説明

高機能水生成システム

【課題】 エンジンのジャケット冷却水との熱交換により生成された温水を利用して、再利用に適した凝縮水を生成し、この再利用に適した凝縮水を積極的に生成してエネルギーのさらなる有効利用を図ることができるシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】 エンジンのジャケット冷却水との熱交換により得られた温水を減圧下で蒸発させる減圧式蒸発装置4と、この減圧式蒸発装置4からの蒸気を凝縮させる間接式凝縮部6と凝縮水貯留部7とを有する凝縮装置8と、この凝縮装置8内から凝縮水を排出する凝縮水排出手段9とからなり、前記減圧式蒸発装置4内を減圧する減圧手段5は、前記凝縮装置8を介して前記減圧式蒸発装置4内を減圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高機能水を生成し、それを有効利用するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンにより発電機を作動させて電力を得る一方で、このエンジンから排出される排ガスを排ガスボイラへ送り、蒸気を生成させてエネルギーを有効利用するものとして、特許文献1に記載のものが知られている。このシステムでは、図3に示すように、レシプロエンジン100により発電機101を作動させ、これにより排出される排ガスを排ガスボイラ102へ送り、そこで蒸気を生成させる。前記レシプロエンジン100のジャケット冷却水は、温水熱交換機103によって減圧蒸発缶104内の温水に熱を与える。この温水は、蒸気エゼクタ105の負圧作用によって蒸発させられ、前記排ガスボイラ102からの蒸気とともに蒸気使用設備106へ送られる。この蒸気使用設備106で使用された蒸気は、第一ドレンタンク107内へ溜められ、その後、第二ドレンタンク108および軟水器109を経由して前記排ガスボイラ102へ戻されて再利用されている。
【0003】
以上のように、このシステムでは、ジャケット冷却水との熱交換により得られた温水を蒸気へ変換し、これを凝縮することで補給水として再利用している。
【特許文献1】特開2002−4943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このシステムにおいて生成される凝縮水は、ボイラなどの補給水として使用するには、その水質の純度が低下する可能性があり、ボイラなどの補給水として求められる高機能水としては不適である。したがって、このシステムにおける凝縮水を再利用すると、排ガスボイラ102の水管などが腐食し易くなる。この点において、このシステムで生成される凝縮水を高機能水とするためには、さらに別途、脱気装置などの設備が必要となり経済的でない。
【0005】
この発明は、このような従来技術の問題点を解決することを目的とする。具体的には、ジャケット冷却水との熱交換により生成された温水を利用して、再利用に適した凝縮水を生成することができるシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、エンジンの排ガスを利用して蒸気を発生させる排ガスボイラを備えた高機能水生成システムにおいて、前記エンジンのジャケット冷却水との熱交換により得られた温水を減圧下で蒸発させる減圧式蒸発装置と、この減圧式蒸発装置からの蒸気を凝縮させる間接式凝縮部と凝縮水貯留部とを有する凝縮装置と、この凝縮装置内から凝縮水を排出する凝縮水排出手段とからなり、前記減圧式蒸発装置内を減圧する減圧手段は、前記凝縮装置を介して前記減圧式蒸発装置内を減圧することを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記エンジンのジャケット冷却水との熱交換は、一つ以上の熱交換機を介して行うことを特徴としている。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2において、前記エンジンのインタークーラー冷却水および/または前記エンジンのジャケット冷却水を冷却する冷却装置を備えていることを特徴としている。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項において、前記凝縮水排出手段によって排出される凝縮水を補給水として使用する高機能水使用装置を備えていることを特徴としている。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4において、前記高機能水使用装置は、前記排ガスボイラおよび/または前記冷却塔であることを特徴としている。
【0011】
