説明

2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸化合物の製造方法

【課題】温和な条件下、高純度で2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸化合物を製造する方法を提供すること。
【解決手段】スルホン化剤を用いて、チオール化合物をスルホン化して、スルホン化物を得る工程と、酸化剤を用いて、該スルホン化物を酸化する工程とを有することを特徴とする、式(2)


で示される2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸化合物の製造方法。(式中、X1、X2はハロゲン原子を表す。M2は水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、第1級アンモニウムイオン、第2級アンモニウムイオン、第3級アンモニウムイオンまたは第4級アンモニウムイオンを表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子電解質は固体高分子型燃料電池に用いられている。固体高分子型燃料電池(以下、「燃料電池」と略記することがある。)は、水素と酸素との化学的反応により発電させる発電装置であり、次世代エネルギーの一つとして電気機器産業や自動車産業などの分野において大きく期待されている。
【0003】
燃料電池は、燃料極に、水素を供給する。その際に、電気化学的に酸化されて、プロトンと電子とを生成する。このプロトンは高分子電解質膜内を、酸素が供給される空気極側に移動する。一方、燃料極で生成した電子は電池に接続された負荷を通り、空気極に流れ、空気極において、酸素とプロトンと電子とが反応して水を生成する。そのため、高分子電解質は、プロトン伝導性に優れたものが切望されている。高分子電解質のプロトン伝導性を高めるためには、高分子電解質中のイオン交換基密度を高めればよいことが知られている。イオン交換基密度が高い高分子電解質としては、例えば、2個のスルホン酸基を有するフェニレン基からなる、ポリ(1,4−フェニレン−2,5−ジスルホン酸)が知られている。ポリ(1,4−フェニレン−2,5−ジスルホン酸)は、2,5−ジブロモベンゼン−1,4−ジスルホン酸ジリチウムを銅触媒存在下N,N−ジメチルホルムアミド中で重合させた後、酸処理することで得られる。原料となる2,5−ジブロモベンゼン−1,4−ジスルホン酸ジリチウムの製造方法としては、220〜230℃で発煙硫酸を用いて、1,4−ジブロモベンゼンをスルホン化した後、これを中和する方法が知られている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Junwon Kang、「A NEW CLASS OF POLYELECTROLYTE; POLY(p−PHENYLENE DISULFONIC ACIDS)」、(米国)、ケースウエスタンリザーブ大学高分子理工学部Ph.D学位論文、2008年1月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記2,5−ジブロモベンゼン−1,4−ジスルホン酸ジリチウムの製造方法における収率は、10〜38モル%で、同時に副生成物である2,5−ジブロモベンゼン−1,3−ジスルホン酸ジリチウムが、22〜56モル%得られた。従って、純度において、十分に満足のいくものではなかった。また、ポリ(1,4−フェニレン−2,5−ジスルホン酸)を得るためには、高純度の2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸化合物が必要であり、2,5−ジブロモベンゼン−1,3−ジスルホン酸ジリチウムなどの不純物が存在すると、立体障害のため、重合反応が阻害される問題点があった。従って、上記の製造方法で得られた生成物はソックスレー抽出などにより、長時間精製する工程が必要であり、多大な労力が必要であった。また、上記の製造方法では、スルホン化の際、220〜230℃で発煙硫酸を用いるなど、非常に過酷な条件を適用しているため、工業的に利用することが困難であった。従って、温和な条件下、高純度で2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸化合物を製造する方法が求められていた。
【0006】
このような状況下、本発明の目的は、温和な条件下、高純度で2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸化合物を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の事情に鑑み、2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸化合物を製造する方法について、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は[1]を提供するものである。
【0008】
[1]スルホン化剤を用いて、式(1)

(式中、X1およびX2はそれぞれハロゲン原子を表す。M1は水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、第1級アンモニウムイオン、第2級アンモニウムイオン、第3級アンモニウムイオンまたは第4級アンモニウムイオンを表す。但し、M1がアルカリ土類金属イオンである場合、M1はさらに他のアニオンと結合している。)
で示される化合物をスルホン化して、スルホン化物を得る工程と、酸化剤を用いて、該スルホン化物を酸化する工程とを有することを特徴とする、式(2)

(式中、X1およびX2は前記式(1)中のものと同じである。M2は水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、第1級アンモニウムイオン、第2級アンモニウムイオン、第3級アンモニウムイオンまたは第4級アンモニウムイオンを表す。但し、2つあるM2はそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい。また、M2がアルカリ土類金属イオンである場合、M2はさらに他のアニオンと結合している。)
で示される2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸化合物の製造方法。
【0009】
また、本発明は2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸誘導体の製造方法として、[2]を提供するものである。この2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸誘導体も、例えば、ポリ(1,4−フェニレン−2,5−ジスルホン酸)の原料として用いることができる。
【0010】
[2]スルホン化剤を用いて、式(1)

(式中、X1およびX2はそれぞれハロゲン原子を表す。M1は水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、第1級アンモニウムイオン、第2級アンモニウムイオン、第3級アンモニウムイオンまたは第4級アンモニウムイオンを表す。但し、M1がアルカリ土類金属イオンである場合、M1はさらに他のアニオンと結合している。)
で示される化合物をスルホン化して、スルホン化物を得る工程と、酸化剤を用いて、該スルホン化物を酸化して、式(2)

(式中、X1およびX2は前記式(1)中のものと同じである。M2は水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、第1級アンモニウムイオン、第2級アンモニウムイオン、第3級アンモニウムイオンまたは第4級アンモニウムイオンを表す。但し、2つあるM2はそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい。また、M2がアルカリ土類金属イオンである場合、M2はさらに他のアニオンと結合している。)
で示される2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸化合物を得る工程と、ハロゲン化剤を用いて、該2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸化合物をハロゲン化して、式(4)



(式中、X1およびX2は前記式(1)中のものと同じである。XおよびXはそれぞれハロゲン原子を表す。)
で示されるハロゲン化物を得る工程と、エステル化剤またはアミド化剤を用いて、該ハロゲン化物をエステル化またはアミド化する工程とを有することを特徴とする、式(5)


(式中、X1およびX2は前記式(1)中のものと同じである。A1およびA2はそれぞれ独立に、下記式(6)または(7)



(式中、R、RおよびRはそれぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表す。)で示される基を表す。)
で示される2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸誘導体の製造方法。
【0011】
さらに、本発明は、前記[2]に係る好適な実施態様として、下記の[3]および[4]を提供するものである。
[3]前記ハロゲン化剤が、塩化チオニルである[2]に記載の製造方法。
[4]前記エステル化剤が、下記式(8)または(9)で表される化合物であり、前記アミド化剤が、下記式(10)または(11)で表される化合物である[2]または[3]に記載の製造方法。

