説明

高周波スイッチ

【課題】高周波信号の伝達経路における高調波特性を良好に維持しつつ、回路規模が縮小された高周波スイッチを提供する。
【解決手段】1つの送信ポート10と、1つの受信ポート20と、共通ポート30と、送信側シリーズスイッチ40と、送信側シャントスイッチ50と、受信側シリーズスイッチ60と、受信側シャントスイッチ70とを有する。送信ポートは、送信信号を入力し、受信ポートは、受信信号を出力し、共通ポートは、送信信号を送信するか、または受信信号を受信する。送信側シリーズスイッチは、送信ポートと共通ポートとの間に接続され、送信側シャントスイッチは、送信ポートとグランドとの間に接続され、受信側シリーズスイッチは、受信ポートと共通ポートとの間に接続され、夫々のスイッチはボディコンタクト型FETである。受信側シャントスイッチは、受信ポートとグランドとの間に接続され、フローティングボディ型FETである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機などの無線通信機器の小型化が急速に進められている。無線通信機器は、内部に多数の半導体集積回路を備えており、無線通信機器を小型化する上でこれらの半導体集積回路を簡略化または縮小することは非常に重要である。無線通信機器に内蔵される半導体集積回路には、アンテナと送信/受信回路との間で高周波信号の伝達経路を切り替える高周波半導体スイッチ(以下、高周波スイッチと称する)が含まれる。
【0003】
無線通信システムにおいて、高周波スイッチは、複数の送信/受信回路に各々接続される複数の高周波ポートと、アンテナに接続される共通ポートと、を備える。高周波スイッチが複数の高周波ポートと共通ポートとの間で高周波信号の伝達経路を切り替えることにより、上記複数の送信/受信回路のうちの1つが選択されてアンテナと電気的に接続される(たとえば、下記特許文献1を参照)。特許文献1の高周波スイッチは、各高周波ポートと共通ポートとの間の高周波信号の伝達経路を切り替えるため、SOI(Silicon On Insulator)基板上にスイッチ素子として複数のMOS型電界効果トランジスタ(以下、MOS FETと称する)を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2005−515657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、SOI基板上に形成されたMOS FETを用いて、高周波信号の伝達経路における高調波特性を良好に維持しつつ、回路規模が縮小された高周波スイッチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0007】
本発明の高周波スイッチは、少なくとも1つの送信ポートと、少なくとも1つの受信ポートと、共通ポートと、送信側シリーズスイッチと、送信側シャントスイッチと、受信側シリーズスイッチと、受信側シャントスイッチとを有する。送信ポートは、送信信号を入力し、受信ポートは、受信信号を出力し、共通ポートは、送信信号を送信するか、または受信信号を受信する。送信側シリーズスイッチは、ボディコンタクト型FETを備え、送信ポートと共通ポートとの間に接続される。送信側シャントスイッチは、ボディコンタクト型FETを備え、送信ポートとグランドとの間に接続される。受信側シリーズスイッチは、ボディコンタクト型FETを備え、受信ポートと共通ポートとの間に接続される。受信側シャントスイッチは、少なくとも1つのフローティングボディ型FETを備え、受信ポートとグランドとの間に接続される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の高周波スイッチによれば、高周波信号の伝達経路における高調波特性を良好に維持しつつ、回路規模を縮小することができる。また、受信側におけるアイソレーション特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施の形態における高周波スイッチの回路図である。
【図2】本発明の一実施の形態における高周波スイッチで使用されるSOI FETの断面図である
【図3】本発明の一実施の形態の変形例における高周波スイッチの概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付した図面を参照して本発明の高周波スイッチの一実施の形態を説明する。本発明の高周波スイッチは、UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)、GSM(Global System for Mobile Communications)などの無線通信システムの高周波スイッチに広く適用することができる。
