説明

2−オキソ−1−ピロリジン誘導体の製造方法

本発明は、一般式(I):
【化1】


(式中、置換基は明細書中に定義してある通りである。)
の2−オキソ−1−ピロリジン誘導体を製造するための新規な方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−オキソ−1−ピロリジン誘導体を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レベチラセタム(Levetiracetam)の国際的非専売名で呼ばれている(S)−(-)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセトアミド:
【0003】
【化1】

【0004】
は、欧州特許No.0162036に、中枢神経系の低酸素性及び虚血性攻撃の処置及び予防のための保護剤として記載されている。
【0005】
レベチラセタムの製造は、欧州特許No.0162036及び英国特許No.2225322に記載されている。
【0006】
2−オキソ−1−ピロリジンの他の誘導体及びそれらの合成は、WO 01/62726に記載されている。この特許出願には、特に、二工程反応を用いた(2S)−2−(2−オキソ−4−n−プロピル−1−ピロリジニル)ブタンアミドの合成が記載されており、この場合、第一工程では、4−n−プロピル−ヒドロキシフラノンとS−2−アミノブチルアミドとを、NaBHを存在させて反応させ、対応する不飽和ピロリドンを形成し、分離し、次に第二反応工程として、不飽和ピロリドンをNHCOOHと、Pd/C触媒を存在させて水素化する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、2−オキソ−1−ピロリジン誘導体を製造するための簡単で一層経済的な方法に関する。
【0008】
本発明は、一般式(I):
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、
は、R又はRであり;
及びRは、同じか又は異なり、夫々独立に、水素、ヒドロキシ、チオール、ハロゲン、シアノ、カルボキシ、スルホン酸、R、R、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アルキルチオ、アリールチオ、アルコキシ、アリールオキシ、スルホンアミド、アシル、エステル、アミド、アシルオキシ、エステルオキシ、又はアミドオキシであり;
Xは、−CONR、−COOR、又は−CNであり;
、R、Rは、同じか又は異なり、夫々独立に、水素、R、又はRであり;
は、C1−20アルキル、又は一つ以上のヒドロキシ、チオール、ハロゲン、シアノ、カルボキシ、スルホン酸、R、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アルキルチオ、アリールチオ、アルコキシ、アリールオキシ、スルホンアミド、アシル、エステル、アミド、アシルオキシ、エステルオキシ、及び(又は)アミドオキシにより置換されたC1−20アルキルであり;
は、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、又はそれらの、一つ以上のR、ヒドロキシ、チオール、ハロゲン、シアノ、カルボキシ、スルホン酸、アリール、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アルキルチオ、アリールチオ、アルコキシ、アリールオキシ、スルホンアミド、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アシル、エステル、アミド、アシルオキシ、エステルオキシ、及び(又は)アミドオキシにより置換されたものである。)
の2−オキソ−1−ピロリジン誘導体及びその塩を製造する方法であって、
式(II)又は(III):
【0011】
【化3】

【0012】
(式中、R及びR′は、同じか又は異なり、夫々C1−10アルキル、又はそれらの、アリールにより置換されたものである。)
のフラン誘導体と、式(IV):
【0013】
【化4】