請求項6に記載の発明は、エンジンの排ガスを利用して蒸気を発生させる排ガスボイラを備えた高機能水生成システムにおいて、前記エンジンのジャケット冷却水との熱交換により得られた温水を減圧下で蒸発させる減圧式蒸発装置と、この減圧式蒸発装置からの蒸気を凝縮させる間接式凝縮部と凝縮水貯留部とを有する凝縮装置と、前記凝縮水貯留部から凝縮水を排出する凝縮水排出手段と、前記減圧式蒸発装置内を減圧する減圧手段とを備えるとともに、前記凝縮装置が前記減圧式蒸発装置の内部に設けられることを特徴としている。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項6において、前記エンジンのインタークーラー冷却水は、前記間接式凝縮部へ供給され、前記減圧式蒸発装置からの蒸気と熱交換することを特徴としている。
【0013】
さらに、請求項8に記載の発明は、請求項6または請求項7において、前記エンジンのインタークーラー冷却水は、前記減圧式蒸発装置からの蒸気と熱交換した後、冷却装置によって冷却されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、前記エンジンのジャケット冷却水との熱交換により得られた温水から再利用に適した凝縮水を生成することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、前記エンジンのジャケット冷却水の保有する熱を多用途に利用することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、前記冷却装置が前記エンジンのインタークーラー冷却水と熱交換することで、前記エンジンの出力を増加させることができる。また、前記冷却装置が前記エンジンのジャケット冷却水と熱交換することで、前記エンジンの冷却を確実に行うことができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、この種の排ガスボイラを備えたシステムにおけるトータルコストの低減が可能となる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、得られた凝縮水を前記排ガスボイラへ補給水として使用した場合は、濃縮水の排水量(ブロー量)の低減が可能となり、また腐食,スケールなどの発生を抑制することができる。そして、得られた凝縮水を補給水として前記冷却塔に使用した場合は、藻類,スライム,レジオネラ属菌の繁殖の抑制が可能となり、循環水の濃縮の低減や腐食の発生を抑制するとともに、循環水の排水量(ブロー量)を低減することができる。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1に記載の効果に加え、コンパクト化を図ることができる。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、インタークーラー冷却水は、前記減圧式蒸発装置か
らの蒸気と熱交換し、この蒸気を凝縮させることができるので、前記凝縮装置へ供給するための別系統の冷却水が必要でなくなる。
【0021】
さらに、請求項8に記載の発明によれば、前記冷却装置によって前記減圧式蒸発装置からの蒸気と熱交換したインタークーラー冷却水を冷却するので、前記エンジンのインタークーラーを効率よく冷却することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(実施の形態)
この発明の実施の形態について説明する。この実施の形態は、エンジンの排ガスを利用して蒸気を発生させる排ガスボイラを備えた高機能水生成システムにおいて、前記エンジンのジャケット冷却水との熱交換により得られた温水を減圧下で蒸発させる減圧式蒸発装置と、この減圧式蒸発装置からの蒸気を凝縮させる間接式凝縮部と凝縮水貯留部とを有する凝縮装置と、この凝縮装置内から凝縮水を排出する凝縮水排出手段などから構成されており、前記減圧式蒸発装置内を減圧する減圧手段は、前記凝縮装置を介して前記減圧式蒸発装置内を減圧している。
【0023】
この実施の形態の構成要素について説明する。前記エンジンは、ガスエンジン,ガソリンエンジン,ディーゼルエンジンなどを含むものである。
【0024】
前記減圧式蒸発装置は、減圧に耐えうるもので、下部は、前記エンジンのジャケット冷却水との熱交換により加熱された温水を貯留する構成となっている。減圧状態となることで、この貯留されている温水は蒸発させられる。
【0025】
前記凝縮装置は、前記間接式凝縮部と前記凝縮水貯留部とからなるもので、熱交換作用によって蒸気を凝縮させる装置である。前記間接式凝縮部は、蒸気と間接的に熱交換し、蒸気を凝縮させる機能を有する。前記間接式凝縮部は、好ましくはシェルアンドチューブ式の熱交換機を例示することができる。凝縮を間接的に行うことで、凝縮水に不純物の混入を避けることができる。前記凝縮水貯留部は、前記間接式凝縮部により凝縮された凝縮水を貯留するためのものであり、前記間接式凝縮部とは別個に離れた箇所に設けられているものを含むが、前記間接式凝縮部の直下に設けることが好ましい。さらに、直下に設ける場合も、一体型あるいは別体型として構成することができる。
