説明

高温高圧センサー

ガス分析のためのアセンブリーと方法。前記アセンブリーは、ガス標本の成分を触媒によって反応させ、1種類もしくはそれ以上のガス種を生成物として生成するための触媒コンパートメントを備えている。生成物コンパートメントが前記ガス種を受け入れ、前記コンパートメント内の検知素子が、前記1種類もしくはそれ以上のガス種の量を検知する。この量と、非触媒ガス標本を含む参照コンパートメント内に存在する同じのガス種の量とが比較され、触媒反応によって生成されたガス種の量が与えられる。この値を用いて、ガス標本におけるガス成分の含有量が、触媒反応の化学量に基づいて計算される。好ましい実施形態では、分析するガスは、燃料生産用のプロセスガスであり、触媒は、一酸化炭素と水との反応を触媒して、水素と二酸化炭素に転換させる、高温転化触媒である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ガスセンサーと、ガスを分析するための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
一酸化炭素と水素の混合体から合成液体燃料を生産するための、フィッシャートロプシュ(Fischer−Tropsch)プロセスなどの方法では、所望の等級の燃料製品を効率的に生産するためには、プロセスパラメータを厳密に制御しなくてはならない。このようなパラメータの中でもっとも重要なパラメータのひとつとして、水素と一酸化炭素との比率があげられる。
【0003】
合成燃料を生産するための方法のほとんどで、部分酸化プロセスもしくはスチームリホーミングプロセスが必要とされている。これらのプロセスは、通常、高圧(約500psi)および高温(約800℃)で実施されている。H2/CO比のモニタリングおよび制御のためのアナライザーの多くは、周囲温度および周囲圧力下で作動するセンサーを採用している。したがって、プロセスアナライザーとCO/H2アナライザーとの間に、冷却装置および減圧装置を挿設せねばならない。これらの装置により、プロセス全体がかなり複雑化し、アナライザーの応答時間も比較的長めになる。さらに、多くの場合、H2とCOの分析は、両方のガスの測定を同時に行える1個のアナライザーを使用して行うのではなく、個別に行われている。
【0004】
現行の多くのCO分析方法は、通常、酸素の存在下で実施しなくてはならない。ブラートン(Blurton)らに付与された米国特許第4,073,698号には、水素ガスがCOの測定に干渉するのを防止するための、選択的水素ガスの酸化に依拠した方法についての記載がある。キッツェルマン(Kitzelmann)らに付与された米国特許第号4,394,239号には、周囲空気中におけるCOとH2との濃度を測定するための方法が記載されている。ヤノポウロス(Yannopoulos)らに付与された米国特許第4,397,888号に記載されている別の方法では、COとH2とを区別するために異なる添加物が採用される、酸化第二スズの厚膜センサーの全域にわたって酸素が必要となる。アクバール(Akbar)らに付与された米国特許第5,439,580号に記載されている方法でも同様に、COとH2とを区別するのにガス特有の添加物が必要である。
【特許文献1】米国特許第4,073,698号
【特許文献2】米国特許第4,394,239号
【特許文献3】米国特許第4,397,888号
【特許文献4】米国特許第5,439,580号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プロセスガスストリーム中におけるCOとH2との測定は、いままでより高速でしかも高温高圧下でさらに効率的に実施できる、ガス測定の一つの特定の例である。その一方で、高温高圧下でガス分析を行うための装置と方法とを継続的に開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、周囲環境条件下もしくは高温高圧条件下で使用することのできる、ガス分析のためのアセンブリーと方法とを提供する。特定の実施形態では、本発明は、ほぼリアルタイムといえるプロセスガスストリームの分析を可能にする。
【0007】
