説明

高活性光触媒粒子、その製造方法及びその用途

【課題】蛍光灯のような実用的な微弱な光量の光源で十分に光触媒能を発揮しうる光触媒粒子の製造方法、ならびに粒子ならびに粉体、それを用いた有機重合体組成物、そのような粒子を含有する中性で透明性の高いスラリー、コーティング剤、それらから得られる光触媒性を示す膜ならびにそれを有する物品を提供する。
【解決手段】二酸化チタンを含有するpHが3〜5の水系スラリーを用意する工程と、光触媒として不活性な化合物を含有する水系溶液を用意する工程と、両者をpH4〜10の範囲において反応させる工程とを含むことを特徴とする二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光活性の高い光触媒に関する。さらに詳しくは、蛍光灯のような実用的な微弱な光量の光源で十分に光触媒能を発揮しうる光触媒粒子ならびに粉体、それを用いた有機重合体組成物、スラリー、コーティング剤、光触媒性ならびに親水性を示す膜、ならびにそれを有する物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、実用的に代表的な光触媒としては酸化チタンが幅広く使われている。酸化チタンには約400nm以下の波長の紫外線を吸収して電子を励起させる性質がある。そこで、発生した電子とホールは粒子表面に到達すると、酸素や水と化合して様々なラジカル種を発生させる。このラジカル種が主として酸化作用を示し、表面に吸着した物質を酸化分解する。これが光触媒の基本原理である。こうした超微粒子酸化チタンの光機能を利用して、抗菌、消臭、防汚、大気の浄化、水質の浄化等の環境浄化が検討されている。
【0003】
ここで、その触媒能を高める例として次の方法がある。
(1)粒径を小さくする。
生成した電子とホールの再結合を抑制するために、非常に有効である。
(2)結晶性を高める。
生成した電子とホールの表面への拡散速度を上げるために、有効である。
(3)電荷分離を行う。
生成した電子とホールを電荷分離して、その表面に到達する歩留まりを向上する。
(4)バンドギャップを調整する。
【0004】
微量不純物を添加するなどしてバンドギャップを小さく(最大吸収波長を大きく)すると、例えば、太陽光や蛍光灯のような紫外線の少ない光源の光利用率を高めることができる。
このような手段の中で、近年(4)を目的とするいわゆる可視光応答型光触媒の検討が種々なされている。
【0005】
例えば、特許文献1では、触媒活性の高いアナターゼ型二酸化チタンにCr(クロム),V(バナジウム)等の金属元素をイオン注入して材料改質を行うことにより、二酸化チタンの光最大吸収波長を長波長側にシフトさせ、可視光での二酸化チタン触媒の動作を可能にしている。しかし、上記のような金属元素のイオン注入は、装置が大規模になり高価であり工業的には現実性に乏しいという問題点がある。
【0006】
また、特許文献2では、X線光電子分光法で結合エネルギー458eV〜460eVの間にある酸化チタンのピークの半価幅を4回測定した時の1回目と2回目のチタンのピークの半価幅の平均値をAとし、3回目と4回目のチタンのピークの半価幅の平均値をBとしたときに指数X=B/Aが0.97以下である酸化チタンが開示されている。しかし、粉の活性が不満足であるばかりか、着色を示しているが故にその用途には制限がある。現実的には、透明性を要求されるような塗料には不適である、というような欠点を有している。
【0007】
また、従来の多くの可視光応答型の光触媒は、その触媒能の十分な発現のためには、キセノンランプのような強力な光源を必要としている点においても現実性に乏しいと言わざるを得ない。既存の安価な光源、例えば、昼白色蛍光灯のような室内において常用される光源で十分な効果を発揮する光触媒があれば大きな実用上のメリットがある。
【0008】
特許文献3には、病室や居住空間の内壁に二酸化チタンなどの半導体からなる光触媒薄膜を設置することによって最近や悪臭物質を処理する方法が開示されているが、その二酸化チタンの活性の作り込み方法およびその粒子の光触媒活性については言及されていない。通常の二酸化チタンを使用するのであれば、上述の例の可視光応答型の光触媒よりも、蛍光灯のような紫外線の比率の小さい光源による活性は低いものと予想される。
【0009】
また、酸化チタン微粒子の光触媒能に注目した応用については、代表的な例として酸化チタン微粒子を取り扱いの容易な繊維やプラスチック成形体などの媒体に練り込んだり、布、紙等の基体の表面に塗布する方法が試みられている。しかしながら、酸化チタンの強力な光触媒作用によって有害有機物や環境汚染物質だけでなく繊維やプラスチック、紙自身の媒体も分解・劣化され易く、実用上の耐久性への障害になっていた。また、酸化チタン微粒子の取り扱い易さから、酸化チタン微粒子とバインダーを混合した塗料が開発されているが、そのような媒体への作用(障害)に克服する耐久性ある安価なバインダーはまだ見出されていない。
【0010】
特許文献4や特許文献5には、酸化チタン粒子の強い光触媒作用による樹脂媒体の劣化またはバインダーの劣化に対する防止抑制策が開示されており、その手段として酸化チタン粒子の表面にアルミニウム、珪素,ジルコニウム等の光不活性化合物を立体的障壁のある島状に担持して光触媒作用を抑制する方法が提案されている。しかしながら、この方法では光不活性化合物が島状に担持されるものの、樹脂媒体やバインダーの特定部位は酸化チタンの強い光触媒作用を受ける部分が存在してしまう欠点がある。
【0011】
特許文献6には、酸化チタンの表面に多孔質のリン酸カルシウムを被覆した光触媒性酸化チタンが提案されているが、この場合は被覆膜のリン酸カルシウム層によって光触媒性能が低下するという問題点が指摘されている。
【0012】
また、特許文献7には、酸化チタン微粒子の表面の少なくとも一部に多孔質のリン酸カルシウム被覆層が形成され、その界面に陰イオン性界面活性剤が存在する二酸化チタン微粒子粉体が開示されている。
【0013】
また、特許文献8には、縮合リン酸などのアニオン活性物質を含む二酸化チタン微粒子であって、pH5の水系環境下における該微粒子の界面電位が0〜−100mVであることを特徴とする光触媒粉体が開示されている。
【0014】
さらに、光触媒活性を有する酸化チタンを含むスラリーに関しては、特許文献9に、チタニアゾル溶液、チタニアゲル体又はチタニアゾル・ゲル混合体を、密閉容器内で加熱処理すると同時に加圧処理し、ついで超音波により分散させるか又は攪拌して得られたアナターゼ型酸化チタン含有スラリーが開示されている。
【0015】
また、特許文献10には分散安定性に優れた光触媒塗料が開示され、これには146〜150cm−1の範囲にラマンスペクトルのピークを有し、かつ、アナターゼ型酸化チタンの占める割合が95質量%以上である酸化チタンとシリカゾルとを溶媒中に含む光触媒塗料が開示されている。
【0016】
一方、酸化チタンはその等電点が5〜6であり、本質的にpHが5〜9というような中性近辺では凝集しやすいという性質があり、溶媒への分散体(スラリー、ゾルなど)としては安定な透明性の高いものが得られにくい。従って、酸性の領域での分散体が通常使用されることが多いが、生体や環境に対して好ましくない影響を与えるし、金属に対する腐食作用が無視できなくなり金属基材に適用しにくくなってしまう。そこで、中性で安定な酸化チタンゾルが希求されている。
【0017】
特許文献11には、負帯電の酸化チタンコロイド粒子成分50〜100重量部と、錯化剤5〜50重量部と、アルカリ性成分1〜50重量部とを含む、pHが5〜10である酸化チタンゾルが開示されている。また、特許文献12には、含水酸化チタンの解膠により得たチタニアゾルを水溶性チタン化合物およびリン酸化合物と混合し、反応液から酸を除去することにより、中性領域において透明性および分散安定性を有する、水和リン酸化合物で被覆された解膠酸化チタン粒子よりなる中性チタニアゾルを製造する方法が開示されている。また、特許文献13には、中性の二酸化チタンゾルをヒドロキシカルボン酸又はその誘導体で安定化し、そしてその安定化の前、間又は後に金属イオン、無機アニオン、錯化剤及び/又は酸化剤で処理する方法などが開示されている。
【0018】
このようにいくつかの技術が開示されてはいるが、これまでの従来技術においては、蛍光灯のような実用的な微弱な光量の光源で十分に光触媒能を発揮しうる光触媒性と、有機系材料と一緒に用いる場合の耐久性及び分散安定性を同時に満足するような光触媒性粒子及びそのような粒子を含有する中性で透明性の高いスラリーを工業的に有用な方法で提供するに至っていない。
【特許文献1】特開平9−262482号公報
【特許文献2】特開2001−72419号公報
【特許文献3】国際公開WO94/11092号公報
【特許文献4】特開平9−225319号公報
【特許文献5】特開平9−239277号公報
【特許文献6】特開平10−244166号公報
【特許文献7】国際公開WO99/33566号公報
【特許文献8】特開2002−1125号公報
【特許文献9】特開平10−142008号公報
【特許文献10】特開平11−343426号公報
【特許文献11】特開平11−278843号公報
【特許文献12】特開2000−290015号公報
【特許文献13】特開平7−89722号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、上記のような従来技術に鑑み、蛍光灯のような実用的な微弱な光量の光源で十分に光触媒能を発揮しうる光触媒粒子の製造方法、ならびに粒子ならびに粉体、それを用いた有機重合体組成物、そのような粒子を含有する中性で透明性の高いスラリー、コーティング剤、それらから得られる光触媒性を示す膜ならびにそれを有する物品を提供することである。また、それらの組成物や膜において、着色が少なく、膜においては透明性が高いものを提供することである。
【0020】
また、本発明の目的の一つには、二酸化チタンの光触媒性を損なうことなく、それと同時に分散安定性に優れることによって産業上の利用性を極めて高めることが可能となる光触媒性粉体及びスラリーとそれらを用いた重合体組成物、塗工剤、光触媒性成形体、光触媒性構造体を提供することが含まれる。
【0021】
さらに本発明は、繊維、紙、プラスチック素材への表面塗布、または該素材への練り混み、あるいは塗料組成物への使用において優れた光触媒性と耐久性及び分散安定性とを有する光触媒性粉体及びスラリーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者は、上記の目的に向かって鋭意研究を重ねた結果、二酸化チタン微粒子と、縮合リン酸塩のような光触媒的に不活性な化合物を特定の条件下で複合化させることにより本発明の粒子が得られることを見出し、該粒子を用いてスラリーを得、これを用いることにより上記目的を達成した。
【0023】
即ち、本発明は以下[1]〜[93]の発明に関する。
[1] 二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法であって、二酸化チタンを含有するpHが3〜5の水系スラリーを用意する工程と、光触媒として不活性な化合物を含有する水系溶液を用意する工程と、両者をpH4〜10の範囲において反応させる工程とを含むことを特徴とする二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。
[2] 二酸化チタンを含有する水系スラリーにおける二酸化チタンの濃度が0.1〜10質量%である、前項1に記載の二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。
[3] 二酸化チタンを含有する水系スラリーと光触媒として不活性な化合物を含有する水系溶液とを混合したときの二酸化チタンの濃度が5質量%以下である、前項1に記載の二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。
[4] 二酸化チタンを含有する水系スラリーと光触媒として不活性な化合物を含有する水系溶液との反応温度が50℃以下である、前項1に記載の二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。
[5] 二酸化チタンを含有する水系スラリーを用意する工程が、二酸化チタンを湿式合成する工程を含み、かつ該合成スラリーから二酸化チタン粉末を得る工程を含まないものである、前項1に記載の二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。
[6] 二酸化チタンが、アナターゼ型結晶系を含むものである前項1に記載の二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。
[7] 二酸化チタンが、ブルッカイト型結晶系を含むものである前項1に記載の二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。
[8] 二酸化チタンが、ルチル型結晶系を含むものである前項1に記載の二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。
[9] 二酸化チタンが、アナターゼ型、ルチル型及びブルッカイト型のうち少なくとも2種以上の結晶系を含むものである前項1に記載の二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。
[10] 二酸化チタンのBET比表面積が、10〜300m/gである前項1に記載の二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。
[11] 光触媒として不活性な化合物が、リン酸塩、縮合リン酸塩、ホウ酸塩、硫酸塩、縮合硫酸塩及びカルボン酸塩から選ばれる塩である前項1に記載の二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。
[12] 縮合リン酸塩が、ピロリン酸、トリポリリン酸塩、テトラポリリン酸塩、メタリン酸塩、ウルトラリン酸塩からなる群より選ばれた少なくとも1種の塩である前項1に記載の二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。
[13] 光触媒として不活性な化合物が、Si化合物、Al化合物、P化合物、S化合物、N化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種である前項1に記載の二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。
[14] 光触媒として不活性な化合物が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属及びAlからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属を含むものである前項1に記載の二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。
[15] アルカリ金属が、Na、Kからなる群より選ばれた少なくとも1種である前項14に記載の二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。
