説明

高分子凝集剤

【課題】 従来の高分子凝集剤に比べて優れた脱水性能を有し、汚泥に対して少量の添加量で低いケーキ含水率を与える高分子凝集剤を提供する。
【解決手段】 一般式(1)で示される構成単位を有する水溶性両性高分子(A)を含有する高分子凝集剤である。
【化5】


式中、R1は水素原子、メチル基又はエチル基、R2は炭素数1〜6のアルキレン基、R3及びR5は炭素数1〜6のアルキル基、R4は炭素数1〜3のアルキレン基、Qは酸素原子又は−NH−、Zは−COO又は−SO3である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は下水、し尿等で生じる有機性汚泥の脱水に適した高分子凝集剤に関する。さらに詳しくは、遠心脱水、ベルトプレス脱水において優れた脱水性能を発揮する高分子凝集剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水等の処理で生じた有機性汚泥や工場廃水等の処理で生じた無機性汚泥の脱水に用いられる高分子凝集剤としては、各種の高分子が使用されており、その中で両性高分子も提案されている。(特許文献1〜2)
【0003】
【特許文献1】特開平7−256300号公報
【特許文献2】特開平8−112504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の高分子凝集剤では遠心脱水、ベルトプレス脱水等において充分な脱水率が得られなかった。とくに最近は、汚泥中の有機物含量の増加、腐敗の進行が顕著に見られ、これとともに脱水率は悪化傾向にある。脱水率の低下は得られるケーキの含水率を上げ、したがってケーキ焼却時の燃料費を増加させる問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、一般式(1)で示される構成単位を有する水溶性両性高分子(A)を含有する高分子凝集剤、並びに該高分子凝集剤を、汚泥又は廃水に添加、混合してフロックを形成させ、固液分離を行うことを特徴とする汚泥または廃水の処理方法、である。
【化2】

式中、R1は水素原子、メチル基又はエチル基、R2は炭素数1〜6のアルキレン基、R3及びR5は炭素数1〜6のアルキル基、R4は炭素数1〜3のアルキレン基、Qは酸素原子又は−NH−、Zは−COO又は−SO3である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の高分子凝集剤は、従来のものに比べ優れた脱水性能を有し、汚泥に対して少量の添加量で低いケーキ含水率を与える。とくに従来脱水が困難であった有機分含有量の高い汚泥、腐敗度の高い汚泥に対して際だった効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の高分子凝集剤は、前記一般式(1)で示される構成単位を有する水溶性両性高分子(A)(以下において、単に「両性高分子(A)」又は「(A)」と表記する場合がある)を必須成分とし、該構成単位は、1つの繰り返し単位中にカチオン性基とアニオン性基を有し、かつ重合前のアクリロイル基のα位にヒドロキシアルキル基を有する構造を有する。このことによって本発明の効果を奏する。
【0008】
一般式(1)において、R1は水素原子、メチル基又はエチル基であり、好ましいのは水素原子である。またR2としてはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基及びヘキシレン基などが挙げられるが、好ましいのはエチレン基である。R3及びR5としては、メチル基、エチル基、プロピル基(n−プロピル基及びイソプロピル基)、ブチル基(n−ブチル基、イソブチル基及びsec−ブチル基など)、n−ヘキシル基などが挙げられ、好ましいのはメチル基及びエチル基である。R4としては、メチレン基、エチレン基及びプロピレン基が挙げられ、好ましいのはメチレン基である。Qのうち好ましいのは酸素原子であり、Zのうち好ましいのは−COOである。上記の好ましい範囲であると原料が特に入手し易く、また収率も向上しやすい。
【0009】
本発明における両性高分子(A)は、一般式(1)の構成単位を与える両性単量体を重合する方法、又は予め製造されたカチオン性前駆体高分子を高分子反応(両性化反応)によって両性化する方法によって製造できる。これらの方法のうち、後者は高分子反応を高粘度の状態でしなければならないというデメリットがあり、好ましいのは前者の方法である。
【0010】
一般式(1)の構成単位を与える両性単量体を重合する方法における両性単量体は、一般式(2)で示される両性単量体(a)である。
【0011】
【化3】

【0012】
式中、R1、R2、R3、R4、R5、Q及びZは一般式(1)における基と同様である。
【0013】
一般式(2)で示される両性単量体(a)の具体例としては、ジメチルアミノエチル(α−ヒドロキシメチル)アクリレートのカルボキシベタイン化物、ジエチルアミノエチル(α−ヒドロキシメチル)アクリレートのカルボキシベタイン化物及びジメチルアミノエチル(α−ヒドロキシメチル)アクリレートのスルホベタイン化物などが挙げられる。
【0014】
前記両性単量体(a)のうち、一般式(2)におけるQが酸素原子である単量体の製造方法としては、以下のように、α−ヒドロキシアルキル化に引き続いてベタイン化する方法が挙げられる。
