説明

高分子化合物及びそれを用いた有機トランジスタ

【課題】有機トランジスタの活性層の構成材料として優れた電界効果移動度を発揮することができる高分子化合物を提供すること。
【解決手段】下式で表される第1構造単位とチオフェン環、又は、少なくとも1つのチオフェン環を含む縮合環を表し、且つ、前記第1構造単位とは異なる構造を有する第2構造単位とを含む高分子化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子化合物及びそれを用いた有機トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体材料を利用した有機トランジスタは、従来の無機半導体材料を利用したトランジスタと比較して、低温で製造できることから製造し易い傾向にあるほか、デバイスの軽量化や製造コストの低下が期待されるため、盛んに研究開発が行われている。
【0003】
有機トランジスタの性能を示す指標の一つである電界効果移動度は、活性層に含まれている有機半導体材料の電界効果移動度に大きく依存する。そのため、有機トランジスタの活性層に用いる材料として、様々な有機半導体材料が検討されている。
【0004】
下記特許文献1には、複数のチオフェン環を含む縮合環構造を有する化合物を用いて得られる高分子化合物が記載されており、有機トランジスタ等に利用できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5510438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、本発明者らが検討を行ったところ、特許文献1に記載された高分子化合物は、有機トランジスタの活性層を構成する有機半導体材料として用いた場合、十分に高い電界効果移動度を発揮することができない傾向にあった。
【0007】
そこで、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、有機トランジスタの活性層の構成材料として用いた場合に、優れた電界効果移動度を発揮することができる高分子化合物を提供することを目的とする。
【0008】
本発明はまた、このような高分子化合物を含む有機半導体材料、この有機半導体材料を用いた有機半導体素子及び有機トランジスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の高分子化合物は、式(1)で表される第1構造単位と、式(2−A)で表され、且つ、前記第1構造単位とは異なる構造を有する第2構造単位とを含むことを特徴とする。
【化1】


【化2】


[式(1)中、
11及びR12は、それぞれ独立に、式(1−1)で表される基、式(1−2)で表される基、式(1−3)で表される基、式(1−4)で表される基、式(1−5)で表される基、式(1−6)で表される基、又は、式(1−7)で表される基を表し、これらの式中のRは、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
21及びR22は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
式(2−A)中、Aは、チオフェン環、又は、少なくとも1つのチオフェン環を含む縮合環を表し、これらは置換基を有していてもよい。]
【0010】
本発明の高分子化合物は、上述した特定の構造を有する第1構造単位と第2構造単位とを組み合わせて有することから、高い平面性を有し易い構造であり、電荷の移動に有利である。そのため、有機トランジスタの活性層の材料として適用した場合に高い電界効果移動度を発揮することができる。
【0011】
好適な実施形態において、第2構造単位は、式(2−1)で表される構造単位、式(2−2)で表される構造単位、式(2−3)で表される構造単位、式(2−4)で表される構造単位、式(2−5)で表される構造単位及び式(2−6)で表される構造単位(以下、「式(2−1)〜式(2−6)で表される構造単位」のように簡略化して表記する。また、本明細書中の同様の記載は、いずれも同様に簡略化して表記する。)からなる群より選ばれる少なくとも1種であると好ましい。
【化3】


[式(2−1)〜式(2−6)中、R41、R42、R51、R52、R61、R62、R71、R72、R81、R82、R91、R92、R101、R102、R111及びR112は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。]
【0012】
また、第2構造単位は、式(2−7)〜式(2−10)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種であっても好ましい。
【化4】