【0014】
の化合物及びHと、触媒を存在させて反応させることを含む製造方法を与える。
【0015】
ここで用いられる用語「アルキル」とは、直鎖、分岐鎖、環式部分、又はそれらの組合せを有する飽和一価炭化水素ラジカルを含み、非環式アルキルについては1−20個の炭素原子、好ましくは1−6個の炭素原子を含み、シクロアルキルについては3−8個の炭素原子を含むものとして定義する。
【0016】
ここで用いる用語「アリール」には、一つの水素を除去することにより芳香族炭化水素から誘導された有機ラジカル、例えば、フェニル、ナフチルが含まれる。
【0017】
ここで用いる用語「ヘテロシクロアルキル」とは、炭素環式の環構造を中断する少なくとも一つのO、S、及び(又は)N原子を有する環式アルキル(シクロアルキル)、例えば、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリノ、及びピロリジニル基を表す。
【0018】
ここで用いる用語「ヘテロアリール」とは、炭素環式の環構造を中断する少なくとも一つのO、S、及び(又は)Nを有する、上で定義した「アリール」、例えば、ピリジル、フリル、ピロリル、チエニル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、テトラゾリル、ピラジニル、ピリミジル、キノリル、イソキノリル、イソベンゾフリル、ベンゾチエニル、ピラゾリル、インドリル、イソインドリル、プリニル、カルバゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、ベンズチアゾリル、又はベンズオキサゾリルを表す。
【0019】
ここで用いる用語「ハロゲン」には、Cl、Br、F、Iの原子が含まれる。
【0020】
ここで用いる用語「ヒドロキシ」とは、式、−OHの基を表す。
【0021】
ここで用いる用語「チオール」とは、式、−SHの基を表す。
【0022】
ここで用いる用語「シアノ」とは、式、−CNの基を表す。
【0023】
ここで用いる用語「カルボキシ」とは、式、−COOHの基を表す。
【0024】
ここで用いる用語「スルホン酸」とは、式、−SOHの基を表す。
【0025】
ここで用いる用語「スルホンアミド」とは、式、−SONHの基を表し、この場合、水素の一方又は両方が、場合により、「アルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、及び(又は)「ヘテロシクロアルキル」、又はそれらの、上で定義したように置換されたものによって置換されていてもよい。
【0026】
ここで用いる用語「アシル」とは、式、RCO−(式中、Rは、「アルキル」、「アリール」、「ヘテロシクロアルキル」、又は「ヘテロアリール」部分、又はそれらの、上で定義したように置換されたものを表す)の基を表す。
【0027】
ここで用いる用語「エステル」とは、式、−COOR(式中、Rは、「アルキル」、「アリール」、「ヘテロシクロアルキル」、又は「ヘテロアリール」部分、又はそれらの、上で定義したように置換されたものを表す)の基を表す。
【0028】
ここで用いる用語「アルコキシ」には、−OR基(式中、Rは、「アルキル」、又は「ヘテロシクロアルキル」部分、又はそれらの、上で定義したように置換されたものを表す)が含まれる。
【0029】
ここで用いる用語「アリールオキシ」には、−OR基(式中、Rは、「アルキル」、又は「ヘテロアリール」部分、又はそれらの、上で定義したように置換されたものを表す)が含まれる。
【0030】
ここで用いる用語「アルキルチオ」には、−SR基(式中、Rは、「アルキル」、又は「ヘテロシクロアルキル」部分、又はそれらの、上で定義したように置換されたものを表す)が含まれる。
【0031】
ここで用いる用語「アリールチオ」には、−SR基(式中、Rは、「アリール」、又は「ヘテロアリール」部分、又はそれらの、上で定義したように置換されたものを表す)が含まれる。
【0032】
ここで用いる用語「アシルオキシ」とは、式、RCOO−(式中、Rは、「アルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、又は「ヘテロシクロアルキル」部分、又はそれらの、上で定義したように置換されたものを表す)の基を表す。
【0033】
ここで用いる用語「アルキルスルホニル」とは、式、−SOR(式中、Rは、「アルキル」、又は「ヘテロシクロアルキル」部分、又はそれらの、上で定義したように置換されたものを表す)の基を表す。
【0034】
ここで用いる用語「アリールスルホニル」とは、式、−SOR(式中、Rは、「アリール」、又は「ヘテロアリール」部分、又はそれらの、上で定義したように置換されたものを表す)の基を表す。
【0035】
ここで用いる用語「アルキルスルフィニル」とは、式、−SO−R(式中、Rは、「アルキル」、又は「ヘテロシクロアルキル」部分、又はそれらの、上で定義したように置換されたものを表す)の基を表す。
【0036】
ここで用いる用語「アリールスルフィニル」とは、式、−SO−R(式中、Rは、「アリール」、又は「ヘテロアリール」部分、又はそれらの、上で定義したように置換されたものを表す)の基を表す。
【0037】
ここで用いる用語「エステルオキシ」とは、式、−OCOOR(式中、Rは、「アルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、又は「ヘテロシクロアルキル」部分、又はそれらの、上で定義したように置換されたものを表す)の基を表す。
【0038】
ここで用いる用語「アミド」とは、式、−CONHの基を表し、この場合水素原子の一方又は両方が、場合により、「アルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、及び(又は)「ヘテロシクロアルキル」、又はそれらの、上で定義したように置換されたものによって置換されていてもよい。
【0039】
ここで用いる用語「アミドオキシ」とは、式、−OCONHの基を表し、この場合、水素原子の一方又は両方が、場合により、「アルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、及び(又は)「ヘテロシクロアルキル」、又はそれらの、上で定義したように置換されたものによって置換されていてもよい。
【0040】
本発明による方法では、
は、C1−20アルキル、又は一つ以上のヒドロキシ、チオール、ハロゲン、シアノ、カルボキシ、スルホン酸、アリール、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アルキルチオ、アリールチオ、アルコキシ、アリールオキシ、スルホンアミド、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アシル、エステル、アミド、アシルオキシ、エステルオキシ、及び(又は)アミドオキシにより置換されたC1−20アルキルであり;そして
は、好ましくはアリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、又はそれらの、一つ以上のアルキル、ヒドロキシ、チオール、ハロゲン、シアノ、カルボキシ、スルホン酸、アリール、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アルキルチオ、アリールチオ、アルコキシ、アリールオキシ、スルホンアミド、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アシル、エステル、アミド、アシルオキシ、エステルオキシ、及び(又は)アミドオキシにより置換されたものである。
【0041】
式(I)及び(IV)の化合物において、
Xは、好ましくは−CONR、一層好ましくは−CONHであり、
は、好ましくはC1−6アルキルであり、一層好ましくは、メチル、チル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、又はイソブチル、最も好ましくはメチル、エチル、又はn−プロピル、特にエチルである。
【0042】
式(II)のフラン誘導体は、本発明の方法で用いるのに好ましい。
【0043】
式(I)、(II)、及び(III)の化合物で、Rは、好ましくは水素、ハロゲン、又はC1−4アルキルであり、一層好ましくはRは水素である。
【0044】
式(II)のフラン誘導体を用いる場合、Rは、好ましくはR又は水素、一層好ましくはC1−6アルキル、又は一つ以上のハロゲンにより置換されたC1−6アルキルである。最も好ましくは、Rはn−プロピルである。
【0045】
式(III)のフラン誘導体を用いる場合、R及びRは、好ましくは同じである。この場合、R及びRは、一層好ましくは水素、ハロゲン、又はC1−4アルキルから選択される。最も好ましくはR及びRは、水素である。
【0046】
式(III)のフラン誘導体では、R及びR′は、好ましくはC1−4アルキル又はベンジルであり、最も好ましくはメチルである。
【0047】
本発明による方法で用いられる式(II)及び(III)の化合物は、それに適したどのような方法によってでも得ることができる。
【0048】
式(II)の化合物は、環式第二級アミン、好ましくはモルホリンのような塩基の存在下で式(V)のアルデヒドと、式(VI)のケト酸とを反応させ、次に酸性条件で加水分解することにより得るのが好ましい。反応は、一般に25℃〜100℃、好ましくは30℃〜60℃の温度で行われる。一層好ましくは、反応生成物は、抽出、特にエーテル、特にジイソプロピルエーテルを用いた抽出により精製する。
【0049】
【化5】