[16] アルカリ土類金属が、Mg、Caからなる群より選ばれた少なくとも1種である前項14に記載の二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。
[17] 遷移金属が、Fe,Znからなる群より選ばれた少なくとも1種である前項14に記載の二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。
[18] 二酸化チタンを光触媒として不活性な化合物で表面処理する二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法であって、その原料である二酸化チタン粒子より高い光触媒活性を有する複合粒子を与えることのできる二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。
[19] 前項1に記載の製造方法によって得られた、二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子。
[20] 光触媒として不活性な化合物が、二酸化チタン粒子の表面に部分的に存在する前項19に記載の二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子。
[21] 前項1に記載の製造方法によって得られた、二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子を含む水系スラリー。
[22] 光触媒粒子が、前項19に記載の粒子を含むものであって、アセトアルデヒドを20体積ppm含有する5Lの乾燥空気中で、直径9cmの平面上に均一に敷かれた3.5gの光触媒粒子に、昼白色蛍光灯で波長365nmの紫外線強度が6μW/cmとなるように光を照射したとき、照射1時間後のアセトアルデヒドの分解率が20%以上となることを特徴とする光触媒粒子。
[23] 分解率が、40%以上となることを特徴とする前項22記載の光触媒粒子。
[24] 分解率が、80%以上となることを特徴とする前項22記載の光触媒粒子。
[25] 二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子のBET比表面積が、10〜300m/gである前項24に記載の光触媒粒子。
[26] 二酸化チタンが、アナターゼ型結晶系を含むものである前項25に記載の光触媒粒子。
[27] 二酸化チタンがブルッカイト型結晶系を含むものである前項25に記載の光触媒粒子。
[28] 二酸化チタンがルチル型結晶系を含むものである前項25に記載の光触媒粒子。
[29] 二酸化チタンが、アナターゼ型、ルチル型及びブルッカイト型のうち少なくとも2種の結晶系を含む前項25に記載の光触媒粒子。
[30] 光触媒として不活性な化合物が、二酸化チタン質量に対して、0.01質量%〜50質量%存在する前項25に記載の光触媒粒子。
[31] 光触媒として不活性な化合物が、リン酸塩、縮合リン酸塩、ホウ酸塩、硫酸塩、縮合硫酸塩及びカルボン酸塩から選ばれる塩である前項30に記載の光触媒粒子。
[32] 縮合リン酸塩が、ピロリン酸、トリポリリン酸塩、テトラポリリン酸塩、メタリン酸塩、ウルトラリン酸塩からなる群より選ばれた少なくとも1種の塩である前項31に記載の光触媒粒子。
[33] 光触媒として不活性な化合物が、Si化合物、Al化合物、P化合物、S化合物、N化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種である前項30に記載の光触媒粒子。
[34] 光触媒として不活性な化合物が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属及びAlからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属を含むことを特徴とする前項30に記載の光触媒粒子。
[35] アルカリ金属が、Na、Kからなる群より選ばれた少なくとも1種である前項34に記載の光触媒粒子。
[36] アルカリ土類金属が、Mg、Caからなる群より選ばれた少なくとも1種である前項34に記載の光触媒粒子。
[37] 遷移金属が、Fe,Znからなる群より選ばれた少なくとも1種である前項34に記載の光触媒粒子。
[38] 電気泳動光散乱法によって測定されたゼータ電位から求められる等電点が4以下であることを特徴とする前項30に記載の光触媒粒子。
[39] 前項30に記載の光触媒粒子を含有することを特徴とする光触媒性粉体。
[40] 前項30に記載の光触媒粒子を含有することを特徴とする有機重合体組成物。
[41] 有機重合体組成物の有機重合体が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、合成樹脂、天然樹脂及び親水性高分子からなる群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする前項40に記載の有機重合体組成物。
[42] 有機重合体組成物が、塗料、コーティング組成物、コンパウンド及びマスターバッチからなる群より選ばれた少なくとも1種の有機重合体組成物である前項40に記載の有機重合体組成物。
[43] 有機重合体組成物が、光触媒性粉体を該組成物全質量中0.01〜80質量%含む前項40に記載の有機重合体組成物。
[44] 前項40に記載の有機重合体組成物を成形してなることを特徴とする光触媒性成形体。
[45] 光触媒性成形体が、繊維、フィルム及びプラスチックからなる群より選ばれた少なくとも1種の成形体である前項44に記載の光触媒性成形体。
[46] 前項45に記載の光触媒性成形体から得られることを特徴とする物品。
[47] 前項30に記載の光触媒粒子を表面に具備したことを特徴とする物品。
[48] 物品が、建材、機械、車両、ガラス製品、家電製品、農業資材、電子機器、工具、食器、風呂用品、トイレ用品、家具、衣類、布製品、繊維、革製品、紙製品、スポーツ用品、蒲団、容器、眼鏡、看板、配管、配線、金具、衛生資材及び自動車用品からなる群より選ばれた少なくとも1種である前項46に記載の物品。
[49] 前項30に記載の光触媒粒子を含有することを特徴とするスラリー。
[50] 光触媒粒子を含むスラリーであって、スラリーを乾燥して得られる粉体が、前項30に記載の光触媒粒子であることを特徴とするスラリー。
[51] スラリーが、溶媒として水を含有する前項49に記載のスラリー。
[52] スラリーが、光触媒粒子を0.01〜50質量%含有する前項49に記載のスラリー。
[53] スラリーのpHが、5〜9である前項49に記載のスラリー。
[54] スラリーのpHが、6〜8である前項53に記載のスラリー。
[55] スラリーの光透過率が、スラリー中の光触媒粒子の濃度を10質量%、波長550nm、光路長2mmで測定したとき、20%以上である前項49に記載のスラリー。
[56] 光透過率が30%以上である前項55に記載のスラリー。
[57] 光触媒性を示す膜を与えるコーティング剤であって、前項30に記載の光触媒粒子と、少なくともバインダーとから構成されることを特徴とするコーティング剤。
[58] 光触媒性を示す膜を与えるコーティング剤であって、前項49に記載のスラリーと、少なくともバインダーとから構成されることを特徴とするコーティング剤。
[59] バインダーが、有機化合物を含む前項57に記載のコーティング剤。
[60] 有機化合物が、アクリルシリコン、ポリビニルアルコール、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン、セルロイド、キチン、澱粉シート、ポリアクリルアミド及びアクリルアミドからなる群より選ばれた少なくとも1種の有機化合物である前項59に記載のコーティング剤。
[61] バインダーが、無機化合物を含む前項57に記載のコーティング剤。
[62] 無機化合物が、Zr化合物、Si化合物、Ti化合物、Al化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の無機化合物である前項61に記載のコーティング剤。
[63] コーティング剤を塗布して得られた膜を硬化させる光触媒性を示す膜の製造方法であって、硬化させる温度が500℃以下であり、前項57に記載のコーティング剤を用いることを特徴とする光触媒性を示す膜の製造方法。
[64] 硬化させる温度が、200℃以下である前項63に記載の光触媒性を示す膜の製造方法。
[65] 硬化させる温度が、30℃以下である前項63に記載の光触媒性を示す膜の製造方法。
[66] 光触媒性を示す膜を有する物品であって、光触媒性を示す膜が前項63に記載の方法により得られることを特徴とする物品。
[67] 光触媒性を示す膜を有する物品であって、硫化水素を60体積ppm含有する5Lの乾燥空気中で、表面積400cmの光触媒性を示す膜に、昼白色蛍光灯で波長365nmの紫外線強度が6μW/cmとなるように光を照射したとき、照射4時間後の硫化水素の分解率が20%以上となることを特徴とする物品。
[68] 光触媒性を示す膜が、0.01〜100μmの膜厚を持つ前項66または67に記載の物品。
[69] 膜厚が、0.01〜0.1μmである前項68に記載の物品。
[70] 膜厚が、1〜100μmである前項68に記載の物品。
[71] 物品が、光触媒性を示す膜の無い状態での550nmにおける光透過率をT1%、光触媒性を示す膜を有する状態での550nmにおける光透過率をT2%としたとき、T2/T1が0.9以上となる部分を有する光触媒性を示す膜を有する物品である前項69に記載の物品。
[72] 物品が、光触媒性を示す膜の無い状態での550nmにおける光透過率をT1%、光触媒性を示す膜を有する状態での550nmにおける光透過率をT2%としたとき、T2/T1が0.9以上となる部分を有する光触媒性を示す膜を有する物品である前項70に記載の物品。
[73] 物品が、光触媒性を示す膜の無い状態での550nmにおける光反射率をR1%、光触媒性を示す膜を有する状態での550nmにおける光反射率をR2%としたとき、R2/R1が0.9以上でとなる部分を有する光触媒性を示す膜を有する物品である前項69に記載の物品。
[74] 物品が、光触媒性を示す膜の無い状態での550nmにおける光反射率をR1%、光触媒性を示す膜を有する状態での550nmにおける光反射率をR2%としたとき、R2/R1が0.9以上でとなる部分を有する光触媒性を示す膜を有する物品である前項70に記載の物品。
[75] 光触媒性を示す膜が、2H以上の鉛筆硬度を有する前項66又は67に記載の物品。
[76] 光触媒性を示す膜が、波長365nmにおける紫外線強度が6μW/cmとなるように、昼白色蛍光灯で光を24時間照射された後、20°以下の水との接触角を有することを特徴とする前項66又は67に記載の物品。
[77] 水との接触角が、10°以下である前項76に記載の物品。
[78] 水との接触角が、5°以下である前項75に記載の物品。
[79] 光触媒性を示す膜が、波長365nmにおける紫外線強度が6μW/cmとなるように昼白色蛍光灯で光を24時間照射され、ついで暗所に24時間保持された後、20°以下の水との接触角を有することを特徴とする前項66又は67に記載の物品。
[80] 暗所に24時間保持された後、水との接触角が10°以下である前項79に記載の物品。
[81] 暗所に24時間保持された後、水との接触角が5°以下である前項80に記載の物品。
[82] 光触媒性を示す膜が、キセノンアークランプ式促進暴露試験4000時間後、黄変度が10以下であり、波長365nmにおける紫外線強度が6μW/cmとなるように昼白色蛍光灯で光を24時間照射した後の水との接触角が20°以下である前項66又は67に記載の物品。
[83] 光触媒性を示す膜が、無機基材上に形成されている前項66又は67に記載の物品。
[84] 無機基材が、金属もしくはセラミックスである前項83に記載の物品。
[85] 無機基材が、Si化合物、Al化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の無機基材である前項84に記載の物品。
[86] 光触媒性を示す膜が、有機基材上に形成されている前項66又は67に記載の物品。
[87] 有機基材が、有機重合体である前項86に記載の物品。
[88] 有機重合体が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン6、ナイロン66、アラミド、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、シリコン樹脂、ポリビニルアルコール、ピニルアセタール樹脂、ポリアセテート、ABS樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、セルロースおよびレーヨンその他のセルロース誘導体、ウレタン樹脂、ポリウレタン、尿素樹脂、フッ素樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フェノール樹脂、セルロイド、キチン、澱粉シート、アクリル樹脂、メラミン樹脂及びアルキド樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の有機重合体である前項87に記載の物品。
[89] 物品が、建材、機械、車両、ガラス製品、家電製品、農業資材、電子機器、工具、食器、風呂用品、トイレ用品、家具、衣類、布製品、繊維、革製品、紙製品、スポーツ用品、蒲団、容器、眼鏡、看板、配管、配線、金具、衛生資材及び自動車用品からなる群より選ばれた少なくとも1種である前項83に記載の物品。
[90] 物品が、建材、機械、車両、ガラス製品、家電製品、農業資材、電子機器、工具、食器、風呂用品、トイレ用品、家具、衣類、布製品、繊維、革製品、紙製品、スポーツ用品、蒲団、容器、眼鏡、看板、配管、配線、金具、衛生資材及び自動車用品からなる群より選ばれた少なくとも1種である前項86に記載の物品。
[91] 前項47又は48に記載の物品の光触媒性及び親水性を発現するための光源が、太陽、蛍光灯、水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、水銀キセノンランプ、メタルハライドランプ、発光ダイオード、レーザー、有機物の燃焼炎からなる群より選ばれた少なくとも1種の光源であることを特徴とする光触媒性及び親水性の付与方法。
[92] 前項89に記載の物品の光触媒性及び親水性を発現するための光源が、太陽、蛍光灯、水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、水銀キセノンランプ、メタルハライドランプ、発光ダイオード、レーザー、有機物の燃焼炎からなる群より選ばれた少なくとも1種の光源であることを特徴とする光触媒性及び親水性の付与方法。
[93] 前項90に記載の物品の光触媒性及び親水性を発現するための光源が、太陽、蛍光灯、水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、水銀キセノンランプ、メタルハライドランプ、発光ダイオード、レーザー、有機物の燃焼炎からなる群より選ばれた少なくとも1種の光源であることを特徴とする光触媒性及び親水性の付与方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法としては以下に述べる方法を好ましいものとして例示できる。基本的には、プロセス全般を通して、原料二酸化チタンおよび生成した複合粒子の凝集を極力抑制し、これによって、従来の表面処理方法では発現しなかった新たな複合粒子の光触媒機能および耐候性を同時に顕現できるようになる。
