説明

高度にフッ素化されたポリマーの再分散可能な粒子の製造方法

高度にフッ素化されたイオン交換ポリマーの流動可能かつ液体分散可能な粒子を製造する方法が提供され、少なくとも10wt%の有機液体を含む液体中の高度にフッ素化されたイオン交換ポリマーの分散液を提供し、霧化して液滴を生成し、加熱された不活性ガスへ放出される。分散液液滴は乾燥して、乾燥外側表面と、少なくとも4wt%の内部残留水分含量とを有する高度にフッ素化されたイオン交換ポリマーの流動可能な粒子を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高度にフッ素化されたイオン交換ポリマーの流動可能かつ再分散可能な粒子を製造する方法に関する。かかる粒子は、高度にフッ素化されたイオン交換ポリマーの様々な分散液を製造し、かかる分散液から膜や電極等の材料を製造するのに有用である。
【背景技術】
【0002】
過フッ素化されたイオン交換ポリマーは、イオン交換膜および燃料電池膜電極組立体(MEA)用の電極等のその他構造を作製するのに用いられる。周知の過フッ素化されたイオン交換ポリマーは、パーフルオロスルホン酸(「PFSA」)ポリマーであり、これは、典型的に、フッ素化エチレン単位とスルホニル含有コモノマー単位とのコポリマーである。米国特許第3,282,875号明細書に開示されているかかるポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)と過フッ素化ビニルエーテルパーフルオロ(3,6−ジオキサ−4−メチル−7−オクテンスルホニルフルオリド(PDMOF)[CF2=CF−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2SO2F]の共重合の後、加水分解および酸交換により調製することができる。米国特許第4,358,545号明細書および同第4,940,525号明細書に開示されたタイプの他の例示のイオン交換ポリマーは、側鎖−O−CF2CF2SO3Hを有している。ポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)と過フッ素化ビニルエーテルパーフルオロ(3−オキサ−4−ペンテンスルホニルフルオリド)(POPF)[CF2=CF−O−CF2CF2SO2F]の共重合の後、加水分解および酸交換により調製することができる。
【0003】
過フッ素化イオン交換ポリマーの液体組成物は、イオン交換膜の製造用、導電性または非導電性粒子を含有する膜コーティング用、およびその他多くの用途が知られている。かかる液体組成物は、溶液と呼ばれることがあり、組成物は、ポリマー粒子の分散液として通常認識されている。米国特許第4,433,082号明細書には、スルホン酸基またはその塩を有する過フッ素化イオン交換ポリマーを含有する液体組成物の調製方法が開示されている。好ましい液体組成物は、20〜90重量%の水と、10〜80重量%の低級アルコール等の有機化合物とを含有している。かかる液体組成物は、E.I.du Pont de Nemours and CompanyよりNafion(登録商標)という商品名で商業的に販売されており、約30〜60重量%の水、15〜30重量%の1−プロパノール、15〜30重量%の2−プロパノールおよび10重量%未満(合計で)のメタノール、混合エーテルおよびその他揮発性有機化合物からなる種々の成分の媒体中、10重量%までの、スルホン酸基を有する過フッ素化イオン交換ポリマーを典型的に含有している。
【0004】
異なる最終用途のPFSA分散液は、水と、特に、エタノールまたは1−プロパノール等の溶媒との混合物中に、PFSAポリマーの原分散液の蒸留により現在作製されている。原分散液は、酸(SO3H)形態で、スルホニルフルオリド形態の過フッ素化PFSA前駆体樹脂のペレットから、3つのプロセス工程により、形成される。すなわち、(1)加水分解工程の後(2)酸交換工程、次に、(3)溶媒と水を存在させてペレットを溶解する溶解工程である。原分散液は、典型的に、18〜23wt%の固形分を有している。原分散液に、イオン交換工程を行って、分散液にある金属イオンを除去する。このイオン交換原分散液は、抽出蒸留によりさらに処理しなければならず、さらなる蒸留工程によって、%固体、%水、%1−プロパノール、%エタノールおよび特に、粘度等の所望の最終生成物仕様に適合するように、その組成を調整する。このプロセスの蒸留および希釈工程だと、生成が高価かつ再生が困難なかかるPFSA最終生成物分散液の製造を制御するのが難しい。
【0005】
米国特許第6,518,349号明細書には、フィブリル化不可能なフルオロポリマーの脆い粒子のスプレー可能な粉末を生成するための、水または有機溶媒中のフルオロポリマーの分散液のスプレー乾燥が開示されている。分散液は、少なくとも290℃、ただし、ポリマーの融点より低い入口温度で、空気または窒素によりスプレー乾燥して、静電スプレー技術により、調理器具等の物品の表面に塗布できる水(または溶媒)を含まない顆粒の粉末を生成する。フルオロポリマー粉末の再分散液は開示されていない。
【0006】
米国特許出願公開第2005/0171220号明細書には、高度にフッ素化されたポリマーの水分散液をスプレー乾燥して、水に再分散可能なポリマー粒子を得ることが開示されている。しかしながら、水分散液を生成し、含有させるには、高温および圧力、ならびに、Hastelloy(登録商標)等の耐酸性合金製、またはガラスや金等の不活性材料でライニングされた特別な耐食性反応容器が必要である。ポリマー粒子の再分散液を、H22で処理して、色を改善し、望ましくない悪臭を除去する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】高度にフッ素化されたポリマー粉末を、原液体分散液から製造するのに有用な開ループスプレー乾燥システムの概略である。
【図2】高度にフッ素化されたポリマー粉末を、原液体分散液から製造するのに有用な閉ループスプレー乾燥システムの概略である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、高度にフッ素化されたイオン交換ポリマーの流動可能かつ液体分散可能な粒子を製造する方法であって、少なくとも10wt%の有機液体を含む液体中の高度にフッ素化されたイオン交換ポリマーの分散液を提供し、分散液を霧化して、分散液の液滴を生成し、分散液液滴を、不活性な加熱されたガスへ放出し、分散液液滴を乾燥して、高度にフッ素化されたイオン交換ポリマーの流動可能な粒子を生成することによる方法を提供する。ポリマー粒子は、乾燥表面/外側と、少なくとも4wt%の内部残留水分含量とを有する。
【0009】
本明細書で用いる「流動可能」または「流動性」という用語は、粒子/粉末が、重力またはその他の力により、均一に流れる能力を意味する。「流動性」は、材料の流れ、および材料の取扱い、保管または処理のために用いる機器(ホッパー幅、オリフィス等)に影響する材料の物理的特性(粒子サイズ、形状、表面水分量等)の組み合わせの結果である。本明細書で用いる「分散可能」という用語は、粒子を液体に分散して、液体中の粒子の分散液を生成できることを意味する。
【0010】
イオン交換ポリマー
高度にフッ素化されたイオン交換ポリマーを本発明の方法に用いる。本明細書で用いる「高度にフッ素化された」とは、ポリマー中の一価原子の総数の少なくとも90%がフッ素原子であることを意味する。最も典型的には、高度にフッ素化されたイオン交換ポリマーは過フッ素化(perfluorinated)されている。燃料電池膜および電極に用いるイオン交換ポリマーは、スルホネートイオン交換基を有するのが一般的である。本明細書で用いる「スルホネートイオン交換基」という用語は、スルホン酸基かスルホン酸基の塩、一般的には、アルカリ金属かアンモニウム塩のいずれかを意味する。
【0011】
