説明

2つの特定のフィラーと高粘度の脂肪物質との組み合わせを含む、メイクアップ及び/またはケアのための化粧品組成物

本発明は、少なくとも1つのジメチコーン被覆されたシリカ、少なくとも1つの架橋デンプン、及び、少なくとも1つの脂肪物質であって、その25℃での粘度が1000mPa/s以上、好ましくは、5000mPa/s超、更に好適には、8000mPa/s超であるものを含む、少なくとも1つの脂肪相を含む、メイクアップ及び/またはケア用化粧品組成物に関する。本発明による組成物は、特に、光沢及び非移動、並びに適用時に付着する量についても優れた特性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に唇のメイクアップ及び/またはケア用の化粧品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品分野においては、製剤の開発は、適用に関する優れた特性、特に、適用される量と、光沢及び非移動に関する十分な特性との両方をもたらした。
【0003】
光沢を得るためにこのタイプの組成物に通常使用される化合物は、粘性オイル、例えば、ポリブテン及び/またはペースト状化合物、例えば、ジグリセリルポリアクリレートである。
【0004】
しかしながら、これらの化合物は、所定の条件下ではべたつき及び移動の問題を呈しうる。更にまた、フィラーの添加によって組成物の移動を制限できることが知られている。それにも関わらず、フィラーの添加は、一般的に、得られる組成物の光沢を損なう効果を有することが観察されてもいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
然るに、唇のメイクアップ及び/またはケアのための組成物であって、感覚的観点から許容されるものであり、且つ、目につくほど移動することのない一方で十分な光沢を示し、更に適用の際には十分な量で付着する組成物が、依然として求められている。
【0006】
実際、消費者は、光沢があり、一日中付けていて快適であり、唇または眼の周りの皮膚の皺、例えば、皺及び小皺の中にほとんど移動しないかまたは全く移動しない製品を常に求めている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
予期せぬことに、発明者は、2つの特定のフィラーと不揮発性オイル、特に、光沢のある、もしくは高粘度のオイルとの組み合わせを使用することにより、これらの点を充足する組成物を得ることが可能になることを観察した。
【0008】
更にまた、発明者は、特に、唇への適用を企図する製品中における、2つの特定のタイプのフィラーと、例えば、以上に定義されるオイルとの組み合わせにより、適用した組成物の移動を有効に回避することができ、特に、適用時の融解及び付着量に関して特に有利であったことを観察している。更にまた、本発明による組成物は、優れた光沢特性を示し、且つ、非移動について十分なものである。
【0009】
更に詳しくは、本発明は、少なくとも1つのジメチコーン被覆されたシリカ、少なくとも1つの架橋デンプン、及び、少なくとも1つの脂肪物質であって、その25℃での粘度が1000mPa/s以上、好ましくは、5000mPa/s超、更に好適には、8000mPa/s超であるものを含む、少なくとも1つの脂肪相を含む、メイクアップ及び/またはケア用化粧品組成物に関する。
好ましくは、本発明による組成物は、固形である。
【0010】
「固形」なる語は、常温(25℃)及び周囲圧(760mmHg)での組成物の状態を特徴付ける。
好ましくは、本発明による組成物は、固形である場合は、30乃至300g、更には、50乃至200gの硬度を示す。
【0011】
(剪断の測定のためのプロトコル)
測定は、以下のプロトコルにしたがって行われる。
かかる組成物のサンプルを、直径11.06mmのリップスティック型に熱時注入する。その後、この型を冷凍庫で約一時間冷却する。リップスティックのスティックは、その後20℃にて貯蔵される。
前記サンプルの硬度を、24時間おいた後に測定する。
本発明の組成物のサンプルの硬度は、グラムで表示されるが、Indelco-Chatillon社により市販のDFGS2動力計を利用して測定される。
前記硬度は、100mm/分の速度で前進する、直径250μmの剛性タングステンワイヤによってもたらされる最大剪断力に該当する。
上述の技術は、通常は、いわゆる「バターカットワイヤ」法として記載されている。
好ましくは、本発明による組成物は、該組成物全質量に対して、10%未満、更に好適には4%未満の水を含むか、あるいは全く無水である。
別の態様によれば、本発明は、以上に定義される生成物が唇に適用される、メイクアップ方法に関する。
【0012】
(フィラー)
本発明による組成物は、ジメチコーン被覆されたシリカ及び架橋デンプンからなる少なくとも2つのフィラーを含む。
【0013】
(架橋デンプン)
「架橋デンプン」なる表現は、本発明においては、例えば、メチロールウレア誘導体と、またはオクテニルコハク酸無水物と、あるいはまたエピクロロヒドリンによって架橋したデンプンを示す。
好ましくは、前記架橋デンプンは、National Starch社によりDry Flo Plus(28-1160)の商標名で市販のオクテニルコハク酸無水物である。
好ましくは、架橋デンプンは、組成物全質量に対して、0.1乃至99質量%、特に、0.1乃至30質量%、特に、0.1乃至15質量%、更には、1乃至7質量%の範囲の含量で存在する。
【0014】
(ジメチコーン被覆されたシリカ)
ジメチコーン被覆されたシリカは、ジメチコーンで完全にまたは部分的に被覆されたシリカの粒子を含む。ジメチコーン(INCI名)は、ポリジメチルシロキサン(化学名)に相当する。
シリカは、被覆の必要があるならば、ジメチコーンとは別に、別の無機または有機化合物で被覆されていてよい。好ましくは、この別の化合物は、疎水性有機化合物である。
ジメチコーン被覆されたシリカは、好ましくは、シリカフィラーである。
シリカフィラーは、液体脂肪相中に、25℃にて不溶性であるシリカの、ジメチコーン被覆された粒子を意味することとする。
然るに、別の成分と混合するために融解され、この混合物の冷却の間に再結晶するワックスとは対照的に、フィラーは、化粧品組成物の調製過程でその構造を変化させないという特徴を有する。
ジメチコーン被覆されたシリカは、特に、この組成物の揮発性オイル中に不溶性である。
ジメチコーン被覆されたシリカは、好ましくは、本質的に球形の粒子の処方である。球形の定義は、以上に挙げたものと同様である。
【0015】
一実施態様では、シリカ粒子は、多孔性シリカ粒子である。
シリカ粒子の多孔性は、50乃至200m2/gの、例えば、100m2/gのオーダーの表面積、並びに、10乃至100g/l、例えば、50g/lのオーダーの嵩密度によって特徴付けることができる。
ジメチコーン被覆されたシリカは、特定の一実施態様によれば、0.1乃至30μm、特に、0.5乃至20μm、より正確には、平均で1乃至16μmのオーダーの平均サイズを有する粒子の形態(D50)である。
ジメチコーン被覆されたシリカは、特定の一実施態様では、1ミクロン超の平均経を有する粒子の形態である。
ジメチコーン被覆されたシリカは、Miyoshi Kasei Inc.よりSA-SB-300の名称で、またはCabot CorporationよりCab-O-Sil TS-720 Treated Fumed Silicaの名称で購入可能である。
【0016】
ジメチコーン及びシリカの割合は、好ましくは、1乃至20質量%、例えば、5乃至10質量%である。
好ましくは、ジメチコーン被覆されたシリカは、この組成物全質量に対して、0.1乃至99質量%、特に、0.1乃至30質量%、とりわけ、0.1乃至15質量%、更には、1乃至7質量%、特に、5質量%のオーダーで存在して良い。
好ましい実施態様によれば、架橋デンプンとジメチコーン被覆されたシリカは、10:90乃至90:10、好ましくは、30:70乃至70:30、更に好ましくは、50:50のオーダーの質量比である。
有利には、架橋デンプンとジメチコーン被覆されたシリカは、組成物の全質量に対して、0.1乃至99質量%、特に、0.1乃至30質量%、特に、0.1乃至15質量%、更には、1乃至7質量%の範囲の含量で存在する。
【0017】
(別のフィラー)
本発明による組成物は、ジメチコーン被覆されたシリカ及び架橋デンプンとは別に、有機フィラー及び無機フィラーから選択される、少なくとも1つの別のフィラーを含んで良い。
有利には、本発明による組成物は、この組成物全質量に対して、0.1乃至99質量%、特に、0.1乃至30質量%、特に、0.1乃至15質量%、更には、1乃至7質量%の範囲の、フィラーの合計含量を有する。
本発明の意味においては、フィラーとは、この組成物が製造されるいかなる温度においても、当該組成物の媒質中に不溶性であって、無色または白色である、あらゆる形状の無機または合成粒子を意味すると解されるべきである。これらの充填剤は、特に、この組成物のレオロジー特性またはテクスチャーを調整するために使用される。
【0018】