(1)ジアルキルアミノアルキルアクリレートのα−ヒドロキシアルキル化反応;
α−ヒドロキシメチルアクリレート化合物の製造方法に関しては、その収率の向上や精製方法も含めて多くの特許文献に提案されている(例えば、特開昭61−134353号公報、特開平05−17375号公報、特開平07−285906号公報、特開平08−301817号公報及び特開平08−183758号公報など)。これらのうち特にジアルキルアミノアルキルアクリレートのα−ヒドロキシアルキル化反応に関しては、例えば、特開昭61−134353号公報に記載されている。具体的には、ジアルキルアミノアルキルアクリレートとアルデヒドを三級アミンの存在下に反応させてジアルキルアミノアルキルα−(ヒドロキシアルキル)アクリレートを製造する方法である。ジアルキルアミノアルキルアクリレートとしては、ジメチルアミノエチルアクリレート及びジエチルアミノエチルアクリレートなどが挙げられる。アルデヒドとしてホルムアルデヒドを使用した場合はα−(ヒドロキシメチル)基、即ち前記一般式(2)におけるR1が水素原子のものが生成し、アルデヒドとしてアセトアルデヒドを使用した場合はα−(1−ヒドロキシエチル)基、即ちR1がメチル基のものが生成する。三級アミンとしては、1,4−ジアザビシクロ−[2,2,2]−オクタン(以下において、DABCOと略記することがある)及びトリエチルアミンなどが挙げられる。ジアルキルアミノアルキルアクリレート/アルデヒドの仕込みモル比は、好ましくは1/0.9〜1/1.2、さらに好ましくは1/0.95〜1/1.05である。反応温度は、好ましくは20〜60℃、さらに好ましくは20〜40℃であり、反応時間は通常10〜100時間、好ましくは20〜80時間である。得られた組成生物を中和・溶剤抽出などを行って精製し目的物を得ることができる。
【0015】
(2)両性化反応(ベタイン化反応);
ジアルキルアミノアルキルα−(ヒドロキシアルキル)アクリレートと一般式(3)で示される化合物(B)とを反応させて両性化する。
X−R5−Z-+ (3)
式中、R5及びZは一般式(1)におけると同様であり、好ましいものも同様である。
Xはハロゲン原子、Mはカチオンである。Xで示されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。Mで示されるカチオンとしては、アルカリ金属原子(ナトリウム、カリウム及びリチウムなど)カチオン、アルカリ土類金属原子(カルシウム及びマグネシウムなど)カチオン、アンモニウムカチオン、有機アミン(モノメチルアミン、モノエチルアミン及びモノブチルアミンなどのモノアルキルアミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン及びジブチルアミンなどのジアルキルアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン及びトリブチルアミンなどのトリアルキルアミン;シクロヘキシルアミンなどの環状アミン;並びに、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンなどのアルカノールアミン)カチオン、及び第4級アンモニウムカチオン(テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン及びトリメチルベンジルアンモニウムカチオンなど)などが挙げられる。一般式(3)で示される化合物(B)の具体例としては、モノクロル酢酸ナトリウム、モノクロル酢酸カリウム、モノクロル酢酸モノエタノールアミン塩などが挙げられる。両性化反応における仕込みモル比、温度、時間及び精製方法などは、通常の方法でよく、例えば、ジアルキルアミノアルキルα−(ヒドロキシアルキル)アクリレートと一般式(3)で示される化合物(B)との仕込みモル比(アクリレート/化合物(B))は、通常0.8/1〜1/1.3、好ましくは1/1〜1/1.2である。なお、反応中の重合を防止するために重合禁止剤(例えば、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン及びフェノチアジンなど)を、アクリレートの重量に対して0.1〜3重量%添加することが好ましい。 溶剤としては、水、親水性有機溶剤(メタノール、エタノール及びイソプロパノールなどのアルコール類、アセトン及びメチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチルなどのエステル類)、又は水と親水性有機溶剤との混合溶剤が使用できる。溶剤として水の使用割合が多いほど両性化反応が進行しやすい。一方、水の使用量が少なく親水性有機溶剤の使用割合が多い(例えば90%以上)ほど副生する塩が析出し易く、副生塩の除去がし易いという利点がある。従って、工程上のコスト、及び得られる両性化物の使用目的を考慮して、溶剤の使用量や割合は適宜選択できる。反応温度は、通常は50〜100℃、好ましくは60〜90℃であり、反応時間は通常4〜30時間、好ましくは5〜20時間である。精製方法としては、副生塩が析出している場合は濾過、副生塩が溶解している場合は透析やイオン交換などが挙げられる。なお、反応条件、特に反応系の水分の量やpHによっては、副生物としてジアルキルアミノアルキルα−(ヒドロキシアルキル)アクリレートのヒドロキシル基が化合物(B)と反応してできるカルボキシアルキルエーテル化物(例えば、ジアルキルアミノアルキルα−(カルボキシメチルオキシメチル)アクリレート及びα−(カルボキシメチルオキシメチル)アクリロイルオキシエチルジメチルベタインなど)が生成することもあるが、これらの副生物は一般式(2)で示される単量体の重量に対して20重量%未満であれば、本願発明の効果に大きな影響を与えることがない。