【0026】
前記凝縮水排出手段は、前記凝縮装置内の凝縮水を排出するためのものである。この前記凝縮水排出手段は、前記減圧手段の減圧作動を阻害しないような排出処理能力を備えている。
【0027】
前記減圧手段は、前記凝縮装置内を減圧状態にして非凝縮性ガスである空気を排出するためのものである。前記凝縮装置内を減圧して蒸気を凝縮することにより、凝縮水に空気が溶存しないので、前記凝縮装置内の凝縮水は、脱気されたものとすることができる。また、前記減圧手段は、前記凝縮装置を介して前記減圧式蒸発装置内を減圧し、これにより前記減圧式蒸発装置内の温水を蒸発させて蒸気を生成させる。
【0028】
前記高機能水使用装置は、前記排ガスボイラ,前記冷却塔,洗浄器を含む概念であるが、高機能水を好適に利用できるものが好ましい。複数個の前記高機能水使用装置を設けることや、種類の異なる前記高機能水使用装置を設けるものであってもよい。高機能水は、脱気された純水を含む概念であり、この高機能水を前記高機能水使用装置の一例である排ガスボイラへ補給水として供給すれば、純水なので濃縮水の排水量(ブロー量)の低減効果を期待することができ、またスケール,腐食の抑制効果を有するとともに、高機能水は温水なので給水予熱効果がある。また、高機能水を冷却塔へ補給水として供給すれば、藻
類,スライム,レジオネラ属菌の繁殖の抑制が可能となり、循環水の濃縮の低減や腐食の発生を抑制することができる。
【実施例1】
【0029】
以下、この発明を実施した高機能水生成システムの具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、この実施例の高機能水生成システムを示している。
【0030】
図1において、この実施例の高機能水生成システムは、発電機1を作動させるエンジンの一例であるガスエンジン2と、このガスエンジン2の排ガスを利用して蒸気を発生させる排ガスボイラ3と、温水を減圧下で蒸発させる減圧式蒸発装置の具体例としてのタンク4と、前記ガスエンジン2のジャケット12内を通過するジャケット冷却水と前記タンク4内の貯留水との熱交換を行う第一熱交換機13と、前記タンク4内を減圧する減圧手段の具体例としての水封式真空ポンプ5と、前記タンク4からの蒸気を凝縮させる間接式凝縮部6と凝縮水貯留部7とを有する凝縮装置8と、この凝縮装置8内から凝縮水を排出する凝縮水排出手段の具体例としての排出ポンプ9と、この排出ポンプ9から排出される凝縮水を補給水として使用する高機能水使用装置の一つであるとともに冷却装置の具体例でもある冷却塔10などから構成されている。そして、この冷却塔10は、前記ガスエンジン2のジャケット冷却水とインタークーラ冷却水を冷却する構成となっている。
【0031】
前記ガスエンジン2は、ターボチャージャーの圧縮空気を冷却水で冷却するインタークーラー11と、前記ガスエンジン2を冷却水で冷却するための前記ジャケット12をそれぞれ備えている。このジャケット12を通過する冷却水の入口温度は約80℃であり、またその出口温度は約90℃である。前記ジャケット12を通過したジャケット冷却水は、第一熱交換機13を介して前記タンク4の下部の貯留水を加熱する。前記ガスエンジン2は、前記発電機1を作動させて電力を発電させるとともに、前記排ガスボイラ3へ排ガスを送り、蒸気を生成させる。
【0032】
前記タンク4は、前記水封式真空ポンプ5によって前記凝縮装置8および接続ライン14を介して内部が減圧状態となるように構成されている。このような減圧下において、前記エンジン2のジャケット冷却水との熱交換によって加熱された前記タンク4内の貯留水の一部は蒸発して蒸気となり、前記接続ライン14を介して、前記凝縮装置8内へ導入される。ここにおいて、前記タンク4内の温水(貯留水)を補充するため、補給水を供給する給水ライン24が前記タンク4に接続されている。また、前記タンク4内の温水は、濃縮されていくため、濃縮水を排出する排出ライン25が設けられている。
【0033】
前記第一熱交換機13は、前記タンク4内に設けられ、前記ジャケット12を通過するジャケット冷却水と前記タンク4内の貯留水との熱交換を行う。この実施例では、ジャケット冷却水は密閉系で循環するので、前記第一熱交換機13は、間接式のものを使用している。
【0034】
