説明

高温加熱混合装置

【課題】 加熱処理温度が個々に異なる粉体や粒体等を加熱処理する場合において、適正な温度管理により粒体等被加熱処理物の高温加熱処理を迅速・確実に行える高温加熱混合装置を提供する。
【解決手段】 回転ドラム20の外側に所定の間隔を保ってヒータ64を複数本配設し、ヒータへの通電を、回転ドラム内に収容した被加熱処理物Pの温度と前記回転ドラムの表面温度とを検出する第1の温度検出・制御手段71と前記ヒータの表面温度を検出する第2の温度検出・制御手段72とからなる通電制御装置70により通電制御し、被加熱処理物の温度が、自体の加熱目標温度より低く、かつ、回転ドラムとヒータの表面温度が、前記回転ドラムとヒータの加熱目標温度より低い場合のみヒータを前記通電制御装置により通電させて、回転ドラムを加熱して被加熱処理物を加熱処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体や粒体等の被加熱処理物を所要の温度により加熱処理する場合において使用する高温加熱混合装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、粉体や粒体等の被加熱処理物を所要の温度にて加熱処理する場合は、例えば、匣鉢に被加熱処理物を適量詰めて、これを電気式のシャトルキルンとか固定炉床式の単独キルンに収容して加熱処理を行っていた。
【0003】
しかし、被加熱処理物を前記の加熱処理方法によって処理した場合、被加熱処理物の匣鉢に接触する部分と匣鉢の中心部分においては大きな温度差が生じ、被加熱処理物を均一に加熱処理することが困難であった。
【0004】
このため、最近では前記の問題点に鑑み、例えば被加熱処理物をロータリーキルンに直接収納して加熱処理を行うようにしていた。前記のロータリーキルンとしては、例えば、特開2002−277166号公報に提示されているように、上下方向に傾斜可能に設けた炉体の内側にヒータを配置するとともに、そのヒータと同心的に炉体を貫通して回転するレトルト(回転ドラム)を設け、このレトルトを水平姿勢、あるいは、傾斜姿勢を維持させながら回転させて、被加熱処理物を所定温度により加熱処理していた。
【0005】
【特許文献1】特開2002−277166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のロータリーキルンは、レトルトの回転により被加熱処理物を撹拌しながら加熱処理されるため、被加熱処理物は全体的にほぼ均一に加熱処理することが可能となる。しかし、前記ロータリーキルンにおいては、被加熱処理物を撹拌しながら所定の温度にて加熱処理を行っていたが、加熱処理に際しては、処理に適した温度での加熱管理が充分に行われていないので、被加熱処理物の処理温度が個々に異なるような場合、常に最適な温度管理状態で加熱を行うには、作業者の経験に頼ることが多かったので、温度管理には手間と経験を要することはもとより、加熱処理温度の管理を作業者任せにしていた場合に加熱にむらが生じると、加熱処理した被加熱処理物の一部に焼付きが生じていたり、あるいは、逆に加熱が不充分(未熟)であったりして、折角加熱処理した被加熱処理物の一部が使用できなくなるという虞があった。
【0007】
また、前記加熱処理を行う粉体とか粒体等の被加熱処理物は、温度管理が充分に行われないままに加熱処理した場合、その都度、被加熱処理物の中から材料として使用が困難な、例えば、焼付き部分とか、加熱処理が不充分な部分を除去しなければならないという作業工程を必要としていた。特に、前記加熱処理にむらが多いような場合は、被加熱処理物そのものを使用可能部分も含めて全て廃棄する等していたので、加熱処理作業の歩留まりが非常に悪くなることはもとより、加熱処理温度が個々に異なる粉体等被加熱処理物の処理作業においては、加熱処理作業を円滑・良好に行うことが難しく、その作業効率を低下させる大きな要因となっていた。
【0008】
本発明は、前記の種々の問題点に鑑み、加熱処理温度が異なる被加熱処理物においても、常に適確に温度管理を行うことにより、粉体等被加熱処理物の高温加熱処理を迅速・確実に、かつ、省エネにて行うことを可能とした簡素な構成の高温加熱混合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、クランク機構と連結されて揺動する揺動台に、粉体や粒体等からなる被加熱処理物を収容して所要温度にて加熱処理する中空円筒状の回転ドラムを回転車輪を介して回転自在に乗載して構成した混合装置において、前記回転ドラムの外側に該回転ドラムと所定の間隔を保ってヒータを回転ドラムの軸方向と平行させて周方向に複数本配設し、前記回転ドラムの周縁に配設したヒータへの通電を、回転ドラム内に収容した被加熱処理物の温度と前記回転ドラムの表面温度とを検出する第1の温度検出・制御手段と、前記ヒータの表面温度を検出する第2の温度検出・制御手段とからなる通電制御装置により通電制御し、前記回転ドラム内の被加熱処理物の温度が、自体の加熱目標温度より低く、かつ、回転ドラムとヒータの表面温度が、前記回転ドラムとヒータの加熱目標温度より低い場合のみヒータを前記通電制御装置により通電させて、前記クランク機構と回転車輪とによって揺動・回転する回転ドラムを加熱して被加熱処理物を加熱処理するように構成したことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の高温加熱混合装置において、前記通電制御装置の一方を構成する第1の温度検出・制御手段は、被加熱処理物の温度を検出する温度センサおよび回転ドラムの表面温度を検出する温度センサと、前記各温度センサにて検出した被加熱処理物の温度が、自体の加熱目標温度より低く、かつ、回転ドラムの表面温度が、その加熱目標温度より低い場合は、ヒータへの通電指令を第2の温度検出・制御手段に出力する差温算定・指令送出手段とによって構成し、前記通電制御装置の他方を構成する前記第2の温度検出・制御手段は、ヒータの表面温度を検出する温度センサと、該温度センサにて検出したヒータの表面温度がその加熱目標温度より低く、かつ、第1の温度検出・制御手段からヒータへの通電指令が出力されていた場合は、ヒータへの通電指令をコントローラに出力する温度算定・指令送出手段とにより構成して、ヒータの通電を制御する通電