説明

15−リポキシゲナーゼ阻害剤

【課題】麦類若葉の搾汁液粉末から簡単に廉価に得ることができる15−リポキシゲナーゼ阻害剤を提供する。前記15−リポキシゲナーゼ阻害剤を、その種類や用途に応じて必要量を簡単に配合することができる医薬品、医薬部外品及び飲食品を提供する。
【解決手段】 本発明の15−リポキシゲナーゼ阻害剤は、麦類若葉の搾汁液又はその濃縮液を噴霧乾燥又は凍結乾燥して得られた搾汁液粉末を有効成分として含有するものとしている。本発明の医薬品、医薬部外品及び飲食品は、前記麦類若葉の搾汁液粉末を有効成分とする画分を配合したものとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広く生体膜脂質の過酸化反応に関わり、動脈硬化、がん、炎症、高血圧、心疾患等に関与する15−リポキシゲナーゼの阻害剤、並びにこの15−リポキシゲナーゼ阻害剤を配合した医薬品、医薬部外品及び飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
リポキシゲナーゼは、一連のシス二重結合を有するポリエン脂肪酸に分子状酸素を添加し、ヒドロペルオキシドを導入する酸化還元酵素である。リポキシゲナーゼには、5 ーリポキシゲナーゼ、8 ーリポキシゲナーゼ、9 ーリポキシゲナーゼ、12ーリポキシゲナーゼ、15−リポキシゲナーゼが知られている。
【0003】
大豆の15−リポキシゲナーゼL−1 は、哺乳動物の15−リポキシゲナーゼと25%の同一性があり、二種類のヒト15−リポキシゲナーゼの同一性は35%であることが報告されているが、機能的な相同性においては、種を超えて、70〜95%の配列に同一性を有する。大豆のリポキシゲナーゼ Lー1 は、15−リポキシゲナーゼであり、酵素濃度の低いときには、アラキドン酸から15Sーヒドロペルオキシエイコサテトラエン酸(HPETE)を生成するが、他の大豆アイソザイム(isozyme) または哺乳類の赤血球15−リポキシゲナーゼと比較すれば、副生物の生成のない反応である。大豆Lー1 は、5 S と8S 位への酸素添加を特異的に触媒し、初期生成物15−HPETE を、反応速度は低いが、特異的な二重酸素添加により、5S,15S −di−HPETE と8S ,15S ーdiーHPETE に変換する(非特許文献1)。
【0004】
大豆15-リポキシゲナーゼとウサギ赤血球15-リポキシゲナーゼの基質特異性を比較した実験から、両者の機能上の類似性が報告されている(非特許文献2、3)
ヒト15−リポキシゲナーゼによる低比重リポタンパク質(LDL) の酸化が報告され、ヒトにおいても、15−リポキシゲナーゼのアテローム性動脈硬化への関与が考えられる。さらに、12/15−リポキシゲナーゼ遺伝子を破壊したマウスにおいては、アテローム性動脈硬化またはアテローム発生を抑制することが報告されている。
【0005】
現在、日本および欧米諸国では、糖尿病・高血圧・動脈硬化などの症状が重複するメタボリックシンドロームとよばれる病態をもつ患者が増加している。
【0006】
生体内における過酸化が、アテローム性動脈硬化症、白内障、血管系疾患等のイニシエーションとプロモーションに関与するプロセスとして注目されている。動脈硬化症と動脈内壁の脂質過酸化反応による生成物の量の間には密接な関係があることが、既に1950年代に示唆されている。また、動脈硬化症が動脈内壁の2 ーチオバルビツール酸値(TBA 値)の増加に対応することも見出されている。
【0007】
動脈硬化症の薬物療法には、クロフィブラート製剤、ニコチン酸製剤、コレスチラミン製剤のような陰イオン交換樹脂製剤、HMG-CoA 還元酵素阻害剤、プロブコール製剤、エラスターゼ等が使用されるが、適用症例に対する投薬の選択、副作用が顕著であること等の問題がある。
【0008】
さらにLDLの酸化は、アテローム性動脈硬化症の発症と進行に対して重要な要因となることが明らかにされている。
【0009】
動脈硬化症は、アテローム性動脈硬化症、中膜動脈硬化症、細動脈硬化症に大別される。動脈は、一層から成る血管内皮と内皮下組織からなる内膜、血管平滑筋から成る中膜及び最外層の外膜から構成されている。
【0010】
血中のコレステロールが増加すると流血中のマクロファージが多数、血管内皮に付着し、内皮下に侵入して、マクロファージ・血管内皮細胞により産生される活性酸素によりLDL は酸化されてマクロファージに貧食され、泡沫細胞になり、PGE2・LTC4等を産生して細胞障害を引き起こして血管内膜が肥厚し、血管内膜の方に張り出した状態になり、アテローム性動脈硬化症に進展する。
【0011】
アテローム性動脈硬化には、動脈壁の内皮におけるリポキシゲナーゼ- 依存LDL 酸化が深く関っていると考えられている。従って、リポキシゲナーゼ- 誘導脂質過酸化の抑制は、アテローム性動脈硬化症の進展に重要な役割を有していると考えられる。
【0012】
また近年、骨減少の治療および予防、ならびに骨形成を促進するのに、15−リポキシゲナーゼ阻害剤が有効であるとした発明が公開されている(特許文献1)。
【非特許文献1】Brash,A.R.:The Journal of Biological Chemistry, 274, 23679-23682(1999).