一つの態様では、本発明は、ガスの成分をモニターするためのガスセンサーアセンブリーを備えている。該アセンブリーは、a)ガスの標本を受け入れ、前記ガスの成分を対象とする化学反応を触媒して、1種類もしくはそれ以上のガス種を生成させる、触媒を保持するための触媒コンパートメントと、b)触媒によって生成された前記1種類もしくはそれ以上のガスの一部あるいはすべてを受け入れるため、触媒コンパートメントと流体連通している生成物コンパートメントと、c)触媒によって生成された少なくとも1種類のガス種の量を検知して、前記ガス中に含有されているガス成分の量を分析するための値を提供するよう、生成物コンパートメント内に配置された検知素子とを備えている。センサーアセンブリーにはさらに、d)前記ガスの第二の標本を受け入れるための参照コンパートメントと、e)触媒反応後に検知されるガス種と同じガス種を検知して、前記ガス中に含有されているガス成分の量を分析するための参照値を提供するよう、参照コンパートメント内に配置された第二の検知素子とを備えている。好ましい実施形態では、ガスセンサーアセンブリーにはガス成分を対象とする化学反応を触媒するための触媒も含まれている。
【0008】
2種類の値を定量でき、そのうちのひとつの値は、触媒反応後にガス生成物中に含有されるガス種の量に相当する値であり、もうひとつの値は、触媒反応前にガス標本中に存在しているガス種の量に相当する値である。これらの2値間の差は、触媒反応によって生成されるガス種の量の指標を与える。この指標を利用すると、触媒反応の対象となった化学反応の化学量から、重要なガス成分の含有量を定量できる。基本的には、異なるガス種に転換し、その含有量を定量することによってガス成分を分析する。この転換法の長所は、生成されるガス種をいままでよりも容易にもしくはより都合よく検出できる点にある。たとえば、特定の実施形態では、プロセスガス中のCOは、触媒反応によってH2Oと反応して、H2とCO2を生成する。H2の量は、熱伝導度分析によって定量でき、プロセスガスのCO含有量は、触媒反応の対象となった反応の化学量から計算できる。触媒反応前のガス種の量に対応する値は、ガスセンサーアセンブリーから個別に定量できるうえ、ガスセンサーアセンブリーの一要素である参照コンパートメントで定量することもできる。
【0009】
さらなる実施形態では、適切な化学反応とガスアセンブリー機構を選択することによって、ガスの各種成分の比をほぼリアルタイムといえる分析で、モニターから直接定量できる。
【0010】
もうひとつの態様では、本発明は、ガスの成分をモニターするための方法を提供する。前記方法は、a)ガスセンサーアセンブリーの第一のコンパートメントへ、ガスの第一の標本を移送するプロセスと、b)第一のコンパートメント内で、ガスの成分を対象とする化学反応を触媒し、1種類もしくはそれ以上の種類のガス種を生成するプロセスと、c)生成された1種類もしくはそれ以上のガス種の一部あるいはすべてをガスセンサーアセンブリーの第二のコンパートメントに移送するプロセスと、d)第二のコンパートメント内で、触媒によって生成された少なくとも1種類のガス種の量を検知するプロセスと、e)ガスセンサーアセンブリーの第三のコンパートメントへ、ガスの第二の標本を移送するプロセスと、f)第三のコンパートメント内で、触媒反応後に検知されたガス種と同じガス種の量を検知するプロセスと、g)ガスの第二の標本中のガス種と同じガス種の量と、触媒反応後のガス種の量とを比較して、ガス中に含有されているガス成分の量の指標を与えるプロセス、とからなっている。この両ガス量間の比較により、触媒反応によって生成されるガス種の量に関する指標が得られ、この指標がさらに、重要なガス成分の含有量の計算に使用される。このようにして、触媒反応によって生成されるガス種の量は、重要なガス成分の指標を与える。
【0011】
構成と操作方法の両方に関して、さらなる目的および長所とともに、本発明の特色であると考えられる新規な特徴は、本明細書に添付の図面を参照しながら考察すれば、以下の記述からさらによく理解されるであろう。ただし、図面はそれぞれ、図解および説明することを目的としており、本発明の制限を定義することを目的としてはいないことを、明確に理解すべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、ガス分析のためのガスセンサーと方法とを提供する。本発明は、カリフォルニア州リバーサイド市からの支援の下になされたものである。したがって、リバーサイド市は、本発明における特定の権利を保有している。
【0013】
本発明によれば、分析の対象とするガスは、触媒化学反応を生じることのできる成分を有するガスであれば、どのようなガスであってもよい。このガスは、単一種のガスで構成されていてもよいし、2種類もしくはそれ以上のガス種で構成されていてもよい。特定の実施形態では、ガスは、合成燃料生産用のプロセスガスストリームなどの、ガスストリームである。当該ガスの第一の標本の組成と前記ガスの第二の標本の組成が、同じであっても、第一のガス標本と第二のガス標本は、分析するガスの均質性しだいでは変わる場合がある。たとえば、ガスがプロセスガスストリームのときには、ガスストリームの組成は、ガスの生産プロセスにおけるバラツキが原因で変化する可能性がある。しかし、プロセスガスを短い時間間隔でサンプリングしたときには特に、第一のガス標本と第二のガス標本とを比較すると、重要な成分の指標が得られる。
