説明

高耐久アンテナシステムおよび方法

薄型かつ環境および物理的衝撃に耐えることが可能である、高耐久パッチアンテナについて説明する。アンテナの電気特性は、支持構造の表面の性質に依存しない。アンテナの定在波比、リターンロス、およびインピーダンスは、効率的一方向および双方向通信をサポートするために十分な品質である。アンテナは、車両、航空機、宇宙船、マンホールの蓋、公共施設のカバー、機器保管庫、人物、および動物に搭載することができる。一実施形態において、アンテナは、保護用耐衝撃性誘電性コーティングによって被覆されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、米国仮特許出願第61/281,515号(2009年11月19日出願)の利益を主張する。該出願の内容は、その全体が参照により本明細書に引用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、高耐久アンテナに関する。より具体的には、本開示は、厳しい環境において使用するために好適な広帯域小型アンテナに関する。
【背景技術】
【0003】
遠隔ネットワークは、広く分散した場所から、環境、運営、セキュリティ、エネルギー管理、産業、軍事、およびリスク管理システム等における重要なパラメータを遠隔で監視および制御するために配備される。他の用途は、例えば、法執行、商取引、医療データ収集、規制監視、リアルタイム課金、航空機操作、輸送管理、資産管理、出荷、在庫、物流、および人材配備に対するものであり得る。
【0004】
実際の世界環境において、広く分散した無線遠隔ネットワークをサポートするために、高耐久多用途アンテナが、多くの場合、要求される。多くのそのような用途では、設置空間は、非常に限定され、電力は、バッテリ、ソーラーパネル、または他の低エネルギー源に頼り、アンテナは、広範囲に及ぶリスクにさらされ得る。残念ながら、高無線信号効率を伴う適合的搭載を提供し、多様な衝撃に耐えることが可能なアンテナを作製することは、困難である。
【0005】
したがって、アンテナコミュニティにおいて、種々の遠隔システムに好適な簡略化された高耐久アンテナの長年にわたる必要性が存在する。前述に照らして、コミュニティにおいて、これらおよび他の需要に対処可能な新しい高耐久アンテナが所望される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下は、請求される主題のいくつかの側面の基本的理解を提供するために、簡略化された発明の開示を提示する。本発明の開示は、網羅的概観でもなく、請求される主題の重要/必須要素を識別する、またはその範囲を線引きすることも意図するものではない。その目的は、以下に提示される発明を実施するための形態の前置きとして、簡略化された形態において、いくつかの概念を提示することである。
【0007】
本開示の一側面では、接地板と、接地板の上方に配置され、一端で接地される、第1の1/4波長パッチと、接地板の上方に配置され、一端で接地され、第1の1/4波長パッチと同一平面上において、そこから約1/8波長変位される、第2の1/4波長パッチと、パッチと接地板との間の誘電性媒質と、接地板の上方に配置され、第1の給電分岐線および第2の給電分岐線を有し、第1の給電分岐線は、第1の1/4波長パッチに給電し、および第2の給電分岐線は、第2の1/4波長パッチに給電し、第1および第2の給電分岐線の側方長は、約N*波長+1/8波長だけ異なり、Nは、整数である、非対称給電線とを備えている、中心周波数および帯域幅を有する、薄型、低損失、マルチパッチアンテナが提供される。
【0008】
本開示の別の側面では、第1の1/4波長パッチを切頭接地板の上方に製作し、第1の1/4波長パッチを一端で接地することと、第2の1/4波長パッチを接地板の上方に製作し、第2の1/4波長パッチを一端で接地することであって、第2の1/4波長パッチは、第1の1/4波長パッチと同一平面上において、そこから約1/8波長変位される、ことと、非対称給電線を接地板の上方に、第1の給電分岐線および第2の給電分岐線とともに製作し、第1の給電分岐線は、第1の1/4波長パッチに給電し、および第2の給電分岐線は、第2の1/4波長パッチに給電し、第1および第2の給電分岐線の側方長は、約N*波長+1/8波長だけ異なり、Nは、整数である、こととを含む、中心周波数および帯域幅を有する、薄型、低損失、マルチパッチアンテナを使用して、電磁気エネルギーを放射/捕捉する方法が提供される。
【0009】