【非特許文献2】Sadik,C.D., Sies,H., Schewe,T.:Biochem. Pharmacol., 65, 773-781 (2003).
【非特許文献3】Schewe,T.:Biol.Chem., 383, 365-374 (2002).
【特許文献1】特表2005−531498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明においては、大豆リポキシゲナーゼの特異な性質に立脚して、大豆リポキシゲナーゼの阻害剤は、ヒトをはじめとする哺乳類のリポキシゲナーゼに対する阻害剤と共通する領域が多いと考えられ、この観点より、麦類若葉に含まれるフラボノイドの多彩な作用に着目して、リポキシゲナーゼに対する阻害剤を開発することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、大豆15−リポキシゲナーゼの哺乳類15−リポキシゲナーゼとの相同性に関する前記非特許文献1に基づいて、生体内反応を検討する対象として妥当であり、大豆15−リポキシゲナーゼに対する阻害効果は、哺乳動物の15−リボキシゲナーゼに対する阻害効果に対応すると考えて、鋭意研究を行った結果、麦類若葉の搾汁液粉末に含有されているサポナリンまたはルトナリンが大豆15−リポキシゲナーゼに対して顕著な阻害効果を有することを見出した。
【0015】
また、麦類若葉は多彩な生理作用を有しており、特に大麦若葉の搾汁液粉末は、抗潰瘍作用・抗高コレステロール作用・抗炎症作用・血糖降下作用・抗変異原作用・抗血栓作用および血管保護作用を有することが報告されている。この研究の一環として、麦類若葉の搾汁液粉末に含有されているサポナリンまたはルトナリンが大豆15−リポキシゲナーゼに対する阻害作用を見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
流血中のマクロファージは、血中のコレステロールの増加により血管内皮に付着し、内皮下に侵入し、血管内皮・マクロファージ等により産生される活性酸素により酸化された酸化LDLを貪食して細胞内にコレステロールエステル等の酸化物を充満した泡沫細胞を形成し、アテローム性動脈硬化に進展する。
【0017】
LDLは、コレステロールエステルからなる芯部と、トリグリセライドからなる殻とそれを取り巻くリン脂質とコレステロールからなる一重膜からできており、全体をアポプロテインB100が取り巻いている。LDLは、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸を構成成分として含有するが、LDL脂質の酸化は主として高度不飽和脂肪酸部位で起こる。
【0018】
LDLの酸化には、脂質部分の酸化とアポタンパク側の変性とがある。またLDLの脂質部分は、表層部分にあるリン脂質と核部分にあるコレステロール等に分けられ、それぞれの脂質の酸化が起こる。酸化LDLとマロンアルデヒド修飾LDLを変性LDLと称するが、この変性LDLがマクロファージの貪食作用の対象となる。
【0019】
本発明の15−リポキシゲナーゼ阻害剤は、麦類若葉の搾汁液又はその濃縮液を噴霧乾燥又は凍結乾燥して得られた搾汁液粉末を有効成分として含有するものとしている。
【0020】
さらに、本発明の15−リポキシゲナーゼ阻害剤は、麦類若葉の搾汁液又はその濃縮液を噴霧乾燥又は凍結乾燥して得られた搾汁液粉末から調製したサポナリン及び/又はルトナリンを有効成分として含有するものとしている。
【0021】
そして、本発明の医薬品、医薬部外品及び飲食品は、前記麦類若葉の搾汁液粉末を有効成分とする画分を配合したものとしている。
【0022】
さらに、本発明の医薬品、医薬部外品及び飲食品は、前記麦類若葉の搾汁液粉末から調製したサポナリン及び/又はルトナリンを有効成分とする画分を配合したものとしている。
【発明の効果】
【0023】
本発明の15−リポキシゲナーゼ阻害剤は、以上のように構成されており、麦類若葉の搾汁液粉末から簡単に廉価に得ることができるものとなる。
【0024】
