説明

麻酔薬

一実施態様において、本発明は、式(I):


の新規な化合物及びそのプロドラッグ、塩、水和物、溶媒和物そして窒素酸化物を提供する。本発明はまた、これら化合物を含む医薬組成物及び該化合物の合成方法および医療上の治療における使用方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は、米国仮出願番号、60/832,174(2006年7月19日出願);60/832,694(2006年7月20日出願)及び60/837,697(2006年8月14日出願)に基づく優先権を主張する。
【0002】
局所麻酔薬はナトリウムチャンネルに結合し、ナトリウムチャンネル依存的な刺激伝導を妨げることでナトリウム電流を阻害することにより、無感覚状態を引き起こしている。局所麻酔薬のこうした作用は、臨床上適切な濃度で可逆的であるため、神経線維や細胞が損傷することなく、神経や筋機能が完全に回復することが見込まれる。
【0003】
多くの臨床利用されている局所麻酔薬はアルキルリンカーを介して第二級または第三級アミノ基が結合しているアミドやエステルといったカルボン酸誘導体に結合した置換芳香族のグループにより構成されている。エステル型の麻酔薬は20世紀初頭にその臨床上の使用方法が見いだされ、例としては、コカイン、プロカイン、テトラカイン、ベンゾカイン、アメソカインやクロロプロカインが含まれる。アミド型の麻酔薬は第二次世界大戦前から初めて臨床的に利用され、例としては、リドカイン、プリロカイン、メピバカイン、ロピバカイン、エチドカイン、レボブピバカインやブピバカインが含まれる。最初に発見されたにも関わらず、エステル型麻酔薬の使用は大部分アミド型麻酔薬に置き換わっている。
【0004】
局所麻酔薬の該2分類間での化合物としての類似性にも関わらず、アミド型とエステル型の麻酔薬の間には臨床上重要な差異が存在する。重要な点としては、全ての局所麻酔薬は似通った毒性特性(例えば、中枢神経毒性から生じる発作、心臓毒性から生じる不整脈や死亡)を有しており、これは化合物の代謝速度が麻酔死における重要な因子であるかもしれないことを示唆している。エステル型麻酔薬は生体内において血しょうコリンエステラーゼにより急速に加水分解されるのに対し、アミド型麻酔薬は肝臓プロテアーゼによりずっと緩慢に加水分解される。急速な代謝により、たとえ大用量や連続投与をしても、エステル型は生体内で毒性レベルにまで達することはない。これに対し、アミド型麻酔薬は生体内でゆっくりと加水分解されるため、大用量や連続投与により毒性レベルにまで蓄積することが起こりうる。
【0005】
前述の安全性の問題に加え、現行使用されている局所麻酔薬の別の重要な問題点は、作用の継続時間が限られているため、時として術後痛の軽減には作用時間が短すぎる点や作用の始まりがゆっくりであるため、術後環境においての使用が制限される点である。更に、多くの現行使用されている麻酔薬は患者への投与時に痛みや不快感を引き起こしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、前述の観点から見ると、局所麻酔薬において求められているのは、作用開始が早く、作用がより長く持続し、かつ/または副作用が最小であることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、新規なエステル型局所麻酔薬を提供することにより、これら及びその他の要求を満たしている。また、新規なエステル型局所麻酔薬の合成方法、新規なエステル型局所麻酔薬の医薬に関する組成物、及び麻酔及び/または痛覚脱出を誘導及び/または維持するための新規なエステル型局所麻酔薬の使用方法とその医薬組成物もここに開示する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一つの実施態様として、本発明は構造式(I):

であらわされる本発明の化合物またはそのプロドラッグ、塩、水和物、溶媒和物または窒素酸化物を提供するものであり、式(I)において:
各Rはそれぞれ独立に水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、−R、−OR,−SR,−NRまたは−C(O)NRであり、少なくとも1つのRはR、−OR,−SR、−NRまたは−C(O)NRRであり;
pは1から3までの整数であり;
Xは−O−または−S−であり;
及びRはそれぞれ独立に、水素又は任意に一つまたは複数の同一または異なるR基で置換されていてもよい(C1−C6)アルキル基であり、又はRかRのいずれか一つとRかRのいずれか一つが任意に原子を介して結合することで、シクロヘテロアルキル環を形成し、又はRはアミノ酸の側鎖でありRは水素であり;
nは1,2,3又は4であり;
とRはそれぞれ独立に水素、任意に一つまたは複数の同一または異なるR基で置換されていてもよい(C1−C6)アルキル基であり、又はRとRが任意にそれらが結合している窒素原子とともに、一つの又は複数の(C1−C6)アルキル基で任意に置換されていてもよいシクロヘテロアルキル環を形成し;
とRはそれぞれ独立に水素、一つ又は複数の同一又は異なるR基で任意に置換されていてもよいアルキル基、一つ又は複数の同一又は異なるR基で任意に置換されていてもよいシクロアルキル基、一つ又は複数の同一又は異なるR基で任意に置換されていてもよいシクロヘテロアルキル基、一つ又は複数の同一又は異なるR基で任意に置換されていてもよいアリル基又は一つ又は複数の同一又は異なるR基で任意に置換されていてもよいヘテロアリル基であり、又はRとRが任意に、、それらが結合した窒素原子とともにシクロヘテロアルキル環を形成し、
はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、−R、−OR、−SR、−NR、−CF、−CN、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)SR、−C(O)NR又は一つ又は複数のフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、−R、−OR、−SR、−NR、−CF、−CN、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)SR又は−C(O)NRで任意に置換されていてもよいアリル基である。
【0009】
一つの実施態様として、式Iの化合物は以下の構造を含まない。