フィラーは、あらゆる形状、プレートレット、球状、または楕円形の、いずれかの結晶学的形態(例えば、ラメラ、立方体、六角形、斜方晶系など)の、無機または有機のものであって良い。タルク、マイカ、シリカ、カオリン、ポリアミドパウダー(ナイロン(登録商標))(Atochem社製、Orgasol(登録商標))、ポリ−β−アラニンパウダー、及びポリエチレンパウダー、テトラフルオロエチレンポリマー(テフロン(登録商標))のパウダー、ラウロイルリシン、デンプン、窒化ホウ素、膨張ポリマー状中空ミクロスフェア、例えば、ポリビニリデンクロリド/アクロリニトリルのもの、例えば、Expancel(登録商標)(Nobel Industrie社製)、アクリル酸コパウダーのもの(Dow Corning社製、Polytrap(登録商標))、及びシリコーン樹脂ミクロビーズ(例えば、Toshiba社製のTospearls(登録商標))、弾性ポリオルガノシロキサンの粒子、沈降炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、及び炭酸水素マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、中空シリカミクロスフェア(Maprecos社製のSilicaBeads(登録商標))、ガラスまたはセラミックマイクロカプセル、8から22の炭素原子、特に、12から18の炭素原子を含む有機カルボン酸から由来する金属石鹸、例えば、ステアリン酸亜鉛、マグネシウム、若しくはリチウム、ラウリン酸亜鉛、及びミリスチン酸マグネシウム、あるいは、ポリウレタン粉末とも呼称されるポリウレタン粒子が挙げられる。
【0019】
「ポリウレタン粒子」なる表現は、少なくとも部分的にポリウレタンタイプである物質からなる粒子を意味する。
これらは、有利には、架橋形態である。
本発明で使用される粒子は、特定の一実施態様では、4乃至20μm、特に、5乃至15μmの範囲の平均経を有する。
本発明において使用されるフィラー(粒子)は、一般的に、且つ好ましくは、ほぼ球形である。
【0020】
「球形」なる表現は、本質的に球形、特にビーズの形態であって、好ましくは、1乃至15ミクロン、好ましくは、10ミクロンのオーダーの粒径のものを意味することとする。
特段の一実施態様によれば、使用されるポリウレタンの粒子は、コポリマーを含む粒子であり、前記コポリマーは、トリメチロールヘキシルラクトンを含む。特に、これは、ヘキサメチレンジイソシアネート/トリメチロールヘキシルラクトンのコポリマーであってよい。こうした粒子は、特に、ToshikiよりPlastic Powder D-400(登録商標)またはPlastic Powder D-800(登録商標)の名称の下に購入することができる。
【0021】
(脂肪相)
本発明による組成物の脂肪相は、この組成物の脂肪物質の総計に相当し、これは特に、25℃でのその粘度が、1000mPa/s以上、好ましくは、5000mPa/s超、更に好適には、8000mPa/s超である、少なくとも1つの脂肪物質を含む。
本発明によれば、25℃におけるその粘度が1000mPa/s超である脂肪物質は、ペースト及び不揮発性オイルから選択され、これは、「高粘度不揮発性オイル」または「高粘度オイル」と呼称される。
【0022】
(粘度測定のプロトコル)
剪断粘度測定は、アクリルコーン−プレート装置及びPeltier効果加熱システムを取り付けたARES(歪み制御)粘度計で行われた。この測定は、1乃至1000s-1の範囲に亘る剪断勾配走査により行われる。
低粘度オイルについては、コーン角度はラジアンであり、アクリループレートの直径は50mmである。25mmのプレート及び0.10ラジアンのコーン角度が、別のサンプルのために使用される。
全ての測定は、25℃及び35℃で行われる。
【0023】
各測定の前に、サンプルの安定性は、必要に応じて600秒以上に亘る1Hzでの振動下での、安定性を観察することによって確認される。
剪断粘度は、経験した歪みに対して表現される粘度曲線の水平域上のηの値によって決定される。
第1の実施態様によれば、その25℃での粘度が1000mPa/s以上、好ましくは、5000mPa/s超、更に好適には、8000mPa/s超である脂肪物質は、ペースト状脂肪物質である。
一般的に、全てのペースト状脂肪物質は、25℃において1000mPa/s以上の粘度を有する。
【0024】
(ペースト状脂肪物質)
「ペースト状」とは、本発明の意味では、固体状態では異方性結晶組織を示し、且つ、23℃の温度で液体画分と固体画分とを含む、可逆的な固体/液体変化の状態にある脂溶性脂肪化合物を意味することとする。
換言すれば、このペースト状化合物の融解開始点は、23℃未満であってよい。23℃で測定されるペースト状化合物の液体画分は、この化合物の9乃至97質量%を占めうる。23℃でのこの液体画分は、好ましくは、15乃至85質量%、更に好ましくは、40乃至85質量%を占める。
本発明の意味では、融点は、ISO標準11357-3;1999に記載される熱分析(DSC)で観察される、最大吸熱ピークの温度に相当する。ペーストまたはワックスの融点は、示差走査熱量計(DSC)、例えば、TA Instruments社により「MDSC 2920」の名称で市販の熱量計を用いて測定することができる。
【0025】
測定プロトコルは以下の通りである。
5mgのペーストまたはワックス(場合による)を、るつぼに入れ、-20℃から100℃まで10℃/分の加熱速度で第1の温度増加に処し、次いで、100℃から-20℃まで10℃/分の冷却速度で冷却し、最後に、-20℃から100℃まで5℃/分の加熱速度で第2の温度増加に処する。第2の温度増加の間に、空のるつぼとワックスのサンプルを入れたるつぼとによって吸収される力の差の変動を、温度の関数として測定する。化合物の融点は、温度の関数として、吸収される力の差の変動を表す曲線のピークの頂点に相当する。
【0026】
23℃でのペースト状化合物中の液体画分の質量割合は、ペースト状化合物の溶融エンタルピーに対する、23℃で消費される溶融エンタルピーの割合に等しい。
【0027】
ペースト状化合物の溶融エンタルピーは、固体状態から液体状態に移行するために、当該化合物によって消費されるエンタルピーである。ペースト状化合物は、その質量全体が結晶固体形態である場合に、固体状態であるとされる。ペースト状化合物は、その質量全体が液体形態である場合に、液体状態であるとされる。
【0028】
ペースト状化合物の溶融エンタルピーは、ISO標準11357-3;1999に従い、1分当たり5または10℃の温度上昇を伴う、TA InstrumentによりMDSC2920の名称で市販されている熱量計などの示差走査熱量計(DSC)を使用して得られるサーモグラム曲線下の面積に等しい。ペースト状化合物の溶融エンタルピーは、化合物が固体状態から液体状態に移行するために必要なエネルギー量である。これは、J/gで表される。
【0029】
23℃で消費される溶融エンタルピーは、サンプルが固体状態から、液体画分及び固体画分からなる23℃で示される状態へと変化するために吸収されるエネルギー量である。
【0030】
32℃で測定されるペースト状化合物の液体画分は、化合物に対して30から100質量%、好ましくは、化合物の50から100質量%、さらに好ましくは、60から100重量%である。32℃で測定されるペースト状化合物の液体画分が、100%に等しい場合には、ペースト状化合物の融解範囲の限界温度は、32℃以下である。
【0031】
32℃で測定されるペースト状化合物の液体画分は、ペースト状化合物の溶融エンタルピーに対する、32℃で消費される溶融エンタルピーとの割合に等しい。32℃で消費される溶融エンタルピーは、23℃で消費される溶融エンタルピーと同様に算出される。
本発明の意味におけるペースト状化合物は、0.001乃至0.5MPa、好ましくは、0.002乃至0.4MPaの範囲の、20℃での硬度を有してよい。
【0032】
硬度は、化合物のサンプル中にプローブを貫通させる方法に従い、特に、直径2mmのステンレススチールシリンダーを備えたテクスチャー分析機(例えば、Rheo社のTA-XT2i)を使用して測定される。硬度測定は、20℃で、5個のサンプルの中心で実施する。シリンダーを、1mm/秒の前速度で各サンプルに導入し、次いで、0.1mm/秒の測定速度で導入するが、貫通深度は、0.3mmである。記録された硬度値は、最大ピークの値である。
【0033】
測定プロトコルは、以下の通りである。
その融点が25℃超である脂肪物質(場合によってペーストまたはワックス)は、脂肪物質の融点+10℃の温度で融解する。融解した脂肪物質を、直径25mm及び深さ20mmの容器へ流し込む。これを、常温(25℃)で、24時間かけて再結晶させて脂肪物質の表面を平坦且つなめらかにし、その後、この脂肪物質を、硬度または粘着性を測定する前に20℃で少なくとも1時間保存する。
【0034】
テクスチュロメータの可動式プローブを0.1mm/sの速度で変位させると、その後、0.3mmの貫入深さで脂肪物質中に針入する。スピンドルが0.3mmの深さで脂肪物質にを入り込んだ時点で、プローブを1秒間(緩和時間に相当する)に亘って不動に保ち、その後、0.5mm/sの速度で、引き出す。
【0035】
硬度値は、測定される最大圧力を脂肪物質に接触したテクスチュロメータのシリンダーの面積で割ったものである。
【0036】
ペースト状化合物は、好ましくは、合成化合物及び植物由来の化合物から選択される。ペースト状化合物は、植物由来の出発原料からの合成により得ることもできる。
【0037】
ペースト状化合物は、有利には、
・ラノリン及びその誘導体、
・ポリマーまたは非ポリマーのシリコーン化合物、
・ポリマーまたは非ポリマーのフッ化化合物、
・ビニルポリマー、特に:
オレフィンのホモポリマー、
オレフィンのコポリマー、
水添ジエンのホモポリマー及びコポリマー、
直鎖状または分枝状のオリゴマー、アルキル(メタ)アクリレートのホモもしくはコポリマー、好ましくはC8〜C30アルキル基を有するもの、
C8〜C30アルキル基を有するビニルエステルのホモオリゴマー及びコポリマー、
C8〜C30アルキル基を有するビニルエーテルのホモオリゴマー及びコポリマー、
・1もしくは複数のC2〜C100、好ましくは、C2〜C50ジオールのポリエーテル化により生じる脂溶性ポリエーテル、
エステル、
及びこれらの混合物から選択される。
【0038】
エステルの中では、以下のものが特に好ましい。
