説明

3次元形状配管の製造方法及びその製造用金型

【課題】 2次射出成形の成形時に補強構造部分を同時に成形することが出来、生産性及びコストダウンを図ることが出来る3次元形状配管の製造方法及びその製造用金型を提供する。
【解決手段】この発明の実施形態では、特に2次射出成形により中空形状の配管製品Wの接合部を溶融・接合させると同時に、図2〜図4に示すように、配管強度の低い部分の少なくとも一箇所に補強連結部材Gを同時に成形するものである。具体的には、前記射出吐出穴5と接続する別の補強連結部材Gを形成するための射出成形穴(図示省略)を可動側型板2bと固定側型板3との少なくとも一箇所に形成し、2次射出成形時に補強連結部材Gを同時に成形して一体的に形成するものである。配管強度の低い部分とは、例えば、配管の断面積が配管長手方向において相対的に大きくなっている部位であり、排気マニホールド等では容積の大きい部位等を挙げることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、排気マニホールド等の3次元形状の配管を製造する製造方法及びその製造用金型に係わり、更に詳しくは繊維強化樹脂材料を使用して二分割金型によるDSI成形工法 (DSI 成形法:Die Slide Injection Molding 成形工法) によって3次元形状の配管を製造する3次元形状配管の製造方法及びその製造用金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂材料を使用して中空製品を製造する方法、例えば、3次元形状配管の製造方法としては、射出成形と溶着加工法(高周波,振動,熱板等)とを組合せて加工する方法、ガスアシスト法、ロストコア法等が知られている。
【0003】
然しながら、上記のような方法には、(a) 転写不良、(b) 肉厚が不均一、(c) 複雑な形状には不向き、(d) 肉厚製品に不向き、(e) 工程数が多い、(f) 接合強度が弱い、等の問題がある。
【0004】
また、繊維強化樹脂製品は、内表面平滑性、寸法精度、強度、製品コストにおいて課題を残している。特に表面平滑性に関しては、材料面(繊維含有率),材料と成形方法(例えば、特許文献1,特許文献2,特許文献3参照)があり、また製品としては自動車に搭載されている樹脂製インテークマニホールド,インテークパイプ,フューエルフィルター,フューエルフロート等が知られている。
【0005】
然しながら、3次元形状の配管等の各種品質に関して、強度上の補強構造や、その製造方法について言及しているものは未だ提案されていない。
【特許文献1】特開平9−11269号公報
【特許文献2】特開平7−126522号公報
【特許文献3】特開平6−71778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明はかかる従来の問題点に着目し、2次射出成形の成形時に、補強部材を同時に成形することで、3次元形状等の特殊形状の中空製品を成形する場合にも、補強構造部分を同時に成形することが出来、生産性及びコストダウンを図ることが出来る3次元形状配管の製造方法及びその製造用金型を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は上記目的を達成するため、この発明の3次元形状配管の製造方法は、繊維強化樹脂材料を使用して二分割金型によるDSI成形工法によって3次元形状の配管を製造する3次元形状配管の製造方法であって、前記二分割金型により1次射出成形で3次元形状の配管の半製品部分を成形し、前記二分割金型をスライドさせて中空形状の配管を成形し、更に2次射出成形により中空形状の配管製品の接合部を溶融・接合させると同時に、配管強度の低い部分の少なくとも一箇所に補強連結部材を同時に成形することを要旨とするものである。
【0008】
ここで、前記配管強度の低い部分は、配管の断面積が配管長手方向において相対的に大きくなっている部位であり、また前記繊維強化樹脂材料は、熱可塑性樹脂材料にガラス繊維またはカーボン繊維を含有させた材料を使用するものである。
【0009】
また、この発明の3次元形状配管の製造用金型は、繊維強化樹脂材料を使用して二分割金型によるDSI成形工法によって3次元形状の配管を製造する3次元形状配管の製造用金型であって、前記二分割金型に補強連結部材を形成する射出成形穴を設け、2次射出成形時に分割された中空配管製品の接合部の溶融・接合を行う際に配管強度の低い部分の少なくとも一箇所に分割された中空配管製品を連結する補強連結部材を同時に成形するようにしたことを要旨とするものである。
【0010】
このように、繊維強化樹脂材料を使用して二分割金型によるDSI成形工法 (DSI 成形法:Die Slide Injection Molding 成形工法) によって3次元形状の配管を製造する際、2次射出成形により中空形状の配管製品の接合部を溶融・接合させると同時に、配管強度の低い部分の少なくとも一箇所に補強連結部材を同時に成形することで、補強部材を同時に成形することで、3次元形状等の特殊形状の中空製品を成形する場合にも、補強構造部分を同時に成形することが出来、生産性及びコストダウンを図ることが出来る。
【発明の効果】
【0011】
この発明は、上記のように構成したので、繊維強化樹脂材料を使用して二分割金型によるDSI成形工法によって3次元形状の配管を製造する際、2次射出成形により中空形状の配管製品の接合部を溶融・接合させると同時に、配管強度の低い部分の少なくとも一箇所に補強連結部材を同時に成形することが出来、生産性及びコストダウンを図ることが出来る効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面に基づき、この発明の実施形態を説明する。
【0013】
図1の(a)〜(e)は、この発明にかかる3次元形状配管を製造する製造工程の説明図、図2及び図3は、図1の製造工程により製造された3次元形状配管の実施形態を示す斜視図、図4は図2のA−A矢視一部拡大断面図を示している。
【0014】
