説明

(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルの製造方法および冷感剤組成物

【課題】好ましくない刺激感、苦味などがなく、清涼感や冷涼感の持続性に優れた冷感物質あるいは感覚刺激物質、およびそれを含有する冷感剤組成物、感覚刺激剤組成物並びに該冷感剤組成物あるいは感覚刺激剤組成物を含有する各種製品を提供する。
【解決手段】冷感物質あるいは感覚刺激物質として、下記の式(I):


で表される(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルを用いる。(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルは、アセト酢酸l−メンチルを不斉水素化することにより合成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルの製造方法、およびこれを含有する冷感剤組成物に関する。さらに、本発明は、該冷感剤組成物を含有する感覚刺激剤組成物、およびこれら冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物を含有する、香料組成物、飲食品、香粧品、日用・雑貨品、口腔用組成物または医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒトの皮膚や口腔、鼻、喉に対して爽やかな感覚(清涼感)や冷たい感覚(冷涼感)、即ち冷感効果を与える冷感剤は、歯磨剤、菓子(例えば、チューインガム、キャンディー等)、たばこ、ハップ剤、化粧料などに使用されている。これら清涼感または冷涼感を与えるフレーバー物質として、l−メントール(エル−メントール)が現在広く使用されているが、その冷感効果は持続性に欠け、また、特有の臭気や苦味などを有するため、その使用濃度や用途が限定される、という欠点を有していた。
【0003】
冷感効果を有する化合物として、l−メントール以外にも多数の化合物が提案され、使用されてもいる。従来提案されたl−メントール以外の冷感効果を有する化合物を例示すると、例えば、3−置換−p−メンタン(例えば、特許文献1参照)、N−置換−p−メンタン−3−カルボキサミド(例えば、特許文献2参照)、l−メンチルグルコシド(例えば、特許文献3参照)、3−(l−メントキシ)プロパン−1,2−ジオール(例えば、特許文献4参照)、3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチル(例えば、特許文献5参照)、1−アルコキシ−3−(l−メントキシ)プロパン−2−オール(例えば、特許文献6参照)、3−ヒドロキシメチル−p−メンタンのエステル類(例えば、特許文献7参照)、N−アセチルグリシンメンタンメチルエステル(例えば、特許文献8参照)、(−)−イソプレゴール(例えば、特許文献9参照)、(2S)−3−(l−メントキシ)プロパン−1,2−ジオール(例えば、特許文献10参照)、2−ヒドロキシメチルメントール(例えば、特許文献11参照)などが挙げられる。
【0004】
上記冷感効果を有する化合物の中にはこれをフレーバーなどに用いた場合、たとえばチューインガム、キャンディー等あるいは歯磨剤やマウスウオッシュなどの口腔衛生商品に用いた場合、味覚として強い苦味を感じることが多く、その使用を回避したり使用量を制限したりする必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭47−16647号公報
【特許文献2】特開昭47−16648号公報
【特許文献3】特開昭48−33069号公報
【特許文献4】特開昭58−88334号公報
【特許文献5】特開昭61−194049号公報
【特許文献6】特開平2−290827号公報
【特許文献7】特開平5−255186号公報
【特許文献8】特開平5−255217号公報
【特許文献9】特開平6−65023号公報
【特許文献10】特開平7−82200号公報
【特許文献11】特開平7−118119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、好ましくない刺激感、特に苦味などがなく、清涼感や冷涼感の持続性に優れた冷感物質あるいは感覚刺激物質およびその製造方法を提供することである。
【0007】
また、本発明の他の目的は、好ましくない刺激感、特に苦味などがなく、清涼感や冷涼感の持続性に優れた冷感物質あるいは感覚刺激物質を含有する冷感剤組成物を提供することである。
【0008】
さらに、本発明の他の目的は、前記冷感剤組成物を含有する感覚刺激剤組成物、および該冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物を含有する、香料組成物、飲食品、香粧品、日用・雑貨品、口腔用組成物または医薬品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討したところ、下記式(I)で表される(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルが、好ましくない刺激感、苦味などを与えず、冷感効果の持続性に優れ、冷感物質さらには感覚刺激物質として有用であること、また、冷感剤として、例えばl−メントールが用いられる場合、l−メントールの有する刺激臭を緩和することができること、さらに本発明の冷感剤組成物が配合された香料組成物においては、香料組成物の香り立ち、残香性が高められ、該香料組成物を賦香してなる製品類にも高い香質改善効果が付与されることを見出し、これら知見に基づいて本発明を完成したものである。
【0010】
すなわち、本発明は、下記[1]〜[16]に記載の(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルの製造方法、および(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルを含有する冷感剤組成物、さらには該冷感剤組成物を含有する感覚刺激剤組成物、これら冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物を含有する、香料組成物、飲食品、香粧品、日用・雑貨品、口腔用組成物または医薬品に関する。
【0011】
[1]式(II):
【化1】

