説明

(ポリ)アミド酸トリオルガノシリルエステル及び(ポリ)イミドの製造方法

【課題】塩基性条件や求核性条件で安定でない置換基を有するイミドやポリイミドを高収率で製造する方法を提供する。
【解決手段】ビス(トリアルキルシリル)アミノ化合物とジカルボン酸無水物またはテトラカルボン酸二無水物とを、プロトン性の化合物または水の存在下に反応させ、アミド酸トリオルガノシリルエステルを合成することができる。さらに該シリルエステルをイミド化させることにより目的のイミドあるいはポリイミドを製造することができる。例えば下記のような反応を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業的に利用価値の高い化合物である(ポリ)イミド及びその前駆体である(ポリ)アミド酸トリオルガノシリルエステルの製造方法に関する。なお、本発明において、(ポリ)イミドは、イミド又はポリイミドであることを示し、(ポリ)アミド酸は、アミド酸又はポリアミド酸であることを示す。
【背景技術】
【0002】
環状イミドは、熱的に、また化学的に安定な化合物であり、材料科学の分野において種々の応用が図られている。芳香族イミドは電子欠乏性であるため、電子豊富な化合物と結合させた分子においては分子内電荷移動が観察され、この性質が有機EL用色素として利用されている(非特許文献1:Chemistry of Materials、2003年15巻(1,913〜1,917頁))。また、比較的大きな共役系を有する芳香族イミドを他の色素と連結させた分子を光励起すると、分子内や会合体内で効率的な電子移動やエネルギー移動が起こるため、光合成反応中心モデルとしての研究も行われている(例えば、非特許文献2:Journal of the American Chemical Society、2004年126巻(10,810〜10,811頁))。
【0003】
環状イミド結合を介した重縮合型高分子であるポリイミドは、熱的に安定であることから産業上極めて有用である。芳香族ポリイミドは不溶不融でガラス転移点が観測されず、最も耐熱性が高い有機高分子の一つである。また、成形性を向上させた熱硬化性ポリイミドや熱可塑性ポリイミドも開発されており、実用的な観点から価値が高い。これらの重合体の物性を決定する要因としては様々あるが、主鎖と置換基の構造が最も重要である。従って、様々な構造のモノマーの組み合わせをポリイミドにすることによって目的の物性を得る試みがなされている。
【0004】
環状イミド(以下、単にイミドという)の合成法としてこれまでに様々な方法が知られている。一般的には、アミンとジカルボン酸無水物を反応させてアミド酸を生成させた後、加熱により脱水環化させることによりイミドが得られる(下記スキーム[A])。
【0005】
【化1】

(式中、Q1は一価の有機基、Q2は二価の有機基を表す。以下、同様。)
【0006】
しかし、上記スキーム[A]において、Q1やQ2、特にQ1が塩基性条件や求核性条件で不安定な置換基を含む場合、原料となるアミン自身が安定でなく、このような合成法は万能ではない。
【0007】
出発物質としてアミン以外の化合物を用いるイミドの合成方法としては、イミドのアルカリ金属塩を有機ハロゲン化物と反応させる方法(下記スキーム[B])やジカルボン酸無水物と有機イソシアナートを反応させる方法(下記スキーム[C])などがある。いずれもスキーム[A]とは異なる原料から同じ生成物を得ることができるが、前者はアルカリ金属塩が強塩基性かつ求核性の化合物であるためQ1が不安定となり、目的物は高収率で得られない。後者では反応条件が中性であるため目的物を得ることが可能であるが、求核性条件で不安定な置換基Q1を有するイソシアナートを合成することは容易でないため、有用な方法とはいえない。
【0008】
【化2】