[式(2−7)〜式(2−10)中、R121、R122、R131、R132、R141、R142、R151、R152、R161、R162、R171、R172、R181、R182、R191、R192、R201、R202、R211、R212、R221、R222、R231及びR232は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。]
【0013】
本発明の高分子化合物において、第2構造単位が上述した構造を有すると、一層高い電界効果移動度を発揮することが可能となる。
【0014】
本発明の高分子化合物において、第2構造単位は、式(2−2)で表される構造単位であると好ましい。これにより、一層高い電界効果移動度が得られるようになる。
【0015】
また、第2構造単位は、式(2−1)で表される構造単位であり、且つ、式(2−1)中のR41及びR42のうちの少なくとも一方がアルキル基を表す構造単位であっても好ましい。このような構造を有する高分子化合物によっても、優れた電界効果移動度が得られる。
【0016】
また、第2構造単位は、Aが少なくとも1つのチオフェン環を含む縮合環を表し、且つ、式(2−2)〜式(2−10)で表される構造単位であることが好ましく、式(2−2)で表される構造単位であることがより好ましい。これにより、一層高い電界効果移動度が得られるようになる。
【0017】
本発明の高分子化合物は、共役系高分子化合物であると好ましい。本発明の高分子化合物が共役系高分子化合物であると、高いπ共役平面性を有することから、さらに優れた電界効果移動度を発揮し易くなる。
【0018】
さらに、本発明の高分子化合物は、第2構造単位が式(2−2)で表される構造単位であり、且つ、第1構造単位と第2構造単位との交互共重合体からなるものであると好ましい。また、本発明の高分子化合物は、第2構造単位が式(2−1)で表される構造単位であり、且つ、第1構造単位と第2構造単位との交互共重合体からなるものであっても好ましい。これらの構造を有する高分子化合物によれば、さらに優れた電界効果移動度が得られるようになる。
【0019】
本発明はまた、上記本発明の高分子化合物を含む有機半導体材料を提供する。かかる有機半導体材料は、上記本発明の高分子化合物を含むことから、有機トランジスタにおける活性層として適用した場合に、優れた電界効果移動度を発揮することができる。
【0020】
さらに、本発明は、本発明の有機半導体材料を含む有機層を備える有機半導体素子を提供する。特に、ソース電極と、ドレイン電極と、ソース電極とドレイン電極との間の電流経路となる上記本発明の有機半導体材料を含む活性層と、電流経路を通る電流を制御するゲート電極と、活性層と前記ゲート電極との間に配置される絶縁層とを備える有機トランジスタを提供する。これらの有機半導体素子、特に有機トランジスタは、活性層が本発明の高分子化合物を含む有機半導体材料を含有することから、優れた電界効果移動度が得られ、半導体素子(特に有機トランジスタ)として優れた性能を有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、有機トランジスタの活性層の構成材料として用いた場合に、優れた電界効果移動度を発揮することができる高分子化合物を提供することが可能となる。また、本発明によれば、このような高分子化合物を含み、高い電界効果移動度を発揮することができる有機半導体材料、有機半導体素子及び有機トランジスタを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態に係る有機トランジスタの模式断面図である。
【図2】第2実施形態に係る有機トランジスタの模式断面図である。
【図3】第3実施形態に係る有機トランジスタの模式断面図である。
【図4】第4実施形態に係る有機トランジスタの模式断面図である。
【図5】第5実施形態に係る有機トランジスタの模式断面図である。
【図6】第6実施形態に係る有機トランジスタの模式断面図である。
【図7】第7実施形態に係る有機トランジスタの模式断面図である。
【図8】第8実施形態に係る有機トランジスタの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、必要に応じて図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0024】
[高分子化合物]
好適な実施形態に係る高分子化合物は、上記式(1)で表される構造単位(第1構造単位)と、上記式(2−A)で表され、且つ、前記第1構造単位とは異なる構造を有する構造単位(第2構造単位)とを含む。本実施形態の高分子化合物は、共役系高分子化合物であると好適である。
【0025】
ここで、本明細書において、「構造単位」とは、高分子化合物中に1個以上存在する単位構造を意味する。「高分子化合物」とは、構造単位を複数含む化合物を意味しており、オリゴマー及びポリマーの両方を含む。なお、「構造単位」は、「繰返し単位」(すなわち、高分子化合物中に2個以上存在する単位構造)として高分子化合物中に含まれることが好ましい。
【0026】
さらに、共役系高分子化合物とは、高分子化合物の主骨格において、単結合と、不飽和結合、孤立電子対、ラジカル又は非結合性軌道とが、交互に連なる構造を含み、π軌道又は非結合性軌道の相互作用による電子の非局在化が主骨格の一部又は全域に起こっているものをいう。共役系高分子化合物の中でもπ軌道の相互作用によるπ共役系高分子化合物が好ましい。
【0027】
(第1構造単位)
本実施形態の高分子化合物における第1構造単位は、式(1)で表される構造単位である。第1構造単位は、高分子化合物中に一種のみ含まれていてもよく、二種以上含まれていてもよい。
【0028】
式(1)で表される構造単位に含まれ得る官能基のうち、アルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれの構造を有するアルキル基であってもよく、シクロアルキル基であってもよい。アルキル基が有する炭素数は、1〜60(シクロアルキル基の場合は、3〜60)であると好ましく、1〜20(シクロアルキル基の場合は、3〜20)であるとより好ましい。なお、アルキル基が有する炭素数には、後述の置換基の炭素数は含まれない。アルキル基としては、なかでも、直鎖アルキル基又は分岐アルキル基が好ましく、直鎖アルキル基がより好ましい。
【0029】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−オクタデシル基等の直鎖アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基等の分岐アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。
【0030】
アルキル基は、アルキル(炭化水素)構造にさらに別の基(置換基)が結合した構造を有する基であってもよい。そのような置換基としては、アルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。置換基を有しているアルキル基としては、メトキシエチル基、ベンジル基、トリフルオロメチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。
【0031】
アルコキシ基は、アルキル部分が直鎖状、分岐状のいずれの構造を有していてもよく、アルキル部分が環状であるシクロアルコキシ基であってもよい。また、アルコキシ基は、アルキル部分を構成しているアルキル構造にさらに別の置換基が結合した基であってもよい。アルコキシ基は、アルキル部分の置換基を除いた炭素数が1〜20(シクロアルコキシ基の場合は、3〜20)であると好ましい。
【0032】
アルコキシ基としては、n−ブチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、n−ドデシルオキシ基等が挙げられる。なかでも、n−ブチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基等の直鎖アルキルオキシ基が好ましい。
【0033】
アルキルチオ基は、アルキル部分が直鎖状、分岐状のいずれの構造を有していてもよく、アルキル部分が環状であるシクロアルキルチオ基であってもよい。アルキルチオ基は、アルキル部分を構成しているアルキル構造にさらに別の置換基が結合した基であってもよい。アルキルチオ基は、アルキル部分の置換基を除いた炭素数が1〜20(シクロアルキルチオ基の場合は、3〜20)であると好ましい。
【0034】
アルキルチオ基としては、n−ブチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、n−ドデシルチオ基等が挙げられる。なかでも、n−ブチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、n−ドデシルチオ基等の直鎖アルキルチオ基が好ましい。
【0035】
アリール基は、芳香族炭化水素から、当該化合物における芳香環を構成する炭素原子に直接結合している水素原子のうち、他の構造単位と結合を形成している部位に対応する部位の水素原子を1個除いた残りの原子団からなる構造を有する基である。アリール基としては、芳香環としてベンゼン環を有する基、縮合環を有する基、及び、独立した芳香環及び縮合環からなる群より選ばれる2個以上が直接結合した基を含む。
【0036】
アリール基が有する炭素数は、6〜60であると好ましく、6〜20であるとより好ましい。アリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−フルオレニル基、3−フルオレニル基、4−フルオレニル基、4−フェニルフェニル基等が挙げられる。
【0037】
アリール基は置換基を有していてもよい。その場合、置換基の炭素数は、上述したアリール基の好適な炭素数には含まない。アリール基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。置換基を有しているアリール基としては、4−ヘキシルフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、ペンタフルオロフェニル基等が挙げられる。アリール基が置換基を有する場合、置換基としてはアルキル基が好ましい。
【0038】
ヘテロアリール基は、芳香族性を有する複素環式化合物から、当該化合物における芳香環を構成する炭素原子に直接結合している水素原子のうち、他の構造単位と結合を形成している部位に対応する部位の水素原子を1個除いた残りの原子団からなる構造を有する基である。ヘテロアリール基としては、縮合環を有する基、及び、独立した複素芳香環及び縮合環からなる群から選ばれる2個以上が直接結合した基を含む。ヘテロアリール基が有する炭素数は、2〜60であると好ましく、3〜20であるとより好ましい。
【0039】
ヘテロアリール基としては、2−フリル基、3−フリル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、2−オキサゾリル基、2−チアゾリル基、2−イミダゾリル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−ベンゾフリル基、2−ベンゾチエニル基、2−チエノチエニル基等が挙げられる。
【0040】
ヘテロアリール基は置換基を有していてもよい。その場合、置換基の炭素数は上述したヘテロアリール基の好適な炭素数には含まない。ヘテロアリール基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。置換基を有しているヘテロアリール基としては、5−オクチル−2−チエニル基、5−フェニル−2−フリル基等が挙げられる。ヘテロアリール基が置換基を有する場合、置換基としてはアルキル基が好ましい。
【0041】
以上、式(1)で表される構造単位に含まれ得る官能基としてのアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基及びヘテロアリール基について説明したが、以下の説明においても、特に断りのない限り、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基及びヘテロアリール基の説明、具体例や好適例は、いずれも上記と同じである。
【0042】
式(1)で表される構造単位において、R11及びR12としては、式(1−2)で表さる基が好ましい。なかでも、Rがアルキル基を表す式(1−2)で表される基が好ましい。この場合、本実施形態の高分子化合物の溶媒への溶解性が向上し、有機半導体素子の活性層となる有機層の作製が容易となる傾向にある。
【0043】
21及びR22としては、水素原子、アルキル基又はアルキルチオ基が好ましく、水素原子又はアルキル基がより好ましく、水素原子がさらに好ましい。R21及びR22としてこれらの基を有することで、第1構造単位を形成するための原料化合物の合成が容易となるほか、本実施形態の高分子化合物の溶媒への溶解性が向上し、有機半導体素子の活性層となる有機層の作製が容易となる傾向にある。
【0044】
第1構造単位としては、例えば、式(1−001)〜式(1−013)で表される構造単位が挙げられる。これらの式中のRは、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。一つの構造単位中に複数存在するRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。第1構造単位としては、なかでも、式(1−001)〜式(1−007)で表される構造単位が好ましく、式(1−001)〜式(1−003)で表される構造単位がより好ましく、式(1−001)で表される構造単位が特に好ましい。これらの好適な構造を有する第1構造単位によれば、高分子化合物による移動度を向上させ易くなる傾向にある。
【化5】


【化6】

【0045】
(第2構造単位)
第2構造単位は、式(2−A)で表され、且つ、第1構造単位とは異なる構造を有する構造単位からなる構造単位である。第2構造単位は、高分子化合物中に一種のみ含まれていてもよく、二種以上含まれていてもよい。
【0046】
式(2−A)中、Aは、チオフェン環、又は、少なくとも1つのチオフェン環を含む縮合環を表し、これらは置換基を有していてもよい。これらのチオフェン環や縮合環が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ヘテロアリール基が挙げられる。
【0047】
Aがチオフェン環である第2構造単位としては、上述した式(2−1)で表される構造単位が挙げられる。
【0048】
また、Aが少なくとも1つのチオフェン環を含む縮合環である場合、縮合環における少なくとも一方の端に位置する環がチオフェン環であると好ましい。その場合、縮合環の両端に位置する環がチオフェン環であるか、又は、縮合環の全ての環がチオフェン環であることが好ましい。縮合環を構成する環の数は、2〜4であると好ましく、2〜3であるとより好ましい。そのような縮合環を含む第2構造単位としては、下記式(2−B)で表される構造単位が挙げられる。
【化7】