【0014】
触媒は、測定する特定のガス種の検出を妨害しないかぎりは、重要なガス種を対象とする化学反応を触媒する物質であれば、どのような物質であってもよい。ただし、触媒は、ガス成分の分析過程を通じて、触媒コンパートメント内に停留する固形物であることが好ましい。ガス成分および触媒の例には、NH3分析用のバナジウムならびにNO2分析用の炭素ベース触媒など、選択的な触媒による還元用触媒があげられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、触媒は、転化反応として公知の反応CO+H2O→H2+CO2を触媒する転化触媒である。転化触媒の例には、鉄―クロムベースの高温転化触媒、銅―亜鉛―アルミニウムベースの低温転化触媒および、貴金属ベースの中温転化触媒などがあげられるが、これらに限定されない。約300℃以上の高温で転化反応を触媒できる高温転化触媒が、特に好ましい。このような高温転化触媒は、市販されている(KATALCO 71−5、Johnson Matthey Inc.,Texas,USA)。
【0015】
重要なガス成分のもっとも正確な指標を得るには、触媒化学反応が、終結にいたるまで進行する反応、すなわち不可逆的反応であることが好ましい。好ましい実施形態では、ガス成分の実質的にすべてが触媒される。「実質的にすべて」という用語は、触媒反応後に残存しているガス成分の量が、触媒反応前に存在していたガス成分の1%を超えない量であることを意味している。データ分析中、ガス成分の不完全な転換によって生じる、測定における誤差は、転換率(%)が比較的一定した状態に保たれているかぎりは補償される。
【0016】
検知素子は、選択された反応生成物の量を定量するのに使用できるガス検知装置であれば、どのような装置であってもよい。検知素子の例には、熱伝導度検知素子、半導体検知素子、セラミック酸化物ベース検知素子、電気化学的検知素子、金属水酸化物ベース検知素子および赤外線検知素子があげられるが、これらに限定されない。
【0017】
好ましい実施形態では、検知素子は、熱伝導度検知素子である。公知のように、熱伝導度とは、ガスのバルク特性であり、熱伝導度検知素子は、非特異的ガス検知装置であるとみなされる。熱伝導度検知素子は、金属フィラメント、金属膜、サーミスター、ホットプレート、炭素膜、炭素複合材、金属巻き線、金属単線、導電性プラスチック、もしくはその他の熱伝導度検知素子などの、抵抗デバイスである。金属フィラメント熱伝導度検知素子が、特に好ましい。
【0018】
ヘリウムや水素などの特定のガスは、大気の熱伝導度よりはるかに高い熱伝導度を備えているいっぽうで、窒素、アルゴン、酸化炭素、一酸化炭素、アンモニアおよび窒素(2回目)などの、その他のガスは、大気の熱伝導度より低いかもしくは同等の熱伝導度を有している。このように、たとえば水素と酸化炭素を含有するガス混合体中におけるガスの熱伝導度は、主として水素によって決まる。
【0019】
実際には、ガス分析は、最高約500psiまでの圧力、最高約800℃までの温度で行うことができる。ただし、ガス圧は、約100ないし500psiが好ましく、約200ないし500psiがより好ましく、約300ないし500psiがさらに好ましい。ガス温度は、約100ないし800℃が好ましく、約200ないし800℃がより好ましく、約250ないし800℃がさらに好ましい。好ましい実施形態では、ガス分析は、約300℃で実施される。
【0020】
本発明によるセンサーの略図が、図1に示されている。センサーには、センサーブロック2が備わっており、その片側が、キャップ4に接続されている。ガスは、吸気ポートコネクターを経由してセンサーブロックへ誘引され、吐出ポートコネクター8を経由して排出される。この実施形態では、2個のコネクターがいずれもスウェージロックコネクター(Swagelok Company,Solon.Ohio,USA)であるが、他のコネクター取付金具も利用できる。センサーチャンバー10は、3つのセクション、すなわち参照コンパートメント12、触媒コンパートメント14および生成物コンパートメント16の各コンパートメントに分割されている。触媒18は、触媒コンパートメントに供給される。参照、触媒および生成物の各コンパートメントは、図1に示されているように、単一のセンサーチャンバーを構成する、連続した3セクションとして配置してもよい。あるいは、拡散バッフルなどの隔壁によって、各セクションを他のセクションから物理的に切り離してもよいし、コンパートメントを、連続しているがそれぞれ切り離されたセクションを任意に組み合わせて配置してもよい。
