説明

高コレステロール血症および高脂血症ならびにそれらに関連する疾患の予防および処置におけるトル様受容体の阻害剤の使用

本発明は、高コレステロール血症および/または高脂血症および/またはそれらに関連のある疾患を予防または処置するためのTLR阻害剤または医薬上許容し得るその誘導体の使用、所望により1以上の脂質低下組成物、コレステロール低下組成物、利尿薬、非ステロイド様抗炎症性化合物(NSAID)、抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、TLRアゴニスト、TLRアンタゴニスト、ペプチド、タンパク質または遺伝子治療ベクターまたはその組合せ物と組み合わせての使用を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2008年10月6日に提出された米国仮出願番号第61/102974号からの優先権主張の利益を主張するもので、この開示内容は本明細書に出典明示により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
本発明は、疾患または障害を予防または処置するためのトル様受容体シグナル伝達経路を阻害する化合物および医薬組成物の使用に関する。本発明は、さらに高コレステロール血症および高脂血症ならびにそれらに関連する疾患の処置にも関する。
【0003】
関連技術の要約
血中のその不溶性から、コレステロールおよび脂質は、リポ蛋白質において、循環系にて輸送される。リポ蛋白質中のコレステロールおよび脂質は、循環系を通じて組織内に蓄積され得る。循環系における高濃度のコレステロール(高コレステロール血症)および/または脂質(高脂血症)は、多くの疾患と関連することが知られる症状であり、該疾患には冠状動脈性心臓病、動脈硬化、アテロ−ム性動脈硬化症、卒中、末梢血管疾患、糖尿および高血圧が挙げられるが、これらに限定するものではない。血中の低比重リポ蛋白脂質および/または低比重リポ蛋白コレステロール濃度を低下させることは、高いコレステロールおよび/または脂質の血液濃度と関連がある疾患を防止するために有効であると確立されてきた。さらに、血中の低比重リポ蛋白脂質濃度および/または低比重リポ蛋白コレステロール濃度と関連して、高比重リポ蛋白脂質および/または高比重リポ蛋白コレステロール濃度の濃度を増加させることは、コレステロールおよび/または脂質の高い血液濃度に関連のある疾患を防止するために有効であることも確立されている。
【0004】
トル様受容体(TLR)は免疫系の多くの細胞に存在し、先天性免疫応答に関与することが判っている(Hornung, V. et al., (2002) J. Immunol. 168:4531-4537)。TLRは、哺乳類が外来分子に対する免疫応答を認識かつ開始させる重要な手段であって、先天的および受動免疫応答を関連づける手段もまた提供する(Akira, S. et al. (2001) Nature Immunol. 2:675-680; Medzhitov, R. (2001) Nature Rev. Immunol. 1:135-145)。哺乳類において、このファミリーは、TLR1からTLR11と呼ばれる11種のタンパク質から構成され、それらは、細菌、真菌類、寄生虫、およびウイルスからの病原体関連分子パターン(PAMP)を認識し、また多くの転写因子により媒介される免疫応答を誘導することが知られている(Poltorak, A. et al. (1998) Science 282:2085-2088; Underhill, D.M., et al. (1999) Nature 401:811-815; Hayashi, F. et al. (2001) Nature 410:1099-1103; Zhang, D. et al. (2004) Science 303:1522-1526; Meier, A. et al. (2003) Cell. Microbiol. 5:561-570; Campos, M.A. et al. (2001) J. Immunol. 167: 416-423; Hoebe, K. et al. (2003) Nature 424: 743-748; Lund, J. (2003) J. Exp. Med. 198:513-520; Heil, F. et al. (2004) Science 303:1526-1529; Diebold, S.S., et al. (2004) Science 303:1529-1531; Hornung, V. et al. (2004) J. Immunol. 173:5935-5943)。TLRは、重要な手段であることが知られており、これにより哺乳類は、外来分子に対する免疫応答を認識かつ開始し、また先天的および受動免疫応答を関連づける手段を提供する(Akira, S. et al. (2001) Nature Immunol. 2:675-680; Medzhitov, R. (2001) Nature Rev. Immunol. 1:135-145)。TLRは、哺乳類が外来分子に対する免疫応答を認識かつ開始させる重要な手段であることが知られており、先天的および受動免疫応答を関連づける手段もまた提供すると認識されている。
【0005】
いくつかのTLRは細胞の表面上にあり、細胞外病原体に対する応答を検出および開始する、その他のTLRは細胞の内側にあり、細胞内病原体に対する応答を検出および開始する。表1は、代表的なTLR、既知のアゴニスト、およびTLRを含有することが知られる細胞型を提供する(Diebold, S.S. et al. (2004) Science 303:1529-1531; Liew, F. et al. (2005) Nature 5:446-458; Hemmi H et al. (2002) Nat. Immunol. 3:196-200; Jurk M et al. (2002) Nat. Immunol. 3:499; Lee J et al. (2003) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100:6646-6651); (Alexopoulou, L. (2001) Nature 413:732-738)。
【0006】
表1:
【表1】