前記凝縮装置8は、前記間接式凝縮部6と前記凝縮水貯留部7とからなり、前記間接式凝縮部6は、この実施例においては、シェルアンドチューブ式熱交換機である。前記間接式凝縮部6の上部には、前記タンク4の上部と接続された前記接続ライン14が接続されており、前記タンク4からの蒸気は、前記水封式真空ポンプ5の減圧作動により前記接続ライン14を介して前記凝縮装置8へ導入される。前記間接式凝縮部6には、蒸気を導入する複数のチューブ15,15,…が所定間隔を空けて立設されており、冷却用の水が冷却水ライン16から導入され、前記各チューブ15の外側と接触することにより、前記接続ライン14からの蒸気と間接的に熱交換を行う。前記凝縮水貯留部7は、前記凝縮装置8の下部に設けられており、前記間接式凝縮部6で凝縮された蒸気の凝縮水を溜める。ここにおいて、前記冷却水ライン16内の冷却水は、前記間接式凝縮部6での熱交換により
得られた熱を第二熱交換機17を介して温水利用設備(図示省略)などへ供給して、その有効利用を図っている。
【0035】
前記水封式真空ポンプ5は、前記間接式凝縮部6の下流側であって、前記凝縮水貯留部7内の凝縮水の水面より上方位置に接続されている。これにより、減圧機能を維持するとともに凝縮水の排出を抑制している。前記水封式真空ポンプ5を前記間接式凝縮部6の下流側に接続することで、凝縮前の蒸気を排出しにくくしている。前記水封式真空ポンプ5は、前記凝縮装置8内を減圧状態にすることで、前記凝縮装置8内の非凝縮性ガスである空気を排出する。また、前記水封式真空ポンプ5は、前記接続ライン14を介して前記タンク4内をも減圧状態にしている。前記水封式真空ポンプ5は、封水の温度を調整することで処理能力を変えることができる。
【0036】
前記排出ポンプ9は、前記凝縮装置8内の凝縮水を排出するためのものである。排出された凝縮水は、補給水タンク18を介して、前記排ガスボイラ3へ補給水として供給される一方、前記冷却塔10へ補給水として供給される。また、適宜、供給ライン(符号省略)を分岐させて、他の高機能水使用装置へ供給することもできる。
【0037】
前記冷却塔10は、高機能水使用装置の一つに相当するもので、一般的に公知である密閉式の冷却塔を例示している。この冷却塔10において、前記ガスエンジン2のインタークーラー冷却水およびジャケット冷却水と間接的な熱交換を行っている。
【0038】
つぎに、この実施例の高機能水生成システムの全体動作について説明する。まず、前記ガスエンジン2から発生した排ガスは、前記排ガスボイラ3へ送られる。前記排ガスボイラ3は、排ガスを熱源として蒸気を生成し、生成された蒸気を各種の蒸気使用機器(一般に「負荷機器」と称されている。)へ送る。一方、前記ジャケット12内で前記ガスエンジン2と熱交換したジャケット冷却水は、前記第一熱交換機13を介して前記タンク4内の貯留水と熱交換を行う。その後、このジャケット冷却水は、第三熱交換機19を介して前記冷却塔10および前記インタークーラー11を通過したインタークーラー冷却水と熱交換したり、熱交換せずにそのまま前記ジャケット12へ送られるものに分けられる。これらの各流量は、三方弁20の制御によって行われる。
【0039】
さて、前記タンク4内は、前記水封式真空ポンプ5によって減圧状態となっており、前記タンク4内の加熱された貯留水の一部は蒸気となって前記接続ライン14を介して、前記凝縮装置8へ導かれる。前記凝縮装置8へ導入された蒸気は、前記間接式凝縮部6によって凝縮されるが、前記凝縮装置8内は、前記水封式真空ポンプ5によって減圧状態となっているので、非凝縮性ガスである空気が排出され、前記排出ポンプ9によって排出される凝縮水には空気が溶存していない。したがって、この凝縮水は、脱気されたものであり、また蒸気が凝縮したものなので、不純物がなく、純水になっている(すなわち、高機能水)。この高機能水は、高機能水使用装置へ補給水として好適に使用されるが、この実施例では、高機能水使用装置として、前記排ガスボイラ3および前記冷却塔10に使用される。
【0040】
以上のように、この実施例では、ジャケット冷却水と熱交換した温水を高機能水化し、高機能水を補給水として高機能水使用装置へ再利用することで、エネルギーの有効利用を図っている。
【0041】
この実施例では、前記冷却塔10を密閉式のものを用いたが、一般的に公知である開放式の冷却塔を用いることもできる。
【0042】
また、別の変形例では、前記凝縮水貯留部7内の水位を計測する水位計(図示省略)を設置して、前記凝縮水貯留部8から凝縮水がなくならないように、かつ前記水封式真空ポンプ5による前記タンク4内の減圧を阻害されないように(凝縮水を吸い込まないように)、前記排出ポンプ9の処理量を制御するための制御部(図示省略)を設けることもできる。これにより、前記排出ポンプ9の空回転の防止および前記タンク4内の減圧状態を維持(前記水封式真空ポンプ5による凝縮水の排出を防止)することができるのでより好ましい。
【0043】
さらに、インタークーラー冷却水を冷却するために前記冷却塔10を用いたが、空冷式ラジエータであってもよい。
【0044】
