説明

高周波増幅器及び整合回路

【課題】全てのトランジスタに対して最適かつ等位相で高調波を反射させ、高い出力かつ高い効率で動作する高周波増幅器を得る。
【解決手段】FET1Aのドレイン(D)に一端が接続された四角形線路部5A、FET1BのDに一端が接続された四角形線路部5B、並びに四角形線路部5A及び5Bの他端を接続する弓形線路部5Cを有する伝送線路5と、四角形線路部5A及び5Bの間に配置された伝送線路6Bと、四角形線路部5Aに対して伝送線路6Bと反対側に配置された伝送線路6Aと、四角形線路部5Bに対して伝送線路6Bと反対側に配置された伝送線路6Cとを備え、伝送線路6A、6B、6Cの電気長は、高調波の1/4波長であり、伝送線路6A、6B、6Cのそれぞれのビアホール7A、7B、7Cは、伝送線路6A、6B、6Cの一端に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主としてVHF帯、UHF帯、マイクロ波帯及びミリ波帯で使用される高周波増幅器に関し、特に、高周波増幅器を構成する出力整合回路などの整合回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、マイクロ波高出力増幅器においては、トランジスタを高効率に動作させるために、高調波をトランジスタに最適な位相で反射させる高調波処理という技術が用いられる。しかしながら、高調波処理回路は高調波を最適な位相で反射させなくてはならないため、回路サイズが大きくなるという問題があった。
【0003】
この問題を解決するために、結合線路を用いた小型な高調波処理回路が提案されている(例えば、特許文献1参照)。図14は、提案された増幅器の構成を示す図である。この増幅器は、基本的にトランジスタと結合線路のみから構成されている。図14において、増幅器は、電界効果トランジスタ(FET)1と、基本波fの伝送線路2と、高調波nfの共振器3が設けられている。共振器3の線路長は、高調波nfの波長λnfのλnf/4であり、一端が接地されている。
【0004】
次に、増幅器の動作について説明する。まず、基本波について考える。FET1に入力された電力はFET1で増幅され、伝送線路2に出力される。その電力は伝送線路2を通って外部に出力される。
【0005】
続いて、高調波について考える。高調波において、共振器3は共振し、また、伝送線路2と共振器3は電磁的に結合するので、FET1から結合線路側を見た高調波インピーダンスは短絡条件となる。従って、FET1で生じた高調波はFET1側に全反射する。これにより、高調波処理の効果が得られ、FET1の効率を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−139535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、高出力化のためにトランジスタ(FET)を並列接続する場合、従来構成では、全てのトランジスタに対して第2高調波(2倍波)の反射位相をそろえることができず、トランジスタを均一に高い効率で動作させることが困難であった。図15は、トランジスタ(FET)を並列接続した増幅器の構成を示す図である。
【0008】
図15において、増幅器は、4つのFET1A、1B、1C、1Dと結合線路から構成されている。FET1A、1B、1C、1Dで生じた2倍波(2f0)は、結合線路によって、矢印の方向に反射される。FETの位置によって、矢印の長さが異なるので、反射位相が異なることが分かる。このため、従来構成では、トランジスタを並列接続(合成)する場合、トランジスタ毎に高調波処理の効果が異なり、全てのトランジスタを均一に高い効率で動作できないという問題点があった。
【0009】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、トランジスタを並列合成する高周波増幅器において、全てのトランジスタに対して最適かつ等位相で高調波を反射させ、高い出力かつ高い効率で動作する高周波増幅器及び整合回路を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る高周波増幅器は、第1の入力端子、第1の出力端子及び第1の接地端子を有する第1のトランジスタと、第2の入力端子、第2の出力端子及び第2の接地端子を有する第2のトランジスタと、前記第1の出力端子に一端が接続された第1の四角形線路部、前記第2の出力端子に一端が接続された第2の四角形線路部、並びに前記第1の四角形線路部の他端及び前記第2の四角形線路部の他端を接続する弓形線路部を有する第1の伝送線路と、前記第1の四角形線路部及び前記第2の四角形線路部の間に前記第1の四角形線路部及び前記第2の四角形線路