説明

3,4−ジヒドロピリミジンTRPA1アンタゴニスト

本発明は、TRPA1受容体アンタゴニスト性を有する新規な式(I)の3,4−ジヒドロピリミジン化合物、これらの化合物を含んでなる製薬学的組成物、これらの化合物の化学的製造方法ならびに動物、特に人間におけるTRPA1受容体の調節に結び付けられる疾患の処置におけるそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TRPA1受容体アンタゴニスト性を有する新規な式(I)の3,4−ジヒドロピリミジン化合物、これらの化合物を含んでなる製薬学的組成物、これらの化合物の化学的製造方法ならびに動物、特に人間におけるTRPA1受容体の調節に結び付けられる疾患の処置におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
正式にはANKTM1と命名される一過性受容体電位(Transient Receptor Potential)A1(TRPA1)受容体は、機械的、熱的及び痛み−関連炎症シグナルを伝達することが示されたカチオン−選択的チャンネルの一過性受容体電位(TRP)群に属する(例えば非特許文献1及び非特許文献2を参照されたい)。
【0003】
TRPA1は、非−選択的カルシウム透過性チャンネルであり、カルシウム及びナトリウムイオンのようなカチオンの流れの調節により、膜電位を調節する。イオンチャンネルの誤−調節は、多くの場合に病理学的状態と関連し、TRPA1を含むイオン−チャンネルの1つもしくはそれより多い機能を調節することができる化合物は、治療薬の可能性のあるものとして非常に興味深いものである。イソチオシアナート(アリルイソチオシアナート、マスタードの辛み成分)及び催涙ガスのようなTRPA1受容体のアクチベータ又はアゴニストは、急性の痛み及び神経性炎症を引き起こす(例えば非特許文献3;非特許文献4を参照されたい)。TRPA1受容体の調節は、イオン−流及び膜電位のホメオスタシスの向上に導くことができる。
【0004】
ホルマリン−誘導の痛みのモデルにおいて、TRPA1は、生体内においてホルマリンが痛みを生じる作用の主要部位であることが示され、TRPA1の活性化はこの痛み過敏症のモデルと関連する生理学的及び行動的反応の基礎となっている。TRPA1チャンネルのホルマリン誘導活性化をTRPA1アンタゴニストにより減衰させることができる(非特許文献5)。
【0005】
TRPA1と関連する疾患又は状態の症状の予防、処置又は軽減において有用な可能性があるTRPA1受容体へのリガンドの同定及び開発に興味が持たれている(TRPA1アンタゴニストの特許請求をしている特許に関し、例えば特許文献1又は特許文献2を参照されたい)。
【0006】
式(II)に示されるようなジヒドロピリミジン5,6−二重結合への環付加のない3,4−ジヒドロピリミジンは、特許文献1中でTRPA1アンタゴニストとして特許請求されているが、手持ちの(in our hands)、そのような化合物はヒトTRPA1受容体に全くアンタゴニズムを示さないか、又は非常に弱いアンタゴニズムを示した。いくつかのジヒドロピリミジノンが文献に記載されている(例えば化合物A:非特許文献6。化合物B及びC:非特許文献7,非特許文献8も参照されたい)。式Dのジヒドロピリミドン化合物は、特許文献3において接眼レンズ清澄化剤(eye lens clarification agent)として特許請求された。
【0007】
【化1】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2007/073505号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2007/098252号パンフレット
【特許文献3】欧州特許第489991号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Biochimica et Biophysica Acta 1772,2007年,989−1003
【非特許文献2】Cell 124,2006年,1123−1125
【非特許文献3】PNAS 103,2007年,13519−13524
【非特許文献4】Cell 124,2006年,1269−1282
【非特許文献5】PNAS 103,2007年,13525−13530
【非特許文献6】Indian J.Chem.,Section B,43B,2004年,135−140
【非特許文献7】Phosphorous and Sulfur 39,1988年,211−16
【非特許文献8】Latvijas PSR Zinatnu Akademijas Vestis,Kimijas Serija,1968年,324−7
【発明の概要】
【0010】
本発明は、立体化学的異性体を含む式(I)
【0011】
【化2】