【0007】
TLRの選択的局在化およびそこから生じるシグナル伝達により、免疫反応へのそれらの役割へのいくつかの洞察が提供される。この免疫反応は、応答に関与する細胞のサブセットに基づく先天的応答および獲得応答の双方に関連する。例えば、遅延型過敏症および細胞障害性Tリンパ球(CTL)の活性化などの古典的細胞媒介機能に関与するTヘルパー(Th)細胞は、Th1細胞である。この応答は、抗原に対する身体の先天的反応であり(例えば、ウイルス感染、細胞内病原体、および腫瘍細胞)、そしてIFN−γの分泌およびCTLの同時活性化をもたらす。
【0008】
炎症性応答を制御する際に、それらの関与の結果として、TLRの活性化は、自己免疫性、感染疾患および炎症を含む多くの疾患の病原論において影響を及ぼすことが知られている(Papadimitraki et al. (2007) J. Autoimmun. 29: 310-318; Sun et al. (2007) Inflam. Allergy Drug Targets 6:223-235; Diebold (2008) Adv. Drug Deliv. Rev. 60:813-823; Cook, D.N. et al. (2004) Nature Immunol. 5:975-979; Tse and Horner (2008) Semin. Immunopathol. 30:53-62; Tobias & Curtiss (2008) Semin. Immunopathol. 30:23-27; Ropert et al. (2008) Semin. Immunopathol. 30:41-51; Lee et al. (2008) Semin. Immunopathol. 30:3-9; Gao et al. (2008) Semin. Immunopathol. 30:29-40; Vijay-Kumar et al. (2008) Semin. Immunopathol. 30:11-21)。炎症におけるその役割の結果として、TLR発現および/または活性の下流調節が、疾患介入のための有用な手段を提供できると認識される。
【0009】
現在まで、TLR活性を選択的に阻害することを目的とする研究方法には、低分子(例えば、クロロキンおよびヒドロキシクロロキン)(例えば、WO 2005/007672およびKrieg, A. M. (2002) Annu. Rev. Immunol. 20:709を参照されたい)、抗体(例えば、Duffy, K. et al. (2007) Cell Immunol. 248:103-114)、触媒性RNAi技術(例えば、低分子の阻害性RNA)、シクロヘキセン誘導体(Il et al. (2006) Mol. Pharmcol. 69:1288-1295)、脂質誘導体(Akira et al. (2005) Circulation 114:270-274, oligonucleotides containing poly-G sequences(Pawar et al. (2007) J. Am. Soc. Nephrol. 18:1721-1731)およびメチル化または修飾されたオリゴヌクレオチドによる競合阻害(例えば、Barrat and Coffman (2008) Immunol. Rev. 223:271-283を参照されたい) が挙げられる。TLR阻害剤を開示するこれらの文献の一説は参照により具体的に組み込まれる。
【0010】
TLR媒介性の炎症応答を阻害するその能力の結果として、TLRアンタゴニストは、特定疾患の処置および/または予防のための有力な治療方法として現在研究されている。しかし、血液コレステロール濃度および/または血液脂質濃度および/またはそれらの関連疾患を制御する際のTLRの役割は、これまでに知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の概要
驚くべきことに、本出願人は、TLRシグナル伝達経路の阻害により、上昇した血液コレステロールおよび/または血液脂質を有する哺乳類における血液のコレステロール濃度および/または血液の脂質濃度を低下できること、ならびに/またはHDL−CとLDL−Cとの比率を増加できることを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
即ち、第一の局面において、本発明は、TLRシグナル伝達を阻害することにより上昇した血液コレステロールおよび/または血液脂質を有する哺乳類における血液コレステロール濃度および/または血液脂質濃度を低下するための方法を提供する。特定の好ましい実施形態において、TLRシグナル伝達は、1以上のTLRまたはTLRシグナル伝達経路における下流タンパク質、例えば骨髄分化マーカー88(MyD88)、IL−1R−関連キナーゼ(IRAK)、インターフェロン制御因子(IRF)、TNF−受容体関連因子(TRAF)、トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)-活性化キナーゼ1、IκBキナーゼ、IκB、およびNF-κBを発現または活性を阻害することにより、阻害される。即ち、ある実施態様において、TLRシグナル伝達阻害は、上昇した血液コレステロールおよび/または血液脂質を有する哺乳類に、TLRアンタゴニスト化合物を投与することにより達成される。これらのTLRアンタゴニスト化合物または組成物のいくつかは次のものである:低分子物質、例えばクロロキンまたはヒドロキシクロロキン;抗体;シクロヘキセン誘導体;脂質誘導体;2つのトリプレット配列、”CCT”トリプレットおよび”GGG”トリプレットを含む合成オリゴヌクレオチド(ここで、該”CCT”トリプレットは近接であると考えられ、該”GGG”トリプレットは遠位であると考られる);”GGG”および/または”GGGG”および/または”GC”配列を含有する領域を含む合成オリゴヌクレオチド(ここで複数のかかる配列が存在してもよい);メチル化された合成オリゴヌクレオチド;または免疫刺激モチーフに隣接する配列および/または修飾がなければ免疫刺激性であるオリゴヌクレオチドモチーフにおいて1以上の化学的修飾を有し得る合成の免疫阻害性オリゴヌクレオチド。ある実施形態において、TLRシグナル伝達は、遺伝子発現ブロッキング技術、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド、デコイRNA、リボゾーム、触媒性RNAi技術、siRNAまたはmiRNAを用いて、1以上のTLRまたはTLRシグナル伝達経路における下流タンパク質、例えばMyD88、IRAK、IRF、TRAF、TGFβ、IκBキナーゼ、IκBおよびNF−κBの発現を阻害することにより阻害される。
【0013】
ある好ましい実施形態において、上昇した血液コレステロールおよび/または血液脂質を有する哺乳類における血液コレステロール濃度および/または血液脂質濃度を低下させる方法は、構造5'-N-N321CGN123-N-3’(式中、CGはオリゴヌクレオチドモチーフであり、Cはシトシンまたはピリミジンヌクレオチド誘導体であり、およびGはグアノシンまたはプリンヌクレオチド誘導体である;N-N3およびN1-N3は、各存在にて独立してヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体である;NおよびNは、各存在にて独立してヌクレオチド、ヌクレオチド誘導体または非ヌクレオチド連結である;但し、少なくとも一つのN1-Nおよび/またはN-Nおよび/またはCおよび/またはGはヌクレオチド誘導体であって、ここで該オリゴヌクレオチドモチーフは該ヌクレオチド誘導体がなければ免疫刺激性である;およびmは、0〜約30の整数である)を有するTLRアンタゴニスト組成物を、哺乳類に投与することを含む。
【0014】
さらなる実施形態において、本発明は、構造5'-N-N321CGN123−N-3'(式中、CGはオリゴヌクレオチドモチーフであり、Cはシトシンまたはピリミジンヌクレオチド誘導体であり、Gはグアノシンまたはプリンヌクレオチド誘導体であり;N1−N3およびN-Nは、各存在にて独立してヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体である;NおよびNは各存在にて独立してヌクレオチド、ヌクレオチド誘導体または非ヌクレオチド連結である;但し、少なくとも一つのN1−N3および/またはN1-N3および/またはCおよび/またはGは、ヌクレオチド誘導体であって、さらに該化合物は3つ未満の連続したグアノシンヌクレオチドを含み得る、ここで該オリゴヌクレオチドモチーフは、ヌクレオチド誘導体または非ヌクレオチド連結がなければ免疫刺激性である;ならびにmは0〜約30の整数である)を有するTLRアンタゴニスト組成物を哺乳類に投与することを含む、上昇した血液コレステロールおよび/または血液脂質を有する哺乳類において血液コレステロール濃度および/または血液脂質濃度を低下させる方法を提供する。
【0015】
別の実施形態において、本発明は、1以上のTLRアンタゴニスト化合物または組成物および医薬上許容し得る担体を含む医薬組成物の投与により、上昇した血液コレステロールおよび/または血液脂質を有する哺乳類において血液コレステロール濃度および/または血液脂質濃度を低下させる方法を提供する。
【0016】
ある好ましい実施形態において、上昇した血液コレステロールおよび/または血液脂質を有する哺乳類における血液コレステロール濃度および/または血液脂質濃度を低下することは、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR7、TLR8およびTLR9から選択される1以上のTLRアンタゴニスト化合物を投与することを含む。
【0017】
第二の態様において、本発明は、哺乳類において高い血液脂質濃度および/または高い血液コレステロール濃度と関連のある疾患を治療的に処置する方法を提供するものであり、かかる方法は哺乳類におけるTLRシグナル伝達を阻害することを含む。ある実施形態において、TLRシグナル伝達は、医薬上有効量で本発明の1以上のTLRアンタゴニスト化合物を哺乳類に投与することにより阻害される。ある実施態様において、TLRシグナル伝達は、医薬上有効量にて1以上のTLRまたはTLRシグナル伝達経路における別のタンパク質の発現を阻害することにより阻害される。本発明のこの態様に関する特定の好ましい実施形態において、該疾患は、高コレステロール血症、高脂血症、冠状動脈性心臓病、動脈硬化、アテロ−ム性動脈硬化症、卒中、末梢血管疾患、糖尿または高血圧である。
【0018】
第三の態様において、本発明は、上昇した血液コレステロールおよび/または血液脂質を有する哺乳類における高い血液脂質濃度および/または血液コレステロール濃度に関連する疾患を予防するための方法を提供するものであって、かかる方法は、哺乳類におけるTLRシグナル伝達を阻害することを含む。ある実施形態において、TLRシグナル伝達は、医薬上有効量にて本発明の1以上のTLRアンタゴニスト化合物を哺乳類に投与することにより阻害される。ある実施態様において、TLRシグナル伝達は、1以上のTLRまたはTLRシグナル伝達経路における別のタンパク質の発現を阻害することによって阻害される。特定の好ましい実施態様において、該疾患は、高コレステロール血症、高脂血症、冠状動脈性心臓病、動脈硬化、アテロ−ム性動脈硬化症、卒中、末梢血管疾患、糖尿または高血圧である。
【0019】
ある実施形態において、本発明の方法は、1以上のコレステロール低下組成物、利尿薬、非ステロイド様抗炎症性化合物(NSAID)、スタチン、抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、TLRアゴニスト、TLRアンタゴニスト、ペプチド、タンパク質または遺伝子治療ベクターまたはその組合せ物を哺乳類に投与することをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1a】図1aは、実施例2に従って処置した動物における血清総コレステロールを示す。要するに、動物を西洋食で飼育し、TLRアンタゴニスト(5mg/kgまたは20mg/kg)、PBSまたはLipitor(登録商標)(20mg/kg)を12週間投与した。血液サンプルを、12週の試験期間にわたって採取し、血清総コレステロールを決定するために使用した。これらのデータは、TLRアンタゴニストの投与により、インビボでの投与後の血清総コレステロールの上昇を阻害できることを示す。
【図1b】図1bは、実施例2に従って処置した動物における経時的な血清総コレステロールのパーセント変化を示したものである。要するに、動物を西洋食で飼育し、TLRアンタゴニスト(5mg/kgまたは20 mg/kg)、PBSまたはLipitor(登録商標)(20mg/kg)を12週間投与した。血液サンプルを、12週の試験期間にわたって採取し、血清総コレステロールを決定するために使用した。これらのデータは、TLRアンタゴニストが、インビボでの投与後の血清総コレステロールの上昇を阻害できることを示す。
【図2a】図2aは、実施例3に従って処置した動物における、血清総コレステロール、高比重リポ蛋白(HDL)、低比重リポ蛋白(LDL)、トリグリセリド(TG)、グルコースおよびHDL−コレステロールとLDL−コレステロール(HDL−C/LDL−C)との比率を示す。要するに、C57/BL/6匹のマウスを西洋食で飼育し、TLRアンタゴニスト(5mg/kgまたは20mg/kg)またはPBSを12週間投与した。血液サンプルを、12週間の試験期間にわたって採取し、血清総コレステロール、HDL、LDL、TGおよびグルコース濃度を決定するために使用した。これらのデータは、TLRアンタゴニストが、血清総コレステロール、LDLおよびTGにおける上昇を阻害し、インビボでの投与後の血液グルコース濃度を低下または維持できることを示す。
【図2b】図2bは、実施例3に従って処置した動物における、血清総コレステロール、高比重リポ蛋白(HDL)、低比重リポ蛋白(LDL)、トリグリセリド(TG)およびグルコースのパーセント変化を示す。
【図2c】図2cは、実施例3に従って処置した動物における、血清総コレステロール、高比重リポ蛋白(HDL)、低比重リポ蛋白(LDL)、トリグリセリド(TG)、グルコースおよびHDL−コレステロールとLDL−コレステロール(HDL−C/LDL−C)との比率を示す。要するに、ApoE欠損マウスを西洋食で飼育し、TLRアンタゴニスト(5mg/kgまたは20mg/kg)またはPBSを12週間投与した。血液サンプルを、12週間の試験期間にわたって採取し、血清総コレステロール、HDL、LDL、TGおよびグルコース濃度を決定するために使用した。これらのデータは、TLRアンタゴニストが、高コレステロール血症および/または高脂血症を発症させる素因を持つ哺乳類へのインビボ投与後に、血清総コレステロール、LDL、TGの上昇を阻害できるか、または血液グルコース濃度を維持または低下できることを示している。
【図2d】図2dは、実施例3に従って処置した動物における血清総コレステロール、高比重リポ蛋白質(HDL)、低比重リポ蛋白質(LDL)、トリグリセリド(TG)およびグルコースのパーセント変化を示す。
【図3a】図3aは、実施例3に従って処置された動物の総体重を示す。要するに、C57/BL/6のマウスを西洋食で飼育し、TLRアンタゴニスト(5mg/kgまたは20mg/kg)またはPBSを12週間投与した。体重を、12週間の試験期間にわたり測定した。これらのデータは、TLRアンタゴニストが、高脂肪食で飼育された哺乳類へのインビボ投与後の総体重の上昇を阻害できることを示す。
【図3b】図3bは、実施例3に従って処置した動物の総体重を示す。要するに、ApoE欠損マウスを西洋食で飼育し、TLRアンタゴニスト(5mg/kgまたは20mg/kg)またはPBSを12週間投与した。体重を、12週間の試験期間にわたり測定した。これらのデータは、TLRアンタゴニストが、高コレステロール血症および/または高リポ蛋白血症を発症させる素因を持つ高脂肪食で飼育された哺乳類へのインビボ投与後の総体重中の上昇を阻害できることを示す。
【0021】
好ましい実施形態の詳細な説明
本発明は、高コレステロール血症および/または高脂血症ならびに/またはそれらと関連する疾患を阻害および/または抑制するためのTLRアンタゴニストの治療用途に関する。本出願人は、驚くべきことに、TLRシグナル伝達経路の阻害上昇した血液コレステロールおよび/または血液脂質を有する哺乳類における血液コレステロール濃度および/または血液脂質濃度を低下することができることを発見した。
【0022】
従って、第一の態様において、本発明は、TLRシグナル伝達を阻害することにより、上昇した血液コレステロール濃度および/または血液脂質濃度を有する哺乳類において、血液コレステロール濃度および/または血液脂質濃度を低下するための方法を提供する。特定の好ましい実施形態において、TLRシグナル伝達は、1以上のTLRまたはTLRシグナル伝達経路における下流タンパク質、例えばMyD88、IRAK、IRF、TRAF、TGFβ、IκBキナーゼ、IκBおよびNF−κBを発現または活性を阻害することにより阻害される。従って、ある実施態様において、TLRシグナル伝達の阻害は、上昇した血液コレステロールおよび/または血液脂質を有する哺乳類に、TLRアンタゴニスト化合物を投与することにより達成される。いくつかのこれらのTLRアンタゴニスト化合物または組成物とは、エンドソームの成熟を下流調節する低分子であって、例えばクロロキンまたはヒドロキシクロロキン;抗体;シクロヘキセン誘導体;脂質誘導体;2つのトリプレット配列”CCT”トリプレットおよび”GGG”トリプレットを含む合成オリゴヌクレオチド、ここで”CCT”トリプレットは近位と考えられ、”GGG”トリプレットは遠位と考えられる;”GGG”および/または”GGGG”および/または”GC”配列を含有する領域を含む合成オリゴヌクレオチド(ここで、複数のかかる配列が存在してもよい);メチル化された合成オリゴヌクレオチド;または免疫刺激モチーフに近接する配列および/または修飾がなければ免疫刺激性であるオリゴヌクレオチドモチーフ中に1以上の化学修飾を有し得る合成の免疫阻害性オリゴヌクレオチドであるが、これらに限定するものではない。ある実施形態において、TLRシグナル伝達は、遺伝子発現ブロッキング技術、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド、デコイRNA、リボゾーム、触媒性RNAi技術、siRNAまたはmiRNAを用いて、1以上のTLRまたはTLRシグナル伝達経路における下流タンパク質、例えばMyD88、IRAK、IRF、TRAF、TGFβ、IκBキナーゼ、IκB、および/またはNF−κBの発現を阻害することによって阻害される。TLR活性または発現が阻害される特定の実施形態において、該TLRはTLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR7、TLR8および/またはTLR9から選択される。
【0023】
さらに、本発明は、血液コレステロール濃度および/または血液脂質濃度の至適レベルを低下する活性を有するTLRアンタゴニスト化合物ならびにかかる化合物を製造および使用する方法を提供する。
【0024】
加えて、本発明のTLRシグナル伝達の阻害は、疾患を予防および/または処置するために、1以上の、脂質を低下する化合物または組成物、コレステロールを低下する化合物または組成物、利尿薬、非ステロイド様抗炎症性化合物(NSAID)、スタチン、抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、TLRアゴニスト、TLRアンタゴニスト、ペプチド、タンパク質または遺伝子治療ベクターまたはその組合せ物との組合せにおいて有用である。
【0025】
血液コレステロールおよび/または脂質濃度の増加の予防ならびに/または高い血液コレステロール濃度および/または高い血液脂質濃度の処置が必要である患者には、例えば心臓脈管事象を有するリスクのある患者が含まれる。
【0026】
