説明

高周波誘電加熱用の電極材

【課題】 被加熱材の周面に沿うように電極材を配設することができる。
【解決手段】 電極材60は、被加熱材に高周波電圧を印加し、高周波誘電加熱をするための電極材である。電極材60は、略円筒状の加熱材の外周面を取り巻く円筒状の電極部65を有する。電極部65は、複数の軸方向に延びるスリット75を有する。このスリットにより分割された電極部65の各薄板部76はその厚さが非常に薄く可撓性を有する。各薄板部76は、径方向に押圧されると、その押圧される方向に撓みつつ、被加熱材の外周面に沿うように変形可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波誘電加熱用の電極材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被加熱材を加熱する方法として、被加熱物を、2つの電極間に配置して、高周波電圧により加熱する高周波誘電加熱が知られている。高周波誘電加熱においては、誘電効率を高め被加熱材を効率よく加熱するために、2つの電極を被加熱体に空気の層を介さずに密着させることが好ましく、したがって特許文献1に記載されるように、平板の被加熱材が加熱される場合、被加熱材は平板電極に挟持されている。
【0003】
しかし、被加熱材が例えば円筒形状を呈し、その表面が曲面である場合、平板電極を用いて、被加熱材を加熱しようとすると、被加熱材の表面は平板電極に密着されないので、誘電効率が低下させられ、加熱効率が低下させられる。そこで、被加熱材の表面が曲面である場合、その曲面にあわせて、特許文献2に記載されるような表面が曲面に形成された電極を用いることが考えられる。
【特許文献1】特開平9−289078号公報
【特許文献1】特開平11−123758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、通常被加熱材の種類は多岐に亘り、各被加熱材の形状は必ずしも一定というわけではなく、被加熱材が例えば円筒形状を呈する場合、その外周面の曲率に相違がある場合がある。このような場合、従来の電極材では、各被加熱材それぞれの曲率に合わせて電極を用意する必要がある。
【0005】
また、高周波誘電加熱では、特許文献1に記載されるように、被加熱材が2つの電極によって圧力が加えられながら加熱されることが多い。しかし、被加熱材の表面が電極の表面に沿っていなければ、被加熱材には均一に圧力が付勢されない。さらに、圧力を付勢しつつ被加熱材を加熱する場合、被加熱材は膨張又は収縮し、外周面が変形することがあるが、従来の電極材は、そのような被加熱材の表面変形に追随して変形することは困難である。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑みて成されたものであり、被加熱材を効率良く加熱することが可能な高周波誘電加熱用の電極材を提供することを主たる目的とする。また、被加熱材に圧力を付勢しながら加熱する場合に適した高周波誘電加熱用の電極材を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電極材は、柱形の被加熱材に、高周波電圧を印加し、高周波誘電加熱をするための電極材であって、被加熱材の周面に対向するように配設されるとともに、周面の周方向に分離された可撓性を有する複数の薄板部と、複数の薄板部を、周方向に連接する固定部とを備え、複数の薄板部はそれぞれ、周面に沿うように径方向に変形可能であることを特徴とする。
【0008】
各薄板部が、スリットにより、互いに分離されていることが好ましい。そして、スリットは、例えば被加熱材の軸方向に平行に延びるスリットである。また例えば、少なくとも一部が軸方向に対して斜めに延びるスリットである。または例えば、少なくとも一部が屈曲しているスリットであって、例えばスリットはジグザグ状、またはS字状に形成されても良い。
【0009】
これにより、例えば周面が楕円弧面、円弧面、楕円周面、および円周面のいずれかを含み、薄板部が周面の外周側に配置されるとともに、周面に向かって変形する場合、隣接する薄板部間の距離が狭められ、各薄板部は、被加熱材の周面に沿いやすくなる。
【0010】
また、隣接する薄板部の一部は、周方向において互いに重なるように設けられても良い。この場合、被加熱材の周面が、楕円弧面、円弧面、楕円周面、および円周面のいずれかみ、各薄板部が周面の内周側に配置されるとともに、周面に向かって変形する場合、隣接する薄板部間の距離が離間され、各薄板部は、被加熱材の周面に沿いやすくなる。
【0011】
固定部は、例えば各薄板部の少なくとも一方の端部を連接する。固定部が、各薄板部の端部を連接すると、例えば各薄板部の中央部を連接する場合に比べ、各薄板部は撓みやすくなり、被加熱材の周面に沿いやすくなる。
【0012】
前記電極材は、前記複数の薄板部により構成される円筒部を有することが好ましい。これにより、被加熱材が、円筒形状、または円柱形状を呈する場合、円筒部を構成する各薄板部を、被加熱材の内周面または外周面に対向して設けることができる。この場合、好ましくは円筒部の一方の端部に固定部が設けられ、固定部が円筒形状の全周に亘って各薄板部の一方の端部を連接する。また、例えば固定部および薄板部は、一体的に成形される。
【0013】