【0011】
(一実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態における高周波スイッチの回路図である。本実施の形態の高周波スイッチ回路では、印加される高周波信号の電力が大きい部分には大電力に対して高調波特性が良好なFETが配置され、印加される高周波信号の電力が小さい部分には回路規模が小さく挿入損失が低いFETが配置される。
【0012】
図1に示すとおり、本実施の形態の高周波スイッチ100は、送信ポート10、受信ポート20、共通ポート30、送信側シリーズスイッチ40、送信側シャントスイッチ50、受信側シリーズスイッチ60、および受信側シャントスイッチ70を有する。
【0013】
送信ポート10は、送信信号を入力するためのポートである。送信ポート10は、送信側シリーズスイッチ40の信号入力端子および送信側シャントスイッチ50の信号入力端子に接続されている。送信回路(不図示)から伝達された送信信号は、送信ポート10を介して送信側シリーズスイッチ40および送信側シャントスイッチ50に伝達される。
【0014】
受信ポート20は、受信信号を出力するためのポートである。受信ポート20は、受信側シリーズスイッチ60の信号出力端子および受信側シャントスイッチ70の信号入力端子に接続されている。受信側シリーズスイッチ60からの受信信号は、受信ポート20を介して受信回路(不図示)に伝達される。
【0015】
共通ポート30は、送信信号を送信するか、または受信信号を受信するためのポートである。共通ポート30は、送信側シリーズスイッチ40の信号出力端子および受信側シリーズスイッチ50の信号入力端子に接続されている。また、本実施の形態では、共通ポート30はアンテナに直接的に接続されている。しかしながら、共通ポート30は他の構成を介してアンテナに接続されてもよい。
【0016】
送信側シリーズスイッチ40は、送信ポート10と共通ポート30との間において高周波信号の伝達経路を確保または遮断する。送信側シリーズスイッチ40は、少なくとも1つのボディコンタクト(Body Contact)型FETを備え、送信ポート10と共通ポート30との間に接続されている。本実施の形態のボディコンタクト型FETは、SOIプロセスで形成されるNMOS FETである。ボディコンタクト型FETの構造および特性については後述する。
【0017】
また、本実施の形態では、送信側シリーズスイッチ40は、複数のボディコンタクト型FETを備え、それらのソース/ドレインが直列に接続されている。したがって、図1に示すとおり、送信側シリーズスイッチ40がオンされると、送信ポート10から入力された送信信号は、矢印で示される経路を通り、送信側シリーズスイッチ40の直列に接続された複数のボディコンタクト型FETを介してアンテナに伝達する。また、上記複数のボディコンタクト型FETのゲートは、送信側シリーズスイッチ40をオン/オフ制御する制御端子GATE_TX_SEにそれぞれゲート抵抗を介して接続されている。制御端子GATE_TX_SEには、±数ボルト程度の電圧が印加されうる。
【0018】
なお、送信側シリーズスイッチ40に備えられるボディコンタクト型FETの個数は、このボディコンタクト型FETの電気的な耐圧特性を考慮して決定される。
【0019】
送信側シャントスイッチ50は、送信ポート10とグランドとの間において高周波信号の伝達経路を確保または遮断する。送信側シャントスイッチ50は、少なくとも1つのボディコンタクト型FETを備え、送信ポート10とグランドとの間に接続される。
【0020】
また、本実施の形態では、送信側シャントスイッチ50は、複数のボディコンタクト型FETを備え、それらのソース/ドレインが直列に接続されている。したがって、送信側シャントスイッチ50がオンされると、送信ポート10から入力された送信信号は、送信側シャントスイッチ50の直列に接続された複数のボディコンタクト型FETを介してグランドに伝達する。その結果、不要な漏洩電力がグランドに吸収されるので、送信側におけるアイソレーション特性が向上する。また、上記複数のボディコンタクト型FETのゲートは、送信側シャントスイッチ50をオン/オフ制御する制御端子GATE_TX_SHにそれぞれゲート抵抗を介して接続されている。制御端子GATE_TX_SHには、±数ボルト程度の電圧が印加されうる。
【0021】