・オリゴマーグリセロールのエステル、特に、ジグリセロールのエステル、特に、アジピン酸とグリセロールとの縮合生成物であって、グリセロールのヒドロキシル基の幾つかが、脂肪酸、例えば、ステアリン酸、カプリン酸、ステアリン酸、及びイソステアリン酸、及び12-ヒドロキシステアリン酸の混合物と反応したもの、特に、Sasol製の商品名Softisan 649で市販の形態のもの、
・ Alzoにより商品名Waxenolで市販されているプロピオン酸アラキジル、
・ フィトステロールのエステル、
・ 脂肪酸のトリグリセリド及びその誘導体、
・ ペンタエリスリトールのエステル、
・ 直鎖状または分枝状のC4〜C50ジカルボン酸またはポリカルボン酸とC2〜C50ジオールまたはポリオールとの重縮合により生じる非架橋ポリエステル、
・ 脂肪族カルボン酸による脂肪族ヒドロキシカルボン酸エステルのエステル化により生じる脂肪族エステルエステル、
・ ポリカルボン酸と、脂肪族ヒドロキシカルボン酸のエステルとの間のエステル化により得られるポリエステルであって、前記エステルが少なくとも2つのヒドロキシル基を含むもの、例えば、Risocast DA-H(登録商標)及びRisocast DA-L(登録商標)、及び
・ これらの混合物
が有利である。
【0039】
植物由来のペースト状化合物の中では、好ましくは、Vevyにより商品名Lanolideで市販の、大豆ステロールとエトキシル化(5EO)プロポキシル化(5PO)ペンタエリスリトールとの混合物が選択される。
【0040】
一実施態様によれば、この組成物は、組成物全質量に対して、10質量%未満、好ましくは、7質量%未満、好適には、5質量%未満、更に好適には、3質量%未満のペースト状化合物を含む。より好ましくは、この組成物は、ペースト状化合物を全く含まない。
【0041】
(25℃での粘度が1000mPa/s以上であるオイル)
第2の実施態様によれば、その25℃での粘度が1000mPa/s以上、好ましくは、5000mPa/s超、更に好適には、8000mPa/s超である脂肪物質は、「高粘度の不揮発性オイル」またはより簡単に「高粘度オイル」と呼称される不揮発性オイルである。
好ましくは、高粘度オイルは、光沢のあるオイルである。
【0042】
(光沢のあるオイル)
光沢のあるオイルは、好ましくは、不揮発性オイルである。「オイル」とは、水と非適合性の非水性化合物であって、常温(25℃)及び周囲圧(760mmHg)にて液体であるものを意味することとする。
「不揮発性オイル」は、常温及び周囲圧にて、ケラチン物質上で少なくとも数時間維持され、特に10-3mmHgmmHg(0.13Pa)未満の蒸気圧を有するオイルを意味することとする。
光沢のあるオイルは、好ましくは、650乃至10000g/mol、好ましくは、750乃至7500g/molの範囲の高分子量を有する。
【0043】
本発明において利用可能な光沢のあるオイルは、
−親油性ポリマー、例えば
・ポリブチレン、例えば、Amoco社により製造または市販の、Indopol H-100(モル質量もしくはMM=965g/mol)、Indopol H-300(MM=1340g/mol)、Indopol H-1500(MM=2160g/mol)、
・水添ポリイソブチレン、例えば、Amoco社により製造または市販のPanalane H-300 E(M=1340g/mol)、Synteal社により製造または市販のViseal 20000(MM=6000g/mol)、及びWitco社により製造または市販のRewopal PIB 1000(MM=1000g/mol)、
・ポリデセン及び水添ポリデセン、例えば、Mobil Chemicals社により製造または市販のPuresyn 10(MM=723g/mol)及びPuresyn 150(MM=9200g/mol)、
・ビニルピロリドンのコポリマー、例えば、ビニルピロリドン/1-ヘキサデセンコポリマーである、ISP社により製造または市販のAntraron-216(MW=7300g/mol)、
−エステル、例えば
・35乃至70の合計炭素数を有する直鎖状脂肪酸のエステル、例えば、ペンタエリスリチルテトラペラルゴネート(MM=697g/mol)、
・ヒドロキシル化エステル、例えば、ポリグリセリル-2トリイソステアレート(MM=965g/mol)、
・芳香族エステル、例えば、トリデシルトリメリテート(MM=757g/mol)、
・分枝状C24-C28脂肪アルコールもしくは脂肪酸のエステル、例えば、EP-A-0955039に記載のもの、特に、トリイソアラキジルシトレート(MM=1033.76g/mol)、ペンタエリスリチルテトライソノナノエート(MM=697g/mol)、グリセリルトリイソステアレート(MM=891g/mol)、グリセリルトリデシル-2テトラデカノエート(MW=1143g/mol)、ペンタエリスリチルテトライソステアレート(MM=1202g/mol)、ポリグリセリル-2テトライソステアレート(MM=1232g/mol)、またはペンタエリスリチルテトラデシル-2テトラデカノエート(MM=1538g/mol)、
−ヒドロキシル化カルボン酸と脂肪族モノカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸との、少なくとも1つのトリグリセリドのエステル化により生じるポリエステルであって、不飽和であって良いもの、例えば、ZenitechによりZeniglossの名称で市販のコハク酸とイソステアリン酸との蓖麻子油、
−一般式HO-R1-(-OCO-R2-COO-R1-)h-OH(式中、R1は、ジリノール二酸の水素添加によって得られる二量体ジオール残基を表し、R2は、水添ジリノール酸残基を表し、且つ、hは、1乃至9の整数を表す)の二量体ジオール及び二量体二酸エステル、特に、Nippon Fine Chemicalにより、Lusplan DD-DA5(登録商標)及びDD-DA7(登録商標)の商品名で市販のジリノール二酸及びジリノール二量体ジオールのエステル
・シリコーンオイル、例えば、フェニル化シリコーン、例えば、Wackersay社製のBelsil PDM 1000(MW=9000g/mol)、フェニルトリメチコーン(例えば、Dow Corning社によりDC556の商品名で市販のフェニルトリメチコーン)、フェニルジメチコーン、フェニルトリメチルシロキシジフェニルシロキサン、ジフェニルジメチコーン、及びジフェニルメチルジフェニルトリシロキサン、
・植物由来のオイル、例えば、ゴマ油(MW=820g/mol)、及び
・これらの混合物、
から選択して良い。
【0044】
然るに、この実施態様によれば、この組成物は、その25℃での粘度が、1000mPa/s以上、好ましくは、5000mPa/s超、更に好適には、8000mPa/s超である、少なくとも1つの光沢のあるオイルを含む。
好ましくは、高粘度脂肪物質(または高粘度オイル、然るに、高粘度オイルである場合には光沢のあるオイル)、更に正確には、光沢のあるオイルは、組成物の全質量に対して、1乃至99質量%、好ましくは、20乃至90質量%、好適には、30乃至85質量%、更に好適には、50質量%超を占めて良い。
好ましくは、光沢のあるオイルは、1.45以上、特に1.45乃至1.6の屈折率を有する。
【0045】
好ましい実施態様によれば、この組成物は、25℃にて1000mPa/s以上、好ましくは、25℃にて5000mPa/s超、更に好適には、25℃にて8000mPa/s超の粘度の、少なくとも2つの異なるオイルを含む。
有利な実施態様によれば、この組成物は、その25℃での粘度が1000mPa/s以上、好ましくは、5000mPa/s超、更に好適には、8000mPa/s超である、少なくとも1つの脂肪物質及び少なくとも1つのオイルを含む。
【0046】
(別のオイル)
本発明による組成物は、付加的オイルを更に含んで良く、これは、不揮発性であって、その25℃での粘度が1000mPa/s未満であって良く、炭化水素及び/またはシリコーン及び/またはフッ化オイルであってよい。然るに、本発明による組成物は、光沢のあるオイルの存在とは別個に、付加的オイルを含んで良い。
【0047】
これらのオイルは、植物、無機、または合成由来のものであってよい。
「炭化水素オイル」とは、本質的に、炭素及び水素原子、場合によって更に酸素及び窒素原子から成るかまたは構成され、ケイ素またはフッ素原子を含まないオイルを意味することとする。これは、アルコール、エステル、エーテル、カルボン酸、アミン、及び/またはアミド基を含んで良い。
「シリコーンオイル」とは、少なくとも1つのケイ素原子を含む、特に、Si-O基を含む、オイルを意味することとする。
【0048】
本発明で使用可能な、その25℃での粘度が1000mPa/s未満である、付加的不揮発性オイルの例としては、
・植物炭化水素オイル、例えば、4乃至10の炭素原子を有する脂肪酸の液体トリグリセリド、例えば、ヘプタン酸もしくはオクタン酸のトリグリセリドまたはホホバオイル;
・無機または合成由来の直鎖状または分枝状の炭化水素、例えば、パラフィンオイル及びその誘導体、及びワセリン;
・12乃至26の炭素原子を有する脂肪アルコール、例えば、オクチルドデカノール、2-ブチルオクタノール、2-ヘキシルデカノール、2-ウンデシルペンタデカノール、及びオレイルアルコール;
・部分的に炭化水素及び/またはシリコーンであってよい、フッ化オイル;
・シリコーンオイル、例えば、直鎖状または環状のポリジメチルシロキサン(PDMS)、アルキル、アルコキシ、またはフェニル基を、シリコーン鎖中または末端に、または2乃至24の炭素原子を有する基を含むポリジメチルシロキサン;
・12乃至26の炭素原子を有する脂肪酸、例えば、オレイン酸;並びに
これらの混合物を挙げてよい。
【0049】