【0025】
具体的には、二酸化チタンを含有するpH3〜5の水系スラリーを用意する工程と、光触媒として不活性な化合物を含有する水系溶液を用意する工程と、両者をpH4〜10の範囲において反応させる工程とを含む製造方法である。以下、さらに詳細に説明する。
【0026】
まず、二酸化チタンを含有する水系スラリーを用意する。
二酸化チタンのBET比表面積は10〜300m/gであることが好ましい。より好ましくは、30〜250m/g、さらに好ましくは、50〜200m/gである。10m/gより小さいと光触媒能が小さくなる。300m/gより大きいと生産性が悪く、実用的ではない。
【0027】
二酸化チタンの結晶型はアナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型のうちいずれでもかまわない。好ましくは、アナターゼ型、もしくはブルッカイト型である。さらに好ましくはブルッカイト型である。また、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型のうち2種以上の結晶型を含有していてもかまわない。2種以上の結晶型を含有していると、それぞれの単独の結晶型である場合より活性が向上する場合もある。
【0028】
二酸化チタンの製法としては、特に制限はないが、例えば、TiClを原料とする気相法や、TiCl水溶液や硫酸チタニル水溶液を原料とする液相法がある。
【0029】
気相法の例としては、国際公開WO01/16027号公報に示された方法が挙げられる。具体的には、四塩化チタンを含有するガス及び酸化性ガスをそれぞれ500℃以上に予熱し、それぞれ流速10m/秒以上で反応管に供給することにより行われる、BET比表面積10〜200m/gを有する超微粒子酸化チタンの製造方法である。また、二酸化チタンを含む粒子として、一次粒子内にチタン−酸素−珪素結合が存在した混晶を含む超微粒子混晶酸化物であってもよい。その例としては、国際公開WO01/56930号公報に示された方法が挙げられる。この方法は、ハロゲン化金属がチタン及び珪素の塩化物、臭化物、沃化物からなる群より選ばれた少なくとも2種以上の化合物を含む混合ガス(以下「混合ハロゲン化金属ガス」と称する。)及び酸化性ガスをそれぞれ500℃以上に予熱してから反応させることにより、BET比表面積が10〜200m/gで混晶状態の一次粒子を含む超微粒子酸化物を製造する方法である。この方法では、混合ハロゲン化金属ガス及び酸化性ガスのそれぞれを反応管に10m/秒以上の流速、好ましくは30m/秒以上の流速で供給することが望ましく、また、反応管内においては600℃を越える高温度条件下でガスが滞留し反応する時間が1秒以内となるように、これらのガスを反応させることが好ましい。
【0030】
液相法の例としては、特開平11−43327号公報が挙げられる。75〜100℃の熱水に四塩化チタンを加え、75℃〜溶液の沸点の温度範囲で加水分解することによりブルッカイト型酸化チタン粒子の水分散ゾルの製造方法である。後述する本発明におけるスラリーやコーティング剤、膜などに高い透明性を付与するためには、このような液相合成された二酸化チタンを原料とすることが好ましい。さらに、液相合成された二酸化チタンは、その合成時のスラリー状態を維持したまま、換言すれば、二酸化チタンの粉末を得る工程を経ないで、用いることが好ましい。液相合成後に粉末を得る工程を採用すると、二酸化チタンの凝集が生ずるので、高い透明性が得られにくくなるためである。また、その凝集を、ジェットミルやマイクロナイザーなどの気流粉砕機、ローラーミル、パルペライザーなどを用いて解砕する手法はあるが、工程が長くなる上に、解砕工程からの異物のコンタミネーションや粒度分布の不均一が生じたりするので好ましくない。
【0031】
用意する二酸化チタンを含有する水系スラリーにおける二酸化チタンの濃度は、0.1〜10質量%であることが好ましい。さらに好ましくは0.5〜5質量%である。二酸化チタンのスラリー濃度が10質量%より大きいと、後述する混合工程において二酸化チタンが凝集してしまうので好ましくない。また、0.1質量%を下回ると、生産性が悪く好ましくない。
【0032】
また、用意する二酸化チタンを含有する水系スラリーにおける二酸化チタンのpHは3〜5が好ましい。pHが3より低いと後述する反応工程において混合時に局部的な中和・発熱による二酸化チタンの凝集が発生するので好ましくない。また、pHが5より高いと二酸化チタンの凝集が進行するので好ましくない。前記気相法二酸化チタンや液相法二酸化チタンの水系スラリーを調整後、必要があれば、電気透析やイオン交換樹脂での処理などの手法を用いてpHを調整することができる。
【0033】
次に、光触媒として不活性な化合物を含有する水系溶液を用意する。前記二酸化チタンに光触媒として不活性な化合物を複合化させる手段としては、前記二酸化チタンスラリーに、光触媒として不活性な化合物を粉末として添加し溶解する方法もあるが、その方法では、後述する二酸化チタンの可視光の吸収率が低下するので好ましくない。
【0034】
光触媒として不活性な化合物としては、リン酸塩、縮合リン酸塩、ホウ酸塩、硫酸塩、縮合硫酸塩及びカルボン酸塩、Si化合物、Al化合物、P化合物、S化合物、N化合物などが挙げられる。またその化合物は単独であっても、複数であってもかまわない。その中でも、縮合リン酸塩やホウ酸塩、縮合硫酸塩及び多価カルボン酸塩などの多塩基酸塩が好ましい。より好ましくは縮合リン酸塩である。
【0035】
縮合リン酸塩としては、ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩、テトラポリリン酸塩、メタリン酸塩、ウルトラリン酸塩が例示できる。中でも、ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩が好ましい。
【0036】
上記塩に含まれるカチオンとしては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属及びAlなどが好ましい。アルカリ金属としては、Na、Kが好ましい。アルカリ土類金属としては、Mg、Caが好ましい。遷移金属としては、Fe,Znが好ましい。
【0037】
また、二酸化チタンと複合化させる光触媒として不活性な化合物が水難溶性である場合には、水難溶性化合物を生成しうる複数の原料の水溶液を用意する。例えば、ピロリン酸カルシウムを二酸化チタンと複合化させるためには、ピロリン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を用意する。
【0038】
光触媒として不活性な化合物(以下、不活性化合物と称することがある)を含有する水系溶液中の不活性化合物の濃度は40質量%以下が好ましい。好ましくは20質量%以下である。40質量%を超える濃度になると、後述する混合工程において混合時に局部的な二酸化チタンの凝集が発生し、好ましくない。
【0039】
用意する光触媒として不活性な化合物の総量は、通常、二酸化チタン質量に対して、0.01質量%〜100質量%、好ましくは0.1質量%〜50質量%の範囲で用意することが好ましい。光触媒として不活性な化合物の総量が0.01質量%より少ないと、二酸化チタンとの反応性が悪化する。一方、光触媒として不活性な化合物の総量が100質量%より多いと経済的に不利になるし、二酸化チタンの凝集を進行させることがある。
【0040】
次に、二酸化チタンを含有する水系スラリーと光触媒として不活性な化合物を含有する水系溶液とを混合して反応させる。
混合させるpHとしては、4〜10が好ましい。さらに好ましくは、5〜9である。pHが4より低いと、二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との反応性が低く好ましくない。また、pHが10より高いと混合時に二酸化チタンの凝集が発生するので好ましくない。また、装置材料の材質選択においても、pHが4より低いと例えばステンレスのような安価な金属材料が選択できなくなるので好ましくない。
【0041】
混合時のpHを調整するためには、二酸化チタンを含有するスラリーと光触媒として不活性な化合物を含有する水系溶液と混合する際にpH調整をおこなってもいいし、反応混合時のpHが設定範囲に入るようにあらかじめ光触媒として不活性な化合物を含有する水系溶液をpH調整しておいてもよい。pH調整の方法としては、塩酸や硫酸のような鉱酸や水酸化ナトリウムやアンモニアの水溶液などを用いることができる。ただし、pH調整剤の混合部位における、原料の二酸化チタンや生成した複合粒子の、局部的な凝集を避けるために極力使用量は抑制したり、希薄な濃度で使用することが好ましい。
二酸化チタンを含有する水系スラリーと光触媒として不活性な化合物を含有する水系溶液とを混合する方法としては、二酸化チタンを含有する水系スラリーに光触媒として不活性な化合物を含有する水系溶液を連続的に添加する方法でもいいし、両者を同時に反応槽に添加する方法などが挙げられる。
【0042】
二酸化チタンを含有する水系スラリーと光触媒として不活性な化合物を含有する水系溶液とを混合した後の二酸化チタンの濃度は5質量%以下であることが好ましい。好ましくは、3質量%以下である。混合後の濃度が5質量%を越えるような配合を行うと、混合時に局部的な二酸化チタンの凝集が発生し、好ましくない。
【0043】
二酸化チタンを含有する水系スラリーと光触媒として不活性な化合物を含有する水系スラリーとの反応温度が50℃以下であることが好ましい。さらに好ましくは30℃以下である。50℃を超えると反応槽内の微粒子の凝集が進行することがあるので好ましくない。
【0044】
さらに、反応後の水系スラリーを脱塩することもできる。余分な塩類を除去しておくことは粒子の分散性を高めるので有効である。脱塩の方法としては、イオン交換樹脂を用いる方法、電気透析を用いる方法、限外濾過膜を用いる方法、ロータリーフィルタープレス(コトブキ技研株式会社製)を用いる方法などが挙げられる。脱塩後のpHとしては、好ましくは5〜9であり、さらに好ましくは6〜8である。
【0045】
通常、二酸化チタンの表面に光触媒として不活性な化合物が存在すると光触媒活性が低下するが、驚くべきことに、前記方法で表面処理すると、二酸化チタンの表面に光触媒として不活性な化合物が存在するにもかかわらず、未処理品に比べてその光触媒活性が向上することを見出した。また、そのような効果は、本発明のように、プロセス全般を通して、原料二酸化チタンおよび生成した複合粒子の凝集を極力抑制することによって顕現される。特に、多塩基酸で部分的に表面処理された場合に顕著に顕現化される。その理由は定かではないが、複数の電子吸引性のカルボキシル基やスルホニル基等が二酸化チタン表面の特定のTi原子と優先的に相互作用を示し、そのために光吸収により二酸化チタン粒子内に生成した電子がその表面で電荷分離され、結果としてその光触媒活性が向上していることも一因ではないかと思われる。
【0046】
また、二酸化チタン表面において特定のTiを含有する複合酸化物のエネルギー準位が新たに形成され、その複合酸化物の種類によっては、可視光に応答しうるバンドギャップを有することができるためとも考えられる。一般に、光触媒として不活性な物質を表面処理すれば、二酸化チタンの光触媒活性は抑制されると考えられているが、必ずしもそうではない。一方で、その表面処理基は少なくともその末端原子団部分は光触媒的には不活性であり、立体的にも有機系材料と二酸化チタンとの接触を抑制しており、その粒子を有機系材料に適用した場合においてその耐久性を向上している、という利点もある。一般的には、被分解物は気体や液体であり、それらと光触媒粒子との位置関係は流動的(すなわち、被分解物が易動性)であるのに対して、有機基材は固体であり、光触媒粒子と有機基材との立体的位置関係は固定的関係にある、ということから上記現象が実現しうることが理解できる。
【0047】
すなわち、二酸化チタン粒子の分散性が維持された表面処理プロセスによって、初めて多塩基酸と特定の表面Ti原子との効率的な相互作用が実現され、それによって原料を上回る光触媒活性と耐候性の両立及びスラリーの高分散性が同時に顕現できた、ということである。
【0048】
本発明における光触媒粒子の光触媒活性を以下に説明する。
光触媒活性の測定方法としては特に限定されるものではないが、アセトアルデヒドを20体積ppm含有する5Lの乾燥空気中で、直径9cmの平面上に均一に敷かれた3.5gの光触媒粒子に、昼白色蛍光灯で波長365nmの紫外線強度が6μW/cmとなるように光を照射したとき、照射1時間後のアセトアルデヒドの分解率(以下、「DWA」と称することがある)を求める方法を例示できる。
【0049】
この分解率は、例えば次のようにして測定できる。光触媒粒子(これを含有する粉体でもよい)3.5gを9cm内径のガラスシャーレの底面に均一に敷き詰めたものを5Lの容量の可視光〜紫外光の透過率の良い容器(ポリフッ化ビニルフィルム製の袋等)に入れる。次いでそこにアセトアルデヒドを20体積ppm含有する乾燥空気を5L充填・ブローを少なくとも1回行い、再度同じ濃度のアセトアルデヒドを含有する乾燥空気を5L充填し、内部のガスを十分置換する。容器の外から光を照射して1時間後のアセトアルデヒドの吸着を除く分解率(以下、単に「分解率」と称する)を測定する。この時、光源として昼白色蛍光灯を用い、波長365nmにおける紫外線強度6μW/cmの光が敷き詰めた光触媒粒子に照射されるようにする。
【0050】
以下、さらに具体的に説明する。
粒子の形態が粉体である場合にはそれを用意する。粒子の形態がスラリー状態である場合には、例えば、そのスラリーを、加熱や減圧等により、好ましくは、その溶媒の沸点以上で乾燥し、粉砕した粉体を用意する。水スラリーである場合には100℃〜120℃で乾燥するとよい。そのようにして用意された粉体3.5gを9cm内径のガラスシャーレの底面に均一に敷き詰めたものを5Lの容量のポリフッ化ビニルフィルム製の袋に入れる。ポリフッ化ビニルフィルム製の袋としては、テドラーバッグ(ジーエルサイエンス株式会社製、AAK−5)があげられる。一方、アセトアルデヒドを20体積ppm含有する乾燥空気は、例えば、乾燥空気を用いてパーミエーター(株式会社ガステック製、PD−1B)で調製のすることができる。乾燥空気としては、例えば、市販の圧縮空気(35℃で約14.7MPaになるように圧縮され、結露水やコンプレッサーオイル等を除去した空気)を用いればよい。次いでポリフッ化ビニルフィルム製袋にアセトアルデヒドを20体積ppm含有する乾燥空気の5L充填・ブローを少なくとも1回以上行う。二酸化チタンはある程度アセトアルデヒドを吸着するので、このような作業が必要となる。再度同じ濃度のガスを5L充填した後に、検知管(株式会社ガステック製、No.92L)を用いて袋中の初期アセトアルデヒド濃度C0T(体積ppm)を測定する。
【0051】
測定に供する初期のアセトアルデヒド濃度は50体積ppm以下が好ましい。さらに好ましくは20体積ppm以下である。生活環境空間における消臭作用を評価するには、極力低濃度条件が好ましい。例えば、アセトアルデヒドは1.4体積ppm以上の濃度であれば、強い臭気であると検知されると言われている。また、100体積ppmを超える濃度下で測定しても、低濃度条件下での触媒能を示しているとは必ずしも限らない。このことは、触媒反応速度解析における、ラングミュアー・ヒンシェルウッド式の解説などによっても理解できる。