なお、送信側シャントスイッチ50に備えられるボディコンタクト型FETの個数は、このボディコンタクト型FETの電気的な耐圧特性を考慮して決定される。
【0022】
受信側シリーズスイッチ60は、受信ポート20と共通ポート30との間において高周波信号の伝達経路を確保または遮断する。受信側シリーズスイッチ60は、少なくとも1つのボディコンタクト型FETを備え、受信ポート20と共通ポート30との間に接続される。
【0023】
また、本実施の形態では、受信側シリーズスイッチ60は、複数のボディコンタクト型FETを備え、それらのソース/ドレインが直列に接続されている。したがって、受信側シリーズスイッチ60がオンされると、アンテナから入力された受信信号は、受信側シリーズスイッチ60の直列に接続された複数のボディコンタクト型FETを介して受信ポート20に伝達する。また、上記複数のボディコンタクト型FETのゲートは、受信側シリーズスイッチ60をオン/オフ制御する制御端子GATE_RX_SEにそれぞれゲート抵抗を介して接続されている。制御端子GATE_RX_SEには、±数ボルト程度の電圧が印加されうる。
【0024】
なお、受信側シリーズスイッチ60に備えられるボディコンタクト型FETの個数は、このボディコンタクト型FETの電気的な耐圧特性を考慮して決定される。
【0025】
受信側シャントスイッチ70は、受信ポート20とグランドとの間において高周波信号の伝達経路を確保または遮断する。受信側シャントスイッチ70は、少なくとも1つのフローティングボディ(Floating Body)型FETを備え、受信ポート20とグランドとの間に接続される。本実施の形態のフローティングボディ型FETは、SOIプロセスで形成されるNMOS FETである。図1に示すとおり、フローティングボディ型FETは、抵抗および配線が少ないためボディコンタクト型FETと比較してFET素子の規模が小さい。とくに、ボディコンタクト型FETに用いられる抵抗は、大きな抵抗値を有するためレイアウト上で大きな面積を占めている。したがって、受信側シャントスイッチ70では、ボディコンタクト型FETの代わりにフローティングボディ型FETを使用することにより回路規模を縮小することができる。フローティングボディ型FETの構造および特性については後述する。
【0026】
本実施の形態では、受信側シャントスイッチ70は、複数のフローティングボディ型FETを備え、それらのソース/ドレインが直列に接続されている。したがって、受信側シャントスイッチ70がオンされると、アンテナから入力された受信信号は、受信側シャントスイッチ70の直列に接続された複数のフローティングボディ型FETを介してグランドに伝達する。その結果、不要な漏洩電力がグランドに吸収されるので、受信側におけるアイソレーション特性が向上する。また、上記複数のフローティングボディ型FETのゲートは、受信側シャントスイッチ70をオン/オフ制御する制御端子GATE_RX_SHにそれぞれゲート抵抗を介して接続されている。制御端子GATE_RX_SHには、±数ボルト程度の電圧が印加されうる。
【0027】
なお、受信側シャントスイッチ70に備えられるフローティングボディ型FETの個数は、このフローティングボディ型FETの電気的な耐圧特性を考慮して決定される。
【0028】
また、回路規模を縮小する観点から、受信側シャントスイッチ70にはボディコンタクト型FETを含めないことが好ましい。しかしながら、受信側シャントスイッチ70にボディコンタクト型FETを含む構成とすることも可能である。
【0029】
次に、図2を参照しつつ、本実施の形態の高周波スイッチ100で使用されるSOI FETの構造および特性について説明する。図2は、本実施の形態の高周波スイッチ100で使用されるSOI FETの断面図である。
【0030】
図2に示すとおり、本実施の形態のSOI FETは、Si基板上に絶縁層が積層され、この絶縁層上にボディおよびソース/ドレイン領域が形成された構造を有する。ここで、本実施の形態の絶縁層は、たとえばSiOからなる。しかしながら、絶縁層の材料はSiOに限定されない。
【0031】
フローティングボディ型FETは、図2に示されるSOI FETにおいて、ボディがフローティング状態で使用される。したがって、ボディには抵抗および配線は取り付けられない。一方、ボディコンタクト型FETでは、抵抗および配線を介してボディに所定の電圧が印加される。たとえば、図1に示すとおり、送信側シリーズスイッチ40のボディコンタクト型FETのボディ端子BODY_TX1_SEには、所定の±数ボルト程度の電圧が印加される。なお、抵抗を介してボディに電圧を印加するのは、ボディからの漏洩電力による損失を小さくするためである。