さらに、本発明の医薬品、医薬部外品及び飲食品は、前記15−リポキシゲナーゼ阻害剤を、その種類や用途に応じて必要量を簡単に配合することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、麦類若葉の搾汁液粉末またはその分画成分であるサポナリンまたはルトナリンを有効成分とする15−リポキシゲナーゼ阻害剤、並びにこれを配合した医薬品、医薬部外品及び飲食品に関する。
【0026】
本発明者らは、多彩な生理作用を有する麦類若葉に着目し、麦類若葉の搾汁液粉末または麦類若葉成分中のサポナリン、ルトナリンに大豆15−リポキシゲナーゼ活性に対する阻害作用を見い出し、該成分を配合した医薬品、医薬部外品及び飲食品を完成するに至った。
【0027】
次に、本発明の麦類若葉の搾汁液粉末および大豆15−リポキシゲナーゼに対する阻害活性を有する画分を得るための麦類若葉の搾汁液粉末の製造法を説明する。
【0028】
新鮮な生の緑色野菜の青汁粉末化においては、従来法では緑色野菜の搾汁液から得られた青汁粉末はその製造過程において緑色の劣化、成分の変化、酸化による成分の変化等が著しく、また得られた粉末の水分吸収性が高く、得られた粉末製品の長期(例えば6 ヶ月〜2 年間)安定性においては十分満足すべきではない大きな欠点があった。そのために最終商品化後の上記種々の変化、変質による製品の改良が強く望まれていた。本発明者はこのような腐敗、変質を抑えて安定性を高め、長期安定な新鮮な生の緑色植物粉末食品の製法を完成することに成功し、新鮮な可食性緑色植物粉末を容易に提供することを可能にした。
【0029】
一般に新鮮な生野菜類を機械的に搾汁して青汁を作る時は、生野菜に含まれる多種多様の酵素が青汁の成分を分解するのである。青汁は空気に触れることにより強く酸化作用を受け、青汁はまた常温では30分間も安定に保つことはできず、色の変化、味や香りの変化が起こることは良く知られていることである。その青汁を噴霧乾燥又は凍結乾燥する時には経済的生産性を考慮して一般的には青汁のエキス分又は固形分の濃度を高めてから噴霧乾燥又は凍結乾燥するのでその濃縮過程の時間と濃度の関係により青汁はかなりの変化を免れないのである。そのために、得られた粉末製品の新鮮度、色調、特にクロロフィルによる緑色、味、香り、その他の含有成分の分解・変性等が起こり易い状態であった。この点が従来法においては技術的に大きな欠点であった。本発明者はこの点を解決すべく研究を重ね、安定な青汁粉末の製造に成功した。
【0030】
新鮮な生の緑色植物を搾汁して得られた青汁に速やかに塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、塩化カルシウム、有機酸カルシウム等の1 種類又は2 種類以上をそれぞれ0 .02〜1 %、好ましくは0 .03〜0 .3 %を添加する。この塩類濃度を選択した理由は、濃縮により塩類濃度が高くなるのを調節するためである。この操作においてはpH6 .0 〜8 .5 に保つことが特徴である。一般には新鮮植物の青汁は通常pH5 .0 〜6 .0 の弱酸性であるが、通常の黴や腐敗菌はpH5 .0 〜6 .0 で活性が大となる。更にまた塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリム、水酸化ナトリウム、塩化カルシウム、有機酸カルシウム等の1 種類又は2 種類以上をそれぞれ0 .03〜0 .3 %を青汁に添加することにより青汁成分の変質を可及的防止することを見い出し
た。かくして塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、塩化カルシウム、有機酸カルシウム等の1 種類又は2 種類以上をそれぞれ添加し、pHを6 .0 〜8 .5 に調節した後、直ちに又は青汁の濃縮工程を経た後、噴霧乾燥或いは凍結乾燥する事により製品が著しく安定化することを見出した。
【0031】
本発明で好適に使用される麦類植物としては、大麦が最も適しているが、裸麦、小麦、トウモロコシ、燕麦、鳩麦、イタリアンダイグラス、キビ等も使用できる。
【0032】
本発明では、緑色植物、特に、大麦、裸麦緑葉の新鮮な成熟期前の若葉が特に適している。