部に沿って配置された第2の伝送線路と、前記第1の四角形線路部に対して前記第2の伝送線路と反対側に前記第1の四角形線路部に沿って配置された第3の伝送線路と、前記第2の四角形線路部に対して前記第2の伝送線路と反対側に前記第2の四角形線路部に沿って配置された第4の伝送線路とを備え、前記第2、第3及び第4の伝送線路の電気長は、高調波の1/4波長であり、前記第2、第3及び第4の伝送線路のそれぞれの接地部は、前記第1及び第2のトランジスタ側の前記第2、第3及び第4の伝送線路の一端に接続されたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る高周波増幅器によれば、トランジスタを並列合成する高周波増幅器において、全てのトランジスタに対して最適かつ等位相で高調波を反射させ、高出力かつ高効率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1に係る高周波増幅器の構成を示す図である。
【図2】図1の高周波増幅器の等価回路を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態2に係る高周波増幅器の構成を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態3に係る高周波増幅器の構成を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る高周波増幅器の2倍波(2f0)インピーダンスの計算結果を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態3に係る高周波増幅器の2倍波(2f0)インピーダンスの計算結果を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態4に係る高周波増幅器の構成を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態5に係る高周波増幅器の構成を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態6に係る高周波増幅器の構成を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態7に係る高周波増幅器の構成を示す図である。
【図11】この発明の実施の形態8に係る高周波増幅器の構成を示す図である。
【図12】この発明の実施の形態9に係る高周波増幅器の構成を示す図である。
【図13】この発明の実施の形態10に係る高周波増幅器の構成を示す図である。
【図14】従来の電力増幅器の構成を示す図である。
【図15】トランジスタ(FET)を並列接続した従来の電力増幅器の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の高周波増幅器の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0014】
図1から図13を用いて本発明の実施の形態について、複数のトランジスタとそれらを並列合成するための電力分配回路、及び電力合成回路から構成される高周波増幅器について説明する。電力分配回路は、一般に入力整合回路に相当し、電力合成回路は、出力整合回路に相当する。各実施の形態では、トランジスタとして、電界効果トランジスタ(FET)を用いる場合を説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、FETに代えてバイポーラトランジスタ(HBT:Heterojunction Bipolar Transistor)を用いる場合にも同様に適用可能である。また、各実施の形態では、出力整合回路を例に説明しているが本発明は出力整合回路だけでなく、入力整合回路や段間整合回路などすべての整合回路に適用可能である。さらに、各実施の形態では、2合成増幅器の場合について説明しているが、N(N>3)合成増幅器に適用可能である。なお、各実施の形態を示す図において共通する要素には同一の符号を付し、重複する説明については省略している。
【0015】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係る高周波増幅器について図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、この発明の実施の形態1に係る高周波増幅器の構成を示す図である。図2は、図1の高周波増幅器の等価回路を示す図である。
【0016】
図1において、高周波増幅器は、増幅回路と、出力整合回路とが設けられている。
【0017】