で表されるアセト酢酸l−メンチルを不斉水素化することを特徴とする、式(I):
【0012】
【化2】

で表される(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルの製造方法。
【0013】
[2]上記[1]で得た前記式(I)で表される(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルを含有することを特徴とする冷感剤組成物。
【0014】
[3]上記[1]で得た前記式(I)で表される(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルの3位の水酸基の立体選択性が50%e.e.以上であることを特徴とする上記[2]に記載の冷感剤組成物。
【0015】
[4](3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチル以外の冷感物質から選ばれる少なくとも1種の冷感物質をさらに含有することを特徴とする上記[2]または[3]に記載の冷感剤組成物。
【0016】
[5]前記(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチル以外の冷感物質が、メントール、メントン、カンファー、プレゴール、イソプレゴール、シネオール、ハッカオイル、ペパーミントオイル、スペアーミントオイル、ユーカリプタスオイル、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、N−アルキル−p−メンタン−3−カルボキサミド、3−l−メントキシ−2−メチルプロパン−1,2−ジオール、p−メンタン−3,8−ジオール、2−l−メントキシエタン−1−オール、3−l−メントキシプロパン−1−オール、乳酸l−メンチル、メントングリセリンケタール、N−メチル−2,2−イソプロピルメチル−3−メチルブタンアミドであることを特徴とする上記[4]に記載の冷感剤組成物。
【0017】
[6]上記[2]〜[5]のいずれかに記載の冷感剤組成物を含有することを特徴とする感覚刺激剤組成物。
【0018】
[7]少なくとも1種の温感物質をさらに含有することを特徴とする上記[6]に記載の感覚刺激剤組成物。
【0019】
[8]前記温感物質が、バニリルエチルエーテル、バニリルプロピルエーテル、バニリンプロピレングリコールアセタール、エチルバニリンプロピレングリコールアセタール、カプサイシン、ギンゲロール、バニリルブチルエーテル、4−(l−メントキシメチル)−2−フェニル−1,3−ジオキソラン、4−(l−メントキシメチル)−2−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(l−メントキシメチル)−2−(2’−ヒドロキシ−3’−メトキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(l−メントキシ−メチル)−2−(4’−メトキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(l−メントキシメチル)−2−(3’,4’−メチレンジオキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(l−メトキシメチル)−2−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、バニリンアセタール類、トウガラシ油、トウガラシオレオレジン、ジンジャーオレオレジン、ノニル酸バニリルアミド、ジャンブーオレオレジン、サンショウエキス、サンショール−I、サンショール−II、サンショウアミド、黒胡椒エキス、カビシン、ピペリンまたはスピラントールであることを特徴とする上記[7]に記載の感覚刺激剤組成物。
【0020】
[9]上記[2]〜[5]のいずれかに記載の冷感剤組成物が、香料組成物、飲食品、香粧品、日用・雑貨品、口腔用組成物または医薬品の全質量に対し0.0001〜90質量%配合されてなることを特徴とする香料組成物、飲食品、香粧品、日用・雑貨品、口腔用組成物または医薬品。
【0021】
[10]上記[6]〜[8]のいずれかに記載の感覚刺激剤組成物が、香料組成物、飲食品、香粧品、日用・雑貨品、口腔用組成物または医薬品の全質量に対し0.0001〜90質量%配合されてなることを特徴とする香料組成物、飲食品、香粧品、日用・雑貨品、口腔用組成物または医薬品。
【0022】
[11]上記[2]〜[5]のいずれかに記載の冷感剤組成物を配合することを特徴とする、香料組成物、飲食品、香粧品、日用・雑貨品、口腔用組成物または医薬品の製造方法。
【0023】
[12]上記[6]〜[8]のいずれかに記載の感覚刺激剤組成物を配合することを特徴とする、香料組成物、飲食品、香粧品、日用・雑貨品、口腔用組成物または医薬品の製造方法。
【発明の効果】
【0024】
前記式(I)で表される(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルは、特異臭などがなく、また各種の飲食品、口腔用組成物、香粧品、日用・雑貨品、医薬品などに配合することにより、これらの製品に清涼感や冷涼感を付与することができ、かつ持続性のある優れた清涼感や冷涼感を付与することができる。さらに、人体に対して好ましくない皮膚刺激感をほとんど生じないという優れた特性を発揮し、また保存中にも着色せず安定性に優れている。
【0025】
また、(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルは、3位の水酸基を制御しない3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチル(以下ラセミ体3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルと記す)と比べて、これまで不快な味覚として感じられた強い苦味が全く感じられず、これをフレーバーなどに用いた場合、たとえばチューインガム、キャンディー等あるいは歯磨剤やマウスウオッシュなどの口腔衛生商品に用いた場合、その使用を回避したり使用量を制限したりする必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例1で得られた(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルの高速液体クロマトグラフィーのチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明において用いられる式(I):
【化3】

で表される(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルは、下記の式(II):
【化4】

で表されるアセト酢酸l−メンチルを不斉水素化することにより、合成することができる。
【0028】
上記式(II)で表されるアセト酢酸l−メンチルについては、これまでもいくつかの合成法が報告されている。例えば、特許文献5では、酢酸ナトリウムなどの弱塩基の存在下で、メントールとジケテンをエステル交換させることで合成しているが、ジケテンは強い催涙性や毒性がある上、爆発性もあり工業的に扱うには安全性に問題がある。
【0029】
また、米国特許出願公開第2008/0175800号明細書には、l−メントールと、アセト酢酸メチルまたはアセト酢酸エチルの混合物を、無溶媒または、エーテル、塩化メチレン、テトラヒドロフランまたはトルエンなどの非プロトン性溶媒中で、塩化亜鉛、塩化スズ(IV)、塩化鉄(IV)などのルイス酸と、ピリジン、イミダゾール、DMAPなどのエステル交換触媒の存在下でエステル交換反応を行い、アセト酢酸l−メンチルを得る方法が記載されている。しかし、これらの非プロトン性溶媒を用いた場合、この交換反応で得られてくるメタノールやエタノールが溶媒中に溶け込み、除去ができないため、化学平衡的に本エステル交換反応を完結するには効率的ではない。
【0030】
さらに、反応終了時に使用したルイス酸を除去するために、強酸による洗浄が必須となり、その後の中和なども含め工程数を増やすことになる。また蒸留の際にこのルイス酸を除去しなければ、酸性ガスの発生や、蒸留物の着色や不純物の増加、さらには異臭の付着につながるのが必至である。
【0031】
一方、このエステル化反応は、l−メントールとアセト酢酸メチルの混合物を無触媒またはプロトン酸触媒の存在下、無溶媒またはヘプタン中で加熱してエステル交換することにより行うことができ、この方法によればほぼ定量的にアセト酢酸l−メンチルが得られる。
【0032】
エステル交換反応において、溶媒としてヘプタンが好適に使用される理由は、以下の通りである。まず、反応が進行すると、メタノールが得られてくるが、平衡反応であるため、このメタノールを除去しないと反応を完結することができない。本反応時にDean−Sterk管を付けることができれば、ヘプタンとメタノールは混合できないため、また比重もメタノールの方がヘプタンよりも重いため、容易に系外に取り出すことができる。このため、平衡反応であるエステル交換反応を最後まで完結することが可能となる。
【0033】
本エステル交換反応は50℃以上で実施するのが好ましく、70℃以上が更に好ましい。メタノールと混合しない非プロトン性溶媒は、ヘプタンの他、ペンタン、ヘキサンなどがあるが、メタノールとの沸点差がより大きいヘプタンの使用が好ましい。
【0034】
ヘプタンの使用量は、メントールに対して、0〜30重量倍、好ましくは0.3〜5重量倍であり、この量を適宜調整することで、最適な加熱温度を維持することができる。
【0035】
アセト酢酸メチルの使用量は、メントールに対して、0.3〜30モル当量、好ましくは1〜10モル当量である。
【0036】
本エステル交換反応に触媒としてプロトン酸を用いる場合、通常のエステル化反応で用いられる酸性物質を使用すればよく、具体的には、例えば、硫酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、カンファースルホン酸、スルホン酸系イオン交換樹脂、酸性硫酸ナトリウムなどの硫酸およびスルホン酸類;トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸などのパーハロゲノ酢酸、リン酸等が挙げられる。好ましい酸性物質としては、例えば、硫酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、カンファースルホン酸などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。この中でも、硫酸、パラトルエンスルホン酸などは汎用性があり、反応の収率も高いことからより好ましいものである。これらのプロトン酸は1種または2種以上を混合して使用することができるが、1種を使用する方が好ましい。本エステル交換反応に用いることができるプロトン酸の使用量は、メントールに対して、通常0.001〜20重量%、好ましくは、0.1〜5重量%である。
【0037】
本エステル化反応の反応温度は、70℃〜180℃、好ましくは80℃〜120℃であり、溶媒であるヘプタンの量を調整することにより、この範囲において任意の温度を維持することができる。さらに系内の圧力を変化させることでも反応温度の調整が可能である。
【0038】
反応終了後は、通常中和処理をした後、若しくはそのまま溶媒を留去し、蒸留を行うことにより、アセト酢酸l−メンチルを得ることができる。ここで中和処理とは、触媒量のプロトン酸を使用した場合に、該プロトン酸を失活させるに充分な量の塩基性水溶液で洗浄してプロトン酸を系外へ除去するか、使用したプロトン酸を失活させるに充分な量の塩基性物質を加えて塩を生成させ、系内に停留させても良い。プロトン酸を失活させる塩基性水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の水溶液が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。また、プロトン酸を失活させる塩基性物質としては、前述した水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の他、当該プロトン酸と安定な塩を作ることができる有機アミン類、例えばトリエチルアミン、ジエチルアミンあるいはアンモニアなどが挙げられるが、プロトン酸を失活させる塩基性物質が特にこれらに限定されるものではない。
【0039】
さらに蒸留時のような加熱濃縮条件において、使用したプロトン酸が目的物の品質や収率に影響を与えないときは、この中和処理を省略することもできる。
【0040】
以上のとおり、式(II)で表されるアセト酢酸l−メンチルの合成は、l−メントールとアセト酢酸メチルを無溶媒またはヘプタン中で、無触媒または酸触媒の存在下、エステル交換反応を行う方法によることが好ましい。
【0041】
上記したように、本発明においては、下記の式(II):
【化5】