【0033】
緑色植物、特に、大麦若葉を収穫した直後、機械的に搾汁し、固形分を濾過、遠心分離機等により除去して搾汁液を調製する。
【0034】
次いで、搾汁液を噴霧乾燥、凍結乾燥等により搾汁液粉末を調製し、得られた搾汁液粉末を水又はnーヘキサンにより抽出し、水可溶性成分を回収して噴霧乾燥、凍結乾燥等により搾汁液粉末を調製する。
【0035】
サポナリンの精製は次のようにして行った。
【0036】
大麦若葉の搾汁液粉末に精製水を加えて、撹拌しながら加熱し90℃以上で15分間熱水抽出する。水冷後60メッシュのフィルターでろ過し、ろ液をさらに減圧下でろ紙ろ過する。
【0037】
ろ液をエバポレーターで1/2に減圧濃縮してアンバーライトXAD2を充填したカラムに添加後、精製水、10%メタノール水、20%メタノール水、28%メタノール水、50%メタノール水、メタノール水により分画する。50%メタノール水の画分を濃縮し、冷蔵保存して析出した結晶を減圧下でろ紙ろ過する。この粗結晶に60%メタノール水を加えて加熱溶解後、減圧下でメタノールを留去し冷蔵保存して、析出した結晶を減圧下でろ紙ろ過する。得られた結晶にメタノールを加えて撹拌・洗浄を行い減圧下で乾燥する。
【0038】
ルトナリンの精製は次のようにして行った。
【0039】
大麦若葉の搾汁液粉末に精製水を加えて、撹拌しながら加熱し90℃以上で15分間熱水抽出する。水冷後60メッシュのフィルターでろ過し、ろ液をさらに減圧下でろ紙ろ過する。
【0040】
ろ液をエバポレーターで1/2に減圧濃縮してアンバーライトXAD2を充填したカラムに添加後、精製水、10%メタノール水、20%メタノール水、28%メタノール水、50%メタノール水、メタノール水により分画する。28%メタノール水の画分については再分画し、各分画液をHPLCで測定してルトナリンを含む分画液を合わせて減圧下で濃縮する。この濃縮液をアンバーライトXAD2を充填したカラムに添加した展開液を用いて分画を行う。
【0041】
15-リポキシゲナーゼは、LDL脂質の酸化に関与するが、広く生体膜脂質の過酸化反応に関わり、動脈硬化、がん、炎症、高血圧、心疾患等に関与する。
【0042】
本発明の15−リポキシゲナーゼ阻害剤は、動脈硬化、がん、炎症、高血圧、心疾患、血糖値上昇の抑制を目的とした医薬品、医薬部外品及び飲食品に配合することができる。
【0043】
前記15−リポキシゲナーゼ阻害剤が配合される本発明の医薬品は、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等による経口投与、又は注射等による非経口投与することができる。これらの各種製剤は、定法により調整することができる。前記15−リポキシゲナーゼ阻害剤の配合量は、医薬品の種類や用途によって異なるが、一般的には0.1〜500mg/kg、好ましくは0.2〜100mg/kgの範囲内で配合することができる。また、その摂取量は、症状、年齢、体重等によって異なるが、15−リポキシゲナーゼ阻害剤として、成人に対して一日0.01〜10g程度が適当である。
【0044】
前記15−リポキシゲナーゼ阻害剤が配合される本発明の医薬部外品は、例えば、ローション、クリーム、乳液等の化粧品、ヘアトニック、育毛剤、石けん等に対し、それらの組成成分や外観等に対し実質的に影響を与えることなく容易に配合することができる。前記15−リポキシゲナーゼ阻害剤の配合量は、化粧料の種類、用途等に応じて広い範囲で変えることができるが、一般的には、化粧料基剤に対して0.01〜10w/w%、好ましくは0.1〜5w/w%の範囲内で配合するのが適当である。
【0045】
前記15−リポキシゲナーゼ阻害剤が配合される本発明の飲食品は、その種類には特に制約されることはなく、例えば、牛乳、スープ、栄養ドリンク剤、各種ジュース、パン類、菓子類、麺類、魚類および肉類加工食品等を挙げることができる。前記15−リポキシゲナーゼ阻害剤の配合量は特に制限を受けず、飲食品の種類や用途等において広範囲にわたって配合することができるが、一般的には0.0001〜1.0w/w%、好ましくは0.0005〜0.5w/w%の範囲内で配合することができる。また、その摂取量は、15−リポキシゲナーゼ阻害剤として、成人に対して一日0.01〜10g程度が適当である。