(式中、Xはハロゲン原子、Mはアルカリ金属原子を表す。)
【0009】
【化3】

【0010】
なお、一時的にカルバミン酸エステルなどとして保護することにより塩基性と求核性を低下させ、安定化させることが可能である。しかし、保護したアミンからは直接イミドを得る方法がなく、一旦アミンを脱保護する工程が必要となり、無意味である。
【0011】
前記のごとく、新しい機能発現のためには新しい構造や置換基を有する(ポリ)イミドの製造が必要であり、特に反応基質の構造に由来する制限を緩和する新たなイミド化方法の開発が求められていた。
【0012】
【非特許文献1】Chemistry of Materials、2003年15巻(1,913〜1,917頁)
【非特許文献2】Journal of the American Chemical Society、2004年126巻(10,810〜10,811頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記要望に応えるためになされたもので、保護され安定化されたアミン成分を用いて工業的に有用な化合物である(ポリ)イミドを高収率で製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、二個のトリオルガノシリル基で保護したアミンと酸無水物、水又はプロトン性化合物の三成分を共存させることにより、温和な条件で(ポリ)アミド酸トリオルガノシリルエステルが得られることを見出した。これにより安定化されたアミンを原料として簡便に(ポリ)イミド前駆体を製造し、またそれを用いて(ポリ)イミドを製造する方法を知見するに至った。
【0015】
即ち本発明は、下記のイミド前駆体の製造方法及びイミドの製造方法を提供する。
請求項1:
下記一般式(1)で表されるアミン又は下記一般式(2)で表されるジアミンと下記一般式(3)で表されるジカルボン酸無水物又は下記一般式(4)で表されるテトラカルボン酸二無水物とを、下記一般式(5)で表されるプロトン性化合物又は水の存在下に反応させる(但し、式(2)のジアミンと式(4)のテトラカルボン酸二無水物とを反応させる場合を除く)ことを特徴とする、下記一般式(6)、(7)又は(8)で表されるアミド酸トリオルガノシリルエステルの製造方法。
【化4】

(式中、R1は同一でも互いに異なっていてもよい炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、A1は置換又は非置換の炭素数1〜40の一価有機基を表す。)
【化5】

(式中、R1は同一でも互いに異なっていてもよい炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、A4は置換又は非置換の炭素数1〜40の二価有機基を表す。)
【化6】

(式中、A2は置換又は非置換の炭素数2〜40の二価有機基を表す。)
【化7】

(式中、A3は置換又は非置換の炭素数4〜40の四価有機基を表す。)
【化8】

(式中、Rは置換又は非置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基を表す。)
【化9】

(式中、R1は同一でも互いに異なっていてもよい炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、A1は置換又は非置換の炭素数1〜40の一価有機基を表す。A2は置換又は非置換の炭素数2〜40の二価有機基を表す。)
【化10】

(式中、R1は同一でも互いに異なっていてもよい炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、A1は置換又は非置換の炭素数1〜40の一価有機基を表す。A3は置換又は非置換の炭素数4〜40の四価有機基を表す。)
【化11】

(式中、R1は同一でも互いに異なっていてもよい炭素数1〜20の一価炭化水素基である。A2は置換又は非置換の炭素数2〜40の二価有機基を表す。A4は置換又は非置換の炭素数1〜40の二価有機基を表す。)
請求項2:
下記一般式(2)で表されるジアミンと、下記一般式(4)で表されるテトラカルボン酸二無水物とを下記一般式(5)で表されるプロトン性化合物又は水の存在下に反応させることを特徴とする、下記一般式(9)で表される繰り返し単位からなるポリアミド酸トリオルガノシリルエステルの製造方法。
【化12】

(式中、R1は同一でも互いに異なっていてもよい炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、A4は置換又は非置換の炭素数1〜40の二価有機基を表す。)
【化13】

(式中、A3は置換又は非置換の炭素数4〜40の四価有機基を表す。)
【化14】

(式中、Rは置換又は非置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基を表す。)
【化15】

(式中、R1は同一でも互いに異なっていてもよい炭素数1〜20の一価炭化水素基である。A3は置換又は非置換の炭素数4〜40の四価有機基を表す。A4は置換又は非置換の炭素数1〜40の二価有機基を表す。)
請求項3:
請求項1に記載の製造方法により得られたアミド酸トリオルガノシリルエステルをイミド化させることを特徴とする、下記一般式(10)、(11)又は(12)で表されるイミドの製造方法。
【化16】

(式中、A1は置換又は非置換の炭素数1〜40の一価有機基を表す。A2は置換又は非置換の炭素数2〜40の二価有機基を表す。)
【化17】

(式中、A1は置換又は非置換の炭素数1〜40の一価有機基を表す。A3は置換又は非置換の炭素数4〜40の四価有機基を表す。)
【化18】

(式中、A2は置換又は非置換の炭素数2〜40の二価有機基を表す。A4は置換又は非置換の炭素数1〜40の二価有機基を表す。)
請求項4:
請求項2に記載の製造方法により得られたポリアミド酸トリオルガノシリルエステルをイミド化させることを特徴とする、下記一般式(13)で表される繰り返し単位からなるポリイミドの製造方法。
【化19】