で表されるアセト酢酸l−メンチルを不斉水素化することにより、目的とする(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルを合成することができる。
【0042】
不斉水素化方法としては、これに限定されるものではないが、例えば、上記式(II)で表される出発物質であるアセト酢酸l−メンチルを無溶媒もしくは溶媒中、特開平11−302226号公報や、特開2002−037760号公報に記載の光学活性ルテニウム錯体のS−体、例えば下記式(III)で表される光学活性三級ジホスフィン化合物のS−体を配位子とするルテニウム錯体の存在下、不斉水素化する方法が挙げられる。
【0043】
【化6】

【0044】
(式中、R、Rは各々独立に、シクロアルキル基、非置換もしくは置換フェニル基、または五員複素芳香環残基を表す。)
【0045】
上記式(III)で表される光学活性三級ジホスフィン化合物のS−体を配位子とするルテニウム錯体としては、例えば、下記式(IV)〜(IX)で表されるルテニウム錯体(式中、Xはハロゲン原子を表し、Lは光学活性三級ホスフィン配位子(S−体)を表し、Aは3級アミンを表し、ARENEは置換基を有していてもよいベンゼン環を表し、Gはハロゲン原子またはアセトキシ基を表し、JはBF、ClO、PFまたはBPh(Phはフェニル基を表す)を表し、Qは水素、低級アルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいベンジル基を表し、nは1〜3の整数を表し、DMFはN,N−ジメチルホルムアミドを表す。)が挙げられる。
【0046】
[Ru(L)](A) (IV)
[RuX(ARENE)(L)]X (V)
[Ru(G)(L)] (VI)
[Ru(L)](J) (VII)
[{RuX(L)}(μ−X)][NH] (VIII)
RuX(L)(DMF) (IX)
【0047】
上記錯体の例としては、例えば、
[RuCl(SEGPHOS)](NEt)〔SEGPHOSは[4,4’−ビス−1,3−ベンゾジオキソール]−5,5’−ジイルビス(ジフェニルホスフィン)、Etはエチル基である〕、
[RuCl(p−Tol−SEGPHOS)](NEt)〔p−Tol−SEGPHOSは[4,4’−ビス−1,3−ベンゾジオキソール]−5,5’−ジイルビス[ジ−p−トリルホスフィン]である〕、
[RuCl(DM−SEGPHOS)](NEt)〔DM−SEGPHOSは[4,4’−ビス−1,3−ベンゾジオキソール]−5,5’−ジイルビス[ジ−3,5−ジメチルフェニルホスフィン]である〕、
【0048】
[RuCl(C)(SEGPHOS)]Cl、
[RuBr(C)(SEGPHOS)]Br、
[RuI(C)(SEGPHOS)]I、
[RuCl(p−シメン)(SEGPHOS)]Cl、
[RuBr(p−シメン)(SEGPHOS)]Br、
[RuI(p−シメン)(SEGPHOS)]I、
[RuCl(C)(p−Tol−SEGPHOS)]Cl、
[RuBr(C)(p−Tol−SEGPHOS)]Br、
[RuI(C)(p−Tol−SEGPHOS)]I、
[RuCl(p−シメン)(p−Tol−SEGPHOS)]Cl、
[RuBr(p−シメン)(p−Tol−SEGPHOS)]Br、
[RuI(p−シメン)(p−Tol−SEGPHOS)]I、
[RuCl(C)(DM−SEGPHOS)]Cl、
[RuBr(C)(DM−SEGPHOS)]Br、
[RuI(C)(DM−SEGPHOS)]I、
[RuCl(p−シメン)(DM−SEGPHOS)]Cl、
[RuBr(p−シメン)(DM−SEGPHOS)]Br、
[RuI(p−シメン)(DM−SEGPHOS)]I、
[Ru(OAc)(SEGPHOS)]〔OAcはアセトキシ基である〕、
[Ru(OAc)(p−Tol−SEGPHOS)]、
[Ru(OAc)(DM−SEGPHOS)]、
[RuBr(SEGPHOS)]、
[RuBr(p−Tol−SEGPHOS)]、
[RuBr(DM−SEGPHOS)]、
[Ru(SEGPHOS)](BF
[Ru(SEGPHOS)](ClO
[Ru(SEGPHOS)](PF
[Ru(p−Tol−SEGPHOS)](BF
[Ru(p−Tol−SEGPHOS)](ClO
[Ru(p−Tol−SEGPHOS)](PF
[Ru(DM−SEGPHOS)](BF
[Ru(DM−SEGPHOS)](ClO
[Ru(DM−SEGPHOS)](PF
【0049】
[{RuCl(SEGPHOS)}(μ−Cl)][NHMe]〔Meはメチル基である〕、
[{RuCl(SEGPHOS)}(μ−Cl)][NHEt]、
[{RuCl(p−Tol−SEGPHOS)}(μ−Cl)][NHMe]、
[{RuCl(p−Tol−SEGPHOS)}(μ−Cl)][NHEt]、
[{RuCl(DM−SEGPHOS)}(μ−Cl)][NHMe]、
[{RuCl(DM−SEGPHOS)}(μ−Cl)][NHEt]、
RuCl(SEGPHOS)(DMF)〔DMFはN,N−ジメチルホルムアミドである〕、
RuCl(p−Tol−SEGPHOS)(DMF)
RuCl(DM−SEGPHOS)(DMF)
などが挙げられる。
【0050】
また、溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のプロティック溶媒が好適であり、これら溶媒とテトラヒドロフラン、トルエン、ベンゼン、酢酸メチル、酢酸エチル、塩化メチレン等との混合溶媒も好ましいものである。そして、アセト酢酸l−メンチルは、上記溶媒中に溶解させたうえで不斉水素化反応させることがより好適である。
【0051】
溶媒中に存在させるルテニウム錯体はアセト酢酸l−メンチルに対して1/100〜1/100000倍モル、さらに好ましくは1/1000〜1/50000倍モルとなるように添加すると不斉水素化反応が好ましく進行する。この際、水素圧0.1〜10MPa、さらに好ましくは1〜5Mpaとし、不斉水素化反応温度は0〜150℃、好ましくは20〜100℃に設定し、1〜48時間撹拌して不斉水素化反応させる。
【0052】
さらに、本発明では不斉水素化反応を酸の存在下で行うことにより、出発物質であるアセト酢酸l−メンチルの選択性および反応転化率を改善することができる。好ましい酸としては、硫酸などの鉱酸、またはメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機酸を例示することができる。この場合、酸をルテニウム錯体に対して0.5〜10モル当量、好ましくは0.7〜8モル当量、さらに好ましくは0.9〜5モル当量添加することが好ましい。
【0053】
かくして不斉水素化反応が完了した後、常法により精製処理操作してもよい。即ち溶媒を留去した後残留物を減圧下で蒸留する方法、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製する方法を採用することができる。このような方法により、高選択的、高収率で目的とする(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルを製造することができる。
【0054】
このようにして得られた本発明の式(I)で表される(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルは、好ましくない刺激感、苦味などがなく、強く、持続性のある冷感効果を有し、そのまま単独で冷感剤あるいは感覚刺激剤として利用することができる。ただし、この効果は(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルの3位の水酸基の立体選択性に著しく依存しており、その選択性が50%e.e.以上であれば、ラセミ体3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルと比較して一般的に好ましくない刺激感、苦味などが少なく、持続性のある冷感効果を実感することができ、70%e.e.では明確にその違いを実感できる。さらにその選択性が90%e.e.以上となると、ラセミ体3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルとは著しく異なる前記特徴をもつ優れた冷感剤、あるいは感覚刺激剤であると感じることができる。逆に、3位の水酸基の立体選択性が50%e.e.を下回ると、その効果はラセミ体3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルとの差が少なくなり光学活性体としての有効性が低くなってしまう。すなわち、3位の水酸基の立体選択性については、50%e.e.以上が好ましく、70%e.e.以上がより好ましく、90%e.e.以上がさらに好ましい。
【0055】
これまで、(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルは、J.Chem.Soc.,Perkin Trans.I,2637(1987)において、Thienamycinの合成原料としてその使用が検討された報告例があるものの、その合成方法については何ら開示されておらず、ましてやその冷感効果については触れられていない。
【0056】
本発明の(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルは、製品の種類、使用目的などにより、その適用範囲や適用方法を適宜変える必要があるが、通常、製品の全組成に対して0.0001乃至90質量%、特に0.01乃至20質量%の濃度で用いるのが好ましい。
【0057】
また、本発明の(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルは、(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチル以外の冷感物質から選ばれる少なくとも1種を併用することにより、冷感強度を高めた冷感剤組成物あるいは感覚刺激剤組成物を調製することができる。
【0058】
前記本発明の(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチル以外の冷感物質としては、例えば、メントール、メントン、カンファー、プレゴール、イソプレゴール、シネオール、ハッカオイル、ペパーミントオイル、スペアーミントオイル、ユーカリプタスオイル、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、N−アルキル−p−メンタン−3−カルボキサミド、3−l−メントキシ−2−メチルプロパン−1,2−ジオール、p−メンタン−3,8−ジオール、2−l−メントキシエタン−1−オール、3−l−メントキシプロパン−1−オール、乳酸l−メンチル、メントングリセリンケタール、N−メチル−2,2−イソプロピルメチル−3−メチルブタンアミド等を挙げることができる。これらは1種または2種以上を適宜配合して用いることができる。
【0059】
本発明の(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルとこれ以外の冷感物質とは、本発明の効果を損なわない範囲において任意の割合で用いることができるが、(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルとこれ以外の冷感物質の使用割合は、質量比で1:99〜95:5の範囲であることが好ましい。本発明の冷感剤組成物は、香料組成物、飲食品、香粧品、日用・雑貨品、口腔用組成物または医薬品に配合することができる。
【0060】
また、本発明においては、上述した冷感剤組成物は、強い、持続性のある冷感効果を有していることから、この冷感剤組成物を含有させることにより、冷感効果を有する感覚刺激剤組成物を調製することができる。感覚刺激剤組成物を調整する場合において、冷感剤組成物の配合量は、製品の種類、使用目的などにより、その適用範囲や適用方法を適宜変える必要があるが、通常、感覚刺激剤組成物の全組成に対して0.0001乃至20質量%、特に0.001乃至5質量%の濃度で用いるのが好ましい。なお、本発明の感覚刺激剤組成物とは、感覚を刺激する効果を与える組成物である。前記感覚を刺激する効果としては冷感効果および温感効果を含み、したがって本発明においては、感覚刺激剤組成物は冷感剤組成物および温感剤組成物をも含む概念として用いられている。
【0061】
本発明の冷感剤組成物は、温感物質を併用することにより、感覚刺激剤組成物とすることができ、感覚刺激剤組成物の刺激効果を調整することができる。温感物質としては、バニリルエチルエーテル、バニリルプロピルエーテル、バニリンプロピレングリコールアセタール、エチルバニリンプロピレングリコールアセタール、カプサイシン、ギンゲロール、バニリルブチルエーテル、4−(l−メントキシメチル)−2−フェニル−1,3−ジオキソラン、4−(l−メントキシメチル)−2−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(l−メントキシメチル)−2−(2’−ヒドロキシ−3’−メトキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(l−メントキシ-メチル)−2−(4’メトキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(l−メントキシメチル)−2−(3’,4’−メチレンジオキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(l−メトキシメチル)−2−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、バニリンアセタール類、トウガラシ油、トウガラシオレオレジン、ジンジャーオレオレジン、ノニル酸バニリルアミド、ジャンブーオレオレジン、サンショウエキス、サンショール−I、サンショール−II、サンショウアミド、黒胡椒エキス、カビシン、ピペリン、およびスピラントール等を挙げることができる。これらは1種または2種以上を適宜配合して用いることができる。
【0062】
感覚刺激剤組成物中の温感物質と冷感剤組成物との配合比は、冷感効果を目的とする場合においては、温感物質は温感物質の配合により温感効果が付与されない範囲であればよく、通常、冷感剤組成物の総質量に対して、0.001〜0.95倍質量、好ましくは0.003〜0.5倍質量の配合量とされる。この場合、本発明の感覚刺激剤組成物において、冷感剤組成物に上記割合で温感物質が添加されることにより、冷感効果の更なる向上が見られ、冷感効果が増大する。
