説明

高濃度のコロイド状の有機ヨウ素を含有する液体製剤及びその製造方法

【課題】ヨード中毒等の副作用が極めて低い、癌あるいはエイズの予防および治療効果を有する、安全で、経口投与が可能で、服用することもできる高濃度のコロイド状の有機ヨウ素を含有する液体製剤を得る。
【解決手段】ヨウ化水素換算で3重量%〜5重量%の有機ヨウ素と、1〜3重量%の水酸化ナトリウムと、残部が微量の過酸化水素を含有するアルカリイオン水からなり、アルカリイオン水に、水酸化ナトリウムが溶解し、有機ヨウ素がコロイド状に分散した、pHが7〜8の弱アルカリ性であるコロイド溶液とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗癌剤あるいは抗ウイルス剤として優れた予防及び治療効果を有する高濃度のコロイド状の有機ヨウ素を含有する弱アルカリ性溶液からなる有機ヨウ素液体製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヨウ素あるいはヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム等を含有するヨウ素製剤は、周知のように、古くから皮膚表面の一般消毒、創傷、潰瘍の殺菌・消毒等に広く用いられており、その後もその製剤の改良工夫が続けられ、多くの特許出願がなされてきている。また、特にヨウ素の有機複合化合物であるヨードグリセリン、ポリビニルアルコールヨウ素あるいはポビドンヨードなどを含有するヨウ素製剤は、皮膚表面の一般消毒のほか、咽頭炎、扁桃炎等の口腔創傷の感染予防、口腔内消毒に或いは角膜ヘルペス、洗眼殺菌などの予防・治療剤として市販されている。
最近では、ヨウ素成分として、ポビドンヨードを含有せしめたヨウ素製剤の開発が多くなされるようになってきており、ゼラチン及び糖類等にポビドンヨードを含有せしめた外用剤も提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
また、殺ウイルス効果に着目して、ヨウ素分として0.6〜0.01重量%のヨウ素及び/又はヨウ素のアルカリ金属塩を含有する膣又は口腔粘膜用水性消毒液が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
一方、医師による治療に用いられるヨウ素剤としてはヨウ素カリウム丸(ヨウ素分38mg/錠)、ヨウ化カリウム液(KI液ヨウ素分10mg)、ヨウ素レシチン(50〜100μg/錠)等があり、甲状腺機能亢進症を伴う甲状腺腫瘍(ヨウ化カリウム1日5〜50mg)、気管支炎及び喘息に伴う喀痰喀出困難症・第三期梅毒(ヨウ化カリウム1日0.3〜2.0g)等に使用されている。また、アイソトープ131I放射性ヨード治療剤として甲状腺治療に活用され、更に原子力災害時における安定ヨウ素剤(放射線の内部被爆による甲状腺癌の予防:1日服用量ヨウ化カリウム100mg−ヨウ化カリウム丸2丸、ヨウ素分76mg−WHOは100mg)として推奨されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
牧野民蔵博士および飯島登博士は、1920年頃から1935年頃にかけての研究成果として、タラ肝油、竜脳、クレオソート及びヨウ素から製造されたヨウ素製剤、通称「マキノヨード若しくはネオ・マキス」は、高血圧症、血管硬化症から結核、喘息、胃潰瘍、白血病等の他、癌・エイズ等多岐に渡る薬剤効果があると報告されている。ヨードの癌(乳癌)増殖抑制効果も期待されるとの報告もある(例えば、非特許文献2参照)。
【0005】
しかし、ヨウ素の摂取基準は所要量150μg/日、許容上限摂取量3mg/日(第6次日本人の栄養所要量の食事摂取基準)であり、服用ヨウ素薬剤の一日有効ヨウ素量はその利益と不利益(ヨウ素中毒症)を考慮して微量使用であり、最大で100mg(WHOや多くの諸外国における奨励服用量−安定ヨウ素剤の場合)とされている。ヨウ素は反応性が高く、人体に対して非常に強い毒性を示すことから劇薬に指定されており、従来の消毒薬或いは止血薬(ヨードチンキ等)用のヨウ素製剤においても1%以下の含有量のものとして使用され、また服用或いは注射用としても大量投与・長期運用による副作用の可能性のため慎重投与すべきとし、1日摂取量最大100mg以下で使用されている。
【0006】
このようなことから、本発明者は、特許文献4において、抗ウィルス及び癌治療効果を有し、かつ上記基準量以上の摂取をしても副作用がなく、注射液あるいは経口投与の可能な液状ヨウ素製剤を、先に開示した。
