説明

2ストロークエンジンの運転における燃料経済性及び環境への影響を改善する方法及びシステム

本発明は、2ストロークエンジンにおける燃料消費及び環境への影響を低減する方法及びこれに対応するシステムに関する。当該方法及びシステムは、少なくとも1つのエンジン(300)からシステム油/消費性システム油(301’)を得る工程と、上記得られたシステム油/消費性システム油(301’)の少なくとも一部に少なくとも1つの摩擦調整剤(101)を添加し、この少なくとも1つの摩擦調整剤(101)の添加により上記得られたシステム油/消費性システム油(301’)の摩擦係数が減り、その結果、摩擦の低減したシステム油(301’’)が得られる工程(102)と、上記摩擦の低減したシステム油/消費性システム油(301’’)を上記少なくとも1つのエンジン(300)に供給する工程とを含む。このようにして、システム油/消費性システム油の汚染によって引き起こされる摩擦損失(通常、システム油を使用する際に生じ、他の場合では効率を大幅に下げ、燃料消費を増大させ、また、排出を増大させる)が回避されるか又は最小限にとどめられる。さらに、本発明は、システム油/消費性システム油をシリンダ油に転換する方法及び対応するシステムに関する。最後に、本発明は、消費性システム油がシリンダ油に転換される際に消費性システム油を用いる方法に関する。これにより、さらに、消費性システム油が、より低性能の添加剤パッケージ及び/又はより低い添加剤処理比を有することが可能となる。したがって、経済的節約及び環境的改善が大幅に達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、2ストロークエンジンの運転における燃料の消費、潤滑剤に関わる問題、及び環境への影響を低減する方法に関する。さらに、本発明は、2ストロークエンジンにおける燃料の消費、潤滑剤の延長利用、及び環境への影響を低減するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
[発明の背景]
船舶用途及び/又は定置(stationary)用途において使用される2ストローククロスヘッドエンジン(two-stroke cross-head engine)は、2つの別個の潤滑油系統を装備している。一方の潤滑系統は、エンジンのベアリング及び例えば油冷却式ピストンの潤滑及び冷却、並びに各種弁等の作動及び/又は制御に通常用いられる、いわゆるシステム油を含む。他方の潤滑系統は、エンジンのシリンダ、ピストンリング、及びピストンスカートの潤滑に通常用いられる、全損潤滑剤(all-loss lubricant)(シリンダ油)を含む。
【0003】
典型的な2ストローククロスヘッドエンジンでは、シリンダ油はエンジンの回転ごとに連続消費されるが、システム油は原則的には(比較的少ない意図せぬ漏洩を除いては)消費されない。また、シリンダ油を含む潤滑系統は、シリンダ油が消費されるため「全損」潤滑系統とも呼ばれる場合が多い。システム油(複数可)及びシリンダ油(複数可)の双方の使用及び各種タイプは当該技術分野において非常によく知られている。
【0004】
シリンダ油は通常、シリンダ系の酸価(acid level)を低減するか、最小限にとどめるか、又は中和させるように働くいくつかの或る特定の添加剤を含有する。
【0005】
典型的なシリンダ油は通常、約50に等しいSAE(Society of Automotive Engineering:米国自動車技術者協会)粘度を有し、通常、燃焼プロセスの際に生成される酸生成物の中和用に約40〜70の全アルカリ価(total base number)(BN(TBN))を有する。典型的なシステム油は通常、比較的低いBN含量の場合では約30、一般には約5のSAE粘度を有し、長期性能を与える。これらの例示的な値は、実際の用途とシリンダ油及びシステム油が使用される系統の特有な設計とに応じて変わるであろう。
【0006】
電子制御及び/又は油圧制御、並びに/或いは弁作動等を含む、最近の2ストローククロスヘッドエンジン設計では、システム油に対する性能に関する最小限の要求事項が、伝統的な機械制御/機械作動を用いる従来の設計に比して大幅に増えている。
【0007】
潤滑剤の性能レベルは通常、定期的に測定されるため、塗油した部品の状態が危険にさらされないようにすべき場合に或る特定の限界を超えないようにすることができる。性能損失の一原因は、粒子汚染によって引き起こされる。これらの粒子は、油分離機により或る程度取り除くことができる燃焼副産物及び摩耗成分を含む。しかしながら、2ストローククロスヘッドエンジンの場合では、汚染源の1つはスタッフィングボックスからのシリンダ油の漏洩であり、これにより、システム油の粘度及びアルカリ価がいずれも時間が経つにつれて増大するため、1つのプロセスでは分離機によって相殺することができない。これにより、時間が経つにつれてシステム油は漸次に劣化し、部品の摩耗が増大し、エンジン効率が下がることになる。システム油は、その決定的限界に達すると補給又は交換しなければならないであろう。
