説明

(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体、それを元にした、中心シクロヘキサ−1,4−ジエン核と縮合した2つの5員環ラクトン環を有する化合物およびその用途

本発明は、中心シクロヘキサ−1,4−ジエン核と縮合した2つの5員環ラクトン環を有する化合物の合成に不可欠な前駆体である、明細書中に定義される式で表される(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体、およびそれを容易に調製する方法を提供する。本発明の調製方法によれば、(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体を、高純度・高収率で、毒性物質を使用したり、有毒な副生物を生成したりすることなく、容易に調製することができる。
そのような(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体を前駆体として用いて合成したいくつかの新規化合物は、一般的な合成繊維物質(ポリエステル繊維およびそれと他の繊維の混合物など)、特にマイクロファイバーに対して優れた堅牢性、染料固着速度およびレベリング性を有し、また可塑性樹脂、カラートナー、カラーフィルター等の着色剤として用いることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体、それを元にした、中心シクロヘキサ−1,4−ジエン核と縮合した2つの5員環ラクトン環を有する化合物およびそれらの化合物の用途に関する。本発明によれば、毒性物質を使用したり生成したりすることなく、中心シクロヘキサ−1,4−ジエン核と縮合した2つの5員環ラクトン環を有する化合物を製造する方法も提供される。
【背景技術】
【0002】
下記式に示す染料化合物(以降、「ベンゾジフラノン系染料化合物」と称することがある)は、中心シクロヘキサ−1,4−ジエン核と縮合した2つの5員環ラクトン環を有しており、良好な堅牢性(洗濯堅牢性、昇華堅牢性等)を有するので、高機能繊維物質(レジャー・スポーツ用品等)に一般に用いられている。しかし、従来のベンゾジフラノン系化合物の多くは、ある種の合成繊維物質、特にマイクロファイバーに対する十分な染色性を提供するものではない。換言すれば、これらのベンゾジフラノン系化合物の、マイクロファイバーに対する染色性および堅牢性は低い。
【0003】
【化1】

【0004】
これらのベンゾジフラノン系化合物の例は、特許文献1、特許文献2等に開示されており、ベンゾジフラノン系化合物合成に不可欠な前駆体として、下記式に示す(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸を用いている。
【0005】
【化2】

【0006】
この(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸または(その対応ニトリル化合物)の調製方法に関しては、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6等がある。これら従来技術の方法では、フェノールおよびグリオキシル酸を用いて(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸を製造する。
【0007】
上記(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸に短鎖アルキル基を導入する方法としては、特許文献7が、水酸化ナトリウムの作用により、マンデル酸と臭化プロピルを水中で縮合させる技術を示している。しかしこの方法によれば、臭化プロピルの沸点が低いため、縮合反応を低温で長時間かけて行わなければならない。また、臭化プロピルの消失を元に戻す(replace)よう、反応工程に対して臭化プロピルを連続的に添加しなければならない。その上、合成した化合物は固まり(cake)の形で生成するため、高い純度・収率を達成することが困難になる。高沸点の臭化アルキルを上記反応に用いると、許容しうる反応速度を維持するために反応温度を高温に調節しなければならず、その結果、酸または塩基性条件において(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸が分解してしまう。
【0008】
これらの問題を解決するため、非特許文献1、特許文献8および特許文献9に示されるような、他のアプローチが開発されてきた。これにより、下記の反応式に示すように、まずヒドロキシベンズアルデヒドに置換基を導入し、得られた化合物を亜硫酸水素ナトリウムおよびシアン化ナトリウムと反応させ、次いで加水分解して、ニトリル化合物を生成させる。
【0009】
【化3】

(式中、Rは特許文献8に定義する通りである。)
【0010】
しかしこの方法には、収率が50〜81%と極めて低く、反応により生じる有毒なシアン化水素を回収するための高価な装置を必要とし、また有毒なシアン化物に起因する水質汚染の恐れがあるという欠点がある。特許文献10は、下記の反応式に示すように、亜硫酸水素ナトリウムに替えて塩化シアヌルを用いる方法を示唆している。
【0011】
【化4】

(式中、Rは特許文献10に定義する通りである。)
【0012】
しかしこの方法には、上記と同じ欠点がある。従って、ベンゾジフラノン系化合物の重要な前駆体としての(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸(その誘導体を含む)を効率的に合成するための新規な方法が強く求められている。
【0013】
【特許文献1】米国特許第5,286,881号
【特許文献2】韓国特許第138,255号
【特許文献3】米国特許第4,368,334号
【特許文献4】米国特許第6,359,172号
【特許文献5】英国特許第1,576,331号
【特許文献6】特開昭56−68641号公報
【特許文献7】英国特許公開第2,101,998A号公報
【特許文献8】特開昭64−120058号公報
【特許文献9】韓国特許公開第1995−18310号公報
【特許文献10】韓国特許公開第1996−14044号公報
【特許文献11】韓国特許公開第2000−56622号公報
【特許文献12】米国特許第5,645,970号
【特許文献13】韓国特許公開第2001−20439号公報
【非特許文献1】Beilstein Handbuch der Organischen Chemie,enlarged edition Vol. System No.1106/H410−411
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の目的は、ベンゾジフラノン系染料化合物合成に不可欠な前駆体としての(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体を、高純度・高収率で、毒性物質を使用したり、反応工程における副生物として毒性物質を生成したりすることなく、容易に調製する方法を提供することにある。
【0015】
本発明の第2の目的は、既知の方法または上記の方法により調製しうる(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体を提供することにある。そのようにして調製される(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体は、これまでに知られていない新規な化合物である。
【0016】
本発明の第3の目的は、上記(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体を用いてベンゾジフラノン系染料化合物を合成する方法を提供することにある。
【0017】
本発明の第4の目的は、既知の方法または上記の方法により調製しうるベンゾジフラノン系染料化合物を提供することにある。そのようにして調製されるベンゾジフラノン系染料は、これまでに知られていない新規な化合物である。
【0018】
本発明の第5の目的は、疎水性繊維物質、例えばポリエステル繊維、ポリエステルマイクロファイバー、それらと他の繊維の混合物または疎水性繊維織布等を、上記の新規なベンゾジフラノン系染料化合物またはその組成物を用いて染色し、それらの繊維物質に対する優れた染色性、堅牢性およびレベリング製を提供する方法を提供することにある。
【0019】
本発明の第6の目的は、上記の新規なベンゾジフラノン系染料化合物またはその組成物を、高い堅牢性を有する着色染料化合物(color dye compounds)と組み合わせて用いて繊維物質を染色し、それらの繊維物質に対する優れた染色性、堅牢性およびレベリング製を提供する方法を提供することにある。第5および第6の目的における方法によれば、高い堅牢性を要する高級衣類(特にスポーツ用品、新規マイクロファイバー等)において、良質な染色生成物を、環境に優しい工程で得ることができる。本発明の第6の目的は、上記の新規なベンゾジフラノン系染料化合物と他の染料(特に分散染料)からなる新規な混合物を含む。
【0020】
本発明の第7の目的は、上記の新規なベンゾジフラノン系染料化合物およびその組成物の、高分子樹脂、カラートナーまたはカラーフィルターの着色剤としての用途を提供することにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
上記の目的および利点を達成するため、本発明は、下記式(I)で表される(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体を提供する。
【0022】
【化5】

【0023】
(式中、
Aは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基或いは炭素数1〜6の非置換または置換アルコキシ基であり;
は、−O−、−S−、−SO−または−N(−R)−(式中、Rは、水素原子或いは炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基である)であり;
は、水素原子、炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基、炭素数4〜7の非置換または置換環状またはヘテロ環状基、非置換または置換芳香族基或いは下記式:
【0024】
【化6】

【0025】
(式中、
、DおよびDは、各々独立に、直接結合、−O−、−S−または−N(−R)−(式中、Rは、上記に定義したものと同じ意味を有する)であり;
、X、X、X、Y、Y、YおよびYは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子或いは炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基であり;
は、水素原子、炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基、炭素数4〜7の非置換または置換環状またはヘテロ環状基或いは非置換または置換芳香族基であり;
は、1〜6の整数であり;
〜nは、各々独立に、0または1〜6の整数であり、
ただし、
が0であるとき、DおよびDの少なくとも一方が直接結合であり;
が0であるとき、DおよびDの少なくとも一方が直接結合であり;
およびnが同時に0であるとき、Dが直接結合であり、且つDおよびDの少なくとも一方が直接結合である)
で表される基である。)
【0026】
本開示中で用いる用語のうちいくつかにつき、以下に簡単に説明する。
本開示中、用語「置換」を別のまたは付加的な記載なしに用いた場合、これは主たる分子に置換基が共有結合していてもよいことを意味する。置換基は各々独立に、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、スルホニル基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキル基、アルキル(炭素数1〜6)カルボニルオキシ基、アルコキシ(炭素数1〜6)カルボニル基、ベンゾイル基、ビニル基等よりなる群から選ばれる。
【0027】
用語「ハロゲン」は、フッ化物、塩化物、臭化物等を表す。
用語「炭素数1〜6のアルキル基」は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、ペンチル基、イソブチル基、ヘキシル基、イソペンチル基、イソヘキシル基等を表す。
用語「炭素数1〜6のアルコキシ基」は、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基等を表す。
用語「炭素数4〜7の環状基」は、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を表す。
用語「ヘテロ環状基」には、例えば下記式:
【0028】
【化7】