好ましいイオン交換ポリマーは、イオン交換基を持つ側鎖のある骨格に付加した繰り返し側鎖を備えたポリマー骨格を含んでなる。ホモポリマーまたはコポリマーまたはそのブレンドを用いることができる。コポリマーは、一般的に、非官能性モノマーで、ポリマー骨格に原子を提供する1つのポリマーと、ポリマー骨格に原子を提供し、カチオン交換基またはその前駆体を持つ側鎖、例えば、スルホネートイオン交換基へと後に加水分解可能なスルホニルフルオリド(−SO2F)等のハロゲン化スルホニル基、にも寄与する第2のモノマーとから形成される。例えば、スルホニルフルオリド基を有する第2のフッ素化ビニルモノマーと共に、第1のフッ素化ビニルモノマーのコポリマーを用いることができる。ポリマーのスルホン酸形態を利用して、後処理酸交換工程を排除してもよい。第1のフッ素化ビニルモノマーとしては、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)およびこれらのうち2つ以上の混合物が例示される。第2のモノマーとしては、所望の側鎖をポリマーに提供することのできるスルホネートイオン交換基または前駆体基を備えたフッ素化ビニルエーテルが例示される。第1のモノマーはまた、スルホネートイオン交換基のイオン交換機能を妨害しない側鎖も有することができる。追加のモノマーもまた、所望であれば、ポリマーに組み込むことができる。
【0012】
一実施形態において、高度にフッ素化されたイオン交換ポリマーは、側鎖を備えたカーボン骨格を有し、式−(O−CF2CFRf)a−(O−CF2)c−(CFR’f)bSO3Mにより表わされ、式中、RfおよびR’fは、F、Clまたは1〜10個の炭素原子を有する過フッ素化アルキル基より独立に選択され、a=0、1または2、b=0〜6およびc=0−1であり、Mは、水素、Li、Na、KまたはN(R1)(R2)(R3)(R4)であり、R1、R2、R3およびR4は、同一または異なり、H、CH3またはC25である。好適なポリマーの具体例としては、米国特許第3,282,875号明細書、第4,358,545号明細書および第4,940,525号明細書に開示されているものが挙げられる。一例のポリマーは、式−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2SO3Hで表わされるペルフルオロカーボン骨格と側鎖とを含んでなる。かかるポリマーは、米国特許第3,282,875号明細書に開示されており、テトラフルオロエチレン(TFE)と過フッ素化ビニルエーテルCF2=CF−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2SO2F、ペルフルオロ(3,6−ジオキサ−4−メチル−7−オクテンスルホニルフルオリド)(PDMOF)の共重合の後、スルホニルフルオリド基の加水分解によるスルホネート基への変換およびプロトン形態としても知られる酸形態に変換するイオン交換により作製することができる。米国特許第4,358,545号明細書および第4,940,525号明細書に開示されたタイプの他のイオン交換ポリマーは、側鎖−O−CF2CF2SO3Hを有している。このポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)と過フッ素化ビニルエーテルCF2=CF−O−CF2CF2SO2F、ペルフルオロ(3−オキサ−4−ペンテンスルホニルフルオリド)(POPF)の共重合の後、加水分解および酸交換により作製することができる。スルホン酸形態の好適な過フッ素化ポリマーイオン交換分散液は、E.I.du Pont de Nemours and Company,Wilmington,DelawareよりNafion(登録商標)という商品名で入手可能である。
【0013】
本発明の方法で用いる高度にフッ素化されたイオン交換ポリマーは、約33未満のイオン交換比を有するのが好ましい。本明細書で用いる「イオン交換比」または「IXR」とは、カチオン交換基に関して、ポリマー骨格にある炭素原子の数のことを指す。IXRは、約3〜約33、より好ましくは約8〜約23の範囲である。カチオン交換能力はまた、等量(EW)で表わしてもよい。本明細書で用いるEWは、NaOHの1等量を中和するのに必要な酸形態でのポリマー重量と定義される。ポリマーが、パーフルオロカーボン骨格を含み、側鎖が−−O−−CF2−−CF(CF3)−−O−−CF2−−CF2−−SO3H(またはその塩)であるスルホネートポリマーの場合には、約8〜約23のIXRに対応する等量範囲は、約750EW〜約1500EWである。このポリマーのIXRは、式50IXR+344=EWを用いる等量に関係付けることができる。
【0014】
本発明の方法において、流動可能かつ再分散可能なポリマー粉末は、少なくとも10wt%の有機液体を含む液体中の上述した高度にフッ素化されたイオン交換ポリマーの原分散液を乾燥することにより生成される。好ましくは、5〜40wt%の分散液が、フッ素化されたイオン交換ポリマーを含み、分散液の残りは、液体を含む。より好ましくは、10〜25wt%の分散液が、フッ素化されたイオン交換ポリマーを含み、分散液の残りは、液体を含む。液体は、好ましくは、10〜60wt%の1つ以上の有機液体を含み、より好ましくは、20〜55wt%の有機液体を含む。
【0015】
原分散液の液体の大半は、水であることが多い。有機液体は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールおよびこれらの混合物等のアルコールであってよい。他の実施形態において、有機液体はフッ素化されている。「フッ素化された」とは、溶媒中の水素およびハロゲン原子の総数の少なくとも10%が、フッ素であることを意味する。フッ素化された有機液体としては、これらに限られるものではないが、フルオロカーボン(炭素とフッ素原子のみを含有する化合物)、フルオロカーボンエーテル(エーテル結合をさらに含むフルオロカーボン)、ハイドロフルオロカーボン(炭素、水素およびフッ素原子のみを含有する化合物)、ハイドロフルオロカーボンエーテル(エーテル結合をさらに含むハイドロフルオロカーボン)、クロロフルオロカーボン(炭素、塩素およびフッ素原子のみを含有する化合物)、クロロフルオロカーボンエーテル(エーテル結合をさらに含むクロロフルオロカーボン)、2H−パーフルオロ(5−メチル−3,6−ジオキサノナン)およびFluorinert(登録商標)電子液体(3M,St.Paul,MN)が例示される。好適な有機液体としてはまた、DuPont製フルオロケミカル溶媒が挙げられる。1つ以上の有機液体の混合物を用いてもよい。
【0016】
高度にフッ素化されたイオン交換ポリマーの分散液は、添加剤をさらに含んでいてもよい。分散液乾燥後、添加剤は、ポリマー粒子の実質的に全てに存在しているのが好ましい。本発明の一実施形態において、添加剤は触媒である。典型的に、触媒添加剤は、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、金、ランタン、イットリウム、ガドリニウム、銀、鉄、セリウム、チタン、バナジウム、ハフニウム、タンタル、ニオブ、クロム、モリブデン、タングステン、レニウムまたはこれらの組み合わせの群から選択される。典型的に、かかる触媒は、炭素粒子等の担体に提供される。触媒(白金等)添加剤のX線回折(XRD)により測定される粒子サイズは、典型的に、20〜38オングストロームの範囲である。
【0017】
本発明の他の実施形態において、高度にフッ素化されたイオン交換ポリマーの分散液は、金属酸化物、安定剤および安定剤とは異なる触媒を含む添加剤をさらに含んでいてもよい。金属酸化物は、典型的に、アルミナ、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ゲルマニウム、シリカ、セリアおよびこれらの組み合わせの群からのものである。安定剤は、典型的に、金属イオンおよび半金属イオンおよびこれらの組み合わせの群からのものである。安定剤とは異なる触媒は、典型的に、白金、パラジウム、ランタン、イットリウム、ガドリニウム、銀、鉄、ルテニウム、セリウム、チタン、バナジウムおよびこれらの組み合わせの群からのものである。
