高圧処理装置
【課題】 高圧流体あるいは高圧流体と薬剤との混合物を処理流体として被処理体の表面に接触させて被処理体の表面に対して所定の表面処理を施すに際して、その表面処理の均一性およびスループットを向上させることができる高圧処理装置を提供する。
【解決手段】 圧力容器1の天壁12bに開口された送出路101から基板Wの直径サイズ以上の長さを有する帯状の処理流体が、送出路101の長手方向に均一に基板Wの回転中心A0を含みながら回転する基板Wの表面S1に対して垂直入射する。このため、基板表面S1の全体が該基板表面S1に対して垂直入射する処理流体によって洗浄処理される。
【解決手段】 圧力容器1の天壁12bに開口された送出路101から基板Wの直径サイズ以上の長さを有する帯状の処理流体が、送出路101の長手方向に均一に基板Wの回転中心A0を含みながら回転する基板Wの表面S1に対して垂直入射する。このため、基板表面S1の全体が該基板表面S1に対して垂直入射する処理流体によって洗浄処理される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高圧流体あるいは高圧流体と薬剤(添加剤)との混合物を処理流体として、基板などの被処理体の表面に接触させて該被処理体の表面に対して所定の表面処理(現像処理、洗浄処理や乾燥処理など)を施す高圧処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板を圧力容器内に設置し、低粘性、高拡散性の性質を持つ超臨界流体(以下、「SCF」という)を使用した高圧洗浄処理の技術提案が従来よりなされている。このような超臨界流体を基板に供給する装置としては、次のようなものが知られている。例えば、チャンバ内に基板を水平に保持しながら基板の側方の一方に配設されたSCF供給ラインから基板の側方の他方に配設されたSCF排出ラインに向けて薬液入りのSCFを基板表面に沿って平行に流して基板を洗浄処理する装置がある(特許文献1参照)。また、チャンバ内でスピンチャックに保持させた基板を回転させながら、基板の上面中央部にSCFを供給しながら基板を乾燥処理する装置がある(特許文献2参照)。さらに、基板表面に対向配置されるとともに上下に貫通する多数の流通孔が開口された円板状の閉塞板を用いて、チャンバ上部に設けられた流体導入路から導入したSCFを分散させながら、各流通孔を通じて基板表面にSCFを略垂直に供給して洗浄処理や乾燥処理を基板に施す装置がある(特許文献3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−71394号公報(図2)
【特許文献2】特開2004−186526号公報(図3)
【特許文献3】特開2004−146457号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、基板表面上でのSCFの流れが処理プロセスに大きな影響を及ぼすことは良く知られているが、これをさらに詳細に検討すると、SCFの流速のほか、基板表面に対するSCFの流れ方向も処理プロセスの影響因子として挙げられる。また、同じ流速とした場合には、基板に対して平行な流れよりも、基板に対して垂直な流れの方が処理を加速する作用があることが種々の実験結果より明らかとなっている。したがって、このような観点を考慮した上で、基板表面の処理の均一性、チャンバ内におけるSCFの置換性を良好に満足させながらも、スループットを向上させていくことが重要となっている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、基板表面に平行なSCFの流れによって該基板表面を処理させているために、処理速度が遅く、スループットの低下が避けられないという問題があった。
【0006】
また、特許文献2に記載の装置では、基板表面の中心部(上面中央部)のみにSCFが垂直に入射することより、該基板表面の中心部のみが優先的に処理が進行して、基板表面の面内不均一が助長されてしまう。具体的には、基板表面の中心部のみが基板表面に対して垂直なSCFによって処理される一方で、基板表面の周縁部は基板回転に伴う遠心力によって基板表面に対して平行に広がるSCFによって処理される結果、基板表面の処理の均一性を保つことが困難となっていた。
【0007】
また、特許文献3に記載の装置では、円板状の閉塞板に開口された流通孔を通じて基板表面に対して垂直にSCFを入射させているものの、次のような問題が発生していた。すなわち、基板の面積と同程度あるいはそれ以上の面積を有する閉塞板に開口された流通孔から基板表面全体に均一にSCFを噴出させる必要があるが、このような円板(円板自体の形状のほか、流通孔の形状、孔の配設位置等を含む)を精度良く加工することは事実上、困難である。その結果、基板表面に入射するSCFの流速が不均一となり、基板表面の面内不均一が生じることとなる。また、流体導入路から導入されたSCFを基板表面全体に広がるように分散させて流通孔から噴出させているため、各流通孔から基板表面に垂直入射するSCFの流速が小さくなり、結果として、単位面積当たりの処理効率が低下してしまう。
【0008】
さらに、流通孔を通じて基板表面全体に対してSCFを噴出させているので、基板表面の中央部に向けて噴出されたSCFが、それを取り巻くように基板表面の周縁部に向けて噴出されたSCFによって基板外に排出されるのが阻害され、処理後のSCFが基板表面上に滞留してしまうという問題も発生する。
【0009】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、高圧流体あるいは高圧流体と薬剤との混合物を処理流体として被処理体の表面に接触させて被処理体の表面に対して所定の表面処理を施すに際して、その表面処理の均一性およびスループットを向上させることができる高圧処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、高圧流体あるいは高圧流体と薬剤との混合物を処理流体として被処理体の表面に接触させて前記被処理体の表面に対して所定の表面処理を施す高圧処理装置であって、上記目的を達成するため、処理流体を供給する供給手段と、その内部に表面処理を行うための処理チャンバーを有する圧力容器と、処理チャンバー内で被処理体を保持する保持手段と、保持手段により保持されている被処理体を回転させる回転手段と、被処理体の回転中心を含むように被処理体の表面に対向して開口され、供給手段から供給される処理流体を被処理体の表面に対して垂直方向に送出して被処理体の表面に供給する流体送出手段と、流体送出手段から被処理体の表面に供給された処理流体を圧力容器外に排出する流体排出手段とを備え、流体送出手段は、被処理体の径方向に延びるようにスリット状に開口されるとともに、被処理体の径方向において少なくとも被処理体の回転中心から被処理体の端縁までの距離よりも大きなスリット長を有している。
【0011】
このように構成された発明では、被処理体の径方向に少なくとも被処理体の回転中心から被処理体の端縁までの距離よりも長い帯状の処理流体が、被処理体の回転中心を含みながら回転する被処理体の表面に対して垂直方向に供給される。このため、被処理体の表面全体が該被処理体の表面に対して垂直方向に入射する処理流体によって表面処理され、スループットを向上させることができる。しかも、流体送出手段の開口をスリット状にすることでその開口面積は被処理体の表面全体の面積に対してごく一部に限定され、「発明が解決しようとする課題」の項で説明したように、処理流体の流速が小さくなることがなく、比較的大きな処理流体の流速によって処理することができる。その結果、単位面積当たりの処理効率を向上させることができる。さらに、流体送出手段の開口形状がスリット状に限定されているために、流体送出手段に対する加工を容易として加工精度を高めて、被処理体の表面に入射する処理流体の流速を均一にすることができる。したがって、被処理体の回転により該被処理体の表面全体を均一に処理することができる。
【0012】
ここで、被処理体として略円形の基板を処理する場合には、次のようにして基板に処理流体を供給するようにしてもよい。すなわち、基板の径方向に基板の半径サイズ以上のスリット長を有しながら基板の表面に対向する圧力容器の壁に開口された、送出路を介して処理チャンバーに処理流体を導入して基板表面に送出するようにしてもよい。この構成によれば、基板の径方向に基板の半径サイズ以上の長さを有する帯状の処理流体が送出路から送出され、回転する基板の表面に対して垂直に入射する。このため、基板表面全体が該基板表面に対して垂直方向に入射する処理流体によって表面処理され、上述した作用効果を得ることができる。
【0013】
このとき、送出路に供給側分散機構を嵌挿させると、処理チャンバーに導入される処理流体を基板の径方向に分散させて基板表面に送出することができる。これにより、送出路の開口面内において処理流体の偏りが防止され、処理流体を基板の径方向に均一に供給することができる。
【0014】
ここで、送出路のスリット長、つまり基板の径方向(長手方向)における長さは、少なくとも基板の半径サイズ以上であれば、基板表面全体を垂直入射する処理流体で処理することが可能である。このため、送出路のスリット長を基板の半径サイズに限定することで圧力容器の壁に形成される送出路の加工精度を向上させて、送出路から送出される処理流体の流速の一層の均一化を図ることができる。また、送出路の開口面積を低減することで、処理流体の流速を大きくして単位面積当たりの処理効率を向上させることができる。その一方で、送出路のスリット長を基板の直径サイズ以上に形成することで、次のようにして基板表面に供給された処理流体を良好に圧力容器外に排出することができる。
【0015】
送出路のスリット長を基板の直径サイズ以上に形成した場合には、送出路の長手方向と略直交する方向において基板の周端面に対向する圧力容器の両側壁に側方排出路の対を形成して、該側方排出路の対を介して基板表面に供給された処理流体を基板表面に沿って基板の両側から圧力容器外に排出するようにしてもよい。この構成によれば、送出路から基板表面に供給された処理流体は、各側方排出路に至るまで、基板の両側に向けて対称性を保ったまま基板表面に沿って流れていく。これにより、基板表面に供給された処理流体が基板表面上に滞留するのが防止される。
【0016】
さらに、基板の全周を取り囲むようにして排出側分散機構を設けると、基板の両側に流れ出す処理流体は排出側分散機構を介して側方排出路より圧力容器外に排出される。このため、基板表面に沿って基板の両側から流れ出す処理流体を基板の周方向に分散させて側方排出路より排出させることができる。その結果、側方排出路に最も近い基板の端縁から優先的に処理流体が排出されるのが抑制され、基板表面上において処理流体が集中することによって滞留するのが防止される。したがって、基板表面の面内均一性を良好しながら処理流体を排出することができる。
【0017】
また、排出側分散機構を設ける代わりに、複数対の側方排出路を送出路の長手方向に沿って配設するようにしてもよい。このように構成しても、排出側分散機構を配設した場合と同様な効果が得られる。
【0018】
また、基板表面に対向しながら送出部の長手方向と略直交する方向に送出路を挟み込むように送出路の両側に隣接して一対の排出路を設けて、該一対の排出路を介して基板表面に供給された処理流体を基板表面から離れる方向に圧力容器外に排出するようにしてもよい。この構成によれば、送出路からスリット状に基板表面に垂直入射され所定の表面処理を実行した処理流体(処理済み流体)は、送出路を挟み込むようにして配設された一対の排出路より即座に基板表面から離れる方向に排出される。このため、基板表面に供給された処理流体が基板表面上に滞留するのが防止される。
【0019】
このとき、側方導入部より処理チャンバーに処理流体を導入して、送出路の長手方向と略直交する方向であって基板の両側から基板表面に沿って処理流体を基板表面に供給するのが好ましい。この構成によれば、送出路から基板表面に供給された処理流体が基板表面に沿って基板の両側に向けて流れていくのが防止され、一対の排出路から確実に処理流体を排出することができる。
【0020】
また、送出路と該送出路を挟んで配設された一対の排出路とを複合送排出部とした場合に、該複合送排出部を複数個有するように構成してもよい。このように構成することで、基板に対して種々の表面処理を施すことを可能として、装置の汎用性を高めることができる。例えば、複合送排出部を2個配置する場合には、一方の複合送排出部から処理流体として高圧流体と洗浄成分との混合物を送排出する一方で、他方の複合送排出部から処理流体として高圧流体と相溶化剤との混合物を送排出することができる。また、一方の複合送排出部から処理流体として高圧流体と相溶化剤との混合物を送排出する一方で、他方の複合送排出部から処理流体として高圧流体のみを送排出することもできる。
【0021】
なお、本発明における「被処理体の表面」とは、高圧処理を施すべき面を意味しており、被処理体が例えば半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、光ディスク用基板などの各種基板である場合、その基板の両主面のうち回路パターンなどが形成された一方主面に対して高圧処理を施す必要がある場合には、該一方主面が本発明の「被処理体の表面」に相当する。また、他方主面に対して高圧処理を施す必要がある場合には、該他方主面が本発明の「被処理体の表面」に相当する。もちろん、両面実装基板のように両主面に対して高圧処理を施す必要がある場合には、両主面が本発明の「被処理体の表面」に相当する。
