説明

高分子化合物、レジスト材料、及びパターン形成方法

【解決手段】一般式(1)で表される繰り返し単位を含有し、アルカリ現像液の作用によりアルカリ現像液溶解性が増大する高分子化合物。


(R1はH、F、メチル基、又はトリフルオロメチル基。R2はC1〜10のフッ素化1価炭化水素基。AnはC1〜15の(n+1)価の炭化水素基又はフッ素化炭化水素基。nは1〜3の整数。)
【効果】本発明により、繰り返し単位内に含フッ素アルキルカルボニルオキシ基を有し、アルカリ現像液の作用によりアルカリ現像液溶解性が増大する新規高分子化合物及びそれを添加剤として用いたレジスト材料が提供される。この高分子材料は波長200nm以下の放射線に対して優れた透明性を有し、樹脂の構造の選択により撥水性、滑水性、脂溶性、酸分解性、加水分解性など各種性能の調整が可能で、入手及び取り扱いが容易な原料から製造可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体素子などの製造工程における微細加工のためのフォトリソグラフィー、例えば波長193nmのArFエキシマレーザーを光源とし、投影レンズと基板との間に液体(例えば水)を挿入して露光を行う液浸フォトリソグラフィーにおいて、レジスト材料の成分として有効な高分子化合物、該高分子化合物を配合したレジスト材料及び該レジスト材料を用いたパターン形成方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が急速に進んでいる。その背景には露光光源の短波長化があり、例えば水銀灯のi線(365nm)、KrFエキシマレーザー(248nm)を経て、ArFエキシマレーザー(193nm)まで短波長化することにより65nmノードのデバイスの検討が実用化されている。更に近年、投影レンズと基板の間に水を含浸させて露光するArF液浸リソグラフィーの検討が開始され、NAが1.2以上のレンズと強い超解像技術の組み合わせで45nm以下の微細化が可能になった(非特許文献1:Proc. SPIE. Vol. 5040、 p724 (2003)参照)。
【0003】
ArF液浸露光においては、レジスト膜中の水溶性成分が露光時に液浸水へ溶出(リーチング)する可能性があり、露光中に発生した酸やレジスト材料に添加されている塩基性化合物が液浸水中に溶出し、パターンの形状変化やパターン倒れが発生するおそれがある。また、スキャン後に残った微量の水滴がレジスト膜中に染み込み、それが欠陥を誘発する可能性も指摘されている。そのため、ArF液浸リソグラフィーではレジスト膜と水の間に保護膜を設け、レジスト成分の溶出とレジスト膜内への水の浸透を抑える方法(トップコートプロセス)が提案されている(非特許文献2:2nd Immersion Work Shop:Resist and Cover Material Investigation for Immersion Lithography (2003)参照)。
【0004】
ArF液浸露光でトップコートを用いる場合、アルカリ現像液に可溶の保護膜材料を用いると保護膜除去の工程が不要となり、コスト面やプロセス面でのメリットが大きい。そのため、現在はアルカリ溶解性ユニット(例えば、含フッ素アルコール、カルボキシル基、スルホ基など)を有する樹脂を用いた非水溶性レジスト保護膜材料の開発が精力的に進められている(例えば、特許文献1:国際公開第2005/42453号パンフレット参照)。
【0005】
一方、保護膜材料を使わずにレジスト成分の溶出とレジスト膜内への水の浸透を抑える方法(トップコートレスプロセス)も開発されている(例えば、特許文献2,3:特開2006−48029号公報、特開2006−309245号公報参照)。トップコートレスプロセスではアルカリ可溶性の疎水性高分子化合物をレジスト材料に添加し、レジスト成膜時に疎水性化合物をレジスト表面に局在化させる。そのため、トップコートプロセスと同様の効果が期待できる上、保護膜の成膜と除去にかかる工程が不要であり、コスト的にも有利である。
【0006】
トップコート/トップコートレスのいずれのプロセスにおいても、ArF液浸露光ではスループットを高めるために300〜700(mm/s)程度のスキャン速度が求められている。このような高速スキャンを行う場合、レジスト膜又は保護膜の撥水性が不十分だとスキャン後の膜表面に水滴が残り、それが欠陥を誘発する可能性がある。このような欠陥の解消には塗布膜の撥水性及び滑水性(特に後退接触角)を向上させる必要がある。
【0007】
撥水性と滑水性に優れた材料の具体例としては、α−トリフルオロメチルアクリル酸エステルとノルボルネン誘導体の共重合体が挙げられる(非特許文献3:Proc. SPIE. Vol. 4690、 p18 (2002))。また、側鎖にヘキサフルオロアルコール単位を有する含フッ素閉環重合ポリマーも撥水性と滑水性に優れ、このポリマーは側鎖の水酸基を酸不安定基で保護することにより、更に滑水性能が向上することが報告されている(非特許文献4:Proc. SPIE. Vol. 6519、 p651905 (2007)参照)。
【0008】
上述の樹脂のように、ポリマー骨格にフッ素を導入すると撥水性や滑水性が飛躍的に向上するが、過度の導入はブロッブ欠陥と呼ばれる新たな欠陥を誘発する。この欠陥は現像後のスピンドライ時に発生し、現像後の表面接触角が高いと発生し易い。そのため、樹脂中へ親水性の高い置換基(例えば、カルボキシル基やスルホ基など)を導入し、現像後の表面接触角を下げればブロッブ欠陥は抑えられるが、これらの基は樹脂の撥水性や滑水性を低下させるため、上述のような高速スキャンには適用できない。それ故に、液浸露光時における高い撥水性と滑水性を維持しつつ、ブロッブ欠陥を抑えることが可能な材料の開発が望まれている。
【0009】
以上で述べた材料はArF液浸リソグラフィーにとどまらず、マスクブランクス用レジスト材料への応用も期待されている。マスクブランクスの露光では真空中で長時間の露光を行うが、その際にレジスト材料中のアミン成分がレジスト膜表面に吸着し、感度変動や形状変化を起こす可能性が指摘されている。そこで、界面活性効果のある化合物を添加することによりレジスト膜の表面改質を行い、レジスト膜にアミンが吸着するのを防ぐ方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2005/42453号パンフレット
【特許文献2】特開2006−48029号公報
【特許文献3】特開2006−309245号公報
【特許文献4】特開2007−187887号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Proc. SPIE. Vol. 5040、 p724 (2003)
【非特許文献2】2nd Immersion Work Shop:Resist and Cover Material Investigation for Immersion Lithography (2003)
【非特許文献3】Proc. SPIE. Vol. 4690、 p18 (2002)
【非特許文献4】Proc. SPIE. Vol. 6519、 p651905 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、撥水性と滑水性に優れ、現像欠陥が少なく、現像後のレジストパターン形状が良好な液浸リソグラフィーを実現可能とする添加剤用高分子化合物、それを用いたレジスト材料、更にはこの材料を用いたパターン形成方法を提供することを目的とする。本発明で用いる添加剤は波長200nm以下の放射線に対して優れた透明性を有し、樹脂の構造の選択により撥水性、滑水性、脂溶性、酸分解性、加水分解性など各種性能の調整が可能であり、かつ入手及び取り扱いが容易な原料からの製造が可能である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、繰り返し単位内に含フッ素アルキルカルボニルオキシ基を有する高分子化合物をレジスト添加剤として用いた場合、レジスト保護膜を使うことなく高速スキャンに耐えうる高撥水性かつ高滑水性のレジスト膜が実現することを見出した。更には、アルカリ現像液による上記ポリマーの加水分解により現像後のレジスト膜表面を親水性に改質し、その結果、ブロッブ欠陥が大幅に抑制できることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0014】
即ち、本発明は下記の高分子化合物、レジスト材料、及びパターン形成方法を提供する。
請求項1:
下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含有し、アルカリ現像液の作用によりアルカリ現像液溶解性が増大することを特徴とする高分子化合物。
【化1】


(式中、R1は水素原子、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基である。R2は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のフッ素化1価炭化水素基である。Anは炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の(n+1)価の炭化水素基又はフッ素化炭化水素基である。nは1〜3の整数である。)
請求項2:
下記一般式(1−1)で表される繰り返し単位を含有することを特徴とする請求項1に記載の高分子化合物。
【化2】


(式中、R1、R2、nは上記と同様である。)
請求項3:
下記一般式(1−2)で表される繰り返し単位を含有することを特徴とする請求項2に記載の高分子化合物。
【化3】


(式中、R1及びR2は上記と同様である。)
請求項4:
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の繰り返し単位(1)、(1−1)又は(1−2)に加えて、下記一般式(2a)〜(2h)で表される繰り返し単位のいずれか1種又は2種以上を有することを特徴とする高分子化合物。
【化4】


(式中、R1は上記と同様である。R4a及びR4bは水素原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基であり、R4aとR4bは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜8の非芳香環を形成することもできる。R5aは水素原子、炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基又はフッ素化1価炭化水素基、又は酸不安定基を示し、1価炭化水素基の場合、構成する−CH2−が−O−又は−C(=O)−に置換されていてもよい。R6a、R6b、R6cは水素原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基であり、R6aとR6b、R6aとR6c、R6bとR6cは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜8の非芳香環を形成することもできる。R7aは水素原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基である。R7bは炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基であり、R7aとR7bは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜8の非芳香環を形成することもできる。R8aは炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のフッ素化1価炭化水素基である。R9aは炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基又はフッ素化1価炭化水素基である。k1は0〜6の整数である。)
請求項5:
(A)請求項1乃至4のいずれか1項に記載の高分子化合物、(B)ベース樹脂としてラクトン環由来の骨格及び/又は水酸基を有する骨格及び/又は無水マレイン酸由来の骨格を有し、酸の作用によりアルカリ現像液に可溶となる高分子化合物、(C)高エネルギー線の露光により酸を発生する化合物、(D)有機溶剤を含有することを特徴とするレジスト材料。
請求項6:
(B)成分の高分子化合物が、(メタ)アクリル酸エステル重合体、(α−トリフルオロメチル)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、シクロオレフィン−無水マレイン酸共重合体、ポリノルボルネン、シクロオレフィンの開環メタセシス反応により得られる高分子化合物、シクロオレフィンの開環メタセシス反応により得られる重合体を水素添加して得られる高分子化合物、ヒドロキシスチレンと(メタ)アクリル酸エステル誘導体,スチレン,ビニルナフタレン,ビニルアントラセン,ビニルピレン,ヒドロキシビニルナフタレン,ヒドロキシビニルアントラセン,インデン,ヒドロキシインデン,アセナフチレン,ノルボルナジエン類のいずれかとを共重合した高分子化合物、ノボラックの中から選択されることを特徴とする請求項5に記載のレジスト材料。
請求項7:
(B)成分の高分子化合物が、下記一般式(B)−1〜(B)−6で示される繰り返し単位のいずれか1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項5に記載のレジスト材料。
【化5】