【0052】
光源として昼白色蛍光灯を用意する。昼白色蛍光灯としては、例えば、株式会社日立GEライティング製、ハイホワイトFL20SS−N/18−B等が挙げられる。このような蛍光灯の相対エネルギーのスペクトルとして図1のようなスペクトルが知られている(株式会社日立GEライティング、昼白色蛍光ランプカタログ)。
【0053】
光強度の測定には、例えば、アテックス株式会社製、UVA−365を用いる。これを使えば、365nmにおける光強度を測定することができる。
【0054】
次にバッグの外から所定の光強度で光照射を開始する。その時点を起点として1時間後の袋中のアセトアルデヒド濃度C1T(体積ppm)を測定する。
【0055】
一方、対照実験として、上記と同様な操作にて暗所において1時間保持するテストも行う。その時の初期アセトアルデヒド濃度をC0B(体積ppm)、1時間後のアセトアルデヒド濃度C1B(体積ppm)とする。
吸着を除く分解率DWAは、
DWA={(C0T−C1T)−(C0B−C1B)}/C0T×100(%)により定義される。
【0056】
本発明における光触媒粒子は二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子であって、その原料である二酸化チタン粒子より高い光触媒活性を示す複合粒子である。具体的には、複合粒子のDWAが、原料二酸化チタン粒子のDWAより大きい複合粒子である。
【0057】
また、本発明における光触媒粒子は二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子を含むものであって、アセトアルデヒドを20体積ppm含有する5Lの乾燥空気中で、直径9cmの平面上に均一に敷かれた3.5gの光触媒粒子に、昼白色蛍光灯で波長365nmの紫外線強度が6μW/cmとなるように光を照射したとき、照射1時間後のアセトアルデヒドの分解率が20%以上となる光触媒粒子である。好ましくはDWAが40%以上でり、さらに好ましくはDWAが80%以上である。
【0058】
光触媒粒子のBET比表面積は10〜300m/gであることが好ましい。より好ましくは、30〜250m/g、さらに好ましくは、50〜200m/gである。10m/gより小さいと光触媒能が小さくなる。300m/gより大きいと生産性が悪く、実用的ではない。
【0059】
光触媒粒子に含まれる二酸化チタンの結晶型はアナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型のうちいずれでもかまわない。好ましくは、アナターゼ型、もしくはブルッカイト型である。さらに好ましくはブルッカイト型である。また、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型のうち2種以上の結晶型を含有していてもかまわない。2種以上の結晶型を含有していると、それぞれの単独の結晶型である場合より活性が向上する場合もある。
【0060】
また、その光触媒として不活性な化合物の存在は、二酸化チタン粒子の粒子内であっても、表面であってもよい。表面に存在する場合には、部分的な被覆が好ましい。前者の場合は、n型半導体やp型半導体を形成して可視光活性を高めることがあり、後者の場合には、有機物との接触を抑制することによってその光触媒粒子の実用上の応用範囲を広げることができる。
【0061】
次に、後者の場合について説明する。光触媒として不活性な化合物としては、リン酸塩、縮合リン酸塩、ホウ酸塩、硫酸塩、縮合硫酸塩及びカルボン酸塩、Si化合物、Al化合物、P化合物、S化合物、N化合物などが挙げられる。また、シリカ、ジルコニア、アルミナ、マグネシア、カルシア、アモルファスのチタニア、ムライト、スピネル、等も例示できる。またその化合物は単独であっても、複数であってもかまわない。
【0062】
その中でも、縮合リン酸塩やホウ酸塩、縮合硫酸塩及び多価カルボン酸塩などの多塩基酸塩が好ましい。より好ましくは縮合リン酸塩である。
縮合リン酸塩としては、ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩、テトラポリリン酸塩、メタリン酸塩、ウルトラリン酸塩が例示できる。中でも、ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩が好ましい。
【0063】
上記塩に含まれるカチオンとしては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属及びAlなどが好ましい。アルカリ金属としては、Na、Kが好ましい。
アルカリ土類金属としては、Mg、Caが好ましい。
遷移金属としては、Fe,Znが好ましい。
【0064】
これらの光触媒として不活性な化合物は、通常、二酸化チタン質量に対して、0.01質量%〜50質量%、好ましくは0.1質量%〜20質量%の範囲で存在することが好ましい。光触媒として不活性な化合物が0.01質量%より少ないと、プラスチック、紙、繊維などの媒体への二酸化チタンの光触媒作用により媒体自身の耐久性が悪化する。一方、光触媒として不活性な化合物が50質量%より多いと経済的に不利になる。
【0065】
好ましい形態としては、二酸化チタンと縮合リン酸塩の複合粒子であって、BET比表面積をAm/g、P含有量をB質量%とした時に、A≧50であり、かつ、B/Aが0.002〜0.01である複合粒子を例示することができる。ブルッカイト型二酸化チタンもしくはアナターゼ型二酸化チタンの表面に縮合リン酸のアルカリ金属塩が存在している形態がさらに好ましい。
【0066】
また、本発明の光触媒粒子の電気泳動光散乱法によって測定されたゼータ電位から求められる等電点は4以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下がさらに好ましい。以下、ゼータ電位の測定方法について説明する。
【0067】
ゼータ電位の測定方法には、いろいろあるが、本発明で採用する測定原理はレーザードップラー法による周波数シフト量より泳動速度を解析する、いわゆる電気泳動光散乱法である。具体的には大塚電子株式会社製ELS−8000にて測定を行うことができる。
【0068】
0.01mol/lのNaCl溶液50mlに、試料を粉末換算で0.01g程度(耳掻き程度)を投入し、pH調整が必要であれば0.01および0.1mol/lのHClまたはNaOHにて調整し、約1分間超音波分散し、測定器にかける。
【0069】
本発明の光触媒性粉体は、有機重合体に添加して組成物として使用できる。ここで、使用できる有機重合体には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、天然樹脂などが挙げられる。前記光触媒として不活性な化合物の存在により、有機重合体と二酸化チタンの光触媒活性面(表面)が直接接触することがないために、媒体の有機重合体自身が分解劣化を受けることが少なく、有機重合体の耐久性が増大する。
【0070】
このような有機重合体の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどのポリオレフィン、ナイロン6、ナイロン66、アラミドなどのポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステルなどのポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、シリコン樹脂、ポリビニルアルコール、ピニルアセタール樹脂、ポリアセテート、ABS樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、セルロースおよびレーヨンその他のセルロース誘導体、ウレタン樹脂、ポリウレタン、尿素樹脂、フッ素樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フェノール樹脂、セルロイド、キチン、澱粉シート、アクリル樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂などが挙げられる。
【0071】
本発明の光触媒性粉体を含むこれら有機重合体組成物は、コンパウンド、マスターバッチなどの形態で使用できる。有機重合体組成物中の光触媒性粉体の濃度は、該組成物全質量につき、0.01〜80質量%、好ましくは1〜50質量%である。また、有機重合体組成物には、悪臭物質の除去効果を高めるために活性炭、ゼオライトのような吸着剤を添加してもよい。本発明においては、上記重合体組成物を成形することによって光触媒性を有する重合体成形体が得られる。このような組成物の成形体として、繊維、フィルム、プラスチック成形体等が挙げられる。具体的には、各種建材、機械、車両、ガラス製品、家電製品、農業資材、電子機器、工具、食器、風呂用品、トイレ用品、家具、衣類、布製品、繊維、革製品、紙製品、スポーツ用品、蒲団、容器、眼鏡、看板、配管、配線、金具、衛生資材、自動車用品、テントなどのアウトドア用品、マスク、ストッキング、靴下などに適用させることができる。
【0072】
本発明におけるスラリーとは、前記光触媒粒子を含む溶媒分散体を指す。スラリーを調整する方法としては、特に制限はないが、前記表面処理反応後のスラリーを溶媒で希釈したりする方法や、一旦表面処理反応スラリーを濾過・洗浄して光触媒粒子を含む固体を得て、さらにこれに溶媒を加える方法などが挙げられる。後者の場合は、粒子の凝集がありえるので、前者の方法が好ましい。
【0073】
スラリーを構成する溶媒には、特に制限はないが、通常光触媒粒子の表面は親水性なので親水性溶媒が好ましく用いられる。さらに好ましくは、水もしくは水と親水性有機溶媒との混合溶媒など、これら水系溶媒がよい。
【0074】
前記スラリー中の光触媒粒子の含有割合については特に制限なく、例えば、0.01質量%〜50質量%、さらには1質量%〜40質量%の範囲が望ましい。もし、光触媒性粉体の含有量が0.01質量%を下回ると、塗工後に十分な光触媒効果が得られない。一方、50質量%を越えると増粘等の問題が生じるばかりか経済的に不利となる。
【0075】
また、水を含有する溶媒を採用するときにはそのスラリーのpHは5〜9であることが好ましい。さらに好ましくは、pH6〜8である。pHが5より小さいか、9より大きいと生体や環境に対して好ましくない影響を与えるし、金属に対する腐食作用が無視できなくなり金属基材に適用しにくくなってしまう。
【0076】
また本発明のスラリーは、高い透過率を持つことを特徴とする。以下、透過率の測定方法を説明する。透過率の測定には分光光度計や分光測色計を用いる。ここではミノルタ株式会社製分光測色計CM−3700dでの測定について示す。
【0077】
光路長2mmのガラスセルに10%濃度のスラリーを用意する。このガラスセル中のサンプルにキセノンランプを光源として積分球によって拡散反射された光を照射し、透過した光を測定分光器で受光する。一方積分球内で拡散された光は照明光用分光器で受光し、それぞれの光を分光し、各波長での透過率を測定する。
【0078】
スラリーの光触媒粒子の濃度を10質量%とした時に、スラリーの2mm厚み(光路長)の550nmにおける光透過率が20%以上であることを特徴とする。さらに好ましくは、30%以上の透過率を有する。このスラリーを用いることによって、塗布すべき対象の意匠性や色彩を損なうことがなくなり、実用上の応用において非常に有利となる。
【0079】
また本発明のスラリーは、広い可視光領域において高い可視光吸収特性を有している。
ここで、
吸収率=100−透過率−反射率(A)と定義する。
(A)式において、透過率は前記方法において測定された値である。
【0080】
(A)式における反射率の測定には前記透過率を測定したものと同じ装置を用いる。一方、前記透過率を測定したものと同じサンプル(光路長2mmのガラスセルに入れた10%濃度のスラリー)を用意する。このガラスセル中のサンプルにキセノンランプを光源として積分球によって拡散反射された光を照射し、反射した光のうち試料面で垂直な軸と8度の角度をなす方向の反射光を測定分光器で受光する。一方積分球内で拡散された光は照明光用分光器で受光し、それぞれの光を分光し、各波長での反射率を測定する。
【0081】
スラリーの光触媒粒子の濃度を10質量%とした時に、スラリーの2mm厚み(光路長)の400nmにおける吸収率が25%以上であることを特徴とする。さらに好ましくは、30%以上の吸収率を有する。また、550nmにおける吸収率が8〜30%であることを特徴とする。さらに好ましくは、10〜20%の吸収率を有する。550nmにおける吸収率が8%より小さいと、可視光を有効に利用することができず、30%より大きいと着色が強くなる。
【0082】
また、コーティングなどの成型時の光触媒能や接着性の向上のために、前記スラリーに、各種金属酸化物を追加することもできる。金属元素としては、遷移金属元素やアルカリ土類金属、アルカリ金属、IIIb族又はIV族から選ばれる。特に、Zr、Si、Sn、Tiが好ましい。中でもZr、Siが好ましい。
【0083】
前記金属酸化物の追加方法には特に制限はないが、例えば金属アルコキシドを原料として液相法により合成されたゾルを前記スラリーに添加する方法が挙げられる。この場合の金属酸化物の粒子のBET比表面積は10〜500m/gであることが好ましい。より好ましくは、30〜450m/g、さらに好ましくは、50〜400m/gである。
【0084】
また、前記スラリーに金属アルコキシドを添加・加水分解して前記光触媒粒子の表面に金属酸化物を析出させる方法も好ましい。この場合、金属酸化物は光触媒表面に部分的に存在することが好ましい。部分的に存在する形態としては、島状であっても、群島状であっても、マスクメロン状であってもかまわない。
【0085】
このような金属酸化物を添加することによって、コーティング膜などの成型状態で光触媒能が向上する理由は定かではないが、前記光触媒粒子と接触した時に、追加した金属酸化物の電子吸引性によって前記光触媒粒子の電荷分離を促進したり、追加した金属酸化物の伝導帯準位が前記光触媒粒子の伝導帯準位より低い場合には電子を光触媒粒子から受けとめたりすることができるためであろうと思われる。
【0086】
また、この分散体(スラリー)にバインダーを任意に添加して塗工剤となし、これを後記する各種構造体の表面に塗布することにより、光触媒性構造体を製造することができる。すなわち、塗料、コーティング組成物などの形態で使用できる。本発明においては、バインダー材料について制限されるものではなく有機系バインダーであっても無機系バインダーであっても良い。有機バインダーには水溶性のバインダーが挙げられるが、具体例として、ポリビニルアルコール、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、セルロイド、キチン、澱粉シート、ポリアクリルアミド、アクリルアミド等が挙げられる。また、無機バインダーとしてはZr化合物、Si化合物、Ti化合物、Al化合物が例示される。具体的にはオキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、プロピオン酸ジルコニウム等のジルコニウム化合物、アルコキシシラン、アルコキシシランの鉱酸による部分加水分解生成物、珪酸塩等の珪素化合物、或いはアルミニウムやTiやジルコニウムの金属アルコキシドやそれらの鉱酸による部分加水分解生成物等が挙げられる。また、アルミニウムやシリコンやチタンやジルコニウムのアルコキシドから、複数金属種のアルコキシドを選択し複合化したり加水分解させたものも挙げられる。中でも、アルミニウムアルコキシド−チタニウムアルコキシドの共加水分解物やアルミニウムアルコキシド−シリコンアルコキシドの共加水分解物が好ましい。