本開示のさらに別の側面では、切頭接地板の上方の電磁気エネルギーを放射/捕捉する第1の手段と、電磁気エネルギーを放射/捕捉する第1の手段を一端で接地する手段と、接地板の上方の電磁気エネルギーを放射/捕捉する第2の手段と、電磁気エネルギーを放射/捕捉する第2の手段を一端で接地する手段であって、電磁気エネルギーを放射/捕捉する第2の手段は、電磁気エネルギーを放射/捕捉する第1の手段と同一平面において、そこから約1/8波長変位される、手段と、第1の給電分岐線および第2の給電分岐線を有する、電磁気エネルギーを放射/捕捉するための第1および第2の手段に電磁気エネルギーを給電/受電する手段であって、第1の給電分岐線は、電磁気エネルギーを放射/捕捉する第1の手段に給電し、第2の給電分岐線は、電磁気エネルギーを放射/捕捉する第2の手段に給電し、第1および第2の給電分岐線の側方長は、約N*波長+1/8波長だけ異なり、Nは、整数である、手段とを備えている、中心周波数を有する、薄型、低損失、マルチパッチアンテナが提供される。
【0010】
前述および関連目的を達成するために、ある例証的側面が、以下の説明および付随の図面に関連して、本明細書に説明される。しかしながら、これらの側面は、請求される主題の原理が、採用され得る、種々の方法を示すが、それらは、その一部であって、請求される主題は、そのような側面およびその均等物のすべてを含むように意図される。他の利点および新規特徴は、図面と併せて検討することによって、以下の発明を実施するための形態から明白となるであろう。したがって、開示の他の側面は、明細書全体を通して見出される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、例示的アンテナ構造の斜視図の例証である。
【図2】図2は、例示的アンテナ構造の側面図の例証である。
【図3】図3は、例示的アンテナ構造の上面図の例証である。
【図4】図4は、製作された例示的2つのパッチアンテナの寸法を示す、上面概略図である。
【図5】図5は、整列した例示的アンテナを例証する、上面概略図である。
【図6】図6は、例示的「コーティングされていない」2つのパッチアンテナに対する測定データを示す、重畳された振幅プロットを伴う、ログ振幅スミスチャートのプロットである。
【図7】図7は、整列したアンテナに対する測定データを示す、重畳された振幅プロットを伴う、ログ振幅スミスチャートのプロットである。
【図8】図8は、下水設備内の例示的アンテナの断面図の例証である。
【図9】図9は、マンホールの蓋の上に搭載された例示的アンテナ構造の上面図の例証である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
遠隔用途のためのアンテナは、多くの場合、アンテナの場所が、表面近傍の適合的空間に限定されることを要求する。例えば、アンテナは、航空機の外皮またはマンホールの蓋の上部に定置され得る。航空機の場合、アンテナは、実質的空気抵抗を生成しないことが望ましい。マンホールの蓋の場合、アンテナは、有意な損傷を伴うことなく、数百万の車両の衝撃に、ならびに最高最低気温、降雨、または雪かき等の天候関連ストレスに機械的に耐えることが可能でなければならない。また、遠隔用途のためには、アンテナ放射効率およびパターン範囲は、懸案事項である。これらのアンテナは、多くの場合、薄型アンテナと称され、多くの事例では、高さ1/10波長未満である、適合的形状を有するが、実際の高さは、放射モードおよび指向性にも依存する。
【0013】
適合的搭載、耐衝撃性、および高無線信号効率の需要に対処し得る特性を有する、遠隔で操作される高耐久アンテナは、いくつかの属性を保有するものと理解される。第1の属性は、雑音の多い無線環境において、無線信号を伝送および受信するために必要とされる、高効率である。これは、都市環境において見出される、多くの遠隔システムならびに多くの能動的無線信号のための低電力要件によるものである。高効率の一側面は、低損失を有することによって達成することができ、低損失の測定は、2未満の電圧定在波比(VSWR)である。地方の環境では、無線信号は、多くの場合、高信号パス損失を生じさせ得る、より長い距離にわたって、伝搬されなければならず、したがって、リンクバジェットは、高効率アンテナによって補われることができる。
【0014】
第2の属性は、環境からの損傷に耐えるためのアンテナの能力である。例えば、マンホールの蓋または公共設備のハッチの上部に搭載されるアンテナは、交通および道路の破片から数百万の衝撃を受け得る。同様に、そのようなアンテナはまた、機器保管庫の外部に搭載され、アンテナの寿命にわたって、過酷な気候、破壊行為、熱、寒気、水、腐食性化合物、および他の有害な影響を受け得る。
【0015】
第3の属性は、設置の容易性である。アンテナは、アルミニウム、鉄、鋼鉄、または他の金属等の導電性表面、および、合成材料、プラスチック、木材、ガラス、氷、および関連材料等の誘電性表面、および、2つの組み合わせの上に搭載可能であるべきである。前述に照らして、アンテナはまた、データ遠隔測定のために、ヒトまたは動物の皮膚の表面に近接して搭載され得る。あらゆる場合において、定在波比、インピーダンス、またはリターンロス等のアンテナの無線特性は、有用動作を妨害するような態様で影響を受けるべきではない。加えて、アンテナは、いかなる設置時の同調も必要とすべきではなく、必要とされる場合でも、有意な同調量であるべきではない。