(式中、R101は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。R102及びR103はそれぞれ独立に水素原子又は水酸基を示す。R104は水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。R105は水素原子、又はCO2106を示し、R106は水素原子、又はハロゲン原子又は酸素原子を有していてもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。Xは酸不安定基、Yはラクトン構造を有する置換基、Zは水素原子、炭素数1〜15のフッ素化1価炭化水素基、又は炭素数1〜15のフルオロアルコール含有置換基、W1は酸素原子により置換されていてもよい炭素数1〜10の2価の有機基を示す。W2はCH2、CH2CH2、又は酸素原子を示す。a1は0〜3の整数、b1は1〜3の整数、c1は0〜2の整数、d1は1〜3の整数を示す。)
請求項8:
(A)請求項1乃至4のいずれか1項に記載の高分子化合物の添加量が、(B)酸の作用によりアルカリ現像液に可溶となる高分子化合物100質量部に対して、0.1〜50質量部であることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載のレジスト材料。
請求項9:
更に、(E)塩基性化合物を含有することを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載のレジスト材料。
請求項10:
更に、(F)溶解制御剤を含有することを特徴とする請求項5乃至9のいずれか1項に記載のレジスト材料。
請求項11:
(1)請求項5乃至10のいずれか1項に記載のレジスト材料を基板上に塗布する工程と、(2)加熱処理後、フォトマスクを介して高エネルギー線で露光する工程と、(3)現像液を用いて現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。
請求項12:
(1)請求項5乃至10のいずれか1項に記載のレジスト材料を基板上に塗布する工程と、(2)加熱処理後、投影レンズと基板の間に液体を挿入させ、フォトマスクを介して高エネルギー線で露光する工程と、(3)現像液を用いて現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。
請求項13:
(1)請求項5乃至10のいずれか1項に記載のレジスト材料を基板上に塗布する工程と、(2)レジスト膜の上に保護膜層を形成する工程と、(3)加熱処理後、投影レンズと基板の間に液体を挿入させ、フォトマスクを介して高エネルギー線で露光する工程と、(4)現像液を用いて現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。
請求項14:
前記露光工程において、投影レンズと基板の間に挿入する液体が水であることを特徴とする請求項12又は13に記載のパターン形成方法。
請求項15:
露光光源として波長180〜200nmの範囲の高エネルギー線を用いることを特徴とする請求項11乃至14のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
請求項16:
(1)請求項5乃至10のいずれか1項に記載のレジスト材料をマスクブランクス上に塗布する工程と、(2)加熱処理後、真空中電子ビームで露光する工程と、(3)現像液を用いて現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、繰り返し単位内に含フッ素アルキルカルボニルオキシ基を有し、アルカリ現像液の作用によりアルカリ現像液溶解性が増大する新規高分子化合物及びそれを添加剤として用いたレジスト材料が提供される。この高分子材料は波長200nm以下の放射線に対して優れた透明性を有し、樹脂の構造の選択により撥水性、滑水性、脂溶性、酸分解性、加水分解性など各種性能の調整が可能であり、かつ入手及び取り扱いが容易な原料からの製造が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[レジスト添加剤用高分子化合物の構成]
本発明で用いるレジスト添加剤用の高分子化合物は、下記一般式(1)、(1−1)又は(1−2)で表される繰り返し単位を含み、アルカリ現像液の作用によりアルカリ現像液溶解性が増大することを特徴とする。なお、以下では、下記式(1)、(1−1)又は(1−2)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を高分子化合物(P1)と呼ぶことにする。
【0017】
【化6】


(式中、R1は水素原子、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基である。R2は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のフッ素化1価炭化水素基である。Anは炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の(n+1)価の炭化水素基又はフッ素化炭化水素基である。nは1〜3の整数である。)
【0018】
上記式(1)、(1−1)、(1−2)において、R2の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のフッ素化1価炭化水素基の具体例としては、次に挙げる1価炭化水素基中の一部又は全部の水素原子をフッ素原子で置換した形式のものが好適に用いられる:メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、アダマンチル基。
特に好適に用いられるR2の具体例としては、下記のものが例示されるが、これらに限定はされない。
【0019】
【化7】


(上記式中、破線は結合手を示す。)
【0020】
上記式(1)において、Anの具体例としては、上述した1価炭化水素基又はフッ素化1価炭化水素基中のn個(nは1〜3の整数)の水素原子を引き抜いた形式のものが用いられ、特にアダマンチル基のn個の水素原子を引き抜いた形式のものが好ましい。
【0021】
高分子化合物(P1)は一般式(1)、(1−1)、(1−2)で表される繰り返し単位中にフッ素原子を含むため、ポリマー自体が界面活性剤として機能することができる。即ち、高分子化合物(P1)をレジスト材料に添加すると、高分子化合物(P1)は成膜と同時にレジスト膜表面に局在化して分布する。
【0022】
一般に含フッ素ポリマーは撥水性や滑水性に優れた性能を発揮する。そのため、高分子化合物(P1)をレジスト添加剤として用いると、レジスト材料の成膜と同時に撥水性と滑水性に優れたレジスト膜表面を作ることが可能になり、レジスト保護膜材料を使用したときと同様の効果が期待できる。この手法はレジスト保護膜の成膜と除去にかかる工程が不要である点でコスト的にも有利である。
【0023】
一般式(1)、(1−1)、(1−2)で表される繰り返し単位はアルカリ加水分解を受け易い含フッ素エステルを含むため、高分子化合物(P1)はアルカリ現像液により容易に加水分解される。そのため、高分子化合物(P1)をレジスト添加剤として用いると、アルカリ現像後のレジスト膜表面の親水性が高まり、現像後の表面接触角を大幅に下げることができる。その結果、ブロッブ欠陥の発生を抑えることが可能になる。
【0024】
なお、アルキルカルボニルオキシ基を有するアダマンタン骨格を含む高分子化合物としては特開2007−284381号公報に類似の例が記載されているが、これらはフォトレジスト材料のベース樹脂として開発されたものである。これに対し、本発明の一般式(1)、(1−1)及び(1−2)はアルキルカルボニルオキシ基中にフッ素原子を含むことが特徴であり、フォトレジスト材料の添加剤、特に界面活性剤として機能する点が先願とは異なる。即ち、アルキルカルボニルオキシ基中にフッ素を導入することにより、上述したポリマーの表面偏在能、高撥水性、高滑水性、高アルカリ加水分解性などの性能が実現する。また、本発明の高分子化合物では、R2の炭素数、分岐度、フッ素数、あるいは含フッ素アルキルカルボニルオキシ基の数などの構造制御が容易であり、レジスト添加剤として必要な撥水性、滑水性、ブロッブ耐性に応じた高分子化合物の製造が可能である。
【0025】
上記式(1)、(1−1)、(1−2)の繰り返し単位の具体例としては下記のものが例示されるが、これに限定はされない。
【0026】
【化8】


(式中、R1は前述と同様である。)
【0027】
本発明の高分子化合物(P1)では、一般式(1)、(1−1)又は(1−2)で表される繰り返し単位に加えて、下記一般式(2a)〜(2h)の繰り返し単位のいずれか1種又は2種以上を共存させることにより、撥水性、滑水性、アルカリ溶解性、現像後接触角に更に優れた高分子化合物が実現できる。
【0028】
【化9】


(式中、R1は上記と同様である。R4a及びR4bは水素原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基であり、R4aとR4bは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜8の非芳香環を形成することもできる。R5aは水素原子、炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基又はフッ素化1価炭化水素基、又は酸不安定基を示し、1価炭化水素基の場合、構成する−CH2−が−O−又は−C(=O)−に置換されていてもよい。R6a、R6b、R6cは水素原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基であり、R6aとR6b、R6aとR6c、R6bとR6cは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜8の非芳香環を形成することもできる。R7aは水素原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基である。R7bは炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基であり、R7aとR7bは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜8の非芳香環を形成することもできる。R8aは炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のフッ素化1価炭化水素基である。R9aは炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基又はフッ素化1価炭化水素基である。k1は0〜6の整数である。)
【0029】
4a、R4b、R5a、R6a、R6b、R6c、R7a、R7b、R8a、R9aにおいて、炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、アダマンチル基等が用いられる。R4a及びR4b、R6aとR6b、R6aとR6c、R6bとR6c、R7aとR7bは互いに結合して炭素数3〜8の非芳香環を形成することもできるが、その場合、これらの基はアルキレン基であり、上記で例示した1価炭化水素基中の1個の水素原子を引き抜いた形式のものが用いられ、該環の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0030】
5a、R8a、R9aにおいて、炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のフッ素化1価炭化水素基の具体例としては、上記の1価炭化水素基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子で置換した形式のものが用いられ、具体例としてはトリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロ−1−プロピル基、3,3,3−トリフルオロ−2−プロピル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル基、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロヘプチル基、2−(パーフルオロブチル)エチル基、2−(パーフルオロヘキシル)エチル基、2−(パーフルオロオクチル)エチル基、2−(パーフルオロデシル)エチル基などが例示できる。
【0031】
次にR5aの酸不安定基について説明する。酸不安定基としては種々のものを用いることができるが、具体的には下記一般式(L1)〜(L4)で示される基、炭素数4〜20、好ましくは4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基等を挙げることができる。
【0032】
【化10】


(上記式中、RL01及びRL02は水素原子又は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。RL03は炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10の酸素原子等のヘテロ原子を有してもよい一価の炭化水素基を示し、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されたものを挙げることができる。RL04は炭素数4〜20、好ましくは炭素数4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基又は上記一般式(L1)で示される基を示す。RL05は炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示す。RL06は炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基である。RL07〜RL16はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜15の一価の非置換又は置換炭化水素基を示す。yは0〜6の整数である。mは0又は1、nは0〜3の整数であり、2m+n=2又は3である。なお、破線は結合手を示す。)
【0033】
式(L1)において、RL01及びRL02の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、アダマンチル基等が例示できる。
【0034】
L03は炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10の酸素原子等のヘテロ原子を有してもよい一価の炭化水素基を示し、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されたものを挙げることができ、具体的には、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基としては上記RL01、RL02と同様のものが例示でき、置換アルキル基としては下記の基等が例示できる。
【0035】
【化11】