(式中、R4〜R12はそれぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表す。M3およびM5はそれぞれ独立に、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、第1級アンモニウムイオン、第2級アンモニウムイオン、第3級アンモニウムイオンまたは第4級アンモニウムイオンを表す。M4およびM6はそれぞれ独立に、アルカリ土類金属イオンを表す。)
【0012】
また、本発明は、前記[1]〜[4]のいずれかに係る好適な実施態様として、下記の[5]〜[13]を提供するものである。
[5]前記スルホン化剤が、発煙硫酸、濃硫酸およびクロロ硫酸からなる群から選ばれる少なくとも1種のスルホン化剤である[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]前記スルホン化剤が、発煙硫酸である[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[7]前記スルホン化物を得る工程を、0℃以上100℃以下の温度で実施する請求項6に記載の製造方法。
[8]前記スルホン化剤が、濃硫酸である[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[9]前記スルホン化物を得る工程を、120℃以上180℃以下の温度で実施する[8]に記載の製造方法。
[10]前記スルホン化物を得る工程を有機溶媒存在下で実施する[1]〜[9]のいずれかに記載の製造方法。
[11]前記有機溶媒が、ハロゲン化アルカンを含む[10]に記載の製造方法。
[12]前記酸化剤が過マンガン酸カリウムである[1]〜[11]のいずれかに記載の製造方法。
[13]前記スルホン化物を酸化する工程を水および/または有機溶媒存在下で実施する[1]〜[12]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、温和な条件下、高純度で2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸化合物を製造することができるため、工業的に極めて有用である。また、2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸化合物は、イオン交換基密度が高い高分子電解質の原料となるため、プロトン伝導性に優れた高分子電解質を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
前述のように、本発明の2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸化合物の製造方法は、スルホン化剤を用いて、式(1)で示される化合物をスルホン化して、スルホン化物を得る工程と、酸化剤を用いて、該スルホン化物を酸化する工程とを有することを特徴とするものである。
【0016】
従って、以下に本発明で用いられる原料となる式(1)で示される化合物、スルホン化剤、スルホン化物を得る工程、酸化剤、酸化する工程、本発明で得られる式(2)で示される化合物について順次説明する。
【0017】
本発明で用いられる原料は、式(1)



(式中、X1およびX2はそれぞれハロゲン原子を表す。M1は水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、第1級アンモニウムイオン、第2級アンモニウムイオン、第3級アンモニウムイオンまたは第4級アンモニウムイオンを表す。但し、M1がアルカリ土類金属イオンである場合、M1はさらに他のアニオンと結合している。)
で示される化合物である。
【0018】
上記X1、X2はハロゲン原子を表し、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子があげられる。M1は水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、第1級アンモニウムイオン、第2級アンモニウムイオン、第3級アンモニウムイオンまたは第4級アンモニウムイオンを表す。これらの中でも、好ましくは、水素イオン、アルカリ金属イオンである。アルカリ金属イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどがあげられる。アルカリ土類金属イオンとしては、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオンなどがあげられる。第1級アンモニウムイオンとしては、メチルアミン、エチルアミン、1−プロピルアミン、2−プロピルアミン、n−ブチルアミン、2−ブチルアミン、1−ペンチルアミン、2−ペンチルアミン、3−ペンチルアミン、ネオペンチルアミン、シクロペンチルアミン、1−ヘキシルアミン、2−ヘキシルアミン、3−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミンがプロトン化されたイオンなどがあげられる。第2級アンモニウムイオンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−1−プロピルアミン、ジ−2−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−2−ブチルアミン、ジ−1−ペンチルアミン、ジ−2−ペンチルアミン、ジ−3−ペンチルアミン、ジネオペンチルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジ−1−ヘキシルアミン、ジ−2−ヘキシルアミン、ジ−3−ヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミンがプロトン化されたイオンなどがあげられる。第3級アンモニウムイオンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−1−プロピルアミン、トリ−2−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−2−ブチルアミン、トリ−1−ペンチルアミン、トリ−2−ペンチルアミン、トリ−3−ペンチルアミン、トリネオペンチルアミン、トリシクロペンチルアミン、トリ−1−ヘキシルアミン、トリ−2−ヘキシルアミン、トリ−3−ヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミンがプロトン化されたイオンなどがあげられる。第4級アンモニウムイオンとしては、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラ(1−プロピル)アンモニウムイオン、テトラ(2−プロピル)アンモニウムイオン、テトラ(1−ブチル)アンモニウムイオン、テトラ(2−ブチル)アンモニウムイオン、テトラ(1−ペンチル)アンモニウムイオン、テトラ(2−ペンチルアミン)アンモニウムイオン、テトラ(3−ペンチル)アンモニウムイオン、テトラ(ネオペンチル)アンモニウムイオン、テトラ(1−シクロペンチル)アンモニウムイオン、テトラ(1−ヘキシル)アンモニウムイオン、テトラ(2−ヘキシル)アンモニウムイオン、テトラ(3−ヘキシルアミン)アンモニウムイオン、テトラ(シクロヘキシル)アンモニウムイオンなどがあげられる。但し、M1がアルカリ土類金属イオンである場合、M1はさらに他のアニオンと結合する。他のアニオンとしては、1価のアニオン、2価のアニオンがあげられ、1価のアニオンとしては、アルキルスルホン酸アニオン、アリールスルホン酸アニオン、アルキル硫酸アニオン、アリール硫酸アニオン、アルキルカルボン酸アニオン、アリールカルボン酸アニオン、クロロアニオン、ブロモアニオン、ヨードアニオン、水酸化物イオンなどがあげられ、2価のアニオンとしては、硫酸アニオン、シュウ酸アニオン、炭酸アニオンなどがあげられる。これらの中でも、他のアニオンとして好ましくはアリールスルホン酸アニオンである。
【0019】
上記式(1)で示される化合物としては、2,5−ジフルオロベンゼンチオール、2,5−ジクロロベンゼンチオール、2,5−ジブロモベンゼンチオール、2,5−ジヨードベンゼンチオール、2−クロロ−5−フルオロベンゼンチオール、2−ブロモ−5−フルオロベンゼンチオール、2−フルオロ−5−ヨードベンゼンチオール、2−ブロモ−5−クロロベンゼンチオール、2−クロロ−5−ヨードベンゼンチオールなどがあげられる。これらの化合物が有するチオール基の水素イオンを、上述のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、第1級アンモニウムイオン、第2級アンモニウムイオン、第3級アンモニウムイオンまたは第4級アンモニウムイオンに置換してもよい。但し、アルカリ土類金属イオンと置換する場合、該アルカリ土類金属イオンはさらに上記の他のアニオンと結合する。これらの化合物の中でも、好ましくは、市場からの入手容易性の観点から、2,5−ジクロロベンゼンチオールである。これらの化合物は、市販のものを用いても、公知の方法(日本化学会編、「実験化学講座 24 有機合成 IV ヘテロ元素・典型金属元素化合物」、第4版、丸善、1992年9月、p320−325参照)で合成してもよい。
【0020】
本発明で用いられるスルホン化剤としては、濃硫酸、発煙硫酸、クロロ硫酸などがあげられる。好ましくは、濃硫酸、発煙硫酸であり、より好ましくは、温和な条件下で反応できる観点から、発煙硫酸である。
【0021】
本発明のスルホン化物を得る工程としては、式(1)で示される化合物にスルホン化剤を作用させればよく、特にその方法は問わないが、スルホン化剤を式(1)で示される化合物に接触させることが好ましい。接触方法としては、スルホン化剤自体を溶媒とし、該溶媒中に式(1)で示される化合物を添加して接触させてもよいし、有機溶媒中にスルホン化剤を加えて、さらに式(1)で示される化合物を添加して接触させてもよいし、有機溶媒中に式(1)で示される化合物を加えて、さらにスルホン化剤を添加して接触させてもよい。好ましくは、有機溶媒中に式(1)で示される化合物を加えて、さらにスルホン化剤を添加して接触させる方法であり、該有機溶媒としては、特に制限はないが、ハロゲン化アルカンが好ましい。ハロゲン化アルカンとしては、常温で液体であるものが操作性の点から好ましく、スルホン化を実施する温度より沸点が高いものが好ましく使用される。該ハロゲン化アルカンとしては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタンなどがあげられ、1種類で用いても、2種類以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、式(1)で示される化合物及びスルホン化剤の溶解性を確保しやすく、また、除去しやすい観点から、好ましくはクロロホルムである。スルホン化剤として、濃硫酸を用いる場合は、120℃以上180℃以下でスルホン化物を得る工程を実施することが好ましい。スルホン化剤として、発煙硫酸を用いる場合は、0℃以上100℃以下でスルホン化物を得る工程を実施することが好ましい。かかる温度は、式(1)で示される化合物にスルホン化剤を添加したのちに、スルホン化反応を進行せしめるために保温する温度を意味する。
【0022】
上記スルホン化物は、上記スルホン化物を得る工程を経て得られたものであり、本発明者等は、下記式(3)で示される化合物が含まれると推定している。しかしながら、必ずしもこれに限定されるものではない。