【0049】
式(2−B)中、
は、単環又は縮合環からなる芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を表し、これらは置換基を有していてもよい。Aは、式(2−B)において隣接するチオフェン環と縮合する。
01としては、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基又はヘテロアリール基が挙げられる。また、Aが有していてもよい置換基としては、上述したAが有していてもよい置換基と同じものが挙げられる。R01で表されるハロゲン原子又はAが有していてもよい置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。なかでも、フッ素原子が好ましい。
【0050】
で表される芳香族炭化水素環が有する炭素数は、6〜60であることが好ましく、6〜20であることがより好ましい。また、Aで表される芳香族複素環が有する炭素数は、2〜60であることが好ましく、3〜20であることがより好ましい。なお、芳香族炭化水素環が有する炭素数および芳香族複素環が有する炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。
芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、テトラセン環、ペンタセン環、インデン環、アズレン環等が挙げられる。芳香族複素環としては、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、ピロール環、チエノチオフェン環、ベンゾチオフェン環、ナフトチオフェン環、シクロペンタチオフェン環等が挙げられる。高分子化合物の電界効果移動度をより高める観点から、Aとしては、芳香族複素環が好ましく、チオフェン環、チエノチオフェン環、ベンゾチオフェン環、ナフトチオフェン環、シクロペンタチオフェン環がより好ましい。
【0051】
Aが少なくとも1つのチオフェン環を含む縮合環である第2構造単位としては、上述した式(2−1)〜式(2−10)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位が挙げられる。
【0052】
式(2−1)〜式(2−10)中、R41、R42、R51、R52、R61、R62、R71、R72、R81、R82、R91、R92、R101、R102、R111、R112、R121、R122、R131、R132、R141、R142、R151、R152、R161、R162、R171、R172、R181、R182、R191、R192、R201、R202、R211、R212、R221、R222、R231及びR232はで表される基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。なかでも、ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。
【0053】
式(2−1)で表される構造単位としては、R41及びR42のうちの少なくとも一方が、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基である構造単位が好ましく、R41及びR42のうちの少なくとも一方が、アルキル基、アルコキシ基、アルキルオ基である構造単位がより好ましく、R41及びR42のうちの少なくとも一方が、アルキル基である構造単位が特に好ましい。式(2−1)で表される構造単位としてこれらの構造単位を有することで、本実施形態の高分子化合物の電界効果移動度がさらに向上する。
【0054】
また、第2構造単位として式(2−1)で表される構造単位を有する場合、高分子化合物においては、式(2−1)で表される構造単位が複数連続して含まれていることが好ましい(例えば、式(2−1)’)。
【化8】

【0055】
式(2−1)’中、aは2以上の整数であり、2〜4の整数であると好ましく、2であるとより好ましい。
【0056】
第2構造単位としては、Aが少なくとも1つのチオフェン環を含む縮合環である第2構造単位が好ましい。例えば、式(2−2)表される構造単位、式(2−3)表される構造単位、式(2−4)表される構造単位、式(2−5)表される構造単位及び式(2−6)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位であると好ましい。また、式(2−7)表される構造単位、式(2−8)表される構造単位、式(2−9)表される構造単位及び式(2−10)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位であっても好ましい。
【0057】
Aが少なくとも1つのチオフェン環を含む縮合環である第2構造単位としては、例えば、式(2−001)〜式(2−015)で表される構造単位が挙げられる。なお、式(2−001)〜式(2−015)中のRは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。一つの構造単位中に複数存在するRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0058】
これらの中でも、高分子化合物の電界効果移動度をより高める観点から、式(2−001)で表される構造単位〜式(2−009)で表される構造単位が好ましく、式(2−001)、式(2−004)、式(2−006)で表される構造単位がより好ましく、式(2−001)で表される構造単位が更に好ましい。これらの好適な構造を有する第2構造単位によれば、高分子化合物による移動度を向上させ易くなる傾向にある。
【化9】

【0059】
高分子化合物に含まれる第2構造単位の合計は、第1構造単位100モル部に対して、1〜10000モル部であると好ましく、10〜1000モル部であるとより好ましく、50〜500モル部であるとさらに好ましい。かかる範囲を満たすと、高分子化合物の電界効果移動度が更に高められる。
【0060】
(他の構造単位)
本実施形態の高分子化合物は、第1構造単位及び第2構造単位のほかに、これら以外の構造単位(以下、「他の構造単位」という。)を含んでいてもよい。他の構造単位は、高分子化合物中に一種のみ含まれていてもよく、二種以上含まれていてもよい。
【0061】
他の構造単位としては、例えば、2価の芳香族基、−CR=CR−で表される基、−C≡C−で表される基が挙げられる。
【0062】
2価の芳香族基とは、芳香族炭化水素から、その芳香環を構成する炭素原子に直接結合している水素原子2個を除いた残りの原子団から構成される基である。2価の芳香族基としては、ベンゼン環を有する基、縮合環を有する基、独立した芳香族環及び縮合環からなる群より選ばれる2個以上が直接結合した基が挙げられる。
【0063】
2価の芳香族基としては、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、フェナントレンジイル基、テトラセンジイル基、ピレンジイル基、ペンタセンジイル基、ペリレンジイル基、フルオレンジイル基、オキサジアゾールジイル基、チアジアゾールジイル基、オキサゾールジイル基、チアゾールジイル基、ピロールジイル基、フランジイル基、セレノフェンジイル基、ピリジンジイル基、ピラジンジイル基、ピリミジンジイル基、トリアジンジイル基、ベンゾチオフェンジイル基、ベンゾピロールジイル基、ベンゾフランジイル基、キノリンジイル基、イソキノリンジイル基等が挙げられる。2価の芳香族基は置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ヘテロアリール基が挙げられる。
【0064】
−CR=CR−で表される基において、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はシアノ基を表す。アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基の場合、それらは置換基を更に有していてもよい。置換基としては、2価の芳香族基が有していてもよい置換基と同じものが挙げられる。
【0065】
本実施形態の高分子化合物が他の構造単位を含む場合、他の構造単位としては、2価の芳香族基が好ましい。なかでも、2価の芳香族基としては、置換基としてアルキル基、アリール基若しくはヘテロアリール基を有していてもよいフェニレンジイル基、又は、置換基としてアルキル基、アリール基若しくはヘテロアリール基を有していてもよいフルオレンジイル基が好ましい。さらに、以下の式(A−001)〜式(A−004)で表される基がより好ましい。他の構造単位としてこれらの構造単位を含むことで、高分子化合物の電界効果移動度が更に向上する傾向にある。なお、式(A−001)〜式(A−004)中のRは、式(2−001)〜式(2−015)中のRと同じ意味を表し、その中でも、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はハロゲン原子を表すことが好ましい。一つの構造単位中に複数存在するRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【化10】

【0066】
本実施形態の高分子化合物が、第1構造単位、第2構造単位及び他の構造単位からなる場合、高分子化合物中には、第1構造単位及び第2構造単位が一定以上の割合で含まれることが好ましい。すなわち、高分子化合物に含まれる構造単位の合計モル中、第1構造単位と第2構造単位とが合計で50モル%以上含まれることが好ましく、70モル%以上含まれることがより好ましい。このように第1構造単位及び第2構造単位を含むことで、高分子化合物の電界効果移動度が更に高められる。
【0067】
本実施形態の高分子化合物としては、第1構造単位、第2構造単位及び他の構造単位として、下記の表1に示される構造単位をそれぞれ組み合わせて有する高分子化合物P01〜P08が好適である。なお、表1中に示した各構造単位の番号は、上記で例示した構造単位の化学式の番号にそれぞれ対応している。これらの高分子化合物においては、各構造単位の合計が100モル%である。
【表1】

【0068】
本実施形態の高分子化合物の末端構造は、限定されないが、分子鎖の末端に重合反応に対して活性である基(重合活性基)が残っていると、重合活性基が残っていない場合に比べて高分子化合物の電界効果移動度が低下するおそれがある。そのため、高い電界効果移動度を得る観点からは、アリール基やヘテロアリール基等の安定な基であることが好ましい。
【0069】
本実施形態の高分子化合物は、第1構造単位及び第2構造単位を少なくとも組み合わせて含む共重合体であるが、どのような共重合体であってもよく、例えば、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体等のいずれであってもよい。
【0070】
なかでも、本実施形態の高分子化合物は、式(1)で表される構造単位と、式(2−A)で表される構造単位との交互共重合体であることがより好ましく、式(1)で表される構造単位と式(2−B)で表される構造単位との交互共重合体であることがさらに好ましく、式(1)で表される構造単位と式(2−2)で表される構造単位との交互共重合体であることが特に好ましい。これらの構造を有することで、本実施形態の高分子化合物は、一層高い電界効果移動度を発揮することができる。
【0071】
さらに、本実施形態の高分子化合物は、ゲル透過クロマトグラフィー(以下、「GPC」という。)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が、1×10〜1×10であると好ましい。このようなMnを有する高分子化合物によれば、優れた電界効果移動度が得られ易くなる。なかでも、Mnが2×10以上1×10以下であると、高分子化合物の溶媒への溶解性が良好となり、有機半導体素子における有機層(活性層)の形成が容易となる傾向にある。
【0072】
[高分子化合物の製造方法]
次に、上述した実施形態に係る高分子化合物の製造方法の好適な実施形態について説明する。
【0073】
高分子化合物の製造方法としては、例えば、第1構造単位、第2構造単位や他の構造単位を形成するための原料化合物を、Suzukiカップリング反応、Stilleカップリング反応等のカップリング反応により結合させて高分子化合物を生成する方法が挙げられる。これらの方法により、好適な実施形態の高分子化合物を容易に製造できる。以下、高分子化合物の製造方法の一例としてこれらの方法について説明するが、高分子化合物の製造方法は、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0074】
Suzukiカップリング反応により高分子化合物を製造する場合、例えば、第1構造単位の原料化合物(以下、「第1原料化合物」という。)として式(11−1)で表される化合物を、第2構造単位の原料化合物(以下、「第2原料化合物」という。)として式(12−A)で表される化合物をそれぞれ準備して、所望とする高分子化合物の構造が得られるようにそれらを配合して反応させる。式(12−A)で表される化合物としては、例えば、式(12−1)〜式(12−6)で表される化合物が挙げられる。
【化11】