【0050】
従って、本発明は、上で言及した方法により、式(II)の化合物を製造することにも関する。
【0051】
本発明による方法で用いられる式(IV)の化合物は、それに適したどのような手段によってでも得ることができる。それは、好ましくは対応する塩の中和、一層好ましくは対応する塩酸塩又は酒石酸塩から、最も好ましくは対応する塩酸塩から中和により得られる。
【0052】
本発明による方法は、一般に溶媒の存在下で行われる。
【0053】
好ましい溶媒は、アルコール、水、エステル、例えば、酢酸エチル、及び芳香族溶媒、例えば、トルエン、又はそれらの混合物から選択される。一層好ましい溶媒はアルコールである。最も好ましいのはイソプロパノールである。
【0054】
本発明による好ましい触媒は、金属系触媒であり、例えば、Pd、Pt、及びNi系触媒である。最も好ましいのはPd系触媒であり、最も好ましくは炭素に付着させた5%PdのようにC上のPdである。
【0055】
反応は、一般に25℃〜100℃、好ましくは30℃〜60℃、最も好ましくは40℃の温度で行われる。
【0056】
本発明による方法は、水素を存在させて行われる。本発明による方法は、一般に密閉容器中で0.1〜10バール、好ましくは0.2〜5バール、最も好ましくは0.2〜0.5バールの範囲の水素圧力で行われる。
【0057】
本発明による方法は、化合物(I)の製薬的に許容可能な塩を製造するためにも適用することができる。
【0058】
本発明による用語「製薬的に許容可能な塩」には、式(I)の化合物が形成することができる治療上活性な非毒性塩基及び酸付加塩の形のものが含まれる。
【0059】
本発明による方法は、式(I)の化合物の幾何学的及び光学的鏡像異性体及びジアステレオ異性体形、及びそれらの混合物(ラセミ化合物を含む)のような全ての立体異性体形のものを製造することに関する。式(I)及び(IV)の化合物は、それらの構造中に少なくとも一つの立体中心を有し、それは、ピロリジン環の窒素原子に結合した炭素原子である。この立体中心は、式(I)及び(IV)の化合物中星印(*)によって示されている。この立体中心は、R又はS配置中に存在していてもよく、そのR及びSの記号は、Pure. Appl. Chem., 45 (1976) 11-30に記載された規則に従って用いられている。
【0060】
本発明による方法は、好ましくは(S)−又は(R)−型の式(I)の化合物を製造するのに適用される。
【0061】
ここで用いる用語「(S)−型」とは、問題の化合物が、S配置中の星印により示される立体炭素原子を有する鏡像異性体の50%より多く、好ましくは90%より多くを占めることを意味する。
【0062】
ここで用いる用語「(R)−型」とは、問題の化合物が、R配置中の星印により示される立体炭素原子を有する鏡像異性体の50%より多く、好ましくは90%より多くを占めることを意味する。
【0063】
本発明による方法は、(S)−型の一般式(I)の化合物を製造するのに特に適している。
【0064】
この場合、本発明による方法は、(S)−型又は(R)−型の式(IV)の化合物を用いることにより行うのが好ましい。
【0065】
本発明の方法中、ラセミ化は起きないことが思いがけず見出された。
【0066】
及び(又は)Rが水素とは異なる場合、式(I)の化合物は、その構造中、少なくとも一つの補助的立体中心を有し、それら、そのようなR及びRが結合している炭素原子である。
【0067】
その場合、その方法は、得られるジアステレオ異性体が分離される更に別の工程を含んでいてもよい。そのような分離は、それに適切などのような手段によって行なってもよい。それは、クロマトグラフィーによって行うのが好ましく、特にキラル固定層を用いて行うのが好ましい。
【0068】
本発明による方法は、(2S、4S)及び(2S、4R)型の式(I)の化合物を製造するのに特に適用される。用語(2S、4S)〔夫々(2S、4R)〕は、問題の化合物が、S配置中の星印によって示された立体中心炭素原子、及びS配置[夫々R配置]中でRが結合している炭素原子を有するジアステレオ異性体の50%より多く、好ましくは90%より多い部分を構成することを意味している。
【0069】
次の例は、例示の目的でのみ与えられており、どのような仕方でも本発明を限定することを意図するものではなく、そのように見做すべきでもない。当業者は、次の実施例の日常的な変更及び修正を、本発明の本質又は範囲を超えることなく行うことができることを認めるであろう。
【0070】
例1:(2S)−2−[(4R)−2−オキソ−4−n−プロピル−1−ピロリジニル]ブチンアミドの合成
1.1 (2S)−2−アミノブチルアミド遊離塩基の合成
【0071】
【化6】