【0010】
別の実施態様として、本発明は麻酔及び/又は痛覚脱出を誘導及び/又は維持する方法を提供し、該方法には処置や予防の必要な患者への式(I)の化合物又はこのプロドラッグ、塩、水和物、溶媒和物又は窒素酸化物の治療上有効な用量の投与方法も含まれる。
別の実施態様として、本発明は式(I)の化合物又はこのプロドラッグ、塩、水和物、溶媒和物そして窒素酸化物及び製薬上容認しうる媒体を含む医薬組成物を提供する。
【0011】
別の実施態様として、本発明は式(I)の化合物又はこのプロドラッグ、塩、水和物、溶媒和物又は窒素酸化物の患者への投与方法を含む患者における局所麻酔の誘導又は維持の方法を提供する。
別の実施態様として、本発明は痛みに対する処置又は予防の必要のある患者への式(I)の化合物又はこのプロドラッグ、塩、水和物、溶媒和物又は窒素酸化物の投与方法を含む患者への痛みに対する処置又は予防の方法を提供する。
【0012】
別の実施態様として、本発明は薬物療法での利用における式(I)の化合物又はこのプロドラッグ、塩、水和物、溶媒和物又は窒素酸化物を提供する。
別の実施態様として、本発明は、ヒトのようなほ乳類において局所麻酔を誘導又は維持する薬物を調剤するために式(I)の化合物又はこのプロドラッグ、塩、水和物、溶媒和物又は窒素酸化物を使用することを提供する。
【0013】
別の実施態様として、本発明は、ヒト等のほ乳類において痛みを処置又は予防する薬物を調剤するために式(I)の化合物又はこのプロドラッグ、塩、水和物、溶媒和物又は窒素酸化物を使用することを提供する。
本発明はまた、式(I)の化合物又はこのプロドラッグ、塩、水和物、溶媒和物又は窒素酸化物を調製するのに有用である、ここに開示された新規なプロセスや合成中間体を提供する。式(I)の化合物のいくつかは、式(I)のその他の化合物を調製する為の中間体として有用である可能性がある。
【0014】
詳細な説明
定義
「アルキル基」とはそれ自体が本体である場合にしろ、別の置換基の一部である場合にしろ、飽和した又は不飽和の、分枝、直鎖、又は環状構造の一価の炭化水素遊離基のことであり、これらは親アルカン、アルケン又はアルキンの1つの炭素原子から1つの水素原子が解離することによって派生する。典型的なアルキル基は以下のものを含むが、これらに限定されない:メチル;エタニル、エテニル、エチニルといったエチル;プロパン−1−イル、プロパン−2−イル、シクロプロパン−1−イル、プロプ−1−エン−1−イル、プロプ−1−エン−2−イル、プロプ−2−エン−1−イル(アリル)、シクロプロプ−1−エン−1−イル、シクロプロプ−2−エン−1−イル、プロプ−1−イン−1−イル、プロプ−2−イン−1−イル等といったプロピル類;ブタン−1−イル、ブタン−2−イル、2−メチル−プロパン−1−イル、2−メチル−プロパン−2−イル、シクロブタン−1−イル、ブト−1−エン−1−イル、ブト−1−エン−2−イル、2−メチル−プロプ−1−エン−1−イル、ブト−2−エン−1−イル、ブト−2−エン−2−イル、ブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1,3−ジエン−2−イル、シクロブト−1−エン−1−イル、シクロブト−1−エン−3−イル、シクロブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブト−1−イン−1−イル、ブト−1−イン−3−イル、ブト−3−イン−1−イルといったブチル類;およびこれらの類似体。
【0015】
「アルキル基」という言葉には特にいかなる程度又はレベルの飽和度をも有する官能基を含むことが意図されている。すなわち、もっぱら一重の炭素−炭素結合のみを有する官能基、一つ又は複数の二重の炭素−炭素結合を有する官能基、一つ又は複数の三重の炭素−炭素結合を有する官能基又は一重、二重そして三重の炭素−炭素結合を織り交ぜて有している官能基を含んでいる。特定の飽和度レベルが意図されている場合は、「アルカニル基」、「アルケニル基」及び「アルキニル基」といった表現が使われる。いくつかの実施態様においては、アルキル基は1から20の炭素原子よりなる。他の実施態様においては、アルキル基は1から10の炭素原子よりなる。さらに他の実施態様においては、アルキル基は1から6の炭素原子よりなる。
【0016】
「アルカニル基」とはそれ自体が本体である場合にしろ、別の置換基の一部の場合にしろ、飽和した、分枝、直鎖、又は環状構造のアルキル遊離基のことであり、これらは親アルカンの1つの炭素原子から1つの水素原子が解離することによって派生する。典型的なアルカニル基は以下のものを含むが、これらに限定されない:メチアニル;エチアニル;プロパン−1−イル、プロパン−2−イル(イソプロピル)、シクロプロパン−1−イルといったプロパニル;ブタン−1−イル、ブタン−2−イル(sec−ブチル)、2−メチル−プロパン−1−イル(イソブチル)、2−メチル−プロパン−2−イル(t−ブチル)、シクロブタン−1−イルといったブタニル等;及びこれらの類似体。
【0017】
「アルケニル基」とはそれ自体が本体である場合にしろ、別の置換基の一部の場合にしろ、不飽和の、分枝、直鎖、又は環状構造のアルキル遊離基のことであり、これらは親アルケンの1つの炭素原子から1つの水素原子が解離することによって派生した少なくとも1つの炭素−炭素間二重結合を有している。該官能基は該二重結合においてシス又はトランスの立体構造のいずれかをとりうる。典型的なアルケニル基は以下のものを含むが、これらに限定されない:エタニル;プロプ−1−エン−1−イル、プロプ−1−エン−2−イル、プロプ−2−エン−1−イル(アリル)、プロプ−2−エン−2−イル、シクロプロプ−1−エン−1−イル、シクロプロプ−2−エン−1−イルといったプロペニル;ブト−1−エン−1−イル、ブト−1−エン−2−イル、2−メチル−プロプ−1−エン−1−イル、ブト−2−エン−1−イル、ブト−2−エン−2−イル、ブタ−1,3−ジエン−1−イル、といったブテニル;ブタ−1,3−ジエン−2−イル、シクロブト−1−エン−1−イル、シクロブト−1−エン−3−イル、シクロブタ−1,3−ジエン−1−イルといったブテニル等;及びこれらの類縁体。
【0018】
「アルキニル基」とは、それ自体が本体である場合にしろ、別の置換基の一部の場合にしろ、不飽和の、分枝、直鎖、又は環状構造のアルキル遊離基のことであり、これらは親アルキンの1つの炭素原子から1つの水素原子が解離することによって派生した少なくとも1つの炭素−炭素間三重結合を有している。典型的なアルキニル基は以下のものを含むが、これらに限定されない:エチニル;プロプ−1−イン−1−イル、プロプ−2−イン−1−イル等といったプロピニル;ブト−1−イン−1−イル、ブト−1−イン−3−イル、ブト−3−イン−1−イルといったブチニル等;及びこれらの類縁体。
「アルコキシ基」とはそれ自体が本体である場合にしろ、別の置換基の一部の場合にしろ、−OR31遊離基のことであり、−OR31遊離基とは、ここで定義されたアルキル基又はシクロアルキル基をいう。典型的な例としては以下のものを含むが、これらに限定されない:メチオキシ、エチオキシ、プロポキシ、ブトキシ、シクロヘキシロキシ及びこれらの類縁体。
【0019】
「アミノ酸」とはD又はL体の天然アミノ酸(例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、ヒドロキシリジン、ヒドロキシプロリン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン及びバリン)及び非天然アミノ酸(例えばホスホセリン、ホスホスレオニン、ホスホチロシン、ヒドロキシプロリン、ガンマ−カルボキシグルタミン酸、馬尿酸、オクタヒドロインドール−2−カルボン酸、スタチン、1,2,3,4,−テトラヒドロイソキノリン−2−カルボン酸、ペニシラミン、オルニチン、シトルリン、α−メチル−アラニン、パラ−ベンゾイルフェニルアラニン、フェニルグリシン、プロパルギルグリシン、サルコシン及びtert−ブチルグリシン)のことである。
【0020】
ここで使用される「化合物」とは構造式(I)により包含され、ここで開示された化合物のことであり、ここで開示された構造式の範囲内にあるいかなる特異的な化合物をも含む。化合物は化学構造及び/又は化学名によって同定することが出来る。ここで記載されている化合物は一つ又は複数のキラル中心かつ/又は二重結合を有するため、二重結合異性体(即ち、幾何異性体)、鏡像異性体又はジアステレオマーといった立体異性体として存在する可能性がある。従って、化合物の、立体異性的に純粋な物質(例えば、幾何異性的に純粋な、鏡像異性的に純粋な、又はジアステレオマーとして純粋な)及び鏡像異性体及び立体異性体の混合物といった全ての生じうる鏡像異性体や立体異性体はここでの該化合物の記載に含まれている。鏡像異性体および立体異性体の混合物は熟練した技術者には周知の分離技術またはキラル合成技術を用いることにより、それぞれの成分鏡像又は立体異性体に分離することができる。該化合物にはまた、エノール体、ケト体及びこれらの混合体といった数種類の互変体も含まれうる。従って、ここで描かれている化学構造は図示された化合物の互変体の可能性のあるすべてのものを包含する。
【0021】
ここで使用される「アリル基」とはフェニル遊離基又はオルソ位で融合した二炭素環状遊離基のことであり、これらはおよそ9から10の環原子より構成され、その中の少なくとも1つの環は芳香族環である。アリル基の例としては、フェニル、インデニルやナフチルが挙げられる。
ここで使用される「ヘテロアリル基」とは単芳香族環の遊離基で、5ないし6の環炭素原子と、過酸化物でない酸素、硫黄そしてN(X)(ここでXは何も無いか、水素、酸素、(C1−C4)アルキル、フェニルまたはベンジル)からなるグループから選択される1から4のヘテロ原子を含んだもの、および、およそ8から10の環原子からなるオルソ位で融合した二ヘテロ環状遊離基で特にベンゼン誘導体由来のものや、プロピレン、トリメチレンまたはテトラメチレンジラジカルを融合することによって生じるもののことである。ヘテロアリル基の例としては、フリル、イミダゾリル、トリアゾリル、トリアジニル、オクサゾイル、イソキサゾイル、チアゾリル、イソチアゾイル、ピラゾリル、ピロリル、ピラジニル、テトラゾリル、ピリジル(またはそのN−オキシド)及びキノリル(またはそのN−オキシド)が挙げられる。
【0022】
ここで使用される「シクロアルキル基」は環状の「アルキル」基のことである。
記載された該化合物はまた、一つまたは複数の原子が通常天然に見出される原子量と異なる原子量を有する原子である、いわゆる同位元素により標識された化合物をも含む。ここで開示された該化合物に組み込まれうる放射性同位体の例としては、H、H、11C、13C、14C、15N、18O、17O等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
化合物には水和物を含む溶媒和した形態のものも、溶媒和されていない形態のものも存在しうる。ある種の化合物では複数の結晶構造またはアモルファス構造のものも存在しうる。一般に、すべての物理的構造は本開示の適用範囲内にある。
【0023】
「シクロヘテロアルキル基」とは、それ自体が本体である場合にしろ、別の置換基の一部の場合にしろ、飽和した又は不飽和の環状構造のアルキル遊離基のことであり、これらは1つまたは複数の炭素原子(およびこれに結合する水素原子)がそれぞれ独立に同一の、または異なるヘテロ原子によって置換されている。該炭素原子を置換する典型的なヘテロ原子としては、窒素、リン、酸素、硫黄、ケイ素等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。特定の飽和度レベルが意図されている場合は、「シクロヘテロアルカニル」や「シクロヘテロアルケニル」といった名称が使用される。典型的なシクロヘテロアルキル基としては、エポキシド、アジリン、シラン、イミダゾリジン、モルフォリン、ピペラジン、ピペリジン、ピラゾリジン、ピロリジン、キヌクリジンおよびこれらの類縁体から派生する基が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0024】
「医薬組成物」とは、少なくとも一つの化合物及び一つの製薬上許容される媒体を意味する。
「製薬上許容される塩」とは、化合物の塩のことであり、この塩は親化合物の望まれる薬理活性を有している。このような塩としては、以下のものが含まれる:(1)酸添加塩、これには塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸およびこれらの類縁体といった無機酸によって形成されるもの、または、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクト−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプタン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert−ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸およびこれらの類縁体といった有機酸によって形成されるものより構成される;または(2)親化合物に存在する酸性水素原子が、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたはアルミニウムイオンといった金属イオン、または、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルグルカミンやその類縁体といった有機塩基との組み合わせによって置換されることによって形成される塩。
【0025】
「製薬上許容される媒体」とは、化合物を投与する上での希釈剤、アジュバンド、賦形剤または担体のことである。
「患者」とはヒト等の哺乳類を含み、「ヒト」と「患者」いう言葉はここでは互換的に使われる。
【0026】
「保護基」とは分子中の反応性の高い機能基に結合することにより、該機能基の反応性をマスクし、減弱し、または阻害する原子の群をいう。保護基の例としては、Greenらの“Protective Groups in Organic Chemistry”(Wiley,第2版、1991)とHarrisonらの“Compendium of Symthetic Organic Methods”1−8巻(John Wiley and Sons,1971−1996)にある。代表的なアミノ保護基としては、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジロキシカルボニル(“CBZ”)、tert−ブトキシカルボニル(“Boc”),トリメチルシリル(TMS”)、2−トリメチルシリル−エタンスルホニル(“SES”)、トリチルおよび置換トリチル基、アリルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(“FMOC”),ニトロ−ベラトリルオキシカルボニル(“NVOC”)およびこれらの類縁体が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。代表的なヒドロキシ保護基には、ヒドロキシ基がアシル化しているか、ベンゾイルのようにアルキル化しているものや、トリチルエーテルおよびアルキルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、トリアルキルシリルエーテルやアリルエーテルが挙げられる。
【0027】
「治療有効用量」とは患者に対し麻酔を誘導かつ/または維持し、または痛覚脱出を提供するべく投与した時に、麻酔や/または痛覚脱出の誘導や維持に効果を発揮するのに十分な化合物の量を意味する。該「治療有効用量」は化合物や疾患およびその程度、治療を受ける患者の年齢や体重等により変わりうる。
【0028】
さまざまな実施態様を詳細に説明する。本発明はこれらの実施態様に限定されないことは理解されるであろう。逆に言うと、本発明には、開示された請求項の精神や範囲内に含まれている代替物、修飾物および等価の物をもカバーすることが意図されている。
【0029】
一つの実施態様として、構造式(I)の化合物またはそのプロドラッグ、塩、水和物、溶媒和物または窒素酸化物が提供される。