その25℃での粘度が1000mPa/s未満である、付加的不揮発性オイルは、この組成物全質量に対して、0.1乃至80質量%、好ましくは、1乃至60質量%、好適には、5乃至50質量%、更に好適には、5乃至40質量%の範囲の含量で存在して良い。
【0050】
この組成物は、その25℃での粘度が1000mPa/s未満である少なくとも1つの揮発性オイルを、更に含んで良い。
本発明の意味における「揮発性オイル」は、常温及び周囲圧にて、ケラチン物質と接触すると、1時間未満で蒸発しうるオイルを意味することとする。本発明の揮発性有機溶媒もしくは溶媒、及び揮発性オイルは、常温で液体の有機溶媒及び揮発性化粧品オイルであって、常温及び周囲圧にてゼロでない蒸気圧を有し、この周囲圧は、特に、0.13Pa乃至40,000Pa(10-3乃至300mmHg)の範囲、特に、1.3Pa乃至13,000Pa(0.01乃至100mmHg)の範囲、とりわけ、1.3Pa乃至1300Pa(0.01乃至10mmHg)の範囲である。
一般的に、全ての揮発性オイルは、25℃にて1000mPa/s未満の粘度を有する。
【0051】
これらのオイルは、炭化水素オイル、シリコーンオイル、フッ化オイル、またはこれらの混合物であってよい。
揮発性炭化水素オイルは、8乃至16の炭素原子を有する炭化水素オイル、特に、分枝状C8-C16アルカン、例えば、石油から誘導されるC8-C16アルカン(イソパラフィンとも呼称)、例えば、イソドデカン(2,2,4,4,6-ペンタメチルヘプタンとも呼称)、イソデカン、イソヘキサデカン、及び、例えば、IsoparまたはPermetylの商品名で市販のオイル、分枝状C8-C16エステル、イソヘキシルネオペンタノエート、及びこれらの混合物から選択することができる。別の揮発性炭化水素オイル、例えば、石油蒸留物、特に、Shell Solt Shellの名称で市販のものもまた使用することができる。好ましくは、揮発性溶媒は、8乃至16の炭素原子を有する揮発性炭化水素オイル及びこれらの混合物から選択される。
【0052】
揮発性オイルとしては、揮発性シリコーンが更に使用可能であり、例えば、揮発性直鎖状または環状シリコーンオイル、特に8センチストーク(6×10-6m2/s)以下の粘度を有し、且つ、特に2から7のケイ素原子を含むものが使用可能であり、これらのシリコーンは、任意に、1乃至10の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシ基を含む。本発明で使用してよい揮発性シリコーンオイルとして、特に、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘプタメチルヘキシルトリシロキサン、ヘプタメチルオクチルトリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、及びドデカメチルペンタシロキサン、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0053】
好ましくは、本発明による組成物は、組成物の全質量に対して50質量%以下、好ましくは、30質量%以下、より好適には、10質量%の揮発性オイル含量を有する。
【0054】
好ましくは、本発明による組成物は、その粘度によらず、シリコーンオイルを全く含まない。
【0055】
(生理学的に許容される媒質)
本発明の組成物は、化粧品としてまたは皮膚科用に許容されねばならず、すなわち、無毒性であって人の唇に適用可能な、生理学的に許容される媒質を含む。本発明の意味においては、「化粧品として許容される」とは、快適な外観、香り、及び感触の組成物を意味することとする。
【0056】
(構造化剤)
本発明による組成物は、上述のシリコーンポリアミドとは別に、ワックス、半結晶性ポリマー、親油性ゲル化剤、及びこれらの混合物から選択される構造化剤を含んで良い。
【0057】
これら付加的化合物の量は、本発明において求められる効果を損なうことのない方式で、当業者が調整して良い。
【0058】
(ワックス)
本発明の状況において検討されるワックスは、一般的には常温(25℃)にて固体であり、可逆的な固体−液体状態変化を示し、且つ上限を200℃、特に120℃としてよい、30℃以上の融点を有する親油性化合物である。
特に、本発明に適切なワックスは、45℃以上、特に55℃以上の融点を示してよい。
本発明の意味においては、融点とは、ISO標準11357-3;1999による温度分析(DSC)により観察される最大の吸熱ピークの温度に相当する。ワックスの融点は、示差走査熱量計(DSC)、例えばTA Instrumentsにより「MDSC 2920」の名称で市販の熱量計を使用して測定してよい。
【0059】
測定プロトコルは、以下の通りである。
5mgのワックスを、るつぼに入れ、-20℃から100℃まで10℃/分の加熱速度で第1の温度増加に処し、次いで、100℃から-20℃まで10℃/分の冷却速度で冷却し、最後に、-20℃から100℃まで5℃/分の加熱速度で第2の温度増加に処する。第2の温度増加の間に、空のるつぼとワックスのサンプルを入れたるつぼとによって吸収される力の差の変動を、温度の関数として測定する。化合物の融点は、温度の関数として、吸収される力の差の変動を表す曲線のピークの頂点に相当する。
本発明による組成物中に使用することのできるワックスは、常温で固体であり、動物、植物、無機、または合成由来のワックス、あるいはこれらの混合物から選択される。
【0060】
本発明に適当なワックスの例としては、炭化水素ベースのワックス、例えば、蜜蝋、ラノリンワックス、及びイボタロウ、米糠ワックス、カルナウバワックス、カンデリラワックス、オウリキュリーワックス、アルファワックス、ベリーワックス、シェラックワックス、木ロウ、及びスマックロウ、モンタンロウ、オレンジ及びレモンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィン類、及びオゾケライト;ポリエチレンワックス、フィッシャー-トロプシュ合成によって得られるワックス、及びワックス質のコポリマー及びエステルを特に挙げて良い。
【0061】
直鎖状または分枝状のC8-C24脂肪鎖を含む、動物または植物油の触媒水素添加によって得られるワックスを更に挙げてよい。これらの中で特に挙げてよいものは、異性化ホホバオイル、例えば、Desert Whale社により、品番Iso-Jojoba-50(登録商標)として市販のトランス異性化部分水添ホホバオイル、水添サンフラワーオイル、水添蓖麻子油、水添コプラオイル、水添ラノリンオイル、及びHeterene社によりHest 2T-4Sの名称で市販のビス(1,1,1-トリメチロールプロパン)テトラステアレートである。
【0062】
シリコーンワックス(C30-45アルキルジメチコーン)、及びフッ化ワックスを更に挙げてよい。
Sophim社によりPhytowax ricin Castor 16L64(登録商標)及び22L73(登録商標)の名称で市販の、セチルアルコールでエステル化された蓖麻子油の水素添加によって得られるワックスもまた使用して良い。こうしたワックスは、出願FR-A-2792190に開示されている。
前記ワックスとしては、C20-C40アルキル(ヒドロキシステアリルオキシ)ステアレート(そのアルキル基が20乃至40の炭素原子を含む)を、単独または混合物として使用して良い。
こうしたワックスは、特にKoster Keunen社により「Kester Wax K82P(登録商標)」、「ヒドロキシポリエステルK82P(登録商標)」、及び「Kester Wax K80P(登録商標)」の名称で市販されている。
【0063】
本発明による組成物中に使用することができるマイクロワックスとしては、カルナウバマイクロワックス、例えば、Micro Powdersにより、MicroCare 350(登録商標)の名称で市販のもの、合成ワックスのマイクロワックス、例えば、Micro PowdersによりMicroEase 114S(登録商標)の名称で市販のもの、カルナウバワックスとポリエチレンワックスとの混合物からなるマイクロワックス、例えば、Micro PowdersによりMicroCare 300(登録商標)及び310(登録商標)の名称で市販のもの、カルナウバワックスと合成ワックスとの混合物からなるマイクロワックス、例えば、Micro PowdersによりMicroCare 325(登録商標)の名称で市販のもの、ポリエチレンマイクロワックス、例えば、Micro PowdersによりMicropoly 200(登録商標)、220(登録商標)、220L(登録商標)、及び250S(登録商標)、並びに、ポリテトラフルオロエチレンマイクロワックス、例えばMicroPowdersによりMicroslip 519(登録商標)及び519L(登録商標)の名称で市販のものを挙げてよい。
【0064】
本発明による組成物は、組成物全質量に対して0.1乃至30質量%の範囲のワックス含量を有して良く、特に、0.5乃至15質量%、とりわけ、1乃至10質量%を含んで良い。
【0065】
(半結晶性ポリマー)
半結晶性ポリマーとは、少なくとも2の、好ましくは、少なくとも3の、特に、少なくとも10の反復構造を含む化合物を意味すると解される。「半結晶性ポリマー」とは、骨格中に結晶性部分、結晶性側鎖、または結晶性配列を、また、骨格中にアモルファス部分を含み、且つ、一次の可逆的相変化温度、特に、融解温度(固−液転移)を有するポリマーを意味すると解される。結晶性部分がポリマー骨格の結晶性配列の形態である場合、このポリマーのアモルファス部分はアモルファス配列の形態であり、この場合は、半結晶性ポリマーは、ブロックポリマーであり、例えば、ジブロック、トリブロック、またはマルチブロックタイプのものであって、少なくとも1つの結晶性配列及び少なくとも1つのアモルファス配列を含む。「配列」とは、一般的に、少なくとも5つの同一の反復構造を意味すると解される。結晶性配列は、アモルファス配列とは化学的性質の異なるものである。