(X1およびX2は式(1)中のものと同じである。M3は、水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、第1級アンモニウムイオン、第2級アンモニウムイオン、第3級アンモニウムイオンまたは第4級アンモニウムイオンを表す。但し、2つあるM3はそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい。また、M3がアルカリ土類金属イオンである場合、M3はさらに他のアニオンと結合している。)
【0023】
上記アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、第1級アンモニウムイオン、第2級アンモニウムイオン、第3級アンモニウムイオンまたは第4級アンモニウムイオンとしては、上述のものがあげられる。M3として、好ましくは、水素イオン、アルカリ金属イオンである。また、上記他のアニオンとしては、上述のものがあげられる。
【0024】
本発明で用いられる酸化剤としては、例えば、過マンガン酸カリウム、希硝酸、酸素、過塩素酸ナトリウム、Jones試薬、過酢酸、m−クロロ安息香酸、トリフルオロ過酢酸、過酸化水素などがあげられ、好ましくは、市場での入手し易さ、酸化力の強さ、取り扱い易さの観点から、過マンガン酸カリウムである。
【0025】
本発明の酸化する工程としては、上述のスルホン化物に酸化剤を作用させればよく、特にその方法は問わないが、酸化剤を上述のスルホン化物に接触させることが好ましい。接触方法としては、酸化剤自体を溶媒とし、該溶媒中に上述のスルホン化物を添加して接触させてもよいし、水および/または有機溶媒中に酸化剤を加えて、さらに上述のスルホン化物を添加して接触させてもよい。好ましくは、後者であり、該有機溶媒としては、酸化剤により酸化されてしまうことがなければ特に制限はない。特に、酸化剤として過マンガン酸カリウムを用いる場合には、過マンガン酸カリウムの溶解性を確保しやすいため、水、有機溶媒としてアセトンなどを好ましく用いることができる。これらは単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。
【0026】
本発明で得られる2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸化合物は、式(2)

