定される。骨表面当たりの破骨細胞および骨芽細胞が実験群間で異なるか否かを判定するために組織形態計測的評価を用いることもできる。このモデルを用いた最近の一例では、9週時点で実施したOVXから3週間後に、骨塩密度が10%以上低下し、骨体積/総体積(BV/TV)がおおよそ40%低下し、骨梁幅が10%以上減少し、骨梁数が30%以上減少した(Idris, A. I., et al., (2005) Regulation of bone mass, bone loss and osteoclast activity by cannabinoid receptors. Nat Med 11: 774-779)。最近のもう1つの研究では、OVXマウスモデルが、アデノウイルスOPG遺伝子治療の有効性を評価するために用いられた(Kostenuik, P.J., et al., (2004) Gene therapy with human recombinant osteoprotegerin reverses established osteopenia in ovariectomized mice. Bone 34:656-664)。このOVXマウスモデルは、低骨密度および治療介入の効果に関する多くの研究で同様に役立っている。したがって、OVXマウスは、hOPGを骨髄に送達するために経口摂取された、hOPG-発現構築物が装入された酵母細胞壁粒子の有効性を検証するための許容されるモデルである。
【0116】
若齢(典型的には9〜16週齡)成体雌性マウスからの卵巣の除去は、破骨細胞性骨吸収の促進のために数週間以内に再現性のある骨粗鬆症を引き起こす標準的な手順によって行われる。低骨密度は、大腿骨における骨塩密度として、骨体積/総体積ならびに骨梁の幅および数のpQCT評価とともに測定される。典型的には、これらの試験では3つの群のマウスを用いる:無手術の野生型マウス;偽手術を受ける野生型マウス;およびOVX手術を受けるマウス。偽手術マウスは切開を受け、卵巣の操作は受けるが、その後は卵巣を除去することなく切開部が閉鎖される。手術から回復した後に、マウスには通常の食餌を与えるか、またはベクターDNAのみが装入されたYCWPの胃管投与を毎日行う、またはYCWP-hOPG組成物の胃管投与を毎日行う。放射線学的分析を2週毎に行い、6週間後に動物を安楽死させて、C57B1/6マウスに関して上述した通りに骨格応答を評価する。組織形態計測的評価を、骨表面当たりの破骨細胞および骨芽細胞が実験群間で異なるか否かを判定するために用いることもできる。
【0117】
組換え的に作製されたゴーシェマウス
ゴーシェ病では骨格系の合併症が高頻度に観察されるが、それらは治療が困難であることが多い。ヒトゴーシェ表現型の長期生存マウスモデルは、新たな治療戦略を開発するために有意義である(Xu YH, et al., (1996) Turnover and distribution of intravenously administered mannose-terminated human acid beta-glucosidase in murine and human tissues. Pediatr Res. 39(2):313-22;Willemsen R, et al. (1995) A biochemical and ultrastructural evaluation of the type 2 Gaucher mouse. Mol Chem Neuropathol. 24(2-3):179-92)。同じ突然変異を有するゴーシェ病患者に類似した、骨減少症を含む生化学的および表現型上の異常を有するこれらの長期生存性L444Pゴーシェマウスが入手可能であることは、ゴーシェ病において観察される骨格病態の是正における経口投与による遺伝子治療の有効性を検証するための手段を与える(Hermann, G., et al., (1997) Gaucher disease: assessment of skeletal involvement and therapeutic responses to enzyme replacement. Skeletal Radiol 26:687-696)。マウスグルコセレブロシダーゼにおいてアミノ酸置換が行われて正常同腹仔における酵素活性レベルの半分未満まで内因性GC発現が有意に減少した、ゴーシェ病のトランスジェニックマウスモデルを用いた。マウス試料におけるグルコセレブロシダーゼ活性のアッセイは、蛍光標識基質である4-メチルウンベレフェリル-グルコピラノシド(4MUGP)を用いて行った。より軽症のゴーシェ病患者に認められるものに類似した点突然変異を、PCR突然変異誘発法によってマウスグルコセレブロシダーゼのゲノムクローンに導入した。これらの改変クローンを適切なベクターに挿入して、電気穿孔法によってRW4マウス胚性幹(ES)細胞にトランスフェクトした。グルコセレブロシダーゼ遺伝子の一方の対立遺伝子中に正しいターゲティングを受けた突然変異を含むESクローンを、C57BL/6マウス由来の胚盤胞に標準的な手法を用いて注入し、その後に仮親マウスに移した。これらの注入による雄性子孫をC57BL/6雌に対して試験交配させ、その後代を突然変異型グルコセレブロシダーゼ対立遺伝子の伝達に関してPCRおよびサザン分析によってスクリーニングした。
【0118】
L444P、R463CおよびN370S突然変異は、ゴーシェ患者で最も高い頻度で認められる3種の突然変異を構成する。L444P突然変異は、神経学的異常を有する患者により高い頻度で認められる。マウスメタキシン(metaxin)とグルコセレブロシダーゼとの間の遺伝子間領域に挿入されたloxP配列に挟まれたネオマイシン耐性(NeoR)カセットを含む、陽性/陰性選択を用いる補充ターゲティングベクターを構築した。L444P突然変異を、PCR突然変異誘発法によってマウスグルコセレブロシダーゼのゲノムクローンに導入した。構築物を電気穿孔法によってRW4マウス胚性幹(ES)細胞に導入し、ES細胞を、以前の記載の通りにG418を伴う培養下での薬剤選択に供した。個々のG418耐性クローンにおける遺伝子ターゲティング事象の正しさをサザンブロット法およびPCR分析によって確認した。グルコセレブロシダーゼ遺伝子の一方の対立遺伝子中に正しいターゲティングを受けたL444P突然変異を含むESクローン由来の細胞を、C57BL/6マウス由来の胚盤胞に注入し、その後に仮親マウスに移した。これらの注入に由来する、毛色キメラ性が30%を上回る雄性子孫を、C57BL/6雌に対して試験交配させ、その後代を突然変異型L444Pグルコセレブロシダーゼ対立遺伝子の伝達に関してPCRおよびサザン分析によってスクリーニングした。L444P突然変異型対立遺伝子を含む2系統のマウスが同定され、第9エキソンに導入された突然変異を含むPCR増幅されたDNAの直接シークエンシングによってDNA配列が確認された。L444P突然変異型グルコセレブロシダーゼ遺伝子に関してヘテロ接合性であるマウスを交配させ、ホモ接合性の突然変異型後代をサザンブロット法およびPCR分析によって同定した。加えて、ヘテロ接合性L444Pマウスを、CRE DNAリコンビナーゼの導入遺伝子を保有するマウスと交配させ、NeoRマーカーの切り出しが生じて34bpのloxP配列が残るようにした。ターゲティングを受けたL444P突然変異はメンデル様式で伝達された。蛍光標識基質である4-メチルウンベレフェリル-グルコピラノシド(4MUGP)を用いたマウス尾部試料におけるグルコセレブロシダーゼ活性のアッセイにより、ホモ接合性突然変異マウスにおけるグルコセレブロシダーゼ活性は正常同腹仔における酵素活性のおよそ35%であることが示された。
【0119】
オステオプロテジェリンノックアウトマウス
OPGの標的破壊に関してホモ接合性であるマウスは、骨粗鬆症の発生病理を研究するために有意義である上、低骨密度に対する新たな治療法の開発のための重要な手段でもある。重症の骨粗鬆症に典型的なように、8週齡よりも高齢のホモ接合性マウスでは、野生型同腹仔のそれと比較して、大腿骨における骨梁が有意に少なく、骨塩密度、乾燥重量、骨塩含量、硬度および強度が低い。OPG-/-ホモ接合性マウスで観察される高度の骨異常は、破骨細胞数の顕著な増加を伴う。野生型またはヘテロ接合性同腹仔とは対照的に、OPG-/-マウスでは骨梁および皮質骨の全体にわたって大量の破骨細胞が存在する。OPG-/-の骨では、野生型の親系統C57BL/6Jマウスと比較して、骨端の石灰化前線におけるTRAPおよびオステオポンチン染色の両方、さらにはカルセインも増加していることが報告されている。13週齡OPG-/-マウスでは、尾部、遠位大腿骨および脛骨の放射線濃度が低下している。OPG-/-マウスのマイクロCTは、骨梁の欠如、骨端線の破壊および異常な大腿骨皮質骨を示す。OPG-/-マウスで見られる骨異常は、重症の骨粗鬆症に典型的である。
【0120】
OPG-/-マウスの群体を、Harvard Medical School, Boston, MAのDepartment of Otology and LaryngologyのDr. Michael J. McKennaおよびArthur G. Kristiansenによって寄贈されたOPGノックアウト対立遺伝子を保有する雄性マウスを用いて樹立した。OPGの機能的遺伝子ノックアウト系統は、マウスOPG遺伝子における第2エキソンの標的破壊および親B6系統に対する樹立マウスの戻し交雑によって作製した。Mizuno, A., et al., Severe osteoporosis in mice lacking osteoclastogenesis inhibitory factor/osteoprotegerin, Biochem Biophys Res Commun. 1998 Jun 29;247(3):610-5。これらのホモ接合性OPG-/-マウスで観察される骨リモデリングの高度の異常および骨粗鬆症は、骨リモデリング変化および骨格脆弱性の細胞性および分子的な機序を決定するための優れたモデルを与えるとともに、骨粗鬆症に対する治療を開発するための貴重な手段でもある。
【0121】
インビトロでの破骨細胞分化
J774細胞株を用いた予備的研究を、骨髄単球、マクロファージおよび分化中の破骨細胞におけるhOPG発現を評価するために初代マウス骨髄細胞培養物へと拡張する。YCWPは効率的に貪食され、細胞の生存および分化に対する明白な有害作用を伴うことなしに、破骨細胞前駆細胞によって保持される。破骨細胞の分化は以下の通りに実施する。2〜4週齡の正常マウスから新鮮な骨髄を入手する。単核細胞をHistopaque 1077(Sigma)による勾配遠心分離法によって分離する。続いて細胞を洗浄し、10%FBS(Invitrogen Life Technologies, Grand Island, NY)および1%抗生物質/抗真菌剤(Sigma)を加えたα-MEM中に再懸濁して、75cm2フラスコ(Coming)内で3×105個/mlの密度で24時間インキュベートし、その後に穏やかな撹拌によって非付着細胞を採取する。この細胞画分を、破骨細胞分化培地:10%FBS、抗真菌剤/抗生物質溶液(Sigma)、75ng/mLのCSF-1(Chiron)および30ng/mLの組換えマウスRANKリガンド(R&D Systems)を含むα-MEM中にて、1ウェル当たりおおよそ5×105個の密度で12ウェルプレートに(または比例させて他の培養容器に対して)プレーティングする。培地を隔日で交換しながら、培養物を95%空気および5%CO2の加湿雰囲気中にて37℃で6日間インキュベートすると、その時点で多数の大きな多核細胞を観察することができる。
【0122】
骨髄単球、マクロファージおよび分化した破骨細胞を、hOPG発現および細胞種マーカーに関して免疫染色し、各細胞種におけるhOPG発現に関して分析する。培地中に分泌されたhOPGを市販のELISAキット(Immunodiagnostic Systems;BioVendor)を用いて定量する。破骨細胞は記載の通りに、酒石酸耐性酸ホスファターゼ(TRAP)陽性の多核細胞として算定する。プレーティングの際、破骨細胞分化が起こる前に細胞にはYCWPを与える。さまざまな時点で、ウェルをTRAP染色のため(p-ニトロフェノールリン酸法)、ならびにRNAおよびタンパク質の抽出のために収集する。hOPG mRNAは、Light Cycler system(Roche)を用いて、GAPDHに対して標準化したSYBRグリーンの組込みを用いるリアルタイムRT-PCRによって定量する。
【0123】
放射線学的分析
大腿骨の総骨塩密度および体積骨塩密度を、Stratec XCT 960M装置を用いる末梢骨定量コンピュータ断層法(pQCT)によって測定する。非骨組織を他の組織と区別しさらに皮質骨を低密度骨と区別するため、ならびに総皮質幅を計算するための閾値は、この種の骨減少性マウスに関して以前に記載された通りにする。骨微細構造は、同じく記載された通りに(Turner et al., 2001)、卓上マイクロCT装置(iCT 20, Scanco Medical, Basserdorf, Switzerland)を用いるマイクロCTによって評価する。得られるパラメーターは、骨体積密度、骨表面密度、骨梁数、骨梁幅、骨梁間隙および骨梁数である。組織学的検査を脛骨に対して行う。
【0124】
全身組織の分析
組織中のヒトOPGの測定により、経口投与されたマクロファージ/破骨細胞を標的とする遺伝子治療がマウス組織におけるOPGの発現を引き起こす時間的経過およびレベルに関するデータが提供される。ELISA、ウエスタンブロット法およびRT qPCR測定は、転写物およびタンパク質の両方のレベルでの酵素復元に関する情報を提供する。免疫組織化学分析および電子顕微鏡検査分析は、組織中の破骨細胞集団の程度に関するデータを提供する。
【0125】
骨組織の分析
マウス中の骨の種々の位置でのヒトOPGの測定により、マクロファージ/破骨細胞を標的とする遺伝子治療がOPG発現を引き起こす時間的経過およびレベルに関するデータが提供される。ELISA、ウエスタンブロット法およびRT qPCR測定は、転写物およびタンパク質の両方のレベルでのOPGに関する情報を提供すると考えられる。種々の骨位置由来の試料を用いた免疫組織化学分析および電子顕微鏡検査分析は、ヒトOPGを発現するマクロファージの数および位置に関するデータを提供する。
【0126】
表現型の評価
OPG遺伝子治療に起因する変化を検出するために、野生型および低骨密度マウスの臨床的状態を追跡する。マウスを神経学的異常、歩行異常および他の異常に関して観察する。マウスには適宜、行動試験および運動試験を行う。これらのマウスに関する生理的検査には、ルーチン的な血液生化学検査および血液学的検査が含まれる。
【0127】
組織採取
実験の組織試料採取の時点で、承認されたプロトコールを用いて動物を安楽死させ、組織試料を全臓器(例えば、骨、骨髄、脾臓、胸腺、肝臓、肺、心臓、腎臓、脳、その他)から収集し、凍結するか分析のために固定する。組織をヒトOPGの発現に関して分析する。アッセイには、ELISA、リアルタイムqPCR、サザンブロット法、ノーザンブロット法および免疫組織化学が含まれる。
【0128】
アッセイのための組織抽出
組織を、0.1%Triton X-100を含むリン酸緩衝食塩水(pH 7.5)中で均質化する(20%wt/vol)。組織ホモジネートを40℃、48,000×gで20分間遠心分離し、上清を-20℃で保存する。タンパク質含有量を、Bradfordの方法によって決定する。
【0129】
オステオプロテジェリンELISAアッセイ
組織培養細胞においてインビトロで産生されたOPGは培地中に分泌されるため、細胞および培地の両方をOPGに関してアッセイする。ヒトオステオプロテジェリンELISAは、血清、血漿、滑膜液または組織培養液におけるヒトオステオプロテジェリンの定量的測定を提供する、ビオチン標識抗体を利用したサンドイッチ酵素イムノアッセイである(Bio Vendor LLC, Candler, NC)。このヒトオステオプロテジェリンELISAでは、標準物質または試料を、マイクロタイターウェル内にコーティングされたマウスモノクローナル抗ヒトオステオプロテジェリン抗体とともにインキュベートする。1時間のインキュベーションおよび洗浄の後に、ビオチン標識したポリクローナル抗ヒトオステオプロテジェリン抗体を添加し、捕捉されたOPGとともにインキュベートする。十分な洗浄の後に、ストレプトアビジン・西洋ワサビペルオキシダーゼ結合物を添加する。30分間のインキュベーションおよび最終洗浄段階の後に、結合した結合物を基質であるH2O2-テトラメチルベンジジンと反応させる。酸性溶液の添加によって反応を停止させ、得られた黄色生成物の吸光度を450nmで測定する。この吸光度はオステオプロテジェリンの濃度に比例する。未知の試料の濃度は、吸光度の値をオステオプロテジェリン標準物質の濃度に対してプロットすることによって作成した標準曲線を用いて決定する。検出限界(ブランクの平均吸光度+ブランクの吸光度の3標準誤差よりも高い吸光度を与えるOPGの濃度と定義される)は、0.4pmol/試料1リットルよりも良好である。組換えマウスOPGとの交差反応はおよそ1%未満であり、組換えヒトCD40、組換えヒトsTNF RIまたはsTNF RIIとの交差反応は0.06%に過ぎない。ヒトオステオプロテジェリンおよびヒトIgGのFcドメインからなる組換えキメラタンパク質(OPG/Fc)を標準物質として用いる。成熟OPG/Fcは、ジスルフィド結合したホモ二量体タンパク質である。各モノマーは、成熟OPG由来の380残基、ならびにFcタンパク質およびリンカー由来の243残基を含む。グリコシル化の結果として、OPG/Fcは還元条件下のSDS-PAGEでは77kDaタンパク質(以前はこれは100kDaと称していた)として移動する。
【0130】
免疫沈降
提唱されたインビボおよびインビボの遺伝子移入実験におけるヒトOPGの増加を判定するために、プロテインG免疫沈降キットを製造元のプロトコール(Sigma)に従って用いて、ヒトOPG細胞および組織抽出物を精製する。ヒトOPGに対するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体をこの免疫沈降手順に従って用い、続いてウエスタンブロット分析を行う。
【0131】
血液分析
ルーチン的な化学検査、血液学検査ならびにOPG ELISAを含む他のアッセイのために、マウス血液をマウスの尾静脈または後眼窩の出血によって入手する。
【0132】
血液組織学
ルーチン的な組織学的評価のために、脛骨を冷4%パラホルムアミド中で一晩固定し、EDTA中で脱灰して、その後にパラフィン中に包埋する。下記のように、切片をH&Eもしくはトルイジンブルーで染色するか、または免疫組織化学実験に用いる。骨塩形成の評価のために、脱灰されていないパラフィンブロックをクリオトームで切り出し、フォンコッサ染色した切片に対して、デジタル顕微鏡写真および画像解析ソフトウエア(ZeissのAxiovisionおよびOsteomeasure)を用いて、脛骨骨幹端における石灰化骨の形態計測学的測定を行う。一部の切片を、類骨と石灰化骨基質を対比して可視化するためにマッソントリクロムにより染色する。
【0133】
組織学
組織学的分析のための非骨格組織試料を10%ホルマリン中で一晩固定し、PBS中ですすぎ洗いして、エタノールの強度を段階的に高めながら脱水して清浄化し、パラフィン中に包埋し、5ミクロン切片として切り出す。連続切片をヘマトキシリンおよびエオジンで染色する。
【0134】
免疫組織化学
野生型および低骨密度のマウスを安楽死させ、4%パラホルムアミドを含むリン酸緩衝生理食塩水、pH 7.4中で採取した組織を一晩固定し、パラフィン中に包埋する。免疫組織化学検査のための組織切片をクリオスタット(5〜10ミクロン)で切り出し、スライドガラスに乗せて脱パラフィン処理および再水和を行う。内因性ペルオキシダーゼを阻害するために、切片を5%H2O2のPBS溶液で5分間処理する。非特異的結合を防止するための1%ウシ血清アルブミン/PBS中での60分間のインキュベーションの後に、ヒトOPGに特異的なポリクローナル抗体またはマウスモノクローナル抗体、ビオチン化ヤギ抗ウサギ二次血清またはヤギ抗マウス二次血清およびABC複合体(Vectastain Eliteキット、Vector)を用いて切片を処理し、製造元のプロトコールに従ってDAB発色団により可視化する。CCDカメラを装着したZeiss顕微鏡およびScanalyticsソフトウエアを用いて画像を取り込む。一次抗体を用いない、または免疫前血清を用いる免疫染色を、陰性対照として用いる。
【0135】
電子顕微鏡検査
電子顕微鏡分析は、OPG発現の細胞性供給源のさらなる説明、ならびにOPG遺伝子治療に起因する破骨細胞構造の変化の特性決定を可能にする。ルーチン的な電子顕微鏡検査のための組織試料はグルタルアルデヒド中に固定する。免疫電子顕微鏡検査のためには試料を以前に記載された通りに固定し、抗ヒトOPG抗体とのインキュベーションによって免疫染色する。
【0136】
インサイチューハイブリダイゼーション
インサイチューハイブリダイゼーション試験は、組織中でのヒトOPG発現の程度および持続時間の決定の一部として、処理および非処理マウスに対して1、3、6および12カ月の時点で行われる。マウスに麻酔を施し、次に生理的食塩水で、続いて4%パラホルムアミドのPBS溶液によって灌流を行う。骨組織の処理は、Marks, Jr., S.C., et al., (1999) Facial development and type III collagen RNA expression: concurrent repression in the osteopetrotic (toothless, tl) rat and rescue after treatment with colony-stimulating factor-l. Dev. Dyn. 215: 117-125によって記載された通りである。他の組織は摘出して、4%パラホルムアミドのPBS溶液中に1時間浸漬し、パラフィン包埋して、5μm切片をスライド上にマウントする。切片を脱パラフィン処理し、再水和させ、脱水して乾燥させる。インサイチュー分析のためのジゴキシゲニン標識したセンスおよびアンチセンスのリボプローブは、マウスまたはヒトのOPG cDNAの600〜700bpのサブクローニング断片から作製する。AmpliScribeTM T7高収量転写ジゴキシゲニンRNA標識キット(Epicentre, Inc.)を以前の記載の通りに用いる(Odgren, P.A., et al., (2003) Production of high-activity digoxigenin-labeled riboprobes for in-situ hybridization using the AmpliScribe T7 high yield transcription kit. Epicentre Forum 10: 6-7)。パラフィン中に包埋された組織切片を脱パラフィン処理し、ハイブリダイゼーションミックス(50%ホルムアミド、5×SSC、10%デキストラン硫酸、1×デンハルト液、1μl/mlのRNAアーゼ阻害剤および500μg/mlのtRNA)中の1:200希釈DIG標識プローブとハイブリダイズさせ、アルカリホスファターゼを結合させた抗ジゴキシゲニン抗体および比色基質NBT/BCIP(ニトロブルーテトラゾリウム/5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルリン酸)をプロトコール(Roche)を用いて検出する。対照ハイブリダイゼーションは、切片をRNaseA(100ug/ml)により37℃で30分間処理し、その後にアンチセンスプローブとのハイブリダイゼーションを行うことによって行う。
【0137】
ウエスタンブロット分析
インビトロの細胞および培地においてならびにインビボのマウス組織において遺伝子移入がヒトOPGの発現を引き起こすことを確かめるために、ウエスタンブロット分析を行うことができる。試料を上記の通りに抽出する。電気泳動の前に、試料のタンパク質濃度を測定する(BioRadタンパク質アッセイ)。試料(25μgの全タンパク質)を12% SDS-PAGEで泳動させ、エレクトロブロット法によってニトロセルロース膜に移行させ、続いて、0.1%ウシ血清アルブミンのPBS溶液中にて、RTで60分間インキュベートする。膜を、0.1%ウシ血清アルブミンのPBS溶液中にて、ヒトOPGに対する適切な希釈度の抗血清とともに4℃で一晩インキュベートする。0.05% Tween 20を含むPBSによる5分間ずつの3回の洗浄の後に、Western Breezeキット(Invitrogen)を製造元のプロトコールに従って用いてブロットを処理する。化学発光はXAR-5フィルム(Kodak)を用いて検出する。
【0138】
RNA抽出プロトコール
血液からのRNAの抽出は、QAIAmp RNA血液ミニキットを用いて行う。試料をRNase非含有DNaseで処理する。RNAを凍結組織からRNAeasy MiniまたはMicroキット中の動物組織用プロトコールを用いて抽出する。組織を採取し、-80℃で保存して、液体窒素下で粉砕する。溶解緩衝液を粉砕組織に添加した後に、溶解産物をQlAshredderカラムを用いて均質化し、RNase非含有DNase処理を含むQiagenプロトコールを推奨された通りに実行する。凍結組織をRNAlater-ICEを用いて転換させ、同様に処理する。28Sおよび18S rRNAバンドの完全性を、それぞれの全RNA試料の無傷性を決定するために用いる。
【0139】
リアルタイム定量的PCR
リアルタイムqPCR発現の測定は、Qiagen RNAeasyキットを製造元の指示に従って用いて単離した全RNAに対して、ABI 7900HT装置を用いて行われる。200ngの全RNAからのcDNA合成の前に、ゲノムDNAを除去するためにDNaseI処理を用いる。ランダムヘキサマーを、Qiagen Sensiscript逆転写酵素を製造元のプロトコールに従って用いる20μl中での第1鎖合成を惹起するために用いる。それぞれのTaqManアッセイを、転写レベルを測定するために3回ずつ行う。これらの測定は、経口投与による遺伝子治療後のヒトおよびマウスのOPG転写の時間的経過およびレベルに関するデータを提供する。
【0140】
ノーザン分析
製造元のプロトコールに従ってRNAeasy(Qiagen)を用いて、野生型ならびに処理および非処理マウス組織から全RNAを単離する。8マイクログラムの全RNAを0.8%アガロースホルムアミドゲルの各レーンに対してローディングし、電気泳動性に分離されたRNAをナイロン膜(Hybond N, Amersham)に移行させる。ハイブリダイゼーションをExpressHyb溶液(BD Clontech)中にて68℃で1時間行い、洗浄を行って、オートラジオグラフィーを製造元のプロトコールに従って行う。マウスまたはヒトのOPGに特有のPCR断片に由来する32P標識プローブをハイブリダイゼーションのために用い、32P標識したα-アクチンおよび/またはGAPDHプローブを試料間の標準化のために用いる。
【0141】
レーザー捕捉マイクロダイセクション
レーザー捕捉マイクロダイセクション(LCM)は、細胞の位置、特定の細胞種(マクロファージ-対-破骨細胞など)の内部でのヒトOPGの発現の程度および持続時間に関する、分子レベルでの追加的なデータを入手するために用いられる。これらの検討はPixCell Ile LCM System(Arcturus Inc.)を用いて行われ、特定の組織標的からのRNAおよび/またはDNAの捕捉、単離、増幅および定量に対するLCMの広範囲にわたる経験を基にしている。LCM法は、凍結された、ホルマリン固定されてパラフィン包埋された、および蛍光標識された切片を含む、多岐にわたるスライド固定法と適合性がある。LCMは、DNAおよび/またはRNA分析のための試料を入手する目的で、関心対象の細胞集団を同定してそこに導くために用いられる。手短に述べると、PixCell Ile LCM Systemを用いて細胞を捕捉して生体分子を回収するための工程は、関心対象の細胞の位置を特定し、その後にLCM Capを標的領域に配置することを含む。キャップを通したレーザーのパルス照射によって、熱可塑性フィルムは、キャップと組織の間のギャップを架橋して標的細胞に付着する薄い突起を形成する。キャップを挙上すると、今やキャップに付着している標的細胞が取り出され、その後、捕捉された細胞を、さらなる処理のために0.5mlのDNase/RNase非含有エッペンドルフ微量遠心分離管の中に溶出させる。
【0142】
CapSure Macro LCMで捕捉された試料を用いるDNA抽出プロトコール
LCM捕捉された細胞を伴うCapSure Macro LCM Capを、50ulのプロテイナーゼK抽出溶液を含む0.5ml微量遠心分離管の上に配置する。Cap Sure Capが挿入された微量遠心分離管を転置して、容量50μlのプロテイナーゼK溶液がキャップ集成体(assembly)の内部表面を確実に完全に覆うように穏やかに振盪する。65℃でのインキュベーション後に、キャップ-管の集成体を1,000×gで1分間遠心分離する。CapSure LCMキャップを除去して、抽出物を含む微量遠心分離管をプロテイナーゼKを失活させるために95℃で10分間加熱し、室温まで冷却して、PCR分析のために用いる。
【0143】
RNA抽出プロトコール
手短に述べると、CapSure HS LCM Cap上に捕捉された細胞から、以下の通りにPicoPure RNA Isolation Kitプロトコールを用いてRNAを調製する。10マイクロリットルの抽出緩衝液を、CapSure-ExtracSure集成体の緩衝液ウェルに添加する。0.5mL微量遠心分離管をCapSure-ExtracSure集成体の上に配置し、集成体全体を42℃で30分間インキュベートする。CapSure-ExtracSure集成物を有する遠心分離管を800×gで2分間遠心分離することによって、細胞抽出物を収集する。続いて抽出物を直ちにRNA単離のために用いるか(以下を参照)、または-80℃で保存する。
【0144】
緩衝液によるRNA精製カラムのプレコンディショニングを室温で5分間行い、続いて採取管内で16,000×gで1分間遠心分離する。細胞抽出物に10マイクロリットルの70%エタノールを添加した後に、エタノールを伴う細胞抽出物をRNA精製カラムに添加し、通過物(flowthrough)を除去するために100×gで2分間、続いて16,000×gで30秒間遠心分離する。結合したRNAを伴う精製カラムを緩衝液で洗浄し、DNaseで処理して、再び洗浄した後に、11〜30μlの溶出緩衝液を用いてRNAを溶出させる。この単離されたRNAを続いて直ちに増幅するか、または使用時まで-80℃で保存する。ヒトOPG構築物に特異的なプライマーを用いるPCRによって生じた増幅RNAを、発現のレベルを決定するためにアガロースゲル電気泳動または定量的リアルタイムPCRを用いて分析する。
【0145】
統計分析
データ解析は、SigmaPlot、SAS(SAS Institute Inc., Cary, NC)、NIH ImageおよびSPSSソフトウエア(SPSS Inc., Chicago, IL)を含む統計分析ソフトウエアパッケージを用い、一般的には、一般的な線形回帰およびスチューデントt検定を分析のために用いて行う。
【0146】
WGP粒子の調製
全グルカン粒子(WGP、Lot W0282)は、Alpha-Beta Technologyから以前に入手した。一般に、全グルカン粒子は、酵母細胞壁からのアルカリ不溶性グルカン画分の抽出および精製によって酵母細胞から調製される。酵母細胞壁を破壊することなく酵母細胞を細胞のタンパク質および細胞内部分を消化する水酸化物の水溶液で処理し、有意なタンパク質混入がなく、かつβ(1-6)およびβ(1-3)結合グルカンの改変されていない細胞壁構造を実質的に有するグルカン壁成分が残るようにする。酵母細胞(S.セレビシエ(S. cerevisae)R4株)を、最小培地中にてフェドバッチ発酵条件下で中間対数期(midlog phase)になるまで増殖させた。細胞(乾燥細胞重量が約90g/L)を2000rpmで10分間のバッチ遠心分離によって採取した。続いて細胞を蒸留水で1回洗浄し、1リットルの1M NaOH中に再懸濁して90℃まで加熱した。細胞懸濁液をこの温度で1時間激しく撹拌した。細胞壁を含む不溶性材料を2000rpmで10分間の遠心分離によって回収した。続いてこの材料を1リットルの1M NaOH中に懸濁して、再び90℃まで加熱した。懸濁液をこの温度で1時間激しく撹拌した。続いて懸濁液を室温まで冷却し、抽出をさらに16時間続けた。不溶性残留物を2000rpmで10分間の遠心分離によって回収した。この材料を最後に、HClでpH 4.5にした水1リットル中にて75℃で1時間にわたり抽出した。不溶性残留物を遠心分離によって回収し、200ミリリットルの水で3回、200ミリリットルのイソプロパノールで4回、さらに200ミリリットルのアセトンで2回洗浄した。その結果得られたスラリーをガラス皿に入れて、減圧下にて55℃で乾燥させたところ、7.7gの白色微粉末が生じた。
【0147】
全グルカン粒子およびそれらを調製するための工程のより詳細な説明は、米国特許第4,810,646号;第4,992,540号;第5,028,703号;第5,607,677号および第5,741,495号に示されており、それらの教示は参照により本明細書に組み入れられる。例えば、米国特許第5,028,703号は、酵母WGP粒子を発酵培養下にある酵母細胞から産生させうることを開示している。Sorval RC2-B遠心分離機における8000rpmでの20分間のバッチ遠心分離によって細胞を採取した。続いて細胞を、全グルカンの抽出用に調製するために蒸留水で2回洗浄した。第1の段階は、細胞塊を1リットルの4%w/v NaOH中に再懸濁して100℃に加熱することを伴った。細胞懸濁液をこの温度で1時間激しく撹拌した。細胞壁を含む不溶性材料を、2000rpmでの15分間の遠心分離によって回収した。続いてこの材料を2リットルの3%w/v NaOH中に懸濁して、75℃に加熱した。懸濁液をこの温度で3時間激しく撹拌した。続いて懸濁液を室温まで冷却して、抽出をさらに16時間続けた。不溶性残留物を2000rpmでの15分間の遠心分離によって回収した。この材料を最後に、HClでpH 4.5にした2リットルの3%w/v NaOH中にて75℃で1時間にわたり抽出した。不溶性残留物を遠心分離によって回収し、200ミリリットルの水で3回、200ミリリットルの脱水エタノールで1回、さらに200ミリリットルの脱水エチルエーテルで2回洗浄した。その結果得られたスラリーをペトリ皿に入れて乾燥させた。
【0148】
YGP粒子の調製
S.セレビシエ(100gのFleishmansパン酵母)を1リットルの1M NaOH中に懸濁して、55℃に加熱した。細胞懸濁液をこの温度で1時間混合した。細胞壁を含む不溶性材料を、2000rpmでの10分間の遠心分離によって回収した。続いてこの材料を水1リットル中に懸濁し、HClでpH 4〜5にした上で、55℃で1時間インキュベートした。不溶性残留物を遠心分離によって回収し、1000ミリリットルの水で1回、200ミリリットルの脱水イソプロパノールで4回、さらに200ミリリットルのアセトンで2回洗浄した。その結果得られたスラリーをガラス皿に入れて室温で乾燥させたところ、12.4gのわずかに淡白色の微粉末が生じた。
【0149】
YGMP粒子の調製
S.セレビシエ(75gのSAF-マンナン)を水1リットル中に懸濁して、1M NaOHでpH 12〜12.5に調整した上で、55℃に加熱した。細胞懸濁液をこの温度で1時間混合した。細胞壁を含む不溶性材料を2000rpmでの10分間の遠心分離によって回収した。続いてこの材料を水1リットル中に懸濁し、HClでpH 4〜5にした上で、55℃で1時間インキュベートした。不溶性残留物を遠心分離によって回収し、1000ミリリットルの水で1回、200ミリリットルの脱水イソプロパノールで4回、さらに200ミリリットルのアセトンで2回洗浄した。その結果得られたスラリーをガラス皿に入れて室温で乾燥させたところ、15.6gのわずかに淡白色の微粉末が生じた。
【0150】
YCP粒子の調製