【0066】
この半結晶性ポリマーは、30℃以上(特に、30℃乃至80℃)の、好ましくは、30℃乃至60℃の範囲の融点を有する。この融点は、一次の状態変化温度である。
【0067】
この融点は、あらゆる既知の方法で、特に、示差走査熱量計(D.S.C.)を用いて測定することができる。
【0068】
有利には、本発明が適用される半結晶性ポリマーは、1000以上の数平均分子量を有する。有利には、本発明の組成物の半結晶性ポリマーは、2,000乃至800,000、好ましくは、3,000乃至500,000、好適には、4,000乃至150,000、特に、100,000未満、より好適には、4,000乃至99,000の範囲の数平均分子量Mnを有する。好ましくは、これらは、5,600超の、例えば、5,700乃至99,000の範囲の数平均分子量を有する。本発明の意味においては、「鎖または結晶性配列」とは、単独である場合には、鎖または配列が、融点より高温であるか低温であるかによって、アモルファス状態から結晶状態に可逆的に移行する。本発明の意味における鎖とは、ポリマーの骨格に対して、その中に含まれるかまたは側部にある、原子群である。配列とは、骨格に属する原子群、ポリマーの反復構造の1つを構成する群である。有利には、「結晶性側鎖」とは、少なくとも6つの炭素原子を含む鎖であってよい。
【0069】
半結晶性ポリマーは、少なくとも1つの結晶性配列及び少なくとも1つのアモルファス配列を含むブロックコポリマー、反復構造1つ当たり少なくとも1つの結晶性側鎖を担持するホモポリマー及びコポリマー、並びにこれらの混合物から選択して良い。
こうしたポリマーは、例えば、文献EP1396259に記載されている。
【0070】
本発明の特段の一実施態様によれば、このポリマーは、飽和C14-C22アルキル(メタ)アクリレートから選択される結晶性鎖を有するモノマーから誘導される。
【0071】
本発明による組成物中に使用することのできる、構造化半結晶性ポリマーの特定の例として、カタログ「Intelimer(登録商標)ポリマー」, Landec IP22 (Rev. 4-97)に記載されているLandec社製のIntelimer(登録商標)を挙げることができる。これらのポリマーは、常温(25℃)で固形である。これらは、結晶性側鎖を担持する。
【0072】
(親油性ゲル化剤)
本発明による組成物中に使用するできるゲル化剤は、有機または無機の、ポリマーまたは分子の親油性ゲル化剤であってよい。
無機の親油性ゲル化剤としては、任意的に変性されたクレー、例えば、C10乃至C22塩化アンモニウムで変性されたヘクトライト、例えば、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライドで変性されたヘクトライト、例えば、Elementis社によりBentone 38V(登録商標)の名称の下に市販されている製品を更に挙げてよい。
【0073】
任意に疎水性表面処理に供せられた、その粒径が1μm未満である焼成シリカを更に挙げてよい。実際、化学的に、シリカの表面を、シリカの表面に存在するシラノール基数の減少をもたらす化学反応によって変更することが可能である。特に、シラノール基を疎水性基で置換することが可能であり、かくして疎水性シリカが得られる。疎水性基は、次のものであってよい:
・特に、焼成シリカをヘキサメチルジシラザンの存在下で処理することによって得られる、トリメチルシロキシ基。かくして処理されたシリカは、CTFA(第8版、2000年)に従い、「シリカシリレート」と呼称される。これは、例えば、Degussa社によりAerosil R812(登録商標)の名称で、及びCabot社によりCab-O-Sil TS-530(登録商標)の名称で市販されている;
- 特に、焼成シリカをポリジメチルシロキサンまたはジメチルジクロロシランの存在下で処理することによって得られる、ジメチルシリルオキシルまたはポリジメチルシロキサン基。かくして処理されたシリカは、CTFA(第8版、2000年)に従い、「シリカジメチルシリレート」として知られる。これは、例えば、Degussa社によりAerosil R972(登録商標)及びAerosil R974(登録商標)の名称で、及びCabot社によりCab-O-Sil TS-610(登録商標)及びCab-O-Sil TS-720(登録商標)の名称で市販されている。
【0074】
疎水性の焼成シリカは、特にナノメートル乃至マイクロメートルであってよく、例えば、約5乃至200nmの範囲の粒径を有する。
【0075】
ポリマー有機親油性ゲル化剤は、例えば、三次元構造の、部分的にまたは完全に架橋されたエラストマーオルガノポリシロキサン、例えば、Shin-EtsuからKSG6(登録商標)、KSG16(登録商標)、及びKSG18(登録商標)の名称の下に市販のもの、Dow CorningからTrefil E-505C(登録商標)及びTrefil E-506C(登録商標)の名称の下に市販のもの、Grant IndustriesからGransil SR-CYC(登録商標)、SR DMF 10(登録商標)、SR-DC556(登録商標)、SR 5CYC gel(登録商標)、SR DMF 10 gel(登録商標)、及びSR DC 556 gel(登録商標)の名称の下に市販のもの、並びにGeneral ElectricからSF 1204(登録商標)及びJK 113(登録商標)の名称の下に市販のもの;エチルセルロース、例えば、Dow Chemicalにより、Ethocel(登録商標)の名称の下に市販されている製品;糖1個当たり1乃至6、特に2乃至4のヒドロキシル基を含むガラクトマンナン、例えば、C1〜C6、特に、C1〜C3アルキル鎖でアルキル化されたグアーガム、並びにそれらの混合物;「ジブロック」、「トリブロック」、もしくは「ラジカル」タイプの配列コポリマー、ポリスチレン/ポリイソプレンもしくはポリスチレン/ポリブタジエンタイプのもの、例えば、BASF社によりLuvitol HSB(登録商標)の名称の下に市販されている製品、ポリスチレン/コポリ(エチレンプロピレン)タイプのブロックコポリマー、例えば、Shell Chemical Co.社によりKraton(登録商標)の名称の下に市販されている製品、またはポリスチレン/コポリ(エチレンブチレン)タイプのブロックコポリマー、並びに、イソドデカン中のトリブロック及びラジカル(星形)コポリマーの混合物、例えば、Penreco社によりVersagel(登録商標)の名称の下に市販されている製品、例えば、ブチレン/エチレン/スチレントリブロックコポリマーと、エチレン/プロピレン/スチレン星形コポリマーのイソドデカン中の混合物(Versagel M 5960)である。
【0076】
本発明による組成物中に使用することのできる親油性ゲル化剤の中では、デキストリンと脂肪酸とのエステル、例えば、デキストリンパルミテート、特に、Chiba Flour社によりRheopearl TL(登録商標)またはRheopearl KL(登録商標)の名称の下に市販されている製品を更に挙げてよい。
【0077】
(水性相)
本発明の第一の実施態様によれば、本発明による組成物は、水性相を構成する水性媒質を含み、これは、前記組成物の分散相を形成しうる。
【0078】
この水性相は、本質的に水からなるものであってよく、これは、水と水に混和性の溶媒(水との混和性は、25℃にて50質量%超)、例えば、1乃至5の炭素原子を含む低級モノアルコール、例えば、エタノール、イソプロパノール、2乃至8の炭素原子を含むグリコール、例えば、エチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、及びジプロピレングリコール、C3-C4ケトン及びC2-C4アルデヒド、並びにこれらの混合物との混合物を更に含んで良い。
【0079】
水性相(水及び任意の水混和性溶媒)は、一般的に、本発明による組成物中に、組成物全質量に対して、1乃至95質量%、好ましくは、2乃至80質量%、更に好ましくは、3乃至60質量%の範囲の含量で存在してよい。
【0080】
本発明による組成物は、10質量%未満、更には4質量%未満の水性相または水を更に含むか、あるいは、完全に無水であってよい。
【0081】
(活性物質)
本発明による組成物は、少なくとも1つの活性物質を更に含んで良い。「活性物質」とは、特に唇に対する美容及び/または皮膚科効果を有する化合物を意味するものと解される。
この活性物質は、親水性または疎水性であってよい。この活性物質は水溶性であってよい。
このように、本発明による組成物中に存在する活性物質は、
・ 皮膚弛緩剤、
・ 真皮または表皮の巨大分子の合成を促進する、且つ/またはその変性を防止する作用剤、
・ 糖化防止剤、
・ 抗刺激剤、
・ モイスチャライジング剤、
・ 落屑剤、
・ 着色を調整する作用剤、
・ NOシンターゼ阻害剤、
・ 線維芽細胞または角化細胞の増殖及び/または角化細胞の分化を促進する作用剤、
・ 抗汚染または抗ラジカル剤、
・ 鎮静剤、
・ 微小循環に作用する作用剤、
・ 細胞のエネルギー代謝に作用する作用剤、
・ 治癒剤、及び
・ これらの混合物
から個別に選択してよい。
【0082】
(皮膜形成性剤)
前記組成物は、少なくとも1つの皮膜形成性ポリマーを含んで良い。
一実施態様によれば、この組成物は、皮膜形成性ポリマーから選択して良い少なくとも1つのポリマーを含む。
本発明の意味では、「ポリマー」とは、少なくとも2つの反復構造、好ましくは少なくとも3つの反復構造を有する化合物を意味すると解される。