【0063】
また、温感効果を目的とする場合においては、冷感剤組成物は冷感剤組成物の配合により冷感効果が付与されない範囲であればよく、通常、温感物質の総質量に対して、0.001〜0.95倍質量、好ましくは0.01〜0.5倍質量の配合量とされる。
【0064】
本発明においては、上記冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物は、香料組成物、飲食品、香粧品、日用・雑貨品、口腔用組成物、医薬品などの各種製品に直接配合してもよいし、上記冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物を香料組成物中にまず配合して、冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物含有香料組成物(本発明の香料組成物)とし、この冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物含有香料組成物を製品に配合することもできる。このとき、(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチル、それ以外の冷感物質、および温感物質を別々の香料組成物に添加し、それぞれの香料組成物を製品に混合するようにしてもよい。
【0065】
本発明の香料組成物において、冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物と共に含有し得る香料成分としては、各種の合成香料、天然精油、合成精油、柑橘油、動物性香料などを挙げることができ、例えば「周知・慣用技術集(香料)第I部」(平成11年1月29日、特許庁発行)に記載されているような広範な種類の香料成分を使用することができる。そのうちでも代表的なものとしては、例えば、α−ピネン、リモネン、ネラール、ゲラニアール、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノン、バニリン、エチルバニリン、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、cis−3−ヘキセノール、フェニルエチルアルコール、スチラリルアセテート、オイゲノール、ローズオキサイド、リナロール、ベンズアルデヒド、ムスコン、ムスクT(高砂香料工業株式会社)、テサロン(高砂香料工業株式会社)などを挙げることができる。
【0066】
本発明の冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物含有香料組成物における冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物の含有量は、一緒に調合する香料やその他の成分の種類、冷感剤組成物含有香料組成物、感覚刺激剤組成物含有香料組成物の使用目的などにより調整することができる。例えば、香粧品用の香料組成物では、一般に、香料組成物の全質量に対して、冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物の含有量が0.0001〜90質量%、好ましくは0.001〜70質量%、特に0.01〜50質量%であることが好ましい。
【0067】
また、飲食品用の香料組成物では、一般に、香料組成物の全質量に対して、冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物の含有量が0.0001〜90質量%であることが好ましく、0.01〜50質量%であることがより好ましい。さらに、日用・雑貨品、口腔用組成物または医薬品用の香料組成物である場合でも同様の含有量が好ましい。
【0068】
冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物を含有する本発明の冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物含有香料組成物は、必要に応じて、香料組成物において通常使用されている香料保留剤の1種または2種以上を含有していてもよい。その場合の香料保留剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ヘキシルグリコール、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート、ジエチルフタレート、ハーコリン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、中鎖脂肪酸ジグリセライドなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を含有することができる。
【0069】
本発明の冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物は、上述のように、冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物単独で、または冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物を含有する冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物含有香料組成物にして、各種製品に対して冷感または感覚刺激の付与に用いることができる。本発明の冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物自体或いは冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物を含有する冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物含有香料組成物によって冷感または感覚刺激を付与することのできる製品としては、例えば、飲食品、香粧品、日用・雑貨品、口腔用組成物、医薬品などを挙げることができる。
【0070】
本発明の冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物およびそれらを含有する冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物含有香料組成物によって、冷感または感覚刺激を付与することのできる飲食品の具体例としては、何ら限定されるものではないが、果汁飲料類、果実酒類、乳飲料類、炭酸飲料、清涼飲料、ドリンク剤類の如き飲料類;アイスクリーム類、シャーベット類、アイスキャンディー類の如き冷菓類;ゼリー、プリンなどのデザート類;ケーキ、クッキー、チョコレート、チューインガムなどの洋菓子類;饅頭、羊羹、ウイロウなどの和菓子類;ジャム類;キャンディー類;パン類;緑茶、ウーロン茶、紅茶、柿の葉茶、カミツレ茶、クマザサ茶、桑茶、ドクダミ茶、プアール茶、マテ茶、ルイボス茶、ギムネマ茶、グアバ茶、コーヒー、ココアの如き茶飲料または嗜好飲料類;和風スープ、洋風スープ、中華スープの如きスープ類;風味調味料;各種インスタント飲料乃至食品類;各種スナック食品類などを挙げることができる。
【0071】
また、本発明の冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物およびそれらを含有する冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物含有香料組成物によって香気付けすることのできる香粧品または日用・雑貨品としては、例えば、フレグランス製品、基礎化粧品、仕上げ化粧品、頭髪化粧品、日焼け化粧品、薬用化粧品、ヘアケア製品、石鹸、身体洗浄剤、浴用剤、洗剤、柔軟仕上げ剤、洗浄剤、台所用洗剤、漂白剤、エアゾール剤、消臭・芳香剤、忌避剤、その他の雑貨類などを挙げることができる。
【0072】
より具体的には、
・フレグランス製品としては、香水、オードパルファム、オードトワレ、オーデコロンなど;
・基礎化粧品としては、洗顔クリーム、バニシングクリーム、クレンジングクリーム、コールドクリーム、マッサージクリーム、乳液、化粧水、美容液、パック、メイク落としなど;
・仕上げ化粧品としては、ファンデーション、粉おしろい、固形おしろい、タルカムパウダー、口紅、リップクリーム、頬紅、アイライナー、マスカラ、アイシャドウ、眉墨、アイパック、ネイルエナメル、エナメルリムバーなど;
・頭髪化粧品としては、ポマード、ブリランチン、セットローション、ヘアーステック、ヘアーソリッド、ヘアーオイル、ヘアートリートメント、ヘアークリーム、ヘアートニック、ヘアーリキッド、ヘアースプレー、バンドリン、養毛剤、染毛剤など;
を挙げることができる。
【0073】
・日焼け化粧品としては、サンタン製品、サンスクリーン製品など;
・薬用化粧品としては、制汗剤、アフターシェービングローションおよびジェル、パーマネントウェーブ剤、薬用石鹸、薬用シャンプー、薬用皮膚化粧料などを挙げることができ;
・ヘアケア製品としては、シャンプー、リンス、リンスインシャンプー、コンディショナー、トリートメント、ヘアパックなど;
・石鹸としては、化粧石鹸、浴用石鹸、香水石鹸、透明石鹸、合成石鹸など;
・身体洗浄剤としては、ボディソープ、ボディシャンプー、ハンドソープなど;
・浴用剤としては、入浴剤(バスソルト、バスタブレット、バスリキッド等)、フォームバス(バブルバス等)、バスオイル(バスパフューム、バスカプセル等)、ミルクバス、バスジェリー、バスキューブなど;
・洗剤としては、衣料用重質洗剤、衣料用軽質洗剤、液体洗剤、洗濯石鹸、コンパクト洗剤、粉石鹸など;を挙げることができる。
【0074】
・柔軟仕上げ剤としては、ソフナー、ファーニチアケアーなど;
・洗浄剤としては、クレンザー、ハウスクリーナー、トイレ洗浄剤、浴室用洗浄剤、ガラスクリーナー、カビ取り剤、排水管用洗浄剤など;
・台所用洗剤としては、台所用石鹸、台所用合成石鹸、食器用洗剤など;
・漂白剤としては、酸化型漂白剤(塩素系漂白剤、酸素系漂白剤等)、還元型漂白剤(硫黄系漂白剤等)、光学的漂白剤など;
・エアゾール剤としては、スプレータイプ、パウダースプレーなど;
・消臭・芳香剤としては、固形状タイプ、ゲル状タイプ、リキッドタイプなど;
・雑貨としては、ティッシュペーパー、トイレットペーパーなど;
を挙げることができる。
【0075】
・口腔用組成物としては、例えば、歯磨き、口腔洗浄料、マウスウオッシュ、トローチ、チューインガム類など;
・医薬品類としては、ハップ剤、軟膏剤の如き皮膚外用剤、内服剤など;
を挙げることができる。
【0076】
本発明の冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物およびそれを含有する冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物含有香組成物を上記したような各種の製品の冷感または感覚刺激の付与に用いる場合は、冷感または感覚刺激が付与される製品の種類や製品の最終形態(例えば液体状、固体状、粉末状、ゲル状、ミスト状、エアゾール状などの製品形態)に応じて、冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物或いはそれらを含有する冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物含有香料組成物を、そのまま直接製品に添加または付与してもよいし;冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物或いはそれらを含有する冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物含有香料組成物を、例えば、アルコール類、プロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類に溶解して液体状にして添加または付与してもよいし;アラビアガム、トラガントガムなどの天然ガム質類、界面活性剤(例えばグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤など)を用いて可溶化或いは乳化分散させた可溶化状或いは分散状にして添加または付与してもよいし;アラビアガム等の天然ガム質類、ゼラチン、デキストリンなどの賦形剤を用いて被膜形成した粉末状で添加または付与してもよいし;カプセル化剤で処理してマイクロカプセルにして添加または付与してもよい。さらに、サイクロデキストリンなどの包接剤に包接して、冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物或いはそれらを含有する冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物含有香料組成物を安定化すると共に徐放性にして用いてもよい。
【0077】
冷感または感覚刺激付けを行う際の各種製品への冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物の添加量または付与量は、製品の種類や形態、製品に求められる冷感または感覚刺激付け効果や作用などに応じて調整することができる。一般的には製品の質量に対して、冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物の添加量または付与量が、0.0001〜90質量%であることが好ましく、特に0.01〜20質量%であることがより好ましい。
【実施例】
【0078】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これら実施例により何ら限定されるものでなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更させてもよい。なお、合成例中あるいは実施例中での生成物の確認、物性測定に用いた機器・装置類は次の通りである。
【0079】
1H NMR:日本ブルカー DRX−500
IR:Nicolet AVATAR 360FT−IR
MS:島津製作所 GCMS−QP2010
【0080】
〔合成例1:アセト酢酸l−メンチルの製造〕
【化7】