また、被加熱材には、薄板部を介して圧力が付勢可能であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、電極材を被加熱材の周面に沿わせることができるので、高周波誘電加熱における誘電効率を高めることができる。また、本発明に係る電極材は、押圧により撓み変形するので、薄板部を介して、被加熱材に均一に圧力を付勢することができる。さらに、圧力を付勢しつつ被加熱材を加熱する場合、被加熱材の膨張・収縮により周面が変形しても、本発明の電極材はその周面の変形にあわせて撓み変形することができ、これにより被加熱材を安定的に加熱・加圧することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は、第1の実施形態に係る加硫成型装置を示す。加硫成型装置10は、内型20と、内型20を内部に収納するための外型40を有する。内型20は、略円柱状に金属で形成され、その内型20内部には熱媒体が通過するための通路が設けられ、熱媒体が通過することにより、内型20の外周面27が加熱させられる。内型20の上面22および下面23には、内型20内部に熱媒体を送入出するための入出管24、25が設けられる。入出管24、25は、上面22および下面23の中心から、それぞれ上方および下方に突出する。なお、熱媒体としては、例えば水蒸気、オイル等が使用される。
【0016】
図2に示すように、内型20の外周面27には、被加熱材30として帆布80およびゴムシート81が順に巻き付けられ、巻き付けられた被加熱材30は略円筒形状を呈する。被加熱材30は、このように巻き付けられることにより、その内周面31が内型20の外周面27に沿うように、内型20に装着される。略円筒状の被加熱材30は、その軸方向の長さが、図1に示すように内型20の軸方向の長さより短く、内型20の下端部、上端部においては、被加熱材30が巻きつけられていない。なお、被加熱材30は、この構成に限定されず、高周波誘電により加熱され得るものならば良く、各種樹脂、エラストマー、天然高分子材料等を含むものであれば良い。また、ゴムシート81の上にはさらにポリテトラフルオロエチレンシート等が被覆されても良い。ポリテトラフルオロエチレンシートは、ゴムに対して離型性が高く、加硫によりゴムシートには接着されず、後述するように加硫により得られるベルト等を構成しない。すなわち、被加熱材30はこのように、加硫成型の対象となる材料以外の材料(本実施形態ではポリテトラフルオロエチレンシート)を含んでいても良い。
【0017】
図1に示すように、略円筒状の被加熱材30の上方には円筒状に成形された第1絶縁ブロック61aが被加熱材30に対して同心的に載せられ、第1絶縁ブロック61aの内側には、内型20の上端部が配置されている。第1絶縁ブロック61aには、内型20の軸方向に貫通したエア抜き穴71が設けられる。
【0018】
外型40は、有底の略円筒形状を呈する外枠41と、外枠41の上面に固定される上蓋42と、外枠41の内側に設けられるゴムジャケット43を備える。外枠41および上蓋42は、電流が導通可能なように金属で形成される。外枠41の底部50は、段差状に形成され、中央部に略円形の挿通孔46が設けられる円形の基底面47と、基底面47の外周縁部から外枠40の軸方向に立ち上げられる接続部48と、接続部48に連設され、基底面47と平行に接続部48から外側に広がり外枠41の側面72に接続される中底部49とによって構成される。挿通孔46には、内型20が収納されたとき、入出管25に接続される接続管85が挿通されている。
【0019】
上蓋42は、内型20を挿入するための円形の開口部が設けられ、該開口部は上蓋42の側面45により形成される。上蓋42の下面および中底部49の内縁部には、全周に亘ってそれぞれ下方および上方に突出する環状形状の底面突起部56および上面突起部57が連接される。
【0020】
ゴムジャケット43は、円筒形状を呈し外枠41と同心的に配設されるとともに、その円筒形状の両端部が拡径するように広げられ、底面突起部56および上面突起部57の外周側の側面に嵌合されて上蓋42および中底部49に固定されている。ゴムジャケット43は、これら突起部に嵌合することにより、内側に向かって押圧された場合でも、ゴムジャケット43の上蓋42および中底部49に対する固定状態は維持される。
【0021】
以上の構成により、ゴムジャケット43と外枠41の側面72の間には、中底部49を底面とし、上蓋42を上面とする密閉空間54が形成される。そして、ゴムジャケット43の内周面は、上蓋42の側面45、底部50の接続部48とともに、略同一曲面を形成し、これにより、この同一曲面を内周面とし、基底面47を底面とする円筒状の収納室67が設けられる。
【0022】
ゴムジャケット43(すなわち収納室67)の内部には、電極材60が設けられる。電極材60は、円筒形に形成される電極部65と、電極部65の上端部から外側に向かって広がる鍔部66を有す。電極部65は、収納室67の内周面(すなわち、ゴムジャケット43、側面45、接続部48)に沿うように外枠41に同心的に設けられ、鍔部66は上蓋42の上面に沿って設けられる。電極材60の鍔部66は上蓋42の上面に固定され、これにより電極材60は、外型40に取り付けられている。また、電極部65の下端部は、後述するように、接続部48に軸方向に変位可能に支持されている。
【0023】
外枠41には、注入口52および排出口53が設けられ、注入口52から密閉空間54に水蒸気等の圧力媒体が注入されるとともに、密閉空間54の圧力媒体は排出口53から排出される。
【0024】
収納室67の基底面47の上面には、挿通孔46を避けるように、内径が挿通孔46の直径に一致し、外周面が収納室67の内周面(すなわち、電極部65の内周面)に沿うように形成された円筒形状の第2絶縁ブロック61bが設けられる。第2絶縁ブロック61bの上面には、内周面が内型20の外周面に沿うような内径を有するとともに、外周面が収納室の内周面に沿うように形成された円筒形状の第3絶縁ブロック61cが設けられる。なお、第2絶縁ブロック61bおよび第3絶縁ブロック61cは、一体的に成形され、その断面形状がL字状を呈する絶縁ブロックであっても良い。また、第1ないし第3の絶縁ブロック61a、61b、61cは、シリコンまたはフッ素樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン)等の絶縁体で形成される。
【0025】