【0021】
センサーブロックの上端部には、ガス検知素子24、26がそれぞれ参照コンパートメントと生成物コンパートメントとに接近するのを可能にする、二つの空洞20、22がある。この実施形態では、ガス検知素子は、金属フィラメント熱伝導度検知素子である。熱伝導度検知素子26には、信号線30に接続された金属フィラメント28が備わっている。さらに、センサーブロックの上端部には、温度検知素子36があり、この実施形態では、温度検知素子36は、センサーブロックの温度を測定するための熱電対である。
【0022】
検知ブロックの下端部にある空洞38は、加熱素子40を保持し、この実施形態では、前記加熱素子40はカートリッジヒーターである。加熱素子40と温度検知素子36とは、センサーブロックの温度を所望の値に保つため、温度調節器に接続されている。
【0023】
作動中、被検ガス標本は、参照コンパートメント12に流入した後、触媒コンパートメント14を経由して、生成物コンパートメント16へ移動する。生成物コンパートメントでは、被検ガス標本が分析され、前記被検ガス標本の後から参照コンパートメント12に流入した参照ガス標本と比較される。モニターするガスがガス流である場合には、ガス標本が、参照コンパートメントから触媒コンパートメントを経由して、測定可能なように生成物コンパートメントへと連続的に流れ込むことができる。したがって、ガス流の連続的モニターが可能になる。連続的にガスが流れる環境下では、ガス標本は2種類の役割を果たす。第一に、ガス標本は、参照コンパートメント12に流入して、生成物コンパートメント16に存在するガス種の参照ガス標本としての役割を果たす。第二に、ガス標本は、触媒コンパートメント14で触媒反応を受け、生成物コンパートメント16に流入し、そこで分析される。このように、各ガス標本は、ガスセンサーにとって、参照ガス標本と被検ガス標本との2種類の働きをする。
【0024】
ガス種データは、ガス検知素子に電気的に接続されているモニターによって収集および分析される。図1に示されているガスセンサーの場合、2個のセンサーがホイートストンブリッジ回路の2本の脚部を形成するように、ガス検知素子24、26(金属フィラメント熱伝導度素子)を前記ブリッジ回路に接続することができる。計装用増幅器をブリッジ回路に接続して、ブリッジ回路の不均衡を検出することができる。計装用増幅器の出力をモニターに接続して、増幅器の信号を表示することができる。触媒される反応が、H2とCO2とを生成するのにCOとH2Oとを必要とする転化反応である場合には、増幅器の信号は、ガスのH2とCOとの間の比率を表す。このように、H2とCOとの間の比率は、触媒される反応の化学量を計算しなくても、ブリッジ回路から直接定量することができる。モニターは、センサーブロックの温度をモニターするための温度調節器としての役割も果たす。
【0025】
本発明によるセンサーを採用したブロック図が図2に示されている。ストリーム−メタンリホーマー42が、ストリームとメタンとを一酸化炭素、水素および残留ストリームに転換し、これらがフィッシャートロプシュ反応装置46用の排出ガスストリーム44を構成する。プロセスガス標本48が、排出ガスストリーム44から分離され、センサーブロック52に流入する手前で、孔50を経由して移動していく。前記孔は、センサーへのガスの流れを制限する。好ましいガスの流速は、約5sccm(立法センチメートル毎分)である。この孔は、毛細管流量調整装置やニードル弁など、他の種類のガス流量調整装置と置き換えてもよい。ガス標本は、触媒反応後に、センサーブロックから排出および放散される。センサーブロック内部の圧力を所望の圧力に保つため、背圧調整装置54が使用されている。
【0026】
図2では、熱電対とセンサーブロックに接合された加熱素子とに、温度調節器56を接続することによって、センサーブロックの温度が保持されている。それぞれの接続は、加熱素子ワイヤ58と熱電対ワイヤ60を通じて行われている。
【0027】