(式中、X1およびX2は前記式(1)中のものと同じである。M2は水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、第1級アンモニウムイオン、第2級アンモニウムイオン、第3級アンモニウムイオンまたは第4級アンモニウムイオンを表す。但し、2つあるM2はそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい。また、M2がアルカリ土類金属イオンである場合、M2はさらに他のアニオンと結合している。)
で示される。
【0027】
上記アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、第1級アンモニウムイオン、第2級アンモニウムイオン、第3級アンモニウムイオンまたは第4級アンモニウムイオンとしては、上述のものがあげられる。
【0028】
2として、好ましくは、水素イオン、アルカリ金属イオンである。また、上記他のアニオンとしては、上述のものがあげられる。M2の種類は、スルホン化物を得る工程または酸化する工程の後、アルカリ金属の化合物、アルカリ土類金属の化合物、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アンモニウム化合物などの適当な塩基を用いて中和処理を行うことで変更できる。アルカリ金属の化合物としては、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ金属の炭酸水素塩などがあげられる。アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムなどがあげられ、アルカリ金属の炭酸塩としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウムなどがあげられ、アルカリ金属の炭酸水素塩としては、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、炭酸水素セシウムなどがあげられる。アルカリ土類金属の化合物としては、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属の炭酸塩などがあげられる。アルカリ土類金属の水酸化物としては、水酸化ルビジウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどがあげられ、アルカリ土類金属の炭酸塩としては、炭酸ルビジウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウムなどがあげられる。第1級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、1−プロピルアミン、2−プロピルアミン、n−ブチルアミン、2−ブチルアミン、1−ペンチルアミン、2−ペンチルアミン、3−ペンチルアミン、ネオペンチルアミン、シクロペンチルアミン、1−ヘキシルアミン、2−ヘキシルアミン、3−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミンなどがあげられる。第2級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−1−プロピルアミン、ジ−2−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−2−ブチルアミン、ジ−1−ペンチルアミン、ジ−2−ペンチルアミン、ジ−3−ペンチルアミン、ジネオペンチルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジ−1−ヘキシルアミン、ジ−2−ヘキシルアミン、ジ−3−ヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどがあげられる。第3級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−1−プロピルアミン、トリ−2−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−2−ブチルアミン、トリ−1−ペンチルアミン、トリ−2−ペンチルアミン、トリ−3−ペンチルアミン、トリネオペンチルアミン、トリシクロペンチルアミン、トリ−1−ヘキシルアミン、トリ−2−ヘキシルアミン、トリ−3−ヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミンなどがあげられる。第4級アンモニウム化合物としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ(トリ−1−プロピル)アンモニウムヒドロキシド、テトラ(トリ−2−プロピル)アンモニウムヒドロキシド、テトラ(トリ−n−ブチル)アンモニウムヒドロキシド、テトラ(トリ−2−ブチル)アンモニウムヒドロキシド、テトラ(トリ−1−ペンチル)アンモニウムヒドロキシド、テトラ(トリ−2−ペンチルアミン)アンモニウムヒドロキシド、テトラ(トリ−3−ペンチル)アンモニウムヒドロキシド、テトラ(トリネオペンチル)アンモニウムヒドロキシド、テトラ(トリ−シクロペンチル)アンモニウムヒドロキシド、テトラ(トリ−1−ヘキシル−シクロペンチル)アンモニウムヒドロキシド、テトラ(トリ−2−ヘキシル)アンモニウムヒドロキシド、テトラ(トリ−3−ヘキシルアミン)アンモニウムヒドロキシド、テトラ(トリシクロヘキシル)アンモニウムヒドロキシドなどがあげられる。これらの中でも塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩、メチルアミン、エチルアミンなどの第1級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミンなどの第2級アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどなどの第3級アミンが、入手容易性の観点から好ましく用いられる。またM2の種類により2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸化合物の溶媒溶解性や化学反応性を好ましく制御することが可能である。該中和処理は、スルホン化物を得る工程と酸化する工程との間に行うことが好ましい。
【0029】
上記酸化する工程の後、過剰量の第1級アルコール及び/又は第2級アルコールを用いて残存している酸化剤を還元することが好ましい。第1級アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノールなどが例としてあげられる。第2級アルコールとしては、イソプロパノール、2−ブタノール、2−ヘキサノール、シクロヘキサノールなどが例としてあげられる。これらの中ではメタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノールなどが、常温で液体であることから、好ましく用いられる。
【0030】
また、上記中和処理の後、好ましくは上記中和処理の後、且つ、上記酸化する処理の後、上記中和処理で生じる塩を除去する観点から、2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸化合物の良溶媒を用いて洗浄することが好ましい。良溶媒としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(以下、DMSOと略記することがある)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性極性溶媒があげられる。これらは単独に用いても混合して用いてもよい。これらの中でも、メタノール、エタノールを用いると、上述の酸化剤を還元する操作が同時に行えるため好ましい。良溶媒を用いた洗浄の後、濾過して、減圧蒸留などにより濾液から溶媒を除去することが好ましい。その後、2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸化合物の貧溶媒で洗浄することが好ましく、貧溶媒としてはアセトンおよび/またはTHFであることが好ましい。
【0031】
次に、本発明の2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸誘導体の製造方法について説明する。上記のようにして得られた2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸化合物を用いて、該2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸化合物が有する−SO3-2で示される基をハロゲン化して、式(4)で示されるハロゲン化物を得る工程と、該ハロゲン化物が有する−SO23で示される基と−SO24で示される基とをエステル化またはアミド化する工程とを有することを特徴とするものである。
【0032】
以下に、ハロゲン化剤、ハロゲン化物を得る工程、中間体である式(4)、エステル化剤、アミド化剤、エステル化する工程、アミド化する工程、本発明で得られる式(5)で示される化合物について説明する。
【0033】
ハロゲン化剤としては、塩化チオニル、臭化チオニル、オキシ塩化リン、オキシ臭化リンなどの公知のハロゲン化剤を用いることができる。これらの中でも、沸点が低く除去しやすい点から、塩化チオニルを用いることが好ましい。
【0034】
本発明のハロゲン化する工程としては、2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸化合物にハロゲン化剤を作用させればよく、特にその方法は問わないが、ハロゲン化剤を2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸化合物に接触させることが好ましい。接触方法としては、ハロゲン化剤自体を溶媒とし、該溶媒中に2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸化合物を添加して接触させてもよいし、有機溶媒中にハロゲン化剤を加えて、さらに2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸化合物を添加して接触させてもよい。好ましくは、前者である。該有機溶媒としては、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミドなどが好ましく用いられる。
【0035】
ハロゲン化剤を含めた有機溶媒の量としては、2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸化合物の溶解性を確保できる限りにおいて特に制限はないが、上記2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸化合物に対して、1〜50重量倍用いることが好ましく、5〜40重量倍用いることがより好ましい。
【0036】
ハロゲン化剤を添加する際の温度としては、0〜60℃が好ましく、5〜50℃がより好ましく、10〜40℃がさらに好ましい。十分な反応性を確保する点からは、ハロゲン化剤は過剰量用いることが好ましい。上記2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸化合物に対して、1〜50重量倍以上用いることが好ましく、5〜40重量倍以上用いることがより好ましく、10〜30重量倍以上用いることがさらに好ましい。
【0037】
本発明のハロゲン化する工程における反応温度は20℃以上90℃以下であることが好ましく、30℃以上80℃以下であることがより好ましい。反応後は過剰量の炭酸水素ナトリウム水溶液などの弱アルカリ性溶液で処理することにより、残存したハロゲン化剤を除去することができる。弱アルカリ性溶液で処理した後、水に混和しない有機溶媒で抽出し、溶媒留去することが好ましい。
【0038】
本発明で得られる中間体であるハロゲン化物は、式(4)


(式中、X1およびX2は前記式(1)中のものと同じである。XおよびXはそれぞれハロゲン原子を表す。)
で示される。
【0039】
およびXが表すハロゲン原子としては、上述のものがあげられる。
【0040】
本発明で用いられるエステル化剤としては、下記式(8)または(9)で表される化合物があげられる。また、本発明で用いられるアミド化剤としては、下記式(10)または(11)で表される化合物があげられる。