American Type Culture Collection(ATCC, Manassas, VA)から入手した培養物に由来する酵母細胞(ロドトルラ属(Rhodotorula sp.))を、YPD中にて30℃で、定常期になるまで有酸素下で増殖させた。ATCCから入手可能なロドトルラ属培養物には、第886号、第917号、第9336号、第18101号、第20254号、第20837号および第28983号が含まれる。細胞(1L)を2000rpmでの10分間のバッチ遠心分離によって採取した。続いて細胞を蒸留水で1回洗浄し、その後HClでpH 4.5にした水中に再懸濁し、75℃で1時間おいた。細胞壁を含む不溶性材料を2000rpmでの10分間の遠心分離によって回収した。その後この材料を1リットルの1M NaOH中に懸濁して、1時間にわたり90℃に加熱した。続いて懸濁液を室温まで冷却して、抽出をさらに16時間続けた。不溶性残留物を2000rpmでの15分間の遠心分離によって回収し、1000ミリリットルの水で2回、200ミリリットルのイソプロパノールで4回、さらに200ミリリットルのアセトンで2回洗浄した。その結果得られたスラリーをガラス皿に入れて室温で乾燥させたところ、2.7gの淡褐色の微粉末が生じた。
【0151】
図2は、酵母細胞壁の横断面の概略図100であり、外側から内側の順に、外部細線維層(fibrillar layer)110、外部マンノタンパク質層120、βグルカン層130、βグルカン層-キチン層140、内部マンノタンパク質層150、原形質膜160および細胞質170を示している。
【0152】
図3Aは、YGP βグルカン粒子420の構造の概略図であり、β1,3グルカン細線維、キチンを含む出芽痕およびキチン細線維を示している。図3Bは、YGMP βグルカンマンナン粒子430の構造の概略図であり、β1,3グルカン細線維、キチンを含む出芽痕、マンナン細線維およびキチン細線維を示している。
【0153】
表1は、上記の通りに調製したWGP粒子、YGP粒子、YGMP粒子およびYCP粒子の化学組成の分析の結果をまとめたものである。YGP粒子およびYGMP粒子は、先行技術のWGP粒子と比較して、βグルカン含有率がより低くて一般に約6〜約90重量パーセントであり、タンパク質含有率がより高いことに注目されたい。YGMP粒子は、他の粒子型と比較してマンナン含有率がかなり高く、一般に約30重量パーセントを上回り、より好ましくは約30〜約90重量パーセントのマンナンを有する。YCP粒子は、他の粒子型と比較してキチン+キトサン含有率がかなり高く、一般に50重量パーセントを上回り、より好ましくは約50〜約75重量パーセントである。
【0154】
(表1)酵母細胞壁材料の化学組成
*結果は乾燥分析材料の%w/wとして報告されている
**結果は%w/w糖質として報告されている
WGP‐全グルカン粒子‐先行技術;YGMP‐酵母グルカン-マンナン粒子;YGP‐酵母グルカン粒子;YCP‐酵母キチン粒子
【0155】
例示的なペイロード捕捉分子
キトサンが装入されたYGP粒子の調製
カチオン性捕捉ポリマーであるキトサンと共にYGP粒子を調製した。1%w/vキトサン溶液を、高分子量(HMW)キトサン(ほぼ70,000Mw、Sigma Chemical St. Louis, Mo)または低分子量(HMW)キトサン(ほぼ10,000Mw、Sigma Chemical St. Louis, Mo)のいずれかを用いて0.1M酢酸中で調製した。1%w/vのHMWおよびLMWキトサン溶液の両方を0.1M酢酸中で調製した。4mlのHMWまたはLMWのキトサン溶液を2gのYGPを有する50mlコニカル遠心分離管内に添加し、滑らかなペーストが形成されるまで混合した。この混合物を室温で1時間インキュベートして、液体を吸収させた。NaOH(40ml、0.1M)を各チューブに添加し、直ちにボルテックス処理して、キトサンをYGP内部に沈着させた。YGP:キトサン懸濁液を18ゲージ針に通過させ、YGP:キトサン粒子の微細懸濁液を作製した。YGP:キトサン粒子を遠心分離(2,000rpmで10分間)によって収集し、その後に、上清のpHが7〜8になるまでペレットを脱イオン水で洗浄した。続いてYGP:キトサン粒子をペレット体積の2倍のイソプロパノールで4回洗浄し、続いてペレット体積の2倍のアセトンで2回洗浄した。続いてYGP:キトサン粒子をフード内で室温で乾燥させた。この手順により、1.2g のYGP:LMWキトサン粒子および1.4gのYGP:HMWキトサン粒子が得られた。
【0156】
CytoPure(商標)が装入されたYGP粒子の調製
専売されている水溶性のカチオン性ポリマートランスフェクション試薬である生分解性カチオン性捕捉ポリマー、CytoPure(商標)(Qbiogene, Inc., CA)とともにYGP粒子を調製した。20μlのCytoPure(商標)を0.5mlの脱イオン水で希釈し、0.5gのYGPを有する50mlコニカル遠心分離管内に添加し、滑らかなペーストが形成されるまで混合した。この混合物を4℃で15分間インキュベートして、液体を吸収させた。25mlのエタノールを各チューブに添加し、直ちにボルテックス処理して、CytoPure(商標)をYGPの内部に沈着させた。YGP:CytoPure(商標)懸濁液を超音波処理して、YGP:CytoPure(商標)粒子の微細懸濁液を作製した。YGP:CytoPure(商標)粒子を遠心分離(2,000rpmで10分間)によって収集し、その後にペレットをペレット体積の2倍のイソプロパノールで4回洗浄し、続いてペレット体積の2倍のアセトンで2回洗浄した。続いてYGP:CytoPure(商標)粒子をフード内で室温で乾燥させた。この手順により、0.45gのYGP:CytoPure(商標)粒子が得られた。
【0157】
ポリエチレンイミンが装入されたYGP粒子の調製
カチオン性捕捉ポリマーとしてのポリエチレンイミン(PEI)とともにYGP粒子を調製した。2%w/vのPEI(ほぼ50,000Mw、Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)水溶液の0.5mlアリコートを、0.5g YGPを有する50mlコニカル遠心分離管内に添加して、滑らかなペーストが形成されるまで混合した。この混合物を室温で1時間インキュベートして、液体を吸収させた。25mlのエタノールを各チューブに添加し、直ちにボルテックス処理して、PEIをYGPの内部に沈着させた。YGP:PEI懸濁液を18ゲージ針に通過させ、YGP:PEI粒子の微細懸濁液を作製した。YGP:PEI粒子を遠心分離(2,000rpmで10分間)によって収集し、その後に、ペレットをペレット体積の2倍のイソプロパノールで4回洗浄し、続いてペレット体積の2倍のアセトンで2回洗浄した。続いてYGP:PEI粒子をフード内で室温で乾燥させた。この手順により、0.48gのYGP:PEI粒子が得られた。
【0158】
アルギン酸塩が装入されたYGP粒子の調製
アニオン性捕捉ポリマーとしてのアルギン酸塩(F200またはF200L、Multi-Kem Corp., Ridgefield, NJ)とともにYGP粒子を調製した。1%w/vのアルギン酸水溶液の2mlアリコートを、1gのYGPを有する50mlコニカル遠心分離管内に添加し、滑らかなペーストが形成されるまで混合した。この混合物を室温で1時間インキュベートして、液体を吸収させた。混合物を40mlの1%w/v塩化カルシウム水溶液で希釈した。YGP:アルギン酸塩懸濁液を18ゲージ針に通過させ、YGP:アルギン酸塩粒子の微細懸濁液を作製した。YGP:アルギン酸塩粒子を遠心分離(2,000rpmで10分間)によって収集した。YGP:アルギン酸塩粒子をペレット体積の2倍のイソプロパノールで4回洗浄し、続いてペレット体積の2倍のアセトンで2回洗浄した。続いてYGP:アルギン酸塩粒子をフード内で室温で乾燥させた。この手順により、0.95gのYGP:F200アルギン酸塩粒子および0.86gのYGP:F200Lアルギン酸塩粒子が得られた。
【0159】
ポリ-L-リジンが装入されたYGP粒子およびYGMP粒子の調製
捕捉ポリマーとしてのポリ-L-リジン(PLL)とともにYGP粒子およびYGMP粒子を調製した。1%w/vのPLL(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)水溶液の4mlアリコートを、1gのYGPまたはYGMPを有する50mlコニカル遠心分離管内に添加した。この混合物を55℃で30分間インキュベートして、液体を吸収させた。10mlのエタノールを各チューブに添加し、それを均質化して(Polytronホモジナイザー)、YGP:PLL粒子またはYGMP:PLL粒子の微細懸濁液を作製した。YGP:PLL粒子またはYGMP:PLL粒子を遠心分離(2,000rpmで10分間)によって収集した。YGP:PLLまたはYGMP:PLLをペレット体積の2倍のイソプロパノールで4回洗浄し、続いてペレット体積の2倍のアセトンで2回洗浄した。続いてYGP:PLL粒子またはYGMP:PLL粒子をフード内で室温で乾燥させた。この手順により、1.3gのYGP:PLL粒子および1.1gのYGMP:PLL粒子が得られた。顕微鏡による評価では、遊離PLL凝集物はなく、YGP:PLL粒子またはYGMP:PLL粒子のみが示された。
【0160】
キサンタンが装入されたYGP粒子およびYGMP粒子の調製
アニオン性捕捉ポリマーとしてのキサンタンとともにYGP粒子およびYGMP粒子を調製した。1%w/vのキサンタン水溶液の4mlアリコートを、粘性を低下させるために55℃に加熱して、1gのYGPまたはYGMPを有する50mlコニカル遠心分離管内に添加した。この混合物を55℃で30分間インキュベートした。10mlのエタノールを各チューブに添加し、それを均質化して(Polytronホモジナイザー)、YGP:キサンタン粒子またはYGMP:キサンタン粒子の微細懸濁液を作製した。YGP:キサンタン粒子またはYGMP:キサンタン粒子を遠心分離(2,000rpmで10分間)によって収集した。YGP:キサンタン粒子またはYGMP:キサンタン粒子をペレット体積の2倍のイソプロパノールで4回洗浄し、続いてペレット体積の2倍のアセトンで2回洗浄した。続いてYGP:キサンタン粒子またはYGMP:キサンタン粒子をフード内で室温で乾燥させた。この手順により、1.2gのYGP:キサンタン粒子および1.1gのYGMP:キサンタン粒子が得られた。顕微鏡による評価では、遊離キサンタン凝集物はなく、YGP:キサンタン粒子またはYGMP:キサンタン粒子のみが示された。
【0161】
物理的封じ込めによる分子の捕捉のためのYGP:アガロースの使用
YGP中にペイロードを捕捉するための手段としての物理的封じ込めについて評価するために、YGP:アガロースを調製した。2%w/vアガロース(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)を含むTE溶液を調製して、50℃に冷却した。1mg/mlのサケ精子DNAを含むTEの貯蔵溶液を希釈し、50℃のTE中または1%アガロース中で0.5mg/ml DNAにした。YGPの500mgアリコートを、500μlのDNAを含むTEまたは500μlのDNAを含むアガロースと50℃で混合し、混合物を50℃で1時間インキュベートした。続いてこの混合物を、アガロースを固化させるために冷蔵庫で1時間冷却した。1時間後に、10mlのTEを添加し、混合物を冷蔵庫内で一晩インキュベートした。続いて混合物を遠心分離し、260nmでの吸収によって上清中のDNAを測定した。適用したDNAの約80%超がYGP:アガロースによって保持され、これに対してYGP:TE対照によって保持されたのは1%未満であった。これらの結果は、アガロースが物理的封じ込めによってDNAをYGPの内部に効果的に捕捉することを示している。
【0162】
物理的封じ込めによる分子の捕捉のためのYGP:ポリアクリルアミドの使用
YGP中にペイロードを捕捉するための手段としての物理的封じ込めについて評価するために、YGP:ポリアクリルアミドを調製した。1mg/mlのサケ精子DNAを含むTEの貯蔵溶液を、TE中または30%ポリアクリルアミド/bis(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)中で0.5mg/ml DNAとなるように希釈した。各DNA混合物にTEMED(N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン)を添加し(5mlのDNA溶液に対して1μlのTEMED)、各溶液の2mlアリコートを1gのYGPに添加した。この生成物を混合して均一な懸濁液を形成させ、室温で3時間インキュベートした。3時間のインキュベーション後に、10mlのTEを添加し、混合物を冷蔵庫内で一晩インキュベートした。続いて混合物を遠心分離し、260nmでの吸光度によって上清中のDNAを測定した。適用したDNAのほぼ95%超がYGP:ポリアクリルアミドによって保持され、これに対してYGP:TE対照によって保持されたのは1%未満であった。これらの結果は、ポリアクリルアミドが、物理的封じ込めによってDNAをYGPの内部に捕捉するために用いるのに有効な捕捉ポリマーであることを示している。
【0163】
YGP中へのタンパク質の装入
治療用のペプチドもしくはタンパク質、ワクチン抗原、または他のペプチドもしくはタンパク質の保持、輸送および送達に対する、本発明の送達系の有用性を、ウシ胎仔血清の混合タンパク質を用いて評価した。用いた酵母細胞壁粒子は、上記の通りに調製したYGP、YGP-PEIおよびYGP-キトサンであった。貯蔵溶液は、45ng/μlのウシ胎仔血清(FCS)(Fetal Bovine Serum, JRH Biosciences, Lenexa, KS)、0.2%PEIのTE溶液(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)、0.05Mリン酸緩衝液、pH 7.2(P緩衝液)および0.05Mリン酸緩衝液、pH 7.2、1M NaCl(P+塩類緩衝液)とした。
【0164】
表8に示されたように、4μlのFCSを1mgのYGP、YGP-PまたはYGP-CNを有する微量遠心分離管内に添加し、その結果得られた混合物を室温で60分間インキュベートして、粒子によって液体を吸収させた。インキュベーションの後に、200μlのリン酸緩衝液または200μlのPEIを表8に示された通りにして、その結果得られた混合物を室温で60分間インキュベートした。インキュベーションの後に、0.5mlのリン酸緩衝液を添加し、さらに5分間のインキュベーションの後に、チューブを超音波処理して個別の粒子を生じさせた。粒子を10,000rpmでの10分間の遠心分離によってペレット化し、上清を取り除いて新たなチューブに移した。0.5mlの0.05Mリン酸ナトリウム緩衝液、pH 7.2+1M NaClをペレットに添加し、さらに5分間のインキュベーションの後に、チューブを10,000rpmで10分間遠心分離し、高塩分溶出上清を取り除いて新たなチューブに移した。上清のタンパク質含有量を280nmでの吸光度によって測定した。
【0165】
タンパク質装入の結果は以下の表2に示されている。捕捉分子を伴わないYGP粒子は、提示されたタンパク質の5%しか捕捉しなかった。FCSタンパク質がまず装入され続いてPEIに曝露されたYGP粒子は、タンパク質装入物の47%を保持していた。タンパク質装入物に対する曝露の前に、PEIまたはキトサンなどの捕捉ポリマーがあらじめ装入されたYGP粒子は、タンパク質装入物のそれぞれ68%および60%を保持していた。
【0166】
(表2)
【0167】
これらの結果は、血清タンパク質が、捕捉ポリマーを伴わないYGP中には効果的には装入および捕捉されないことを示している。ペイロードタンパク質に対する曝露の前に捕捉ポリマーがあらじめ装入されたYGPは、タンパク質捕捉の増加をもたらした。または、まずタンパク質を装入し、続いて粒子内のタンパク質を封鎖状態にするために可溶性捕捉ポリマーを添加することによって、タンパク質をYGPの内部に捕捉することもできる。
【0168】
蛍光標識されたプラスミドDNAの装入および捕捉
DNA捕捉を最適化するため、ならびにマウスマクロファージ由来の細胞株であるJ774細胞への取込みの後のDNA送達および放出について評価するために、蛍光プラスミドDNA組成物を含むGPを調製した。蛍光pUC19プラスミドDNAは、1mg/mlのpUC19 DNA溶液を含む0.1M炭酸緩衝液(pH 9.2)1mlを、1mg/mlのDTAFを含む10mM炭酸緩衝液(pH 9.2)の懸濁液100μlと混合することによって調製した。37℃での一晩のインキュベーションの後に、200μlの1M Tris-HCl、pH 8.3を添加して、室温で15分間インキュベートした。続いて100μlの1M NaClおよび3mlのエタノールを、DNAのエタノール沈殿のために添加した。-20℃で一晩保存した後に、エタノール沈殿物を10,000rpmでの15分間の遠心分離によって収集した。このエタノール沈殿物を上清が清澄化するまで70%エタノールで洗浄して、1mlのTE中に再懸濁した。
【0169】
蛍光DNA(1μg/μl)を、乾燥YGP中に室温で30分間にわたり吸収させた。インキュベーションの後に、0.45mlの95%エタノールを1本のチューブに添加し、0.2mlの2%ポリエチレンイミン(PEI)を2本のチューブに添加し、さらに0.2mlの2%ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)を別のチューブに添加した。室温での30分間のインキュベーションの後に、0.2mlの2% CTABをPEIチューブの1本に添加し、インキュベーションを30分間続けた。エタノール(1ml、95%)を添加し、YGP-DNA組成物を-20℃で一晩保存した。YGP-DNA懸濁液を70%エタノールで洗浄して、0.5mlのPBS中に再懸濁した。J774マウスマクロファージを6ウェルプレートに1ウェル当たり2.5×105個の密度でプレーティングして、一晩インキュベートした。粒子を培地に対して細胞1個当たり粒子10個の割合で添加して、粒子を分布させるためにプレートを回旋させた。細胞を4時間インキュベートした。インキュベーション期間の終了時に、培地を除去した;細胞をPBSで洗浄し、0.4%ホルマリンのPBS溶液にて固定した。顕微鏡検査により、蛍光粒子が細胞によって取り込まれたことが判明した。
【0170】
別の試験では、J774細胞におけるトランスフェクションおよびコードされるEGFPの発現のために、pIRESプラスミドを含むYGPを調製した。用いたカチオン性捕捉物質には、カチオン性ポリマー、例えばポリエチレンイミン(PEI)、専売されている水溶性カチオン性ポリマートランスフェクション試薬であるCytoPure(商標)(Qbiogene, Inc., CA)、キトサン、および陽イオン界面活性剤であるヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)が含まれる。好ましいPEIの一つは、市販されている線状ポリエチレンイミンカチオン性ポリマートランスフェクション試薬であるJetPEI(Qbiogene, Inc., CA)である。
【0171】
pIRES-EGFP(Clonetech, CA)は、脳心筋炎ウイルス(ECMV)のリボソーム内部進入部位(IRES)を、MCSおよびEGFP(強化緑色蛍光タンパク質)のコード領域の間に含む。これにより、関心対象の遺伝子(MCS中にクローニングされている)およびEGFP遺伝子の両方が、単一の二シストロン性mRNAから翻訳されることが可能となる。pIRFS-EGFPは、EGFPおよび関心対象の別のタンパク質を発現する一過性トランスフェクトされた哺乳動物細胞の効率的な選択(フローサイトメトリーまたは他の方法による)のために設計されている。関心対象のタンパク質を高レベルで発現する細胞の選択を最適化するために、pIRES-EGFPは部分的に能力が失われたIRES配列を利用している。この能力低下IRESは、クローニングされた遺伝子のものに比してEGFP開始コドンでの翻訳開始の割合の低下を招く。これは、最適に満たない割合でのEGFPの翻訳を代償するために、mRNAが、そしてそれ故に標的タンパク質が高レベルで産生される細胞の選択を可能にする。このベクターはまた、EGFPのみを発現させるために、または、時間のかかる薬剤選択およびクローン選択を行うことなく、安定的にトランスフェクトされた細胞株を入手するために用いることもできる。EGFPは、哺乳動物細胞におけるより明るい蛍光およびより高度の発現に向けて最適化された、野生型GFPの赤方偏移変異体である(最大励起=488nm;最大発光=509nm)。EGFPはGFPmut1変異体をコードし、これはPhe-64からLeuへの、およびSer-65からThrへのアミノ酸置換を含む。これらの突然変異は、主としてタンパク質フォールディング特性および発色団形成の効率の改善によって、GFPの明度および溶解性を高める。EGFPはまた、好ましいヒトコドンでほぼ全体が構成されたオープンリーディングフレームも含む。このことは、野生型GFPに比して、真核細胞におけるより効率的な翻訳、そしてそれ故により高い発現レベルにつながる。
【0172】
調製した溶液は以下である:0.72μl/μlのpIRES EGFPプラスミドDNA水溶液、0.2%w/vのPEI(Sigma)のTE溶液、2μlのCytoPure(Qbiogene)+48μlの0.15M NaCl、2μlのJetPEI(Qbiogene)+48μlのTE、0.2%スペルミジンのTE溶液、2%(aq)CTABおよびリン酸緩衝食塩水(PBS)。
【0173】
蛍光pIRESプラスミドDNAは、1mg/mlのpIRES DNAを含む0.1M炭酸緩衝液(pH 9.2)1mlを、1mg/mlのDTAFを含む10mM炭酸緩衝液(pH 9.2)の懸濁液100μlと混合することによって調製した。37℃での一晩のインキュベーションの後に、200μlの1M Tris-HCl、pH 8.3を添加して、室温で15分間インキュベートした。続いて100μlの1M NaClおよび3mlのエタノールを、DNAのエタノール沈殿のために添加した。-20℃で一晩保存した後に、エタノール沈殿物を10,000rpmでの15分間の遠心分離によって収集した。このエタノール沈殿物を上清が清澄化するまで70%エタノールで洗浄して、1mlのTE中に再懸濁した。
【0174】
YGP懸濁液を室温で30分間インキュベートした。インキュベーションの後に、0.45mlの95%エタノールをチューブ3本の1セット(YGP、YGP-P、YGP-キトサン)に添加し、0.2mlの2% PEIをチューブ3本の2セットに添加し、0.2mlの2% CTABをチューブ3本のもう1セットに添加した。室温での30分間のインキュベーションの後に、0.2mlの2% CTABをPEIチューブの1セットに添加し、インキュベーションをさらに30分間進行させた。エタノール(1ml、95%)を添加し、YGPを-20℃で一晩保存した。このYGP懸濁液を70%エタノールで洗浄して、0.5mlのPBS中に再懸濁した。
【0175】
J774マウスマクロファージを6ウェルプレートに1ウェル当たり2.5×105個の密度でプレーティングして、一晩インキュベートした。粒子を培地に対して細胞1個当たり粒子10個の割合で添加して、粒子を分布させるためにプレートを回旋させた。細胞を4時間インキュベートした。インキュベーション期間の終了時に、培地を除去し、細胞をPBSで洗浄して、0.4%ホルマリンのPBS溶液にて固定した。
【0176】
蛍光DNAを含む粒子、および蛍光DNAを含む粒子とともにインキュベートしたJ774細胞を蛍光顕微鏡検査によって評価し、その結果を表3にまとめている。
【0177】
(表3)
【0178】
実施例1
YGP:pIRESとともにインキュベートしたJ774マウスマクロファージによるEGFP発現
pIRESプラスミドDNAはこの実施例では蛍光標識されておらず、その代わりに、pIRESによってコードされる緑色蛍光タンパク質(GFP)の機能的発現を、装入された酵母細胞壁粒子の取込み、pIRES DNAの細胞内放出、および蛍光の発生によって明示されるGFPの発現を実証するものとして用いた。
【0179】
YGP:pIRES組成物は以下の通りに調製した。DNAを、1mg/ml貯蔵液の脱イオン水による希釈物から調製した。指定量のDNA溶液をYGPに添加し、少なくとも30分間インキュベートして液体を吸収させた。0.2% PEIを含むTEまたは0.2%キトサンを含む酢酸緩衝液の指定量を添加し、混合物を5分間インキュベートした後に、超音波処理して個別の粒子を生じさせた。さらに少なくとも30分間のインキュベーションの後に、指定量の2% CTABを添加した。さらに5分間のインキュベーションの後に、チューブをボルテックス混合し、再び少なくとも30分間インキュベートした。指定量の95%エタノールを添加した。続いて各チューブを混合し、-20℃で一晩保存した。続いてYGP:pIRES配合粒子を遠心分離し、70%エタノール中で2回洗浄して、10,000rpmで5分間遠心分離し、0.5mlの滅菌PBS中に再懸濁した上で、超音波処理して個別の粒子を生じさせた。1ml当たりの粒子数を算定し、各組成物を-20℃で保存した。
【0180】
J774マウスマクロファージを6ウェルプレートに1ウェル当たり2.5×105個の密度でプレーティングして、37℃で一晩インキュベートした。トランスフェクションは以下の表4にまとめた通りに行った。培地に対して細胞1個当たり粒子10個の割合で粒子を添加して、粒子を分布させるためにプレートを回旋させた。細胞への補給を毎日行って、2日間インキュベートした。インキュベーション期間の終了時に、培地を除去し、細胞をPBSで洗浄し、0.4%ホルマリンのPBS溶液にて固定した。細胞を蛍光顕微鏡検査を用いて検査した(図5)。それらの結果は表4にまとめられている。J774細胞の89%がYGP-F粒子を取り込んだ。EGFP発現は、J774細胞の80%超において空胞内の点状蛍光として明らかに認められた。
【0181】
図6Aおよび図6Bは、骨髄マクロファージのカラー蛍光顕微鏡写真の画像であり、YGP-FITC粒子520の取込み(図6A)を示すとともに、図6BではYGP-FITC粒子530の取込みおよびマクロファージマーカーF4/80 540に特異的な染色を示している。
【0182】
(表4)
【0183】
実施例2
YCWPとともにインキュベートしたマウスRAW細胞におけるEGFP発現
YCWP-テキサスレッドおよびpgWIZ-GFPのインビトロ共送達(co-delivery)について、マウスRAW細胞を用いて検討した:マウスRAW 264.7細胞(ATCC, Manasas, VA、No. TIB-71(商標))を、J774マクロファージに関して上述した通りに6ウェルプレートにプレーティングした。YCWP内部のカチオン性tRNA/PEI/CTABナノポリプレックスの表面にアニオン性プラスミドDNAを吸着させることによって、正に荷電した酵母tRNA/PEI/CTABポリプレックスを含むYCWP-tRNA/PEI/CTAB粒子(1×107個)に対して、0.5mgのpgWizGFP DNA(Gene Therapy Systems, San Diego, CA)を装入した。続いて、YCWP-tRNA/PEI/CTAB/gWizGFP組成物をPEI(5mg)でコーティングした。同一の細胞の内部でのYCWP取込み(赤色粒子)およびGFP発現(緑色分散蛍光)を実証するために、粒子:細胞比が5であるこのYCWP-DNA組成物を、粒子:細胞比が5である空(empty)YCWP-TR(テキサスレッド、Molecular Probesにより化学的に標識されたYCWP)と混合し、続いてマウスRaw細胞とともにインキュベートした。図7Aおよび図7Bの蛍光顕微鏡写真において認められるように、YCWP-TRを取り込む細胞はGFPを発現する。
【0184】
実施例3
マウスにおけるYGP粒子およびYGMP粒子のインビボ経口生物学的利用能
酵母グルカン粒子の経口生物学的利用能に対する細胞表面糖質組成物の効果を、蛍光標識した酵母細胞壁粒子を用いて検討した。YGPおよびYGMPと、新たに調製した20mg/mlのジクロロトリアジニルアミノフルオレセイン(DTAF)のDMSO溶液とを、0.1Mホウ酸緩衝液、pH 8中で37℃で2日間反応させることによって、蛍光標識した酵母グルカン粒子(YGP-F)および蛍光標識した酵母グルカン-マンナン粒子(YGMP-F)を調製した。余分なDTAFは1M Tris緩衝液、pH 8.3によって消光させ、滅菌PBSによる反復洗浄によって非反応生成物がなくなるように洗浄した。
【0185】
YGP-F(1mg/ml)およびYGMP-F(2.5mg/ml)のアリコート(0.1ml)を、マウス(C57Bl/6野生型)に、経口胃管投与および皮下注射によって5日間投与した。各群から第5日に便ペレットを収集した。マウスを第7日に安楽死させ、組織(脳、肝臓、脾臓、骨髄および小腸)を採取した。脳、肝臓、骨髄および小腸を10%パラホルムアミド固定液中に入れた。脾臓は、50ulの滅菌PBSを含む氷水上の別個のチューブ内に回収した。それらを鋏を用いて浸軟させ、70ミクロンのスクリーンに押し付けて通過させて、個別の細胞の懸濁液を作製した。脾臓細胞を12ウェルプレート当たりほぼ106個でプレーティングし、37℃で24時間インキュベートして付着させた。非結合細胞を洗い流した後に、蛍光顕微鏡検査により、ウェルを、内部移行した蛍光粒子を有する付着細胞(マクロファージ)に関してスコア化した。その結果は、YGP-FおよびYGMP-Fの両方に経口的な生物学的利用能があり、マクロファージによって全身に分布することを示している。均質化した便の分析により、投与した蛍光粒子の数のほぼ20%の存在が実証されており、このことは経口吸収の効率が約80%であったことを示している。
【0186】
さらなる検討により、pIRES DNAを含む経口投与した酵母細胞壁粒子がインビボでマクロファージ内に組み込まれ、続いてEGFPを発現したことが示されている。pIRES発現ベクターを含む酵母細胞壁粒子を含む組成物のインビボにおけるマウスへの経口投与および皮下投与は、マウス脾臓マクロファージにおける緑色蛍光タンパク質の一過性発現を生じさせる効果があった。単離された脾臓細胞を上記の通りに採取して培養し、付着細胞をホルマリン固定して、蛍光顕微鏡検査を用いて検査して写真を撮影した。脾臓マクロファージ細胞の蛍光顕微鏡写真により、YGMP:pIRES粒子の取込みおよび緑色蛍光タンパク質の発現が実証された。
【0187】
実施例4
YGP:pIRES2DsRED2-OPGとともにインキュベートしたJ774マウスマクロファージによるヒトオステオプロテジェリン発現
ペイロード分子である、ヒトオステオプロテジェリンを発現するpIRES2DsRED2-OPGプラスミドDNAを、酵母グルカン粒子(YGP)および酵母グルカンマンナン粒子(YGMP)の中にカチオン性ポリマー-DNAナノ複合体の形態で組み込んだ。マクロファージによる食作用を受けると、これらの粒子はファゴソーム中に配置され、ここでカチオン性ポリマーがファゴソームを膨張させて、DNAを細胞質中に放出する。放出されたDNAは核に移動し、細胞機構によってプロセシングを受けて、活性のある正常なオステオプロテジェリンを生成する。
【0188】
pIRES2DsRED2-OPGプラスミドの説明
これらの予備的実験に用いるpIRES2DsRED2-OPG-OPG構築物は、pIRES2DsRED2のマルチクローニングサイト(MCS)のBamH1部位とXho1部位の間に挿入されたヒトオステオプロテジェリンcDNAから構成される。pIRES2DsRED2ベクター(カタログ番号6990-1、Clontech Laboratories, Inc., Mountain View, CA)は、IRESエレメント、およびヒトオステオプロテジェリンDNA挿入配列の発現の原因となるCMVプロモーターを含む。ヒトOPG cDNAはヒト腎臓cDNAライブラリーからクローニングされているが、これは、疎水性リーダーペプチドおよび4つの潜在的なN結合型グリコシル化部位を含む、分泌型糖タンパク質の特徴を有する401アミノ酸ポリペプチドをコードする。
【0189】
YGP-DNA組成物は、ヒトオステオプロテジェリンを発現するプラスミドDNA(pIRES2DsRED2-OPG)を、マウスマクロファージ細胞株J774の中に効率的に送達する。上記の方法を、ヒトオステオプロテジェリンを発現するpIRES2DsRED2-OPGのYGP中への装入および捕捉のために用いた。培養下にある付着性J774細胞を、YGPまたはYGP:pTRES2DsRED2-OPGとともに、粒子:細胞比を10として48時間インキュベートした。培地を除去し、細胞をPBSで短時間洗浄して、その後固定した(0.5〜1%のホルマリン溶液により)。固定液の除去の後に、細胞をPBSで短時間洗浄し、続いて1.0%乳中にてRTで1時間インキュベートした。乳ブロッキング溶液を除去した後に、細胞をヒトオステオプロテジェリンに特異的なマウスモノクローナル抗体(Imgenex, IM103)(PBS/1.0%乳中で作用希釈度1/500)とともに4℃で一晩インキュベートした。一晩のインキュベーションの後に抗体溶液を細胞から除去し、穏やかに揺動させながらPBS/0.05%Tween 20により5分間ずつ3回、細胞を洗浄した。続いて細胞をロバ抗マウスCy5結合抗血清(Molecular Probes, Cy5ロバ抗マウス2mg/mL;作用希釈度1/100〜1/50)とともにRTで1時間インキュベートした。細胞を再び、穏やかに揺動させながらPBS/0.05%Tween 20により3分間ずつ5回洗浄した。最終洗浄溶液の除去の後に、各ウェルにPBSを添加し、蛍光顕微鏡分析を行うまで細胞プレートを4℃で暗所保存した。
【0190】
図8Aおよび図8Bは、インビトロで偽トランスフェクションを受けた(図8A)、またはYGP:pIRES2DsRED2-OPGにより処理された(図8B)J774細胞のカラー蛍光顕微鏡写真の画像である。ヒトオステオプロテジェリンの発現は、表示された細胞610などのように、インビトロでYGP:pIRES2DsRED2-OPG組成物により処理されたJ774細胞の50%超における免疫反応性として検出可能であった。抗ヒトオステオプロテジェリン抗体は組換えヒトオステオプロテジェリンを選択的に同定し、内因性マウスオステオプロテジェリンとは交差反応しなかった。これらの結果は、ヒトオステオプロテジェリンをコードするDNAの効率的送達においてYGP:pIRES2DsRED2-OPG組成物が有効であり、その結果としてマウスJ774マクロファージ細胞におけるヒトオステオプロテジェリンの一過性発現が生じることを実証している。
【0191】
実施例5
生理的に有意な量のhOPGの発現および分泌
2mgのpIRES2DsRED2-hOPG DNAが装入され、10mgのポリエチレンイミン(PEI, Aldrich)でコーティングされたYGPの組成物(5×107個)を、培養下にある3T3-D1マウス線維芽細胞株のトランスフェクションのために用いた。陽性対照として、従来のトランスフェクション剤(JetPEI、Gene Therapy Systems, San Diego, CA)を用いてpIRES2DsRED2-hOPG DNAを細胞にトランスフェクトした。pIRES2DsRED2-hOPG DNA(1mg)を含む0.15M NaCl 50mlを、2mgまたは4mgのJetPEIを含む50mlの0.15M NaClと混合し、直ちにボルテックス処理した。RTで20分間のインキュベーションの後に、マウスデクチン-1遺伝子が安定的にトランスフェクトされ、24ウェルプレート内の10%ウシ胎仔血清(Invitrogen)を含むDMEM中に集密度33%でプレーティングされた3T3-D1マウス線維芽細胞に、トランスフェクション混合物を添加した。細胞のトランスフェクションは、0.5mlの増殖培地中の細胞に対して、100mlのYGP-DNA-PEI組成物(5×105個の粒子中に20ngのDNA)または100mlのDNA-PEIポリプレックス(1mgのDNA)を滴下させながら添加することによって行った。陰性対照ウェルは非処理とした。CO2インキュベーター内での37℃での3時間のインキュベーションの後に、増殖培地を除去して、0.5mlの新たなD-MEM/10%ウシ胎仔血清を補充し、細胞を上記の通りにインキュベートした。
【0192】
24時間および48時間の時点で増殖培地のアリコートを取り出して凍結し、0.5mlの新たな培地を補充した。hOPGに関するELISAキット(Cat. No. RD 194003200;Immunodiagnostic Systems, BioVendor LLC、代表的な標準曲線は図9に示されている)を、hOPGの発現および分泌に関して培地試料をアッセイするために用いた(表5)。
【0193】
(表5)48時間時点でのトランスフェクト細胞培地のhOPG ELISA分析