【0008】
米国特許第6,074,995号特許明細書は、潤滑粘性のあるオイルを含むと共に摩擦を低減する量の添加剤を含有する摩擦調整剤組成物を開示している。
【0009】
米国特許第5,282,990号特許明細書は、燃料経済性を高めるために、内燃機関のクランクケース潤滑油に摩擦調整剤の相乗ブレンドを添加することを開示している。しかしながら、これを2ストロークディーゼルエンジンに対して適用する方法については何らの示唆もしていない。
【0010】
欧州特許0573231号特許明細書は、内燃機関において燃料経済性を改良(改善)するオイルに添加される摩擦調整剤としてのトリグリセリドを開示している。
【0011】
米国特許出願第2003/0171223号は、摩擦特性が改良された潤滑油組成物を開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
[発明の目的及び概要]
本発明の目的は、従来技術の上記の(及び他の)欠点を解決する2ストロークエンジンの運転における燃料消費及び環境への影響を低減する方法及びそれに対応するシステムを提供することである。さらなる目的は、このことを容易且つ効率的なやり方で提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、2ストロークディーゼルエンジンにおける燃料経済性又は燃料効率の改善を可能にすることである。
【0014】
別の目的は、2ストロークディーゼルエンジンからの排出(emissions:排気量)を低減することである。
【0015】
別の目的は、従来通りに配合されたシステム油を用いる場合に達成できる性能レベルと同じ性能レベルを依然として与える、あまり問題のない消費性(consumable:消耗)システム油の使用を可能にすることである。
【0016】
さらに別の目的は、2ストロークディーゼルエンジンの部品寿命を延ばすことである。
【0017】
さらなる目的は、さらにより環境に優しいエンジン運転を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
これらの目的は特に、エンジンからシステム油/消費性システム油を得る工程と、得られたシステム油の少なくとも一部に少なくとも1つの摩擦調整剤を添加する工程と、この工程では、少なくとも1つの摩擦調整剤の添加により、得られた油の摩擦係数が減り、その結果、摩擦の低減したシステム油/消費性システム油となる、及び当該摩擦の低減したシステム油/消費性システム油を上記エンジンに供給する工程とを含む、2ストロークエンジンにおける燃料消費を低減する方法(及びこれに対応するシステム)によって達成される。
【0019】
このようにして、エンジンに供給し戻されるシステム油/消費性システム油の摩擦特性を低減させる摩擦調整剤(複数可)を添加し存在させることにより、エンジンの燃料消費を低減することができ、すなわち改善された燃料経済性が得られる。
【0020】
さらに、摩擦調整剤(複数可)の添加によりエンジン(複数可)の部品間の摩擦が少なくなることにより、部品の動作時間の延長が得られる。この結果、頻繁な保守管理は必要ではなくなり、コストが節減される。
【0021】
さらに、本発明による摩擦調整剤(複数可)の添加によりエンジン部品間の摩擦が低くなることにより、用いる燃料が少なくて済むため、エンジン(複数可)からの排出量が少なくなる。
【0022】
一実施の形態では、摩擦調整剤(複数可)の少なくとも1つは無灰系(ash-less)摩擦調整剤である。
【0023】
一実施の形態では、少なくとも1つの無灰系摩擦調整剤は、ダイマー酸及び/又は脂肪酸及び/若しくは脂肪酸アミド(fatty amide)のジ、トリ、及び/又はテトラエステルをベースとする。
【0024】
別の実施の形態では、少なくとも1つの無灰系摩擦調整剤は、ネオペンチルグリコール、ペンタエリトリトール、ソルビトール、トリメチルプロパノール、グリセロール、及び/又はトリエタノールアミン、又はそのブレンドをベースとする。
【0025】
好適な一実施の形態では、少なくとも1つの摩擦調整剤は以下の:
菜種、大豆、及び/又はヒマシ油等のトリグリセリド(動物及び/又は植物由来)、
脂肪族リン酸塩、
脂肪酸アミド、
脂肪族エポキシド、
ホウ酸脂肪族エポキシド、
脂肪アミン(例えばトリエタノールアミン)
例えば、グリセロール、ペンタエリトリトール、ネオペンチルグリコール、ソルビトール、トリメチルプロパノールのポリオールエステル、
ホウ酸ポリオールエステルアルコキシル化脂肪アミン、
ホウ酸アルコキシル化脂肪アミン、
脂肪酸の金属塩、
硫化オレフィン、
脂肪族イミダゾリン、又は
それらの混合物
から成る群から選択される1つ又はそれ以上をベースとする。
【0026】