この発明は、ヨウ素分として1.0重量%〜1.5重量%相当量のヨウ化ナトリウムを含有する弱アルカリ性溶液から成るヨウ化ナトリウム含有製剤である。
特許文献4記載の製剤は、ミネラル水の電気分解によって生成された電解水としてのアルカリイオン水に、ヨウ化ナトリウム塩(純度99.99%)を混入して得られるヨウ化ナトリウム液である。このため、ヨウ素がナトリウムと結合した状態で存在し、ヨウ素自体の持つ疾病に対しての治療、予防作用が、ナトリウムが持つ作用に拘束される。この結果、場合によっては、必ずしも効率良く体内で吸収されず、治療効果を発揮するとはいえないことが判明した。
【特許文献1】特開平9−40563号公報
【特許文献2】特開2001−122790号公報
【特許文献3】特開平6−172192号公報
【特許文献4】特開2004−315470号公報
【非特許文献1】「原子力災害時における安定ヨウ素剤予防服用考え方について」平成14年4月 原子力安全委員会 原子力施設等防災専門部会
【非特許文献2】日本癌治療学会誌、1994年3月号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ヨード中毒等の副作用が極めて低い癌あるいはエイズの予防及び治療効果を有する、安全で、経口投与が可能で、服用することもできる高濃度のコロイド状の有機ヨウ素を含有する液体製剤を開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を進めた結果、経口摂取の場合ヨウ化水素分として3.0〜5.0重量%相当量の有機ヨウ素を含有する服用液は、一日摂取量100mgを超えても、副作用(ヨード中毒)がなく、極めて高い抗(殺)エイズ、抗癌効果を有することを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、「ヨウ化水素換算で3重量%〜5重量%の有機ヨウ素と、1〜3重量%の水酸化ナトリウムと、残部が微量の過酸化水素を含有するアルカリイオン水からなり、アルカリイオン水に、水酸化ナトリウムが溶解し、有機ヨウ素がコロイド状に分散してなる、pHが7〜8の弱アルカリ性であるコロイド溶液であることを特徴とする高濃度のコロイド状の有機ヨウ素を含有する液体製剤。」(請求項1)、「有機ヨウ素が、グリセリン、ポリビニルアルコール、ポビドン、レシチン、タラ肝油、竜脳、又はクレオソートからなる群の1以上から誘導された有機ヨウ素であることを特徴とする請求項1記載の高濃度のコロイド状の有機ヨウ素を含有する液体製剤。」(請求項2)、「微量の過酸化水素を含有するアルカリイオン水が、酸化アルミニウムとチタン酸バリウムが分散されたセラミックス成形体を充填して成る反応容器内に、酸素が溶存する原水を加圧して供給し、この加圧原水を上記セラミック成形体と衝突させて、原水の一部を水素イオンと水酸イオンとに解離させるとともに溶存酸素からオキサイドアニオンを生成し、このオキサイドアニオンを水素イオンと反応させることにより製造されたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の高濃度のコロイド状の有機ヨウ素を含有する液体製剤。」(請求項3)の液体製剤、「請求項1ないし3のいずれか1項記載の高濃度のコロイド状の有機ヨウ素を含有する液体製剤からなることを特徴とする癌の予防及び治療剤。」(請求項4)、「請求項1ないし3いずれか1項記載の高濃度のコロイド状の有機ヨウ素を含有する液体製剤からなることを特徴とするエイズの予防及び治療剤。」(請求項5)の治療剤、「酸化アルミニウムとチタン酸バリウムが分散されたセラミックス成形体を充填して成る反応容器内に、酸素が溶存する原水を加圧して供給し、この加圧原水を上記セラミック成形体と衝突させて、原水の一部を水素イオンと水酸イオンとに解離させるとともに溶存酸素からオキサイドアニオンを生成し、このオキサイドアニオンを水素イオンと反応させることにより、過酸化水素の含有されたアルカリイオン水を生成し、このアルカリイオン水に水酸化ナトリウムを添加し、溶解した後、有機ヨウ素を添加し、コロイド状に分散させたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の高濃度のコロイド状の有機ヨウ素を含有する液体製剤の製造方法。」(請求項6)の液体製剤の製造方法からなるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ヨウ素が液中にコロイド状の安定した有機ヨウ素として存在するため、無機系ヨウ素の持つヨード中毒等の毒性を排除でき、服用、飲用として安全に使用することができる。