【0016】
第4の属性は、使用の容易性である。アンテナは、例えば、50、75、300、または600オーム等の共通特性インピーダンスを伴う他の従来のアンテナと同様に機能すべきである。インピーダンスの共通性を維持することによって、アンテナは、いかなる修正も必要とすることなく、既存の無線システム内に容易に実装可能となる。同様に、アンテナはまた、無線伝送線に見出される、SMA、BNC、PL259、N、または他の共通コネクタ等の共通同軸構成要素による、物理的接続を可能にすべきである。
【0017】
第5の属性は、設置の多用途性である。アンテナは、交通、給水塔、下水設備監視、囲い地の監視、セキュリティ用途、安全監視、法執行等の「スマートシティ」配備、公共設備の監視、産業、商業、または地方自治体環境のような地上用途において配備可能な物理的および操作上の特性を有するべきである。したがって、アンテナはまた、航空機、宇宙船、上陸用車両、ボート、道路車両、人物、および動物等の可動プラットフォーム上に配備され得る。
【0018】
第6の属性は、無線サービスの多用途性(良好に確立された無線ネットワークとインターフェースをとる能力)である。ある場合には、無線サービスは、一方向または双方向VHF、UHF、またはより高い周波数の送受信機対等、2地点間無線システムを利用して提供される。そのようなシステムは、リモート監視・制御(SCADA)システムおよび限定された配備の類似設置において見出すことができる。アンテナはまた、遠隔施設を既存の一方向または双方向無線ネットワークに接続するように配備され、携帯電話プロバイダ、GSM(登録商標)、ReFlex、Mobitex、Post Office Code Standardization Advisory(POCSAG)、または他の無線システムによって提供される場合がある。アンテナは、ピア・ツー・ピアルーティングを可能にする、ZigBeeおよび他のアーキテクチャ等のネットワークデバイスに接続可能であるべきである。アンテナはまた、地上の施設から、とりわけ、GlobalStar(登録商標)、OrbComm(登録商標)、Iridium(登録商標)、およびバルーンベースのシステム等の空中または宇宙一方向および双方向無線プラットフォームに通信するために使用され得る。
【0019】
ここで、製作が容易、安価、かつ他の近地表アンテナと同等またはそれ以上に優れた性能を達成する、種々の前述の属性を単一のコンパクトなパッチアンテナに組み合わせる、例示的アンテナについて説明する。例示的パッチアンテナは、典型的には、アンテナの表面に垂直な電場ベクトルによって分極される。アンテナが、地表または事実上の地表面(例えば、マンホールの蓋)上に、平坦に定置される場合、電場分極は、通常、垂直となるであろう。パッチアンテナは、異なる給電点、または位相線によって給電されるいくつかのパッチを利用し、右円偏波(RHCP)、左円偏波(LHCP)、ならびに水平および垂直成分の両方を伴う、直線偏波をもたらすことができる。小型パッチアンテナは、典型的には、狭インピーダンス帯域幅(2%から5%)を提供する。
【0020】
本明細書に説明される例示的アンテナは、2つ以上の1/4波長(1/4λ)パッチ/放射要素と給電ベースの位相整合ネットワークとを利用して、略均一半球放射パターンを生成する。加えて、適切な給電制御および位相整合によって、例示的アンテナは、二重分極を含む、多重分極を提供可能である。例示的アンテナの別の特徴は、パッチのために使用される伝送線の位相整合とインピーダンスとの特定の関係、ならびに互に対するパッチの配向から生じる。例示的アンテナの放射部分は、2つのパッチ間に機械的に中心に置かれ、環境変化による同調の影響を最小限にする。また、パッチの一端における接地電位の存在は、容易な搭載を可能にする。
【0021】
例示的アンテナは、同時に、901MHzおよび940MHz帯域上で良好な性能を提供するためのリサーチ手段を伴って作製される一方、小型の外形を達成する。例示的アンテナは、パッチアンテナとして知られるアンテナの種類に属するため、標準的印刷配線基板組立技法を使用して製作することができ、FR−4(Glass Epoxy)、Duroid(登録商標)、Epsilam(登録商標)等を含む、利用可能な回路基板材料のいずれから成ってもよい。例示的アンテナはまた、メタ材料(人工的に操作された誘電定数または誘電率を伴う材料)を使用して製作され得る。例示的アンテナはまた、基板材料を伴わずに製作され得る。衝撃、摩耗、化学的劣化等の環境要因から例示的アンテナを隔離するために使用されるもの等のコーティング材料の慎重な使用でも、正味誘電定数に影響を及ぼすことが知られている。しかしながら、そのような影響は、後述のように、給電ネットワークによって、補償することができる。
【0022】