【0036】
L01とRL02、RL01とRL03、RL02とRL03とは互いに結合してこれらが結合する炭素原子や酸素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合には環の形成に関与するRL01、RL02、RL03はそれぞれ炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。
【0037】
式(L2)において、RL04の三級アルキル基の具体例としては、tert−ブチル基、tert−アミル基、1,1−ジエチルプロピル基、2−シクロペンチルプロパン−2−イル基、2−シクロヘキシルプロパン−2−イル基、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)プロパン−2−イル基、2−(アダマンタン−1−イル)プロパン−2−イル基、1−エチルシクロペンチル基、1−ブチルシクロペンチル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−ブチルシクロヘキシル基、1−エチル−2−シクロペンテニル基、1−エチル−2−シクロヘキセニル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基等が例示できる。また、トリアルキルシリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基等が例示でき、オキソアルキル基の具体例としては、3−オキソシクロヘキシル基、4−メチル−2−オキソオキサン−4−イル基、5−メチル−2−オキソオキソラン−5−イル基等が例示できる。
【0038】
式(L3)において、RL05の炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等に置換されたもの、又はこれらのメチレン基の一部が酸素原子又は硫黄原子に置換されたもの等が例示できる。また、炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基の具体例としては、フェニル基、メチルフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基等が例示できる。
【0039】
式(L4)において、RL06の炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基の具体例としては、RL05と同様のもの等が例示できる。
【0040】
L07〜RL16において、炭素数1〜15の一価の炭化水素基としては、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等に置換されたもの等が例示できる。
【0041】
L07〜RL16は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよく(例えば、RL07とRL08、RL07とRL09、RL08とRL10、RL09とRL10、RL11とRL12、RL13とRL14等)、その場合には環の形成に関与する基は炭素数1〜15の二価の炭化水素基を示し、具体的には上記一価の炭化水素基で例示したものから水素原子を1個除いたもの等が例示できる。また、RL07〜RL16は隣接する炭素に結合するもの同士で何も介さずに結合し、二重結合を形成してもよい(例えば、RL07とRL09、RL09とRL15、RL13とRL15等)。
【0042】
上記式(L1)で示される酸不安定基のうち直鎖状又は分岐状のものとしては、具体的には下記の基が例示できる。
【化12】

【0043】
上記式(L1)で示される酸不安定基のうち環状のものとしては、具体的にはテトラヒドロフラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロピラン−2−イル基等が例示できる。
【0044】
上記式(L2)の酸不安定基としては、具体的にはtert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基、tert−アミロキシカルボニル基、tert−アミロキシカルボニルメチル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニルメチル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニルメチル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニルメチル基、1−エトキシエトキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロフラニルオキシカルボニルメチル基等が例示できる。
【0045】
上記式(L3)の酸不安定基としては、具体的には1−メチルシクロペンチル、1−エチルシクロペンチル、1−n−プロピルシクロペンチル、1−イソプロピルシクロペンチル、1−n−ブチルシクロペンチル、1−sec−ブチルシクロペンチル、1−シクロヘキシルシクロペンチル、1−(4−メトキシ−n−ブチル)シクロペンチル、1−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)シクロペンチル、1−(7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)シクロペンチル、1−メチルシクロヘキシル、1−エチルシクロヘキシル、3−メチル−1−シクロペンテン−3−イル、3−エチル−1−シクロペンテン−3−イル、3−メチル−1−シクロヘキセン−3−イル、3−エチル−1−シクロヘキセン−3−イル等が例示できる。
【0046】
上記式(L4)の酸不安定基としては、下記式(L4−1)〜(L4−4)で示される基が特に好ましい。
【化13】


(式中、RL41はそれぞれ独立に炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の1価炭化水素基を示す。破線は結合位置及び結合方向を示す。)
【0047】
上記式(L4−1)〜(L4−4)中、RL41の1価炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を例示できる。
【0048】
前記一般式(L4−1)〜(L4−4)には、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在しえるが、前記一般式(L4−1)〜(L4−4)は、これらの立体異性体の全てを代表して表す。これらの立体異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0049】
例えば、前記一般式(L4−3)は下記一般式(L4−3−1)と(L4−3−2)で示される基から選ばれる1種又は2種の混合物を代表して表すものとする。
【化14】


(式中、RL41は前述と同様である。)
【0050】
また、上記一般式(L4−4)は下記一般式(L4−4−1)〜(L4−4−4)で示される基から選ばれる1種又は2種以上の混合物を代表して表すものとする。
【化15】


(式中、RL41は前述と同様である。)
【0051】
上記一般式(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)、及び式(L4−4−1)〜(L4−4−4)は、それらのエナンチオ異性体及びエナンチオ異性体混合物をも代表して示すものとする。
【0052】
なお、式(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)、及び式(L4−4−1)〜(L4−4−4)の結合方向がそれぞれビシクロ[2.2.1]ヘプタン環に対してexo側であることによって、酸触媒脱離反応における高反応性が実現される(特開2000−336121号公報参照)。これらビシクロ[2.2.1]ヘプタン骨格を有する三級exo−アルキル基を置換基とする単量体の製造において、下記一般式(L4−1−endo)〜(L4−4−endo)で示されるendo−アルキル基で置換された単量体を含む場合があるが、良好な反応性の実現のためにはexo比率が50%以上であることが好ましく、exo比率が80%以上であることが更に好ましい。
【化16】


(式中、RL41は前述と同様である。)
【0053】
上記式(L4)の酸不安定基としては、具体的には下記の基が例示できる。
【化17】

【0054】
5aの酸不安定基として用いられる炭素数4〜20の三級アルキル基の具体例としては、tert−ブチル基、tert−アミル基、1,1−ジエチルプロピル基、2−シクロペンチルプロパン−2−イル基、2−シクロヘキシルプロパン−2−イル基、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)プロパン−2−イル基、2−(アダマンタン−1−イル)プロパン−2−イル基、1−エチルシクロペンチル基、1−ブチルシクロペンチル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−ブチルシクロヘキシル基、1−エチル−2−シクロペンテニル基、1−エチル−2−シクロヘキセニル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基等が例示できる。また、トリアルキルシリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基等が例示でき、オキソアルキル基の具体例としては、3−オキソシクロヘキシル基、4−メチル−2−オキソオキサン−4−イル基、5−メチル−2−オキソオキソラン−5−イル基等が例示できる。
【0055】
上記式(2a)〜(2h)の繰り返し単位の具体例としては下記のものが例示されるが、これに限定はされない。
【0056】
【化18】


(式中、R1は前述と同様である。)
【0057】
本発明の高分子化合物(P1)は、一般式(1)、(1−1)、(1−2)、及び(2a)〜(2h)で表される繰り返し単位の組み合わせだけでも十分な性能を発揮できるが、更なる撥水性や滑水性の付与、アルカリ溶解性や現像液親和性のコントロールのため、更に下記一般式(3a)〜(3e)、(4a)〜(4e)、(5a)〜(5c)、(6a)〜(6c)で表される繰り返し単位のいずれか1種又は2種以上を組み合わせて構成することも可能である。
【0058】
【化19】


(式中、R11は炭素数1〜15の1価炭化水素基又はフッ素化1価炭化水素基である。R12は密着性基である。R13は酸不安定基である。R14は単結合又は炭素数1〜15の2価の有機基である。R15及びR16は水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。)
【0059】
11の炭素数1〜15の1価炭化水素基又はフッ素化1価炭化水素基としては、R5aやR8aと同様のものが用いられる。
12の密着性基としては種々選定されるが、特に下記式で例示される基等であることが好ましい。
【0060】
【化20】

【0061】
【化21】



(式中、破線は結合手を示す。)
【0062】
13の酸不安定基としては、R5aで説明したものと同様のものが用いられる。
14の炭素数1〜15の2価の有機基としては、既述した1価炭化水素基中の1個の水素原子を引き抜いた形式のもの(例えば、メチレン基やエチレン基)が用いられる他、下記式で例示される基等も用いることができる。
【0063】
【化22】


(式中、破線は結合手を示す。)
【0064】
[重合性単量体化合物の合成]
本発明の高分子化合物(P1)は、一般式(1)、(1−1)又は(1−2)で表される繰り返し単位を必須単位として含むことを特徴とする。これらの繰り返し単位に対応する重合性単量体化合物は公知文献(例えば、特開2007−284381号公報参照)に記載の方法、即ち下記工程にて製造することができるが、この方法に限定されるものではない。
【0065】
【化23】