「オリゴヌクレオチド」の用語は、一般的に、複数の結合したヌクレオシド単位を含むポリヌクレオシドを指す。そのようなオリゴヌクレオチドは、ゲノムDNAまたはcDNAを含めた現存する核酸源から得ることができるが、好ましくは合成方法により作成される。例示的態様において、ヌクレオシド単位の各々は、野生型オリゴヌクレオチドと比較してさまざまな化学修飾および置換基を包含してもよく、例えば修飾したヌクレオシド塩基および/または修飾した糖単位を含みうるが、これらに限定するものではない。化学修飾の例は当業者に公知であり、例えば、Uhlmann E et al. (1990) Chem. Rev. 90:543; "Protocols for Oligonucleotides and Analogs" Synthesis and Properties & Synthesis and Analytical Techniques, S. Agrawal, ed, Humana Press, Totowa, USA 1993; およびHunziker, J. et al. (1995) Mod. Syn. Methods 7:331-417; およびCrooke, S. et al. (1996) Ann.Rev. Pharm. Tox. 36:107-129に記載される。該ヌクレオシド残基は、公知の様々なヌクレオシド内結合のいずれかにより互いに連結できる。かかるヌクレオシド内結合は、限定しないが、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホネート、アルキルホスホノチオエート、ホスホトリエステル、ホスホロアミダート、シロキサン、カルボネート、カルボアルコキシ、アセトアミデート、カルバメート、モルホリノ、ボラノ、チオエーテル、架橋ホスホロアミダート、架橋メチレンホスホネート、架橋ホスホロチオエート、およびスルホン ヌクレオシド内結合を含む。「オリゴヌクレオチド」の用語は、また、1つ以上の立体特異的なヌクレオシド内結合(例えば(R)−または(S)−ホスホロチオエート、アルキルホスホネート、またはホスホトリエステル結合)を有するポリヌクレオシドを包含する。明細書中で用いる「オリゴヌクレオチド」および「ジヌクレオチド」の用語は、かかる結合がリン酸基を含むかどうかいずれにせよ、各々任意のそのようなヌクレオシド内結合を有するポリヌクレオシドおよびジヌクレオシドを含むことを明確に意図する。ある好ましい実施態様において、これらのヌクレオシド内結合は、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、またはホスホロジチオエート結合、あるいはその組み合わせであってもよい。
【0027】
「2’−置換」という用語は、一般的に、2’−置換または2’−O−置換ヌクレオシドを作成するために、ヌクレオシド中のペントース部分の2’位の水酸基が置換されたヌクレオシドを含む。特定の実施形態において、かかる置換は、1−6個の飽和または不飽和炭素原子を含有する低級ヒドロカルビル基、ハロゲン原子または6−10個の炭素原子を有するアリール基によりなされ、かかるヒドロカルビルまたはアリール基は非置換であってもまたは置換されていてもよく、例えばハロ、ヒドロキシ、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、アシル、アシルオキシ、アルコキシ、カルボキシル、カルボアルコキシまたはアミノ基により置換されていてもよいが、これに限定されるものではない。2'-O−置換ヌクレオシドの例には、2'-アミノ、2'-フルオロ、2'-アリル、2'-O−アルキルおよび2’−プロパルギルリボヌクレオシドまたはアラビノシド、2'-O−メチルリボヌクレオシドまたは2’−O−メチルアラビノシドおよび2'-O−メトキシエトキシリボヌクレオシドまたは2'-O−メトキシエトキシアラビノシドが含まれるが、これらに限定しない。
【0028】
用語「3’」という用語は、方向に於いて使用される場合、一般的に、同一のポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドにおけるもう一方の領域または位置からのポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド3'(下流)の領域または位置を示す。
【0029】
用語「5’」という用語は、方向に於いて使用される場合、一般的に、同一のポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドにおけるもう一方の領域または位置からのポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド5'(上流)の領域または位置を示す。
【0030】
用語「約」という用語は、正確な数が重大でないということを意味する。そのため、オリゴヌクレオチドにおけるヌクレオシド残基の数は重大でなく、1つまたは2つより少ないヌクレオシド残基、または1〜数個の追加のヌクレオシド残基を有するオリゴヌクレオチドは、上記の実施形態のそれぞれの同等物と考えられる。
【0031】
用語「アゴニスト」という用語は、一般的に、受容体へ結合し、反応を誘発し得る物質を指す。かかる応答は、該受容体により媒介される活性の増加でありうる。アゴニストは、しばしば天然発生の物質、例えばリガンドの作用を模倣する。
【0032】
用語「アンタゴニスト」という用語は、一般的に、受容体へ結合し得る物質を指すが、結合に対する生物学的応答を生じさせない。該アンタゴニストは、アゴニストにより媒介される応答を、遮断、阻害または減衰させることができ、かつ受容体への結合に対してアゴニストと競合し得る。かかるアンタゴニスト活性は、可逆的または不可逆的であってもよい。
【0033】
用語「アンチセンスオリゴヌクレオチド」とは、一般的に、選択された核酸配列に相補的であるDNAまたはRNAまたはその組合せの鎖を指す。かかる核酸配列は、メッセンジャーRNA(mRNA)の形態で存在し得る。動物または細胞中に導入された場合、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、それが相補的であるものに結合し、RNAの翻訳を低下させ得る。結合がおきれば、この核酸複合体は内生酵素により分解され得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、伝統的なアンチセンスオリゴヌクレオチド、短い干渉RNA(siRNA)、ミクロRNA(miRNA)およびリボザイムを包含するが、これに限定するものではない。本発明に従って有用であるアンチセンスオリゴヌクレオチドには、Kandimallaらの文献 (米国特許出願番号第12/510,469; 12/534,462; 12/534,476; 12/534,911;および12/537,354号;および米国仮出願第61/111,143; 61/111,148;および61/111,160号)が包含されるが、これに限定するものではない。
【0034】
用語「低分子」という用語は、一般的に、生物学的に活性であるが、ポリマーではない小さな有機化合物を指す。低分子は、天然に存在してもよく、または合成的に作成されてもよい。一般的には、低分子とは、タンパク質またはオリゴヌクレオチドを包含しない。低分子は、エンドソームの成熟を下流調節する化合物、例えばクロロキンおよびヒドロキシクロロキンを包含し得るが、これに限定するものではない。
【0035】
用語「生理学的に許容し得る」とは、一般的に、TLRアンタゴニスト化合物の有効性に干渉せず、細胞、細胞培養、組織、または有機体などの生物系に適合する原料を指す。好ましくは、かかる生物系は、哺乳類などの生きている有機体である。
【0036】
用語「医薬上許容し得る」とは、一般的に、不当な毒性がないヒトおよび動物における使用のために好適である組成物を指す。
【0037】
用語「担体」とは、一般的に、任意の賦形剤、希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、安定剤、可溶化剤、油、脂質、脂質含有ベシクル、ミクロスフェア、リポソームカプセル化、または製剤処方における使用のために当分野で周知の他の原料を包含する。担体、賦形剤、または希釈剤の特徴は、特定用途に対する投与経路に依存することは理解されよう。これらの原料を含有する医薬上許容し得る製剤の調製は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition, A. Gennaro, ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, 1990に記載される。
【0038】
用語「共投与」とは、一般的に、免疫反応を調節するために、少なくとも2つの異なる物質の十分に近接した時間での投与を指す。共投与とは、少なくとも2つの異なる物質を、任意の順序で、単回投与または個別の投与のいずれかでの、同時投与、ならびに7日までの時間的に隔てた順序を指す。
【0039】
用語「有効量」、「医薬上有効量」または「治療上有効量」とは、一般的に、所望の生物学的効果、例えば有益な結果に影響を及ぼすに十分な量を指す。従って、「有効量」または「十分量」または「医薬上有効量」または「治療上有効量」とは、それが投与される状況に依存するであろう。共投与される抗原に対する免疫応答を調節する組成物を投与するという状況において、有効量のTLRアンタゴニスト化合物および抗原とは、抗原が単独で投与されるとき得られる免疫応答と比較して、所望の調節を達成するに十分な量である。有効量を1以上の投与にて投与してもよい。
【0040】
用語「組み合わせ」とは、一般的に、患者における疾患または障害を処置する過程で、TLRアンタゴニスト化合物と、TLRアンタゴニスト化合物の免疫調節効果を減縮しない疾患または障害を処置するに有用な薬剤とを投与することを意味する。かかる組み合わせ処置はまた、TLRアンタゴニスト化合物および/または独立した薬剤の単回以上の投与を含んでもよい。TLRアンタゴニスト化合物および/または薬剤の投与は、同一または異なる経路をとることもできる。
【0041】
用語「個体」、「患者」、「対象」または「哺乳類」には、ヒトが含まれる。哺乳類は、一般的に、ヒト、非ヒト霊長類、ラット、マウス、ネコ、イヌ、ウマ、畜牛(cattle)、乳牛(cows)、ブタ、ヒツジ、およびウサギを含むが、これに限定しない。
【0042】
用語「ヌクレオシド」とは、一般的に、糖、通常はリボースまたはデオキシリボース、およびプリンまたはピリミジン塩基からなる化合物を指す。
【0043】
用語「ヌクレオチド」とは、一般的に、糖に付着するリン酸基を含むヌクレオシドを指す。
【0044】
明細書中で用いる、用語「ピリミジンヌクレオシド」とは、 ヌクレオシドの塩基構成要素がピリミジン塩基(例えば、シトシン(C)またはチミン(T)またはウラシル(U)など)である、ヌクレオシドを指す。同様に、用語「プリンヌクレオシド」とは、ヌクレオシドの塩基構成要素がプリン塩基(例えば、アデニン(A)またはグアニン(G))であるヌクレオシドを指す。
【0045】
用語「アナログ」または「誘導体」とは、互換的に用いることができ、一般的には修飾された塩基および/または糖を有する任意のプリンおよび/またはピリミジンヌクレオチドまたはヌクレオシドを指す。修飾された塩基は、グアニン、シトシン、アデニン、チミンまたはウラシルでない塩基である。修飾された糖は、オリゴヌクレオチドとして骨格に用いることができるリボースまたは2’デオキシリボースでない任意の糖である。
【0046】
用語「阻害する」または「抑制する」とは、一般的に、そうがなければ応答の誘起および/または刺激が起こるであろう応答における応答または質的差違の減少を指す。
【0047】
用語「非ヌクレオチドリンカー」とは、一般的に、リン含有結合を介する以外でオリゴヌクレオチドを結合するまたはオリゴヌクレオチドに結合されることができる任意の結合または部分を指す。好ましくは、かかるリンカーは、約2オングストローム〜約200オングストロームの長さである。
【0048】
用語「ヌクレオチド結合」とは、一般的に、リン含有結合を介して2つのヌクレオシドの3’および5’水酸基に直接接続する、直接の3’−5’結合を指す。
【0049】
用語「オリゴヌクレオチドモチーフ」とは、ジヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を意味する。「1以上の修飾(または具体的に引用された修飾)がなければ免疫刺激性であるオリゴヌクレオチドモチーフ」は、親オリゴヌクレオチドにおいて免疫刺激性であるが、誘導体オリゴヌクレオチドにおいて免疫促進性ではないオリゴヌクレオチドモチーフを意味しており、ここで該誘導体オリゴヌクレオチドとは該親オリゴヌクレオチドの1つまたは2つ以上の修飾により該親オリゴヌクレオチドから得られるものである。
【0050】
CpG、CpG、CpGおよびCpGという用語は、免疫促進性であって、かつシトシンまたはシトシンアナログおよびグアニンまたはグアニンアナログを含む、オリゴヌクレオチドモチーフを指す。
【0051】
用語「高コレステロール血症」とは、一般的に、高レベルの血中コレステロールの存在を指す。高コレステロール血症は、多くの疾患に対して続発性であって、例えば心臓脈管の疾患、アテロ−ム性動脈硬化症および膵炎を含むがこれらに限定しない多くの他の疾患に関与する可能性がある。上昇した血液コレステロールは、血流中のコレステロールおよび脂質(例えば、トリグリセリド)を運搬する粒子であるリポ蛋白質の上昇したレベルに起因する可能性がある。リポ蛋白質には、例えば、高比重リポ蛋白質(HDL)、低比重リポ蛋白質(LDL)および超低比重リポ蛋白質(VLDL)が包含されるが、これに限定するものではない。
【0052】
用語「高脂血症」とは、一般的に、血中のトリグリセリド(TG)、脂質またはリポ蛋白質の上昇したレベルまたは異常なレベルの存在を指す。トリグリセリド、脂質およびリポ蛋白質の上昇したレベルまたは異常なレベルは、一般集団において共通している。相当な尽力(substantial effort)が、心臓脈管および他の疾患に対する脂質およびコレステロールの影響によって、患者におけるトリグリセリド、脂質およびリポ蛋白質のレベルを正常化するようはらわれる。
【0053】
用語「スタチン」とは、一般的に、心臓脈管疾患患者または心臓脈管疾患を発症するリスクのある人におけるコレステロールレベルを下げるために使用される薬物の分類を指す。これらの化合物は、コレステロール合成経路において律速酵素である酵素HMG−CoAレダクターゼを阻害することによりコレステロールを下げる。多くのスタチン類には、当分野では周知であり、これにはアトルバスタチン、セリバスタチン(リバスタチン)、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチンおよびシンバスタチンが挙げられるが、これに限定するものではない。
【0054】
用語「処置」とは、一般的には、有益なまたは所望の結果を獲得することを目的とするアプローチを指し、これには徴候の緩和、または疾患進行の遅延または改善が含まれる。それ自体および制限しないで、「処置」には、一時的な(即ち、永久ではない)緩和的処置および有益な結果が含まれる。例えば、コレステロールレベルは、本発明の処置中に低下させることができるが、一旦処置が終了すれば最終的に増加する。
【0055】
ある好ましい実施形態において、オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドモチーフおよび少なくとも一つの修飾を含んでおり、ここで該オリゴヌクレオチドモチーフは、オリゴヌクレオチドモチーフの活性を抑制する1以上の修飾がなければ、免疫刺激性である(例えば、非メチル化CpG)、但し、化合物は4未満の連続したグアノシンヌクレオチド、好ましくは3未満の連続したグアノシンヌクレオチドを含むことができる。かかる修飾は、オリゴヌクレオチド5’末端内、オリゴヌクレオチドモチーフに隣接する配列内、および/またはオリゴヌクレオチドモチーフ内であってもよい。これらの修飾の結果、TLR調節性免疫刺激を抑制するTLRアンタゴニスト化合物となる。かかる修飾は、オリゴヌクレオチドモチーフに隣接するヌクレオチド/ヌクレオシド内、またはオリゴヌクレオチドモチーフ内の塩基、糖残基および/またはリン酸骨格であることが可能である。
ある実施形態において、該修飾は2’置換である。
【0056】
ある実施形態において、修飾が2’アルキル化またはアルコキシル化である場合に、該修飾は、オリゴヌクレオチドモチーフに対して5'側の隣接ではない;該修飾が非帯電のヌクレオシド内結合である場合に、該修飾はオリゴヌクレオチドモチーフに対して5'側の隣接ではない;ならびに、該修飾が3'アルキル化またはアルコキシル化である場合に、該修飾はオリゴヌクレオチドモチーフに対して5'または3'側の隣接ではない。
【0057】
本発明の他の実施形態において、該TLRアンタゴニスト化合物は、アンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0058】
ある好ましい実施形態において、オリゴヌクレオチドを基にしたTLRアンタゴニストの一般構造は、5’−N−NCGN−N−3’(式中、CGは、免疫刺激モチーフであり、Cはシトシンまたはピリミジンヌクレオチド誘導体であり、そしてGは、グアノシンまたはプリンヌクレオチド誘導体である;N1-N3およびN1-N3は、各存在にて、独立してヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体であり;NおよびNは、各存在にて、独立してヌクレオチド、ヌクレオチド誘導体または非ヌクレオチドリンカーである;但し、少なくとも一つのN1-N3および/またはN1−N3および/またはCおよび/またはGはヌクレオチド誘導体であって、またこの化合物は4未満の連続したグアノシンヌクレオチド、好ましくは3未満の連続したグアノシンヌクレオチドを含むことができ、ここでCGの免疫促進性活性は、ヌクレオチド誘導体または非ヌクレオチドリンカーにより抑制される;ならびに、式中mは0〜約30の整数である)として表すことができるが、これに限定するものではない。かかるオリゴヌクレオチドを基にしたTLRアンタゴニストは、米国出願番号第11/549,048号(米国特許公開番号2009/0060898)に開示されており、この開示内容は、出典明示により本明細書に組み入れられる(本願および米国出願番号11/549,048号との間において何らかの不一致がある範囲については、かかる不一致は本願に従って解消される)。
【0059】
さらなる好ましい実施形態において、オリゴヌクレオチドを基にしたTLRアンタゴニストは、修飾された免疫刺激モチーフを含むことが可能であり、5’−N−NCGN−N−3’(式中、CGは、修飾された免疫刺激モチーフであり、Cはシトシンであるか、または5-メチル-dC、2'−O−置換-C、2’−O−メチル-C、2'-O−メトキシエチル-C、2’−O−メトキシエチル-5-メチル-Cおよび2'-O−メチル-5-メチル-Cから選択されるピリミジンヌクレオチド誘導体であり、Gはグアノシンであるか、または2'-O−置換-G、2'-O−メチル-G、および2'-O−メトキシエチル-Gから選択されるプリンヌクレオチド誘導体である;N1-N3およびN1-N3は、各存在にて、独立してヌクレオチド、ヌクレオチド誘導体または非ヌクレオチド連結である;NおよびNは、各存在にて、独立してヌクレオチド、ヌクレオチド誘導体または非ヌクレオチド連結である;但し、修飾された免疫刺激モチーフの少なくとも一つのCおよび/またはGは、上記に特定したヌクレオチド誘導体であり、所望により3未満の連続したグアノシンヌクレオチドを含有してもよい;ここで、修飾された免疫刺激モチーフは、該ヌクレオチド誘導体がなければ免疫刺激性である;ならびに式中mは0〜約30の整数である)として表すことができるが、これに限定するものではない。かかるオリゴヌクレオチドを基にしたTLRアンタゴニストは、米国仮出願番号第61/182,928に開示されており、この開示内容は、出典明示により本明細書に組み入れられる(本願および米国仮出願番号第61/182,928号との間において何らかの不一致がある範囲については、かかる不一致は、本願に従って解消される)。
【0060】
本発明のこの局面のさらなる実施形態において、修飾された免疫刺激モチーフを含有するオリゴヌクレオチドを基にしたTLRアンタゴニストは、1以上の修飾した免疫刺激モチーフを含んでおり、ここでCGは修飾された免疫刺激モチーフであり、Cはシトシンであるか、または5-メチル-dC、2'-O−置換-C、2'-O−メチル-C、2'-O−メトキシエトキシ-C、2'-O−メトキシエチル-5-メチル-C、2'-O−メチル-5-メチル-Cから選択されたピリミジンヌクレオチド誘導体であり、Gは、グアノシンであるか、または2'-O−置換-G、2'-O−メチル-G、および2'-O−メトキシエトキシ-Gから選択されるプリンヌクレオチド誘導体である;但し、修飾された免疫刺激モチーフの少なくとも一つのCおよび/またはGは上記に特定されたヌクレオチド誘導体であり、所望により3未満の連続したグアノシンヌクレオチドを含有していてもよい;ここで、修飾された免疫刺激モチーフはヌクレオチド誘導体がなければ免疫刺激性である。
【0061】
本発明の特定の実施形態において、TLRアンタゴニスト化合物は、その5'-、3'-または2'-末端にて、ヌクレオチド連結または非ヌクレオチドリンカーによるか、または非ヌクレオチドリンカーまたはヌクレオチド連結を介して官能化された糖または官能化された核酸塩基により、共有結合した少なくとも2つのオリゴヌクレオチドを含み得る。かかるTLRアンタゴニスト化合物は、直鎖状であっても分枝状であってもよい。非限定的な例として、かかるリンカーは3’−水酸基と連結されてもよい。かかる実施態様において、該リンカーは、例えばホスホジエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネートなどのリン酸塩に基づく結合により、または非リン酸塩に基づく結合により3’−水酸基と連結する官能基を含む。該ヌクレオチドの連結が可能な部位は、以下の式Iに示され、式中のBは複素環式塩基を表し、Pを指す矢印はリンへの任意の連結を示す。
【化1】