図3は、内型20が外型40内に収納されたときの加硫成型装置を示す。被加熱材30が装着された内型20が、外型40内に収納されると、内型20の下端部が、第3絶縁ブロック61cの内周側に挿入されるとともに、内型20の入出管25が第2絶縁ブロック61bの内周内に挿通され、内型20の下面23が第2絶縁ブロック61bの上面に載置される。そして、被加熱材30の下面は、第3絶縁ブロック61cの上面に接触し、または近接される。このように内型20が収納されると、内型20と外型40(外枠41)の軸が一致し、被加熱材30は電極部65の内側に配置され、その外周面が電極部65の内周面に対向させられる。すなわち、内型20が外型40内に収納されると、内型20、外型40、被加熱材30および電極部65は、同心的に設けられ、それぞれの軸は一致する。
【0026】
内型20が、収納室67内に収納されると、内型20および外型40には、それぞれ導線(不図示)が接続され、これら導線は、電源供給のための不図示の電源に接続される。したがって、外型40は電極部65に電気的に接続されており、電極部65と内型20の間には、高周波電圧が印加可能になる。
【0027】
また、内型20の入出管24、25には、熱媒体を供給するために、それぞれ接続管85が接続される。接続管85は、内型20の供給された電流を導通しないように、シリコン等の絶縁体で構成される。
【0028】
次に、本実施形態における加熱・加硫方法について説明する。本実施形態においては、内型20が外型40内に収納された状態において、外型40に設けられた密閉空間54に圧力媒体が供給され、ゴムジャケット43が内側に向けて膨張させられる。ゴムジャケット43の膨張により、円筒形の電極部65は縮径し、被加熱材30に向けて径方向内側に撓んで変位させられ、被加熱材30に密着し、被加熱材30を押圧する。電極部65からの押圧により、被加熱材30は、電極部65と内型20の外周面27に挟み込まれ、所定圧力が付勢される。
【0029】
このように、所定圧力が付勢された状態で、内型20と外型40間には、電力が供給され、電極部65と、内型20の間には、高周波電圧が印加される。したがって、被加熱材30は高周波誘電により加熱される。また、密閉空間54に供給される圧力媒体は、例えば水蒸気であって、熱媒体の役割を兼ねており、さらには内型20にも熱媒体が供給される。すなわち、被加熱材30は、内周および外周側から、熱媒体によっても加熱される。
【0030】
内型20および外型40に供給される熱媒体並びに、高周波誘電により、被加熱材30が加熱され、加硫温度(例えば、150℃)に達すると、内型20および電極材60間における高周波電圧の印加が停止され、高周波誘電による被加熱材30の加熱が終了される。高周波誘電による加熱が終了した後においても、内型20および外型40への熱媒体および圧力媒体の供給は継続され、被加熱材30の温度は加硫温度に維持されるとともに、所定圧力も同様に維持され、圧力と加硫温度が維持された状態で、所定時間にわたって被加熱材30が加硫させられる。
【0031】
加硫時間にわたる加硫が終了すると、内型20内には、冷却水が供給され、被加熱部材30が冷却された後、外型40から内型20が取り出される。内型20は、外型40の外部に取り出された後、被加熱材30が内型20から取り外され、これにより加硫成型された円筒状の被加熱材が得られる。なお、本実施形態においては、加硫成型された被加熱材30は、ゴムシート81の一方の面に帆布80が加硫接着されたベルトスラブである。ベルトスラブは、研磨加工された後、幅方向に切断され、平ベルト、Vベルト等の各種ベルトと成る。
【0032】
以上のように本実施形態においては、円筒形状の被加熱材30が、その内周面側および外周面側から径方向に高周波電圧が印加される。したがって、被加熱材の全ての部分において、均一に高周波電圧が印加され、全ての部分において略均一に加熱が行われる。
【0033】
また、本実施形態においては、被加熱材30の内周面は、熱伝導率の高い金属である内型20の外周面に接するために、熱損失されやすい。しかし、本実施形態においては、被加熱材30の外周面、内周面は、内型20および外型40に供給される熱媒体により、加熱されるので、被加熱材30は、温度むらなく加熱される。さらに、本実施形態では、被加熱材30が加硫温度に達した後においては、熱損失がされやすい被加熱材30の外周面、内周面を中心に加熱するために、高周波電圧の印加を停止し、内型20および外型40に供給される熱媒体のみにより加熱を継続する。
【0034】
なお、被加熱材30とゴムジャケット43の間、および内型20と被加熱材30の間、並びに被加熱材30内に内在される空気は、ゴムジャケット43の加圧により、第1絶縁ブロック61aに設けられたエア抜き穴71より加硫成型装置10の外部に放出される。
【0035】
また、内型20の上端部および下端部の近傍は、外気に近いので熱損失されやすい。したがって、本実施形態において、内型20の外周面27の上端部および下端部は、第1および第3絶縁体ブロック61a、61cによって取り巻かれており、被加熱材30は配置されていない。すなわち、本実施形態においては、均一に加熱可能である位置のみに被加熱材30は配置される。
【0036】
さらに、本実施形態では、内型20は、第2絶縁ブロック61bを介して、外型40上に載置され、これにより2つの電極部(内型20と外型40)の接触が有効に防止される。
【0037】
図4は、外型40に設けられた電極材60を示す。電極材60は、上述したように略円筒形状を呈する電極部65と、電極部65の上端部に接続され、外側に向けて広がる鍔部66が設けられる。電極材60は、例えば、金、白金、銀、アルミニウム、銅等の導電性の高い金属により一体的に形成される。
【0038】
電極部65には、軸方向に平行に延びる矩形の複数のスリット75が設けられ、これら複数のスリット75によって電極部65は、複数の軸方向に延びる薄板部76として、周方向に分離されている。ここで、各スリット75は、電極部65の上端から所定の距離おいた位置から、下端から所定の距離おいて位置まで延び、電極部の下端部と上端部においては、電極部65は周方向に分離されてない。すなわち、複数の軸方向に延びる薄板部76は、その両端部が、周方向全周に亘って延びる環状の固定部77により、連接されている。ここで、各薄板部76はその厚さが非常に薄く可撓性を有し、径方向に押圧されると、固定部77を支点としてその押圧される方向に撓みつつ変位される。