制御装置を構成したことを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の高温加熱混合装置において、前記回転ドラムの外周には、回転ドラムの周縁に配設したヒータを内蔵し、かつ、前記ヒータを断熱材により囲繞して形成した保温枠体を、回転ドラムを揺動・回転自在に包囲した状態で配置して構成したことを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の高温加熱混合装置において、前記回転ドラムを揺動・回転自在に包囲して配置した保温枠体は、回転ドラムの周方向において開閉可能に分割して前記回転ドラムを、揺動台に回転車輪を介して着脱自在に乗載できるように構成したことを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の高温加熱混合装置において、回転ドラムを揺動台上において回転自在に支承する回転車輪と、前記回転ドラムが揺動時に揺動台から脱落するのを防ぐ揺動車輪は、いづれもヒータを内蔵した保温枠体の軸方向外側の端部において回転ドラムと摺接可能に配設して構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明においては、揺動・回転する回転ドラム内に収容した粉体や粒体等の被加熱処理物を所定温度(300〜400℃)により加熱処理する場合、回転ドラムに収容した被加熱処理物は、回転ドラム自体が揺動・回転するように構成されているので、1箇所に滞留することなく常に回転ドラム内を上下・左右方向に移動しているため、ヒータによって加熱される回転ドラムからの熱伝導作用により良好に加熱処理されることと相まって、加熱むらを生じることなく均一に加熱処理することができ、被加熱処理物の加熱処理を効率よく行うことができる。
【0015】
また、被加熱処理物を所定温度で加熱処理する場合、被加熱処理物の加熱温度を常時監視し、被加熱処理物が所定の加熱目標温度に達した時点で、ヒータへの通電を断ちこれまでヒータにより加熱されていた回転ドラムの余熱温度により加熱処理を継続し、被加熱処理物の温度が所定温度より降下したときは直ちにヒータを再通電させることにより、被加熱処理物をほぼ所定の加熱目標温度に維持して連続的に加熱処理を行うように構成したので、被加熱処理物はその加熱処理を迅速・確実に、かつ、エネルギーを節約して良好に行うことができる。更に、回転ドラムやヒータは、被加熱処理物がその加熱目標温度に達した以降は被加熱処理物の加熱目標温度を上回ることがないように設定されているので、被加熱処理物は所定の加熱目標温度に設定して加熱処理したり、回転ドラムの揺動・回転作用を有効に利用して加熱処理を行うことができるため、焼付とか加熱むらが生じたりするようなことは一切なく、常に均一に加熱処理することができ、利便である。
【0016】
請求項2記載の発明においては、回転ドラムを加熱するヒータの通電を制御する通電制御装置が第1、第2の温度検出・制御手段によって構成され、かつ、前記第1の温度検出・制御手段においては、被加熱処理物の温度を検出する温度センサおよび回転ドラムの表面温度を検出する温度センサと、被加熱処理物の加熱温度が自体の加熱目標温度より低く、かつ、回転ドラムの表面温度がその加熱目標温度より低い場合は、ヒータへの通電指令を前記第2の温度検出・制御手段に送出するための差温算定・指令送出手段とによって構成し、また、第2の温度検出・制御手段は、ヒータの表面温度を検出する温度センサと、ヒータの表面温度が自体の加熱目標温度より低く、しかも、前記第1の温度検出・制御手段からヒータへの通電指令が出力されたときヒータへの通電指令をコントローラに出力する温度算定・指令送出手段とによって構成されているので、ヒータの通電制御装置は簡素に構成することができるとともに、ヒータへの通電制御は、ヒータおよび回転ドラムの表面温度がそれらの加熱目標温度以下で、しかも、被加熱処理物の温度がその加熱目標温度を下回っているときのみ通電することができるように構成されているため、被加熱処理物は常にその加熱目標温度の範囲内で加熱むらを生じることなく、円滑・良好に加熱処理することができる。しかも、ヒータへの通電は被加熱処理物の加熱目標温度を超えない範囲で行うようにしているので、省エネ的に行うことができるとともに、通電制御装置自体を簡素に構成できる効果と相まって、被加熱処理物の加熱処理を効率的に、かつ、経済的に行うことができる。
【0017】
その上、被加熱処理物は、自体の性質等に対応してその加熱目標温度を事前に設定して加熱処理することができることはもとより、回転ドラム、ヒータ自体もそれぞれ加熱目標温度を事前に設定して、それ以上の温度上昇を回避し、しかも、被加熱処理物が加熱目標温度に達した時点で一旦ヒータへの通電を断つように通電制御装置が構成されているので、被加熱処理物は常に適正な処理温度により加熱処理することが可能となるため、加熱むら等によって被加熱処理物の品質を損なうという問題を確実に一掃することができるという優れた効果を備えている。
【0018】
請求項3記載の発明においては、回転ドラムの周縁に回転ドラムと所定の間隔を保ってヒータを配設し、このヒータを断熱材により囲繞して保温枠体に収容するように構成したので、回転ドラムは揺動・回転して被加熱処理物を加熱処理する場合、回転ドラムがどの回転・揺動位置においてもヒータからの熱を均一に受けることが可能となり、これにより被加熱処理物が回転ドラムと接触していたり、逆に遠ざかる位置においても、回転ドラムの揺動・回転動作と相まって常に加熱むらを生じることなく均一に加熱処理することができる。また、保温枠体は回転ドラムを包囲した状態で揺動台に取付けられて、回転ドラムの揺動・回転動作に容易に追随させることができるように構成されているので、回転ドラムを効率よく加熱することができるという利点も備えている。
【0019】
請求項4記載の発明においては、ヒータを内蔵した保温枠体が、回転ドラムの周方向において上下に2分割できるように構成されているので、回転ドラムの清掃時等に回転ドラムを揺動台から取り外す場合、保温枠体はほぼ1動作で開閉させることができるため、回転ドラムの揺動台に対する着脱作業を迅速・容易に、かつ、安全に行うことができる。
【0020】