【0194】
これらのデータは、YCWP組成物が、hOPGをコードするDNAを効率的に送達することができ、それが細胞内で発現されるとともに細胞によって分泌されることを実証している。提示されたDNAの量に対して標準化した場合、本発明の送達系は、細胞外培地中に24倍多い量のhOPGを生じさせたことに注目されたい。これらの結果は、pIRES2DsRED2-hOPG DNAを含むYCWPによる3T3-D1細胞のトランスフェクションが効率的であり、生理的に有意な量での培地中へのhOPGの合成および分泌をもたらすことを実証している。
【0195】
これらの試験の結果は以下のようにまとめられる。マウスマクロファージJ774細胞はYGP-F粒子を効率的に貪食した(90%を上回る)。抗ヒトオステオプロテジェリン抗体は組換えヒトオステオプロテジェリンを選択的に同定し、内因性マウスオステオプロテジェリンとは交差反応しなかった。ヒトオステオプロテジェリンの発現は、YGP:pIRES2DsRED2-OPG組成物によりインビトロで処理されたJ774細胞の50%超で免疫反応として検出可能であった。YCWP組成物は、hOPGをコードするDNAを効率的に送達することができ、それが細胞内で発現されるとともに細胞によって分泌される。これらの結果は、本発明の諸態様が、ヒトオステオプロテジェリンをコードするDNAを効率的に送達して、マウスJ774マクロファージ細胞および3T3-D1マウス線維芽細胞においてヒトオステオプロテジェリンの一過性発現を生じさせるのに有効であることを実証している。
【0196】
実施例6
インビボにおいてマクロファージに組み込まれ、骨に大量に移行する、マウスに投与された酵母細胞壁粒子
YGPの骨格組織への生体内分布を評価するための1件の試験において、テキサスレッド(Molecular Probes)で標識したYGP粒子(YGP-TR)を腹腔内注射(IP;1mg/ml)によってマウスに投与した。マウスを第4日に安楽死させ、組織(脳、肝臓、脾臓および骨)を採取し、PBSで緩衝化した5%ホルマリン中で一晩固定して、YGP-TR粒子の組織分布に関する蛍光顕微鏡検査のために切片を調製した。マウス大腿骨の横断面における髄腔内のYGP-TR細胞内粒子(いくつかは骨内膜表面と連続しているように見える)。図10A〜図10Cは、4日前に蛍光標識YGP粒子のIP注射を受けたL444Pゴーシェマウス由来の大腿骨の組織切片の画像を示しており、これは蛍光標識粒子750が骨に分布したことを示している。図10Aは透過光の下で観察した骨切片を示している。図10Bは、蛍光顕微鏡検査によって観察した図10Aと同じ視野を示しており、蛍光標識粒子750を有するいくつかの細胞(矢印)を示している。図10Cは、図10B中に長方形によって表示された視野を含む、より高倍率の画像である。この試験は、マウスに投与されたYGP-DNA組成物がインビボでマクロファージ内に組み込まれて、骨格組織に大量に移行しうることを実証している。
【0197】
図11は、インビボ経口投与180の後の種々の組織へのマクロファージ遊走370によって酵母βグルカン粒子(YGP)230を送達する方法の好ましい態様の概略図である。酵母βグルカン粒子(YGP)230を含む組成物182を対象185に経口投与する(180)。酵母βグルカン粒子(YGP)230は小腸内層のM細胞355によって取り込まれ、上皮350を越えて移行し、腸マクロファージ360による食作用を受ける。YGPを含むマクロファージは、骨450、肺452、肝臓454、脳456および脾臓458を含む種々の臓器および組織へと遊走する(370)。経口投与の約72時間後に、YGPを貪食した脾臓マクロファージ364が脾臓458に観察された(概略図およびカラー蛍光顕微鏡写真の反転コントラストグレースケール画像の両方として示されている)。経口投与の約90時間後には、YGPを貪食した骨髄マクロファージ362が骨450中に観察された(概略図およびカラー蛍光顕微鏡写真の反転コントラストグレースケール画像の両方として示されている)。
【0198】
本発明をその詳細な説明とともに記述してきたが、前記の説明は本発明を例示することを意図していて、その範囲を限定することは意図しておらず、それは添付の特許請求の範囲によって規定される。その他の局面、利点および変更は添付の特許請求の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0199】
【図1】破骨細胞16の分化に関与するシグナル伝達機構の概略図10であり、ここで、RANKL(「NF-κBリガンドの受容体活性化因子)」12がその受容体であるRANK(「NF-κBの受容体活性化因子」)14を活性化することによって破骨細胞の分化を活性化するが、これは、OPG11がRANKLを封鎖して、骨芽細胞細胞表面に対するその結合およびその後の骨18に対する骨芽細胞作用を阻止することによって阻害される。
【図2】酵母細胞壁の横断面の概略図100であり、外側から内側の順に、外部細線維層110、外部マンノタンパク質層120、βグルカン層130、βグルカン層-キチン層140、内部マンノタンパク質層150、原形質膜160および細胞質170を示している。
【図3】図3Aは、YGP βグルカン粒子420の構造の概略図であり、β1,3グルカン細線維、キチンを含む出芽痕およびキチン細線維を示している。図3Bは、YGMP βグルカンマンナン粒子430の構造の概略図であり、β1,3グルカン細線維、キチンを含む出芽痕、マンナン細線維およびキチン細線維を示している。
【図4】本発明の1つの態様の概略図であり、捕捉ポリマー440を含むYGP粒子420にDNAなどのペイロード分子450を装入して、送達系YGP 460を形成させる工程を図示している。
【図5】強化緑色蛍光タンパク質をコードする発現ベクターであるpIRES-EGFP、カチオン性捕捉ポリマーPEI、およびカチオン性界面活性剤CTABを含むYGP粒子に曝露されたJ774細胞、例えば表示された細胞510のカラー蛍光顕微鏡写真の画像であり、粒子の取込みおよび強化緑色蛍光タンパク質の発現の証拠を示している。
【図6】図6Aおよび図6Bは、骨髄マクロファージのカラー蛍光顕微鏡写真の画像であり、YGP-FITC粒子520の取込み(図6A)を示すとともに、図6BではYGP-FITC粒子530の取込みおよびマクロファージマーカーF4/80 540に特異的な染色を示している。
【図7】図7Aは、マウスRAW細胞のカラー蛍光顕微鏡写真の画像であり、緑色蛍光タンパク質(分散蛍光604)の発現を生じさせた構築物とともに装入されたテキサスレッド標識YCWP粒子606の取込みを示している。図7Bは、図7Aのコントラスト反転(陰画)グレースケール画像である。
【図8】図8Aおよび図8Bは、インビトロで偽トランスフェクションを受けた(図8A)、またはYGP:pIRES2DsRED2-OPGにより処理された(図8B)J774細胞のカラー蛍光顕微鏡写真の画像である。ヒトオステオプロテジェリンの発現は、表示された細胞610などのように、インビトロでYGP:pIRES2DsRED2-OPG製剤により処理されたJ774細胞の50%超における免疫反応性として検出可能であった。抗ヒトオステオプロテジェリン抗体は組換えヒトオステオプロテジェリンを選択的に同定し、内因性マウスオステオプロテジェリンとは交差反応しなかった。これらの結果は、YGP:pIRES2DsRED2-OPG製剤に、ヒトオステオプロテジェリンをコードするDNAを効率的に送達し、結果としてマウスJ774マクロファージ細胞におけるヒトオステオプロテジェリンの一過性発現をもたらす効果があることを実証している。
【図9】代表的なヒトオステオプロテジェリンELISA標準曲線のグラフ表示である。
【図10】図10A〜図10Cは、4日前に蛍光標識YGP粒子のIP注射を受けたマウス由来の大腿骨の組織切片の画像を示しており、これは蛍光標識粒子750が骨に分布したことを示している。図10Aは透過光の下で観察した骨切片を示している。図10Bは、蛍光顕微鏡検査によって観察した図10Aと同じ視野を示しており、蛍光標識粒子750を有するいくつかの細胞(矢印)を示している。図10Cは、図10B中に長方形で表わされた視野を含む、より高倍率の画像である。
【図11】インビボ経口投与180後の骨450へのマクロファージ遊走370によって酵母βグルカン粒子(YGP)230を送達する方法の好ましい態様の概略図である。酵母βグルカン粒子(YGP)230を含む組成物182を対象185に経口投与する(180)。酵母βグルカン粒子(YGP)230は小腸内層のM細胞355によって取り込まれ、上皮350を越えて移行し、腸マクロファージ360による食作用を受ける。YGPを含むマクロファージは、骨450を含む種々の臓器および組織へと遊走する(370)。経口投与の約90時間後に、YGPを貪食した骨髄マクロファージ362が骨450中に観察された(概略図およびカラー蛍光顕微鏡写真の反転コントラストグレースケール画像の両方に示されている)。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、低骨密度の治療のための組成物および方法に関する。本発明はまた、オステオプロテジェリン依存性病状の治療のための組成物および方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
骨の健康および骨粗鬆症に関する米国公衆衛生総監報告(Surgeon General's Report on Bone Health and Osteoporosis)は、2020年には年齢50歳以上の米国人のおよそ半数が骨粗鬆症を有する、またはそれを発症するリスクがあると推定している。米国骨粗鬆症基金(National Osteoporosis Foundation)は、米国には骨粗鬆症を現在有する症例が約1000万人おり、うち800万人が女性、200万人が男性であり、さらに3400万人の米国人が低骨量のために骨粗鬆症の深刻なリスクを有すると推定している。骨粗鬆症は年間150万件を上回る骨折の原因となっており、これには300,000件を上回る股関節部骨折;およそ700,000件の脊椎骨折;250,000件の手関節骨折;および300,000件の他部位の骨折が含まれる。骨粗鬆症性の股関節部骨折に対する米国全体での直接的費用の推定値(病院およびナーシングホーム)は、2002年に180億ドルであった。股関節部骨折の患者は今後さらに別の骨折を経験する可能性が非常に高い。これらの統計の背後にある生活の質の低下の大きさは筆舌に尽くしがたい。さらに、急性および部位特異的な低骨密度病状には、炎症媒介性骨溶解、腫瘍誘発性骨溶解、人工インプラントの弛み、歯周病(periodonitis)または骨関節炎が含まれる。
【0003】
骨ホメオスタシスの細胞生物学
骨は、骨格内で絶え間ないリモデリング(吸収および置換)を受ける動的な組織である。骨格の維持を担う主要な細胞種は、吸収性の破骨細胞および骨合成性の骨芽細胞であり、それらはどちらもホルモン、増殖因子および炎症メディエーターによって影響される。間葉幹細胞由来の骨芽細胞による骨形成、ならびに単球/マクロファージ系列の造血前駆細胞から生じる破骨細胞によるそのモデリングおよびリモデリングは、1つの密接に調節された系である(Huang, W., et al., A rapid multiparameter approach to study factors that regulate osteoclastogenesis: Demonstration of the combinatorial dominant effects of TNF-a and TGF-β in RANKL-mediated osteoclastogenesis. Calcif. Tissue Int. 73:584-593 (2003)。正常骨量の維持は、局所性および全身性の両方の因子およびシグナルがかかわる、形成と吸収との間のホメオスタシス的な複雑な均衡に依存する。これらの2つのプロセス間に不均衡がある場合には、骨密度の上昇(大理石骨病)または低下(骨粗鬆症)が起こる。慢性の低骨密度は閉経後、加齢性および炎症性の疾患でみられ、一方、急性の低骨密度は人工関節(prosthesis)の弛みまたは腫瘍誘発性骨溶解において観察される。
【0004】
破骨細胞
破骨細胞は、特定のシグナルに応答して、単球/マクロファージ系列F4-80陽性細胞の造血前駆細胞から生じる(Boyle, W. J., et al., Osteoclast differentiation and activation. Nature 423, 337-342 (2003))。これが起こるためには、コロニー刺激因子-1(CSF-1;M-CSF)およびTNFスーパーファミリーのメンバーであるRANKL(NF-κBリガンドの受容体活性化因子;TRANCE、OPGLおよびODFとも呼ばれる)という2つの増殖因子が必要である。図1は、破骨細胞の分化に関与するシグナル伝達機構の概略図であり、ここでRANKLはその受容体であるRANKを活性化することによって破骨細胞の分化を活性化し、一方、オステオプロテジェリン(OPG、これは破骨細胞形成抑制因子としても知られる)は、RANKLを、細胞表面に対するその結合を阻止することで封鎖状態にする。
【0005】
骨格では、CSF-1およびRANKLがいずれも骨芽細胞によって供給されるが、さらなる細胞性供給源が他の組織にある。CSF-1はその受容体である原癌遺伝子c-Fmsを介して前破骨細胞と結合して、RANKL受容体であるRANKの発現を刺激し、RANKLに対する応答性をそれらの細胞に付与する。RANKの活性化は、RANK関連因子であるTRAF6を介してNF-κB依存性遺伝子の発現を刺激する上、Junキナーゼ経路およびホスホイノシトール経路も活性化する。これらの経路は一緒にアポトーシスを阻害するほか、破骨細胞に骨を吸収する準備をさせる他の細胞応答を宿主に惹起させる。これらには、吸収の部位へのケモカイン誘発型走化性、多核細胞を生じさせる細胞融合、αvβインテグリンを介した骨への付着を促進させる特化したアクチンリングの形成、骨基質を溶解するためのプロテアーゼおよびプロトンポンプの発現、ならびに、分解性分子を分泌するためならびに溶解した骨基質を摂取および輸送するための極めて活発な小胞輸送の発達が含まれる。RANKLは、これらの複数の分化段階の上流で作用してインビボでのそれらの分化を阻害する、破骨細胞活性を調節するための魅力的で可能性のある標的である。
【0006】
RANKL/RANK/OPG経路のシグナル伝達は、内皮細胞の生存、血管新生、単球または内皮細胞の動員、ならびに平滑筋細胞の骨形成および石灰化に関して、血管の生理現象および病理現象においても重要な可能性がある。諸研究の結果は、RANKLは加齢、骨粗鬆症または疾患に伴う骨塩形成(bone mineralization)の低下と同時に起こる血管の石灰化を促進しうるが、OPGはそれを防御しうると考えられることを示唆している(Collin-Osdoby, P., Regulation of vascular calcification by osteoclast regulatory factors RANKL and osteoprotegerin. Circulation Res. 2004 95(11):1046-1057)。
【0007】
オステオプロテジェリン
OPGは腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーのメンバーであり、約60kDの単量体形態およびジスルフィド結合した約120kDのホモ二量体形態として存在する分泌性で塩基性の401アミノ酸の糖タンパク質である。OPGは骨芽細胞および骨髄ストロマ細胞によって産生される。OPGは、RANKLがRANKと結合するのを妨げる可溶性「デコイ」受容体として機能することにより、破骨細胞形成を用量依存的な様式で阻害する(図1)。Schoppet, M., et al., RANK ligand and osteoprotegerin: paracrine regulators of bone metabolism and vascular function, Arterioscier Thromb Vasc Biol. 2002 Apr 1;22(4):549-53を参照。オステオプロテジェリンは1997年にSimonetらによって報告され、彼らはそれをインビトロおよびインビボで防御的な骨作用を有する腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーの分泌性メンバーとして同定し、特徴決定した(Simonet, W. S., et al. Osteoprotegerin: A Novel Secreted Protein Involved in the Regulation of Bone Density. Cell 1997 89, 309-319)。組換えOPGタンパク質の静脈内注射、およびOPG(-/-)マウスにおけるOPGのトランスジェニック性過剰発現はいずれも、OPG欠損マウスで観察される骨粗鬆症性の骨表現型を効果的に救済する。Min, H., et al., Osteoprotegerin reverses osteoporosis by inhibiting endosteal osteoclasts and prevents vascular calcification by blocking a process resembling osteoclastogenesis. J Exp Med 2000 192, 463-474を参照。
【0008】
トランスジェニックマウスにおけるOPGの過剰発現は、おそらくはRANKL/RANK相互作用を阻止することにより、骨格質量の増加ならびに破骨細胞の数および活性の低減をもたらすことが実証されており(Simonet, W. S., et al.(1997))、一方、OPGの欠損は骨粗鬆症をもたらす。Bucay, N., et al., Osteoprotegerin-deficient mice develop early onset osteoporosis and arterial calcification. Genes Dev 1998 12, 1260-1268、およびMizuno, A., et al,. Severe osteoporosis in mice lacking osteoclastogenesis inhibitory factor/osteoprotegerin. Biochem Biophys Res Commun 1998 247, 610-615を参照。
【0009】
骨粗鬆症に加えて、人工関節周囲(periprosthetic)骨溶解(Yang, S.Y., et al., Adeno-associated virus-mediated osteoprotegerin gene transfer protects against particulate polyethylene-induced osteolysis in a murine model, Arthritis Rheum. 2002 Sep; 46(9):2514-23)、腫瘍転移、若年性パジェット病、ゴーシェ病、HIVの抗ウイルス治療、廃用性骨減少症、サラセミアおよび炎症性腸疾患に伴う骨溶解を含むいくつかの他の骨病状も、骨量の損失を伴う。
【0010】
骨癌性疼痛は、乳房、前立腺または肺で生じた腫瘍が長骨、脊椎骨および/または骨盤に転移した場合に起こることが最も多い。骨にかかわる原発性および転移性の癌は、米国だけでも年間400,000例の新たな癌症例を占め、進行性の乳癌または前立腺癌の患者の70%超は骨格転移を有する。骨痛の動物モデルにおける諸研究で報告されている結果は、オステオプロテジェリン治療がそれ以上の破壊を停止させ、進行中および運動誘発性の疼痛を軽減し、脊髄の神経化学的再組織化のいくつかの局面を元の方向に戻させることを示している。Luger, N.M., et al., Osteoprotegerin diminishes advanced bone cancer pain, Cancer Res. 2001 May 15; 61 (10):4038-47を参照。
【0011】
低骨密度を是正するための治療アプローチは、骨吸収の阻害か骨形成の刺激を目標としている。低骨密度の治療および予防に対して現在承認されている薬剤の大半、すなわちビスフォスフォネート、エストロゲン、サケカルシトニンおよび選択的エストロゲン受容体モジュレーターであるラロキシフェンは、破骨細胞性の骨吸収を阻害することによって骨量を増加させるように作用するが、以下に考察するように、最近では、骨形成タンパク質(Bone morphogenic protein)およびスタチン系薬剤を含む同化促進薬剤(anabolic drug)の探索への関心が急速に高まっている。エストロゲンまたは副甲状腺ホルモンを含むホルモン療法を用いることもできる。これらの治療法は臨床的に使用されてきており、ビスフォスフォネートおよびエストロゲンの場合には数十年にわたるが、老年集団において幅広く骨粗鬆症が存続していることを考慮すると、それらの効能が限定的なことは明白である。
【0012】
アレンドロネート、リセドロネート、イバンドロン酸などのビスフォスフォネートは、ヒドロキシアパタイト骨塩中に組み込まれ、以下を含む複数の機序によって骨吸収を阻害するように作用する:a)破骨細胞の骨付着と干渉する、b)破骨細胞前駆細胞の分化を阻害する、およびc)破骨細胞による選択的な取込みの後に破骨細胞機能を阻害する。エストロゲンは、閉経後女性における骨粗鬆症の治療のために長年にわたって広く用いられている。エストロゲンの作用の機序については依然としてさらに調査を要するが、諸研究により、閉経後女性におけるエストロゲン補充が骨格リモデリングを低下させるとともにその損失を減じさせ、さらには骨梁骨量および皮質骨量の両方を増加させることさえできることが示されている。閉経後女性における骨密度に対するエストロゲン療法の有益な効果にもかかわらず、その使用は乳癌および子宮癌のリスク増大を伴い、出血、乳房圧痛および鼓腸を引き起こす。選択的エストロゲン受容体モジュレーターは、エストロゲン療法の合併症およびリスクを理由として、骨粗鬆症の治療のために開発された。エストロゲンと同様に、タモキシフェンおよびラロキシフェンなどのSERMは、骨ではエストロゲン受容体に対するアゴニストであるが、乳房組織ではエストロゲン受容体のアンタゴニストである。
【0013】
いくつかの臨床試験により、鼻腔内サケカルシトニン療法が骨量損失を予防し、脊椎骨折の比率を低下させるために有効であることが示されている。サケカルシトニンは、骨粗鬆症および骨折既往のある閉経後女性において脊椎骨折のリスクを36%低下させ、その安全性プロファイルは長期使用を通じてプラセボと同等であることが示されている。サケカルシトニンは忍容性が良好であり、骨折の場合にはある程度の鎮痛をもたらし、ホルモン療法に代わる妥当な選択肢である。
【0014】
RANKL/OPG/RANK経路の発見は、改良された抗吸収療法を開発するための新たな機会を切り開いた。上述したように、トランスジェニックマウスにおけるOPGの恒常的な過剰発現は軽症の大理石骨病を招いており、OPG-/-マウスは重症の骨粗鬆症である。OPGのトランスジェニック性過剰発現はノックアウト表現型を救済する(Min, H., et al., 2000)。破骨細胞性の骨吸収を低下させるための、直接的なRANKL阻害または可溶性OPGのレベルを高めることのいずれかによるRANKL経路の阻害は、骨粗鬆症治療に対する有望な方法論である。
【0015】
骨形成タンパク質
最近、同化促進アプローチ、例えば、骨形成タンパク質(BMP)の、または副甲状腺ホルモンのパルス状IV注入投与の使用への関心が急速に高まっている。これらの治療戦略は大いに有望であり、BMPの初期評価は期待の持てるものである。しかし、これらの治療アプローチに、骨の過成長、骨棘、異所性骨、血管石灰化またはさらには新生物のリスクがないわけではない。
【0016】
モノクローナル抗体
最近の1件の小規模な臨床試験では、RANKLに対するヒトモノクローナル抗体の単回注射が、骨代謝回転マーカーを最長6カ月間にわたって低下させることが示されている(Bekker, P. J., et al., A single-dose placebo-controlled study of AMG 162, a fully human monoclonal antibody to RANKL, in postmenopausal women. J Bone Miner Res 2004 19, 1059-1066)。ヒトモノクローナル坑腫瘍壊死因子(TNF)抗体であるアダリムマブ(Humira(登録商標))は、関節リウマチの症状および徴候を効果的に軽減し、放射線検査で認められるびらん性関節変化の進行を予防する。
【0017】
スタチン
大部分が男性の退役軍人である大規模コホートの1件の試験では、スタチンの使用に伴って、脂質低下療法を行わない場合と比較して骨折リスクの36%の低下がみられ、他の脂質低下治療法と比較した場合には32%のリスク低下がみられた。スタチン系薬剤と、微小血管機能の改善を介した炎症軽減および新骨成長の促進を含む骨の健康状態との間の関連を説明するために、いくつかの生物学的機序が提唱されている(Scranton, R.E. (2005). Statin use and fracture risk: study of a US veterans population. Arch. Intern. Med. 165: 2007-2012)。
【0018】
ウイルスベクターを用いたオステオプロテジェリン遺伝子治療
オステオプロテジェリンは破骨細胞の形成、機能および生存の阻害によって骨吸収を防止するタンパク質であり、これらの活性のために、組換えOPGは、骨粗鬆症などの慢性的な骨吸収疾患の治療のための魅力ある薬剤候補となっている。遺伝子治療は、抗吸収性タンパク質の遺伝子を送達することによって長期的治療を実現する可能性がある。OPGはアデノ随伴ウイルスおよびアデノウイルスにより、いずれもOPGのみまたはIgG Fc鎖との融合タンパク質をコードするDNAとして送達されている。rAAV-OPG-IRES-EGFPのインビボ投与は、注射部位での筋細胞の検出可能な形質導入および注射2日後の血清OPG発現レベルの有意な増加をもたらし、骨折リモデリングの低下も伴うが、治癒中の骨折の構造強度に対してはほとんど影響を及ぼさなかった。
【0019】
抽出酵母細胞壁粒子は、容易に入手可能な、生分解性の、直径約2〜4μmである、実質的に球状の粒子である。抽出酵母細胞壁粒子の調製は当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第4,992,540号;第5,082,936号;第5,028,703号;第5,032,401号;第5,322,841号;第5,401,727号;第5,504,079号;第5,968,811号;第6,444,448 B1号;第6,476,003 B1号;公開米国出願第2003/0216346 A1号、第2004/0014715 A1号およびPCT公開出願WO 02/12348 A2号に記載されている。「全グルカン粒子」と称する抽出酵母細胞壁粒子の一形態が送達媒体として提案されているが、粒子からの有効成分の単純拡散による放出、または粒子マトリックスの生分解による全グルカン粒子と化学的に架橋された作用物質の放出のいずれも限定的である。米国特許第5,032,401号および第5,607,677号を参照。これらの限界を克服する、改良された酵母細胞壁薬物送達系が、米国公開特許出願第US2005281781号および公開PCT国際特許出願第WO2006007372 A3号に開示されている。「酵母細胞壁粒子」(YCWP)には、酵母グルカン粒子(YGP)および酵母グルカン-マンナン粒子(YGMP)が含まれる。
【0020】
GI免疫系のもう1つの重要な構成要素は、M細胞またはミクロフォールド細胞である。M細胞は、種々のタンパク質およびペプチド抗原のエンドサイトーシスを行う、腸管上皮内のリンパ濾胞上にある特殊な細胞種である。これらのタンパク質を消化する代わりに、M細胞はそれらを下方の組織に輸送し、そこでそれらは局所樹状細胞細胞およびマクロファージによって取り込まれる。
【0021】
M細胞は、分子および粒子を消化管の内腔からエンドサイトーシスまたは食作用によって取り込む。この物質は続いて細胞の内部を通って小胞内から基底細胞膜に輸送され、そこで細胞外空間に放出される。この過程はトランスサイトーシスとして知られている。その基底表面で、M細胞の細胞膜は下方のリンパ球および抗原提示細胞の周りで広範囲にわたって折りたたまれており、それらがM細胞から放出された輸送材料を取り込み、抗原提示のためにそれを処理する。
【0022】
ある研究により、パイエル板のM細胞による酵母粒子(直径3.4+/-0.8ミクロン)のトランスサイトーシスには1時間未満しか要しないことが示されている(Beier, R., & Gebert, A., Kinetics of particle uptake in the domes of Peyer's patches, Am J Physiol. 1998 Jul; 275(1 Pt 1):G130-7)。上皮内マクロファージによる明らかな食作用がないと、酵母粒子は下方に移動して2.5〜4時間以内に基底膜を通過し、そこでそれらは急速に食作用を受けてパイエル板ドームの外に輸送される。ヒト鼻咽頭リンパ組織(扁桃および咽頭扁桃)に認められるM細胞は、呼吸器感染症を引き起こすウイルスの捕集に関与することが示されている。インビトロのM細胞モデルの研究により、蛍光標識されたミクロスフェア(Fluosphere、0.2μm)およびキトサン微粒子(0.2μm)の取込みが示されている(van der Lubben I.M., et al., Transport of chitosan microparticles for mucosal vaccine delivery in a human intestinal M-cell model, J Drug Target, 2002 Sep;10(6):449-56)。レクチンの一つであるハリエニシダ凝集素1(Ulex europaeus agglutinin 1;UEA1、α-L-フコース残基に特異的)は、ポリスチレンミクロスフェア(0.5μm)または重合リポソームをM細胞(0.2μm)へと向かわせるために用いられている(Clark, M.A., et al., Targeting polymerised liposome vaccine carriers to intestinal M cells, Vaccine, 2001 Oct 12;20(12):208-17)。マウスにおけるインビボ試験では、ポリ-D,L-乳酸(PDLLA)ミクロスフェアまたはゼラチンミクロスフェア(GM)がマクロファージおよびM細胞によって効率的に取り込まれうることが報告されている(Nakase, H., et al., Biodegradable microspheres targeting mucosal immune-regulating cells: new approach for treatment of inflammatory bowel disease, J Gastroenterol. 2003 Mar;38 Suppl 15:59-62)。
【0023】
しかし、ポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド)微粒子およびリポソームを含む合成微粒子(particulate)送達媒体の取込みはばらつきが大きく、それは粒子およびM細胞の両方の物理的性質によって決まることが報告されている。Clark, M.A., et al., Exploiting M cells for drug and vaccine delivery, Adv Drug Deliv Rev. 2001 Aug 23;50(1-2):81-106。同じ研究では、粒子またはリポソームを、M細胞の表面と選択的に結合する適切なレクチン、微生物アドヘシンおよび免疫グロブリンでコーティングすることによって、送達性を向上させうることも報告されている。同じく、Florence, A.T., The oral absorption of micro- and nanoparticulates: neither exceptional nor unusual, Pharm Res. 1997 Mar; 14(3):259-66も参照のこと。
【0024】
病原体パターン認識受容体(PRR)は、微生物表面に存在する共通の構造モチーフおよび分子モチーフを認識し、先天性免疫応答の誘導に寄与する。マンノース受容体およびβグルカン受容体は真菌病原体の認識に部分的に関与する。マクロファージのサブセット上に発現される糖質結合受容体の一つであるマンノース受容体(MR)は、そのようなPRRの一つと考えられている。マクロファージは、マンノースおよびマンノース-6-リン酸の両方に対する受容体を有し、これらの糖を提示している分子と結合してそれらを内部移行させることができる。それらの分子はエンドサイトーシスによってプレリソソーム性エンドソームへの内部移行を受ける。この内部移行は、マンノース-6-リン酸で修飾され、修飾された3'末端に対するジスルフィド架橋によってオリゴデオキシヌクレオチドと結合したウシ血清アルブミンを用いて、マクロファージへのオリゴヌクレオチドの進入を向上させるために用いられている;Bonfils, E., et al., Nucl. Acids Res. 1992 20, 4621-4629を参照。マクロファージはまた、CR3(Ross, G.D., et al., Specificity of membrane complement receptor type three (CR3) for β-glucans. Complement lnflamm. 1987 4:61)、デクチン-1(Brown, G.D. and S. Gordon. Immune recognition. A new receptor for β-glucans. Nature 2001 413:36)およびラクトシルセラミド(Zimmerman J.W., et al., A novel carbohydrate-glycosphinglipid interaction between a beta-(1-3)-glucan immunomodulator, PGG-glucan, and lactosylceramide of human leukocytes. J Biol Chem. 1998 273(34):22014-20)を含む、βグルカン受容体も発現する。βグルカン受容体であるCR3は主として単球、好中球およびNK細胞上で発現されるが、デクチン-1は主としてマクロファージの細胞表面に発現される。ラクトシルセラミドはM細胞において高レベルで認められる。ミクログリアもβグルカン受容体を発現しうる(Muller, C.D., et al. Functional beta-glucan receptor expression by a microglial cell line, Res Immunol.1994 145(4):267-75)。
【0025】
マンノース受容体およびβグルカン受容体の両方に対する結合が食作用に及ぼす相加効果については証拠がある。Giaimisらは、マウスのマクロファージ様細胞株ならびにマウスの腹腔常在マクロファージによる非オプソニン化熱殺菌酵母(S. cerevisiae)の食作用が、マンノース受容体およびβグルカン受容体の両方によって媒介されることを示唆する観察所見を報告している。非オプソニン化熱殺菌酵母の最大限の食作用を実現するためには、マンノース受容体およびβグルカン受容体の両方の共発現が必要である(Giaimis, J., et al., Both mannose and beta-glucan receptors are involved in phagocytosis of unopsonized, heat-killed Saccharomyces cerevisiae by murine macrophages, J Leukoc Biol. 1993 54(6):564-71)。
【発明の開示】
【0026】
発明の概要