【0039】
固定部77には、電極材60の軸方向に延び、スリット75より幅及び長さが短い2以上の支持スリット97が設けられる。接続部48(図1参照)の支持スリット97に対向する位置には、幅長さが支持スリット97にほぼ等しく、軸方向の長さが支持スリット97より短い突起(不図示)が設けられている。接続部48に設けられた突起は、支持スリット97内に挿通され、これにより電極材60は、周方向には変位できないとともに、軸方向に所定量以上変位しようとすると、突起によりその変位が規制される。すなわち、電極材60は、軸方向に変位可能に接続部48により支持される。なお、電極材60には、支持スリット97が設けられず、接続部48によって支持されていなくても良い。
【0040】
なお、電極材60の電極部65および鍔部66の厚さ、すなわち各薄板部76の厚さは、ゴムジャケット43の押圧により変形可能な範囲であれば良く、例えば0.1〜0.5mmであって、好ましくは0.2mmである。また、各スリットは、同一の矩形形状を呈し、等間隔に設けられ、その幅が例えば1〜5mmであって、好ましくは2mmである。一方、各薄板部の幅は、例えば15〜25mmであって、好ましくは20mmである。
【0041】
電極材60が加硫成形装置10に取り付けられている場合、電極材60の固定部77は、上蓋42の側面45および、底部50の接続部48に対向する位置に設けられる。一方、各薄板部76はゴムジャケット43に対向する位置に設けられる。したがって、ゴムジャケット43が内側に向けて膨張させられると、固定部77は、ゴムジャケット43により押圧されない一方、各薄板部76はゴムジャケット43により押圧される。すなわち、各薄板部76は、固定部77を支点に内側に変形しつつ変位し、被加熱材30の外周面に密着させられる。各薄板部76の変形により電極材60の固定部77は変位するが、上述したように固定部77は周方向に変位することができないので、電極材60はねじれ変形を起こすことはない。また、固定部77は軸方向には変位可能であるので、各薄板部76の変形が妨げられることはない。
【0042】
なお、電極材60の固定部77は、各薄板部76と同様に、ゴムジャケット43に対向する位置に設けられても良い。この場合、ゴムジャケット43の径方向内側への押圧に伴い、各薄板部76および固定部77は、径方向内側に撓みつつ変位されるが、各薄板部76は、スリット75により分離されており、固定部77に比べて大きく撓むこととなる。したがって、この場合においても、固定部77を支点として、薄板部76は径方向内側に撓み変形する。すなわち、電極材60は、外型40からの押圧により内部に相対的に大きく変形する各薄板部76と、相対的に小さく変形する固定部77から構成されることとなる。
【0043】
ここで、各薄板部76は、内側に変形しつつ変位すると、電極部65は縮径し、各薄板部76は接近させられる。したがって、電極部65が押圧される前に離間されていた各薄板部76は、押圧されるとほとんど接するような状態になる。すなわち、被加熱材30の外周面のほぼ全ての領域は、電極部65によって覆われることとなる。
【0044】
以上の構成により、円筒形状の被加熱材30は、その内周面のほぼ全ての領域が内型20に、外周面のほぼ全ての領域が電極部65に密着させられている。したがって、被加熱材30は、高周波誘電加熱により、効率よく加熱される。また、複数に分割された各薄板部76は、固定部77によって連接されることにより、固定部77から容易に電力供給を受けることができる。
【0045】
また、被加熱材30が加熱により膨張(または収縮)し、その外周面の径が大きく(または小さく)なる場合でも、電極材60は、その拡径(または縮径)に追随して拡径(または縮径)し、加熱中継続して被加熱材30に密着させられる。ここで、各薄板部76は、接近し重なる場合もあるが、そのような場合でも、各薄板部76は薄いので、被加熱材30に充分に密着させられる。同様の理由により、被加熱材30の外周径が異なるような場合でも、各薄板部76は、被加熱材30に密着可能であり、本実施形態に係る加硫成型装置10では、周径の異なる被加熱材を加熱可能である。
【0046】
さらに、電極材30は可撓性を有し、変形して外周面に密着するので、ゴムジャケット43からの押圧力を被加熱材に伝播させやすい。そして、被加熱材30の外周面のほぼ全ての領域は電極部65に密着させられるので、被加熱材には均一に圧力が付勢しやすい。
【0047】
次に、電極材の変形例について説明する。なお、以下の変形例においては、同一の部材には同一の符号を付す。図5は、本実施形態の電極材60の第1の変形例を示す。
【0048】
本実施形態においては、軸方向に延びる各スリット75は、矩形に形成されたが、矩形に形成されなくても良く、例えば図5に示すように幅がその長手の中央部に向かうに従って、広くなるように軸方向に長い楕円形に形成されても良い。すなわち、各薄板部76はその幅が中央部に向かうに従って、広くなるように形成されても良い。なお、このように、薄板部76において、その中央部の幅が小さく、両端部の幅が大きく設けられたのは、ゴムジャケット43により押圧されたとき、薄板部76の変位量は中央部のほうが、両端部に比べ大きいからである。
【0049】
図6〜8は、それぞれ本実施形態の電極材60の第2〜4の変形例を示す。第1の実施形態においては、電極材60のスリット75が電極材60の軸方向に平行に延びる矩形のスリット75であったが、図6に示すように、軸方向に対して斜めに延びるスリット75であっても良い。このような構成においては、スリット75により、分離される各薄板部76も同様に、軸方向に対して斜めに延びることとなる。
【0050】