(式中、A3は置換又は非置換の炭素数4〜40の四価有機基を表す。A4は置換又は非置換の炭素数1〜40の二価有機基を表す。)
【発明の効果】
【0016】
本発明の製造方法によれば、安定化されたアミンを用いて塩基性条件や求核性条件で安定でない置換基を有するイミドやポリイミドを高収率で製造することができる。反応条件は温和でありワンポットで行うことができ、副生成物を容易に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の製造方法においては、下記一般式(1)あるいは下記一般式(2)で表されるアミンを反応させる。アミノ基はそれぞれ二個のトリオルガノシリル基で保護されている。トリオルガノシリル基はかさ高く、アミノ基の求核性は著しく低下するために、置換基A1やA4が求核攻撃を受け易い場合でも安定に存在することができる。
【0018】
【化20】

【0019】
上記一般式(1)及び一般式(2)において、R1は同一でも互いに異なっていてもよい炭素数1〜20、好ましくは1〜10の一価炭化水素基を表す。R1の具体例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、メチルシクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、テキシル基、メチルシクロヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘプチル基、ノルボルニル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基等の一価の飽和脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等)、ビニル基、アリル基、プロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、ヘキセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、5−ノルボルネニル基、オクテニル基、デセニル基、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等の一価の不飽和脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐状又は環状のアルケニル基又はアルキニル基等)、フェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、2−トリル基、3−トリル基、4−トリル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、フェナンスリル基、アントラセニル基、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、ナフチルエチル基等の一価の芳香族炭化水素基(アリール基、アラルキル基等)などが挙げられる。なかでもメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、フェニル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
【0020】
上記一般式(1)において、A1は置換又は非置換の炭素数1〜40、好ましくは1〜20の一価有機基を表しており、具体的にはメチル基、メトキシカルボニルメチル基、エチル基、メトキシカルボニルエチル基、トリメチルシロキシカルボニルエチル基、tert−ブチルジメチルシロキシカルボニルエチル基、トリメチルシロキシエチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、3−トリメトキシシリルプロピル基、3−トリエトキシシリルプロピル基、3−トリメチルシリルプロピル基、3−トリメチルシロキシプロピル基、3−トリエチルシロキシプロピル基、3−tert−ブチルジメチルシロキシプロピル基、3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル基、3−(1,1,3,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン−1−イル)プロピル基、3−(1,3,3,5,5−ペンタメチルシクロテトラシロキサン−1−イル)プロピル基、3−(3−メタクリロイルオキシプロピル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)プロピル基、3−(3−グリシジルオキシプロピル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)プロピル基、3−(3−アクリロイルオキシプロピル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)プロピル基、3−(3−エポキシシクロヘキシルエチル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)プロピル基、3−(3−ビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)プロピル基、3−(3−クロロプロピル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)プロピル基、3−(3−メルカプトプロピル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)プロピル基、3−(3−トリフルオロプロピル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)プロピル基、3−(3−ノナフルオロヘキシル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)プロピル基、3−(3−トリデカフルオロオクチル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)プロピル基、3−(3−ヘプタデカフルオロデシル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、メチルシクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、テキシル基、メチルシクロヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘプチル基、ノルボルニル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基等の置換又は非置換の一価の飽和脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等)、ビニル基、アリル基、プロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、ヘキセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、5−ノルボルネニル基、オクテニル基、デセニル基、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等の置換又は非置換の一価の不飽和脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐状又は環状のアルケニル基又はアルキニル基等)、フェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2−ブロモフェニル基、3−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基、2−ヨードフェニル基、3−ヨードフェニル基、4−ヨードフェニル基、4−フルオロフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−トリメチルシロキシフェニル基、4−tert−ブチルジメチルシロキシフェニル基、4−アセタミドフェニル基、4−アセチルフェニル基、4−ベンゾイルフェニル基、4−メトキシカルボニルフェニル基、4−エトキシカルボニルフェニル基、4−トリメチルシロキシカルボニルフェニル基、4−tert−ブチルジメチルシロキシカルボニルフェニル基、4−トリイソプロピルシロキシカルボニルシロキシ基、4−(トリメチルシロキシエチル)フェニル基、2−トリル基、3−トリル基、4−トリル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、フェナンスリル基、アントラセニル基、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、ナフチルエチル基等の置換又は非置換の一価の芳香族炭化水素基(アリール基、アラルキル基等)などが挙げられる。
【0021】
なお、本発明において、置換炭化水素基としては、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、トリアルキルシロキシカルボニル基、トリアルキルシロキシ基、トリアルコキシシリル基、トリアルキルシリル基、アルキルポリシロキサニル基、アルキルシクロポリシロキサニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、アルケニル基、ハロゲン原子、メルカプト基等で置換された炭化水素基が挙げられる。この場合、ポリシロキサニル基のケイ素原子数は2〜100、特に2〜50が好ましく、シクロポリシロキサニル基のケイ素原子数は3〜20、特に3〜10が好ましい。
【0022】
上記一般式(2)において、A4は置換又は非置換の炭素数1〜40、好ましくは1〜20の二価有機基を表す。具体的には表1−1及び表1−2に示す基などが挙げられる。
【0023】
【表1−1】

