説明

2軸同期駆動制御装置およびこの装置を用いたサーボプレスおよびダイクッション装置

【課題】2軸駆動制御の同期性を向上する。
【解決手段】第1、第2のサーボ駆動制御系40,50を、信号X、Yを加減算してフィードバック信号Xf、Yfを生成可能かつ指令信号S1(“2S”)、S2(“0”)からフィードバック信号Xf、Yfを減算して前段偏差E1f、E2fを求め、さらに前段偏差E1fをサーボ駆動制御系50に同期調整入力可能でかつ前段偏差E2fをサーボ駆動制御系40に同期調整入力可能に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2軸駆動を同格として同期制御する装置とこの装置をスライド駆動制御装置に用いたサーボプレスおよびクッションパッド駆動制御装置に用いたダイクッション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
同期駆動制御装置としては、常時に2系列の情報を同期させかつ1系列(1)台を運転させておき、運転中の1台に異常が発生した場合に他の系列(2系列の1台)に切り換る情報同期1台運転方式と、常時に2系列(2軸)を同期運転させる2軸同期運転方式がある。
【0003】
前者の例としては、2つのFMC(飛行管理コンピュータ)を有しかつ情報の共通性・同期性を維持しつつ、異常が発生した一方(マスターFMC)から他方(スペアFMC)に切換え可能な装置(特許文献1)や、同一プログラム処理を同時に実行する2つのプロセッサと、これらの処理結果を比較照合するコンパレータと、不一致判断された場合に起動するインテリジェント機能を有するコンパレータ(第3のプロセッサ)と、第3のプロセッサの判定結果に基づいて一方の処理結果を選択するセレクタとを具備した多重系情報処理装置(特許文献2)が知られている。
【0004】
また、後者の例としては、マスター(一方のスライド駆動制御装置)にモーション情報を入力して駆動可能かつマスター側の制御偏差をスレーブ(他方のスライド駆動制御装置)側に入力して追従駆動可能に形成したマスター・スレーブ方式(特許文献3)や、同じモーション指令を両者に入力して両系統を等価的に駆動させるとともに偏差検出部で一方駆動軸(マスター)の位置検出量と他方駆動軸(スレーブ)の位置検出量を比較して偏差値Eを算出する。そして、位置補償部から出力される同期用補正値を一方駆動制御系(マスター)では減算しかつ他方駆動制御系(スレーブ)では減算する簡易同期方式(特許文献4)が知られている。
【0005】
ここに、後者を採用する産業機械も多い。例えば、2ポイント(2軸)駆動方式のサーボプレスやダイクッション装置の場合である。昇降駆動工程中において、スライドやクッションパット(板押え)を水平に維持できないと、金型破損やプレス製品の不良を発生させる原因を払拭するためである。過程射出成形機等においても同様である。
【特許文献1】特開平8−314506号公報
【特許文献2】特開昭58−221453号公報
【特許文献3】特開平10−277791号公報
【特許文献4】特開2003−191305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、後者に属する上記マスター・スレーブ方式では、マスターの駆動制御にスレーブの駆動制御を追従させるものであるから、大きな偏差が生じることを前提としていると言える。しかも、マスターはスレーブが追従しているか否かについては無関心(あるいは、追従するものと決め付けている。)である。両者間に追従困難な過大な偏差が生じた場合には、駆動制御を停止する手段を設ける場合が多い。
【0007】
上記簡易同期方式の場合には、同期駆動制御の観点から両者間に連携を持たせているので純粋的なマスター・スレーブ方式の場合に比較して、両者間の偏差(絶対量)を小さくすることができる。
【0008】
しかしながら、この方式においても両者間に明確な偏差が生じることを前提としつつ当該偏差を最小化するように働くものであるから、2軸の同期性にも限界がある。しかも、両駆動制御系の他に偏差検出部や位置補償部を付加させなければならない。経済的、制御安定的にも不利が残る。さらに、従来簡易同期方式では、同期駆動制御性能の一段の向上が難しいので、一層の高品質製品生産要求に応えられない。
【0009】