【0018】
高度にフッ素化されたイオン交換ポリマーの分散液中に含まれていてもよいその他添加剤としては、ポリビニルピロリドン、疎水性または親水性粒子、カーボンブラック、導電性ポリマー、顔料、タルク、アラミドポリマーおよびフルオロポリマーが挙げられる。
【0019】
ポリマー粒子の生成
本発明によれば、少なくとも10wt%の有機液体からなる液体中の高度にフッ素化されたイオン交換ポリマーの分散液を霧化して、分散液の液滴を生成し、加熱された不活性ガスへ放出する。条件を制御して、放出された液滴を乾燥して、高度にフッ素化されたイオン交換ポリマーの流動可能な粒子が生成されるようにする。これらのポリマー粒子は、乾燥外側表面を有するが、それらはまた、粒子の重量に基づいて、少なくとも4wt%の内部残留水分含量も有する。好ましくは、ポリマー粒子の内部残留水分量は、4〜10wt%の範囲、より好ましくは4〜8wt%の範囲である。ポリマー粒子の内部残渣水分は、Sartorius Electronics Moisture Analyzer,Model MA30,Sartorius Corporation,131 Heartland Blvd,Edgewood,New Yorkを用いて測定する。本発明の好ましい一実施形態において、ポリマー粒子は、乾燥中に凝集し、凝集した粒子の平均直径は、1〜100ミクロンの範囲である。本発明の他の実施形態において、ポリマー粒子の平均直径は、10〜50ミクロンの範囲である。平均粒径は、Horiba Laser Scattering Particle Size Distribution Analyzer,Model LA−910,Horiba International Corporation,Irvine,Californiaを用いて測定する。
【0020】
液体中の高度にフッ素化されたイオン交換ポリマーの分散液の固体総含量は、少なくとも5重量%、好ましくは5〜35重量%、より好ましくは10〜30重量%、最も好ましくは20〜30重量%である。スプレー乾燥は、液体分散液を、多数の液滴へと分解し、液滴を加熱された不活性ガスへ放出することによりなされて、粉末粒子を生成する。
【0021】
本発明の方法を実施するためのある好ましい方法によれば、加熱された不活性ガスは、分散液液滴が放出されるときに、乾燥チャンバ内に含まれている。好ましい乾燥チャンバは、加熱された不活性ガスが乾燥チャンバに導入されるチャンバ入口と、加熱された不活性ガスが乾燥チャンバから放出されるチャンバ出口とを有する。乾燥チャンバに入る加熱された不活性ガスの温度を慎重に制御し、分散液が乾燥チャンバに導入される速度を制御し、プロセス条件を調整すると、霧化された分散液液滴を乾燥して、乾燥した外側を有するが、少なくとも4wt%の全体の内部残留水分の粒子を与えるような内部残留水分を有する粒子が得られることが分かった。好ましくは、内部残留水分は、水和物の形態にある。
【0022】
チャンバ入口での加熱された不活性ガスの温度が、170〜250℃の範囲のとき、乾燥チャンバへの加熱されたガスおよび分散液の供給速度を調整すると、外側は乾燥しているが、少なくとも4wt%の全体の粒子内部残留水分となるのに十分な内部残留水分を保持するポリマー粒子が得られることが分かった。チャンバ入口での加熱された不活性ガスの温度は、170〜210℃の範囲であるのがさらにより好ましい。加熱されたガス流速および分散液流速を調整して、チャンバ出口での加熱された不活性ガスの温度が、70〜90℃の範囲に維持されるようにすると、上記のチャンバ入口温度範囲で、所望の外側乾燥と内部残留水分を有するポリマー粒子が得られることが分かった。チャンバ出口での不活性ガスの温度は、ガス入口温度、ガス流速および分散液流速の関数である。
【0023】
図1を参照すると、本発明の方法を実施するためのシステムの概略が示されている。具体的には、本実施形態において、高度にフッ素化されたイオン交換ポリマーと、任意で、少なくとも1つの他の成分の分散液は、フィードタンク2から、パイプ3を通して、スプレー乾燥チャンバ5の上部に位置する回転遠心噴霧器4(冷却ファン13により冷却された)まで、低せん断フィードポンプ1により汲み上げられる。供給ファン7により、パイプ6を通して、不活性ガスを送り、直接焼成ガスバーナー8により不活性ガスを加熱することにより、窒素等の加熱された不活性ガスをチャンバ5に供給する。加熱されたガスおよび分散液は、噴霧器4を通して、チャンバ5に入り、チャンバ5の上部に熱窒素エンベロープ9を生成する。加熱されたガスはまた、チャンバ5の上部に直接提供されてもよい。チャンバに導入される加熱されたガスの温度は、170〜250℃の範囲であり、熱風エンベロープはこの範囲の平均温度を典型的に有する。
【0024】
水分散液は、遠心噴霧器4から熱風エンベロープ9へ通って、そこで、水が即時に気化されて、一次ポリマー粒子が生成されて即時に凝集し始めて、より大きな粒子を形成する。粒子がチャンバ5を下方に下降するにつれて、粒子は成長し、低下する温度にさらされる。ポリマー粒子は、ガスの温度が、典型的に、約70°〜90℃の範囲であるガスと共に粉末粒子がチャンバを出るまで、蒸発する水および不活性ガスのガスストリームと共に移動する。粉末粒子を、バグハウス10中のガスストリームから分離し、粉末容器11で集める。窒素および水蒸気のガスストリームは、バグハウス10を通過して、任意で、換気扇14を用いて、スタックパイプ12から大気中へ放出される。
【0025】
図2を参照すると、本発明の方法を実施するための変形の閉ループシステムの概略が示されている。このシステムで用いる液体分散液は上述したとおりである。スプレー乾燥は、分散液および加圧された不活性ガスが、分散液を多数の微細な液滴へと分解する2流体ノズルを通して乾燥チャンバに入る際に、ポリマー分散液を霧化することによりなされる。液滴に加熱された不活性ガスが当たって、粉末粒子が生成される。具体的には、図2に示す閉ループスプレー乾燥システムで高度にフッ素化されたイオン交換ポリマーと、任意で、少なくとも1つの他の添加剤成分の分散液が、攪拌器18を有するフィードタンク22に保持される。分散液は、低せん断フィードポンプ21により、フィードタンク22から、パイプ23を通して、2流体ノズル20まで汲み上げられる。分散液が、ノズル20から放出される際、パイプ35から供給され、2流体ノズルから同時に放出される加熱された不活性ガスと分散液が当たる。ノズル中のガスの圧力は、約1.5バールである。加圧された不活性ガスは、加圧された造雪ガンのように分散液がノズルから放出される際、分散液を霧化する。微細な液滴が、乾燥チャンバ25の上部へ放出される。所望であれば、当該技術分野において公知の追加の噴霧器で、チャンバ25へ放出することができる。
【0026】
窒素等の加熱された不活性ガスは、パイプ29、直接燃焼式ガスバーナー等のヒーター43、および供給パイプ34を通して、不活性ガスを送ることにより、チャンバ25へ供給される。2流体ノズル20から放出された加圧された不活性ガスは、必ずしも加熱する必要はないが、乾燥機43により加熱され、パイプ35(図示)を通して供給されて、スプレー乾燥機中での乾燥プロセスを補助するとよい。チャンバ25中の加熱された不活性ガスは、乾燥ガスとして作用して、チャンバ25の上部に熱ガスエンベロープを形成する。チャンバに導入される加熱された窒素の温度は、170〜250℃の範囲であり、チャンバ25の上部の熱ガスエンベロープの平均温度は同じ範囲である。2流体ノズルから放出された分散液は、熱窒素エンベロープへ注入され、そこで、液滴中の液体が即時に気化されて、一次ポリマー粒子が生成されて即時に凝集し始めて、より大きな粒子を形成する。粒子がチャンバ25を下方に下降するにつれて、粒子は成長し、低下する温度にさらされ、蒸発する液体のガスストリームと共に、ガスストリームの入った粉末粒子チャンバ25まで、移動する。チャンバ25出口での不活性ガスの温度は、典型的に、約70°〜90℃の範囲である。
