説明

高周波モジュール及びGPS受信装置

【課題】簡易な構成で、デジタル信号ノイズのアナログ信号へ与える影響を低減できる高周波モジュール及びこれを用いたGPS受信装置を提供する。
【解決手段】内層に連続したグランドプレーンからなる内層ベタグランド25を有し、一方の表層面にRF回路4を搭載し、他方の表層面にバッファ8等のデジタル回路を搭載した多層基板15を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばGPS(Global Positioning System)衛星からのGPS−RF信号を受信してIF(中間周波数;Intermediate Frequency)信号へダウンコンバートする高周波モジュール及びこれを用いたGPS受信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
GPS受信装置は、複数基のGPS衛星から位置や時刻に関する情報を載せたGPS−RF信号(キャリア周波数;1.57542GHz)を受信して測位者の地球上の位置を算出する。このようなGPS受信装置は、GPS−RF信号を処理するアナログ回路と、アナログ回路のA/Dコンバータから出力されるデジタル信号を処理するデジタル回路とを含んで構成される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、GPS受信装置に代表されるスペクトラム拡散方式の受信装置では、GPS−RF信号がガウスノイズ以下のレベルに埋もれており、GPS−RF信号の周波数帯域内(1.57542GHz±1MHz)に侵入してくるデジタル信号の高調波ノイズ等の影響により、デジタル信号の復調処理に支障を来す場合がある。
【0004】
従来のGPS受信装置には、デジタル回路からの信号ノイズの影響をアナログ回路のRF回路部に与えないようにするため、GPS−RF信号を処理するアナログ回路をGPSRFモジュールに搭載し、このGPSRFモジュールの出力をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ及びデジタル信号を処理するデジタル回路を、GPSRFモジュールとは別個に設けた大規模集積回路に搭載したものがある(従来例1と称す)。
【0005】
また、GPS−RF信号を処理するアナログ回路及びA/DコンバータをGPSRFモジュールに搭載し、A/Dコンバータから出力されるデジタル信号を処理するデジタル回路と前記GPSRFモジュールとを、1つのGPS受信機としてモジュール化したものがある(従来例2と称す)。この構成では、GPSRFモジュールとこの出力を処理するデジタル回路とを近隣に配置することによって、A/Dコンバータとデジタル回路との間のバッファが不要となる。このバッファがアナログ回路外部のクロック信号ライン等に挿入されると、上述のようなデジタル信号ノイズ源となる。
【0006】
【特許文献1】特開2001−230629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来では、デジタル信号ノイズを低減するために構造上の制約があり、製造が複雑になる可能性があるという課題があった。
【0008】
上記課題を具体的に説明する。
図6は、従来例1のGPS受信装置の構成を概略的に示す図である。従来例1のGPS受信装置は、GPSRFモジュール100にダウンコンバート処理部104、バッファ105、及び不図示のRF回路などが搭載されており、GPSRFモジュール100とは別個に設けた大規模集積回路102にGPSベースバンド部106及び中央演算処理部109が搭載される。
【0009】
ダウンコンバート処理部104は、アンテナ103にて受信され、不図示のRF回路で処理されたGPS−RF信号をIF信号(アナログ信号)にダウンコンバートする。ダウンコンバート処理部104から出力されるIF信号は、バッファ105に一次蓄積されて大規模集積回路102の処理タイミングでGPSアナログ信号として出力される。
【0010】
GPSRFモジュール100からのGPSアナログ信号は、大規模集積回路102に内蔵されたGPSベースバンド部106のA/Dコンバータ107によってデジタル信号に変換された後、ベースバンド処理部108でベースバンド処理が行われる。中央演算処理部109は、ベースバンド処理されたデジタル信号を基に自装置の現在位置を演算する。
【0011】