センサーブロックでは、参照コンパートメントに相当する個所で、1種類のガス標本が検知され、生成物コンパートメントに相当する別の個所で、第二のガス標本が同時に検知される。各検知個所には、ガス検知素子、この場合、金属フィラメント熱伝導度検知素子が取り付けられている。各熱伝導度検知素子は、コンピューター64に連結しているホイートストンブリッジ増幅器62に接続されている。熱伝導度検知素子が、検知素子間における抵抗の差を測定する、ホイートストンブリッジ回路の2本の脚部を構成している場合には、ブリッジ回路における不均衡によって、参照コンパートメントと生成物コンパートメントとにおけるガス標本の熱伝導度が直接反映される。
【0028】
その他の実施形態では、単一のガス標本が、被検ガス標本と該被検ガス標本自体の参照値の両方を提供する。これらの実施形態では、ガス標本がはじめに参照コンパートメント12に流入し、ここで検知される。つぎに、ガス標本が触媒コンパートメント14を経由して生成物コンパートメント16に流入し、ここで再度検知が行われる。モニターが、参照コンパートメントから検知された値と、生成物コンパートメントから検知された値とを比較し、重要なガス成分の量に関する指標を与える。この場合、モニターは、2種類のガス標本がそれぞれ、被検ガス標本と参照ガス標本とを提供する場合のように、参照コンパートメントと生成物コンパートメントとを同時に比較するのではなく、両コンパートメントから検知された値を交互に比較する。
【0029】
図1に示されているセンサーアセンブリーには、触媒、参照および生成物の各コンパートメントが備わっているが、センサーアセンブリーの各種構成要素は、アセンブリーの機能を変更せずに、独立した部として組み込めることが理解されるであろう。たとえば、一部の実施形態では、触媒、参照および生成物の各コンパートメント(個々の検知素子を有する)は、剛性もしくは可撓性管系などの、ガス輸送導管によって接続された独立したチャンバーであってもよい。このような実施形態では、参照および生成物の両コンパートメントは、選択した温度のインキュベーター内に配設するいっぽうで、触媒コンパートメントは、インキュベーターの外部に配設することもできる。別の実施形態では、触媒および生成物の両コンポーネントは、ともに流体連通させるいっぽうで、参照コンパートメントは、触媒および生成物の両コンパートメントから流体隔離させることもできる。さらに別の実施形態では、単一のチャンバーに、触媒および生成物の両コンパートメントを配設するいっぽうで、独立したチャンバーに、参照コンパートメントを配設することもできる。
【0030】
場合によっては、触媒反応に必要な十分な量の反応物質が、分析用のガスに含まれていないこともある。たとえば水がまったく存在していないこともあれば、存在していても濃度が低すぎて効果的に転化反応を行うことができないこともある。このような状況の下では、分析を行う前に必要な反応物質(複数もあり)をガス標本に添加することもできる。
【0031】
本発明は、詳細に解説することだけを目的とした添付の実施例を参照すれば、よく理解されるであろうが、いかなる意味においても、本明細書に添付の「特許請求の範囲」に記載されている内容と同様に、本発明の対象範囲を制限するものとして解釈すべきではない。
【実施例1】
【0032】
図1に示されているセンサーに従ったガスセンサーを、センサーブロックとアルミニウム6061で製造されたキャップとを用いて構築した。1/4インチの六角ナットとシリコンガスケットによって、キャップをセンサーブロックに接合した。参照および生成物の両コンパートメント内の熱伝導度ガス検知素子として、GOW−MAC Instrument Co.(米国ペンシルバニア州ベツレヘム)提供のタングステンフィラメントを使用した。温度を保持するため、Omega,Inc.(米国コネチカット州スタンフォード)提供のカートリッジヒーターをセンサーブロックに挿設し、温度を測定するため、型式Kの熱電対をセンサーブロックに接続した。図1によれば、センサーブロックは、高さが約1.5インチ、長さが約3.0インチ、奥行きが約1.5インチである。参照、触媒および生成物の各コンパートメントの長さの総計は、約2.5インチである。参照、触媒および生成物の各コンパートメントを格納しているチャンバーの径は、約1/2インチである。
【実施例2】
【0033】
一酸化炭素、水素および水(ストリーム)を含有するガスのCO含有量を定量した。Haldor Topsoe Inc.(米国テキサス州ハウストン)から取得した高温転化触媒のHTS SK―201―2を、実施例1に従って構築されたガスセンサーの触媒コンパートメントに添加した。この触媒は、円板状(高さ6mm、径6mm)をしており、鉄、クロムおよび酸化銅で構成されている。触媒コンパートメント中の触媒の総重量は、約5.5グラムである。2個のタングステンフィラメント熱伝導度素子がホイートストンブリッジ回路の2本の脚部を形成するように、前記ブリッジ回路にガスセンサーを接続した。このブリッジ回路は、フィラメント間の抵抗の差を測定する。DCもしくはACいずれかの電流によって前記回路を励起すると、このブリッジ回路内の不均衡によって、生成物および参照の両コンパートメントにおけるガスの伝導度が反映される。