増幅回路は、ゲート端子(第1の入力端子)、ドレイン端子(第1の出力端子)及びソース端子(第1の接地端子)を有する電界効果トランジスタ(FET)(第1のトランジスタ)1Aと、ゲート端子(第2の入力端子)、ドレイン端子(第2の出力端子)及びソース端子(第2の接地端子)を有する電界効果トランジスタ(FET)(第2のトランジスタ)1Bとが設けられている。
【0018】
出力整合回路は、アルファベットの大文字の略U字状の伝送線路(第1の伝送線路)5と、伝送線路5に沿って略平行に3本の伝送線路(第3の伝送線路)6A、伝送線路(第2の伝送線路)6B、伝送線路(第4の伝送線路)6Cが基板上に設けられている。
【0019】
伝送線路5の第1の入力端5aはFET1Aのドレイン端子に、第2の入力端5bはFET1Bのドレイン端子に、出力端5cは出力端子4にそれぞれ接続されている。また、伝送線路6A、6B、6Cの一端(図上左端)には、ビアホール(スルーホール又はビア)(接地部)7A、7B、7Cがそれぞれ接続されショートスタブを構成し、それぞれGNDと繋がっている。また、伝送線路5は伝送線路6A、6B、6Cと結合線路を構成している。
【0020】
なお、伝送線路6(6A、6B、6C)の電気長は、第2高調波(2倍波)において、第2高調波の波長λのλ/4である。第n高調波(n倍波)について反射させたいときは、第n高調波の波長λのλ/4とすれば良い。すなわち、伝送線路6(6A、6B、6C)の電気長は、高調波の1/4波長である。
【0021】
また、略U字状の伝送線路5は、長方形などの四角形状の四角形線路部(第1の四角形線路部)5Aと、この四角形線路部5Aと略平行な長方形などの四角形状の四角形線路部(第2の四角形線路部)5Bと、両者を接続する弓形状の弓形線路部5Cとから構成されている。伝送線路5の四角形線路部5A、5Bの線路幅W1と長方形などの四角形の伝送線路6(6A、6B、6C)の線路幅W2は、図上ではW1>W2であるが、W1=W2や、W1<W2でも良い。伝送線路5の出力端5c側の弓形線路部5Cの外側の2箇所の円弧部分は、直角でも良い。また、伝送線路5の出力端5c側の弓形線路部5Cの内側の2箇所の直角部分は、円弧でも良い。
【0022】
つぎに、この実施の形態1に係る高周波増幅器の動作について図面を参照しながら説明する。
【0023】
まず、基本波(f0)について考える。高周波増幅器に周波数f0の電力を入力すると、その電力は、入力端子(省略)から入力整合回路(省略)を通って、FET1A、1Bのゲート端子に入力される。その電力は、FET1A、1Bにおいて増幅され、FET1A、1Bのドレイン端子から出力される。その出力された電力は、伝送線路5、6から構成される出力整合回路で合成され、出力端子4に出力される。これが、本増幅器の基本波の動作である。
【0024】
続いて、2倍波(2f0)の動作について考える。本実施の形態1では、伝送線路5と伝送線路6(6A、6B、6C)が結合線路を構成している。上述したように、伝送線路6の電気長が2倍波(2f0)でおおよそλ(波長)/4だとすると、結合線路の2倍波(2f0)に対するインピーダンスは、短絡や開放(図1は短絡)という全反射条件となる。従って、FET1A、1Bで生じた2倍波は、結合線路によって最適な条件(例えば、短絡条件)で反射される。また、本実施の形態1は、FET1A、1Bに対して、それぞれ結合線路を装荷しているので、FETの場所によって2倍波の反射位相が異なるという上述したような問題は生ぜず、等しい位相でFETに反射させることができる。
【0025】
以上のように、本実施の形態1は、複数のトランジスタを合成するような高周波増幅器であっても、全てのトランジスタに対して最適かつ等位相で2倍波を反射することができるので、高出力かつ高効率な特性を同時に実現できる。
【0026】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る高周波増幅器について図3を参照しながら説明する。図3は、この発明の実施の形態2に係る高周波増幅器の構成を示す図である。
【0027】
図3において、この実施の形態2の基本構成は、上記の実施の形態1と同様であるが、ビアホール7(7A、7B、7C)の位置が異なっている。図1では、トランジスタ(FET1A、1B)側にビアホール7が配置されているのに対して、図3では、出力端子4側にビアホール7が配置されている。
【0028】
つぎに、この実施の形態2に係る高周波増幅器の動作について図面を参照しながら説明する。
【0029】