また、図7に示すように、スリットは軸方向に傾きつつS字状に屈曲しつつ延びるスリット75であっても良い。このような構成においては、スリット75により分離される各薄板部76も同様に、軸方向に対して傾きつつ、S字状に屈曲して延びる。さらには、スリット75は、屈曲して延びる場合、図8に示すように直線的に延びるスリットが複数接続され、ジグザグ状に形成されても良い。
【0051】
ただし、第1ないし第4の変形例においても、第1の実施形態と同様にスリット75は上端および下端まで延ばされておらず、電極部65の上端部および下端部には、各薄板部76を周方向の全体に亘って連接する固定部77が形成されている。
【0052】
第1ないし第4の変形例においても、電極材60が加硫成形装置10に取り付けられている場合、電極材60の固定部77は、上蓋42の側面45および、底部50の接続部48に対向する位置に設けられる。一方、各薄板部76はゴムジャケット43に対向する位置に設けられる。したがって、各薄板部76は、本実施形態と同様に固定部77を支点に内側に向けて変形しつつ変位し、被加熱材30の外周面に密着させられ、被加熱材30の外周面のほぼ全ての領域は、電極部65によって覆われることとなる。なお、第1〜4の変形例においても、第1の実施形態と同様に、支持スリット97が設けられ、接続部48により支持される。
【0053】
図9は、本実施形態の第5の変形例に係る電極材を示す。第1の実施形態においては、電極材60は一体的に成形された円筒状の電極部65に複数のスリットが設けられ、薄板部76が形成されていたが、本変形例では、複数の薄板276(薄板部)がすだれ状に配設され、その複数の薄板276の集合体により、略円筒状の電極材60が形成される。
【0054】
すなわち、本変形例では、軸方向に延びる短冊状の複数の薄板276が、同一円周上に沿って配設される。ここで、隣接する薄板276は、周方向において、互いに所定距離離間されて配設され、すなわち、薄板276の間にはスリット75が設けられる。そして、同一円周上に沿って配設される複数の薄板276は、各上端部がその円周上において環状に形成された固定部77に固定され、すなわち、薄板276は、周方向全体に亘って、固定部77によって連接されている。
【0055】
本変形例においても、各薄板276は、その厚さが非常に薄く、各薄板276は可撓性を有し、径方向に押圧されると、固定部77を支点としてその押圧される方向に撓みつつ変位される。
【0056】
第5の変形例においても、電極材60が加硫成形装置10に取り付けられている場合、電極材60の固定部77は、上蓋42の側面45に対向する位置に設けられる。一方、各薄板276はゴムジャケット43に対向する位置に設けられる。したがって、各薄板276は、本実施形態と同様に固定部77を支点に内側に向けて変形しつつ変位し、被加熱材30の外周面に密着させられ、被加熱材30の外周面のほぼ全ての領域は、電極部60によって覆われることとなる。
【0057】
なお、本変形例においても、第1の実施形態と同様に、電極材60の上端部に接続される鍔部が設けられても良い。さらに、下端部も固定部によって連接されていても良い。また、各薄板はそれぞれ平板でも良いが、電極材60が正確な円筒形を形成することができるように、同一の曲率を有するように、僅かに湾曲されて成形されても良い。
【0058】
図10、11は、本実施形態の第6の変形例を示す。本実施形態においては、電極材60はゴムジャケット43の内周面に接するように設けられたが、本変形例においては、ゴムジャケット43の内部に設けられる。
【0059】
詳述すると、ゴムジャケット43は、内周面側および外周面側に設けられた内ジャケット43aおよび外ジャケット43bにより2層構造に構成され、その内ジャケット43aおよび外ジャケット43bの間に設けられた間隙に電極材60が配置されている。すなわち、本変形例においては、電極材60は、ゴムジャケット43に対して変位可能にゴムジャケット43内に設けられている。
【0060】
内外ジャケット43a、43bは、第1の実施形態のジャケット43と同様に円筒形状を呈し、電極材60も、第1の実施形態と同様に、円筒形状の電極部65と、鍔部66から成る。ここで、円筒形状の電極部65は、内外ジャケット43a、43bの間に配置され、鍔部66はその内外ジャケット43a、43bの上端部の間から延出され、上蓋42の下面に沿って設けられる。
【0061】
電極部65は、その上端から切り込まれた複数の端部スリット99と、第1の実施形態と同様に電極部65の上端から所定の距離おいた位置から、下端から所定の距離おいて位置まで延びる複数の矩形のスリット75とを有し、スリット75と端部スリット99の間には、周方向全周に亘って延びる環状の固定部77が形成される。また、鍔部66にも、鍔部66の径方向全体に延び、鍔部66を分離させる鍔部スリット98が複数設けられ、各鍔部スリット98は、それぞれ各端部スリット99に接続される。
【0062】
このように、電極部65に端部スリット99及び鍔部スリット98が設けられることにより、内外ジャケット43a、43bの上端部が拡径されると、その拡径に伴い、可撓性を有する電極部65の上端部は、拡径可能である。
【0063】
したがって、本変形においては、電極材60が内部に配設されたゴムジャケット43が、その両端部が拡径するように広げられ、底面突起部56および上面突起部57の外周側の側面に嵌合されて上蓋42および中底部49に固定されている。ここで、ゴムジャケット43の上端部の内部には、電極部65が配置されるが、ゴムジャケット43の下端部の内部には、電極部65が配置されない。したがって、電極部65の上端部は拡径される一方、下端部は拡径されないので、電極部65の下端部にはスリットは設けられていない。
【0064】