【0027】
図2に示すシステムにおいて、粒子は、サイクロン分離器28のガスストリームから分離されて、粒子収集容器26に集められる。サイクロン分離器28後にガスストリームに残る残留ポリマー粒子は、バグハウス30においてガスストリームから分離され、粒子容器27に集められる。不活性ガスおよび液体蒸気は、流体42により冷却されたコイルを有する凝縮器32を通過して、別個に処理される液体蒸気を回収する。蒸気を含まない不活性ガスは、ファンまたはポンプ40を用いて、パイプ29およびヒーター43にリサイクルされる。バグハウスガス入口36を通して、またはバルブ38や入口ライン39等の他のバルブおよび入口を通して、追加のメイクアップ不活性ガスをシステムに提供することができる。
【0028】
ポリマー粒子の再分散液
上述したとおり、残留水分含量が少なくとも4wt%の高度にフッ素化されたイオン交換ポリマーの流動可能な粒子は、第2の液体に再分散可能で、高度にフッ素化されたイオン交換ポリマーの第2の分散液を生成する。好ましい一実施形態において、ポリマー粒子を第2の液体に分散する工程中、第2の液体は、2atm未満の圧力および10〜40℃の範囲の温度である。第2の液体は、実質的に水からなる。あるいは、第2の液体は、極性の小分子有機液体等の有機液体を含んでいてもよい。好適な有機液体としては、低級(C1〜4)アルコール、酢酸、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、アセトニトリル、テトラメチレン環状スルホン、コハク酸ニトリルまたはこれらの混合物が挙げられる。好ましいアルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールおよびこれらの混合物の群からのものである。他の実施形態において、第2の液体は、有機液体と水の混合物を含む。
【0029】
ポリマー粒子粉末と液体の再分散液は、周囲温度および圧力で形成することができる。例えば、高度にフッ素化されたイオン交換ポリマーの流動可能な粉末、1−プロパノール等のアルコール溶媒および水は、室温および圧力で次のようにして混合することができる。イオン交換ポリマー粉末および1−プロパノールをビーカーに加え、高度にフッ素化されたイオン交換ポリマー粉末が完全に湿潤し、溶解し始めるまで、15〜20分間攪拌する。蒸留水を分散液に注ぎ、さらに30分間攪拌すると、混合物がクリア、無色かつ透明な分散液になる。
【0030】
再分散液のポリマー含量は、分散液の総重量に基づいて、典型的に、1〜40wt%のポリマーの範囲であり、より一般的な範囲は、分散液の総重量に基づいて、3〜30wt%のポリマーである。このプロセスにより、室温で、水および有機液体中の安定したコロイド分散液が得られる。「安定したコロイド」とは、攪拌せずに室温で保管したときに、30日の期間にわたって実質的に変化しない特性を分散液が有することを意味する。ポリマー含量、溶媒および溶媒と水の比率は、分散液にとって所望の最終用途に応じて容易に選択することができる。例えば、25〜30パーセントの固体を有する分散液が、キャスト膜の製造に有用であることが分かっているが、これより少ない固形分だと、強化膜を作製するのに望ましく、さらに少ない固体濃度だと、電極インクを製造するのに用いる分散液にとって望ましい。
【0031】
プロトン交換膜
プロトン交換膜は、公知の押出しまたはキャスティング技術を用いて、上述した高度にフッ素化されたイオン交換ポリマー再分散液から作製することができる。これらの膜は、目的の用途に応じて変えることができるが、典型的に、10ミル〜1ミル未満の厚さを有している。燃料電池用途に用いるのに好ましい膜の厚さは、約5ミル(約127ミクロン)以下、好ましくは約2ミル(約50.8ミクロン)以下である。
【0032】
強化過フッ素化イオン交換ポリマー膜もまた、公知のキャスティング技術を用いて、上述した高度にフッ素化されたイオン交換ポリマー際分散液から作製することができる。強化膜は、多孔性基材を、有機液体と水中のイオン交換ポリマーの再分散液に含浸することにより作製することができる。多孔性基材は、ある用途について機械的特性を改善し、かつ/またはコストを下げる。多孔性基材は、例えば、炭化水素、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィンおよびポリオレフィンを含むコポリマーをはじめとする様々な成分から作製することができる。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはポリクロロトリフルオロエチレン等の過ハロゲン化ポリマーもまた用いることができる。膨張PTFE(ePTFE)の、過フッ素化スルホン酸ポリマーによる含浸は、米国特許第5,547,551号明細書および同第6,110,333号明細書に開示されている。ePTFEは、W.L.Gore and Associates,Inc.,Elkton,MDより「Goretex」という商品名およびTetratec,Feasterville,PAより「Tetratex」という商品名で入手可能である。あるいは、多孔性基材は、パーフルオロアルコキシ(PFA)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレン/テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)およびエチレン/クロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)およびこれらの組み合わせを含んでいてもよい。他の場合、多孔性基材は、DuPont製Kevlar(登録商標)フィブリルまたはNomex(登録商標)フィブリルのアラミド繊維を含んでいてもよい。
【0033】
電極
燃料電池において有効に機能する電極については、有効なアノードおよびカソード電解触媒部位を、アノードおよびカソード電極に与えなければならない。アノードおよびカソードを有効にするためには、(1)電解触媒部位が反応物質に接触可能でなければならず、(2)電解触媒部位が、ガス拡散層に電気的に接続されていなければならず、(3)電解触媒部位は、燃料電池電解質にイオン的に接続されていなければならない。電解触媒部位は、電極のイオン交換ポリマーバインダーを介して、電解質にイオン的に接続されている。電極を製造するのに用いるイオン交換ポリマーは、上述した高度にフッ素化されたイオノマーの再分散液であってもよい。電極に用いるバインダーは、電解触媒粒子のためのバインダーとしてばかりでなく、電極を膜に固定する補助としても機能するため、バインダー組成物中のイオン交換ポリマーは、膜中のイオン交換ポリマーと相溶性があるのが好ましい。最も典型的には、バインダー組成物中のイオン交換ポリマーは、膜中のイオン交換ポリマーと同じである。
【0034】
アノード電極において、アノード電解触媒、イオン交換ポリマーおよび存在する場合にはその他の成分の量を調整して、アノード電解触媒が、得られる電極の重量で主成分となるようにするのが好ましい。より好ましくは、アノード電解触媒対アノード電極中のイオン交換ポリマーバインダーの重量比は、約1:1〜約10:1、より好ましくは2:1〜5:1である。
【0035】
カソード電極において、カソード電解触媒、イオン交換ポリマーおよび存在する場合にはその他の成分の量を調整して、カソード電解触媒が、得られる電極の重量で主成分となるようにするのが好ましい。より好ましくは、カソード電解触媒対カソード電極中のイオン交換ポリマーバインダーの重量比は、約1:1〜約10:1、より好ましくは2:1〜5:1である。
【0036】