で表される基の他、チエニル基、ピロリル基、ピラニル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、チアジアゾリル基、チアジアゾリル基、s−トリアジニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、ベンズオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基等が含まれるが、これらに限定されない。
【0029】
用語「芳香族基」は、フェニル基、ナフチル基等を表す。
用語「アルキル(炭素数1〜6)カルボニルオキシ基」は、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、n−ブチリルオキシ基等を表す。
用語「アルコキシ(炭素数1〜6)カルボニル基」は、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基等を表す。
本発明が関連する分野における当業者であれば、本開示中で用いる他の用語の意味を理解することは容易である。
【0030】
本発明による(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体の調製方法は、互いに混合しない有機反応剤溶媒および塩基性水性溶媒からなり、前記有機反応剤溶媒は、アルカリ塩処理によりカルベンを放出しうる二相溶媒系中で、下記式(II)で表されるベンズアルデヒド誘導体を、相間移動触媒を用いて反応させて、前記式(I)で表される(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体を合成する工程を含む。
【0031】
【化8】

(式中、A、DおよびRは、各々前記式(I)中のものと同じ意味を有する。)
【0032】
互いに混合しない有機反応剤溶媒および塩基性水性溶媒からなる二相溶媒系は、有機溶媒からなる有機層および水性溶媒からなる水層からなる。従って、前記式(II)で表されるベンズアルデヒド誘導体は、前記有機層と水層の間で交換されつつ、相間移動触媒の機能により反応して、前記式(I)で表される(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体に変換される。
【0033】
有機反応剤溶媒には、例えばクロロホルム(CHCl)、ジクロロメタン(CHCl)等が含まれるが、これらに限定されない。これらのうち、クロロホルムが特に好ましい。
塩基性水性溶媒に含まれるアルカリ塩には、例えばKOH、NaOH、LiOH等の強アルカリ塩や、NaCO、NaHCO等の弱アルカリ塩が含まれるが、これらに限定されない。これらのうち、強アルカリ塩がより好ましい。アルカリ塩の濃度は、反応剤としての前記式(II)で表されるベンズアルデヒド誘導体の量、両溶媒の比率等を考慮して決定することができ、好ましくは1〜20M(モル濃度)である。
相間移動触媒反応を適切に行うためには、両溶媒層の比率(体積比)を1:10〜10:1とすることが好ましい。
【0034】
前記相間移動触媒には、例えば塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化ベンジルトリブチルアンモニウム等が含まれるが、これらに限定されない。相間移動触媒の添加量は、いくつかの反応パラメータ(反応剤としてのベンズアルデヒド誘導体の濃度、両溶媒層の量等)に依存するので、反応を誘発する範囲である限り、特に限定されない。
好ましくは、反応を30〜80℃において1〜4時間行う。
【0035】
好ましい実施形態においては、相間移動触媒反応の後、反応系を酸性にして、生成物の芳香環に結合した−COONaを−COOHに変換する。更に、反応系を酸性にすることにより、有機層と水層が明確に分離し、有機層(前記式(I)で表される(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体の大半はこちらに含まれる)をより容易に分割する(partitioned)ことができる。反応系は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の酸性化合物を添加することによって酸性にすることができる。反応系の好ましい酸性度はpH2以下、より好ましくはpH1以下である。
【0036】
より好ましい実施形態においては、両溶媒の層の分離を改善するため、反応物や反応に悪影響を及ぼさない非極性化合物(溶媒)を、相間移動触媒の後に、反応系に更に添加することができる。この非極性化合物には、例えばo−ジクロロベンゼン、モノクロロベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ベンゼン、ブロモベンゼン、ニトロベンゼン、トルエン、キシレン、トリクロロエチレン、エチルイソブチルケトン、酢酸等が含まれるが、これらに限定されない。非極性化合物を反応系に添加すると、上記のように層の分離が促進され、また水層に含まれている生成物((α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体)の一部が有機層に移行して、生成物の収率が向上する。非極性化合物の添加量は、上記の効果が得られる限り、特に限定されないが、二相溶媒系における両溶媒の合計体積に対して5〜200%である。
【0037】
上記方法の出発物質である、式(II)で表されるベンズアルデヒド誘導体は、公知の方法で合成することができる。例えば、アルキル(またはヘテロ環状アルキル)カルビトールクロライドをヒドロキシベンズアルデヒドに添加し、次いでそこに、最終濃度1〜4Mで反応触媒(臭化カリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム等)を添加し、90〜160℃で2〜18時間インキュベートして、式(II)で表される誘導体を合成する。
【0038】
上記相間移動触媒反応の理解の一助とすべく、水層として水酸化ナトリウムを含む水、有機層としてクロロホルムを用い、前記式(I)で表される(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体が生成する機構を示した反応式(1)を以下に示す。ただし、この機構は予期される(anticipated)ものに過ぎず、本発明の精神および範囲を制限することを意図するものではない。
【0039】
【化9】

【0040】
好ましい実施形態においては、プロセスの効率を高めるため、前記両層の分割直前に、ベンゾイル化、シアノ化、アセチル化、プロピル化、マレイル化、ベンゼンスルホニル化、アルキルベンゼンスルホニル化およびアルキルカルボニル化よりなる群から選ばれる1種以上の工程を更に実施してもよい。
【0041】
上記本発明の(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体の調製方法は、シアン化物のような毒性物質を使用せず、シアン化水素のような有毒な副生物を生成することもなく、所望の生成物を高純度・高収率で生成しうることを特徴とする。その上、従来技術の調製方法では、(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体が結晶として得られるので、反応物からこの誘導体を回収することが必要であり、これは更に困難な工程である。従来技術の方法に対して、本発明の調製方法では、(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体が水溶液として得られるので、回収工程の必要なしに、引き続いてベンゾジフラノン系染料化合物の合成に用いることができ、最終生成物の収率向上をもたらす。
【0042】
本発明はまた、既知の方法または上記の方法により調製しうる(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体を提供する。上記したように、(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体は、ベンゾジフラノン系染料化合物の調製方法における不可欠な前駆体として用いられる。
【0043】
特に、前記式(I)中のRが、下記式:
【化10】

(式中、Zは、環状またはヘテロ環状基或いは芳香族基である)
で表される化合物(a);および
前記式(I)中のRが、下記式:
【化11】

(式中、n、nおよびnはいずれも0でない)
で表される化合物(b)
はいずれも、これまでに知られていない新規な化合物である。これらの新規化合物は、本発明の対象である。これらは下記式(III)により表される。
【0044】
【化12】

【0045】
(式中、
A、D、D、D、D、X、X、X、X、Y、Y、Y、Yおよびnは、各々前記式(I)中のものと同じ意味を有し;
〜nは、各々独立に、0または1〜6の整数であり、Zは、炭素数4〜7の非置換または置換環状またはヘテロ環状基或いは非置換または置換芳香族基であるか、
〜nは、各々独立に、1〜6の整数であり、Zは、水素原子、炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基、炭素数4〜7の非置換または置換環状またはヘテロ環状基或いは非置換または置換芳香族基である。)
【0046】
本発明はまた、式(I)で表される(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体を用いて、下記式(IV)で表されるベンゾジフラノン系染料化合物を調製する方法を提供する。
【0047】
【化13】

【0048】
(式中、
A、DおよびRは各々、前記式(I)において定義したものと同じ意味を有し;
A’は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基或いは炭素数1〜6の非置換または置換アルコキシ基であり;
’は、直接結合、−O−、−S−、−SO−または−N(−R)−(式中、Rは、水素原子或いは炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基である)であり;
’は、水素原子、炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基、炭素数4〜7の非置換または置換環状またはヘテロ環状基、非置換または置換芳香族基或いは下記式:
【0049】
【化14】

(式中、
、DおよびDは、各々独立に、直接結合、−O−、−S−または−N(−R)−(式中、Rは、上記に定義したものと同じ意味を有する)であり;
、X、X、X、Y、Y、YおよびYは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子或いは炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基であり;
は、水素原子、炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基、炭素数4〜7の非置換または置換環状またはヘテロ環状基或いは非置換または置換芳香族基であり;
は、1〜6の整数であり;
〜nは、各々独立に、0または1〜6の整数であり、
ただし、
が0であるとき、DおよびDの少なくとも一方が直接結合であり;
が0であるとき、DおよびDの少なくとも一方が直接結合であり;
およびnが同時に0であるとき、Dが直接結合であり、且つDおよびDの少なくとも一方が直接結合である)
で表される基である。)
【0050】
より具体的には、式(I)で表される(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体を、下記式(V)で表される化合物と、有機溶媒中、酸触媒により縮合させ、次いで酸化する工程を含む方法により、式(IV)で表されるベンゾジフラノン系染料化合物を生成することができる。
【0051】
【化15】