本変形例において、密閉空間54から内側に圧力が付与されると、ゴムジャケット43は押圧され、その押圧により電極材60もその径方向内側に押圧される。内側への押圧に伴い、電極部65は、内側に向けて撓みつつ変位される。ここで、電極部65は、スリット75により分離されており、固定部77に比べて大きく撓むこととなる。すなわち、本変形例においても、第1の実施形態と同様に、固定部77を支点として、薄板部76は内側に向けて撓み変形する。また、ゴムジャケット43も、弾性体で構成されおり、内側に変形される。したがって、密閉空間54に圧力媒体が供給されると、本実施形態においては、内ジャケット43aが被加熱材30の外周面に密着し、これにより各薄板部76が被加熱材30の外周面に沿うように変形される。
【0065】
なお、本変形例では、外ゴムジャケット43bが被加熱材30に密着し、各薄板部76は、その被加熱材30に密着する外ゴムジャケット43bに密着される。したがって、本変形例でも、第1の実施形態と同様に、誘電効率良く被加熱材30が加熱させられる。
【0066】
なお、本変形においては、ゴムジャケット43は、内外ジャケットに分離されていなくてもよく、例えば電極材60はゴムジャケット43内に埋設されていても良い。ただしこの場合、電極材60はゴムジャケット43に接着され、ゴムジャケット43の変形に伴い追従して動くので、電極材60の変形量はゴムジャケットにより規制されることになる。
【0067】
次に、本実施形態の第7の変形例について説明する。上述したように本実施形形態において、電極材は薄板の金属板で成形され外型40に取り付けられたが、被加熱材30とゴムジャケット43の間に配置されるものであれば、外型40に取り付けられなくても良い。
【0068】
図12は第7の変形例に係る電極材260を示す。第7の変形例においては、電極材260は、一体的にかつ可撓性を有する金属板で成形され、第1の実施形態と同様に、スリット75が設けられる。各スリット75は、電極材260の上端から所定の距離おいた位置から、下端から所定の距離おいて位置まで延び、電極部の下端部と上端部においては、電極部65は周方向に分離されてない。すなわち、スリット75によって複数の軸方向に延びる薄板部76が形成され、薄板部76の両端部が、周方向全周に亘って延びる環状の固定部77により、連接されている。
【0069】
第7の変形例の電極材260は、図12に示すように内型20が外型40内に収納される前に、被加熱材30の外周面に巻き付けられる。巻き付けられた電極材260は円筒形状を呈し、被加熱材30と同心的に配設される。電極材260が巻き付けられた内型20は、外型40内に収納された後、外型40と電極材260の外周面が導線によりに電気的に接続される。外型40と電極材260が電気的に接続されることにより、外型40および内型20に電力が供給されると、電極材260と内型20の間に高周波電圧が印加され、本実施形態と同様に、被加熱材30に対して高周波誘電加熱が行われる。
【0070】
電極材260は、第1実施形態と同様に、ゴムジャケット43により押圧されると、固定部77を支点に薄板部76が径方向の内側に撓み変形され縮径し、被加熱材30の外周面に密着されることとなる。
【0071】
このように構成された電極材260は、被加熱材30の外周面に巻き付けられると、被加熱材30と同心的に略円筒形状を呈する。そして、第1の実施形態の電極材と同様に、ゴムジャケット43により押圧されると、その径方向内側に縮径して変形する。したがって、電極材は被加熱材30の外周面に沿うように密着することができ、ゴムジャケット43の押圧力により被加熱材30が外型40と内型20によって挟圧される。すなわち、これら電極材260が適用された加硫成型装置も、本実施形態と同様に、圧力が作用されつつ、高周波誘電加熱が行われる。
【0072】
図13〜16を用いて本発明に係る第2の実施形態について説明する。第1の実施形態においては、電極材が被加熱材の外周面の外側に配設されるとともに、被加熱材の外側から内側に向けて、圧力が作用されたが、本実施形態においては、電極材が被加熱材の内周面の内側に配設されるとともに、被加熱材の内側から外側に向けて圧力が作用される。以下第2の実施形態について第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0073】
図13および図14は、第2の実施形態に係る加硫成型装置100を示す。加硫成形装置100は、内型120と、内型120を内部に収納するための外型140を有する。内型120は、円盤形状を有する上型122と、上型122に対向して設けられ、円盤形状を有する下型123と、これら上型122および下型123と同心的に略円筒状に形成されたゴムジャケット143を有する。ここで、ゴムジャケット143は上型122および下型123に接続されている。したがって、内型120は、上型122、下型123を上面、下面とし、ゴムジャケット143、および上型122と下型123の側面を外周面とする略円柱状に形成される。
【0074】
上型122の下面には、外周縁全周に亘って、下方に向けて突出する環状の上面突起部157が設けられる。下型123の上面には、外周縁全周に亘って、上方に向けて突出する環状の底面突起部156が設けられる。ゴムジャケット143は円筒形状を呈し、その円筒形状の両端部が縮径するように縮められることにより、底面突起部156および上面突起部157の内周側の側面に係合されて上蓋122および下型123に固定されている。
【0075】
ゴムジャケット143の内側には、密閉空間198が設けられ、密閉空間198には圧力媒体が供給される。密閉空間198は、圧力媒体が供給されると、ゴムジャケット143全体を外側に向けて押圧する。内型120の上型122および下型123には、第1の実施形態と同様に、入出管124、125が設けられ、入出管124は、密閉空間198に圧力媒体を供給し、入出管125は密閉空間198から圧力媒体を排出する。なお、上型122と下型123は、支柱128によって接続され、支柱128は、これら上型122と下型123を支持している。
【0076】