【0022】
また、本発明における表面処理とは、例えばレジストが付着した半導体基板のように汚染物質が付着している被処理体から、汚染物質を剥離・除去する洗浄処理が代表例としてあげられる。被処理体としては、半導体基板に限定されず、金属、プラスチック、セラミックス等の各種基材の上に、異種物質の非連続または連続層が形成もしくは残留しているようなものが含まれる。また、洗浄処理に限られず、高圧流体を用いて、被処理体上から不要な物質を除去する処理(例えば、乾燥、現像等)は、全て本発明の高圧処理装置の対象とすることができる。
【0023】
また、本発明において、用いられる高圧流体としては、安全性、価格、超臨界状態にするのが容易、といった点で、二酸化炭素が好ましい。二酸化炭素以外には、水、アンモニア、亜酸化窒素、エタノール等も使用可能である。高圧流体を用いるのは、拡散係数が大きく、溶解した汚染物質を媒体中に分散することができるためであり、より高圧にして超臨界流体にした場合には、気体と液体の中間の性質を有するようになって微細なパターン部分にもより一層浸透することができるようになるためである。また、高圧流体の密度は、液体に近く、気体に比べて遥かに大量の添加剤(薬剤)を含むことができる。
【0024】
ここで、本発明における高圧流体とは、1MPa以上の圧力の流体である。好ましく用いることのできる高圧流体は、高密度、高溶解性、低粘度、高拡散性の性質が認められる流体であり、さらに好ましいものは超臨界状態または亜臨界状態の流体である。二酸化炭素を超臨界流体とするには31゜C、7.1MPa以上とすればよい。洗浄並びに洗浄後のリンス工程や乾燥・現像工程等は、5〜30MPaの亜臨界(高圧流体)または超臨界流体を用いることが好ましく、7.1〜30MPa下でこれらの処理を行うことがより好ましい。
【0025】
また、高圧流体と薬剤との混合物を処理流体として用いる場合において、薬剤としての洗浄成分が高圧流体に対して溶解度が低い場合には、この洗浄成分を高圧流体に溶解もしくは均一分散させる助剤となり得る相溶化剤を用いることが好ましい。特に、二酸化炭素の超臨界流体に対し、薬剤が水分を含む場合には、薬剤の難溶化が顕著となるケースもある。相溶化剤は、複数の成分を混合した薬剤に関し、用いる高圧流体に対し溶解性が悪い場合には、この薬剤と高圧流体との相溶性を改善する。この相溶化剤は、洗浄工程終了後のリンス工程で、付着・残留した薬剤を除去する作用も有している。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、被処理体の径方向に少なくとも被処理体の回転中心から被処理体の端縁までの距離よりも長い帯状の処理流体が、被処理体の回転中心を含みながら回転する被処理体の表面に対して垂直方向に供給される。このため、被処理体の表面全体が垂直方向に入射する処理流体によって表面処理され、スループットを向上させることができる。しかも、流体送出手段の開口形状がスリット状に限定されているために、比較的大きな処理流体の流速によって処理することができ、処理効率を向上させることができる。さらに、流体送出手段に対する加工精度を高めることができ、被処理体の表面に入射する処理流体の流速を均一にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る高圧処理装置の第1実施形態の全体構成を示す図である。図2は、図1の高圧処理装置における圧力容器およびその内部構造を示す図である。また、図3は、図2に示す圧力容器のA−A’面を上方より見た上面図である。この高圧処理装置は、圧力容器1の内部に形成される処理チャンバー11に超臨界二酸化炭素(高圧流体)または超臨界二酸化炭素と薬剤との混合物を処理流体として導入し、その処理チャンバー11において保持されている略円形の半導体ウエハなどの基板(被処理体)Wに対して所定の洗浄および乾燥処理を行う装置である。以下、その構成および動作について詳細に説明する。
【0028】
この高圧処理装置では、超臨界二酸化炭素を繰り返して循環使用する一方、処理チャンバー11を大気圧に開放するなどによって系内の二酸化炭素が減少すると、ボンベ2から液体状の二酸化炭素を補給するように構成されている。このボンベ2は凝縮器などからなる液化部3と接続されており、ボンベ2内に二酸化炭素が5〜6MPaの圧力で液体状流体として貯留されており、この液体二酸化炭素が図示しないポンプによりボンベ2より取り出され液化部3を介して系内に補給される。
【0029】
この液化部3の出力側には加圧ポンプなどの昇圧器4が接続されており、この昇圧器4で液化二酸化炭素を加圧して高圧液化二酸化炭素を得るとともに、高圧液化二酸化炭素を加熱器5および高圧弁V1を介して混合部6に圧送する。このように圧送される高圧液化二酸化炭素は加熱器5で加熱されて表面処理(洗浄処理および乾燥処理)に適した温度にまで加熱され、超臨界二酸化炭素となり、高圧弁V1を介して混合部6に送られる。このように、ボンベ2、液化部3、昇圧器4および加熱器5が、高圧流体として超臨界二酸化炭素を供給する高圧流体供給ユニット10として機能している。
【0030】
この混合部6には、基板Wの表面処理に適した薬剤を貯蔵・供給する2種類の薬剤供給部、つまり第1薬剤供給部7aおよび第2薬剤供給部7bがそれぞれ高圧弁V3およびV4を介して接続されている。このため、高圧弁V3、V4の開閉制御によって第1薬剤供給部7aから第1薬剤が、また第2薬剤供給部7bから第2薬剤が開閉制御に応じた量だけ混合部6にそれぞれ供給されて超臨界二酸化炭素に対する薬剤の混合量が調整される。このように、この実施形態では、処理流体として「超臨界二酸化炭素」、「超臨界二酸化炭素+第1薬剤」、「超臨界二酸化炭素+第2薬剤」および「超臨界二酸化炭素+第1薬剤+第2薬剤」を選択的に調製して圧力容器1の処理チャンバー11に供給可能となっており、高圧流体供給ユニット10と混合部6とが、処理流体を供給する「供給手段」として機能する。そして、表面処理の内容に応じて適宜高圧弁V3、V4を装置全体を制御部(図示書略)により開閉制御することによって処理流体の種類を選択するとともに、薬剤濃度をコントロールすることができるように構成されている。
【0031】
図2に示すように、圧力容器1は、側壁12aと天壁12bとが一体に形成された上部材12と、底壁13aを構成する下部材13とを備え、上部材12と下部材13とがシール材14を介して密着して互いを保持するように構成されている。上部材12の内部には基板Wを収容可能な円筒状の空間が形成されている。また、下部材13を固定した状態で上部材12を上下動させることにより、上部材12を下部材13から上下方向に接離し得るように構成されている。これにより、圧力容器1は開閉自在に構成されており、閉じられた際に処理チャンバー11内が気密状態となる。そして、圧力容器1が開かれた際に未処理の基板Wを処理チャンバー11内に位置するスピンチャック15に載置して(基板Wの搬入)、圧力容器1を閉じて後述するようにして表面処理を施す一方、表面処理後に圧力容器1を開いて処理済の基板Wを搬出することができるように構成されている。
【0032】
このスピンチャック15は処理チャンバー11内に配置されており、本発明の「保持手段」として基板Wを水平姿勢で回転自在に保持する。詳しくは、スピンチャック15は、その上面に設けられた吸着口(図示省略)により表面処理(高圧処理)を施すべき表面(一方主面)S1を上向きにした状態で基板Wの下面(他方主面S2)の中央部を吸着保持可能となっている。また、スピンチャック15には、モータ16(回転手段)によって回転される回転軸17が連結されており、モータ16が回転駆動されるのに応じてスピンチャック15およびそれによって保持されている基板Wが一体的に処理チャンバー11内で回転軸線J回りに回転する。回転軸17と圧力容器1の底壁13aに設けられた孔との間にはシール材18が配設され、回転軸17を回転自在としながら処理チャンバー11を外部雰囲気に対して気密状態としている。なお、スピンチャック15の基板Wの保持は吸着に限られるものではなく、メカ的に保持する構成でもよい。
【0033】
図4は、図2に示す圧力容器の上部材を紙面右方向から見た断面図である。圧力容器1の上面中央部には送出路101(流体送出手段)が設けられ、圧力容器1(上部材12)の天壁12bにスリット状に開口されている。具体的には、送出路101はスピンチャック15に保持された基板Wの回転中心A0(スピンチャック15の回転軸線Jに略一致する)を含みながら基板表面S1に対向して、基板Wの径方向に延びるように開口されている。この送出路101は基板Wの径方向に基板Wの直径サイズ以上のスリット長を有している。一方で、基板Wの径方向と直交する方向において送出路101のスリット幅は3mm以下、望ましくは1mm以下に形成される。例えば300mmの基板径に合わせてスリット長を300mm強とした場合に、スリット幅を1mm以下に設定することにより、おおよそ洗浄処理に合致した流体速度で処理流体を噴出させることができる。
【0034】
送出路101の上端中央部は、回転軸線J上に配設された流体導入ポート102が接続されており、流体導入ポート102を介して送出路101と混合部6とが連通されている。これにより、混合部6から送られてくる処理流体は送出路101を介して処理チャンバー11に導入され、基板表面S1に向けて送出される。
【0035】
送出路101の下方端側、つまり処理チャンバー11への出口の先には、流体分散機構103(送出側分散機構)が送出路101のスリット状の開口に合わせて嵌挿されている。流体分散機構103は、上下方向に貫通する多数の細孔が形成された板状部材からなり、図4に示すように、流体導入ポート102から導入された処理流体は、流体分散機構103を経由することにより、送出路101の長手方向(紙面の左右方向)に均一に分散されながら送出路101より噴出される。なお、このような流体分散機構103として、パンチング板または多孔質セラミックス板などが用いられる。
【0036】
また、圧力容器1の底壁13aには、混合部6から送られてくる処理流体を処理チャンバー11内に導入する下方側導入路104が形成されている。下方側導入路104から導入された処理流体は基板Wの下面周縁部、つまりスピンチャック15によって保持されていない基板Wの下面S2の露出部分に向けて供給される。これにより、露出部分に滞留する処理済み流体を下方側導入路104から導入される新たな処理流体によって置換させることで、処理済み流体の滞留を防止している。
【0037】
圧力容器1の側面には側方排出路105が設けられている。この側方排出路105は、送出路101の長手方向と略直交する方向において、基板Wの周端面に対向する圧力容器1(上部材12)の両側壁12aにそれぞれ設けられることで、対をなして形成されている。詳しくは、図3に示すように、平面視において一対の側方排出路105,105が送出路101を中心としてその両側に略対称形状に形成されている。
【0038】
さらに、圧力容器1の側壁12aには、流体分散機構106(排出側分散機構)が基板Wの全周を取り囲むように配設されている。流体分散機構106は、基板Wの径方向に貫通する多数の細孔が形成された円環部材からなり、送出路101と下方側導入路104より基板表面S1に供給され基板Wの両側に流れ出す処理流体は流体分散機構106を経由して一対の側方排出路105,105より圧力容器1外に排出される。このため、各々の側方排出路105に最も近い基板Wの端縁から優先的に処理流体が排出(ショートパス)されるのが抑制される。なお、このような流体分散機構106として、パンチング板または多孔質セラミックス板などが用いられる。
【0039】
また、圧力容器1の底壁13aには、回転軸17の回転によりパーティクルが発生するおそれがあることから、圧力チャンバー11内にパーティクルが入り込まないように、回転軸17と底壁13a(底壁に設けられた孔の内壁)との隙間から、圧力容器1外へ排気するように構成されている。
【0040】
一対の側方排出路105,105は高圧弁V2を介して減圧器などからなるガス化部8が接続されており、減圧処理によって一対の側方排出路105,105を介して処理チャンバー11から排気される流体(処理流体+汚染物質など)を完全にガス化して分離回収部9に送り込む。また、この分離回収部9では、二酸化炭素を気体成分とし、汚染物質と薬剤の混合物を液体成分として気液分離する。ここで、汚染物質は固体として析出し、薬剤の中に混入して分離されることもある。また、分離回収部9としては、単蒸留、蒸留(精留)、フラッシュ分離等の気液分離を行うことができる種々の装置や、遠心分解機などを使用することができる。
【0041】
このように、この実施形態では、ガス化部8を用いて処理チャンバー11から排気される流体(処理流体+汚染物質など)を分離回収部9に送り込む前に予め完全にガス化しているが、その理由は、減圧された二酸化炭素等の流体が温度との関係で気体状流体(炭酸ガス)と液体状流体(超臨界二酸化炭素中に溶解していた薬剤が相分離で析出したもの)との混合物となるため、分離回収部9での分離効率および二酸化炭素のリサイクル効率を向上させる観点からである。