【0034】
高温転化触媒は、一酸化炭素と水とを、CO+H2O→H2+CO2のように水素と二酸化炭素に転換する。この触媒を使用した場合には、反応が終結するまでに要する時間はごくわずかである。参照コンパートメント内に誘引されたガス標本は、触媒コンパートメントに流入し、そこで転化反応が発生する。つぎに、触媒ガス標本が生成物コンパートメントへ流入して、分析が行われる。第二のガス標本は、参照コンパートメントに誘引され、触媒ガス標本の参照値を提供する。センサーブロックの温度は、約300℃に保たれる。
【0035】
熱伝導度は、ガスのバルク特性であるが、水素の熱伝導度は、他のガスの熱伝導度に比べ、はるかに高い。したがって、タングステンフィラメント熱伝導度素子は、本質的には、第一のガス標本と第二のガス標本中に存在する水素ガスを検出する。触媒反応後の第一の標本における水素ガスと、触媒反応前の第二の標本における水素ガスとの間の差が、触媒反応によって生成された水素の量を表す。転化反応の化学量に基づくと、この量が、触媒反応前のガス標本内に存在していた一酸化炭素の量の指標にもなる。したがって、生成された水素の量を測定すると、反応前のガスのCO含有量の値を求めることができる。
【0036】
2/CO2比は、ガス標本測定から取得した値から計算することができる。ただし、参照および生成物の両コンパートメントのタングステンフィラメントをホイートストンブリッジ回路の2本の脚部に接続することによって、前記ブリッジ回路からの出力信号が、直接、H2/CO2の比率を示す。これは、図3に示されているとおりであり、この場合、さまざまな濃度の水素対一酸化炭素を含有するガス標本が分析される。
【0037】
本発明とその長所について詳細に説明してきたが、本発明の精神および対象範囲から逸脱することなく、これに各種変更、置換えおよび改変を加えることが可能であることは理解すべきである。さらに、本出願の対象範囲は、本明細書に記載のプロセス、製造、重要な組成、手段、方法および/または工程に関する特定の実施形態に制限することを目的とはしていない。通常の当業者であるならば本発明の開示内容からすぐに理解できるため、本明細書に記載されている対応する実施形態と実質的に同じ機能を遂行する、もしくは実質的に同じ結果を実現する、既存のあるいは今後開発される、プロセス、製造、重要な組成、手段、方法もしくは工程を、本発明に従って利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】ガスセンサーの略図である。
【図2】プロセスガスフロー分析を示すブロック図である。
【図3】水素と一酸化炭素との比率を、ブリッジ出力の関数として示しているグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの成分をモニターするためのガスセンサーアセンブリーであって、
a)ガスの標本を受け入れ、前記ガスの成分を対象とする化学反応を触媒して1種類もしくはそれ以上のガス種を生成させる触媒を保持するための触媒コンパートメントと、
b)触媒反応によって生成された前記1種類もしくはそれ以上のガス種の一部もしくはすべてを受け入れるため、前記触媒コンパートメントと流体連通する生成物コンパートメントと、
c)触媒反応によって生成された少なくとも1種類のガス種の量を検知して、前記ガス内に含有されている前記ガス成分の量を分析するための値を提供するよう、前記生成物コンパートメント内に配置された検知素子と、
を備えることを特徴とするガスセンサーアセンブリー。
【請求項2】
前記ガス成分を対象とする前記化学反応を触媒するための触媒をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載のガスセンサーアセンブリー。
【請求項3】
前記触媒が、不可逆反応を触媒することを特徴とする、請求項2に記載のガスセンサーアセンブリー。
【請求項4】
前記ガス成分の実質的にすべてが、触媒による反応の対象となることを特徴とする、請求項2に記載のガスセンサーアセンブリー。
【請求項5】
前記触媒が、転化触媒であることを特徴とする、請求項2に記載のガスセンサーアセンブリー。
【請求項6】