この実施の形態2の基本的な動作は、上記の実施の形態1と同じである。ただし、ビアホール7の位置が異なるため、2倍波に対する反射位相は、上記の実施の形態1と比べて180°異なる。つまり、2倍波に対するインピーダンスは、上記の実施の形態1の場合では短絡であるのに対して、この実施の形態2では開放となる。これは、トランジスタの2倍波の最適インピーダンスが、開放となる場合に有効である。なお、トランジスタの2倍波の最適インピーダンスは、周波数やトランジスタの寄生成分によって異なるため、開放条件が最適となる場合もある。
【0030】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係る高周波増幅器について図4から図6までを参照しながら説明する。図4は、この発明の実施の形態3に係る高周波増幅器の構成を示す図である。
【0031】
この実施の形態3の基本構成は、上記の実施の形態1と同様であるが、伝送線路5の四角形線路部5A、5Bにおいて、中央の伝送線路6Bの他端の先端に対向する部分が凹んでいる点が異なる。この凹んでいる部分を、伝送線路5の凹部5D、5Eと呼ぶ。
【0032】
本実施の形態3の構成においても、上記の実施の形態1と同様の効果を有する。さらに、本実施の形態3は、上記の実施の形態1において設計条件によっては生じうる2倍波(2f0)の共振を防ぐ効果も有する。
【0033】
この2倍波の共振について説明する。上記の実施の形態1の等価回路を示す図2において、外側の伝送線路6A、6Cと伝送線路5(四角形線路部5A、5B)の結合容量をC1とし、中央の伝送線路6Bと伝送線路5(四角形線路部5A、5B)の結合容量をC2とする。通常、C1≠C2である。なぜなら、中央の伝送線路6Bは、両側に伝送線路5があるのに対して、外側の伝送線路6A、6Cは片側にしか伝送線路5がなく、結合量が異なるからである。
【0034】
次に、相互インダクタンスを考えると、外側の伝送線路6A、6Cと伝送線路5(四角形線路部5A、5B)の相互インダクタンスはM1、中央の伝送線路6Bと伝送線路5(四角形線路部5A、5B)の相互インダクタンスはM2となる。結合容量と同様に、通常、M1≠M2である。伝送線路6A、6Cと伝送線路5(四角形線路部5A、5B)で構成される外側の結合線路と内側の結合線路の2倍波(2f0)インピーダンスをそれぞれ、Z12f0、Z22f0とする。それらのインピーダンスは、結合容量Cと相互インダクタンスMから計算される共振周波数ωを用いて、次のように表現できると考えられる。ここで、Zは共振周波数ωと周波数ωをパラメータとする関数である。
【0035】
【数1】

【0036】
ここで、
【0037】
【数2】

【0038】
である。
【0039】
【数3】

【0040】
ここで、
【0041】
【数4】

【0042】
である。
【0043】
上述したように、C1≠C2、M1≠M2であるから、一般に、ωR1≠ωR2であり、Z12f0≠Z22f0である。従って、その差異が大きい場合、帯域内に共振が生じうる。トランジスタから整合回路側を見た2倍波(2f0)のインピーダンスの計算結果を図5に示す。2倍波(2f0)の帯域内に共振が生じていることが分かる。共振が生じると2倍波の反射量が減るため、高調波処理の効果が得られなくなり、トランジスタを高効率動作させられなくなる。
【0044】
本実施の形態3は、この共振を防ぐことができる。伝送線路5において、中央の伝送線路6Bの先端部に対向する部分に凹部5D、5Eを設けると、外側の結合容量と内側の結合容量を独立に変化させることができる。これにより、ωR1≒ωR2になるように、C2⇒£C2’とすれば、両者(Z12f0とZ22f0)のインピーダンスは一致し、共振を防ぐことができる。本実施の形態3の2倍波(2f0)インピーダンスの計算結果を図6に示す。2倍波の帯域内に共振はなく、全反射条件となっていることがわかる。伝送線路6Bの電界が集中する先端部に対向する部分を凹ませることにより、結合容量を効果的に変化させている。このように、本実施の形態3では、2倍波(2f0)の共振を防ぐことができ、トランジスタの高効率動作を図ることができる。
【0045】
また、本実施の形態3は、基本波(f0)の位相偏差も低減できる効果も有する。通常、高周波電流の位相は外側と内側で異なり、外側の方が、位相が回っていることが多い。これは、外側の方が内側より経路が長く見えるためである。本実施の形態3では、伝送線路5の内側に凹部5D、5Eを設けることによって、内側の経路を長くし、外側と内側の位相偏差を低減している。これにより、基本波(f0)の増幅器の高出力化、高効率化を実現できる。なお、図6において、計算結果でインピーダンスが短絡条件や開放条件からずれているのは、トランジスタと伝送線路間のワイヤ等も考慮しているためである。
【0046】
なお、伝送線路6Bの他端の先端部に対向する部分である、伝送線路5の四角形線路部5A、5Bの内側に凹部5D、5Eを設ける代わりに、凸部を設けても良い。
【0047】
実施の形態4.