一実施の形態では、少なくとも1つの摩擦調整剤は、添加される摩擦調整剤(複数可)の濃度が摩擦の低減したシステム油/消費性システム油の0.2〜2.0%の濃度を有するように所定比で添加される。
【0027】
別の一実施の形態では、少なくとも1つの摩擦調整剤は、添加される摩擦調整剤(複数可)の濃度が摩擦の低減したシステム油/消費性システム油の0.5〜1.5%の濃度を有するように所定比で添加される。
【0028】
別の一実施の形態では、当該方法は、単純な添加剤組成及び/又は低減した添加剤処理比を含む消費性システム油の使用を含む。
【0029】
一実施の形態では、当該方法は、沖合いで、現場で、船上で、及び/又は陸上プラントで用いられる。
【0030】
好適な一実施の形態では、当該方法は、第1の所定量のシステム油/消費性システム油をタッピング(tapping)し、それにより、当該タッピングされたシステム油を提供し、且つ、残存するシステム油/消費性システム油に第2の所定量の(より)新しいシステム油/消費性システム油を補給する工程をさらに含み、当該タッピング操作及び/又は当該補給操作は連続的に、ほぼ連続的に、又は断続的に行われる。
【0031】
別の好適な実施形態では、当該方法は、タッピングされたシステム油/消費性システム油の少なくとも1つの限界パラメータ(例えば、BN、粘性、誘電率/静電容量及び/又は元素組成)を決定し、シリンダ油の少なくとも1つの所望のパラメータ(例えば、BN、粘性、誘電率/静電容量及び/又は元素組成)を決定し、且つ、その決定に従って上記タッピングされたシステム油/消費性システム油を少なくとも1つのBN調整添加剤とブレンドすることによって上記タッピングされたシステム油/消費性システム油の少なくとも1つの限界パラメータ(例えば、BN、粘性、誘電率/静電容量及び/又は元素組成)を調整することで、その結果、生成されるシリンダ油を得ることにより、タッピングされたシステム油/消費性システム油に基づいてシリンダ油を生成する工程と、当該生成されたシリンダ油を上記エンジンのシリンダ又はシリンダの一部に供給する工程とをさらに含む。
【0032】
一実施の形態では、システム油は、以下の:
長期間性能用の添加剤を含むか、又は長期間性能を与える添加剤処理比で配合された、従来のシステム油、及び
長期間性能添加剤を有さない、又は長期間性能を与えない低減した添加剤処理比で配合された、消費性システム油
から成る群から選択される。
【0033】
本発明はまた、2ストロークエンジンにおける燃料消耗を低減するシステムに関し、当該システムは本発明の方法に対応するため、同じ理由から同じ利点を有する。
【0034】
さらに具体的には、本発明は、2ストロークエンジンにおける燃料消費を低減するシステムに関する。このシステムは、得られたシステム油/消費性システム油の少なくとも一部に少なくとも1つの摩擦調整剤を添加すると共に、その際、少なくとも1つの摩擦調整剤の添加により、得られたシステム油/消費性システム油の摩擦係数が減り、その結果、摩擦の低減したシステム油/消費性システム油が得られ、また、摩擦の低減したシステム油/消費性システム油を上記少なくとも1つのエンジンに供給するための、ブレンドユニットを備える。
【0035】
本発明によるシステムの有利な実施形態は、従属請求項に記載されると共に以下に詳細な説明がなされる。当該システムの実施形態は当該方法の実施形態に対応するため、同じ理由から同じ利点を有する。
【0036】
本発明のこれらの態様及び他の態様は、図面に示される例示的な実施形態を参照して明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
[好適な実施形態の説明]
図1は、本発明の一実施形態の概略ブロック図を示す。少なくとも1つの2ストローククロスヘッドディーゼルエンジン(300)の概略図が示されている。当該エンジンは、エンジンのベアリング及び例えば油冷却式ピストンの潤滑及び冷却、並びに各種弁等の作動及び/又は制御に通常用いられるいわゆるシステム油(301)を含む一方の潤滑系統を備える。他方の潤滑系統は、エンジンのシリンダ、ピストンリング、及びピストンスカートの潤滑に通常用いられる。
【0038】
エンジン(300)は、以下に説明する以外の既知の従来技術の2ストロークエンジンに対応する。
【0039】
本発明による、2ストロークエンジンにおける燃料消費を低減する摩擦調整方法/システム(100)も示されている。摩擦調整方法/システム(100)は、少なくとも1つのエンジン(300)からシステム油(301’)を得て、ここで、コントローラ又はブレンドユニット(102)が、得られたシステム油(301’)(の少なくとも一部)に少なくとも1つの摩擦調整剤(101)を添加する。少なくとも1つの摩擦調整剤(101)の添加により、得られたシステム油/消費性システム油(301’)の摩擦係数が減り、その結果、摩擦の低減したシステム油(301’’)が得られ、これがシステム油としてエンジン(複数可)(300)に供給し戻される。
【0040】