【0087】
特に、カルボキシル基やスルホニル基等を官能基として複数個有するバインダーを用いるとその蛍光灯のような実用的な微弱な光量の光源下における光触媒能が向上する。そのバインダーの具体例としては、水溶性ウレタンエマルジョンなどがあげられる。その理由は定かではないが、前記多塩基酸による二酸化チタン表面処理と同様、水溶性ウレタンエマルジョンに存在する複数の電子吸引性のカルボキシル基やスルホニル基等と二酸化チタン表面のTi原子が相互作用を示し、そのために光吸収により二酸化チタン粒子内に生成した電子がその表面で電荷分離されたり、もしくは二酸化チタン表面のバンドギャップが変化しているために、その光触媒活性が向上しているのではないかと思われる。
【0088】
また、具体的に塗工剤中のバインダーの添加量は、例えば、0.01質量%〜20質量%、さらには1質量%〜10質量%の範囲が望ましい。もし、バインダーの含有量が0.01質量%より少ないと、塗工後に十分な接着性を有さず、また20質量%を越えると増粘等の問題が生じるばかりか経済的に不利となる。
【0089】
また、バインダーとの混合後の塗工剤のpHは5〜9であることが好ましい。さらに好ましくは、pH6〜8である。pHが5より小さいか、9より大きいと生体や環境に対して好ましくない影響を与えるし、金属に対する腐食作用が無視できなくなり金属基材に適用しにくくなってしまう。バインダーのpHに応じて、混合後のpHが5〜9になるように、光触媒粒子を含有するスラリーのpHをあらかじめ調整しておくことは有効である。
【0090】
有機バインダーを用いたり、アルコキシシランの鉱酸による部分加水分解生成物をバインダーとして採用したりすれば、30℃以下で塗布・硬化させることができる。また、30℃以下で塗布後、200℃以下で硬化させることもできる。さらに、無機基材に無機バインダーを採用し、30℃以下で塗布後、500℃以下で硬化させ、硬度の大きい膜を形成することもできる。膜中の二酸化チタンの結晶性を改善することによって光触媒能が高まることもあり、場合によっては300〜500℃に加熱することが推奨される。
【0091】
また、本発明に光触媒性を示す膜を有する物品の光触媒能は以下のような特徴を有する。
硫化水素を60体積ppm含有する5Lの乾燥空気中で、表面積400cmの光触媒性を示す膜に、昼白色蛍光灯で波長365nmの紫外線強度が6μW/cmとなるように光を照射したとき、照射6時間後の硫化水素の分解率(以下、単に「DWH」と称することがある)が20%以上となる。
【0092】
この分解率は、例えば次のようにして測定できる。光触媒性膜を有する物品を、光が照射される面積が400cmとなるように5Lの容量のポリフッ化ビニルフィルム製の袋に入れる。次いでそこに硫化水素を60体積ppm含有する乾燥空気を5L充填・ブローを少なくとも1回行い、再度同じ濃度の硫化水素を含有する乾燥空気を5L充填し、容器内部のガスを十分置換する。次に、バッグの外から光を照射して6時間後の硫化水素の吸着を除く分解率を測定する。この時、光源として昼白色蛍光灯を用い、波長365nmにおける紫外線強度6μW/cmの光が光触媒性膜を有する物品に照射されるようにする。
【0093】
また、本発明は光透過率の高いスラリーを原料としているので、それを原料とする塗工剤からえられた膜も透明性が高いものが得られる。透明性の高い膜を与える光触媒粒子としては、液相法によって合成された二酸化チタンを原料として使うことが推奨される。具体的には、TiCl4水溶液や硫酸チタニル水溶液を原料として熱加水分解したり、中和加水分解したりして得られる粒子を多塩基酸塩で表面処理した粒子などが例示される。通常、形成された膜が光触媒性を効果的に示す膜の厚みは0.01〜100μmである。また、干渉縞を効果的に抑制する為には、その膜の厚みは0.01〜0.1μm、もしくは1μm以上であることが好ましい。
【0094】
基材が透明であれば、その上に形成された光触媒性膜の透明性は下記のように示すことができる。光触媒性を示す膜の無い状態(成膜前)の550nmにおける光透過率をT1%とし、光触媒性を示す膜を有する状態(成膜後)の550nmにおける光透過率をT2%、T2/T1が0.9以上であることを特徴とする。さらに好ましくは、T2/T1が0.95以上である。T2/T1が0.9より小さいと、基材の不透明性が実用上目立ってくる。
【0095】
一方、基材が不透明であれば、その上に形成された膜の透明性を以下のように、反射率を用いて示すことができる。
【0096】
反射率の測定には分光光度計や分光測色計を用いる。ここではミノルタ株式会社製分光測色計CM−3700dでの測定について示す。膜サンプルにキセノンランプを光源として積分球によって拡散反射された光を照射し、膜で反射した光のうち試料面で垂直な軸と8度の角度をなす方向の反射光を測定分光器で受光する。一方積分球内で拡散された光は照明光用分光器で受光し、それぞれの光を分光し、各波長での反射率を測定する。
【0097】
光触媒性を示す膜の成膜前の550nmにおける光反射率をR1%とし、成膜後の550nmにおける光反射率をR2%としたときの、R2/R1が0.9以上であることを特徴とする。さらに好ましくはR2/R1が0.95以上である。R2/R1が0.9より小さいと、基材に対する隠蔽性や不透明性が実用上目立ってくる。
【0098】
また、本発明においては、光触媒性を示す膜の鉛筆硬度が2H以上であることを特徴とする。膜の鉛筆硬度が大きいということは、その膜が傷つきにくいことを意味する。特にZr化合物をバインダーとして採用すると強固な膜を得やすい。基材(物品)としては、特に制限はなく無機基材であっても、有機基材であってもよい。無機基材としてはSi化合物、Al化合物、各種セラミックスや金属等があげられる。具体的には、シリカ、アルミナ、ムライト、スピネル、ジルコニア、チタニア、黒鉛、カーボンナノチューブ、ダイヤモンド、鉄、ステンレス、チタン、ジルコン、ニオブ、タンタル、等を例示することができる。
【0099】
有機基材としては、有機重合体があげられる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン6、ナイロン66、アラミド、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、シリコン樹脂、ポリビニルアルコール、ピニルアセタール樹脂、ポリアセテート、ABS樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、セルロースおよびレーヨンその他のセルロース誘導体、ウレタン樹脂、ポリウレタン、尿素樹脂、フッ素樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フェノール樹脂、セルロイド、キチン、澱粉シート、アクリル樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂等から選ぶことができる。
【0100】
また、前記有機重合体組成物をマスターバッチ、コンパウンド等の形態を経由して作製された物品や、前記塗工剤を経由して作製された光触媒性を示す膜をその表面に有する物品は親水性を示すことができる。親水性を効果的に発現する光触媒粒子としては、液相法によって合成された二酸化チタンを原料として使うことが推奨される。具体的には、TiCl水溶液や硫酸チタニル水溶液を原料として熱加水分解したり、中和加水分解したりして得られる粒子を多塩基酸塩で表面処理した粒子などが推奨される。親水性の指標としては、水の接触角で示すことができる。以下、接触角の測定方法を説明する。
【0101】
膜上に純水の水滴を移し、このときの膜表面と液滴との接触角を測定する。ここでは協和界面科学株式会社製の接触角計CA−Dでの測定について示す。測定装置のシリンジより20目盛りの純水の水滴(φ1.5)を静かに膜表面の移し、光学鏡内の角度盤と可動十字を使い、液滴頂点を作図的に求め、その頂点と液滴端点を結ぶ線分と膜表面とのなす角度を直読し、その角度を2倍して接触角を求める。
【0102】
本発明による光触媒性を示す膜の親水性は、波長365nmにおける紫外線強度が6μW/cmとなるように、昼白色蛍光灯で光を24時間照射した後の水の接触角(以下、CLと略称する)が20°以下であることを特徴とする。好ましくは、CLが10°以下であり、さらに好ましくは、CLが5°以下である。
【0103】
また、光を照射した後に暗所保存した際の親水性の維持についても優れた効果を示すことができる。具体的には、光触媒性を示す膜に波長365nmにおける紫外線強度が6μW/cmとなるように昼白色蛍光灯で光を24時間照射し、ついで暗所に24時間保持した後、水との接触角(以下、CDと略称することがある)が20°以下であることを特徴とする。好ましくは、CDが10°以下であり、さらに好ましくは5°以下である。
このように、親水性を付与することによって、例えば、その表面の付着汚れが除去されやすくなり、長期にわたってその清浄面を維持もしくは、容易に清浄面を復活させることができる。
【0104】
また、本発明による光触媒性を示す膜は良好な耐候性を示すことができる。具体的には、光触媒性を示す膜をキセノンアークランプ式促進暴露試験(スガ試験機株式会社 サンシャインキセノンロングライフ・ウェザーメーターによる。BP温度:63±3℃、降雨:12/60分。)にかけ、4000時間後においても、波長365nmにおける紫外線強度が6μW/cmとなるように昼白色蛍光灯で光を24時間照射した後の水との接触角が20°以下であり、黄変度が10以下であることを特徴とする膜を得ることができる。
【0105】
以上説明してきた、光触媒性や親水性を付与する対象となる物品としては、とくに制限されないが、各種建材、機械、車両、ガラス製品、家電製品、農業資材、電子機器、工具、食器、風呂用品、トイレ用品、家具、衣類、布製品、繊維、革製品、紙製品、スポーツ用品、蒲団、容器、眼鏡、看板、配管、配線、金具、衛生資材、自動車用品などを例示することができる。また、シックハウス対策や、水・大気・土壌中のPCBやダイオキシン類のような有機塩素化合物の分解、水・土壌中の残留農薬や環境ホルモンの分解などに有効な環境浄化機器・装置にも応用できる。
【0106】
また、前記物品が効果的にその光触媒性や親水性を発現することができる光源として、太陽、蛍光灯、白熱電球、水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、水銀キセノンランプ、メタルハライドランプ、発光ダイオード、レーザー、有機物の燃焼炎などを例示することができる。また蛍光灯としては、白色蛍光灯、昼白色蛍光灯、昼光色蛍光灯、温白色蛍光灯、電球色蛍光灯、ブラックライト、などを例示することができる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例によって何ら制限されるものではない。
【実施例】
【0107】
実施例1:
あらかじめ計量した純水50リットル(以下、リットルをLと記す)を、攪拌を行いながら加熱して温度を98℃に保持した。そこへTi濃度15質量%の四塩化チタン水溶液(住友チタニウム株式会社製)3.6kgを120分かけて滴下した。滴下後に得られた白色懸濁液を電気透析機にかけて脱塩素を行い、スラリーのpHを4にした。こうして得られた光触媒スラリーの一部を採取し、乾燥恒量法により固形分濃度を測定したところ、2質量%であった。乾燥粉をX線回折装置にかけて構造解析を行った結果、得られた粉末はブルッカイト型二酸化チタンであった。これは、ブルッカイト含有率89質量%、アナターゼ含有率11質量%であった。また、この粉末のDWAは11%であった。
【0108】
次に100gのピロリン酸ソーダ(太平化学産業株式会社製、食添用)を純水に溶解し、5質量%のピロリン酸ソーダ水溶液2kgを得た。
このようにして得られた2質量%二酸化チタンスラリー50Lを反応槽に仕込み冷却しながら、十分な攪拌を行った。そこへ2kgの5質量%ピロリン酸ソーダ水溶液および10質量%苛性ソーダ水溶液を、混合後のpHが8〜9になるように調製しながら1時間かけて、添加した。この間、反応温度は20〜25℃であった。
【0109】
得られたピロリン酸を含んだ二酸化チタンスラリーを22〜28℃で1時間保持した。その際の電気伝導度は10000μS/cmであった。次に、得られたスラリーをロータリーフィルタープレス(コトブキ技研株式会社製)で濾過洗浄し、濾過液の電気伝導度が50μS/cmになるまで、十分水洗した後、濃縮して光触媒性スラリーを得た。得られた光触媒性スラリーのpH(株式会社堀場製作所製 D−22)を測定したところ7.8であった。
【0110】
次に、得られたスラリーの一部を採取し、120℃にて乾燥恒量法により粉末を得た。これよりスラリーの固形分濃度を測定したところ、10質量%であった。また、その2mm厚みのスラリーの550nmにおける透過率は46%であり、分散性にすぐれたスラリーであった。また、スラリーの2mm厚みの400nmにおける吸収率は32%、550nmにおける吸収率は11%であった。その吸収率のスペクトルを図3に示す。次に得られた粉末をFT−IR(株式会社パーキンエルマー製、FT−IR1650)で分析を行った結果、ピロリン酸の吸収が観察された。次に、乾燥粉をICP(株式会社島津製作所製、ICPS−100V)で分析を行ったところ、Naが0.7質量%、リンが1.2質量%存在することがわかった。また、大塚電子株式会社製ELS−8000を用いて、電気泳動光散乱法によって測定されたゼータ電位を測定したところ、等電点は2.1であった。BET比表面積測定(株式会社島津製作所製、Flow Sorb II 2300)の結果は、140m/gであった。また、この粉末のDWAは83%であった。これは原料の二酸化チタンのDWAより大きい値であり、表面処理品の方が、光触媒活性が高いことを示している。
【0111】
(高密度ポリエチレンマスターバッチの作製)
上記と同様な手段で得られた光触媒性スラリーの一部を媒体流動乾燥機(株式会社大川原製作所製、スラリードライヤー)で乾燥して、二酸化チタン微粒子の表面に縮合リン酸塩を有する光触媒性粉体5kgを取得した。この光触媒性粉体20質量部、ステアリン酸亜鉛(日本油脂株式会社製、ジンクステアレートS)2質量部、高密度ポリエチレン(日本ポリオレフィン株式会社製、ジェイレクスF6200FD)78質量部を、二軸押出機(池貝鉄工株式会社製、PCM30型)を用いて170℃(滞留時間約3分)で溶融混練し、ペレット化を行い、直径2〜3mmφ、長さ3〜5mmの重さ0.01〜0.02gの光触媒性粉体を20質量%含有した高密度ポリエチレンの円柱状のコンパウンドを20kg造った。
【0112】
(紡糸)