本発明の目的は、2軸駆動制御の同期性を飛躍的に向上できる2軸同期駆動制御装置とこの装置に用いたサーボプレスおよびクッション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明に係る2軸同期駆動制御装置は、第1のサーボ駆動制御系を、第1の指令信号と第1のフィードバック信号との差である第1の前段偏差を求める第1の前段偏差演算部と、第1の前段偏差と第2の前段偏差との和である第1の後段偏差を求める第1の後段偏差演算部と、第1の後段偏差を入力として第1のサーボモータを回転駆動制御する第1の駆動制御部と、第1のサーボモータの回転量に相当する第1の信号を生成する第1の信号生成部と、第1の信号と第2の信号との和である第1のフィードバック信号を生成出力する第1のフィードバック信号生成出力部とから形成し、第2のサーボ駆動制御系を、第2の指令信号と第2のフィードバック信号との差である第2の前段偏差を求める第2の前段偏差演算部と、第1の前段偏差と第2の前段偏差との差である第2の後段偏差を求める第2の後段偏差演算部と、第2の後段偏差を入力として第2のサーボモータを回転駆動制御する第2の駆動制御部と、第2のサーボモータの回転量に相当する第2の信号を生成する第2の信号生成部と、第1の信号と第2の信号との差である第2のフィードバック信号を生成出力する第2のフィードバック信号生成出力部から形成し、指令信号を“S”とした場合に第1の指令信号を“2S”として第1の前段偏差演算部に入力させかつ第2の指令信号を“0”として第2の前段偏差演算部に入力することで第1のサーボモータと第2のサーボモータとを同格としつつ同期駆動制御可能に形成されている。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に係る2軸同期駆動制御装置を備え、2つの駆動部位を有するスライドを水平に維持しつつ同期昇降駆動可能に形成されたサーボプレスである。
【0012】
また、請求項3の発明は、請求項1の2軸同期駆動制御装置を備え、2つの駆動部位を有するクッションパッドを水平に維持しつつ同期昇降駆動可能に形成されたダイクッション装置である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、2軸駆動制御の同期性を飛躍的に向上できる。
【0014】
請求項2の発明によれば、スライドを水平に保持しつつ昇降駆動できるので、金型破損等の発生原因を払拭しつつ、高品質なプレス製品を安定して生産できる。
【0015】
また、請求項3の発明によれば、クッションパッドを水平に保持しつつ同期昇降駆動できるので、しわ押え力を均一かつ一定に維持できる。よって、高品質なプレス製品の一層安定生産を促進できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
本2軸同期駆動制御装置は、図1に示す如く、第1のサーボ駆動制御系40と第2のサーボ駆動制御系50とを、第1、2の信号X、Yを加減算して第1、2のフィードバック信号Xf、Yfを生成可能かつ第1、2の指令信号S1、S2から第1、2のフィードバック信号Xf、Yfを減算して第1、第2の前段偏差E1f、E2fを求め、さらに第1の前段偏差E1fをサーボ駆動制御系50に同期調整入力可能でかつ第2の前段偏差E2fをサーボ駆動制御系40に同期調整入力可能に一体的に構築するとともに、指令信号を“S”とした場合に第1の指令信号を“2S”として第1の前段偏差演算部41に入力させかつ第2の指令信号を“0”として第2の前段偏差演算部51に入力することで第1のサーボモータ46と第2のサーボモータ56とを同格としつつ同期駆動制御可能に形成されている。
【0018】
詳しくは、第1軸用の第1のサーボ駆動制御系40は、前段偏差演算部41と第1の後段偏差演算部43と第1の駆動制御部(電力増幅器)45と第1の信号生成部47と第1のフィードバック信号生成出力部48とから形成されている。
【0019】
第1の前段偏差演算部41は、第1の指令信号S1と第1のフィードバック信号Xfとを比較演算して、その差(減算値)つまり第1の前段偏差E1f(=S1−Xf)を求める。
【0020】
第1の後段偏差演算部43は、サーボフィルタ42Aを通した第1の前段偏差E1fとサーボフィルタ52Bを通した第2の前段偏差E2fとの和(加算値)である第1の後段偏差Xp(=E1r=E1f+E2f)を求める。つまり、第2のサーボ駆動制御系50側との同期調整を行う。
【0021】
第1の駆動制御部45は、第1の後段偏差Xp(E1r)を入力として第1のサーボモータ46を回転駆動制御する。