【0032】
これに対して、フローティングボディ型FETは、ボディがフローティング状態となっているので、ボディからの漏洩電力による損失が極めて少なく、挿入損失が低いという特徴を有する。一方、ボディコンタクト型FETは、フローティングボディ型FETと比較して大電力の信号に対する高調波特性が優れているという特徴を有する。すなわち、ボディコンタクト型FETとフローティングボディ型FETとの間には、挿入損失特性と大電力の高調波特性とについてトレードオフの関係がある。ここで、大電力の信号とは、たとえば35dBm程度の電力の信号をいう。
【0033】
図1に示すとおり、送信側シリーズスイッチ40は、送信信号の伝達経路に設置されているので、送信側シリーズスイッチ40には大電力の信号が印加される。したがって、送信側シリーズスイッチ40は、良好な高調波特性を備えることが要求される。また、送信側シャントスイッチ50および受信側シリーズスイッチ60についても、大電力が印加されるため、オフ状態で良好な高調波特性が要求される。
【0034】
一方、受信側シャントスイッチ70に印加される受信信号の電力は、送信信号の電力と比較して小さいので、フローティングボディ型FETを使用しても信号波形が歪むことはない。むしろ、小電力の信号に対しては、フローティングボディ型FETのオン抵抗RONの方が、ボディコンタクト型FETのオン抵抗RONよりも小さいので、フローティングボディ型FETの高調波特性は良好となる。したがって、受信側のアイソレーション特性が向上する。
【0035】
そこで、本実施の形態では、送信側シリーズスイッチ40、送信側シャントスイッチ50、および受信側シリーズスイッチ60をボディコンタクト型FETで構成し、受信側シャントスイッチ70をフローティングボディ型FETで構成する。以上のとおり構成される本実施の形態の高周波スイッチ100の作用について以下に説明する。
【0036】
図1に示すとおり、アンテナから送信信号を送信する場合は、図示されない制御回路により送信側シリーズスイッチ40および受信側シャントスイッチ70がオンされ、送信側シャントスイッチ50および受信側シリーズスイッチ60がオフされる。
【0037】
したがって、送信側では、送信側シリーズスイッチ40を介して送信ポート10と共通ポート30との間に送信信号の伝達経路が確保され、送信ポート10とグランドとの間の伝達経路は遮断される。このとき、送信側シリーズスイッチ40、送信側シャントスイッチ50、および受信側シリーズスイッチ60がボディコンタクト型FETで構成されているので、大電力の送信信号の伝達経路における高調波特性は良好に維持される。
【0038】
一方、受信側では、共通ポート30と受信ポート20との間の信号の伝達経路が遮断され、受信ポート20とグランドとの間に信号の伝達経路が確保されて漏洩電力がグランドに吸収される。
【0039】
また、アンテナから受信信号を受信する場合は、図示されない制御回路により送信側シャントスイッチ50および受信側シリーズスイッチ60がオンされ、送信側シリーズスイッチ40および受信側シャントスイッチ70がオフされる。
【0040】
したがって、受信側では、受信側シリーズスイッチ60を介して共通ポート30と受信ポート20の間に受信信号の伝達経路が確保される。このとき、受信側シャントスイッチ70にはアンテナで受信された小電力の信号が印加されているので、受信信号の伝達経路における高調波特性は良好に維持される。
【0041】
一方、送信側では、送信ポート10と共通ポート30との間の信号の伝達経路が遮断され、送信ポート10とグランドとの間に信号の伝達経路が確保されて漏洩電力がグランドに吸収される。
【0042】
以上のとおり、本実施の形態の高周波スイッチ100では、送信側シリーズスイッチ40、送信側シャントスイッチ50、および受信側シリーズスイッチ60をボディコンタクト型FETで構成するので、送信信号および受信信号の伝達経路における高周波信号の高調波特性は良好である。その上、受信側シャントスイッチ70をフローティングボディ型FETで構成しているので、高周波スイッチ100の回路規模が縮小される。したがって、本実施の形態の高周波スイッチ100では、高周波信号の伝達経路における高調波特性が良好に維持されつつ、回路規模が縮小される。
【0043】
(変形例)