【0042】
なお、分離回収部9で分離された薬剤、即ち汚染物質を含む洗浄成分や相溶化剤からなる液体(または固体)成分は、分離回収部9から排出され、必要に応じて後処理される。一方、気体成分の二酸化炭素については、液化部3に送り込んで再利用に供する。
【0043】
次に、上記のように構成された高圧処理装置の洗浄動作について説明する。この高圧処理装置は、前工程、例えばアッシングやドライエッチングによって不要な残渣やレジストが表面に残留している基板Wを受け取ると、次のようにして洗浄処理(洗浄工程+リンス工程)を実行する。圧力容器1が開かれた状態で未処理の基板Wが搬入され、表面処理(高圧処理)を施すべき表面S1を上向きにした状態でスピンチャック15に載置されると、スピンチャック15により基板Wは吸着保持されるとともに、圧力容器1が閉じられる。
【0044】
この洗浄工程では、供給される液化二酸化炭素を昇圧器4で加圧して高圧液化二酸化炭素を形成し、さらにその高圧液化二酸化炭素を加熱器5で加熱して超臨界二酸化炭素を形成しつつ、高圧弁V1を開いて混合部6に送り込む。また、薬剤用の高圧弁V3を開いて第1薬剤供給部7aを供給モードとし、第1薬剤供給部7aから第1薬剤を混合部6へと圧送する。これによって、第1薬剤が超臨界二酸化炭素に混合されて洗浄処理に適した処理流体が調製される。ここで、第1薬剤は第3アミン類やフッ化物類等の洗浄作用のある薬剤である。具体例としては、第4級アンモニウムフッ化物、アルキルアミン、モノエタノールアミン等のアルカノールアミン、ヒドロキシルアミン(NH2OH)およびフッ化アンモニウム(NH4F)等が挙げられる。この洗浄成分の含有量は、所望の効果が得られるように適宜調整すればよい。
【0045】
そして、上記の洗浄成分は、通常、高圧流体に溶けにくいので、これらの洗浄成分を二酸化炭素に溶解もしくは均一分散させる助剤となる相溶化剤を添加させるのが好ましい。 相溶化剤としては、洗浄成分や不要物質を高圧流体に相溶化させ得るものであれば特に限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類や、ジメチルスルホキシド等のアルキルスルホキシドが挙げられる。
【0046】
そして、混合部6で調製された処理流体が圧力容器1の上面に設けられた送出路101を介して処理チャンバー11に導入され、スピンチャック15により保持されている基板Wの表面S1に向けて噴出される。また、下方側導入路104より処理流体が処理チャンバー11に導入され、基板Wの下面周縁部に向けて供給される。このとき、処理流体の供給と同時に、あるいは前後してモータ16が回転駆動させることで、基板Wを回転させる。
【0047】
図5は、基板表面上における処理流体の流れを模式的に表した図である。送出路101より送出される処理流体は、基板Wの径方向において基板Wの直径サイズ以上の長さを有する帯状の処理流体として、基板Wの回転中心A0を含みながら基板表面S1に対して垂直に入射する。その結果、処理流体が基板表面S1に接触して所定の洗浄処理が実行される。そして、基板表面S1に供給された処理流体は基板Wの両側に向けて対称性を保ったまま基板表面S1に沿って平行に流れ、側方排出路105,105より各々排出される。このため、基板Wの回転動作と合わせて、基板表面S1に対する処理流体が流れる方向という観点から処理流体の流れの面内均一化が図られている。これにより、基板表面S1に供給された処理流体が不必要に基板表面上に滞留するのが防止される。
【0048】
そして、回転する基板Wに帯状の処理流体が次々と垂直入射することによって、基板表面S1の全体が基板表面S1に対して垂直入射する処理流体によって所定の洗浄処理が実行される。
【0049】
この洗浄工程によって基板Wに付着していた汚染物質は、処理チャンバー11内の処理流体(超臨界二酸化炭素+第1薬剤)に溶解することとなる。ここで、例えば第1薬剤を洗浄成分と相溶化剤と設定すると、汚染物質は洗浄成分および相溶化剤の働きにより超臨界二酸化炭素に溶解しているので、処理チャンバー11に超臨界二酸化炭素のみを流通させると、溶解していた汚染物質が析出する可能性があるため、洗浄工程後に超臨界二酸化炭素と相溶化剤からなる第1リンス用処理流体による第1リンス工程と、超臨界二酸化炭素のみからなる第2リンス用処理流体による第2リンス工程とをこの順序で行うのが望ましい。
【0050】
そこで、この実施形態では、第1薬剤の供給開始、つまり洗浄工程の開始から所定時間経過すると、高圧弁V3を閉じて第1薬剤供給部7aを供給停止モードとし、第1薬剤供給部7aからの第1薬剤(洗浄成分)の混合部6へと圧送を停止して高圧弁V4を開いて第2薬剤供給部7bからの第2薬剤(相溶化剤)の混合部6への圧送を開始し混合部6において超臨界二酸化炭素と相溶化剤とを混合させて第1リンス用処理流体を調製し、処理チャンバー11に供給する。これによって第1リンス用処理流体が処理チャンバー11内を流通して処理チャンバー11内の洗浄成分および汚染物質が次第に少なくなっていき、最終的には第1リンス用処理流体(超臨界二酸化炭素+相溶化剤)で満たされることとなる。相溶化剤としては、第1薬剤に添加したものと同じものを使用しても構わないし、異なるものも使用できる。
【0051】
こうして、第1リンス工程が完了すると、続いて第2リンス工程を行う。この第2リンス工程では、さらに高圧弁V4を閉じて第2薬剤供給部7bを供給停止モードとし、第2薬剤供給部7bからの第2薬剤(相溶化剤)の混合部6への圧送を停止して超臨界二酸化炭素のみを第2リンス用処理流体として処理チャンバー11に供給する。これによって第2リンス用処理流体が処理チャンバー11内を流通して処理チャンバー11が第2リンス用処理流体(超臨界二酸化炭素)で満たされることとなる。
【0052】
高圧弁V2は、前記洗浄工程、第1リンス工程、第2リンス工程を通して常時開状態とされる。具体的には、処理中の処理チャンバー11の内圧力をモニターしながら常に所定の圧力が保たれるように開度が調節されることで、処理チャンバー11の内圧力が制御される。
【0053】
これに続いて、高圧弁V1を閉じて減圧し、処理チャンバー11が大気圧に戻ると、圧力容器1を開いて処理済みの基板Wを搬出する。これにより、一連の処理(洗浄工程+リンス工程)が完了する。そして、次の未処理基板が搬送されてくると、上記動作が繰り返されていく。
【0054】
以上のように、この実施形態によれば、圧力容器1の壁(天壁12b)に形成された送出路101より、基板Wの直径サイズ以上の長さを有する帯状の処理流体を基板Wの回転中心A0を含みながら回転する基板Wの表面S1に対して垂直に入射させている。このため、基板表面S1の全体が該基板表面S1に対して垂直入射する処理流体によって洗浄処理され、処理時間を短縮することができる。しかも、送出路101の開口がスリット状とされ、その開口面積が基板表面S1の全面積のごく一部に限定されているため、従来技術に比べて処理流体の流速を高めることができる。その結果、単位面積当たりの処理効率を向上させることができる。さらに、送出路101の開口形状がスリット状に限定されていることから、圧力容器1の壁に形成される送出路101の加工を容易として加工精度を高めることができる。これによって、基板表面S1に入射する処理流体の流速を均一にすることができる。その結果、基板Wが回転されることで基板表面S1の全体を均一に処理することができる。
【0055】
また、この実施形態によれば、送出路101に流体分散機構103が嵌挿されているので、送出路101の開口面内において処理流体の偏りが防止され、処理流体を基板Wの径方向に帯状にして均一に供給することができる。
【0056】
また、この実施形態によれば、送出路101の長手方向と略直交する方向において基板Wの周端面に対向する圧力容器1の両側壁12aに一対の側方排出路105,105を形成しているので、基板表面S1に供給された処理流体は、基板Wの両側に向けて対称性を保ったまま排出され、基板表面S1上に処理流体が滞留するのが防止される。
【0057】
さらに、基板Wの全周を取り囲んで流体分散機構106を設けているので、基板表面S1上において処理流体が集中することによって滞留するのが防止され、基板表面S1の面内均一性を良好しながら処理流体を排出することができる。
【0058】
<第2実施形態>
図6は、本発明に係る高圧処理装置の第2実施形態で採用されている圧力容器およびその内部構造の要部を示す図である。また、図7は、図6に示す圧力容器のB−B’面を上方より見た概略図である。また、図8は、第2実施形態で採用されている圧力容器へ処理流体を供給する一部配管の構成図である。この第2実施形態は、基板Wの径方向に延びるスリット状の送出路201から処理流体を基板表面S1に向けて送出している点は、第1実施形態と共通しているが、処理流体の排出方法および処理流体をさらに基板Wの側方から追加的に供給している点が大きく相違している。以下、第1実施形態との相違点を中心に第2実施形態の構成および動作について説明する。
【0059】
この第2実施形態では、圧力容器1Aの天壁22bに、基板表面S1に対向して基板Wの径方向に延びるようにスリット状に開口された開口部が基板Wの径方向と直交する方向に3つ並んで形成されている。このうち送出路201は基板Wの回転中心A0を含みながら基板表面S1に対向して、基板Wの径方向に延びるように開口され、基板Wの直径サイズ以上のスリット長を有している。そして、送出路201を挟み込むように送出路201の両側に隣接して一対の排出路202,202が送出路201の長手方向に沿って形成されている。
【0060】
また、圧力容器1Aの側壁22aには処理チャンバー11Aに処理流体を導入する側方導入部203が形成されている。この側方導入部203は処理チャンバー11Aに処理流体を導入して、基板Wの両側から基板表面S1に供給している。詳しくは、送出路202の長手方向と略直交する方向であって基板Wの両側から、基板表面S1に沿って基板Wの直径にわたって処理流体を供給している。なお、この実施形態では、処理流体として薬剤を含まない超臨界二酸化炭素のみが側方導入部203より導入される。
【0061】
この高圧処理装置では、処理チャンバー11Aへ処理流体を圧送する配管が加熱器5の下流側で分岐される。一方の分岐配管19Aは送出路201に高圧弁V1Aを介して接続され、他方の分岐配管19Bは側方導入部203に高圧弁V1Bを介して接続される。一方の分岐配管19Aには高圧弁V3を介して第1薬剤供給部7aが接続されるとともに、高圧弁V4Aを介して第2薬剤供給部7bが接続される。他方の分岐配管19Bには高圧弁V4Bを介して第2薬剤供給部7bが接続される。また、一対の排出路202,202の上方端は高圧弁V2を介して減圧器などからなるガス化部8に接続され、減圧処理によって一対の排出路202,202を介して処理チャンバー11Aから流体(処理流体+汚染物質など)を排気する。なお、加熱器5の上流側およびガス化部8の下流側に繋がる構成は第1実施形態と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0062】
このように構成された高圧処理装置においては、まず洗浄工程では高圧弁V1A、V1B、V3が開いて、送出路201より帯状に処理流体(超臨界二酸化炭素と洗浄成分と添加剤としての相溶化剤とを含む混合物)が送出され、回転する基板Wの表面S1に垂直に入射する。同時に側方導入部203からは超臨界二酸化炭素のみの処理流体が導入される。これと同時に高圧弁V2を開き、処理流体(処理済み流体)は送出路201の両側に隣接して配設された一対の排出路202より即座に基板表面S1の上方に排出される。また、側方導入部203より基板Wの両側から超臨界二酸化炭素のみの処理流体が基板表面S1に供給されることで、処理済み流体が圧力容器1Aの側壁22aに向けて流れ出すのが防止される。高圧弁V2は第1実施形態と同様に開度が制御されることで、処理チャンバー11Aの内圧力が一定に保持される。
【0063】
そして、所定の洗浄処理が実行された後、第1リンス工程を行う。第1リンス工程は、高圧弁V1A、V1B、V4A、V2を開き、高圧弁V3とV4Bを閉じることで送出路201より処理流体(超臨界二酸化炭素と相溶化剤とを含む混合物)が送出され、同時に側方導入部203からは超臨界二酸化炭素のみの処理流体が導入される。なお、第1リンス工程において、リンス効果を高めるために高圧弁V4Bを開にして、側方導入部203からも送出路201と同じ処理流体を供給するようにしてもよい。
【0064】
具体的には、送出路201から供給された洗浄成分が基板表面S1に残留付着するような場合では、側方導入部203から超臨界二酸化炭素と相溶化剤とを含む混合物を処理流体として基板表面S1に供給するようにしてもよい。これにより、基板表面S1に残留付着した洗浄成分の洗い流しを促進させることができる。
【0065】
こうして、第1リンス工程が完了すると、続いて第2リンス工程を行う。この第2リンス工程では、高圧弁V3、V4A、V4Bを閉じ、高圧弁V1A、V1B、V2を開き、側方導入部203と送出路201とも超臨界二酸化炭素のみの処理流体が導入されると同時に、一対の排出路202より即座に基板表面S1の上方に排出される。
【0066】
これに続いて、高圧弁V1A、V1Bを閉じて減圧し、処理チャンバー11Aが大気圧に戻ると、圧力容器1Aを開いて処理済みの基板Wを搬出する。