アノードまたはカソード電極を形成するには、アノード電解触媒またはカソード電解触媒を、高度にフッ素化されたイオン交換ポリマーの再分散液により、好ましくは、水、アルコールまたは水/アルコール混合物中でスラリー化して、触媒分散液を形成する。当該技術分野において一般的に用いられるような追加の添加剤を、スラリーに組み込んでもよい。
【0037】
アノードまたはカソード電極を作製するのに用いる電解触媒インクまたはペーストは、電解触媒、高度にフッ素化されたイオン交換ポリマー再分散液および好適な液体媒体を組み合わせることにより作製される。媒体は、十分に低い沸点を有するのが有利であり、それであると、電極層の迅速な乾燥が、用いるプロセス条件で可能である。ただし、移動時に、電極が濡れているのが望ましい場合には、膜へ移動する前に、組成が乾燥するほど、早く乾燥しないものとする。液体媒体は、イオン交換ポリマーとの相溶性のために、典型的に極性であり、プロトン交換膜を湿潤できるのが好ましい。水を液体媒体として用いることができるが、媒体は、イオン交換ポリマーが、乾燥の際に合体し、安定した電極層を形成するのに、加熱等の後処理工程を必要としないようなものが好ましい。液体媒体が水の場合には、界面活性剤、アルコールまたはその他混和性溶媒と組み合わせて用いる。
【0038】
様々な極性有機液体およびその混合物は、電解触媒コーティングインクまたはペーストのための好適な液体媒体として作用し得る。水は、コーティングプロセスを妨げないのであれば、媒体として存在させることができる。極性有機液体の中には、大量にあると、膜を膨潤できるものがあるが、電解触媒コーティングに用いる液体の量は、プロセス中の膨潤からの悪影響が最少である、または検出されないよう十分に少ないのが好ましい。様々なアルコールが、n−、イソ−、sec−およびtert−ブチルアルコール等のC4〜C8アルキルアルコールをはじめとする液体媒体として用いるのに好適である。好ましいアルコールは、n−ブタノールおよびn−ヘキサノールであり、n−ヘキサノールがより好ましい。その他の好ましい液体媒体は、主に、炭素が12個のペルフルオロ化合物等のフッ素化溶媒、3M Company製FC−40やFC−70Fluorinert(商標)電子液体である。電解触媒コーティングインクやペーストに用いる液体媒体の量は異なり、用いる媒体のタイプ、電解触媒コーティングの構成成分、用いるコーティング装置のタイプ、所望の電極厚さ、プロセス速度等により決まる。
【0039】
電解触媒インク中の粒子のサイズは、粉砕、ミリングまたは超音波処理により減じて、電解触媒の最良の有用性が得られる粒子サイズとする。Hegmanゲージにより測定された粒子サイズは、好ましくは10ミクロン未満まで、より好ましくは5ミクロン未満まで減じる。
【0040】
得られた電解触媒ペーストまたはインクは、MEAに組み込まれる適切な基材にコーティングされる。公知の電解触媒コーティング技術を用いることができ、例えば、30μm以上の非常に厚いものから、例えば、1μm以下と非常に薄いものまで様々な厚さの様々な塗布層が生成される。典型的な製造技術には、電解触媒インクやペーストの、ポリマー交換膜か、ガス拡散基材のいずれかへの塗布が含まれる。さらに、電極デカールを製造し、膜またはガス拡散バッキング層に転写できる。電解触媒を基材へ塗布する方法には、スプレー、塗装、パッチコーティングおよびスクリーン印刷やフレキソグラフィー印刷が含まれる。アノードおよびカソード電極の厚さは、典型的に、約0.1〜約30ミクロンの範囲である。
【0041】
一作製方法では、触媒インクを、Kapton(登録商標)ポリイミド膜(DuPont,Wilmington,Delawareより入手可能)等の平坦な剥離基材に広げることにより、電極がデカールとして作製される。デカールは、圧力および任意の熱の適用により膜の表面に転写された後、剥離基材を除去して、触媒コーティング膜(「CCM」)を形成する。膜は、電極デカールが膜に転写されるときに、濡れているのが好ましい。あるいは、電解触媒インクは、印刷等により膜に直接塗布してもよく、その後触媒フィルムを、200℃以下の温度で乾燥させる。このように形成されたCCMを、ガス拡散バッキング基材と組み合わせて、MEAを形成する。
【0042】
他の方法は、まず、本発明の触媒インクを、ガス拡散バッキング基板と組み合わせてから、後の熱圧密工程において、プロトン交換膜と組み合わせるものである。この圧密は、200℃以下、好ましくは140〜160℃の範囲の温度で、MEAの圧密と同時に実施してもよい。ガス拡散バッキングは、織または不織カーボンファイバーでできた紙や布帛等の多孔性の導電性シートを含み、場合により、処理して、親水性または疎水性挙動を示すようにし、例えば、PTFE等のフルオロポリマー、典型的に、粒子とバインダーのフィルムを含んでなるガス拡散層と共に一表面または両表面にコーティングすることができる。本発明に従って用いるガス拡散バッキングおよびガス拡散バッキングの製造方法は、当業者に知られた従来のガス拡散バッキングおよび方法である。
【0043】
上述した膜および電極を用いて、プロトン交換膜、アノードおよびカソード電極ならびにガス拡散バッキングをそれぞれ含む燃料電池の膜電極組立体を製造することができると考えられる。導電性材料でできていて、反応物質に流れ場を与えるバイポーラセパレータプレートが、近接するMEA間に配置される。数多くのMEAおよびバイポーラプレートをこのやり方で組み立てて、燃料電池スタックとする。
【実施例】
【0044】
以下の実施例は、本発明の具体的な実施形態であり、その革新的な態様をさらに例示するものである。部およびパーセンテージは、特に断りのない限り、重量による。
【0045】
実施例において用いている略語は次のとおりである。
PTFEは、ポリテトラフルオロエチレンを表す。
TFE/PDMOFは、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(3,6−ジオキサ4−メチル−7−オクテンスルホニルフルオリド)のコポリマーを表す。
EWは、フルオロポリマーの等量を表す。
【0046】
原ポリマー分散液
各分散液について、TFE/PDMOFコポリマーペレット(25%+/−2%wt)、エタノール(15%+/−2%wt)およびDI水(60%+/−2%wt)の混合物を、攪拌/バッフル/熱油ジャケット圧力反応容器に入れた。TFE/PDMOFコポリマーは、化学的に安定させておいた。「化学的に安定させた」とは、コポリマーをフッ素化剤で処理して、コポリマー中の不安定な基の数を、典型的に、コポリマー中の106の炭素原子当たり、約200未満まで減じたことを意味する。化学的に安定化したフッ素化ポリマーについては、英国特許第1,210,794号明細書に記載されている。コポリマーの−−SO2F基は、加水分解して、−−SO3H形態まで酸交換しておいた。ポリマーペレットは、約5重量%の吸収水を含有していた。分散液Aについては、EW920のTFE/PDMOFコポリマーを用いた。分散液Bについては、EW1000のTFE/PDMOFコポリマーを用いた。
【0047】
各分散液について、混合物を、約230℃まで、熱油ジャケットを通して加熱し、平均攪拌器速度約158rpmで、2時間にわたって攪拌した。この時、反応器圧力を、大気圧から<1000psigまで増加した。2時間後、ポリマーペレットは微細な粒子へと溶融され、液体(エタノールおよびDI水)内で分散液を形成していた。次に、プロセス温度を、約68℃に調整し、1−プロパノール(NPA)を加え(最終バッチ重量の21%+/−3%wt)、攪拌器速度を68rpmまで減じた。NPA添加後、反応器を通気して、エタノールと水の濃度を減じた。排気を約1.5時間続け、プロセス温度は60℃に保った。原分散液の最終仕様、すなわち、20%+/−2%wtポリマー固体、50%+/−5%wt水、20%+/−5%wt1−プロパノール、<10%wtエタノールおよび50〜500センチポイズの範囲の粘度、に適合したときにプロセスは完了および終了した。少量の2−プロパノールがこのプロセス中に形成される。分散液Cは、分散液AおよびBを、1:1の重量比でブレンドすることにより調製した。