(式中、A’、R’およびD’は各々、前記式(IV)において定義したものと同じ意味を有する。)
【0052】
上記方法において定義される有機溶媒には、例えばベンゼン、トルエン、o−キシレン、p−キシレン、ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、クロロナフタレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、ジクロロメタン、クロロホルム、ニトロベンゼン、メチルイソブチルケトン、酢酸等が含まれるが、これらに限定されない。ある実施形態においては、上記の有機溶媒よりなる群から選ばれる2種以上の溶媒からなる混合溶媒を用いてもよい。他の実施形態においては、混合溶媒を用いて、混合溶媒の全体積に対して0.5〜50%の硫酸またはベンゼン系有機溶媒を、上記有機溶媒に添加してもよい。
【0053】
上記方法において定義される縮合反応用酸触媒には、例えば硫酸、ベンゼンスルホン酸、ベンゼンメタンジスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、四塩化チタン、塩化アンモニウム、塩化鉄(III)、塩化ホウ素、塩化水素等が含まれるが、これらに限定されない。触媒の添加量は特に限定されないが、生成物に悪影響を及ぼすことなく縮合反応を促進しうる範囲で決定することができる。
【0054】
縮合のための反応温度は、好ましくは約50〜150℃、より好ましくは70〜115℃であり、反応時間は約5〜20時間である。
上記反応温度からわかるように、縮合反応を比較的低温で速やかに進行させて、副反応や生成物の分解を抑制し、式(IV)で表されるベンゾジフラノン系染料化合物が高純度・高収率で生成するようにする。
【0055】
上記方法において定義される酸化反応は、好ましくは、酸化剤を用いて短時間行うことができる。そのような酸化剤の例には、チオ硫酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、10%次亜塩素酸(hypochloride)ナトリウム、10%次亜塩素酸カリウム、亜塩素酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、ニトロベンゼン、ジシアノジクロロベンゾキノン、30%過酸化水素、クロラニル等が含まれるが、これらに限定されない。酸化剤の添加量は、生成物に悪影響を及ぼすことなく酸化反応が促進される範囲で決定することができる。
【0056】
酸化が完結した後、合成した生成物を溶媒(水、メタノール等)に添加するか、逆に合成した生成物を含む反応物に溶媒を注ぎ込むことにより、合成した生成物としてのベンゾジフラノン系染料化合物が結晶相で得られる。
式(I)で表される(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体と、式(V)で表される化合物の混合比は、好ましくは当量数で1:10〜10:1である。
【0057】
式(V)で表される化合物は、式(I)で表される(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体のA、DおよびRを、各々A’、D’およびR’で置換した化合物を、硫酸または硫酸−酢酸混合溶媒中で、ヒドロキノンと縮合させ、次いで酸化する工程を含む、下記反応式(2)に示す方法により製造することができる。
【0058】
【化16】

【0059】
上記方法に記載した縮合反応は、本発明が関連する分野において公知の方法で、例えば、50〜80%硫酸水溶液中、70〜110℃で実施することができる。
【0060】
本発明はまた、上記の方法により調製しうる、下記式(IV)で表される新規なベンゾジフラノン系染料化合物を提供する。特に、式(IV)で表される化合物は、これまでに知られていない新規な化合物である。
【0061】
【化17】

(式中、
Aは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基或いは炭素数1〜6の非置換または置換アルコキシ基であり;
は、−O−、−S−、−SO−または−N(−R)−(式中、Rは、水素原子或いは炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基である)であり;
は、下記式:
【0062】
【化18】

(式中、
およびDは、各々独立に、−O−、−S−または−N(−R)−(式中、Rは、上記に定義したものと同じ意味を有する)であり;
は、直接結合、−O−、−S−または−N(−R)−(式中、Rは、上記に定義したものと同じ意味を有する)であり;
、X、X、X、Y、Y、YおよびYは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子或いは炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基であり;
は、炭素数3〜6の非置換または置換アルキル基、炭素数4〜7の非置換または置換環状またはヘテロ環状基或いは非置換または置換芳香族基であり;
〜nは、各々独立に、1〜6の整数であり;
は、0または1〜6の整数である)
で表される基であり;
A’は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基或いは炭素数1〜6の非置換または置換アルコキシ基であり;
’は、直接結合、−O−、−S−、−SO−または−N(−R)−(式中、Rは、水素原子或いは炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基である)であり;
’は、水素原子、炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基、炭素数4〜7の非置換または置換環状またはヘテロ環状基、非置換または置換芳香族基或いは下記式:
【0063】
【化19】

(式中、
、DおよびDは、各々独立に、直接結合、−O−、−S−または−N(−R)−(式中、Rは、上記に定義したものと同じ意味を有する)であり;
、X、X、X、Y、Y、YおよびYは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子或いは炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基であり;
は、水素原子、炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基、炭素数4〜7の非置換または置換環状またはヘテロ環状基或いは非置換または置換芳香族基であり;
は、1〜6の整数であり;
〜nは、各々独立に、0または1〜6の整数であり、
ただし、
が0であるとき、DおよびDの少なくとも一方が直接結合であり;
が0であるとき、DおよびDの少なくとも一方が直接結合であり;
およびnが同時に0であるとき、Dが直接結合であり、且つDおよびDの少なくとも一方が直接結合である)
で表される基である。)
【0064】
これらの新規なベンゾジフラノン系化合物を、合成繊維(特にポリエステル繊維やこれと他の繊維の混合物、特にマイクロファイバー)用の染料として用いると、優れた堅牢性、染色性およびレベリング性を提供する。
更に、この新規なベンゾジフラノン系化合物は、極めて良好な付着能および接触着色(汚染)の程度の低さを特徴とする。
【0065】
更に好ましいことには、式(IV)で表される新規化合物のうち、D、DおよびDがいずれも−O−であるものは、卓越した染色特性(染料固着速度(dye fixing rate)、レベリング性)、特に、従来技術では予期し難い堅牢性を示すことが、本発明者らの行った実験により確認された。
【0066】
式(IV)で表される化合物の好ましいものは、A’が水素原子であり、D’が直接結合であり、R’が水素原子であり、A、DおよびRが各々、前記式(IV)において定義した通りであるものである。
【0067】
式(IV)で表されるベンゾジフラノン系化合物の更なる好ましいものは、Dが直接結合であり、nが0であり、Zが炭素数3〜6のアルキル基であるものである。式(IV)で表されるベンゾジフラノン系化合物のうち特に好ましいものは、Aが水素原子であり、D、DおよびDがいずれも−O−であり、Dが直接結合であり、nが0であり、Zが炭素数3〜6のアルキル基であり、A’が水素原子であり、D’が直接結合であり、R’が水素原子であるものである。
【0068】
式(IV)で表されるベンゾジフラノン系化合物の更なる好ましいものは、nおよびnが各々2であるものである。式(IV)で表されるベンゾジフラノン系化合物のうち特に好ましいものは、Aが水素原子であり、D、DおよびDがいずれも−O−であり、Dが直接結合であり、nが0であり、Zが炭素数3〜6のアルキル基であり、nおよびnが各々2であり、X、X、X、Y、YおよびYがいずれも水素原子であり、A’が水素原子であり、D’が直接結合であり、R’が水素原子であるものである。
【0069】
式(IV)で表されるベンゾジフラノン系化合物のうち、nが1であり、Dが直接結合であり、nが0であり、Zがn−プロピル基であるものが特に好ましく、中でもnおよびnが各々2であり、nが1であり、D、DおよびDがいずれも−O−であり、Dが直接結合であり、nが0であり、Zがn−プロピル基であり、AおよびA’がいずれも水素原子であり、D’が直接結合であり、R’が水素原子であるものが好ましい。
【0070】
一般に、マイクロファイバーは単位重量あたりの表面積が大きいので、少量を用いて所望の濃度まで染色を行うことが困難である。例えば、3〜5倍量の染料化合物を用いても、染色した製品における染色濃度が約1/2にしかならないことがある。これに対し、上記のような鎖の構造を有するベンゾジフラノン系染料化合物(a)、(b)および(c)は、疎水性繊維、特にマイクロファイバーやそれと他の繊維の混合物、ポリエステル混合繊維の染色において優れた効果を示すことが確認された。このことにより、染料化合物を少量しか用いなくても高濃度の染色を達成でき、よってこれらは、染色において生じる排水を有意に削減することにより、環境に優しい染料として使用することができる。
【0071】
本発明の他の目的は、本発明のベンゾジフラノン系化合物と、疎水性繊維の染色に有用な他の染料の混合物を提供することにある。疎水性繊維の染色に有用であり、良好な洗濯堅牢性を提供するこれら他の染料化合物には、例えばアントラキノン系化合物、アゾ系化合物、下記式(VI)〜(XII)で表される化合物が含まれるが、これらに限定されない。これらの染料化合物は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの染料化合物の使用量は、本発明のベンゾジフラノン系化合物との混合物の総重量に対して1〜99%とすることができる。式(IV)で表されるベンゾジフラノン系化合物、特に式(IV)で表されるベンゾジフラノン系化合物のうちの新規なものと組み合わせて、下記式(VI)〜(XII)で表される染料を用いることができる。
【0072】
【化20】