この発明の実施の形態4に係る高周波増幅器について図7を参照しながら説明する。図7は、この発明の実施の形態4に係る高周波増幅器の構成を示す図である。
【0048】
この実施の形態4の基本構成は、上記の実施の形態3と同様であるが、伝送線路6に接続されているビアホール7の位置が異なる。
【0049】
この実施の形態4の基本的な動作は、上記の実施の形態3と同じである。ただし、ビアホール7の位置が異なるため、2倍波に対する反射位相は、上記の実施の形態3と比べて180°異なる。つまり、2倍波に対するインピーダンスは、上記の実施の形態3の場合、短絡であるのに対して、この実施の形態4では開放となる。本実施の形態4の構成においても、2倍波(2f0)の反射位相は異なるものの、上記の実施の形態3と同様の効果を有し、2倍波の共振を防ぎ、全てのトランジスタを高効率動作させることができる。
【0050】
なお、上記の実施の形態3と同様に、伝送線路6Bの他端の先端部に対向する部分である、伝送線路5の四角形線路部5A、5Bの内側に凹部5D、5Eを設ける代わりに、凸部を設けても良い。
【0051】
実施の形態5.
この発明の実施の形態5に係る高周波増幅器について図8を参照しながら説明する。図8は、この発明の実施の形態5に係る高周波増幅器の構成を示す図である。
【0052】
この実施の形態5の基本構成は、上記の実施の形態1と同様であるが、伝送線路5の四角形線路部5A、5Bにおいて、外側の伝送線路6A、6Cの一端の先端に対向する部分が凹んでいる点が異なる。この凹んでいる部分を、伝送線路5の凹部5F、5Gと呼ぶ。
【0053】
本実施の形態5の構成においても、上記の実施の形態3と同様の効果を有する。ただし、上記の実施の形態3では、外側の結合線路と内側の結合線路の結合容量を変えて2倍波(2f0)の共振を防いでいるのに対して、本実施の形態5では、外側の結合線路と内側の結合線路の相互インダクタンスを変えて共振を防いでいる。これは、式(1)、(2)において、M1⇒M1’とすることによって、ωR1≒ωR2を実現していることを意味する。伝送線路6の電流分布が最も大きい先端の部分に凹部5F、5Gを形成することによって、相互インダクタンスを効果的に変化させている。
【0054】
なお、伝送線路6A、6Cの先端に対向する部分である、伝送線路5の四角形線路部5A、5Bの外側に凹部5F、5Gを設ける代わりに、凸部を設けても良い。
【0055】
実施の形態6.
この発明の実施の形態6に係る高周波増幅器について図9を参照しながら説明する。図9は、この発明の実施の形態6に係る高周波増幅器の構成を示す図である。
【0056】
この実施の形態6の基本構成は、上記の実施の形態5と同様であるが、伝送線路6に接続されているビアホール7の位置が異なる。
【0057】
この実施の形態6の基本的な動作は、上記の実施の形態5と同じである。ただし、ビアホール7の位置が異なるため、2倍波に対する反射位相は、上記の実施の形態5と比べて180°異なる。つまり、2倍波に対するインピーダンスは、上記の実施の形態5の場合、短絡であるのに対して、この実施の形態6では開放となる。本実施の形態6の構成においても、2倍波(2f0)の反射位相は異なるものの、上記の実施の形態5と同様の効果を有し、2倍波の共振を防ぎ、全てのトランジスタを高効率動作させることができる。
【0058】
なお、上記の実施の形態5と同様に、伝送線路6A、6Cの先端に対向する部分である、伝送線路5の四角形線路部5A、5Bの外側に凹部5F、5Gを設ける代わりに、凸部を設けても良い。
【0059】
実施の形態7.