【0048】
分散液DおよびEは、追加の添加剤をそれぞれ含有していた以外は同様であった。分散液Dは、平均直径約15ナノメートルのセリア/ホウ素/ケイ素錯体の粒子約0.84%wtを含んでいた。分散液Eは、ポリビニルピロリドン(「PVP」)2%wtを含んでいた。
【0049】

【0050】
実施例1〜9:ポリマー粉末の作製
上記のフルオロポリマー分散液A、B、C、DおよびEを、図2に示すスプレー乾燥機に供給することにより、ポリマー粒子粉末を作製した。実施例1〜9について、用いたスプレー乾燥機は、Niro Inc.,Columbia,Marylandより入手可能なNiro Mobile Minor(商標)閉サイクルスプレー乾燥機であった。各実施例において、液体分散液を、スプレー乾燥機に、2流体ノズルを通して注入した。一方の流体は加圧窒素であり、他方は分散液であった。窒素および分散液を2流体ノズルから放出した際、加圧窒素が分散液を霧化した。ノズルを、図2に示すスプレー乾燥機の中央上部から下方に向けた。分散液を、熱窒素へ、スプレー乾燥機において放出し、分散液中の液体は即時に気化して、ポリマーおよび任意の添加剤の粒子は、粒子がチャンバを下降する間、凝集し、乾燥した。
【0051】
チャンバ入口およびチャンバ出口での窒素温度、2流体ノズルに供給された窒素の圧力および流量、ならびにノズルへの分散剤供給速度をはじめとする具体的なプロセス条件を表1に示す。30〜65g/100ccの範囲の嵩密度を有する粉末粒子を、液体蒸気および窒素のガスストリームから、図2に示すとおり、サイクロン分離器の後、バグハウスを用いて、分離した。実施例1〜9の内部水分含量、平均粒径、嵩密度およびスプレー乾燥粉末の色を表1に示す。比較例7では、粉末の内部残留水分は2%未満であった。実施例8および9では、添加剤を粉末に組み込んだ。
【0052】
表1

【0053】
表1 (続き)

【0054】
実施例10〜18:粉末の再分散液
以下の実施例10〜18のそれぞれについて、空気駆動攪拌器を備えたステンレス鋼容器に1−プロパノールを室温および大気圧で入れ、攪拌器を約250rpmで回転させた。以下の実施例10、12および14〜18の再分散液のそれぞれについて、実施例1〜9のいずれかのポリマー粉末を秤量し、1−プロパノールに加えた。ポリマー粉末が得られた実施例、粉末の重量を下の表2に示す。実施例によって、1−プロパノール対ポリマーの重量比は1:1〜9:1であった。少なくとも1時間、ポリマー粉末が完全に湿潤して、1−プロパノール中に分散するまで、中身を攪拌した。1−プロパノールとほぼ同重量のDI水を容器に加え、約4時間、分散液がクリアで無色になるまで、攪拌を続けた。
【0055】
大量の分散液を生成した実施例11および13では、成分を徐々に混合した。実施例11では、227グラムの実施例2のポリマー粉末を、484グラムの1−プロパノールに加え、3時間攪拌した。この混合物に、484グラムのDI水を加え、混合物をさらに2時間攪拌した。攪拌器を、再起動する前、14時間オフにした。攪拌器を再始動したら、45グラムの1−プロパノールおよび35グラムのDI水を混合物に加え、1時間攪拌してから、さらに20グラムの1−プロパノールおよび20グラムのDI水を加え、さらに2時間攪拌することにより、粘度を調整した。実施例13では、実施例4のポリマー粉末280グラムを混合物に加えて、1時間攪拌する前に、800グラムのDI水を800グラムの1−プロパノールに加えた。さらに120グラムの実施例4のポリマー粉末を加え、混合物をさらに4時間攪拌した。
【0056】
実施例10〜18の各再分散液について、ポリマー、1−プロパノールおよび水の重量パーセント、分散液の粘度および外観を下の表2に示す。
【0057】
表2

【0058】
表2 (続き)

* 0.84% Ce/B/ケイ素ナノ粒子添加剤を含む
** 2.00%PVP添加剤を含む
【0059】
実施例19:キャスト膜
溶液キャストパーフルオロスルホン酸膜を、以下の手順に従って、実施例13の再分散液から作製した。実施例13の分散液を、5フィート/分の線速度で動くMylar(登録商標)フィルム上に、スロットダイから汲み上げた。スロット開口部は、厚さ5ミル、幅14インチ(35.6cm)であった。ポンプ速度および線速度を調整して、約1ミルの厚さの膜を得た。Mylar(登録商標)フィルムは、3ゾーンガス焼成乾燥機を通して膜を取り、膜を上下から乾燥した。乾燥機の各ゾーンは、長さ10フィート、各ゾーンの温度は次のとおりであった。
ゾーン1:45℃
ゾーン2:73℃
ゾーン3:96℃
乾燥した膜を続いて熱処理し、Mylar(登録商標)フィルム上のPFSA膜を、膜を上下で加熱された3ゾーンガス焼成乾燥機を通して移動することにより、ポリマーを合体させた。膜の滞留時間は、各ゾーンにおいて45秒で、総加熱時間は135秒(+/−2秒)であった。各乾燥機ゾーンは、長さ15フィート、各ゾーンの温度は次のとおりであった。
ゾーン1:38℃
ゾーン2:82℃
ゾーン3:160℃
【0060】
実施例20:強化膜
強化パーフルオロスルホン酸膜を、以下の手順に従って、実施例11の再分散液から作製した。実施例11の分散液を、5フィート/分の線速度で動くMylar(登録商標)フィルムに支持された膨張ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)基材の第1の側に、スロットダイから汲み上げた。ePTFE基材は、Yeu Ming Tai Chemical Industrial Co.Ltd(「YMT」),Taichung,Taiwan製のStyle 2101 ePTFE Porous Filmであり、30ミクロンの厚さ、0.3ミクロンの細孔径、85%気孔率および1200ml/分/平方インチを超える通気度を有している。スロット開口部は、厚さ5ミル、幅14インチ(35.6cm)であった。Mylar(登録商標)フィルム上のePTFE基材は、3ゾーンガス焼成乾燥機を通して膜を取り、膜を上下から乾燥した。乾燥機の各ゾーンは、長さ10フィート、各ゾーンの温度は次のとおりであった。
ゾーン1:48℃
ゾーン2:73℃
ゾーン3:95℃
第1の側を乾燥した後、Mylar(登録商標)フィルムを除去し、膜を反転させて、ePTFEの反対側を、同じ条件下で、実施例11の分散液でコーティングした。ポンプ速度および線速度を調整して、1ミルの厚さの膜を得た。膜を3ゾーンガス焼成乾燥機に、同じ速度および同じゾーン温度で再び通した。この強化パーフルオロスルホン酸膜を、膜を上下で加熱する3ゾーンガス焼成乾燥機を通してPFSAフィルムを移動することにより、ポリマーを合体させた。膜の滞留時間は、各ゾーンにおいて45秒で、総加熱時間は約135秒であった。各乾燥機ゾーンは、長さ15フィート、各ゾーンの温度は次のとおりであった。
ゾーン1:38℃
ゾーン2:82℃
ゾーン3:160℃
【0061】
実施例21:触媒インク
実施例1のスプレー乾燥粉末3グラム、イソプロピルアルコール(「IPA」)29グラム、1−プロパノール(「NPA」)29グラムおよびDI水29グラムを含む再分散液を、丈夫なプラスチック瓶で混合した。溶液を350rpmで、高速ミキサー(Caframo製BDC2002ミキサー)を用いて、窒素雰囲気中で攪拌しながら、容器を氷浴で冷却し、溶液温度を約0℃まで下げた。溶液温度が約0℃に達したら、243.5m2/gのBET表面積を有する炭素担持白金触媒(66.2wt%Pt、33.8wt%微粒子炭素)(日本、神奈川県の田中貴金属工業株式会社より入手したTEC10E70TPM触媒)10グラムを、混合を続けながら、約15分にわたって、再分散液に徐々に加えた。炭素担持Ptの全てを添加した後、攪拌を、10〜15分間続けた。この触媒インク混合物は、216センチポイズの粘度および以下の処方:29%IPA、29%NPA、29%DI水、3%イオノマーおよび10%触媒を有していた。
【0062】