ゴムジャケット143(すなわち内型120)の外側には、円筒形に形成された電極材160が設けられる。電極材160は、内型120の外周面(すなわち、ゴムジャケット143)に沿うように設けられ、その両端部が、上型122および下型123の側面に固定されている。電極材160の外周面には、さらに被加熱材130が巻きつけられ、巻きつけられた被加熱材130は第1の実施形態と同様に、略円筒形状を呈する。なお、被加熱材130の上には、第1の実施形態と同様に第1絶縁ブロック161aが載せられる。
【0077】
外型140は、有底の略円筒形状を呈する収納室167と、収納室167の内周面168を加熱するための加温部149を有する。収納室167の底面147は、中央部に略円形の挿通孔146が設けられ、挿通孔146には、内型120から圧力媒体を排出するための接続管185が挿通されている。なお、底面147上には、第1の実施形態と同様に第2および第3の絶縁体ブロック161b、161cが設けられる。
【0078】
加温部149は、外型140の収納室167の外周面を取り巻くように設けられ、加温部149には、熱媒体が供給され、この熱媒体により、収納室167の内周面168が加温される。熱媒体は、外型140に設けられた注入口152から注入されるとともに、排出口153から排出される。
【0079】
図14は、内型120が外型140内に収納されたときの加硫装置を示す。図14に示すように、被加熱材130が装着された内型120が、収納室167内に収納されると、第1の実施形態と同様に第2および第3絶縁ブロック161c上に、内型120が配置される。また、収納室167の内径は、被加熱材130の外径より僅かに大きく、これにより被加熱材130の外周面は収納室167の内周面168に対向される。
【0080】
内型120が、収納室167内に収納されると、内型120および外型140には、それぞれ導線(不図示)が接続される。ここで、電極材160は内型120に電気的に接続されている。したがって、電極材160と外型140の間には、高周波電圧が印加可能になる。
【0081】
また、内型120の入出管124、125には、圧力媒体を供給するために、それぞれ接続管185が接続される。接続管185は、内型120の供給された電流を導通しないように、シリコン等の絶縁体で構成される。
【0082】
次に、本実施形態における加熱・加硫方法について説明する。本実施形態においては、内型120が外型140内に収納された状態において、内型120に設けられた密閉空間198には、圧力媒体が供給され、これにより、ゴムジャケット143が内側に膨張し、電極材160が押圧される。円筒形の電極材160は、外側に向けて押圧されると、後述するように撓み変形し拡径し、被加熱材130の外周面に密着し、被加熱材130を押圧する。これにより、被加熱材130は、電極材160と外型の内周面168に挟まれ、所定圧力が付勢される。また、外型140の加熱部149に熱媒体が供給されるとともに、電極材160、外型140の間に、高周波電圧が印加される。さらに、内型140の密閉空間198に供給される圧力媒体は、例えば水蒸気であって、熱媒体の役割を兼ねている。したがって、被加熱材130は、内周および外周側から、内型120の内周面および加熱部から熱媒体により加熱されるとともに、高周波電圧の印加により加熱される。
【0083】
なお、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に加硫温度までは、高周波誘電および熱媒体で加熱するとともに、被加熱材130が加硫温度に達すると、内型20および電極材60間における高周波電圧の印加が停止され、熱媒体の加熱のみによって加硫温度が維持される。
【0084】
図15は、内型120に設けられた電極材160を示す。図16は、薄板176と固定部177の連接部分を模式的に示す。第2の実施形態における電極材160は、先述した第3の変形例と同様に、複数の薄板176がすだれ状に配設され、その複数の薄板176の集合体により、円筒状の電極材160が形成される。ただし、第3の変形例では、薄板176は周方向において互いに所定の距離空けられていたが、本実施形態では、隣接する薄板176同士が、周方向において重なるように配設される。
【0085】
このように重なるように略同一円周上に配設された薄板176は、それぞれの上端部および下端部がその円周上において環状に形成された固定部177に固定され、すなわち、薄板176は、周方向全体に亘って、固定部277によって連接されている。なお、図14に示すように、各薄板部176は、環状の固定部177の内周面および外周面に交互に固定される。
【0086】
本実施形態においては、電極材160は、電極材160の上端部の内面が上型の側面に固定され、加硫成形装置10に取り付けられる。これにより、電極材160が加硫成形装置100に取り付けられる場合、電極材160の固定部177は、上型及び下型の側面に対向する位置に設けられる一方、各薄板部176はゴムジャケット143に対向する位置に設けられる。したがって、ゴムジャケット143が外側に向けて膨張させられると、固定部177は、ゴムジャケット143により押圧されない一方、各薄板部176はゴムジャケット143により押圧される。すなわち、各薄板部176は、固定部177を支点に外側に向けて撓み変形しつつ変位し、被加熱材130の内周面に密着させられる。なお、電極材160の下端部は、下型の側面に接するが、第1の実施形態と同様に側面に可動可能に支持されていても良いし、支持されていなくても良い。
【0087】
ここで、周方向において互いに重なっていた各薄板部176は、外側に変形しつつ変位すると、各薄板部176は、離間させられる。したがって、各薄板部176は、離間され、その側面同士が接するような状態になる。すなわち、被加熱材130の外周面のほぼ全ての領域は、電極材160によって覆われることとなる。
【0088】
以上の構成により、円筒形状の被加熱材130は、その外周面のほぼ全ての領域が内型電極材160に、外周面のほぼ全ての領域が収納室の内周面に密着させられている。したがって、本実施形態においても、被加熱材30は、高周波誘電加熱により、効率よく加熱される。