式(I)の中において:
各Rはそれぞれ独立に水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、−R、−OR,−SR,−NRまたは−C(O)NRであり、少なくとも1つのRはR、−OR,−SR、−NRまたは−C(O)NRRであり;
pは1から3までの整数であり;
Xは−O−または−S−であり;
及びRはそれぞれ独立に、水素又は任意に一つまたは複数の同一または異なるR基と置換されていてもよい(C1−C6)アルキル基であり、又はRかRのいずれか一つとRかRのいずれか一つが任意にそれらが結合している窒素原子とともにシクロヘテロアルキル環を形成し;
nは0から4までの整数であり;
とRはそれぞれ独立に、任意に一つまたは複数の同一または異なるR基と置換されていてもよい(C1−C6)アルキル基であり、又はRとRが任意にそれらが結合している窒素原子とともにシクロヘテロアルキル環を形成し;
とRはそれぞれ独立に水素、一つ又は複数の同一又は異なるR基で任意に置換されていてもよいアルキル基、一つ又は複数の同一又は異なるR基で任意に置換されていてもよいシクロアルキル基、一つ又は複数の同一又は異なるR基で任意に置換されていてもよいシクロヘテロアルキル基、一つ又は複数の同一又は異なるR基で任意に置換されていてもよいアリル基又は一つ又は複数の同一又は異なるR基で任意に置換されたヘテロアリル基であり;
はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、−R、−OR、−SR、−NR、−CF、−CN、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)SR、−C(O)NRである。
【0030】
いくつかの実施態様において、RとRは一つのシクロヘテロアルキル環のみを形成する。他の実施態様においては、Rは水素、塩素、−R、−ORまたは−NRであり、RとRは水素または(C1−C6)アルキルであり、RとRは(C1−C6)アルキルである。さらに他の実施態様において、Rは水素、塩素、−R、−ORまたは−NRである。さらに他の実施態様において、RとRは水素または(C1−C6)アルキルである。さらに他の実施態様において、RとRは(C1−C6)アルキルである。さらに他の実施態様において、Rはフッ素、塩素、−R、−OR、−SR、−NR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NRである。
【0031】
いくつかの実施態様において、pは2であり、Rは塩素および−NHであり、Xは酸素であり、nは2であり、RとRは水素であり、そして、RとRがそれらが結合している窒素原子とともにシクロヘテロアルキル環を形成する。他の実施態様においては、以下に示す構造を有する化合物を提供する:

【0032】
いくつかの実施態様において、pは2であり、Rは塩素および−NHであり、Xは酸素であり、nは2であり、各Rは水素であり、Rは水素であり、そして、RとRが原子を介して結合することで、シクロヘテロアルキル環を形成し、Rは水素か(C1−C6)アルキルである。他の実施態様においては、以下に示す構造を有する化合物を提供する:

【0033】
他の実施態様においては、以下に示す構造を有する化合物を提供する:

【0034】
さらに他の実施態様においては、以下に示す構造を有する化合物を提供する:

【0035】
いくつかの実施態様において、pは2であり、Rは塩素および−NHであり、Xは酸素であり、nは3であり、Rは水素であり、Rは水素であり、RとRが原子を介して結合することで、シクロヘテロアルキル環を形成し、Rは水素か(C1−C6)アルキルである。さらに他の実施態様においては、以下に示す構造を有する化合物を提供する:

【0036】
いくつかの実施態様において、pは2であり、Rは塩素および−NHであり、Xは酸素であり、nは4であり、Rは水素であり、Rは水素であり、一つのRとRが原子を介して結合することで、シクロヘテロアルキル環を形成し、Rは水素か(C1−C6)アルキルである。他の実施態様においては、以下に示す構造を有する化合物を提供する:

【0037】
いくつかの実施態様において、pは2であり、RはORおよび−NHであり、Xは酸素であり、nは2であり、RおよびRは水素であり、Rは(C1−C6)アルキルである。他の実施態様においては、以下に示す構造を有する化合物を提供する:

【0038】
いくつかの実施態様において、pは3であり、各Rは(C1−C6)アルキルであり、Xは酸素であり、nは2であり、RとRは水素であり、Rは(C1−C6)アルキルである。他の実施態様においては、以下に示す構造を有する化合物を提供する:

【0039】
いくつかの実施態様において、Rは(C1−C6)アルキル、ORまたは−NHであり、Xは硫黄であり、nは2であり、RとRは水素であり、Rは(C1−C6)アルキルである。他の実施態様においては、以下に示す構造を有する化合物を提供する:

【0040】
いくつかの実施態様において、Rは(C1−C6)アルキル、ORまたは−NHであり、Xは酸素であり、nは3であり、RとRは水素であり、Rは(C1−C6)アルキルである。他の実施態様においては、以下に示す構造を有する化合物を提供する:

【0041】
いくつかの実施態様において、Rは(C1−C6)アルキル、ORまたは−NHであり、Xは酸素であり、nは2であり、Rは水素であり、Rは水素または(C1−C6)アルキルであり、RおよびRは(C1−C6)アルキルである。他の実施態様においては、以下に示す構造を有する化合物を提供する:

【0042】
いくつかの実施態様において、Rは(C1−C6)アルキル、ORまたは−NHであり、Xは酸素であり、nは2であり、R及びRは水素である。他の実施態様においては、以下に示す構造を有する化合物を提供する:

【0043】
いくつかの実施態様において、Rは(C1−C6)アルキル、ORまたは−NHであり、Xは酸素であり、nは2であり、Rは水素であり、Rは水素または(C1−C6)アルキルであり、RおよびRは(C1−C6)アルキルである。他の実施態様においては、以下に示す構造を有する化合物を提供する:

【0044】
別の実施態様として、本発明は構造式IIの化合物またはそのプロドラッグ、塩、水和物、溶媒和物または窒素酸化物を提供するものである。

式(II)の中において:
Zは以下の式の基であり:

各Rはそれぞれ独立に水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、−R、−OR,−SR,−NRまたは−C(O)NRであり;
pは1から3までの整数であり;
Xは−O−または−S−であり;
はアミノ酸の側鎖であり;
及びRはそれぞれ独立に、任意に一つまたは複数の同一または異なるR基と置換されていてもよい(C1−C6)アルキル基であり、又はRとRがそれらが結合している窒素原子とともにシクロヘテロアルキル環を形成し;
及びRはそれぞれ独立に、水素、または任意に一つまたは複数の同一または異なるR基で置換されていてもよいアルキル基、または任意に一つまたは複数の同一または異なるR基で置換されていてもよいシクロアルキル基、または任意に一つまたは複数の同一または異なるR基で置換されていてもよいシクロヘテロアルキル基、または任意に一つまたは複数の同一または異なるR基と置換されていてもよいアリル基、または任意に一つまたは複数の同一または異なるR基と置換されていてもよいヘテロアリル基であり;そして
はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、−R、−OR、−SR、−NR、−CF、−CN、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)SR、−C(O)NR又は一つ又は複数のフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、−R、−OR、−SR、−NR、−CF、−CN、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)SR又は−C(O)NRで任意に置換されたアリル基である。
【0045】
別の実施態様として、本発明は構造式IIaの化合物またはそのプロドラッグ、塩、水和物、溶媒和物そして窒素酸化物を提供するものである。

式(IIa)の中において*で標識された中心は表示した絶対配置を有する。
【0046】
別の実施態様として、本発明は構造式IIbの化合物またはそのプロドラッグ、塩、水和物、溶媒和物または窒素酸化物を提供するものである。

式(IIb)の中において*で標識された中心は表示した絶対配置を有する。
【0047】
本発明の別の実施態様において、Zは:

である。
本発明の別の実施態様において、Zは:

である。
本発明の別の実施態様において、Zは:

である。
【0048】
本発明の別の実施態様において、Rは−ORであり;そしてRは任意に一つまたは複数の同一または異なるR基で置換されていてもよいアルキルである。
本発明の別の実施態様において、Rは−ORであり;そしてRは(C1−C6)アルキルである。
本発明の別の実施態様において、Rはエトキシ、プロポキシまたはブトキシである。
本発明の別の実施態様において、Rは天然アミノ酸の側鎖である。
【0049】
本発明の別の実施態様において、R2はメチル、3−グアニジノプロピル、アミノカルボニルメチル、カルボキシメチル、メルカプトメチル、2−カルボキシ−2−アミノエチルジチオメチル、2−カルボキシエチル、2−(アミノカルボニル)エチル、イミダゾリルメチル、4−アミノ−3−ヒドロキシブチル、4−アミノブチル、2−(メチルチオ)エチル、ヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、インドリルメチル、4−ヒドロキシベンジル、イソプロピル、2−メチルプロピル、1−メチルプロピルまたはベンジルである。
本発明の別の実施態様において、R2はメチル、イソプロピル、2−メチルプロピル、1−メチルプロピルまたはベンジルである。
本発明の別の実施態様において、式IIaまたはIIbの化合物中で*で標識した中心はR絶対配置を有する。
本発明の別の実施態様において、式IIaまたはIIbの化合物中で*で標識した中心はS絶対配置を有する。
【0050】
本発明の別の実施態様において、RおよびRはそれぞれ独立にメチルまたはエチルである。
本発明の別の実施態様において、Rは水素である。
本発明の別の実施態様において、RおよびRはそれぞれ水素である。
本発明の別の実施態様において、RとRが、それらが結合している窒素原子とともにピペラジノ環を形成する。
本発明の別の実施態様において、Xは酸素である。
本発明の別の実施態様において、nは2、3または4である。
本発明の別の実施態様において、Rは(C3−C6)アルキルである。
本発明の別の実施態様において、Rはプロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、secブチル、ペンチル、イソペンチル、secペンチルまたはヘキシルである。
【0051】
本発明の別の実施態様において、式Iの化合物はいかのものである。

【0052】
本発明の別の実施態様において、式Iの化合物は以下のものである。

【0053】
本発明の別の実施態様において、式Iの化合物は岡のものである。






【0054】
経皮投与
薬剤の経皮的投与は選択的な投与経路を考える上で、様々な臨床上の重大な利益を提供する実証された技術となっている。経皮的薬剤投与は持続的かつ制御可能な患者への薬剤放出を提供するため、安定した血中レベルを長時間にわたり維持することができる。これは時として、全身性の副作用を軽減し、他の投与形態を上回る改善された効き目を実現することがある。
【0055】
皮膚内または皮膚を介した薬物輸送の効率は、皮膚の状態やタイプ、浸透物(薬剤)の物理化学的特徴、その剤形に存在するその他の化合物(例えば、浸透促進剤)そして外界の条件(例えば温度)といったいくつかの因子に依存する。おそらく最も大きく影響する因子は薬剤分子の物理化学的特徴であろう。皮膚内または皮膚を介して効率よく輸送される分子の物理化学的特徴に対する現行の理解に基づき、式I、式Iaおよび式Ibの化合物の多くが経皮浸透のために有利な物理化学的特徴を有していると結論付けられる。該特徴はLogP(オクトノール:水間の分配係数)、遊離塩基状態での水に対する溶解度および分子量/モル体積といったパラメーターを含んでいる。従って、一つの実施態様として、本発明は経皮浸透のために有利な物理化学的特徴を有している式Iの化合物を提供する。
【0056】
合成方法
ここに記載されている化合物は、典型的には、スキーム1に図示されている経路を介して合成されうる。該化合物はまた、当業者に知られている他の方法によっても調製されうる(例として、Green等、“Protective Groups in Organic Chemistry”(Wiley,第2版 1991);Harrison等“Compendium of Symthetic Organic Methods”1巻−8(John Wiley and Sons,1971−1996);“Beilstein Handbook of Organic Chemistry”Beilstein Institute of Organic Chemistry,フランクフルト、ドイツ;Feiser等、“Reagents for Organic Synthesis”1−17巻、(Wiley Interscience);Trost等、“Comprehensive Organic Synthesis”(Pergamon Press,1991);“Theilheimer‘s Synthetic Methods of Organic Chemistry”1−45巻、(Karger、1991);March、“Advanced Organic Chemistry”(VCH Publishers,1989);Paquette,“Encyclopedia of Reagent for Organic Synthesis”(John Wiley & Sons,1995),Bodanzsky,“Principles of Peptide Synthesis”(Springer Verlag,1984);Bodanzsky,“Practice of Peptide Synthesis”(Springer Verlag,1984)を参照のこと)。さらに、出発原料は市販材料から、または上述の十分に確立した合成方法を介して調達しうる。