【0081】
温度計とDean−Sterk管およびジムロートコンデンサーを付した容量500mlの三口フラスコに、l−メントール100.0g(0.64mol)、アセト酢酸メチル81.7g(0.70mol)、パラトルエンスルホン酸1.5gおよびヘプタン150gを加え、加熱還流した。この間に生じてくるメタノールをDean−Sterk管より除去し、6時間後に原料であるメントールが消失した。
【0082】
得られた反応溶液は、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液30mlおよび飽和食塩水30mlで順次洗浄した後、ヘプタンを留去し、減圧蒸留(114〜115℃/170Pa)することにより、目的とするアセト酢酸l−メンチル148.0g(l−メントールに基づく理論収率96.2%)を無色油状物として得た。
【0083】
物性データ(NMR、IR、MS)
H NMR(CDCl,500MHz):δ(ppm)=0.77(d,3H),0.85〜1.07(m,9H),1.38(m,1H),1.50(m,1H),1.66〜1.71(m,2H),1.87(m,1H),2.02(m,1H),2.27(s,3H),3.43(s,2H),4.74(td,1H).
IR(NaCl):2956,2870,1718,1647,1453,1412,1362,1313,1242,1180,1150,984(cm−1).
MS(m/e):240(M+1),225,197,155,141,138,123,109,95(P),81,69,43,41.
【0084】
〔実施例1:(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルの製造〕
【化8】