また、体内に良好に吸収され、ホルモン系を活性化し、免疫系や内分泌系の恒常性を維持させることができ、患部の細胞や病原菌には速やかに作用し、放射線療法においては、ヨウ素の持つ薬効によって、細胞核を被爆させて死滅させることができる。
さらに、成人病や老化現象などの一大要因とされる「フリーラディカル(Free Radicals)」の電子対を受け取り、これをイオン結合物として体外に排出させることができる。
したがって、本発明の液体製剤は、安全性が高く、癌及びエイズの予防及び治療に大きな効果が期待される。
以下、本発明を詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の液体製剤は、アルカリイオン水に、水酸化ナトリウムが溶解し、有機ヨウ素がコロイド状に分散しており、pHが7〜8の弱アルカリ性のコロイド溶液であるが、ヨウ化水素換算で3重量%〜5重量%の有機ヨウ素と、1〜3重量%の水酸化ナトリウムと、残部が微量の過酸化水素を含有するアルカリイオン水を含有するものである。
【0012】
有機ヨウ素は、グリセリン、ポリビニルアルコール、ポビドン、レシチン、タラ肝油、竜脳、又はクレオソートからなる群の1以上から誘導された有機ヨウ素に限らず、毒性のないものであれば使用可能であるが、ヨウ素の含有率の大きい誘導体が好ましい。
【0013】
水酸化ナトリウムは、pHの調整に関係し、1〜3重量%の範囲で、有機ヨウ素のコロイド分散が安定なpH領域であるpHが7〜8の弱アルカリ性になるように添加される。
【0014】
アルカリイオン水としては、pHが9〜9.5程度で微量の過酸化水素を含有するものが用いられるが、好適には、本発明者による特開平8−217421号公報(日本国特許第2955502号)記載の「過酸化水素水製造装置」によって製造されるものが望ましい。
【0015】
上記特開平8−217421号公報記載の「過酸化水素水製造装置」は、酸化アルミニウム及びチタン酸バリウムが分散されたセラミックス成形体が充填された反応容器と、反応容器に酸素が溶存している原水を供給する原水供給口と、原水を原水供給口から反応容器内に供給し反応容器内で加圧状態にする加圧手段と、原水が反応容器内でセラミックス成形体と接触して生成した過酸化水素水を取り出す過酸化水素水取出口とからなる。
【0016】
反応容器に圧入された原水は、セラミックス成形体に衝突し、その運動エネルギーが熱エネルギーに転換される。原水の一部がイオンに解離して水素イオン(H+)及び水酸イオン(OH-)生成されてアルカリイオン水となる。圧入される原水は、溶存酸素を含み、塩素を含まない水であれば、どのような種類の水であっても良い。
原水は、次いで、反応容器内のセラミックス成形体と接触する。セラミックス成形体は、酸化アルミニウムとチタン酸バリウムがバインダー中に均一に分散されて成るチタン酸バリウム系セラミックスである。チタン酸バリウム系セラミックスは圧電体セラミックスなので、加圧や衝突などの力が加えられると電子を放出し、相手に電子を供与する。そこで、原水に溶存している酸素分子(O2)の一部に電子を供与し、この結果、電子が供与された酸素分子から、オキサイドアニオン(O2-)が生成される。
【0017】
オキサイドアニオン(O2-)は、高い反応性を有する活性酸素の1種なので、原水中で通常の水よりも濃度の高くなっている水素イオン(H+)と反応し、微量の過酸化水素(H22)微量の酸素(O2)生成される。
【0018】
この装置を用いて製造されたアルカリイオン水の過酸化水素の含有割合は、一例として0.000000517重量%であった。
【0019】
コロイド溶液の製造方法としては、通常の混合・撹拌手段を適用すればよい。
微量の過酸化水素を含有するアルカリイオン水に適量の水酸化ナトリウムを添加し、溶解した後、有機ヨウ素を添加し、混合・撹拌する。適正なpHに調整すると、長時間安定なコロイド溶液を得ることができる。
微量の過酸化水素は、過剰の水酸イオンと結合し、コロイド粒子を帯電させることにより、安定なコロイド溶液を生成すると共に、ヨウ素同士が結合しないので、毒性を持つことがなくなる機能があるものと推定される。
なお、本発明に係る有機ヨウ素を含有する液体製剤には、その作用を損なわない範囲で、液体製剤に一般的に添加される成分であるブドウ糖や各種アミノ酸、ビタミン剤等の高カロリー化剤、安定剤、無痛化剤、着色剤などを添加しても良い。
【0020】