式I
【0062】
ある実施形態において、非ヌクレオチドリンカーは、低分子リンカー、マクロ分子または生体分子であり、これにはポリペプチド、抗体、脂質、抗原、アレルゲンおよびオリゴサッカリドを含むが、これに限定するものではない。他のある実施形態において、非ヌクレオチドリンカーは、低分子リンカーである。本発明の目的のために、低分子リンカーは、1,000Da未満の分子量を有する有機質部分である。ある実施形態において、該低分子は750Da未満の分子量を有する。
【0063】
ある実施形態において、該低分子リンカーは、脂肪族または芳香族炭化水素であり、そのいずれかは、オリゴリボヌクレオチドに接続するかまたはそこへと付加される直鎖中に1以上の官能基を含むことができ、この官能基には、例えば水酸基、アミノ基、チオール基、チオエーテル基、エーテル基、アミド基、チオアミド基、エステル基、尿素基、またはチオ尿素基が挙げられるが、これに限定するものではない。該低分子リンカーは、環式または非環式であり得る。低分子リンカーの例は、アミノ酸、炭水化物、シクロデキストリン、アダマンタン、コレステロール、ハプテンおよび抗生物質を含むが、これに限定しない。しかし、非ヌクレオチドリンカーを記載する目的に対して、用語「低分子リンカー」は、ヌクレオシドを含むことを意図しない。
【0064】
ある実施形態において、非ヌクレオチドリンカーは、アルキルリンカーまたはアミノリンカーである。該アルキルリンカーは、分枝鎖または非分枝鎖、環状または非環状、置換または非置換、飽和または不飽和、キラル、アキラルまたはラセミ混合物であってよい。該アルキルリンカーは、約2〜約18個の炭素原子を有することができる。ある実施態様において、かかるアルキルリンカーは、約3〜約9の炭素原子を有する。いくつかのアルキルリンカーは1以上の官能基を含んでおり、これは水酸基、アミノ基、チオール基、チオエーテル基、エーテル基、アミド基、チオアミド基、エステル基、尿素基、およびチオエーテル基を含むが、これに限定するものではない。かかるアルキルリンカーは、1,2プロパンジオール、1,2,3プロパントリオール、1,3プロパンジオール、トリエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ポリエチレングリコールリンカー(例えば[−O−CH2−CH2−](n=1−9))、メチルリンカー、エチルリンカー、プロピルリンカー、ブチルリンカー、またはヘキシルリンカーを含み得るが、これらに限定するものではない。ある実施形態において、かかるアルキルリンカーはペプチドまたはアミノ酸を含んでもよい。
【0065】
ある実施形態において、非ヌクレオチドリンカーは、表2に挙げたものを包含し得るが、これらに限定するものではない。ここで、該オリゴヌクレオチドを基にしたTLRアンタゴニストは、非ヌクレオチドリンカー上に存在するヒドロキシル基を介して連結される。
【0066】
表2:代表的な非ヌクレオチドリンカー
【表2−1】