【0085】
容量500mlのオートクレーブ中に、アセト酢酸l−メンチル144.2g(0.60mol)、[{RuCl((S)−SEGPHOS)}(μ−Cl)][MeNH]触媒98.8mg(12.0μmol)およびメタノール75mlを入れ、70℃、水素圧4MPaで、5.5時間反応させた。得られた反応溶液は、溶媒を留去した後、減圧蒸留(121℃/170Pa)することにより、目的とする(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチル143.1g(収率98.4%)を無色油状物として得た。
【0086】
なお、上記触媒中の「SEGPHOS」は、((5,6),(5’,6’)−ビス(メチレンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)を表す。
【0087】
物性データ(NMR、IR、MS)
H NMR(CDCl,500MHz):δ(ppm)=0.77(d,3H),0.85〜1.08(m,9H),1.23(d,3H),1.38(m,1H),1.49(m,1H),1.66〜1.70(m,2H),1.85(m,1H),2.01(m,1H),2.40(dd,1H),2.48(dd,1H),3.04(sd,1H),4.19(m,1H),4.74(td,1H).
IR(NaCl):3444,2957,2931,2870,1731,1456,1372,1293,1251,1179,1085,987(cm−1).
MS(m/e):243(M+1),227,210,199,181,155,140,138,123,105,95(P),81,69,43,41.
【0088】
得られた(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルの3位の水酸基の選択性については、高速液体クロマトグラフィーにより分離分析することができる。光学活性カラムとして、CHIRACEL OD−H(ダイセル化学社製)を用い、溶媒としてヘプタンおよびイソプロパノールの混合溶媒系により分析した。結果を図1に示す。
【0089】
この結果、上記実施例1で得られた(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルの3位の水酸基の選択性は99.0%であり、98.0%e.e.と計算された。
【0090】
〔実施例2:(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルとラセミ体との比較官能評価〕
実施例1で得た(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチル、およびラセミ体3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルについてそれぞれ50ppm水溶液を調製した。10人の5年以上経験した専門パネラーにより、50ppm水溶液について口中で官能評価を行った。
【0091】
その結果、10人のパネラー全員が、(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルの方が、好ましくない刺激感、苦味などがなく、優れた清涼性を有していると回答した。
【0092】
〔実施例3:苦味および刺激感と光学純度に関する比較官能評価〕
実施例1で得た(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルにラセミ体3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルを添加し、以下のような所定の光学純度を有する(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルを調製した。これらについてそれぞれ100ppm水溶液を調製し、10人の5年以上経験した専門パネラーにより、口中で苦味および刺激感に対する官能評価を行った。
【0093】
官能評価は100ppm水溶液を15秒間口に含み、吐き出した後、苦味の強さをラセミ体の苦味を5とした場合の相対強度で5段階でスコアをつけ、平均を算出し効果を検証した。結果を表1に示す。
【0094】
【表1】