上記で得られた光触媒性粉体を含有した高密度ポリエチレンコンパウンド10kgと高密度ポリエチレン(日本ポリオレフィン株式会社製、ジェイレクスF6200FD)10kgをV型ブレンダー(池本理化工業株式会社、RKI−40)で10分間混合し、混合ペレットを作製した。次に、得られた混合ペレットとポリエステル樹脂ペレット(帝人株式会社製、FM−OK)をそれぞれ溶融押出紡糸機(中央化学機械製作所株式会社製、ポリマーメイド5)に投入し、紡糸パック温度300℃で光触媒性粉体含有高密度ポリエチレンとポリエステルの質量比が1:1となるような光触媒含有高密度ポリエチレン(鞘)/ポリエステル(芯)の芯鞘構造からなる太さ12デニールの繊維を35kg作製した。
【0113】
(光触媒活性評価)
次に、この得られた繊維10gを5Lテドラーバッグ(株式会社ガステック製)内に置き、硫化水素60体積ppmを封入した。次いで、昼白色蛍光灯(株式会社日立GEライティング製、ハイホワイトFL20SS−N/18−B)を用い、波長365nmにおける紫外線強度6μW/cmにて測定し、6時間後の硫化水素の濃度を検知管(株式会社ガステック製、No.4LL)で測定した。6時間後の硫化水素はほとんど検知されなかった。
【0114】
(耐候性試験)
上記の繊維にフェードメータ(ATLAS製、SUNSET CPS+)で50mW/cmの光をあて24時間後に繊維の着色を調べたが、着色は見られなかった。
【0115】
(塗工剤の作製1)
次に、前述の光触媒性スラリーに純水を加え粉末換算で0.5質量%となる様にスラリーを希釈した。このスラリーに粉末に対してウレタン樹脂が70%となるように水分散系ウレタン樹脂(VONDIC1040NS、大日本インキ化学工業株式会社製)を添加して光触媒性粉体とウレタン樹脂を含有した塗工剤を得た。そのpHは7.1であった。
次に、上記の塗工剤にポリエステル不織布(6デニール、高安株式会社製)を含浸させ、取り出した後、ローラーで絞り、80℃で2時間乾燥し、光触媒性粉体を坦持したポリエステル不織布を得た。
【0116】
(光触媒活性評価)
次に、このポリエステル不織布10gを5Lテドラーバッグ内に置き、硫化水素60体積ppmを封入した。次いで、昼白色蛍光灯を用い、波長365nmにおける紫外線強度6μW/cmにて測定し、6時間後の硫化水素の濃度を検知管(株式会社ガステック製、No.4LL)で測定した。6時間後の硫化水素濃度はほとんど検知されなかった。
【0117】
(耐候性試験)
上記のポリエステル不織布にフェードメータ(ATLAS製、SUNSET CPS+)で50mW/cmの光をあて24時間後に繊維の着色を調べたが、着色は見られなかった。
【0118】
(塗工剤の作製2)
前述の光触媒性スラリーに炭酸ジルコニウムアンモニウム溶液(日本軽金属株式会社製、ZrO2として20質量%含有)と純水を加え、コーティング剤を調整した。このとき、光触媒性粉体が1.5質量%、ZrO/光触媒性粉体(質量比)は20%であった。そのpHは8.2であった。
【0119】
次に、厚さ15mmのアクリル樹脂板からなる透明遮音壁にGE東芝シリコン株式会社製のトスガード510でハードコート処理して透明なハードコート処理樹脂板を作製した。このとき全光線透過率を東京電色株式会社製ヘーズメーターTC−III型で測定したところ86%であった。この透明樹脂板に上述のコーティング液をバーコート法で塗布し、表面に光触媒性皮膜を備えた透明遮音壁を得た。この時、この板のDWHは37%、光触媒性皮膜の厚さは0.3μm、光触媒性皮膜付き透明樹脂板の全光線透過率は86%、T2/T1は0.97、鉛筆硬度は4Hであった。また、水接触角を測定したところCLが2°、CDが5°であった。また、スガ試験機株式会社 サンシャインキセノンロングライフ・ウェザーメーターでBP温度:63±3℃、降雨:12/60分により促進暴露試験を実施した。4000時間後においても、波長365nmにおける紫外線強度が6μW/cmとなるように昼白色蛍光灯で光を24時間照射した後の水との接触角は8°、黄変度は6であった。
【0120】
実施例2:
実施例1に記載した100gのピロリン酸ソーダ(太平化学産業株式会社製、食添用)を100gのトリポリリン酸ソーダ(太平化学産業株式会社製、食添用)に変えた以外は、実施例1と同様の処理をし、光触媒スラリーを得た。
【0121】
得られた光触媒性スラリーのpHを測定したところ7.7であった。また、大塚電子株式会社製ELS−8000を用いて、電気泳動光散乱法によって測定されたゼータ電位を測定したところ、等電点は2.0であった。
【0122】
次に、得られたスラリーの一部を採取し、120℃にて乾燥恒量法により固形分濃度を測定したところ、10質量%であった。また、その2mm厚みのスラリーの550nmにおける透過率は48%であり、分散性にすぐれたスラリーであった。次に得られた粉末をFT−IRで分析を行った結果、トリポリリン酸の吸収が観察された。次に、乾燥粉をICPで分析を行ったところ、Naが0.8質量%、リンが1.1質量%存在することがわかった。BET比表面積測定の結果は、140m/gであった。また、この粉末のDWAは61%であった。これは原料の二酸化チタンのDWAより大きい値であり、表面処理品の方が、光触媒活性が高いことを示している。
【0123】
実施例3:
実施例1に記載した100gのピロリン酸ソーダ(太平化学産業株式会社製、食添用)を100gのテトラポリリン酸ソーダ(太平化学産業株式会社製、食添用)に変えた以外は、実施例1と同様の処理をし、光触媒スラリーを得た。得られた光触媒性スラリーのpHを測定したところ7.7であった。また、大塚電子株式会社製ELS−8000を用いて、電気泳動光散乱法によって測定されたゼータ電位を測定したところ、等電点は1.9であった。
【0124】
次に、得られたスラリーの一部を採取し、120℃にて乾燥恒量法により固形分濃度を測定したところ、10質量%であった。また、その2mm厚みのスラリーの550nmにおける透過率は36%であり、分散性にすぐれたスラリーであった。次に得られた粉末をFT−IRで分析を行った結果、テトラポリリン酸の吸収が観察された。次に、乾燥粉をICPで分析を行ったところ、Naが0.8%、リンが0.9%存在することがわかった。BET比表面積測定の結果は、141m/gであった。また、この粉末のDWAは55%であった。これは原料の二酸化チタンのDWAより大きい値であり、表面処理品の方が、光触媒活性が高いことを示している。
【0125】
実施例4:
あらかじめ計量した純水50リットル(以下、リットルをLと記す)を、攪拌を行いながら加熱して温度を98℃に保持した。そこへTi濃度15質量%の四塩化チタン水溶液(住友チタニウム株式会社製)3.6kgを120分かけて滴下した。滴下後に得られた白色懸濁液を電気透析機にかけて脱塩素を行い、スラリーのpHを4にした。こうして得られた光触媒スラリーの一部を採取し、乾燥恒量法により固形分濃度を測定したところ、2質量%であった。乾燥粉をX線回折装置にかけて構造解析を行った結果、得られた粉末はブルッカイト型二酸化チタンであった。これは、ブルッカイト含有率89質量%、アナターゼ含有率11質量%であった。この粉末のDWAは38%であった。
【0126】
次に100gのピロリン酸ソーダ(太平化学産業株式会社製、食添用)を純水に溶解し、5質量%のピロリン酸ソーダ水溶液2kgを得た。
次に100gの塩化カルシウム(株式会社トクヤマ製、食添用)を純水に溶解し、5質量%の塩化カルシウム水溶液2kgを得た。
【0127】
このようにして得られた2質量%二酸化チタンスラリー50Lを反応槽に仕込み冷却しながら、十分な攪拌を行った。そこへ2kgの5質量%ピロリン酸ソーダ水溶液および2kgの5質量%の塩化カルシウム水溶液および10質量%苛性ソーダ水溶液を、混合後のpHが8〜9になるように調製しながら1時間かけて添加した。この間、反応温度は20〜25℃であった。
【0128】
得られたピロリン酸を含んだ二酸化チタンスラリーを22〜28℃で1時間保持した。その際の電気伝導度は9500μS/cmであった。 次に、得られたスラリーをロータリーフィルタープレス(コトブキ技研株式会社製)で濾過洗浄し、濾過液の電気伝導度が47μS/cmになるまで、十分水洗した後、濃縮して光触媒性スラリーを得た。得られた光触媒性スラリーのpHを測定したところ7.8であった。また、大塚電子株式会社製ELS−8000を用いて、電気泳動光散乱法によって測定されたゼータ電位を測定したところ、等電点は1.8であった。
【0129】
次に、得られたスラリーの一部を採取し、120℃にて乾燥恒量法により固形分濃度を測定したところ、10質量%であった。また、その2mm厚みのスラリーの550nmにおける透過率は42%であり、分散性にすぐれたスラリーであった。次に得られた粉末をFT−IRで分析を行った結果、メタリン酸の吸収が観察された。次に、乾燥粉をICPで分析を行ったところ、Caが0.5%、リンが1.3%存在することがわかった。BET比表面積測定の結果は、140m/gであった。また、この粉末のDWAは55%であった。これは原料の二酸化チタンのDWAより大きい値であり、表面処理品の方が、光触媒活性が高いことを示している。
【0130】
実施例5:
実施例4に記載した100gの塩化カルシウム(株式会社トクヤマ製、食添用)を純水に溶解して得られた、5質量%の塩化カルシウム水溶液2kgを500gの塩化アルミニウム六水和物(関東化学株式会社製、試薬特級)を純水に溶解して得られた、5質量%の塩化アルミニウム水溶液10kgに変えた以外は、実施例4と同様の処理をし、光触媒スラリーを得た。得られた光触媒性スラリーのpHを測定したところ6.9であった。また、大塚電子株式会社製ELS−8000を用いて、電気泳動光散乱法によって測定されたゼータ電位を測定したところ、等電点は2.0であった。
【0131】
次に、得られたスラリーの一部を採取し、120℃にて乾燥恒量法により固形分濃度を測定したところ、10質量%であった。また、その2mm厚みのスラリーの550nmにおける透過率は36%であり、分散性にすぐれたスラリーであった。次に得られた粉末をFT−IRで分析を行った結果、ピロ硫酸酸の吸収が観察された。次に、乾燥粉をICPで分析を行ったところ、Alが0.3%、Pが0.8%存在することがわかった。BET比表面積測定の結果は、140m/gであった。また、この粉末のDWAは49%であった。これは原料の二酸化チタンのDWAより大きい値であり、表面処理品の方が、光触媒活性が高いことを示している。
【0132】
実施例6:
8.3Nm/hrのガス状四塩化チタンを6Nm/hrの窒素ガスで希釈した四塩化チタン希釈ガスを1,100℃に予熱し、4Nm/hrの酸素と15Nm/hrの水蒸気を混合した酸化性ガスを1,000℃に予熱し、これらの原料ガスを、図2に示すような反応装置を用い、同軸平行流ノズルを通して石英ガラス製反応器にそれぞれ流速35m/秒、50m/秒にて導入した。700℃を越える高温滞留時間を0.2秒となるように冷却空気を反応管に導入後、テトラフルオロエチレン製バグフィルターにて二酸化チタン粉末を捕集した。この粉末を、350℃で1時間加熱処理した。得られた二酸化チタンは、BET比表面積54m/g、ルチル含有率33%、アナターゼ含有率67%であった。この粉末のDWAは18%であった。
【0133】
次にこの粉末を900g含有する2重量%水スラリー50Lを調整したところ、pHは2.3であった。これを、陰イオン交換樹脂を用いて脱塩し、pHを3.7にした。
次に100gのピロリン酸ソーダ(太平化学産業株式会社製、食添用)を純水に溶解し、5質量%のピロリン酸ソーダ水溶液2kgを得た。
次に100gの塩化カルシウム(株式会社トクヤマ製、食添用)を純水に溶解し、5質量%の塩化カルシウム水溶液2kgを得た。
【0134】
このようにして得られた2質量%二酸化チタンスラリー50Lを反応槽に仕込み冷却しながら、十分な攪拌を行った。そこへ2kgの5質量%ピロリン酸ソーダ水溶液および2kgの5質量%の塩化カルシウム水溶液および10質量%苛性ソーダ水溶液を、混合後のpHが8〜9になるように調製しながら1時間かけて添加した。この間、反応温度は20〜25℃であった。
【0135】
得られたピロリン酸を含んだ二酸化チタンスラリーを22〜28℃で1時間保持した。その際の電気伝導度は9400μS/cmであった。次に、得られたスラリーをロータリーフィルタープレス(コトブキ技研株式会社製)で濾過洗浄し、濾過液の電気伝導度が40μS/cmになるまで、十分水洗した後、濃縮して光触媒性スラリーを得た。
【0136】
得られた光触媒性スラリーのpH(株式会社堀場製作所製 D−22)を測定したところ7.8であった。また、大塚電子株式会社製ELS−8000を用いて、電気泳動光散乱法によって測定されたゼータ電位を測定したところ、等電点は2.3であった。
【0137】
次に、得られたスラリーの一部を採取し、120℃にて乾燥恒量法により固形分濃度を測定したところ、10質量%であった。また、その2mm厚みのスラリーの550nmにおける透過率は8%であった。また乾燥粉をICP(株式会社島津製作所製、ICPS−100V)で分析を行ったところ、Naが0.2%、リンが0.3%存在することがわかった。BET比表面積測定の結果は、58m/gであった。また、この粉末のDWAは62%であった。これは原料の二酸化チタンのDWAより大きい値であり、表面処理品の方が、光触媒活性が高いことを示している。
【0138】
比較例1:
実施例1と同様に、あらかじめ計量した純水50Lを、攪拌を行いながら加熱して温度を98℃に保持した。そこへTi濃度15%の四塩化チタン水溶液3.6kgを120分かけて滴下した。滴下後に得られた白色懸濁液を、40℃にて減圧濃縮した後、電気透析機にかけて脱塩素を行い、スラリーのpHを4にした。また、大塚電子株式会社製ELS−8000を用いて、電気泳動光散乱法によって測定されたゼータ電位を測定したところ、等電点は4.5であった。こうして得られた光触媒性スラリーの一部を採取し、乾燥恒量法により固形分濃度を測定したところ、10質量%であった。乾燥粉をX線回折装置にかけて構造解析を行った結果、得られた粉末はブルッカイト型二酸化チタンであった。これは、ブルッカイト含有率89質量%、アナターゼ含有率11質量%であった。BET比表面積測定の結果は、140m/gであった。得られたスラリーの2mm厚みのスラリーの550nmにおける透過率は44%であった。また、この粉末のDWAは11%であった。
【0139】
(高密度ポリエチレンマスターバッチの作製)
上記と同様な手段で得られた光触媒性スラリーの一部を媒体流動乾燥機((株)大川原製作所製、スラリードライヤー)で乾燥して、光触媒性粉体5kgを取得した。この光触媒性粉体20質量部、ステリン酸亜鉛(日本油脂(株)製、ジンクステアレートS)2質量部、高密度ポリエチレン(日本ポリオレフィン(株)製、ジェイレクスF6200FD)78質量部を、二軸押出機(池貝鉄工(株)製、PCM30型)を用いて170℃(滞留時間約3分)で溶融混練し、ペレット化を行い、直径2〜3mmφ、長さ3〜5mmの重さ0.01〜0.02gの光触媒性粉体が20質量%含有した高密度ポリエチレンの円柱状のコンパウンドを20kg造った。
【0140】
(紡糸)
上記で得られた光触媒性粉体を含有した高密度ポリエチレンコンパウンド10kgと高密度ポリエチレン(日本ポリオレフィン(株)製、ジェイレクスF6200FD)10kgをV型ブレンダー(池本理化工業(株)、RKI−40)で10分間混合し、混合ペレットを作製した。
【0141】