「皮膜形成性」ポリマーとは、それ自体でまたは皮膜形成補助剤の存在下で、支持体上に巨視的に連続性のフィルムを形成することのできるポリマーを意味すると解される。
【0083】
この組成物中に存在して良いポリマーは、組成物全質量に対して、0.1乃至60質量%の範囲、好ましくは、0.1乃至50質量%の範囲、好ましくは、0.5乃至40質量%の範囲、好ましくは、1乃至30質量%の範囲、更に好ましくは、1乃至25質量%の範囲の含量で存在して良い。
【0084】
一実施態様では、皮膜形成性有機ポリマーは、
・液体有機媒質が少なくとも1つのオイルを含む場合の、液体有機媒質中に可溶性の皮膜形成性ポリマー、特に、脂溶性ポリマー;
・有機媒質中に分散性である皮膜形成性ポリマー、特に、ポリマー粒子の非水性分散物の形態であるポリマー、好ましくは、シリコーンオイルまたは炭化水素オイル中の分散物(一実施態様では、ポリマーの非水性分散物は、少なくとも1つの安定剤によってその表面が安定化されたポリマーの粒子を含む);
・しばしば「ラテックス」と呼称される、ポリマー粒子の水性分散物の形態の皮膜形成性ポリマー(この場合は、前記組成物は水性相を含む);
・水溶性皮膜形成性ポリマー(この場合は、前記組成物は水性相を含む)
を含む群から選択される、少なくとも1つのポリマーである。
【0085】
本発明の組成物中に使用して良い皮膜形成性ポリマーの中では、ラジカルまたは重縮合タイプの合成ポリマー、天然由来のポリマー、並びにこれらの混合物を挙げてよい。皮膜形成性ポリマー、アクリルポリマー、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレア、シリコーンポリマー、シリコーングラフト化アクリルポリマー、ポリアミドポリマー、及びポリアミドコポリマー、並びにポリイソプレンを、特に挙げてよい。
【0086】
これらの付加的化合物の量は、当業者によれば、本発明の求める効果を損なうことのないように調整できることが理解される。
【0087】
(着色剤)
本発明による化粧品組成物は、水溶性または脂溶性の染料、顔料、真珠光沢顔料、及びこれらの混合物から選択されうる着色剤を含んで良い。
【0088】
本発明による組成物は、当業者に周知の水溶性着色剤、粉末形態の着色物質、例えば、顔料、真珠光沢顔料、及びフレークから選択される1つもしくは複数の着色物質を更に含んで良い。着色物質は、組成物の全質量の0.01乃至50質量%、好ましくは、0.01乃至30質量%の範囲の含量で存在して良い。
【0089】
顔料は、得られるフィルムの着色及び/または不透明化を企図する、水性溶液中に不溶性の、白色または有色の、無機及び/または有機の粒子を意味すると解される。
【0090】
顔料は、該化粧品組成物全質量に対して、0.01乃至20質量%、特に、0.01乃至15質量%、特に、0.02乃至10質量%の濃度で存在して良い。
本発明において使用して良い無機顔料としては、亜鉛、鉄、もしくはクロムの酸化物、鉄青、マンガンヴァイオレット、ウルトラマリン、及びクロム水和物を挙げてよい。
これはまた、例えば、セリサイト/褐色酸化鉄/二酸化チタン/シリカタイプであってよい構造を有する顔料であってよい。かかる顔料は、例えば、Chemicals and Catalysts社からCoverleaf NS又はJSの商品名で販売されており、30に近いコントラスト比を提供する。
【0091】
着色剤は、例えば、酸化鉄含有シリカ微小球タイプであってよい構造を有する顔料を更に含んで良い。このを示す顔料の例は、Miyoshi社からPC BALL PC-LL-100 Pの商品名で市販のものであり、この顔料は、黄色酸化鉄を含有するシリカ微小球からなる。
本発明において使用して良い有機顔料の中では、カーボンブラック、D&Cタイプの顔料、コチニールカルミン、バリウム、ストロンチウム、カルシウム、アルミニウムに基づくラッカー、あるいはジケトピロロピロール(DPP)等の、文献EP-A-542669、EP-A-787730、EP-A-787731、及びWO-A-96/08537に記載のものを挙げてよい。
【0092】
「真珠光沢顔料」は、あらゆる形状の、虹色であるなしによらない有色粒子、特に、所定の軟体動物貝類によって産生されるか、または合成されるものであって、光学干渉により着色効果を呈するものを意味すると解される。
【0093】
真珠光沢剤は、酸化鉄で被覆されたチタンマイカ、オキシ塩化ビスマスで被覆されたチタンマイカ、酸化クロムで被覆されたチタンマイカ、有機顔料及びオキシビスマスに基づく真珠光沢顔料で被覆されたチタンマイカ等の真珠光沢顔料から選択して良い。これらは、その表面上に金属酸化物及び/または有機着色物質の少なくとも2つの層が連続して重ねられたマイカの粒子であっても良い。
【0094】
真珠光沢顔料の例として、酸化チタン、酸化鉄、天然顔料、またはオキシ塩化ビスマスで被覆された天然マイカを更に挙げてよい。
市販品として入手可能な真珠光沢顔料の中では、Engelhard社により市販の真珠層Timica、Flamenco、及びDuochrome(マイカをベースとする)、Merck社により市販のTimiron真珠層、Eckart社により市販のマイカベース上のPrestige真珠層 及びSun Chemical社により市販の合成マイカベース上のSunshine真珠層がある。
真珠光沢顔料は、より詳細には、黄色、ピンク、赤、ブロンズ、オレンジ、褐色、及び/又は銅の色又は光沢を有する。
【0095】
本発明の文脈において使用され得る真珠光沢剤の例として特に、金色の真珠層、特にEngelhard社によりBrilliant gold 212G(Timica)、Gold 222C(Cloisonne)、Sparkle gold(Timica)、Gold 4504(Chromalite)、及びMonarch gold 233X(Cloisonne)の名称で市販のもの;ブロンズ真珠層、特に、Merck社によりBronze fine(17384)(Clorona)及びBronze(17353)(Clorona)の名称で、及びEngelhard社によりSuper bronze(Cloisonne)の名称で市販のもの;オレンジ真珠層、特にEngelhard社によりOrange 363C(Cloisonne)及びOrange MCR 101(Cosmica)の名称で、及びMerck社によりPassion orange(Clorona)及びMatte orange(17449)(Microna)の名称で市販のもの;褐色真珠層、特にEngelhard社によりNu-antique copper 340XB(Cloisonne)及びBrown CL4509(Chromalite)の名称で市販のもの;Engelhard社によりCopper 340A(Timica)の名称で市販の銅色光沢を有する真珠層、Merck社によりSienna fine(17386)(Clorona)の名称で市販の赤色光沢を有する真珠層;特にEngelhard社によりYellow(4502)(Chromalite)の名称で市販の黄色光沢を有する真珠層;特にEngelhard社によりSunstone G012(Gemtone)の名称で市販の金色光沢を有する赤色の真珠層;Engelhard社によりTan Opale G005(Gemtone)の名称で市販のピンクの真珠層;特にEngelhard社によりNu-antique bronze 240 AB(Timica)の名称で市販の金色光沢を有する黒色の真珠層;特にMerck社によりMatte blue(17433)(Microna)の名称で市販の青色の真珠層、Merck社によりXirona Silverの名称で市販の銀色光沢を有する白色真珠層、及び特にMerck社によりIndian summer(Xirona)の名称で市販の金色、緑、ピンク及びオレンジ色を帯びた真珠層;及びそれらの混合物を挙げてよい。
【0096】
「染料」は、一般的に有機の、オイルなどの脂肪物質中または水−アルコール相中に可溶性の化合物を意味することと解される。
本発明による第1及び/または第2の化粧品組成物は、水溶性または脂溶性の染料を更に含んで良い。脂溶性染料は、例えば、スーダンレッド、D&C赤色17号、D&C緑色6号、ベータ−カロテン、スーダンブラウン、D&C黄色11号、D&C紫色2号、D&C橙色5号、及びキノリンイエローである。水溶性染料は、例えば、ビートルートジュース及びメチレンブルーである。
【0097】
本発明による化粧品組成物は、特定の光学効果を有する少なくとも1つの物質を更に含んで良い。
この効果は、従来の単純な色づけ効果、すなわち、通常の着色物質、例えば、単色顔料によって生み出される標準化され安定化されたものとは異なる。本発明の意味においては、「安定化された」とは、観察の角度による、あるいは温度変化に対する反応としての、色の変動効果をもたないことを意味する。
【0098】
例えば、この物質は、金属光沢を持つ粒子、角度彩色性着色剤、回折顔料、サーモクロミック剤、光学的光沢剤、及び繊維、特に干渉繊維から選択して良い。むろん、これらの様々な物質を混合して、同時に2つの効果を呈示しても、あるいは本発明による新たな効果を同時に呈示しても良い。
【0099】
本発明において使用して良い金属光沢を有する粒子は、特に、
・少なくとも1つの金属及び/または少なくとも1つの金属誘導体の粒子、
・有機または無機の、単一材料または複数材料の物質を含み、少なくとも1つの金属及び/または少なくとも1つの金属誘導体を含む少なくとも1つの金属光沢層で少なくとも部分的に被覆された粒子、
・前記粒子の混合物
から選択される。
前記粒子中に存在しうる金属の中では、例えば、Ag、Au、Cu、Al、Ni、Sn、Mg、Cr、Mo、Ti、Zr、Pt、Va、Rb、W、Zn、Ge、Te、Se及びこれらの混合物または合金を挙げてよい。Ag、Au、Cu、Al、Zn、Ni、Mo、Cr及びこれらの混合物または合金(例えば、青銅及び黄銅)が、好ましい金属である。