(式中、R1、R2、An、nは前記と同様である。)
【0066】
この反応例では原料を塩基存在下でR2を含む酸無水物と反応させる。用いられる塩基としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド、トリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。塩基の使用量は構造に依存するが、原料中の水酸基1モルに対し0.01〜10モル、好ましくは1〜6モルの範囲である。
【0067】
反応で用いられる溶媒として、n−ヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル等が例示でき、これらは単独又は混合して使用されることが好ましい。
【0068】
反応温度は反応条件により適切な反応温度を選択できるが、通常、室温、水冷もしくは氷冷下で行われる。反応時間は収率向上のため薄層クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィーなどにより反応の進行を追跡して決定することが好ましいが、通常0.1〜240時間程度である。
【0069】
反応終了後は、水系後処理(aqueous work−up)や濃縮等の後処理により目的物の重合性エステル化合物を得る。得られた化合物は必要に応じて再結晶、クロマトグラフィー、蒸留などの常法により精製することが可能である。
【0070】
[高分子化合物の合成]
高分子化合物(P1)を合成する場合、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNと略記)等の開始剤を用いるラジカル重合、アルキルリチウム等を用いるイオン重合(アニオン重合)等の一般的重合手法を用いることが可能であり、これらの重合はその常法に従って実施することができる。このうち、高分子化合物(P1)の合成はラジカル重合により製造を行うことが好ましい。この場合、重合条件は開始剤の種類と添加量、温度、圧力、濃度、溶媒、添加物等によって支配される。
【0071】
ラジカル重合開始剤としては特に限定されるものではないが、例としてAIBN、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル等のアゾ系化合物、tert−ブチルパーオキシピバレート、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレート等の過酸化物系化合物、過硫酸カリウムのような水溶性重合開始剤、更には過硫酸カリウムや過酸化水素等の過酸化物と亜硫酸ナトリウムのような還元剤の組み合わせからなるレドックス系開始剤等が例示される。重合開始剤の使用量は種類や重合条件等に応じて適宜変更可能であるが、通常は重合させるべき単量体全量に対して0.001〜10モル%、特に0.01〜6モル%が採用される。
【0072】
高分子化合物(P1)を合成する場合、分子量の調整のためにドデシルメルカプタンや2−メルカプトエタノールのような公知の連鎖移動剤を併用してもよい。その場合、これらの連鎖移動剤の添加量は重合させる単量体の総モル数に対して0.01〜10モル%であることが好ましい。
【0073】
高分子化合物(P1)を合成する場合、一般式(1)、(1−1)、(1−2)、(2a)〜(2h)、(3a)〜(3e)、(4a)〜(4e)、(5a)〜(5c)、(6a)〜(6c)で表される繰り返し単位に対応する重合性モノマーを混合し、上述の開始剤や連鎖移動剤を添加して重合を行う。
【0074】
高分子化合物(P1)において、
一般式(1)、(1−1)、(1−2)の単位に対応するモノマーの総モル数をU1、
一般式(2a)〜(2h)の単位に対応するモノマーの総モル数をU2、
一般式(3a)〜(3e)、(4a)〜(4e)、(5a)〜(5c)、(6a)〜(6c)の単位に対応するモノマーの総モル数をU3、
U1+U2+U3=U(=100モル%)
とした場合、
0<U1/U<1、より好ましくは0.1≦U1/U≦0.9、更に好ましくは0.2≦U1/U≦0.8、
0≦U2/U<1、より好ましくは0.1≦U2/U≦0.9、更に好ましくは0.2≦U2/U≦0.8、
0≦U3/U<1、より好ましくは0≦U3/U≦0.4、更に好ましくは0≦U3/U≦0.2
である。
【0075】
重合を行う際には、必要に応じて溶媒を用いてもよい。重合溶媒としては重合反応を阻害しないものが好ましく、代表的なものとしては、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の脂肪族又は芳香族炭化水素類、イソプロピルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤が使用できる。これらの溶剤は単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。重合溶媒の使用量は、目標となる重合度(分子量)、開始剤の添加量、重合温度等の重合条件に応じて適宜変更可能であり、通常は重合させる単量体の濃度が0.1〜95質量%、特に5〜90質量%になるように溶媒を添加する。
【0076】
重合反応の反応温度は、重合開始剤の種類あるいは溶媒の沸点により適宜変更されるが、通常は20〜200℃が好ましく、特に50〜140℃が好ましい。かかる重合反応に用いる反応容器は特に限定されない。
【0077】
このようにして得られた重合体の溶液又は分散液から、媒質である有機溶媒又は水を除去する方法としては、公知の方法のいずれも利用できるが、例を挙げれば再沈澱濾過又は減圧下での加熱留出等の方法がある。
【0078】
高分子化合物(P1)の場合、重量平均分子量(Mw)が小さすぎると水への溶解が起こり易くなるが、重量平均分子量が大きすぎるとアルカリ溶解性の低下やスピンコート時の塗布欠陥の原因になる可能性が高い。その観点から、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量において1,000〜500,000、特に2,000〜30,000であることが望ましい。
【0079】
高分子化合物(P1)において、一般式(2a)、(2b)、(2f)のR5a、一般式(3c)、(4c)のR13については、後保護化反応により導入することも可能である。即ち、予めR5aやR13が水素のモノマーを重合して高分子化合物を合成後、下記式に示すような後保護化反応により得られたポリマーの水酸基の一部又は全部をR5aやR13で置換する。
【0080】
【化24】

(式中、R5a及びR13は前記と同様である。Xは塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である。)
【0081】
後保護化反応では、水酸基の置換率目標値に対し1〜2当量の塩基を高分子化合物と反応させた後、塩基に対し1〜2当量のR5a−X又はR13−Xと反応させることにより、目的の後保護化高分子化合物を得ることができる。
【0082】
後保護化反応の際に用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類から選択して1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、塩基としては、水素化ナトリウム、n−ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0083】
本発明の高分子化合物(P1)をレジスト材料に添加する場合、添加する高分子化合物(P1)の合計質量は、レジスト材料のベース樹脂(B)100質量部に対して0.1〜50質量部、特に0.5〜10質量部が好ましい。添加量が0.1質量部以上であればレジスト膜表面と水との後退接触角が十分に向上し、50質量部以下であればレジスト膜のアルカリ現像液への溶解速度が小さく、形成した微細パターンの高さが十分に保たれる。
【0084】
[レジスト材料の構成]
本発明のレジスト材料では、高分子化合物(P1)を後述する(B)ベース樹脂とブレンドして使用する。高分子化合物(P1)は複数個のフッ素原子を含むためポリマー全体が界面活性剤として機能し、スピンコートの際に高分子化合物(P1)はレジスト膜の上層に局在化する。その結果、レジスト表面の撥水性と滑水性が向上すると共に、レジスト材料中の水溶性化合物のリーチングを抑制することができる。また、上述の通り、高分子化合物(P1)はアルカリ加水分解を受け易い構造を含むため、現像後のレジスト膜表面の親水性を高めることが可能であり、その結果、ブロッブ欠陥の発生を抑えることができる。
【0085】
本発明のレジスト材料は、(B)ラクトン環由来の骨格及び/又は水酸基を有する骨格及び/又は無水マレイン酸由来の骨格を有し、酸の作用によりアルカリ現像液に可溶となる高分子化合物(以下、(B)ベース樹脂と略記)を含む。(B)ベース樹脂を構成する高分子化合物としては、(メタ)アクリル酸エステル系、(α−トリフルオロメチル)アクリル酸エステルと無水マレイン酸との共重合系、シクロオレフィンと無水マレイン酸との交互共重合系、ポリノルボルネン系、シクロオレフィン開環メタセシス重合系、シクロオレフィン開環メタセシス重合体の水素添加系ポリマー、更に、ヒドロキシスチレンと(メタ)アクリル酸エステル誘導体,スチレン,ビニルナフタレン,ビニルアントラセン,ビニルピレン,ヒドロキシビニルナフタレン,ヒドロキシビニルアントラセン,インデン,ヒドロキシインデン,アセナフチレン,ノルボルナジエン類のいずれかとを共重合した高分子化合物、ノボラック等が用いられ、その具体例は特開2008−111103号公報の段落[0072]〜[0120]に記載されている。
【0086】
(B)ベース樹脂を構成する高分子化合物としては、下記一般式(B)−1〜(B)−6で示される繰り返し単位のいずれか1種又は2種以上を含むものが好適に用いられる。
【0087】
【化25】


(式中、R101は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。R102及びR103はそれぞれ独立に水素原子又は水酸基を示す。R104は水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。R105は水素原子、又はCO2106を示し、R106は水素原子、又はハロゲン原子又は酸素原子を有していてもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。Xは酸不安定基、Yはラクトン構造を有する置換基、Zは水素原子、炭素数1〜15のフッ素化1価炭化水素基、又は炭素数1〜15のフルオロアルコール含有置換基、W1は酸素原子により置換されていてもよい炭素数1〜10の2価の有機基を示す。W2はCH2、CH2CH2、又は酸素原子を示す。a1は0〜3の整数、b1は1〜3の整数、c1は0〜2の整数、d1は1〜3の整数を示す。)
【0088】
上記式(B)−1において、Xの酸不安定基としてはR5aで説明したものと同様のものが用いられる。
【0089】
上記式(B)−5において、R104の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、アダマンチル基が例示できる。
【0090】
上記式(B)−6において、R106のハロゲン原子又は酸素原子を有していてもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロペンチル基、1−エチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル基、2−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル基、2−メチルアダマンタン−2−イル基、2−エチルアダマンタン−2−イル基、8−メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基、8−エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基、4−メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4−イル基、4−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4−イル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、及びR2で説明したフッ素化1価炭化水素基やR12で説明した密着性基等が例示できる。
【0091】
一般式(B)−1の繰り返し単位の具体例としては下記のものを例示できるが、これらに限定はされない。
【0092】
【化26】

【0093】
【化27】

【0094】
【化28】


(式中、R101は前記と同様である。)
【0095】
上記一般式(B)−2の繰り返し単位の具体例としては下記のものを例示できるが、これらに限定はされない。
【0096】
【化29】


(式中、R101は前記と同様である。)
【0097】
上記一般式(B)−3の繰り返し単位の具体例としては下記のものを例示できるが、これらに限定はされない。
【0098】
【化30】


(式中、R101は前記と同様である。)
【0099】
上記一般式(B)−4の繰り返し単位の具体例としては下記のものを例示できるが、これらに限定はされない。
【0100】
【化31】


(式中、R101は前記と同様である。)
【0101】
上記一般式(B)−5の繰り返し単位の具体例としては下記のものを例示できるが、これらに限定はされない。
【0102】
【化32】


(式中、R101は前記と同様である。)
【0103】
上記一般式(B)−6の繰り返し単位の具体例としては下記のものを例示できるが、これらに限定はされない。
【0104】
【化33】

【0105】
【化34】


(式中、R101及びW2は前記と同様である。)
【0106】
(B)ベース樹脂を構成する高分子化合物は、上記一般式(B)−1〜(B)−6で示される繰り返し単位以外に、メタクリル酸メチル、クロトン酸メチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル等の置換アクリル酸エステル類、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、ノルボルネン、ノルボルネン誘導体、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデセン誘導体などの環状オレフィン類、無水イタコン酸等の不飽和酸無水物、その他の単量体から得られる繰り返し単位を含んでもよい。
【0107】
本発明のレジスト材料を電子線リソグラフィー用に使用する場合、(B)ベース樹脂を構成する高分子化合物は、下記一般式(B)−7〜(B)−11で示される繰り返し単位のいずれか1種又は2種以上を含むものが好適に用いられる。
【0108】
【化35】


(式中、R101及びXは前記と同様である。R107は酸素原子、−O−C(=O)O−、−O−CH2−C(=O)O−を示す。)
【0109】
上記一般式(B)−7において、Xの酸不安定基としてはR5aで説明したものと同様のものが用いられる。
【0110】
上記一般式(B)−7の繰り返し単位の具体例としては下記のものを例示できるが、これらに限定はされない。
【0111】
【化36】


(式中、R101は前記と同様である。)
【0112】
本発明のレジスト材料を電子線リソグラフィー用として使用する場合、(B)ベース樹脂を構成する高分子化合物は、上記一般式(B)−7〜(B)−11で示される繰り返し単位以外に、上記一般式(B)−1〜(B)−6で表される繰り返し単位を含むことができる。また、メタクリル酸メチル、クロトン酸メチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル等の置換アクリル酸エステル類、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、ノルボルネン、ノルボルネン誘導体、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデセン誘導体などの環状オレフィン類、無水イタコン酸等の不飽和酸無水物、その他の単量体から得られる繰り返し単位を含んでもよい。
【0113】
(B)ベース樹脂を構成する高分子化合物において、酸不安定基にかかわる単位、例えば上記一般式(B)−1及び/又は(B)−7の含有割合は0〜80モル%、好ましくは1〜50モル%、より好ましくは10〜40モル%である。また、これら高分子化合物の酸不安定基以外にかかわる単位の含有割合は20〜100モル%、より好ましくは50〜99モル%、特に好ましくは60〜90モル%である。
【0114】
(B)ベース樹脂を構成する高分子化合物としては、上述した高分子化合物以外に、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解速度が増加する他の樹脂を加えてもよい。例としては、i)ポリ(メタ)アクリル酸誘導体、ii)ノルボルネン誘導体−無水マレイン酸の共重合体、iii)開環メタセシス重合体の水素添加物、iv)ビニルエーテル−無水マレイン酸−(メタ)アクリル酸誘導体の共重合体、v)ポリヒドロキシスチレン誘導体などを挙げることができるが、これに限定はされない。
【0115】
このうち、開環メタセシス重合体の水素添加物の具体例としては下記のものを例示できるが、これらに限定はされない。
【0116】
【化37】