【0012】
[式中、
及びAは両方ともCRであるか、あるいはA又はAの1つはNであり、他はCRであり、ここで各Rは独立して水素、ハロ、C1−6アルキル、C1−6アルキルオキシ、ポリハロC1−6アルキル又はポリハロC1−6アルキルオキシから選ばれ;B、B、B及びBはすべてCHであるか、又はB、B、B及びBの1つはNであり、他はCHであり;
XはO又はSであり;
はハロ、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、C1−6アルキル、ヒドロキシC1−6アルキル、C1−6アルキルオキシ、ポリハロC1−6アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ又はORであり、ここでRはヒドロキシ、C1−4アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、C1−4アルキルカルボニル、C1−4アルキルカルボニルオキシ又はNRで置換されたC1−6アルキルであり、ここでR及びRはそれぞれ独立して水素又はC1−4アルキルから選ばれ;
は水素、フルオロ、C1−4アルキル又はC1−4アルキルオキシであり;
且つR及びRは一緒になって−O−CH−O−又は−O−CH−CH−O−基を形成することができ;
は水素、C1−4アルキル又はアリールC1−2アルキルであり;
は水素、C1−4アルキル又はアリールC1−2アルキルであり;
各アリールは互いに独立して、水素、ハロ、ヒドロキシ、C1−4アルキル、ポリハロC1−4アルキル、C1−4アルキルオキシ、ポリハロC1−4アルキルオキシ、シアノ、ニトロ、アミノ又はモノ−もしくはジ−(C1−4アルキル)アミノからそれぞれ独立して選ばれる1、2又は3個の置換基で置換されたフェニルから選ばれ;
但し、XがOであり、且つA及びAが両方ともCRであり、ここでRが水素であり、且つRが水素又はC1−4アルキルオキシであり、且つR及びRが水素である場合、Rはハロ、C1−6アルキル又はC1−6アルキルオキシではない]
の新規な化合物あるいはその製薬学的に許容され得る酸付加塩又はその溶媒和物又はそのN−オキシドに関する。
【0013】
但し書きは、欧州特許第0,489,991号明細書又はCAS番号371142−26−6、371131−70−3,371129−06−5及び371120−50−2により示される化合物への請求権を放棄することを意図している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
前記の定義において用いられる場合:
−ハロはフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードの総称であり;
−C1−4アルキルは、1〜4個の炭素原子を有する直鎖状及び分枝鎖状飽和炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、1−メチルエチル、2−メチルプロピルなどを定義し;
−C1−6アルキルは、C1−4アルキル及び5〜6個の炭素原子を有するその高級同族体、例えば2−メチルブチル、ペンチル、ヘキシルなどを含むものとし;
−ポリハロC1−4アルキルは、ポリハロ置換されたC1−4アルキル、特に2〜6個のハロゲン原子で置換された(上記で定義されたような)C1−4アルキル、例えばジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリフルオロエチルなどとして定義され;
−ポリハロC1−6アルキルは、ポリハロ置換されたC1−6アルキル、特に2〜6個のハロゲン原子で置換された(上記で定義されたような)C1−6アルキル、例えばジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリフルオロエチルなどとして定義される。
【0015】
前記で用いられた「立体化学的異性体」という用語は、式(I)の化合物が有することができるすべての可能な異性体を定義する。他にことわるか又は指示しなければ、化合物の化学的名称はすべての可能な立体化学的異性体の混合物を示し、該混合物は基本の分子構造のすべてのジアステレオマー及びエナンチオマーを含有する。さらに特定的に、ステレオジェン中心はR−又はS−立体配置を有することができ;二価環状(部分的)飽和基上の置換基は、シス−又はトランス−立体配置のいずれかを有することができる。式(I)の化合物の立体化学的異性体は、明らかに本発明の範囲内に包含されることが意図されている。
【0016】
式(I)のすべての化合物は、下記の図中でを用いて示される通り、少なくとも1個のキラル炭素原子を有する。該キラル炭素原子のR及びS立体配置の両方が「立体化学的異性体」という用語の下に包含されることが意図されている。R及びSエナンチオマーの混合物として製造された式(I)の化合物を、例えば超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)のような当該技術分野において既知の分割法を用いて、それらの個々のエナンチオマーに分割することができる。
【0017】
【化3】