ある好ましい態様において、本発明は、骨の損失を伴う骨病状の治療のための組成物および方法を提供する。好ましい態様において、本発明は、オステオプロテジェリン反応性病状の治療のための組成物および方法を提供する。好ましい態様において、治療は、本発明の組成物および方法を用いた経口投与による、オステオプロテジェリンまたはその機能的等価物のマクロファージ標的指向性発現によって媒介される。好ましい態様において、オステオプロテジェリンまたはその機能的等価物を発現するプラスミドDNAは、酵母グルカン粒子(YGP)または酵母グルカン-マンナン粒子(YGMP)を含む組成物中に、カチオン性ポリマー-DNAナノ複合体の形態で組み入れられる。これらのYGP-DNA微粒子およびYGMP-DNA微粒子は、粒子表面のグルカンおよびマンナン多糖に対する糖質受容体の結合を介した組織、粘膜および腸管付属リンパ組織(GALT)のマクロファージへの受容体媒介性取込みにより、全身的、粘膜的および経口的な生物学的利用能を有する。食作用を受けると粒子はエンドソーム区画に飲み込まれ、そこでカチオン性ポリマーがDNAを放出し、エンドソームを膨張させてDNAを細胞質中に放出させる。YGP-DNA製剤およびYGMP-DNA製剤への添加剤の組入れは、エンドソームDNA放出および核取込みを促進する。
【0027】
好ましい態様において、本発明は、オリゴヌクレオチド、アンチセンス構築物、siRNA、酵素RNA、mRNA、組換えDNA構築物、線状DNA断片、阻害された線状DNA断片およびそれらの混合物からなる群より選択される核酸を含むペイロード(payload)分子;キトサン、ポリエチレンイミン、ポリ-L-リジン、アルギン酸塩、キサンタン、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドおよびそれらの混合物からなる群より選択されるペイロード捕捉分子;ならびに酵母グルカン粒子または酵母グルカン-マンナン粒子より選択される担体を含む組成物を提供する。特に好ましい態様において、組換えDNA構築物は、オステオプロテジェリンまたはその機能的等価物をコードするオープンリーディングフレームと機能的に連結された制御エレメントを含む発現ベクターである。ある態様において、発現ベクターはpIRES2DsRED2-hOPGである。他の態様において、発現ベクターは、SEQ ID NO:1のポリヌクレオチドを含む。他の態様において、発現ベクターは、SEQ ID NO:2のポリペプチド、本質的にSEQ ID NO:2の28〜124位の残基からなるポリペプチド、本質的にSEQ ID NO:2の124〜185位の残基からなるポリペプチド、および本質的にSEQ ID NO:2の28〜185位の残基からなるポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドをコードする。典型的には、担体は内部空間を規定しかつ約6〜約90重量パーセントのβグルカンを含む抽出酵母細胞壁である。
【0028】
好ましい態様において、本発明は、治療を必要とする対象における低骨密度を特徴とする病状を治療する方法であって、経口、口腔、舌下、肺または経粘膜用の剤形である、上記の組成物および薬学的に許容される添加剤を提供する段階を含む方法を提供する。好ましい態様において、本方法は、組成物の有効量を対象に投与する段階を含む。病状は、骨粗鬆症、人工関節周囲骨溶解、廃用性骨減少症、動脈石灰化、または、腫瘍転移、骨癌性疼痛、若年性パジェット病、ゴーシェ病、HIVの抗ウイルス治療、関節炎、サラセミアもしくは炎症性腸疾患に伴う骨溶解でありうる。
【0029】
さらなる態様において、本発明は、細胞におけるオステオプロテジェリン発現を増加させる方法であって、本発明の組成物を提供する段階および細胞を組成物と接触させる段階を含む方法を提供する。一般に、細胞は、マクロファージ、破骨細胞、破骨細胞前駆細胞、パイエル板のM細胞、単球、好中球、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、クッパー細胞、肺胞食細胞、腹腔マクロファージ、乳マクロファージ、ミクログリア細胞、好酸球、顆粒球、メサンギウム食細胞または滑膜A細胞である。好ましい態様において、本方法はさらに、オステオプロテジェリンを細胞において発現させる段階を含む。好ましい態様において、本方法はさらに、オステオプロテジェリンを細胞から分泌させる段階を含む。分泌されたオステオプロテジェリンは、細胞外液中に、好ましくは細胞と接触している細胞液中に、少なくとも2pmol/lの濃度で存在する。
【0030】
他の局面において、本組成物は、低骨密度を特徴とする病状の治療用の医薬の製造のために用いることができる。病状は、骨粗鬆症、人工関節周囲骨溶解、廃用性骨減少症、動脈石灰化、または、腫瘍転移、骨癌性疼痛、若年性パジェット病、ゴーシェ病、HIVの抗ウイルス治療、関節炎、サラセミアもしくは炎症性腸疾患に伴う骨溶解でありうる。
【0031】
さらなる態様において、本発明は、細胞におけるオステオプロテジェリン発現を増加させる方法であって、内部空間を規定しかつ約6〜約90重量パーセントのβグルカンを含む抽出酵母細胞壁、ペイロード捕捉分子およびペイロード分子を含む送達系の有効量を提供する段階であって、ペイロード分子がオリゴヌクレオチド、アンチセンス構築物、siRNA、酵素RNA、mRNA、組換えDNA構築物、線状DNA断片、阻害された線状DNA断片およびそれらの混合物からなる群より選択される核酸である段階;細胞を送達系と接触させる段階;ならびにオステオプロテジェリンを発現させる段階を含む方法を提供する。接触の段階はインビトロまたはインビボのいずれで行ってもよい。好ましくは、組換えDNA構築物は、オステオプロテジェリンまたはその機能的等価物をコードするオープンリーディングフレームと機能的に連結された制御エレメントを含む発現ベクター、例えばpIRES2DsRED2-hOPGなどである。ある態様において、発現ベクターは、SEQ ID NO:1のポリヌクレオチドを含む。好ましい態様において、発現ベクターは、SEQ ID NO:2のポリペプチド、本質的にSEQ ID NO:2の28〜124位の残基からなるポリペプチド、本質的にSEQ ID NO:2の124〜185位の残基からなるポリペプチド、および本質的にSEQ ID NO:2の28〜185位の残基からなるポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドをコードする。一般に、細胞は、マクロファージ、破骨細胞、破骨細胞前駆細胞、パイエル板のM細胞、単球、好中球、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、クッパー細胞、肺胞食細胞、腹腔マクロファージ、乳マクロファージ、ミクログリア細胞、好酸球、顆粒球、メサンギウム食細胞または滑膜A細胞である。
【0032】
さらなる態様において、本発明は、治療を必要とする対象におけるオステオプロテジェリン反応性病状を治療する方法であって、経口、口腔内、舌下、肺または経粘膜用の剤形である本発明の組成物および薬学的に許容される添加剤を提供する段階を含む方法を提供する。典型的には、本方法はまた、組成物の有効量を対象に投与する段階も含む。一般に、病状とは、骨粗鬆症、人工関節周囲骨溶解、廃用性骨減少症、動脈石灰化、または、腫瘍転移、骨癌性疼痛、若年性パジェット病、ゴーシェ病、HIVの抗ウイルス治療、関節炎、サラセミアもしくは炎症性腸疾患に伴う骨溶解である。
【0033】
さらなる別の態様において、本発明は、オステオプロテジェリン送達系を作製する方法であって、オリゴヌクレオチド、アンチセンス構築物、siRNA、酵素RNA、mRNA、組換えDNA構築物、線状DNA断片、阻害された線状DNA断片およびそれらの混合物からなる群より選択される核酸を含むペイロード分子を、キトサン、ポリエチレンイミン、ポリ-L-リジン、アルギン酸塩、キサンタン、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドおよびそれらの混合物からなる群より選択されるペイロード捕捉分子;ならびに酵母グルカン粒子または酵母グルカン-マンナン粒子より選択される担体と接触させる段階を含む方法を提供する。好ましくは、組換えDNA構築物は、オステオプロテジェリンまたはその機能的等価物をコードするオープンリーディングフレームと機能的に連結された制御エレメントを含む発現ベクターである。ある態様において、発現ベクターはpIRES2DsRED2-hOPGである。他の態様において、発現ベクターは、SEQ ID NO:1のポリヌクレオチドを含む。他の態様において、発現ベクターは、SEQ ID NO:2のポリペプチド、本質的にSEQ ID NO:2の28〜124位の残基からなるポリペプチド、本質的にSEQ ID NO:2の124〜185位の残基からなるポリペプチド、および本質的にSEQ ID NO:2の28〜185位の残基からなるポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドをコードする。典型的には、担体は、内部空間を規定しかつ約6〜約90重量パーセントのβグルカンを含む抽出酵母細胞壁である。
【0034】
ある好ましい態様において、オープンリーディングフレームによってコードされるタンパク質とは、骨粗鬆症、人工関節周囲骨溶解、廃用性骨減少症、動脈石灰化、または、腫瘍転移、骨癌性疼痛、若年性パジェット病、ゴーシェ病、HIVの抗ウイルス治療、関節炎、サラセミアもしくは炎症性腸疾患に伴う骨溶解を有する対象における治療効果を生じさせるタンパク質である。特に好ましい態様において、オープンリーディングフレームによってコードされるタンパク質はヒトオステオプロテジェリンまたはその機能的等価物である。
【0035】
他の態様において、本発明は、オステオプロテジェリンまたは機能的等価物、および薬学的に許容される添加剤を含む薬学的組成物を提供する。好ましい態様において、本組成物は経口投与に適する。他の好ましい態様において、本組成物は非経口的投与、最も好ましくは皮下または筋肉内投与のために製剤化される。他の好ましい態様において、本組成物は粘膜投与のために製剤化される。
【0036】
本発明はまた、低骨密度を伴う病状を治療する方法であって、βグルカンを含む抽出酵母細胞壁、ペイロード捕捉分子およびペイロード分子を含む治療用送達系の有効量を提供する段階であって、ペイロード分子が、欠損性の骨タンパク質、例えばオステオプロテジェリンなどをコードするオープンリーディングフレームと機能的に連結された制御エレメントを含む発現ベクターである段階;および、そのような骨タンパク質欠損を有する細胞を治療用送達系と接触させる段階を含む方法も提供する。細胞を接触させる段階は、インビトロまたはインビボのいずれで行ってもよい。好ましい態様において、治療用送達系は、典型的には食作用により、細胞への内部移行を受ける。
【0037】
適切に治療されうる細胞とは、マクロファージ、パイエル板のM細胞、単球、好中球、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、クッパー細胞、肺胞食細胞、腹腔マクロファージ、乳マクロファージ、ミクログリア細胞、好酸球、顆粒球、メサンギウム食細胞または滑膜A細胞でありうる。ある好ましい態様において、細胞は破骨細胞または破骨細胞前駆細胞である。
【0038】
本微粒子薬物送達系および方法の上記および他の特徴および利点は、さまざまな図の全体を通じて同様の参照用記号が同じ部分を指している添付の図面に例示されている通り、システムおよび方法の好ましい態様に関する以下のより詳細な説明から明らかになると考えられる。
【0039】
本発明の上記および他の目的、特徴および利点は、さまざまな図面を通じて同様の参照用記号が同じ部分を指している添付の図面に例示されている通り、本発明の好ましい態様に関する以下のより詳細な説明から明らかになると考えられる。図面は必ずしも縮尺通りではなく、むしろ本発明の原理を図式的に説明することに重点がおかれている。
【0040】
発明の詳細な説明
酵母細胞壁粒子を送達媒体として用いるOPG遺伝子治療
好ましい態様において、本発明は、低骨密度および骨粗鬆症の治療法の現在の限界を克服するための、ヒトオステオプロテジェリンをコードするDNAを含むミクロンサイズの酵母細胞壁粒子の経口投与のための組成物および方法を提供する。好ましい態様において、骨中のマクロファージおよび破骨細胞におけるオステオプロテジェリンの有効な発現がみられる。
【0041】
この送達系は、オリゴヌクレオチド、アンチセンス構築物、siRNA、発現ベクターを含むDNA構築物などの核酸、ならびにペプチドおよびタンパク質を含む、広範囲にわたるペイロード分子のインビボまたはインビトロでの送達のために有用である。マクロファージを標的とするこの革新的な送達系の潜在的な用途は、マクロファージの遺伝子発現をアップレギュレートおよびダウンレギュレートしうるペイロードを送達するYCMPの能力と、経口投与されたペイロードを感染、炎症、腫瘍または他の病態の部位に運ぶためのマクロファージ輸送の使用との組み合わせが基になって、広範囲にわたる。
【0042】
本発明は、βグルカンを含む抽出酵母細胞壁、ペイロード捕捉分子およびペイロード分子を含む治療用送達系であって、ペイロード分子およびペイロード捕捉分子が同じ溶媒系の中に可溶性であり、ペイロード分子が欠損性の抗破骨細胞形成性骨タンパク質の機能を補うような治療用送達系を提供する。特に好ましいタンパク質はオステオプロジェリンである。本発明はさらに、治療用送達系を作製する方法および使用する方法も提供する。
【0043】
好都合なことに、本発明の組成物および方法は、本質的にマクロファージを直接に標的とし、好ましい態様においては、抗破骨細胞形成性タンパク質を提供する。特に好ましい抗破骨細胞形成性タンパク質はOPGである。経口的または粘膜的または非経口的な経路による本発明の治療用送達系の投与は、静脈内への酵素またはタンパク質補充療法の有害作用を回避するのに役立つ。コードされるタンパク質それ自体の代わりに発現ベクターを供給することによってタンパク質欠乏を補うことは、抗原反応を最小化または回避するために役立つ。
【0044】
好都合なことに、マクロファージおよび他の貪食細胞を標的とすることにより、本発明は、治療システムを骨、腎臓、肺、胃腸管および脳といった多様な範囲にわたる位置に送達する手段を提供する。特定の理論に固執するわけではないが、ある部位へのマクロファージおよび他の貪食細胞の遊走は、部分的には、炎症、脂質または他の生理的マクロファージ誘引物質といった1つまたは複数の刺激によって決定されると考えられている。このモデルの下では、任意の特定の組織における本発明の治療用送達系を保有する貪食細胞の集団は、他の組織中の同様の集団との動的平衡状態にあると考えられる。このため、任意の特定の組織における治療用送達系を保有しかつそれ故に欠損性タンパク質の補給を受ける貪食細胞の集団は、少なくとも一部には、マクロファージおよび他の貪食細胞の分布および活性を調節するように作用する生理的影響に応答して経時的に変動すると思われる。
【0045】
一般に、本発明の組成物および方法は、好ましくは経口投与によって、インビボにおける治療薬の簡単で有効かつ効率的な送達を提供する。本組成物は、入手可能な組成物に比べて改良された安定性を有し、患者の利便性(およびそれ故に患者のコンプライアンス)、より低いコスト、ならびに副作用の低下または軽減というさらなる利点も有する。
【0046】
定義
「対象」とは、哺乳動物および非哺乳動物を意味する。「哺乳動物」とは、ヒト、チンパンジーおよび他の無尾猿(ape)および有尾猿(monkey)種などの非ヒト霊長動物;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギおよびブタなどの家畜;ウサギ、イヌおよびネコなどのペット(domestic animal);ラット、マウスおよびモルモットなどの齧歯動物を含む実験動物などを非限定的に含む、哺乳綱の任意のメンバーを意味する。非哺乳動物の例には、鳥類などが非限定的に含まれる。「対象」という用語は、特定の年齢または性別を表さない。
【0047】
「治療効果」とは、症状の改善または疾患の進行の低下を意味するが、破骨細胞形成制御において、「治療効果」とは、骨量または骨密度の検出可能な増加を意味する。「治療有効量」とは、疾患を治療するために対象に投与された場合に、そのような治療効果を引き起こすのに十分な化合物の量を意味する。「治療有効量」は、化合物、治療される疾病状態、治療される疾患または重症度、対象の年齢および相対的健康度、投与の経路および形態、担当する医師または獣医の判断、ならびに他の因子に応じて異なると考えられる。タンパク質の「機能的等価物」とは、そのタンパク質と構造的に異なるが等しい条件下でそのタンパク質と同じ機能を果たす分子、タンパク質、または非タンパク質を意味する。オステオプロテジェリンの「機能的等価物」とは、オステオプロテジェリンタンパク質と構造的に異なりかつ等しい条件下でRANKLを封鎖するように作用する分子、タンパク質、または非タンパク質を意味する。オステオプロテジェリンは、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバーである。オステオプロテジェリンタンパク質の好ましい機能的等価物には、本質的にSEQ ID NO:2の28〜124位の残基からなるポリペプチド、本質的にSEQ ID NO:2の124〜185位の残基からなるポリペプチド、および本質的にSEQ ID NO:2の28〜185位の残基からなるポリペプチドといった、少なくとも1つの腫瘍壊死因子(TNTFR)ドメインを含むタンパク質が含まれる。
【0048】
本明細書で用いる場合、「ポリプレックス(polyplex)」とは、高分子電解質複合体、特に、プラスミドDNAなどのポリヌクレオチドおよびカチオン性ポリマーなどの多価イオンポリマーを含む高分子電解質複合体を意味する。本発明の好ましいポリプレックスは、オープンリーディングフレームと機能的に連結された制御エレメントを含む発現ベクターを含むペイロード分子、およびペイロード捕捉分子を含む。
【0049】
ペイロード捕捉分子
ペイロード捕捉分子は、好ましくは、薬学的に許容される添加剤である。ペイロードおよび捕捉分子はいずれも溶媒系の中に可溶性である;溶媒系は、酵母細胞粒子糖質マトリックスを通して吸収されて、ペイロードおよび捕捉ポリマーの吸収を可能にしなければならない。ペイロードおよび捕捉分子は水溶性であることが好ましい。好ましい態様において、捕捉分子は生分解性である。
【0050】
所定のペイロードとの捕捉反応の作用機序が、ペイロード捕捉分子の選択を決定づける。静電相互作用のためには、ペイロードと反対の電荷を持つ荷電ペイロード捕捉分子が必要である。物理的封じ込めのためには、ペイロード捕捉分子は、ペイロードの拡散を低下させるマトリックスの形成に関与することが好適である。他の態様において、ペイロード捕捉分子は、ペイロードの保持に寄与する疎水結合特性に寄与する。さらなる態様において、ペイロード捕捉分子はペイロードと選択的に結合し、ペイロードの保持に寄与する親和性相互作用を与える。
【0051】
一般に、高分子電解質は適切なペイロード捕捉分子となりうる。いくつかの適切な高分子電解質が米国特許第6,133,229号に開示されている。高分子電解質は、カチオン性またはアニオン性の高分子電解質であってよい。両性高分子電解質を用いることもできる。カチオン性高分子電解質とは、好ましくは、分子鎖に沿って分布したカチオン基を有するポリマーである。カチオン基は、ある態様においては4級アンモニウム由来部分を含むことができ、これは鎖から張り出して側鎖中に配置されてもよく、またはその内部に組み込まれてもよい。カチオン性高分子電解質の例には以下が含まれる:ビニルピロリドンと4級メタクリル酸メチルとのコポリマー、例えば、ISPから入手可能なGAFQUAT(登録商標)シリーズ(755N、734、HS-100);置換ポリアクリルアミド;ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミンおよび置換誘導体;ポリアミンホモポリマー(GOLCHEM(登録商標)CL118);ポリアミンコポリマー(例えば、エピクロロヒドリンとモノメチルアミンまたはジメチルアミンとの縮合物);ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(polyDADMAC);置換デキストラン;変性グアーガム(ヒドロキシプロピトリモニウムクロリドにより置換);置換タンパク質(例えば、ダイズタンパク質および加水分解コラーゲン上に4級基が置換);ポリアミノ酸(例えば、ポリリジン);低分子量ポリアミノ化合物(例えば、スペルミンおよびスペルミジン)。天然または人工のポリマーのいずれを用いてもよい。MWが150〜5,000,000、好ましくは5000〜500,000、より好ましくは5000〜100,000であるカチオン性高分子電解質を用いることができる。0.01〜10%の量が好ましく、より好ましくは0.1〜2%w/v、特に0.05〜5%である。
【0052】
アニオン性高分子電解質とは、好ましくは、分子鎖に沿って分布したアニオン基を有するポリマーである。アニオン基は、カルボン酸基、スルホン酸基、硫酸基または他の負に荷電したイオン化しうる基を含むことができ、これは鎖から張り出して基の上に配置されてもよく、またはポリマー骨格と直接結合していてもよい。天然または人工のポリマーを用いてもよい。
【0053】
アニオン性高分子電解質の例には以下が含まれる:メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー、メチルビニルエーテルとマレイン酸とのコポリマー(それぞれGantrez ANシリーズおよびSシリーズ、International Specialty Products, Wayne, NJ);アルギン酸および塩;カルボキシメチルセルロースおよび塩;置換 ポリアクリルアミド(例えば、カルボン酸基により置換);ポリアクリル酸および塩;ポリスチレンスルホン酸および塩;デキストラン硫酸;置換糖類、例えば、オクト硫酸スクロース(sucrose octosulfate);ヘパリン。MWが150〜5,000,000、好ましくは5000〜500,000、より好ましくは5000〜100,000であるアニオン性高分子電解質を用いることができる。0.01%〜10%の量が好ましく、特に0.05〜5%、より特別には0.1〜2%w/vである。
【0054】
多糖などの生体ポリマーは、好ましい捕捉ポリマーである。好ましくは、ポリマーは100,000ダルトン未満の平均分子量となるように処理される。ポリマーは好ましくは、カチオン性またはアニオン性の特徴を与えるために誘導体化される。適切な多糖には、キトサン(脱アセチル化キチン)、アルギン酸塩、2-(ジエチルアミノ)エチルエーテルデキストラン(DEAE-デキストラン)およびデキストラン硫酸などのデキストラン、キサンタン、ローカストビーンガムならびにグアーガムが含まれる。
【0055】
以下の2つの一般的クラスのカチオン性分子が、核酸などの負に荷電したペイロードに対する捕捉分子として用いるために適している:カチオン性ポリマーおよびカチオン性脂質。
【0056】
多岐にわたるカチオン性ポリマーがインビトロのトランスフェクションを媒介することが示されており、これはタンパク質[ヒストン(Fritz, J. D., et al, (1996) Hum. Gene Ther. 7, 1395-1404)および高速移動群(HMG)タンパク質(Mistry, A. R., et al. (1997) BioTechniques 22, 718-729)など]およびポリペプチド[ポリリジン(Wu, G. Y. & Wu, C. H. (1987) J. Biol. Chem. 262,4429-4432, Wagner, E., et al., (1991) Bioconjugate Chem. 2, 226-231)、短い合成ペプチド(Gottschalk, S.,et al., (1996) Gene Ther. 3, 448-457;Wadhwa, M. S., et al., (1997) Bioconjugate Chem. 8, 81-88)およびらせん状両親媒性ペプチド(Legendre, J. Y., et al., (1997) Bioconjugate Chem. 8,57-63;Wyman, T. B., et al., (1997) Biochemistry 36,3008-3017)など]から、合成ポリマー[ポリエチレンイミン(Boussif, O., et al., (1996) Gene Ther. 3, 1074-1080)、カチオン性デンドリマー(Tang, M. X., et al., (1996) Bioconjugate Chem. 7, 703-714;Haensler, J. et al., (1993) Bioconjugate Chem. 4, 372-379)およびグルカラミドポリマー (Goldman, C. K., et al., (1997) Nat. Biotech. 15, 462-466)など]までの範囲にわたる。その他の適切なカチオン性ポリマーには、N-置換グリシンオリゴマー(ペプトイド)(Murphy, J.E., et al, A combinatorial approach to the discovery of efficient cationic peptoid reagents for gene delivery, Proc Natl Acad Sci. USA, 1998 95 (4)1517-1522)、pDAMAと略記されるポリ(2-メチル-アクリル酸2-[(2-ジメチルアミノ)エチル)-メチル-アミノ]-エチルエーテル)およびポリ(2-ジメチルアミノエチル)-メタクリレート(pDMAEMA)(Funhoff, A.M., et al., 2004 Biomacromolecules, 5, 32-39)が含まれる。
【0057】
カチオン性脂質もトランスフェクションに適していることが当技術分野で公知である。Feigner, P.Ll, et al., Lipofection: a highly efficient, lipid-mediated DNA-transfection procedure.Proc Natl Acad Sci U S A. 1987 84(21):7413-7。適切なカチオン性脂質には、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、[N,N,N',N'-テトラメチル-N,N'-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2,3-ジ(オレオイルオキシ)-1,4-ブタンジアンモニウムヨージド](Promega Madison, WI, USA)、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(Promega Madison, WI, USA)、N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)]-N,N,N-トリメチルアンモニウムプロパンメチルスルフェート(DOTAP)、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド、1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、ジミリストオレオイルホスホメチルトリメチルアンモニウム(DMPTA)(Floch et al. 1997. Cationic phosphonolipids as non-viral vectors for DNA transfection in hematopoietic cell lines and CD34+ cells. Blood Cells, Molec.& Diseases 23: 69-87を参照)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(7-ニトロ-2-1,3-ベンゾオキサジアゾール-4-イル)、アンモニウム塩(Avanti Polar Lipids, Inc. Alabaster, AL, US)、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパンクロリド(Avanti Polar Lipids, Inc. Alabaster, AL, US)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(Avanti Polar Lipids, Inc. Alabaster, AL, US)および1,3-ジオレオイルオキシ-2-(6-カルボキシスペルミル)プロピルアミド(DOSPER)が含まれる。
【0058】
カチオン性捕捉分子として適切なポリアミンは、米国特許第6,379,965号および第6,372,499号に記載されている。
【0059】
ペイロード分子
本発明の微粒子送達系は、オリゴヌクレオチド、アンチセンス構築物、siRNA、酵素RNA、および発現ベクターを含む組換えDNA構築物などの核酸を非限定的に含むペイロード分子のインビボまたはインビトロにおける送達のために有用である。
【0060】
他の好ましい態様において、本発明の微粒子送達系は、アミノ酸、ペプチドおよびタンパク質などのペイロード分子のインビボまたはインビトロにおける送達のために有用である。「タンパク質」とは、より高レベルの三次および/または四次構造を生じるのに十分な鎖長を有するアミノ酸の配列を意味する。これはそのような構造を持たない「ペプチド」または他の低分子量薬物と区別するためである。典型的には、本明細書中のタンパク質は少なくとも約15〜20kD、好ましくは少なくとも約20kDの分子量を有する。
【0061】
本明細書における定義の範囲に含まれるタンパク質の例には、哺乳動物タンパク質、例えば、オステオプロテジェリン、ヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモンおよびGHスーパー遺伝子ファミリーの他のメンバーを含む成長ホルモン(GH);成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α-1-アンチトリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;第VIIIC因子、第IX組織因子およびフォンビルブラント因子などの凝固因子;プロテインCなどの抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺サーファクタント;ウロキナーゼまたは組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)などのプラスミノーゲン活性化因子;ボンバジン;トロンビン;腫瘍壊死因子α、腫瘍壊死因子β;エンケファリナーゼ;RANTES(regulated on activation normally T cell expressed and secreted);ヒトマクロファージ炎症タンパク質(MIP-1-α);ヒト血清アルブミンなどの血清アルブミン;ミューラー管阻害物質;リラキシンA鎖;リラキシンB鎖;プロリラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;DNase;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子(VEGF);ホルモンまたは増殖因子に対する受容体;インテグリン;プロテインAまたはD;リウマトイド因子;骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、-4、-5もしくは-6(NT-3、NT-4、NT-5またはNT-6)などの神経栄養因子、またはNGF-βなどの神経成長因子;血小板由来増殖因子(PDGF);aFGFおよびbFGFなどの線維芽細胞増殖因子;上皮増殖因子(EGF);TGF-α、およびTGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4またはTGF-β5を含むTGF-βなどのトランスフォーミング増殖因子(TGF);インスリン様増殖因子-Iおよび-II(IGF-IおよびIGF-II);des(1-3)-IGF-I(脳IGF-D;インスリン様増殖因子結合タンパク質;CD3、CD4、CD8、CD19およびCD20などのCDタンパク質;骨誘導因子;イムノトキシン;骨形成タンパク質(BMP);T細胞受容体;表面膜タンパク質;崩壊促進因子(DAF);ウイルス抗原、例えば、AIDSエンベロープの一部分など;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;調節タンパク質;イムノアドヘシン;抗体;ならびに以上に列記したポリペプチドのいずれかの生物活性断片または変異体が含まれる。好ましい態様において、タンパク質はオステオプロテジェリンまたはその機能的等価物である。
【0062】
GHスーパー遺伝子ファミリーのメンバーには、成長ホルモン、プロラクチン、胎盤性ラクトゲン、エリスロポエチン、トロンボポエチン、インターロイキン-2、インターロイキン-3、インターロイキン-4、インターロイキン-5、インターロイキン-6、インターロイキン-7、インターロイキン-9、インターロイキン-10、インターロイキン-11、インターロイキン-12(p35サブユニット)、インターロイキン-13、インターロイキン-15、オンコスタチンM、毛様体神経栄養因子、白血病抑制因子、αインターフェロン、βインターフェロン、γインターフェロン、ωインターフェロン、τインターフェロン、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、カルジオトロフィン-1、ならびにファミリーのメンバーとして同定および分類された他のタンパク質が含まれる。
【0063】
タンパク質ペイロード分子は、好ましくは本質的に純粋であり、望ましくは本質的に均質である(すなわち、混入性のタンパク質などを含まない)。「本質的に純粋な」タンパク質とは、組成物の総重量を基準にして、タンパク質を重量比で少なくとも90%、好ましくは重量比で少なくとも約95%含む組成物を意味する。「本質的に均質な」タンパク質とは、組成物の総重量を基準にして、タンパク質を重量比で少なくとも約99%含む組成物を意味する。タンパク質は天然供給源に由来してもよく、または組換え技術によって産生されうる。タンパク質には、アミノ酸置換によってまたは定方向的タンパク質進化(Kurtzman, A.L., et al., Advances in directed protein evolution by recursive genetic recombination: applications to therapeutic proteins, Curr Opin Biotechnol. 2001 12(4): 361-70)によって作製されたタンパク質変異体、ならびにPEG化タンパク質などの誘導体が含まれる。
【0064】
抗体
ある態様において、タンパク質ペイロード分子は抗体である。本明細書で用いる場合、「抗体」(Ab)または「モノクローナル抗体」(Mab)という用語は、無傷の分子、ならびにタンパク質と特異的に結合しうる抗体断片(例えば、Fab断片およびF(ab')2断片など)を含むことを意味する。Fab断片およびF(ab')2断片は、無傷の抗体のFc断片を欠いており、循環血中からより急速に消失し、無傷の抗体よりも非特異的組織結合性が低い可能性がある。したがって、これらの断片が好ましく、Fabまたは他の免疫グロブリン発現ライブラリーの生成物も同様である。さらに、本発明の抗体にはキメラ抗体、一本鎖抗体およびヒト化抗体も含まれる。
【0065】
抗体は、当技術分野で公知の任意のいくつかのさまざまな手法を用いて調製することができる。適切な手法については以下に簡単に考察する。抗体はポリクローナル性でもモノクローナル性でもよい。ポリクローナル抗体は、産生の迅速さおよび複数のエピトープに対する特異性、強力な免疫蛍光染色および抗原捕捉が保証されることを含め、初期開発のためには大きな利点がある。モノクローナル抗体は大規模産生に対して適応可能である;好ましい態様には、標的抗原のエピトープに特異的な少なくとも1つのモノクローナル抗体が含まれる。ポリクローナル調製物は大規模産生のために容易に再産生することはできないため、別の態様は少なくとも4種のモノクローナル抗体の混合物を用いている。
【0066】