【0024】
【表1−2】

【0025】
本発明の製造方法において、下記一般式(3)及び一般式(4)で表されるジカルボン酸無水物又はテトラカルボン酸二無水物が酸無水物として用いられる。
【0026】
【化21】

【0027】
上記一般式(3)において、A2は置換又は非置換の炭素数2〜40、好ましくは2〜20の二価有機基を表す。具体的には表2−1に示す基などが挙げられる。
【0028】
【表2−1】


(Meはメチル基を示す。以下、同様。)
【0029】
上記一般式(4)において、A3は置換又は非置換の炭素数4〜40、好ましくは4〜20の四価有機基を表す。具体的には表3−1及び表3−2に示す基などが挙げられる。
【0030】
【表3−1】

【0031】
【表3−2】

【0032】
本発明の(ポリ)アミド酸トリオルガノシリルエステルの製造方法においては、アミン成分である上記一般式(1)又は(2)で表される化合物と、酸無水物成分である上記一般式(3)又は(4)で表される化合物とを、下記一般式(5)で表されるプロトン性化合物又は水の存在下で反応させる。
【化22】

【0033】
式中、Rは置換又は非置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基を表す。Rの具体例としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、メチルシクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、テキシル基、メチルシクロヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘプチル基、ノルボルニル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基等の置換又は非置換の飽和炭化水素基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、ヘキセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、5−ノルボルネニル基、オクテニル基、デセニル基、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等の置換又は非置換の不飽和脂肪族炭化水素基、フェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、2−トリル基、3−トリル基、4−トリル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、フェナンスリル基、アントラセニル基、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、ナフチルエチル基等の置換又は非置換の芳香族炭化水素基や、これらの基に結合する水素原子の一部又は全部がフッ素、塩素又は臭素等のハロゲン原子、シアノ基、ジメチルアミノ基やジエチルアミノ基等のジオルガノアミノ基、ニトロ基、アセチル基やベンゾイル基等のアシル基、アセトキシ基やベンゾイルオキシ基等のアシロキシ基、アセトアミド基等のアミド基、メトキシ基やフェノキシ基等のオルガノオキシ基で置換された基等が挙げられる。
【0034】
上記一般式(5)で表されるプロトン性化合物の必要量は、上記一般式(1)又は(2)で表されるアミン成分の窒素原子に結合するトリオルガノシリル基に対して1当量以上であり、通常1〜10当量が好ましい。水を使用する場合は、上記一般式(1)又は(2)で表されるアミン成分の窒素原子に結合するトリオルガノシリル基に対して0.5当量以上であり、通常0.5〜5当量が好ましい。過剰に使用する場合には生成したアミド酸トリオルガノシリルエステルが加溶媒分解によりアミド酸となる場合がある。
【0035】
上記の反応は、通常溶媒の存在下に行う。使用する溶媒としては非プロトン性溶媒が好ましく、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、アセトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、N,N−ジメチルアセタミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、ヘキサン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等を用いることができる。二種類以上の溶媒を混合して使用することもできる。反応基質である酸無水物は水分と反応して低反応性のジカルボン酸となることがあるので、本反応には水分を低減した溶媒を用い、必要量の上記一般式(5)で表されるプロトン性化合物や水を添加することが好ましい。酸無水物の反応性が低い場合にはその限りではなく、上記の非プロトン性溶媒に加えてメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類やクレゾールやクロロフェノールなどのフェノール類を溶媒とすることも可能である。なお、溶媒の使用量は任意であるが、反応基質が実質的な濃度で溶解し得る量とすることが好ましく、例えば基質質量の合計に対して3〜30倍が好ましい。
【0036】
反応温度は60℃以下、より好ましくは0〜40℃で行うのがよい。反応温度が高いと生成したアミド酸トリオルガノシリルエステルが一部イミド化して純度が低下する。また過度に冷却すると反応進行が遅くなる。反応は常圧下に不活性ガス雰囲気下で行われるのが通常であるが、必ずしもそれに限られるものではない。なお、反応時間は適宜選定されるが、通常1〜24時間である。
【0037】
反応基質の混合方法はその反応性に応じて様々に最適化されるが、例えばアミン、酸無水物、プロトン性化合物あるいは水の全てを一括で反応器に仕込む方法、これら三成分のうち一つを反応器に仕込み、残りの二成分を徐々に加える方法、これら三成分のうち二つを反応器に仕込み、残りの一成分を徐々に加える方法などが挙げられる。上記一般式(5)のプロトン性化合物あるいは水と上記一般式(3)又は(4)で表される酸無水物とが実質的な反応性を有する場合には、アミン成分と酸無水物とを混合し、プロトン性化合物あるいは水を徐々に加える方法が好ましい。
【0038】
上記一般式(1)で表されるアミンと上記一般式(3)で表されるジカルボン酸無水物を上記一般式(5)で表されるプロトン性化合物あるいは水の存在下に反応させると、下記一般式(6)で表されるアミド酸トリオルガノシリルエステルが得られる。同様に、上記一般式(1)で表されるアミンと上記一般式(4)で表されるテトラカルボン酸二無水物から下記一般式(7)で表されるアミド酸トリオルガノシリルエステルが得られる。また同様に、上記一般式(2)で表されるジアミンと上記一般式(3)で表されるジカルボン酸無水物から下記一般式(8)で表されるアミド酸トリオルガノシリルエステルが得られる。また上記一般式(2)で表されるジアミンと上記一般式(4)で表されるテトラカルボン酸二無水物からは下記一般式(9)で表される繰り返し単位を有するポリアミド酸トリオルガノシリルエステルが得られる。この場合、式(9)のポリアミド酸トリオルガノシリルエステルの繰り返し数は、2〜1,000、好ましくは2〜100である。
【0039】
【化23】