【表2−2】


【表2−3】


【表2−4】


【表2−5】


【表2−6】


【表2−7】

【0067】
ある実施形態において、低分子リンカーは、グリセロールまたは式HO−(CH−CH(OH)−(CH−OHで表されるグリセロールホモログであって、式中oおよびpは、独立して1〜約6、1〜約4、または1〜約3の整数である。いくつかの他の態様において、該低分子リンカーは、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパンの誘導体である。いくつかのかかる誘導体は、式HO−(CH−C(O)NH−CH−CH(OH)−CH−NHC(O)−(CH−OHを有し、式中mは0〜約10、0〜約6、2〜約6、2〜約4の整数である。
【0068】
本発明のいくつかの非ヌクレオチドリンカーは、2より多いオリゴヌクレオチドの連結を許容する。例えば、該低分子リンカーのグリセロールは、オリゴヌクレオチドが共有結合的に連結してもよい3つの水酸基を有する。本発明のいくつかのTLRアンタゴニストは、ヌクレオチドまたは非ヌクレオチドリンカーと結合する2つまたは3つ以上のオリゴヌクレオチドを含む。このようなTLRアンタゴニストは、「分枝鎖」であると呼ばれる。
【0069】
TLRアンタゴニスト化合物は、例えば静電相互作用、疎水的相互作用、π−スタッキング相互作用、水素結合およびその組み合わせなどの非共有結合的に結合した少なくとも2つのオリゴヌクレオチドを含んでもよい。かかる非共有結合性結合の非限定の例は、ワトソン−クリック塩基対合、フーグスティン塩基対合および塩基のスタッキングを含む。
【0070】
特定の実施形態において、本発明の組成物および方法において用いられる免疫調節オリゴヌクレオチドにおけるピリミジンヌクレオシドは、構造(II)を有する:
【化2】


(II)
式中:
Dは水素結合供与体であり;
D’は水素、水素結合供与体、水素結合アクセプター、親水基、疎水基、電子求引基および電子供与基からなる群から選択され;
Aは水素結合アクセプターまたは親水基であり;
A’は水素結合アクセプター、親水基、疎水基、電子求引基および電子供与基からなる群から選択され;
Xは炭素または窒素であり;および、
S’はペントースまたはヘキソースの糖環、または糖アナログである。
【0071】
特定の実施形態において、該糖環は、リン酸塩部分、修飾したリン酸塩部分、または該ピリミジンヌクレオチドを別のヌクレオシドまたはヌクレオチドアナログに結合するための好適な他のリンカー部分を用いて得られる。
【0072】
ある実施態様において、水素結合供与体には、NH、NH、−SHおよびOHが含まれるが、これに限定するものではない。好ましい水素結合アクセプターには、C=O、C=S、および芳香族複素環の環窒素原子、例えばシトシンのN3などが含まれるが、これに限定するものではない。
【0073】
ある実施形態において、(II)はピリミジンヌクレオシド誘導体である。ピリミジンヌクレオシド誘導体の例は、5−ヒドロキシシトシン、5−ヒドロキシメチルシトシン、N4−アルキルシトシン、またはN4−エチルシトシン、アラC、 5−OH−dC、N3−Me−dC、および4−チオウラシルを包含するが、これに限定するものではない。化学修飾した誘導体は、チミンまたはウラシルアナログもまた包含するが、これに限定するものではない。ある実施形態において、該糖部分である(II)中のS’は、糖誘導体である。好適な糖誘導体には、トレハロースまたはトレハロース誘導体、ヘキソースまたはヘキソース誘導体、アラビノースまたはアラビノース誘導体を包含するが、これに限定するものではない。
【0074】
ある実施形態において、本発明による組成物および方法において用いられるTLRアンタゴニストにおける該プリンヌクレオシドは構造(III)を有する:
【化3】