前記ガスが、合成燃料生産のためのプロセスガスであることを特徴とする、請求項1に記載のガスセンサーアセンブリー。
【請求項7】
前記ガスの前記成分が、一酸化炭素であることを特徴とする、請求項1に記載のガスセンサーアセンブリー。
【請求項8】
触媒反応によって生成される前記ガス種のうちの少なくとも1種類が、水素であることを特徴とする、請求項1に記載のガスセンサーアセンブリー。
【請求項9】
a)前記ガスの第二の標本を受け入れるための参照コンパートメントと、
b)触媒反応後に検知されたガス種と同じガス種を検知し、前記ガス中に含有されている前記ガス成分の量を分析するための参照値を提供できるよう、前記参照コンパートメント内に配置された第二の検知素子と、
をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載のガスセンサーセンブリー。
【請求項10】
前記参照コンパートメントが、前記生成物および触媒の両コンポーネントから、流体隔離されていることを特徴とする、請求項9に記載のガスセンサーアセンブリー。
【請求項11】
前記参照コンパートメントが、前記触媒コンパートメントと流体連通していることを特徴とする、請求項9に記載のガスセンサーアセンブリー。
【請求項12】
前記参照コンパートメントから、前記触媒コンパートメントを経由して、前記生成物コンパートメントに流入するまでのガス流経路を形成するように、前記参照、触媒および生成物の各コンパートメントが配置されていることを特徴とする、請求項11に記載のガスセンサーアセンブリー。
【請求項13】
単一のガス部分が、前記第一のガス標本と前記第二のガス標本とであり、前記単一のガス部分が、前記触媒コンパートメント内に流入する前に、前記参照コンパートメント内で検知されることを特徴とする、請求項12に記載のガスセンサーアセンブリー。
【請求項14】
前記第一の検知素子と前記第二の検知素子とが、熱伝導度検知素子、半導体検知素子、セラミック酸化物ベース検知素子、電気化学的検知素子、金属水酸化物ベース検知素子および赤外線検知素子からなる群から、それぞれ個別に選択されることを特徴とする、請求項9に記載のガスセンサーアセンブリー。
【請求項15】
前記熱伝導度検知素子が、金属フィラメント、金属膜、サーミスター、ホットプレート、炭素膜、炭素複合材、金属巻き線、金属単線および導電性プラスチックであることを特徴とする、請求項14に記載のガスセンサーアセンブリー。
【請求項16】
前記第一のガス標本中と前記第二のガス標本中とにおけるガス種の量を比較するため、前記第一の検知素子と前記第二の検知素子とに電気的に接続されたモニターをさらに備えることを特徴とする、請求項9に記載のガスセンサーセンブリー。
【請求項17】
前記モニターが、ホイートストンブリッジ回路を備えることを特徴とする、請求項16に記載のガスセンサーアセンブリー。
【請求項18】
ガス中の一酸化炭素をモニターするためのガスセンサーアセンブリーであって、
a)ガスの第一の標本を受け入れるための、触媒コンパートメントと、
b)前記第一のガス標本中の一酸化炭素を対象とする化学反応を触媒して、水素を生成させるため、前記触媒コンパートメント内に配置された転化触媒と、
c)触媒反応によって生成された前記水素の一部もしくはすべてを受け入れるため、前記触媒コンパートメントと流体連通している生成物コンパートメントと、
d)触媒反応によって生成された前記水素の量を検知するため、前記生成物コンパートメント内に配置された第一の金属フィラメントと、
e)前記ガスの第二の標本を受け入れるため、前記触媒コンパートメントと流体連通している参照コンパートメントと、
f)前記第二のガス標本中に含有されている前記水素を検知して、前記ガス中に含有されている前記一酸化炭素の量を分析するための参照値を提供するように、前記参照コンパートメント内に配置された第二の金属フィラメントと、を備え、
前記参照、触媒および生成物の各コンパートメントが、前記参照コンパートメントから、前記触媒コンパートメントを経由して、前記生成物コンパートメントへ流入するガス流経路を形成するように配置されていることを特徴とする、ガスセンサーアセンブリー。
【請求項19】
ガスの成分をモニターするための方法であって、
a)ガスセンサーアセンブリーの第一のコンパートメントに、ガスの第一の標本を移送するプロセスと、
b)前記第一のコンパートメント内で、前記ガスの成分を対象とする化学反応を触媒して、1種類もしくはそれ以上のガス種を生成させるプロセスと、
c)前記ガスセンサーアセンブリーの第二のコンパートメントに、前記1種類もしくはそれ以上のガス種を移送するプロセスと、