この発明の実施の形態7に係る高周波増幅器について図10を参照しながら説明する。図10は、この発明の実施の形態7に係る高周波増幅器の構成を示す図である。
【0060】
この実施の形態7では、中央の伝送線路6Bの他端(図上右端)の先端部分が、線路幅W2よりも狭い線路幅の幅狭部6xとなっている。
【0061】
この実施の形態7の構成においても、上記の実施の形態1と同様の効果を有する。伝送線路6Bの電界分布が最も大きい先端部分に凹みである、幅狭部6xを形成することによって、結合容量を効果的に変化させている。
【0062】
なお、中央の伝送線路6Bの他端の先端部分が、幅狭部6xの代わりに、線路幅W2よりも広い幅広部としても良い。
【0063】
実施の形態8.
この発明の実施の形態8に係る高周波増幅器について図11を参照しながら説明する。図11は、この発明の実施の形態8に係る高周波増幅器の構成を示す図である。
【0064】
この実施の形態8では、中央の伝送線路6Bの一端(図上左端)の先端部分が、線路幅W2よりも狭い幅狭部6yとなっている。
【0065】
この実施の形態8の基本構成は、上記の実施の形態7と同様であるが、伝送線路6に接続されているビアホール7の位置が異なる。
【0066】
本実施の形態8の構成においても、上記の実施の形態7と同様の効果を有する。ただし、ビアホール7の位置が異なるため、2倍波に対する反射位相は、上記の実施の形態7と比べて180°異なる。
【0067】
なお、中央の伝送線路6Bの一端の先端部分が、幅狭部6yの代わりに、線路幅W2よりも広い幅広部としても良い。
【0068】
実施の形態9.
この発明の実施の形態9に係る高周波増幅器について図12を参照しながら説明する。図12は、この発明の実施の形態9に係る高周波増幅器の構成を示す図である。
【0069】
図12において、MIM(Metal-Insulator-Metal)キャパシタ8(8A、8B、8C、8D、8E、8F)が、伝送線路5と伝送線路6で構成される結合線路の間に装荷されている。外側の結合線路と内側の結合線路で、装荷するMIMキャパシタ8の容量値や数を変化させることにより、結合線路の結合容量を変化させることができる。
【0070】
本実施の形態9の構成においても、上記の実施の形態1と同様の効果を有する。MIMキャパシタ8を用いることにより、電磁界結合の場合よりも、より大きな範囲で結合容量を変化させることができる。これにより、結合線路の寸法にあまり依存せず設計が可能になり、増幅器の設計の自由度を大きくできる。
【0071】
なお、図12において、例えば、伝送線路6Aと伝送線路5の四角形線路部5Aの間に、MIMキャパシタ8A、8Bが2個装荷されているが、所望の結合線路の結合容量を得るために、1個でも、3個以上でも構わない。装荷する位置も、図示する位置だけでなく、所望の結合線路の結合容量を得るために、両者の間の両端や、中央部分などの位置でも構わない。また、他の伝送線路6と伝送線路5の間も、同様である。
【0072】
実施の形態10.