(III)
式中:
Dは水素結合供与体であり;
D’は水素、水素結合供与体、および親水基からなる群から選択され;
Aは水素結合アクセプターまたは親水基であり;
Xは炭素または窒素であり;
LのそれぞれはC、O、NおよびSからなる群から独立して選択され;および、
S’はペントースまたはヘキソースの糖環、あるいは糖アナログである。
【0075】
特定の実施形態において、糖環は、リン酸塩部分、修飾したリン酸塩部分、または他ピリミジンヌクレオチドを別のヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログに結合させるのに好適なリンカー部分を用いて得られる。
【0076】
特定の実施形態において、水素結合供与体には、−NH−、−NH、−SHおよび−OHが含まれるが、これに限定するものではない。特定の実施形態において、水素結合アクセプターには、C=O、C=S、−NOおよび芳香族複素環の環窒素原子、例えばグアニンのN1が含まれるが、これに限定するものではない。
【0077】
ある実施形態において、(III)は、プリンヌクレオシド誘導体である。プリンヌクレオチド誘導体の例示として、グアニンアナログ、例えば、7−デアザ-G、7-デアザ-dG、アラ−G、6−チオ−G、イノシン、Iso−G、ロキソリビン、TOG(7-チオ-8-オキソ)-G、8-ブロモ-G、8-ヒドロキシ-G、5-アミノホルマイシンB、オキソホルマイシン、7-メチル-G、9-p-クロロフェニル−8−アザ−G、9-フェニル−G、9−ヘキシル-グアニン、7-デアザ-9-ベンジル-G、6-クロロ-7-デアザグアニン、6-メトキシ-7-デアザグアニン、8-アザ−7-デアザ−G(PPG)、2-(ジメチルアミノ) グアノシン、7-メチル-6-チオグアノシン、8-ベンジルオキシグアノシン、9-デアザグアノシン、1-(B−D−リボフラノシル)-2-オキソ-7-デアザ−8−メチル-プリン、1−(2’−デオキシ−β−D−リボフラノシル)−2-オキソ-7-デアザ-8-メチル-プリンなどが挙げられるが、これに限定するものではない。化学的に修飾した誘導体には、アデニンアナログ、例えば9-ベンジル-8-ヒドロキシ-2-(2-メトキシエトキシ)アデニン、2-アミノ-N2-O−、メチルアデノシン、8-アザ-7-デアザ-A、7-デアザ-A、ビダラビン、2-アミノアデノシン、N1−メチルアデノシン、8-アザアデノシン、5−ヨードツベルシジンおよびN1−Me−dGなどが挙げられるが、これに限定するものではない。ある実施形態において、該糖部分である(III)のS’は、式IIで定義される糖誘導体である。
【0078】
本発明の特定の実施形態において、該TLRアンタゴニストは、少なくとも一つのB−L−デオキシヌクレオチドまたは3'-デオキシヌクレオシドを含有する核酸配列を含む。
【0079】
本発明の特定の実施形態において、該TLRアンタゴニストは、CpG、C*pG、C*pG*およびCpG*から選択された少なくとも1つのジヌクレオチドを含有する核酸配列を含み、式中Cはシトシンまたは2'-デオキシシチジンであり、Gはグアノシンまたは2’−デオキシグアノシンであり、C*は2’−デオキシチミジン、1-(2'-デオキシ-β-D−リボフラノシル)-2-オキソ-7-デアザ-8-メチル-プリン、2'-ジデオキシ-5-ハロシトシン、2'-ジデオキシ-5-ニトロシトシン、アラビノシチジン、2'-デオキシ-2'-置換アラビノシチジン、2'-O−置換アラビノシチジン、2'-デオキシ-5-ヒドロキシシチジン、2'-デオキシ-N4-アルキル-シチジン、2'-デオキシ-4-チオウリジン、または他のピリミジンヌクレオチドアナログであり、G*は2'-デオキシ-7-デアザグアノシン、2'-デオキシ-6-チオグアノシン、アラビノグアノシン、2'-デオキシ-2'置換-アラビノグアノシン、2'-O−置換-アラビノグアノシン、2'-デオキシイノシンまたは他のプリンヌクレオチドアナログであり、およびpはホスホジエステル、ホスホロチオエート、およびホスホロジチオエートからなる群から選択されたヌクレオチド内連結であって、ここで少なくとも一つのジヌクレオチドの活性はこの隣接する配列により制御される。
【0080】
本研究において有用であるこれらの一般構造式のなかで、選択されたTLRアンタゴニストの配列は、表3に示されたものを包含するが、これに限定するものではない。
【0081】
【表3−1】