d)前記第二のコンパートメント内で、触媒反応によって生成された少なくとも1種類のガス種の量を検知するプロセスと、
e)前記ガスセンサーアセンブリーの第三のコンパートメントに、第二の標本を移送するプロセスと、
f)前記第三のコンパートメント内で、触媒反応後に検知されるガス種と同じガス種の量を検知するプロセスと、
g)触媒反応後の前記ガス種の量を、前記第二のガス標本中における同じガス種の量と比較して、前記ガス中に含有されている前記ガス成分の量の指標を提供するプロセスと、
からなることを特徴とする方法。
【請求項20】
前記触媒化学反応が、不可逆反応であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ガス成分の実質的にすべてが触媒されることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記触媒化学反応が、転化反応であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記ガスが、合成燃料生産用プロセスガスであることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記ガスの前記成分が、一酸化炭素であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
触媒反応によって生成される前記ガス種のうちの少なくとも1種類が、水素であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
ガス中の一酸化炭素をモニターするための方法であって、
a)ガスセンサーアセンブリーの第一のコンパートメントに、ガスの第一の標本を移送するプロセスと、
b)前記第一のコンパートメント内で、前記第一のガス標本中の一酸化炭素を対象とする転化反応を触媒して、水素を生成させるプロセスと、
c)前記ガスセンサーアセンブリー内の第二のコンパートメントに、触媒反応によって生成された前記水素の一部もしくはすべてを移送するプロセスと、
d)前記第二のコンパートメント内で、触媒反応によって生成された前記水素の量を検知するプロセスと、
e)前記ガスセンサーアセンブリーの第三のコンパートメントに、前記ガスの第二の標本を移送するプロセスと、
f)前記第三のコンパートメント内で、前記第二のガス標本中に含有されている前記水素の量を検知するプロセスと、
g)触媒反応後の前記水素の量を、前記第二のガス標本中の前記水素の量と比較して、前記ガス中に含有されている前記一酸化炭素の量の指標を提供するプロセスと、
からなることを特徴とする方法。
【請求項27】
ガス成分が1種類もしくはそれ以上のガス種を生成する触媒化学反応の対象となる、ガスの成分をモニターするための方法であって、
a)第一のコンパートメントに、前記ガスの標本を供給するプロセスと、
b)前記第一のコンパートメント内で、触媒反応によって生成される少なくとも1種類のガス種の量を検知して、触媒反応前の前記ガス標本中に含有されていた前記ガス種の量の参照値を提供するプロセスと、
c)前記ガスセンサーアセンブリーの第二のコンポーネントに、前記ガス標本の一部もしくはすべてを移送するプロセスと、
d)前記第二のコンパートメント内で、前記1種類もしくはそれ以上のガス種を生成する、前記化学反応を触媒するプロセスと、
e)前記ガスセンサーアセンブリーの第三のコンパートメントに、触媒反応によって生成された前記1種類もしくはそれ以上のガス種の一部あるいはすべてを移送するプロセスと、
f)前記第三のコンパートメント内で、触媒反応前の前記ガス標本で検知されたガス種と同じガス種の量を検知するプロセスと、
g)触媒反応後の前記ガス種の量を、触媒反応前の前記ガス標本中に含有されていた同じガス種の量と比較して、前記ガス中に含有されている前記ガス成分の量の指標を提供するプロセスと、
からなることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−518647(P2009−518647A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544386(P2008−544386)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/045917
【国際公開番号】WO2007/070260
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】