一本鎖Fv(「scFv」または「sFv」)ポリペプチドとは、直接的に連結された、またはペプチドをコードするリンカーによって連結された、VHおよびVLをコードする配列を含む核酸から発現されうる、共有結合したVH:VLヘテロ二量体のことである。Huston, et al. Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 85: 5879-5883 (1988)。抗体V領域由来の自然に凝集しているが化学的には分離している軽鎖および重鎖ポリペプチドを、抗原結合部位の構造と実質的に同様な三次元構造にフォールディングするscFv分子へと変換するためのさまざまな構造。例えば、米国特許第6,512,097号、第5,091,513号および第5,132,405号および第4,956,778号を参照。
【0067】
1つのクラスの態様においては、組換え体の設計方法を用いて、抗体可変領域由来の2つの自然に会合しているが化学的に分離している重鎖および軽鎖ポリペプチドを、本来の抗体構造と実質的に同様な三次元構造へとフォールディングするsFv分子へと変換するための適切な化学構造(リンカー)を開発することができる。設計の基準には、一方の鎖のC末端ともう一方の鎖のN末端との間の距離を埋めるための適切な長さの決定が含まれ、この際、リンカーは一般に、らせん化および二次構造を形成する傾向のない小型の親水性アミノ酸残基から形成される。このような方法は当技術分野で記載されている。例えば、Hustonらに対する米国特許第5,091,513号および第5,132,405号;ならびにLadnerらに対する米国特許第4,946,778号を参照のこと。
【0068】
この点に関して、リンカー設計の最初の一般的な段階は、連結するのにふさわしい部位の同定を含む。VHおよびVLポリペプチドドメインのそれぞれにおける適切な連結部位には、ポリペプチドドメインからの残基の損失を最小限にし、かつ分子安定性に対する要求と合致する最小限の数の残基を含むリンカーを必要とするものが含まれる。一対の部位が、連結される「ギャップ」を規定する。1つのドメインのC末端を隣のドメインのN末端とつなぐリンカーは一般に、生理的溶液中で構造化されていない配置をとる親水性アミノ酸を含み、好ましくは、VHおよびVL鎖の適正なフォールディングを妨げる恐れのある大きな側基を有する残基を含まない。したがって、本発明における適切なリンカーは一般に、グリシン残基およびセリン残基が交互になったセットでできたポリペプチド鎖を含み、溶解性を向上させるためにグルタミン酸残基およびリジン残基を含んでもよい。このようなリンカー部分をコードするヌクレオチド配列は、当技術分野で公知のさまざまなオリゴヌクレオチド合成手法を用いて容易に得ることができる。
【0069】
または、ヒト化抗体断片が、マウスモノクローナル抗体の抗原結合部位、およびヒト抗体由来の可変領域断片(抗原結合部位を欠く)を含んでもよい。キメラおよびそのほかの人工改変モノクローナル抗体の作製のための手順には、Riechmann et al.(Nature 332: 323,1988), Liu et al.(PNAS 84 3439,1987)、Larrick et al.(Bio Technology 7: 934,1989)、およびWinter and Harris (TIPS 14: 139, May, 1993)に記載されたものが含まれる。
【0070】
ヒト抗体を作製するための1つの方法は、トランスジェニックマウスなどの非ヒト動物に標的抗原による免疫処置を行って、前記動物において標的抗原を対象とする抗体を産生させることを含む。非ヒト動物においてヒト抗体を産生させるための手順が開発されている。抗体は部分的にヒト性であってもよく、または好ましくは、完全にヒト性であってもよい。1つまたは複数のヒト免疫グロブリン鎖をコードする遺伝材料が導入された非ヒト動物(トランスジェニックマウスなど)を用いることもできる。このようなトランスジェニックマウスは、さまざまなやり方で遺伝的に改変されうる。遺伝的操作は、免疫処置の後に動物によって産生される少なくとも一部(好ましくは事実上すべて)の抗体において、内因性免疫グロブリン鎖をヒト免疫グロブリンポリペプチド鎖で置き換えうる。標的抗原でトランスジェニック動物を免疫処置することによって産生される抗体は本明細書中に提供される。
【0071】
1つまたは複数の内因性免疫グロブリン遺伝子がさまざまな手段によって不活性化されたマウスが作製されている。不活性化されたマウス遺伝子を置き換えるためにヒト免疫グロブリン遺伝子がマウスに導入されている。それらの動物で産生される抗体は、動物に導入されたヒト遺伝材料によってコードされるヒト免疫グロブリンポリペプチド鎖を組み込んでいる。このようなトランスジェニック動物の作製および使用のための手法の例は、米国特許第5,814,318号、第5,569,825号および第5,545,806号に記載されており、それらは参照により本明細書に組み入れられる。
【0072】
モノクローナル抗体は、従来の手順によって、例えば、免疫処置スケジュールの完了後にトランスジェニック動物から収集した脾細胞を不死化させることによって作製することができる。脾細胞を、従来の手順により、骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを作製することができる。
【0073】
ハイブリドーマ細胞株を作製するための方法は、そのようなトランスジェニック動物に対して標的抗原の少なくとも7個の連続したアミノ酸残基を含む免疫原による免疫処置を行う段階;免疫処置を受けた動物から脾細胞を収集する段階;収集した脾細胞を骨髄腫細胞株と融合させ、それによってハイブリドーマ細胞を生じさせる段階;および、標的抗原と結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定する段階を含む。そのようなハイブリドーマ細胞株およびそれらから産生されるモノクローナル抗体は、本発明の範囲に含まれる。ハイブリドーマ細胞株によって分泌されたモノクローナル抗体は従来の手法によって精製する。
【0074】
もう1つの態様においては、競合性の抗体セットの存在下における、1つのセットの抗原に対する非免疫性ファージディスプレイ抗体レパートリーの選択によって、抗体断片を作製する(Stausbol-Gron, B., et al., De novo identification of cell-type specific antibody-antigen pairs by phage display subtraction. Isolation of a human single chain antibody fragment against human keratin 14. Eur J Biochem 2001 May;268(10):3099-107)。このアプローチは、標的抗原を対象とするファージ抗体を作製するために用いることができる。このプロトコールは概ね、Stausbol-Gron, B., et al., 2001に記載されたものを基にしている。手短に述べると、免疫処置を受けていない半合成ファージディスプレイ抗体レパートリーを用いる。このレパートリーは、loxライブラリー由来の重鎖および軽鎖領域を再クローニングすることによって構築された一本鎖Fv(scFv)ファージミドレパートリーである(Griffiths, A.D., et al. (1994) Isolation of high affinity human antibodies directly from large synthetic repertoires. EMBO J. 13, 3245-3260)。大腸菌(Escherichia coli)TG1(supE hsdD5 Δ(lac-proAB)thi F'{traD36 proAB+ lacIq lacZAM15])はアンバーサプレッサー株(supE)であり、ファージ粒子の増殖のために用いられる。大腸菌HB2151(ara Δ(lac-proAB)thi F'{proAB+ lacIq lacZΔM15])は非サプレッサー株であり、可溶性scFvの発現のために用いられる。もう1つの態様において、ヒト一本鎖Fv(scFv)ライブラリーを増幅させてレスキューすることもできる(Gao, at al., Making chemistry selectable by linking it to infectivity, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 94, pp. 11777-11782, October 1997)。このライブラリーを、PBS(10mMリン酸、150mM NaCl、pH 7.4)中に懸濁した標的抗原に対してパニングし、陽性scFv-ファージを固相酵素免疫アッセイ(ELISA)によって選択する。
【0075】
他の好ましい態様において、抗体は、組換え抗体、好ましくは一本鎖Fv抗体をコードする発現ベクターを提供することによって供給される。
【0076】
遺伝子治療
ヒトゲノムプロジェクトによって、疾患の遺伝的基盤に関する本発明者らの知識が増加した。全般については、http://www.ornl.gov/sci/techresources/Human_Genome/medicine/assist.shtmlを参照のこと。好ましい態様において、本発明は、遺伝性障害または遺伝要素を有する病状の治療のための組成物および方法を提供する。さらなる好ましい態様において、本発明は、遺伝性障害または遺伝要素を有する病状の治療用の医薬の製造のために有用な組成物を提供する。
【0077】
好ましい態様において、本発明の微粒子送達系は、代償性遺伝子を含む少なくとも1つの核酸を投与するために用いられる。他の好ましい態様において、本発明の微粒子送達系は、欠失遺伝子の遺伝子産物をコードする少なくとも1つの核酸を投与するために用いられ、この際、遺伝子産物の発現は、遺伝性障害の、または病状の遺伝要素の治療において有用である。好ましい態様において、所望のペイロード分子を含む本発明の微粒子送達系は、遺伝性障害の、または病状の遺伝要素の治療用の医薬の製造において有用である。そのような医薬品は、経口的、直腸的、非経口的(例えば、静脈内、筋肉内または皮下)、槽内、腟内、腹腔内、膀胱内、局所的(例えば、粉剤、軟膏または滴剤)に、または口腔もしくは鼻への噴霧薬として投与するのに好適である。医薬品は好ましくは経口的、口腔内および非経口的に、より好ましくは経口的に投与される。併用療法のためには、種々のペイロード、例えば、核酸、核酸発現ベクターまたは低分子治療薬が装入された粒子を適切な比率で混合し、例えばカプセル中にて一緒に投与することができる。
【0078】
遺伝子治療に関係する本発明の諸局面において、核酸組成物は、代償性遺伝子、または治療用タンパク質をコードする遺伝子のいずれかを含む。代償性遺伝子の例には、ジストロフィンまたは機能的断片をコードする遺伝子、嚢胞性線維症に罹患した対象における欠損遺伝子を代償するための遺伝子、ADAに罹患した対象における欠損遺伝子を代償するための遺伝子、および第VIII因子をコードする遺伝子が含まれる。治療用タンパク質をコードする遺伝子の例には、オステオプロテジェリン、エリスロポエチン、インターフェロン、LDL受容体、GM-CSF、IL-2、IL-4またはTNFをコードする遺伝子が含まれる。好ましい態様において、タンパク質はオステオプロテジェリンまたはその機能的等価物である。
【0079】
投与の経路
投与の経路には、経口的、口腔内、舌下、肺、経皮的、経粘膜的、ならびに皮下、腹腔内、静脈内および筋肉内注射が非限定的に含まれる。好ましい投与の経路は、経口的、口腔内、舌下、肺および経粘膜的である。
【0080】
本発明の微粒子送達系は、対象に対して治療有効量で投与される。微粒子送達系は、単独で、または薬学的に許容される組成物の一部として投与することができる。加えて、化合物または組成物は、例えばボーラス注射によってすべて一度に、一連の錠剤などによって複数回にわたり、または例えば制御放出製剤を用いてある期間にわたって実質的に均一に送達することができる。化合物の投与量を経時的に変化させうることも知られている。微粒子送達系は、即時放出製剤、制御放出製剤またはそれらの組み合わせを用いて投与することができる。「制御放出」という用語は、持続放出、遅延放出およびそれらの組み合わせを含む。
【0081】
本発明の薬学的組成物は、一回単位用量として、または複数の一回単位用量として、大量に調製すること、包装すること、または販売することができる。本明細書で用いる場合、「単位用量」とは、あらかじめ決定された量の有効成分を含む、薬学的組成物の離散的な量である。有効成分の量は一般に、対象に対して投与されると考えられる有効成分の用量、またはそのような用量の好都合な割合、例えばそのような用量の2分の1または3分の1と等しい。
【0082】
本発明の薬学的組成物における有効成分、薬学的に許容される担体および任意の付加的な成分の相対的な量は、治療されるヒトの独自性、サイズおよび状態によって、さらには組成物が投与される経路によっても異なると考えられる。一例として、組成物は、0.1%〜100%(w/w)の有効成分を含みうる。本発明の薬学的組成物の単位用量は一般に約100ミリグラム〜約2グラムの有効成分を含むと考えられ、好ましくは約200ミリグラム〜約1.0グラムの有効成分を含む。
【0083】
加えて、本発明の微粒子送達系は、単独で、種々のペイロードを用いた微粒子送達系と、または他の薬学活性化合物と併用して投与することができる。他の薬学活性化合物は、微粒子送達系と同じ病状または異なる病状を治療するために選択することができる。
【0084】
対象が複数の薬学活性化合物を投与される予定であるかまたは投与されている場合には、それらの化合物を同時にまたは任意の順序で逐次的に投与することができる。例えば、錠剤の場合には、複数の活性化合物が1つの錠剤中に存在しても別々の錠剤中に存在してもよく、それらを一度に投与しても任意の順序で逐次的に投与してもよい。加えて、組成物は複数の異なる形態でありうることが認識されるべきである。例えば、1つまたは複数の化合物を錠剤を介して送達する一方で、別の化合物を、注射を介してまたはシロップ剤として経口的に投与してもよい。
【0085】
本発明のもう1つの局面は、本発明の薬学的組成物および説明用材料を含むキットに関する。説明用材料には、ヒトにおける本明細書中に示された目的の1つに関する本発明の薬学的組成物の有用性を伝えるために用いられる、刊行物、記録、図表または任意の他の表現媒体が含まれる。説明用材料はまた、例えば、本発明の薬学的組成物の適切な用量を記載することもできる。本発明のキットの説明用材料は、例えば、本発明の薬学的組成物を含む容器に添付すること、または薬学的組成物を含む容器と一緒に出荷することができる。または、説明用材料および薬学的組成物が受取人によって協同的に用いられることを意図して、説明用材料を容器とは別個に出荷することもできる。
【0086】
本発明はまた、本発明の薬学的組成物、および組成物をヒトに対して送達するための送達デバイスを含むキットも含む。一例として、送達デバイスは、スクイーズ噴霧ボトル、定量噴霧ボトル、エアロゾル噴霧デバイス、アトマイザ、乾燥粉末送達デバイス、自己噴霧式溶媒/粉末分配デバイス、シリンジ、針、タンポンまたは計量式容器でありうる。キットはさらに、本明細書に記載した説明用材料を含むことができる。
【0087】
例えば、キットは、微粒子送達系および薬学的に許容される担体を含む第1の組成物;ならびに第2の薬学活性化合物および薬学的に許容される担体を含む組成物をそれぞれ含む、2つの別個の薬学的組成物を含んでもよい。キットはまた、別個の組成物のための容器、例えば、分割されたボトルまたは分割されたホイールパケットを含む。容器のそのほかの例には、シリンジ、箱、バッグなどが含まれる。典型的には、キットは、別個の成分の投与のための指示を含む。このキット形態は、別個の成分が好ましくは異なる剤形で(例えば、経口的および非経口的に)投与される場合、異なる投与間隔で投与される場合、または処方医が組み合わせの個々の成分の滴定を所望する場合に、特に有益である。
【0088】
キットの一例は、ブリスターパックである。ブリスターパックは包装産業で周知であり、医薬品の単位用量剤形(錠剤、カプセル剤など)の包装に広く用いられている。ブリスターパックは一般に、好ましくは透明な合成樹脂材料のホイールで覆われた比較的堅い材料のシートからなる。包装の工程中に、くぼみが合成樹脂ホイールに形成される。くぼみは、包装される錠剤またはカプセル剤のサイズおよび形状を有する。次に、錠剤またはカプセル剤をくぼみの中に入れ、比較的堅い材料のシートを、くぼみが形成された向きとは反対にあるホイール面で合成樹脂ホイルに対して封止する。その結果として、錠剤およびカプセル剤は、合成樹脂ホイールとシートとの間のくぼみの中に密封される。好ましくは、シートの強度は、くぼみに手で圧力を与えることによって錠剤またはカプセル剤をブリスターパックから取り出すことのできる程度であり、それによってシート中のくぼみの場所に開口部が形成される。錠剤またはカプセル剤をその後、前記開口部を介して取り出すことができる。
【0089】
キット上に記憶補助物を、例えば、錠剤またはカプセル剤の隣に数字の形態で、その数字が指定された錠剤またはカプセル剤を服用すべきレジメン中の日程と対応するように提供することが望ましいこともある。このような記憶補助物の別の例には、カード上に印刷されたカレンダーがあり、これは例えば「第1週、月曜日、火曜日等々・・第2週、月曜日、火曜日」のようなものである。記憶補助物の他の変形物は容易に明らかとなろう。「一日量」とは、所定の日に摂取されるべき1個の錠剤もしくはカプセル剤またはいくつかの丸剤もしくはカプセル剤でありうる。また、微粒子送達系の一日量が1つの錠剤またはカプセル剤からなり、同時に第2の化合物の一日量がいくつかの錠剤またはカプセル剤からなることもでき、その反対も可能である。記憶補助物はこれを反映して、正しい投与の手助けとなるべきである。
【0090】
本発明のもう1つの態様においては、意図された使用の順に一度に1回、一日量を分配するように設計されたディスペンサーが提供される。好ましくは、ディスペンサーは、投薬レジメンの遵守をさらに促すように記憶補助物を備えている。このような記憶補助物の一例は機械的カウンターであり、これは分配された一日量の数を示す。このような記憶補助物の別の例は、例えば、最後の一日量が摂取された日を表示する、および/または次の投与をいつ摂取すべきかを思い出させる、液晶表示または音響式通知信号と連結された電池式マイクロチップメモリである。
【0091】
微粒子送達系は、任意で他の薬学活性化合物を含んでもよく、対象に対して、経口、直腸、非経口(例えば、静脈内、筋内内、または皮下)、槽内、膣内、腹腔内、局所的(例えば、粉剤、軟膏または滴剤)、または口腔もしくは鼻への噴霧薬として投与することができる。
【0092】
薬学的組成物の非経口投与には、ヒトの組織の物理的侵害、および組織中の侵害部を通しての薬学的組成物の投与を特徴とする、任意の投与経路が含まれる。このため、非経口投与には、組成物の注射、外科的切開を介した組成物の適用、組織を貫通する非外科的創傷を介した組成物の適用などによる薬学的組成物の投与が含まれる。特に、非経口投与には、皮下、腹腔内、静脈内、動脈内、筋内内または胸骨内注射、および静脈内、動脈内または腎臓透析注入法が含まれる。
【0093】
非経口的注射に適した組成物は、生理的に許容される無菌の水性または非水性の溶液、分散液、懸濁液もしくは乳濁液のような薬学的に許容される担体と組み合わされた有効成分を含み、または無菌の注射可能な溶液または分散液中での再構成のための無菌粉剤を含んでもよい。適切な水性および非水性の担体、希釈剤、溶媒または媒体の例には、水、等張食塩水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールなど)、適切なそれらの混合物、オリーブ油などの植物油を含むトリグリセリド、オレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが含まれる。例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合には要求される粒度の維持によって、および/または界面活性剤の使用によって、適正な流動性を維持することができる。このような製剤は、ボーラス投与または連続投与に適した形態で調製され、包装され、または販売されうる。注射可能な製剤は、単位用量形態、例えばアンプル、保存剤を含む多回用量容器、または自己注射もしくは医師による注射のための単回使用デバイスとして調製、包装または販売することができる。
【0094】
非経口投与のための製剤には、懸濁剤、液剤、油性または水性媒体中の乳剤、ペースト剤、および埋め込み型の持続放出性または生分解性の製剤が含まれる。このような製剤はさらに、懸濁化剤、安定化剤または分散剤を含む、1つまたは複数の成分を含むことができる。非経口投与のための製剤の1つの態様において、有効成分は、再構成組成物の非経口投与前の適切な媒体(例えば、発熱物質非含有無菌水)による再構成のための、乾燥した(すなわち、粉末または顆粒状の)形態で提供される。薬学的組成物は、無菌の注射可能な水性または油性の懸濁液または溶液の形態で調製、包装または販売することができる。この懸濁液または溶液は公知の技術に従って製剤化することができ、有効成分に加えて、付加的な成分、例えば、本明細書に記載された分散剤、湿潤剤または懸濁化剤を含むことができる。このような無菌の注射可能な製剤は、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒、例えば、水または1,3-ブタンジオールなどを用いて調製することができる。他の許容される希釈剤または溶媒には、リンゲル液、等張塩化ナトリウム溶液、および合成モノグリセリドまたはジグリセリドなどの不揮発性油が含まれる。有用である他の非経口的に投与可能な製剤には、微結晶形態の、リポソーム調製物中の、または生分解性ポリマー系の一成分としての、有効成分を含むものが含まれる。持続放出性または埋め込み型の組成物は、薬学的に許容される重合性または疎水性の材料、例えば乳濁液、イオン交換樹脂、難溶性ポリマーまたは難溶性塩などを含むことができる。
【0095】
これらの組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤および/または分散剤などの補助剤を含んでもよい。組成物の微生物汚染の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの添加によって達成することができる。また、等張剤、例えば、糖類、塩化ナトリウムなどを含めることが望まれることもある。注射可能な薬学的組成物の持続吸収は、吸収を遅らせることが可能な薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよび/またはゼラチンの使用によってもたらすことができる。
【0096】
剤形には、固体または注射可能なインプラントまたはデポー剤が含まれうる。好ましい態様において、インプラントは、微粒子送達系および生分解性ポリマーのアリコートを含む。好ましい態様において、適切な生分解性ポリマーは、ポリアスパラギン酸塩、ポリグルタミン酸塩、ポリ(L-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ案ヒドリド、ポリ(β-ヒドロキシ酪酸)、ポリ(オルトエステル)およびポリホスファゼンからなる群より選択することができる。
【0097】
経口投与のための固形剤形には、カプセル剤、錠剤、粉剤および顆粒剤が含まれる。このような固体剤形では、微粒子送達系は任意で、クエン酸ナトリウムもしくは第二リン酸カルシウムなどの少なくとも1つの不活性な慣例的な添加剤(または担体)、または(a)充填剤もしくは増量剤、例えば、スターチ、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはケイ酸;(b)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースまたはアラビアゴム;(c)保湿剤、例えば、グリセロール;(d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカのデンプン、アルギン酸、ある種の複合ケイ酸塩または炭酸ナトリウム;(e)溶解遅延剤(solution retarder)、例えば、パラフィン;(f)吸収促進剤、例えば、第4級アンモニウム化合物;(g)湿潤剤、例えば、セチルアルコールまたはモノステアリン酸グリセロール;(h)吸着剤、例えば、カオリンまたはベントナイト;および/または(i)潤滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、またはそれらの混合物と混合される。カプセル剤および錠剤の場合には、剤形が緩衝剤を含んでもよい。
【0098】
微粒子送達系を含む錠剤は、例えば、有効成分を、任意で1つまたは複数の付加的な成分とともに、圧縮または成形することによって作製することができる。圧縮錠剤は、粉末または顆粒調製物などの自由流動形態の有効成分を、任意で1つまたは複数の結合剤、潤滑剤、添加剤、表面活性剤および分散剤と混合して、適切なデバイス内で圧縮することによって、調製することができる。成形錠剤は、有効成分、薬学的に許容される担体および混合物を湿らせるのに少なくとも十分な液体の混合物を適切なデバイス内で成形することによって、作製することができる。錠剤の製造に用いられる薬学的に許容される添加剤には、不活性な希釈剤、造粒剤および崩壊剤、結合剤ならびに潤滑剤が含まれる。公知の分散剤には、ジャガイモデンプンおよびデンプングリコール酸ナトリウムが含まれる。公知の表面活性剤にはラウリル硫酸ナトリウムが含まれる。公知の希釈剤には、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムラクトース、微結晶性セルロース、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウムおよびリン酸ナトリウムが含まれる。公知の造粒剤および崩壊剤には、コーンスターチおよびアルギン酸が含まれる。公知の結合剤には、ゼラチン、アラビアゴム、アルファ化トウモロコシ(maize)デンプン、ポリビニルピロリドンおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースが含まれる。公知の潤滑剤には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、シリカおよびタルクが含まれる。
【0099】
錠剤は、コーティングしなくともよく、または、ヒトの胃腸管における遅延崩壊を実現し、それにより、例えば小腸内のパイエル板の領域における微粒子送達系の持続的な放出および吸収を提供するために、公知の方法を用いてコーティングすることもできる。一例として、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの材料を、錠剤をコーティングするために用いることができる。さらなる一例として、錠剤を、浸透圧性放出制御錠剤を形成するために、米国特許第4,256,108号;第4,160,452号;および第4,265,874号に記載された方法を用いてコーティングすることもできる。錠剤は、薬学的に上品で口当たりのよい調剤品を提供するために、甘味剤、香味剤、着色剤、保存剤またはこれらのいくつかの組み合わせをさらに含むことができる。
【0100】
錠剤、糖衣錠、カプセル剤および顆粒剤などの固体剤形は、腸溶性コーティングおよび当技術分野で周知の他のものなどのコーティングまたは外殻(shell)を用いて調製することができる。それらはまた乳白剤(opacifying agent)を含んでもよく、また、それらが遅延された様式で微粒子送達系を放出するような組成物であってもよい。用いうる包埋組成物の例には、ポリマー性物質および蝋状物質がある。有効成分はまた、1つまたは複数の上述した添加剤を適宜伴う、マイクロカプセル化形態にあってもよい。
【0101】
また、類似したタイプの固体組成物を、ラクトースまたは乳糖、ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどのような添加剤を用いて軟質または硬質充填ゼラチンカプセルの充填剤として用いることもできる。微粒子送達系を含む硬質カプセル剤は、ゼラチンなどの生理的に分解しうる組成物を用いて作製することができる。このような硬質カプセル剤は微粒子送達系を含み、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンなどの不活性な固体希釈剤を含む付加的な成分をさらに含むこともできる。微粒子送達系を含む軟質ゼラチンカプセル剤は、ゼラチンなどの生理的に分解しうる組成物を用いて作製することができる。このような軟質カプセル剤は微粒子送達系を含み、水、またはピーナッツ油、流動パラフィンもしくはオリーブ油などの油性媒体と混合することができる。
【0102】
経口投与された薬剤をヒト対象の小腸または大腸において特異的に放出する経口用組成物を、公知の技術を用いて作製することができる。例えば、結腸を含む胃腸系への送達のための製剤は、ポリマーが小腸に入ってから初めて溶解し始めるようにpH6およびそれ以上でのみ可溶性である、例えばポリ(メタクリル酸、メタクリル酸メチル)などのメタクリレートコポリマーを基剤とする腸溶コーティングされた系を含む。このようなポリマー製剤が崩壊する部位は、腸管輸送の速度および存在するポリマーの量に依存する。例えば、比較的厚いポリマーコーティングは、近位結腸への送達のために用いられる(Hardy et al., 1987 Aliment. Pharmacol. Therap. 1:273-280)。部位特異的な結腸輸送をもたらしうるポリマーを用いることもでき、この際、このポリマーは大腸の細菌叢に依拠してポリマーコーティングの酵素的分解およびそれ故に薬物放出をもたらす。例えば、アゾポリマー(米国特許第4,663,308号)、グリコシド(Friend et al., 1984, J. Med. Chem. 27:261-268)ならびに種々の天然に入手可能かつ修飾された多糖類(PCT出願PCT/GB89/00581号を参照)を、このような製剤に用いることができる。
【0103】
米国特許第4,777,049号に記載されたものなどのパルス放出技術を、胃腸管内部の特定の場所に微粒子送達系を投与するために用いることもできる。このようなシステムはあらかじめ決定された時点における送達を可能にし、かつこれを使用して、任意で、安定性および取込みを促進するために局所微小環境を変化させうる他の添加剤ととともに、インビボ放出を与えるために水の存在以外の外部条件に依拠することなしに直接に、微粒子送達系を送達することができる。
【0104】
経口投与用の液体剤形には、薬学的に許容される乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が含まれる。活性化合物に加えて、液体剤形は、当技術分野で一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば、水もしくは他の溶媒、等張食塩水、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油、特にアーモンド油、ラッカセイ油、ココナッツ油、綿実油、ピーナッツ油、コーン胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ油、MIGLYOL(商標)、グリセロール、分画された植物油、流動パラフィンなどの鉱油、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタンの脂肪酸エステル、またはこれらの物質の混合物などを含みうる。このような不活性な希釈剤のほかに、組成物はまた、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、粘滑剤、保存剤、緩衝剤、塩、甘味剤、香味剤、着色剤および芳香剤などの補助剤も含むことができる。懸濁剤は、活性化合物に加えて、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールもしくはソルビタンエステル、微結晶性セルロース、水素化食用脂、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、アラビアゴム、寒天、およびセルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含んでもよい。経口投与に適した本発明の薬学的組成物の液体製剤は、液体の形態、または使用前に水もしくは別の適切な媒体による再構成を意図した乾燥生成物の形態のいずれかで調製、包装および販売することができる。
【0105】
公知の分散剤または湿潤剤には、レシチンなどの天然に存在するリン脂質、アルキレンオキシドと脂肪酸との、直鎖脂肪族アルコールとの、脂肪酸およびヘキシトールから誘導される部分的エステルとの、または脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導される部分的エステルとの縮合物(それぞれ、例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ヘプタデカエチレンエオキシセタノール、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビトール、およびモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)が含まれる。公知の乳化剤にはレシチンおよびアラビアゴムが含まれる。公知の保存剤には、メチル、エチル、またはn-プロピル-パラ-ヒドロキシベンゾエート、アスコルビン酸およびソルビン酸が含まれる。公知の甘味剤には、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、スクロースおよびサッカリンが含まれる。油性懸濁剤のための公知の増粘剤には、例えば、蜜蝋、硬質パラフィンおよびセチルアルコールが含まれる。
【0106】
他の態様において、薬学的組成物は、栄養補助食品として、すなわち、食物(例えば、直接的な消費を意図した加工品)、または食材(例えば、摂取前に食物に組み入れることを意図した可食成分)の形態の、またはそれに添加されるものとして調製することができる。適切な食物の例には、棒付きキャンディー、焼いた食品、例えばクラッカー、パン、クッキーおよびスナックケーキ、丸ごとの、裏ごししたまたは茹でたフルーツおよび野菜、飲料、ならびに加工された肉製品が含まれる。適切な食材の例には、製粉機にかけられた穀物および糖類、スパイスおよび他の調味料、ならびにシロップが含まれる。本明細書に記載した微粒子送達系は、化合物の分解を最小限にするために、長期間にわたって高い調理温度にさらさないことが好ましい。
【0107】
通常の室温では固体であるが体温では液体となり、そのため直腸または膣の内腔で融解して微粒子送達系を放出する、カカオ脂、ポリエチレングリコールまたは座剤ワックスなどの安定な非刺激性の添加剤または担体と、微粒子送達系とを混合することによって、直腸内または膣内投与のための組成物を調製することができる。このような組成物は、例えば、座剤、停留浣腸製剤、および直腸または結腸洗浄用の液剤の形態でありうる。座剤製剤はさらに、抗酸化剤および保存剤を含む種々の付加的な成分を含みうる。停留浣腸製剤または直腸もしくは結腸洗浄用の液剤は、有効成分を薬学的に許容される液体担体と組み合わせることによって調製することができる。当技術分野で公知であるように、浣腸製剤は、ヒトの直腸の解剖学的構造に適合した送達デバイスを用いて投与することができ、その内部に包装することができる。浣腸製剤はさらに、抗酸化剤および保存剤を含む種々の付加的な成分を含むことができる。
【0108】
本発明の薬学的組成物は、口腔を介した肺投与に適した製剤として調製、包装または販売することができる。このような組成物は、粉末を分散させるために噴射剤の流れを向けることができる乾燥粉末貯蔵部を含むデバイスを用いる、または密封された容器内に低沸点噴射剤中に懸濁化された微粒子送達系を含むデバイスなどの自己噴霧式溶媒/粉末分配容器を用いる、投与のための乾燥粉末形態であることが好都合である。乾燥粉末組成物は糖などの固体微粉末希釈剤を含んでもよく、単位用量剤形で提供されることが好都合である。低沸点噴射剤には一般に、大気圧下での沸点が華氏65度未満である液体噴射剤が含まれる。一般に噴射剤は、組成物の50〜99.9%(w/w)を構成することができ、有効成分は組成物の0.1〜20%(w/w)を構成することができる。噴射剤はさらに、液体非イオン性もしくは固体アニオン性の界面活性剤または固体希釈剤(好ましくは、微粒子送達系を含む粒子と同じ程度の粒度を有する)などの付加的な成分を含むことができる。