【0095】
この結果、30%e.e.では苦味の相対強度の平均は4点台で依然として苦味を示すのに対し、50%e.e.ではそれらは2点台となり、弱い苦味に抑えられることがわかった。さらに70%e.e.ではそれらは1点台となり、非常に弱い苦味に抑えられ、90%e.e.以上では苦味はほとんど感じられなくなることがわかった。
【0096】
〔実施例4:冷感効果と光学純度に関する比較官能評価〕
すでに実施例2で(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルの方がラセミ体に比べて冷感効果が強く、優れた清涼性を有していることがわかっているが、実施例1で得た(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルに、ラセミ体3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルを添加し、以下のような所定の光学純度を有する(3S)−3−ヒドロキシブタン酸メンチルを調製し、これらについてそれぞれ100ppm水溶液を調製し、10人の5年以上経験した専門パネラーにより、冷感効果に対する官能評価を行った。
【0097】
評価方法は100ppm水溶液を15秒間口に含み、吐き出した後、冷感効果の強さを、ラセミ体を3とした場合の相対強度で以下の評価基準に基づき5段階でスコアをつけ、平均を算出し効果を検証した。結果を表2に示す。
【0098】
<評価基準>
5: 非常に強い
4: 強い
3: レベル
2: 弱い
1: 非常に弱い
【0099】
【表2】

【0100】
上記の結果から、ラセミ体を基準に(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルの光学純度が上昇するにつれ、クリアーな清涼性が徐々に高まり、その傾向は50%e.e.以上で優位になり、90%e.e.以上で顕著なことが分かった。
【0101】
〔実施例5:メントールとの相乗効果〕
l−メントールと、実施例1で得た(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルについて、95:5(質量比)で混合し、冷感剤組成物を調製した。得られた冷感剤組成物について、それぞれ20ppmの水溶液1,000mlを調製し、口中で官能評価を行うとともに、比較として、l−メントール単独の20ppm水溶液についても口中での官能評価を行った。
【0102】
なお、評価は5年以上経験した専門パネラー10人により、上記水溶液10mlを10秒間口に含んだ後吐き出し、この時を0秒とし、清涼性(爽快感)の強さを評価し、また3分後の清涼性(爽快感)の強度の持続性を評価した。
【0103】
この結果、吐き出し直後においてはパネラー10名中8名が、(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルを含むものが、メントール単独に比べて強い清涼性(爽快感)と弱い苦味を有すると回答した。
また、吐き出し後3分を経過しても、パネラー10名中9名が、(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルを含むものが、メントール単独に比べて強い清涼性の持続感を有すると回答した。
【0104】
〔実施例6:バニリルブチルエーテルを添加したときの相乗効果〕
実施例1で得た(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルについて、0.5質量%の温感物質バニリルブチルエーテルを含有した感覚刺激剤組成物を調製した。調製された感覚刺激剤組成物について、それぞれ20ppmの水溶液1,000mlを調製し、口中で官能評価を行うとともに、比較として、(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチル単独の20ppm水溶液についても口中での官能評価を行った。
【0105】
なお、評価は5年以上経験した専門パネラー10人により、上記水溶液10mlを10秒間口に含んだ後吐き出し、この時を0秒とし、清涼性(爽快感)の強さを評価し、また3分後の清涼性(爽快感)の強度の持続性を評価した。
【0106】
この結果、0秒後(直後)において、パネラー10名中10名全員が、(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチル単独に比べて、バニリルブチルエーテルを含むものの方が強い清涼性(爽快感)を有すると回答した。さらに、3分後においても、パネラー10名全員が、(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチル単独に比べて、バニリルブチルエーテルを含むものの方が強い清涼性(爽快感)を有すると回答した。
【0107】
実施例2〜6から明らかなように、(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルのみでの評価、メントールとの併用、バニリルブチルエーテルとの併用における評価ともに非常に良好であることが分かる。
【0108】
〔実施例7:練り歯磨剤〕
下記処方に従い、練り歯磨剤を調製した。
【0109】
<練り歯磨剤処方>
(成 分) (配合量 g)
l−メントール 0.25
(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチル 0.05
リン酸水素カルシウム(2水和物) 50.00
グリセリン 25.00
ラウリル硫酸ナトリウム 1.40
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.50
サッカリンナトリウム 0.20
安息香酸ナトリウム 0.10
ストロベリータイプフレーバー(高砂香料工業株式会社製) 0.70
精製水 残部
合 計 100.00
【0110】
上記の処方で調製した練り歯磨剤は、口腔内でひんやりした爽やかな感じを有し、苦味はなかった。本発明の(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルを使用しなかった練り歯磨剤に比べて、上記処方の練り歯磨剤は、長く続く冷たい爽やかなフレーバーを有し、またその香気の持続性が認められた。
【0111】
〔実施例8:歯磨きジェル〕
下記処方に従い、歯磨きジェルを調製した。
【0112】
<歯磨きジェル処方>
(成 分) (配合量 g)
l−メントール 0.30
(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチル 0.01
炭酸水素ナトリウム 97.69
酸化マグネシウム 0.50
ポリエチレングリコール 0.50
サッカリンナトリウム 0.20
三リン酸ナトリウム 0.10
ペパーミントタイプフレーバー(高砂香料工業株式会社製) 0.70
合 計 100.00
【0113】
上記処方で調製した歯磨きジェルは、口腔内でひんやりした爽やかな感じを有し、苦味はなかった。本発明の(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルを使用しなかった歯磨きジェルに比べて、上記処方の歯磨きジェルは、長く続く冷たい爽やかなフレーバーを有し、延長されたフレーバーの衝撃的効果の印象を伴っていた。
【0114】
〔実施例9:チューインガム〕
下記処方に従い、チューインガムを調製した。
【0115】
<チューインガム処方>
(成 分) (配合量 g)
l−メントール 0.01
(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチル 0.01
ガムベース 24.00
コーンシロップ(42DE) 6.70
グリセリン 1.10
砂糖 67.18
ペパーミントタイプフレーバー(高砂香料工業株式会社製) 1.00
合 計 100.00
【0116】
上記処方で調製したチューインガムは、ひんやりした爽やかな感じを有し、苦味はなかった。本発明の(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルを使用しなかったチューインガムに比べて、上記処方のチューインガムは、長く続く冷たい爽やかなフレーバーを有し、延長されたフレーバーの衝撃的効果の印象を伴っていた。
【0117】
〔実施例10:香料組成物〕
下記処方(配合量は質量部)に従い、常法により冷感剤含有香料組成物を調製した。
【0118】
<香料組成物処方>
(成 分) (配合量)
アップルベース(高砂香料工業株式会社製) 8.0
ベルガモットオイル 14.0
アセト酢酸エチル 5.0
ジヒドロジャスモン酸メチル 23.0
ラウリナール 3.0
レボサンドール(高砂香料工業株式会社製) 4.0
オレンジオイル 8.0
10−オキサ−16−ヘキサデカノライド 8.0
フェノキサノール(IFF社製) 6.0
スチラリルアセテート 3.0
テサロン(高砂香料工業株式会社製) 8.0
(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチル 30.0
【0119】
〔実施例11:シャンプー〕
下記処方に従い、上記実施例10の香料組成物を1.0%賦香したシャンプー100gを調製した。このものは、冷感を有しかつ冷感効果を持続した。
【0120】
<シャンプー処方>
(成 分) (配合量 g)
ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム 14.00
ラウリン酸アミドプロピルベタイン 4.00
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 3.00
カチオン化セルロース 0.50
ジステアリン酸エチレングリコール 1.00
パラオキシ安息香酸エチル 0.25
クエン酸 適量
実施例10の香料組成物 1.00
精製水 残部
合 計 100.00
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明において用いられる(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルは、ラセミ体と比較して、好ましくない刺激や苦味などを有せず、また清涼感や冷涼感の持続性に優れた冷感物質である。そして、本発明では、苦みがなく、冷感効果、感覚刺激効果に優れ、これら効果の持続性にも優れた、前記化合物を含有する冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物、および該冷感剤組成物または感覚刺激剤組成物を含有する、香料組成物、飲食品、香粧品、日用・雑貨品、口腔用組成物または医薬品が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II):
【化1】