【0016】
両性単量体(a)のうち、一般式(2)におけるQが−NH−である単量体の製造方法は、原料としての前記ジアルキルアミノアルキルアクリレートをジアルキルアミノアルキルアクリルアミドに変更することのみで製造する方法が挙げられる。
【0017】
両性単量体(a)のうち、一般式(2)におけるR4がエチレン基でZ-がCOO-である単量体の製造は、ジアルキルアミノアルキルα−(ヒドロキシアルキル)アクリレートとβ−プロピオラクトンとの反応により製造でき、R4がプロピレン基でZ-がSO3-である単量体の製造は、ジアルキルアミノアルキルα−(ヒドロキシアルキル)アクリレートと1,3−プロパンサルトンとの反応で製造できる(類似の反応が特公昭55−11128号公報に記載されている)。
【0018】
本発明における両性高分子(A)は、前記の両性単量体(a)のみを重合した単独重合体であってもよいが、その他の単量体(b)との共重合体であってもよい。その他の単量体(b)としては、例えば、下記の(b1)親水性ノニオン性ビニル単量体、(b2)疎水性ノニオン性ビニル単量体、(b3)アニオン性ビニル単量体、(b4)カチオン性ビニル単量体、及び(b5)前記の両性単量体(a)以外の両性単量体が挙げられる。
【0019】
(b1)親水性ノニオン性ビニル単量体
(b11)アミド基含有ビニル単量体
非置換又はモノアルキル(炭素数1〜4)置換(メタ)アクリルアミド[(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド及びN−エチル(メタ)アクリルアミドなど]、ジアルキル(炭素数1〜4)置換(メタ)アクリルアミド[N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド及びN,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドなど]、及びヒドロキシアルキル(炭素数1〜4)置換(メタ)アクリルアミド[N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド及びN,N−ジヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミドなど]が挙げられる。
(b12)ヒドロキシル基含有ビニル系単量体
ヒドロキシアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート[ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなど]及び炭素数3〜8のアルケノール[(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール及びイソクロチルアルコールなど]が挙げられる。
【0020】
(b13)ポリアルキレングリコール鎖含有ビニル系単量体
ポリアルキレングリコール(アルキレン基の炭素数2〜4、重合度2〜50)又はそのアルキル(炭素数1〜6)エーテルの(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコール(分子量100〜300)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量130〜500)モノアクリレート、メトキシポリエチレングリコール(分子量110〜310)(メタ)アクリレート及びラウリルアルコールEO付加物(2〜30モル)(メタ)アクリレート等]が挙げられる。
【0021】
(b2)疎水性ノニオン性ビニル単量体
炭素数2〜12の飽和脂肪酸のビニルエステル[酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニルなど]、アルキルビニルエーテル、アルキルビニルケトン、(メタ)アクリル酸アルキルエステル[メチル(メタ)アクリレート及びエチル(メタ)アクリレートなど]、マレイン酸ジアルキルエステル[ジメチルマレエート及びジエチルマレエートなど]、グルシジル(メタ)アクリレート、塩化ビニル、アルケン[エチレン、プロピレン、イソブチレン、ジイソブチレン及びドデセンなど]、アルカジエン[ブタジエン及びイソプレンなど]、脂環基含有ビニル単量体[シクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ピネン、リモネン及びビニルシクロヘキセンなど]、スチレン及び(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。
【0022】
(b3)アニオン性単量体;