【0089】
図17は、第2の実施形態における電極材の変形例を示す。本実施形態においては、各薄板部176は矩形に形成されていたが、本変形例においては、各薄板部176は、その長手方向の中央部に向かうに従って、広くなるように楕円形に形成されても良い。このように形成されると、薄板部176の中央部においては、隣接する薄板部176同士が重なるが、両端部においては、隣接する薄板部176は重ならない。したがって、第2の実施形態においては、各薄板部176の両端部は、環状の固定部177の内周面および外周面に交互に固定されたが、本変形例においては、各薄板部176は、図16に示すように外周面のみに固定させることが可能である。
【0090】
なお、第1および第2の実施形態においては、各薄板部は、それぞれ固定部に接続され、この固定部によって連接されているが、それぞれ外型または内型に直接接続され、この外型および内型によって連接されても良い。この場合、各薄板部は、径方向に押圧されると、外型または内型を支点として、径方向に撓みつつ変形させられる。また、各電極材の薄板部や薄板等のゴムジャケットに沿う部分は、ゴムジャケットに接着されていても良い。
【0091】
さらに、第1の実施形態の内型20は、円柱状に形成され、その外周面27が、円柱面状に形成されるが、外周面27の形状は適宜変更可能であり、例えば、歯付きベルトを成型するために、周方向に凹部と凸部が交互に設けられても良い。すなわち、第1の実施形態の外周面27は円周面であるが、その円周面は正確な円周で構成されなくても良い。また、同様に、第2の実施形態の収納室167の内周面も、円柱面状に形成されるが、この内周面の形状は適宜選択可能であり、例えば、周方向に凹部と凸部が交互に設けられても良い。すなわち、第2の実施形態の外型の内周面168は、円周面であるが、その円周面は正確な円周で構成されなくても良い。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】第1の実施形態に係る加硫成型装置の内型と外型の断面図である。
【図2】被加熱材の模式的な断面図である。
【図3】内型が外型内に挿入されたときの加硫成型装置を示す断面図である。
【図4】第1の実施形態に係る電極材を示す斜視図である。
【図5】第1の変形例に係る電極材を示す斜視図である。
【図6】第2の変形例に係る電極材を示す斜視図である。
【図7】第3の変形例に係る電極材を示す斜視図である。
【図8】第4の変形例に係る電極材を示す斜視図である。
【図9】第5の変形例に係る電極材を示す斜視図である。
【図10】第6の変形例に係る加硫成型装置を示す断面図である。
【図11】第6の変形例に係る電極材を示す斜視図である。
【図12】第7の変形例に係る電極材が、内型に装着されたときの状態を示す斜視図である。
【図13】第2の実施形態に係る加硫成型装置の内型と外型の断面図である。
【図14】内型が外型内に挿入されたときの加硫成型装置を示す断面図である。
【図15】第2の実施形態に係る電極材を示す斜視図である。
【図16】第2の実施形態に係る電極材を上方から見たときの平面図である。
【図17】第2の実施形態に係る電極材の変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0093】
10、100 加硫成型装置
20、120 内型
27 外周面
30、130 被加熱材
40、140 外型
43、143 ゴムジャケット
54、198 密閉空間
60、160 電極材
67、167 収納室
65 電極部
66 鍔部
75 スリット
76 薄板部
77、177 固定部
176、276 薄板(薄板部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱形の被加熱材に、高周波電圧を印加し、高周波誘電加熱をするための電極材であって、
前記被加熱材の周面に対向するように配設されるとともに、前記周面の周方向に分離された可撓性を有する複数の薄板部と、
前記複数の薄板部を、周方向に連接する固定部とを備え、
前記複数の薄板部はそれぞれ、前記周面に沿うように前記被加熱材の径方向に変形可能であることを特徴とする電極材。
【請求項2】
前記各薄板部が、スリットにより、互いに分離されており、
前記スリットは、前記被加熱材の軸方向に平行に延びるスリット、少なくとも一部が前記軸方向に対して斜めに延びるスリット、又は少なくとも一部が屈曲しているスリットのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の電極材。
【請求項3】
隣接する前記薄板部の一部が、周方向において互いに重なるように設けられることを特徴とする請求項1に記載の電極材。
【請求項4】
前記被加熱材の周面が、楕円弧面、円弧面、楕円周面、および円周面のいずれかを含むことを特徴とする請求項1に記載の電極材。
【請求項5】
前記固定部は、前記各薄板部の少なくとも一方の端部を連接することを特徴とする請求項1に記載の電極材。
【請求項6】
前記電極材は、前記複数の薄板部により構成される筒部を有することを特徴とする請求項1に記載の電極材。
【請求項7】
前記筒部の一方の端部に前記固定部が設けられ、前記固定部が前記筒部の全周に亘って前記各薄板部の一方の端部を連接することを特徴とする請求項6に記載の電極材。
【請求項8】
前記被加熱材には、前記薄板部を介して圧力が付勢可能であることを特徴とする請求項1に記載の電極材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−18965(P2007−18965A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−201553(P2005−201553)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】