【化12】


【化13】

【0075】
式(11−1)、式(12−A)、式(12−1)〜式(12−6)中の各符号が付された基のうち、上記したのと同じ符号が付された基は、いずれも上記と同義である。W、W、W及びWは、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基、ホウ酸エステル残基、ホウ酸残基(−B(OH)で表される基)であると好ましい。
【0076】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。なかでも、高分子化合物の合成がより容易となるので、臭素原子又はヨウ素原子が好ましく、臭素原子がより好ましい。
【0077】
アルキルスルホネート基としては、メタンスルホネート基、エタンスルホネート基、トリフルオロメタンスルホネート基が例示される。アリールスルホネート基としては、ベンゼンスルホネート基、p−トルエンスルホネート基が例示される。アリールアルキルスルホネート基としては、ベンジルスルホネート基が例示される。
【0078】
ホウ酸エステル残基としては、例えば、下記式で表される基が挙げられる。
【化14】


[式中、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表す。]
【0079】
第1原料化合物におけるW及びWと、第2原料化合物におけるW及びWとは、第1原料化合物及び第2原料化合物によるSuzukiカップリング反応が好適に生じるような組み合わせとすることが好ましい。例えば、第1原料化合物におけるW及びWは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基又はアリールアルキルスルホネート基であると好ましい。第2原料化合物におけるW及びWは、それぞれ独立に、ホウ酸残基又はホウ酸エステル残基であると好ましい。
【0080】
第1原料化合物及び第2原料化合物によるSuzukiカップリング反応を生じさせる場合、第1原料化合物のモル数の合計が、第2原料化合物のモル数の合計よりも多いことが好ましい。これによって、高分子化合物を一層容易に生成させることができる。例えば、第1原料化合物のモル数の合計を1モルとしたとき、第2原料化合物のモル数の合計を0.6〜0.99とすることが好ましく、0.7〜0.95とすることがより好ましい。
【0081】
第1原料化合物及び第2原料化合物によるSuzukiカップリング反応は、溶媒中、触媒としてパラジウム触媒を用い、塩基の存在下で行うことが好ましい。
【0082】
パラジウム触媒としては、Pd(0)触媒、Pd(II)触媒等を適用できる。これらのパラジウム触媒としては、例えば、[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]パラジウム、パラジウムアセテート類、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムが挙げられる。なかでも、反応(重合)操作を容易にでき、また高い反応(重合)速度が得られるので、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、パラジウムアセテート、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムが好ましい。
【0083】
パラジウム触媒の添加量は、触媒としての有効量であればよい。例えば、第2原料化合物の合計1モルに対して、0.0001〜0.5モルであると好ましく、0.0003〜0.1モルであるとより好ましい。
【0084】
パラジウム触媒としてパラジウムアセテート類を用いる場合は、トリフェニルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、トリ(o−メトキシフェニル)ホスフィン等のリン化合物を配位子として添加することができる。この場合、配位子の添加量は、パラジウム触媒1モルに対して、0.5〜100モルであると好ましく、0.9〜20モルであるとより好ましく、1〜10モルであると更に好ましい。
【0085】
塩基としては、無機塩基、有機塩基、無機塩等が挙げられる。無機塩基としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化バリウム等が挙げられる。有機塩基としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等が挙げられる。無機塩としては、例えば、フッ化セシウム等が挙げられる。塩基の添加量は、第2原料化合物の合計1モルに対して、0.5〜100モルであると好ましく、0.9〜20モルであるとより好ましく、1〜10モルであると更に好ましい。
【0086】
溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等が例示される。高分子化合物の溶解性が良好であるので、トルエン、テトラヒドロフランが好ましい。塩基を水溶液として加えることにより、反応を2相系で生じさせてもよい。塩基として無機塩を用いる場合は、無機塩を十分に溶解させるために、水溶液として加えることが好ましい。
【0087】
なお、塩基を水溶液として加えることで、反応を2相系で生じさせる場合は、必要に応じて、第4級アンモニウム塩などの相間移動触媒を加えて反応を行ってもよい。
【0088】
第1原料化合物及び第2原料化合物によるSuzukiカップリング反応を行う場合、反応温度は、溶媒の種類にもよるが、50〜160℃であると好ましい。特に高分子量の高分子化合物が得られやすくなるので、60〜120℃であるとより好ましい。また、反応においては、溶媒の沸点近くまで昇温し、還流させてもよい。反応時間は、高分子化合物が目的の重合度に達したときを終点とすればよいが、例えば、0.1〜200時間とすることができる。特に1〜30時間であると、効率的に高分子化合物を生じさせることができるので好ましい。
【0089】
さらに、第1原料化合物及び第2原料化合物によるSuzukiカップリング反応は、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下において、パラジウム触媒が失活しない反応系で行うことが好ましい。例えば、アルゴンガスや窒素ガス等で十分に置換して脱気された系で反応を行うことが好ましい。
【0090】
具体的には、重合容器(反応系)内の気体を窒素ガスで十分置換して脱気した後、この重合容器に、第1原料化合物、第2原料化合物、及び、パラジウム触媒を入れる。さらに、重合容器内の気体を窒素ガスで十分置換して脱気した後、あらかじめ窒素ガスでバブリングすることにより脱気した溶媒(例えば、トルエン)を加え、次いでこの溶液に、あらかじめ窒素ガスでバブリングすることにより脱気した塩基(例えば、炭酸ナトリウム水溶液)を滴下する。その後、加熱して昇温し、例えば、還流温度で8時間、不活性ガス雰囲気を保持しながら重合することにより、Suzukiカップリング反応による高分子化合物の合成を行うことができる。
【0091】
なお、上記の例では、第1構造単位を形成するための原料化合物(第1原料化合物)と第2構造単位を形成するための原料化合物(第2原料化合物)とを反応させる例について説明したが、第1及び第2構造単位以外の構造単位(他の構造単位)を含む高分子化合物を形成する場合は、かかる他の構造単位を形成するための原料化合物を更に加えて上記と同様の反応を行えばよい。他の構造単位を形成するための原料化合物としては、他の構造単位に対応する構造の両末端にW〜Wで表される基を有するモノマーが挙げられる。
【0092】
一方、Stilleカップリング反応により高分子化合物を製造する場合、例えば、第1構造単位の原料化合物として上述した第1原料化合物を、第2構造単位の原料化合物として、上記式(12−A)で表される化合物において、W及びWを、それぞれ独立に有機スズ残基に置き換えた化合物(以下、「第2’原料化合物」という。)をそれぞれ準備して、所望とする高分子化合物の構造が得られるようにそれらを配合して反応させる。
【0093】
有機スズ残基としては、−SnR100で表される基が挙げられる。R100は、1価の有機基を表す。1価の有機基としては、アルキル基、アリール基等が挙げられる。R100としてのアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル墓、n−ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基、2一メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル墓、オクタデシル基、エイコシル基等の鎖状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等のシクロアルキル基等が挙げられる。R100としてのアリール基としてはフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0094】
有機スズ残基としては、−SnMeで表される基、−SnEtで表される基、−SnBuで表される基、−SnPhで表される基が好ましく、−SnMeで表される基、−SnEtで表される基、−SnBuで表される基がより好ましい。これらの好ましい例において、Meはメチル基を、Etはエチル基を、Buはブチル基を、Phはフェニル基をそれぞれ表す。
【0095】
第1原料化合物及び第2’原料化合物によるStilleカップリング反応は、溶媒中、パラジウム触媒の存在下で行うことが好ましい。
【0096】
パラジウム触媒としては、上述したSuzukiカップリング反応におけるパラジウム触媒と同様のものが例示できる。なかでも、反応(重合)操作を容易にでき、また高い反応(重合)速度が得られるので、[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムが好ましい。
【0097】