(メタ)アクリル酸、α−メチル(メタ)アクリル酸、クロトン酸及び桂皮酸などの不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸などの不飽和ジカルボン酸;マレイン酸モノアルキルエステルなどの不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1〜8)エステル;ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びアルキル(炭素数3〜18)アリルスルホコハク酸エステルなどのスルホン酸基含有モノマー;(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートの硫酸化物などの硫酸エステル基含有ビニルモノマー;並びに、これらの塩[アルカリ金属(カリウム、ナトリウム等)塩、アンモニウム塩、アミン(アルキル基の炭素数が1〜4のアルキルアミン等)塩、第4級アンモニウム塩等]が挙げられる。
【0023】
(b4)カチオン性単量体;
アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、N−アミノエチル(メタ)アクリルアミド、及びこれらのモノアルキル(炭素数1〜6)置換体並びにモノ(メタ)アリルアミンなどの1級もしくは2級アミノ基含有モノマー;ジアルキル(炭素数1〜4)アミノアルキル(炭素数1〜8)(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミド[ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなど]、並びにモルホリノエチル(メタ)アクリレートなどの3級アミノ基含有モノマー;塩化トリメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及び塩化ジメチルジアリルなどの3級アミノ基含有モノマーの第4級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0024】
(b5)(a)以外の両性単量体;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートのカルボキシベタイン化物、及びジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートのカルボキシベタイン化物などが挙げられる。
【0025】
他のビニル単量体(b)のうち、好ましいのは、得られる両性高分子の水溶性の観点から、(b1)、(b3)及び(b5)、特に(b1)である。
なお、本発明における「水溶性」とは、100gの水に1g以上溶解することをいう。
【0026】
両性単量体(a)を重合して得られる両性高分子における両性単量体(a)のモル%は、全単量体のうちの3〜100モル%、好ましくは5〜60モル%である。3モル%未満では、得られる両性高分子は凝集性が弱い。また、(b)のモル%は、全単量体のうちの0〜97モル%、好ましくは40〜95モル%である。特に、(b)として疎水性ノニオン性ビニル単量体(b2)を使用する場合は、(b2)は、(A)の水溶性の観点から、全単量体のうちの10モル%以下、好ましくは5モル%以下である。
【0027】
(A)の製造法としては特に限定なく、例えば水溶液重合、逆相懸濁重合、沈澱重合および逆相乳化重合等のラジカル重合法を用いることができる。これらのうち工業的観点から好ましいのは、逆相乳化重合、およびさらに好ましいのは水溶液重合および逆相懸濁重合である。水溶液重合としては、例えばモノマー水溶液を外部からの熱の出入りがない容器中に入れ、断熱重合をする方法(例えば特公昭59−40843号公報)およびモノマーの水溶液を外部から温調可能な容器中で定温重合する方法(例えば特開平3−189000号公報)を用いることができる。
【0028】
逆相懸濁重合としては、例えば水溶性ビニルモノマーの水溶液を油溶性高分子物質またはノニオン性界面活性剤を分散安定剤として、油中水型に分散して重合する方法(例えば特開昭56−53111号公報)を用いることができる。また、逆相乳化重合としては、例えば水溶性ビニルモノマーの水溶液を界面活性剤を用いて、油中水型エマルションを形成して重合させる方法(例えば特許第2676483号公報および特開平9−208802号公報)を用いることができる。乳化する際に用いられる界面活性剤としては、例えば特許第2676483号公報および特開平9−208802号公報に記載の公知のものが使用でき、これらのうちでは、エマルションの安定性の観点から好ましいのは、ノニオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤と他のイオン性界面活性剤との併用である。
【0029】