(式中、Lは、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基またはアルコキシ(炭素数1〜4)フェニルスルホニル基である。)
【0073】
【化21】

(式中、
およびPは、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、アルコキシ(炭素数1〜4)フェニルスルホニル基、シアノエチル基、シアノプロピル基、フェノキシエチル基、アルコキシ(炭素数1〜6)エチルまたはプロピル基またはアルコキシ(炭素数1〜6)カルビトキシ基であり;
、P、Q、QおよびQは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基(特にメチル基)、水酸基、アセチルアミド基、プロピオニルアミド基、ブチルカルボニルアミド基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ニトロ基またはシアノ基である。)
【0074】
【化22】

【0075】
(式中、
10は、炭素数1〜6のアルキル基(特に炭素数1〜4のアルキル基)であり;
11およびR12は、各々独立に、水素原子、シアノ基またはハロゲン原子(特に塩素原子または臭素原子)であり;
13は、炭素数1〜4のアルキル基(特にメチル基またはエチル基)、水酸基、ハロゲン原子(特に塩素原子または臭素原子)、−NH−SO−R16基または−NH−CO−R17基(式中、R16は、炭素数1〜4のアルキル基であり、R17は、炭素数1〜4のアルキル基またはアルコキシ(炭素数1〜4)アルキル(炭素数1〜4)基である)であり;
14およびR15は、各々独立に、非置換または1個以上の水酸基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜8のアルコキシアルキル基、アルキル(炭素数1〜4)−COO−基またはアルキル(炭素数1〜4)−OCO−基である。)
【0076】
好ましい混合物においては、R10が炭素数1〜4のアルキル基(特にメチル基、エチル基またはn−プロピル基)であり、R11およびR12が、各々独立に、水素原子、臭素原子またはシアノ基であり、R13が−NH−CO−R17基(式中、R17はメチル基またはエチル基である)であり、R14およびR15が、各々独立に、エチル基またはメトキシエチル基である式(VIII)で表される染料を用いる。
【0077】
極めて好ましい式(VIII)で表される染料においては、R10がメチル基、エチル基またはブチル基であり、R11が水素原子、シアノ基または臭素原子であり、R12が臭素原子またはシアノ基であり、R13がアセチルアミノ基であり、R14およびR15が、各々独立に、炭素数1〜3のアルキル基またはメトキシエチル基である。
【0078】
【化23】

(式中、R18およびR19は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基(特にメチル基、エチル基またはブチル基)、炭素数1〜6のアルコキシ基(特にメトキシ基、エトキシ基およびn−プロポキシ基)またはアルコキシ(炭素数1〜4)−アルコキシ(炭素数1〜4)カルボニル−アルコキシ(炭素数1〜4)基であるか、共にヘテロシクリルアルコキシ(炭素数1〜4)基(特にテトラヒドロフラニルアルコキシ(炭素数1〜4)基)である。)
【0079】
好ましい式(IX)で表される染料においては、R18およびR19のいずれかが水素原子でない。
極めて好ましい式(IX)で表される染料においては、R18およびR19のいずれかが水素原子であり、他方の置換基が炭素数1〜3のアルコキシ基またはアルコキシ(炭素数1〜3)−アルコキシ(炭素数1〜3)カルボニル−アルコキシ(炭素数1〜2)基である。
【0080】
【化24】

【0081】
(式中、
20およびR21は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子(特に塩素原子または臭素原子)またはシアノ基であり;
22は、炭素数1〜6のアルキル基(特にメチル基)、ニトロ基または炭素数1〜4のアルコキシ基であり;
23およびR24は、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはアルコキシ(炭素数1〜4)アルキル(炭素数1〜4)基であり;
25は、炭素数1〜4のアルキル基(特にメチル基またはエチル基)、水酸基、ハロゲン原子(特に塩素原子または臭素原子)、−NH−SO−R16基または−NH−CO−R17基(式中、R16およびR17は、前記式(VIII)のものと同じ意味を有する)である。)
【0082】
好ましい式(X)で表される染料においては、R20およびR21がシアノ基であり、R22が炭素数1〜3のアルキル基であり、R23およびR24が、各々独立に、炭素数2〜4のアルキル基であり、R25がアゾ基に対してオルト位にあって、−NH−SO−R16基(式中、R16は、炭素数1〜3のアルキル基である)である。
【0083】
【化25】

【0084】
(式中、
26は、炭素数1〜6のアルキル基、ニトロ基または炭素数1〜6のアルコキシ基であり;
27は、シアノ基、ニトロ基またはハロゲン原子(特に塩素原子または臭素原子)であり;
28は、水素原子、シアノ基、ニトロ基またはハロゲン原子(特に塩素原子または臭素原子)であり;
29は、炭素数1〜6のアルキル基(特にメチル基)であり;
30は、シアノ基であり;
31は、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ(炭素数1〜4)アルキル(炭素数1〜4)基、フェニルアルキル(炭素数1〜4)基またはフェノキシアルキル(炭素数1〜4)基であり;
32は、水素原子である。)
【0085】
好ましい式(XI)で表される染料においては、R26が炭素数1〜4のアルコキシ基(特にメトキシ基)であり、R27がニトロ基であり、R28が水素原子であり、R29がメチル基であり、R30がシアノ基であり、R31が炭素数1〜4のアルキル基またはアルコキシ(炭素数1〜4)アルキル(炭素数1〜4)基であり、R32が水酸基である。
【0086】
【化26】

【0087】
(式中、R33は、非置換または炭素数1〜4のアルコキシ基(特に炭素数1〜2のアルコキシ基)で置換された炭素数1〜6のアルキル基(特に炭素数2〜4のアルキル基)、或いはアルコキシ(炭素数1〜4)アルコキシ(炭素数1〜4)基(特にアルコキシ(炭素数1〜2)アルコキシ(炭素数2〜3)基)である。)
【0088】
式(XII)で表される染料を含む混合物のうち好ましいものは、式(XII)で表される、異なる2種の染料を含むもの、特に、一方の染料におけるR33がアルコキシ(炭素数1〜2)アルキル(炭素数2〜3)基)であり、他方の染料におけるR33がアルコキシ(炭素数1〜2)アルコキシ(炭素数2〜3)アルキル(炭素数2〜3)基)であるものである。
【0089】
本発明の好ましい一実施形態は、式(IV)で表される染料と、式(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)または(XII)で表される少なくとも1種の染料の混合物であって、
Aは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基或いは炭素数1〜6の非置換または置換アルコキシ基であり;
は、−O−、−S−、−SO−または−N(−R)−(式中、Rは、水素原子或いは炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基である)であり;
は、下記式:
【0090】
【化27】

(式中、
およびDは、各々独立に、−O−、−S−または−N(−R)−(式中、Rは、上記に定義したものと同じ意味を有する)であり;
は、直接結合、−O−、−S−または−N(−R)−(式中、Rは、上記に定義したものと同じ意味を有する)であり;
、X、X、X、Y、Y、YおよびYは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子或いは炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基であり;
は、炭素数3〜6の非置換または置換アルキル基、炭素数4〜7の非置換または置換環状またはヘテロ環状基或いは非置換または置換芳香族基であり;
〜nは、各々独立に、1〜6の整数であり;
は、0または1〜6の整数である)
で表される基であり;
【0091】
A’は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基或いは炭素数1〜6の非置換または置換アルコキシ基であり;
’は、直接結合、−O−、−S−、−SO−または−N(−R)−(式中、Rは、水素原子或いは炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基である)であり;
’は、水素原子、炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基、炭素数4〜7の非置換または置換環状またはヘテロ環状基、非置換または置換芳香族基或いは下記式:
【0092】
【化28】