上述の本実施の形態では、高調波スイッチが送信ポートおよび受信ポートを各々1つずつ有する場合について説明した。以下、図3を参照しつつ、本実施の形態の変形例として、高周波スイッチが複数の送信ポート、複数の受信ポート、および複数の送受信ポートを有する場合について説明する。本実施の形態の変形例では、高周波スイッチが複数の送信ポート、複数の受信ポート、複数の送受信ポートを有すること以外は上述した本実施の形態と同様であるので重複する説明を省略する。
【0044】
図3は、本実施の形態の変形例における高周波スイッチの概略ブロック図である。図3に示すとおり、本変形例における高周波スイッチ200は、送信ポート111〜113、受信ポート121〜123、および送受信ポート131〜133を備える。送信ポート111〜113と共通ポート130との間には、それぞれ送信側シリーズスイッチ141〜143が備えられ、送信ポート111〜113とグランドとの間にはそれぞれ送信側シャントスイッチ151〜153が備えられる。
【0045】
また、受信ポート121〜123と共通ポート130との間には、それぞれ受信側シリーズスイッチ161〜163が備えられ、受信ポート121〜123とグランドとの間にはそれぞれ受信側シャントスイッチ171〜173が備えられる。
【0046】
さらに、送受信ポート131〜133と共通ポート130との間には、それぞれ送受信側シリーズスイッチ181〜183が備えられ、送受信ポート131〜133とグランドとの間にはそれぞれ送受信側シャントスイッチ191〜193が備えられる。
【0047】
本変形例では、送信側シリーズスイッチ141〜143、送信側シャントスイッチ151〜153、受信側シリーズスイッチ161〜163、送受信側シリーズスイッチ181〜183、および送受信側シャントスイッチ191〜193は、ボディコンタクト型FETで構成される。一方、受信側シャントスイッチ171〜173は、フローティングボディ型FETで構成される。以下、本変形例の高周波スイッチの動作について説明する。
【0048】
まず、送信信号を送信するときの動作について、送信ポート111に入力される送信信号を送信する場合を例に挙げて説明する。
【0049】
送信ポート111に入力される送信信号を送信する場合、送信ポート111と共通ポート130との間に接続された送信側シリーズスイッチ141はオンされ、送信ポート111とグランドとの間に接続された送信側シャントスイッチ151はオフされる。
【0050】
また、送信側シリーズスイッチ141を除く他の送信側シリーズスイッチ142,143、すべての受信側シリーズスイッチ161〜163、すべての送受信側シリーズスイッチ181〜183はオフされる。
【0051】
さらに、送信側シャントスイッチ151を除く他の送信側シャントスイッチ152,153、すべての受信側シャントスイッチ171〜173、すべての送受信側シャントスイッチ191〜193はオンされる。
【0052】
したがって、送信ポート111については、送信側シリーズスイッチ141を介して送信ポート111と共通ポート130との間に送信信号の伝達経路が確保され、送信ポート111とグランドとの間の伝達経路は遮断される。一方、他の送信ポート、受信ポート、および送受信ポートについては、共通ポート130との間の信号の伝達経路が遮断され、グランドとの間に信号の伝達経路が確保されて漏洩電力がグランドに吸収される。
【0053】
次に、受信信号を受信するときの動作について、受信ポート121から出力される受信信号を受信する場合を例に挙げて説明する。
【0054】
受信信号を出力する受信ポート121と共通ポート130との間に接続された受信側シリーズスイッチ161はオンされ、受信ポート121とグランドとの間に接続された受信側シャントスイッチ171はオフされる。
【0055】
また、受信側シリーズスイッチ161を除く他の受信側シリーズスイッチ162,163、すべての送信側シリーズスイッチ141〜143、すべての送受信側シリーズスイッチ181〜183はオフされる。
【0056】
さらに、受信側シャントスイッチ171を除く他の受信側シャントスイッチ172,173、すべての送信側シャントスイッチ151〜153、すべての送受信側シャントスイッチ191〜193はオンされる。
【0057】
したがって、受信ポート121については、受信側シリーズスイッチ161を介して受信ポート121と共通ポート130との間に受信信号の伝達経路が確保され、受信ポート121とグランドとの間の伝達経路は遮断される。一方、送信ポート、他の受信ポート、および送受信ポートについては、共通ポート130との間の信号の伝達経路が遮断され、グランドとの間に信号の伝達経路が確保されて漏洩電力がグランドに吸収される。
【0058】
以上のとおり、説明した本実施の形態は、以下の効果を奏する。