この発明の実施の形態10に係る高周波増幅器について図13を参照しながら説明する。図13は、この発明の実施の形態10に係る高周波増幅器の構成を示す図である。
【0073】
本実施の形態10の構成においても、上記の実施の形態9と同様の効果を有する。ただし、ビアホール7の位置が異なるため、2倍波に対する反射位相は、上記の実施の形態9と比べて180°異なる。
【0074】
なお、図13において、例えば、伝送線路6Aと伝送線路5の四角形線路部5Aの間に、MIMキャパシタ8A、8Bが2個装荷されているが、所望の結合線路の結合容量を得るために、1個でも、3個以上でも構わない。装荷する位置も、図示する位置だけでなく、所望の結合線路の結合容量を得るために、両者の間の両端や、中央部分などの位置でも構わない。また、他の伝送線路6と伝送線路5の間も、同様である。
【符号の説明】
【0075】
1A 電界効果トランジスタ、1B 電界効果トランジスタ、4 出力端子、5 伝送線路、5A 四角形線路部、5B 四角形線路部、5C 弓形線路部、5a 入力端、5b 入力端、5c 出力端、5D 凹部、5E 凹部、5F 凹部、5G 凹部、6A 伝送線路、6B 伝送線路、6C 伝送線路、6x 幅狭部、6y 幅狭部、7A ビアホール、7B ビアホール、7C ビアホール、8A、8B、8C、8D、8E、8F MIMキャパシタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の入力端子、第1の出力端子及び第1の接地端子を有する第1のトランジスタと、 第2の入力端子、第2の出力端子及び第2の接地端子を有する第2のトランジスタと、
前記第1の出力端子に一端が接続された第1の四角形線路部、前記第2の出力端子に一端が接続された第2の四角形線路部、並びに前記第1の四角形線路部の他端及び前記第2の四角形線路部の他端を接続する弓形線路部を有する第1の伝送線路と、
前記第1の四角形線路部及び前記第2の四角形線路部の間に前記第1の四角形線路部及び前記第2の四角形線路部に沿って配置された第2の伝送線路と、
前記第1の四角形線路部に対して前記第2の伝送線路と反対側に前記第1の四角形線路部に沿って配置された第3の伝送線路と、
前記第2の四角形線路部に対して前記第2の伝送線路と反対側に前記第2の四角形線路部に沿って配置された第4の伝送線路とを備え、
前記第2、第3及び第4の伝送線路の電気長は、高調波の1/4波長であり、
前記第2、第3及び第4の伝送線路のそれぞれの接地部は、前記第1及び第2のトランジスタ側の前記第2、第3及び第4の伝送線路の一端に接続された
ことを特徴とする高周波増幅器。
【請求項2】
第1の入力端子、第1の出力端子及び第1の接地端子を有する第1のトランジスタと、 第2の入力端子、第2の出力端子及び第2の接地端子を有する第2のトランジスタと、
前記第1の出力端子に一端が接続された第1の四角形線路部、前記第2の出力端子に一端が接続された第2の四角形線路部、並びに前記第1の四角形線路部の他端及び前記第2の四角形線路部の他端を接続する弓形線路部を有する第1の伝送線路と、
前記第1の四角形線路部及び前記第2の四角形線路部の間に前記第1の四角形線路部及び前記第2の四角形線路部に沿って配置された第2の伝送線路と、
前記第1の四角形線路部に対して前記第2の伝送線路と反対側に前記第1の四角形線路部に沿って配置された第3の伝送線路と、
前記第2の四角形線路部に対して前記第2の伝送線路と反対側に前記第2の四角形線路部に沿って配置された第4の伝送線路とを備え、
前記第2、第3及び第4の伝送線路の電気長は、高調波の1/4波長であり、
前記第2、第3及び第4の伝送線路のそれぞれの接地部は、前記第1及び第2のトランジスタの反対側の前記第2、第3及び第4の伝送線路の他端に接続された
ことを特徴とする高周波増幅器。
【請求項3】
前記第2の伝送線路の前記第1及び第2のトランジスタの反対側の先端に対向して、前記第1の伝送線路の前記第1の四角形線路部及び前記第2の四角形線路部の内側に凹部又は凸部を設けた
ことを特徴とする請求項1又は2記載の高周波増幅器。
【請求項4】
前記第3及び第4の伝送線路の前記第1及び第2のトランジスタ側の先端に対向して、前記第1の伝送線路の前記第1の四角形線路部及び前記第2の四角形線路部の外側に凹部又は凸部を設けた
ことを特徴とする請求項1又は2記載の高周波増幅器。
【請求項5】