次に、得られた混合ペレットとポリエステル樹脂ペレット(帝人(株)製、FM−OK)をそれぞれ溶融押出紡糸機(中央化学機械製作所(株)製、ポリマーメイド5)に投入し、紡糸パック温度300℃で光機能性粉体含有高密度ポリエチレンとポリエステル樹脂の質量比が1:1となるような光触媒含有高密度ポリエチレン(鞘)/ポリエステル樹脂(芯)の芯鞘構造からなる太さ12デニールの繊維を35kg作製した。
【0142】
(光触媒活性評価)
次に、この得られた繊維10gをテドラーバッグ5L((株)ガステック製)内に置き、硫化水素60体積ppmを封入した。次いで、昼白色蛍光灯(株式会社日立GEライティング製、ハイホワイトFL20SS−N/18−B)を用い、波長365nmにおける紫外線強度6μW/cmにて測定し、6時間後の硫化水素の濃度を検知管((株)ガステック製、No.4LL)で測定した。6時間後の硫化水素濃度は12体積ppmであった。これは、実施例1と比較して多く残存しており、昼白色蛍光灯を光源とする光触媒能は実施例1と比較して劣っていると判断される。
【0143】
(耐候性試験)
上記の繊維にフェードメータ(ATLAS製、SUNSET CPS+)で50mW/cmの光をあて24時間後に繊維の着色を調べたが、激しい黄色い着色が認められた。
【0144】
比較例2:
あらかじめ計量した純水50Lを、攪拌を行いながら加熱して温度を98℃に保持した。そこへTi濃度15質量%の四塩化チタン水溶液(住友チタニウム株式会社製)3.6kgを120分かけて滴下した。pHは0であった。こうして得られた光触媒スラリーの一部を採取し、乾燥恒量法により固形分濃度を測定したところ、2質量%であった。乾燥粉をX線回折装置にかけて構造解析を行った結果、得られた粉末はブルッカイト型二酸化チタンであった。これは、ブルッカイト含有率89質量%、アナターゼ含有率11質量%であった。また、この粉末のDWAは11%であった。
【0145】
次に100gのピロリン酸ソーダ(太平化学産業株式会社製、食添用)を純水に溶解し、5質量%のピロリン酸ソーダ水溶液2kgを得た。
このようにして得られた2質量%二酸化チタンスラリー50Lを反応槽に仕込み冷却しながら、十分な攪拌を行った。そこへ2kgの5質量%ピロリン酸ソーダ水溶液および10質量%苛性ソーダ水溶液を、混合後のpHが8〜9になるように調製しながら1時間かけて、添加した。この間、反応温度は20〜25℃であった。
【0146】
得られたピロリン酸を含んだ二酸化チタンスラリーを22〜28℃で1時間保持した。その際の電気伝導度は22000μS/cmであった。次に、得られたスラリーをロータリーフィルタープレス(コトブキ技研株式会社製)で濾過洗浄し、濾過液の電気伝導度が50μS/cmになるまで、十分水洗した後、濃縮して光触媒性スラリーを得た。
得られた光触媒性スラリーのpH(株式会社堀場製作所製 D−22)を測定したところ7.8であった。
【0147】
次に、得られたスラリーの一部を採取し、120℃にて乾燥恒量法により粉末を得た。これよりスラリーの固形分濃度を測定したところ、10質量%であった。また、その2mm厚みのスラリーの550nmにおける透過率は16%であった。次に得られた粉末をFT−IR(株式会社パーキンエルマー製、FT−IR1650)で分析を行った結果、ピロリン酸の吸収が観察された。次に、乾燥粉をICP(株式会社島津製作所製、ICPS−100V)で分析を行ったところ、Naが0.9質量%、リンが1.3質量%存在することがわかった。BET比表面積測定の結果は、140m/gであった。また、この粉末のDWAは10%であった。これは原料の二酸化チタンのDWAより大きくない。
【0148】
比較例3:
特開平11−278843号公報の実施例に準拠したテストを行った。あらかじめ計量した純水50Lを、攪拌を行いながら加熱して温度を98℃に保持した。そこへTi濃度15質量%の四塩化チタン水溶液(住友チタニウム株式会社製)3.6kgを120分かけて滴下した。pHは0であった。こうして得られた光触媒スラリーの一部を採取し、乾燥恒量法により固形分濃度を測定したところ、2質量%であった。乾燥粉をX線回折装置にかけて構造解析を行った結果、得られた粉末はブルッカイト型二酸化チタンであった。これは、ブルッカイト含有率89質量%、アナターゼ含有率11質量%であった。また、この粉末のDWAは11%であった。
【0149】
次に100gのピロリン酸(関東化学株式会社製、試薬特級)を純水に溶解し、5質量%のピロリン酸水溶液2kgを得た。
このようにして得られた2質量%二酸化チタンスラリー50Lを反応槽に仕込み冷却しながら、十分な攪拌を行った。そこへ2kgの5質量%ピロリン酸水溶液を加えた。さらに、そこへ10質量%苛性ソーダ水溶液を1時間かけて添加し、pHを8.2にした。この間、反応温度は20〜25℃であった。
【0150】
得られたピロリン酸を含んだ二酸化チタンスラリーを22〜28℃で1時間保持した。その際の電気伝導度は28000μS/cmであった。次に、得られたスラリーをロータリーフィルタープレス(コトブキ技研株式会社製)で濾過洗浄し、濾過液の電気伝導度が58μS/cmになるまで、十分水洗した後、濃縮して光触媒性スラリーを得た。
得られた光触媒性スラリーのpH(株式会社堀場製作所製 D−22)を測定したところ7.3であった。
【0151】
次に、得られたスラリーの一部を採取し、120℃にて乾燥恒量法により粉末を得た。これよりスラリーの固形分濃度を測定したところ、10質量%であった。また、その2mm厚みのスラリーの550nmにおける透過率は15%であった。次に得られた粉末をFT−IR(株式会社パーキンエルマー製、FT−IR1650)で分析を行った結果、ピロリン酸の吸収が観察された。次に、乾燥粉をICP(株式会社島津製作所製、ICPS−100V)で分析を行ったところ、Naが0.9質量%、リンが1.3質量%存在することがわかった。BET比表面積測定の結果は、140m/gであった。また、この粉末のDWAは8%であった。これは原料の二酸化チタンのDWAより大きくない。
【0152】
比較例4:
特開2001−72419号公報の実施例に準拠したテストを行った。
120%三塩化チタン溶液(和光純薬製:特級)100gを300mLフラスコ中で、窒素雰囲気下で攪拌し、氷水で冷却しながら25%アンモニア水(和光純薬製:特級)141gを約30分で滴下し加水分解を行った。得られた試料を濾過洗浄し乾燥した。次いで、空気中400℃で1時間焼成して、黄色に着色した粒子状酸化チタンを得た。得られた酸化チタンは結晶構造がアナターゼ型であった。このDWAは18%であった。これは、実施例1と比較して活性が低い。
【0153】
比較例5:
実施例1と同様に、あらかじめ計量した純水50Lを攪拌を行いながら加熱して温度を98℃に保持した。そこへTi濃度15質量%の四塩化チタン水溶液(住友チタニウム株式会社製)3.6kgを120分かけて滴下した。滴下後に得られた白色懸濁液を電気透析機にかけて脱塩素を行い、スラリーのpHを4にした。こうして得られた光触媒スラリーの一部を採取し、乾燥恒量法により固形分濃度を測定したところ、2質量%であった。乾燥粉をX線回折装置にかけて構造解析を行った結果、得られた粉末はブルッカイト型二酸化チタンであった。これは、ブルッカイト含有率89質量%、アナターゼ含有率11質量%であった。また、この粉末のDWAは11%であった。
【0154】
次に得られた二酸化チタンスラリーに100gのピロリン酸ソーダ(太平化学産業株式会社製、食添用粉末)を添加して、分散させ、溶解した。
得られたピロリン酸を含んだ二酸化チタンスラリーを22〜28℃で1時間保持した。その際の電気伝導度は10000μS/cmであった。次に、得られたスラリーをロータリーフィルタープレス(コトブキ技研株式会社製)で濾過洗浄し、濾過液の電気伝導度が50μS/cmになるまで、十分水洗した後、濃縮して光触媒性スラリーを得た。得られた光触媒性スラリーのpHを測定したところ7.9であった。
【0155】
次に、得られたスラリーの一部を採取し、120℃にて乾燥恒量法により粉末を得た。これよりスラリーの固形分濃度を測定したところ、10質量%であった。また、このスラリーの2mm厚みの400nmにおける吸収率は21%、550nmにおける吸収率は6%であった。可視光の吸収率が実施例1と比べて低い。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明は、二酸化チタン微粒子の表面に、光触媒として不活性な化合物を特定の条件下で複合化させることにより、微弱な光量の光源で十分に光触媒能を発揮しうる光触媒粒子ならびに粉体、それらを用いた有機重合体組成物、中性で透過率の高いスラリーやコーティング剤、光触媒性を示す表面ならびに親水性を示す表面を有する物品を提供するから、産業上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】図1は、昼白色蛍光灯の光強度スペクトルの例である。
【図2】図2は、実施例6の反応装置の模式図である。
【図3】図3は、実施例1の光触媒性スラリーの吸収率のスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法であって、
二酸化チタンを含有するpHが3〜5の水系スラリーを用意する工程と、
光触媒として不活性な化合物を含有する水系溶液を用意する工程と、
両者をpH4〜10の範囲において反応させる工程とを含むことを特徴とする二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。
【請求項2】
二酸化チタンを含有する水系スラリーにおける二酸化チタンの濃度が0.1〜10質量%である、請求項1に記載の二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。
【請求項3】
二酸化チタンを含有する水系スラリーと光触媒として不活性な化合物を含有する水系溶液とを混合したときの二酸化チタンの濃度が5質量%以下である、請求項1に記載の二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。
【請求項4】
二酸化チタンを含有する水系スラリーと光触媒として不活性な化合物を含有する水系溶液との反応温度が50℃以下である、請求項1に記載の二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。
【請求項5】
二酸化チタンを含有する水系スラリーを用意する工程が、二酸化チタンを湿式合成する工程を含み、かつ該合成スラリーから二酸化チタン粉末を得る工程を含まないものである、請求項1に記載の二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。
【請求項6】
二酸化チタンが、アナターゼ型結晶系を含むものである請求項1に記載の二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。
【請求項7】
二酸化チタンが、ブルッカイト型結晶系を含むものである請求項1に記載の二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。
【請求項8】
二酸化チタンが、ルチル型結晶系を含むものである請求項1に記載の二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。
【請求項9】
二酸化チタンが、アナターゼ型、ルチル型及びブルッカイト型のうち少なくとも2種以上の結晶系を含むものである請求項1に記載の二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。
【請求項10】
二酸化チタンのBET比表面積が、10〜300m/gである請求項1に記載の二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。
【請求項11】
光触媒として不活性な化合物が、リン酸塩、縮合リン酸塩、ホウ酸塩、硫酸塩、縮合硫酸塩及びカルボン酸塩から選ばれる塩である請求項1に記載の二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。
【請求項12】
縮合リン酸塩が、ピロリン酸、トリポリリン酸塩、テトラポリリン酸塩、メタリン酸塩、ウルトラリン酸塩からなる群より選ばれた少なくとも1種の塩である請求項1に記載の二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。
【請求項13】
光触媒として不活性な化合物が、Si化合物、Al化合物、P化合物、S化合物、N化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載の二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。
【請求項14】
光触媒として不活性な化合物が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属及びAlからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属を含むものである請求項1に記載の二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。
【請求項15】
アルカリ金属が、Na、Kからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項14に記載の二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。
【請求項16】
アルカリ土類金属が、Mg、Caからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項14に記載の二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。
【請求項17】
遷移金属が、Fe,Znからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項14に記載の二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。
【請求項18】
二酸化チタンを光触媒として不活性な化合物で表面処理する二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法であって、その原料である二酸化チタン粒子より高い光触媒活性を有する複合粒子を与えることのできる二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子の製造方法。
【請求項19】
請求項1に記載の製造方法によって得られた、二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子。
【請求項20】
光触媒として不活性な化合物が、二酸化チタン粒子の表面に部分的に存在する請求項19に記載の二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子。
【請求項21】
請求項1に記載の製造方法によって得られた、二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子を含む水系スラリー。
【請求項22】