【表3−2】


【表3−3】

【0082】
下線をひいたG、AまたはU=2’−OMe;下線をひいたT=3’−OMe;A1=3’−OMe;G1=7-デアザ-dG;m=P−Me;A2、T、C2、およびG2=B−L−デオキシヌクレオシド;X1=脱塩基;X2=グリセロールリンカー、X3=C3-リンカー;C3およびG3=3'-デオキシ-ヌクレオシド;G4=アラG;C4=アラC;C=5−OH−dC;C6=1-(2’−デオキシ-β−D−リボフラノシル)-2-オキソ-7-デアザ-8-メチル-プリン;G5=N1−Me−dG;C7=N3−Me−dC;U1=3’−OMe;U2=dU;C1=2’−O−メチル-C;C2=5-メチル−dC;C3=2’−O−メチル-5-メチル-C;G1=2’−O−メチル-G
【0083】
ある実施形態において、各TLRアンタゴニストはそれぞれ、約6〜約35のヌクレオシド残基、好ましくは約9〜約30のヌクレオシド残基、より好ましくは約11〜約23のヌクレオシド残基を有する。ある実施形態において、該TLRアンタゴニストは約6〜約18のヌクレオシド残基を有する。
【0084】
第二の態様において、本発明は、哺乳類における高い血液脂質濃度および/または高い血液コレステロール濃度と関連のある疾患を治療的処置するための方法を提供するもので、かかる方法には、発明の第一態様に記載した通り、哺乳類におけるTLRシグナル伝達を阻害することを含んでいる。ある実施形態において、TLRシグナル伝達は、1以上の本発明のTLRアンタゴニスト化合物を医薬上有効量で哺乳類に投与することにより阻害される。ある実施態様において、TLRシグナル伝達は、1以上のTLRまたはTLRシグナル伝達経路における別のタンパク質の発現を阻害することによって阻害される。本発明のこの局面に関する特定の好ましい実施形態において、該疾患は、高コレステロール血症、高脂血症、冠状動脈性心臓病、動脈硬化、アテロ−ム性動脈硬化症、卒中、末梢血管疾患、糖尿または高血圧である。
【0085】
第三の態様において、本発明は、上昇した血液コレステロールおよび/または血液脂質を有する哺乳類において高い血液脂質濃度および/または血液コレステロール濃度に関連のある疾患を予防するための方法を提供するものであって、かかる方法は、発明の第一態様に記載したとおり、哺乳類におけるTLRシグナル伝達を阻害することを含んでいる。ある実施形態において、TLRシグナル伝達は、1以上の本発明のTLRアンタゴニスト化合物を医薬上有効量で哺乳類に投与することにより阻害される。ある実施態様において、TLRシグナル伝達は、1以上のTLRまたはTLRシグナル伝達経路における別のタンパク質の発現を阻害することによって阻害される。特定の好ましい実施形態において、該疾患は、高コレステロール血症、高脂血症、冠状動脈性心臓病、動脈硬化、アテロ−ム性動脈硬化症、卒中、末梢血管疾患、糖尿または高血圧である。
【0086】
ある実施形態において、本発明の方法は、さらに、1以上のコレステロール低下組成物、利尿薬、非ステロイド様抗炎症性化合物(NSAID)、スタチン、抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、TLRアゴニスト、TLRアンタゴニスト、ペプチド、タンパク質または遺伝子治療ベクターまたはその組合せ物を哺乳類に投与することを含む。
【0087】
本発明の方法において、TLRアンタゴニスト化合物の投与は、任意の好適な経路により投与することが可能であり、これには非経口、粘膜、経口、舌下、経皮、局所、吸入、経鼻、エアロゾル、眼球内、気管内、直腸内、膣内、遺伝子銃により、皮膚パッチまたは点眼薬または洗口薬の形態を包含するが、これらに限定するものではない。TLRアンタゴニスト化合物の治療組成物の投与を、疾患の徴候または代理マーカーを低下させるのに有効な用量および期間にて、公知の手順を用いて実行することができる。全身投与する場合、該治療組成物は、好ましくは約0.0001μM〜約10μMのTLRアンタゴニスト化合物の血中レベルを達成するに十分な用量で投与される。局所投与する場合、これよりもさらに低濃度が有効であり得て、そしてより高濃度を耐容し得る。ある好ましい実施形態において、TLRアンタゴニスト化合物の総投与量は、約0.001mg/患者/日〜約200mg/kg体重/1日の範囲である。治療的有効量の1以上のTLRアンタゴニストを、単一の処置エピソードとして個体に、同時または順に投与することが望ましいだろう。
【0088】
該TLRアンタゴニスト化合物は、他の化合物、例えばこれに限定しないが1以上の脂質低下化合物または組成物、コレステロール低下化合物または組成物、利尿薬、非ステロイド様抗炎症性化合物(NSAID)、スタチン、抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、TLRアゴニスト、TLRアンタゴニスト、ペプチド、タンパク質または遺伝子治療ベクターまたはその組合せ物などを組合せて、投与または使用され得る。
【0089】
本発明の方法は、ヒトおよび/または動物の疾患の予防的処置または治療的処置に有用である。例えば、該方法は、成人、小児および獣医学的用途に有用であり得る。
【0090】
本発明に関する何れかの方法において、該TLRアンタゴニスト化合物は、疾患または症状を処置するのに有用な、TLRアンタゴニスト化合物のアンタゴニスト活性を減衰させないその他の薬剤と組み合わせて投与され得る。本発明に関する何れかの方法において、該疾患または該症状を処置するのに有用な薬剤には、次のものに限定しないが1以上の脂質低下化合物または組成物、コレステロール低下化合物または組成物、利尿薬、非ステロイド様抗炎症性化合物(NSAID)、スタチン、抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、TLRアゴニスト、TLRアンタゴニスト、ペプチド、タンパク質または遺伝子治療ベクターまたはその組合せが挙げられ、これらはTLRアンタゴニストに対する応答の特異性および大きさを増強できる。例えば、高脂血症および/または高コレステロール血症の処置において、TLRアンタゴニスト化合物を、1以上の脂質および/またはコレステロール低下化合物と、例えば、これに限定しないがスタチン、標的化治療剤および/またはモノクローナル抗体などと組み合わせて投与することができると考えられる。
【0091】
以下の実施例は、本発明の特定の例示的な実施形態を説明することを意図するものであって、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。例えば、代表的なTLRアンタゴニストを、以下の実施例に示すが、適用可能な本発明のTLRアンタゴニストの範囲を限定するものではない。
【0092】
本明細書に引用した特許および出版物は、この分野における共通する技術常識を表し、その全てを参照して本明細書に組み込まれる。引用文献に関する教示および本明細書との何らかの不一致は後者を支持して解決されるものとする。
【0093】
実施例1
免疫調節部分を含有するオリゴヌクレオチドの合成
【0094】
全ての合成オリゴヌクレオチドは、標準的な手順に従って合成された(例えば、米国特許公報第2004/0097719号を参照のこと)。
【0095】
オリゴヌクレオチドは、標準的な線形合成または平行合成方法(例えば、米国特許公報番号第2004/0097719号の図5および6を参照のこと)に従って、自動化DNA合成器(Expedite 8909; PerSeptive Biosystems, Framingham, Mass.)を用いて、1μMスケールで合成された。
【0096】
デオキシリボヌクレオチドホスホラミダイト(phosphoramidite)は、(Aldrich-Sigma, St Louis, Mo)より得た。1’,2’−ジデオキシリボースホスホラミダイト、プロピル−1−ホスホラミダイト、2−デオキシウリジンホスホラミダイト、1,3−ビス−[5−(4,4’−ジメトキシトリチル)ペンチルアミジル]−2−プロパノールホスホラミダイトおよびメチルホスホンアミダイトは、Glen Research (Sterling, Va.)より得た。β−L−2’−デオキシリボヌクレオシドホスホラミダイト、アルファ−2’−デオキシリボヌクレオシドホスホラミダイト、モノ−DMT−グリセロールホスホラミダイトおよびジ−DMT−グリセロールホスホラミダイトは、ChemGenes (Willmington, Mass.)より得た。(4−アミノブチル)−1,3−プロパンジオールホスホラミダイトはClontech (Palo Alto, Calif.)より得た。アラビノシチジンホスホラミダイト、アラビノグアノシン、アラビノチミジンおよびアラビノウリジンは、Reliable Pharmaceutical (St. Louis, Mo.)より得た。アラビノグアノシンホスホラミダイト、アラビノチミジンホスホラミダイトおよびアラビノウリジンホスホラミダイトは、Idera Pharmaceuticals, Inc. (Cambridge, Mass.)において合成した(Noronha et al. (2000) Biochem., 39:7050-7062)。
【0097】
全てのヌクレオシドホスホラミダイトは、31PおよびH NMRスペクトルにより特徴付けた。修飾ヌクレオシドは、特定の部位に、通常のカップリングサイクルを用いて導入された。合成後、オリゴヌクレオチドを、濃縮水酸化アンモニウムを用いて脱保護し、、そして逆相HPLCを用いて精製し、次いで透析した。ナトリウム塩の形態として精製されたオリゴヌクレオチドを、使用前に凍結乾燥した。純度をCGEおよびMALDI−TOF MSにより試験した。
【0098】
実施例2
インビボでのTLRアンタゴニストのコレステロールおよび脂質低下活性
5週齢のメスC57BL/6のマウスをThe Jackson Laboratoryから得た。全ての動物実験をIdera PharmaceuticalsのICAUC承認プロトコールのガイドラインのとおりに行った。マウスには60%のラードから構成される西洋食(Research Diets, New Brunswick, NJ)を給餌した。TLRアンタゴニストを、6週目に開始して10週目までの5週間の間、皮下注射で1週間に2回、5〜20mg/kgの投与量にてマウスに投与した。Lipitor(登録商標)を、5週間の間、胃内投与(i.g)で1週間に5回、20mg/kgの投与量にてマウスに投与した。コントロール群のマウスをPBSにより注射した。各群は5匹のマウスとした。血液を、試験期間中およびこの試験を停止した12週時に採取した。血清コレステロールのレベルを、BioAssay Systemから"EnzyChromTM Cholesterol Assay Kit"により各サンプルにおいて決定した。
【0099】
実施例3
インビボでのTLRアンタゴニストのコレステロール、リポ蛋白質、脂質およびグルコース低下活性
5週齢のメスC57BL/6またはApoE欠損マウスを、The Jackson Laboratoryから得た。全ての動物実験を、Idera PharmaceuticalsのICAUC承認プロトコールのガイドラインのとおりに行った。マウスには、60%のラードから構成される西洋食(Research Diets, New Brunswick, NJ)を給餌した。アンタゴニストを、6週目に開始して10週目までの5週間の間、皮下注射にて1週間に2回、15mg/kgの投与量にてマウスに投与した。コントロール群のマウスをPBSにより注射した。各群は15匹のマウスとした。血液を、実験を停止した12週間までマウスの夜間絶食後に毎週採取し、コレステロール、HDL、LDL、ALT、AST、トリグリセリドおよびグルコースの血清レベルをQuest Laboratoriesにて決定した。
【0100】
実施例4
インビボでのTLRアンタゴニストの体重低下活性
5週齢のメスC57BL/6またはApoE欠損マウスを、The Jackson Laboratoryから得た。全ての動物実験を、Idera PharmaceuticalsのICAUC承認プロトコールのガイドラインのとおりに行った。マウスには、60%のラードから構成される西洋食を給餌した(Research Diets, New Brunswick, NJ)。アンタゴニストを、6週目に開始して10週目までの5週間の間、皮下注射にて1週間に2回、15 mg/kgの投与量でマウスに投与した。コントロール群のマウスをPBSにより注射した。各群は15匹マウスとした。体重を測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コレステロール、脂質および/または低比重リポ蛋白の上昇した濃度を有する哺乳類におけるコレステロール、脂質および/または低比重リポ蛋白の血液濃度を低下させる方法であって、哺乳類におけるTLRシグナル伝達を阻害することを含む、方法。
【請求項2】
1以上のTLRまたはTLRシグナル伝達に関与するタンパク質の活性の阻害剤を哺乳類に投与することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該TLRが、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR7、TLR8およびTLR9からなる群から選択される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
TLRシグナル伝達に関与するタンパク質が、MyD88、IRAK、IRF、TRAF、TGFβ、IκB キナーゼ、IκBおよびNFκBからなる群から選択される、請求項2記載の方法。
【請求項5】
該阻害剤が、低分子;抗体;シクロヘキセン誘導体;脂質誘導体;”CCT”トリプレットおよび”GGG”トリプレットを含む合成オリゴヌクレオチド;”GGG”および/または”GGGG”および/または”GC”配列を含有する領域を含む合成オリゴヌクレオチド;メチル化された合成オリゴヌクレオチド;該修飾がなければ免疫刺激性である免疫刺激モチーフを隣接する配列中に1以上の化学修飾を有する合成の免疫阻害性オリゴヌクレオチド;および1以上の修飾した免疫刺激モチーフを含む修飾された免疫刺激モチーフを含有する合成免疫阻害性オリゴヌクレオチド、ここで該修飾された免疫刺激モチーフは該修飾がなければ免疫刺激性である;
からなる群から選択される化合物である、請求項2記載の方法。
【請求項6】
低分子がクロロキンまたはヒドロキシクロロキンである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
該阻害剤が下記構造;
5’−N−NCGN−N−3’:
式中:
CGは、オリゴヌクレオチドモチーフであり、Cはシトシンまたはピリミジンヌクレオチド誘導体または非ヌクレオチド連結であり、Gはグアノシン、プリンヌクレオチド誘導体または非ヌクレオチド連結である;
1-N3およびN1-N3は、各存在にて独立してヌクレオチド、ヌクレオチド誘導体または非ヌクレオチド連結であり;
mおよびNmは、各存在にて独立してヌクレオチド、ヌクレオチド誘導体または非ヌクレオチド連結である;
但し、少なくとも一つのN1-N3および/または N1-N3 および/またはCおよび/またはGは、ヌクレオチド誘導体または非ヌクレオチド連結である;ここで該オリゴヌクレオチドモチーフは、該ヌクレオチド誘導体または非ヌクレオチド連結がなければ免疫刺激性である;ならびに、
mは、0〜約30の整数である、
を有するTLRアンタゴニスト化合物である、請求項2記載の方法。
【請求項8】
阻害剤が、1以上の修飾した免疫刺激モチーフを含む修飾された免疫刺激モチーフを含有するTLRアンタゴニスト化合物であり、ここでCGは、修飾された免疫刺激モチーフであり、Cはシトシンであるか、または5-メチル-dC、2'-O−置換-C、2’−O−メチル-C、2’−O−メトキシエトキシ-C、2’−O−メトキシエチル-5-メチル-Cおよび2’−O−メチル−5−メチル-Cから選択されるピリミジンヌクレオチド誘導体であり、Gはグアノシンであるか、または2’−O−置換-G、2’−O−メチル−G、および2’−O−メトキシエトキシ−Gから選択されるプリンヌクレオチド誘導体である;
但し、修飾された免疫刺激モチーフの少なくとも一つのCおよび/またはGは、特定されたヌクレオチド誘導体であり、所望により3未満の連続したグアノシンヌクレオチドを含有していてもよい;ここで該修飾された免疫刺激モチーフは、該ヌクレオチド誘導体がなければ免疫刺激性である、請求項2記載の方法。