これにより、システム油/消費性システム油の汚染によって引き起こされる摩擦損失(通常、システム油/消費性システム油を使用する際に生じ、他の場合では効率を大幅に下げ、燃料消費を増大させ、また、排気量を増大させる)が回避されるか又は最小限にとどめられる。この摩擦損失を回避することによって大幅な節減が達成される。
【0041】
システム油は好ましくは、以下の:
長期性能用の添加剤を含むか、又は長期性能を与える添加剤処理比で配合された、従来のシステム油、及び
長期性能添加剤を有さないか、又は長期性能を与えない低減した添加剤処理比で配合された、消費性システム油
から成る群から選択される。
【0042】
好ましくは、摩擦調整剤(複数可)(101)は無灰系摩擦調整剤(複数可)であり、ダイマー酸及び/又は脂肪酸及び/又は脂肪酸アミドのジ、トリ、及び/又はテトラエステルをベースとし得る。
【0043】
また、無灰摩擦調整剤(複数可)は、ネオペンチルグリコール、ペンタエリトリトール、ソルビトール、トリメチルプロパノール、グリセロール、及び/又はトリエタノールアミン、又は上記のうち2つ以上のブレンドをベースとし得る。
【0044】
好適な実施形態では、少なくとも1つの摩擦調整剤は以下の:ヒマシ油等のトリグリセリド、脂肪族リン酸塩、脂肪酸アミド、脂肪族エポキシド、ホウ酸脂肪族エポキシド、脂肪アミン(例えばトリエチルアミン)、例えばグリセロール、ペンタエリトリトール、ネオペンチルグリコール、ソルビトール、トリメチルプロパノールのポリオールエステル、ホウ酸ポリオールエステルアルコキシル化脂肪アミン、ホウ酸アルコキシル化脂肪アミン、脂肪酸の金属塩、硫化オレフィン、脂肪族イミダゾリン、又はそれらの混合物のうち1つ又は複数をベースとし得る。
【0045】
摩擦調整剤(複数可)は、例えば引用されている従来技術文献及びその他に開示されている他の化合物であってもよい(例えば、米国特許第4,792,410号特許明細書及び米国特許第5,110,488号特許明細書を参照)。
【0046】
一実施形態によれば、摩擦調整剤(複数可)(101)は、添加される摩擦調整剤(複数可)(101)の濃度が摩擦の低減したシステム油/消費性システム油(301’’)の0.2〜2.0%の濃度を有するように所定比で添加される。代替的な一実施形態では、摩擦調整剤(複数可)(101)は、添加される摩擦調整剤(複数可)(101)の濃度が摩擦の低減したシステム油/消費性システム油(301’’)の0.5〜1.5%の濃度を有するように所定比で添加される。別の実施形態によれば、コントローラ又はブレンドユニット(102)は所定スキームに従い、添加される摩擦調整剤(101)の比を変更する、すなわち、そのため、必ずしも常に同じ割合が用いられるとは限らない。
【0047】
一実施形態によれば、システム油/消費性システム油はその油寿命に反映して添加剤組成が少なくなっている且つ/又は変更されている消費性システム油である。
【0048】
本発明は例えば、沖合いで、現場で、船上で、及び/又は陸上プラント等で用いられ得る。
【0049】
本発明の好適な実施形態によれば、当該システム/方法はタッピング及び補給システム/方法(200)をさらに含み、ここでは、コントローラ(202)が、所定量の得られたシステム油/消費性システム油(301’)のタッピング、それによる、当該タッピングされたシステム油(203)の供給、且つ、残存するシステム油/消費性システム油(301’)への第2の所定量の(より)新しいシステム油/消費性システム油(201)の補給を制御する。このようにして、摩擦調整剤を添加されるシステム油/消費性システム油の一部が補給される。代替的に、タッピング及び/又は補給は連続的に、ほぼ連続的に、又は断続的に、或いは他の適したスキームに従って行われ得る。
【0050】
使用済のシステム油/消費性システム油がタッピングされ、新しい、未使用の、又はあまり使用されていないシステム油を補給されると、その結果得られるシステム油/消費性システム油はさらに安定した品質を有し、漸次の劣化が最小限にとどめられるか又は回避される。このようにして、初期の流体の性能が向上して安定すると、部品摩耗及び装置寿命サイクルコストがさらに低減することになる。
【0051】
実際には、これにより、使用済のシステム油/消費性システム油の一部がタッピングされ、新しい又はより新しいシステム油を補給されると、「消費可能な」システム油/消費性システム油が提供される。このことは、システム油/消費性システム油が効率的に使用するのに劣化しすぎない程度までエンジンシステム内で保持される従来技術システム油/消費性システム油に比して新規である。従来技術ではそれ以後、システム油/消費性システム油は交換されねばならず、システム油/消費性システム油を廃棄物として処理せねばならないであろう。本発明のさらなる利点は、当該システムにおけるシステム油/消費性システム油の要件は従来技術の要件とは異なるという点である。