【0040】
式中、R1は同一でも互いに異なっていてもよい炭素数1〜20の一価炭化水素基、A1は置換又は非置換の炭素数1〜40の一価有機基、A2は置換又は非置換の炭素数2〜40の二価有機基、A3は置換又は非置換の炭素数4〜40の四価有機基を表す。A4は置換又は非置換の炭素数1〜40の二価有機基を表し、それぞれ上記一般式(1)〜(4)において説明した通りである。
【0041】
本発明の(ポリ)イミドの製造方法においては、前記の方法により得られた上記一般式(6)、(7)又は(8)で表されるアミド酸トリオルガノシリルエステル、あるいは上記一般式(9)で表される繰り返し単位からなるポリアミド酸トリオルガノシリルエステルをイミド化させる。上記一般式(6)、(7)、(8)の化合物からそれぞれ下記一般式(10)、(11)、(12)で表されるイミドが得られる。
【0042】
【化24】

(式中、A1は置換又は非置換の炭素数1〜40の一価有機基を表す。A2は置換又は非置換の炭素数2〜40の二価有機基を表す。)
【0043】
【化25】

(式中、A1は置換又は非置換の炭素数1〜40の一価有機基を表す。A3は置換又は非置換の炭素数4〜40の四価有機基を表す。)
【0044】
【化26】

(式中、A2は置換又は非置換の炭素数2〜40の二価有機基を表す。A4は置換又は非置換の炭素数1〜40の二価有機基を表す。)
【0045】
また、上記一般式(9)で表される繰り返し単位からなるポリアミド酸トリオルガノシリルエステルから、下記一般式(13)で表される繰り返し単位からなるポリイミドが得られる。
【0046】
【化27】