【0117】
【化38】

【0118】
【化39】

【0119】
本発明のレジスト材料は化学増幅ポジ型レジスト材料として機能するため、(C)高エネルギー線の露光により酸を発生する化合物(以下、(C)光酸発生剤と略記)を含んでもよい。光酸発生剤の成分としては、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでも構わないが、好適な光酸発生剤としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、オキシム−O−スルホネート型酸発生剤等が挙げられ、その具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0123]〜[0138]に記載されている。
【0120】
(C)光酸発生剤としては、特に下記一般式(C)−1で示されるものが好適に用いられる。
【化40】


(式中、R405、R406、R407はそれぞれ独立に水素原子、又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基、特にアルキル基又はアルコキシ基を示す。R408はヘテロ原子を含んでもよい炭素数7〜30の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。)
【0121】
405、R406、R407のヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、エチルシクロペンチル基、ブチルシクロペンチル基、エチルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、アダマンチル基、エチルアダマンチル基、ブチルアダマンチル基、及びこれらの基の任意の炭素−炭素結合間に−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−NH−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−C(=O)NH−等のヘテロ原子団が挿入された基、任意の水素原子が−OH、−NH2、−CHO、−CO2H等の官能基に置換された基を例示することができる。R408はヘテロ原子を含んでもよい炭素数7〜30の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示し、具体的には以下のものが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【化41】