で表されるアセト酢酸l−メンチルを不斉水素化することを特徴とする、式(I):
【化2】

で表される(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルの製造方法。
【請求項2】
前記式(I)で表される(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルを含有することを特徴とする冷感剤組成物。
【請求項3】
前記式(I)で表される(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルの3位の水酸基の立体選択性が50%e.e.以上であることを特徴とする請求項2記載の冷感組成物。
【請求項4】
さらに、(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチル以外の冷感物質から選ばれる少なくとも1種の冷感物質を含有することを特徴とする請求項2または3に記載の冷感剤組成物。
【請求項5】
前記(3S)−3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチル以外の冷感物質が、メントール、メントン、カンファー、プレゴール、イソプレゴール、シネオール、ハッカオイル、ペパーミントオイル、スペアーミントオイル、ユーカリプタスオイル、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、N−アルキル−p−メンタン−3−カルボキサミド、3−l−メントキシ−2−メチルプロパン−1,2−ジオール、p−メンタン−3,8−ジオール、2−l−メントキシエタン−1−オール、3−l−メントキシプロパン−1−オール、乳酸l−メンチル、メントングリセリンケタール、N−メチル−2,2−イソプロピルメチル−3−メチルブタンアミドであることを特徴とする請求項4に記載の冷感剤組成物。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の冷感剤組成物を含有することを特徴とする感覚刺激剤組成物。
【請求項7】
さらに、少なくとも1種の温感物質を含有することを特徴とする請求項6に記載の感覚刺激剤組成物。
【請求項8】
前記温感物質が、バニリルエチルエーテル、バニリルプロピルエーテル、バニリンプロピレングリコールアセタール、エチルバニリンプロピレングリコールアセタール、カプサイシン、ギンゲロール、バニリルブチルエーテル、4−(l−メントキシメチル)−2−フェニル−1,3−ジオキソラン、4−(l−メントキシメチル)−2−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(l−メントキシメチル)−2−(2’−ヒドロキシ−3’−メトキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(l−メントキシ−メチル)−2−(4’−メトキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(l−メントキシメチル)−2−(3’,4’−メチレンジオキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(l−メトキシメチル)−2−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、バニリンアセタール類、トウガラシ油、トウガラシオレオレジン、ジンジャーオレオレジン、ノニル酸バニリルアミド、ジャンブーオレオレジン、サンショウエキス、サンショール−I、サンショール−II、サンショウアミド、黒胡椒エキス、カビシン、ピペリンまたはスピラントールであることを特徴とする請求項7に記載の感覚刺激剤組成物。
【請求項9】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の冷感剤組成物が、香料組成物、飲食品、香粧品、日用・雑貨品、口腔用組成物または医薬品の全質量に対し0.0001〜90質量%配合されてなることを特徴とする香料組成物、飲食品、香粧品、日用・雑貨品、口腔用組成物または医薬品。
【請求項10】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の感覚刺激剤組成物が、香料組成物、飲食品、香粧品、日用・雑貨品、口腔用組成物または医薬品の全質量に対し0.0001〜90質量%配合されてなることを特徴とする香料組成物、飲食品、香粧品、日用・雑貨品、口腔用組成物または医薬品。
【請求項11】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の冷感剤組成物を配合することを特徴とする、香料組成物、飲食品、香粧品、日用・雑貨品、口腔用組成物または医薬品の製造方法。
【請求項12】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の感覚刺激剤組成物を配合することを特徴とする、香料組成物、飲食品、香粧品、日用・雑貨品、口腔用組成物または医薬品の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−254621(P2010−254621A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106604(P2009−106604)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000169466)高砂香料工業株式会社 (194)
【Fターム(参考)】