説明

高周波誘電加熱電極型

【課題】可撓性を有するチューブ同士の高周波誘電加熱溶着加工において、継ぎ目に発生し易い意図しない形状変形を抑え、接合部の柔軟性低下や曲げ応力が加わった際の応力集中を回避することを可能とする。
【解決手段】高周波誘電加熱電極型2の両側面に高周波電界中で発熱及び変形し難い非発熱部位を意図的に成す絶縁体の形状保持部材3を備えることによって、高周波誘電加熱電極間に置かれたチューブ1の発熱部近傍の熱変形を抑制できるので、重なり合ったチューブが加圧されながら電極型2間の高周波交流電界中で発熱し、軟化又は溶融状態となった時の樹脂流動を形状保持部材3で押える。継ぎ目においては、溶融樹脂の流出が抑制されていることから充分に加圧されていて、くびれが発生し難くなっている。また、電極の形状に合わせて滑らかな形状とすることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂製の円筒状部材同士を接合するのに適した高周波誘電加熱電極型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高周波誘電加熱原理を応用した熱可塑性を有するプラスチック部品同士の溶着技術は、シート状の成形品同士の溶着をはじめ広く普及している。誘電体に発熱部位を与える高周波誘電加熱回路を成す導電体は高周波誘電加熱電極と称され、高周波交流電界中で発熱し軟化又は溶融状態となった誘電体が高周波交流電界の印加の停止と共に温度降下する際、誘電体の形状を保持する役割も成す。このため高周波誘電加熱電極形状においては、誘電体の発熱後の出来栄えを考慮し様々な形状が工夫され応用されてきた。これまで比較的大きな接合面積を要するシート状の成形品溶着加工に応用されてきた高周波誘電加熱溶着において、高周波誘電加熱電極形状の工夫は、広範囲な接合面積を均一かつ短時間で加工するものに主眼が置かれてきた。(特許文献1)
加熱加工したい部品そのもの自体を短時間で発熱させることができ、急速な加熱冷却を繰り返すことが可能な高周波誘電加熱溶着装置は、部品同士の接合強度の確保やその生産性に有利な点が多く、小さな部品への応用範囲が拡大されつつある。しかし、薄肉で極小の成形品の部分接合などに供するときには、高周波誘電加熱溶着装置の高周波発振出力を制御することはもとより、接合部位以外への発熱の影響を押さえる工夫が必要である。図1は、内腔を有する薄肉で細長いチューブ同士の接合を目的とした高周波誘電加熱電極との位置関係を示したものであり、1はチューブ、2は高周波誘電加熱電極を表す。図2は、接合加工前のチューブ断面を示し、図3は接合加工後のチューブ断面を示す。良好な接合強度を得る為には、発熱したチューブ同士が加圧され密着しあうことが必要となるが、接合端面の段差やくびれ、高周波誘電加熱電極との接触端面からの溶融樹脂のはみ出し等の意図しない変形が発生しやすいという欠点があった。
【0003】
可撓性を有するチューブ同士の接合加工品において、その接合部分に曲げ応力が加わるとき、接合端面の段差やくびれ、高周波誘電加熱電極との接触端面からの溶融樹脂のはみ出し箇所等は応力集中点となりやすく、チューブの柔軟性低下として割れやキンク、破断強度の低下といった不具合を生ずる問題があった。
【特許文献1】特開2002−210827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高周波誘電加熱溶着加工においてチューブ同士の継ぎ目部分に、割れやキンク、破断強度の低下することのない、高周波誘導加熱電極を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的は、下記(1)に記載の本発明により達成される。
(1)第一のチューブと、第二のチューブとを、その一部を積層接合して接合部を形成するために用いる高周波誘電加熱電極型であって、
前記接合部を配置可能な凹部を有する第一の加熱用電極型および第二の加熱用電極型で構成され、
前記第一の加熱用電極型の前記接合部の長手方向の側部の少なくとも一方または周囲に各チューブの形状を保持する保持部材を設けていることを特徴とする高周波誘電加熱電極型。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高周波誘電加熱溶着加工においてチューブ同士の継ぎ目部分に、割れやキンク、破断強度の低下することのない、高周波誘導加熱電極を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の高周波誘導加熱電極について説明する。
【0008】
本発明にて実施するチューブ接合は、チューブ同士の一部を嵌合させた状態で高周波誘電加熱電極間に配置し積層接合する。接合するチューブ同士の一方は、その内腔にもう一方のチューブが嵌合可能な内径を有するか、または接合部位にあたる端部の内径をあらかじめ拡張する等して嵌合可能な内径を確保する。こうして双方のチューブを嵌合させた部位で積層接合する。
【0009】
本発明を用いた高周波誘電加熱電極型は、接合されるチューブ同士を配置可能な凹部を有し、外周方向から加圧可能な第一及び第二の加熱用電極型で構成されている。更にチューブ接合部の長手方向に面する加熱用電極型の両側面に、各チューブの形状を保持する保持部材が配置され、加熱用電極型による発熱影響を受ける範囲のチューブ変形を抑え込む事を可能としている。
【0010】
加熱用電極型の両側面に配置される接合部近傍の形状保持を目的とする保持部材には、高周波誘電加熱回路上で発熱し難く熱変形しない絶縁体として熱硬化性樹脂やセラミック等を用いるのが好ましく、加工性の良いフェノール樹脂が好適である。
【0011】
図4は、本発明によるチューブ同士の接合において高周波誘電加熱電極型との位置関係を示したものであり、1はチューブ、2は高周波誘電加熱電極型、3は絶縁体の形状保持部材である。図5は本発明によるチューブ接合の1実施例の断面図であって、重なり合ったチューブが加圧されながら電極2間の高周波交流電界中で発熱し、軟化又は溶融状態となった時の樹脂流動を形状保持部材3で押える。継ぎ目においては、溶融樹脂の流出が抑制されていることから充分に加圧されていて、くびれが発生し難くなっている。また、電極の形状に合わせて滑らかな形状とすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0012】
医療用チューブ等の可撓性を有するチューブ同士の接合加工において、充分な接合強度を確保しつつ、柔軟性を低下させること無く、また接着の影響を排除したい用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】高周波誘電加熱接合におけるチューブと高周波誘電加熱電極型との位置関係を示した説明図である。
【図2】従来の接合加工前のチューブ断面を示した説明図である。
【図3】従来の接合加工後のチューブ断面を示した説明図である。
【図4】本発明の高周波誘電加熱電極によるチューブ接合の実施方法を示した説明図である。
【図5】本発明による接合加工後のチューブ断面を示した説明図である。
【符号の説明】
【0014】
1 チューブ
2 高周波誘電加熱電極型
3 絶縁体の形状保持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のチューブと、第二のチューブとを、その一部を積層接合して接合部を形成するために用いる高周波誘電加熱電極型であって、
前記接合部を配置可能な凹部を有する第一の加熱用電極型および第二の加熱用電極型で構成され、
前記第一の加熱用電極型の前記接合部の長手方向の側部の少なくとも一方または周囲に各チューブの形状を保持する保持部材を設けていることを特徴とする高周波誘電加熱電極型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−269197(P2006−269197A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−84054(P2005−84054)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】