【0072】
1800mlのイソプロパノールを、5リットルの反応器中へ導入する。1800gの酒石酸(2S)−2−アミノブチルアミドを室温で撹拌しながら添加する。水酸化アンモニウムの25%水溶液を700ml、25℃より低い温度を維持しながらゆっくり添加する。混合物を更に3時間撹拌し、次に反応を18℃で1時間で完了させる。酒石酸アンモニウムを濾過する。収率:86%。
【0073】
1.2 5−ヒドロキシ−4−n−プロピル−フラン−2−オンの合成
【0074】
【化7】

【0075】
ヘプタン(394ml)及びモルホリン(127.5ml)を、反応器中に導入する。混合物を0℃に冷却し、グリオキシル酸(195g、150ml、50重量%水溶液)を添加する。混合物を1時間20℃に加熱し、次にバレルアルデヒド(148.8ml)を添加する。反応混合物を43℃に20時間加熱する。20℃へ冷却した後、HClの37%水溶液(196.9ml)をゆっくり混合物へ添加し、次にそれを2時間撹拌する。
【0076】
ヘプタン相を除去した後、水性相をヘプタンで3回洗浄する。ジイソプロピルエーテルを、水性相へ添加する。有機相を除去し、水性相を、更にジイソプロピルエーテル(2×)で抽出する。ジイソプロピルエーテル相を一緒にし、塩水で洗浄し、次に共沸蒸留により乾燥する。溶媒を濾過し、蒸発した後、褐色の油として170gの5−ヒドロキシ−4−n−プロピル−フラン−2−オンが得られる。収率:90.8%。
【0077】
1.3 (2S)−2−[(4R)−2−オキソ−4−n−プロピル−1−ピロリジニル]ブタンアミド及び(2S)−2−[(4S)−2−オキソ−4−n−プロピル−1−ピロリジニル]ブタンアミドの合成
【0078】
【化8】