触媒インク混合物を、Branson Sonifier450を用いて、70%の出力で「超音波分解」して、3〜5分間にわたって、温度が約70℃に達したとき、または達するまで、電解触媒粒子を破砕した。温度が70℃に達したら、超音波分解を停止し、「超音波分解」を再始動する前に、氷浴で混合物を室温まで冷やした。インク混合物中の最大粒径が5ミクロン未満となるまで、超音波分解を停止した。粒径を、Hegmanゲージを用いて測定した。インクの固形分が約13wt%になるまで、「rotovap」を用いて、このインク混合物を約70℃で濃縮した。インク混合物中の最大粒径を再び試験した。最大粒径が、5ミクロンを超える場合には、最大粒径が5ミクロン未満になるまで、上述した超音波分解プロセスを用いて、インク混合物を再度超音波分解した。インク混合物の固形分および粘度を測定したところ、それぞれ、13wt%および3275センチポイズであった。
【0063】
実施例22:電極デカール
実施例21の触媒インクを、厚さ2ミルのパーフルオロアルコキシ(「PFA」)フィルムの8cm×11cm片に、室温で、ナイフドローダウンし、7.07cm×7.07cmの寸法へ切断する(約50cm2の総面積とする)ことにより、電極デカールを作製した。コーティング厚さを選択して、アノードデカールおよびカソードデカールにとって所望の触媒装填量となるようにした。アノードデカールのPt金属装填量は、0.325mg/cm2であり、乾燥コーティング厚さは、約0.1ミル(0.00254mm)であった。カソードデカールのPt金属装填量は0.550mg/cm2であり、乾燥コーティング厚さは、約0.2ミル(0.00508mm)であった。触媒装填量は、XFR機器を用いて測定した。
【0064】
実施例23〜26:触媒コーティング膜
実施例23および24では、実施例19および20の膜をそれぞれ用いて、各膜の片側にアノード電極インク混合物でフレキソグラフィー印刷し、各膜の反対側にカソード電極インク混合物で印刷することにより、触媒コーティング膜(CCM)を生成した。
【0065】
実施例23および24のアノードおよびカソード電極をそれぞれ印刷するのに用いたインク混合物は、Nafion(登録商標)DE2020TFE/PDMOFコポリマーイオノマー(FTIRにより測定され、スルホニルフルオリド形態にある920EW)で作製され、触媒は、高表面積炭素に担持された白金であった(BET表面積243.5m2/gの66.2wt%Pt、33.8wt%微粒子炭素(日本、神奈川県の田中貴金属工業株式会社より入手したTEC10E70TPM触媒)。実施例23のアノードおよびカソード電極インク混合物ならびに実施例24のアノード電極インクを作製するのに用いた溶媒は、50wt%DI水および50wt%ジプロピレングリオールモノメチルエーテル(「DPM」)であった。実施例24のカソード電極インクを作製するのに用いた溶媒は、100wt%ヘキサノールであった。
【0066】
イオノマーと溶媒は、丈夫なプラスチック瓶で混合した。溶液を350rpmで、高速ミキサー(Caframo製BDC2002ミキサー)を用いて、窒素雰囲気中で攪拌しながら、容器を氷浴で冷却し、溶液温度を約0℃まで下げた。溶液温度が約0℃に達したら、炭素担持白金触媒10.1グラムを、混合を続けながら、約15分にわたって、分散液に徐々に加えた。炭素担持Ptの全てを添加した後、攪拌を、10〜15分間続けた。この触媒インク混合物は、216センチポイズの粘度を有していた。触媒インク混合物を、Branson Sonifier450を用いて、70%の出力で「超音波分解」して、3〜5分間にわたって、温度が約70℃に達したとき、または達するまで、電解触媒粒子を破砕した。温度が70℃に達したら、超音波分解を停止し、「超音波分解」を再始動する前に、氷浴で混合物を室温まで冷やした。インク混合物中の最大粒径が5ミクロン未満になるまで、超音波分解を停止した。粒径を、Hegmanゲージを用いて測定した。インクの固形分が約12wt%になるまで、「rotovap」を用いて、このインク混合物を約70℃で濃縮した。インク混合物中の最大粒径を再び試験した。最大粒径が、5ミクロンを超える場合には、最大粒径が5ミクロン未満になるまで、上述した超音波分解プロセスを用いて、インク混合物を再度超音波分解した。インク混合物の固形分および粘度を測定したところ、それぞれ、12wt%および3275センチポイズであった。
【0067】
実施例23および24では、フレキソグラフィー(「フレキソ」)を用いて、インク混合物を、膜に直接印刷した。フレキソ印刷プロセスは、一連の4つのローラ、すなわち、インクローラ、メーター(Anilox)ローラ、プレート(印刷)シリンダーおよび圧胴を用いる。インクローラは、電極インクを、インクパンからメーターローラまで転写する。メーターローラは、インクを、プレートシリンダ上へ、均一な厚さまで計量する。
【0068】
印刷する膜は、Mylar基材に支持されていて、これは、プレートシリンダと圧胴間を通過するベルトにテープ留めされている。圧胴は、プレートシリンダに圧力を印加することによって、画像を膜に転写する。印刷した膜を、90〜100°Fの加熱環境で、乾燥チャンバに供給する。チャンバは、フレキシガラスエンクロージャであり、連続円形モータ駆動ベルト(外周16フィート×幅60インチ)と、携帯X線蛍光(XRF)分光機器を保持する3つの支持構造(ベルトの幅に対して等間隔)とからなる。XRFを用いて、完全に乾燥する前に、印刷した電極の触媒装填量を測定する。
【0069】
アノードおよびカソード電極の目標の平均触媒装填量は、それぞれ、0.30および0.53mgPt/cm2である。フレキソ印刷中、2回の印刷通過または回転後の度に、触媒装填量をXRFにより測定する。触媒装填量が目標に近くなるまで、フレキソ印刷プロセスを繰り返す。通常、アノード電極がまず膜に印刷される。Mylar基材上のアノード印刷膜を、ベルトから除去する。第2のMylar基材を膜のアノード側に対して配置し、第1のMylar基材を膜の反対側から剥がす。膜の反対側を、同じフレキソ印刷プロセスを用いて、フレキソ印刷する。実施例23および24の印刷電極のインク組成および触媒装填量を表3に示す。
【0070】
表3

【0071】
実施例25では、実施例22に従って作製されたアノードおよびカソード電極デカールを、従来の厚さ1ミルのスルホニル酸形態にあるE.I.du Pont de Nemours and Companyより販売されているキャストNafion(登録商標)NRE 211膜に塗布することにより、CCM(触媒コーティング膜)を生成した。乾燥膜の片を、膜の片側にある実施例22のアノード電極デカールの1つと、膜の反対側にある実施例22のカソード電極デカールの1つとの間に挟んだ。2つのデカールが互いに位置合わせされ、膜に向くように配置されるよう注意を払った。組立体全体を、油圧プレスの2つの予熱した(約125℃まで)8インチ×8インチの板間に入れ、10000lbsの圧力に達するまで、プレスの板を即時に合わせた。サンドイッチ組立体を、加圧下で約5分間保持してから、同じ圧力下で、約60℃未満の温度に達するまで、約2分間プレスを冷却した。組立体を、プレスから取り出し、PFAキャリアフィルムを、膜の両側の電極から徐々に剥がしたところ、アノードおよびカソード電極が、膜に転写されているのが分かった(これをCCMと呼ぶ)。
【0072】
実施例26では、用いた膜が、実施例13の再分散液から作製した実施例19のキャスト膜であった以外は、実施例25のプロセスを繰り返して、他の触媒コーティング膜を生成した。
【0073】