従来技術システムの標準のシステム油/消費性システム油は通常、システム油の長寿命を確保する添加剤パッケージを含有している。従来技術の添加剤パッケージを有するシステム油/消費性システム油は、従来技術の添加剤パッケージを有さないか又は「消費可能な」システム油用に設計された新規の添加剤パッケージを有する同様のシステム油/消費性システム油よりも著しく高価である。本発明のシステムは、システム油/消費性システム油がタッピング及び補給されるため、十分な油寿命を確実にする低減した及び/又は変更された添加物パッケージを用いてのシステム油/消費性システム油と共に機能することができる。これにより、より安価な油を当該システムにおいて使用することができるため、費用が下がる。好ましくは、タッピングされたシステム油/消費性システム油は以下に記載するように廃棄物となる代わりに使用される。
【0052】
タッピング/補給システム(200)は、エンジンに直接提供されてもよく、又はシステム油/消費性システム油(301’)への摩擦調整剤(複数可)の添加に用いられるものの代わりに別個のループの一部であってもよい。
【0053】
別の好適な実施形態では、当該システム/方法は、使用済みのシステム油/消費性システム油を使用可能なシリンダ油に転換するBN調整システム/方法(400)をさらに含む(例えば、BN調整システム/方法(400)の一実施態様の具体的な詳細について米国仮特許出願第60/612,899号及び欧州特許出願番号第04388064.0号(双方とも本明細書に参照により援用される)を参照のこと))。
【0054】
この実施形態では、BN(全アルカリ価(TBN))調整システム/方法(400)は、タッピングされたシステム油/消費性システム油(203)のBNを決定し、シリンダ油(302)の所望のBNを決定し、且つ、それらの決定に従って、タッピングされたシステム油/消費性システム油(203)を少なくとも1つのBN調整添加剤(401)とブレンドすることによって上記タッピングされたシステム油/消費性システム油(203)のBNを調整することでシリンダ油(302’)を得る(なお、シリンダ油(302’)はシリンダに供給されるか、又は前記エンジン(300)のシリンダ又はシリンダの一部に供給される)ことにより、タッピングされたシステム油/消費性システム油(203)に基づきシリンダ油を生成する、コントローラ(402)を備える。
【0055】
このようにして、BNを調整することによって、(使用済/消費済)システム油/消費性システム油を使用可能なシリンダ油に転換/再利用する方法及びシステムが提供される。これにより、他の場合では最終的に使い捨てねばならないであろうシステム油/消費性システム油を全損失シリンダ潤滑剤として再使用/再利用することができる。加えて、より費用効率の高い消費性システム油を使用することができる。さらに、シリンダ油を入手する必要がない。シリンダ油をブレンドするのに使用されるシステム油/消費性システム油は、(従来の慣例に反して)補給されるため質がさらに安定しており、そのため、機械的摩耗等が低減する。したがって、初期の流体(複数可)の補給により、初期の流体の性能が向上すると共に安定し、その結果、部品摩耗及び装置寿命サイクルコストが大幅に低減する。さらに、長期使用後に廃棄される消費済油(複数可)の形態の廃棄物がシリンダ油に転換されるために減るので、より環境にやさしい方法/システムが提供される。
【0056】
BN調整添加剤は、例えば少なくとも1つの塩基を含み得る。好ましくは、少なくとも1つの塩基はアルカリ性元素又はアルカリ土類元素の塩基性塩、及び/又は界面活性剤及び/又は分散剤を含む。シリンダ油は、燃料油の特性及び/又は実際のエンジン運転条件に応じてBNを用いて生成されることができる。さらに、シリンダ油のBNは、使用されるシステム油の硫黄含量に基づいて選択されることができる。使用されるシステム油及び消費性システム油は、例えば潤滑剤、油圧油、ギヤ油、システム油、トランクピストンエンジン油、タービン油、ヘビーデューティディーゼル油、コンプレッサ油等から成る群から選択されることができる。
【0057】
アルカリ性元素/アルカリ土類元素は、例えばK、Na、Ca、Ba、Mg等であってもよい。塩基性塩は、例えば酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫黄等の無機化学系のものであり得る。界面活性剤は、例えば、スルホネート、サリチレート、フェナート、スルホフェナート、マンニッヒ塩基等の界面活性剤等の有機化学系のものであり得る。分散剤は、スクシンイミド等の有機化学系のものであり得る。
【0058】
代替的に、シリンダ油への消費済/使用済のシステム油/消費性システム油の転換は、補給せずに行われてもよい、すなわち、BN調整システム(400)をエンジンに直接接続するか又は補給せずにタッピングシステムに接続する。
【0059】