以下に製造例及び試験例を示し、本発明の高濃度のコロイド状の有機ヨウ素を含有する液体製剤が動物毒性試験で毒性がないことを説明する。
【0021】
製造例1:有機ヨウ素を含有する液体製剤を製造する。
有機ヨウ素として、2−ヨードトリメチレングリコールを用いた。
化学式C37IO2、分子量202、結晶、融点52〜53℃
アルカリイオン水90gに、2−ヨードトリメチレングリコール粉6.3g(ヨウ化水素分4g)、水酸化ナトリウム2.0gを加えて、激しく撹拌した後、酢酸を用いてpHを7.8に調整し、液体製剤を製造した。
2−ヨードトリメチレングリコールは、コロイド状に安定に分散していた。
【0022】
実験例1:動物毒性試験
次の条件により、ラットにおける毒性試験を行なった。
1)被験物質:液体製剤(投与量 5ml/Kg×体重)、対照物質:精製水
2)使用動物:SPFラット10匹
3)観察期間:14日
4)測定法:一般状態観察と体重値‐Bartlett検定法、危険率10%以下
その結果は、(1)いずれの動物も死亡せず、一般状態にも異常は認められない、(2)一元配置分散分析法による被験および対照物質の比較分析では体重推移に有意差は認められない。
以上の結果から、本発明の液体製剤の毒性は極めて低く、そのLD50値(急性毒性)は2000mg/Kgを超えると判断された。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ化水素換算で3重量%〜5重量%の有機ヨウ素と、1〜3重量%の水酸化ナトリウムと、残部が微量の過酸化水素を含有するアルカリイオン水からなり、アルカリイオン水に、水酸化ナトリウムが溶解し、有機ヨウ素がコロイド状に分散してなる、pHが7〜8の弱アルカリ性であるコロイド溶液であることを特徴とする高濃度のコロイド状の有機ヨウ素を含有する液体製剤。
【請求項2】
有機ヨウ素が、グリセリン、ポリビニルアルコール、ポビドン、レシチン、タラ肝油、竜脳、又はクレオソートからなる群のうちの1以上から誘導された有機ヨウ素であることを特徴とする請求項1記載の高濃度のコロイド状の有機ヨウ素を含有する液体製剤。
【請求項3】
微量の過酸化水素を含有するアルカリイオン水が、酸化アルミニウムとチタン酸バリウムが分散されたセラミックス成形体を充填して成る反応容器内に、酸素が溶存する原水を加圧して供給し、この加圧原水を上記セラミック成形体と衝突させて、原水の一部を水素イオンと水酸イオンとに解離させるとともに溶存酸素からオキサイドアニオンを生成し、このオキサイドアニオンを水素イオンと反応させることにより製造されたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の高濃度のコロイド状の有機ヨウ素を含有する液体製剤。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の高濃度のコロイド状の有機ヨウ素を含有する液体製剤からなることを特徴とする癌の予防剤及び治療剤。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の高濃度のコロイド状の有機ヨウ素を含有する液体製剤からなることを特徴とするエイズの予防剤及び治療剤。
【請求項6】
酸化アルミニウムとチタン酸バリウムが分散されたセラミックス成形体を充填して成る反応容器内に、酸素が溶存する原水を加圧して供給し、この加圧原水を上記セラミック成形体と衝突させて、原水の一部を水素イオンと水酸イオンとに解離させるとともに溶存酸素からオキサイドアニオンを生成し、このオキサイドアニオンを水素イオンと反応させることにより、過酸化水素の含有されたアルカリイオン水を生成し、次いでこのアルカリイオン水に水酸化ナトリウムを添加し、溶解した後、有機ヨウ素を添加し、コロイド状に分散させたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の高濃度のコロイド状の有機ヨウ素を含有する液体製剤の製造方法。


【公開番号】特開2008−143808(P2008−143808A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−330671(P2006−330671)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(506326316)アイロミン製薬株式会社 (1)
【出願人】(599049510)
【出願人】(506407659)
【Fターム(参考)】