【0067】
以上のように、この実施形態によれば、送出路201から基板Wの直径サイズ以上の長さを有する帯状の処理流体を回転する基板Wの表面S1に対して垂直に入射させているので、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0068】
また、この実施形態によれば、送出路201を挟み込むように配設された一対の排出路202,202より基板表面S1に供給された処理流体を即座に基板表面S1から上方に離れる方向に排出しているので処理流体(処理済み流体)が基板表面S1上に滞留するのが防止される。さらに、側方導入部203より基板Wの両側から処理流体を供給することにより、処理済み流体が基板Wの両側に流れていくことがなく、一対の排出路202,202より確実に排出される。
【0069】
また、この実施形態によれば、送出路201から洗浄成分を含む処理流体を基板表面S1に供給供給しているので、薬液反応(洗浄成分による処理反応)に寄与する処理流体が、反応速度の大きな基板表面S1に対して垂直方向に入射する処理流体に限定されるので、洗浄成分の使用効率を向上させることができる。
【0070】
上記第2実施形態の前記洗浄工程では、側方導入部203から超臨界二酸化炭素のみの処理流体が導入されるが、高圧弁V4Bを開いて超臨界二酸化炭素に相溶化剤を含む処理流体を導入するようにしてもよい。
【0071】
<その他>
また、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記第1実施形態では、基板Wの全周を取り囲むように流体分散機構106を配設して、基板表面S1の面内均一性を良好しながら処理流体を排出しているが、処理流体の排出方法はこれに限定されない。例えば、図9に示すように、圧力容器1の側壁12aに送出路101の長手方向に沿って複数対の側方排出路105,105を設けるようにしてもよい(第3実施形態)。このように構成しても、流体分散機構106を配設した場合と同様な効果が得られる。
【0072】
また、処理流体の排出方向は、例えば図10に示すように、圧力容器1の両側壁12aにそれぞれ、送出路101の長手方向に沿って同じ長さの流体分散機構106A,106Aを配設して、各流体分散機構106A,106Aに対応するそれぞれ1つの側方排出路105,105を設けるようにしてもよい(第4実施形態)。
【0073】
また、上記第2実施形態では、送出路201と送出路201を挟んで配設された一対の排出路202,202(以下、これらを合わせて「複合送排出部」と称する)は、基板Wの直径サイズ以上のスリット長を有しているが、これに限定されず、図11に示すように、複合送排出部210のスリット長を基板Wの半径サイズとしてもよい(第5実施形態)。このように、複合送排出部210のスリット長を基板Wの半径サイズに限定することで送出路201の加工精度を向上させて、送出路201から送出される処理流体の流速の一層の均一化を図ることができる。また、送出路201の開口面積を低減することで、処理流体の流速を大きくして単位面積当たりの処理効率を向上させることができる。同様にして、上記第1実施形態においても、側方排出路105に至るまでに基板表面S1に沿って平行に流れる処理流体の平行流がプロセスに大きな影響を与えない場合には、送出路101のスリット長を基板Wの半径サイズとしてもよい。
【0074】
また、複合送排出部のスリット長を基板Wの半径サイズとした場合には、複合送排出部を複数個配置するようにしてもよい。例えば、図12に示すように、2つの複合送排出部211,212を、基板Wの径方向において複合送排出部の長手方向に沿って一列に並べて配置するようにしてもよい(第6実施形態)。このように構成することで、基板Wに対して種々の表面処理を施すことを可能として、装置の汎用性を高めることができる。例えば、一方の複合送排出部211から処理流体として超臨界二酸化炭素と洗浄成分との混合物を送排出する一方で、他方の複合送排出部212から処理流体として超臨界二酸化炭素と相溶化剤との混合物を送排出することができる。また、一方の複合送排出部211から処理流体として超臨界二酸化炭素と相溶化剤との混合物を送排出する一方で、他方の複合送排出部212から処理流体として高圧流体のみを送排出することもできる。
【0075】
また、2つの複合送排出部211,212を長手方向に沿って一列に配置する場合に限らず、図13に示すように、基板Wの回転中心A0を中心として対称としながらも、複合送排出部の長手方向と直交する方向において互いに違いに配置するようにしてもよい(第7実施形態)。このように、複数個の複合送排出部を設けることにより、プロセスの設計自由度を飛躍的に高めることができる。
【0076】
また、上記実施形態では、送出路101,201は基板表面S1と対向する圧力容器1の壁(天壁12b)にスリット状に開口されているが、図14に示すように、圧力容器1の壁にスリットノズル107をノズル開口が基板表面S1に対向するように別に取り付けるように構成してもよい(第8実施形態)。この場合、「スリットノズル」が本発明の「流体送出手段」として機能する。
【0077】
また、上記実施形態では、2種類の薬剤を超臨界二酸化炭素(高圧流体)に混合させて処理流体を調製しているが、薬剤の種類や数などについては任意である。また、薬剤を使用しないで表面処理を行う場合には、薬剤供給部が不要となる。
【0078】
また、上記実施形態では、表面処理として洗浄処理を実行しているが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、例えば現像工程と洗浄・リンス工程が施された基板を受取り、乾燥処理のみを行う装置や別の表面処理(現像処理など)を実行する高圧処理装置などにも本発明を適用することができる。この場合でも、湿式処理後に回転する基板Wの表面S1に処理流体(超臨界二酸化炭素)が帯状に垂直入射することでプロセスを加速させ効率良く乾燥処理を実行することができる。
【0079】
また、上記実施形態では、基板Wの両主面のうち上方向に向いた一方主面S1を本発明の「表面」として所定の表面処理を施しているが、基板Wの他方主面に対して表面処理を施す場合には、他方主面S2を上方向に向けた状態で基板Wを保持するようにすればよい。また、基板Wの両主面に対して表面処理を施す必要がある場合には、各主面S1,S2に対向してスリット状の開口を配設すればよい。このように、基板Wの他方主面S2および両主面に対して表面処理を行う場合には、基板Wの端縁部をメカ的に保持するようにすればよい。
【0080】
また、上記実施形態では、「被処理体」として略円形の基板Wを処理する場合について説明したが、基板Wの形状はこれに限定されず、例えば角型等であってもよい。この場合、「流体送出手段」は、基板Wの径方向に延びるようにスリット状に開口されるとともに、基板Wの径方向において少なくとも基板Wの回転中心から基板Wの端縁までの距離よりも大きなスリット長を有していればよい。このように構成することで、上記実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0081】
また、上記実施形態では、加熱器5は混合部6よりも1次側に配置されるように図示しているが、もちろん混合部6から圧力容器1の途上に更に加熱器を追加して設置するようにしてもよい。例えば混合部6から圧力容器1までの距離が長く、保温が困難で圧力容器1の処理チャンバー11に至った時点でプロセス温度が達成できない場合に有効である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
この発明は、高圧流体あるいは高圧流体と薬剤との混合物を処理流体として用いて、半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板、PDP(プラズマ・ディスプレイ・パネル)用基板、あるいは磁気ディスク用のガラス基板やセラミック基板などを含む被処理体の表面に対して所定の表面処理(現像処理、洗浄処理や乾燥処理など)を施す高圧処理装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明に係る高圧処理装置の第1実施形態の全体構成を示す図である。
【図2】図1の高圧処理装置における圧力容器およびその内部構造を示す図である。
【図3】図2に示す圧力容器のA−A’面を上方より見た上面図である。
【図4】図2に示す圧力容器の上部材を紙面右方向から見た断面図である。
【図5】基板表面上における処理流体の流れを模式的に表した図である。
【図6】本発明に係る高圧処理装置の第2実施形態で採用されている圧力容器およびその内部構造の要部を示す図である。
【図7】図6に示す圧力容器のB−B’面を上方より見た概略図である。
【図8】第2実施形態で採用されている圧力容器へ処理流体を供給する一部配管の構成図である。
【図9】本発明に係る高圧処理装置の第3実施形態で採用されている圧力容器を示す図である。
【図10】本発明に係る高圧処理装置の第4実施形態を示す図である。
【図11】本発明に係る高圧処理装置の第5実施形態を示す図である。
【図12】本発明に係る高圧処理装置の第6実施形態を示す図である。
【図13】本発明に係る高圧処理装置の第7実施形態を示す図である。
【図14】本発明に係る高圧処理装置の第8実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0084】
1,1A…圧力容器
6…混合部(供給手段)
10…高圧流体供給ユニット(供給手段)
11,11A…処理チャンバー
12a,22a…圧力容器の側壁
12b,22b…圧力容器の天壁(基板表面に対向する圧力容器の壁)
15…スピンチャック(保持手段)
16…モータ(回転手段)
101,201…送出路(流体送出手段)
103…流体分散機構(送出側分散機構)
105…一対の側方排出路(流体排出手段)
106…流体分散機構(排出側分散機構)
107…スリットノズル(流体送出手段)
202…一対の排出路(流体排出手段)
203…側方導入部
210,211,212…複合送排出部
S1,S2…基板表面
W…基板(被処理体)
【技術分野】
【0001】
この発明は、高圧流体あるいは高圧流体と薬剤(添加剤)との混合物を処理流体として、基板などの被処理体の表面に接触させて該被処理体の表面に対して所定の表面処理(現像処理、洗浄処理や乾燥処理など)を施す高圧処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板を圧力容器内に設置し、低粘性、高拡散性の性質を持つ超臨界流体(以下、「SCF」という)を使用した高圧洗浄処理の技術提案が従来よりなされている。このような超臨界流体を基板に供給する装置としては、次のようなものが知られている。例えば、チャンバ内に基板を水平に保持しながら基板の側方の一方に配設されたSCF供給ラインから基板の側方の他方に配設されたSCF排出ラインに向けて薬液入りのSCFを基板表面に沿って平行に流して基板を洗浄処理する装置がある(特許文献1参照)。また、チャンバ内でスピンチャックに保持させた基板を回転させながら、基板の上面中央部にSCFを供給しながら基板を乾燥処理する装置がある(特許文献2参照)。さらに、基板表面に対向配置されるとともに上下に貫通する多数の流通孔が開口された円板状の閉塞板を用いて、チャンバ上部に設けられた流体導入路から導入したSCFを分散させながら、各流通孔を通じて基板表面にSCFを略垂直に供給して洗浄処理や乾燥処理を基板に施す装置がある(特許文献3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−71394号公報(図2)
【特許文献2】特開2004−186526号公報(図3)
【特許文献3】特開2004−146457号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、基板表面上でのSCFの流れが処理プロセスに大きな影響を及ぼすことは良く知られているが、これをさらに詳細に検討すると、SCFの流速のほか、基板表面に対するSCFの流れ方向も処理プロセスの影響因子として挙げられる。また、同じ流速とした場合には、基板に対して平行な流れよりも、基板に対して垂直な流れの方が処理を加速する作用があることが種々の実験結果より明らかとなっている。したがって、このような観点を考慮した上で、基板表面の処理の均一性、チャンバ内におけるSCFの置換性を良好に満足させながらも、スループットを向上させていくことが重要となっている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、基板表面に平行なSCFの流れによって該基板表面を処理させているために、処理速度が遅く、スループットの低下が避けられないという問題があった。
【0006】
また、特許文献2に記載の装置では、基板表面の中心部(上面中央部)のみにSCFが垂直に入射することより、該基板表面の中心部のみが優先的に処理が進行して、基板表面の面内不均一が助長されてしまう。具体的には、基板表面の中心部のみが基板表面に対して垂直なSCFによって処理される一方で、基板表面の周縁部は基板回転に伴う遠心力によって基板表面に対して平行に広がるSCFによって処理される結果、基板表面の処理の均一性を保つことが困難となっていた。