(式中、R4〜R12はそれぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表す。M3およびM5はそれぞれ独立に、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、第1級アンモニウムイオン、第2級アンモニウムイオン、第3級アンモニウムイオンまたは第4級アンモニウムイオンを表す。M4およびM6はそれぞれ独立に、アルカリ土類金属イオンを表す。)
【0041】
炭素数1〜20のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基等があげられる。
【0042】
炭素数3〜20のシクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、2−メチルシクロヘキシル基、3−メチルシクロヘキシル基等があげられる。
【0043】
炭素数6〜20のアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、アントラセニル基等があげられる。
【0044】
上記アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、第1級アンモニウムイオン、第2級アンモニウムイオン、第3級アンモニウムイオンおよび第4級アンモニウムイオンとしては、上述のものがあげられる。
【0045】
上記式(8)で表される化合物の具体例としては、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウム−1−プロポキシド、リチウム−2−プロポキシド、リチウム−1−ブトキシド、リチウム−2−ブトキシド、リチウム−1−ペントキシド、リチウム−2−ペントキシド、リチウム−3−ペントキシド、リチウムネオペントキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウム−1−プロポキシド、ナトリウム−2−プロポキシド、ナトリウム−1−ブトキシド、ナトリウム−2−ブトキシド、ナトリウム−1−ペントキシド、ナトリウム−2−ペントキシド、ナトリウム−3−ペントキシド、ナトリウムネオペントキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウム−1−プロポキシド、カリウム−2−プロポキシド、カリウム−1−ブトキシド、カリウム−2−ブトキシド、カリウム−1−ペントキシド、カリウム−2−ペントキシド、カリウム−3−ペントキシド、カリウムネオペントキシド、セシウムメトキシド、セシウムエトキシド、セシウム−1−プロポキシド、セシウム−2−プロポキシド、セシウム−1−ブトキシド、セシウム−2−ブトキシド、セシウム−1−ペントキシド、セシウム−2−ペントキシド、セシウム−3−ペントキシド、セシウムネオペントキシドなどがあげられる。
上記式(9)で表される化合物の具体例としては、カルシウムジメトキシド、カルシウムジエトキシド、カルシウムジ−1−プロポキシド、カルシウムジ−2−プロポキシド、カルシウムジ−1−ブトキシド、カルシウムジ−2−ブトキシド、カルシウムジ−1−ペントキシド、カルシウムジ−2−ペントキシド、カルシウムジ−3−ペントキシド、カルシウムジネオペントキシド、マグネシウムジメトキシド、マグネシウムジエトキシド、マグネシウムジ−1−プロポキシド、マグネシウムジ−2−プロポキシド、マグネシウムジ−1−ブトキシド、マグネシウムジ−2−ブトキシド、マグネシウムジ−1−ペントキシド、マグネシウムジ−2−ペントキシド、マグネシウムジ−3−ペントキシド、マグネシウムジネオペントキシド、バリウムジメトキシド、バリウムジエトキシド、バリウムジ−1−プロポキシド、バリウムジ−2−プロポキシド、バリウムジ−1−ブトキシド、バリウムジ−2−ブトキシド、バリウムジ−1−ペントキシド、バリウムジ−2−ペントキシド、バリウムジ−3−ペントキシド、バリウムジネオペントキシドなどがあげられる。
上記式(10)で表される化合物の具体例としては、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジ−1−プロピルアミド、リチウムジ−2−プロピルアミド、リチウムジ−1−ブチルアミド、リチウムジ−2−ブチルアミド、リチウムジ−1−ペンチルアミド、リチウムジ−2−ペンチルアミド、リチウムジ−3−ペンチルアミド、リチウムジネオペンチルアミド、ナトリウムジメチルアミド、ナトリウムジエチルアミド、ナトリウムジ−1−プロピルアミド、ナトリウムジ−2−プロピルアミド、ナトリウムジ−1−ブチルアミド、ナトリウムジ−2−ブチルアミド、ナトリウムジ−1−ペンチルアミド、ナトリウムジ−2−ペンチルアミド、ナトリウムジ−3−ペンチルアミド、ナトリウムジネオペンチルアミド、カリウムジメチルアミド、カリウムジエチルアミド、カリウムジ−1−プロピルアミド、カリウムジ−2−プロピルアミド、カリウムジ−1−ブチルアミド、カリウムジ−2−ブチルアミド、カリウムジ−1−ペンチルアミド、カリウムジ−2−ペンチルアミド、カリウムジ−3−ペンチルアミド、カリウムジネオペンチルアミド、セシウムジメチルアミド、セシウムジエチルアミド、セシウムジ−1−プロピルアミド、セシウムジ−2−プロピルアミド、セシウムジ−1−ブチルアミド、セシウムジ−2−ブチルアミド、セシウムジ−1−ペンチルアミド、セシウムジ−2−ペンチルアミド、セシウムジ−3−ペンチルアミド、セシウムジネオペンチルアミドなどがあげられる。
上記式(11)で表される化合物の具体例としては、カルシウムジ(ジメチルアミド)、カルシウムジ(ジエチルアミド)、カルシウムジ(ジ−1−プロピルアミド)、カルシウムジ(ジ−2−プロピルアミド)、カルシウムジ(ジ−1−ブチルアミド)、カルシウムジ(ジ−2−ブチルアミド)、カルシウムジ(ジ−1−ペンチルアミド)、カルシウムジ(ジ−2−ペンチルアミド)、カルシウムジ(ジ−3−ペンチルアミド)、カルシウムジ(ジネオペンチルアミド)、マグネシウムジ(ジメチルアミド)、マグネシウムジ(ジエチルアミド)、マグネシウムジ(ジ−1−プロピルアミド)、マグネシウムジ(ジ−2−プロピルアミド)、マグネシウムジ(ジ−1−ブチルアミド)、マグネシウムジ(ジ−2−ブチルアミド)、マグネシウムジ(ジ−1−ペンチルアミド)、マグネシウムジ(ジ−2−ペンチルアミド)、マグネシウムジ(ジ−3−ペンチルアミド)、マグネシウムジ(ジネオペンチルアミド)、バリウムジ(ジメチルアミド)、バリウムジ(ジエチルアミド)、バリウムジ(ジ−1−プロピルアミド)、バリウムジ(ジ−2−プロピルアミド)、バリウムジ(ジ−1−ブチルアミド)、バリウムジ(ジ−2−ブチルアミド)、バリウムジ(ジ−1−ペンチルアミド)、バリウムジ(ジ−2−ペンチルアミド)、バリウムジ(ジ−3−ペンチルアミド)、バリウムジ(ジネオペンチルアミド)などがあげられる。
【0046】
上記式(8)で表される化合物は、下記式(12)で表される化合物に等モル以上の塩基を添加することで、得ることができる。また、上記式(10)で表される化合物は、下記式(13)で表される化合物に等モル以上の塩基を添加することで、得ることができる。