(式中、A3は置換又は非置換の炭素数4〜40の四価有機基を表す。A4は置換又は非置換の炭素数1〜40の二価有機基を表す。)
【0047】
上記一般式(10)、(11)、(12)、(13)において、A1は置換又は非置換の炭素数1〜40の一価有機基、A2は置換又は非置換の炭素数2〜40の二価有機基、A3は置換又は非置換の炭素数4〜40の四価有機基、A4は置換又は非置換の炭素数1〜40の二価有機基を表しており、それぞれ既に説明した通りである。
【0048】
イミド化反応は、アミド酸トリオルガノシリルエステルやポリアミド酸トリオルガノシリルエステルを加熱することにより行うことが好ましい。この場合、イミド化反応の温度は60℃以上、好ましくは100〜300℃である。イミド化反応は無水酢酸などの公知のイミド化剤を使用することによっても行うことができる。なお、反応時間は、通常1〜24時間である。
【0049】
また、上述のようにアミド酸トリオルガノシリルエステルやポリアミド酸トリオルガノシリルエステルを加溶媒分解して(ポリ)アミド酸とした後にイミド化反応を行うことも可能である。
【0050】
上記の(ポリ)アミド酸トリオルガノシリルエステルは単離したものを用いてもよいし、単離せずにイミド化反応を行ってもよい。イミド化反応には溶媒は必ずしも必要でないが、溶媒を用いる場合にはジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、アセトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、N,N−ジメチルアセタミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、ヘキサン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等の非プロトン性溶媒が使用できる。メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類やクレゾール、クロロフェノール等のフェノール類などプロトン性溶媒も使用できるが、アミド酸トリオルガノシリルエステルの加溶媒分解が同時に進行することに留意しなくてはならない。
【実施例】
【0051】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において、反応はすべて窒素雰囲気下で行った。目的物のGC測定はTHF溶液として行い、溶媒ピークを差し引いて純度を算出した。
【0052】
[実施例1] N−アリルフタルイミドの合成
【化28】

【0053】
ジムロート式還流冷却器、撹拌機、温度計、滴下ロートを備えた200mLの四つ口フラスコを窒素置換した。無水フタル酸4.00g(27mmol)及びメタノール0.86g(27mmol)を脱水テトラヒドロフラン(以下、THFと略)37gに溶解させフラスコ内に仕込んだ。溶液を室温(約22℃)で撹拌しながら滴下ロートよりアミン成分であるN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロペン5.44g(27mmol)を3時間で滴下した。滴下終了後室温で13時間撹拌したところ、アミン成分はほぼ消失していた。反応混合物を減圧濃縮するとオレンジ色の油状物が得られ、MALDI−TOFMS(コバルトマトリックス)によりこの油状物を分析するとN−アリルフタルアミド酸トリメチルシリルエステルであることが判明した。
得られた油状物をフラスコに入れ、0.8kPaに減圧しながら170℃の油浴中で3時間加熱した。内容物を室温に冷却すると結晶性の固体4.70gが得られた。GC−MS分析によりこの固体がN−アリルフタルイミドであることが判明した。純度は97.8%であり、収率は93.0%であった。
[実施例2] N−アリルフタルイミドの合成
【化29】

【0054】
ジムロート式還流冷却器、撹拌機、温度計、滴下ロートを備えた100mLの四つ口フラスコを窒素置換した。無水フタル酸3.70g(25mmol)及びアミン成分であるN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロペン5.04g(25mmol)をフラスコ内に仕込み、THF25gを加えて溶解させた。溶液を室温で撹拌しながら滴下ロートより水0.45g(25mmol)のTHF3g溶液を1時間で滴下した。滴下に伴い発熱があり、滴下終了後室温で10分間撹拌したところ、アミン成分が消失しており、トリメチルシラノールが生成したことがGC分析により確認された。更に12時間撹拌を続けた後、反応混合物を減圧濃縮して、オフホワイトの固体5.10gを得た。MALDI−TOFMS(コバルトマトリックス)によりこの固体を分析すると実施例1で得られたN−アリルフタルアミド酸トリメチルシリルエステルが加水分解されたN−アリルフタルアミド酸であることが判明した。
得られた固体をフラスコに入れ、0.8kPaに減圧しながら170℃の油浴中で3時間加熱した。内容物を室温に冷却すると結晶性の固体4.27gが得られた。GC−MS分析によりこの固体がN−アリルフタルイミドであることが判明した。収率は91.2%であった。
【0055】
[実施例3] N−アリルナジアミド酸トリメチルシリルエステルの合成
【化30】

【0056】
ジムロート式還流冷却器、撹拌機、温度計、滴下ロートを備えた200mLの四つ口フラスコを窒素置換した。5−ノルボルネンー2,3−ジカルボン酸無水物8.21g(50mmol)及びメタノール1.60g(50mmol)をTHF73gに溶解させてフラスコに仕込んだ。溶液を室温で撹拌しながら滴下ロートよりアミン成分であるN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロペン10.1g(50mmol)を2時間で滴下した。滴下に伴い発熱があり、白色固体が析出した。滴下終了後室温で4時間撹拌したところ、アミン成分はほぼ消失していた。反応混合物を減圧濃縮して、オフホワイトの固体14.4gを得た。MALDI−TOFMS(コバルトマトリックス)によりこの固体を分析すると、N−アリルナジアミド酸トリメチルシリルエステルであることが判明した。
【0057】
[実施例4] N,N’−ジアリルピロメリットイミドの合成
【化31】