【0007】
また、特許文献3に記載の装置では、円板状の閉塞板に開口された流通孔を通じて基板表面に対して垂直にSCFを入射させているものの、次のような問題が発生していた。すなわち、基板の面積と同程度あるいはそれ以上の面積を有する閉塞板に開口された流通孔から基板表面全体に均一にSCFを噴出させる必要があるが、このような円板(円板自体の形状のほか、流通孔の形状、孔の配設位置等を含む)を精度良く加工することは事実上、困難である。その結果、基板表面に入射するSCFの流速が不均一となり、基板表面の面内不均一が生じることとなる。また、流体導入路から導入されたSCFを基板表面全体に広がるように分散させて流通孔から噴出させているため、各流通孔から基板表面に垂直入射するSCFの流速が小さくなり、結果として、単位面積当たりの処理効率が低下してしまう。
【0008】
さらに、流通孔を通じて基板表面全体に対してSCFを噴出させているので、基板表面の中央部に向けて噴出されたSCFが、それを取り巻くように基板表面の周縁部に向けて噴出されたSCFによって基板外に排出されるのが阻害され、処理後のSCFが基板表面上に滞留してしまうという問題も発生する。
【0009】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、高圧流体あるいは高圧流体と薬剤との混合物を処理流体として被処理体の表面に接触させて被処理体の表面に対して所定の表面処理を施すに際して、その表面処理の均一性およびスループットを向上させることができる高圧処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、高圧流体あるいは高圧流体と薬剤との混合物を処理流体として被処理体の表面に接触させて前記被処理体の表面に対して所定の表面処理を施す高圧処理装置であって、上記目的を達成するため、処理流体を供給する供給手段と、その内部に表面処理を行うための処理チャンバーを有する圧力容器と、処理チャンバー内で被処理体を保持する保持手段と、保持手段により保持されている被処理体を回転させる回転手段と、被処理体の回転中心を含むように被処理体の表面に対向して開口され、供給手段から供給される処理流体を被処理体の表面に対して垂直方向に送出して被処理体の表面に供給する流体送出手段と、流体送出手段から被処理体の表面に供給された処理流体を圧力容器外に排出する流体排出手段とを備え、流体送出手段は、被処理体の径方向に延びるようにスリット状に開口されるとともに、被処理体の径方向において少なくとも被処理体の回転中心から被処理体の端縁までの距離よりも大きなスリット長を有している。
【0011】
このように構成された発明では、被処理体の径方向に少なくとも被処理体の回転中心から被処理体の端縁までの距離よりも長い帯状の処理流体が、被処理体の回転中心を含みながら回転する被処理体の表面に対して垂直方向に供給される。このため、被処理体の表面全体が該被処理体の表面に対して垂直方向に入射する処理流体によって表面処理され、スループットを向上させることができる。しかも、流体送出手段の開口をスリット状にすることでその開口面積は被処理体の表面全体の面積に対してごく一部に限定され、「発明が解決しようとする課題」の項で説明したように、処理流体の流速が小さくなることがなく、比較的大きな処理流体の流速によって処理することができる。その結果、単位面積当たりの処理効率を向上させることができる。さらに、流体送出手段の開口形状がスリット状に限定されているために、流体送出手段に対する加工を容易として加工精度を高めて、被処理体の表面に入射する処理流体の流速を均一にすることができる。したがって、被処理体の回転により該被処理体の表面全体を均一に処理することができる。
【0012】
ここで、被処理体として略円形の基板を処理する場合には、次のようにして基板に処理流体を供給するようにしてもよい。すなわち、基板の径方向に基板の半径サイズ以上のスリット長を有しながら基板の表面に対向する圧力容器の壁に開口された、送出路を介して処理チャンバーに処理流体を導入して基板表面に送出するようにしてもよい。この構成によれば、基板の径方向に基板の半径サイズ以上の長さを有する帯状の処理流体が送出路から送出され、回転する基板の表面に対して垂直に入射する。このため、基板表面全体が該基板表面に対して垂直方向に入射する処理流体によって表面処理され、上述した作用効果を得ることができる。
【0013】
このとき、送出路に供給側分散機構を嵌挿させると、処理チャンバーに導入される処理流体を基板の径方向に分散させて基板表面に送出することができる。これにより、送出路の開口面内において処理流体の偏りが防止され、処理流体を基板の径方向に均一に供給することができる。
【0014】
ここで、送出路のスリット長、つまり基板の径方向(長手方向)における長さは、少なくとも基板の半径サイズ以上であれば、基板表面全体を垂直入射する処理流体で処理することが可能である。このため、送出路のスリット長を基板の半径サイズに限定することで圧力容器の壁に形成される送出路の加工精度を向上させて、送出路から送出される処理流体の流速の一層の均一化を図ることができる。また、送出路の開口面積を低減することで、処理流体の流速を大きくして単位面積当たりの処理効率を向上させることができる。その一方で、送出路のスリット長を基板の直径サイズ以上に形成することで、次のようにして基板表面に供給された処理流体を良好に圧力容器外に排出することができる。
【0015】
送出路のスリット長を基板の直径サイズ以上に形成した場合には、送出路の長手方向と略直交する方向において基板の周端面に対向する圧力容器の両側壁に側方排出路の対を形成して、該側方排出路の対を介して基板表面に供給された処理流体を基板表面に沿って基板の両側から圧力容器外に排出するようにしてもよい。この構成によれば、送出路から基板表面に供給された処理流体は、各側方排出路に至るまで、基板の両側に向けて対称性を保ったまま基板表面に沿って流れていく。これにより、基板表面に供給された処理流体が基板表面上に滞留するのが防止される。
【0016】
さらに、基板の全周を取り囲むようにして排出側分散機構を設けると、基板の両側に流れ出す処理流体は排出側分散機構を介して側方排出路より圧力容器外に排出される。このため、基板表面に沿って基板の両側から流れ出す処理流体を基板の周方向に分散させて側方排出路より排出させることができる。その結果、側方排出路に最も近い基板の端縁から優先的に処理流体が排出されるのが抑制され、基板表面上において処理流体が集中することによって滞留するのが防止される。したがって、基板表面の面内均一性を良好しながら処理流体を排出することができる。
【0017】
また、排出側分散機構を設ける代わりに、複数対の側方排出路を送出路の長手方向に沿って配設するようにしてもよい。このように構成しても、排出側分散機構を配設した場合と同様な効果が得られる。
【0018】
また、基板表面に対向しながら送出部の長手方向と略直交する方向に送出路を挟み込むように送出路の両側に隣接して一対の排出路を設けて、該一対の排出路を介して基板表面に供給された処理流体を基板表面から離れる方向に圧力容器外に排出するようにしてもよい。この構成によれば、送出路からスリット状に基板表面に垂直入射され所定の表面処理を実行した処理流体(処理済み流体)は、送出路を挟み込むようにして配設された一対の排出路より即座に基板表面から離れる方向に排出される。このため、基板表面に供給された処理流体が基板表面上に滞留するのが防止される。
【0019】
このとき、側方導入部より処理チャンバーに処理流体を導入して、送出路の長手方向と略直交する方向であって基板の両側から基板表面に沿って処理流体を基板表面に供給するのが好ましい。この構成によれば、送出路から基板表面に供給された処理流体が基板表面に沿って基板の両側に向けて流れていくのが防止され、一対の排出路から確実に処理流体を排出することができる。
【0020】
また、送出路と該送出路を挟んで配設された一対の排出路とを複合送排出部とした場合に、該複合送排出部を複数個有するように構成してもよい。このように構成することで、基板に対して種々の表面処理を施すことを可能として、装置の汎用性を高めることができる。例えば、複合送排出部を2個配置する場合には、一方の複合送排出部から処理流体として高圧流体と洗浄成分との混合物を送排出する一方で、他方の複合送排出部から処理流体として高圧流体と相溶化剤との混合物を送排出することができる。また、一方の複合送排出部から処理流体として高圧流体と相溶化剤との混合物を送排出する一方で、他方の複合送排出部から処理流体として高圧流体のみを送排出することもできる。
【0021】
なお、本発明における「被処理体の表面」とは、高圧処理を施すべき面を意味しており、被処理体が例えば半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、光ディスク用基板などの各種基板である場合、その基板の両主面のうち回路パターンなどが形成された一方主面に対して高圧処理を施す必要がある場合には、該一方主面が本発明の「被処理体の表面」に相当する。また、他方主面に対して高圧処理を施す必要がある場合には、該他方主面が本発明の「被処理体の表面」に相当する。もちろん、両面実装基板のように両主面に対して高圧処理を施す必要がある場合には、両主面が本発明の「被処理体の表面」に相当する。
【0022】
また、本発明における表面処理とは、例えばレジストが付着した半導体基板のように汚染物質が付着している被処理体から、汚染物質を剥離・除去する洗浄処理が代表例としてあげられる。被処理体としては、半導体基板に限定されず、金属、プラスチック、セラミックス等の各種基材の上に、異種物質の非連続または連続層が形成もしくは残留しているようなものが含まれる。また、洗浄処理に限られず、高圧流体を用いて、被処理体上から不要な物質を除去する処理(例えば、乾燥、現像等)は、全て本発明の高圧処理装置の対象とすることができる。
【0023】
また、本発明において、用いられる高圧流体としては、安全性、価格、超臨界状態にするのが容易、といった点で、二酸化炭素が好ましい。二酸化炭素以外には、水、アンモニア、亜酸化窒素、エタノール等も使用可能である。高圧流体を用いるのは、拡散係数が大きく、溶解した汚染物質を媒体中に分散することができるためであり、より高圧にして超臨界流体にした場合には、気体と液体の中間の性質を有するようになって微細なパターン部分にもより一層浸透することができるようになるためである。また、高圧流体の密度は、液体に近く、気体に比べて遥かに大量の添加剤(薬剤)を含むことができる。
【0024】
ここで、本発明における高圧流体とは、1MPa以上の圧力の流体である。好ましく用いることのできる高圧流体は、高密度、高溶解性、低粘度、高拡散性の性質が認められる流体であり、さらに好ましいものは超臨界状態または亜臨界状態の流体である。二酸化炭素を超臨界流体とするには31゜C、7.1MPa以上とすればよい。洗浄並びに洗浄後のリンス工程や乾燥・現像工程等は、5〜30MPaの亜臨界(高圧流体)または超臨界流体を用いることが好ましく、7.1〜30MPa下でこれらの処理を行うことがより好ましい。
【0025】
また、高圧流体と薬剤との混合物を処理流体として用いる場合において、薬剤としての洗浄成分が高圧流体に対して溶解度が低い場合には、この洗浄成分を高圧流体に溶解もしくは均一分散させる助剤となり得る相溶化剤を用いることが好ましい。特に、二酸化炭素の超臨界流体に対し、薬剤が水分を含む場合には、薬剤の難溶化が顕著となるケースもある。相溶化剤は、複数の成分を混合した薬剤に関し、用いる高圧流体に対し溶解性が悪い場合には、この薬剤と高圧流体との相溶性を改善する。この相溶化剤は、洗浄工程終了後のリンス工程で、付着・残留した薬剤を除去する作用も有している。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、被処理体の径方向に少なくとも被処理体の回転中心から被処理体の端縁までの距離よりも長い帯状の処理流体が、被処理体の回転中心を含みながら回転する被処理体の表面に対して垂直方向に供給される。このため、被処理体の表面全体が垂直方向に入射する処理流体によって表面処理され、スループットを向上させることができる。しかも、流体送出手段の開口形状がスリット状に限定されているために、比較的大きな処理流体の流速によって処理することができ、処理効率を向上させることができる。さらに、流体送出手段に対する加工精度を高めることができ、被処理体の表面に入射する処理流体の流速を均一にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る高圧処理装置の第1実施形態の全体構成を示す図である。図2は、図1の高圧処理装置における圧力容器およびその内部構造を示す図である。また、図3は、図2に示す圧力容器のA−A’面を上方より見た上面図である。この高圧処理装置は、圧力容器1の内部に形成される処理チャンバー11に超臨界二酸化炭素(高圧流体)または超臨界二酸化炭素と薬剤との混合物を処理流体として導入し、その処理チャンバー11において保持されている略円形の半導体ウエハなどの基板(被処理体)Wに対して所定の洗浄および乾燥処理を行う装置である。以下、その構成および動作について詳細に説明する。
【0028】