【0022】
第1の信号生成部47は、第1のサーボモータ46の回転量に相当する第1の信号Xを生成する。エンコーダから形成されている。なお、図1中の第1のサーボモータ46に関する記載(20A,30A)および第1の信号生成部47に関する記載(23A,33A)は、第2,第3の実施の形態の説明便宜のために付記した。
【0023】
第1のフィードバック信号生成出力部48は、第1の信号Xと第2の信号Yとの和(加算値)である第1のフィードバック信号Xf(=X+Y)を生成出力する。先行的な同期調整策の一つである。
【0024】
第2軸用の第2のサーボ駆動制御系50は、第2の前段偏差演算部51と第2の後段偏差演算部53と第2の駆動制御部(電力増幅器)55と第2の信号生成部57と第2のフィードバック信号生成出力部58とから形成されている。
【0025】
第2の前段偏差演算部51は、第2の指令信号S2と第2のフィードバック信号Yfとを比較演算して、その差(減算値)つまり第2の前段偏差E2f(=S2−Yf)を求める。
【0026】
第2の後段偏差演算部53は、サーボフィルタ42Bを通した第1の前段偏差E1fとサーボフィルタ52Aを通した第2の前段偏差E2fとの差(減算値)である第2の後段偏差Yp(=E2r=E1f−E2f)を求める。第1の後段偏差演算部43が和(加算値)である場合とは異なる。つまり、第1のサーボ駆動制御系40側との同期調整を行う。
【0027】
第2の駆動制御部55は、第2の後段偏差Yp(E2r)を入力として第2のサーボモータ56を回転駆動制御する。
【0028】
第2の信号生成部57は、第2のサーボモータ56の回転量に相当する第2の信号Yを生成する。エンコーダから形成されている。なお、図1中の第2のサーボモータ56に関する記載(20B,30B)および第2の信号生成部57に関する記載(23B,33B)は、第2,第3の実施の形態の説明便宜のために付記した。
【0029】
第2のフィードバック信号生成出力部58は、第1の信号Xと第2の信号Yとの差(減算値)である第2のフィードバック信号Yf(=X−Y)を生成出力する。第1のフィードバック信号生成出力部48が和(加算値)である場合とは異なる。先行的な同期調整策の一つである。
【0030】
以上の構成において、指令信号を“S”とした場合に、第1の指令信号S1を“2×S=2S”として第1の前段偏差演算部41に入力させかつ第2の指令信号S2を“2×0=0”として第2の前段偏差演算部51に入力する。
【0031】
すると、Xp=(S1−Xf)+(S2−Yf)であるから、これを整理すると式1が成立する。
【0032】
Xp=(S1−2X+S2)…式1
また、Yp=(S1−Xf)−(S2−Yf)であるから、これを整理すると式2が成立する。
Yp=(S1−2Y−S2)…式2
【0033】
ここにおいて、第1サーボータ46のフィードバック量が多くなり、X=2、Y=1と仮定する。指令値はS1=2、S2=0である。各値を式1、式2に代入すると、
Xp=2−(2×2)+0=−2で、
Yp=2−(2×1)−0=0となる。
【0034】
これとは逆に、第2サーボータ56のフィードバック量が多くなり、X=1、Y=2と仮定すると、指令値はS1=2、S2=0であるから、
Xp=2−(2×1)+0=0
Yp=2−(2×2)−0=−2となる。
【0035】
すなわち、第2の後段偏差Xp,Ypは、互いに同期調整を行うための補完関係にあると、理解できる。
【0036】
かかる実施の形態では、設定指令部(図示省略)は、指令値がSの場合、第1のサーボ駆動制御系40には指令値S1(2S)を出力しかつ第2のサーボ駆動制御系50には指令値S2(S=0)を出力する。すると、両サーボ駆動制御系40,50は、互いのフィードバック量(X,Y)や偏差(E1f,E2f)等を補正項として取り入れかつリアルタイムの相互補完により同期調整しつつ一体的に駆動制御される。
【0037】
しかして、この実施の形態によれば、第1のサーボモータ46と第2のサーボモータ56とを同格扱いしつつ2軸を同期駆動制御できるから、マスター・スレーブ方式に比較して、同期性を大幅に向上させられる。
【0038】
(第2の実施の形態)
本サーボプレス1は、図2に示す如く、2つの駆動部位4A,4Bを有するスライド4を水平に維持しつつ昇降駆動させてプレス成形可能に形成されている。
【0039】
図2において、5は絞り成形用の金型で、上下に延びるガイド(図示省略)に案内されたスライド4に上型5Aが、静止側のベッド6に下型5Bが取付けられている。7は材料である。