(式中、R13〜R15はそれぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表す。)
【0047】
上記炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基および炭素数6〜20のアリール基としては、上述のものがあげられる。
【0048】
上記式(12)で表される化合物の具体例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、ネオペンチルアルコールなどがあげられる。
【0049】
上記式(13)で表される化合物の具体例としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−1−プロピルアミン、ジ−2−プロピルアミン、ジ−1−ブチルアミン、ジ−2−ブチルアミン、ジ−1−ペンチルアミン、ジ−2−ペンチルアミン、ジ−3−ペンチルアミン、ジネオペンチルアミンなどがあげられる。
【0050】
上記塩基としては、3級アミン、アルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属水素化物などがあげられる。
【0051】
上記3級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリプロピルアミン、n−ブチルアミン、2−ブチルアミンなどがあげられる。入手性、取り扱いやすさの点からはトリエチルアミンが好ましい。
【0052】
上記アルカリ金属水素化物としては、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化セシウムがあげられる。水素化ナトリウムが取り扱いやすさの点から好ましい。
【0053】
上記アルカリ土類金属水素化物としては、水素化マグネシウム、水素化カルシウムなどがあげられる。水素化カルシウムが取り扱いやすさの点から好ましい。
【0054】
本発明のエステル化する工程としては、上記ハロゲン化物に上記式(8)および/または式(9)で表されるエステル化剤を作用させればよく、特にその方法は問わないが、エステル化剤をハロゲン化物に接触させることが好ましい。接触させる方法としては、−SO23で表される基および/または−SO24で表される基の分解を避ける点から、下記式(12)で表されるアルコールを溶媒として接触させること、または非プロトン性の有機溶媒中で接触させることが好ましい。
【0055】
好ましい非プロトン性有機溶媒としては、ヘキサン、トルエン、キシレン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどがあげられる。
【0056】
また、上記式(8)で表される化合物を用いる代わりに、式(12)で表される化合物を用いて、エステル化する工程内で、塩基を添加し、式(12)で表される化合物を、式(8)で表される化合物に変換して用いてもよい。
【0057】
本発明のアミド化する工程としては、上記ハロゲン化物に上記式(10)および/または式(11)で表されるアミド化剤を作用させればよく、特にその方法は問わないが、アミド化剤をハロゲン化物に接触させることが好ましい。接触させる方法としては、−SO23で表される基および/または−SO24で表される基の分解を避ける点から、下記式(13)で表される2級アミンを溶媒として接触させること、または非プロトン性の有機溶媒中で接触させることが好ましい。
【0058】
上記非プロトン性有機溶媒の具体例としては、上記と同じものがあげられる。
【0059】
また、上記式(10)で表される化合物を用いる代わりに、式(13)で表される化合物を用いて、アミド化する工程内で、塩基を添加し、式(13)で表される化合物を、式(10)で表される化合物に変換して用いてもよい。
【0060】
上記エステル化する工程またはアミド化する工程が終了した後には、非水溶性の有機溶媒に希釈して水で分液洗浄する方法、そのまま反応溶液を濃縮して溶媒を除去する方法など一般的な有機合成実験手法により精製することが好ましい。また純度を高めるべく、再結晶やシリカゲルカラムクロマトグラフィーなどの精製方法も用いることもできる。
【0061】
本発明で得られる2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸誘導体は、式(5)


(式中、X1およびX2は前記式(1)中のものと同じである。A1およびA2はそれぞれ独立に、下記式(6)または(7)