(式中、
、DおよびDは、各々独立に、直接結合、−O−、−S−または−N(−R)−(式中、Rは、上記に定義したものと同じ意味を有する)であり;
、X、X、X、Y、Y、YおよびYは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子或いは炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基であり;
は、水素原子、炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基、炭素数4〜7の非置換または置換環状またはヘテロ環状基或いは非置換または置換芳香族基であり;
は、1〜6の整数であり;
〜nは、各々独立に、0または1〜6の整数であり、
ただし、
が0であるとき、DおよびDの少なくとも一方が直接結合であり;
が0であるとき、DおよびDの少なくとも一方が直接結合であり;
およびnが同時に0であるとき、Dが直接結合であり、且つDおよびDの少なくとも一方が直接結合である)
で表される基である。
【0093】
本発明のより好ましい実施形態は、式(IV)で表される染料と、式(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)または(XII)で表される少なくとも1種の染料、特に、式(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)または(XII)で表される少なくとも1種の好ましい染料の混合物であって、
、DおよびDがいずれも−O−である混合物である。
【0094】
本発明の最も好ましい実施形態は、式(IV)で表される染料と、式(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)または(XI)で表される少なくとも1種の好ましい染料の混合物であって、
AおよびA’がいずれも水素原子であり、Dが−O−であり、D’が直接結合であり、Rが下記式:
【化29】

(式中、DおよびDはいずれも−O−であり、nおよびnはいずれも2であり、nおよびnはいずれも0であり、Dは直接結合であり、Zは炭素数3〜6のアルキル基である)
で表される基であり、R’が水素原子である混合物である。
【0095】
本発明の極めて好ましい更なる実施形態は、式(IV)で表される染料と、式(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)または(XII)で表される少なくとも1種の染料、特に、式(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)または(XII)で表される少なくとも1種の好ましい染料の混合物であって、
A、A’、R、R’、DおよびD’が、各々上記の好ましい、より好ましいまたは更に好ましい式(IV)で表される染料において定義したものと同じ意味を有する混合物、特に、
A’が水素原子であり、D’が直接結合であり、R’が水素原子であり、A、DおよびRが、各々上記の好ましい、更に好ましいまたは極めて好ましい化合物において定義したものと同じ意味を有する混合物である。
【0096】
本発明の染料化合物は、カラーインデックス(c.i.)の黄色184−1(Yellow 184−1)、黄色82(Yellow 82)、橙色118(Orange 118)、赤色362(Red 362)、赤色364(Red 364)、赤色277(Red 277)等(いずれもアントラキノン系染料化合物)と共に用いると、極めて明るい色調を提供することができる。また、ポリエステル繊維に対し良好な洗濯堅牢性を有する、カラーインデックスの黄色114(Yellow 114)、黄色149(Yellow 149)、橙色148(Orange 148)、赤色74−1(Red 74−1)、赤色360(Red 360)、青色257(Blue 257)、褐色19(Brown 19)、青色284(Blue 284)、赤色311(Red 311)等と共に用いると、様々な色調と、ポリエステル繊維に対する優れた洗濯堅牢性を提供することができる。
【0097】
また、本発明の染料化合物は、ディスパーゾル(Dispersol)範囲の化合物および/またはシノロン(Synolon)範囲の化合物(いずれもアゾ系染料化合物)と共に用いると、ポリエステル繊維に対する良好な洗濯堅牢性および昇華堅牢性と共に、その織布に対する極めて良好な堅牢性を提供することができる。
【0098】
また、本発明の染料化合物は、テラシル(Terasil)範囲、ディスパーゾル範囲および/またはシノロン範囲の洗濯堅牢分散染料(washfast disperse dyes)(いずれもアゾ系染料化合物)と共に用いると、ポリエステル繊維に対する良好な洗濯堅牢性および昇華堅牢性と共に、その織布に対する極めて良好な堅牢性を提供することができる。
【0099】
更にまた、式(IV)で表される本発明のベンゾジフラノン系化合物は、可塑性樹脂、カラーフィルター、カラートナー等の着色剤として用いることができる。本発明者らが行った実験によれば、式(IV)で表される化合物は、良好な熱安定性、着色再現性等を有しているので、射出成型、紡績工程等に適用することができ、またカラーフィルターやカラートナー用の着色剤として優れた特性を有している。
【実施例】
【0100】
以降、実施例および実験例により本発明をより詳細に記載するが、本発明の範囲はそれらに限定されない。以降、「部」は「重量部」を意味する。
【0101】
実施例1
22.6部の4−プロポキシエトキシベンズアルデヒドを、19.6部のクロロホルムおよび2.5部の塩化ベンジルトリエチルアンモニウムと混合し、得られた混合物を約55℃に加熱して、これに11部の水酸化ナトリウムを含む水を、3時間かけて添加した。得られた混合物を、55〜65℃で2時間反応させた。次いで、反応混合物に11部の塩酸と40部のo−ジクロロベンゼンを添加して酸性にし、その後有機層(クロロホルムおよびo−ジクロロベンゼン)を分割して、23.5gの4−プロポキシエトキシ(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸を得た(収率93%)。
【0102】
実施例2
21.8部の4−ブトキシエトキシベンズアルデヒドを、19.6部のクロロホルムおよび2.5部の塩化ベンジルトリエチルアンモニウムと混合し、得られた混合物を約57℃に加熱して、これに11部の水酸化ナトリウムを含む水を、4時間かけて添加した。得られた混合物を、55〜60℃で2時間反応させた。次いで、反応混合物に11部の塩酸と30部のクロロホルムを添加して酸性にし、その後有機層(クロロホルム)を分割して、21.1gの4−ブトキシエトキシ(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸を得た(収率95%)。
【0103】
実施例3
35部の4−テトラヒドロキシパーフリルオキシカルビトールベンズアルデヒド(4−tetrahydroxyperfuryloxycarbitol benzaldehyde)を、19.6部のクロロホルムおよび2.5部の塩化ベンジルトリエチルアンモニウムと混合し、得られた混合物を約57℃に加熱して、これに13部の水酸化ナトリウムを含む水を、3時間かけて添加した。得られた混合物を、55〜60℃で2時間反応させた。次いで、反応混合物に11部の塩酸と30部のクロロホルムを添加して酸性にし、その後有機層(クロロホルム)を分割して、35.6gの4−テトラヒドロキシパーフリルオキシカルビトール(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸(4−tetrahydroxyperfuryloxycarbitol−α−hydroxybenzeneacetic acid)を得た(収率93%)。
【0104】
実施例4
22.4部の4−メトキシカルビトキシベンズアルデヒド(4−methoxycarbitoxy benzaldehyde)を、19.6部のクロロホルムおよび2.5部の塩化ベンジルトリエチルアンモニウムと混合し、得られた混合物を約58℃に加熱して、これに13部の水酸化ナトリウムを含む水を、5時間かけて添加した。得られた混合物を、55〜60℃で2時間反応させた。次いで、反応混合物に11部の塩酸を添加して酸性にし、その後有機層(クロロホルム)を分割して、25.1gの4−メトキシカルビトキシ(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸(4−methylcarbitoxy−α−hydroxybenzeneacetic acid)を得た(収率92%)。
【0105】
実施例5〜17
4−プロポキシエトキシベンズアルデヒドに替えて、下記表1に列挙した化合物を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、種々の(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体を合成した。
【化30】

【0106】
【表1】

【0107】
実施例18〜30
4−プロポキシエトキシベンズアルデヒドに替えて、下記表2に列挙した化合物を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、種々の(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体を合成した。
【化31】

【0108】
【表2】

【0109】
実施例31〜43
4−プロポキシエトキシベンズアルデヒドに替えて、下記表3に列挙した化合物を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、種々の(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体を合成した。
【化32】

【0110】
【表3】

【0111】
実施例44
11部の実施例1で得た(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体と、6.8部の5−ヒドロキシ−2−オキソ−3−フェニル−2,3−ジヒドロベンゾフランを、148部の酢酸−硫酸混合溶媒(酢酸:硫酸=95:10)に添加して、縮合反応を約77℃で6時間行った。次いで、そこに7.44部の過硫酸アンモニウムを添加して、酸化反応を攪拌下に100℃で1時間超行った。反応混合物を室温まで冷却し、次いでこれに28.6部のメタノールを添加して結晶化させた。結晶を濾取し、メタノールおよび水で数回洗浄して、15.5gの下記式で表されるベンゾジフラノン系染料化合物(λmax=499nm/CHCl)を得た。
【0112】
【化33】

【0113】
実施例45
7.0部の実施例2で得た(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体と、6.8部の5−ヒドロキシ−2−オキソ−3−フェニル−2,3−ジヒドロベンゾフランを、クロロベンゼン−硫酸混合溶媒(クロロベンゼン:30重量部、硫酸:1.5重量部)に添加して、縮合反応を約77℃で7時間行った。次いで、そこに7.44部の過硫酸アンモニウムを添加して、酸化反応を攪拌下に100℃で1時間超行った。反応混合物を室温まで冷却し、次いでこれに28.6部のメタノールを添加して結晶化させた。結晶を濾取し、メタノールおよび水で数回洗浄して、10.2gの下記式で表されるベンゾジフラノン系染料化合物(λmax=500nm/CHCl)を得た。
【0114】
【化34】