請求項5記載の発明においては、回転ドラムを回転させる回転車輪と、回転ドラムの揺動時回転ドラムが揺動台から脱落するのを阻止する揺動車輪は、すべて保温枠体の長さ方向の外側において回転ドラムと摺接するように取付けられているので、回転ドラムを加熱するヒータの熱による悪影響が容易に回避でき、熱による各車輪の歪みや損傷を良好に解消して、回転ドラムを円滑・良好に揺動・回転させることができる。この結果、回転ドラムの不円滑な回転による被加熱処理物の加熱むら等を良好に解消することができ、利便である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図1ないし図7を参照しながら説明する。最初に、図1ないし図4において、1は高温加熱混合装置、2はその揺動台であり、L形鋼等を矩形状に枠組みして形成し、その左右両端(図2,3の左右方向)の中央に突設した支軸3を、ベース4に直立させた支持枠5の上端に取付けた軸受5aに挿通することにより、前記支持枠5にシーソーの如く揺動自在に取付けられている。
【0022】
6は前記支軸3の突出方向と直交する揺動台2の前後方向(図1,4の左右方向)に軸受2aを介して回転自在に平行配置した回転軸であり、これら回転軸6の両端部には回転車輪7,8が、また、中央部付近にはスプロケット9がそれぞれ取付けられ、揺動台2の下面中央に垂設した電動機10と、前記スプロケット9とをチェーン11を用いて駆動可能に連結することにより、回転車輪7,8を電動機10にて回転させる。
【0023】
12は揺動台2の一方側(図1の右側)の下端部と、ベース4上に設置した減速機13の出力軸14(図4参照)とを駆動可能に連結する一対のリンク15,16からなるクランク機構であり、前記減速機13を、ベルト18を介して駆動可能に連結した電動機17により駆動すると、前記揺動台2は支軸3を中心として図1の上下方向にシーソーの如く揺動する。
【0024】
20は揺動台2上に回転車輪7,8を介して回転自在に乗載される中空円筒状の回転ドラムで、図5で示すように、被加熱処理物Pを収容する収容部21と、前記収容部21の左右両端部に形成した、該収容部21よりもやや径小な筒状部22a,22bと、前記筒状部22a,22bの外周に設けた径大な乗載環部23とを備えて構成されており、前記乗載環部23を回転車輪7,8上に乗載することにより、回転ドラム20は揺動台2上に回転自在に、かつ、乗載環部23の鍔部23aに受止められて揺動台2から脱落しないように保持される。なお、図4において、24は回転ドラム2の収容部21内に設けた掻上板で回転ドラム20を回転車輪7,8により回転させて収容部21内に収容した被加熱処理物P(図5参照)を周方向へ掻上げることにより、前記被加熱処理物Pを攪拌しながら効率よく加熱処理することができる。
【0025】
次に、25は回転ドラム20の収容部21の左側に位置する筒状部22aの開口部に、締付クランプ26を用いて開閉自在に取付けた蓋体で、この蓋体25は、図5に示すように、回転ドラム20から蓋体25への熱伝達を抑制するための断熱材27と、前記蓋体25を冷却媒体の流通によって強制冷却するための中空状の冷却部28と、前記冷却部28へ冷却媒体を流通させるための流通路を備えた回転継手29とを具備して概略構成されている。なお、前記断熱材27は、前記蓋体25に回転ドラム20の径小な筒状部22aへの挿脱が可能な状態で形成した有底筒状の断熱材収容部25a内に収容されている。
【0026】
また、前記回転継手29は、図5に示すように、蓋体25に嵌着されて冷却部28と外部とを連通し、かつ、前記蓋体25と共動回転する中空状の回転部30と、前記回転部30の外周に軸受30aを介して取付けた固定部31と、前記固定部31に一方端側が固定され、かつ、他方端側が前記回転部30を貫通して冷却部28内に突出する冷却媒体の流入管32と、前記回転部30と流入管32との間に形成される冷却媒体の流出路33と、前記流入管32と連通する冷却媒体の流入部34と、前記流出路33と連通する冷却媒体の流出部35とを備えて概略構成されている。なお、前記流入部34及び流出部35には、それぞれ可撓性の冷媒流通管a1,a2(図4参照)が接続される。
【0027】
そして、前記蓋体25は、断熱材27によって被加熱処理物Pの加熱処理時における回転ドラム20からの熱伝達が良好に抑制されるとともに、冷媒流通管a1→流入部34→流入管32→冷却部28→流出路33→流出部35→冷媒流通管a2の順に流通する冷却媒体によって良好に冷却される結果、前記蓋体23が必要以上に加熱されるのを確実に防ぐことができる。
【0028】
なお、図4において、36は回転継手29の固定部31に垂設した回止板であり、この回止板36を、例えば、図1,2に示すように、揺動台2の一方端側(図1の左側)から延設した支持アーム37の上端部に所定間隔を設けて直立させた係止板37a,37a間に係合することにより、回転ドラム20の回転時に前記回転継手29の固定部31が回動するのを阻止する。
【0029】
つづいて、図4において、40は回転ドラム20の収容部21の右側に位置する筒状部22bの開口部に、締付クランプ41を用いて着脱自在に取付けた回転継手であり、前記回転継手40は、図5に示すように、第1〜第3の貫通孔42a〜42cを穿孔した固定体42と、前記固定体42の外周に被着したカバー体43と、前記カバー体43の外周に軸受43aを介して回転自在に嵌合されて、回転ドラム20と共動回転する回転体44と、回転ドラム20の収容部21側において前記回転体44とカバー体43との間に介在されて、軸受43a側に被加熱処理物Pが侵入するのを阻止する耐熱性のグランドパッキン45とを備えて概略構成されている。
【0030】
前記固定体42に穿孔した第1の貫通孔42aには、図5に示すように、フィルター46を介して回転ドラム20内の空気を吸引してその内部を真空状態にしたり、あるいは、回転ドラム20内の雰囲気を窒素ガス等に置換したりするための気体流通管47,47aが連通可能に接続されており、また、第2の貫通孔42bには、必要に応じて噴霧ノズル48から回転ドラム20の収容部21内に収容される被加熱処理物Pへ向けて噴霧される霧状の液体を給送するための給送管49,49aが連通可能に接続されており、更に、第3の貫通孔42cには、回転ドラム20の収容部21内に収容される被加熱処理物Pの温度を検出する温度センサS1が挿通されている。なお、前記気体流通管47及び給送管49は、回転ドラム20内に位置する固定体42の端部に溶着されている。