以上のように、この実施例によれば、ジャケット冷却水との熱交換により得られた温水を利用して高機能水を生成しているので、エネルギーの有効利用を図ることができる。この高機能水は、前記タンク4内の貯留水を減圧下で蒸気にするので不純物が混入しておらず、減圧下の前記凝縮装置8において蒸気が凝縮したものなので、非凝縮性ガスである空気が排出されている。また、この高機能水を補給水として前記排ガスボイラ3および前記冷却塔10へ供給するので、エネルギーのさらなる有効利用を図ることができる。
【0045】
すなわち、この高機能水を前記排ガスボイラ3に補給水として用いると、純水なので濃縮水の排水量(ブロー量)を低減することができる。また、脱気され、しかも前記排ガスボイラ3の水管などの腐食因子である硫酸イオン,塩化物イオンがないため、前記水管などの腐食の発生を抑制することができ、カルシウム,マグネシウムなどの硬度分がないので、前記水管などに生成されるスケールを抑制することができる。さらに、高機能水は温水なので、給水予熱のためのエネルギーを抑えることができる。一方、この高機能水を前記冷却塔10へ補給水として用いた場合は、硬度分が含まれていないので、藻類,スライム,レジオネラ属菌の繁殖を抑制することができる。また、純水なので循環水の濃縮を低減でき、濃縮水の排水量(ブロー量)を低減することができる。さらに、硫酸イオン,塩化物イオンがないため腐食の発生を抑制することができる。
【実施例2】
【0046】
図2は、第二実施例の高機能水生成システムを示している。図1における第一実施例の高機能水生成システムにおける構成と同じ構成は、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0047】
図2において、この第二実施例の高機能水生成システムは、発電機1を作動させるエンジンの一例であるガスエンジン2と、このガスエンジン2の排ガスを利用して蒸気を発生させる排ガスボイラ3と、温水を減圧下で蒸発させる減圧式蒸発装置の具体例としてのタンク4と、前記ガスエンジン2のジャケット12内を通過するジャケット冷却水と温水ライン22内の温水との熱交換を行う第四熱交換機21と、この温水と前記タンク4内の貯留水との熱交換を行う第五熱交換機23と、前記タンク4内を減圧する減圧手段の具体例としての水封式真空ポンプ5と、前記タンク4からの蒸気を凝縮させる間接式凝縮部6と凝縮水貯留部7とを有する凝縮装置8と、この凝縮装置8内から凝縮水を排出する凝縮水排出手段の具体例としての排出ポンプ9と、この排出ポンプ9から排出される凝縮水を補給水として使用する高機能水使用装置の一つである冷却塔10などから構成されている。そして、この冷却塔10は、前記ガスエンジン2のジャケット冷却水とインタークーラ冷却水を冷却する構成となっている。
【0048】
さて、前記第四熱交換機21は、前記ジャケット12を通過するジャケット冷却水(入口温度は約80℃であり、その出口温度は約90℃である。)と、前記温水ライン22を通過する温水(入口温度は約78℃であり、また出口温度は約88℃である。)との熱交
換を行うものである。熱をもらった前記温水ライン22内の温水の一部または全部は、前記第五熱交換機23へ送られる。前記第五熱交換機23は、前記タンク4内に設けられており、前記第五熱交換機23内を通過する前記温水ライン22内の温水の一部または全部と前記タンク4内の貯留水との熱交換を行う。
【0049】
前記温水ライン22内の温水は、前記第四熱交換機21を通過し、前記温水ライン15の経路上のA地点を経由し、途中、給湯などに利用され、一部または全部は、前記温水ライン22の経路上のB地点へ循環するようになっている。
【0050】
この第二実施例では、第五熱交換機23を通過した温水は、第四熱交換機21を通過し、再び第五熱交換機23へ戻ってくる循環路が形成されているが、熱交換機を増やして、このような循環路を増やし、ジャケット冷却水と前記タンク4内の貯留水とを複数の前記循環路を介して、熱交換することもできる。
【0051】
この第二実施例によれば、前記ジャケット12内のジャケット冷却水の熱をもらった前記温水ライン22内の温水の一部または全部は、前記タンク4内の貯留水を加熱するとともに、給湯などに利用されるので、エネルギーの有効利用を図ることができる。
【実施例3】
【0052】
図3は、第三実施例の高機能水生成システムを示している。図1における第一実施例の高機能水生成システムにおける構成と同じ構成は、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0053】
この第三実施例では、前記凝縮装置8は、前記減圧式蒸発装置の具体例としての前記タンク4の内部であって、前記タンク4の貯留水の水面より上方に設けられている。そして、前記タンク4に直接、前記水封式真空ポンプ5が接続されており、前記タンク4の内部が減圧状態とされている。前記凝縮水貯留部7は、略桶形状であり、前記間接式凝縮部6から滴下する凝縮水を溜める。