上記ラジカル重合法におけるラジカル重合開始剤としては、通常のものが使用でき、水溶性アゾ化合物〔例えばアゾビスアミジノプロパン(塩)[2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド]、アゾビスシアノバレリン酸(塩)および2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン](塩)〕、油溶性アゾ化合物(例えばアゾビスシアノバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルおよびアゾビスシクロヘキサンカルボニトリル)、水溶性過酸化物(例えば過酸化水素、過酢酸およびt−ブチルパーオキサイド)、油溶性過酸化物(例えばベンゾイルパーオキシドおよびクメンヒドロキシパーオキシド)および無機過酸化物(例えば過硫酸アンモニウムおよび過硫酸ナトリウム)が挙げられる。上記の過酸化物は還元剤と組み合わせてレドックス開始剤として用いてもよく、還元剤としては重亜硫酸塩(例えば重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウムおよび重亜硫酸アンモニウム)、還元性金属塩および有機性還元剤(例えばアスコルビン酸)等が挙げられる。また、アゾ化合物、過酸化物およびレドックス開始剤はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上の開始剤を併用してもよい。また、必要により連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、および分子内に1つまたは2つ以上のチオール基を有する化合物が挙げられる。これらのうちで分子量制御の観点から好ましいのは、分子内に1つまたは2つ以上のチオール基を有する化合物である。
【0030】
ラジカル重合における単量体水溶液中の単量体濃度は、水溶液重合では単量体水溶液の全重量に基づいて、通常20〜80%、高分子量化の観点及び重合温度制御の観点から好ましくは25〜75%、さらに好ましくは30〜70%、特に好ましくは40〜65%、最も好ましくは50〜60%、逆相懸濁重合では、通常30〜90%、高分子量化の観点及び重合温度制御の観点から好ましくは40〜85%、さらに好ましくは45〜75%である。
【0031】
逆相懸濁重合における分散媒の使用量は、分散系の安定性の観点及び原料コストの観点から、単量体水溶液の全重量に基づいて、好ましくは25〜1,000%、さらに好ましくは40〜400%である。
【0032】
重合温度は、水溶液重合では、通常−10〜50℃、重合速度の観点から好ましくは下限が0℃、さらに好ましくは5℃、とくに好ましくは10℃であり、ポリマーの熱劣化防止の観点から好ましくは上限が40℃、さらに好ましくは30℃、とくに好ましくは25℃である。また、重合中は所定温度を一定(例えば所定重合温度±5℃)に保つように、適宜加熱、冷却して調節してもよいし、ガラス製の断熱容器等内で断熱重合してもよい。
【0033】
逆相懸濁重合における重合温度は、通常10〜95℃、重合速度の観点から好ましくは下限が20℃、より好ましくは30℃、とくに好ましくは40℃であり、ポリマーの熱劣化防止の観点から好ましくは上限が90℃、さらに好ましくは80℃、とくに好ましくは70℃である。予め所定重合温度に温調した分散媒に撹拌下でモノマーを随時滴下してもよい。滴下時間は、モノマー濃度、および重合反応発熱量により異なるが、通常0.5〜20時間である。
【0034】
重合時間は重合による発熱がなくなった時点で終了が確認できるが、通常発熱により重合開始を確認した時点から1〜24時間である。
【0035】
重合時の圧力(単位はkPa、以下絶対圧力を示す。)は、特に限定されないが、通常常圧下で行う。また、逆相懸濁重合の場合は、重合時の温度調節が容易である点から、好ましくは重合温度において、分散媒が沸騰する圧力または疎水性分散媒と水とが共沸する圧力が好ましい。具体的には、好ましくは5kPa〜95kPaである。
【0036】
重合時のモノマー水溶液のpHは、重合速度、得られる水溶性重合体の溶解性の観点から、好ましくは1〜8、さらに好ましくは2〜7、とくに好ましくは3〜6.5である。
上記pHに調整するために用いられるpH調整剤としては、酸性物質としては、無機酸(例えば塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸)、無機固体酸性物質(例えば酸性リン酸ソーダ、酸性ぼう硝、塩化アンモン、硫安、重硫安およびスルファミン酸)および有機酸(例えばシュウ酸、こはく酸およびリンゴ酸)が挙げられ、アルカリ性物質としては、無機アルカリ性物質(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよびアンモニア)および有機アルカリ性物質(例えばグアニジン)が挙げられる。なお、上記pHは、重合で用いるモノマー水溶液の原液についての室温(20℃)での測定値である。
【0037】
本発明における両性高分子(A)は、前述のように、予め製造されたカチオン性前駆体高分子を高分子反応(両性化反応)して製造することもできる。この方法は、一般式(4)で示される構成単位を有するカチオン性重合体(A0)と、前記化合物(B)、β−プロピオラクトン又は1,3−プロパンサルトンとを反応させる方法である。
【0038】
【化4】

【0039】
式中、R1は水素原子、メチル基又はエチル基、R2は炭素数1〜6のアルキレン基、R3及びR5は炭素数1〜6のアルキル基、Qは酸素原子又は−NH−である。
【0040】
カチオン性重合体(A0)は、前述のジアルキルアミノアルキルアクリレートのα−ヒドロキシアルキル化物(a0)を必須構成単量体として重合することにより得られる。