図2a及び図2bは、試験中の本発明による影響を示す。図2aは、エンジンからのシステム油/消費性システム油がその少なくとも一部に少なくとも1つの摩擦調整剤を添加されることによって調整される本発明の使用の前、その使用中、及びその使用後のエンジンの機械効率を示すグラフ(210)である。このグラフは、本発明の適用前(すなわち従来の効率)の或る期間における測定値を示す第1の部分(211)、本発明の適用中の或る期間における測定値を示す第2の部分(212)、及び本発明の適用後の或る期間における測定値を示す第3の部分(213)に区分されている。
【0060】
グラフ(210)から分かるように、機械効率全体、すなわち、エンジンの指定最大出力に対して見られるエンジンの有効出力の比が、本発明による少なくとも1つの摩擦調整剤を添加することによってシステム油/消費性システム油を調整することにより増大する。より具体的には、機械効率は概して、グラフ(210)の第2の部分(212)及び第3の部分(213)において、すなわち本発明の適用中及びその適用後においてより高いことが分かる。
【0061】
図2bは、本発明の使用前、その使用中、及びその使用後のエンジンの出力損失を示すグラフ(210)である。このグラフは、本発明の適用前(すなわち従来の効率)の或る期間における測定値を示す第1の部分(211)、本発明の適用中の或る期間における測定値を示す第2の部分(212)、及び本発明の適用後の或る期間における測定値を示す第3の部分(213)に区分される。グラフ(210)から分かるように、出力損失全体は概して、グラフ(210)の第2の部分(212)及び第3の部分(213)において、すなわち本発明の適用中及び適用後において低くなっている。
【0062】
特許請求の範囲において、丸括弧内にあるいかなる符号も特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。「含む」という語は、特許請求の範囲内に挙げられている以外の要素又は工程の存在を排除するものではない。要素の前の「1つの」(「a」又は「an」)は、複数のかかる要素の存在を排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態の概略ブロック図を示す図である。
【図2a】試験中の本発明の効果を示す図である。
【図2b】試験中の本発明の効果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのエンジン(300)から新しいシステム油又は部分的に使用されたシステム油(301、301’)を使用する工程と、
得られた新しいシステム油又は部分的に使用されたシステム油(301、301’)の少なくとも一部に少なくとも1つの摩擦調整剤(101)を添加し、前記少なくとも1つの摩擦調整剤(101)の添加により前記得られたシステム油(301、301’)の摩擦係数が減少し、その結果、摩擦の低減したシステム油(301’’)が得られる工程(102)と、
前記摩擦の低減したシステム油(301’’)を前記少なくとも1つのエンジン(300)に供給する工程と
を含む、2ストロークエンジンにおける燃料の消費及び環境への影響を低減する方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの摩擦調整剤(101)の少なくとも1つは、無灰系摩擦調整剤である、請求項1に記載の2ストロークエンジンにおける燃料の消費及び環境への影響を低減する方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの無灰系摩擦調整剤は、ダイマー酸及び/又は脂肪酸及び/又は脂肪酸アミド(fatty amide)のジ、トリ、及び/又はテトラエステルをベースとする、請求項2に記載の2ストロークエンジンにおける燃料の消費及び環境への影響を低減する方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの無灰系摩擦調整剤は、ネオペンチルグリコール、ペンタエリトリトール、ソルビトール、トリメチルプロパノール、グリセロール、及び/又はトリエタノールアミン、又はそのブレンドをベースとする、請求項2に記載の2ストロークエンジンにおける燃料の消費及び環境への影響を低減する方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの摩擦調整剤は、以下の:
菜種、大豆、及び/又はヒマシ油等のトリグリセリド(動物及び/又は植物由来)、
脂肪族リン酸塩、
脂肪酸アミド、
脂肪族エポキシド、
ホウ酸脂肪族エポキシド、
脂肪アミン、
ポリオールエステル、
ホウ酸ポリオールエステルアルコキル化脂肪アミン、
ホウ酸アルコキシル化脂肪アミン、
脂肪酸の金属塩、
硫化オレフィン、
脂肪族イミダゾリン、又は
それらの混合物