【0109】
肺送達のために製剤化される本発明の薬学的組成物はまた、溶液または懸濁液の液滴の形態で有効成分を提供することもできる。このような製剤は、微粒子送達系を含む、任意で無菌の水性または希アルコール性溶液として調製、包装または販売することができ、任意の霧化または微粒化装置を用いて投与しうることが好都合である。このような製剤はさらに、サッカリンナトリウムなどの香味剤、精油、緩衝剤、界面活性剤またはメチルヒドロキシベンゾエートなどの保存剤を含む、1つまたは複数の付加的な成分を含むことができる。
【0110】
肺送達のために有用である本明細書に記載した製剤はまた、本発明の薬学的組成物の鼻腔内送達のためにも有用である。鼻腔内投与に適したもう1つの製剤は、微粒子送達系を含む粗粉末である。このような製剤は、鼻から吸う様式で、すなわち、鼻孔近くに保持した粉末の容器からの鼻腔を介した急速吸入により、投与される。
【0111】
本発明の薬学的組成物は、口腔内投与に適した製剤として調製、包装または販売することができる。このような製剤は、例えば、従来の方法を用いて作製された錠剤またはロゼンジ剤の形態であることができ、例えば0.1〜20%(w/w)の微粒子送達系、経口的に溶解または分解しうる組成物を含む残りのもの(balance)、および任意で、本明細書に記載した1つまたは複数の付加的な成分を含むことができる。または、口腔内投与に適した製剤が、微粒子送達系を含む粉末またはエアロゾル化もしくは微粒化された液体または懸濁液を含むこともできる。
【0112】
低骨密度に対する治療法の評価のための動物モデル
骨減少性C57Bl/6Jマウス
ヒト集団におけるばらつきは最大骨塩密度および骨格量の著しい違いに結び付いており、これらの違いの70%ほどが遺伝的差異を原因とする。驚くことではないが、最大骨塩密度と骨粗鬆症のリスクとの間には逆相関関係がある。骨塩密度、機械的強度および骨の質的パラメーターもまた、マウスの異なる近交系の間で極めて著しい違いがあり、これはこのような11種の系統の表現型の綿密な比較によって明らかになっている(Turner, C. H., et al., (2001) Variation in bone biomechanical properties, microstructure, and density in BXH recombinant inbred mice. J Bone Miner Res 16, 206-213;Beamer, W. G., et al., (1996). Genetic variability in adult bone density among inbred系統s of mice. Bone 18, 397-403)。これらの違いの遺伝的基盤は調べられており、骨格の成長および維持の遺伝的制御には数多くの遺伝子座が必要であること、またさらに、脊椎および肢などの別々の骨格部位での骨量は、別々の遺伝因子に影響されることが明白になっている。全体的にみて、調べられた系統の中で最も低い骨密度、最も低い骨梁体積分率、および最も薄い皮質骨がみられたのはC57Bl/6J(B6)系統であり、最も高かったのはC3H/HEJ系統であった。B6の総大腿骨骨塩密度はC3H/HEJ(C3H)の66%未満であり、一方、骨長および総体質量に有意な違いはなかった。さらなる研究により、インビボにおける骨形成および骨塩付着の速度として、ならびにインビトロにおけるアルカリホスファターゼ活性および石灰化結節形成速度として測定した骨芽細胞活性も、B6の方がC3Hに比して低いことが示された(Sheng, M. H., et al., (2004). In vivo and in vitro evidence that the high osteoblastic activity in C3H/HeJ mice compared to C57BL/6J mice is intrinsic to bone cells. Bone 35, 711-719)。したがって、B6系統は、全身性骨減少症に対する有用かつ十分に特徴決定されたモデルである。この種の成体低骨量によって骨粗鬆症のリスクが最も大きいヒト集団も同定されるので、B6系統は治療的および/または予防的な戦略を検証するための適切なモデルとなる。
【0113】
3カ月齢の雄性および雌性C57B1/J6マウスをこの試験に用いる(The Jackson Laboratory, Bar Harbor, ME)。hOPG発現構築物(YCWP-hOPG)を装入した酵母細胞壁粒子(YCWP)の経口投与の効果を、X線撮影、マイクロCTおよびpQCTにより、ならびに免疫組織化学および酵素組織化学によって決定する。YCWPまたは酵母細胞壁粒子は、YGMPおよびYGPを包含する粒子の一般的記述である。
【0114】
動物を対照群または実験群に無作為に割り当てる。少なくとも10匹の動物で構成される1つの群には、下記のように設計したYCWP-hOPG構築物を摂取させ、もう1つの群にはベクターDNAを装入したYCWPを摂取させる。適切な用量はおおよそ約400μg/日であり、所望の結果を得るために必要に応じて変更する。進行をモニターするためにX線像を2週毎に撮影する。治療を2カ月間続け、その時点で大腿骨のマイクロCT分析および脛骨の組織学的分析のために動物を安楽死させる。高分解能の全身X線像を入手し(Faxitron Micro 50)、大腿骨を外部組織を除いて摘出し、冷ホルムアミドのPBS溶液で一晩固定し、その後にマイクロCT分析のためにそれらを70%エタノールで交換する。脛骨を長軸方向に分割し、4%パラホルムアミド中で固定し、EDTA中で脱灰して、その後の免疫化学分析および組織化学分析のためにパラフィン包埋用の処理を行う。いくつかの切片をhOPG発現およびマクロファージF4/80マーカーに関して免疫染色し、hOPGのマクロファージ発現に関してFACSによって分析する。他の切片を破骨細胞マーカーTRAPに関して染色し、近位脛骨骨幹端におけるTRAP陽性細胞を算定する。近位脛骨骨幹端の2つの固定領域におけるTRAP陽性細胞を、各動物由来の少なくとも3つの切片において少なくとも2人の観察者によって算定し、実験群からの結果をt検定によって平均の有意差に関して検定する。大腿骨の総骨塩密度および体積骨塩密度を、Stratec XCT 960M装置を用いる末梢骨定量コンピュータ断層法(pQCT)によって測定する。非骨組織を他の組織と区別し、さらに皮質骨を低密度骨と区別するため、ならびに総皮質幅を計算するための閾値は、この種の骨減少性マウスに関して以前に記載された通りにする。骨微細構造は、同じく記載された通りに(Turner et al., 2001)、卓上マイクロCT装置(iCT 20, Scanco Medical, Basserdorf, Switzerland)を用いるマイクロCTによって評価する。得られるパラメーターは、骨体積密度、骨表面密度、骨梁数、骨梁幅、骨梁間隙および骨梁数である。組織学的検査を脛骨に対して行う。
【0115】
卵巣切除マウス
卵巣切除(OVX)マウスは、閉経後骨粗鬆症を模した低骨量を研究するための、十分に確立され広く利用されているもう1つのモデルである。若齢(典型的には、9〜16週齡)成体雌性マウスからの卵巣の除去は、破骨細胞性骨吸収の促進のために数週間以内で再現性のある骨粗鬆症を引き起こす。低骨密度は最も多くの場合、大腿骨または脛骨のいずれかの骨塩密度として、骨体積/総体積ならびに骨梁の幅および数のpQCT評価とともに測定される。骨表面当たりの破骨細胞および骨芽細胞が実験群間で異なるか否かを判定するために組織形態計測的評価を用いることもできる。このモデルを用いた最近の一例では、9週時点で実施したOVXから3週間後に、骨塩密度が10%以上低下し、骨体積/総体積(BV/TV)がおおよそ40%低下し、骨梁幅が10%以上減少し、骨梁数が30%以上減少した(Idris, A. I., et al., (2005) Regulation of bone mass, bone loss and osteoclast activity by cannabinoid receptors. Nat Med 11: 774-779)。最近のもう1つの研究では、OVXマウスモデルが、アデノウイルスOPG遺伝子治療の有効性を評価するために用いられた(Kostenuik, P.J., et al., (2004) Gene therapy with human recombinant osteoprotegerin reverses established osteopenia in ovariectomized mice. Bone 34:656-664)。このOVXマウスモデルは、低骨密度および治療介入の効果に関する多くの研究で同様に役立っている。したがって、OVXマウスは、hOPGを骨髄に送達するために経口摂取された、hOPG-発現構築物が装入された酵母細胞壁粒子の有効性を検証するための許容されるモデルである。
【0116】
若齢(典型的には9〜16週齡)成体雌性マウスからの卵巣の除去は、破骨細胞性骨吸収の促進のために数週間以内に再現性のある骨粗鬆症を引き起こす標準的な手順によって行われる。低骨密度は、大腿骨における骨塩密度として、骨体積/総体積ならびに骨梁の幅および数のpQCT評価とともに測定される。典型的には、これらの試験では3つの群のマウスを用いる:無手術の野生型マウス;偽手術を受ける野生型マウス;およびOVX手術を受けるマウス。偽手術マウスは切開を受け、卵巣の操作は受けるが、その後は卵巣を除去することなく切開部が閉鎖される。手術から回復した後に、マウスには通常の食餌を与えるか、またはベクターDNAのみが装入されたYCWPの胃管投与を毎日行う、またはYCWP-hOPG組成物の胃管投与を毎日行う。放射線学的分析を2週毎に行い、6週間後に動物を安楽死させて、C57B1/6マウスに関して上述した通りに骨格応答を評価する。組織形態計測的評価を、骨表面当たりの破骨細胞および骨芽細胞が実験群間で異なるか否かを判定するために用いることもできる。
【0117】
組換え的に作製されたゴーシェマウス
ゴーシェ病では骨格系の合併症が高頻度に観察されるが、それらは治療が困難であることが多い。ヒトゴーシェ表現型の長期生存マウスモデルは、新たな治療戦略を開発するために有意義である(Xu YH, et al., (1996) Turnover and distribution of intravenously administered mannose-terminated human acid beta-glucosidase in murine and human tissues. Pediatr Res. 39(2):313-22;Willemsen R, et al. (1995) A biochemical and ultrastructural evaluation of the type 2 Gaucher mouse. Mol Chem Neuropathol. 24(2-3):179-92)。同じ突然変異を有するゴーシェ病患者に類似した、骨減少症を含む生化学的および表現型上の異常を有するこれらの長期生存性L444Pゴーシェマウスが入手可能であることは、ゴーシェ病において観察される骨格病態の是正における経口投与による遺伝子治療の有効性を検証するための手段を与える(Hermann, G., et al., (1997) Gaucher disease: assessment of skeletal involvement and therapeutic responses to enzyme replacement. Skeletal Radiol 26:687-696)。マウスグルコセレブロシダーゼにおいてアミノ酸置換が行われて正常同腹仔における酵素活性レベルの半分未満まで内因性GC発現が有意に減少した、ゴーシェ病のトランスジェニックマウスモデルを用いた。マウス試料におけるグルコセレブロシダーゼ活性のアッセイは、蛍光標識基質である4-メチルウンベレフェリル-グルコピラノシド(4MUGP)を用いて行った。より軽症のゴーシェ病患者に認められるものに類似した点突然変異を、PCR突然変異誘発法によってマウスグルコセレブロシダーゼのゲノムクローンに導入した。これらの改変クローンを適切なベクターに挿入して、電気穿孔法によってRW4マウス胚性幹(ES)細胞にトランスフェクトした。グルコセレブロシダーゼ遺伝子の一方の対立遺伝子中に正しいターゲティングを受けた突然変異を含むESクローンを、C57BL/6マウス由来の胚盤胞に標準的な手法を用いて注入し、その後に仮親マウスに移した。これらの注入による雄性子孫をC57BL/6雌に対して試験交配させ、その後代を突然変異型グルコセレブロシダーゼ対立遺伝子の伝達に関してPCRおよびサザン分析によってスクリーニングした。
【0118】
L444P、R463CおよびN370S突然変異は、ゴーシェ患者で最も高い頻度で認められる3種の突然変異を構成する。L444P突然変異は、神経学的異常を有する患者により高い頻度で認められる。マウスメタキシン(metaxin)とグルコセレブロシダーゼとの間の遺伝子間領域に挿入されたloxP配列に挟まれたネオマイシン耐性(NeoR)カセットを含む、陽性/陰性選択を用いる補充ターゲティングベクターを構築した。L444P突然変異を、PCR突然変異誘発法によってマウスグルコセレブロシダーゼのゲノムクローンに導入した。構築物を電気穿孔法によってRW4マウス胚性幹(ES)細胞に導入し、ES細胞を、以前の記載の通りにG418を伴う培養下での薬剤選択に供した。個々のG418耐性クローンにおける遺伝子ターゲティング事象の正しさをサザンブロット法およびPCR分析によって確認した。グルコセレブロシダーゼ遺伝子の一方の対立遺伝子中に正しいターゲティングを受けたL444P突然変異を含むESクローン由来の細胞を、C57BL/6マウス由来の胚盤胞に注入し、その後に仮親マウスに移した。これらの注入に由来する、毛色キメラ性が30%を上回る雄性子孫を、C57BL/6雌に対して試験交配させ、その後代を突然変異型L444Pグルコセレブロシダーゼ対立遺伝子の伝達に関してPCRおよびサザン分析によってスクリーニングした。L444P突然変異型対立遺伝子を含む2系統のマウスが同定され、第9エキソンに導入された突然変異を含むPCR増幅されたDNAの直接シークエンシングによってDNA配列が確認された。L444P突然変異型グルコセレブロシダーゼ遺伝子に関してヘテロ接合性であるマウスを交配させ、ホモ接合性の突然変異型後代をサザンブロット法およびPCR分析によって同定した。加えて、ヘテロ接合性L444Pマウスを、CRE DNAリコンビナーゼの導入遺伝子を保有するマウスと交配させ、NeoRマーカーの切り出しが生じて34bpのloxP配列が残るようにした。ターゲティングを受けたL444P突然変異はメンデル様式で伝達された。蛍光標識基質である4-メチルウンベレフェリル-グルコピラノシド(4MUGP)を用いたマウス尾部試料におけるグルコセレブロシダーゼ活性のアッセイにより、ホモ接合性突然変異マウスにおけるグルコセレブロシダーゼ活性は正常同腹仔における酵素活性のおよそ35%であることが示された。
【0119】
オステオプロテジェリンノックアウトマウス
OPGの標的破壊に関してホモ接合性であるマウスは、骨粗鬆症の発生病理を研究するために有意義である上、低骨密度に対する新たな治療法の開発のための重要な手段でもある。重症の骨粗鬆症に典型的なように、8週齡よりも高齢のホモ接合性マウスでは、野生型同腹仔のそれと比較して、大腿骨における骨梁が有意に少なく、骨塩密度、乾燥重量、骨塩含量、硬度および強度が低い。OPG-/-ホモ接合性マウスで観察される高度の骨異常は、破骨細胞数の顕著な増加を伴う。野生型またはヘテロ接合性同腹仔とは対照的に、OPG-/-マウスでは骨梁および皮質骨の全体にわたって大量の破骨細胞が存在する。OPG-/-の骨では、野生型の親系統C57BL/6Jマウスと比較して、骨端の石灰化前線におけるTRAPおよびオステオポンチン染色の両方、さらにはカルセインも増加していることが報告されている。13週齡OPG-/-マウスでは、尾部、遠位大腿骨および脛骨の放射線濃度が低下している。OPG-/-マウスのマイクロCTは、骨梁の欠如、骨端線の破壊および異常な大腿骨皮質骨を示す。OPG-/-マウスで見られる骨異常は、重症の骨粗鬆症に典型的である。
【0120】
OPG-/-マウスの群体を、Harvard Medical School, Boston, MAのDepartment of Otology and LaryngologyのDr. Michael J. McKennaおよびArthur G. Kristiansenによって寄贈されたOPGノックアウト対立遺伝子を保有する雄性マウスを用いて樹立した。OPGの機能的遺伝子ノックアウト系統は、マウスOPG遺伝子における第2エキソンの標的破壊および親B6系統に対する樹立マウスの戻し交雑によって作製した。Mizuno, A., et al., Severe osteoporosis in mice lacking osteoclastogenesis inhibitory factor/osteoprotegerin, Biochem Biophys Res Commun. 1998 Jun 29;247(3):610-5。これらのホモ接合性OPG-/-マウスで観察される骨リモデリングの高度の異常および骨粗鬆症は、骨リモデリング変化および骨格脆弱性の細胞性および分子的な機序を決定するための優れたモデルを与えるとともに、骨粗鬆症に対する治療を開発するための貴重な手段でもある。
【0121】
インビトロでの破骨細胞分化
J774細胞株を用いた予備的研究を、骨髄単球、マクロファージおよび分化中の破骨細胞におけるhOPG発現を評価するために初代マウス骨髄細胞培養物へと拡張する。YCWPは効率的に貪食され、細胞の生存および分化に対する明白な有害作用を伴うことなしに、破骨細胞前駆細胞によって保持される。破骨細胞の分化は以下の通りに実施する。2〜4週齡の正常マウスから新鮮な骨髄を入手する。単核細胞をHistopaque 1077(Sigma)による勾配遠心分離法によって分離する。続いて細胞を洗浄し、10%FBS(Invitrogen Life Technologies, Grand Island, NY)および1%抗生物質/抗真菌剤(Sigma)を加えたα-MEM中に再懸濁して、75cm2フラスコ(Coming)内で3×105個/mlの密度で24時間インキュベートし、その後に穏やかな撹拌によって非付着細胞を採取する。この細胞画分を、破骨細胞分化培地:10%FBS、抗真菌剤/抗生物質溶液(Sigma)、75ng/mLのCSF-1(Chiron)および30ng/mLの組換えマウスRANKリガンド(R&D Systems)を含むα-MEM中にて、1ウェル当たりおおよそ5×105個の密度で12ウェルプレートに(または比例させて他の培養容器に対して)プレーティングする。培地を隔日で交換しながら、培養物を95%空気および5%CO2の加湿雰囲気中にて37℃で6日間インキュベートすると、その時点で多数の大きな多核細胞を観察することができる。
【0122】
骨髄単球、マクロファージおよび分化した破骨細胞を、hOPG発現および細胞種マーカーに関して免疫染色し、各細胞種におけるhOPG発現に関して分析する。培地中に分泌されたhOPGを市販のELISAキット(Immunodiagnostic Systems;BioVendor)を用いて定量する。破骨細胞は記載の通りに、酒石酸耐性酸ホスファターゼ(TRAP)陽性の多核細胞として算定する。プレーティングの際、破骨細胞分化が起こる前に細胞にはYCWPを与える。さまざまな時点で、ウェルをTRAP染色のため(p-ニトロフェノールリン酸法)、ならびにRNAおよびタンパク質の抽出のために収集する。hOPG mRNAは、Light Cycler system(Roche)を用いて、GAPDHに対して標準化したSYBRグリーンの組込みを用いるリアルタイムRT-PCRによって定量する。
【0123】
放射線学的分析
大腿骨の総骨塩密度および体積骨塩密度を、Stratec XCT 960M装置を用いる末梢骨定量コンピュータ断層法(pQCT)によって測定する。非骨組織を他の組織と区別しさらに皮質骨を低密度骨と区別するため、ならびに総皮質幅を計算するための閾値は、この種の骨減少性マウスに関して以前に記載された通りにする。骨微細構造は、同じく記載された通りに(Turner et al., 2001)、卓上マイクロCT装置(iCT 20, Scanco Medical, Basserdorf, Switzerland)を用いるマイクロCTによって評価する。得られるパラメーターは、骨体積密度、骨表面密度、骨梁数、骨梁幅、骨梁間隙および骨梁数である。組織学的検査を脛骨に対して行う。
【0124】
全身組織の分析
組織中のヒトOPGの測定により、経口投与されたマクロファージ/破骨細胞を標的とする遺伝子治療がマウス組織におけるOPGの発現を引き起こす時間的経過およびレベルに関するデータが提供される。ELISA、ウエスタンブロット法およびRT qPCR測定は、転写物およびタンパク質の両方のレベルでの酵素復元に関する情報を提供する。免疫組織化学分析および電子顕微鏡検査分析は、組織中の破骨細胞集団の程度に関するデータを提供する。
【0125】
骨組織の分析
マウス中の骨の種々の位置でのヒトOPGの測定により、マクロファージ/破骨細胞を標的とする遺伝子治療がOPG発現を引き起こす時間的経過およびレベルに関するデータが提供される。ELISA、ウエスタンブロット法およびRT qPCR測定は、転写物およびタンパク質の両方のレベルでのOPGに関する情報を提供すると考えられる。種々の骨位置由来の試料を用いた免疫組織化学分析および電子顕微鏡検査分析は、ヒトOPGを発現するマクロファージの数および位置に関するデータを提供する。
【0126】
表現型の評価
OPG遺伝子治療に起因する変化を検出するために、野生型および低骨密度マウスの臨床的状態を追跡する。マウスを神経学的異常、歩行異常および他の異常に関して観察する。マウスには適宜、行動試験および運動試験を行う。これらのマウスに関する生理的検査には、ルーチン的な血液生化学検査および血液学的検査が含まれる。
【0127】
組織採取
実験の組織試料採取の時点で、承認されたプロトコールを用いて動物を安楽死させ、組織試料を全臓器(例えば、骨、骨髄、脾臓、胸腺、肝臓、肺、心臓、腎臓、脳、その他)から収集し、凍結するか分析のために固定する。組織をヒトOPGの発現に関して分析する。アッセイには、ELISA、リアルタイムqPCR、サザンブロット法、ノーザンブロット法および免疫組織化学が含まれる。
【0128】
アッセイのための組織抽出
組織を、0.1%Triton X-100を含むリン酸緩衝食塩水(pH 7.5)中で均質化する(20%wt/vol)。組織ホモジネートを40℃、48,000×gで20分間遠心分離し、上清を-20℃で保存する。タンパク質含有量を、Bradfordの方法によって決定する。
【0129】
オステオプロテジェリンELISAアッセイ
組織培養細胞においてインビトロで産生されたOPGは培地中に分泌されるため、細胞および培地の両方をOPGに関してアッセイする。ヒトオステオプロテジェリンELISAは、血清、血漿、滑膜液または組織培養液におけるヒトオステオプロテジェリンの定量的測定を提供する、ビオチン標識抗体を利用したサンドイッチ酵素イムノアッセイである(Bio Vendor LLC, Candler, NC)。このヒトオステオプロテジェリンELISAでは、標準物質または試料を、マイクロタイターウェル内にコーティングされたマウスモノクローナル抗ヒトオステオプロテジェリン抗体とともにインキュベートする。1時間のインキュベーションおよび洗浄の後に、ビオチン標識したポリクローナル抗ヒトオステオプロテジェリン抗体を添加し、捕捉されたOPGとともにインキュベートする。十分な洗浄の後に、ストレプトアビジン・西洋ワサビペルオキシダーゼ結合物を添加する。30分間のインキュベーションおよび最終洗浄段階の後に、結合した結合物を基質であるH2O2-テトラメチルベンジジンと反応させる。酸性溶液の添加によって反応を停止させ、得られた黄色生成物の吸光度を450nmで測定する。この吸光度はオステオプロテジェリンの濃度に比例する。未知の試料の濃度は、吸光度の値をオステオプロテジェリン標準物質の濃度に対してプロットすることによって作成した標準曲線を用いて決定する。検出限界(ブランクの平均吸光度+ブランクの吸光度の3標準誤差よりも高い吸光度を与えるOPGの濃度と定義される)は、0.4pmol/試料1リットルよりも良好である。組換えマウスOPGとの交差反応はおよそ1%未満であり、組換えヒトCD40、組換えヒトsTNF RIまたはsTNF RIIとの交差反応は0.06%に過ぎない。ヒトオステオプロテジェリンおよびヒトIgGのFcドメインからなる組換えキメラタンパク質(OPG/Fc)を標準物質として用いる。成熟OPG/Fcは、ジスルフィド結合したホモ二量体タンパク質である。各モノマーは、成熟OPG由来の380残基、ならびにFcタンパク質およびリンカー由来の243残基を含む。グリコシル化の結果として、OPG/Fcは還元条件下のSDS-PAGEでは77kDaタンパク質(以前はこれは100kDaと称していた)として移動する。
【0130】
免疫沈降
提唱されたインビボおよびインビボの遺伝子移入実験におけるヒトOPGの増加を判定するために、プロテインG免疫沈降キットを製造元のプロトコール(Sigma)に従って用いて、ヒトOPG細胞および組織抽出物を精製する。ヒトOPGに対するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体をこの免疫沈降手順に従って用い、続いてウエスタンブロット分析を行う。
【0131】
血液分析
ルーチン的な化学検査、血液学検査ならびにOPG ELISAを含む他のアッセイのために、マウス血液をマウスの尾静脈または後眼窩の出血によって入手する。
【0132】
血液組織学
ルーチン的な組織学的評価のために、脛骨を冷4%パラホルムアミド中で一晩固定し、EDTA中で脱灰して、その後にパラフィン中に包埋する。下記のように、切片をH&Eもしくはトルイジンブルーで染色するか、または免疫組織化学実験に用いる。骨塩形成の評価のために、脱灰されていないパラフィンブロックをクリオトームで切り出し、フォンコッサ染色した切片に対して、デジタル顕微鏡写真および画像解析ソフトウエア(ZeissのAxiovisionおよびOsteomeasure)を用いて、脛骨骨幹端における石灰化骨の形態計測学的測定を行う。一部の切片を、類骨と石灰化骨基質を対比して可視化するためにマッソントリクロムにより染色する。
【0133】
組織学
組織学的分析のための非骨格組織試料を10%ホルマリン中で一晩固定し、PBS中ですすぎ洗いして、エタノールの強度を段階的に高めながら脱水して清浄化し、パラフィン中に包埋し、5ミクロン切片として切り出す。連続切片をヘマトキシリンおよびエオジンで染色する。
【0134】
免疫組織化学
野生型および低骨密度のマウスを安楽死させ、4%パラホルムアミドを含むリン酸緩衝生理食塩水、pH 7.4中で採取した組織を一晩固定し、パラフィン中に包埋する。免疫組織化学検査のための組織切片をクリオスタット(5〜10ミクロン)で切り出し、スライドガラスに乗せて脱パラフィン処理および再水和を行う。内因性ペルオキシダーゼを阻害するために、切片を5%H2O2のPBS溶液で5分間処理する。非特異的結合を防止するための1%ウシ血清アルブミン/PBS中での60分間のインキュベーションの後に、ヒトOPGに特異的なポリクローナル抗体またはマウスモノクローナル抗体、ビオチン化ヤギ抗ウサギ二次血清またはヤギ抗マウス二次血清およびABC複合体(Vectastain Eliteキット、Vector)を用いて切片を処理し、製造元のプロトコールに従ってDAB発色団により可視化する。CCDカメラを装着したZeiss顕微鏡およびScanalyticsソフトウエアを用いて画像を取り込む。一次抗体を用いない、または免疫前血清を用いる免疫染色を、陰性対照として用いる。
【0135】
電子顕微鏡検査
電子顕微鏡分析は、OPG発現の細胞性供給源のさらなる説明、ならびにOPG遺伝子治療に起因する破骨細胞構造の変化の特性決定を可能にする。ルーチン的な電子顕微鏡検査のための組織試料はグルタルアルデヒド中に固定する。免疫電子顕微鏡検査のためには試料を以前に記載された通りに固定し、抗ヒトOPG抗体とのインキュベーションによって免疫染色する。
【0136】
インサイチューハイブリダイゼーション
インサイチューハイブリダイゼーション試験は、組織中でのヒトOPG発現の程度および持続時間の決定の一部として、処理および非処理マウスに対して1、3、6および12カ月の時点で行われる。マウスに麻酔を施し、次に生理的食塩水で、続いて4%パラホルムアミドのPBS溶液によって灌流を行う。骨組織の処理は、Marks, Jr., S.C., et al., (1999) Facial development and type III collagen RNA expression: concurrent repression in the osteopetrotic (toothless, tl) rat and rescue after treatment with colony-stimulating factor-l. Dev. Dyn. 215: 117-125によって記載された通りである。他の組織は摘出して、4%パラホルムアミドのPBS溶液中に1時間浸漬し、パラフィン包埋して、5μm切片をスライド上にマウントする。切片を脱パラフィン処理し、再水和させ、脱水して乾燥させる。インサイチュー分析のためのジゴキシゲニン標識したセンスおよびアンチセンスのリボプローブは、マウスまたはヒトのOPG cDNAの600〜700bpのサブクローニング断片から作製する。AmpliScribeTM T7高収量転写ジゴキシゲニンRNA標識キット(Epicentre, Inc.)を以前の記載の通りに用いる(Odgren, P.A., et al., (2003) Production of high-activity digoxigenin-labeled riboprobes for in-situ hybridization using the AmpliScribe T7 high yield transcription kit. Epicentre Forum 10: 6-7)。パラフィン中に包埋された組織切片を脱パラフィン処理し、ハイブリダイゼーションミックス(50%ホルムアミド、5×SSC、10%デキストラン硫酸、1×デンハルト液、1μl/mlのRNAアーゼ阻害剤および500μg/mlのtRNA)中の1:200希釈DIG標識プローブとハイブリダイズさせ、アルカリホスファターゼを結合させた抗ジゴキシゲニン抗体および比色基質NBT/BCIP(ニトロブルーテトラゾリウム/5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルリン酸)をプロトコール(Roche)を用いて検出する。対照ハイブリダイゼーションは、切片をRNaseA(100ug/ml)により37℃で30分間処理し、その後にアンチセンスプローブとのハイブリダイゼーションを行うことによって行う。
【0137】
ウエスタンブロット分析
インビトロの細胞および培地においてならびにインビボのマウス組織において遺伝子移入がヒトOPGの発現を引き起こすことを確かめるために、ウエスタンブロット分析を行うことができる。試料を上記の通りに抽出する。電気泳動の前に、試料のタンパク質濃度を測定する(BioRadタンパク質アッセイ)。試料(25μgの全タンパク質)を12% SDS-PAGEで泳動させ、エレクトロブロット法によってニトロセルロース膜に移行させ、続いて、0.1%ウシ血清アルブミンのPBS溶液中にて、RTで60分間インキュベートする。膜を、0.1%ウシ血清アルブミンのPBS溶液中にて、ヒトOPGに対する適切な希釈度の抗血清とともに4℃で一晩インキュベートする。0.05% Tween 20を含むPBSによる5分間ずつの3回の洗浄の後に、Western Breezeキット(Invitrogen)を製造元のプロトコールに従って用いてブロットを処理する。化学発光はXAR-5フィルム(Kodak)を用いて検出する。
【0138】
RNA抽出プロトコール
血液からのRNAの抽出は、QAIAmp RNA血液ミニキットを用いて行う。試料をRNase非含有DNaseで処理する。RNAを凍結組織からRNAeasy MiniまたはMicroキット中の動物組織用プロトコールを用いて抽出する。組織を採取し、-80℃で保存して、液体窒素下で粉砕する。溶解緩衝液を粉砕組織に添加した後に、溶解産物をQlAshredderカラムを用いて均質化し、RNase非含有DNase処理を含むQiagenプロトコールを推奨された通りに実行する。凍結組織をRNAlater-ICEを用いて転換させ、同様に処理する。28Sおよび18S rRNAバンドの完全性を、それぞれの全RNA試料の無傷性を決定するために用いる。
【0139】
リアルタイム定量的PCR
リアルタイムqPCR発現の測定は、Qiagen RNAeasyキットを製造元の指示に従って用いて単離した全RNAに対して、ABI 7900HT装置を用いて行われる。200ngの全RNAからのcDNA合成の前に、ゲノムDNAを除去するためにDNaseI処理を用いる。ランダムヘキサマーを、Qiagen Sensiscript逆転写酵素を製造元のプロトコールに従って用いる20μl中での第1鎖合成を惹起するために用いる。それぞれのTaqManアッセイを、転写レベルを測定するために3回ずつ行う。これらの測定は、経口投与による遺伝子治療後のヒトおよびマウスのOPG転写の時間的経過およびレベルに関するデータを提供する。
【0140】
ノーザン分析
製造元のプロトコールに従ってRNAeasy(Qiagen)を用いて、野生型ならびに処理および非処理マウス組織から全RNAを単離する。8マイクログラムの全RNAを0.8%アガロースホルムアミドゲルの各レーンに対してローディングし、電気泳動性に分離されたRNAをナイロン膜(Hybond N, Amersham)に移行させる。ハイブリダイゼーションをExpressHyb溶液(BD Clontech)中にて68℃で1時間行い、洗浄を行って、オートラジオグラフィーを製造元のプロトコールに従って行う。マウスまたはヒトのOPGに特有のPCR断片に由来する32P標識プローブをハイブリダイゼーションのために用い、32P標識したα-アクチンおよび/またはGAPDHプローブを試料間の標準化のために用いる。
【0141】
レーザー捕捉マイクロダイセクション
レーザー捕捉マイクロダイセクション(LCM)は、細胞の位置、特定の細胞種(マクロファージ-対-破骨細胞など)の内部でのヒトOPGの発現の程度および持続時間に関する、分子レベルでの追加的なデータを入手するために用いられる。これらの検討はPixCell Ile LCM System(Arcturus Inc.)を用いて行われ、特定の組織標的からのRNAおよび/またはDNAの捕捉、単離、増幅および定量に対するLCMの広範囲にわたる経験を基にしている。LCM法は、凍結された、ホルマリン固定されてパラフィン包埋された、および蛍光標識された切片を含む、多岐にわたるスライド固定法と適合性がある。LCMは、DNAおよび/またはRNA分析のための試料を入手する目的で、関心対象の細胞集団を同定してそこに導くために用いられる。手短に述べると、PixCell Ile LCM Systemを用いて細胞を捕捉して生体分子を回収するための工程は、関心対象の細胞の位置を特定し、その後にLCM Capを標的領域に配置することを含む。キャップを通したレーザーのパルス照射によって、熱可塑性フィルムは、キャップと組織の間のギャップを架橋して標的細胞に付着する薄い突起を形成する。キャップを挙上すると、今やキャップに付着している標的細胞が取り出され、その後、捕捉された細胞を、さらなる処理のために0.5mlのDNase/RNase非含有エッペンドルフ微量遠心分離管の中に溶出させる。
【0142】
CapSure Macro LCMで捕捉された試料を用いるDNA抽出プロトコール