【0122】
(C)−1で示される酸発生剤の具体例としては以下のものが例示できるが、これに限定はされない。
【化42】

【0123】
【化43】

【0124】
本発明の化学増幅型レジスト材料における(C)成分として添加する光酸発生剤の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲であればいずれでもよいが、レジスト材料中のベース樹脂100質量部に対し0.1〜30質量部、好ましくは0.1〜20質量部である。(C)成分の光酸発生剤の割合が多すぎる場合には、解像性の劣化や、現像/レジスト剥離時の異物の問題が起きる可能性がある。上記(C)成分の光酸発生剤は、単独でも2種以上混合して用いることもできる。更に、露光波長における透過率が低い光酸発生剤を用い、その添加量でレジスト膜中の透過率を制御することもできる。
【0125】
なお、光酸発生剤を2種以上混合して用い、一方の光酸発生剤がいわゆる弱酸を発生するオニウム塩である場合、酸拡散制御の機能を持たせることもできる。即ち、強酸(例えばフッ素置換されたスルホン酸)を発生する光酸発生剤と弱酸(例えばフッ素置換されていないスルホン酸もしくはカルボン酸)を発生するオニウム塩を混合して用いた場合、高エネルギー線照射により光酸発生剤から生じた強酸が未反応の弱酸アニオンを有するオニウム塩と衝突すると塩交換により弱酸を放出し強酸アニオンを有するオニウム塩を生じる。この過程で強酸がより触媒能の低い弱酸に交換されるため見かけ上、酸が失活して酸拡散の制御を行うことができる。
【0126】
ここで強酸を発生する光酸発生剤がオニウム塩である場合には上記のように高エネルギー線照射により生じた強酸が弱酸に交換することはできるが、高エネルギー線照射により生じた弱酸は未反応の強酸を発生するオニウム塩と衝突して塩交換を行うことはできない。これらはオニウムカチオンがより強酸のアニオンとイオン対を形成し易いとの現象に起因する。
【0127】
本発明のレジスト材料は、更に、(D)有機溶剤、(E)塩基性化合物、(F)溶解制御剤、(G)界面活性剤、(H)アセチレンアルコール類のいずれか1種以上を含有することができる。
【0128】
本発明のレジスト材料に用いる(D)有機溶剤は、高分子化合物(P1)、レジストのベース樹脂(B)、酸発生剤(C)、その他の添加剤等が溶解可能な有機溶剤であればいずれでもよく、具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0144]に記載されている。有機溶剤としては単独でも2種以上を混合して使用することもできる。有機溶剤の使用量は、レジスト材料中のベース樹脂(B)100質量部に対して200〜10,000質量部、特に400〜7,000質量部が好適である。本発明では、レジスト成分中の酸発生剤の溶解性が最も優れているジエチレングリコールジメチルエーテルや1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びその混合溶剤が好ましく使用される。
【0129】
本発明のレジスト材料に用いる(E)塩基性化合物は、含窒素有機化合物が好適であり、1種又は2種以上の含窒素有機化合物を配合して用いることができる。含窒素有機化合物としては、酸発生剤より発生する酸がレジスト膜中に拡散する際の拡散速度を抑制することができる化合物が適している。含窒素有機化合物の配合により、レジスト膜中での酸の拡散速度が抑制されて解像度が向上し、露光後の感度変化を抑制できる他、基板や環境依存性を少なくし、露光余裕度やパターンプロファイル等を向上することができる。
【0130】
このような含窒素有機化合物としては、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシ基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、水酸基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アミド類、イミド類、カーバメート類等が挙げられ、その具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0149]〜[0163]に記載されている。塩基性化合物の使用量は、ベース樹脂(B)100質量部に対して0.001〜10質量部、特に0.01〜5質量部が好適である。配合量が0.001質量部以上であれば十分な配合効果が得られ、10質量部以下であれば感度が低下するおそれが少ない。
【0131】
特に好ましく用いられる塩基性化合物は第三級アミンであり、具体的にはトリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−へキシルアミン、トリ−n−オクチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリス(2−メトキシメトキシエチル)アミン、トリス(2−メトキシエトキシエチル)アミン、トリス{2−(2−メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(2−メトキシエトキシメトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−エトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−エトキシプロポキシ)エチル}アミン、トリス[2−{2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ}エチル]アミン、4,7,13,16,21,24−ヘキサオキサ−1,10−ジアザビシクロ[8.8.8]ヘキサコサン、4,7,13,18−テトラオキサ−1,10−ジアザビシクロ[8.5.5]エイコサン、1,4,10,13−テトラオキサ−7,16−ジアザビシクロオクタデカン、1−アザ−12−クラウン−4、1−アザ−15−クラウン−5、1−アザ−18−クラウン−6、トリス(2−ホルミルオキシエチル)アミン、トリス(2−アセトキシエチル)アミン、トリス(2−プロピオニルオキシエチル)アミン、トリス(2−ブチリルオキシエチル)アミン、トリス(2−イソブチリルオキシエチル)アミン、トリス(2−バレリルオキシエチル)アミン、トリス(2−ピバロイルオキシエチル)アミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(アセトキシアセトキシ)エチルアミン、トリス(2−メトキシカルボニルオキシエチル)アミン、トリス(2−tert−ブトキシカルボニルオキシエチル)アミン、トリス[2−(2−オキソプロポキシ)エチル]アミン、トリス[2−(メトキシカルボニルメチル)オキシエチル]アミン、トリス[2−(tert−ブトキシカルボニルメチルオキシ)エチル]アミン、トリス[2−(シクロヘキシルオキシカルボニルメチルオキシ)エチル]アミン、トリス(2−メトキシカルボニルエチル)アミン、トリス(2−エトキシカルボニルエチル)アミン、トリス(2−ベンゾイルオキシエチル)アミン、トリス[2−(4−メトキシベンゾイルオキシ)エチル]アミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(メトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(メトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(エトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(エトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(2−メトキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(2−メトキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(2−ヒドロキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(2−アセトキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−[(メトキシカルボニル)メトキシカルボニル]エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−[(メトキシカルボニル)メトキシカルボニル]エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(2−オキソプロポキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(2−オキソプロポキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(テトラヒドロフルフリルオキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(テトラヒドロフルフリルオキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−[(2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル)オキシカルボニル]エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−[(2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル)オキシカルボニル]エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(4−ヒドロキシブトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ホルミルオキシエチル)2−(4−ホルミルオキシブトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ホルミルオキシエチル)2−(2−ホルミルオキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−メトキシエチル)2−(メトキシカルボニル)エチルアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(2−アセトキシエチル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(2−ヒドロキシエチル)ビス[2−(エトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(2−アセトキシエチル)ビス[2−(エトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(3−ヒドロキシ−1−プロピル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(3−アセトキシ−1−プロピル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(2−メトキシエチル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−ブチルビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−ブチルビス[2−(2−メトキシエトキシカルボニル)エチル]アミン、N−メチルビス(2−アセトキシエチル)アミン、N−エチルビス(2−アセトキシエチル)アミン、N−メチルビス(2−ピバロイルオキシエチル)アミン、N−エチルビス[2−(メトキシカルボニルオキシ)エチル]アミン、N−エチルビス[2−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)エチル]アミン、トリス(メトキシカルボニルメチル)アミン、トリス(エトキシカルボニルメチル)アミン、N−ブチルビス(メトキシカルボニルメチル)アミン、N−ヘキシルビス(メトキシカルボニルメチル)アミン、β−(ジエチルアミノ)−δ−バレロラクトンが例示される。
【0132】
更に、1−[2−(メトキシメトキシ)エチル]ピロリジン、1−[2−(メトキシメトキシ)エチル]ピペリジン、4−[2−(メトキシメトキシ)エチル]モルホリン、1−[2−(メトキシメトキシ)エチル]イミダゾール、1−[2−(メトキシメトキシ)エチル]ベンズイミダゾール、1−[2−(メトキシメトキシ)エチル]−2−フェニルベンズイミダゾール、1−[2−[(2−メトキシエトキシ)メトキシ]エチル]ピロリジン、1−[2−[(2−メトキシエトキシ)メトキシ]エチル]ピペリジン、4−[2−[(2−メトキシエトキシ)メトキシ]エチル]モルホリン、1−[2−[(2−メトキシエトキシ)メトキシ]エチル]イミダゾール、1−[2−[(2−メトキシエトキシ)メトキシ]エチル]ベンズイミダゾール、1−[2−[(2−メトキシエトキシ)メトキシ]エチル]−2−フェニルベンズイミダゾール、1−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]ピロリジン、1−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]ピペリジン、4−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]モルホリン、1−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]イミダゾール、1−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]ベンズイミダゾール、1−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]−2−フェニルベンズイミダゾール、1−[2−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]エチル]ピロリジン、1−[2−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]エチル]ピペリジン、4−[2−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]エチル]モルホリン、1−[2−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]エチル]イミダゾール、1−[2−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]エチル]ベンズイミダゾール、1−[2−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]エチル]−2−フェニルベンズイミダゾール、1−[2−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]エチル]ピロリジン、1−[2−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]エチル]ピペリジン、4−[2−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]エチル]モルホリン、1−[2−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]エチル]イミダゾール、1−[2−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]エチル]ベンズイミダゾール、1−[2−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]エチル]−2−フェニルベンズイミダゾール、4−[2−{2−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エチル]モルホリン、酢酸2−(1−ピロリジニル)エチル、酢酸2−ピペリジノエチル、酢酸2−モルホリノエチル、酢酸2−(1−イミダゾリル)エチル、酢酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、酢酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、モルホリノ酢酸2−メトキシエチル、2−メトキシ酢酸2−(1−ピロリジニル)エチル、2−メトキシ酢酸2−ピペリジノエチル、2−メトキシ酢酸2−モルホリノエチル、2−メトキシ酢酸2−(1−イミダゾリル)エチル、2−メトキシ酢酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、2−メトキシ酢酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸2−(1−ピロリジニル)エチル、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸2−ピペリジノエチル、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸2−モルホリノエチル、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸2−(1−イミダゾリル)エチル、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸2−(1−ピロリジニル)エチル、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸2−ピペリジノエチル、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸2−モルホリノエチル、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸2−(1−イミダゾリル)エチル、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、酪酸2−モルホリノエチル、ヘキサン酸2−モルホリノエチル、オクタン酸2−モルホリノエチル、デカン酸2−モルホリノエチル、ラウリン酸2−モルホリノエチル、ミリスチン酸2−モルホリノエチル、パルミチン酸2−モルホリノエチル、ステアリン酸2−モルホリノエチル、ベヘン酸2−モルホリノエチル、コール酸2−モルホリノエチル、トリス(O−アセチル)コール酸2−モルホリノエチル、トリス(O−ホルミル)コール酸2−モルホリノエチル、デヒドロコール酸2−モルホリノエチル、シクロペンタンカルボン酸2−モルホリノエチル、シクロヘキサンカルボン酸2−モルホリノエチル、7−オキサノルボルナン−2−カルボン酸2−(1−ピロリジニル)エチル、7−オキサノルボルナン−2−カルボン酸2−ピペリジノエチル、7−オキサノルボルナン−2−カルボン酸2−モルホリノエチル、7−オキサノルボルナン−2−カルボン酸2−(1−イミダゾリル)エチル、7−オキサノルボルナン−2−カルボン酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、7−オキサノルボルナン−2−カルボン酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、アダマンタンカルボン酸2−モルホリノエチル、ギ酸2−(1−ピロリジニル)エチル、プロピオン酸2−ピペリジノエチル、アセトキシ酢酸2−モルホリノエチル、メトキシ酢酸2−(1−ピロリジニル)エチル、安息香酸2−(1−ピロリジニル)エチル、安息香酸2−ピペリジノエチル、安息香酸2−モルホリノエチル、安息香酸2−(1−イミダゾリル)エチル、安息香酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、安息香酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、4−メトキシ安息香酸2−(1−ピロリジニル)エチル、4−メトキシ安息香酸2−ピペリジノエチル、4−メトキシ安息香酸2−モルホリノエチル、4−メトキシ安息香酸2−(1−イミダゾリル)エチル、4−メトキシ安息香酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、4−メトキシ安息香酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、4−フェニル安息香酸2−(1−ピロリジニル)エチル、4−フェニル安息香酸2−ピペリジノエチル、4−フェニル安息香酸2−モルホリノエチル、4−フェニル安息香酸2−(1−イミダゾリル)エチル、4−フェニル安息香酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、4−フェニル安息香酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、1−ナフタレンカルボン酸2−(1−ピロリジニル)エチル、1−ナフタレンカルボン酸2−ピペリジノエチル、1−ナフタレンカルボン酸2−モルホリノエチル、1−ナフタレンカルボン酸2−(1−イミダゾリル)エチル、1−ナフタレンカルボン酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、1−ナフタレンカルボン酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、2−ナフタレンカルボン酸2−(1−ピロリジニル)エチル、2−ナフタレンカルボン酸2−ピペリジノエチル、2−ナフタレンカルボン酸2−モルホリノエチル、2−ナフタレンカルボン酸2−(1−イミダゾリル)エチル、2−ナフタレンカルボン酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、2−ナフタレンカルボン酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、4−[2−(メトキシカルボニルオキシ)エチル]モルホリン、1−[2−(t−ブトキシカルボニルオキシ)エチル]ピペリジン、4−[2−(2−メトキシエトキシカルボニルオキシ)エチル]モルホリン、3−(1−ピロリジニル)プロピオン酸メチル、3−ピペリジノプロピオン酸メチル、3−モルホリノプロピオン酸メチル、3−(チオモルホリノ)プロピオン酸メチル、2−メチル−3−(1−ピロリジニル)プロピオン酸メチル、3−モルホリノプロピオン酸エチル、3−ピペリジノプロピオン酸メトキシカルボニルメチル、3−(1−ピロリジニル)プロピオン酸2−ヒドロキシエチル、3−モルホリノプロピオン酸2−アセトキシエチル、3−(1−ピロリジニル)プロピオン酸2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル、3−モルホリノプロピオン酸テトラヒドロフルフリル、3−ピペリジノプロピオン酸グリシジル、3−モルホリノプロピオン酸2−メトキシエチル、3−(1−ピロリジニル)プロピオン酸2−(2−メトキシエトキシ)エチル、3−モルホリノプロピオン酸ブチル、3−ピペリジノプロピオン酸シクロヘキシル、α−(1−ピロリジニル)メチル−γ−ブチロラクトン、β−ピペリジノ−γ−ブチロラクトン、β−モルホリノ−δ−バレロラクトン、1−ピロリジニル酢酸メチル、ピペリジノ酢酸メチル、モルホリノ酢酸メチル、チオモルホリノ酢酸メチル、1−ピロリジニル酢酸エチルなどが例示される。
【0133】
本発明のレジスト材料に用いる(F)溶解制御剤としては、分子内にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物のフェノール性水酸基を酸不安定基で保護した化合物、又は分子内にカルボキシ基を有する化合物のカルボキシ基を酸不安定基で保護した化合物が用いられ、その具体例としては、特開2008−122932号公報の段落[0155]〜[0178]に記載されている。
【0134】
本発明のレジスト材料には、上記成分以外に任意成分として塗布性を向上させるために慣用されている(G)界面活性剤を添加することができる。(G)界面活性剤の具体例は、特開2008−111103号公報の段落[0166]に記載されている。
【0135】
本発明のレジスト材料には、必要に応じて任意成分として(H)アセチレンアルコール誘導体を添加してもよい。(H)アセチレンアルコール誘導体の具体例は、特開2008−122932号公報の段落[0180]〜[0181]に記載されている。
【0136】
本発明のレジスト材料には、必要に応じて(I)含フッ素アルコールを添加してもよい。本発明のレジスト材料において、(E)塩基性化合物を使用する場合、高分子化合物(P1)中の繰り返し単位(1)、(1−1)又は(1−2)内の含フッ素エステルがレジスト保存中に徐々に加水分解され、その結果、液浸露光時の撥水性能や滑水性能が低下するおそれがある。このような場合、レジスト材料に(I)含フッ素アルコールを添加すると、(E)塩基性化合物による加水分解を抑えられ、保存安定性を高めることが可能になる場合がある。
【0137】
(I)含フッ素アルコールの具体例としては、2,2,2−トリフルオロエタノ−ル、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノ−ル、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−トリフルオロメチル−2−プロパノール、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロ−1−ブタノ−ル、2,2,2,2’,2’,2’−ヘキサフルオロクミルアルコール、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−ペンタノ−ル等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0138】
(I)含フッ素アルコールの使用量は、(E)塩基性化合物の1質量部に対して0.01〜10質量部、特に0.01〜5質量部が好適である。
【0139】
[パターン形成方法]
次に、本発明のレジスト材料を用いたパターン形成方法について説明する。本発明におけるパターン形成方法では公知のリソグラフィー技術を用いることができるが、少なくとも基板上にレジスト膜を形成する工程と、高エネルギー線を露光する工程と、現像液を用いて現像する工程を含むことが好ましい。
【0140】
シリコンウエハー等の基板上にレジスト膜を形成する場合、例えば、スピンコーティング等の手法で膜厚が0.01〜2.0μmとなるようにレジスト材料を塗布し、これをホットプレート上で60〜150℃、1〜10分間、好ましくは80〜140℃、1〜5分間プリベークしてレジスト膜を形成する。なお、スピンコーティング時に基板表面を予めレジスト溶媒又はレジスト溶媒と混和する溶液で濡らした状態でレジスト溶液を塗布するとレジスト材料のディスペンス量を削減することができる(特開平9−246173号公報参照)。
【0141】
露光工程では、目的のパターンを形成するためのマスクを上記のレジスト膜上にかざし、遠紫外線、エキシマレーザー、X線等の高エネルギー線又は電子線を露光量1〜200mJ/cm2、好ましくは10〜100mJ/cm2となるように照射する。この際に使用する高エネルギー線は波長180〜200nmの範囲のものが好ましい。
【0142】
露光は空気下又は窒素雰囲気下のドライ露光の他、投影レンズとレジスト膜との間を水等の液体で浸漬する液浸(Immersion)法を用いることも可能であり、浸漬する液体としては純水の他、アルカンなどの屈折率が1以上で露光波長に高透明の液体が用いられる。また、EBやEUVなどの真空中の露光でもよい。
【0143】
本発明のレジスト材料を用いて形成したレジスト膜は水に対する良好なバリアー性能を有し、レジスト材料の水への溶出を抑制するため、液浸リソグラフィーにおいて保護膜を必要とせず、保護膜の形成等に要するコストを削減できる。また、上記レジスト膜は、水に対して高い後退接触角を有するため、液浸露光後のレジスト膜表面に液滴が残りにくく、膜表面に残存する液滴が誘発するパターン形成不良を低減することができる。
【0144】
一方、レジスト膜の上層に保護膜を設けて液浸露光を行うこともできる。レジスト保護膜は溶媒剥離型と現像液可溶型とがあるが、本発明のレジスト材料と同様に現像時に剥離できる現像液可溶型の方が好ましい。レジスト保護膜の具体例としては、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシ−2−プロピル基、カルボキシル基、スルホ基などの酸性ユニットを含有し、水に不溶でアルカリ現像液に溶解する高分子化合物をベース樹脂とし、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、及びこれらの混合溶媒に溶解させた材料が好適に用いられるが、これらに限定はされない。
【0145】
レジスト保護膜を形成する方法としては、プリベーク後のレジスト膜上にトップコート溶液をスピンコートし、ホットプレート上で50〜150℃、1〜10分間、好ましくは70〜140℃、1〜5分間プリベークして保護膜を形成する。膜厚は10〜500nmの範囲が好ましい。レジスト材料の場合と同様、レジスト保護膜のスピンコーティングの際にもレジスト膜表面を予め溶媒で濡らした後にレジスト保護膜を塗布することで保護膜材料のディスペンス量を減らすことができる。
【0146】
上述の高エネルギー線を用いてフォトマスクを介して露光を行った後、ホットプレート上で60〜150℃、1〜5分間、好ましくは80〜140℃、1〜3分間ポスト・エクスポジュアー・ベーク(PEB)を行う。
【0147】
レジスト保護膜を使用する場合、保護膜上に水が残った状態でPEBを行うと、PEB中に水が保護膜を通過する可能性がある。その結果、レジスト中の酸が吸い出されてパターン形成ができなくなることを避けるため、PEB前に保護膜上の水を完全に除去する必要がある。その方法としては、スピンドライによる方法、乾燥空気や窒素による保護膜表面のパージによる方法、ステージ上の水回収ノズルの形状や水回収プロセスの最適化などが挙げられる。
【0148】
露光後はテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液を用いて、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像を行い、基板上に目的のパターンを形成する。現像液の濃度は0.1〜5質量%、更には2〜3質量%が好ましく、特に2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液が好適に用いられる。現像時間としては10〜300秒間、更には0.5〜2分間が好ましい。
【0149】
本発明の高分子化合物(P1)をマスクブランクス用レジスト材料の添加剤として用いる場合、ベース樹脂に高分子化合物(P1)を添加してレジスト溶液を調製後、SiO2、Cr、CrO、CrN、MoSi等のマスクブランクス基板上にレジストを塗布する。レジストとブランクス基板の間にSOG膜と有機下層膜を形成し、三層構造を形成してもよい。
【0150】
マスクブランクス用レジストのベース樹脂としてはノボラックやヒドロキシスチレンが主に用いられる。これらの樹脂中のアルカリ溶解性水酸基を酸不安定基で置換されたものがポジ型として、また架橋剤を添加したものがネガ型として用いられる。具体的には、ヒドロキシスチレンと(メタ)アクリル誘導体、スチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルピレン、ヒドロキシビニルナフタレン、ヒドロキシビニルアントラセン、インデン、ヒドロキシインデン、アセナフチレン、ノルボルナジエン類を共重合した高分子化合物が好ましく用いられる。
【0151】
レジスト膜を形成後、電子ビーム描画機を用いて真空中電子ビームで露光する。露光後、ポスト・エクスポジュアー・ベーク(PEB)を行い、アルカリ現像液で10〜300秒間現像を行い、パターン形成を行う。
【実施例】
【0152】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、実施例中における“GPC”はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーのことであり、得られた高分子化合物の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)はGPCによりポリスチレン換算値として測定した。
【0153】
[モノマー合成例]
本発明のレジスト用添加剤に用いる高分子化合物において、必須成分となる一般式(1)、(1−1)、(1−2)で表される繰り返し単位に対応する含フッ素単量体(Monomer1〜4)を以下に示す処方で合成した。
【0154】
[モノマー合成例1]Monomer1の合成
【化44】