【0040】
スライド駆動機構は、この実施の形態では、クランク機構(クランク軸2A)とされ、クランク軸2Aと駆動部位4Aとはコネクティングロッド3Aで連結されている。駆動部位4B側のクランク機構(クランク軸2B)およびコネクティングロッド3Bも同様な構造である。各クランク軸2A,2Bは、サーボモータ20A,20Bで回転駆動される。図2は、ピニオンを含む減速機(28A,28B)を介する場合を示す。
【0041】
すなわち、第1の駆動部位4Aを第1のサーボモータ20Aの回転駆動制御により昇降駆動可能でかつ第2の駆動部位4Bを第2のサーボモータ20Bの回転駆動制御により昇降駆動可能に形成された2軸駆動型である。
【0042】
なお、ダイクッション装置10は、ベッド6を貫通する複数のクッションピン12で支持された板押え11を上型5Aの下面に押し付けることで、両者間の材料7の周辺部にしわ押え力を付与する。
【0043】
ここに、スライド4の駆動制御装置は、第1の実施の形態に係る2軸同期駆動制御装置(図1)と同じ2軸同期駆動制御装置から形成されている。このため2軸同期駆動制御装置自体の説明は、省略する。
【0044】
図1,図2を参照して、第1の信号生成部は第1のサーボモータ20Aに連結されたモータ回転数を検出可能な第1のエンコーダ23Aから形成され、第2の信号生成部は第2のサーボモータ20Bに連結されたモータ回転数を検出可能な第2のエンコーダ23Bから形成されている。
【0045】
なお、第1、第2の信号生成部は、第1、第2の駆動部位4A、4Bに関与して当該部位の上下方向位置を検出可能な第1、第2の位置検出器から形成してもよい。例えば、説明便宜のために図2内に併記した第1、第2の駆動部位4A、4Bの上下方向位置を検出可能な第1、第2の位置検出器(リニアスケール25A、25B)から形成する。第1、第2の駆動部位4A、4Bに関与するとは、直接関与に限られず、間接関与でも差し支えない。図2は間接関与の場合を示す。
【0046】
かかる実施の形態では、スライド設定指令部(図示省略)に予め設定されたスライドモーション(経過時間またはクランク角度−スライド位置)に基づく、ある時点における位置指令信号(値)Sが例えば“250mm”である場合、第1の位置指令信号(値)S1を“500mm”として第1の前段偏差演算部41に入力させかつ第2の指令信号(値)S2を“0mm”として入力すれば、第1、第2のサーボ駆動制御系40、50は、両回転量の差を最小として第1、第2のサーボモータ20A、20Bを回転駆動制御する。
【0047】
しかして、この実施の形態によれば、第1の実施の形態の場合と同様に、第1のサーボモータ20Aと第2のサーボモータ20Bとを同格扱いしつつ2軸を同期駆動制御できるから、マスター・スレーブ方式に比較して、同期性を大幅に向上させられる。よって、スライド4を水平に維持しつつ同期昇降駆動できるから、金型破損等の発生原因を払拭しつつ、高品質なプレス製品を安定して生産できる。
【0048】
また、スライド4の一時停止、低速下降さらには昇降反転を円滑に行える。プレス成形態様に対する適応性を一段と拡大できる。
【0049】
(第3の実施の形態)
本ダイクッション装置10は、図3に示す2つの駆動部位13A,13Bを有するクッションパッド13を水平に維持しつつ昇降駆動させて板押え11にクッション圧を付加可能に形成されている。
【0050】
図3において、サーボプレス1は、サーボモータ20(エンコーダ23)でクランク軸2を回転駆動すれば、コネクティングロッド3を介してスライド4を昇降駆動することができる。金型5は、スライド4側の上型5Aとベッド6側の下型5Bとからなり、材料7から深絞り成形品を生産することができる。この際、材料7の周辺部には、板押え11からクッション圧(しわ押え力)が付加される。
【0051】
ダイクッション装置10は、板押え11と、ベッド6を貫通する複数のクッションピン12と、2つの駆動部位13A,13Bを有するクッションパッド13と、駆動機構部(ボールねじ14A・14B,ギヤボックス15A・15B)とを含み、クッションパッド13を水平に維持しつつ昇降駆動可能に形成されている。
【0052】
すなわち、第1の駆動部位13Aを第1のサーボモータ30Aの回転駆動制御により同期昇降駆動可能でかつ第2の駆動部位13Bを第2のサーボモータ30Bの回転駆動制御により同期昇降駆動可能に形成された2軸駆動型である。
【0053】