【0079】
上に記載したようにして得られた250gを含む、イソプロパノール中に入れた(2S)−2−アミノブチルアミド溶液を、真空中共沸蒸留により乾燥する。その乾燥した(2S)−2−アミノブチルアミド溶液に、5−ヒドロキシ−4−n−プロピル−フラン−2−オン(290g)を15℃〜25℃で添加し、混合物を30℃に加熱し、少なくとも2時間その温度に維持する。次に、酢酸(1.18当量)、Pd/C触媒〔5重量%;ジョンソンマッシィー(Johnson Matthey)炭素上Pd5%−型87L〕を添加し、水素を圧力下の系中へ導入する。温度を、最大40℃に維持し、H圧力を0.2バール〜0.5バールに維持し、次に最初の反応に続き少なくとも20時間撹拌する。次に溶液を15℃〜25℃に冷却し、濾過して触媒を除去する。イソプロパノール中へ入れた生成物の溶液を酢酸イソプロピルを用いた共沸蒸留により、酢酸イソプロピル中に生成物が入った溶液へ溶媒変換する。有機溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、次に塩水で洗浄し、次に濾過する。再結晶化後、349gの(2S)−2−[(4R)−2−オキソ−4−n−プロピル−1−ピロリジニル]ブタンアミド及び(2S)−2−[(4S)−2−オキソ−4−n−プロピル−1−ピロリジニル]ブタンアミドが得られる(収率;82.5%)。
【0080】
1.4 (2S)−2−[(4R)−2−オキソ−4−n−プロピル−1−ピロリジニル]ブタンアミドの製造
1.3で得られた二種類のジアステレオ異性体のクロマトグラフ分離を、〔キラルパク(CHIRALPAK)AD20μm〕キラル固定相及び溶離剤としてn−ヘプタンとエタノールとの45/55(体積/体積)混合物を用いて、25±2℃の温度で遂行する。
【0081】
このようにして得られた粗製(2S)−2−[(4R)−2−オキソ−4−n−プロピル−1−ピロリジニル]ブタンアミドを酢酸イソプロピル中で再結晶化し、純粋な(2S)−2−[(4R)−2−オキソ−4−n−プロピル−1−ピロリジニル]ブタンアミドを生ずる(全収率:80%)。
【0082】
例2:(2S)−2−[(4R)−2−オキソ−4−n−プロピル−1−ピロリジニル]ブタンアミドの合成
【0083】
【化9】

【0084】
例1を繰り返す。但し、工程1.1では、(2S)−2−アミノブチルアミド・HClをイソプロパノール中に入れた溶液を用い(27.72g、1.2当量)、それをNH/イソプロパノール溶液(3.4−3.7モル/リットル)で中和する。得られた塩化アンモニウムを、濾過によりこの溶液から除去し、その溶液を直接5−ヒドロキシ−4−n−プロピル−フラン−2−オン(23.62g、1.0当量)との反応に用い、(2S)−2−アミノブチルアミド溶液の中間的乾燥は行わない。二種類のジアステレオ異性体の分離及び再結晶化の後の収率:約84%。
【0085】
例3:(S)−(-)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセトアミドの合成
【0086】
【化10】

【0087】
(2S)−2−アミノブチルアミド遊離塩基(2g)を水(80ml)中に溶解し、2,5−ジメトキシ−2,5−ジヒドロフランを添加する(2.4ml、1当量)。HCl水溶液(2.4ml、1.5当量)を、室温で添加し、反応混合物を1.5時間撹拌する。次に炭酸ナトリウムを、混合物のpHが8〜9に到達するまで添加する。次に、水とエタノール(20ml)の混合物中に入れたPd/C(5%)触媒を、Hと一緒に添加し、35分間維持する。溶液を15℃〜25℃に冷却し、濾過して触媒を除去する。
【0088】
エタノールを真空除去し、希望の化合物を酢酸エチルで抽出する。次に有機溶液を塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、蒸発して(S)−(-)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセトアミドを与える(収率:13%)。
【0089】
例4:メチル1−[(1S)−1−(アミノカルボニル)プロピル]−5−オキソ−3−ピロリジンカルボキシレートの合成
【0090】
【化11】