スキーム1
【0057】
スキーム1(この中での各R10はそれぞれ独立に水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、−R、−OR、−SRに図示されているように、−SR、−NOまたは−C(O)NRであり、X,R、R,R、R及びnは以前に定義されているが、)に図示されているように、酸塩化物1はアミノアルコールまたはアミノチオール2とともに濃縮され、化合物3となる。化合物3は、必要な場合は、水素添加してアリルアミンになりうる。当業者は、もし式(I)の化合物を、その芳香環上でアミノ基により置換するには、還元反応のみが必要であることを理解するであろう。さらに、習熟した技術者には周知のことであるが、カルボン酸は、学術的に知られている従来の方法を利用することで、アミノアルコールまたはアミノチオール2とともに濃縮しうる。該アミノアルコールおよび/またはアミノチオール2は市販品として入手することも、当業者に周知の従来の化学技術を用いて、市販の出発原料から合成することも可能である。同様に、塩化ベンゾイルも、従来方法を用いて、市販されている前駆体より入手することが可能である。
【0058】
上記スキームの各段階における適切な保護基、試薬および反応条件の選択は当業者の活動領域内にある。ここに記述されている化合物の合成のためのその他の方法は、熟達した技術者には容易く明らかになるであろうし、ここに記述されている化合物を提供するのに利用されうるであろう。従って、このスキームに提示している方法は、包括的なものというよりは例証となっている。
【0059】
治療上の使用方法
一般に、ここで開示した化合物またはその医薬組成物は局部麻酔や痛覚脱出を誘導かつ/または維持するのに使用されうる。そして、該化合物は、特に疼痛の予防かつ/または治療のために有益である。局部麻酔薬として、ここで開示した化合物またはその医薬組成物は局所麻酔に有効である。例えば、表面麻酔、浸潤麻酔、周手術組織麻酔、周囲浸潤麻酔、末梢神経ブロック麻酔、硬膜外麻酔、脊髄麻酔、経静脈局所麻酔(止血帯によって孤立させた末端部への局部麻酔注射)及びこれらの組み合わせが挙げられる。ここで開示した化合物またはその医薬組成物はまた、静脈穿刺、腰椎穿刺、鼓膜切開術、動脈挿管、神経因性疼痛、外傷および組織虚血に関連する痛みを軽減または予防するのに使用されうる。ここで開示した化合物またはその医薬組成物はパッチまたは他のリザーバシステム、包帯またはガーゼ、クリーム、軟膏または他の経皮輸送システムを経由して、例えば皮膚病、痔疾や火傷と関係する痛みを治療かつ/または予防するために、局所的に施すことができる。
【0060】
医薬組成物
ここで開示された医薬組成物は、対象への適切な投与のための形態を規定できるように、ここで開示された局部麻酔薬と適当量の製薬上許容される媒体から形成される。
製薬上許容される媒体とは、デンプン、ブドウ糖、乳糖、ショ糖、ゼラチン、モルト、米、小麦粉、胡粉、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、食塩、セルロース、ヒドロキシセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、微結晶性セルロース、アカシアゴム、乾燥スキムミルク、グリセロール、水、エタノール、ソルビタンポリオキシエチレン誘導体及びその類縁体といった賦形剤を含む。これらの医薬組成物には、もし要望するのであれば、少量の湿潤剤または乳化剤、またはpH緩衝剤を含ませることも可能である。これに加えて、助剤、安定化剤、分解防止剤、増粘剤、潤滑剤および着色剤も使用しうる。
【0061】
医薬組成物は、すでに存在する、混合、溶解、造粒、糖衣化、糊状化、乳化、被包化、包括化または凍結乾燥処理によって製造することができる。医薬組成物は、すでに存在する、一つまたは複数の生理的に容認しうる担体、希釈剤、賦活剤または助剤を用いた方法により、ここで開示された組成物や化合物の製剤への加工を容易にすることで、処方することができる。適切な処方か否かは、選択される投与経路に依存する。
ここに記載する医薬組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、粉末、持続放出処方、エアゾル、スプレイまたは熟達した技術者に知られている使用に適した形状をとりうる。その他の調剤上の適当な媒体の例については、文献に記載されている(Remington‘s Pharmaceutical Science,Philadelphia College of Pharmacy and Science,第19版、1995参照のこと)。
【0062】
さらに他の実施態様においては、ここで開示された化合物がポリマー基質上に覆われている剤形をとる。該ポリマーは腐食性のもの、または非腐食性のもののいずれでもありうる。覆われている基質は折りたたまれることで、2層ポリマー構造の剤形をとりうる。例としては、ここで開示された化合物はポリペプチド、コラーゲン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリオルソエステル、ポリアセチルまたはポリオルソカーボネートといったポリマー上に覆われており、覆われたポリマーは折りたたまれて2層ラミネート構造の剤形を提供する。施行中、生体により腐食されうる剤形を徐々に腐食することにより、持続的な放出期間中、該化合物を施すことができる。代表的な生体分解性のポリマーは生体分解性のポリ(アミド)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(エステル)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(炭水化物)、ポリ(オルソエステル)、ポリ(オルソカーボネート)、ポリ(アセチル)、ポリ(無水物)、生体分解性のポリ(ジヒドロピラン)及びポリ(ダイオキシノン)から構成されるグループより選択されたものを含み、ここで挙げた生体分解性ポリマーは文献に記載されている(Rosoff,Controlled Release of Drugs,2章、53−95ページ(1989);Heller等、米国特許番号3,811,444;Michaels,米国特許番号3,962,414;Capozza,米国特許番号4,066,747;Schmitt、米国特許番号4,070347;Choi等、米国特許番号4,079038;Choi等、米国特許番号4,093,709)。
【0063】
他の実施態様において、該剤形はここで開示した化合物をポリマーに含浸させた形で構成され、該ポリマーより薬剤がポリマーを通った拡散か、小孔を介した溶出や、ポリマーマトリクスの破裂により放出されていく。こうした薬剤輸送のポリマー剤形は濃度10mgから2500mgの均一な濃度がポリマー内または上に存在することで構成される。該剤形は、薬剤輸送の開始時には、少なくとも一つの露出表面を有している。非露出表面がもし存在する場合は、この面は薬剤に対し不浸透性の製剤上容認しうる物質にて覆われている。該剤形は文献上知られている手段により生産されうる。剤形提供の例としては、ポリエチレングリコールのような製薬上容認し得る担体と、既知量のここで開示されている構成および/または化合物を、温度上昇下にて(例えば37度)混合し、また、これを架橋剤、例えばオクタン酸、とともに医薬グレードのシラスティックエラストマーに加え、その後、型にはめることより構成される。各段階は連続層の各層を形成するために、随時繰り返される。該システムは剤形提供のために、およそ1時間実施することができる。該剤形を製造するための代表的なポリマーは、オレフィンやビニルポリマー、付加重合体、縮合重合体、糖質ポリマー、そしてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニル酢酸、ポリメチルアクリレート、ポリイソブチルメタクリレート、ポリアルギナート、ポリアミドおよびポリシリコンに代表されるシリコンポリマーより形成されるグループから選択されるものを含む。該ポリマーおよびこれを製造する過程は文献に記載されている(Coleman等、Polymers 1990,31,1187−1231;Roerdink等、Drug Carrier Systems 1989,9,57−10;Leong等、Adv. Drug Delivery Rev.1987,1,199−233;Roff等、Handbook ofCommon Polymers 1971,CRC Press;Chien等、米国特許番号3,992,518)。
【0064】
局所投与のために、ここで開示した化合物は乳剤、溶液、ゲル、軟膏、クリーム、懸濁液、ゼリー等として処方することができ、これらは文献にて公知である。
全身用の処方としては、皮下、静脈内、筋肉内、クモ膜下、浸潤または腹腔内注射といった注射による投与用にデザインされたものや経皮、経粘膜、経口または経肺投与用にデザインされたものが含まれる。全身用の処方には、鼻汁除去による粘膜毛様体クリアランスを改善したり、粘液の粘性を軽減する別の活性化因子と組み合わせたものも含まれる。該活性化因子には、ナトリウムチャンネル阻害剤、抗生物質、N−アセチルシステイン、ホモシステインやリン脂質が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0065】
注射用に、ここで開示される化合物は、例えばHank‘s液、Ringer’液、生理食塩緩衝液または乳液形態のもの(油中水型または水中油型乳液といった)に代表される生理的に容認し得る緩衝液といった水溶液で処方することができる。本発明の一つの実施態様として、化合物は、有機酸緩衝液システム(例えば、クエン酸、コハク酸または酢酸といった(C1−C6)有機酸)を用いた注射剤として処方される。また、該溶液には懸濁化剤、安定化剤かつ/または分散剤といった処方試薬も含まれうる。別の方法として、ここで開示される化合物は、使用前に、滅菌済みピロゲン除去水といった適当な溶媒にて再構成するために、粉末体とすることもできる。
【0066】
血管収縮剤(例えば、エピネフリンやフェニルエピネフリン)、コルチコステロイド(デマキサゾン、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレデニゾン、ベクラメサゾン、ベタメサゾン、フルニソリド、メチルプレドニゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、アルコメタゾン、アムシノニド、クロベスタル、フルドロコルチゾン、ハルシノニド、メドリソンなど)及び/または透過性亢進剤(例えば、コール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、グリコデオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸、デオキシコール酸ナトリウム、リチオコール酸ナトリウム、ケノコール酸、ケノデオキシコール酸、ウルソコール酸、ウルソデオキシコール酸、ヒドロデオキシコール酸、デヒドロコール酸、グリコケノコール酸、タウロケノコール酸、タウロケノでオキシコール酸など)はまた、考慮している医薬組成物に添加することができる。
【0067】
治療/予防のための投与およびその用量
麻酔や痛覚脱出を維持かつ/または誘導するために使用した場合、ここで開示される化合物およびその医薬組成物は、単独で投与することも可能であるし、ここで開示される化合物や/またはその医薬組成物も含んだ他の医薬品と組み合わせて投与することも可能である。ここで開示する該化合物は、それ自体を、または医薬組成物として、投与し、または施しうる。特定の医薬組成物は、所望する投与様式に依存し、これは習熟した技術者には周知のことである。
ここで開示される化合物および/またはその医薬組成物は被験者に、静脈内注射、継続的注入、筋肉内注射、皮下注射、経皮、大脳内、髄鞘内、直腸内、局所、耳、鼻、目または皮膚特異的に、または当業者にとって既知の他のいかなる既存の方法といった注射方式によって投与しうる。いくつかの実施態様において、ここで開示される化合物および/またはその医薬組成物は、例えば、末梢神経ブロック、漿膜や硬膜外輸送(例として、硬膜外や仙骨等)のような浸潤方式によって輸送される。
【0068】
経皮用の装置もここで開示される化合物および/または医薬組成物を輸送するのに使用することができる。いくつかの実施態様において、該経皮用の装置はマトリクス形式の経皮装置(Miller等、国際公開番号WO2004/041324)である。他の実施態様において、該経皮用の装置は多層式の経皮装置(Miller、米国特許出願公開番号2005/0037059)である。
ここで開示された化合物および/またはその医薬組成物の、患者に対する痛みの治療または予防において有効な用量は、該痛みの条件についての具体的な性質に依存し、文献に公知な標準的臨床技術により決定することができる。勿論、ここで開示された化合物および/またはその医薬組成物の投与量は、処置される対象、対象の体重、痛みの程度、投与様式および処方する医師の判断といった他の因子に依存する。
【0069】
組み合わせ療法
ある種の実施態様において、ここで開示された化合物および/またはその医薬組成物は他の治療薬、例えば、他の局所エーテル型麻酔薬および/または局所アミド型麻酔薬といったものと組み合わせた療法において利用されうる。ここで開示された化合物および/またはその医薬組成物や治療薬は、付加的に、またはより効果的に、相乗的に作用しうる。いくつかの実施態様において、ここで開示された化合物および/またはその医薬組成物はもう一つ別の治療薬の投与と同時に投与されている。たとえば、ここで開示された化合物および/またはその医薬組成物を、もう一つ別の治療薬と一緒に投与することができる。他の実施態様においては、ここで開示された化合物および/またはその医薬組成物は、他の治療薬の投与前または後に投与される。
【0070】
スクリーニング
試験化合物によって製造された局所麻酔ブロックの品質と持続性は以下のラット坐骨神経アッセイ法により評価することができる。
【0071】
ラット坐骨神経アッセイ法
本アッセイ法により、局所麻酔化合物の効力は、該化合物をラット坐骨神経の近傍に投与し、痛覚刺激(つま先をピンチで挟む)に対する反応、運動機能(後肢を突き出す力)や自己受容(該動物がバランスを取る能力)における麻酔効果を経時的に測定することで、評価することができる。
各ラットはベースラインとなる後肢運動、自己受容および感覚機能を測定し、試験化合物の溶液を右坐骨神経に注射する。全ての評価は左右両側で実施され、非投与側から開始する。
【0072】
坐骨神経への注射:ラットの右坐骨部を毛刈りする。ラットを、その股関節を操作しうる状態になるまで、1.5%イソフルレンにて軽度に麻酔する。試験化合物溶液を(200μL)を坐骨神経の近傍に、大転子から坐骨結節の間にインシュリン用シリンジにて直接注入する。
麻酔ブロックの評価は、運動、感覚および自己受容の遮断効果を、注射後その効果が消失するまでの時間を測定することで行う。
【0073】
運動機能は、後肢両側における伸筋の突き出す力を測定することにより評価される。該ラットを秤の上で、後肢が伸びた状態で直立になるように保ち、体重が後肢片側の中足骨遠位部およびつま先にて支持する状態にする。ラットの踵が秤につくまで押し下げた時に該秤にかかる力の大きさをグラム単位で測定することにより、この伸筋の突き出す力を評価する。前処理時の対照値を最大可能効果(MPE)の0%とする。この力の減少が運動遮断により引き起こされた伸筋の金収縮の減少を表し、対照値に対するパーセンテージとして計算される。20g以下の力はMPEの100%とする。
【0074】
自己受容はバランシングテストにより評価される。ラットを後肢がテーブルの上にかかる状態で垂直位になるように持ち上げ、片側後肢が一時テーブルからはずれ、動物の体重が後肢片側にかかるようにし、その後該ラットを側方に動かすことで、直立状態を維持するためにラットに側方に跳躍させることにより、跳躍反応を誘起させる。主に運動機能の欠陥は正常の反応よりも迅速ではあるが、弱い反応を引き起こす。逆に、主に自己受容機能が遮断している場合は、跳躍が遅れ、その後、転倒を防ぐために、より大きな側方への跳躍が続き、完全に遮断されている場合には、まったく跳躍しない。こうした自己受容機能低下はベースラインとなる反応と比較され、4(ベースラインと同等、すなわち0%MPE)、3(軽微に低下)、2(中程度に低下)、1(大幅な低下)および0(完全な消失、すなわち100%MPE)としてスコア化される。
【0075】
侵害刺激に対する反応はピンセットによるピンチテストにより測定される。5指の末節骨へのピンセットによるピンチに対する肢を引っ込める反応をベースラインとなる反応と比較し、4(ベースラインと同等、すなわち0%MPE)、3(軽微に低下)、2(中程度に低下)、1(大幅な低下)および0(完全な消失、すなわち100%MPE)としてスコア化される。
上記のラット坐骨神経アッセイ法にて評価された本発明の代表的な化合物は臨床上適切な局所麻酔活性を有していることが見出されている。評価された全ての化合物において、その効力(完全に神経伝導をブロックする時間)はリドカインに認められる効力を上回っていた。殆どの場合において、該効力はブピバカインに認められる効力を上回っていた。評価された全ての動物で、完全な臨床上の回復が認められ、このことより、この神経ブロックは完全に可逆的であることが示された(すなわち、神経伝導ブロックは、化合物の注入が神経に与えるダメージによって引き起こされたわけではない)。
【実施例】
【0076】
以下に実施例を示すことで、本発明を説明するが、これらの実施例に限定される訳ではない。
実施例
実施例1.化合物1の合成