パラジウム触媒の添加量は、触媒としての有効量であればよい。例えば、第2’原料化合物の合計1モルに対して、0.0001〜0.5モルであると好ましく、0.0003〜0.2モルであるとより好ましい。
【0098】
第1原料化合物及び第2’原料化合物によるStilleカップリング反応においては、必要に応じて配位子や助触媒を用いることもできる。配位子としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、トリ(o−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2−フリル)ホスフィン等のリン化合物やトリフェニルアルシン、トリフェノキシアルシン等の砒素化合物が挙げられる。助触媒としては、ヨウ化銅、臭化銅、塩化銅等が挙げられる。
【0099】
配位子又は助触媒を用いる場合、配位子又は助触媒の各々の添加量は、パラジウム触媒1モルに対して、0.5〜100モルであると好ましく、0.9〜20モルであるとより好ましく、1〜10モルであると更に好ましい。
【0100】
溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド、トルエン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等が例示される。高分子化合物の溶解性が良好であるので、トルエン、テトラヒドロフランが好ましい。
【0101】
反応温度は、溶媒の種類にもよるが、50〜160℃であると好ましく、特に高分子量の高分子化合物が得られやすくなるので、60〜120℃がより好ましい。また、反応においては、溶媒の沸点近くまで昇温し、還流させてもよい。反応時間は、目的の重合度に達したときを終点とすればよい。例えば、0.1〜200時間とすることができ、特に1〜30時間程度であると効率的に高分子化合物を生じさせることができるので好ましい。
【0102】
第1原料化合物及び第2’原料化合物によるStilleカップリング反応は、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性雰囲気下において、パラジウム触媒が失活しない反応系で行うことが好ましい。例えば、アルゴンガスや窒素ガス等で十分に置換して脱気された系で反応を行うことが好ましい。
【0103】
具体的には、重合容器(反応系)内の気体を窒素ガスで十分置換して脱気した後、この重合容器に、第1原料化合物、第2’原料化合物、及び、パラジウム触媒を入れる。さらに、重合容器内の気体を窒素ガスで十分置換して脱気した後、あらかじめ窒素ガスでバブリングすることにより脱気した溶媒(例えば、トルエン)を加え、次いで必要に応じて配位子や助触媒を加える。その後、加熱して昇温し、例えば、還流温度で8時間、不活性ガス雰囲気を保持しながら重合することにより、Stilleカップリング反応による高分子化合物の合成を行うことができる。
【0104】
[有機半導体素子]
本発明の好適な実施形態に係る高分子化合物(以下の説明では、好適な実施形態に係る高分子化合物を簡略化のため、「本発明の高分子化合物」という。)は、有機半導体材料として用いた場合、例えば、有機半導体素子の有機層の形成材料として用いた場合に、高い電界効果移動度を発揮することができる。有機半導体素子としては、有機トランジスタ、有機太陽電池、有機エレクトロルミネッセンス素子等が挙げられる。本発明の高分子化合物は、なかでも、有機トランジスタの電荷輸送材料として特に有用である。
【0105】
(有機半導体材料)
有機半導体素子に適用される有機半導体材料は、本発明の高分子化合物の1種類を単独で含むものであってもよく、また2種類以上を組み合わせて含むものであってもよい。また、有機半導体材料は、本発明の高分子化合物に加えて、キャリア輸送性を有する化合物(低分子化合物又は高分子化合物)等の他の成分を更に含んでいてもよい。有機半導体材料が、他の成分を含む場合は、本発明の高分子化合物を30質量%以上含むことが好ましく、50質量%以上含むことがより好ましい。
【0106】
キャリア輸送性を有する化合物としては、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、オリゴチオフェン及びその誘導体、オキサジアゾール誘導体、フラーレン類及びその誘導体等の低分子化合物、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体等の高分子化合物が例示できる。
【0107】
有機半導体材料により有機層等の薄膜を形成する場合、薄膜は、機械的特性を高める観点から、本発明の高分子化合物以外の高分子化合物を高分子バインダーとして含んでいてもよい。高分子バインダーとしては、電子輸送性又はホール輸送性を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収が強くないものが好ましく用いられる。
【0108】
高分子バインダーとしては、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン等が挙げられる。
【0109】
(有機トランジスタ)
上述した有機半導体材料を用いた有機トランジスタとしては、ソース電極及びドレイン電極と、これらの電極間の電流経路となり本発明の高分子化合物を含む活性層(即ち、有機半導体層)と、この電流経路を通る電流量を制御するゲート電極とを備えた構成を有するものが挙げられる。このような構成を有する有機トランジスタとしては、電界効果型有機トランジスタ、静電誘導型有機トランジスタが挙げられる。
【0110】
電界効果型有機トランジスタは、例えば、ソース電極及びドレイン電極と、これらの電極間の電流経路となる本発明の高分子化合物を含む活性層と、この電流経路を通る電流量を制御するゲート電極と、活性層とゲート電極との間に配置される絶縁層とを有する有機トランジスタである。特に、ソース電極及びドレイン電極が、活性層に接して設けられており、さらに活性層に接した絶縁層を挟んでゲート電極が設けられている有機トランジスタが好ましい。
【0111】
静電誘導型有機トランジスタは、例えば、ソース電極及びドレイン電極と、これらの電極間の電流経路となる本発明の高分子化合物を含む活性層と、この電流経路を通る電流量を制御するゲート電極とを有し、ゲート電極が活性層中に設けられている有機トランジスタである。特に、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極が、活性層に接して設けられている有機トランジスタが好ましい。
【0112】
図1は、第1の実施形態に係る有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)を示す模式断面図である。図1に示す有機トランジスタ100は、基板1と、基板1上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を覆うようにして基板1上に形成された活性層2と、活性層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の領域上の絶縁層3を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4とを備えるものである。
【0113】
図2は、第2の実施形態に係る有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)を示す模式断面図である。図2に示す有機トランジスタ110は、基板1と基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を覆うようにして基板1上に形成された活性層2と、ソース電極5と所定の間隔を持って活性層2上に形成されたドレイン電極6と、活性層2及びドレイン電極6上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の領域上の絶縁層3を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4とを備えるものである。
【0114】
図3は、第3の実施形態に係る有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)を示す模式断面図である。図3に示す有機トランジスタ120は、基板1と基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域の一部を覆うように、絶縁層3上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6の一部を覆うように絶縁層3上に形成された活性層2とを備えるものである。
【0115】
図4は、第4の実施形態に係る有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)示す模式断面図である。図4に示す有機トランジスタ130は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域の一部を覆うように絶縁層3上に形成されたソース電極5と、ソース電極5の一部を覆うようにして絶縁層3上に形成された活性層2と、活性層2の一部を覆うように、ソース電極5と所定の間隔を持って絶縁層3上に形成されたドレイン電極6とを備えるものである。
【0116】
図5は、第5の実施形態に係る有機トランジスタ(静電誘導型有機トランジスタ)を示す模式断面図である。図5に示す有機トランジスタ140は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5上に形成された活性層2と、活性層2上に所定の間隔を持って複数形成されたゲート電極4と、ゲート電極4の全てを覆うようにして活性層2上に形成された活性層2a(活性層2aを構成する材料は、活性層2と同一であっても異なっていてもよい)と、活性層2a上に形成されたドレイン電極6とを備えるものである。
【0117】