【0091】
メタノール(40ml)中に入れた2−ヒドロキシ−5−オキソ−2,5−ジヒドロ−フラン−3−カルボン酸メチルエステル(3.08g)を、メタノール(30ml)中に(2S)−2−アミノブチルアミド(2.0g)を入れた溶液へ水素化反応器中で添加し、その混合物を室温で少なくとも2時間維持する。次に、Pd/C触媒(10重量%;ジョンソンマッシィー、炭素上Pd5%−型87L)を添加し、水素を圧力下の系中へ導入する。温度を、最大40℃に維持し、水素圧力を4バール〜5バールに維持し、次に最初の反応に続き少なくとも20時間撹拌する。次に溶液を15℃〜25℃に冷却し、濾過して触媒を除去する。溶媒を真空除去し、得られた黄色生成物を分取液体クロマトグラフィー〔溶離剤:ジクロロメタン/メタノール(95:5)〕により精製する(収率;43%)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】


(式中、
1は、Ra又はRbであり;
3及びR4は、同じか又は異なり、夫々独立に、水素、ヒドロキシ、チオール、ハロゲン、シアノ、カルボキシ、スルホン酸、R、R、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アルキルチオ、アリールチオ、アルコキシ、アリールオキシ、スルホンアミド、アシル、エステル、アミド、アシルオキシ、エステルオキシ、又はアミドオキシであり;
Xは、−CONR、−COOR、又は−CNであり;
、R、Rは、同じか又は異なり、夫々独立に、水素、R、又はRであり;
は、C1−20アルキル、又は一つ以上のヒドロキシ、チオール、ハロゲン、シアノ、カルボキシ、スルホン酸、R、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アルキルチオ、アリールチオ、アルコキシ、アリールオキシ、スルホンアミド、アシル、エステル、アミド、アシルオキシ、エステルオキシ、及び(又は)アミドオキシにより置換されたC1−20アルキルであり;
は、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、又はそれらの、一つ以上のR、ヒドロキシ、チオール、ハロゲン、シアノ、カルボキシ、スルホン酸、アリール、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アルキルチオ、アリールチオ、アルコキシ、アリールオキシ、スルホンアミド、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アシル、エステル、アミド、アシルオキシ、エステルオキシ、及び(又は)アミドオキシにより置換されたものである。)
の2−オキソ−1−ピロリジン誘導体及びその塩を製造する方法であって、
式(II)又は(III):
【化2】


(式中、R及びR′は、同じか又は異なり、夫々C1−10アルキル、又はそれらの、アリールにより置換されたものである。)
のフラン誘導体と、式(IV):
【化3】


の化合物及びH2と、触媒を存在させて反応させることを含む製造方法。
【請求項2】
式(II)のフラン誘導体を用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
が水素である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
が、R又は水素である、請求項2〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
が、C1−6アルキル、又は一つ以上のハロゲンによって置換されたC1−6アルキルである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
がn−プロピルである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
Xが−CONRである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
Xが−CONH2である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
が、C1−6アルキルである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
がエチルである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
式(II)の化合物を、式(V)のアルデヒドと、式(VI)のケト酸:
【化4】


(式中、R及びRは、請求項1で定義した通りである)
とを、塩基を存在させて反応させることにより得る、請求項2〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
式(IV)の化合物を、対応する塩酸塩の中和により得る、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
触媒が、Pd、Pt、又はNi系触媒である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
触媒が、Pd系触媒である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
式(I)の化合物が、(S)−型又は(R)−型になっている、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
式(I)の化合物が、(S)−型になっている、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
及び(又は)Rが水素とは異なる場合、得られたジアステレオ異性体を更に分離する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
(2S)−2−[(4R)−2−オキソ−4−n−プロピル−1−ピロリジニル]ブタンアミドを製造するために適用される、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2007−515387(P2007−515387A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527306(P2006−527306)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010212
【国際公開番号】WO2005/028435
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(502358717)ユ セ ベ ソシエテ アノニム (13)
【Fターム(参考)】