【0115】
実施例46
12.24部の実施例3で得た(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体と、6.8部の5−ヒドロキシ−2−オキソ−3−フェニル−2,3−ジヒドロベンゾフランを、クロロベンゼン−硫酸混合溶媒(クロロベンゼン:30重量部、硫酸:2重量部)に添加して、縮合反応を約77℃で7時間行った。次いで、そこに7.44部の過硫酸アンモニウムを添加して、酸化反応を攪拌下に100℃で1時間超行った。反応混合物を室温まで冷却し、次いでこれに28.6部のメタノールを添加して結晶化させた。結晶を濾取し、メタノールおよび水で数回洗浄して、11.5gの下記式で表されるベンゾジフラノン系染料化合物(λmax=500nm/CHCl)を得た。
【0116】
【化35】

【0117】
実施例47
6.7部の実施例34で得た(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体と、6.8部の5−ヒドロキシ−2−オキソ−3−フェニル−2,3−ジヒドロベンゾフランを、o−ジクロロベンゼン−硫酸混合溶媒(o−ジクロロベンゼン:20重量部、硫酸:2重量部)に添加して、縮合反応を約77℃で7時間行った。次いで、そこに7.8部のクロラニルを添加して、酸化反応を攪拌下に100℃で1時間超行った。反応混合物を室温まで冷却し、次いでこれに28.6部のメタノールを添加して結晶化させた。結晶を濾取し、メタノールおよび水で数回洗浄して、8.9gの下記式で表されるベンゾジフラノン系染料化合物(λmax=500nm/CHCl)を得た。
【0118】
【化36】

【0119】
実施例48
7.6部の実施例36で得た(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体と、6.8部の5−ヒドロキシ−2−オキソ−3−フェニル−2,3−ジヒドロベンゾフランを、o−ジクロロベンゼン−硫酸混合溶媒(o−ジクロロベンゼン:20重量部、硫酸:2重量部)に添加して、縮合反応を約77℃で7時間行った。次いで、そこに7.8部のクロラニルを添加して、酸化反応を攪拌下に100℃で1時間超行った。反応混合物を室温まで冷却し、次いでこれに28.6部のメタノールを添加して結晶化させた。結晶を濾取し、メタノールおよび水で数回洗浄して、9.9gの下記式で表されるベンゾジフラノン系染料化合物(λmax=498nm/CHCl)を得た。
【0120】
【化37】

【0121】
実施例49〜117
実施例1と同様の方法で合成した(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体を用いて、実施例44と同様の方法で、下記表4に列挙した種々のベンゾジフラノン系染料化合物を合成し、その色調を確認した。
【化38】

【0122】
【表4−1】

【表4−2】

【表4−3】

【表4−4】

【0123】
これらの実施例は、単に本発明の例証的な化合物を示したに過ぎず、本発明の範囲に含まれる更なる化合物も種々調製することができる。
【0124】
実験例1
各2部の、いくつかの実施例において得られたベンゾジフラノン系染料化合物を、各々水性媒体中、6部のナフタレンスルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物の作用により微細に粉砕し、そこに100部の水を添加して液状染料分散液を調製し、次いでこれを噴霧乾燥して染料粉末を形成した。0.6部の前記染料粉末を含む染色槽にポリエステル布を浸漬し、高圧下、132℃で60分間染色を行った。染色する布としては、ポリエステル繊維、ポリエステル/ナイロンマイクロファイバーおよびポリエステル/ウール混合物の布をそれぞれ用いた。染色した布を、3部の水酸化ナトリウム、3部の硫化水素および3部の両性界面活性剤を含む3000部の水に浸漬し、85℃で10分間還元洗浄処理(reduction−rinsing treatment)に付し、次いで水洗・乾燥した。得られた染色布を、柔軟剤(10g/L、Edunine V Fluid(登録商標) ICI)および静電防止剤(5g/L、Edunine AT−30(登録商標) ICI)を含むパディング液(padding liquor)に浸漬し、次いで含浸量(pick−up rate)80%で均一に圧搾した(squeezed)。以上の手順をもう一度繰り返した後、布を90℃で2分間予備乾燥し、170℃で1分間ヒートセッティングを行い、次いで後処理を行った。
【0125】
後処理後の得られた染色布の染料固着速度を、コンピューター調色装置(computer color matching machine)(CCM)を用いて測定し、また以下に記載する手順により、いくつかの堅牢性を測定した。結果を下記表5に示す。
【0126】
(1)洗濯堅牢性:
染色布および白布を、洗剤(5g/L)およびソーダ灰(2g/L)を含む溶液に浸漬し、10個の鋼球を用いて60℃で30分間攪拌し、染色布における色調変化およびおよび白布における汚染を測定した。
【0127】
(2)光堅牢性:
退色試験装置(fading testing device)(キセノンランプ使用)を用いて、染色布を20時間試験し、その色調変化を測定した。
【0128】
(3)昇華堅牢性:
染色布と白布を互いに重ね合わせ、
昇華試験装置(sublimation testing device)(加熱板)を用いて、圧縮下に180℃で30分間試験し、染料の白布への移行度を測定した。
【0129】
【表5】

【0130】
試験結果からわかるように、ベンゾジフラノン系染料化合物を用いて染色した布の多くは、洗濯堅牢性が良好であったが、染料固着速度(レベリング性)および他の堅牢性には差が見られた。例えば、実施例47のベンゾジフラノン系染料化合物(良好な洗濯堅牢性を必要とするスポーツ用品用の代表的な染料化合物である)は、他の実施例に比して、染料固着速度、光堅牢性および昇華堅牢性が良好でなかった。これに対し、実施例46および62の染料化合物は、全ての堅牢性に関して良好な効果を示し、またマイクロファイバー、繊維混合物等に対して優れた染料固着速度を示した。
【0131】
実験例2
2.6部の実施例1において得られたベンゾジフラノン系染料化合物を、水性媒体中、6.4部のリグニンスルホン酸の作用により微細に粉砕して染料粉末を形成した。これを、70部の熱水と、60部の下記表6に示す組成を有する乳濁ペーストからなる混合物に添加して、プリント用ペーストを調製した。
【0132】
【表6】

【0133】
上記で得られたプリント用ペーストを用いて、ポリエステル布にプリントを施し、予備乾燥の後、170℃で7分間水蒸気処理した(steamed)。熱処理した染色布を、実験例1と同様に試験して、いくつかの堅牢性を測定した。結果は実験例1と非常に類似していた。
【0134】
実験例3
実験例1で用いた化合物のうち、実施例46、48および62の化合物を用いて、以下の実験を行った。20部の各化合物を含む分散液に、1.1部の酢酸および4.8部の酢酸ナトリウムを添加し、これに他の染料化合物を、下記表7に示す混合比で添加し、次いで3000部の水を添加して、染色溶液を調製した。これらの染色溶液を用い、実験例1と同様にしてポリエステル布を染色し、染色溶液のpH依存性および安定性、並びに染色布の堅牢性を測定した。結果を下記表7に示す。
【0135】
pH依存性は、染色溶液のpHを弱酸性からアルカリ性条件まで種々変更して染色を行うとき、染色布の色調および染料固着速度が安定であるか否かを確認することにより測定した。染色溶液の安定性は、長期間保存後の化合物を用いて染色を行うとき、染色布の色調および染料固着速度が変化するか否かを確認することにより測定した。堅牢性は、実験例1と同様にして測定した。
【0136】
【表7】

【0137】
表7からわかるように、本発明のベンゾジフラノン系染料化合物は、他の染料化合物と組み合わせて用いても優れた特性を示す。
【0138】
実験例4
実施例46、48および62の化合物を、各々下記式で表される染料化合物と混合して染料組成物を調製し、それらにより染色した製品の堅牢性を、実験例1と同様にして測定した。両染料成分の混合比は1:1(重量)とした。結果を下記表8に開示する。
【化39】

【0139】
【表8】

【0140】
上記表8からわかるように、本発明のベンゾジフラノン系染料化合物は、上記の式で表される染料化合物と組み合わせて用いても優れた特性を示す。
【0141】
実験例5
本発明のベンゾジフラノン系染料化合物のカルビトキシ基中に存在する炭素原子数に依存する、マイクロファイバーに対する染色能を調べるため、下記表9に列挙した化合物を、上記実施例と同様にして合成し、マイクロファイバー(1%)に対する実験例1の実験を繰り返した。結果を下記表9に開示する。
【化40】