【0046】
次に、本発明を以下の実施例により説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0047】
[実施例1]
(麦類若葉搾汁液粉末の製造)
大麦若葉1kg を水洗後、ジューサーで搾汁し、濾過した生青汁1Lに塩化ナトリウムを0 .08%、重炭酸ナトリウムを0 .02%添加し、溶解後、送風温度190 ℃、排風温度130 ℃で噴霧乾燥を行い、青汁粉末150gを得た。
【0048】
[実施例2]
(麦類若葉搾汁液粉末の製造)
大麦若葉1kg を水洗後、ジューサーで搾汁し、濾過した生青汁1Lを10℃において塩化ナトリウムを0 .1 %、重炭酸ナトリウムを0 .05%添加して減圧乾燥し、濃縮液250mL を得た。得られた濃縮液を、送風温度180 ℃、排風温度120 ℃で噴霧乾燥を行い、青汁粉末170gを得た。
【0049】
[実施例3]
(15−リポキシゲナーゼ活性の測定)
リノール酸を0 .2mol/L、pH9 .0 のホウ酸緩衝液に溶解して調製した10mmol/L溶液40μL 、阻害剤の10%DMSO溶液50μL 、ホウ酸緩衝液2860μL の混合液を25℃でプレインキュベーションして15−リポキシゲナーゼ10,000units/mL溶液(ホウ酸緩衝液に溶解)50μL を加えて反応を開始した。反応開始後30秒から90秒までの1 分間の波長 234nm における吸光度変化を測定して、反応速度を表示した。
【0050】
[実施例4]
(大麦若葉抽出液の調製)
実施例1 で得られた青汁粉末200mg をホウ酸緩衝液20mLに懸濁し、超音波発信機(ASONE USK-3R)を用いて30分間超音波抽出を行った。高速冷却遠心機(HITACHI CR21)により 4 ℃で、遠心分離を16,500×g、10分間行い、上清を0 .22μm フィルターにより濾過を行い、大麦若葉抽出液を得た。
【0051】
[実施例5]
(大麦若葉抽出液による15−リポキシゲナーゼ活性の阻害)
大麦若葉抽出液を反応液に対して1 ,3 ,6v/v %添加して、実施例3 のリポキシゲナーゼ活性の測定方法に準じて、大麦若葉抽出液による15−リポキシゲナーゼ活性に対する阻害効果を測定した結果を大麦若葉抽出液の未添加での活性を対照として図1に示す。本実験においては、大麦若葉抽出液および大麦若葉抽出液を沸騰水中にて5 分間熱処理した試料を用いた。大麦若葉抽出液は、加熱および非加熱ともに15−リポキシゲナーゼ活性を阻害し、耐熱性および非耐熱性成分の存在することが明らかになった。
【0052】
[実施例6]
(医薬品の製造)
本発明で調製したサポナリンを配合した顆粒剤を次の処方により製造した。
サポナリン ・・・ 100.0mg
乳糖 ・・・ 650.0mg
デンプン ・・・ 240.0mg
ゼラチン ・・・ 10.0mg
サポナリン、乳糖、デンプン及びゼラチンを均一に混合し、少量の水を加えて更に混合したのち、顆粒状にし乾燥する(粒径0.8mm柱状顆粒)。
【0053】
[実施例7]
(医薬品の製造)
本発明で調製したルトナリンを配合した顆粒剤を次の処方により製造した。
ルトナリン ・・・ 100.0mg
乳糖 ・・・ 650.0mg
デンプン ・・・ 240.0mg
ゼラチン ・・・ 10.0mg
ルトナリン、乳糖、デンプン及びゼラチンを均一に混合し、少量の水を加えて更に混合したのち、顆粒状にし乾燥する(粒径0.8mm柱状顆粒)。
【0054】
[実施例8]
(医薬部外品の製造)
本発明で調製したサポナリンを配合したローションを次の処方により製造した。
サポナリン ・・・ 0.1g
95%エタノール ・・・ 100g
パラオキシ安息香酸メチル ・・・ 0.05g
香料 ・・・ 適量
着色料 ・・・ 0.005g
精製水 ・・・ 適量
全量 ・・・ 1,000g
【0055】
[実施例9]
(医薬部外品の製造)
本発明で調製したサポナリンを配合したクリームを次の方法で製造した。
ステアリン酸 ・・・ 10g
イソプロピルミリステート ・・・ 5g