α−ヒドロキシアルキル化物(a0)の具体例としては、ジメチルアミノエチルα−(ヒドロキシアルキル)アクリレート、ジエチルアミノエチルα−(ヒドロキシアルキル)アクリレート、及びジメチルアミノエチルα−(ヒドロキシアルキル)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0041】
カチオン性重合体(A0)は、(a0)のみの単独重合体であってもよいが、前記他の単量体(b)との共重合体であってもよい。
【0042】
カチオン性単量体(a0)とその他の単量体(b)の割合(モル%)は、両性単位の効果を発揮しやすいという観点から、(a0)が好ましくは0.3〜85モル%、さらに好ましくは3〜80モル%であり、(b)が好ましくは15〜99.7モル%、さらに好ましくは20〜97モル%である。
【0043】
カチオン性単量体(a0)を必須構成単量体として重合する方法としては、前述と同様の通常のラジカル重合が挙げられる。
【0044】
得られたカチオン性重合体(A0)を、さらに前記一般式(4)で表される化合物(B)と反応させる反応条件は、前述の両性化反応の反応条件と同様である。
【0045】
本発明における両性高分子(A)の分子量は、凝集性能の観点から、1N−NaNO3 水溶液中30℃で測定した固有粘度(dl/g)で表した場合、下限は通常1、凝集性能(とくにフロック粒径の増大)の観点から好ましくは1.5、さらに好ましくは2、とくに好ましくは4、最も好ましくは6、上限は通常40、凝集性能(とくにフロック強度の向上)の観点から、好ましくは30、さらに好ましくは20、とくに好ましくは15、最も好ましくは12である。
【0046】
本発明の高分子凝集剤は、上記両性高分子(A)、及び必要によりその他の高分子を含有してもよい。その他の高分子としては、従来から高分子凝集剤として使用されている、カチオン性高分子、ノニオン性高分子、アニオン性高分子、及び(A)以外の両性高分子などが挙げられる。
【0047】
カチオン性高分子の具体例としては、例えばラジカル重合ポリマー[例えばポリ(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリルアミド−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドコポリマー、ポリエチレンイミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−スルホンコポリマー、ポリビニルピリジン、ポリメタアクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドおよびポリメタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライド]、縮合ポリマー(例えばエピクロルヒドリン−ジメチルアミン縮合物、ジメチルアミン−エチレンジクロライド縮合物およびジシアンジアミド−ホルマリン縮合物)および変性高分子(例えばポリビニルアミジン、ポリビニルイミダゾリン、ポリビニルアミン、アミノメチル化ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ヒドラジド、ビニルアミン−ビニルアセトアミドコポリマーおよびポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド)などが挙げられる。
【0048】
ノニオン性高分子の具体例としては、例えばラジカル重合ポリマー(例えばポリアクリルアミド、ポリビニルアセトアミドおよびポリビニルフェノール)、縮合ポリマー(例えばポリジオキソランおよびポリエチレングリコール)および変性高分子(例えばポリビニルアルコール)などが挙げられる。
【0049】
アニオン性高分子の具体例としては、例えばラジカル重合ポリマー[例えば(メタ)アクリルアミド−アクリル酸コポリマー、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸ソーダおよび2−アクリロイルアミノ2−メチルプロパンスルホン酸ソーダ−アクリルアミドコポリマー]などが挙げられる。
【0050】
(A)以外の両性高分子の具体例としては、例えばラジカル重合ポリマー[例えば(メタ)アクリルアミド−アクリル酸−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドコポリマーおよびジアリルジメチルアンモニウムクロライド−マレイン酸コポリマー]が挙げられる。これらのうち、凝集性能の観点から好ましいのはカチオン性および(A)以外の両性高分子である。
【0051】
これらの、その他の高分子を使用する場合の、両性高分子(A)/その他の高分子の重量割合は、通常20〜100/0〜80、好ましくは30〜90/10〜70、さらに好ましくは50〜90/10〜50である。
【0052】
本発明の高分子凝集剤は、0.1重量%濃度の水溶液とした時の水溶液pHが好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.0以下である。水溶液pHが4.0以下であればさらに十分な脱水性能が得られる。0.1重量%水溶液とした時の水溶液pHを4.0以下とするためには、本発明の高分子凝集剤は酸性物質を含有することが好ましい。酸性物質としては公知の無機もしくは有機の酸性物質酸が使用でき、具体例としては硫酸、塩酸、リン酸などの鉱酸;酸性リン酸ソーダ、酸性ぼう硝、塩化アンモン、硫安、重硫安、スルファミン酸などの無機固体酸性物質;シュウ酸などの有機酸があげられるが、効果および経済性から無機固体酸性物質が好ましく、中でもスルファミン酸、又は酸性ぼう硝がとくに好ましい。