(式中、R、RおよびRはそれぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表す。)で示される基を表す。)
で示される。
【0062】
上記炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基および炭素数6〜20のアリール基としては、上述のものがあげられる。
【0063】
このようにして得られた2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸化合物および2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸誘導体は、純度が高いため、高分子電解質の材料として有用である。
【実施例】
【0064】
以下に実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0065】
本発明の実施例の具体的説明に移る前に、各実施例および各比較例で得られた化合物の諸物性の測定方法を以下に説明する。
【0066】
[収率(モル%)]
下記の計算式により求めた。
[実施例1〜4]
収率(モル%)=(生成物の重量/2,5−ジクロロベンゼン−1,4−ジスルホン酸塩の分子量)/(原料の2,5−ジクロロベンゼンチオールの重量/2,5−ジクロロベンゼンチオールの分子量)×純度(%)
[実施例5]
収率(モル%)=(生成物の重量/2,5−ジクロロベンゼン−1,4−ジスルホン酸ネオペンチルの分子量)/(2,5−ジクロロベンゼン−1,4−ジスルホン酸ジカリウムの重量/2,5−ジクロロベンゼン−1,4−ジスルホン酸ジカリウムの分子量)×純度(%)
[製造例1]
収率(モル%)=(生成物の重量/2,5−ジクロロベンゼン−1,4−ジスルホン酸クロリドの分子量)/(2,5−ジクロロベンゼン−1,4−ジスルホン酸ジカリウムの重量/2,5−ジクロロベンゼン−1,4−ジスルホン酸ジカリウムの分子量)
【0067】
[純度(%)]
液体クロマトグラフィー (LC) により下記条件で測定し、面積百分率で算出した。
・LC測定装置 島津製作所製 LC−10A
・カラム L−Column ODS (5μm, 4.6mmφ×15cm)
・カラム温度 40℃
・移動相溶媒 A液:0.1重量%テトラブチルアンモニウムブロミド/水
B液:0.1重量%テトラブチルアンモニウムブロミド/(水/アセトニ トリル=1/9(重量比))
・移動相勾配 0→20min (A液: 70重量%→10重量%、B液: 30重量%→9 0重量%), 20→35min (A液: 10重量%、B液: 90重量%)
・溶媒流量 1.0mL/min
・検出法 UV (230nm)
【0068】
実施例1[2,5−ジクロロベンゼン−1,4−ジスルホン酸ジカリウムの製造]
攪拌装置を取り付けた反応容器に、クロロホルム210.37g、2,5−ジクロロベンゼンチオール(東京化成製)22.38g(125mmol)を入れ、窒素雰囲気下、発煙硫酸(和光純薬製)87.50g(625mmol)を30分間かけて25℃にて滴下した。滴下終了後、25℃にて8時間攪拌した。その後、水酸化カリウム水溶液にてpHが8から9になるように調節した。これを、重量が600gになるまで濃縮し、攪拌装置を取り付けた反応容器に移し、過マンガン酸カリウム(和光純薬製)69.14g(437.5mmol)を加え、25℃で溶解した。その後、12時間100℃で加熱還流した。25℃まで冷却後、メタノールを注加したところ、白色固体が大量に析出した。これを濾過し、濾液から溶媒を除去し、アセトン及びTHFで洗浄し、DMSOに溶解させた。再度、濾過を行い、濾液をアセトン中に滴下し、さらに濾過し、粗生成物を得た。粗生成物を、水に溶解し、再度アセトンに滴下して析出させることにより残存DMSOを取り除いた。吸引濾過により固体を濾別し、100℃で真空乾燥し、生成物Aを16.63g(収率34.1モル%、、純度:98.3%)得た。
1H−NMR(300MHz、D2O−d2):δ7.9ppm(s、2H)
13C−NMR(75MHz、D2O−d2):δ129.7ppm、δ131.8ppm、δ143.1ppm
MS(ESI法。PosiモードとNegaモードで測定を行なった。):383.3
Posiモード
m/z=420.8、422.7、424.7のイオンを、およそ10:6:1の割合で検出したことより、2,5-ジクロロベンゼン−1,4−ジスルホン酸ジカリウムのカリウムイオン付加分子[M+K]を検出したものと推測した。
Negaモード
m/z=342.7、344.7,346.8のイオンを、およそ10:6:1の割合で検出したことより、2,5-ジクロロベンゼン−1,4−ジスルホン酸ジカリウムの脱カリウムイオン化分子[M−K]を検出したものと推測した。
【0069】
1H−NMR及び13C−NMRにて生成物の同定を行なった。1H−NMRでは芳香族領域中、δ7.9ppmに一重線が観察された。13C−NMRではδ129.7ppm、δ131.8ppm、δ143.1ppmに3本のシグナルが観察された。13C−NMRにおいて、2,5−ジクロロベンゼン−1,3−ジスルホン酸ジカリウムは、その対称性から4本のシグナルが観察されると考えられ、2,5−ジクロロベンゼン−1,4−ジスルホン酸ジカリウムが選択的に得られていることが判明した。
【0070】
実施例2[2,5−ジクロロベンゼン−1,4−ジスルホン酸ジナトリウムの製造]
攪拌装置を取り付けた反応容器に、濃硫酸(和光特級:純度96〜98重量%)30.01g、2,5−ジクロロベンゼンチオール4.48g(25.0mmol)を入れ、窒素雰囲気下、溶解させた。そのまま昇温し、150℃で8時間攪拌した。25℃まで放冷し、水酸化ナトリウム水溶液にてpHが8から9になるように調節した。減圧留去により水分を除去し、乾固物を得て、これと、イオン交換水150gと、過マンガン酸カリウム13.8g(87.5mmol)とを攪拌装置を取り付けた反応容器に入れ、室温で溶解した。その後、12時間100℃で加熱還流した。25℃まで冷却後、これを濾過し、濾液から溶媒を除去し、アセトン及びTHFで洗浄し、DMSOに溶解させた。再度、濾過を行い、濾液をアセトン中に滴下し、さらに濾過し、粗生成物を得た。粗生成物を、水に溶解し、再度アセトンに滴下して析出させることにより残存DMSOを取り除いた。吸引濾過により固体を濾別し、100℃で真空乾燥し、生成物Bを1.81g(収率16.0モル%、純度:77.9%)得た。
1H−NMR(300MHz、DMSO−d6):δ7.8ppm(s、2H)
13C−NMR(75MHz、DMSO−d6):δ128.9ppm、δ131.3ppm、δ146.7ppm
【0071】
実施例3[2,5−ジクロロベンゼン−1,4−ジスルホン酸ジナトリウムの製造]
攪拌装置を取り付けた反応容器に、クロロホルム210.37g、2,5−ジクロロベンゼンチオール22.38g(東京化成製、125mmol)を入れ、窒素雰囲気下、発煙硫酸87.50g(和光純薬製 625mmol)を30分間かけて25℃にて滴下した。滴下終了後、25℃にて8時間攪拌した。反応終了後、水酸化ナトリウム水溶液にてpHが8から9になるように調節した。これを、重量が600gになるまで濃縮し、攪拌装置を取り付けた反応容器に移し、過マンガン酸カリウム69.14g(和光純薬製、437.5mmol)を加え、室温で溶解した。その後、12時間100℃で加熱還流した。25℃まで冷却後、メタノールを注加したところ、白色固体が大量に析出した。これを濾過し、濾液から溶媒を除去し、アセトン及びTHFで洗浄し、DMSOに溶解させた。再度、濾過を行い、濾液をアセトン中に滴下し、さらに濾過し、粗生成物を得た。粗生成物を、水に溶解し、再度アセトンに滴下して析出させることにより残存DMSOを取り除いた。吸引濾過により固体を濾別し、100℃で真空乾燥し、生成物Cを30.67g(収率69.1モル%、純度:98.8%)得た。
1H−NMR(300MHz、DMSO−d6):δ7.8ppm(s、2H)
13C−NMR(75MHz、DMSO−d6):δ128.9ppm、δ131.3ppm、δ146.7ppm
MS(ESI法。PosiモードとNegaモードで測定を行なった。):351.1
Posiモード
m/z=372.8、374.8、376.8のイオンを、およそ10:6:1の割合で検出したことより、2,5-ジクロロベンゼン−1,4−ジスルホン酸ジナトリウムのナトリウムイオン付加分子[M+Na]を検出したものと推測した。
Negaモード
m/z=326.8、328.8、330.8のイオンを、およそ10:6:1の割合で検出したことより、2,5-ジクロロベンゼン−1,4−ジスルホン酸ジナトリウムの脱ナトリウムイオン化分子[M−Na]を検出したものと推測した。
【0072】
1H−NMR及び13C−NMRにて生成物の同定を行なった。1H−NMRでは芳香族領域中、δ7.8ppmに一重線が観察された。13C−NMRではδ128.9ppm、δ131.3ppm、δ146.7ppmに3本のシグナルが観察された。13C−NMRにおいて、2,5−ジクロロベンゼン−1,3−ジスルホン酸ジナトリウムは、その対称性から4本のシグナルが観察されると考えられ、2,5−ジクロロベンゼン−1,4−ジスルホン酸ジナトリウムが選択的に得られていることが判明した。
【0073】
実施例4[2,5−ジクロロベンゼン−1,4−ジスルホン酸ジリチウムの製造]
攪拌装置を取り付けた反応容器に、クロロホルム210.37g、2,5−ジクロロベンゼンチオール22.38g(東京化成製、125mmol)を入れ、窒素雰囲気下、発煙硫酸87.50g(和光純薬製 625mmol)を30分間かけて25℃にて滴下した。滴下終了後、25℃にて8時間攪拌した。反応終了後、水酸化リチウム水溶液にてpHが8から9になるように調節した。これを、重量が600gになるまで濃縮し、攪拌装置を取り付けた反応容器に移し、過マンガン酸カリウム69.14g(和光純薬製、437.5mmol)を加え、25℃で溶解した。その後、12時間100℃で加熱還流した。25℃まで冷却後、メタノールを注加したところ、白色固体が大量に析出した。これを濾過し、濾液から溶媒を除去し、アセトン及びTHFで洗浄し、DMSOに溶解させた。再度、濾過を行い、濾液をアセトン中に滴下し、さらに濾過し、粗生成物を得た。粗生成物を、水に溶解し、再度アセトンに滴下して析出させることにより残存DMSOを取り除いた。吸引濾過により固体を濾別し、100℃で真空乾燥し、生成物Dを22.60g(収率53.0モル%、純度:95.1%)得た。
1H−NMR(300MHz、D2O−d2):δ8.0ppm(s、2H)
13C−NMR(75MHz、D2O−d2):δ129.8ppm、δ131.9ppm、δ143.2ppm
MS(ESI法。PosiモードとNegaモードで測定を行なった。):319.0
Posiモード
m/z=324.9、326.9、328.9のイオンを、およそ10:6:1の割合で検出したことより、2,5-ジクロロベンゼン−1,4−ジスルホン酸ジリチウムのリチウムイオン付加分子[M+Li]を検出したものと推測した。
Negaモード
m/z=310.9、312.9、314.9のイオンを、およそ10:6:1の割合で検出したことより、2,5-ジクロロベンゼン−1,4−ジスルホン酸ジリチウムの脱ナトリウムイオン化分子[M−Li]を検出したものと推測した。
【0074】
実施例5[2,5−ジクロロ−1,4−ベンゼンジスルホン酸ネオペンチルの製造]
実施例1で得た2,5−ジクロロ−1,4−ベンゼンジスルホン酸ジカリウム2.00g(5.20mmol)、塩化チオニル30.0mL(48.9g,411mmol)及び、ジメチルホルムアミド5滴を、室温(27℃)で1時間撹拌させた後、70℃で3時間撹拌させた。反応液を冷水に流し込み、炭酸水素ナトリウムを適量(pH9程度まで)加えた後、塩基性になったことを確認し、酢酸エチル溶媒での抽出作業を3回行い、得られた溶液を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒除去を行うことで、淡黄色粉末を得た。得られた粉末を冷メタノール中で1時間撹拌することで、2,5−ジクロロ−1,4−ベンゼンジスルホン酸クロリドの白色粉末1.57gを得た。この一部を、H−NMRで測定した。
H−NMR(CDCl,δ(ppm)):8.39(s,2H)
60重量%水素化ナトリウム610mg(15.3mmol)及び、トルエン43.6mLを室温で撹拌した。これに、2,2−ジメチルプロパノール1.39g(15.7mmol)をトルエン26.2mLに溶解させた溶液を、10分間かけて滴下した後、50℃で1時間、撹拌して反応させた。反応混合物に、前記2,5−ジクロロ−1,4−ベンゼンジスルホン酸クロリド1.50g(4.36mmol)をトルエン34.9mLに溶解させた溶液を15分間かけて滴下し、35℃で8時間撹拌し、反応させた。反応液を冷水に流し込み、分液操作を行うことで、白色粉末を得た。得られた粉末を温メタノール中で1時間撹拌することで、2,5−ジクロロ−1,4−ベンゼンジスルホン酸ネオペンチルの白色粉末488mgを得た。(収率21モル%:純度99%)
H−NMR(CDCl,δ(ppm)):0.98(s,18H),3.86(s,4H),8.24(s,2H)
マススペクトル(m/z):446
【0075】
製造例1
2,5−ジクロロ−1,4−ベンゼンジスルホン酸ジカリウム5.30g(15.0mmol)、トルエン120mL及び、ジメチルホルムアミド2.40mLを70℃で撹拌させ、塩化チオニル21.4g(180mmol)を10分間かけて滴下した後、70℃で3時間、撹拌して反応させた。反応液を冷水に流し込み、炭酸水素ナトリウムを適量加えた後、塩基性になったことを確認し、数回の分液操作を行うことで、淡黄色粉末を得た。得られた粉末を冷メタノール中で1時間撹拌することで、2,5−ジクロロ−1,4−ベンゼンジスルホン酸クロリドの白色粉末1.55gを得た。(収率30モル%)
【0076】
実施例1〜4の結果から、スルホン化剤を用いて、式(1)で示される化合物をスルホン化してスルホン化物を得て、酸化剤を用いて該スルホン化物を酸化することで、温和な条件下、高純度で2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸化合物を製造することができることが明らかとなった。
実施例5の結果から、スルホン化剤を用いて、式(1)で示される化合物をスルホン化してスルホン化物を得て、酸化剤を用いて該スルホン化物を酸化して2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸化合物を得て、該2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸化合物をハロゲン化して、ハロゲン化物を得て、該ハロゲン化物をエステル化することで、温和な条件下、高純度で2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸誘導体を製造することができることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホン化剤を用いて、式(1)