実施例23〜26のCCMの性能を、Fuel Cell Technologies Inc,New Mexicoより入手した単電池試験組立体を用いて測定した。ガス拡散バッキングの2枚のシート間に挟まれた上記CCMの1つを含む膜電極組立体を作製した(GDBが、CCMの電極領域を確実にカバーするよう注意した)。アノードおよびカソードガス拡散バッキングは、厚さ9.3ミルの不織カーボン布(25BCGDL、SGL Carbon Group of Germany製)を含んでいた。厚さ1ミルのFEPポリマースペーサに夫々沿わせた厚さ7ミルの2つのガラスファイバー強化シリコーンゴムガスケット(Furan−タイプ1007、ストックウェルラバーカンパニー(Stockwell Rubber Company)より入手)を、膜の対向する側にある電極とGDBを囲んで、膜の各側の露出した端部領域をカバーするような形状にカットして置いた。GDBとガスケット材料が重ならないように注意した。挟んだ組立体全体を、50cm2の標準単電池組立体(Fuel Cell Technologies Inc.,Los Alamos,NMより入手)のアノードとカソード流動場グラファイト板の間で組み立てた。試験組立体はまた、タイロッド、絶縁性層および金めっき電流コレクタと結合された、アノード入口、アノード出口、カソードガス入口、カソードガス出口、アルミニウムエンドブロックも備えていた。単電池組立体の外側板にあるボルトを、2ft.lbまでトルクレンチにより締めた。
【0074】
単電池組立体を、燃料電池試験ステーションに接続した。試験ステーションのコンポーネントには、カソードガスとして用いる空気の供給部、燃料電池からの電力出力を制御するロードボックス、アノードガスとして用いる水素の供給部、水素を燃料電池アノードに所望の流量で供給するポンプ、および未使用水素を集める収集瓶が含まれる。電池を室温にして、水素および空気をアノードおよびカソードコンパートメントに、電池の入口を通して、それぞれ、693cc/分と1650cc/分の流量で導入した。単電池の温度を、70℃に達するまで徐々に上げた。空気とH2の両方の化学量論の理論値は1である。これは、空気と水素の100%利用率に相当する。化学量論と利用率間の関係は、%利用率=1/化学量論×100である。このように、高圧試験および低圧試験プロトコルにおいて、2化学量論で実施すると、空気と水素の%利用率は50%である。電池背圧は、電池の出口流れを制限することにより制御され、全体のシステム圧力が増大する。これは、電池出口で制御されるため、背圧と呼ばれる。水素および空気の供給速度は、電流に比例して維持し、回路の抵抗は、電流を増やすために、工程によって変えた。1amps/cm2の電流密度で電池電圧を測定し、下の表4に記録した。
【0075】
表4


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高度にフッ素化されたイオン交換ポリマーの流動可能かつ液体分散可能な粒子を製造する方法であって、
少なくとも10wt%の有機液体を含む液体中の高度にフッ素化されたイオン交換ポリマーの分散液を提供し、
前記分散液を霧化して、前記分散液の液滴を生成し、
前記分散液液滴を、加熱された不活性ガスへ放出し、
前記加熱された不活性ガス中にある前記分散液液滴を乾燥して、高度にフッ素化されたイオン交換ポリマーの流動可能な粒子を生成することを含み、前記ポリマー粒子が、乾燥表面と、少なくとも4wt%の内部残留水分含量とを有することを含む方法。
【請求項2】
前記不活性ガスが窒素である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマー粒子が乾燥中に凝集し、前記凝集した粒子の平均直径が、1〜100ミクロンの範囲にある請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマー粒子の平均直径が10〜50ミクロンの範囲にある請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマー粒子の内部残留水分含量が4〜10wt%の範囲にある請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマー粒子の内部残留水分含量が4〜8wt%の範囲にある請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記加熱されたガスが、前記分散液液滴が放出されるときに乾燥チャンバ内に含まれており、前記乾燥チャンバは、前記加熱された不活性ガスが前記乾燥チャンバに導入されるチャンバ入口と、前記加熱された不活性ガスが前記乾燥チャンバから放出されるチャンバ出口とを有し、前記チャンバ入口での前記加熱された不活性ガスの温度が170〜250℃の範囲にある請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記チャンバ入口での前記加熱されたガスの温度が170〜210℃の範囲にある請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記チャンバ出口での前記加熱されたガスの温度が70〜90℃の範囲にある請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記高度にフッ素化されたイオン交換ポリマーが過フッ素化されている請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記高度にフッ素化されたイオン交換ポリマーがパーフルオロスルホン酸である請求項1に記載の方法。
【請求項12】
高度にフッ素化されたイオン交換ポリマーの前記分散液が、添加剤をさらに含み、前記添加剤が、前記ポリマー粒子の実質的に全てに存在している請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記添加剤が触媒である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記触媒が、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、金、ランタン、イットリウム、ガドリニウム、銀、鉄、セリウム、チタン、バナジウム、ハフニウム、タンタル、ニオブ、クロム、モリブデン、タングステン、レニウムおよびこれらの組み合わせの群から選択される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記添加剤が、
アルミナ、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ゲルマニウム、シリカ、セリアおよびこれらの組み合わせの群からの金属酸化物、
金属イオン、半金属イオンおよびこれらの組み合わせの群からの安定剤、および
白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、金、ランタン、イットリウム、ガドリニウム、銀、鉄、セリウム、チタン、バナジウム、ハフニウム、タンタル、ニオブ、クロム、モリブデン、タングステン、レニウムおよびこれらの組み合わせの群から選択される、前記安定剤とは異なる少なくとも1つの触媒
を含む錯体である請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記添加剤がポリビニルピロリドンである請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記添加剤が、疎水性または親水性粒子、カーボンブラック、導電性ポリマー、顔料、タルク、アラミドポリマーおよびフルオロポリマーの群から選択される請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−513667(P2010−513667A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542848(P2009−542848)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/025793
【国際公開番号】WO2008/082496
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】