【0053】
これらの酸性物質は適宜、本発明の高分子凝集剤を構成する両性高分子(A)と混合されるが、混合方法としては、使用上の簡便さから、粉末状の(A)に無機固体酸性物質を粉末ブレンドしておくか、あるいは(A)の製造時に酸性物質を加えておき、しかる後に両者をブレンドする方法が好ましい。
【0054】
本発明の高分子凝集剤は、下水、し尿、産業排水の処理で生じる有機性汚泥(いわゆる生汚泥、余剰汚泥、混合生汚泥、消化汚泥、凝沈・浮上汚泥およびこれらの混合物)に通常0.1〜0.2%水溶液として添加される。本発明の高分子凝集剤が対象とする汚泥にはとくに限定ないが、有機分含有量の高い汚泥、腐敗度の高い汚泥に対し特に有効であり好ましい。
【0055】
また、本発明の高分子凝集剤は、単独で汚泥脱水に使用しても良いが、脱水効果面からより好ましいのは、鉄塩、アルミ塩等の無機多価金属塩と併用する方法である。該無機多価金属塩としては、塩鉄、硫鉄、ポリ鉄、PAC、ばんど、石灰などが挙げられる。
【0056】
汚泥に対する本発明の高分子凝集剤の添加量は、通常1〜2%/汚泥固形分である。また、併用される無機多価金属塩の添加量は、通常0〜0.6%/汚泥固形分である。
【0057】
本発明の高分子凝集剤を添加された汚泥は、公知の方法で脱水されるが、脱水機としては遠心脱水機、ベルトプレス脱水機がとくに適している。
【0058】
[実施例]
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において、%は重量%を示す。
【0059】
<両性単量体(a−1)の製造例>
[ジメチルアミノエチル(α−ヒドロキシメチル)アクリレートのカルボキシベタイン化物の製造];
加熱撹拌装置および冷却器を備えたガラス製反応容器に、ジメチルアミノエチルアクリレート(以下、「DMAEA」と略記)143部(1.0モル部;興人株式会社製)、37%ホルムアルデヒド水溶液(メタノール含有量7%)78.4部(1.0モル部)及び1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(以下、DABCOと略記)7部(63ミリモル部;サンアプロ株式会社製)を仕込み、均一混合した後、28℃で48時間激しく攪拌して反応させた。この反応液に1N塩酸を加えてpHを5.8に調整した後、ジクロルメタン100mLで3回抽出し、有機相を飽和食塩水100mLで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、揮発成分を減圧で除去した。132部のジメチルアミノエチル(α−ヒドロキシメチル)アクリレート(以下、「OH−DMAEA」と略記)(純度98%、収率78%)が得られた。その後、加熱撹拌装置及び環流冷却器を備えたガラス製反応容器に、溶媒としてのイソプロピルアルコール300部、上記のOH−DMAEA132部(0.76モル部)、モノクロル酢酸カリウム126部(0.84モル部)及びメトキシハイドロキノン0.5部を仕込み、空気吹き込み下に80℃で5時間環流加熱して両性化反応を行った。反応終了後、反応系を室温まで冷却し、副生する塩化カリウムを直径8.5cmの5Cの濾紙を用いて加圧濾過器で1kg/cm2の圧力で濾過を行ない、濾液を減圧下で60〜65℃に加熱してイソプロピルアルコールを留去し、さらに減圧下に乾燥して、OH−DMAEAのベタイン化物からなる両性単量体(a−1)を得た(収率95%、両性化率96%、塩素含量0.2%)。
【0060】
<比較の両性単量体(b−1)の製造例>
[ジメチルアミノエチルアクリレートのカルボキシベタイン化物の製造];
加熱撹拌装置及び環流冷却器を備えたガラス製反応容器に、溶媒としてのイソプロピルアルコール300部、DMAEA109部(0.76モル部)、モノクロル酢酸カリウム126部(0.84モル部)及びメトキシハイドロキノン0.5部を仕込み、空気吹き込み下に80℃で5時間環流加熱して両性化反応を行った。反応終了後、反応系を室温まで冷却し、副生する塩化カリウムを直径8.5cmの5Cの濾紙を用いて加圧濾過器で1kg/cm2の圧力で濾過を行ない、濾液を減圧下で60〜65℃に加熱してイソプロピルアルコールを留去し、さらに減圧下に乾燥して、DMAEAのベタイン化物からなる比較の両性単量体(b−1)を得た(収率96%、両性化率97%、塩素含量0.2%)。
【0061】
製造例1