10Lの四ツ口フラスコにメタクリル酸3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチル800gとトルエン3Lを投入後、フラスコを氷冷しながらピリジン552gを投入し、十分に撹拌を行った。その後、フラスコ内の温度を15℃以下に保ちながら4時間かけてトリフルオロ酢酸無水物465gを滴下し、そのまま17時間撹拌を行った。氷冷しながら1,000gの水をフラスコ内に投入し、通常の後処理操作を行った。減圧蒸留を行い、目的物1,377gを得た(収率97.8%)。
沸点:108〜111℃/20Pa。
1H−NMR(300MHz in CDCl3):δ=1.90(3H、m)、2.10−2.25(6H、m)、2.55−2.75(7H、m)、5.56(1H、m)、6.04(1H、m)ppm。
13C−NMR(75MHz in CDCl3):δ=18.19、29.11、38.25、38.38、43.29、43.41、79.00、84.38、114.13(q、J=285Hz)、125.92、136.81、155.68(q、J=42Hz)、166.05ppm。
19F−NMR(283MHz in CDCl3 トリフルオロ酢酸標準):δ=−76.9(6F、s)ppm。
【0155】
[モノマー合成例2]Monomer2の合成
【化45】


メタクリル酸(3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチル)12.5g、ピリジン9.9g、トルエン90gの混合物を窒素雰囲気下、氷冷、撹拌しながら無水ペンタフルオロプロピオン酸36.9gを15℃以下で滴下した。2時間撹拌後、純水50gを滴下して、反応を停止した。通常の後処理操作の後、減圧蒸留を行い、目的物26.3gを得た(収率97.5%)。
沸点:105℃/10Pa。
1H−NMR(300MHz in CDCl3):δ=1.55−1.70(2H、m)、1.90(3H、m)、2.10−2.25(6H、m)、2.57−2.73(7H、m)、5.57(1H、m)、6.05(1H、m)ppm。
13C−NMR(75MHz in CDCl3):δ=18.21、29.25、38.32、38.48、43.47、43.53、79.08、84.91、105.65(tq、J=265、40Hz)、120.29(tq、J=287、34Hz)、125.99、136.95、156.67(t、J=29Hz)、166.16ppm。
19F−NMR(283MHz in CDCl3 トリフルオロ酢酸標準):δ=−122.36(4F、s)、−83.51(6F、s)ppm。
【0156】
[モノマー合成例3]Monomer3の合成
【化46】


メタクリル酸(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)50.0g、ピリジン20.1g、アセトニトリル150gの混合物を窒素雰囲気下、氷冷、撹拌しながら無水トリフルオロ酢酸53.4gを10℃以下で滴下した。1時間撹拌後、ヘキサン200g、純水200gを順次滴下して、反応を停止した。通常の後処理操作の後、減圧蒸留を行い、目的物67.9gを得た(収率96.4%)。
沸点:89℃/20Pa。
1H−NMR(300MHz in CDCl3):δ=1.55−1.70(2H、m)、1.89(3H、m)、2.05−2.25(8H、m)、2.44(2H、m)、2.59(2H、m)、5.52(1H、m)、6.02(1H、m)ppm。
13C−NMR(75MHz in CDCl3):δ=18.28、31.23、34.51、39.61、39.69、44.74、80.36、86.49、114.27(q、J=285Hz)、125.08、137.43、155.77(q、J=41Hz)、166.25ppm。
19F−NMR(283MHz in CDCl3 トリフルオロ酢酸標準):δ=−76.67(3F、s)ppm。
【0157】
[モノマー合成例4]Monomer4の合成
【化47】


メタクリル酸(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)31.8g、ピリジン12.8g、トルエン100gの混合物を窒素雰囲気下、氷冷、撹拌しながら無水ペンタフルオロプロピオン酸50.0gを15℃以下で滴下した。3時間撹拌後、純水100gを滴下して、反応を停止した。通常の後処理操作の後、減圧蒸留を行い、目的物50.7gを得た(収率97.4%)。
沸点:90℃/13Pa。
1H−NMR(300MHz in DMSO−d6):δ=1.53−1.59(2H、m)、1.83(3H、m)、2.05−2.15(8H、m)、2.35−2.43(2H、m)、2.54(2H、s)、5.52(1H、m)、5.97(1H、m)ppm。
13C−NMR(75MHz in DMSO−d6):δ=17.98、30.91、33.90、39.16、39.24、44.09、80.19、87.81、105.25(tq、J=265、39Hz)、117.62(tq、J=287、34Hz)、125.33、137.13、155.73(t、J=28Hz)、165.55ppm。
19F−NMR(283MHz in DMSO−d6 トリフルオロ酢酸標準):δ=−122.60(2F、s)、−83.59(3F、s)ppm。
【0158】
[ポリマー合成例]
下記にポリマー合成例で使用した重合性単量体(Monomer1〜11)の構造式を示す。
【化48】

【0159】
[ポリマー合成例1]Monomer1及びMonomer6の共重合(60/40)(Polymer1)
窒素雰囲気下のフラスコに104.1gのMonomer1、46.0gのMonomer6、4.5gの2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、150.0gのメチルエチルケトンを投入して単量体溶液を調製し、溶液温度を20〜25℃とした。窒素雰囲気下の別のフラスコに50.0gのメチルエチルケトンを投入し、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記単量体溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合液の温度を80℃に保ったまま2時間撹拌を続け、熟成終了後に室温まで冷却した。重合液をナスフラスコに移し、エバポレーターにより濃縮した。次いで、フラスコ中にトルエンを添加し、最終的にトルエン/メチルエチルケトン(混合比9/1)の40wt%溶液となるように調製後、1,500gのヘキサン中に滴下した。析出した共重合体を濾別後、900gのヘキサンで洗浄し、白色固体を分離した。白色固体を50℃で20時間真空乾燥させることにより目的の高分子化合物(Polymer1)135.2gを得た。樹脂の組成を1H−NMRで分析した結果、共重合体中のMonomer1とMonomer6の組成比は38/62モル%であった。また、得られた共重合体のGPC測定を行った結果、重量平均分子量(Mw)はポリスチレン換算で11,200、分散度(Mw/Mn)は1.6であった。
【0160】
[ポリマー合成例2〜16]
表1〜3に示す組成で上述の重合性単量体(Monomer1〜11)を仕込み、Polymer1の合成と同様の処方を用いてPolymer2〜16及び比較Polymer1〜3の合成を行った。なお、下記表1〜3内に記載の組成の数値は仕込み比、下記式中の繰り返し単位の横に記載の数値は1H−NMR分析結果による組成比を示す。
【0161】
【表1】

【0162】
【表2】

【0163】
【表3】

【0164】
【化49】

【0165】
【化50】

【0166】
【化51】

【0167】
【化52】

【0168】
[レジスト評価実施例]
下記Resist Polymerを5g、上記Polymer1〜16及び比較Polymer1〜3を0.25g、PAG1を0.25g、Quencher1を0.05g用い、これらを75gのプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解させ、0.2μmサイズのポリプロピレンフィルターで濾過し、レジスト溶液を作製した。また、比較例として、上記Polymer1〜16及び比較Polymer1〜3を添加しないレジスト溶液も調製した。
【0169】
【化53】