ここに、クッションパッド13の駆動制御装置は、第1の実施の形態に係る2軸同期駆動制御装置(図1)と同じ2軸同期駆動制御装置から形成されている。このため2軸同期駆動制御装置自体の説明は、省略する。
【0054】
図1,図3を参照して、第1の信号生成部は第1のサーボモータ30Aに連結されたモータ回転数を検出可能な第1のエンコーダ33Aから形成され、第2の信号生成部は第2のサーボモータ30Bに連結されたモータ回転数を検出可能な第2のエンコーダ33Bから形成されている。
【0055】
かかる実施の形態では、クッションパッド設定指令部(図示省略)に予め設定されたダイクッションモーション(経過時間−板押え位置)に基づく、ある時点における位置指令信号(値)Sが例えば“200mm”の場合、第1の位置指令信号(値)S1を“400mm”として第1の前段偏差演算部41に入力させかつ第2の指令信号(値)S2を“0mm”として入力すれば、第1、第2のサーボ駆動制御系40、50は、両回転量の差を最小として第1、第2のサーボモータ30A、30Bを回転駆動制御する。
【0056】
しかして、この実施の形態によれば、第1の実施形態の場合と同様に、第1のサーボモータ30Aと第2のサーボモータ30Bとを同格扱いしつつ2軸を同期駆動制御できるから、マスター・スレーブ方式に比較して、同期性を大幅に向上させられる。クッションパッド13を水平に保持しつつしわ押え力を均一かつ一定に維持できる。よって、高品質なプレス製品の一層安定生産を促進できる。
【0057】
また、材料7の周辺部へのクッション圧を均一かつ正確に保持できるから、絞り率の大きな深絞り成形を確実に行え、プレス成形態様に対する適応性を一段と拡大できる。
【0058】
(第4の実施の形態)
この実施の形態は、2軸同期駆動方式のダイクッション装置10を具備するサーボプレス1である。つまり、第2の実施の形態(図2)に示すサーボプレス1と第3の実施の形態(図3)に示すクッション装置10とを組合せたプレスシステムである。なお、サーボプレス1およびダイクッション装置10に関しては、先の実施の形態を参照するものとして、説明を省略する。
【0059】
このプレスシステムでは、同期駆動制御手段(図示省略)を設け、スライドモーションとダイクッションモーションとを同期運転可能に形成されている。すなわち、スライド4が板押え11に当接するまでは、両者4、11がソフトタッチできるように連関された位置速度をもって下降運動される。タッチ後は、位置速度制御から位置圧力制御に切換えられる。つまり、一定のしわ押さえ力を保持しつつプレス(深絞り)加工可能である。
【0060】
サーボプレス側のスライド設定指令部から出力される指令値Sp(Sp1、Sp2)と、ダイクッション側のクッションパッド設定指令部から出力される指令値Sd(Sd1、Sd2)とは、同期駆動制御手段において同期調整制御されてから第1、第2のサーボ駆動制御系40、50にそれぞれ入力される。上記した同期運転ができる。
【0061】
かかる実施の形態では、第1のサーボモータ20A(30A)と第2のサーボモータ20B(30B)とを同格扱いしつつ、各2軸を同期駆動制御することができるから、マスター・スレーブ方式に比較して、同期性を大幅に向上させられる。
【0062】
すなわち、スライド4およびクッションパッド13のそれぞれを水平に維持しつつ同期昇降駆動できるから、金型破損等の発生原因を払拭できることは当然として、材料7の周辺部へのクッション圧を一段と均一に維持できるので、さらなる高品質なプレス製品を安定して生産できるとともに、深絞り成形を一層確実にかつプレス成形態様に対する適応性を一段と拡大できる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、2軸を同期駆動運転するあらゆる産業機械(特に、サーボプレスやダイクッション装置)への利用性が高く、品質向上および生産性向上に大きく貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1の実施形態を説明するためのブロック図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係るサーボプレスを説明するための図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係るダイクション装置を説明するための図である。
【符号の説明】
【0065】
1 サーボプレス