【0031】
また、前記固定体42及びカバー体43には、図5に示すように、凹溝を凹設して前記固定体42とカバー体43との間に冷却媒体を流通させる流通路52が形成されている。そして、前記流通路52において、上部側の流通路52は冷却媒体の流入部55と、下部側の流入路52は冷却媒体の流出部56とそれぞれ連通しており、更に、前記冷却媒体の流入部55及び流出部56には、それぞれ可撓性の冷媒流通管a1,a2(図4参照)が接続される。
【0032】
そして、前記回転継手40は、冷媒流通管a1→流入部55→上部側の流通路52→下部側の流通路52→流出部56→冷媒流通管a2の順に流通する冷却媒体によって良好に冷却され、カバー体43の外周に嵌着した軸受43aや、前記カバー体43と回転体44との間に介在させたグランドパッキン45が、被加熱処理物Pの加熱処理時における熱の影響を受けて早期に劣化・損傷するのを良好に防ぐことができる。
【0033】
更に、前記回転体44とカバー体43との間に介在させた耐熱性のグランドパッキン45は、回転ドラム20の収容部21側に位置する回転体44の端部にカバー体43側へ向けて突設した係止片44aにより外部に突出することなく保持されている。
【0034】
なお、図5において、57は回転ドラム20から突出する固定体42及びカバー体43の端部に跨って止着した固定板で、前記固定板57には、気体流通管47a,給送管49a,温度センサS1,流入部55,流出部56が、それぞれ第1〜第3の貫通孔42a〜42c、並びに、上部側及び下部側の流通路52と合致する状態で具備されている。また、58は前記固定板57に垂設した回止板であり、この回止板58を、図1,3で示すように、揺動台2の他方端側(図1の右側)から延設した支持アーム59の上方端に所定間隔を設けて直立させた係止板59a,59a間に係合することにより、回転ドラム20の回転時に、回転継手40の固定体42及びカバー体43が回動するのを阻止する。
【0035】
つづいて、図2ないし図4において、60は揺動台2上に回転ドラム20の乗載環部23と対向する状態で取付けた揺動車輪であり、前記乗載環部23の鍔部23aと当接させることにより、揺動台2の揺動時に、回転ドラム20が揺動台2から滑落するのを阻止する。
【0036】
61は揺動台2に固定されて回転ドラム20の下半分を囲繞する断面コ字状の下部保温枠体、62は前記下部保温枠体61に蝶番63を介して開閉自在に取付けられて回転ドラム20の上半分を囲繞する断面コ字状の上部保温枠体であり、前記各保温枠体61,62は、図4に示すように、その内部にそれぞれ回転ドラム20の長さ方向に平行させてヒータ64を周方向に複数本配設するとともに、前記ヒータ64を断熱材65で囲繞することにより構成されている。この結果、前記回転ドラム20は、その外周をヒータ64によって囲繞した状態で保持されるため、前記回転ドラム20の収容部21内に収容した被加熱処理物Pを効率よく加熱処理することができる。なお、図2,3において、66は上部保温枠体62の自由端側を下部保温枠体61に掛止するための掛止具であり、前記掛止具66による掛止を解除することにより、前記上部保温枠体62は、図2,3に2点鎖線で示すように、蝶番63を中心として開放することができる。
【0037】
なお、回転ドラム20の乗載環部23が乗載される回転車輪7,8及び前記乗載環部23の鍔部23aと当接する揺動車輪60は、図4で示すように、それぞれ前記保温枠体61,62の外側に配置されて、前記回転車輪7,8及び揺動車輪60が、被加熱処理物Pの加熱処理時に、熱的な影響を受けるのを阻止している。
【0038】
次に、図6において、70は上部および下部保温枠体62,61に内蔵したヒータ64への通電を制御するための通電制御装置を示し、この通電制御装置70は大別すると、第1の温度検出・制御手段71と第2の温度検出・制御手段72とコントローラ77とによって構成されている。
【0039】
前記第1の温度検出・制御手段71は、回転ドラム20内に収容した被加熱処理物Pの温度を温度センサS1によって検出する手段を具備した被加熱処理物Pの温度検出手段(以下、第1の温度検出手段という)73と、回転ドラム20の表面温度を温度センサS2によって検出する手段を備えた回転ドラム20の温度検出手段(以下、第2の温度検出手段という)74からなる差温算定・指令送出手段75を備えて構成されている。
【0040】
そして、前記差温算定・指令送出手段75の一方を構成する第1の温度検出手段73は、温度センサS1により検出した被加熱処理物Pの温度と被加熱処理物Pの加熱目標温度との差温を検出する差温検出回路73aと、前記差温により被加熱処理物Pが加熱目標温度より低いか、高いかの指令信号を第2の温度検出手段74に指令・出力する指令回路73bとによって構成されている。
【0041】
また、差温算定・指令送出手段75の他方を構成する第2の温度検出手段74は、温度センサS2によって検出した回転ドラム20の表面温度と、回転ドラム20の加熱目標温度との差温を検出するとともに、前記第1の温度検出手段73から入力された指令信号が被加熱処理物Pの加熱目標温度以下か、あるいは、以上かを判断するための差温検出回路74aと、前記差温検出回路74aから出力される信号が、回転ドラムの表面温度がその加熱目標温度以下で、かつ、第1の温度検出手段73からの指令信号が被加熱処理物Pの加熱目標温度以下の場合は、第2の温度検出・制御手段72にヒータ64への通電指令信号を出力し、前記条件以外の場合、即ち、被加熱処理物Pが加熱目標温度に達したとき、あるいは、回転ドラム20の表面温度がその加熱目標温度に達したときは、いづれもヒータ64への通電を断つ通電停止指令信号を前記第2の温度検出・制御手段72に出力するための指令回路74bとによって構成されている
【0042】
つづいて、第2の温度検出・制御手段72は、ヒータ64の表面温度を検出する温度センサS3と、コントローラ77に対してヒータ64への通電もしくは通電停止指令信号を出力するための温度算定・指令送出手段76とによって構成されている。
【0043】