このように、従来例1の構成では、GPSRFモジュール100を大規模集積回路102のデジタル回路から隔離することにより、デジタル信号ノイズの影響がRF回路に及ぶ危険性は少ない。
【0012】
しかしながら、大規模集積回路102にA/Dコンバータ107等のアナログ処理部を内蔵する必要があり、大規模集積回路102をデジタル回路向けの製造プロセス(半導体プロセス)を使って一貫して製造することができず、製造が複雑になる。また、デジタル回路向けの製造プロセスを使ってアナログ回路を製造した場合、アナログ回路としての性能を確保できない可能性もある。
【0013】
図7は、従来例2のGPS受信装置の構成を概略的に示す図である。従来例2のGPS受信装置は、GPSRFモジュール111とGPSベースバンド部114が1つの基板上にセットしてGPS受信機110とし、このGPS受信機110が外付けされる大規模集積回路117に中央演算処理部116が搭載される。
【0014】
GPSRFモジュール111には、ダウンコンバート処理部112、A/Dコンバータ113及び不図示のRF回路などが搭載されており、GPSベースバンド部114からのSPI(Serial Peripheral Interface)制御信号に従ってA/Dコンバータ113から出力されたGPSデジタル信号を、GPSベースバンド部114のベースバンド処理部115がベースバンド処理する。大規模集積回路117の中央演算処理部116は、外付けされたGPS受信機110からのベースバンド信号を基に自装置の現在位置を演算する。
【0015】
従来例2では、上述のように、GPSRFモジュール111にアナログ回路を集約し、GPSRFモジュール111をデジタル回路であるGPSベースバンド部114とセットにしたGPS受信機110としてモジュール化することにより、デジタル信号ノイズ源となるバッファを省略している。
【0016】
しかしながら、GPSベースバンド部114を大規模集積回路117に内蔵できず、GPS受信機110を外付けする必要があることから、GPSベースバンド部を大規模集積回路に一括して製造した場合と比較して製造が複雑になるという課題がある。
【0017】
また、特許文献1には、GPS−RF信号を処理するアナログ回路と、アナログ回路のA/Dコンバータから出力されるデジタル信号を処理するデジタル回路とを含んで構成される一般的なGPS受信装置は開示されているが、デジタル信号ノイズを低減するための具体的な構成については記載されていない。
【0018】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、簡易な構成で、デジタル信号ノイズのアナログ信号へ与える影響を低減できる高周波モジュール及びこれを用いたGPS受信装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この発明に係る高周波モジュールは、アンテナで受信された高周波のアナログ信号を処理するアナログ回路と、前記アナログ回路で処理された信号をデジタル信号に変換するA/D変換部と、前記A/D変換部からのデジタル信号を処理するデジタル回路と、内層に連続したグランドプレーンからなるベタグランド層を有し、一方の表層面に前記アナログ回路を搭載し、他方の表層面に前記デジタル回路を搭載した多層基板とを備えるものである。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、内層に連続したグランドプレーンからなるベタグランド層を有し、一方の表層面にアナログ回路を搭載し、他方の表層面にデジタル回路を搭載した多層基板を備えたので、アナログ回路とデジタル回路とを多層基板の互いに異なる表面層に配置した簡易な構成で、デジタル信号ノイズのアナログ信号への影響を低減することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるGPS受信装置の構成を概略的に示す図である。実施の形態1によるGPS受信装置において、GPSRFモジュール(高周波モジュール)は、RF回路(アナログ回路)4、RFチップ5及びバッファ(デジタル回路)8を内蔵しており、RFチップ5には、ダウンコンバート処理部6及びA/Dコンバータ(A/D変換部)7が内蔵されている。
【0022】
ダウンコンバート処理部6は、アンテナ3にて受信され、RF回路4で処理されたGPS−RF信号をIF信号(中間周波数;Intermediate Frequency)(アナログ信号)にダウンコンバート(周波数変換)する。ダウンコンバート処理部6からのIF信号は、A/Dコンバータ7でデジタル信号に変換され、GPSデジタル信号としてバッファ8に一次蓄積される。