光触媒粒子が、請求項19に記載の粒子を含むものであって、アセトアルデヒドを20体積ppm含有する5Lの乾燥空気中で、直径9cmの平面上に均一に敷かれた3.5gの光触媒粒子に、昼白色蛍光灯で波長365nmの紫外線強度が6μW/cmとなるように光を照射したとき、照射1時間後のアセトアルデヒドの分解率が20%以上となることを特徴とする光触媒粒子。
【請求項23】
分解率が、40%以上となることを特徴とする請求項22記載の光触媒粒子。
【請求項24】
分解率が、80%以上となることを特徴とする請求項22記載の光触媒粒子。
【請求項25】
二酸化チタンと光触媒として不活性な化合物との複合粒子のBET比表面積が、10〜300m/gである請求項24に記載の光触媒粒子。
【請求項26】
二酸化チタンが、アナターゼ型結晶系を含むものである請求項25に記載の光触媒粒子。
【請求項27】
二酸化チタンがブルッカイト型結晶系を含むものである請求項25に記載の光触媒粒子。
【請求項28】
二酸化チタンがルチル型結晶系を含むものである請求項25に記載の光触媒粒子。
【請求項29】
二酸化チタンが、アナターゼ型、ルチル型及びブルッカイト型のうち少なくとも2種の結晶系を含む請求項25に記載の光触媒粒子。
【請求項30】
光触媒として不活性な化合物が、二酸化チタン質量に対して、0.01質量%〜50質量%存在する請求項25に記載の光触媒粒子。
【請求項31】
光触媒として不活性な化合物が、リン酸塩、縮合リン酸塩、ホウ酸塩、硫酸塩、縮合硫酸塩及びカルボン酸塩から選ばれる塩である請求項30に記載の光触媒粒子。
【請求項32】
縮合リン酸塩が、ピロリン酸、トリポリリン酸塩、テトラポリリン酸塩、メタリン酸塩、ウルトラリン酸塩からなる群より選ばれた少なくとも1種の塩である請求項31に記載の光触媒粒子。
【請求項33】
光触媒として不活性な化合物が、Si化合物、Al化合物、P化合物、S化合物、N化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項30に記載の光触媒粒子。
【請求項34】
光触媒として不活性な化合物が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属及びAlからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属を含むことを特徴とする請求項30に記載の光触媒粒子。
【請求項35】
アルカリ金属が、Na、Kからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項34に記載の光触媒粒子。
【請求項36】
アルカリ土類金属が、Mg、Caからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項34に記載の光触媒粒子。
【請求項37】
遷移金属が、Fe,Znからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項34に記載の光触媒粒子。
【請求項38】
電気泳動光散乱法によって測定されたゼータ電位から求められる等電点が4以下であることを特徴とする請求項30に記載の光触媒粒子。
【請求項39】
請求項30に記載の光触媒粒子を含有することを特徴とする光触媒性粉体。
【請求項40】
請求項30に記載の光触媒粒子を含有することを特徴とする有機重合体組成物。
【請求項41】
有機重合体組成物の有機重合体が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、合成樹脂、天然樹脂及び親水性高分子からなる群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項40に記載の有機重合体組成物。
【請求項42】
有機重合体組成物が、塗料、コーティング組成物、コンパウンド及びマスターバッチからなる群より選ばれた少なくとも1種の有機重合体組成物である請求項40に記載の有機重合体組成物。
【請求項43】
有機重合体組成物が、光触媒性粉体を該組成物全質量中0.01〜80質量%含む請求項40に記載の有機重合体組成物。
【請求項44】
請求項40に記載の有機重合体組成物を成形してなることを特徴とする光触媒性成形体。
【請求項45】
光触媒性成形体が、繊維、フィルム及びプラスチックからなる群より選ばれた少なくとも1種の成形体である請求項44に記載の光触媒性成形体。
【請求項46】
請求項45に記載の光触媒性成形体から得られることを特徴とする物品。
【請求項47】
請求項30に記載の光触媒粒子を表面に具備したことを特徴とする物品。
【請求項48】
物品が、建材、機械、車両、ガラス製品、家電製品、農業資材、電子機器、工具、食器、風呂用品、トイレ用品、家具、衣類、布製品、繊維、革製品、紙製品、スポーツ用品、蒲団、容器、眼鏡、看板、配管、配線、金具、衛生資材及び自動車用品からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項46に記載の物品。
【請求項49】
請求項30に記載の光触媒粒子を含有することを特徴とするスラリー。
【請求項50】
光触媒粒子を含むスラリーであって、スラリーを乾燥して得られる粉体が、請求項30に記載の光触媒粒子であることを特徴とするスラリー。
【請求項51】
スラリーが、溶媒として水を含有する請求項49に記載のスラリー。
【請求項52】
スラリーが、光触媒粒子を0.01〜50質量%含有する請求項49に記載のスラリー。
【請求項53】
スラリーのpHが、5〜9である請求項49に記載のスラリー。
【請求項54】
スラリーのpHが、6〜8である請求項53に記載のスラリー。
【請求項55】
スラリーの光透過率が、スラリー中の光触媒粒子の濃度を10質量%、波長550nm、光路長2mmで測定したとき、20%以上である請求項49に記載のスラリー。
【請求項56】
光透過率が30%以上である請求項55に記載のスラリー。
【請求項57】
光触媒性を示す膜を与えるコーティング剤であって、請求項30に記載の光触媒粒子と、少なくともバインダーとから構成されることを特徴とするコーティング剤。
【請求項58】
光触媒性を示す膜を与えるコーティング剤であって、請求項49に記載のスラリーと、少なくともバインダーとから構成されることを特徴とするコーティング剤。
【請求項59】
バインダーが、有機化合物を含む請求項57に記載のコーティング剤。
【請求項60】
有機化合物が、アクリルシリコン、ポリビニルアルコール、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン、セルロイド、キチン、澱粉シート、ポリアクリルアミド及びアクリルアミドからなる群より選ばれた少なくとも1種の有機化合物である請求項59に記載のコーティング剤。
【請求項61】
バインダーが、無機化合物を含む請求項57に記載のコーティング剤。
【請求項62】
無機化合物が、Zr化合物、Si化合物、Ti化合物、Al化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の無機化合物である請求項61に記載のコーティング剤。
【請求項63】
コーティング剤を塗布して得られた膜を硬化させる光触媒性を示す膜の製造方法であって、硬化させる温度が500℃以下であり、請求項57に記載のコーティング剤を用いることを特徴とする光触媒性を示す膜の製造方法。
【請求項64】
硬化させる温度が、200℃以下である請求項63に記載の光触媒性を示す膜の製造方法。
【請求項65】
硬化させる温度が、30℃以下である請求項63に記載の光触媒性を示す膜の製造方法。
【請求項66】
光触媒性を示す膜を有する物品であって、光触媒性を示す膜が請求項63に記載の方法により得られることを特徴とする物品。
【請求項67】
光触媒性を示す膜を有する物品であって、硫化水素を60体積ppm含有する5Lの乾燥空気中で、表面積400cmの光触媒性を示す膜に、昼白色蛍光灯で波長365nmの紫外線強度が6μW/cmとなるように光を照射したとき、照射4時間後の硫化水素の分解率が20%以上となることを特徴とする物品。
【請求項68】
光触媒性を示す膜が、0.01〜100μmの膜厚を持つ請求項66または67に記載の物品。
【請求項69】
膜厚が、0.01〜0.1μmである請求項68に記載の物品。
【請求項70】
膜厚が、1〜100μmである請求項68に記載の物品。
【請求項71】
物品が、光触媒性を示す膜の無い状態での550nmにおける光透過率をT1%、光触媒性を示す膜を有する状態での550nmにおける光透過率をT2%としたとき、T2/T1が0.9以上となる部分を有する光触媒性を示す膜を有する物品である請求項69に記載の物品。
【請求項72】
物品が、光触媒性を示す膜の無い状態での550nmにおける光透過率をT1%、光触媒性を示す膜を有する状態での550nmにおける光透過率をT2%としたとき、T2/T1が0.9以上となる部分を有する光触媒性を示す膜を有する物品である請求項70に記載の物品。
【請求項73】
物品が、光触媒性を示す膜の無い状態での550nmにおける光反射率をR1%、光触媒性を示す膜を有する状態での550nmにおける光反射率をR2%としたとき、R2/R1が0.9以上でとなる部分を有する光触媒性を示す膜を有する物品である請求項69に記載の物品。
【請求項74】
物品が、光触媒性を示す膜の無い状態での550nmにおける光反射率をR1%、光触媒性を示す膜を有する状態での550nmにおける光反射率をR2%としたとき、R2/R1が0.9以上でとなる部分を有する光触媒性を示す膜を有する物品である請求項70に記載の物品。
【請求項75】
光触媒性を示す膜が、2H以上の鉛筆硬度を有する請求項66又は67に記載の物品。
【請求項76】
光触媒性を示す膜が、波長365nmにおける紫外線強度が6μW/cmとなるように、昼白色蛍光灯で光を24時間照射された後、20°以下の水との接触角を有することを特徴とする請求項66又は67に記載の物品。
【請求項77】
水との接触角が、10°以下である請求項76に記載の物品。
【請求項78】
水との接触角が、5°以下である請求項75に記載の物品。
【請求項79】
光触媒性を示す膜が、波長365nmにおける紫外線強度が6μW/cmとなるように昼白色蛍光灯で光を24時間照射され、ついで暗所に24時間保持された後、20°以下の水との接触角を有することを特徴とする請求項66又は67に記載の物品。
【請求項80】
暗所に24時間保持された後、水との接触角が10°以下である請求項79に記載の物品。
【請求項81】
暗所に24時間保持された後、水との接触角が5°以下である請求項80に記載の物品。
【請求項82】
光触媒性を示す膜が、キセノンアークランプ式促進暴露試験4000時間後、黄変度が10以下であり、波長365nmにおける紫外線強度が6μW/cmとなるように昼白色蛍光灯で光を24時間照射した後の水との接触角が20°以下である請求項66又は67に記載の物品。
【請求項83】
光触媒性を示す膜が、無機基材上に形成されている請求項66又は67に記載の物品。
【請求項84】
無機基材が、金属もしくはセラミックスである請求項83に記載の物品。
【請求項85】
無機基材が、Si化合物、Al化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の無機基材である請求項84に記載の物品。
【請求項86】
光触媒性を示す膜が、有機基材上に形成されている請求項66又は67に記載の物品。
【請求項87】
有機基材が、有機重合体である請求項86に記載の物品。
【請求項88】
有機重合体が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン6、ナイロン66、アラミド、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、シリコン樹脂、ポリビニルアルコール、ピニルアセタール樹脂、ポリアセテート、ABS樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、セルロースおよびレーヨンその他のセルロース誘導体、ウレタン樹脂、ポリウレタン、尿素樹脂、フッ素樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フェノール樹脂、セルロイド、キチン、澱粉シート、アクリル樹脂、メラミン樹脂及びアルキド樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の有機重合体である請求項87に記載の物品。
【請求項89】
物品が、建材、機械、車両、ガラス製品、家電製品、農業資材、電子機器、工具、食器、風呂用品、トイレ用品、家具、衣類、布製品、繊維、革製品、紙製品、スポーツ用品、蒲団、容器、眼鏡、看板、配管、配線、金具、衛生資材及び自動車用品からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項83に記載の物品。
【請求項90】
物品が、建材、機械、車両、ガラス製品、家電製品、農業資材、電子機器、工具、食器、風呂用品、トイレ用品、家具、衣類、布製品、繊維、革製品、紙製品、スポーツ用品、蒲団、容器、眼鏡、看板、配管、配線、金具、衛生資材及び自動車用品からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項86に記載の物品。
【請求項91】
請求項47又は48に記載の物品の光触媒性及び親水性を発現するための光源が、太陽、蛍光灯、水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、水銀キセノンランプ、メタルハライドランプ、発光ダイオード、レーザー、有機物の燃焼炎からなる群より選ばれた少なくとも1種の光源であることを特徴とする光触媒性及び親水性の付与方法。
【請求項92】
請求項89に記載の物品の光触媒性及び親水性を発現するための光源が、太陽、蛍光灯、水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、水銀キセノンランプ、メタルハライドランプ、発光ダイオード、レーザー、有機物の燃焼炎からなる群より選ばれた少なくとも1種の光源であることを特徴とする光触媒性及び親水性の付与方法。
【請求項93】
請求項90に記載の物品の光触媒性及び親水性を発現するための光源が、太陽、蛍光灯、水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、水銀キセノンランプ、メタルハライドランプ、発光ダイオード、レーザー、有機物の燃焼炎からなる群より選ばれた少なくとも1種の光源であることを特徴とする光触媒性及び親水性の付与方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−253991(P2008−253991A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−110623(P2008−110623)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【分割の表示】特願2003−554329(P2003−554329)の分割
【原出願日】平成14年12月20日(2002.12.20)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】