から成る群から選択される1つ又はそれ以上をベースとする、請求項2に記載の2ストロークエンジンにおける燃料の消費及び環境への影響を低減する方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの摩擦調整剤(101)は、添加される摩擦調整剤(複数可)(101)の濃度が摩擦の低減した前記システム油(301’’)の0.2〜2.0%の濃度を有するように所定比で添加される、請求項1に記載の2ストロークエンジンにおける燃料の消費及び環境への影響を低減する方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの摩擦調整剤(101)は、添加される摩擦調整剤(複数可)(101)の濃度が前記摩擦の低減したシステム油(301’’)の0.5〜1.5%の濃度を有するように所定比で添加される、請求項1に記載の2ストロークエンジンにおける燃料の消費及び環境への影響を低減する方法。
【請求項8】
沖合いで、現場で、船上で、及び/又は陸上プラントで用いられる、請求項1に記載の2ストロークエンジンにおける燃料の消費及び環境への影響を低減する方法。
【請求項9】
前記得られたシステム油(301’)の第1の所定量をタッピングし(tapping)(202)、それにより、タッピングされたシステム油(203)を提供し、且つ、残存する得られたシステム油(301’)に第2の所定量のより新しいシステム油(201)を補給する工程をさらに含み、該タッピング及び/又は該補給は連続的に、ほぼ連続的に、又は断続的に行われる、請求項1に記載の2ストロークエンジンにおける燃料の消費及び環境への影響を低減する方法。
【請求項10】
前記エンジン(300)から第1の所定量のシステム油(301)をタッピングし(202)、それにより、タッピングされたシステム油(203)を提供し、且つ、残存するシステム油(301)に第2の所定量のより新しいシステム油を補給する工程をさらに含み、該タッピング及び/又は該補給は連続的に、ほぼ連続的に、又は断続的に行われる、請求項1に記載の2ストロークエンジンにおける燃料の消費及び環境への影響を低減する方法。
【請求項11】
前記タッピングされたシステム油(203)の少なくとも1つの限界パラメータを決定し、シリンダ油(302)の少なくとも1つの所望のパラメータを決定し、それらの決定に従って、前記タッピングされたシステム油(203)を少なくとも1つのBN調整添加剤(401)とブレンドすることによって前記タッピングされたシステム油(203)を調整することで生成されたシリンダ油(302’)を得ることにより、前記タッピングされたシステム油(203)に基づいてシリンダ油を生成する工程(402)と、
前記生成されたシリンダ油(302’)を前記エンジン(300)のシリンダ又は該シリンダの一部に供給する工程と
をさらに含む、請求項9又は10に記載の2ストロークエンジンにおける燃料の消費及び環境への影響を低減する方法。
【請求項12】
前記システム油は、以下の:
長期間性能用の添加剤を含むか、又は長期間性能を与える添加剤処理比で配合された、従来のシステム油、及び
長期間性添加物を有さないか、又は長期間性能を与えない低減した添加剤処理比で配合された、消費性(consumable:消耗)システム油
から成る群から選択される、請求項1に記載の2ストロークエンジンにおける燃料の消費及び環境への影響を低減する方法。
【請求項13】
得られたシステム油(301、301’)の少なくとも一部に少なくとも1つの摩擦調整剤(101)を添加するブレンドユニット(102)であって、前記少なくとも1つの摩擦調整剤(101)の添加により、前記得られたシステム油(301、301’)の摩擦係数が減り、その結果、摩擦係数の低減したシステム油(301’’)が得られ、且つ、前記摩擦の低減したシステム油(301’’)を前記少なくとも1つのエンジン(300)に供給するブレンドユニット(102)を備える、2ストロークエンジンにおける燃料の消費を低減するシステム。
【請求項14】
前記少なくとも1つの摩擦調整剤(101)の少なくとも1つは、無灰系摩擦調整剤である、請求項13に記載の2ストロークエンジンにおける燃料の消費を低減するシステム。
【請求項15】
前記少なくとも1つの摩擦調整剤は以下の:
菜種、大豆、及び/又はヒマシ油等のトリグリセリド(動物及び/又は植物由来)、
脂肪族リン酸塩、
脂肪酸アミド、
脂肪族エポキシド、
ホウ酸脂肪族エポキシド、
脂肪アミン、
ポリオールエステル、
ホウ酸ポリオールエステルアルコキシル化脂肪アミン、
ホウ酸アルコキシル化脂肪アミン、
脂肪酸の金属塩、
硫化オレフィン、
脂肪族イミダゾリン、又は
それらの混合物
から成る群から選択される1つ又は複数をベースとする、請求項13に記載の2ストロークエンジンにおける燃料の消費を低減するシステム。
【請求項16】
前記システム(100)は、沖合いに、現場に、船上に、及び/又は陸上プラントに配置される、請求項13に記載の2ストロークエンジンにおける燃料の消費を低減するシステム。
【請求項17】