図6は、第6の実施形態に係る有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)を示す模式断面図である。図6に示す有機トランジスタ150は、基板1と、基板1上に形成された活性層2と、活性層2上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6の一部を覆うようにして活性層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5が下部に形成されている絶縁層3の領域とドレイン電極6が下部に形成されている絶縁層3の領域とをそれぞれ一部覆うように、絶縁層3上に形成されたゲート電極4とを備えるものである。
【0118】
図7は、第7の実施形態に係る有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)を示す模式断面図である。図7に示す有機トランジスタ160は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を覆うように形成された活性層2と、活性層2の一部を覆うように活性層2上に形成されたソース電極5と、活性層2の一部を覆うように、ソース電極5と所定の間隔を持って活性層2上に形成されたドレイン電極6とを備えるものである。
【0119】
図8は、第8の実施形態に係る有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)を示す模式断面図である。図8に示す有機トランジスタ170は、ゲート電極4と、ゲート電極4上に形成された絶縁層3と、絶縁層3上に形成された活性層2と、活性層2上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、を備えるものである。この場合、ゲート電極4は基板1を兼ねる構成となっている。
【0120】
上述した各実施形態の有機トランジスタにおいては、活性層2及び/又は活性層2aは、本発明の高分子化合物を含有する膜によって構成され、ソース電極5とドレイン電極6との間の電流通路(チャネル)となる。また、ゲート電極4は、電圧を印加することにより電流通路(チャネル)を通る電流量を制御する。
【0121】
このような電界効果型有機トランジスタは、公知の方法、例えば特開平5−110069号公報に記載の方法により製造することができる。また、静電誘導型有機トランジスタは、特開2004−006476号公報に記載の方法等の公知の方法により製造することができる。
【0122】
基板1の材料は、有機トランジスタの特性を阻害しない材料であればよい。基板としては、ガラス基板、フレキシブルなフィルム基板、プラスチック基板等を用いることができる。
【0123】
絶縁層3の材料は、電気の絶縁性が高い材料であればよく、SiO、SiN、Ta、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、有機ガラス、フォトレジスト等を用いることができるが、低電圧化の観点からは、誘電率の高い材料を用いることが好ましい。
【0124】
絶縁層3の上に活性層2を形成する場合は、絶縁層3と活性層2の界面特性を改善するため、シランカップリング剤等の表面処理剤で絶縁層3の表面を処理して表面改質した後に活性層2を形成することもできる。有機電界効果トランジスタの場合、電子やホール等の電荷は、一般に絶縁層と活性層の界面付近を通過する。従って、この界面の状態がトランジスタの移動度に大きな影響を与える。そこで、界面状態を改良して特性を向上させる方法として、シランカップリング剤による界面の制御が提案されている(例えば、表面化学、2007年、第28巻、第5号、p.242−248)。
【0125】
シランカップリング剤としては、アルキルクロロシラン類(オクチルトリクロロシラン(OTS)、オクタデシルトリクロロシラン(ODTS)、フェニルエチルトリクロロシラン等)、アルキルアルコキシしラン類、フッ素化アルキルクロロシラン類、フッ素化アルキルアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)等のシリルアミン化合物等が挙げられる。また、表面処理剤で処理する前に、絶縁層表面をオゾンUV処理、O2プラズマ処理してもよい。
【0126】
このような処理によって、絶縁層として用いられるシリコン酸化膜等の表面エネルギーを制御することができる。また、表面処理により、活性層を構成している膜の絶縁層上での配向性が向上し、より高い電界効果移動度が得られる。
【0127】
ゲート電極4は、ソース電極からドレイン電極へ流れる電流経路を形成することができ、かつ、ゲート電極に印加した電圧で電流経路を流れる電流量が制御できる構造であればよい。例えば、くし型電極が挙げられる。
【0128】
ゲート電極4には、金、白金、銀、銅、クロム、パラジウム、アルミニウム、インジウム、モリブデン、低抵抗ポリシリコン、低抵抗アモルファスシリコン等の金属や、錫酸化物、酸化インジウム、インジウム・錫酸化物(ITO)等の材料を用いることができる。これらの材料は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、ゲート電極4としては、高濃度にドープされたシリコン基板を用いることも可能である。高濃度にドープされたシリコン基板は、ゲート電極としての性能とともに、基板としての性能も併有する。このような基板としての性能も有するゲート電極4を用いる場合には、基板1とゲート電極4とが接している有機トランジスタにおいて、第8の実施形態の有機トランジスタのように基板1を省略してもよい。
【0129】
ソース電極5及びドレイン電極6は、低抵抗の材料から構成されることが好ましい。ソース電極5及びドレイン電極6は、例えば、金、白金、銀、銅、クロム、パラジウム、アルミニウム、インジウム、モリブデン等から構成されることが特に好ましい。これらの材料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0130】
有機トランジスタにおいて、ソース電極5及びドレイン電極6と、活性層2との間には、更に他の化合物から構成された層が介在していてもよい。このような層としては、電子輸送性を有する低分子化合物、ホール輸送性を有する低分子化合物、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、これらの金属と有機化合物との錯体、ヨウ素、臭素、塩素、塩化ヨウ素等のハロゲン、硫酸、無水硫酸、二酸化硫黄、硫酸塩等の酸化硫黄化合物、硝酸、二酸化窒素、硝酸塩等の酸化窒素化合物、過塩素酸、次亜塩素酸等のハロゲン化化合物、アルキルチオール化合物、芳香族チオール類、フッ素化アルキル芳香族チオール類等の芳香族チオール化合物等からなる層が挙げられる。
【0131】
上述した有機トランジスタを作製した後には、素子を保護するため、有機トランジスタ上に保護膜を形成することが好ましい。これにより、有機トランジスタが大気から遮断され、有機トランジスタの特性の低下を抑制することができる。また、有機トランジスタの上に駆動する表示デバイスを形成する場合、その形成工程における有機トランジスタへの影響もこの保護膜により低減することができる。
【0132】
保護膜を形成する方法としては、有機トランジスタを、紫外線(UV)硬化樹脂、熱硬化樹脂や無機のSiON膜等で覆う方法等が挙げられる。大気との遮断を効果的に行うため、有機トランジスタを作製後、有機トランジスタを大気にさらすことなく(例えば、乾燥した窒素雰囲気中、真空中で)保護膜を形成することが好ましい。
【0133】
このように構成された有機トランジスタの一種である有機電界効果トランジスタは、アクティブマトリックス駆動方式の液晶ディスプレイや有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの画素駆動スイッチング素子等として適用できる。そして、上述した実施形態の有機電界効果トランジスタは、活性層として、本発明の高分子化合物を含有し、そのことによって電荷輸送性が向上した活性層とを備えているため、その電界効果移動度が高いものとなる。したがって、十分な応答速度を持つディスプレイの製造等に有用である。
【実施例】
【0134】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0135】
[測定方法]
以下の実施例におけるNMR分析、質量分析及び分子量分析は、次の方法に従って実施した。
【0136】
(NMR分析)
NMR分析は、測定対象の化合物を重クロロホルムに溶解させ、NMR装置(Varian社製、INOVA300)を用いて行った。
【0137】
(質量分析)
質量分析は、質量分析装置(AccuTOF TLC JMS−T100TD、日本電子製)を用いて行った。
【0138】
(分子量分析)
高分子化合物の数平均分子量及び重量平均分子量は、高分子化合物をゲル透過クロマトグラフィー(GPC、島津製作所製、商品名:LC−10AD)により測定し、ポリスチレン換算の値を求めることにより算出した。測定する高分子化合物は、テトラヒドロフランに溶解させ、GPCに注入した。GPCの移動相にはテトラヒドロフランを用いた。カラムは、PLgel MIXED−B(ポリマーラボラトリーズ製)を用いた。検出器にはUV検出器(島津製作所製、商品名:SPD−M10A)を用いた。
【0139】
[合成例1:化合物2の合成]
フラスコに、マロノイルジクロライド(化合物1)を25g(0.18mol)、及び、ジエチルエーテルを150mL入れ、0℃に冷却した。その後、このフラスコ中に、1−ドデカノール69g(0.37mol)、トリエチルアミン38g(0.37mol)及びジエチルエーテル150mLの混合液を滴下した。滴下後、室温で5時間撹拌した。得られた反応液を水に注ぎ、ジエチルエーテルを用いて抽出を行った。得られたジエチルエーテル溶液を濃縮した後、シリカゲルカラムを用いて精製して、化合物2(ドデシルマロネート)を得た。化合物2の収量は32gであり、収率は41%であった。合成例1で行った反応の反応式は、以下の通りである。
【化15】