【0059】
(a)本実施の形態の高周波スイッチによれば、送信側シリーズスイッチ、送信側シャントスイッチ、および受信側シリーズスイッチをボディコンタクト型FETで構成し、受信側シャントスイッチをフローティングボディ型FETで構成する。したがって、高周波信号の伝達経路における高調波特性を良好に維持しつつ、回路規模を縮小することができる。また、受信側におけるアイソレーション特性を向上させることができる。
【0060】
(b)受信側シャントスイッチは、複数のフローティングボディ型FETを備え、当該複数のフローティングボディ型FETのソース/ドレインが直列に接続される。したがって、高周波信号が受信ポートからグランドへ至る伝達経路が確保されて、不要な漏洩電力がグランドに吸収されるので、受信側におけるアイソレーション特性を向上させることができる。
【0061】
以上のとおり、実施の形態において、本発明の高周波スイッチを説明した。しかしながら、本発明は、その技術思想の範囲内において当業者が適宜に追加、変形、および省略することができることはいうまでもない。
【0062】
たとえば、本実施の形態では、送信ポートおよび受信ポートをそれぞれ1つずつ有する場合と、送信ポート、受信ポート、および送受信ポートをそれぞれ3つずつ有する場合とについて説明した。しかしながら、送信ポート、受信ポート、および送受信ポートの個数は限定されない。
【符号の説明】
【0063】
10 送信ポート、
20 受信ポート、
30 共通ポート、
40 送信側シリーズスイッチ、
50 送信側シャントスイッチ、
60 受信側シリーズスイッチ、
70 受信側シャントスイッチ、
100 高周波スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号を入力する少なくとも1つの送信ポートと、
受信信号を出力する少なくとも1つの受信ポートと、
前記送信信号を送信するか、または前記受信信号を受信する共通ポートと、
ボディコンタクト型FETからなり、前記送信ポートと前記共通ポートとの間に接続される送信側シリーズスイッチと、
ボディコンタクト型FETからなり、前記送信ポートとグランドとの間に接続される送信側シャントスイッチと、
ボディコンタクト型FETからなり、前記受信ポートと前記共通ポートとの間に接続される受信側シリーズスイッチと、
少なくとも1つのフローティングボディ型FETを備え、前記受信ポートとグランドとの間に接続される受信側シャントスイッチと、
を有する、高周波スイッチ。
【請求項2】
前記受信側シャントスイッチは、複数のフローティングボディ型FETを備え、当該複数のフローティングボディ型FETのソース/ドレインが直列に接続されることにより、高周波信号が前記受信ポートからグランドへ至る伝達経路を確保することを特徴とする請求項1に記載の高周波スイッチ。
【請求項3】
送信信号を送信するときは、
前記送信信号を入力する送信ポートと前記共通ポートとの間に接続された送信側シリーズスイッチはオンされ、
前記送信ポートとグランドとの間に接続された送信側シャントスイッチはオフされ、
前記送信側シリーズスイッチを除く他の送信側シリーズスイッチおよびすべての前記受信側シリーズスイッチはオフされ、
前記送信側シャントスイッチを除く他の送信側シャントスイッチおよびすべての前記受信側シャントスイッチはオンされ、
受信信号を受信するときは、
前記受信信号を出力する受信ポートと前記共通ポートとの間に接続された受信側シリーズスイッチはオンされ、
前記受信ポートとグランドとの間に接続された受信側シャントスイッチはオフされ、
前記受信側シリーズスイッチを除く他の受信側シリーズスイッチおよびすべての前記送信側シリーズスイッチはオフされ、
前記受信側シャントスイッチを除く他の受信側シャントスイッチおよびすべての前記送信側シャントスイッチはオンされることを特徴とする請求項1または2に記載の高周波スイッチ。
【請求項4】
前記共通ポートは、アンテナに接続されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高周波スイッチ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−129813(P2012−129813A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279771(P2010−279771)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】