【0023】
また、大規模集積回路(集積回路部)2には、GPSベースバンド部9及び中央演算処理部11が内蔵されている。GPSベースバンド部9のベースバンド処理部10は、SPI制御信号に従ってバッファ8から出力されたGPSデジタル信号をベースバンド処理する。中央演算処理部11は、GPSベースバンド部9で得られたベースバンド信号を用いて自装置の現在位置を演算する。
【0024】
上述したように、実施の形態1によるGPS受信装置では、GPSRFモジュール1でGPS−RF信号から変換されたGPSデジタル信号が、マザーボード側にある大規模集積回路2でデジタル処理される。このように、GPSRFモジュール1にアナログ回路を集約し、大規模集積回路2にデジタル回路を集約することにより、大規模集積回路2をデジタル回路向けの製造プロセスを使って一貫して製造することができる。
【0025】
なお、この構成では、従来例2のようにGPS受信機としてモジュール化した場合と比較してGPSRFモジュール1とベースバンド処理部10との距離が開くため、GPSRFモジュール1の出力信号ラインにバッファ8の挿入が必要である。このバッファ8は、A/Dコンバータ7からのデジタル信号を一次蓄積するデジタル回路であるため、デジタル信号ノイズ源となり得る。そこで、実施の形態1では、GPSRFモジュール1基板を下記のように構成することにより、デジタル信号ノイズの影響を低減している。
【0026】
図2は、図1中のGPSRFモジュールの基板構成を示す縦断面図である。GPSRFモジュール1は、図1で示した大規模集積回路2が実装されたマザーボード12に対し、ピンヘッダ型コネクタ13を介して電気的に接続される。また、GPSRFモジュール1のアナログ回路は多層基板15の各層及び実装面に構成されており、多層基板15は、シールドケース14でカバーされている。
【0027】
多層基板15において、基板の表面層と裏面層との間は、内層として設けた連続したグランドプレーン層によって隔離される。図2中の例では、絶縁層で互いに絶縁された第1層16a〜第4層16dからなり、連続したグランドプレーンである内層ベタグランド(ベタグランド層)25が内層16cに形成される。この構成によって、RF回路4及びRFチップ5を搭載した第4層16dと、デジタル回路となるバッファ8を搭載した第1層16aとの間の信号漏れを最小限に抑えることができ、さらにデジタル信号ノイズのGPS−RF信号への影響を低減することが可能である。
【0028】
RF回路4からのRF信号が伝搬するRF信号ラインは、第1層16aのRF信号面(アナログ信号配線領域)17に形成される。また、バッファ8を搭載するデジタル信号面18は第1層16a面上で対極する位置にある両端部のうちの一方の端部に形成し、RF信号面17は他方の端部に形成する。なお、RF信号面17とデジタル信号面18とは、多層基板15の対角位置のように第1層16aの同一面上での互いの間隔が可能な限り離れていることが望ましい。
【0029】
なお、図2では第4層16d面上に形成したデジタル信号ライン領域を図示していないが、この場合も上記と同様にデジタル信号ライン領域が第4層16d面上で対極する位置にある両端部の一方の端部に形成され、RF回路4の搭載面が他方の端部に形成される。
【0030】
また、図2中に破線で囲んで示すパターン非形成領域19では、RFチップ5と貫通ビア27を介して接続される第1層16a上の領域とデジタル信号面18とを隔離するために、電気接続パターンを形成していない。
【0031】
さらに、上記の第1層16a面上及び第4層16d面上での配置関係に加えて、第1層16a面上のデジタル信号面18と、第4層16d面上でRF回路4を搭載するRF回路搭載面26とを、図2に示すように、多層基板15の基板面に対して垂直な方向についても対極位置に配置する。つまり、多層基板15の基板面に対して垂直な方向でデジタル信号面18に対応する第4層16d面上の位置と第4層16d面上で対極する位置にある端部と多層基板15の基板面に対して垂直な方向で対応する第1層16a面上の位置にRF回路搭載面26を配置する。このように配置することにより、RF回路4に対するバッファ8からのデジタル信号ノイズの影響を低減できる。
【0032】