【請求項9】
該投与経路が、非経口、粘膜、経口、舌下、経皮、局所、吸入、経鼻、エアロゾル、眼球内、気管内、直腸内、膣内、遺伝子銃により、皮膚パッチまたは点眼薬または洗口薬の形態である、請求項2記載の方法。
【請求項10】
1以上の脂質低下化合物または組成物、コレステロール低下化合物または組成物、利尿薬、非ステロイド様抗炎症性化合物(NSAID)、スタチン、抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、TLRアゴニスト、TLRアンタゴニスト、ペプチド、タンパク質または遺伝子治療ベクターまたはその組合せ物を、哺乳類に投与することをさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項11】
コレステロール低下組成物がスタチンである、請求項10の方法。
【請求項12】
1以上のTLRまたはTLRシグナル伝達に関与するタンパク質の発現の阻害剤を哺乳類に投与することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
TLRが、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR7、TLR8およびTLR9からなる群から選択される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
TLRシグナル伝達に関与するタンパク質が、MyD88、IRAK、IRF、TRAF、TGFβ、IκB キナーゼ、IκBおよびNF−κBからなる群から選択される、請求項12記載の方法
【請求項15】
投与経路が、非経口、粘膜、経口、舌下、経皮、局所、吸入、経鼻、エアロゾル、眼球内、気管内、直腸内、膣内、遺伝子銃により、皮膚パッチまたは点眼薬または洗口薬の形態である、請求項12記載の方法。
【請求項16】
1以上の脂質低下化合物または組成物、コレステロール低下化合物または組成物、利尿薬、非ステロイド様抗炎症性化合物(NSAID)、スタチン、抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、TLRアゴニスト、TLRアンタゴニスト、ペプチド、タンパク質または遺伝子治療ベクターまたはその組合せ物を、哺乳類に投与することをさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項17】
コレステロール低下組成物がスタチンである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
冠状動脈性心臓病、動脈硬化、アテロ−ム性動脈硬化症、卒中、末梢血管疾患、糖尿および高血圧から選択される疾患を有する哺乳類を治療的に処置する方法であって、該哺乳類におけるTLRシグナル伝達を阻害することを含む、方法。
【請求項19】
1以上のTLRまたはTLRシグナル伝達に関与するタンパク質の活性の阻害剤を哺乳類に投与することを含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
TLRが、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR7、TLR8およびTLR9からなる群から選択される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
TLRシグナル伝達に関与するタンパク質が、MyD88、IRAK、IRF、TRAF、TGFβ、IκB キナーゼ、IκBおよびNF−κBからなる群から選択される、請求項19記載の方法。
【請求項22】
阻害剤が、低分子;抗体;シクロヘキセン誘導体;脂質誘導体;”CCT”トリプレットおよび”GGG”トリプレットを含む合成オリゴヌクレオチド;”GGG”および/または”GGGG”および/または”GC”配列を含有する領域を含む合成オリゴヌクレオチド;メチル化される合成オリゴヌクレオチド;修飾がなければ免疫刺激性である免疫刺激モチーフに隣接する配列中に1以上の化学修飾を有する合成の免疫阻害性オリゴヌクレオチド;および1以上の修飾された免疫刺激モチーフを含む修飾された免疫刺激モチーフを含有する合成免疫阻害性オリゴヌクレオチド(ここで、該修飾された免疫刺激モチーフは該修飾がなければ免疫刺激性である)、からなる群から選択される化合物である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
該低分子はクロロキンまたはヒドロキシクロロキンである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
該阻害剤が下記構造;
5’−N−N321CGN123−N−3':
式中:
CGは、オリゴヌクレオチドモチーフであり、Cはシトシンまたはピリミジンヌクレオチド誘導体または非ヌクレオチド連結であり、Gはグアノシンまたはプリンヌクレオチド誘導体または非ヌクレオチド連結である;
1-N3およびN1-N3は、各存在にて独立してヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体または非ヌクレオチド連結であり;
mおよびNmは、各存在にて独立してヌクレオチド、ヌクレオチド誘導体または非ヌクレオチド連結である;
但し、少なくとも一つのN1-N3および/または N1-N3 および/またはCおよび/またはGは、ヌクレオチド誘導体または非ヌクレオチド連結である;ここで該オリゴヌクレオチドモチーフは、該ヌクレオチド誘導体または非ヌクレオチド連結がなければ免疫刺激性である;ならびに、
mは、0〜約30の整数である、
を有するTLRアンタゴニスト化合物である、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
阻害剤が、1以上の修飾した免疫刺激モチーフを含む修飾された免疫刺激モチーフを含有するTLRアンタゴニスト化合物であり、ここでCGは修飾された免疫刺激モチーフであり、Cはシトシンであるか、または5-メチル-dC、2'-O−置換-C、2'-O−メチル-C、2'-O−メトキシエトキシ-C、2'-O−メトキシエチル-5-メチル-C、および2’−O−メチル-5-メチル-Cから選択されたピリミジンヌクレオチド誘導体であり、Gは、グアノシンであるか、または2'-O−置換-G、2'-O−メチル-Gおよび2'-O−メトキシエトキシ-Gから選択されるプリンヌクレオチド誘導体である;但し、修飾された免疫刺激モチーフの少なくとも一つのCおよび/またはGは、特定されたヌクレオチド誘導体であり、所望により3未満の連続したグアノシンヌクレオチドを含有していてもよい;ここで該修飾された免疫刺激モチーフは、該ヌクレオチド誘導体がなければ免疫刺激性である、請求項19記載の方法。
【請求項26】
投与経路は、非経口、粘膜、経口、舌下、経皮、局所、吸入、経鼻、エアロゾル、眼球内、気管内、直腸内、膣内、遺伝子銃により、皮膚パッチまたは点眼薬または洗口薬の形態である、請求項19記載の方法。
【請求項27】
1以上の脂質低下化合物または組成物、コレステロール低下化合物または組成物、利尿薬、非ステロイド様抗炎症性化合物(NSAID)、スタチン、抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、TLRアゴニスト、TLRアンタゴニスト、ペプチド、タンパク質または遺伝子治療ベクターまたはその組合せ物を、哺乳類に投与することをさらに含む、請求項19記載の方法。
【請求項28】
コレステロール低下組成物がスタチンである、請求項27の方法。
【請求項29】
1以上のTLRまたはTLRシグナル伝達に関与するタンパク質の発現の阻害剤を哺乳類に投与することを含む、請求項18の方法。
【請求項30】
TLRが、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR7、TLR8およびTLR9からなる群から選択される、請求項29の方法。
【請求項31】
TLRシグナル伝達に関与するタンパク質が、MyD88、IRAK、IRF、TRAF、TGFβ、IκB キナーゼ、IκBおよびNFκBからなる群から選択される、請求項29記載の方法。
【請求項32】
投与経路が、非経口、粘膜、経口、舌下、経皮、局所、吸入、経鼻、エアロゾル、眼球内、気管内、直腸内、膣内、遺伝子銃により、皮膚パッチまたは点眼薬または洗口薬の形態である、請求項29記載の方法。
【請求項33】
1以上の脂質低下化合物または組成物、コレステロール低下化合物または組成物、利尿薬、非ステロイド様抗炎症性化合物(NSAID)、スタチン、抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、TLRアゴニスト、TLRアンタゴニスト、ペプチド、タンパク質または遺伝子治療ベクターまたはその組合せ物を、哺乳類に投与することをさらに含む、請求項29記載の方法。
【請求項34】
コレステロール低下組成物がスタチンである、請求項33記載の方法。
【請求項35】
哺乳類における疾患を予防する方法であって、該疾患が、冠状動脈性心臓病、動脈硬化、アテロ−ム性動脈硬化症、卒中、末梢血管疾患、糖尿および高血圧から選択され、該哺乳類におけるTLRシグナル伝達を阻害することを含む、方法。
【請求項36】
1以上のTLRまたはTLRシグナル伝達に関与するタンパク質の活性の阻害剤を哺乳類に投与することを含む、請求項35記載の方法。
【請求項37】
TLRが、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR7、TLR8およびTLR9からなる群から選択される、請求項35の方法。
【請求項38】
TLRシグナル伝達に関与するタンパク質は、MyD88、IRAK、IRF、TRAF、TGFβ、IκB キナーゼ、IκBおよびNFκBからなる群から選択される、請求項36記載の方法。
【請求項39】
阻害剤が、小分子;抗体;シクロヘキセン誘導体;脂質誘導体;”CCT”トリプレットおよび”GGG”トリプレットを含む合成オリゴヌクレオチド;”GGG”および/または”GGGG”および/または”GC”配列を含有する領域を含む合成オリゴヌクレオチド;メチル化された合成オリゴヌクレオチドまたは修飾がなければ免疫刺激性である免疫刺激モチーフに隣接する配列中に1以上の化学修飾を有する合成の免疫阻害性オリゴヌクレオチド;および1以上の修飾した免疫刺激モチーフを含む修飾された免疫刺激モチーフを含有する合成免疫阻害性オリゴヌクレオチド(ここで、該修飾された免疫刺激モチーフは、該修飾がなければ免疫刺激性である)、からなる群から選択される化合物である、請求項36記載の方法。
【請求項40】
低分子はクロロキンまたはヒドロキシクロロキンである、請求項39記載の方法。
【請求項41】
阻害剤が下記構造;
5'-N−N321CGN123−N−3':
式中:
CGはオリゴヌクレオチドモチーフであり、Cはシトシンまたはピリミジンヌクレオチド誘導体または非ヌクレオチド連結であり、Gはグアノシン、プリンヌクレオチド誘導体または非ヌクレオチド連結であり;
1-N3およびN1-N3は、各存在にて独立してヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体または非ヌクレオチド連結であり;
mおよびNmは、各存在にて独立してヌクレオチド、ヌクレオチド誘導体または非ヌクレオチド連結である;
但し、少なくとも一つのN1-N3および/またはN1-N3 および/またはCおよび/またはGは、ヌクレオチド誘導体または非ヌクレオチド連結であり;ここで該オリゴヌクレオチドモチーフは、ヌクレオチド誘導体または非ヌクレオチド連結がなければ免疫刺激性である;ならびに、
mは、0〜約30の整数である、
を有するTLRアンタゴニスト化合物である、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
阻害剤が、1以上の修飾した免疫刺激モチーフを含む修飾された免疫刺激モチーフを含有するTLRアンタゴニスト化合物であり、ここでCGは修飾された免疫刺激モチーフであり、Cはシトシンであるか、または5-メチル-dC、2'-O−置換-C、2'-O−メチル-C、2'-O−メトキシエトキシ-C、2'-O−メトキシエチル-5-メチル-Cおよび2’−O−メチル-5-メチル-Cから選択されたピリミジンヌクレオチド誘導体であり、Gはグアノシンであるか、または2'-O−置換-G、2'-O−メチル-Gおよび2'-O−メトキシエトキシ-Gから選択されるプリンヌクレオチド誘導体である;但し、修飾された免疫刺激モチーフの少なくとも一つのCおよび/またはGは、特定されたヌクレオチド誘導体であり、所望により3未満の連続したグアノシンヌクレオチドを含有していてもよい;ここで該修飾された免疫刺激モチーフは、該ヌクレオチド誘導体がなければ免疫刺激性である、請求項36記載の方法。
【請求項43】
投与経路は、非経口、粘膜、経口、舌下、経皮、局所、吸入、経鼻、エアロゾル、眼球内、気管内、直腸内、膣内、遺伝子銃により、皮膚パッチまたは点眼薬または洗口薬の形態である、請求項36記載の方法。
【請求項44】
1以上の脂質低下化合物または組成物、コレステロール低下化合物または組成物、利尿薬、非ステロイド様抗炎症性化合物(NSAID)、スタチン、抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、TLRアゴニスト、TLRアンタゴニスト、ペプチド、タンパク質または遺伝子治療ベクターまたはその組合せ物を、哺乳類に投与することをさらに含む、請求項36記載の方法。
【請求項45】
コレステロール低下組成物がスタチンである、請求項44記載の方法。
【請求項46】
1以上のTLRまたはTLRシグナル伝達に関与するタンパク質の発現の阻害剤を哺乳類に投与することを含む、請求項35記載の方法。
【請求項47】
TLRが、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR7、TLR8およびTLR9からなる群から選択される、請求項46の方法。
【請求項48】
TLRシグナル伝達に関与するタンパク質が、MyD88、IRAK、IRF、TRAF、TGFβ、IκB キナーゼ、IκBおよびNFκBからなる群から選択される、請求項46記載の方法。
【請求項49】
投与経路は、非経口、粘膜、経口、舌下、経皮、局所、吸入、経鼻、エアロゾル、眼球内、気管内、直腸内、膣内、遺伝子銃により、皮膚パッチまたは点眼薬または洗口薬の形態である、請求項46記載の方法。
【請求項50】
1以上の脂質低下化合物または組成物、コレステロール低下化合物または組成物、利尿薬、非ステロイド様抗炎症性化合物(NSAID)、スタチン、抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、TLRアゴニスト、TLRアンタゴニスト、ペプチド、タンパク質または遺伝子治療ベクターまたはその組合せ物を、哺乳類に投与することをさらに含む、請求項46記載の方法。
【請求項51】
コレステロール低下組成物がスタチンである、請求項50記載の方法。


【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3a】
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【図3b】
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【公表番号】特表2012−505221(P2012−505221A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531120(P2011−531120)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【国際出願番号】PCT/US2009/059730
【国際公開番号】WO2010/042543
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(398032717)イデラ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (38)
【氏名又は名称原語表記】Idera Pharmaceuticals, Inc.
【Fターム(参考)】