【0100】
「金属誘導体」は、金属から誘導される化合物、特に、酸化物、フッ化物、塩化物、及び硫化物を呼称するために使用される。
これらの粒子の例として、アルミニウムの粒子、例えば、SibelineによりStarbrite 1200 EAC(登録商標)の名称で、またEckartによりMetalure(登録商標)の名称で市販のもの挙げてよい。
【0101】
銅または合金混合物の金属粉末、例えば、Radium Bronze社によって市販の品番2844、金属顔料、例えば、アルミニウムまたは青銅、例えば、Eckhart社によってRotosafe 700の名称で市販のもの、Eckhart社からVisionaire Bright Silverの名称で市販のシリカで被覆されたアルミニウムの粒子、並びに金属合金の粒子、例えば、Eckart社からVisionaire Bright Natural Goldの名称で市販の、シリカで被覆された青銅(銅と亜鉛との合金)から形成された粉体を挙げてよい。
【0102】
これらは、ガラス基体を含む粒子、例えば、Nippon Sheet Glass社によってMicroglass Metashineの名称で市販のものであってもよい。
角度彩色性着色剤は、例えば、多層干渉構造体および液晶着色剤から選択して良い。
【0103】
本発明に従って生産される組成物に使用して良い対称性多層干渉構造体の例は、例えば、以下の構造体である:Al/SiO2/Al/SiO2/Al(この構造を持つ顔料はDuPont de Nemours社によって市販されている);Cr/MgF2/Al/MgF2/Cr(この構造を持つ顔料はFlex社によってChromaflairの名称で市販されている);MoS2/SiO2/Al/SiO2/MoS2;Fe2O3/SiO2/Al/SiO2/Fe2O3およびFe2O3/SiO2/Fe2O3/SiO2/Fe2O3(これらの構造を持つ顔料はBASF社によってSicopearlの名称で市販されている);MoS2/SiO2/マイカ酸化物/SiO2/MoS2;Fe2O3/SiO2/マイカ酸化物/SiO2/Fe2O3;TiO2/SiO2/TiO2およびTiO2/Al2O3/TiO2;SnO/TiO2/SiO2/TiO2/SnO;Fe2O3/SiO2/Fe2O3;SnO/マイカ/TiO2/SiO2/TiO2/マイカ/SnO(これらの構造を持つ顔料はMerck社(Dermstadt)によってXironaの名称で市販されている)。例として、これらの顔料は、Merck社によってXirona Magicの名称で市販のシリカ/酸化チタン/酸化スズ構造を持つ顔料、Merck社によってXirona Indian Summerの名称で市販のシリカ/褐色酸化鉄構造を持つ顔料、およびMerck社によってXirona Carribean Blueの名称で市販のシリカ/酸化チタン/酸化スズ構造を持つ顔料であってよい。資生堂社製のInfinite Colors顔料もまた挙げてよい。各種の層の厚さおよび性質により、様々な効果が得られる。すなわち、Fe2O3/SiO2/Al/SiO2/Fe2O3の構造では、320乃至350nmのSiO2層について緑-金から赤-グレーへ;380乃至400nmのSiO2層について赤から金へ;410乃至420nmのSiO2層について紫から緑へ;更に430乃至440nmのSiO2層に付いて銅色から赤へ、色変化が見られる。
【0104】
ポリマー多層構造を持つ顔料の例として、3M社によってColor Glitterの名称で市販のものを挙げてよい。
角度彩色性液晶粒子としては、例えば、Chenix社によって市販のもの、およびWacker社によってHelicone(登録商標)HCの名称で市販のものを使用して良い。
【0105】
(通常の付加的化粧品成分)
本発明による組成物は、特に、酸化防止剤、香料、保存料、中和剤、界面活性剤、サンスクリーン、ビタミン、モイスチャライジング剤、自己日焼け化合物、皺防止活性物質、皮膚軟化剤、親水性または親油性の活性物質、抗フリーラジカル剤、デオドラント剤、金属イオン封鎖剤、皮膜形成性剤、及びこれらの混合物から選択してよい、あらゆる通常の化粧品成分を更に含んでよい。
【0106】
むろん、当業者であれば、あらゆる補足的成分及び/その量を、本発明による組成物の有利な特性が、想定する添加によって損なわれることのないように、または実質的に損なうことのないように、注意深く選択するであろう。
【0107】
有利には、本発明による組成物は、固形ファンデーション、リップスティックもしくはペースト、アイシャドウ−コンシ―ラー製品、眼の皺防止製品、アイライナー、マスカラ、アイシャドウ、ボディメイクアップ製品、あるいはまた、皮膚着色製品の形態をとる。
【0108】
特に、本発明の組成物は、唇のメイクアップのための製品、例えば、リップスティック、リップグロスもしくはペンシルであって、任意にケアまたはトリートメント特性を有するものの形態をとってよい。これはまた、無水スティックの形態をとってよい。
【0109】
本発明は、本発明による組成物が適用される、皮膚及び/または唇及び/または外皮のメイクアップまたはケアのための方法にも関する。
【0110】
最後に、本発明は、その付着及び光沢が改善されたフィルムを得るために好適な、皮膚及び/または唇及び/または外皮のための化粧品組成物を調製するための、ジメチコーン被覆されたシリカと架橋デンプンとの、その25℃での粘度が1000mPa/s以上、好ましくは、5000mPa/s超、更に好適には、8000mPa/s超である脂肪物質の存在下での利用にも関する。
【0111】
本発明による組成物は、一般的に化粧品または皮膚科の分野で使用される、既知の方法によって製造可能である。例えば、以下の方法により製造することができる。
第一段階では、充填剤と顔料とを少量の油性相中で粉砕してよい。
その後、残りの脂溶性成分を、100℃のオーダーの温度にて混合してよい。その後、粉砕した材料または予め分散させた活性物質を油性相に加えてよい。
あらゆる親水性活性物質を、機械的攪拌を利用して分散させることができる。
【0112】
最後に、この組成物は、その最終形態(例えば、スティック状)を得るために好適な型中に注入してよく、その全体を常温及び/または冷凍庫内で冷却してよい。
本発明は、例示のために与えられ、限定的性質のものでない実施例にいっそう詳説される。百分率は、質量百分率である。
【実施例】
【0113】
(実施例1:スティック形態のリップスティック)
本発明によるリップスティック製剤(組成物1)を、以下のプロトコルに従って調製する。
第一段階では、充填剤と顔料とを少量の油性相中で粉砕する。
その後、残りの脂溶性成分を、100℃のオーダーの温度にて混合する。その後、粉砕した材料または予め分散させた活性物質を油性相に加える。
最後に、この組成物を、直径11.06mmのスティックとすることのできる型に注入し、約1時間に亘って冷凍庫で冷却する。
【0114】
【表1】

【0115】
組成物1を用いて造成されたリップスティックは、適用時に付着する量及び光沢に関して、十分なものである。
【0116】
(実施例2(比較例):リップスティック形態)
以下のリップスティック(比較例組成物2)を、前述と同様のプロトコルにしたがって調製した。組成物2は、製剤1と、ジメチコーン被覆されたシリカが変性デンプンで置き換えられたという変更点以外は同一である。
【0117】
【表2】

【0118】
比較例組成物2は、本発明による組成物1のものよりも、わずかに低い硬度を示すことが判明している。
【0119】
組成物2を適用する際の付着の量は、本発明による組成物1を用いた付着と同様である。しかしながら、組成物2を用いて造成される付着は、本発明による組成物1よりも光沢が少ない。
【0120】
(実施例3(比較例):スティック形態のリップスティック)
以下のリップスティック(組成物3)を、上述に記載のものと同様のプロトコルに従って調製した。組成物3は、製剤1と、デンプンがジメチコーン被覆されたシリカで置き換えられたという変更点以外は同一である。
【0121】
【表3】

【0122】
比較例組成物3は、本発明による組成物1のものと同等の硬度を示すことが判明している。
しかしながら、比較例組成物3を適用する際の付着の量は、本発明による組成物1を用いた付着よりも少なく、比較例組成物3を用いて造成される付着は、本発明による組成物1よりも光沢が少ない。
【0123】
(実施例4(比較例):スティック形態のリップスティック)
以下のリップスティック(組成物4)を、上述に記載のものと同様のプロトコルに従って調製した。組成物4は、製剤1と、その25℃での粘度が1000mPa/s以上である全脂肪物質が、オイル(組成物1中にも存在しているが、より少量である)で置き換えられたという変更点以外は同一である。
【0124】
【表4】

【0125】
比較例組成物4は、本発明による組成物1のものよりも、わずかに低い硬度を示すことが判明している。更にまた、比較例組成物4を適用する際の付着の量は、本発明による組成物1を用いた付着よりも少なく、最後に、比較例組成物4を用いて造成される付着は、本発明による組成物1よりも光沢が少ない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
・少なくとも1つのジメチコーン被覆されたシリカ、
・少なくとも1つの架橋デンプン、及び
少なくとも1つの脂肪物質であって、その25℃での粘度が1000mPa/s以上、好ましくは、5000mPa/s超、更に好適には、8000mPa/s超であるもの、
を含む、少なくとも1つの脂肪相を含む、メイクアップ及び/またはケア用化粧品組成物。
【請求項2】