この高圧処理装置では、超臨界二酸化炭素を繰り返して循環使用する一方、処理チャンバー11を大気圧に開放するなどによって系内の二酸化炭素が減少すると、ボンベ2から液体状の二酸化炭素を補給するように構成されている。このボンベ2は凝縮器などからなる液化部3と接続されており、ボンベ2内に二酸化炭素が5〜6MPaの圧力で液体状流体として貯留されており、この液体二酸化炭素が図示しないポンプによりボンベ2より取り出され液化部3を介して系内に補給される。
【0029】
この液化部3の出力側には加圧ポンプなどの昇圧器4が接続されており、この昇圧器4で液化二酸化炭素を加圧して高圧液化二酸化炭素を得るとともに、高圧液化二酸化炭素を加熱器5および高圧弁V1を介して混合部6に圧送する。このように圧送される高圧液化二酸化炭素は加熱器5で加熱されて表面処理(洗浄処理および乾燥処理)に適した温度にまで加熱され、超臨界二酸化炭素となり、高圧弁V1を介して混合部6に送られる。このように、ボンベ2、液化部3、昇圧器4および加熱器5が、高圧流体として超臨界二酸化炭素を供給する高圧流体供給ユニット10として機能している。
【0030】
この混合部6には、基板Wの表面処理に適した薬剤を貯蔵・供給する2種類の薬剤供給部、つまり第1薬剤供給部7aおよび第2薬剤供給部7bがそれぞれ高圧弁V3およびV4を介して接続されている。このため、高圧弁V3、V4の開閉制御によって第1薬剤供給部7aから第1薬剤が、また第2薬剤供給部7bから第2薬剤が開閉制御に応じた量だけ混合部6にそれぞれ供給されて超臨界二酸化炭素に対する薬剤の混合量が調整される。このように、この実施形態では、処理流体として「超臨界二酸化炭素」、「超臨界二酸化炭素+第1薬剤」、「超臨界二酸化炭素+第2薬剤」および「超臨界二酸化炭素+第1薬剤+第2薬剤」を選択的に調製して圧力容器1の処理チャンバー11に供給可能となっており、高圧流体供給ユニット10と混合部6とが、処理流体を供給する「供給手段」として機能する。そして、表面処理の内容に応じて適宜高圧弁V3、V4を装置全体を制御部(図示書略)により開閉制御することによって処理流体の種類を選択するとともに、薬剤濃度をコントロールすることができるように構成されている。
【0031】
図2に示すように、圧力容器1は、側壁12aと天壁12bとが一体に形成された上部材12と、底壁13aを構成する下部材13とを備え、上部材12と下部材13とがシール材14を介して密着して互いを保持するように構成されている。上部材12の内部には基板Wを収容可能な円筒状の空間が形成されている。また、下部材13を固定した状態で上部材12を上下動させることにより、上部材12を下部材13から上下方向に接離し得るように構成されている。これにより、圧力容器1は開閉自在に構成されており、閉じられた際に処理チャンバー11内が気密状態となる。そして、圧力容器1が開かれた際に未処理の基板Wを処理チャンバー11内に位置するスピンチャック15に載置して(基板Wの搬入)、圧力容器1を閉じて後述するようにして表面処理を施す一方、表面処理後に圧力容器1を開いて処理済の基板Wを搬出することができるように構成されている。
【0032】
このスピンチャック15は処理チャンバー11内に配置されており、本発明の「保持手段」として基板Wを水平姿勢で回転自在に保持する。詳しくは、スピンチャック15は、その上面に設けられた吸着口(図示省略)により表面処理(高圧処理)を施すべき表面(一方主面)S1を上向きにした状態で基板Wの下面(他方主面S2)の中央部を吸着保持可能となっている。また、スピンチャック15には、モータ16(回転手段)によって回転される回転軸17が連結されており、モータ16が回転駆動されるのに応じてスピンチャック15およびそれによって保持されている基板Wが一体的に処理チャンバー11内で回転軸線J回りに回転する。回転軸17と圧力容器1の底壁13aに設けられた孔との間にはシール材18が配設され、回転軸17を回転自在としながら処理チャンバー11を外部雰囲気に対して気密状態としている。なお、スピンチャック15の基板Wの保持は吸着に限られるものではなく、メカ的に保持する構成でもよい。
【0033】
図4は、図2に示す圧力容器の上部材を紙面右方向から見た断面図である。圧力容器1の上面中央部には送出路101(流体送出手段)が設けられ、圧力容器1(上部材12)の天壁12bにスリット状に開口されている。具体的には、送出路101はスピンチャック15に保持された基板Wの回転中心A0(スピンチャック15の回転軸線Jに略一致する)を含みながら基板表面S1に対向して、基板Wの径方向に延びるように開口されている。この送出路101は基板Wの径方向に基板Wの直径サイズ以上のスリット長を有している。一方で、基板Wの径方向と直交する方向において送出路101のスリット幅は3mm以下、望ましくは1mm以下に形成される。例えば300mmの基板径に合わせてスリット長を300mm強とした場合に、スリット幅を1mm以下に設定することにより、おおよそ洗浄処理に合致した流体速度で処理流体を噴出させることができる。
【0034】
送出路101の上端中央部は、回転軸線J上に配設された流体導入ポート102が接続されており、流体導入ポート102を介して送出路101と混合部6とが連通されている。これにより、混合部6から送られてくる処理流体は送出路101を介して処理チャンバー11に導入され、基板表面S1に向けて送出される。
【0035】
送出路101の下方端側、つまり処理チャンバー11への出口の先には、流体分散機構103(送出側分散機構)が送出路101のスリット状の開口に合わせて嵌挿されている。流体分散機構103は、上下方向に貫通する多数の細孔が形成された板状部材からなり、図4に示すように、流体導入ポート102から導入された処理流体は、流体分散機構103を経由することにより、送出路101の長手方向(紙面の左右方向)に均一に分散されながら送出路101より噴出される。なお、このような流体分散機構103として、パンチング板または多孔質セラミックス板などが用いられる。
【0036】
また、圧力容器1の底壁13aには、混合部6から送られてくる処理流体を処理チャンバー11内に導入する下方側導入路104が形成されている。下方側導入路104から導入された処理流体は基板Wの下面周縁部、つまりスピンチャック15によって保持されていない基板Wの下面S2の露出部分に向けて供給される。これにより、露出部分に滞留する処理済み流体を下方側導入路104から導入される新たな処理流体によって置換させることで、処理済み流体の滞留を防止している。
【0037】
圧力容器1の側面には側方排出路105が設けられている。この側方排出路105は、送出路101の長手方向と略直交する方向において、基板Wの周端面に対向する圧力容器1(上部材12)の両側壁12aにそれぞれ設けられることで、対をなして形成されている。詳しくは、図3に示すように、平面視において一対の側方排出路105,105が送出路101を中心としてその両側に略対称形状に形成されている。
【0038】
さらに、圧力容器1の側壁12aには、流体分散機構106(排出側分散機構)が基板Wの全周を取り囲むように配設されている。流体分散機構106は、基板Wの径方向に貫通する多数の細孔が形成された円環部材からなり、送出路101と下方側導入路104より基板表面S1に供給され基板Wの両側に流れ出す処理流体は流体分散機構106を経由して一対の側方排出路105,105より圧力容器1外に排出される。このため、各々の側方排出路105に最も近い基板Wの端縁から優先的に処理流体が排出(ショートパス)されるのが抑制される。なお、このような流体分散機構106として、パンチング板または多孔質セラミックス板などが用いられる。
【0039】
また、圧力容器1の底壁13aには、回転軸17の回転によりパーティクルが発生するおそれがあることから、圧力チャンバー11内にパーティクルが入り込まないように、回転軸17と底壁13a(底壁に設けられた孔の内壁)との隙間から、圧力容器1外へ排気するように構成されている。
【0040】
一対の側方排出路105,105は高圧弁V2を介して減圧器などからなるガス化部8が接続されており、減圧処理によって一対の側方排出路105,105を介して処理チャンバー11から排気される流体(処理流体+汚染物質など)を完全にガス化して分離回収部9に送り込む。また、この分離回収部9では、二酸化炭素を気体成分とし、汚染物質と薬剤の混合物を液体成分として気液分離する。ここで、汚染物質は固体として析出し、薬剤の中に混入して分離されることもある。また、分離回収部9としては、単蒸留、蒸留(精留)、フラッシュ分離等の気液分離を行うことができる種々の装置や、遠心分解機などを使用することができる。
【0041】
このように、この実施形態では、ガス化部8を用いて処理チャンバー11から排気される流体(処理流体+汚染物質など)を分離回収部9に送り込む前に予め完全にガス化しているが、その理由は、減圧された二酸化炭素等の流体が温度との関係で気体状流体(炭酸ガス)と液体状流体(超臨界二酸化炭素中に溶解していた薬剤が相分離で析出したもの)との混合物となるため、分離回収部9での分離効率および二酸化炭素のリサイクル効率を向上させる観点からである。
【0042】
なお、分離回収部9で分離された薬剤、即ち汚染物質を含む洗浄成分や相溶化剤からなる液体(または固体)成分は、分離回収部9から排出され、必要に応じて後処理される。一方、気体成分の二酸化炭素については、液化部3に送り込んで再利用に供する。
【0043】
次に、上記のように構成された高圧処理装置の洗浄動作について説明する。この高圧処理装置は、前工程、例えばアッシングやドライエッチングによって不要な残渣やレジストが表面に残留している基板Wを受け取ると、次のようにして洗浄処理(洗浄工程+リンス工程)を実行する。圧力容器1が開かれた状態で未処理の基板Wが搬入され、表面処理(高圧処理)を施すべき表面S1を上向きにした状態でスピンチャック15に載置されると、スピンチャック15により基板Wは吸着保持されるとともに、圧力容器1が閉じられる。
【0044】
この洗浄工程では、供給される液化二酸化炭素を昇圧器4で加圧して高圧液化二酸化炭素を形成し、さらにその高圧液化二酸化炭素を加熱器5で加熱して超臨界二酸化炭素を形成しつつ、高圧弁V1を開いて混合部6に送り込む。また、薬剤用の高圧弁V3を開いて第1薬剤供給部7aを供給モードとし、第1薬剤供給部7aから第1薬剤を混合部6へと圧送する。これによって、第1薬剤が超臨界二酸化炭素に混合されて洗浄処理に適した処理流体が調製される。ここで、第1薬剤は第3アミン類やフッ化物類等の洗浄作用のある薬剤である。具体例としては、第4級アンモニウムフッ化物、アルキルアミン、モノエタノールアミン等のアルカノールアミン、ヒドロキシルアミン(NH2OH)およびフッ化アンモニウム(NH4F)等が挙げられる。この洗浄成分の含有量は、所望の効果が得られるように適宜調整すればよい。
【0045】
そして、上記の洗浄成分は、通常、高圧流体に溶けにくいので、これらの洗浄成分を二酸化炭素に溶解もしくは均一分散させる助剤となる相溶化剤を添加させるのが好ましい。 相溶化剤としては、洗浄成分や不要物質を高圧流体に相溶化させ得るものであれば特に限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類や、ジメチルスルホキシド等のアルキルスルホキシドが挙げられる。
【0046】
そして、混合部6で調製された処理流体が圧力容器1の上面に設けられた送出路101を介して処理チャンバー11に導入され、スピンチャック15により保持されている基板Wの表面S1に向けて噴出される。また、下方側導入路104より処理流体が処理チャンバー11に導入され、基板Wの下面周縁部に向けて供給される。このとき、処理流体の供給と同時に、あるいは前後してモータ16が回転駆動させることで、基板Wを回転させる。
【0047】
図5は、基板表面上における処理流体の流れを模式的に表した図である。送出路101より送出される処理流体は、基板Wの径方向において基板Wの直径サイズ以上の長さを有する帯状の処理流体として、基板Wの回転中心A0を含みながら基板表面S1に対して垂直に入射する。その結果、処理流体が基板表面S1に接触して所定の洗浄処理が実行される。そして、基板表面S1に供給された処理流体は基板Wの両側に向けて対称性を保ったまま基板表面S1に沿って平行に流れ、側方排出路105,105より各々排出される。このため、基板Wの回転動作と合わせて、基板表面S1に対する処理流体が流れる方向という観点から処理流体の流れの面内均一化が図られている。これにより、基板表面S1に供給された処理流体が不必要に基板表面上に滞留するのが防止される。
【0048】
そして、回転する基板Wに帯状の処理流体が次々と垂直入射することによって、基板表面S1の全体が基板表面S1に対して垂直入射する処理流体によって所定の洗浄処理が実行される。
【0049】
この洗浄工程によって基板Wに付着していた汚染物質は、処理チャンバー11内の処理流体(超臨界二酸化炭素+第1薬剤)に溶解することとなる。ここで、例えば第1薬剤を洗浄成分と相溶化剤と設定すると、汚染物質は洗浄成分および相溶化剤の働きにより超臨界二酸化炭素に溶解しているので、処理チャンバー11に超臨界二酸化炭素のみを流通させると、溶解していた汚染物質が析出する可能性があるため、洗浄工程後に超臨界二酸化炭素と相溶化剤からなる第1リンス用処理流体による第1リンス工程と、超臨界二酸化炭素のみからなる第2リンス用処理流体による第2リンス工程とをこの順序で行うのが望ましい。