【0058】
ジムロート式還流冷却器、撹拌機、温度計、滴下ロートを備えた200mLの四つ口フラスコを窒素置換した。ピロメリット酸二無水物2.18g(10mmol)及びN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロペン4.03g(20mmol)をフラスコに仕込み、THF24gを加えて溶解させた。溶液を室温で撹拌しながら滴下ロートよりメタノール0.64g(20mmol)のTHF6g溶液を1.5時間で滴下した。滴下終了後室温で2時間撹拌したところ、アミン成分はほぼ消失していた。反応混合物を減圧濃縮するとオフホワイトの固体4.68gが得られた。MALDI−TOFMS(コバルトマトリックス)によりこの固体を分析すると、中間生成物であるピロメリットアミド酸トリメチルシリルエステルであることが判明した。
得られた固体4.49gをガラスフラスコに入れ、オーブン中に入れ2.4kPaに減圧しながら80℃で1時間、170℃で2時間加熱した。淡褐色の固体2.7gが得られGC純度は98.2%であった。GC−MS分析によりこの固体が目的のN,N’−ジアリルピロメリットイミドであることがわかった。収率は用いたアミン成分に対して96.7%であった。
【0059】
[実施例5] N−[3−(1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン−1−イル)プロピル]フタルアミド酸トリメチルシリルエステルの合成
【0060】
【化32】

【0061】
ジムロート式還流冷却器、撹拌機、温度計、滴下ロートを備えた100mLの四つ口フラスコを窒素置換した。無水フタル酸1.48g(10mmol)及びメタノール0.32g(10mmol)をフラスコ内に仕込み、THF18gを加えて溶解させた。溶液を室温で撹拌しながら滴下ロートよりアミン成分である1−[3−(N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ)プロピル]−1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン4.84g(10mmol)とTHF4.0gの混合物を2時間で滴下した。滴下後室温で4時間撹拌したところ、アミン成分がほぼ消失したことがGC分析により確認された。反応混合物を減圧濃縮すると白色固体5.68gが得られた。この固体をMALDI−TOFMSにより分析したところ、目的の化合物であることが判明した。
【0062】
[実施例6] 1,3−ビス(3−フタルイミドプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの合成
【化33】

【0063】
ジムロート式還流冷却器、撹拌機、温度計を備えた100mLの四つ口フラスコを窒素置換した。無水フタル酸592mg(4.0mmol)、N,N,N’,N’−テトラキス(トリメチルシリル)−1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン1.07g(2.0mmol)をフラスコ内に仕込み、THF9.9gを加えて溶解させた。溶液を室温で撹拌しながらエタノール184mg(4.0mmol)をTHF2.5gで希釈した溶液を滴下ロートから0.5時間かけて滴下した。室温で9時間撹拌したところ、白色固体が析出した。反応混合物を減圧濃縮し、濃縮物158mgをステンレスシャーレ上にとってオーブン中に入れ、窒素通気しながら240℃で0.5時間加熱した。冷却するとわずかに黄色の針状結晶95mgが得られ、EI−MS及びFT−IRの分析結果より目的の1,3−ビス(3−フタルイミドプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンであることがわかった。GC純度は99.3%であり、収率は用いたアミン成分に対して85.8%であった。
【0064】
[実施例7] ポリイミドシロキサンの合成
【化34】