【0140】
化合物2についてNMR分析を行った結果、以下の結果が得られた。
H−NMR(300MHz,CDCl):δ(ppm)=4.14(t,4H),3.36(s,2H),1.64(m,4H),1.20−1.40(m,36H),0.88(t,6H).
【0141】
[合成例2:化合物3の合成]
内部の気体を窒素ガスで置換したフラスコに、テトラヒドロフランを41mL入れ、0℃に冷却した。その後、このフラスコ中に、塩化チタン(IV)を4.1g(22mmol)加えて撹拌したところ、黄色い析出物が発生した。次に、4H−シクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェン−4−オンを2.1g(11mmol)加えて、室温で2時間撹拌した後、化合物2を4.8g(11mmol)、及び、テトラヒドロフランを48mL含む溶液を加えて室温で5時間撹拌した。次いで、ピリジンを1.7g(22mmol)加えて1時間撹拌した。得られた反応液を濃縮した後、シリカゲルカラムを用いて精製して、化合物3を得た。化合物3の収量は4.9gであり、収率は73%であった。合成例2で行った反応の反応式は、以下の通りである。
【化16】

【0142】
化合物3についてNMR分析を行った結果、以下の結果が得られた。
H−NMR(300MHz,CDCl):δ(ppm)=7.28(d,2H),7.00(d,2H),4.31(t,4H),1.72(m,4H),1.20−1.40(m,36H),0.88(t,6H).
【0143】
[合成例3:化合物4の合成]
フラスコに、化合物3を4.9g(8.0mmol)、N−ブロモスクシンイミド(NBS)を3.0g(17mmol)、及び、クロロホルムを50mL入れ、0℃で3時間撹拌した。得られた反応液を水に注ぎ、クロロホルムで抽出した。クロロホルム溶液を濃縮した後、シリカゲルカラムを用いて精製して、化合物4を得た。化合物4の収量は4.9gであり、収率は79%であった。合成例3で行った反応の反応式は、以下の通りである。
【化17】

【0144】
化合物4についてNMR分析を行った結果、以下の結果が得られた。
H−NMR(300MHz,CDCl):δ(ppm)=7.30(s,2H),4.31(t,4H),1.71(m,4H),1.10−1.50(m,36H),0.88(t,6H).
【0145】
[比較例1:高分子化合物5の合成]
内部の気体を窒素ガスで置換したフラスコに、化合物4を0.40g(0.52mmol)、2,2’−ビピリジルを0.20g(1.3mmol)、テトラヒドロフラン(THF)を40mL、及び、ビス(シクロオクタジエン)ニッケル(Ni(COD))を0.36g入れて、60℃で8時間反応させた。その後、得られた反応液をアセトンに注いで、析出物を得た。得られた析出物をジクロロベンゼンに溶解させた後、これを用いて、ジクロロベンゼンを展開溶媒として用いたシリカゲルカラムによる精製を行った。精製後のジクロロベンゼン溶液をアセトンに滴下することで析出物を得た後、得られた析出物をろ過して、高分子化合物5を得た。高分子化合物5の収量は0.22gであった。また、高分子化合物5のポリスチレン換算の数平均分子量は1.4×10であり、重量平均分子量は6.2×10であった。比較例1で行った反応の反応式は、以下の通りである。
【化18】


(式中、nは繰り返し単位数を表す。)
【0146】
[実施例1:高分子化合物6の合成]
内部の気体を窒素ガスで置換したフラスコに、化合物4を0.30g(0.39mmol)、5,5’−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−2,2’−ビチオフェンを0.15g(0.37mmol)、テトラヒドロフランを110mL、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd(dba))を7.1mg、及び、トリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート([PHBu]BF)を9.0mg入れて撹拌した。その後、この溶液に、2mol/Lの炭酸カリウム水溶液を1.9mL滴下し、5時間還流させた。その後、この反応液に、フェニルボロン酸を61mg加えて、1時間還流させた。
【0147】
次に、得られた反応液に、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物を1.0g加えて3時間還流させた。その後、この反応液を水に注いだ後、トルエンを加えてトルエン層を抽出した。このトルエン溶液を酢酸水溶液及び水で洗浄した後、トルエン溶液をアセトンに滴下して、析出物を得た。得られた析出物をクロロベンゼンに溶解させた後、これを用いて、クロロベンゼンを展開溶媒として用いたシリカゲルカラムによる精製を行った。精製後のクロロベンゼン溶液をメタノールに滴下することで析出物を得た後、析出物をろ過して、高分子化合物6を得た。
【0148】
高分子化合物6の収量は0.20gであった。高分子化合物6のポリスチレン換算の数平均分子量は8.3×10であり、重量平均分子量は1.3×10であった。実施例1で行った反応の反応式は、以下の通りである。
【化19】


(式中、nは繰り返し単位数を表す。)
【0149】
[実施例2:高分子化合物7の合成]
内部の気体を窒素ガスで置換したフラスコに、2,6−ビス(トリブチルスタンニル)−4,4−ジヘキサデシルシクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェンを0.20g(0.17mmol)、化合物4を0.12g(0.16mmol)、トルエンを80mL、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムを2.3mg、及び、トリオルトトリルホスフィンを4.5mg入れて、5時間還流させた。得られた反応液に、ブロモベンゼンを26mg加えて、1時間還流させた。
【0150】
次に、得られた反応液をアセトンに滴下し、析出物を得た。得られた析出物をろ取し、アセトンを用いてソックスレー洗浄を5時間行った。洗浄後の固体をクロロホルムに溶解させ、この溶液に、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物の水溶液を加えて、3時間還流させた。その後、クロロホルム層を抽出した。得られたクロロホルム溶液を酢酸水溶液及び水で洗浄した後、クロロホルム溶液をアセトンに滴下して、析出物を得た。析出物をクロロホルムに溶解させた後、これを用いて、クロロホルムを展開溶媒として用いたシリカゲルカラムによる精製を行った。精製後のクロロホルム溶液をメタノールに滴下することで析出物を得た後、得られた析出物をろ過して、高分子化合物7を得た。
【0151】
高分子化合物7の収量は0.15gであった。高分子化合物7のポリスチレン換算の数平均分子量は3.2×10であり、重量平均分子量は1.0×10であった。実施例2で行った反応の反応式は、以下の通りである。
【化20】


(式中、nは繰り返し単位数を表す。)
【0152】
[実施例3:高分子化合物8の合成]
内部の気体を窒素ガスで置換したフラスコに、5,5’−ビス(トリブチルスタンニル)−4,4’−ジヘキサデシル−2,2’−ビチオフェンを0.30g(0.32mmol)、化合物4を0.23g(0.30mmol)、トルエンを80mL、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムを4.4mg、及び、トリオルトトリルホスフィンを8.7mg入れて、5時間還流させた。得られた反応液に、ブロモベンゼンを50mg加えて、1時間還流させた。
【0153】
次に、得られた反応液をアセトンに滴下し、析出物を得た。析出物をろ取し、アセトンを用いてソックスレー洗浄を5時間行った。洗浄後の固体をクロロホルムに溶解させ、この溶液に、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物の水溶液を加えて、3時間還流させた。その後、クロロホルム層を抽出した。得られたクロロホルム溶液を酢酸水溶液及び水で洗浄した後、クロロホルム溶液をアセトンに滴下して、析出物を得た。析出物をクロロホルムに溶解させた後、これを用いて、クロロホルムを展開溶媒として用いたシリカゲルカラムによる精製を行った。精製後のクロロホルム溶液をメタノールに滴下することで析出物を得た後、得られた析出物をろ過して、高分子化合物8を得た。
【0154】
高分子化合物8の収量は0.23gであった。高分子化合物8のポリスチレン換算の数平均分子量は1.3×10であり、重量平均分子量は2.0×10であった。実施例3で行った反応の反応式は、以下の通りである。
【化21】


(式中、nは繰り返し単位数を表す。)
【0155】
[実施例4:高分子化合物9の合成]
内部の気体を窒素ガスで置換したフラスコに、化合物9を84.9mg(0.15mmol)、化合物4を0.104g(0.135mmol)、トルエンを15mL、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムを2.75mg、及び、トリオルトトリルホスフィンを3.65mg入れて、3.5時間還流させた。得られた反応液に、ブロモベンゼンを71mg加えて、2時間還流させた。
【0156】
次に、得られた反応液をアセトンに滴下し、析出物を得た。析出物をろ取し、アセトンを用いてソックスレー洗浄を5時間行った。洗浄後の固体をo−ジクロロベンゼンに溶解させ、この溶液に、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物の水溶液を加えて、3時間還流させた。その後、o−ジクロロベンゼン層を抽出した。得られたo−ジクロロベンゼン溶液を酢酸水溶液及び水で洗浄した後、o−ジクロロベンゼン溶液をメタノールに滴下して、析出物を得た。析出物をo−ジクロロベンゼンに溶解させた後、これを用いて、o−ジクロロベンゼンを展開溶媒として用いたシリカゲルカラムによる精製を行った。精製後のo−ジクロロベンゼン溶液をメタノールに滴下することで析出物を得た後、得られた析出物をろ過して、高分子化合物9を得た。
【0157】
高分子化合物9の収量は0.23gであった。また、高分子化合物9のポリスチレン換算の数平均分子量は2.0×10であり、重量平均分子量は2.3×10であった。実施例4で行った反応の反応式は、以下の通りである。
【化22】