第1の所定量の前記得られたシステム油(301’)をタッピングし、それにより、タッピングされたシステム油(203)を供給し、且つ、残存する前記得られたシステム油(301’)に第2の所定量のより新しいシステム油(201)を補給するコントローラ(202)をさらに備え、前記タッピング及び/又は前記補給は連続的に、ほぼ連続的に、又は断続的に行われる、請求項13に記載の2ストロークエンジンにおける燃料の消費を低減するシステム。
【請求項18】
前記エンジン(300)から第1の所定量のシステム油(301)をタッピングし、それにより、タッピングされたシステム油(203)を供給し、且つ、残存するシステム油(301)に第2の所定量のより新しいシステム油(201)を補給するコントローラ(202)であって、前記タッピング及び/又は前記補給は連続的、ほぼ連続的、又は断続的に行われる、コントローラ(202)をさらに備える、請求項13に記載の2ストロークエンジンにおける燃料の消費を低減するシステム。
【請求項19】
前記タッピングされたシステム油(203)の少なくとも1つの限界パラメータを決定し、シリンダ油(302)の少なくとも1つの所望のパラメータを決定し、それらの決定に従って、前記タッピングされたシステム油(203)を少なくとも1つのBN調整添加剤(401)とブレンドすることによって前記タッピングされたシステム油(203)を調整することで生成されたシリンダ油(302’)を得ることにより、前記タッピングされたシステム油(203)に基づいてシリンダ油を生成するコントローラ(402)であって、且つ、前記生成されたシリンダ油(302’)を前記エンジン(300)のシリンダ又はシリンダの一部に供給するコントローラ(402)をさらに備える、請求項17又は18に記載の2ストロークエンジンにおける燃料の消費を低減するシステム。
【請求項20】
長期間性能用の添加剤を含むか、又は長期間性能を与える添加剤処理比で配合された、従来のシステム油、及び
長期期間性能添加剤を有さないか、又は長期間性能を与えない低減した添加剤処理比で配合された、消費性システム油
から成る群から選択される、請求項13に記載の2ストロークエンジンにおける燃料の消費を低減するシステム。
【請求項21】
エンジン(300)において使用する消費性システム油(301)をさらに含み、該エンジン(300)は、該エンジン(300)から第1の所定量のシステム油(301)をタッピングし、それにより、タッピングされたシステム油(203)を供給し、且つ、残存するシステム油(301)に第2の所定量のより新しいシステム油(201)を補給するコントローラ(202)と接続され、前記タッピング及び/又は前記補給は連続的に、ほぼ連続的に、又は断続的に行われる、請求項1に記載の2ストロークエンジンにおける燃料の消費及び環境への影響を低減する方法。
【請求項22】
前記消費性システム油は、低減した添加剤(複数可)処理比(複数可)で配合される、請求項21に記載の2ストロークエンジンにおける燃料の消費及び環境への影響を低減する方法。
【請求項23】
前記システム油は、長期性能よりもむしろ経済性の点に選択される添加剤/構成成分/及び/又は基油(複数可)を用いて配合される、請求項21に記載の2ストロークエンジンにおける燃料の消費及び環境への影響を低減する方法。
【請求項24】
エンジン(300)において使用する消費性システム油(301)をさらに含み、該エンジン(300)は、該エンジン(300)から第1の所定量のシステム油(301)をタッピングし、それにより、タッピングされたシステム油(203)を提供し、且つ、残存するシステム油(301)に第2の所定量のより新しいシステム油(201)を補給するコントローラ(202)と接続され、前記タッピング及び/又は前記補給は連続的に、ほぼ連続的に、又は断続的に行われる、請求項13に記載の2ストロークエンジンにおける燃料の消費を低減するシステム。
【請求項25】
前記消費性システム油は、低減した添加剤(複数可)処理比(複数可)で配合される、請求項24に記載の2ストロークエンジンにおける燃料の消費を低減するシステム。
【請求項26】
前記システム油は、長期性能よりむしろ経済性の点で選択される添加剤/成分及び/又は基油(複数可)を用いて配合される、請求項24に記載の2ストロークエンジンにおける燃料の消費を低減するシステム。

【図1】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate


【公表番号】特表2008−527055(P2008−527055A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548688(P2007−548688)
【出願日】平成16年12月30日(2004.12.30)
【国際出願番号】PCT/DK2004/000929
【国際公開番号】WO2006/069572
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(507094902)
【Fターム(参考)】