【0142】
【表9】

【0143】
上記表9からわかるように、意外にも、炭素数4のブトキシカルビトキシ基を有する化合物(以降「ブトキシカルビトール化合物」と称する)が、マイクロファイバーの染色において、他のカルビトキシ基を有する化合物に比して優れた特性を示すことが確認された。特に、染料固着速度に関しては、ブトキシカルビトール化合物は、メトキシおよびエトキシカルビトール化合物に対して2倍以上、またペントキシカルビトール化合物に対しても1/2以上の良好な効果を示した。このような結果はこれまでに知られていなかったことであり、本発明者らが初めて見出したものであることに留意すべきである。この結果、本発明者らは、当該技術において、ブトキシカルビトール化合物は、マイクロファイバーの染色に極めて有用な染料化合物であることを見出した。これに対し、ペントキシカルビトール化合物は、合成後に結晶化を達成することができないため、染料化合物として利用することができない。
【0144】
実験例6
本発明のベンゾジフラノン系化合物がカラーフィルター用着色剤として使用可能なことを確認するため、実施例46、48および62の化合物を各々用いて、特許文献11に記載の方法により、電気積層コーティング(electrical laminate coating)用ペーストを調製し、特許文献12に記載の方法と同等の評価実験を行った。結果を下記表10に開示する。
【0145】
【表10】

【0146】
実験結果から、カラーフィルターの調製(酸性度の低いアニオン性樹脂を含む電気積層カラーコーティングを使用)に本発明のベンゾジフラノン系化合物を用いると、パターン現象(pattern phenomenon)の自由度が高まり、プロセスウィンドウ(process window)が広がると共に、広い表面を有するカラーフィルターを高収率で製造することができることが確認された。
【0147】
実験例7
本発明のベンゾジフラノン系化合物が成型樹脂用の着色剤としても使用可能なことを確認するため、以下の実験を行った。
【0148】
まず、500gの一般的なポリエステル樹脂、0.1gの実施例46、48または62の化合物および1.0gのTiOをポリエステル製の袋に入れて混合し、射出成型機により射出成型(段階的に約235、225および190℃に設定)して、複数のチップを製造した。
また、500gのABS樹脂、0.2gの実施例46、48または62の化合物および2.0gのTiOをポリエチレン製の袋に入れて混合し、射出成型機により射出成型(段階的に約240、230および190℃に設定)して、複数のチップを製造した。
これらのチップの色調をCCMにより測定した。その結果は、上記の化合物がこれらの樹脂の着色に適することを示していた。
【0149】
実験例8
本発明のベンゾジフラノン系化合物がカラートナー用の着色剤としても使用可能なことを確認するため、特許文献13に記載の方法により、実施例46、48または62の化合物を用いて微粒子を調製した。この微粒子を試験して、カラートナーとしての利用の可能性を調べたところ、優れた結果が得られた。
また、同じ化合物を用いてインク組成物を調製し、試験した。同様に、優れた結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明の調製方法によれば、(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体を、高純度・高収率で、毒性物質を使用したり、有毒な副生物を生成したりすることなく、容易に調製することができる。そのような(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体を前駆体として用いて合成を行うと、いくつかの新規なベンゾジフラノン系染料化合物は、一般的な合成繊維物質(ポリエステル繊維およびそれと他の繊維の混合物など)、特にマイクロファイバーに対して優れた堅牢性、染料固着速度およびレベリング性を有し、また可塑性樹脂、カラートナー、カラーフィルター等の着色剤として用いることもできる。
【0151】
本発明は、その精神および必須の特徴から逸脱することなく、いくつかの実施形態となすことができるので、上記の実施例は、別途特定のない限り、先行する記載の詳細によって何ら限定されるものではないことも理解すべきであり、むしろ、添付の特許請求の範囲に定義されたその精神および範囲において、広く解釈すべきものである。従って、添付の特許請求の範囲に含まれるあらゆる変更および修飾、並びにそのような範囲の等価物は、特許請求の範囲に包含されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体の調製方法であって、
互いに混合しない有機反応剤溶媒および塩基性水性溶媒からなり、前記有機反応剤溶媒は、アルカリ塩処理によりカルベンを放出しうる二相溶媒系中で、下記式(II)で表されるベンズアルデヒド誘導体を、相間移動触媒を用いて反応させて、下記式(I)で表される(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体を合成する工程
【化1】

(式中、
Aは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基或いは炭素数1〜6の非置換または置換アルコキシ基であり;
は、−O−、−S−、−SO−または−N(−R)−(式中、Rは、水素原子或いは炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基である)であり;
は、水素原子、炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基、炭素数4〜7の非置換または置換環状またはヘテロ環状基、非置換または置換芳香族基或いは下記式:
【化2】

(式中、
、DおよびDは、各々独立に、直接結合、−O−、−S−または−N(−R)−(式中、Rは、上記に定義したものと同じ意味を有する)であり;
、X、X、X、Y、Y、YおよびYは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子或いは炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基であり;
は、水素原子、炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基、炭素数4〜7の非置換または置換環状またはヘテロ環状基或いは非置換または置換芳香族基であり;
は、1〜6の整数であり;
〜nは、各々独立に、0または1〜6の整数であり、
ただし、
が0であるとき、DおよびDの少なくとも一方が直接結合であり;
が0であるとき、DおよびDの少なくとも一方が直接結合であり;
およびnが同時に0であるとき、Dが直接結合であり、且つDおよびDの少なくとも一方が直接結合である)
で表される基である)
を含むことを特徴とする調製方法。
【請求項2】
前記有機反応剤溶媒は、クロロホルム(CHCl)またはジクロロメタン(CHCl)であり;
前記塩基性水性溶媒に含まれるアルカリ塩は、強アルカリ塩または弱アルカリ塩であり;
前記相間移動触媒は、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウムまたは塩化ベンジルトリブチルアンモニウムである
ことを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
前記相間移動触媒の後に、反応物に悪影響を及ぼさず、前記両溶媒の層の分離を改善する非極性化合物(溶媒)を、反応系に更に添加することを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項4】
前記非極性化合物は、o−ジクロロベンゼン、モノクロロベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ベンゼン、ブロモベンゼン、ニトロベンゼン、トルエン、キシレン、トリクロロエチレン、エチルイソブチルケトンおよび酢酸よりなる群から選ばれる非水性有機溶媒であることを特徴とする請求項3に記載の調製方法。
【請求項5】
プロセスの効率を高めるため、前記両層の分割直前に、ベンゾイル化、シアノ化、アセチル化、プロピル化、マレイル化、ベンゼンスルホニル化、アルキルベンゼンスルホニル化およびアルキルカルボニル化よりなる群から選ばれる1種以上の工程を更に実施することを特徴とする請求項3に記載の調製方法。
【請求項6】
請求項1に記載の調製方法により得られる、前記式(I)で表される(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体。
【請求項7】
前記式(I)中のRが、下記式:
【化3】

(式中、Zは、環状またはヘテロ環状基或いは芳香族基である)
で表される化合物(a);または
前記式(I)中のRが、下記式:
【化4】

(式中、n、nおよびnはいずれも0でない)
で表される化合物(b)
であることを特徴とする請求項6に記載の(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体。
【請求項8】
ベンゾジフラノン系染料化合物の調製方法であって、
請求項6に記載の、前記式(I)で表される(α−ヒドロキシ)フェニル酢酸誘導体を、下記式(V)で表される化合物と、有機溶媒中、酸触媒により縮合させる工程;および
酸化により下記式(IV)で表されるベンゾジフラノン系染料化合物を調製する工程
【化5】

(式中、
A、DおよびRは各々、前記式(I)において定義したものと同じ意味を有し;
A’は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基或いは炭素数1〜6の非置換または置換アルコキシ基であり;
’は、直接結合、−O−、−S−、−SO−または−N(−R)−(式中、Rは、水素原子或いは炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基である)であり;
’は、水素原子、炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基、炭素数4〜7の非置換または置換環状またはヘテロ環状基、非置換または置換芳香族基或いは下記式:
【化6】

(式中、
、DおよびDは、各々独立に、直接結合、−O−、−S−または−N(−R)−(式中、Rは、上記に定義したものと同じ意味を有する)であり;
、X、X、X、Y、Y、YおよびYは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子或いは炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基であり;
は、水素原子、炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基、炭素数4〜7の非置換または置換環状またはヘテロ環状基或いは非置換または置換芳香族基であり;
は、1〜6の整数であり;
〜nは、各々独立に、0または1〜6の整数であり、
ただし、
が0であるとき、DおよびDの少なくとも一方が直接結合であり;
が0であるとき、DおよびDの少なくとも一方が直接結合であり;
およびnが同時に0であるとき、Dが直接結合であり、且つDおよびDの少なくとも一方が直接結合である)
で表される基である)
を含むことを特徴とする調製方法。
【請求項9】
下記式(IV):
【化7】

(式中、
Aは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基或いは炭素数1〜6の非置換または置換アルコキシ基であり;
は、−O−、−S−、−SO−または−N(−R)−(式中、Rは、水素原子或いは炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基である)であり;
は、下記式:
【化8】