【0050】
そこで、この実施形態では、第1薬剤の供給開始、つまり洗浄工程の開始から所定時間経過すると、高圧弁V3を閉じて第1薬剤供給部7aを供給停止モードとし、第1薬剤供給部7aからの第1薬剤(洗浄成分)の混合部6へと圧送を停止して高圧弁V4を開いて第2薬剤供給部7bからの第2薬剤(相溶化剤)の混合部6への圧送を開始し混合部6において超臨界二酸化炭素と相溶化剤とを混合させて第1リンス用処理流体を調製し、処理チャンバー11に供給する。これによって第1リンス用処理流体が処理チャンバー11内を流通して処理チャンバー11内の洗浄成分および汚染物質が次第に少なくなっていき、最終的には第1リンス用処理流体(超臨界二酸化炭素+相溶化剤)で満たされることとなる。相溶化剤としては、第1薬剤に添加したものと同じものを使用しても構わないし、異なるものも使用できる。
【0051】
こうして、第1リンス工程が完了すると、続いて第2リンス工程を行う。この第2リンス工程では、さらに高圧弁V4を閉じて第2薬剤供給部7bを供給停止モードとし、第2薬剤供給部7bからの第2薬剤(相溶化剤)の混合部6への圧送を停止して超臨界二酸化炭素のみを第2リンス用処理流体として処理チャンバー11に供給する。これによって第2リンス用処理流体が処理チャンバー11内を流通して処理チャンバー11が第2リンス用処理流体(超臨界二酸化炭素)で満たされることとなる。
【0052】
高圧弁V2は、前記洗浄工程、第1リンス工程、第2リンス工程を通して常時開状態とされる。具体的には、処理中の処理チャンバー11の内圧力をモニターしながら常に所定の圧力が保たれるように開度が調節されることで、処理チャンバー11の内圧力が制御される。
【0053】
これに続いて、高圧弁V1を閉じて減圧し、処理チャンバー11が大気圧に戻ると、圧力容器1を開いて処理済みの基板Wを搬出する。これにより、一連の処理(洗浄工程+リンス工程)が完了する。そして、次の未処理基板が搬送されてくると、上記動作が繰り返されていく。
【0054】
以上のように、この実施形態によれば、圧力容器1の壁(天壁12b)に形成された送出路101より、基板Wの直径サイズ以上の長さを有する帯状の処理流体を基板Wの回転中心A0を含みながら回転する基板Wの表面S1に対して垂直に入射させている。このため、基板表面S1の全体が該基板表面S1に対して垂直入射する処理流体によって洗浄処理され、処理時間を短縮することができる。しかも、送出路101の開口がスリット状とされ、その開口面積が基板表面S1の全面積のごく一部に限定されているため、従来技術に比べて処理流体の流速を高めることができる。その結果、単位面積当たりの処理効率を向上させることができる。さらに、送出路101の開口形状がスリット状に限定されていることから、圧力容器1の壁に形成される送出路101の加工を容易として加工精度を高めることができる。これによって、基板表面S1に入射する処理流体の流速を均一にすることができる。その結果、基板Wが回転されることで基板表面S1の全体を均一に処理することができる。
【0055】
また、この実施形態によれば、送出路101に流体分散機構103が嵌挿されているので、送出路101の開口面内において処理流体の偏りが防止され、処理流体を基板Wの径方向に帯状にして均一に供給することができる。
【0056】
また、この実施形態によれば、送出路101の長手方向と略直交する方向において基板Wの周端面に対向する圧力容器1の両側壁12aに一対の側方排出路105,105を形成しているので、基板表面S1に供給された処理流体は、基板Wの両側に向けて対称性を保ったまま排出され、基板表面S1上に処理流体が滞留するのが防止される。
【0057】
さらに、基板Wの全周を取り囲んで流体分散機構106を設けているので、基板表面S1上において処理流体が集中することによって滞留するのが防止され、基板表面S1の面内均一性を良好しながら処理流体を排出することができる。
【0058】
<第2実施形態>
図6は、本発明に係る高圧処理装置の第2実施形態で採用されている圧力容器およびその内部構造の要部を示す図である。また、図7は、図6に示す圧力容器のB−B’面を上方より見た概略図である。また、図8は、第2実施形態で採用されている圧力容器へ処理流体を供給する一部配管の構成図である。この第2実施形態は、基板Wの径方向に延びるスリット状の送出路201から処理流体を基板表面S1に向けて送出している点は、第1実施形態と共通しているが、処理流体の排出方法および処理流体をさらに基板Wの側方から追加的に供給している点が大きく相違している。以下、第1実施形態との相違点を中心に第2実施形態の構成および動作について説明する。
【0059】
この第2実施形態では、圧力容器1Aの天壁22bに、基板表面S1に対向して基板Wの径方向に延びるようにスリット状に開口された開口部が基板Wの径方向と直交する方向に3つ並んで形成されている。このうち送出路201は基板Wの回転中心A0を含みながら基板表面S1に対向して、基板Wの径方向に延びるように開口され、基板Wの直径サイズ以上のスリット長を有している。そして、送出路201を挟み込むように送出路201の両側に隣接して一対の排出路202,202が送出路201の長手方向に沿って形成されている。
【0060】
また、圧力容器1Aの側壁22aには処理チャンバー11Aに処理流体を導入する側方導入部203が形成されている。この側方導入部203は処理チャンバー11Aに処理流体を導入して、基板Wの両側から基板表面S1に供給している。詳しくは、送出路202の長手方向と略直交する方向であって基板Wの両側から、基板表面S1に沿って基板Wの直径にわたって処理流体を供給している。なお、この実施形態では、処理流体として薬剤を含まない超臨界二酸化炭素のみが側方導入部203より導入される。
【0061】
この高圧処理装置では、処理チャンバー11Aへ処理流体を圧送する配管が加熱器5の下流側で分岐される。一方の分岐配管19Aは送出路201に高圧弁V1Aを介して接続され、他方の分岐配管19Bは側方導入部203に高圧弁V1Bを介して接続される。一方の分岐配管19Aには高圧弁V3を介して第1薬剤供給部7aが接続されるとともに、高圧弁V4Aを介して第2薬剤供給部7bが接続される。他方の分岐配管19Bには高圧弁V4Bを介して第2薬剤供給部7bが接続される。また、一対の排出路202,202の上方端は高圧弁V2を介して減圧器などからなるガス化部8に接続され、減圧処理によって一対の排出路202,202を介して処理チャンバー11Aから流体(処理流体+汚染物質など)を排気する。なお、加熱器5の上流側およびガス化部8の下流側に繋がる構成は第1実施形態と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0062】
このように構成された高圧処理装置においては、まず洗浄工程では高圧弁V1A、V1B、V3が開いて、送出路201より帯状に処理流体(超臨界二酸化炭素と洗浄成分と添加剤としての相溶化剤とを含む混合物)が送出され、回転する基板Wの表面S1に垂直に入射する。同時に側方導入部203からは超臨界二酸化炭素のみの処理流体が導入される。これと同時に高圧弁V2を開き、処理流体(処理済み流体)は送出路201の両側に隣接して配設された一対の排出路202より即座に基板表面S1の上方に排出される。また、側方導入部203より基板Wの両側から超臨界二酸化炭素のみの処理流体が基板表面S1に供給されることで、処理済み流体が圧力容器1Aの側壁22aに向けて流れ出すのが防止される。高圧弁V2は第1実施形態と同様に開度が制御されることで、処理チャンバー11Aの内圧力が一定に保持される。
【0063】
そして、所定の洗浄処理が実行された後、第1リンス工程を行う。第1リンス工程は、高圧弁V1A、V1B、V4A、V2を開き、高圧弁V3とV4Bを閉じることで送出路201より処理流体(超臨界二酸化炭素と相溶化剤とを含む混合物)が送出され、同時に側方導入部203からは超臨界二酸化炭素のみの処理流体が導入される。なお、第1リンス工程において、リンス効果を高めるために高圧弁V4Bを開にして、側方導入部203からも送出路201と同じ処理流体を供給するようにしてもよい。
【0064】
具体的には、送出路201から供給された洗浄成分が基板表面S1に残留付着するような場合では、側方導入部203から超臨界二酸化炭素と相溶化剤とを含む混合物を処理流体として基板表面S1に供給するようにしてもよい。これにより、基板表面S1に残留付着した洗浄成分の洗い流しを促進させることができる。
【0065】
こうして、第1リンス工程が完了すると、続いて第2リンス工程を行う。この第2リンス工程では、高圧弁V3、V4A、V4Bを閉じ、高圧弁V1A、V1B、V2を開き、側方導入部203と送出路201とも超臨界二酸化炭素のみの処理流体が導入されると同時に、一対の排出路202より即座に基板表面S1の上方に排出される。
【0066】
これに続いて、高圧弁V1A、V1Bを閉じて減圧し、処理チャンバー11Aが大気圧に戻ると、圧力容器1Aを開いて処理済みの基板Wを搬出する。
【0067】
以上のように、この実施形態によれば、送出路201から基板Wの直径サイズ以上の長さを有する帯状の処理流体を回転する基板Wの表面S1に対して垂直に入射させているので、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0068】
また、この実施形態によれば、送出路201を挟み込むように配設された一対の排出路202,202より基板表面S1に供給された処理流体を即座に基板表面S1から上方に離れる方向に排出しているので処理流体(処理済み流体)が基板表面S1上に滞留するのが防止される。さらに、側方導入部203より基板Wの両側から処理流体を供給することにより、処理済み流体が基板Wの両側に流れていくことがなく、一対の排出路202,202より確実に排出される。
【0069】
また、この実施形態によれば、送出路201から洗浄成分を含む処理流体を基板表面S1に供給供給しているので、薬液反応(洗浄成分による処理反応)に寄与する処理流体が、反応速度の大きな基板表面S1に対して垂直方向に入射する処理流体に限定されるので、洗浄成分の使用効率を向上させることができる。
【0070】
上記第2実施形態の前記洗浄工程では、側方導入部203から超臨界二酸化炭素のみの処理流体が導入されるが、高圧弁V4Bを開いて超臨界二酸化炭素に相溶化剤を含む処理流体を導入するようにしてもよい。
【0071】
<その他>
また、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記第1実施形態では、基板Wの全周を取り囲むように流体分散機構106を配設して、基板表面S1の面内均一性を良好しながら処理流体を排出しているが、処理流体の排出方法はこれに限定されない。例えば、図9に示すように、圧力容器1の側壁12aに送出路101の長手方向に沿って複数対の側方排出路105,105を設けるようにしてもよい(第3実施形態)。このように構成しても、流体分散機構106を配設した場合と同様な効果が得られる。
【0072】
また、処理流体の排出方向は、例えば図10に示すように、圧力容器1の両側壁12aにそれぞれ、送出路101の長手方向に沿って同じ長さの流体分散機構106A,106Aを配設して、各流体分散機構106A,106Aに対応するそれぞれ1つの側方排出路105,105を設けるようにしてもよい(第4実施形態)。
【0073】
また、上記第2実施形態では、送出路201と送出路201を挟んで配設された一対の排出路202,202(以下、これらを合わせて「複合送排出部」と称する)は、基板Wの直径サイズ以上のスリット長を有しているが、これに限定されず、図11に示すように、複合送排出部210のスリット長を基板Wの半径サイズとしてもよい(第5実施形態)。このように、複合送排出部210のスリット長を基板Wの半径サイズに限定することで送出路201の加工精度を向上させて、送出路201から送出される処理流体の流速の一層の均一化を図ることができる。また、送出路201の開口面積を低減することで、処理流体の流速を大きくして単位面積当たりの処理効率を向上させることができる。同様にして、上記第1実施形態においても、側方排出路105に至るまでに基板表面S1に沿って平行に流れる処理流体の平行流がプロセスに大きな影響を与えない場合には、送出路101のスリット長を基板Wの半径サイズとしてもよい。
【0074】
また、複合送排出部のスリット長を基板Wの半径サイズとした場合には、複合送排出部を複数個配置するようにしてもよい。例えば、図12に示すように、2つの複合送排出部211,212を、基板Wの径方向において複合送排出部の長手方向に沿って一列に並べて配置するようにしてもよい(第6実施形態)。このように構成することで、基板Wに対して種々の表面処理を施すことを可能として、装置の汎用性を高めることができる。例えば、一方の複合送排出部211から処理流体として超臨界二酸化炭素と洗浄成分との混合物を送排出する一方で、他方の複合送排出部212から処理流体として超臨界二酸化炭素と相溶化剤との混合物を送排出することができる。また、一方の複合送排出部211から処理流体として超臨界二酸化炭素と相溶化剤との混合物を送排出する一方で、他方の複合送排出部212から処理流体として高圧流体のみを送排出することもできる。