【0170】
シリコン基板上に反射防止膜ARC−29A(日産化学工業(株)製)を成膜後(膜厚:87nm)、その上に上記レジスト溶液を塗布し、120℃で60秒間ベークして膜厚150nmのレジスト膜を作製した。
【0171】
上記方法でレジスト膜を形成したウエハーを水平に保ち、その上に50μLの純水を滴下して水玉を形成後、傾斜法接触角計Drop Master 500(協和界面科学(株)製)を用いてウエハーを徐々に傾斜させ、水玉が転落し始めるウエハーの角度(転落角)と後退接触角を求めた。また、上記と同様の方法によりレジスト膜を作製した後、アルカリ現像液である2.38質量%のTMAH水溶液に60秒間浸漬し、更に純水による洗浄、スピン乾燥を施した後、5μLの純水をレジスト膜表面に滴下し、上記接触角計にて傾斜ゼロ(水平状態)における接触角を測定し、現像後水接触角とした。その結果を表4に示す。
【0172】
【表4】

【0173】
表4において、本発明の高分子化合物を配合したレジスト溶液から形成されたレジスト膜は、配合しないレジスト膜と比較して後退接触角を飛躍的に向上させることができる上、転落角は低く抑えられることが確認できた。一般に、転落角が低いほどレジスト膜上の水は流動し易く、後退接触角が高いほど高速スキャン露光でも液滴が残りにくい。そのため、本発明の高分子化合物をレジスト溶液に添加することにより、レジスト保護膜を使うことなく、高速スキャンの液浸露光に耐えうる高撥水性かつ高滑水性のレジスト膜を実現することができる。
【0174】
更に、上記方法でレジスト膜を形成したウエハーをArFスキャナーS305B((株)ニコン製)を用いてオープンフレームにて50mJ/cm2のエネルギーを照射した。次いで、このレジスト膜上に内径10cmの真円状のテフロン(登録商標)リングを置き、その中に10mlの純水を注意深く注いで、室温にて60秒間レジスト膜と純水を接触させた。その後、純水を回収し、純水中の光酸発生剤(PAG1)の陰イオン成分濃度をLC−MS分析装置(アジレント・テクノロジー(株)製)にて測定した。その結果を上記表4に示す。
表4から明らかなように、本発明による高分子化合物を配合したレジスト溶液から形成されたレジスト膜では、レジスト膜から水への光酸発生剤の溶出を抑制する効果が認められた。
【0175】
次に、上記方法でレジスト膜を形成したウエハーをArFスキャナーS307E((株)ニコン製、NA0.85、σ0.93、4/5輪帯照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)で露光を行い、純水をかけながら5分間リンスを行い、110℃で60秒間ポスト・エクスポジュアー・ベーク(PEB)を行い、2.38質量%のTMAH水溶液で60秒間現像を行った。得られたウエハーを割断し、75nmライン・アンド・スペースのパターン形状、感度を比較した。その結果を上記表4に示す。
表4の結果から、露光後に純水リンスを行った場合、本発明の高分子化合物を配合しないレジスト溶液ではパターン形状がT−トップ形状になった。これに対し、本発明の高分子化合物を配合したレジスト溶液を使った場合は矩形形状になることがわかった。
【0176】
次に、上記パターニング実験で用いたレジストを0.02μmサイズの高密度ポリエチレンフィルターで精密濾過した。8インチのSi基板上に作製した反射防止膜ARC−29A(日産化学工業(株)製、膜厚:87nm)の上にレジスト溶液を塗布し、120℃で60秒間ベークして膜厚150nmのレジスト膜を作製した。ArFスキャナーS307E((株)ニコン製、NA:0.85、σ:0.93、Crマスク)でウエハー全面を20mm角の面積でオープンフレームの露光部と未露光部を交互に露光するチェッカーフラッグ露光を行った後、ポスト・エクスポジュアー・ベーク(PEB)を行い、2.38質量%TMAH現像液で60秒間現像を行った。チェッカーフラッグ未露光部分のブロッブ欠陥数を欠陥検査装置WinWin−50−1200((株)東京精密製)を用いてピクセルサイズ0.125μmで計測した。その結果を表5に示す。
【0177】
【表5】

【0178】
表5の結果より、本発明の高分子化合物を配合しないレジスト溶液では液浸露光後に現像欠陥が多数観察された。この欠陥は比較Polymer1〜3を添加しても改善できなかったが、本発明の高分子化合物(Polymer1、2、4、7〜14)を配合したレジスト溶液を使用すると欠陥が抑制することができた。表4の結果より、Polymer1、2、4、7〜14を配合したレジスト膜は比較Polymer1〜3を添加したレジスト膜より現像後の水接触角が低いことから、現像液による加水分解によりレジスト膜表面が親水性に変化し、その結果、欠陥が抑制されていることが推定できる。また、Polymer1と比較Polymer2の構造を比較することにより、欠陥の抑制にはアルキルカルボニルオキシ基内にフッ素原子が必須であることがわかる。更に、Polymer1とPolymer15及び16の構造と欠陥数の相関関係を考えると、繰り返し単位内の含フッ素アルキルカルボニルオキシ基の数は1個では十分ではなく、少なくとも2個必要であることが明らかになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含有し、アルカリ現像液の作用によりアルカリ現像液溶解性が増大することを特徴とする高分子化合物。
【化1】


(式中、R1は水素原子、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基である。R2は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のフッ素化1価炭化水素基である。Anは炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の(n+1)価の炭化水素基又はフッ素化炭化水素基である。nは1〜3の整数である。)
【請求項2】
下記一般式(1−1)で表される繰り返し単位を含有することを特徴とする請求項1に記載の高分子化合物。
【化2】


(式中、R1、R2、nは上記と同様である。)
【請求項3】
下記一般式(1−2)で表される繰り返し単位を含有することを特徴とする請求項2に記載の高分子化合物。
【化3】


(式中、R1及びR2は上記と同様である。)
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の繰り返し単位(1)、(1−1)又は(1−2)に加えて、下記一般式(2a)〜(2h)で表される繰り返し単位のいずれか1種又は2種以上を有することを特徴とする高分子化合物。
【化4】


(式中、R1は上記と同様である。R4a及びR4bは水素原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基であり、R4aとR4bは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜8の非芳香環を形成することもできる。R5aは水素原子、炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基又はフッ素化1価炭化水素基、又は酸不安定基を示し、1価炭化水素基の場合、構成する−CH2−が−O−又は−C(=O)−に置換されていてもよい。R6a、R6b、R6cは水素原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基であり、R6aとR6b、R6aとR6c、R6bとR6cは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜8の非芳香環を形成することもできる。R7aは水素原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基である。R7bは炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基であり、R7aとR7bは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜8の非芳香環を形成することもできる。R8aは炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のフッ素化1価炭化水素基である。R9aは炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基又はフッ素化1価炭化水素基である。k1は0〜6の整数である。)
【請求項5】
(A)請求項1乃至4のいずれか1項に記載の高分子化合物、(B)ベース樹脂としてラクトン環由来の骨格及び/又は水酸基を有する骨格及び/又は無水マレイン酸由来の骨格を有し、酸の作用によりアルカリ現像液に可溶となる高分子化合物、(C)高エネルギー線の露光により酸を発生する化合物、(D)有機溶剤を含有することを特徴とするレジスト材料。
【請求項6】
(B)成分の高分子化合物が、(メタ)アクリル酸エステル重合体、(α−トリフルオロメチル)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、シクロオレフィン−無水マレイン酸共重合体、ポリノルボルネン、シクロオレフィンの開環メタセシス反応により得られる高分子化合物、シクロオレフィンの開環メタセシス反応により得られる重合体を水素添加して得られる高分子化合物、ヒドロキシスチレンと(メタ)アクリル酸エステル誘導体,スチレン,ビニルナフタレン,ビニルアントラセン,ビニルピレン,ヒドロキシビニルナフタレン,ヒドロキシビニルアントラセン,インデン,ヒドロキシインデン,アセナフチレン,ノルボルナジエン類のいずれかとを共重合した高分子化合物、ノボラックの中から選択されることを特徴とする請求項5に記載のレジスト材料。
【請求項7】
(B)成分の高分子化合物が、下記一般式(B)−1〜(B)−6で示される繰り返し単位のいずれか1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項5に記載のレジスト材料。
【化5】


(式中、R101は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。R102及びR103はそれぞれ独立に水素原子又は水酸基を示す。R104は水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。R105は水素原子、又はCO2106を示し、R106は水素原子、又はハロゲン原子又は酸素原子を有していてもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。Xは酸不安定基、Yはラクトン構造を有する置換基、Zは水素原子、炭素数1〜15のフッ素化1価炭化水素基、又は炭素数1〜15のフルオロアルコール含有置換基、W1は酸素原子により置換されていてもよい炭素数1〜10の2価の有機基を示す。W2はCH2、CH2CH2、又は酸素原子を示す。a1は0〜3の整数、b1は1〜3の整数、c1は0〜2の整数、d1は1〜3の整数を示す。)
【請求項8】
(A)請求項1乃至4のいずれか1項に記載の高分子化合物の添加量が、(B)酸の作用によりアルカリ現像液に可溶となる高分子化合物100質量部に対して、0.1〜50質量部であることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載のレジスト材料。
【請求項9】
更に、(E)塩基性化合物を含有することを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載のレジスト材料。
【請求項10】
更に、(F)溶解制御剤を含有することを特徴とする請求項5乃至9のいずれか1項に記載のレジスト材料。
【請求項11】
(1)請求項5乃至10のいずれか1項に記載のレジスト材料を基板上に塗布する工程と、(2)加熱処理後、フォトマスクを介して高エネルギー線で露光する工程と、(3)現像液を用いて現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項12】
(1)請求項5乃至10のいずれか1項に記載のレジスト材料を基板上に塗布する工程と、(2)加熱処理後、投影レンズと基板の間に液体を挿入させ、フォトマスクを介して高エネルギー線で露光する工程と、(3)現像液を用いて現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項13】
(1)請求項5乃至10のいずれか1項に記載のレジスト材料を基板上に塗布する工程と、(2)レジスト膜の上に保護膜層を形成する工程と、(3)加熱処理後、投影レンズと基板の間に液体を挿入させ、フォトマスクを介して高エネルギー線で露光する工程と、(4)現像液を用いて現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項14】
前記露光工程において、投影レンズと基板の間に挿入する液体が水であることを特徴とする請求項12又は13に記載のパターン形成方法。
【請求項15】
露光光源として波長180〜200nmの範囲の高エネルギー線を用いることを特徴とする請求項11乃至14のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項16】
(1)請求項5乃至10のいずれか1項に記載のレジスト材料をマスクブランクス上に塗布する工程と、(2)加熱処理後、真空中電子ビームで露光する工程と、(3)現像液を用いて現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。

【公開番号】特開2011−162768(P2011−162768A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277699(P2010−277699)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】