LCM捕捉された細胞を伴うCapSure Macro LCM Capを、50ulのプロテイナーゼK抽出溶液を含む0.5ml微量遠心分離管の上に配置する。Cap Sure Capが挿入された微量遠心分離管を転置して、容量50μlのプロテイナーゼK溶液がキャップ集成体(assembly)の内部表面を確実に完全に覆うように穏やかに振盪する。65℃でのインキュベーション後に、キャップ-管の集成体を1,000×gで1分間遠心分離する。CapSure LCMキャップを除去して、抽出物を含む微量遠心分離管をプロテイナーゼKを失活させるために95℃で10分間加熱し、室温まで冷却して、PCR分析のために用いる。
【0143】
RNA抽出プロトコール
手短に述べると、CapSure HS LCM Cap上に捕捉された細胞から、以下の通りにPicoPure RNA Isolation Kitプロトコールを用いてRNAを調製する。10マイクロリットルの抽出緩衝液を、CapSure-ExtracSure集成体の緩衝液ウェルに添加する。0.5mL微量遠心分離管をCapSure-ExtracSure集成体の上に配置し、集成体全体を42℃で30分間インキュベートする。CapSure-ExtracSure集成物を有する遠心分離管を800×gで2分間遠心分離することによって、細胞抽出物を収集する。続いて抽出物を直ちにRNA単離のために用いるか(以下を参照)、または-80℃で保存する。
【0144】
緩衝液によるRNA精製カラムのプレコンディショニングを室温で5分間行い、続いて採取管内で16,000×gで1分間遠心分離する。細胞抽出物に10マイクロリットルの70%エタノールを添加した後に、エタノールを伴う細胞抽出物をRNA精製カラムに添加し、通過物(flowthrough)を除去するために100×gで2分間、続いて16,000×gで30秒間遠心分離する。結合したRNAを伴う精製カラムを緩衝液で洗浄し、DNaseで処理して、再び洗浄した後に、11〜30μlの溶出緩衝液を用いてRNAを溶出させる。この単離されたRNAを続いて直ちに増幅するか、または使用時まで-80℃で保存する。ヒトOPG構築物に特異的なプライマーを用いるPCRによって生じた増幅RNAを、発現のレベルを決定するためにアガロースゲル電気泳動または定量的リアルタイムPCRを用いて分析する。
【0145】
統計分析
データ解析は、SigmaPlot、SAS(SAS Institute Inc., Cary, NC)、NIH ImageおよびSPSSソフトウエア(SPSS Inc., Chicago, IL)を含む統計分析ソフトウエアパッケージを用い、一般的には、一般的な線形回帰およびスチューデントt検定を分析のために用いて行う。
【0146】
WGP粒子の調製
全グルカン粒子(WGP、Lot W0282)は、Alpha-Beta Technologyから以前に入手した。一般に、全グルカン粒子は、酵母細胞壁からのアルカリ不溶性グルカン画分の抽出および精製によって酵母細胞から調製される。酵母細胞壁を破壊することなく酵母細胞を細胞のタンパク質および細胞内部分を消化する水酸化物の水溶液で処理し、有意なタンパク質混入がなく、かつβ(1-6)およびβ(1-3)結合グルカンの改変されていない細胞壁構造を実質的に有するグルカン壁成分が残るようにする。酵母細胞(S.セレビシエ(S. cerevisae)R4株)を、最小培地中にてフェドバッチ発酵条件下で中間対数期(midlog phase)になるまで増殖させた。細胞(乾燥細胞重量が約90g/L)を2000rpmで10分間のバッチ遠心分離によって採取した。続いて細胞を蒸留水で1回洗浄し、1リットルの1M NaOH中に再懸濁して90℃まで加熱した。細胞懸濁液をこの温度で1時間激しく撹拌した。細胞壁を含む不溶性材料を2000rpmで10分間の遠心分離によって回収した。続いてこの材料を1リットルの1M NaOH中に懸濁して、再び90℃まで加熱した。懸濁液をこの温度で1時間激しく撹拌した。続いて懸濁液を室温まで冷却し、抽出をさらに16時間続けた。不溶性残留物を2000rpmで10分間の遠心分離によって回収した。この材料を最後に、HClでpH 4.5にした水1リットル中にて75℃で1時間にわたり抽出した。不溶性残留物を遠心分離によって回収し、200ミリリットルの水で3回、200ミリリットルのイソプロパノールで4回、さらに200ミリリットルのアセトンで2回洗浄した。その結果得られたスラリーをガラス皿に入れて、減圧下にて55℃で乾燥させたところ、7.7gの白色微粉末が生じた。
【0147】
全グルカン粒子およびそれらを調製するための工程のより詳細な説明は、米国特許第4,810,646号;第4,992,540号;第5,028,703号;第5,607,677号および第5,741,495号に示されており、それらの教示は参照により本明細書に組み入れられる。例えば、米国特許第5,028,703号は、酵母WGP粒子を発酵培養下にある酵母細胞から産生させうることを開示している。Sorval RC2-B遠心分離機における8000rpmでの20分間のバッチ遠心分離によって細胞を採取した。続いて細胞を、全グルカンの抽出用に調製するために蒸留水で2回洗浄した。第1の段階は、細胞塊を1リットルの4%w/v NaOH中に再懸濁して100℃に加熱することを伴った。細胞懸濁液をこの温度で1時間激しく撹拌した。細胞壁を含む不溶性材料を、2000rpmでの15分間の遠心分離によって回収した。続いてこの材料を2リットルの3%w/v NaOH中に懸濁して、75℃に加熱した。懸濁液をこの温度で3時間激しく撹拌した。続いて懸濁液を室温まで冷却して、抽出をさらに16時間続けた。不溶性残留物を2000rpmでの15分間の遠心分離によって回収した。この材料を最後に、HClでpH 4.5にした2リットルの3%w/v NaOH中にて75℃で1時間にわたり抽出した。不溶性残留物を遠心分離によって回収し、200ミリリットルの水で3回、200ミリリットルの脱水エタノールで1回、さらに200ミリリットルの脱水エチルエーテルで2回洗浄した。その結果得られたスラリーをペトリ皿に入れて乾燥させた。
【0148】
YGP粒子の調製
S.セレビシエ(100gのFleishmansパン酵母)を1リットルの1M NaOH中に懸濁して、55℃に加熱した。細胞懸濁液をこの温度で1時間混合した。細胞壁を含む不溶性材料を、2000rpmでの10分間の遠心分離によって回収した。続いてこの材料を水1リットル中に懸濁し、HClでpH 4〜5にした上で、55℃で1時間インキュベートした。不溶性残留物を遠心分離によって回収し、1000ミリリットルの水で1回、200ミリリットルの脱水イソプロパノールで4回、さらに200ミリリットルのアセトンで2回洗浄した。その結果得られたスラリーをガラス皿に入れて室温で乾燥させたところ、12.4gのわずかに淡白色の微粉末が生じた。
【0149】
YGMP粒子の調製
S.セレビシエ(75gのSAF-マンナン)を水1リットル中に懸濁して、1M NaOHでpH 12〜12.5に調整した上で、55℃に加熱した。細胞懸濁液をこの温度で1時間混合した。細胞壁を含む不溶性材料を2000rpmでの10分間の遠心分離によって回収した。続いてこの材料を水1リットル中に懸濁し、HClでpH 4〜5にした上で、55℃で1時間インキュベートした。不溶性残留物を遠心分離によって回収し、1000ミリリットルの水で1回、200ミリリットルの脱水イソプロパノールで4回、さらに200ミリリットルのアセトンで2回洗浄した。その結果得られたスラリーをガラス皿に入れて室温で乾燥させたところ、15.6gのわずかに淡白色の微粉末が生じた。
【0150】
YCP粒子の調製
American Type Culture Collection(ATCC, Manassas, VA)から入手した培養物に由来する酵母細胞(ロドトルラ属(Rhodotorula sp.))を、YPD中にて30℃で、定常期になるまで有酸素下で増殖させた。ATCCから入手可能なロドトルラ属培養物には、第886号、第917号、第9336号、第18101号、第20254号、第20837号および第28983号が含まれる。細胞(1L)を2000rpmでの10分間のバッチ遠心分離によって採取した。続いて細胞を蒸留水で1回洗浄し、その後HClでpH 4.5にした水中に再懸濁し、75℃で1時間おいた。細胞壁を含む不溶性材料を2000rpmでの10分間の遠心分離によって回収した。その後この材料を1リットルの1M NaOH中に懸濁して、1時間にわたり90℃に加熱した。続いて懸濁液を室温まで冷却して、抽出をさらに16時間続けた。不溶性残留物を2000rpmでの15分間の遠心分離によって回収し、1000ミリリットルの水で2回、200ミリリットルのイソプロパノールで4回、さらに200ミリリットルのアセトンで2回洗浄した。その結果得られたスラリーをガラス皿に入れて室温で乾燥させたところ、2.7gの淡褐色の微粉末が生じた。
【0151】
図2は、酵母細胞壁の横断面の概略図100であり、外側から内側の順に、外部細線維層(fibrillar layer)110、外部マンノタンパク質層120、βグルカン層130、βグルカン層-キチン層140、内部マンノタンパク質層150、原形質膜160および細胞質170を示している。
【0152】
図3Aは、YGP βグルカン粒子420の構造の概略図であり、β1,3グルカン細線維、キチンを含む出芽痕およびキチン細線維を示している。図3Bは、YGMP βグルカンマンナン粒子430の構造の概略図であり、β1,3グルカン細線維、キチンを含む出芽痕、マンナン細線維およびキチン細線維を示している。
【0153】
表1は、上記の通りに調製したWGP粒子、YGP粒子、YGMP粒子およびYCP粒子の化学組成の分析の結果をまとめたものである。YGP粒子およびYGMP粒子は、先行技術のWGP粒子と比較して、βグルカン含有率がより低くて一般に約6〜約90重量パーセントであり、タンパク質含有率がより高いことに注目されたい。YGMP粒子は、他の粒子型と比較してマンナン含有率がかなり高く、一般に約30重量パーセントを上回り、より好ましくは約30〜約90重量パーセントのマンナンを有する。YCP粒子は、他の粒子型と比較してキチン+キトサン含有率がかなり高く、一般に50重量パーセントを上回り、より好ましくは約50〜約75重量パーセントである。
【0154】
(表1)酵母細胞壁材料の化学組成
*結果は乾燥分析材料の%w/wとして報告されている
**結果は%w/w糖質として報告されている
WGP‐全グルカン粒子‐先行技術;YGMP‐酵母グルカン-マンナン粒子;YGP‐酵母グルカン粒子;YCP‐酵母キチン粒子
【0155】
例示的なペイロード捕捉分子
キトサンが装入されたYGP粒子の調製
カチオン性捕捉ポリマーであるキトサンと共にYGP粒子を調製した。1%w/vキトサン溶液を、高分子量(HMW)キトサン(ほぼ70,000Mw、Sigma Chemical St. Louis, Mo)または低分子量(HMW)キトサン(ほぼ10,000Mw、Sigma Chemical St. Louis, Mo)のいずれかを用いて0.1M酢酸中で調製した。1%w/vのHMWおよびLMWキトサン溶液の両方を0.1M酢酸中で調製した。4mlのHMWまたはLMWのキトサン溶液を2gのYGPを有する50mlコニカル遠心分離管内に添加し、滑らかなペーストが形成されるまで混合した。この混合物を室温で1時間インキュベートして、液体を吸収させた。NaOH(40ml、0.1M)を各チューブに添加し、直ちにボルテックス処理して、キトサンをYGP内部に沈着させた。YGP:キトサン懸濁液を18ゲージ針に通過させ、YGP:キトサン粒子の微細懸濁液を作製した。YGP:キトサン粒子を遠心分離(2,000rpmで10分間)によって収集し、その後に、上清のpHが7〜8になるまでペレットを脱イオン水で洗浄した。続いてYGP:キトサン粒子をペレット体積の2倍のイソプロパノールで4回洗浄し、続いてペレット体積の2倍のアセトンで2回洗浄した。続いてYGP:キトサン粒子をフード内で室温で乾燥させた。この手順により、1.2g のYGP:LMWキトサン粒子および1.4gのYGP:HMWキトサン粒子が得られた。
【0156】
CytoPure(商標)が装入されたYGP粒子の調製
専売されている水溶性のカチオン性ポリマートランスフェクション試薬である生分解性カチオン性捕捉ポリマー、CytoPure(商標)(Qbiogene, Inc., CA)とともにYGP粒子を調製した。20μlのCytoPure(商標)を0.5mlの脱イオン水で希釈し、0.5gのYGPを有する50mlコニカル遠心分離管内に添加し、滑らかなペーストが形成されるまで混合した。この混合物を4℃で15分間インキュベートして、液体を吸収させた。25mlのエタノールを各チューブに添加し、直ちにボルテックス処理して、CytoPure(商標)をYGPの内部に沈着させた。YGP:CytoPure(商標)懸濁液を超音波処理して、YGP:CytoPure(商標)粒子の微細懸濁液を作製した。YGP:CytoPure(商標)粒子を遠心分離(2,000rpmで10分間)によって収集し、その後にペレットをペレット体積の2倍のイソプロパノールで4回洗浄し、続いてペレット体積の2倍のアセトンで2回洗浄した。続いてYGP:CytoPure(商標)粒子をフード内で室温で乾燥させた。この手順により、0.45gのYGP:CytoPure(商標)粒子が得られた。
【0157】
ポリエチレンイミンが装入されたYGP粒子の調製
カチオン性捕捉ポリマーとしてのポリエチレンイミン(PEI)とともにYGP粒子を調製した。2%w/vのPEI(ほぼ50,000Mw、Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)水溶液の0.5mlアリコートを、0.5g YGPを有する50mlコニカル遠心分離管内に添加して、滑らかなペーストが形成されるまで混合した。この混合物を室温で1時間インキュベートして、液体を吸収させた。25mlのエタノールを各チューブに添加し、直ちにボルテックス処理して、PEIをYGPの内部に沈着させた。YGP:PEI懸濁液を18ゲージ針に通過させ、YGP:PEI粒子の微細懸濁液を作製した。YGP:PEI粒子を遠心分離(2,000rpmで10分間)によって収集し、その後に、ペレットをペレット体積の2倍のイソプロパノールで4回洗浄し、続いてペレット体積の2倍のアセトンで2回洗浄した。続いてYGP:PEI粒子をフード内で室温で乾燥させた。この手順により、0.48gのYGP:PEI粒子が得られた。
【0158】
アルギン酸塩が装入されたYGP粒子の調製
アニオン性捕捉ポリマーとしてのアルギン酸塩(F200またはF200L、Multi-Kem Corp., Ridgefield, NJ)とともにYGP粒子を調製した。1%w/vのアルギン酸水溶液の2mlアリコートを、1gのYGPを有する50mlコニカル遠心分離管内に添加し、滑らかなペーストが形成されるまで混合した。この混合物を室温で1時間インキュベートして、液体を吸収させた。混合物を40mlの1%w/v塩化カルシウム水溶液で希釈した。YGP:アルギン酸塩懸濁液を18ゲージ針に通過させ、YGP:アルギン酸塩粒子の微細懸濁液を作製した。YGP:アルギン酸塩粒子を遠心分離(2,000rpmで10分間)によって収集した。YGP:アルギン酸塩粒子をペレット体積の2倍のイソプロパノールで4回洗浄し、続いてペレット体積の2倍のアセトンで2回洗浄した。続いてYGP:アルギン酸塩粒子をフード内で室温で乾燥させた。この手順により、0.95gのYGP:F200アルギン酸塩粒子および0.86gのYGP:F200Lアルギン酸塩粒子が得られた。
【0159】
ポリ-L-リジンが装入されたYGP粒子およびYGMP粒子の調製
捕捉ポリマーとしてのポリ-L-リジン(PLL)とともにYGP粒子およびYGMP粒子を調製した。1%w/vのPLL(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)水溶液の4mlアリコートを、1gのYGPまたはYGMPを有する50mlコニカル遠心分離管内に添加した。この混合物を55℃で30分間インキュベートして、液体を吸収させた。10mlのエタノールを各チューブに添加し、それを均質化して(Polytronホモジナイザー)、YGP:PLL粒子またはYGMP:PLL粒子の微細懸濁液を作製した。YGP:PLL粒子またはYGMP:PLL粒子を遠心分離(2,000rpmで10分間)によって収集した。YGP:PLLまたはYGMP:PLLをペレット体積の2倍のイソプロパノールで4回洗浄し、続いてペレット体積の2倍のアセトンで2回洗浄した。続いてYGP:PLL粒子またはYGMP:PLL粒子をフード内で室温で乾燥させた。この手順により、1.3gのYGP:PLL粒子および1.1gのYGMP:PLL粒子が得られた。顕微鏡による評価では、遊離PLL凝集物はなく、YGP:PLL粒子またはYGMP:PLL粒子のみが示された。
【0160】
キサンタンが装入されたYGP粒子およびYGMP粒子の調製
アニオン性捕捉ポリマーとしてのキサンタンとともにYGP粒子およびYGMP粒子を調製した。1%w/vのキサンタン水溶液の4mlアリコートを、粘性を低下させるために55℃に加熱して、1gのYGPまたはYGMPを有する50mlコニカル遠心分離管内に添加した。この混合物を55℃で30分間インキュベートした。10mlのエタノールを各チューブに添加し、それを均質化して(Polytronホモジナイザー)、YGP:キサンタン粒子またはYGMP:キサンタン粒子の微細懸濁液を作製した。YGP:キサンタン粒子またはYGMP:キサンタン粒子を遠心分離(2,000rpmで10分間)によって収集した。YGP:キサンタン粒子またはYGMP:キサンタン粒子をペレット体積の2倍のイソプロパノールで4回洗浄し、続いてペレット体積の2倍のアセトンで2回洗浄した。続いてYGP:キサンタン粒子またはYGMP:キサンタン粒子をフード内で室温で乾燥させた。この手順により、1.2gのYGP:キサンタン粒子および1.1gのYGMP:キサンタン粒子が得られた。顕微鏡による評価では、遊離キサンタン凝集物はなく、YGP:キサンタン粒子またはYGMP:キサンタン粒子のみが示された。
【0161】
物理的封じ込めによる分子の捕捉のためのYGP:アガロースの使用
YGP中にペイロードを捕捉するための手段としての物理的封じ込めについて評価するために、YGP:アガロースを調製した。2%w/vアガロース(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)を含むTE溶液を調製して、50℃に冷却した。1mg/mlのサケ精子DNAを含むTEの貯蔵溶液を希釈し、50℃のTE中または1%アガロース中で0.5mg/ml DNAにした。YGPの500mgアリコートを、500μlのDNAを含むTEまたは500μlのDNAを含むアガロースと50℃で混合し、混合物を50℃で1時間インキュベートした。続いてこの混合物を、アガロースを固化させるために冷蔵庫で1時間冷却した。1時間後に、10mlのTEを添加し、混合物を冷蔵庫内で一晩インキュベートした。続いて混合物を遠心分離し、260nmでの吸収によって上清中のDNAを測定した。適用したDNAの約80%超がYGP:アガロースによって保持され、これに対してYGP:TE対照によって保持されたのは1%未満であった。これらの結果は、アガロースが物理的封じ込めによってDNAをYGPの内部に効果的に捕捉することを示している。
【0162】
物理的封じ込めによる分子の捕捉のためのYGP:ポリアクリルアミドの使用
YGP中にペイロードを捕捉するための手段としての物理的封じ込めについて評価するために、YGP:ポリアクリルアミドを調製した。1mg/mlのサケ精子DNAを含むTEの貯蔵溶液を、TE中または30%ポリアクリルアミド/bis(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)中で0.5mg/ml DNAとなるように希釈した。各DNA混合物にTEMED(N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン)を添加し(5mlのDNA溶液に対して1μlのTEMED)、各溶液の2mlアリコートを1gのYGPに添加した。この生成物を混合して均一な懸濁液を形成させ、室温で3時間インキュベートした。3時間のインキュベーション後に、10mlのTEを添加し、混合物を冷蔵庫内で一晩インキュベートした。続いて混合物を遠心分離し、260nmでの吸光度によって上清中のDNAを測定した。適用したDNAのほぼ95%超がYGP:ポリアクリルアミドによって保持され、これに対してYGP:TE対照によって保持されたのは1%未満であった。これらの結果は、ポリアクリルアミドが、物理的封じ込めによってDNAをYGPの内部に捕捉するために用いるのに有効な捕捉ポリマーであることを示している。
【0163】
YGP中へのタンパク質の装入
治療用のペプチドもしくはタンパク質、ワクチン抗原、または他のペプチドもしくはタンパク質の保持、輸送および送達に対する、本発明の送達系の有用性を、ウシ胎仔血清の混合タンパク質を用いて評価した。用いた酵母細胞壁粒子は、上記の通りに調製したYGP、YGP-PEIおよびYGP-キトサンであった。貯蔵溶液は、45ng/μlのウシ胎仔血清(FCS)(Fetal Bovine Serum, JRH Biosciences, Lenexa, KS)、0.2%PEIのTE溶液(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)、0.05Mリン酸緩衝液、pH 7.2(P緩衝液)および0.05Mリン酸緩衝液、pH 7.2、1M NaCl(P+塩類緩衝液)とした。
【0164】
表8に示されたように、4μlのFCSを1mgのYGP、YGP-PまたはYGP-CNを有する微量遠心分離管内に添加し、その結果得られた混合物を室温で60分間インキュベートして、粒子によって液体を吸収させた。インキュベーションの後に、200μlのリン酸緩衝液または200μlのPEIを表8に示された通りにして、その結果得られた混合物を室温で60分間インキュベートした。インキュベーションの後に、0.5mlのリン酸緩衝液を添加し、さらに5分間のインキュベーションの後に、チューブを超音波処理して個別の粒子を生じさせた。粒子を10,000rpmでの10分間の遠心分離によってペレット化し、上清を取り除いて新たなチューブに移した。0.5mlの0.05Mリン酸ナトリウム緩衝液、pH 7.2+1M NaClをペレットに添加し、さらに5分間のインキュベーションの後に、チューブを10,000rpmで10分間遠心分離し、高塩分溶出上清を取り除いて新たなチューブに移した。上清のタンパク質含有量を280nmでの吸光度によって測定した。
【0165】
タンパク質装入の結果は以下の表2に示されている。捕捉分子を伴わないYGP粒子は、提示されたタンパク質の5%しか捕捉しなかった。FCSタンパク質がまず装入され続いてPEIに曝露されたYGP粒子は、タンパク質装入物の47%を保持していた。タンパク質装入物に対する曝露の前に、PEIまたはキトサンなどの捕捉ポリマーがあらじめ装入されたYGP粒子は、タンパク質装入物のそれぞれ68%および60%を保持していた。
【0166】
(表2)
【0167】
これらの結果は、血清タンパク質が、捕捉ポリマーを伴わないYGP中には効果的には装入および捕捉されないことを示している。ペイロードタンパク質に対する曝露の前に捕捉ポリマーがあらじめ装入されたYGPは、タンパク質捕捉の増加をもたらした。または、まずタンパク質を装入し、続いて粒子内のタンパク質を封鎖状態にするために可溶性捕捉ポリマーを添加することによって、タンパク質をYGPの内部に捕捉することもできる。
【0168】
蛍光標識されたプラスミドDNAの装入および捕捉
DNA捕捉を最適化するため、ならびにマウスマクロファージ由来の細胞株であるJ774細胞への取込みの後のDNA送達および放出について評価するために、蛍光プラスミドDNA組成物を含むGPを調製した。蛍光pUC19プラスミドDNAは、1mg/mlのpUC19 DNA溶液を含む0.1M炭酸緩衝液(pH 9.2)1mlを、1mg/mlのDTAFを含む10mM炭酸緩衝液(pH 9.2)の懸濁液100μlと混合することによって調製した。37℃での一晩のインキュベーションの後に、200μlの1M Tris-HCl、pH 8.3を添加して、室温で15分間インキュベートした。続いて100μlの1M NaClおよび3mlのエタノールを、DNAのエタノール沈殿のために添加した。-20℃で一晩保存した後に、エタノール沈殿物を10,000rpmでの15分間の遠心分離によって収集した。このエタノール沈殿物を上清が清澄化するまで70%エタノールで洗浄して、1mlのTE中に再懸濁した。
【0169】
蛍光DNA(1μg/μl)を、乾燥YGP中に室温で30分間にわたり吸収させた。インキュベーションの後に、0.45mlの95%エタノールを1本のチューブに添加し、0.2mlの2%ポリエチレンイミン(PEI)を2本のチューブに添加し、さらに0.2mlの2%ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)を別のチューブに添加した。室温での30分間のインキュベーションの後に、0.2mlの2% CTABをPEIチューブの1本に添加し、インキュベーションを30分間続けた。エタノール(1ml、95%)を添加し、YGP-DNA組成物を-20℃で一晩保存した。YGP-DNA懸濁液を70%エタノールで洗浄して、0.5mlのPBS中に再懸濁した。J774マウスマクロファージを6ウェルプレートに1ウェル当たり2.5×105個の密度でプレーティングして、一晩インキュベートした。粒子を培地に対して細胞1個当たり粒子10個の割合で添加して、粒子を分布させるためにプレートを回旋させた。細胞を4時間インキュベートした。インキュベーション期間の終了時に、培地を除去した;細胞をPBSで洗浄し、0.4%ホルマリンのPBS溶液にて固定した。顕微鏡検査により、蛍光粒子が細胞によって取り込まれたことが判明した。
【0170】
別の試験では、J774細胞におけるトランスフェクションおよびコードされるEGFPの発現のために、pIRESプラスミドを含むYGPを調製した。用いたカチオン性捕捉物質には、カチオン性ポリマー、例えばポリエチレンイミン(PEI)、専売されている水溶性カチオン性ポリマートランスフェクション試薬であるCytoPure(商標)(Qbiogene, Inc., CA)、キトサン、および陽イオン界面活性剤であるヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)が含まれる。好ましいPEIの一つは、市販されている線状ポリエチレンイミンカチオン性ポリマートランスフェクション試薬であるJetPEI(Qbiogene, Inc., CA)である。
【0171】
pIRES-EGFP(Clonetech, CA)は、脳心筋炎ウイルス(ECMV)のリボソーム内部進入部位(IRES)を、MCSおよびEGFP(強化緑色蛍光タンパク質)のコード領域の間に含む。これにより、関心対象の遺伝子(MCS中にクローニングされている)およびEGFP遺伝子の両方が、単一の二シストロン性mRNAから翻訳されることが可能となる。pIRFS-EGFPは、EGFPおよび関心対象の別のタンパク質を発現する一過性トランスフェクトされた哺乳動物細胞の効率的な選択(フローサイトメトリーまたは他の方法による)のために設計されている。関心対象のタンパク質を高レベルで発現する細胞の選択を最適化するために、pIRES-EGFPは部分的に能力が失われたIRES配列を利用している。この能力低下IRESは、クローニングされた遺伝子のものに比してEGFP開始コドンでの翻訳開始の割合の低下を招く。これは、最適に満たない割合でのEGFPの翻訳を代償するために、mRNAが、そしてそれ故に標的タンパク質が高レベルで産生される細胞の選択を可能にする。このベクターはまた、EGFPのみを発現させるために、または、時間のかかる薬剤選択およびクローン選択を行うことなく、安定的にトランスフェクトされた細胞株を入手するために用いることもできる。EGFPは、哺乳動物細胞におけるより明るい蛍光およびより高度の発現に向けて最適化された、野生型GFPの赤方偏移変異体である(最大励起=488nm;最大発光=509nm)。EGFPはGFPmut1変異体をコードし、これはPhe-64からLeuへの、およびSer-65からThrへのアミノ酸置換を含む。これらの突然変異は、主としてタンパク質フォールディング特性および発色団形成の効率の改善によって、GFPの明度および溶解性を高める。EGFPはまた、好ましいヒトコドンでほぼ全体が構成されたオープンリーディングフレームも含む。このことは、野生型GFPに比して、真核細胞におけるより効率的な翻訳、そしてそれ故により高い発現レベルにつながる。
【0172】
調製した溶液は以下である:0.72μl/μlのpIRES EGFPプラスミドDNA水溶液、0.2%w/vのPEI(Sigma)のTE溶液、2μlのCytoPure(Qbiogene)+48μlの0.15M NaCl、2μlのJetPEI(Qbiogene)+48μlのTE、0.2%スペルミジンのTE溶液、2%(aq)CTABおよびリン酸緩衝食塩水(PBS)。
【0173】
蛍光pIRESプラスミドDNAは、1mg/mlのpIRES DNAを含む0.1M炭酸緩衝液(pH 9.2)1mlを、1mg/mlのDTAFを含む10mM炭酸緩衝液(pH 9.2)の懸濁液100μlと混合することによって調製した。37℃での一晩のインキュベーションの後に、200μlの1M Tris-HCl、pH 8.3を添加して、室温で15分間インキュベートした。続いて100μlの1M NaClおよび3mlのエタノールを、DNAのエタノール沈殿のために添加した。-20℃で一晩保存した後に、エタノール沈殿物を10,000rpmでの15分間の遠心分離によって収集した。このエタノール沈殿物を上清が清澄化するまで70%エタノールで洗浄して、1mlのTE中に再懸濁した。
【0174】
YGP懸濁液を室温で30分間インキュベートした。インキュベーションの後に、0.45mlの95%エタノールをチューブ3本の1セット(YGP、YGP-P、YGP-キトサン)に添加し、0.2mlの2% PEIをチューブ3本の2セットに添加し、0.2mlの2% CTABをチューブ3本のもう1セットに添加した。室温での30分間のインキュベーションの後に、0.2mlの2% CTABをPEIチューブの1セットに添加し、インキュベーションをさらに30分間進行させた。エタノール(1ml、95%)を添加し、YGPを-20℃で一晩保存した。このYGP懸濁液を70%エタノールで洗浄して、0.5mlのPBS中に再懸濁した。
【0175】
J774マウスマクロファージを6ウェルプレートに1ウェル当たり2.5×105個の密度でプレーティングして、一晩インキュベートした。粒子を培地に対して細胞1個当たり粒子10個の割合で添加して、粒子を分布させるためにプレートを回旋させた。細胞を4時間インキュベートした。インキュベーション期間の終了時に、培地を除去し、細胞をPBSで洗浄して、0.4%ホルマリンのPBS溶液にて固定した。
【0176】
蛍光DNAを含む粒子、および蛍光DNAを含む粒子とともにインキュベートしたJ774細胞を蛍光顕微鏡検査によって評価し、その結果を表3にまとめている。
【0177】
(表3)
【0178】
実施例1
YGP:pIRESとともにインキュベートしたJ774マウスマクロファージによるEGFP発現
pIRESプラスミドDNAはこの実施例では蛍光標識されておらず、その代わりに、pIRESによってコードされる緑色蛍光タンパク質(GFP)の機能的発現を、装入された酵母細胞壁粒子の取込み、pIRES DNAの細胞内放出、および蛍光の発生によって明示されるGFPの発現を実証するものとして用いた。
【0179】
YGP:pIRES組成物は以下の通りに調製した。DNAを、1mg/ml貯蔵液の脱イオン水による希釈物から調製した。指定量のDNA溶液をYGPに添加し、少なくとも30分間インキュベートして液体を吸収させた。0.2% PEIを含むTEまたは0.2%キトサンを含む酢酸緩衝液の指定量を添加し、混合物を5分間インキュベートした後に、超音波処理して個別の粒子を生じさせた。さらに少なくとも30分間のインキュベーションの後に、指定量の2% CTABを添加した。さらに5分間のインキュベーションの後に、チューブをボルテックス混合し、再び少なくとも30分間インキュベートした。指定量の95%エタノールを添加した。続いて各チューブを混合し、-20℃で一晩保存した。続いてYGP:pIRES配合粒子を遠心分離し、70%エタノール中で2回洗浄して、10,000rpmで5分間遠心分離し、0.5mlの滅菌PBS中に再懸濁した上で、超音波処理して個別の粒子を生じさせた。1ml当たりの粒子数を算定し、各組成物を-20℃で保存した。
【0180】
J774マウスマクロファージを6ウェルプレートに1ウェル当たり2.5×105個の密度でプレーティングして、37℃で一晩インキュベートした。トランスフェクションは以下の表4にまとめた通りに行った。培地に対して細胞1個当たり粒子10個の割合で粒子を添加して、粒子を分布させるためにプレートを回旋させた。細胞への補給を毎日行って、2日間インキュベートした。インキュベーション期間の終了時に、培地を除去し、細胞をPBSで洗浄し、0.4%ホルマリンのPBS溶液にて固定した。細胞を蛍光顕微鏡検査を用いて検査した(図5)。それらの結果は表4にまとめられている。J774細胞の89%がYGP-F粒子を取り込んだ。EGFP発現は、J774細胞の80%超において空胞内の点状蛍光として明らかに認められた。
【0181】
図6Aおよび図6Bは、骨髄マクロファージのカラー蛍光顕微鏡写真の画像であり、YGP-FITC粒子520の取込み(図6A)を示すとともに、図6BではYGP-FITC粒子530の取込みおよびマクロファージマーカーF4/80 540に特異的な染色を示している。
【0182】
(表4)
【0183】
実施例2
YCWPとともにインキュベートしたマウスRAW細胞におけるEGFP発現
YCWP-テキサスレッドおよびpgWIZ-GFPのインビトロ共送達(co-delivery)について、マウスRAW細胞を用いて検討した:マウスRAW 264.7細胞(ATCC, Manasas, VA、No. TIB-71(商標))を、J774マクロファージに関して上述した通りに6ウェルプレートにプレーティングした。YCWP内部のカチオン性tRNA/PEI/CTABナノポリプレックスの表面にアニオン性プラスミドDNAを吸着させることによって、正に荷電した酵母tRNA/PEI/CTABポリプレックスを含むYCWP-tRNA/PEI/CTAB粒子(1×107個)に対して、0.5mgのpgWizGFP DNA(Gene Therapy Systems, San Diego, CA)を装入した。続いて、YCWP-tRNA/PEI/CTAB/gWizGFP組成物をPEI(5mg)でコーティングした。同一の細胞の内部でのYCWP取込み(赤色粒子)およびGFP発現(緑色分散蛍光)を実証するために、粒子:細胞比が5であるこのYCWP-DNA組成物を、粒子:細胞比が5である空(empty)YCWP-TR(テキサスレッド、Molecular Probesにより化学的に標識されたYCWP)と混合し、続いてマウスRaw細胞とともにインキュベートした。図7Aおよび図7Bの蛍光顕微鏡写真において認められるように、YCWP-TRを取り込む細胞はGFPを発現する。
【0184】
実施例3
マウスにおけるYGP粒子およびYGMP粒子のインビボ経口生物学的利用能
酵母グルカン粒子の経口生物学的利用能に対する細胞表面糖質組成物の効果を、蛍光標識した酵母細胞壁粒子を用いて検討した。YGPおよびYGMPと、新たに調製した20mg/mlのジクロロトリアジニルアミノフルオレセイン(DTAF)のDMSO溶液とを、0.1Mホウ酸緩衝液、pH 8中で37℃で2日間反応させることによって、蛍光標識した酵母グルカン粒子(YGP-F)および蛍光標識した酵母グルカン-マンナン粒子(YGMP-F)を調製した。余分なDTAFは1M Tris緩衝液、pH 8.3によって消光させ、滅菌PBSによる反復洗浄によって非反応生成物がなくなるように洗浄した。
【0185】
YGP-F(1mg/ml)およびYGMP-F(2.5mg/ml)のアリコート(0.1ml)を、マウス(C57Bl/6野生型)に、経口胃管投与および皮下注射によって5日間投与した。各群から第5日に便ペレットを収集した。マウスを第7日に安楽死させ、組織(脳、肝臓、脾臓、骨髄および小腸)を採取した。脳、肝臓、骨髄および小腸を10%パラホルムアミド固定液中に入れた。脾臓は、50ulの滅菌PBSを含む氷水上の別個のチューブ内に回収した。それらを鋏を用いて浸軟させ、70ミクロンのスクリーンに押し付けて通過させて、個別の細胞の懸濁液を作製した。脾臓細胞を12ウェルプレート当たりほぼ106個でプレーティングし、37℃で24時間インキュベートして付着させた。非結合細胞を洗い流した後に、蛍光顕微鏡検査により、ウェルを、内部移行した蛍光粒子を有する付着細胞(マクロファージ)に関してスコア化した。その結果は、YGP-FおよびYGMP-Fの両方に経口的な生物学的利用能があり、マクロファージによって全身に分布することを示している。均質化した便の分析により、投与した蛍光粒子の数のほぼ20%の存在が実証されており、このことは経口吸収の効率が約80%であったことを示している。