【0054】
前記間接式凝縮部6には、前記ガスエンジンからのインタークーラー冷却水が供給されており(たとえば、入口温度は約38℃であり、出口温度は約52℃である。)、前記タンク4の下方からの蒸気と熱交換を行う。そして、この熱交換により凝縮された凝縮水,すなわち高機能水は、前記凝縮水貯留部7に溜まり、前記凝縮水貯留部7の下面から前記排出ポンプ9によって排出され、前記排ガスボイラ3および前記冷却塔10の補給水として再利用される。
【0055】
一方、前記間接式凝縮部6を通過したインタークーラー冷却水は、高機能水使用装置の一つであるとともに冷却装置の具体例でもある前記冷却塔10により冷却され、前記インタークーラー11へ供給される(前記インタークーラー11への入口温度は約32℃であり、出口温度は約38℃である。)。
【0056】
この実施例によれば、第一実施例と同様の作用効果を奏することに加え、設備のコンパクト化を図ることができる。また、インタークーラー冷却水を前記間接式凝縮部6へ供給するので、前記タンク4からの蒸気を凝縮させるための別系統の冷却水が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】この発明に係る第一実施例の概略説明図
【図2】この発明に係る第二実施例の概略説明図
【図3】この発明に係る第三実施例の概略説明図
【図4】従来技術を示す概略説明
【符号の説明】
【0058】
2 ガスエンジン(エンジン)
3 排ガスボイラ
4 タンク(減圧式蒸発装置)
5 水封式真空ポンプ(減圧手段)
6 間接式凝縮部
7 凝縮水貯留部
8 凝縮装置
9 排出ポンプ(凝縮水排出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排ガスを利用して蒸気を発生させる排ガスボイラを備えた高機能水生成システムにおいて、前記エンジンのジャケット冷却水との熱交換により得られた温水を減圧下で蒸発させる減圧式蒸発装置と、この減圧式蒸発装置からの蒸気を凝縮させる間接式凝縮部と凝縮水貯留部とを有する凝縮装置と、この凝縮装置内から凝縮水を排出する凝縮水排出手段とからなり、前記減圧式蒸発装置内を減圧する減圧手段は、前記凝縮装置を介して前記減圧式蒸発装置内を減圧することを特徴とする高機能水生成システム。
【請求項2】
前記エンジンのジャケット冷却水との熱交換は、一つ以上の熱交換機を介して行うことを特徴とする請求項1に記載の高機能水生成システム。
【請求項3】
前記エンジンのインタークーラー冷却水および/または前記エンジンのジャケット冷却水を冷却する冷却装置を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の高機能水生成システム。
【請求項4】
前記凝縮水排出手段によって排出される凝縮水を補給水として使用する高機能水使用装置を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高機能水生成システム。
【請求項5】
前記高機能水使用装置は、前記排ガスボイラおよび/または前記冷却塔であることを特徴とする請求項4に記載の高機能水生成システム。
【請求項6】
エンジンの排ガスを利用して蒸気を発生させる排ガスボイラを備えた高機能水生成システムにおいて、前記エンジンのジャケット冷却水との熱交換により得られた温水を減圧下で蒸発させる減圧式蒸発装置と、この減圧式蒸発装置からの蒸気を凝縮させる間接式凝縮部と凝縮水貯留部とを有する凝縮装置と、前記凝縮水貯留部から凝縮水を排出する凝縮水排出手段と、前記減圧式蒸発装置内を減圧する減圧手段とを備えるとともに、前記凝縮装置が前記減圧式蒸発装置の内部に設けられることを特徴とする高機能水生成システム。
【請求項7】
前記エンジンのインタークーラー冷却水は、前記間接式凝縮部へ供給され、前記減圧式蒸発装置からの蒸気と熱交換することを特徴とする請求項6に記載の高機能水生成システム。
【請求項8】
前記エンジンのインタークーラー冷却水は、前記減圧式蒸発装置からの蒸気と熱交換した後、冷却装置によって冷却されることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の高機能水生成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−46597(P2007−46597A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−175093(P2006−175093)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】