前記架橋デンプンが、オクテニルコハク酸無水物であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記脂肪物質が、不揮発性オイル及びペースト状脂肪物質から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記脂肪物質が、ペースト状脂肪物質であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記脂肪物質が、不揮発性オイルであることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記不揮発性オイルが、光沢のあるオイルであることを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記の光沢のあるオイルが、ポリブテン、水添ポリイソブチレン、ポリデセン、水添ポリデセン、ビニルピロリドンのコポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン/ヘキサデセンコポリマー、ペンタエリスリチルテトラペラルゴネート、ポリグリセリル-2トリイソステアレート、トリデシルトリメリテート、トリイソアラキジルシトレート、ペンタエリスリチルテトライソノナノエート、グリセリルトリイソステアレート、ペンタエリスリチルテトライソステアレート、グリセリルトリ-2-デシルテトラデカノエート、フェニル化シリコーン、及び植物油、例えば、ゴマ油から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記の光沢のあるオイルが、ビスジグリセリルアジペート-2、ポリビニルピロリドンヘキサデセンコポリマー、ポリグリセリル-2トリイソステアレート、及び水添ポチイソブチレンから選択されることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記脂肪物質、ひいては、必要により、前記不揮発性オイルは、組成物の全質量に対して、20乃至90質量%の範囲、好ましくは、30乃至85質量%の範囲、あるいは、50質量%超の含量で存在することを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも1つのペースト状脂肪物質及び少なくとも1つの不揮発性オイルであって、その25℃での粘度が1000mPa/s以上、好ましくは、5000mPa/s超、更に好適には、8000mPa/s超であるものを含むことを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも2つの不揮発性オイルであって、その25℃での粘度が1000mPa/s以上、好ましくは、5000mPa/s超、更に好適には、8000mPa/s超であるものを含むことを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記ジメチコーン被覆されたシリカは、ジメチコーンで完全にまたは部分的に被覆された、多孔性シリカ粒子の形態であることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記ジメチコーン被覆されたシリカは、平均で、0.1乃至30μm、特に、0.5乃至20μm、より正確には、1乃至16μmのオーダーの範囲の平均サイズの粒子形態であることを特徴とする、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記ジメチコーン被覆されたシリカは、1ミクロン超の平均サイズの粒子の形態であることを特徴とする、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記ジメチコーン被覆されたシリカ中におけるジメチコーンとシリカとの割合が、好ましくは、1乃至20質量%、例えば5乃至10質量%であることを特徴とする、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記ジメチコーン被覆されたシリカが、組成物全質量に対して、0.1乃至99質量%、特に、0.1乃至30質量%、特に、0.1乃至15質量%、更には、1乃至7質量%の範囲の含量で存在することを特徴とする、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記架橋デンプンが、組成物全質量に対して、0.1乃至99質量%、特に、0.1乃至30質量%、特に、0.1乃至15質量%、更には、1乃至7質量%の範囲の含量で存在することを特徴とする、請求項1乃至16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記架橋デンプン及び前記ジメチコーン被覆されたシリカが、組成物全質量に対して、0.1乃至99質量%、特に、0.1乃至30質量%、特に、0.1乃至15質量%、更には、1乃至7質量%の範囲の含量で存在することを特徴とする、請求項1乃至17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記架橋デンプンと前記ジメチコーン被覆されたシリカが、10:90乃至90:10、好ましくは、30:70乃至70:30、更に好ましくは、50:50のオーダーの質量比であることを特徴とする、請求項1乃至18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
少なくとも1つの付加的オイルであって、25℃でのその粘度が1000mPa/s未満であるものを更に含むことを特徴とする、請求項1乃至19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
25℃でのその粘度が1000mPa/s未満である前記付加的オイルが、不揮発性オイルであることを特徴とする、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
25℃でのその粘度が1000mPa/s未満である前記付加的オイルが、揮発性オイルであることを特徴とする、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
揮発性オイルが2%未満、更には1%未満、あるいは全く含まれないことを特徴とする、請求項1乃至21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
該組成物全質量に対して、10%未満、更に好適には4%未満の水を含むか、あるいは全く無水であることを特徴とする、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
少なくとも1つのワックスを含むことを特徴とする、請求項1乃至24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記生成物全質量に対して、0.01乃至40質量%、とりわけ、0.01乃至30質量%、特に0.05乃至25質量%の濃度で、少なくとも1つの着色剤を含むことを特徴とする、請求項1乃至25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記着色剤が、顔料、真珠光沢顔料、水溶性または脂溶性染料、並びにこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
少なくとも1つの半結晶性ポリマーを含むことを特徴とする、請求項1乃至27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
少なくとも1つの活性物質を含むことを特徴とする、請求項1乃至28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
固体形態であることを特徴とする、請求項1乃至29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
30乃至300g、更には、50乃至200gの硬度を示すことを特徴とする、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
スティックまたはディッシュに成型された製品の形態であることを特徴とする、請求項1乃至31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
固形ファンデーション、リップスティック、またはペースト、アイシャドウ-コンシーラー製品、眼のしわ防止製品、アイライナー、マスカラ、アイシャドウ、ボディメイクアップ製品、あるいはまた、皮膚着色製品の形態であることを特徴とする、請求項1乃至32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
請求項1乃至33のいずれか一項に記載の組成物が適用される、皮膚及び/または唇及び/または外皮のメイクアップまたはケアのための方法。
【請求項35】
その付着及び光沢が改善されたフィルムを得るために好適な、皮膚及び/または唇及び/または外皮のための化粧品組成物を調製するための、請求項1乃至30に規定される、無極性ワックス及びエステルワックスとの組み合わせでのフィラーの使用。

【公表番号】特表2011−506548(P2011−506548A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538656(P2010−538656)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【国際出願番号】PCT/EP2008/067641
【国際公開番号】WO2009/080623
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】