パッチは、1/2および1/4λサイズとして供給され得るが、サイズ制約によって、例示的アンテナは、1/4λパッチを利用する。1/2λパッチのいくつかの側面は、対称性を介して、1/2λパッチの中心における電位が、共振時、ゼロであり、短絡接地をその点に設置することができることである。短絡の両側の放射要素は、近接場解において生じるいくつかの結合条件を除き、他方の要素が除去される場合、気付かないであろう。類似解は、さらに以下に詳述されるように、接地に短絡されたパッチの一「端」を伴う、1/4λパッチを使用することによって、達成することができる。
【0023】
例示的アンテナの別の特徴は、一方によって呈される負荷が、他方によって強力に影響を受けるように、それ自体が、計画的に結合され、共通して給電される、少なくとも2つのパッチ/共振要素を使用することである。これらの結合された共振器は、一対の集中要素共振回路が帯域通過フィルタを形成するように連結され得るのと同じ方法で帯域通過応答を提供し、いずれの共振器よりも広いインピーダンス帯域幅を有する。
【0024】
フィルタ設計では、共振器間の結合は、典型的には、4つの種類のうちの1つである(高インピーダンス直列結合、低インピーダンス分路結合、変圧器帯域通過結合、および開口結合)。説明される例示的実施形態では、2つのアンテナ要素またはパッチ間の結合は、比較的に広い帯域幅にわたって、入力伝送線を自由空間にインピーダンス整合させるための手段を生成する。このように、個々のアンテナ要素は、その付帯損失を伴う、インピーダンス拡大方法論を必要とせず、個々のパッチ要素の比較的に高い品質は、有益となり得る。以下の例証は、例示的アンテナの種々の非限定的構成を実証する一方、それに対する修正が、当業者の知識に従って、工夫され得る。
【0025】
図1は、誘電(絶縁)材料4の上方またはその中に配置される、2つの1/4λパッチ要素2を有する、前述の説明に従う、例示的アンテナ構造10の斜視図の例証である。パッチ要素2は、パッチ要素2の間で非対称長である伝送線6を介して、給電される。接地板8(非可視)は、パッチ要素2の真下にあって、誘電体4によって、パッチ要素2から変位される。空気または真空が、誘電体4として動作することができ、したがって、パッチ要素2は、接地板8の上方に懸架されることができることを理解されたい。接地板8は、パッチ要素の外側縁9に接続され、外側縁を接地に短絡させる。パッチ要素2の内側縁は、約1/8λだけ、互から変位される。
【0026】
前述および以下の図に示される、例示的アンテナ10内のパッチ要素2は、概して、均一形状であるが、他の形状、非長方形、または非均一性が、設計選択に従って、利用され得ることを理解されたい。例えば、円形、楕円、正方形、および他の形状が、設計選択に従って、使用され得る。同様に、伝送線6は、パッチ要素2の「正面」に給電するように示されるが、パッチ要素2は、そのそれぞれの縁またはその内部内の異なる場所において、給電され得ることを理解されたい。後者の事例の一実施例として、給電線6は、パッチ要素2「下方」のビアから突出し、特定の内部場所から、各パッチ要素2を励起し得る。したがって、「正面」縁以外の多数の設計に応じた場所が、パッチ2を励起するために使用され得る。また、放射体を励起するために、空洞励起子、プローブ、マイクロストリップ等の種々の種類の給電体が利用され得る。故に、形状および/または給電構造の修正は、当業者の範囲および視野内であることを理解されたい。
【0027】
図2は、アンテナ22からオフセットされて示される、入力線26を伴う、例示的アンテナ22の正面図の例証である。例示的アンテナ22は、ポリマー、ウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、セラミック、または損傷に耐える他の材料等の弾性材料28でコーティングされるか、注封されるか、または封入される。材料28によって、例示的アンテナ22は、例えば、摩擦、雨、タイヤ等、厳しい環境に置かれても存続することが可能となる。ここで着目すべきは、例示的アンテナ22の平面性質およびその薄型である。
【0028】
図3は、基板35に支持される、例示的アンテナ構造の上面図の例証であって、パッチ要素32および34は、50オームインピーダンス点37を形成するように接合される100オーム伝送線36aおよび36bを介して給電される。個々のパッチ要素32および34は、伝送線36aおよび36bに100オームを提供する場所39で給電される。パッチアンテナ要素34に給電する100オーム伝送線36bの長さは、他方のパッチ要素32に給電する100オーム伝送線36aより45°(λ/8)長いものであることができる(λ/8偏移が、Ν*λ+λ/8の長さを有する線によっても達成することができることに留意されたい(Nは、整数である))。より長い伝送36b線に接続されたパッチ要素34は、より短い100オーム伝送線36a区画に接続されたパッチ要素32より低周波数に同調されるが、例示的アンテナは、反対に同調されても、同様に機能し得る。前述のように、パッチ要素32および34は、互から、約1/8λだけ分離され、また、略外側縁40において接地される。