そして、前記温度算定・指令送出手段76は、温度センサS3により検出したヒータ64の表面温度とその加熱目標温度との差温を検出するとともに、前記第1の温度検出・制御手段71の差温算定・指令送出手段75から入力されるヒータ64への通電・通電停止指令を判断する差温検出回路76aと、前記差温検出回路76aから出力される信号が、ヒータ64の表面温度がその加熱目標温度以下で、かつ、前記差温算定・指令送出手段75からの入力がヒータ64への通電指令信号である場合は、コントローラ77に対しヒータ64への通電指令信号を出力し、前記条件以外の場合、即ち、ヒータ64の表面温度がその加熱目標温度に達したとき、あるいは、差温算定・指令送出手段75からの入力がヒータへの通電停止指令信号であるときは、コントローラ77にヒータ64への通電を断つ指令信号をコントローラ77に出力する指令回路76bとによって構成されている。なお、図6中・78はヒータ64に通電するための交流電源である。
【0044】
次に、本発明装置の動作について説明する。はじめに、加熱処理する粉体や粒体等の被加熱処理物Pを回転ドラム20の収容部21へ収容(投入)する場合は、締付クランプ26による固定を解除した状態で蓋体25を図4の左方向へスライドさせ、前記蓋体25に具備した回転継手29の固定部31に垂設されている回止板36と、揺動台2から延設した支持アーム37の上端部に直立させた係止板37a,37a(図2参照)との枢支を解除するとともに、前記蓋体25に形成した断熱材収容部25aを筒状部22aから引き抜いて、蓋体25を筒状部22aの開口部から取外すことにより、前記筒状部22aの開口部を開放し、その開口部から被加熱処理物Pを回転ドラム20の収容部21内へ所定量投入する。
【0045】
被加熱処理物Pを回転ドラム20に投入したら、前記とは逆の手順で、蓋体25に形成した断熱材収容部25aを筒状部22a内へ挿入するとともに、前記蓋体25に具備した回転継手29の固定部31に垂設されている回止板36を、揺動台2から延設した支持アーム37の上端部の係止板37a,37a間に枢支させた状態で、前記蓋体25を締付クランプ26を用いて筒状部22aの開口部に取付けることにより、前記筒状部22aの開口部を閉鎖する。
【0046】
つづいて、回転ドラム20内に収容した被加熱処理物Pを、所定の雰囲気温度下において攪拌・混合しながら加熱処理する場合は、まず、気体流通管47aの基端側に可撓性の配管を介して接続した図示しない真空ポンプを駆動することにより、気体流通管47の先端側に取付けたフィルター46を介して回転ドラム20内の空気を排出し、前記回転ドラム20内を真空状態とする。なお、被加熱処理物Pの種類や加熱温度等に対応して、前記真空状態とした回転ドラム20内に、気体流通管47,47aを介して窒素ガス等を封入することにより、回転ドラム20内の雰囲気を置換するようにしてもよい。
【0047】
また、前記と併行して図示しないバルブを開放して、冷媒流通管a1→流入部55→上部側の流通路52→下部側の流通路52→流出部56→冷媒流通管a2の順に冷却媒体を流通させて回転継手40を強制的に冷却させると同時に、冷媒流通管a1→流入部34→流入管32→冷却部28→流出路33→流出部35→冷媒流通管a2の順で冷却媒体を流通させて蓋体25側も強制的に冷却させる。
【0048】
前記のように、被加熱処理物Pを加熱処理するための事前準備が終了したら、電動機10を起動して回転車輪7,8上に乗載した回転ドラム20を所定方向へ回転させるとともに、電動機17を起動して前記回転ドラム20を乗載した揺動台2をクランク機構12にてシーソーの如く揺動させることにより、前記回転ドラム20内に収容した被加熱処理物Pを、掻上板24による回転ドラム20の周方向への掻上げ動作と、揺動による回転ドラム20の軸方向への往復動作とによって、迅速・良好に攪拌・混合する。
【0049】
また、これと同時に、回転ドラム20の外周を囲繞するように配置したヒータ64への通電を、被加熱処理物Pを所定の加熱処理温度に維持して加熱処理すべく通電制御装置70にて制御することにより、前記回転ドラム20内に収容した被加熱処理物Pが所定の温度(加熱目標温度)となるように加熱する。このように、本発明においては、回転ドラム20を回転・揺動させることにより、その収容部21内に収容した被加熱処理物Pを攪拌・混合するとともに、前記回転ドラム20の外周を囲繞するように配置したヒータ64への通電により、被加熱処理物Pを所定の温度に加熱して加熱処理するようにしたので、前記被加熱処理物Pは加熱むらや焼付き等を生じさせることなく、均一に、かつ、効率よく加熱処理することができる。また、回転ドラム20に付設した回転継手40や蓋体25は、回転ドラム20の揺動・回転中は冷却媒体を常時循環させて強制的に冷却されているので、回転ドラム20はその内・外部が被加熱処理物Pの加熱処理温度に維持されていても良好に揺動・回転して被加熱処理物Pを加熱処理することができる。
【0050】
次に、前記回転ドラム20を揺動・回転させて被加熱処理物Pを所定の温度にて加熱処理する場合におけるヒータ64の通電制御の状況を図6に示す通電制御装置70の概略構成図および図7のフローチャート図に基づいて説明する。被加熱処理物Pを回転ドラム20に投入して加熱処理を行う場合は、最初に通電制御装置70において、被加熱処理物Pの加熱目標温度および、回転ドラム20とヒータ64の各表面温度における加熱目標温度を設定する。
【0051】
前記加熱目標温度は、被加熱処理物Pを例えば、350℃で加熱処理する場合は、その加熱目標温度350℃を差温検出回路73aに入力して設定する。同じく、回転ドラム20の表面温度を例えば、400℃とする場合は、第1の温度制御手段73の差温検出回路74aに400℃と入力してその加熱目標温度を設定する。ヒータ64においても同様にその表面温度を例えば、600℃とする場合は、温度算定・検出送出手段76の差温検出回路76aに600℃と入力してその加熱目標温度を設定する(図7のS11〜S13参照)。
【0052】
また、回転ドラム20に投入して加熱処理する被加熱処理物Pとしては、例えば、回転ドラム20に定量の金属粉末とバインダーとを投入し、バインダーをその加熱目標温度約350℃で溶融化して球状体(造粒)を形成するとともに、この球状体のバインダーに金属粉末を付着させることによりペレットを形成する場合の例において説明する。
【0053】