【0077】
a.合成中間体Bの合成:
乾燥THF液(300ml)に対し、リチウムアルミニウム水素化物(10.84g、0151mol)を0度で30分かけてゆっくりと加える。この反応混合物に、L−ロイシン(25.0g、0.213mol)を45分かけて少しずつ加える。この間、激しい水素の発生を制御するため、該反応液の温度は0−5度の間に保つ。その結果生じる反応混合物を還流するために加熱し、16時間還流を維持する。16時間後、0−5度に冷却し、ジエチルエーテル(300ml)にて希釈し、ゆっくりとDI水(12ml)にてクエンチする。クエンチした溶液に、15%w/v水酸化ナトリウム液(12ml)を加え、白い沈澱物として沈降させる。該懸濁液を室温中30分間攪拌し、白い沈澱物を濾過により除去することで、透明な有機ろ液を得る。これを硫酸ナトリウムにて乾燥させる。該硫酸ナトリウムはろ過することで除去し、有機溶液を減圧下にて濃縮することで、黄色い液体として中間体Bを得る(18g、82%)。
【0078】
b.合成中間体Cの合成:
無水エタノール(200ml)液に合成中間体B(10g、0.08mol)を加えた後、乾燥炭酸カリウム(58.9g、042mol)を加え、その結果生じる懸濁液に、1滴ずつ1,5−ジブロモペンタン(23.35ml、0.17mol)を滴下する。該反応混合物を還流するために加熱し、48時間還流を維持する。その後、室温にて冷却し、セライトベッドにてろ過する。有機層は減圧下にて濃縮し、その油成分を石油エーテル:エチルアセテートを溶離液とするシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して得る。該分画には化合物Cが含まれており、有機成分を減圧下で蒸発させることで、黄色い液体として化合物Cを得る(8.9g、56%z)。

【0079】
c.合成中間体Eの合成:
無水エタノール(500ml)液に、D(50g、0.27mol)を加え、該反応混合物を0−5度に冷却した後、塩化チオニル(59.6ml、0.81mol)を、反応混合物の温度を20度以下に保ちながら、ゆっくりと添加する。すべての塩化チオニルを添加後、該反応混合物を還流するために加熱し、一晩還流を維持する。その後、該反応混合物を20度まで冷却し、減圧下に気化することにより油成分に濃縮する。該残留物に、水(200ml)とエチルアセテート(200ml)の混合液を加える。層が解離され、水層はさらにエチルアセテート(2x200ml)を加えることで抽出される。一体となった有機層を10%重炭酸ナトリウム溶液(200ml)、水(200ml)及びブライン(200ml)にて洗浄した後、硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過し、そして減圧下で濃縮することにより黄色い固体として中間体Eを得る(51g、89%)。
【0080】
d.合成中間体Fの合成:
DMF液(250ml)に、E(25g、0.11mol)を添加し、炭酸カリウム(49.08g、0.35mol)を加えた後、その結果生じる懸濁液を0−5度に冷却する。この時、n−ブチルブロミド(16.6ml、0.15mol)を添加し、その反応合成物を室温にて24時間攪拌する。該反応混合物にエチルアセテート(250ml)を加え、この懸濁液をセライトベッドにてろ過する。有機ろ液を水(3x200ml)およびブライン(200ml)にて洗浄した後、硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧下で濃縮することにより黄色い固体として中間体Fを得る(28g、88%)。
【0081】
e.合成中間体Gの合成:
THF液(150ml)及び水(150ml)にF(14.98g、0.062mol)を加え、この反応混合物に水酸化リチウム(7.5g、0.31mol)水溶液を50ml添加し、その結果生じる混合物を一晩室温にて攪拌する。該反応混合物は減圧下で1/3の体積まで濃縮し、1.5N塩酸水溶液をpHが6以下になるまで加える。反応混合物をエチルアセテート(2x200ml)で抽出し、一体となった有機層を水(100ml)及びブライン(100ml)にて洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮することにより、黄色い固体として化合物Gを得る(13g、97%)。