4 スライド
5 金型
7 板材
10 ダイクッション装置
11 板押え
13 クッションパッド
20 サーボモータ
23 エンコーダ(信号生成部)
30 サーボモータ
33 エンコーダ(信号生成部)
40 第1のサーボ駆動制御系
41 第1の前段偏差演算部
43 第1の後段偏差演算部
45 第1の駆動制御部
46 第1のサーボモータ
47 第1の信号生成部
48 第1のフィードバック信号生成出力部
50 第2のサーボ駆動制御系
51 第2の前段偏差演算部
53 第2の後段偏差演算部
55 第2の駆動制御部
56 第2のサーボモータ
57 第2の信号生成部
58 第2のフィードバック信号生成出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のサーボ駆動制御系を、第1の指令信号と第1のフィードバック信号との差である第1の前段偏差を求める第1の前段偏差演算部と、第1の前段偏差と第2の前段偏差との和である第1の後段偏差を求める第1の後段偏差演算部と、第1の後段偏差を入力として第1のサーボモータを回転駆動制御する第1の駆動制御部と、第1のサーボモータの回転量に相当する第1の信号を生成する第1の信号生成部と、第1の信号と第2の信号との和である第1のフィードバック信号を生成出力する第1のフィードバック信号生成出力部とから形成し、
第2のサーボ駆動制御系を、第2の指令信号と第2のフィードバック信号との差である第2の前段偏差を求める第2の前段偏差演算部と、第1の前段偏差と第2の前段偏差との差である第2の後段偏差を求める第2の後段偏差演算部と、第2の後段偏差を入力として第2のサーボモータを回転駆動制御する第2の駆動制御部と、第2のサーボモータの回転量に相当する第2の信号を生成する第2の信号生成部と、第1の信号と第2の信号との差である第2のフィードバック信号を生成出力する第2のフィードバック信号生成出力部から形成し、
指令信号を“S”とした場合に第1の指令信号を“2S”として第1の前段偏差演算部に入力させかつ第2の指令信号を“0”として第2の前段偏差演算部に入力することで第1のサーボモータと第2のサーボモータとを同格としつつ同期駆動制御可能に形成されている、2軸同期駆動制御装置。
【請求項2】
2つの駆動部位を有するスライドを水平に維持しつつ昇降させてプレス成形するサーボプレスであって、
前記スライドの駆動制御装置を請求項1記載の2軸同期駆動制御装置から形成するとともに、第1の駆動部位を第1のサーボモータの回転駆動制御により昇降駆動可能かつ第2の駆動部位を第2のサーボモータの回転駆動制御により昇降駆動可能に形成し、
第1の信号生成部を第1のサーボモータに連結されたモータ回転数を検出可能な第1のエンコーダまたは第1の駆動部位に関与して当該部位の上下方向位置を検出可能な第1の位置検出器から形成し、かつ第2の信号生成部を第2のサーボモータに連結されたモータ回転数を検出可能な第2のエンコーダまたは第2の駆動部位に関与して当該部位の上下方向位置を検出可能な第2の位置検出器から形成し、
スライドを水平に維持しつつ同期昇降駆動可能に形成した、ことを特徴とするサーボプレス。
【請求項3】
2つの駆動部位を有するクッションパッドを水平に維持しつつ昇降可能かつ板押え用のクッション圧を付加可能なダイクッション装置であって、
前記クッションパッドの駆動制御装置を請求項1記載の2軸同期制御装置から形成するとともに、第1の駆動部位を第1のサーボモータの回転駆動制御により昇降駆動可能かつ第2の駆動部位を第2のサーボモータの回転駆動制御により昇降駆動可能に形成し、
第1の信号生成部を第1のサーボモータに連結されたモータ回転数を検出可能な第1のエンコーダから形成し、かつ第2の信号生成部を第2のサーボモータに連結されたモータ回転数を検出可能な第2のエンコーダから形成し、
クッションパッドを水平に維持しつつ同期昇降駆動可能に形成した、ことを特徴とするダイクッション装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−106948(P2009−106948A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278972(P2007−278972)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(000100861)アイダエンジニアリング株式会社 (153)
【Fターム(参考)】