前記のように、被加熱処理物P、回転ドラム20、ヒータ64の加熱目標温度を設定したら、ヒータ64に通電を行い、回転ドラム20の加熱を開始する。回転ドラム20は、この時点では既に揺動・回転を行っているため、ヒータ64の通電により回転ドラム20はどの位置においてもヒータ64にて均一な温度で加熱される。また、被加熱処理物Pにおいても回転ドラム20が揺動・回転することにより、回転ドラム20内を上下・左右方向への移動を常時繰り返して撹拌されているため、回転ドラム20内のどの部位においても均一な温度で加熱することができる(図7のステップS14参照)。
【0054】
そして、ヒータ64の通電により回転ドラム20内の被加熱処理物Pの温度がその加熱目標温度に達しておらず、しかも、回転ドラム20とヒータ64の表面温度が、それぞれの加熱目標温度まで上昇していない場合は、ヒータ64の通電を継続して被加熱処理物Pの加熱処理を続行する。
【0055】
前記の場合は、温度センサS1にて被加熱処理物Pの温度を検出し、第1の温度検出手段73の差温検出回路73aに出力する。差温検出回路73aは、被加熱処理物Pの加熱温度と加熱目標温度との差温を検出し、検出した結果、加熱温度がその加熱目標温度より低い場合は、指令回路73bから第2の温度検出手段74の差温検出回路74aに被加熱処理物Pの温度はその加熱目標温度より低いという指令信号を出力する。一方、前記指令回路73bからの指令信号を入力した差温検出回路74aは、温度センサS2により検出した回転ドラム20の表面温度と回転ドラム20の加熱目標温度との差温検出する。そして、前記検出の結果回転ドラム20の表面温度がその加熱目標温度より低い場合と、前記第1の温度検出手段73の指令回路73bから出力された被加熱処理物Pの温度が、その加熱目標温度より低いという指令信号が前記差温検出回路74aに入力されていた場合は、第2の温度検出手段74の指令回路74bを備えた第1の温度検出・制御手段71の差温算定・指令送出手段75より、ヒータ64への通電指令信号を第2の温度検出・制御手段72を構成する温度算定・指令送出手段76の差温検出回路76aに出力する。
【0056】
前記温度算定・指令送出手段76の差温検出回路76aは、ヒータ64の表面温度を温度センサS3により検出し、その検出の結果、ヒータ64の加熱目標温度より低い場合と、前記差温算定・指令送出手段75からのヒータ64への通電指令信号が入力されていた場合は、ヒータ64への通電が必要と判断して指令回路76bを有する前記温度算定・指令送出手段76よりコントローラ77にヒータ64への通電を継続するための指令信号を出力し、ヒータ64の通電を継続(ヒータ64の通電状態を維持させる)させて被加熱処理物Pの加熱処理を継続する(図7のS15、S17〜S20参照)。
【0057】
次に、前記のように、ヒータ64への通電により被加熱処理物Pの加熱処理作業を行っているときに、被加熱処理物Pの加熱温度がその加熱目標温度以下であるにもかかわらず、例えば、ヒータ64の表面温度がその加熱目標温度に達したことを温度センサS3が検出した場合は、第1の温度検出・制御手段71の差温算定・指令送出手段75からヒータ64への通電指令信号が温度算定・指令送出手段76の差温検出回路76aに出力されているにもかかわらず、前記差温検出回路76aは、ヒータ64の表面温度が温度センサS3によりその加熱目標温度600℃に達していることを検出した場合、ヒータ64への通電を不要と判断して、指令回路76bを有する温度算定・指令送出手段76より、コントローラ77にヒータ64への通電を停止するための通電停止指令信号を出力し、ヒータ64への通電を一時停止させる(図7のS20,S16参照)。
【0058】
前記ヒータ64への通電停止によりヒータ64自体は過熱による損傷・断線を回避できるとともに、被加熱処理物Pは回転ドラム20の余熱を利用して効率的に加熱処理を継続することができる。また、前記ヒータ64への通電停止に伴いヒータ64の表面温度が、ヒータ64への通電停止によりその加熱目標温度を温度センサS3の検出により下回っている場合、差温検出回路76aはヒータ64の加熱目標温度との差温を検出するとともに、ヒータ64の表面温度が加熱目標温度より降下していることによりヒータ64への通電が必要と判断し、温度算定・指令送出手段76の指令回路76bからコントローラ77にヒータ64への通電指令信号を出力し、ヒータ64への通電を再開する(図7のS20,S14参照)。
【0059】
また、前記ヒータ64の再通電により、例えば、回転ドラム20が再加熱されて、その加熱目標温度(400℃)を超えていることを温度センサS2が検出した場合は、前記ヒータ64の加熱目標温度超過の場合と同様に、第2の温度検出手段74の差温検出回路74aは、その差温を検出し、その検出結果に基づき第1の検出手段73より被加熱処理物Pの加熱温度はその加熱目標温度より低いという指令信号が入力されているにもかかわらず、回転ドラム20の表面温度がその加熱目標温度に達していることによりヒータ64への通電を不要と判断して、指令回路74bを有する差温算定・指令送出手段75から温度算定・指令送出手段76の差温検出回路76aに、ヒータ64への通電を停止させる通電停止信号を出力する。
【0060】
ヒータ64への通電停止指令信号を受けた前記温度算定・指令送出手段76の差温検出回路76aは、ヒータ64の表面温度がその加熱目標温度以下であっても、ヒータ64への通電は不要と判断して、指令回路76bからコントローラ77にヒータ64への通電停止指令信号を出力してヒータ64への通電を停止させる(図7のS18,16参照)。
【0061】
前記のように、本発明においては、回転ドラム20に投入した被加熱処理物Pの加熱温度がその目標加熱温度以下の場合でも、前記ヒータ64あるいは回転ドラム20の表面温度が自体の加熱目標温度を超えた場合は、温度センサS2,S3が超過温度を検出して直ちに温度算定・指令送出手段76の指令回路76bからコントローラ77にヒータ64への通電停止指令信号を出力し、ヒータ64への通電を停止させるようにしているので、ヒータ64の通電制御は効率的に、かつ、省エネ的に行うことができる。
【0062】