【0029】
前述の説明は、100オーム伝送線の観点から、インピーダンスを投じるが、他のインピーダンスが、本明細書の精神および範囲から逸脱することなく、所望に応じて、使用され得ることは、アンテナ技術の当業者によって理解される。
【0030】
示される例示的給電配置に関して、非対称伝送線長により、パッチ要素32および34に45°(λ/8)オフセットで給電することは、典型的半波長パッチアンテナにおいて見出される指向性を除去する利点を有する。半波長パッチアンテナでは、放射垂直に分極された区分は、1/2λ離れ、位相がずれており、これは、パッチの主軸に沿った方向に増大し、パッチに対して垂直(側方)に相殺することを意味する。パッチに沿った電気的変位は、遠距離場で明らかであり、したがって、アンテナは、パッチの主軸に垂直の遠距離場の視点に対して、水平に分極されると考えられる。これは、効果的に、全方向性放射パターンを生成する。
【0031】
この同じ放射パターンは、例えば、短絡パッチ要素32および34が45°(λ/8)でオフセット給電されることによって、図3に示される、1/4λ実施形態に従い得ることができる。ただし、能動的放射表面は、1/2λより近く(約1/8λ)に一緒に位置付けられ、したがって、近距離場環境からより容易に隔離される。類似放射パターンは、他の形状分離、例えば、90°(例えば、1/4λ)で利用可能であるが、広帯域インピーダンス整合をもたらす同時負荷は、優れたものではないことがある。90°分離では、要素は、そのそれぞれの給電点(例えば、図3の39)において、電気的に隔離されるであろう。したがって、設計選択に基づいて、他の位相分離および給電点位置決めが利用され得る。
【0032】
上記に基づいて、例示的実施形態が製作され、典型的には、890から950MHzにおいて、10dB超のリターンロスを、「整列」された場合に、901MHzおよび940MHz同時において、20dB超のリターンロスをもたらすことが示された。ReFlexページャシステムならびに902から928MHz ISM帯域に対して、それを理想的なものにする。本パッチアンテナ設計技法の広帯域能力を認識することによって、例示的実施形態は、任意の他の周波数範囲における配備のために拡大することができる。
【0033】
図4は、約4.72インチ幅および約2.05インチ高さである、板/基板45上に、パッチ幅約1.43インチおよび高さ0.06インチを有する、中心周波数約920MHzで動作するために設計され、製作された例示的な2つのパッチアンテナの寸法を示す、上面概略図である。動作時、図4のパッチアンテナは、ポリウレタンカバーで被覆されている。しかしながら、本説明の目的のために、ポリウレタン被覆は、図示されない。ビア(または、接地フィンまたはメタライゼーション等)40は、パッチ端から変位されて示され、側方給電線46aおよび46bは、図3に示されるものと反対である。パッチ42は、G+Eの幅寸法(ビア40から)を有するのに対して、パッチ43は、H+Gの幅寸法(ビア40から)を有する。故に、以下に提供される寸法によって、パッチ42は、中心周波数約901MHzで独立して動作するように設計される一方、パッチ43は、中心周波数約940MHzで独立して動作するように設計される。しかしながら、パッチアンテナ全体の中心周波数は、約920MHz(誘電性被覆を伴って試験された場合)であることが分かった。各パッチ(42および43)に対する異なる中心周波数の使用は、わずかな同調調節を行うことによって、集合アンテナに対して、合理的入力インピーダンスおよび帯域幅を達成する機構を提供した。同調要件、また、製作精度および給電線寸法に応じて、類似中心周波数を有するパッチが、代わりに、設計され得る。
【0034】
本明細書に説明される寸法のすべてではないにしても、その多くは、周波数依存性であって、したがって、修正および調節が、本明細書の精神および範囲から逸脱することなく、例示的実施形態に行われ得ることを理解されたい。例えば、製作公差に応じて、最大1/20λ、またはいくつかの極端な例では、1/10λまでの寸法調節が、行われ得る。故に、用語「約」は、合理的サイズ変動を包含することが理解され得る。
【0035】
図4のアンテナに対する寸法は、以下の通りである。B≒0.92インチ、E≒0.76インチ、G≒0.78インチ、およびH≒0.71インチ。パッチ43を見ると、側方給電線46bに対する長さBが、側方給電線46bからパッチ43の(「+」によって示される)中心までの垂直距離に類似することに留意することは興味深い。前述のように、これらの寸法は、特定の周波数範囲に対して設計されるアンテナを反映する。他の周波数範囲に対して、寸法は、変化し、そのような修正は、完全に、当業者の知識の範囲内であると理解される。
【0036】