【0018】
式(I)の化合物及びそれらの製造において用いられる中間体の絶対立体化学的配置は、例えばX−線回折又はVCDのような周知の方法を用いて当該技術分野における熟練者が容易に決定することができる。
【0019】
さらに、式(I)のいくつかの化合物及びそれらの製造において用いられる中間体のいくつかは、多形を示し得る。本発明は、上記に記載した状態の処置において有用な性質を有するいずれの多形相も包含することが理解されるべきである。
【0020】
本明細書上記で言及した製薬学的に許容され得る酸付加塩は、式(I)の化合物が形成することができる治療的に活性な無毒性の酸付加塩の形態を含むものとする。これらの製薬学的に許容され得る酸付加塩は、塩基形態をそのような適した酸で処理することにより簡単に得ることができる。適した酸は、例えば無機酸、例えばハロゲン化水素酸、例えば塩酸又は臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの酸;あるいは有機酸、例えば酢酸、プロパン酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸(すなわちエタン二酸)、マロン酸、コハク酸(すなわちブタン二酸)、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクラミン酸、サリチル酸、p−アミノサリチル酸、パモ酸などの酸を含む。
【0021】
逆に、適した塩基を用いる処理により、該塩形態を遊離の塩基形態に転換することができる。
【0022】
式(I)の化合物は、溶媒和されない形態及び溶媒和された形態の両方において存在することができる。「溶媒和物」という用語は本明細書で、本発明の化合物及び1種もしくはそれより多い製薬学的に許容され得る溶媒分子、例えば水又はエタノールを含んでなる分子会合を記述するために用いられる。「水和物」という用語は、該溶媒が水である場合に用いられる。
【0023】
興味深い式(I)の化合物は、以下の制限の1つもしくはそれより多くが適用される式(I)の化合物である:
a)A及びAが両方ともCRであり、ここで各Rは独立して水素又はハロから選ばれるか;あるいは
b)A及びAの1つがCRであり、ここでRは水素又はハロであり、そしてA及びAの他がNであるか;あるいは
c)B、B、B及びBがすべてCHであるか;あるいは
d)Rが水素又はC1−4アルキルオキシであるか;あるいは
e)R及びRが一緒になって−O−CH−O−を形成することができるか;あるいは
f)Rが水素又はメチルであるか;あるいは
g)Rが水素、メチル又はフェニルメチルであるか;あるいは
h)アリールがフェニル又はハロ、トリフルオロメチル、シアノもしくはC1−4アルキルオキシで置換されたフェニルであるか;あるいは
i)Cにおけるステレオジェン中心がR−立体配置を有する。
【0024】
特別な群の式(I)の化合物は、XがSである式(I)の化合物である。
【0025】
別の特別な群の式(I)の化合物は、A及びAが両方ともCRであり、ここで各Rは独立して水素又はハロから選ばれ;Rがハロ、ヒドロキシ、C1−6アルキルオキシ又はC1−6アルキルであり、ここでC1−6アルキルは場合によりC1−4アルコキシ、ヒドロキシ、C1−4アルキルカルボニルオキシで置換されていることができるか、あるいはNRであり、ここでR及びRはC1−4アルキルである式(I)の化合物である。
【0026】
さらに別の特別な群の式(I)の化合物は、A及びAが両方ともCRであり、ここで各Rは独立して水素から選ばれ;B、B、B及びBがすべてCHであり;XがSであり;RがC1−4アルキルオキシであり、ここでC1−4アルキルは場合によりC1−4アルコキシ又はヒドロキシで置換されていることができ、Cにおけるステレオジェン中心がR−立体配置を有する式(I)の化合物である。
【0027】
【化4】

【0028】
一般的な合成(合成経路)
一般に、1,3−ジカルボニル化合物(III)、アルデヒド(IV)及び(チオ)ウレア(V)の間の多成分縮合反応を介して式(I)の化合物を合成することができる。
【0029】
【化5】

【0030】
及びRが水素を示す式(I)の化合物として定義される式(I−a)の化合物は、Biginelli反応(一般的なBiginelli法に関し、例えばTetrahedron 336 1993年,6937−6963を参照されたい。式(I)の化合物にさらに特異的なBiginelli反応に関し、例えばIndian J.Chem.43B 2004年,135−140を参照されたい)として既知の1,3−ジカルボニル化合物(III)、アルデヒド(IV)及び(チオ)ウレア(V)の間の多成分縮合反応を介して合成することができる。
【0031】
【化6】