【0186】
さらなる検討により、pIRES DNAを含む経口投与した酵母細胞壁粒子がインビボでマクロファージ内に組み込まれ、続いてEGFPを発現したことが示されている。pIRES発現ベクターを含む酵母細胞壁粒子を含む組成物のインビボにおけるマウスへの経口投与および皮下投与は、マウス脾臓マクロファージにおける緑色蛍光タンパク質の一過性発現を生じさせる効果があった。単離された脾臓細胞を上記の通りに採取して培養し、付着細胞をホルマリン固定して、蛍光顕微鏡検査を用いて検査して写真を撮影した。脾臓マクロファージ細胞の蛍光顕微鏡写真により、YGMP:pIRES粒子の取込みおよび緑色蛍光タンパク質の発現が実証された。
【0187】
実施例4
YGP:pIRES2DsRED2-OPGとともにインキュベートしたJ774マウスマクロファージによるヒトオステオプロテジェリン発現
ペイロード分子である、ヒトオステオプロテジェリンを発現するpIRES2DsRED2-OPGプラスミドDNAを、酵母グルカン粒子(YGP)および酵母グルカンマンナン粒子(YGMP)の中にカチオン性ポリマー-DNAナノ複合体の形態で組み込んだ。マクロファージによる食作用を受けると、これらの粒子はファゴソーム中に配置され、ここでカチオン性ポリマーがファゴソームを膨張させて、DNAを細胞質中に放出する。放出されたDNAは核に移動し、細胞機構によってプロセシングを受けて、活性のある正常なオステオプロテジェリンを生成する。
【0188】
pIRES2DsRED2-OPGプラスミドの説明
これらの予備的実験に用いるpIRES2DsRED2-OPG-OPG構築物は、pIRES2DsRED2のマルチクローニングサイト(MCS)のBamH1部位とXho1部位の間に挿入されたヒトオステオプロテジェリンcDNAから構成される。pIRES2DsRED2ベクター(カタログ番号6990-1、Clontech Laboratories, Inc., Mountain View, CA)は、IRESエレメント、およびヒトオステオプロテジェリンDNA挿入配列の発現の原因となるCMVプロモーターを含む。ヒトOPG cDNAはヒト腎臓cDNAライブラリーからクローニングされているが、これは、疎水性リーダーペプチドおよび4つの潜在的なN結合型グリコシル化部位を含む、分泌型糖タンパク質の特徴を有する401アミノ酸ポリペプチドをコードする。
【0189】
YGP-DNA組成物は、ヒトオステオプロテジェリンを発現するプラスミドDNA(pIRES2DsRED2-OPG)を、マウスマクロファージ細胞株J774の中に効率的に送達する。上記の方法を、ヒトオステオプロテジェリンを発現するpIRES2DsRED2-OPGのYGP中への装入および捕捉のために用いた。培養下にある付着性J774細胞を、YGPまたはYGP:pTRES2DsRED2-OPGとともに、粒子:細胞比を10として48時間インキュベートした。培地を除去し、細胞をPBSで短時間洗浄して、その後固定した(0.5〜1%のホルマリン溶液により)。固定液の除去の後に、細胞をPBSで短時間洗浄し、続いて1.0%乳中にてRTで1時間インキュベートした。乳ブロッキング溶液を除去した後に、細胞をヒトオステオプロテジェリンに特異的なマウスモノクローナル抗体(Imgenex, IM103)(PBS/1.0%乳中で作用希釈度1/500)とともに4℃で一晩インキュベートした。一晩のインキュベーションの後に抗体溶液を細胞から除去し、穏やかに揺動させながらPBS/0.05%Tween 20により5分間ずつ3回、細胞を洗浄した。続いて細胞をロバ抗マウスCy5結合抗血清(Molecular Probes, Cy5ロバ抗マウス2mg/mL;作用希釈度1/100〜1/50)とともにRTで1時間インキュベートした。細胞を再び、穏やかに揺動させながらPBS/0.05%Tween 20により3分間ずつ5回洗浄した。最終洗浄溶液の除去の後に、各ウェルにPBSを添加し、蛍光顕微鏡分析を行うまで細胞プレートを4℃で暗所保存した。
【0190】
図8Aおよび図8Bは、インビトロで偽トランスフェクションを受けた(図8A)、またはYGP:pIRES2DsRED2-OPGにより処理された(図8B)J774細胞のカラー蛍光顕微鏡写真の画像である。ヒトオステオプロテジェリンの発現は、表示された細胞610などのように、インビトロでYGP:pIRES2DsRED2-OPG組成物により処理されたJ774細胞の50%超における免疫反応性として検出可能であった。抗ヒトオステオプロテジェリン抗体は組換えヒトオステオプロテジェリンを選択的に同定し、内因性マウスオステオプロテジェリンとは交差反応しなかった。これらの結果は、ヒトオステオプロテジェリンをコードするDNAの効率的送達においてYGP:pIRES2DsRED2-OPG組成物が有効であり、その結果としてマウスJ774マクロファージ細胞におけるヒトオステオプロテジェリンの一過性発現が生じることを実証している。
【0191】
実施例5
生理的に有意な量のhOPGの発現および分泌
2mgのpIRES2DsRED2-hOPG DNAが装入され、10mgのポリエチレンイミン(PEI, Aldrich)でコーティングされたYGPの組成物(5×107個)を、培養下にある3T3-D1マウス線維芽細胞株のトランスフェクションのために用いた。陽性対照として、従来のトランスフェクション剤(JetPEI、Gene Therapy Systems, San Diego, CA)を用いてpIRES2DsRED2-hOPG DNAを細胞にトランスフェクトした。pIRES2DsRED2-hOPG DNA(1mg)を含む0.15M NaCl 50mlを、2mgまたは4mgのJetPEIを含む50mlの0.15M NaClと混合し、直ちにボルテックス処理した。RTで20分間のインキュベーションの後に、マウスデクチン-1遺伝子が安定的にトランスフェクトされ、24ウェルプレート内の10%ウシ胎仔血清(Invitrogen)を含むDMEM中に集密度33%でプレーティングされた3T3-D1マウス線維芽細胞に、トランスフェクション混合物を添加した。細胞のトランスフェクションは、0.5mlの増殖培地中の細胞に対して、100mlのYGP-DNA-PEI組成物(5×105個の粒子中に20ngのDNA)または100mlのDNA-PEIポリプレックス(1mgのDNA)を滴下させながら添加することによって行った。陰性対照ウェルは非処理とした。CO2インキュベーター内での37℃での3時間のインキュベーションの後に、増殖培地を除去して、0.5mlの新たなD-MEM/10%ウシ胎仔血清を補充し、細胞を上記の通りにインキュベートした。
【0192】
24時間および48時間の時点で増殖培地のアリコートを取り出して凍結し、0.5mlの新たな培地を補充した。hOPGに関するELISAキット(Cat. No. RD 194003200;Immunodiagnostic Systems, BioVendor LLC、代表的な標準曲線は図9に示されている)を、hOPGの発現および分泌に関して培地試料をアッセイするために用いた(表5)。
【0193】
(表5)48時間時点でのトランスフェクト細胞培地のhOPG ELISA分析
【0194】
これらのデータは、YCWP組成物が、hOPGをコードするDNAを効率的に送達することができ、それが細胞内で発現されるとともに細胞によって分泌されることを実証している。提示されたDNAの量に対して標準化した場合、本発明の送達系は、細胞外培地中に24倍多い量のhOPGを生じさせたことに注目されたい。これらの結果は、pIRES2DsRED2-hOPG DNAを含むYCWPによる3T3-D1細胞のトランスフェクションが効率的であり、生理的に有意な量での培地中へのhOPGの合成および分泌をもたらすことを実証している。
【0195】
これらの試験の結果は以下のようにまとめられる。マウスマクロファージJ774細胞はYGP-F粒子を効率的に貪食した(90%を上回る)。抗ヒトオステオプロテジェリン抗体は組換えヒトオステオプロテジェリンを選択的に同定し、内因性マウスオステオプロテジェリンとは交差反応しなかった。ヒトオステオプロテジェリンの発現は、YGP:pIRES2DsRED2-OPG組成物によりインビトロで処理されたJ774細胞の50%超で免疫反応として検出可能であった。YCWP組成物は、hOPGをコードするDNAを効率的に送達することができ、それが細胞内で発現されるとともに細胞によって分泌される。これらの結果は、本発明の諸態様が、ヒトオステオプロテジェリンをコードするDNAを効率的に送達して、マウスJ774マクロファージ細胞および3T3-D1マウス線維芽細胞においてヒトオステオプロテジェリンの一過性発現を生じさせるのに有効であることを実証している。
【0196】
実施例6
インビボにおいてマクロファージに組み込まれ、骨に大量に移行する、マウスに投与された酵母細胞壁粒子
YGPの骨格組織への生体内分布を評価するための1件の試験において、テキサスレッド(Molecular Probes)で標識したYGP粒子(YGP-TR)を腹腔内注射(IP;1mg/ml)によってマウスに投与した。マウスを第4日に安楽死させ、組織(脳、肝臓、脾臓および骨)を採取し、PBSで緩衝化した5%ホルマリン中で一晩固定して、YGP-TR粒子の組織分布に関する蛍光顕微鏡検査のために切片を調製した。マウス大腿骨の横断面における髄腔内のYGP-TR細胞内粒子(いくつかは骨内膜表面と連続しているように見える)。図10A〜図10Cは、4日前に蛍光標識YGP粒子のIP注射を受けたL444Pゴーシェマウス由来の大腿骨の組織切片の画像を示しており、これは蛍光標識粒子750が骨に分布したことを示している。図10Aは透過光の下で観察した骨切片を示している。図10Bは、蛍光顕微鏡検査によって観察した図10Aと同じ視野を示しており、蛍光標識粒子750を有するいくつかの細胞(矢印)を示している。図10Cは、図10B中に長方形によって表示された視野を含む、より高倍率の画像である。この試験は、マウスに投与されたYGP-DNA組成物がインビボでマクロファージ内に組み込まれて、骨格組織に大量に移行しうることを実証している。
【0197】
図11は、インビボ経口投与180の後の種々の組織へのマクロファージ遊走370によって酵母βグルカン粒子(YGP)230を送達する方法の好ましい態様の概略図である。酵母βグルカン粒子(YGP)230を含む組成物182を対象185に経口投与する(180)。酵母βグルカン粒子(YGP)230は小腸内層のM細胞355によって取り込まれ、上皮350を越えて移行し、腸マクロファージ360による食作用を受ける。YGPを含むマクロファージは、骨450、肺452、肝臓454、脳456および脾臓458を含む種々の臓器および組織へと遊走する(370)。経口投与の約72時間後に、YGPを貪食した脾臓マクロファージ364が脾臓458に観察された(概略図およびカラー蛍光顕微鏡写真の反転コントラストグレースケール画像の両方として示されている)。経口投与の約90時間後には、YGPを貪食した骨髄マクロファージ362が骨450中に観察された(概略図およびカラー蛍光顕微鏡写真の反転コントラストグレースケール画像の両方として示されている)。
【0198】
本発明をその詳細な説明とともに記述してきたが、前記の説明は本発明を例示することを意図していて、その範囲を限定することは意図しておらず、それは添付の特許請求の範囲によって規定される。その他の局面、利点および変更は添付の特許請求の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0199】
【図1】破骨細胞16の分化に関与するシグナル伝達機構の概略図10であり、ここで、RANKL(「NF-κBリガンドの受容体活性化因子)」12がその受容体であるRANK(「NF-κBの受容体活性化因子」)14を活性化することによって破骨細胞の分化を活性化するが、これは、OPG11がRANKLを封鎖して、骨芽細胞細胞表面に対するその結合およびその後の骨18に対する骨芽細胞作用を阻止することによって阻害される。
【図2】酵母細胞壁の横断面の概略図100であり、外側から内側の順に、外部細線維層110、外部マンノタンパク質層120、βグルカン層130、βグルカン層-キチン層140、内部マンノタンパク質層150、原形質膜160および細胞質170を示している。
【図3】図3Aは、YGP βグルカン粒子420の構造の概略図であり、β1,3グルカン細線維、キチンを含む出芽痕およびキチン細線維を示している。図3Bは、YGMP βグルカンマンナン粒子430の構造の概略図であり、β1,3グルカン細線維、キチンを含む出芽痕、マンナン細線維およびキチン細線維を示している。
【図4】本発明の1つの態様の概略図であり、捕捉ポリマー440を含むYGP粒子420にDNAなどのペイロード分子450を装入して、送達系YGP 460を形成させる工程を図示している。
【図5】強化緑色蛍光タンパク質をコードする発現ベクターであるpIRES-EGFP、カチオン性捕捉ポリマーPEI、およびカチオン性界面活性剤CTABを含むYGP粒子に曝露されたJ774細胞、例えば表示された細胞510のカラー蛍光顕微鏡写真の画像であり、粒子の取込みおよび強化緑色蛍光タンパク質の発現の証拠を示している。
【図6】図6Aおよび図6Bは、骨髄マクロファージのカラー蛍光顕微鏡写真の画像であり、YGP-FITC粒子520の取込み(図6A)を示すとともに、図6BではYGP-FITC粒子530の取込みおよびマクロファージマーカーF4/80 540に特異的な染色を示している。
【図7】図7Aは、マウスRAW細胞のカラー蛍光顕微鏡写真の画像であり、緑色蛍光タンパク質(分散蛍光604)の発現を生じさせた構築物とともに装入されたテキサスレッド標識YCWP粒子606の取込みを示している。図7Bは、図7Aのコントラスト反転(陰画)グレースケール画像である。
【図8】図8Aおよび図8Bは、インビトロで偽トランスフェクションを受けた(図8A)、またはYGP:pIRES2DsRED2-OPGにより処理された(図8B)J774細胞のカラー蛍光顕微鏡写真の画像である。ヒトオステオプロテジェリンの発現は、表示された細胞610などのように、インビトロでYGP:pIRES2DsRED2-OPG製剤により処理されたJ774細胞の50%超における免疫反応性として検出可能であった。抗ヒトオステオプロテジェリン抗体は組換えヒトオステオプロテジェリンを選択的に同定し、内因性マウスオステオプロテジェリンとは交差反応しなかった。これらの結果は、YGP:pIRES2DsRED2-OPG製剤に、ヒトオステオプロテジェリンをコードするDNAを効率的に送達し、結果としてマウスJ774マクロファージ細胞におけるヒトオステオプロテジェリンの一過性発現をもたらす効果があることを実証している。
【図9】代表的なヒトオステオプロテジェリンELISA標準曲線のグラフ表示である。
【図10】図10A〜図10Cは、4日前に蛍光標識YGP粒子のIP注射を受けたマウス由来の大腿骨の組織切片の画像を示しており、これは蛍光標識粒子750が骨に分布したことを示している。図10Aは透過光の下で観察した骨切片を示している。図10Bは、蛍光顕微鏡検査によって観察した図10Aと同じ視野を示しており、蛍光標識粒子750を有するいくつかの細胞(矢印)を示している。図10Cは、図10B中に長方形で表わされた視野を含む、より高倍率の画像である。
【図11】インビボ経口投与180後の骨450へのマクロファージ遊走370によって酵母βグルカン粒子(YGP)230を送達する方法の好ましい態様の概略図である。酵母βグルカン粒子(YGP)230を含む組成物182を対象185に経口投与する(180)。酵母βグルカン粒子(YGP)230は小腸内層のM細胞355によって取り込まれ、上皮350を越えて移行し、腸マクロファージ360による食作用を受ける。YGPを含むマクロファージは、骨450を含む種々の臓器および組織へと遊走する(370)。経口投与の約90時間後に、YGPを貪食した骨髄マクロファージ362が骨450中に観察された(概略図およびカラー蛍光顕微鏡写真の反転コントラストグレースケール画像の両方に示されている)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリゴヌクレオチド、アンチセンス構築物、siRNA、酵素RNA、mRNA、組換えDNA構築物、線状DNA断片、阻害された線状DNA断片およびそれらの混合物からなる群より選択される核酸を含むペイロード(payload)分子;
キトサン、ポリエチレンイミン、ポリ-L-リジン、アルギン酸塩、キサンタン、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドおよびそれらの混合物からなる群より選択されるペイロード捕捉分子;ならびに
酵母グルカン粒子または酵母グルカン-マンナン粒子より選択される担体
を含む、組成物。
【請求項2】
組換えDNA構築物が、オステオプロテジェリンまたはその機能的等価物をコードするオープンリーディングフレームと機能的に連結された制御エレメントを含む発現ベクターである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
ペイロード分子がpIRES2DsRED2-hOPGである、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
発現ベクターがSEQ ID NO:1のポリヌクレオチドを含む、請求項2記載の組成物。
【請求項5】
発現ベクターが、SEQ ID NO:2のポリペプチド、本質的にSEQ ID NO:2の28〜124位の残基からなるポリペプチド、本質的にSEQ ID NO:2の124〜185位の残基からなるポリペプチド、および本質的にSEQ ID NO:2の28〜185位の残基からなるポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドをコードする、請求項2記載の組成物。
【請求項6】
担体が、内部空間を規定しかつ約6〜約90重量パーセントのβグルカンを含む、抽出酵母細胞壁である、請求項1〜5のいずれか一項記載の組成物。
【請求項7】
治療を必要とする対象における低骨密度を特徴とする病状を治療する方法であって、経口、口腔内、舌下、肺または経粘膜用の剤形である、請求項1〜6のいずれか一項記載の組成物および薬学的に許容される添加剤を提供する段階を含む方法。
【請求項8】
組成物の有効量を対象に投与する段階をさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
病状が骨粗鬆症、人工関節周囲(periprosthetic)骨溶解、廃用性骨減少症、動脈石灰化、または、腫瘍転移、骨癌性疼痛、若年性パジェット病、ゴーシェ病、HIVの抗ウイルス治療、関節炎、サラセミアもしくは炎症性腸疾患に伴う骨溶解である、請求項7記載の方法。
【請求項10】
細胞におけるオステオプロテジェリンの発現を増加させる方法であって、以下の段階を含む方法:
請求項1〜6のいずれか一項記載の組成物を提供する段階;および
細胞を該組成物と接触させる段階。
【請求項11】
細胞がマクロファージ、破骨細胞、破骨細胞前駆細胞、パイエル板のM細胞、単球、好中球、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、クッパー細胞、肺胞食細胞、腹腔マクロファージ、乳マクロファージ、ミクログリア細胞、好酸球、顆粒球、メサンギウム食細胞または滑膜A細胞である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
オステオプロテジェリンを細胞において発現させる段階をさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項13】
オステオプロテジェリンを細胞から分泌させる段階をさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
分泌されたオステオプロテジェリンが、細胞外液中に少なくとも2pmol/lの濃度で存在する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
低骨密度を特徴とする病状の治療用の医薬の製造のための、請求項1〜6のいずれか一項記載の組成物の使用。
【請求項16】
骨粗鬆症、人工関節周囲骨溶解、廃用性骨減少症、動脈石灰化、または、腫瘍転移、骨癌性疼痛、若年性パジェット病、ゴーシェ病、HIVの抗ウイルス治療、関節炎、サラセミアもしくは炎症性腸疾患に伴う骨溶解の治療用の医薬の製造のための、請求項1〜6のいずれか一項記載の組成物の使用。
【請求項17】
細胞におけるオステオプロテジェリンの発現を増加させる方法であって、以下の段階を含む方法:
内部空間を規定しかつ約6〜約90重量パーセントのβグルカンを含む抽出酵母細胞壁、ペイロード捕捉分子、およびペイロード分子を含む送達系の有効量を提供する段階であって、ペイロード分子が、オステオプロテジェリンまたはその機能的等価物をコードするオープンリーディングフレームと機能的に連結された制御エレメントを含む発現ベクターである、段階;
細胞を送達系と接触させる段階;ならびに
オステオプロテジェリンを発現させる段階。
【請求項18】
接触段階がインビトロで行われる、請求項17記載の方法。
【請求項19】
ペイロード分子がpIRES2DsRED2-hOPGである、請求項17記載の方法。
【請求項20】
発現ベクターがSEQ ID NO:1のポリヌクレオチドを含む、請求項17記載の方法。
【請求項21】
発現ベクターが、SEQ ID NO:2のポリペプチド、本質的にSEQ ID NO:2の28〜124位の残基からなるポリペプチド、本質的にSEQ ID NO:2の124〜185位の残基からなるポリペプチド、および本質的にSEQ ID NO:2の28〜185位の残基からなるポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドをコードする、請求項17記載の方法。
【請求項22】
細胞がマクロファージ、破骨細胞、破骨細胞前駆細胞、パイエル板のM細胞、単球、好中球、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、クッパー細胞、肺胞食細胞、腹腔マクロファージ、乳マクロファージ、ミクログリア細胞、好酸球、顆粒球、メサンギウム食細胞または滑膜A細胞である、請求項17記載の方法。
【請求項23】
治療を必要とする対象におけるオステオプロテジェリン反応性の病状を治療する方法であって、経口、口腔内、舌下、肺または経粘膜用の剤形である、請求項1〜6のいずれか一項記載の組成物および薬学的に許容される添加剤を提供する段階を含む方法。
【請求項24】
組成物の有効量を対象に投与する段階をさらに含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
ペイロード分子がpIRES2DsRED2-hOPGである、請求項23記載の方法。
【請求項26】
発現ベクターがSEQ ID NO:1のポリヌクレオチドを含む、請求項23記載の方法。
【請求項27】
発現ベクターが、SEQ ID NO:2のポリペプチド、本質的にSEQ ID NO:2の28〜124位の残基からなるポリペプチド、本質的にSEQ ID NO:2の124〜185位の残基からなるポリペプチド、および本質的にSEQ ID NO:2の28〜185位の残基からなるポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドをコードする、請求項23記載の方法。
【請求項28】
病状が骨粗鬆症、人工関節周囲骨溶解、廃用性骨減少症、動脈石灰化、または、腫瘍転移、骨癌性疼痛、若年性パジェット病、ゴーシェ病、HIVの抗ウイルス治療、関節炎、サラセミアもしくは炎症性腸疾患に伴う骨溶解である、請求項23記載の方法。
【請求項29】
オステオプロテジェリン送達系を作製する方法であって、以下の段階を含む方法:
オリゴヌクレオチド、アンチセンス構築物、siRNA、酵素RNA、mRNA、組換えDNA構築物、線状DNA断片、阻害された線状DNA断片およびそれらの混合物からなる群より選択される核酸を含むペイロード分子を、キトサン、ポリエチレンイミン、ポリ-L-リジン、アルギン酸塩、キサンタン、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドおよびそれらの混合物からなる群より選択されるペイロード捕捉分子;ならびに酵母グルカン粒子または酵母グルカン-マンナン粒子より選択される担体と接触させる段階。
【請求項30】
組換えDNA構築物が、オステオプロテジェリンまたはその機能的等価物をコードするオープンリーディングフレームと機能的に連結された制御エレメントを含む発現ベクターである、請求項29記載の方法。
【請求項31】
ペイロード分子がpIRES2DsRED2-hOPGである、請求項29記載の方法。
【請求項32】
発現ベクターがSEQ ID NO:1のポリヌクレオチドを含む、請求項29記載の方法。
【請求項33】
発現ベクターが、SEQ ID NO:2のポリペプチド、本質的にSEQ ID NO:2の28〜124位の残基からなるポリペプチド、本質的にSEQ ID NO:2の124〜185位の残基からなるポリペプチド、および本質的にSEQ ID NO:2の28〜185位の残基からなるポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドをコードする、請求項29記載の方法。
【請求項1】
オリゴヌクレオチド、アンチセンス構築物、siRNA、酵素RNA、mRNA、組換えDNA構築物、線状DNA断片、阻害された線状DNA断片およびそれらの混合物からなる群より選択される核酸を含むペイロード(payload)分子;
キトサン、ポリエチレンイミン、ポリ-L-リジン、アルギン酸塩、キサンタン、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドおよびそれらの混合物からなる群より選択されるペイロード捕捉分子;ならびに
酵母グルカン粒子または酵母グルカン-マンナン粒子より選択される担体
を含む、組成物。
【請求項2】
組換えDNA構築物が、オステオプロテジェリンまたはその機能的等価物をコードするオープンリーディングフレームと機能的に連結された制御エレメントを含む発現ベクターである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
ペイロード分子がpIRES2DsRED2-hOPGである、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
発現ベクターがSEQ ID NO:1のポリヌクレオチドを含む、請求項2記載の組成物。
【請求項5】
発現ベクターが、SEQ ID NO:2のポリペプチド、本質的にSEQ ID NO:2の28〜124位の残基からなるポリペプチド、本質的にSEQ ID NO:2の124〜185位の残基からなるポリペプチド、および本質的にSEQ ID NO:2の28〜185位の残基からなるポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドをコードする、請求項2記載の組成物。
【請求項6】
担体が、内部空間を規定しかつ約6〜約90重量パーセントのβグルカンを含む、抽出酵母細胞壁である、請求項1〜5のいずれか一項記載の組成物。
【請求項7】
治療を必要とする対象における低骨密度を特徴とする病状を治療する方法であって、経口、口腔内、舌下、肺または経粘膜用の剤形である、請求項1〜6のいずれか一項記載の組成物および薬学的に許容される添加剤を提供する段階を含む方法。
【請求項8】
組成物の有効量を対象に投与する段階をさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
病状が骨粗鬆症、人工関節周囲(periprosthetic)骨溶解、廃用性骨減少症、動脈石灰化、または、腫瘍転移、骨癌性疼痛、若年性パジェット病、ゴーシェ病、HIVの抗ウイルス治療、関節炎、サラセミアもしくは炎症性腸疾患に伴う骨溶解である、請求項7記載の方法。
【請求項10】
細胞におけるオステオプロテジェリンの発現を増加させる方法であって、以下の段階を含む方法:
請求項1〜6のいずれか一項記載の組成物を提供する段階;および
細胞を該組成物と接触させる段階。
【請求項11】
細胞がマクロファージ、破骨細胞、破骨細胞前駆細胞、パイエル板のM細胞、単球、好中球、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、クッパー細胞、肺胞食細胞、腹腔マクロファージ、乳マクロファージ、ミクログリア細胞、好酸球、顆粒球、メサンギウム食細胞または滑膜A細胞である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
オステオプロテジェリンを細胞において発現させる段階をさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項13】
オステオプロテジェリンを細胞から分泌させる段階をさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
分泌されたオステオプロテジェリンが、細胞外液中に少なくとも2pmol/lの濃度で存在する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
低骨密度を特徴とする病状の治療用の医薬の製造のための、請求項1〜6のいずれか一項記載の組成物の使用。
【請求項16】
骨粗鬆症、人工関節周囲骨溶解、廃用性骨減少症、動脈石灰化、または、腫瘍転移、骨癌性疼痛、若年性パジェット病、ゴーシェ病、HIVの抗ウイルス治療、関節炎、サラセミアもしくは炎症性腸疾患に伴う骨溶解の治療用の医薬の製造のための、請求項1〜6のいずれか一項記載の組成物の使用。
【請求項17】
細胞におけるオステオプロテジェリンの発現を増加させる方法であって、以下の段階を含む方法:
内部空間を規定しかつ約6〜約90重量パーセントのβグルカンを含む抽出酵母細胞壁、ペイロード捕捉分子、およびペイロード分子を含む送達系の有効量を提供する段階であって、ペイロード分子が、オステオプロテジェリンまたはその機能的等価物をコードするオープンリーディングフレームと機能的に連結された制御エレメントを含む発現ベクターである、段階;
細胞を送達系と接触させる段階;ならびに
オステオプロテジェリンを発現させる段階。
【請求項18】
接触段階がインビトロで行われる、請求項17記載の方法。
【請求項19】
ペイロード分子がpIRES2DsRED2-hOPGである、請求項17記載の方法。
【請求項20】
発現ベクターがSEQ ID NO:1のポリヌクレオチドを含む、請求項17記載の方法。
【請求項21】
発現ベクターが、SEQ ID NO:2のポリペプチド、本質的にSEQ ID NO:2の28〜124位の残基からなるポリペプチド、本質的にSEQ ID NO:2の124〜185位の残基からなるポリペプチド、および本質的にSEQ ID NO:2の28〜185位の残基からなるポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドをコードする、請求項17記載の方法。
【請求項22】
細胞がマクロファージ、破骨細胞、破骨細胞前駆細胞、パイエル板のM細胞、単球、好中球、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、クッパー細胞、肺胞食細胞、腹腔マクロファージ、乳マクロファージ、ミクログリア細胞、好酸球、顆粒球、メサンギウム食細胞または滑膜A細胞である、請求項17記載の方法。
【請求項23】
治療を必要とする対象におけるオステオプロテジェリン反応性の病状を治療する方法であって、経口、口腔内、舌下、肺または経粘膜用の剤形である、請求項1〜6のいずれか一項記載の組成物および薬学的に許容される添加剤を提供する段階を含む方法。
【請求項24】
組成物の有効量を対象に投与する段階をさらに含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
ペイロード分子がpIRES2DsRED2-hOPGである、請求項23記載の方法。
【請求項26】
発現ベクターがSEQ ID NO:1のポリヌクレオチドを含む、請求項23記載の方法。
【請求項27】
発現ベクターが、SEQ ID NO:2のポリペプチド、本質的にSEQ ID NO:2の28〜124位の残基からなるポリペプチド、本質的にSEQ ID NO:2の124〜185位の残基からなるポリペプチド、および本質的にSEQ ID NO:2の28〜185位の残基からなるポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドをコードする、請求項23記載の方法。
【請求項28】
病状が骨粗鬆症、人工関節周囲骨溶解、廃用性骨減少症、動脈石灰化、または、腫瘍転移、骨癌性疼痛、若年性パジェット病、ゴーシェ病、HIVの抗ウイルス治療、関節炎、サラセミアもしくは炎症性腸疾患に伴う骨溶解である、請求項23記載の方法。
【請求項29】
オステオプロテジェリン送達系を作製する方法であって、以下の段階を含む方法:
オリゴヌクレオチド、アンチセンス構築物、siRNA、酵素RNA、mRNA、組換えDNA構築物、線状DNA断片、阻害された線状DNA断片およびそれらの混合物からなる群より選択される核酸を含むペイロード分子を、キトサン、ポリエチレンイミン、ポリ-L-リジン、アルギン酸塩、キサンタン、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドおよびそれらの混合物からなる群より選択されるペイロード捕捉分子;ならびに酵母グルカン粒子または酵母グルカン-マンナン粒子より選択される担体と接触させる段階。
【請求項30】
組換えDNA構築物が、オステオプロテジェリンまたはその機能的等価物をコードするオープンリーディングフレームと機能的に連結された制御エレメントを含む発現ベクターである、請求項29記載の方法。
【請求項31】
ペイロード分子がpIRES2DsRED2-hOPGである、請求項29記載の方法。
【請求項32】
発現ベクターがSEQ ID NO:1のポリヌクレオチドを含む、請求項29記載の方法。
【請求項33】
発現ベクターが、SEQ ID NO:2のポリペプチド、本質的にSEQ ID NO:2の28〜124位の残基からなるポリペプチド、本質的にSEQ ID NO:2の124〜185位の残基からなるポリペプチド、および本質的にSEQ ID NO:2の28〜185位の残基からなるポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドをコードする、請求項29記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2009−512731(P2009−512731A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537891(P2008−537891)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/041539
【国際公開番号】WO2007/050643
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(505231659)ユニバーシティ オブ マサチューセッツ (23)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/041539
【国際公開番号】WO2007/050643
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(505231659)ユニバーシティ オブ マサチューセッツ (23)
【Fターム(参考)】
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