図5は、整列した例示的パッチアンテナ50を例証する、上面概略図であって、アンテナ52および54は両方とも、それぞれ、給電体56および58において、同時に駆動される。互に対するその近接性に起因して、結合への考慮が関与し、本整列したアンテナ50は、図7に後述されるように、異なる性能プロファイルを提供する。
【0037】
図6は、50オームの平均インピーダンスに正規化された、重畳された振幅プロットを伴う、ログ振幅スミスチャートのプロットであって、中心周波数1.616GHzで動作するために定寸された寸法を有する、例示的「コーティングされていない」2つのパッチアンテナに対する測定データを示す。スミスチャート上では、入力反射係数(S11)のプロットが示され、68が開始周波数1.566GHzを表し、69が停止周波数1.666GHzを表す。振幅プロット上では、周波数1.576、1.660、1.610、および1.626GHzは、それぞれ、周波数マーカ61、62、63、および64に対応する。振幅プロットのみを見ると、図6は、入力反射係数(S11)振幅は、試験された周波数範囲にわたって、概して、−10dB未満であることを実証する。
【0038】
図7は、50オームの平均インピーダンスに正規化された、重畳された振幅プロットを伴う、ログ振幅スミスチャートのプロットであり、図6のアンテナが図5に示されるように整列したものに対する測定データを示す。スミスチャート上では、入力反射係数(S11)のプロットが、78によって表される開始周波数1.516GHzおよび79によって表される停止周波数1.716GHzとともに示される。周波数1.576、1.660、1.610、および1.626GHzは、それぞれ、周波数マーカ71、72、73、および74に対応する。図7は、全体的S11振幅が、試験された周波数の中央範囲にわたって、−20dB未満であることを実証する。
【0039】
図8は、下水設備内の例示的アンテナ85の断面図の例証である。例示的アンテナ85は、例示的アンテナ85を伝送および/または受信デバイス(図示せず)に接続する、同軸給電体87とともに示される。マンホールの蓋82は、下水設備チャンバまたはマンホール88の入口に搭載されて示される。図8から明白なことは、例示的アンテナ85が、非常に薄型を有し、マンホールの蓋82の全体的形状に殆ど修正を加えず、または干渉せず、マンホールの蓋82に添着することができることである。本例示的アンテナ85の薄型性質は、下水設備またはマンホール搭載システム、あるいは薄型アンテナを必要とするシステムと使用するために、非常に好適となる。
【0040】
図9は、マンホールの蓋92上に搭載された例示的アンテナ95の上面図の例証である。滑り低減要素93が、マンホールの蓋92の上面を中心として配置される。いくつかの事例では、マンホールの蓋92は、非伝導性または誘電性材料を使用して形成される、非金属性であり得ることを理解されたい。したがって、これらの事例では、例示的アンテナ95は、マンホールの蓋92の下方に取り付けられるか、またはさらにマンホールの蓋92内に埋入され得る。したがって、材料の種類に応じて、例示的アンテナ95から成る、マンホールの蓋92は、マンホールの蓋92上または内の異なる場所に定置され得る。本図は、例示的アンテナ95によって占有される面積が少量であることを例証する。前述のように、例示的アンテナ95の小型プロファイルおよびサイズは、例示的アンテナ95を、多数の他の環境、例えば、航空機の羽根の中または上に定置することを可能にする。したがって、例示的実施形態は、マンホールの蓋上に実装されて示されるが、他の「プラットフォーム」が、本明細書の精神および範囲から逸脱することなく、利用され得る。
【0041】
その結果、例示的アンテナは、その中間物理環境から容易に隔離される、物理的にコンパクトなアンテナ構造を作製する手段を提供し、同時に、損失の多い要素を伴うことなく、広インピーダンス帯域幅を提供する手段を提供する。開示される例示的アンテナは、単一キャリアまたは多重キャリア周波数の使用を可能にし、例示的アンテナは、平坦または適合的様式で置くことができる。適合的表面は、金属または誘電性であることができ、例示的アンテナは、搭載表面タイプから独立して、電気的に有用なリターンロス性能を提供する一方、破壊行為、交通衝撃、高速気流、温度逸脱、天気、および真空から等の摩耗、および他の物理的損傷に対して、抵抗性を提供する。
【0042】
その結果、例示的アンテナは、街路、公共施設のカバー、マンホールの蓋、露出囲い地上で見なされるような多交通および損傷ゾーンにおいて使用することができ、そのようなアンテナは、経済的に有用な寿命期間の間、損傷に適切に耐えるであろう。例示的アンテナは、表面に平坦または適合的に、車両に取り付けることができ、破壊行為、交通衝撃、高速気流、温度逸脱、天気、および真空から等の摩耗および他の物理的損傷による損傷に耐えるであろう。
【0043】