【0075】
また、2つの複合送排出部211,212を長手方向に沿って一列に配置する場合に限らず、図13に示すように、基板Wの回転中心A0を中心として対称としながらも、複合送排出部の長手方向と直交する方向において互いに違いに配置するようにしてもよい(第7実施形態)。このように、複数個の複合送排出部を設けることにより、プロセスの設計自由度を飛躍的に高めることができる。
【0076】
また、上記実施形態では、送出路101,201は基板表面S1と対向する圧力容器1の壁(天壁12b)にスリット状に開口されているが、図14に示すように、圧力容器1の壁にスリットノズル107をノズル開口が基板表面S1に対向するように別に取り付けるように構成してもよい(第8実施形態)。この場合、「スリットノズル」が本発明の「流体送出手段」として機能する。
【0077】
また、上記実施形態では、2種類の薬剤を超臨界二酸化炭素(高圧流体)に混合させて処理流体を調製しているが、薬剤の種類や数などについては任意である。また、薬剤を使用しないで表面処理を行う場合には、薬剤供給部が不要となる。
【0078】
また、上記実施形態では、表面処理として洗浄処理を実行しているが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、例えば現像工程と洗浄・リンス工程が施された基板を受取り、乾燥処理のみを行う装置や別の表面処理(現像処理など)を実行する高圧処理装置などにも本発明を適用することができる。この場合でも、湿式処理後に回転する基板Wの表面S1に処理流体(超臨界二酸化炭素)が帯状に垂直入射することでプロセスを加速させ効率良く乾燥処理を実行することができる。
【0079】
また、上記実施形態では、基板Wの両主面のうち上方向に向いた一方主面S1を本発明の「表面」として所定の表面処理を施しているが、基板Wの他方主面に対して表面処理を施す場合には、他方主面S2を上方向に向けた状態で基板Wを保持するようにすればよい。また、基板Wの両主面に対して表面処理を施す必要がある場合には、各主面S1,S2に対向してスリット状の開口を配設すればよい。このように、基板Wの他方主面S2および両主面に対して表面処理を行う場合には、基板Wの端縁部をメカ的に保持するようにすればよい。
【0080】
また、上記実施形態では、「被処理体」として略円形の基板Wを処理する場合について説明したが、基板Wの形状はこれに限定されず、例えば角型等であってもよい。この場合、「流体送出手段」は、基板Wの径方向に延びるようにスリット状に開口されるとともに、基板Wの径方向において少なくとも基板Wの回転中心から基板Wの端縁までの距離よりも大きなスリット長を有していればよい。このように構成することで、上記実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0081】
また、上記実施形態では、加熱器5は混合部6よりも1次側に配置されるように図示しているが、もちろん混合部6から圧力容器1の途上に更に加熱器を追加して設置するようにしてもよい。例えば混合部6から圧力容器1までの距離が長く、保温が困難で圧力容器1の処理チャンバー11に至った時点でプロセス温度が達成できない場合に有効である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
この発明は、高圧流体あるいは高圧流体と薬剤との混合物を処理流体として用いて、半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板、PDP(プラズマ・ディスプレイ・パネル)用基板、あるいは磁気ディスク用のガラス基板やセラミック基板などを含む被処理体の表面に対して所定の表面処理(現像処理、洗浄処理や乾燥処理など)を施す高圧処理装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明に係る高圧処理装置の第1実施形態の全体構成を示す図である。
【図2】図1の高圧処理装置における圧力容器およびその内部構造を示す図である。
【図3】図2に示す圧力容器のA−A’面を上方より見た上面図である。
【図4】図2に示す圧力容器の上部材を紙面右方向から見た断面図である。
【図5】基板表面上における処理流体の流れを模式的に表した図である。
【図6】本発明に係る高圧処理装置の第2実施形態で採用されている圧力容器およびその内部構造の要部を示す図である。
【図7】図6に示す圧力容器のB−B’面を上方より見た概略図である。
【図8】第2実施形態で採用されている圧力容器へ処理流体を供給する一部配管の構成図である。
【図9】本発明に係る高圧処理装置の第3実施形態で採用されている圧力容器を示す図である。
【図10】本発明に係る高圧処理装置の第4実施形態を示す図である。
【図11】本発明に係る高圧処理装置の第5実施形態を示す図である。
【図12】本発明に係る高圧処理装置の第6実施形態を示す図である。
【図13】本発明に係る高圧処理装置の第7実施形態を示す図である。
【図14】本発明に係る高圧処理装置の第8実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0084】
1,1A…圧力容器
6…混合部(供給手段)
10…高圧流体供給ユニット(供給手段)
11,11A…処理チャンバー
12a,22a…圧力容器の側壁
12b,22b…圧力容器の天壁(基板表面に対向する圧力容器の壁)
15…スピンチャック(保持手段)
16…モータ(回転手段)
101,201…送出路(流体送出手段)
103…流体分散機構(送出側分散機構)
105…一対の側方排出路(流体排出手段)
106…流体分散機構(排出側分散機構)
107…スリットノズル(流体送出手段)
202…一対の排出路(流体排出手段)
203…側方導入部
210,211,212…複合送排出部
S1,S2…基板表面
W…基板(被処理体)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧流体あるいは高圧流体と薬剤との混合物を処理流体として被処理体の表面に接触させて前記被処理体の表面に対して所定の表面処理を施す高圧処理装置において、
処理流体を供給する供給手段と、
その内部に前記表面処理を行うための処理チャンバーを有する圧力容器と、
前記処理チャンバー内で被処理体を保持する保持手段と、
前記保持手段により保持されている前記被処理体を回転させる回転手段と、
前記被処理体の回転中心を含むように前記被処理体の表面に対向して開口され、前記供給手段から供給される処理流体を前記被処理体の表面に対して垂直方向に送出して前記被処理体の表面に供給する流体送出手段と、
前記流体送出手段から前記被処理体の表面に供給された処理流体を前記圧力容器外に排出する流体排出手段と
を備え、
前記流体送出手段は、前記被処理体の径方向に延びるようにスリット状に開口されるとともに、前記被処理体の径方向において少なくとも前記被処理体の回転中心から前記被処理体の端縁までの距離よりも大きなスリット長を有していることを特徴とする高圧処理装置。
【請求項2】
前記被処理体は略円形の基板であり、
前記流体送出手段は、前記基板の径方向に前記基板の半径サイズ以上のスリット長を有しながら前記基板の表面に対向する前記圧力容器の壁に開口された、送出路を介して前記処理チャンバーに処理流体を導入して前記基板表面に送出する請求項1記載の高圧処理装置。
【請求項3】
前記流体送出手段は、前記送出路に嵌挿され、前記処理チャンバーに導入される処理流体を前記基板の径方向に分散させて前記基板表面に送出する送出側分散機構をさらに有する請求項2記載の高圧処理装置。
【請求項4】
前記送出路は前記基板の径方向に前記基板の直径サイズ以上のスリット長を有する請求項2または3記載の高圧処理装置。
【請求項5】
前記流体排出手段は、前記送出路の長手方向と略直交する方向において前記基板の周端面に対向する前記圧力容器の両側壁に側方排出路の対を有し、該側方排出路の対を介して前記基板表面に供給された処理流体を前記基板表面に沿って前記基板の両側から前記圧力容器外に排出する請求項4記載の高圧処理装置。
【請求項6】
前記流体排出手段は、前記基板の全周を取り囲んで配設され、前記基板表面に沿って前記基板の両側から流れ出す処理流体を前記基板の周方向に分散させて前記側方排出路より排出させる排出側分散機構をさらに有する請求項5記載の高圧処理装置。
【請求項7】
前記流体排出手段は複数対の前記側方排出路を前記送出路の長手方向に沿って配設した請求項5記載の高圧処理装置。
【請求項8】
前記流体排出手段は、前記基板表面に対向しながら前記送出路の長手方向と略直交する方向に前記送出路を挟み込むように前記送出路の両側に隣接して配設された一対の排出路を有し、該一対の排出路を介して前記基板表面に供給された処理流体を前記基板表面から離れる方向に前記圧力容器外に排出する請求項2ないし4のいずれかに記載の高圧処理装置。
【請求項9】
前記処理チャンバーに処理流体を導入して、前記送出路の長手方向と略直交する方向であって前記基板の両側から前記基板表面に沿って処理流体を前記基板表面に供給する側方導入部をさらに備える請求項8記載の高圧処理装置。
【請求項10】
前記送出路と該送出路を挟んで配設された一対の排出路とを複合送排出部とした場合に、該複合送排出部を複数個有する請求項8または9記載の高圧処理装置。
【請求項1】
高圧流体あるいは高圧流体と薬剤との混合物を処理流体として被処理体の表面に接触させて前記被処理体の表面に対して所定の表面処理を施す高圧処理装置において、
処理流体を供給する供給手段と、
その内部に前記表面処理を行うための処理チャンバーを有する圧力容器と、
前記処理チャンバー内で被処理体を保持する保持手段と、
前記保持手段により保持されている前記被処理体を回転させる回転手段と、
前記被処理体の回転中心を含むように前記被処理体の表面に対向して開口され、前記供給手段から供給される処理流体を前記被処理体の表面に対して垂直方向に送出して前記被処理体の表面に供給する流体送出手段と、
前記流体送出手段から前記被処理体の表面に供給された処理流体を前記圧力容器外に排出する流体排出手段と
を備え、
前記流体送出手段は、前記被処理体の径方向に延びるようにスリット状に開口されるとともに、前記被処理体の径方向において少なくとも前記被処理体の回転中心から前記被処理体の端縁までの距離よりも大きなスリット長を有していることを特徴とする高圧処理装置。
【請求項2】
前記被処理体は略円形の基板であり、
前記流体送出手段は、前記基板の径方向に前記基板の半径サイズ以上のスリット長を有しながら前記基板の表面に対向する前記圧力容器の壁に開口された、送出路を介して前記処理チャンバーに処理流体を導入して前記基板表面に送出する請求項1記載の高圧処理装置。
【請求項3】
前記流体送出手段は、前記送出路に嵌挿され、前記処理チャンバーに導入される処理流体を前記基板の径方向に分散させて前記基板表面に送出する送出側分散機構をさらに有する請求項2記載の高圧処理装置。
【請求項4】
前記送出路は前記基板の径方向に前記基板の直径サイズ以上のスリット長を有する請求項2または3記載の高圧処理装置。
【請求項5】
前記流体排出手段は、前記送出路の長手方向と略直交する方向において前記基板の周端面に対向する前記圧力容器の両側壁に側方排出路の対を有し、該側方排出路の対を介して前記基板表面に供給された処理流体を前記基板表面に沿って前記基板の両側から前記圧力容器外に排出する請求項4記載の高圧処理装置。
【請求項6】
前記流体排出手段は、前記基板の全周を取り囲んで配設され、前記基板表面に沿って前記基板の両側から流れ出す処理流体を前記基板の周方向に分散させて前記側方排出路より排出させる排出側分散機構をさらに有する請求項5記載の高圧処理装置。
【請求項7】
前記流体排出手段は複数対の前記側方排出路を前記送出路の長手方向に沿って配設した請求項5記載の高圧処理装置。
【請求項8】
前記流体排出手段は、前記基板表面に対向しながら前記送出路の長手方向と略直交する方向に前記送出路を挟み込むように前記送出路の両側に隣接して配設された一対の排出路を有し、該一対の排出路を介して前記基板表面に供給された処理流体を前記基板表面から離れる方向に前記圧力容器外に排出する請求項2ないし4のいずれかに記載の高圧処理装置。
【請求項9】
前記処理チャンバーに処理流体を導入して、前記送出路の長手方向と略直交する方向であって前記基板の両側から前記基板表面に沿って処理流体を前記基板表面に供給する側方導入部をさらに備える請求項8記載の高圧処理装置。
【請求項10】
前記送出路と該送出路を挟んで配設された一対の排出路とを複合送排出部とした場合に、該複合送排出部を複数個有する請求項8または9記載の高圧処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−36109(P2007−36109A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−220702(P2005−220702)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
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