【0065】
ジムロート式還流冷却器、撹拌機、温度計を備えた100mLの四つ口フラスコを窒素置換した。ピロメリット酸二無水物1.09g(5.0mmol)、N,N,N’,N’−テトラキス(トリメチルシリル)−1,5−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン3.06g(5.0mmol)をフラスコ内に仕込み、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)24.6gを加えて溶解させた。溶液を室温で撹拌しながらメタノール0.32g(10mmol)をNMP6.2gで希釈した溶液を滴下ロートから1.5時間かけて滴下した。室温で14時間撹拌後、徐々に温度を上昇させて184〜188℃で8時間反応させた。反応混合物をGPCで分析すると、出発物質は消失しておりMw=3,000、Mn=1,900のポリマーが生成していた。溶媒と副生成物を減圧下で除去すると褐色の固体2.49gが得られた。FT−IRスペクトルによると1,600〜1,700cm-1のアミド酸エステルに由来するピークはなく、1,718及び1,770cm-1にイミドに由来するピークが検出された。また、1,051及び1,079cm-1にシロキサン結合のピークが検出され、目的のポリマーが得られたことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるアミン又は下記一般式(2)で表されるジアミンと下記一般式(3)で表されるジカルボン酸無水物又は下記一般式(4)で表されるテトラカルボン酸二無水物とを、下記一般式(5)で表されるプロトン性化合物又は水の存在下に反応させる(但し、式(2)のジアミンと式(4)のテトラカルボン酸二無水物とを反応させる場合を除く)ことを特徴とする、下記一般式(6)、(7)又は(8)で表されるアミド酸トリオルガノシリルエステルの製造方法。
【化1】

(式中、R1は同一でも互いに異なっていてもよい炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、A1は置換又は非置換の炭素数1〜40の一価有機基を表す。)
【化2】

(式中、R1は同一でも互いに異なっていてもよい炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、A4は置換又は非置換の炭素数1〜40の二価有機基を表す。)
【化3】

(式中、A2は置換又は非置換の炭素数2〜40の二価有機基を表す。)
【化4】

(式中、A3は置換又は非置換の炭素数4〜40の四価有機基を表す。)
【化5】

(式中、Rは置換又は非置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基を表す。)
【化6】

(式中、R1は同一でも互いに異なっていてもよい炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、A1は置換又は非置換の炭素数1〜40の一価有機基を表す。A2は置換又は非置換の炭素数2〜40の二価有機基を表す。)
【化7】

(式中、R1は同一でも互いに異なっていてもよい炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、A1は置換又は非置換の炭素数1〜40の一価有機基を表す。A3は置換又は非置換の炭素数4〜40の四価有機基を表す。)
【化8】

(式中、R1は同一でも互いに異なっていてもよい炭素数1〜20の一価炭化水素基である。A2は置換又は非置換の炭素数2〜40の二価有機基を表す。A4は置換又は非置換の炭素数1〜40の二価有機基を表す。)
【請求項2】
下記一般式(2)で表されるジアミンと、下記一般式(4)で表されるテトラカルボン酸二無水物とを下記一般式(5)で表されるプロトン性化合物又は水の存在下に反応させることを特徴とする、下記一般式(9)で表される繰り返し単位からなるポリアミド酸トリオルガノシリルエステルの製造方法。
【化9】

(式中、R1は同一でも互いに異なっていてもよい炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、A4は置換又は非置換の炭素数1〜40の二価有機基を表す。)
【化10】

(式中、A3は置換又は非置換の炭素数4〜40の四価有機基を表す。)
【化11】

(式中、Rは置換又は非置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基を表す。)
【化12】

(式中、R1は同一でも互いに異なっていてもよい炭素数1〜20の一価炭化水素基である。A3は置換又は非置換の炭素数4〜40の四価有機基を表す。A4は置換又は非置換の炭素数1〜40の二価有機基を表す。)
【請求項3】
請求項1に記載の製造方法により得られたアミド酸トリオルガノシリルエステルをイミド化させることを特徴とする、下記一般式(10)、(11)又は(12)で表されるイミドの製造方法。
【化13】

(式中、A1は置換又は非置換の炭素数1〜40の一価有機基を表す。A2は置換又は非置換の炭素数2〜40の二価有機基を表す。)
【化14】

(式中、A1は置換又は非置換の炭素数1〜40の一価有機基を表す。A3は置換又は非置換の炭素数4〜40の四価有機基を表す。)
【化15】

(式中、A2は置換又は非置換の炭素数2〜40の二価有機基を表す。A4は置換又は非置換の炭素数1〜40の二価有機基を表す。)
【請求項4】
請求項2に記載の製造方法により得られたポリアミド酸トリオルガノシリルエステルをイミド化させることを特徴とする、下記一般式(13)で表される繰り返し単位からなるポリイミドの製造方法。
【化16】

(式中、A3は置換又は非置換の炭素数4〜40の四価有機基を表す。A4は置換又は非置換の炭素数1〜40の二価有機基を表す。)

【公開番号】特開2007−332091(P2007−332091A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−167298(P2006−167298)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】