【0082】
f.合成中間体Hの合成:
ジクロロメタン液(30ml)に、化合物G(2.84g、0.01mol)、C(2
g、0.011mol)、Hunig塩基(5.5ml、0.032mol)、EDCI(1.94g,0.016mol)およびHOBt(0.36g、0.0027mol)を加え、この反応混合物を室温にて一晩攪拌する。該反応混合物は水(50ml)で希釈し、ジクロロメタン(100ml)で抽出する。一体となった有機層を10%重炭酸ナトリウム溶液(50ml)、水(50ml)及びブライン(50ml)にて洗浄する。この溶液を硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過し、そして減圧下で濃縮することにより茶色い液体を得る。これを5%エチルアセテート/95%石油エーテルを溶離液とするシリカゲルクロマトグラフィーにより精製する。一体となった分画を減圧下で濃縮し、黄色い液体として化合物Hを得る(2g、46%)。
【0083】
g. 化合物1塩酸塩の合成

メタノール液(50ml)に化合物H(2g、0.004mol)を加え、pd−C(0.2g、10mol%)を加えた後、水素ガスを導入して、その反応化合物を3.5kg/cm2、2時間の条件で水酸化する。該反応混合物をセライトによりろ過し、そのろ液は減圧下で濃縮し、その残留物を1.5%メタノールのクロロホルム溶液を溶離液とするシリカゲルクロマトグラフィーにより精製する。一体となった分画を減圧下で気化することで、茶色い液体として化合物1の遊離塩基を得る(0.238g、12%)。
【0084】
クロロホルム液(25ml)に化合物1の遊離塩基(0.238g)を添加し、この溶液に塩酸のジエチルエーテル溶液(5ml)を加え、その反応混合物を室温にて30分攪拌する。該溶液は乾燥するまで濃縮し、ジエチルエーテルを再度加え、その結果生じる固体を回収し、ジクロロメタンおよびエチルアセテートで洗浄することで、灰色がかった白色の固体として、化合物1の塩酸塩を得る。HPLC純度(AUC):95.0%,M+H+=377;1H NMR(DMSO):δ(ppm)=0.9、m(9H);1.4、m(3H);1.7、m(8H);2.0、m(2H);3.1、m(2H);3.3、t(2H);3.5、bs(1H);4.0t(2H);4.5、m(2H);、6.3、d(1H);6.4、s(1H);7.7、d(1H);10.8、bs(1H)。
【0085】
実施例2.化合物2の塩酸塩の合成

【0086】
a.合成中間体Bの合成:
乾燥THF液(300ml)に対し、リチウムアルミニウム水素化物(10.84g、0151mol)を0度で30分かけてゆっくりと加える。この反応混合物に、L−フェニルアラニン(25.0g、0.227mol)を45分かけて少しずつ加える。この間、激しい水素の発生を制御するため、該反応液の温度は0−5度の間に保つ。その結果生じる反応混合物を還流するために加熱し、16時間還流を維持する。16時間後、0−5度に冷却し、ジエチルエーテル(300ml)にて希釈し、ゆっくりとDI水(12ml)にてクエンチする。クエンチした溶液に、15%w/v水酸化ナトリウム液(12ml)を加え、白い沈澱物として沈降させる。該懸濁液を室温中30分間攪拌し、白い沈澱物を濾過により除去することで、透明な有機ろ液を得る。これを硫酸ナトリウムにて乾燥させる。該硫酸ナトリウムはろ過することで除去し、有機溶液を減圧下にて濃縮することで、黄色い液体として中間体Bを得る(19g、84%)。
【0087】
b.合成中間体Cの合成:
蟻酸(7.48ml、0.19mol)液およびホルムアルデヒド液(5.5ml、0.19mol)に合成中間体B(10g、0.066mol)を加えた後、この反応混合物を105度で16時間還流するために加熱する。該反応混合物を室温まで冷却し、冷却した溶液に10%水酸化ナトリウムを加え、その後エチルアセテート(300ml)を添加する。層が解離され、有機層をブライン(100ml)で洗浄した後、硫酸ナトリウムにて乾燥、ろ過し、そのろ液を減圧下で濃縮し、茶色い液体として中間体Cを得る(8g、67%)。

【0088】
c.合成中間体Eの合成:
無水エタノール(250ml)液に、中間体D(25g、0.137mol)を加え、該反応混合物を0−5度に冷却した後、塩化チオニル(29.8ml、0.41mol)を、反応混合物の温度を20度以下に保ちながら、ゆっくりと添加する。すべての塩化チオニルを添加後、該反応混合物を還流するために加熱し、一晩還流を維持する。その後、該反応混合物を20度まで冷却し、減圧下に気化することにより油成分に濃縮する。該残留物に、水(100ml)とエチルアセテート(100ml)の混合液を加える。層が解離され、水層はさらにエチルアセテート(2x100ml)を加えることで抽出される。一体となった有機層を10%重炭酸ナトリウム溶液(100ml)、水(100ml)及びブライン(100ml)にて洗浄した後、硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過し、そして減圧下で濃縮することにより黄色い固体として中間体Eを得る(27g、93%)。
【0089】
d.合成中間体Fの合成:
DMF液(250ml)に、E(27g、0.127mol)を添加し、炭酸カリウム(53g、0.383mol)を加えた後、その結果生じる懸濁液を0−5度に冷却する。この時、n−ブチルブロミド(12.8ml、0.140mol)を添加し、その反応合成物を室温にて24時間攪拌する。該反応混合物にエチルアセテート(250ml)を加え、この懸濁液をセライトベッドにてろ過し、沈殿物をエチルアセテート(100ml)で洗浄する。一体となった有機層を水(3x200ml)およびブライン(200ml)にて洗浄した後、硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧下で濃縮することにより黄色い固体として中間体Fを得る(25g、76%)。
【0090】
e.合成中間体Gの合成:
THF液(150ml)及び水(150ml)にF(21.0g、0.083mol)を加え、この反応混合物に水酸化リチウム(10.0g、0.418mol)水溶液を50ml添加し、その結果生じる混合物を一晩室温にて攪拌する。該反応混合物は減圧下で1/3の体積まで濃縮し、1.5N塩酸水溶液をpHが6以下になるまで加える。反応混合物をエチルアセテート(2x200ml)で抽出し、一体となった有機層を水(100ml)及びブライン(100ml)にて洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮することにより、黄色い固体として化合物Gを得る(20g、83%)。

【0091】
f.合成中間体Hの合成:
ジクロロメタン液(30ml)に、中間体G(2.76g、0.12mol)、C(2
g、0.011mol)、Hunig塩基(5.5ml、0.032mol)、EDCI(1.94g,0.016mol)およびHOBt(0.36g、0.0027mol)を加え、この反応混合物を室温にて一晩攪拌する。該反応混合物は水(50ml)で希釈し、ジクロロメタン(100ml)で抽出する。一体となった有機層を10%重炭酸ナトリウム溶液(50ml)、水(50ml)及びブライン(50ml)にて洗浄する。この溶液を硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過し、そして減圧下で濃縮することにより茶色い液体を得る。これを5%エチルアセテート/95%石油エーテルを溶離液とするシリカゲルクロマトグラフィーにより精製する。一体となった分画を減圧下で濃縮し、黄色い液体として化合物Hを得る(1.3g、30%)。
【0092】
g.化合物2塩酸塩(I)の合成

メタノール液(50ml)に化合物H(1.3g、0.0034mol)を加え、pd−C(0.13g、10mol%)を加えた後、水素ガスを導入して、その反応化合物を3.5kg/cm2、2時間の条件で水酸化する。該反応混合物をセライトによりろ過し、そのろ液は減圧下で濃縮し、その残留物を1.5%メタノールのクロロホルム溶液を溶離液とするシリカゲルクロマトグラフィーにより精製する。一体となった分画を減圧下で気化することで、茶色い液体として化合物2の遊離塩基を得る(0.44g、34%)。
【0093】
クロロホルム液(25ml)に化合物2の遊離塩基(0.44g)を添加し、この溶液に塩酸のジエチルエーテル溶液(5ml)を加え、その反応混合物を室温にて30分攪拌する。該溶液は乾燥するまで濃縮し、ジエチルエーテルを再度加え、その結果生じる固体を回収し、ジクロロメタンおよびエチルアセテートで洗浄することで、灰色がかった白色の固体として、化合物2の塩酸塩を得る。HPLC純度(AUC):98.5%,M+H+=357;1H NMR(DMSO):δ(ppm)=1.0、t(3H);1.9、m(2H);2.5、s(6H);2.8、m(1H);3.0、m(1H);3.1、m(1H);4.0、t(2H);4.4、m(2H);、6.8、d(1H);7.2、m(5H);7.4、s(1H);7.5、s(1H)。
【0094】
実施例3.化合物3の塩酸塩の合成

【0095】
a.合成中間体Bの合成:
乾燥THF液(250ml)に対し、リチウムアルミニウム水素化物(10.84g、0151mol)を0度で30分かけてゆっくりと加える。この反応混合物に、L−ロイシン(25.0g、0.227mol)を45分かけて少しずつ加える。この間、激しい水素の発生を制御するため、該反応液の温度は0−5度の間に保つ。その結果生じる反応混合物を還流するために加熱し、16時間還流を維持する。16時間後、0−5度に冷却し、ジエチルエーテル(300ml)にて希釈し、ゆっくりとDI水(12ml)にてクエンチする。クエンチした溶液に、15%w/v水酸化ナトリウム液(12ml)を加え、白い沈澱物として沈降させる。該懸濁液を室温中30分間攪拌し、白い沈澱物を濾過により除去することで、透明な有機ろ液を得る。これを硫酸ナトリウムにて乾燥させる。該硫酸ナトリウムはろ過することで除去し、有機溶液を減圧下にて濃縮することで、黄色い液体として中間体Bを得る(20g、90%)。
【0096】
b.合成中間体Cの合成:
蟻酸(9.6ml、0.25mol)液およびホルムアルデヒド液(7.1ml、0.25mol)に合成中間体B(10g、0.08mol)を加えた後、この反応混合物を105度で16時間還流するために加熱する。該反応混合物を室温まで冷却し、冷却した溶液に10%水酸化ナトリウムを加え、その後エチルアセテート(300ml)を添加する。層が解離され、有機層をブライン(100ml)で洗浄した後、硫酸ナトリウムにて乾燥、ろ過し、そのろ液を減圧下で濃縮し、茶色い液体として中間体Cを得る(8.2g、66%)。