すべてのアンテナ構造におけるように、例示的アンテナは、送信機および/または送受信機と好適に結合されると、一方向または双方向通信を提供することができる。故に、地上、空中、および宇宙ベースの通信を達成することができる。加えて、相互結合要因は、複数のパッチアンテナの観点から考慮することができる。例えば、適切に接続された2つ(以上)の同様に設計されたアンテナを近接して定置することは、帯域幅および効率のさらなる改良につながり得る。いくつかの事例では、遠隔に結合されるが、そうでなければ、駆動されない、受動的「パッチ」は、より大きな帯域幅にわたって、リターンロス(VSWR)を改善することが示されている。
【0044】
内部接地板とともに製作された場合、例示的アンテナは、接着剤、磁石、溶接等を介して、金属または非金属表面に取り付けることができる。例示的アンテナ内への水の取り込みは、アンテナ上に保護(被覆)を提供することによって、回避することができる。
【0045】
例示的アンテナは、適切な二次システムと構成された場合、高度測定、測距、合成開口レーダ、逆合成開口レーダ、干渉合成開口レーダ、無線撮像、磁気共鳴撮像、ならびに関連受動的および能動的レーダ用途のために、レーダシステムとして使用することができる。前述のように、小型形状因子および有利な特性によって、例示的アンテナは、衣服または皮膚上に「装着」することができ、いくつかの事例では、体内に埋め込まれる。そのような事例では、例示的アンテナは、所望に応じて、追跡のための手段として使用することができる。提供された開示に照らして、多数の他の用途が、当業者によって想定されるであろう。
【0046】
本発明の性質を説明するために、本明細書に説明および例証された、部品の詳細、材料、ステップおよび配設における多くの付加的変更が、添付の請求項に表される発明の原理および範囲内において、当業者によって行われ得ることを理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心周波数および帯域幅を有する薄型、低損失、マルチパッチアンテナであって、
接地板と、
前記接地板の上方に配置され、一端で接地されている第1の1/4波長パッチと、
前記接地板の上方に配置され、一端で接地され、前記第1の1/4波長パッチと同一平面上にある第2の1/4波長パッチであって、前記第1の1/4波長パッチの放射部分と前記第2の1/4波長パッチの放射部分とは、約1/8波長の距離において互から変位されている、第2の1/4波長パッチと、
前記パッチと前記接地板との間の誘電性媒質と、
非対称給電線と
を備え、
前記非対称給電線は、前記接地板の上方に配置され、第1の給電分岐線および第2の給電分岐線を有し、前記第1の給電分岐線は、前記第1の1/4波長パッチに給電し、前記第2の給電分岐線は、前記第2の1/4波長パッチに給電し、前記第1の給電分岐線の側方長と前記第2の給電分岐線の側方長とは、約N*波長+1/8波長だけ異なり、Nは、整数である、
アンテナ。
【請求項2】
前記アンテナは、保護用耐衝撃性誘電性コーティングによって被覆されている、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記誘電性被覆は、別の表面に対して適合的である、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記第1の1/4波長パッチの前記接地端および給電点からの距離は、前記第2の1/4波長パッチの接地端および給電点からの距離に略等しい、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項5】
前記パッチの接地端は、ビアを使用して、またはメタライゼーションを通して接地されている、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項6】
前記接地板は、長方形であり、前記パッチは、長方形である、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項7】
前記パッチの中心点から前記給電分岐線までの垂直距離は、前記分岐線のうちの1つの前記側方長に略等しい、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項8】
前記第1の1/4波長パッチは、前記第2の1/4波長パッチとは異なる中心周波数を有している、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項9】
実質的に隣接して前記アンテナの同一平面に配置されている前記アンテナの複製をさらに備え、2つ以上のマルチパッチアンテナアレイを形成している、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項10】
マンホールの蓋をさらに備え、前記アンテナは、マンホールの蓋に固着されている、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項11】