前記のように、ヒータ64への通電を被加熱処理物Pの加熱温度を中心にして、被加熱処理物Pの温度がその加熱目標温度を下回っている場合は、ヒータ64および回転ドラム20の表面温度がそれらの加熱目標温度を超過していない限りヒータ64への通電を続け、逆にヒータ64、あるいは、回転ドラム20のいづれか一方の表面温度が、その加熱目標温度を超過していれば、直ちにコントローラ77に温度算定・指令送出手段76の指令回路76bからヒータ64への通電を断つ通電停止指令信号を出力して、ヒータ64への通電を停止するように構成されているので、ヒータ64への通電は前記のように省エネ的に行うことができるとともに、被加熱処理物Pはヒータ64、回転ドラム20の余熱の有効利用と、回転ドラム20の揺動・回転作用と相まって、加熱処理作業をヒータ64の通電が停止されていても、被加熱処理物Pの急激な温度降下を招くことなく、円滑・良好に行うことができる。
【0063】
次に、回転ドラム20に投入した被加熱処理物Pの加熱温度が温度センサS1の検出によりその加熱目標温度を超えていた場合は、第1の温度検出手段73の差温検出回路73aが被加熱処理物Pの加熱温度とその加熱目標温度との差温を検出することにより、被加熱処理物Pの加熱温度が加熱目標温度を上回っておれば、被加熱処理物Pの温度がその加熱目標温度より高いという指令信号を、第1の温度検出手段73aを構成する指令回路73bから第2の温度検出手段74の差温検出回路74aに出力する。すると、差温検出回路74aは被加熱処理物Pの加熱温度がその加熱目標温度に達していることにより、ヒータ64への通電は不要と判断し、指令回路74bを介して差温算定・指令送出手段75から温度算定・指令送出手段76の差温検出回路76aに、ヒータ64への通電を停止させる通電停止指令信号を出力する。
【0064】
前記通電停止指令信号の入力により、温度算定・指令送出手段76の差温検出回路76aは、ヒータ64の表面温度が加熱目標温度以下であっても、ヒータ64への通電を不要と判断し、指令回路76bからコントローラ77に通電停止指令信号を出力し、ヒータ64への通電を停止させて被加熱処理物Pへの加熱を一時中止する(図7のS15,S16参照)。この場合も回転ドラム20は揺動・回転を繰り返しているので、被加熱処理物Pが回転ドラム内の1ヶ所に滞留していることによって、加熱むらや焼付現象を起すということはない。
【0065】
前記の状態で、被加熱処理物Pの加熱温度がその加熱目標温度以下となれば、これまで説明したように、第1の温度制御手段73から第2の温度制御手段74に被加熱処理物Pの温度が低いという指令信号が出力されることにより、差温算定・指令送出手段75から温度算定・指令送出手段76を介してコントローラ77にヒータ64への通電指令信号が出力されて、ヒータ64への通電を再開し、被加熱処理物Pをその加熱処理温度を維持して加熱処理を続ける(図7のS15,S17参照)。
【0066】
そして、被加熱処理物Pの加熱処理時間が終了すると、例えば、コントローラ77はヒータ64に対する通電を停止して被加熱処理物Pの加熱処理を終了する(図7のS21、S22参照)。前記被加熱処理物Pの加熱処理終了によって、例えば、金属粉末を付着させた金属粉末射出成形用ペレットの製造を完了する。
【0067】
なお、揺動・回転する回転ドラム20は、被加熱処理物Pを加熱処理している間は、その筒状部22a,22b外周に設けた乗載環部23の鍔部23aに、下部保温枠体61の外側に位置する揺動台2上に設けた揺動車輪60が当接していることにより、前記揺動台2をクランク機構12により揺動させても、前記揺動台2から滑落することもなく、良好に被加熱処理物Pを撹拌しながら加熱処理を行うことができる。また、揺動車輪60、回転車輪7,8は、上下保温枠体61,62の軸方向の外側に位置する回転ドラム20の筒状部22a、22bに取り付けた乗載環部23に当接しており、かつ、前記筒状部22a,22bは、断熱材27を内蔵したり、常時冷却されている回転継手40に併設されている結果、回転ドラム20の高温化に伴う弊害が良好に抑制でき、回転車輪7,8等が回転ドラム20からの熱伝導によって歪が生じる現象を良好に防ぐことができる。
【0068】
前記のように、回転ドラム20を回転・揺動させるとともに、ヒータ64への通電制御を行うことにより、前記回転ドラム20内に収容した被加熱処理物Pを、所定時間攪拌・混合しながら加熱処理を行ったら、即ち、予め設定した被加熱処理物Pの加熱処理時間が終了したら、電動機10,17の駆動を停止するとともに、ヒータ64への通電を停止することにより、前記被加熱処理物Pの加熱処理を終了する。また、被加熱処理物Pの加熱処理終了後、所定時間(被加熱処理物Pの冷却時間)が経過したら、図示しないバルブを閉鎖して、蓋体25及び回転継手40への冷却媒体の流通を停止する。
【0069】
つづいて、加熱処理の終了後、回転ドラム20内から被加熱処理物Pを排出する場合は、締付クランプ26による固定を解除して蓋体25を回転ドラム20の筒状部22aから取外し、この状態で、例えば、クランク機構12により回転ドラム20を筒状部22a側が所定角度下向きとなるように傾斜させるとともに、回転車輪7,8にて回転ドラム20を所定方向へ回転させることにより、前記回転ドラム20内に収容されている被加熱処理物Pを円滑・迅速に排出することができる。
【0070】
ここで、前記被加熱処理物Pの排出は、加熱処理の終了から所定時間経過後(例えば、被加熱処理物Pの温度が常温付近まで低下した後)に行なうことが望ましいが、仮に加熱処理の終了後、直ちに行なうようにしても、本発明の場合、回転ドラム20の筒状部22aを閉鎖している蓋体25は、前記したように冷却媒体を流通させることにより強制的に冷却されて、人体が仮に接触したとしても問題のない程度の温度となっているので、前記蓋体25を筒状部22aから取外す際に、該蓋体25に接触することで火傷を負う等といった安全上の問題が発生することは全くない。
【0071】
なお、本発明においては、必要に応じて給送管49aの基端側に可撓性の配管を介して接続した図示しない液封入タンクから、所要の液体を圧縮空気等により霧状にした状態で給送し、給送管49の先端側に取付けた噴霧ノズル48から、回転ドラム20内に収容した被加熱処理物Pへ向けて噴霧させ、前記所要の液体と被加熱処理物Pとを十分に馴染ませた状態で、前記被加熱処理物Pを攪拌・混合しながら加熱処理するようにしてもよい。この場合、被加熱処理物Pへの液噴霧は、前記被加熱処理物Pの温度が比較的低い段階、即ち、加熱を開始する前、もしくは、加熱の初期段階において行うことが好ましい。