この発明の実施形態では、3次元形状配管を製造する製造工程として繊維強化樹脂材料を使用して二分割金型によるDSI成形工法 (DSI 成形法:Die Slide Injection Molding 成形工法) を使用するものである。
【0015】
即ち、二分割金型によるDSI成形工法を簡単に説明すると、一対の第1金型1aと第2金型1bとを備えた可動側型板2a,2bと、固定側型板3とで構成され、可動側型板2bはスライド用の流体シリンダー4(油圧シリンダー)に連結され、該流体シリンダー4の伸縮作動により固定側型板3に沿ってスライドするように構成されている。
【0016】
また、前記可動側型板2bと固定側型板3とには、前記一対の第1金型1aと第2金型1bとの内部に繊維強化樹脂材料を射出する射出吐出穴5が形成され、この射出吐出穴5は、外部に設置された射出成形機6に接続されている。
【0017】
前記二分割金型、即ち、一対の第1金型1aと第2金型1bには、予め3次元形状配管を製造するための半金型がそれぞれ形成されており、1次射出で半製品部分をそれぞれ形成し、2次射出で、半製品部分の接合部を溶融・接合させることで3次元形状の配管を製造するものである。ここで3次元形状の配管とは、3次元の任意の方向に屈曲した形状をした配管を言う。
【0018】
即ち、図1(a)に示す第1工程の型締め1次成形で、中空配管の半製品Waを射出成形し、図1(b)に示す第2工程で型開きとランナーRの取出しを行い、図1(c)に示す第3工程で流体シリンダー4により可動側型板2bと共に第2金型1bをスライドさせ、図1(d)に示す第4工程で型締めをして2次射出成形を行い、中空配管の半製品Waの接合部を溶融・接合させ、図1(e)に示す第5工程で型開きと中空状の配管製品Wの取出しを行うものである。
【0019】
そしてこの発明の実施形態では、特に2次射出成形により中空形状の配管製品Wの接合部を溶融・接合させると同時に、図2〜図4に示すように、配管強度の低い部分の少なくとも一箇所に補強連結部材Gを同時に成形するものである。具体的には、前記射出吐出穴5と接続する別の補強連結部材Gを形成するための射出成形穴(図示省略)を可動側型板2bと固定側型板3との少なくとも一箇所に形成し、2次射出成形時に補強連結部材Gを同時に成形して一体的に成形するものである。
【0020】
前記配管強度の低い部分とは、例えば、配管の断面積が配管長手方向において相対的に大きくなっている部位であり、排気マニホールド等では容積の大きい空間部位等を挙げることが出来る。また配管の肉厚が相対的に薄い部位も挙げることが出来る。
【0021】
また、この発明では配管強度を高めるために、繊維強化樹脂材料を使用し、具体的には熱可塑性樹脂材料(例えば、ポリアミド(PA),ポリフェニレンサルファイド(PPS),変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE))にガラス繊維またはカーボン繊維を含有させた材料を使用している。
【0022】
またこの発明で使用する3次元形状配管の製造用金型としては、上述したように二分割の一対の第1金型1aと第2金型1bに補強連結部材Gを形成する射出成形穴(図示せず)を設けるものであり、このような構成により2次射出成形時に分割された中空形状の配管製品Wの接合部の溶融・接合を行う際に配管強度の低い部分の少なくとも一箇所に分割された中空配管製品を連結する補強連結部材Gを同時に成形するようにしたものである。
【0023】
以上のような成形方法により、配管強度の低い部分の少なくとも一箇所に補強連結部材を同時に成形することが出来、生産性及びコストダウンを図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)〜(e)はこの発明にかかる3次元形状配管を製造する製造工程の説明図である。
【図2】図1の製造工程により製造された3次元形状配管の一つの実施形態を示す斜視図である。
【図3】図1の製造工程により製造された3次元形状配管の一つの実施形態を示す斜視図である。
【図4】図2のA−A矢視一部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1a 第1金型
1b 第2金型
2a,2b 可動側型板
3 固定側型板
4 流体シリンダー
5 射出吐出穴
6 射出成形機
Wa 中空配管の半製品
W 配管製品
G 補強連結部材
R ランナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化樹脂材料を使用して二分割金型によるDSI成形工法によって3次元形状の配管を製造する3次元形状配管の製造方法であって、
前記二分割金型により1次射出成形で3次元形状の配管の半製品部分を成形し、前記二分割金型をスライドさせて中空形状の配管を成形し、更に2次射出成形により中空形状の配管製品の接合部を溶融・接合させると同時に、配管強度の低い部分の少なくとも一箇所に補強連結部材を同時に成形することを特徴とする3次元形状配管の製造方法。
【請求項2】
前記配管強度の低い部分は、配管の断面積が配管長手方向において相対的に大きくなっている部位である請求項1に記載の3次元形状配管の製造方法。
【請求項3】
前記繊維強化樹脂材料は、熱可塑性樹脂材料にガラス繊維またはカーボン繊維を含有させた材料を使用する請求項1または2に記載の3次元形状配管の製造方法。
【請求項4】
繊維強化樹脂材料を使用して二分割金型によるDSI成形工法によって3次元形状の配管を製造する3次元形状配管の製造用金型であって、
前記二分割金型に補強連結部材を形成する射出成形穴を設け、2次射出成形時に分割された中空配管製品の接合部の溶融・接合を行う際に配管強度の低い部分の少なくとも一箇所に分割された中空配管製品を連結する補強連結部材を同時に成形するようにしたことを特徴とする3次元形状配管の製造用金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−194902(P2008−194902A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−31104(P2007−31104)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】