デジタル信号面18とRF回路搭載面26とは、多層基板15の基板面に垂直な方向に関して同じ側、すなわち多層基板15に垂直な方向でデジタル信号面18に対応する第4層16d面上の位置にRF回路搭載面26を配置しても、デジタル信号ノイズの影響を低減する効果は得られる。
【0033】
デジタル信号面18、RF回路搭載面26、及びRFチップ5の搭載面のグランドは、内層ベタグランド25と電気的に接続される。一方、内層のグランド層及び電源ライン層は、同一層面で隔離して配置される。図2の例では、第2層16bにおいて、内層グランド20、内層グランド21、内層グランド22、内層電源ライン23、及び内層電源ライン24がそれぞれ隔離して配置される。このように構成することで、デジタル信号ノイズのGPS−RF信号への影響を低減することができる。
【0034】
ピンヘッダ型コネクタ(コネクタ)13において、ピン(アナログ信号端子)13−1はGPS−RF信号を伝搬させるピンであり、ピン13−2,13−4はグランドと接続するグランドピン、ピン13−3はSPI制御信号を伝搬させるピンであり、ピン(デジタル信号端子)13−5はデジタル信号を伝搬させるピンである。ここで、ピンヘッダ型コネクタ13のピン配置面においても、RF信号及びデジタル信号に影響を与えないピン13−2〜13−4を介して対極する位置にある両端部の一方の端部にピン13−1を配置し、他方の端部にピン13−5を配置する。このように構成することによっても、デジタル信号ノイズのGPS−RF信号への影響を低減できる。
【0035】
図3は、図2中の多層基板の各層面における基板パターンの一例を示す図であり、図3(a)〜図3(d)は図2中の第1層面〜第4層面を示している。図3(a)に示す第1層16a面において、RF信号ラインが形成されるRF信号ライン領域28(図2中のRF信号面17に対応する)(アナログ信号配線領域)と、バッファ8等のデジタル回路及びデジタル信号ラインが形成されるデジタル回路領域29(図2中のデジタル信号面18に対応する)とが、ピンヘッダ型コネクタ搭載領域30を介して、第1層16a面上で対極する位置にある端部にそれぞれ形成される。
【0036】
なお、ピンヘッダ型コネクタ搭載領域30においては、RF信号を伝搬するピン13−1とデジタル信号を伝搬するピン13−5とにそれぞれ接続する配線パターンが、他のピン13−2〜13−4の配線パターンを介して対極する位置に形成される。
【0037】
また、図3(b)に示す第2層16b面においては、RF信号ライン領域28aが、第1層16aのRF信号ライン領域28と対応する位置に設けられる。このRF信号ライン領域28aには、第4層16dのRF回路4やRFチップ5と接続するRF信号ラインが形成される。同様に、デジタル信号ライン領域29aが、第1層16aのデジタル回路領域29と対応する位置に設けられる。デジタル信号ライン領域29aには、第1層16aのデジタル信号処理部と接続するデジタル信号ラインが形成される。
【0038】
RF信号ライン領域28aとデジタル信号ライン領域29aとは、これら領域28a,29aの間に、内層電源ライン23,24が形成される電源ライン領域31(電源ライン領域31内では内層電源ライン23,24は隔離して配置される)を介在させることで、互いが極力離れた位置に配置される。
【0039】
なお、図3(b)中に斜線を付して記載した内層グランド20,21,22、RF信号ライン領域28a、デジタル信号ライン領域29a及び電源ライン領域31は、それぞれ隔離されている。
【0040】
図3(c)に示す第3層16cでは、連続したグランドプレーンである内層ベタグランド25が形成される。第1層16aのデジタル回路と第4層16dのRF回路の双方のグランドは、貫通ビア27を介して内層ベタグランド25に接続され、グランドが共通化される。なお、図3(c)では、デジタル信号ライン及びRF信号ラインとなる貫通ビアの記載を省略している。
【0041】
さらに、図3(d)に示す第4層16dでは、デジタル信号ライン領域(デジタル信号配線領域)32が、第1層16aのデジタル回路領域29と対応する位置に設けられる。デジタル信号ライン領域32には、貫通ビアを介して第1層16aのデジタル回路と接続するデジタル信号ラインが形成される。
【0042】
RF回路4及びRF信号ラインを搭載するRF回路領域34は、第4層16d面上で対極する位置にある両端部の一方に形成され、デジタル信号ライン領域32は他方の端部に形成される。なお、デジタル信号ライン領域32とRF回路領域34とは、これら領域32,34の間にRFチップ5を搭載するRFチップ搭載領域33を介在させることで、互いが極力離れた位置に配置される。