前記第2の伝送線路の前記第1及び第2のトランジスタの反対側の先端部分の線路幅は、前記第2の伝送線路の前記先端部分以外の線路幅よりも狭い又は広い
ことを特徴とする請求項1記載の高周波増幅器。
【請求項6】
前記第2の伝送線路の前記第1及び第2のトランジスタ側の先端部分の線路幅は、前記第2の伝送線路の前記先端部分以外の線路幅よりも狭い又は広い
ことを特徴とする請求項2記載の高周波増幅器。
【請求項7】
前記第1の伝送線路の前記第1の四角形線路部と前記第2の伝送線路の間、前記第1の伝送線路の前記第2の四角形線路部と前記第2の伝送線路の間、前記第1の伝送線路の前記第1の四角形線路部と前記第3の伝送線路の間、及び前記第1の伝送線路の前記第2の四角形線路部と前記第4の伝送線路の間に、キャパシタが装荷された
ことを特徴とする請求項1又は2記載の高周波増幅器。
【請求項8】
第1の四角形線路部、第2の四角形線路部、並びに前記第1の四角形線路部の他端及び前記第2の四角形線路部の他端を接続する弓形線路部を有する第1の伝送線路と、
前記第1の四角形線路部及び前記第2の四角形線路部の間に前記第1の四角形線路部及び前記第2の四角形線路部に沿って配置された第2の伝送線路と、
前記第1の四角形線路部に対して前記第2の伝送線路と反対側に前記第1の四角形線路部に沿って配置された第3の伝送線路と、
前記第2の四角形線路部に対して前記第2の伝送線路と反対側に前記第2の四角形線路部に沿って配置された第4の伝送線路とを備え、
前記第2、第3及び第4の伝送線路の電気長は、高調波の1/4波長であり、
前記第2、第3及び第4の伝送線路のそれぞれの接地部は、前記弓形線路部の反対側の前記第2、第3及び第4の伝送線路の一端に接続された
ことを特徴とする整合回路。
【請求項9】
第1の四角形線路部、第2の四角形線路部、並びに前記第1の四角形線路部の他端及び前記第2の四角形線路部の他端を接続する弓形線路部を有する第1の伝送線路と、
前記第1の四角形線路部及び前記第2の四角形線路部の間に前記第1の四角形線路部及び前記第2の四角形線路部に沿って配置された第2の伝送線路と、
前記第1の四角形線路部に対して前記第2の伝送線路と反対側に前記第1の四角形線路部に沿って配置された第3の伝送線路と、
前記第2の四角形線路部に対して前記第2の伝送線路と反対側に前記第2の四角形線路部に沿って配置された第4の伝送線路とを備え、
前記第2、第3及び第4の伝送線路の電気長は、高調波の1/4波長であり、
前記第2、第3及び第4の伝送線路のそれぞれの接地部は、前記弓形線路部側の前記第2、第3及び第4の伝送線路の他端に接続された
ことを特徴とする整合回路。
【請求項10】
前記第2の伝送線路の前記弓形線路部側の先端に対向して、前記第1の伝送線路の前記第1の四角形線路部及び前記第2の四角形線路部の内側に凹部又は凸部を設けた
ことを特徴とする請求項8又は9記載の整合回路。
【請求項11】
前記第3及び第4の伝送線路の前記弓形線路部の反対側の先端に対向して、前記第1の伝送線路の前記第1の四角形線路部及び前記第2の四角形線路部の外側に凹部又は凸部を設けた
ことを特徴とする請求項8又は9記載の整合回路。
【請求項12】
前記第2の伝送線路の前記弓形線路部側の先端部分の線路幅は、前記第2の伝送線路の前記先端部分以外の線路幅よりも狭い又は広い
ことを特徴とする請求項8記載の整合回路。
【請求項13】
前記第2の伝送線路の前記弓形線路部の反対側の先端部分の線路幅は、前記第2の伝送線路の前記先端部分以外の線路幅よりも狭い又は広い
ことを特徴とする請求項9記載の整合回路。
【請求項14】
前記第1の伝送線路の前記第1の四角形線路部と前記第2の伝送線路の間、前記第1の伝送線路の前記第2の四角形線路部と前記第2の伝送線路の間、前記第1の伝送線路の前記第1の四角形線路部と前記第3の伝送線路の間、及び前記第1の伝送線路の前記第2の四角形線路部と前記第4の伝送線路の間に、キャパシタが装荷された
ことを特徴とする請求項8又は9記載の整合回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2012−134823(P2012−134823A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285960(P2010−285960)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】