(式中、X1およびX2はそれぞれハロゲン原子を表す。M1は水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、第1級アンモニウムイオン、第2級アンモニウムイオン、第3級アンモニウムイオンまたは第4級アンモニウムイオンを表す。但し、M1がアルカリ土類金属イオンである場合、M1はさらに他のアニオンと結合している。)
で示される化合物をスルホン化して、スルホン化物を得る工程と、酸化剤を用いて、該スルホン化物を酸化する工程とを有することを特徴とする、式(2)

(式中、X1およびX2は前記式(1)中のものと同じである。M2は水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、第1級アンモニウムイオン、第2級アンモニウムイオン、第3級アンモニウムイオンまたは第4級アンモニウムイオンを表す。但し、2つあるM2はそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい。また、M2がアルカリ土類金属イオンである場合、M2はさらに他のアニオンと結合している。)
で示される2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸化合物の製造方法。
【請求項2】
スルホン化剤を用いて、式(1)

(式中、X1およびX2はそれぞれハロゲン原子を表す。M1は水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、第1級アンモニウムイオン、第2級アンモニウムイオン、第3級アンモニウムイオンまたは第4級アンモニウムイオンを表す。但し、M1がアルカリ土類金属イオンである場合、M1はさらに他のアニオンと結合している。)
で示される化合物をスルホン化して、スルホン化物を得る工程と、酸化剤を用いて、該スルホン化物を酸化して、式(2)

(式中、X1およびX2は前記式(1)中のものと同じである。M2は水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、第1級アンモニウムイオン、第2級アンモニウムイオン、第3級アンモニウムイオンまたは第4級アンモニウムイオンを表す。但し、2つあるM2はそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい。また、M2がアルカリ土類金属イオンである場合、M2はさらに他のアニオンと結合している。)
で示される2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸化合物を得る工程と、ハロゲン化剤を用いて、該2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸化合物をハロゲン化して、式(4)



(式中、X1およびX2は前記式(1)中のものと同じである。XおよびXはそれぞれハロゲン原子を表す。)
で示されるハロゲン化物を得る工程と、エステル化剤またはアミド化剤を用いて、該ハロゲン化物をエステル化またはアミド化する工程とを有することを特徴とする、式(5)


(式中、X1およびX2は前記式(1)中のものと同じである。A1およびA2はそれぞれ独立に、下記式(6)または(7)



(式中、R、RおよびRはそれぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表す。)で示される基を表す。)
で示される2,5−ジハロゲノベンゼン−1,4−ジスルホン酸誘導体の製造方法。
【請求項3】
前記ハロゲン化剤が、塩化チオニルである請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記エステル化剤が、下記式(8)または(9)で表される化合物であり、前記アミド化剤が、下記式(10)または(11)で表される化合物である請求項2または3に記載の製造方法。

(式中、R4〜R12はそれぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表す。M3およびM5はそれぞれ独立に、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、第1級アンモニウムイオン、第2級アンモニウムイオン、第3級アンモニウムイオンまたは第4級アンモニウムイオンを表す。M4およびM6はそれぞれ独立に、アルカリ土類金属イオンを表す。)
【請求項5】
前記スルホン化剤が、発煙硫酸、濃硫酸およびクロロ硫酸からなる群から選ばれる少なくとも1種のスルホン化剤である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記スルホン化剤が、発煙硫酸である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記スルホン化物を得る工程を、0℃以上100℃以下の温度で実施する請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記スルホン化剤が、濃硫酸である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記スルホン化物を得る工程を、120℃以上180℃以下の温度で実施する請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記スルホン化物を得る工程を有機溶媒存在下で実施する請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
前記有機溶媒が、ハロゲン化アルカンを含む請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記酸化剤が過マンガン酸カリウムである請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
前記スルホン化物を酸化する工程を水および/または有機溶媒存在下で実施する請求項1〜12のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−37331(P2010−37331A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159562(P2009−159562)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】