【0043】
図3(a)〜図3(d)に示したように、バッファ8などのデジタル回路を多層基板15の一方の表層面(第1層16a)に搭載し、RF回路4などのアナログ回路を多層基板15の他方の表層面(第4層16d)に搭載し、同一表層面においては、デジタル回路とRF信号ライン形成面とを対極位置に配置するとともに、RF回路4とデジタル信号ライン形成面とを対極位置に配置する。このような基板パターンとすることにより、RF信号とデジタル信号との隔離が可能となる。
【0044】
次に、上述した構成によるデジタル信号ノイズの低減効果について説明する。
図4は、RF信号ラインとデジタル回路とを近付けたGPSRFモジュールのRF回路でデジタル信号ノイズを測定した場合を示す図であり、図4(a)はデジタル回路搭載面の基板パターンを示しており、図4(b)はデジタル信号ノイズの測定結果を示すグラフである。図4(a)に示す第1層16aでは、デジタル回路及びデジタル信号ラインを、第1層16a面上で対極する位置にある端部ではなく、基板面の中央部よりもRF信号ライン領域28に近いデジタル回路領域29Aに形成している。
【0045】
図3で示した各層のうち、デジタル回路搭載面(第1層16a)を図4(a)に示す基板パターンとしたGPSRFモジュールについて、RF回路4におけるデジタル信号ノイズをスペクトラムアナライザで測定したところ、図4(b)に示すように、最大でノイズフロアから30dBのピークを持つノイズが検出される。
【0046】
図5は、実施の形態1によるGPSRFモジュールのRF回路でデジタル信号ノイズを測定した場合を示す図であり、図5(a)はデジタル回路の搭載面を示しており、図5(b)はデジタル信号ノイズの測定結果を示すグラフである。図5(a)に示す例では、図3(a)と同様に、第1層16a面上で対極する位置にある両端部の一方の端部にRF信号ライン領域28が配置され、他方の端部にデジタル回路領域29が配置されている。
【0047】
図5(a)に示す基板パターンでデジタル回路搭載面を構成したGPSRFモジュールについて、RF回路4におけるデジタル信号ノイズをスペクトラムアナライザで測定したところ、図5(b)に示すように、最大でもノイズフロアから10dB程度のピークを持つノイズが検出される。このように、実施の形態1によるGPSRFモジュール1では、デジタル回路領域29とRF信号ライン領域28とを接近させて配置した場合と比較してノイズが3分の1程度に低減されている。
【0048】
以上のように、この実施の形態1によれば、内層に連続したグランドプレーンからなる内層ベタグランド25を有し、一方の表層面にRF回路4を搭載し、他方の表層面にバッファ8等のデジタル回路を搭載した多層基板15を備えたので、多層基板15を利用した簡易な構成で、RFアナログ信号とデジタル信号とが隔離され、デジタル信号ノイズのアナログ信号への影響を低減できる。
【0049】
また、この実施の形態1によれば、多層基板15の第1層16a面上で対極する位置にある両端部の一方の端部にRF信号ライン領域28を配置し、他方の端部にデジタル回路を配置し、第4層16d面上で対極する位置にある両端部の一方の端部にデジタル信号ライン領域32を配置し、他方の端部にアナログ回路を配置したので、デジタル信号ノイズのアナログ信号への影響をさらに低減できる。
【0050】
さらに、この実施の形態1によれば、アナログ回及びデジタル回路を、多層基板15の垂直方向に関して対極する位置に配置したので、アナログ信号に与えるデジタル信号ノイズの影響をさらに低減することができる。
【0051】
なお、上記実施の形態1では、デジタル回路がバッファ8である場合を示したが、GPSRFモジュール1においてA/Dコンバータ7から出力されたデジタル信号を処理する回路であれば、バッファ8に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】この発明の実施の形態1によるGPS受信装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】図1中のGPSRFモジュールの基板構成を示す縦断面図である。
【図3】図2中の多層基板の各層面における基板パターンの一例を示す図である。
【図4】RF信号ラインとデジタル回路とを近付けたGPSRFモジュールのRF回路でデジタル信号ノイズを測定した場合を示す図である。