(式中、
およびDは、各々独立に、−O−、−S−または−N(−R)−(式中、Rは、上記に定義したものと同じ意味を有する)であり;
は、直接結合、−O−、−S−または−N(−R)−(式中、Rは、上記に定義したものと同じ意味を有する)であり;
、X、X、X、Y、Y、YおよびYは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子或いは炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基であり;
は、炭素数3〜6の非置換または置換アルキル基、炭素数4〜7の非置換または置換環状またはヘテロ環状基或いは非置換または置換芳香族基であり;
〜nは、各々独立に、1〜6の整数であり;
は、0または1〜6の整数である)
で表される基であり;
A’は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基或いは炭素数1〜6の非置換または置換アルコキシ基であり;
’は、直接結合、−O−、−S−、−SO−または−N(−R)−(式中、Rは、水素原子或いは炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基である)であり;
’は、水素原子、炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基、炭素数4〜7の非置換または置換環状またはヘテロ環状基、非置換または置換芳香族基或いは下記式:
【化9】

(式中、
、DおよびDは、各々独立に、直接結合、−O−、−S−または−N(−R)−(式中、Rは、上記に定義したものと同じ意味を有する)であり;
、X、X、X、Y、Y、YおよびYは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子或いは炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基であり;
は、水素原子、炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基、炭素数4〜7の非置換または置換環状またはヘテロ環状基或いは非置換または置換芳香族基であり;
は、1〜6の整数であり;
〜nは、各々独立に、0または1〜6の整数であり、
ただし、
が0であるとき、DおよびDの少なくとも一方が直接結合であり;
が0であるとき、DおよびDの少なくとも一方が直接結合であり;
およびnが同時に0であるとき、Dが直接結合であり、且つDおよびDの少なくとも一方が直接結合である)
で表される基である)
で表される化合物。
【請求項10】
、DおよびDはいずれも−O−であることを特徴とする請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
は直接結合であり、nは0であり、Zは炭素数3〜6のアルキル基であることを特徴とする請求項9に記載の化合物。
【請求項12】
およびnは各々2であることを特徴とする請求項9に記載の化合物。
【請求項13】
は1であり、Dは直接結合であり、nは0であり、Zはn−プロピル基であることを特徴とする請求項9に記載の化合物。
【請求項14】
A’は水素原子であり、D’は直接結合であり、R’は水素原子であることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の化合物。
【請求項15】
請求項9に記載の化合物を用いることを特徴とする疎水性繊維物質の染色方法。
【請求項16】
前記疎水性繊維物質は、ポリエステル繊維、ポリエステルマイクロファイバー、それらと他の繊維の混合物または疎水性繊維織布であることを特徴とする請求項15に記載の染色方法。
【請求項17】
請求項9に記載の化合物を着色剤として用いることを特徴とする可塑性樹脂、カラーフィルターまたはカラートナーの着色方法。
【請求項18】
下記式(IV):
【化10】

(式中、
Aは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基或いは炭素数1〜6の非置換または置換アルコキシ基であり;
は、−O−、−S−、−SO−または−N(−R)−(式中、Rは、水素原子或いは炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基である)であり;
は、下記式:
【化11】

(式中、
およびDは、各々独立に、−O−、−S−または−N(−R)−(式中、Rは、上記に定義したものと同じ意味を有する)であり;
は、直接結合、−O−、−S−または−N(−R)−(式中、Rは、上記に定義したものと同じ意味を有する)であり;
、X、X、X、Y、Y、YおよびYは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子或いは炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基であり;
は、炭素数3〜6の非置換または置換アルキル基、炭素数4〜7の非置換または置換環状またはヘテロ環状基或いは非置換または置換芳香族基であり;
〜nは、各々独立に、1〜6の整数であり;
は、0または1〜6の整数である)
で表される基であり;
A’は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基或いは炭素数1〜6の非置換または置換アルコキシ基であり;
’は、直接結合、−O−、−S−、−SO−または−N(−R)−(式中、Rは、水素原子或いは炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基である)であり;
’は、水素原子、炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基、炭素数4〜7の非置換または置換環状またはヘテロ環状基、非置換または置換芳香族基或いは下記式:
【化12】

(式中、
、DおよびDは、各々独立に、直接結合、−O−、−S−または−N(−R)−(式中、Rは、上記に定義したものと同じ意味を有する)であり;
、X、X、X、Y、Y、YおよびYは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子或いは炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基であり;
は、水素原子、炭素数1〜6の非置換または置換アルキル基、炭素数4〜7の非置換または置換環状またはヘテロ環状基或いは非置換または置換芳香族基であり;
は、1〜6の整数であり;
〜nは、各々独立に、0または1〜6の整数であり、
ただし、
が0であるとき、DおよびDの少なくとも一方が直接結合であり;
が0であるとき、DおよびDの少なくとも一方が直接結合であり;
およびnが同時に0であるとき、Dが直接結合であり、且つDおよびDの少なくとも一方が直接結合である)
で表される基である)
で表される少なくとも1種の染料と、
下記式(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)または(XII)で表される少なくとも1種の染料の混合物。
【化13】

(式中、Lは、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基またはアルコキシ(炭素数1〜4)フェニルスルホニル基である。)
【化14】

(式中、
およびPは、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、アルコキシ(炭素数1〜4)フェニルスルホニル基、シアノエチル基、シアノプロピル基、フェノキシエチル基、アルコキシ(炭素数1〜6)エチルまたはプロピル基またはアルコキシ(炭素数1〜6)カルビトキシ基であり;
、P、Q、QおよびQは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基(特にメチル基)、水酸基、アセチルアミド基、プロピオニルアミド基、ブチルカルボニルアミド基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ニトロ基またはシアノ基である。)
【化15】

(式中、
10は、炭素数1〜6のアルキル基(特に炭素数1〜4のアルキル基)であり;
11およびR12は、各々独立に、水素原子、シアノ基またはハロゲン原子(特に塩素原子または臭素原子)であり;
13は、炭素数1〜4のアルキル基(特にメチル基またはエチル基)、水酸基、ハロゲン原子(特に塩素原子または臭素原子)、−NH−SO−R16基または−NH−CO−R17基(式中、R16は、炭素数1〜4のアルキル基であり、R17は、炭素数1〜4のアルキル基またはアルコキシ(炭素数1〜4)アルキル(炭素数1〜4)基である)であり;
14およびR15は、各々独立に、非置換または1個以上の水酸基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜8のアルコキシアルキル基、アルキル(炭素数1〜4)−COO−基またはアルキル(炭素数1〜4)−OCO−基である。)
【化16】

(式中、R18およびR19は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基(特にメチル基、エチル基またはブチル基)、炭素数1〜6のアルコキシ基(特にメトキシ基、エトキシ基およびn−プロポキシ基)またはアルコキシ(炭素数1〜4)−アルコキシ(炭素数1〜4)カルボニル−アルコキシ(炭素数1〜4)基であるか、共にヘテロシクリルアルコキシ(炭素数1〜4)基(特にテトラヒドロフラニルアルコキシ(炭素数1〜4)基)である。)
【化17】

(式中、
20およびR21は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子(特に塩素原子または臭素原子)またはシアノ基であり;
22は、炭素数1〜6のアルキル基(特にメチル基)、ニトロ基または炭素数1〜4のアルコキシ基であり;
23およびR24は、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはアルコキシ(炭素数1〜4)アルキル(炭素数1〜4)基であり;
25は、炭素数1〜4のアルキル基(特にメチル基またはエチル基)、水酸基、ハロゲン原子(特に塩素原子または臭素原子)、−NH−SO−R16基または−NH−CO−R17基(式中、R16およびR17は、前記式(VIII)のものと同じ意味を有する)である。)
【化18】

(式中、
26は、炭素数1〜6のアルキル基、ニトロ基または炭素数1〜6のアルコキシ基であり;
27は、シアノ基、ニトロ基またはハロゲン原子(特に塩素原子または臭素原子)であり;
28は、水素原子、シアノ基、ニトロ基またはハロゲン原子(特に塩素原子または臭素原子)であり;
29は、炭素数1〜6のアルキル基(特にメチル基)であり;
30は、シアノ基であり;
31は、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ(炭素数1〜4)アルキル(炭素数1〜4)基、フェニルアルキル(炭素数1〜4)基またはフェノキシアルキル(炭素数1〜4)基であり;
32は、水素原子である。)
【化19】

(式中、R33は、非置換または炭素数1〜4のアルコキシ基(特に炭素数1〜2のアルコキシ基)で置換された炭素数1〜6のアルキル基(特に炭素数2〜4のアルキル基)、或いはアルコキシ(炭素数1〜4)アルコキシ(炭素数1〜4)基(特にアルコキシ(炭素数1〜2)アルコキシ(炭素数2〜3)基)である。)

【公表番号】特表2007−505897(P2007−505897A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526835(P2006−526835)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【国際出願番号】PCT/KR2004/002395
【国際公開番号】WO2005/028409
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(506080843)ギョンイン シンセティック コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】