中心周波数および帯域幅を有する、薄型、低損失、マルチパッチアンテナ構造を使用して、電磁気エネルギーを放射/捕捉する方法であって、
第1の1/4波長パッチを切頭接地板の上方に製作し、前記第1の1/4波長パッチを一端で接地することと、
第2の1/4波長パッチを前記接地板の上方に製作し、前記第2の1/4波長パッチを一端で接地することであって、前記第2の1/4波長パッチは、前記第1の1/4波長パッチと同一平面上において前記第1の1/4波長パッチから約1/8波長変位されている、ことと、
非対称給電線を前記接地板の上方に製作することと
を含み、
前記非対称給電線は、第1の給電分岐線および第2の給電分岐線を有しており、前記第1の給電分岐線は、前記第1の1/4波長パッチに給電し、前記第2の給電分岐線は、前記第2の1/4波長パッチに給電し、
前記第1の給電分岐線の側方長と前記第2の給電分岐線の側方長とは、約N*波長+1/8波長だけ異なり、Nは、整数である、
方法。
【請求項12】
前記アンテナを保護用耐衝撃性誘電性コーティングで被覆することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記製作された非対称給電線は、前記第1の1/4波長パッチの接地端および給電点からの距離が、前記第2の1/4波長パッチの接地端および給電点からの距離に略等しくなるように位置付けられている、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記パッチの接地端は、ビアを使用して、またはメタライゼーションによって接地されている、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記製作された非対称給電線は、前記パッチの中心点から前記給電分岐線までの垂直距離が、前記給電分岐線のうちの1つの側方長に略等しくなるように、位置付けられている、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記製作されたパッチは、前記第1および第2の1/4波長パッチが、異なる中心周波数を有するように、異なる寸法で製作される、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記アンテナに実質的に隣接して、前記アンテナの同一平面に前記アンテナの複製を製作し、2つ以上のマルチパッチアンテナアレイを形成することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記給電線を同時に駆動することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記アンテナをマンホールの蓋に取り付けることをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
中心周波数および帯域幅を有する、薄型、低損失、マルチパッチアンテナであって、
切頭接地板の上方における、電磁気エネルギーを放射/捕捉する第1の手段と、
前記電磁気エネルギーを放射/捕捉する第1の手段を一端で接地する手段と、
前記接地板の上方における、電磁気エネルギーを放射/捕捉する第2の手段と、
前記電磁気エネルギーを放射/捕捉する第2の手段を一端で接地する手段であって、前記電磁気エネルギーを放射/捕捉する第2の手段は、前記電磁気エネルギーを放射/捕捉する第1の手段と同一平面、かつ、前記第1の手段から約1/8波長に変位されている、手段と、
前記電磁気エネルギーを放射/捕捉する第1および第2の手段に電磁気エネルギーを給電/受電する手段であって、第1の給電分岐線および第2の給電分岐線を有している手段と
を備え、
前記第1の給電分岐線は、前記電磁気エネルギーを放射/捕捉する第1の手段に給電し、前記第2の給電分岐線は、前記電磁気エネルギーを放射/捕捉する第2の手段に給電し、
前記第1の給電分岐線の側方長と前記第2の給電分岐線の側方長とは、約N*波長+1/8波長だけ異なり、Nは、整数である、
アンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−511917(P2013−511917A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540102(P2012−540102)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/057489
【国際公開番号】WO2011/063273
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(512129240)ハドロネックス, エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】