【図5】実施の形態1によるGPSRFモジュールのRF回路でデジタル信号ノイズを測定した場合を示す図である。
【図6】従来例1のGPS受信装置の構成を概略的に示す図である。
【図7】従来例2のGPS受信装置の構成を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1 GPSRFモジュール(高周波モジュール)、2 大規模集積回路(集積回路部)、3 アンテナ、4 RF回路(アナログ回路)、5 RFチップ、6 ダウンコンバート処理部、7 A/Dコンバータ、8 バッファ(デジタル回路)、9 GPSベースバンド部、10 ベースバンド処理部、11 中央演算処理部、12 マザーボード、13 ピンヘッダ型コネクタ(コネクタ)、13−1〜13−5 ピン、14 シールドケース、15 多層基板、16a〜16d 第1層〜第4層、17 RF信号面(アナログ信号配線領域)、18 デジタル信号面、19 パターン非形成領域、20〜22 内層グランド、23,24 内層電源ライン、25 内層ベタグランド(ベタグランド層)、26 RF回路搭載面、27 貫通ビア、28,28a RF信号ライン領域(アナログ信号配線領域)、29,29a,29A,32 デジタル信号ライン領域(デジタル信号配線領域)、30 ピンヘッダ型コネクタ搭載領域、31 電源ライン領域、33 RFチップ搭載領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナで受信された高周波のアナログ信号を処理するアナログ回路と、
前記アナログ回路で処理された信号をデジタル信号に変換するA/D変換部と、
前記A/D変換部からのデジタル信号を処理するデジタル回路と、
内層に連続したグランドプレーンからなるベタグランド層を有し、一方の表層面に前記アナログ回路を搭載し、他方の表層面に前記デジタル回路を搭載した多層基板とを備えた高周波モジュール。
【請求項2】
多層基板は、アナログ回路を搭載する表層面に形成するデジタル信号配線領域を当該表層面上で対極位置にある両端部の一方の端部に配置し、他方の端部に前記アナログ回路を配置するとともに、デジタル回路を搭載する表層面に形成するアナログ信号配線領域を当該表層面上で対極位置にある両端部の一方の端部に配置し、他方の端部に前記デジタル回路を配置したことを特徴とする請求項1記載の高周波モジュール。
【請求項3】
アナログ回路及びデジタル回路は、各表層面において、多層基板の基板面に垂直な方向で対極する位置に配置したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の高周波モジュール。
【請求項4】
多層基板の各表層面に形成したアナログ回路及びデジタル回路の各グランド配線は、前記ベタグランド層と電気的に接続され、
前記ベタグランド層を除く前記多層基板の内層に形成した前記アナログ回路及び前記デジタル回路の各配線は、互いに隔離して配置されたことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の高周波モジュール。
【請求項5】
外部との間で信号のやり取りをするための複数の端子を有し、アナログ信号を伝搬するアナログ信号端子とデジタル信号を伝搬するデジタル信号端子とが、前記複数の端子のうちの前記アナログ信号端子及び前記デジタル信号端子以外の端子を介して対極する位置に配置されたコネクタを備えたことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の高周波モジュール。
【請求項6】
アンテナで受信されたGPS高周波信号を中間周波数のアナログ信号に周波数変換し、当該アナログ信号をデジタル信号に変換する請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載の高周波モジュールと、
前記高周波モジュールを搭載したマザーボードに設けられ、前記高周波モジュールから出力された前記デジタル信号に基づいて現在位置を演算する集積回路部とを備えたGPS受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−98439(P2010−98439A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266439(P2008−266439)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】