【0097】
c.合成中間体Eの合成:
無水エタノール(500ml)液に、中間体D(50g、0.27mol)を加え、該反応混合物を0−5度に冷却した後、塩化チオニル(59.6ml、0.81mol)を、反応混合物の温度を20度以下に保ちながら、ゆっくりと添加する。すべての塩化チオニルを添加後、該反応混合物を還流するために加熱し、一晩還流を維持する。その後、該反応混合物を20度まで冷却し、減圧下に気化することにより油成分に濃縮する。該残留物に、水(200ml)とエチルアセテート(200ml)の混合液を加える。層が解離され、水層はさらにエチルアセテート(2x200ml)を加えることで抽出される。一体となった有機層を10%重炭酸ナトリウム溶液(200ml)、水(200ml)及びブライン(200ml)にて洗浄した後、硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過し、そして減圧下で濃縮することにより黄色い固体として中間体Eを得る(51g、89%)。
【0098】
e.合成中間体Fの合成:
DMF液(250ml)に、中間体E(25.5g、0.12mol)を添加し、炭酸カリウム(49.65g、0.36mol)を加えた後、反応混合物を0度に冷却する。この時、n−プロピルブロミド(16.5ml、0.18mol)を添加し、その結果生じる懸濁液を室温にて24時間攪拌する。この反応混合物にエチルアセテート(250ml)で希釈し、セライトベッドにてろ過し、沈殿物をエチルアセテート(100ml)で洗浄する。一体となった有機層を水(3x200ml)およびブライン(200ml)にて洗浄した後、硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧下で濃縮することにより黄色い固体として中間体Fを得る(28g、92%)。
【0099】
f.合成中間体Gの合成:
THF液(150ml)及び水(150ml)に中間体F(30g、0.118mol)を加え、この反応混合物に水酸化リチウム(14.2g、0.59mol)水溶液を50ml添加し、その結果生じる混合物を一晩室温にて攪拌する。該反応混合物は減圧下で1/3の体積まで濃縮し、1.5N塩酸水溶液をpHが6以下になるまで加える。反応混合物をエチルアセテート(2x200ml)で抽出し、一体となった有機層を水(100ml)及びブライン(100ml)にて洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮することにより、黄色い固体として化合物Gを得る(22g、82%)。
【0100】
g.合成中間体Hの合成:
ジクロロメタン液(30ml)に、中間体G(3.41g、0.12mol)、C(2
g、0.013mol)、Hunig塩基(7ml、0.041mol)、EDCI(3.97g,0.021mol)およびHOBt(0.38g、0.0025mol)を加え、この反応混合物を室温にて一晩攪拌する。該反応混合物は水(50ml)で希釈し、ジクロロメタン(100ml)で抽出する。一体となった有機層を10%重炭酸ナトリウム溶液(50ml)、水(50ml)及びブライン(50ml)にて洗浄する。この溶液を硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過し、そして減圧下で濃縮することにより茶色い液体を得る。これを5%エチルアセテート/95%石油エーテルを溶離液とするシリカゲルクロマトグラフィーにより精製する。一体となった分画を減圧下で濃縮し、黄色い液体として化合物Hを得る(1.2g、25%)。
【0101】
h.化合物3塩酸塩の合成

メタノール液(50ml)に中間体H(1.2g、0.003mol)を加え、pd−C(0.12g、10mol%)を加えた後、水素ガスを導入して、その反応化合物を3.5kg/cm2、2時間の条件で水酸化する。該反応混合物をセライトによりろ過し、そのろ液は減圧下で濃縮し、その残留物を1.5%メタノールのクロロホルム溶液を溶離液とするシリカゲルクロマトグラフィーにより精製する。一体となった分画を減圧下で気化することで、茶色い液体として化合物3の遊離塩基を得る(0.37g、30%)。
【0102】
クロロホルム液(25ml)に化合物3の遊離塩基(0.44g)を添加し、この溶液に塩酸のジエチルエーテル溶液(5ml)を加え、その反応混合物を室温にて30分攪拌する。該溶液は乾燥するまで濃縮し、ジエチルエーテルを再度加え、その結果生じる固体を回収し、ジクロロメタンおよびエチルアセテートで洗浄することで、灰色がかった白色の固体として、化合物3の塩酸塩を得る。HPLC純度(AUC):91.4%,M+H+=323;1H NMR(DMSO):δ(ppm)=0.9、m(6H);1.0、t(3H);1.8、m(5H);2.7、s(3H);2.8、s(3H);3.7、bs(1H);4.0、t(2H);4.5、m(2H);、6.4、d(1H);6.5、s(1H);7.8、d(1H)。
【0103】
実施例4 代表的な化合物の一般的合成
他の代表的な式Iの化合物は以下に示す一般的な合成スキームを使用して調製することが可能である。
【0104】
a.置換アミノアルコールカップリング構成要素の合成

段階1:
THFのような、極性があり非プロトン性の溶媒に対し、リチウムアルミニウム水素化物(0.5から2.0当量)のような水素化物由来のものを添加した後、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−フェニルアラニン(A)といったアミノ酸を加え、この混合物を12−24時間の間、濃縮が完了するまで還流する。該混合物を0−10度に冷却し、ジエチルエーテルのような極性があり非プロトン性の溶媒にて希釈し、水でクエンチした後、15%水酸化ナトリウム液といった水酸化ナトリウム液によって塩基性化する。結果として生ずる固形を極性のある非プロトン性の溶媒で洗浄し、硫酸マグネシウムや硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下にて濃縮することで、液体として産物Bを得る。
【0105】
b. ピペリジニル基を有するアミノアルコール合成中間体の合成:
化合物Bの溶液に、エタノールといったアルコール性溶媒を加えた後、炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウムを加え、その後、さらに1,5−ジブロモペンタンを添加する。この反応混合物を還流するために48−72時間加熱し、その後、室温まで冷却し、セライトベッドにてろ過する。有機層の減圧下での濃縮により、油成分が得られ、これをシリカゲルクロマトグラフィーにより精製する。純産物を含む分画は一つにまとめられ、溶媒を減圧下で除去することにより、ピペリジニル化合物Cが得られる。
【0106】
c.ジメチルまたはジメチルを含むアミノアルコール合成中間体の合成−ジメチル化合物の合成過程を以下に示す。
蟻酸およびホルムアルデヒド液に化合物Bを加えた後、この反応混合物を16−24時間還流するために加熱する。その後、該反応混合物を室温まで冷却し、水酸化ナトリウム溶液を加え、その後エチルアセテートといった有機溶媒を添加する。有機層をブラインで洗浄した後、硫酸ナトリウムまたは硫酸マグネシウムにて乾燥、ろ過し、そのろ液を減圧下で濃縮し、中間体Cを得る。
【0107】
d.共通の合成中間体Gの合成

エタノールといったプロトン性であり極性のある溶媒に、2−ヒドロキシ−4−ニトロ安息香酸を加えた後、塩化チオニルといった塩素処理試薬を添加する。この反応混合物を8−16時間還流した後、濃縮し、エチルアセテートといった有機溶媒により抽出し、炭酸ナトリウム溶液、水及びブラインにて洗浄した後、減圧下で有機溶媒を気化することにより黄色い固体として産物を得る。
【0108】
e.DMFといった極性のある非プロトン性溶媒に、化合物Eおよび炭酸カリウムを加えた後、アルキルブロミド(n−エチル、n−プロピルまたはn−ブチルブロミド)を添加し、その反応合成物を室温にて16−30時間攪拌する。該反応混合物をエチルアセテートといった有機溶媒で希釈し、水およびブラインにて洗浄した後、減圧下で濃縮することにより黄色い固体として産物を得る。
【0109】
f.THFといった極性のある非プロトン性の有機溶媒及び水に、化合物Fおよび水酸化リチウムといった水酸化アルキルを加え、この溶液を室温にて8−16時間攪拌する。この反応混合物は濃縮され、1.5M塩酸水溶液のような塩酸水溶液で酸性にし、そして、エチルアセテートといった有機溶媒で抽出する。その有機溶液を水及びブラインにて洗浄後、硫酸マグネシウムまたは硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮することにより、灰色がかった白色の固体として産物を得る。
【0110】
g.

非極性の有機溶媒に、化合物G、アミノアルコール、EDCI、HOBtおよびアミン塩基(例えばHunig塩基)を加え、この反応混合物を室温にて一晩攪拌する。該反応混合物は水で希釈し、非極性有機溶媒で抽出した後、重炭酸溶液及びブラインにて洗浄し、硫酸マグネシウムまたは硫酸ナトリウムにて乾燥する。シリカゲルクロマトグラフィーによる精製により、油成分として、産物Hを得る。
【0111】
h.アルコール性溶媒、好ましくはメタノール、にHおよびpd−C触媒を加えた後、水素ガスを導入し、反応混合物を数時間攪拌する。該反応混合物をセライトによりろ過した後、そのろ液を減圧下で気化し、その残留物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製することで、化合物1の遊離塩基を得る。該遊離塩基を非極性有機溶媒に溶解し、この溶液に塩酸の非極性有機溶媒溶液を導入する。この溶液を乾燥するまで濃縮し、ジエチルエーテルといった有機溶媒を添加し、その結果生じる固形沈殿物を回収し、化合物1の塩酸塩としてこれを得る。
【0112】
実施例5 代表的な化合物4、5および6の合成:

【0113】
a.

500mlフラスコに、化合物Aと4−ニトロ−2−R1−安息香酸[ここでR1はプロポキシまたはブトキシ](10g、0.044mol)を加え、メタノール(100ml)を添加した後、この結果生じる溶液に10%Pd−C(1g)を加える。このフラスコを4kg/cm2の水素にて加圧し、この反応混合物を室温にて一晩攪拌する。反応が完了したことをTLC分析にて確認した後、この反応混合物をセライトでろ過し、そのろ液を減圧下で濃縮することにより、茶色い固体として、化合物Bを得る(7.99g、収率91%)。
【0114】
b.

500ml丸底フラスコに化合物B(8.1g、0.042mol)を加えた後、濃縮した硫酸(162ml)と水(162ml)を添加する。この反応混合物を80度まで加熱し、この温度にて、あらかじめ作っておいた亜硝酸ナトリウム(3.9g、0.062mol)を少しずつ添加する。この温度で3−4時間攪拌後、反応が完了したことをTLC分析により確認し、該混合物を20度まで冷却した後、氷上に注ぎ、エチルアセテートで抽出する。この有機層を水およびブラインにて順次洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮を行う。ここで得られた凝集体をシリカゲルクロマトグラフィー(9:1 クロロフォルム:メタノール)により精製し、赤色の固体として、化合物Cを得る(7.5g、92%)。
【0115】
c.