セチルアルコール ・・・ 5g
流動パラフィン ・・・ 7g
グリセリールモノステアレート ・・・ 2g
ポリオキシエチレンステアレート ・・・ 5g
パラオキシ安息香酸メチル ・・・ 0.1g
を混和し、さらにこれにグリセリン3g、プロピレングリコール1g、及び水50gを混合して乳化し、乳化液の温度が60℃になったとき、本発明で調製したサポナリン0.3gを加えて撹拌し、更に香料を適量加え、クリームを製造した。
【0056】
[実施例10]
(医薬部外品の製造)
本発明で調製したルトナリンを配合したローションを次の処方により製造した。
ルトナリン ・・・ 0.1g
95%エタノール ・・・ 100g
パラオキシ安息香酸メチル ・・・ 0.05g
香料 ・・・ 適量
着色料 ・・・ 0.005g
精製水 ・・・ 適量
全量 ・・・ 1,000g
【0057】
[実施例11]
(医薬部外品の製造)
本発明で調製したルトナリンを配合したクリームを次の方法で製造した。
ステアリン酸 ・・・ 10g
イソプロピルミリステート ・・・ 5g
セチルアルコール ・・・ 5g
流動パラフィン ・・・ 7g
グリセリールモノステアレート ・・・ 2g
ポリオキシエチレンステアレート ・・・ 5g
パラオキシ安息香酸メチル ・・・ 0.1g
を混和し、さらにこれにグリセリン3g、プロピレングリコール1g、及び水50gを混合して乳化し、乳化液の温度が60℃になったとき、本発明で調製したルトナリン0.3gを加えて撹拌し、更に香料を適量加え、クリームを製造した。
【0058】
[実施例12]
(飲食品の製造)
実施例1により製造した大麦若葉エキスを, 強力粉300g、グラニュー糖20g、イースト3.4g、食塩5g、水250g、バター20gのパン原料固形分の1w/w%添加し、サポナリンを0.001w/w%を添加し、通常の製造方法によりパンの製造を行った。得られたパンは鮮やかな緑色を呈し、芳香を有する上質の製品であった。
【0059】
[実施例13]
(飲食品の製造)
実施例1により製造した大麦若葉エキスを, 強力粉300g、グラニュー糖20g、イースト3.4g、食塩5g、水250g、バター20gのパン原料固形分の1w/w%添加し、ルトナリンを0.001w/w%を添加し、通常の製造方法によりパンの製造を行った。得られたパンは鮮やかな緑色を呈し、芳香を有する上質の製品であった。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明品の15−リポキシゲナーゼ活性に対する阻害効果を測定した結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
麦類若葉の搾汁液又はその濃縮液を噴霧乾燥又は凍結乾燥して得られた搾汁液粉末を有効成分として含有することを特徴とする15−リポキシゲナーゼ阻害剤。
【請求項2】
麦類若葉の搾汁液又はその濃縮液を噴霧乾燥又は凍結乾燥して得られた搾汁液粉末から調製したサポナリン及び/又はルトナリンを有効成分として含有することを特徴とする15−リポキシゲナーゼ阻害剤。
【請求項3】
請求項1に記載した麦類若葉の搾汁液粉末を有効成分とする画分を配合したことを特徴とする医薬品、医薬部外品及び飲食品。
【請求項4】
請求項2に記載した麦類若葉の搾汁液粉末から調製したサポナリン及び/又はルトナリンを有効成分とする画分を配合したことを特徴とする医薬品、医薬部外品及び飲食品。



【図1】
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【公開番号】特開2009−84194(P2009−84194A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255219(P2007−255219)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 研究集会名 日本薬学会第127年会 主催者名 社団法人日本薬学会 発表日 平成19年3月28日
【出願人】(501028574)日本薬品開発株式会社 (9)
【Fターム(参考)】