撹拌機を備えたコルベンに両性単量体(a−1)23.1部(10モル%)及びアクリルアミド63.9部(90モル%)を仕込み、さらに系内のモノマーの合計が30%となるようにイオン交換水203部を加え、系内が均一の溶液になるまで撹拌した。さらに撹拌を続けながら、硫酸を用いてモノマー水溶液のpH(20℃)をpHメーターで監視しながら4.0に調整した。次に、40℃の恒温槽中で溶液の温度を40℃に調整し、系内を窒素(純度99.999%以上)で充分に置換した(気相酸素濃度10ppm以下)。次いで開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライドの10%水溶液0.16部を撹拌しながら一気に加えた。約1分後に重合が開始し発熱が認められたが外部から冷却して内容物温度40〜50℃で10時間重合させた。その後、外部から加温して、70℃で1時間熟成し重合を完結させた。なお重合中、内容物が高粘度となり撹拌が困難となったため、撹拌は途中で停止した。重合完結後、内容物を取り出し、これにアセトン2,000部を加えて市販のジューサーミキサーで30分間撹拌して沈殿物を得た。この沈殿物を減圧ろ過(JIS規格2種のろ紙を使用)により取り出した後、沈殿物を減圧乾燥機中(減圧度1.3kPa、40℃×2時間)で溶媒を留去し、粉末状の共重合体(A−1)88部を得た(収率98%、固形分含量95%)。
【0062】
製造例2〜6及び比較製造例1〜6
単量体として、表1又は表2に記載の単量体を使用したこと以外は製造例1と同様にして、製造例の共重合体(A−2)〜(A−6)及び比較製造例の共重合体(B−1)〜(B−6)を得た。固有粘度[η](dl/g)は1N−NaNO3水溶液中、30℃で測定した値である。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
製造例1〜6及び比較製造例1〜6で得られた共重合体とスルファミン酸を表3に示す重量比で混合したものを用いて、K市下水混合生汚泥[汚泥中の蒸発残留物(TS)=2.0%、懸濁物中の有機物含有量(VSS/SS)=76%]を脱水試験した。まず汚泥に塩鉄を懸濁物(SS)に対して0.55%加えた後、各種の添加量の高分子凝集剤を加えて遠心脱水し、下式で計算されるSS回収率[遠心脱水後の懸濁物の回収率(%)]が95%以上になるような高分子凝集剤の添加量とその時のケーキ含水率(%)を調べた。
【0066】
<SS回収率(%)>
SS回収率(%)=(100−C3)(C1−C2)×100/C1{(100−C3)−C2}
ここで、C1は試験に使用した汚泥のTS(%)、C2はSS濃度(%)、C3はケーキ含水率(%)を示す。汚泥中の蒸発残留物(TS)、有機物含有量(VSS)は下水道試験方法(日本下水道協会、1984年度版)記載の分析方法に準じて行った。
【0067】
<ケーキ含水率(%)>
ジャーテスター[宮本理研工業(株)製、形式JMD−6HS−A]に板状の塩ビ製撹拌羽根(直径5cm、高さ2cm、厚さ0.2cm)2枚を十字になる様に上下に連続して撹拌棒に取り付け、汚泥または廃水200mlを500mlのビーカーに取り、ジャーテスターにセットした。ジャーテスターの回転数を120rpmにし、ゆっくり汚泥または廃水を撹拌しながら、所定量の0.2重量%の高分子凝集剤水溶液を一度に添加し、30秒間撹拌した後、一旦撹拌を止め、続いて回転数を300rpmにセットし、さらに30秒間撹拌した後、撹拌を止め凝集物を得た。T−1189のナイロン製ろ布[敷島カンバス(株)製、円形状、直径9cm]、ヌッチェ漏斗、及び300mlが測れるメスシリンダーをセットし、上記凝集物を一度に投入して濾過した。濾過した汚泥の一部をスパーテルで取り出し、プレスフィルター試験機を用いて脱水試験(2kg/cm2、60秒)を行い、試験後のろ布から脱水ケーキを採り、脱水ケーキ約3.0gをシャーレに秤量(W3)して、循風乾燥機中で完全に水分が蒸発するまで(例えば、105±5℃で8時間)乾燥させた後、シャーレ上に残った乾燥ケーキの重量を(W4)として、次式からケーキ含水率を算出した。
ケーキ含水率(重量%)={(W3)−(W4)}×100/(W3)
【0068】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の高分子凝集剤は、下水、し尿、産業排水の処理で生じる広範囲の有機性汚泥(いわゆる生汚泥、余剰汚泥、混合生汚泥、消化汚泥、凝沈・浮上汚泥およびこれらの混合物)処理に極めて有用であり、とくに従来脱水が困難であった有機分含有量(VSS/SS)の高い汚泥、腐敗度の高い汚泥に対して際だった効果を発揮する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示される構成単位を有する水溶性両性高分子(A)を含有する高分子凝集剤。
【化1】

(式中、R1は水素原子、メチル基又はエチル基、R2は炭素数1〜6のアルキレン基、R3及びR5は炭素数1〜6のアルキル基、R4は炭素数1〜3のアルキレン基、Qは酸素原子又は−NH−、Zは−COO又は−SO3である。)
【請求項2】
前記水溶性両性高分子(A)が1〜40dl/gの1N−NaNO3 水溶液中30℃で測定した固有粘度を有する請求項1記載の高分子凝集剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の高分子凝集剤を、汚泥又は廃水に添加、混合してフロックを形成させ、固液分離を行うことを特徴とする汚泥または廃水の処理方法。

【公開番号】特開2009−219978(P2009−219978A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65623(P2008−65623)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】