250ml丸底フラスコの中に、化合物C(7.4g、0.038mol)を入れた後、エタノール(70ml)、水(7ml)、ベンジルブロミド(7.05g、0.042mol)および水酸化カリウム(4.23g、0.076mol)を加え、この混合物を18時間還流するために加熱し、その後、反応が完了していることをTLC分析で確認する。この反応混合物は室温まで冷却し、減圧下でエタノールを除去することで、初めの体積の1/5まで濃縮する。この溶液を1.5N塩酸で中和し、その後エチルアセテートで抽出する。有機画分は水およびブラインにて順次洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下で濃縮することにより、未精製の化合物Dを得る。化合物Dを5:1石油エーテル/エチルアセテートを用いたシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、浅黄色の固体として、化合物Dを得る(3.0g、27%収率)。
【0116】
d.

100ml丸底フラスコの中に、ジクロロメタン(25ml)を入れた後、化合物D(1.1g、0.0038mol)、化合物E[N,N−ジメチルロイシノール、N,ジエチルロイシノールまたはN,Nジエチルフェニルアラニノール](0.95当量)、Hunig塩基(1.36g、0.0105mol)、EDC(1.0g、0.0053mol)そしてHOBt(0.1g、0.0009mol)を添加する。この反応混合物を一晩室温にて攪拌し、その後TLC分析にて反応が完了していることを確認する。該反応混合物は減圧下で濃縮され、この残留物にエチルアセテートを加える。この結果生じた溶液を水およびブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下で濃縮することで、未精製の化合物Fを得る。該未精製物質をシリカゲルクロマトグラフィー(7:3石油エーテル/エチルアセテート)により精製し、黄色い液体として、化合物Fを得る(0.15g、10%)。
【0117】
d.

50ml丸底フラスコの中に、メタノール(10ml)を入れた後、Pd−C(25mg)を添加し、その混合物は一晩室温で4kg/cm2の水素圧をかけることにより水素添加する。その後、TLC分析で、反応が完了していることを確かめる。該反応混合物はセライトでろ過し、そのろ液を減圧下で濃縮することにより、未精製の化合物4をえる。この物質をシリカゲルクロマトグラフィー(9:1クロロホルム/メタノール)により精製し、黄色い液体である化合物4を得る。化合物5および6は同様の方法を使うことで調製される。
【0118】
実施例6 代表的な化合物7および8の合成

化合物7および8もまた、以下に示す合成スキームを用いることで、調製することができる。ここでR1はプロピルまたはブチルであり、R2はN,N−ジメチルイソロイシノールまたはN,N−ジエチルイソロイシノールである。
【0119】

=イソプロピル又はブチル
=N,N−ジメチルイソロイシノール又はN,N−ジエチルイソロイシノール
【0120】
当業者でれば、本開示の範囲を逸脱することなく、様々な物質面および方法面での変更を行いうることは明らかであろう。従って、ここに示している実施例は、単なる例証と考えるべきであり、これらに限定されるべきではない。そして、本発明はここで示された詳細に限定されるべきでなく、許される請求の範囲ならびにその均等の範囲内で変更することが可能である。
ここで引用した刊行物および発明は、それぞれ完全な形で参考文献に組み込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式(I):

(式(I)において:
各Rはそれぞれ独立に水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、−R、−OR,−SR,−NRまたは−C(O)NRであり、少なくとも1つのRはR、−OR,−SR、−NRまたは−C(O)NRRであり;
pは1から3までの整数であり;
Xは−O−または−S−であり;
及びRはそれぞれ独立に、水素又は任意に一つまたは複数の同一または異なるR基で置換されていてもよい(C1−C6)アルキル基であり、又はRかRのいずれか一つとRかRのいずれか一つが任意に原子を介して結合することで、シクロヘテロアルキル環を形成し、又はRはアミノ酸の側鎖でありRは水素であり;
nは1,2,3又は4であり;
とRはそれぞれ独立に水素、任意に一つまたは複数の同一または異なるR基で置換されていてもよい(C1−C6)アルキル基であり、又はRとRが任意にそれらが結合している窒素原子とともに、一つの又は複数の(C1−C6)アルキル基で任意に置換されていてもよいシクロヘテロアルキル環を形成し;
とRはそれぞれ独立に水素、一つ又は複数の同一又は異なるR基で任意に置換されていてもよいアルキル基、一つ又は複数の同一又は異なるR基で任意に置換されていてもよいシクロアルキル基、一つ又は複数の同一又は異なるR基で任意に置換されていてもよいシクロヘテロアルキル基、一つ又は複数の同一又は異なるR基で任意に置換されていてもよいアリル基又は一つ又は複数の同一又は異なるR基で任意に置換されていてもよいヘテロアリル基であり、又はRとRが、それらが結合した窒素原子とともにシクロヘテロアルキル環を形成し、
はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、−R、−OR、−SR、−NR、−CF、−CN、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)SR、−C(O)NR又は一つ又は複数のフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、−R、−OR、−SR、−NR、−CF、−CN、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)SR又は−C(O)NRで任意に置換されたアリル基である)で表される化合物、
(ただし、以下:

に示す構造を含まない)で表される化合物、そのプロドラッグ、塩、水和物、溶媒和物または窒素酸化物。
【請求項2】
前記式Iの化合物が、下記式II:

(ここで、Zは以下の式:

であらわされる基であり、
各Rはそれぞれ独立に水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、−R、−OR,−SR,−NRまたは−C(O)NRであり;
pは1から3までの整数であり;
Xは−O−または−S−であり;
はアミノ酸の側鎖であり;
及びRはそれぞれ独立に、水素又は任意に一つまたは複数の同一または異なるR基で置換されていてもよい(C1−C6)アルキル基であり、又はRとRが窒素原子を介して結合することで、シクロヘテロアルキル環を形成し;
及びRはそれぞれ独立に、水素、または任意に一つまたは複数の同一または異なるR基で置換されていてもよいアルキル基、または任意に一つまたは複数の同一または異なるR基で置換されていてもよいシクロアルキル基、または任意に一つまたは複数の同一または異なるR基と置換されていてもよいシクロヘテロアルキル基、または任意に一つまたは複数の同一または異なるR基と置換されていてもよいアリル基、または任意に一つまたは複数の同一または異なるR基と置換されていてもよいヘテロアリル基であり;そして
はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、−R、−OR、−SR、−NR、−CF、−CN、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)SR、−C(O)NR又は一つ又は複数のフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、−R、−OR、−SR、−NR、−CF、−CN、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)SR又は−C(O)NRで任意に置換されたアリル基である)
で表される化合物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記式IIの化合物が下記式IIa:

(ここで、式の中において*で標識された中心が表示された絶対配置を有する)
で表される化合物である請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記式IIの化合物が下記式IIb:

(ここで、式の中において*で標識された中心が表示された絶対配置を有する)
で表される化合物である請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
Zが、

である請求項2から4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
Zが、

である請求項2から4のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
Zが、

である請求項2から4のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
Zが、

である請求項2から4のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
Zが、

である請求項2から4のいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
Zが、

である請求項2から4のいずれかに記載の化合物。
【請求項11】
が−ORであり、Rが一つ又は複数の同一又は異なるR基で任意に置換されていてもよいアルキル基である請求項5から10のいずれかに記載の化合物。
【請求項12】
が−ORであり、Rが(C1−C6)アルキルである請求項5から10のいずれかに記載の化合物。
【請求項13】
がエトキシ、プロポキシまたはブトキシである請求項5から10のいずれかに記載の化合物。
【請求項14】
が天然アミノ酸の側鎖である請求項2から13のいずれかに記載の化合物。
【請求項15】
がメチル、イソプロピル、2−メチルプロピル、1−メチルプロピルまたはベンジルである請求項2から13のいずれかに記載の化合物。
【請求項16】
*で標識した中心がR絶対配置を有する請求項3から15のいずれかに記載の化合物。
【請求項17】
*で標識した中心がS絶対配置を有する請求項3から15のいずれかに記載の化合物。
【請求項18】
およびRがそれぞれ独立にメチルまたはエチルである請求項1から17のいずれかに記載の化合物。
【請求項19】
およびRが、それらに結合した窒素原子とともにピペラジノ環を形成する請求項1から17のいずれかに記載の化合物。
【請求項20】
Xが酸素である請求項1から19のいずれかに記載の化合物。
【請求項21】
以下の構造:

を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項22】
以下の構造:

を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項23】
以下の構造:

を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項24】
以下の構造:

を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項25】
以下の構造:

を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項26】
以下の構造:

を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項27】
以下の構造:






を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項28】
が(C3−C6)アルキルである請求項1から12のいずれかに記載の化合物。
【請求項29】
がプロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、secブチル、ペンチル、イソペンチル、secペンチルまたはヘキシルである請求項1から12のいずれかに記載の化合物。
【請求項30】
請求項1から29のいずれかに記載の化合物および製薬上許容される媒体を含む医薬組成物。
【請求項31】
注射用に処方され、有機酸緩衝液システムをさらに含む請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
請求項1から29のいずれかに記載の化合物を患者に投与することを含む、患者における局所麻酔を誘導または維持する方法。
【請求項33】
請求項30に記載の医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、患者における局所麻酔を誘導または維持する方法。
【請求項34】
請求項1から29のいずれかに記載の化合物を、それを必要とする患者に投与することを含む、患者における痛みの治療または予防の方法。
【請求項35】
薬物療法において使用するための請求項1から29のいずれかに記載の式Iの化合物またはそのプロドラッグ、塩、水和物、溶媒和物または窒素酸化物
【請求項36】
ヒト等の哺乳類において局所麻酔を誘導または維持するための薬物を調製するための、請求項1から29のいずれかに記載の式Iの化合物またはそのプロドラッグ、塩、水和物、溶媒和物または窒素酸化物の使用。
【請求項37】
ヒト等の哺乳類において痛みを治療または予防するための薬物を調製するための、請求項1から29のいずれかに記載の式Iの化合物またはそのプロドラッグ、塩、水和物、溶媒和物または窒素酸化物の使用。

【公表番号】特表2010−500969(P2010−500969A)
【公表日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521008(P2009−521008)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/073926
【国際公開番号】WO2008/011539
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(509018661)ファーマコフォア,インク. (1)
【氏名又は名称原語表記】PHARMACOFORE,INC.
【Fターム(参考)】