【0158】
[比較例2:有機トランジスタ1の作製及び評価]
電荷輸送性化合物として高分子化合物5を用いて、図3に示す構造を有する有機トランジスタ1を作製した。
【0159】
ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板の表面を熱酸化し、シリコン酸化膜(以下、「熱酸化膜」という。)を形成した。この熱酸化膜は絶縁層として機能する。次に、フォトリソグラフィー工程により熱酸化膜上にソース電極及びドレイン電極を作製した。ソース電極及びドレイン電極は、熱酸化膜側からクロム(Cr)層と金(Au)層とを有し、チャネル長が20μm、チャネル幅が2mmであった。こうして得られた熱酸化膜、ソース電極及びドレイン電極を形成した基板に対し、アセトンを用いた超音波洗浄を行い、さらにオゾンUVクリーナーによりUVオゾン処理を行なった。
【0160】
その後、β−フェネチルトリクロロシランにより熱酸化膜の表面を修飾し、さらにペンタフルオロベンゼンチオールによりソース電極及びドレイン電極の表面を修飾した。次に、上記表面処理した熱酸化膜、ソース電極及びドレイン電極上に、高分子化合物5の0.5質量%オルトジクロロベンゼン溶液を、1000rpmの回転速度でスピンコートして、活性層を形成した。その後、得られた活性層を窒素ガス雰囲気下において170℃で0.5時間加熱した後、230℃でさらに1時間加熱して、有機トランジスタ1を得た。
【0161】
有機トランジスタ1のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。その結果から算出された有機トランジスタ1による電界効果移動度は、4.4×10−5cm/Vsであった。結果を表2に示す。
【0162】
[実施例5:有機トランジスタ2の作製及び評価]
高分子化合物5に代えて高分子化合物6を用いたこと、及び、活性層を形成した後の加熱の条件を110℃で0.5時間としたこと以外は、比較例2と同様にして有機トランジスタ2を作製した。
【0163】
得られた有機トランジスタ2のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。その結果から算出された有機トランジスタ2による電界効果移動度は、5.7×10−4cm/Vsであった。結果を表2に示す。
【0164】
[実施例6:有機トランジスタ3の作製及び評価]
高分子化合物5に代えて高分子化合物7を用いたこと、及び、活性層を形成した後の加熱の条件を110℃で0.5時間としたこと以外は、比較例2と同様にして有機トランジスタ3を作製した。
【0165】
得られた有機トランジスタ3のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。その結果から算出された有機トランジスタ3による電界効果移動度は、7.3×10−3cm/Vsであった。結果を表2に示す。
【0166】
[実施例7:有機トランジスタ4の作製及び評価]
高分子化合物5に代えて高分子化合物8を用いたこと、及び、活性層を形成した後の加熱の条件を110℃で0.5時間としたこと以外は、比較例2と同様にして有機トランジスタ4を作製した。
【0167】
得られた有機トランジスタ4のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。その結果から算出された有機トランジスタ4による電界効果移動度は、7.9×10−4cm/Vsであった。結果を表2に示す。
【0168】
[実施例8:有機トランジスタ6の作製及び評価]
高分子化合物5に代えて高分子化合物9を用いたこと、及び、活性層を形成した後の加熱の条件を170℃で0.5時間としたこと以外は、比較例2と同様にして有機トランジスタ6を作製した。
【0169】
得られた有機トランジスタ6のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。その結果から算出された有機トランジスタ6による電界効果移動度は、1.5×10−4cm/Vsであった。結果を表2に示す。
【0170】
[実施例9:有機トランジスタ5の作製及び評価]
電荷輸送性化合物として高分子化合物7を用いて、図8に示す構造を有する有機トランジスタ5を作製した。
【0171】
厚さ300nmの熱酸化膜を有する高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板を、アセトン中で10分間超音波洗浄した後、さらにオゾンUVを20分間照射した。その後、トルエン10mlにβ‐PTS(ベータフェニルトリクロロシラン)を5滴(シリンジで採取して滴下)の割合で希釈したβ‐PTSをスピンコートすることにより、熱酸化膜表面をシラン処理した。
【0172】
次に、高分子化合物7の0.5質量%オルトジクロロベンゼン溶液を、上記表面処理した基板上にスピンコート法により塗布し、高分子化合物7の塗布膜を形成した。さらにこの塗布膜に対し、窒素ガス雰囲気中で110℃にて30分加熱することにより、高分子化合物7からなる活性層を形成した。更に、メタルマスクを用いた真空蒸着法により、活性層上に、活性層側から三酸化モリブデン及び金の積層構造を有するソース電極及びドレイン電極を作製することにより、有機トランジスタ5を製造した。
【0173】
得られた有機トランジスタ5のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。その結果から算出された有機トランジスタ5による電界効果移動度は、0.23cm/Vsであった。結果を表2に示す。
【0174】
【表2】

【符号の説明】
【0175】
1…基板、2…活性層、2a…活性層、3…絶縁層、4…ゲート電極、5…ソース電極、6…ドレイン電極、100…第1実施形態に係る有機トランジスタ、110…第2実施形態に係る有機トランジスタ、120…第3実施形態に係る有機トランジスタ、130…第4実施形態に係る有機トランジスタ、140…第5実施形態に係る有機トランジスタ、150…第6実施形態に係る有機トランジスタ、160…第7実施形態に係る有機トランジスタ、170…第8実施形態に係る有機トランジスタ。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される第1構造単位と、
式(2−A)で表され、且つ、前記第1構造単位とは異なる構造を有する第2構造単位と、
を含む高分子化合物。
【化1】


【化2】


[式(1)中、
11及びR12は、それぞれ独立に、式(1−1)で表される基、式(1−2)で表される基、式(1−3)で表される基、式(1−4)で表される基、式(1−5)で表される基、式(1−6)で表される基、又は、式(1−7)で表される基を表し、これらの式中のRは、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
21及びR22は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
式(2−A)中、Aは、チオフェン環、又は、少なくとも一つのチオフェン環を含む縮合環を表し、これらは置換基を有していてもよい。]
【請求項2】
前記第2構造単位が、式(2−1)で表される構造単位、式(2−2)で表される構造単位、式(2−3)で表される構造単位、式(2−4)で表される構造単位、式(2−5)で表される構造単位及び式(2−6)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1記載の高分子化合物。
【化3】


[式(2−1)、式(2−2)、式(2−3)、式(2−4)、式(2−5)及び式(2−6)中、R41、R42、R51、R52、R61、R62、R71、R72、R81、R82、R91、R92、R101、R102、R111及びR112は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。]
【請求項3】
前記第2構造単位が、式(2−7)で表される構造単位、式(2−8)で表される構造単位、式(2−9)で表される構造単位及び式(2−10)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1記載の高分子化合物。
【化4】


[式(2−7)、式(2−8)、式(2−9)及び式(2−10)中、R121、R122、R131、R132、R141、R142、R151、R152、R161、R162、R171、R172、R181、R182、R191、R192、R201、R202、R211、R212、R221、R222、R231及びR232は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。]
【請求項4】
前記第2構造単位が、式(2−2)で表される構造単位である、請求項2記載の高分子化合物。
【請求項5】
前記第2構造単位が、式(2−1)で表される構造単位であり、且つ、式(2−1)中のR41及びR42のうちの少なくとも一方が、アルキル基を表す、請求項2記載の高分子化合物。
【請求項6】
共役系高分子化合物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項7】
前記第2構造単位が、式(2−2)で表される構造単位であり、且つ、第1構造単位と、前記第2構造単位との交互共重合体からなる、請求項2又は4記載の高分子化合物。
【請求項8】
前記第2構造単位が、式(2−1)で表される構造単位であり、且つ、第1構造単位と、前記第2構造単位との交互共重合体からなる、請求項2又は5記載の高分子化合物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の高分子化合物を含む、有機半導体材料。
【請求項10】
請求項9記載の有機半導体材料を含む有機層を備える、有機半導体素子。
【請求項11】
ソース電極と、
ドレイン電極と、
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の電流経路となる請求項9記載の有機半導体材料を含む活性層と、
前記電流経路を通る電流を制御するゲート電極と、
前記活性層と前記ゲート電極との間に配置される絶縁層と、
を備える有機トランジスタ。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−214773(P2012−214773A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−76594(P2012−76594)
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人科学技術振興機構、産学イノベーション加速事業「戦略的イノベーション創出推進」、「新しい高性能ポリマー半導体材料と印刷プロセスによるAM−TFTを基盤とするフレキシブルディスプレイの開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】