【0072】
また、回転ドラム20内を洗浄する場合や、加熱処理した被加熱処理物Pを回転ドラム20ごと次工程へ搬送する場合等において、前記回転ドラム20を回転車輪7,8から降ろす場合は、掛止具66による上部保温枠体62の自由端側と下部保温枠体61との掛止状態を解除し、前記上部保温枠体62を、図2,3に2点鎖線で示すように、蝶番63を中心として回動させることにより、ほぼ1動作で開放する。前記上部保温枠体62の開放により、回転ドラム20の上方には、該回転ドラム20の着脱の障害となる部材が存在しなくなるため、前記回転ドラム20を迅速・容易に回転車輪7,8から降ろして、内部の洗浄や次工程への搬送等を行うことができる。しかも、前記上部保温枠体62は、掛止具66による掛止を解除し、蝶番63を中心として回動させることにより、非常に簡易に開放することができるので、その作業は複数の人手を要することなく行うことが可能となり、大変利便である。
【0073】
また、本発明においては、回転ドラム20を回転自在に乗載する揺動台2を、クランク機構12によってシーソーの如く揺動させるようにした例について説明したが、これに代えて、例えば、揺動台2に突設した支軸3の一方にスプロケットを止着し、このスプロケットとベース4上に配置した電動機とをチェーンを介して駆動可能に連結した状態で、前記電動機を正転・逆転させることにより、揺動台2をシーソーの如く揺動させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の高温加熱混合装置を示す側面図である。
【図2】本発明の高温加熱混合装置を示す正面図である。
【図3】本発明の高温加熱混合装置を示す背面図である。
【図4】本発明の高温加熱混合装置の縦断側面図である。
【図5】回転ドラムの要部縦断側面図である。
【図6】ヒータの通電制御装置の回路構成を概略的に示すブロック図である。
【図7】ヒータの通電制御装置の動作を説明するフローチャート図である。
【符号の説明】
【0075】
1 高温加熱混合装置
2 揺動台
7,8 回転車輪
10 電動機
12 クランク機構
17 電動機
20 回転ドラム
25 蓋体
28 冷却部
29,40 回転継手
60 揺動車輪
61,62 保温枠体
64 ヒータ
70 通電制御装置
71 第1の温度検出・制御手段
72 第2の温度検出・制御手段
73 被加熱処理物の温度検出手段
74 回転ドラムの温度検出手段
75 差温算定・指令送出手段
76 温度算定・指令送出手段
73a,74a,75a 差温検出回路
73b,74b,76b 指令回路
77 コントローラ
S1〜S3 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク機構と連結されて揺動する揺動台に、粉体や粒体等からなる被加熱処理物を収容して所要温度にて加熱処理する中空円筒状の回転ドラムを回転車輪を介して回転自在に乗載して構成した混合装置において、前記回転ドラムの外側に該回転ドラムと所定の間隔を保ってヒータを回転ドラムの軸方向と平行させて周方向に複数本配設し、前記回転ドラムの周縁に配設したヒータへの通電を、回転ドラム内に収容した被加熱処理物の温度と前記回転ドラムの表面温度とを検出する第1の温度検出・制御手段と、前記ヒータの表面温度を検出する第2の温度検出・制御手段とからなる通電制御装置により通電制御し、前記回転ドラム内の被加熱処理物の温度が、自体の加熱目標温度より低く、かつ、回転ドラムとヒータの表面温度が、前記回転ドラムとヒータの加熱目標温度より低い場合のみヒータを前記通電制御装置により通電させて、前記クランク機構と回転車輪とによって揺動・回転する回転ドラムを加熱して被加熱処理物を加熱処理するように構成したことを特徴とする高温加熱混合装置。
【請求項2】
前記通電制御装置の一方を構成する第1の温度検出・制御手段は、被加熱処理物の温度を検出する温度センサおよび回転ドラムの表面温度を検出する温度センサと、前記各温度センサにて検出した被加熱処理物の温度が、自体の加熱目標温度より低く、かつ、回転ドラムの表面温度が、その加熱目標温度より低い場合は、ヒータへの通電指令を第2の温度検出・制御手段に出力する差温算定・指令送出手段とによって構成し、前記通電制御装置の他方を構成する前記第2の温度検出・制御手段は、ヒータの表面温度を検出する温度センサと、該温度センサにて検出したヒータの表面温度がその加熱目標温度より低く、かつ、第1の温度検出・制御手段からヒータへの通電指令が出力されていた場合は、ヒータへの通電指令をコントローラに出力する温度算定・指令送出手段とにより構成して、ヒータの通電を制御する通電制御装置を構成したことを特徴とする請求項1記載の高温加熱混合装置。
【請求項3】
前記回転ドラムの外周には、回転ドラムの周縁に配設したヒータを内蔵し、かつ、前記ヒータを断熱材により囲繞して形成した保温枠体を、回転ドラムを揺動・回転自在に包囲した状態で配置して構成したことを特徴とする請求項1記載の高温加熱混合装置。
【請求項4】
前記回転ドラムを揺動・回転自在に包囲して配置した保温枠体は、回転ドラムの周方向において開閉可能に分割して前記回転ドラムを、揺動台に回転車輪を介して着脱自在に乗載できるように構成したことを特徴とする請求項3記載の高温加熱混合装置。
【請求項5】
回転ドラムを揺動台上において回転自在に支承する回転車輪と、前記回転ドラムが揺動時に揺動台から脱落するのを防ぐ揺動車輪は、いづれもヒータを内蔵した保温枠体の軸方向外側の端部において回転ドラムと摺接可能に配設して構成したことを特徴とする請求項1記載の高温加熱混合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−38349(P2006−38349A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−219462(P2004−219462)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000116666)愛知電機株式会社 (93)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】