【0032】
ルイス酸又は無機酸性触媒の存在下に、且つ溶媒を存在させてか又はなしで、成分を混合し、且つ加熱することにより、この反応を行うことができる。有用な触媒の例は、HCl、HBr、HSO、酢酸、トリフルオロ酸(trifluoric acid)、p−トルエンスルホン酸、トリメチルシリルクロリド、トリメチルシリルヨーダイド、三フッ化ホウ素エーテラート、塩化銅(I)、塩化第二鉄、塩化インジウム(III)、イ
ッテルビウムトリフレート、塩化セリウム(III)、塩化ジルコニウム(IV)、オキシ塩化ジルコニウム(IV)、リチウムブロミド、フェニルピルビン酸、塩化カルシウム、ポリリン酸エステル又は固体クレー酸触媒(clay acid catalyst)、例えばモントモリロナイトKSFクレーあるいはこれらの触媒の組み合わせである。
【0033】
有用な溶媒は、好ましくは極性溶媒、例えばアセトニトリル、酢酸、メタノール、エタノール又は他のアルコール、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン又はジオキサンである。
【0034】
通常の熱的条件下で、あるいはマイクロ波条件下で加熱を行うことができる。
【0035】
式(I−a)の化合物を2段階法で製造することもでき、この場合、例えばPhosphorous and Sulfur 39,1988年,211−16又はChem.Heterocycl.Compd.(Engl.Transl.)24 1988年,936−941に記載されている通り、(III)と(IV)の間のKnoevenagel縮合生成物を(V)と反応させる。
【0036】
XがOを示し、R及び/又はRが水素ではない式(I)の化合物として定義される式(I−b)及び(I−c)の化合物は、XがOを示し、R及びRが水素を示す式(I)の化合物として定義される式(I−a−1)の化合物を、Lが離脱基、例えばハロ、メタンスルホニルオキシ、ベンゼンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシなどの反応性離脱基である中間体(VI)と、NaH又はKCOのような適した塩基の存在下に、例えばTHF、1,4−ジオキサン、2−プロパノン又はジメチルホルムアミドのような反応に不活性な溶媒中で反応させることにより、製造することができる。
【0037】
【化7】

【0038】
XがSを示し、R及び/又はRが水素ではない式(I)の化合物として定義される式(I−d)及び(I−e)の化合物は、XがSを示し、R及びRが水素を示す式(I)の化合物として定義される化合物(I−a−2)を、試薬(VII)を用いてアルキル化して中間体(VIII)を与え、それを、Lが離脱基、例えばハロ、メタンスルホニルオキシ、ベンゼンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシなどの反応性離脱基である中間体(VI−1)又は(VI−2)を用いて、NaH又はKCO
ような適した塩基の存在下に、例えば2−プロパノン、1,4−ジオキサン、ジメチルホルムアミド又はTHFのような反応に不活性な溶媒中でアルキル化して、中間体(IX)及び/又は(X)を与えることにより製造することができる。熱的又はマイクロ波補助加熱下でTFAを用いて中間体(IX)又は(X)を処理すると、それぞれ式(I−d)及び(I−e)の化合物が得られる。
【0039】
【化8】

【0040】
標準的な官能基変換を介して置換基Rをさらに誘導体化し、所望の式(I)の最終的な化合物を製造することができる。
【0041】
出発材料及び中間体のいくつかは商業的に入手可能であるか、又は当該技術分野において一般的に既知の通常の反応法に従って製造することができる。
【0042】
本明細書上記に記載の方法において製造される式(I)の化合物は、エナンチオマーのラセミ混合物の形態で合成され得、それを当該技術分野において既知の分割法に従って互いから分離することができる。ラセミ形態で得られる式(I)の化合物を、適したキラル酸との反応により対応するジアステレオマー塩の形態に転換することができる。該ジアステレオマー塩の形態を、続いて例えば選択的又は分別結晶化により分離し、アルカリによりそこからエナンチオマーを遊離させる。式(I)の化合物のエナンチオマーの形態を分離する代わりの方法は、キラル固定相を用いる液体クロマトグラフィーを含む。該純粋な立体化学的異性体を、適した出発材料の対応する純粋な立体化学的異性体から誘導するこ
ともでき、但し、反応は立体特異的に起こる。好ましくは、特定の立体異性体が望まれる場合、該化合物は立体特異的製造方法により合成されるであろう。これらの方法は、有利にはエナンチオマー的に純粋な出発材料を用いるであろう。
【0043】
立体化学的異性体を含む式(I)の化合物又はその製薬学的に許容され得る酸付加塩、溶媒和物もしくはN−オキシドは、薬理学的実施例で示される通り、一過性受容体電位A1受容体(TRPA1)アンタゴニスト性を有する。薬理学的実施例Dは、TRPA1アンタゴニズムの測定方法を記載しており、結果は表5に挙げられている。
【0044】
従って本式(I)の化合物は薬剤として、特にTRPA1受容体、特にTRPA1受容体アンタゴニスト活性により媒介される状態又は疾患の処置における薬剤として有用である。結局、本化合物を、TRPA1活性、特にTRPA1受容体アンタゴニスト活性により媒介される状態又は疾患の処置用の薬剤の製造のために用いることができる。
【0045】
好ましくは、本発明は、TRPA1が媒介する状態もしくは疾患から選ばれる状態もしくは疾患の処置用の薬剤の製造のための式(I)の化合物又はその製薬学的に許容され得る塩の使用も提供する。
【0046】
さらに本発明は、哺乳類患者におけるTRPA1活性により媒介される状態の処置方法を提供し、それは、そのような処置の必要な哺乳類に式(I)の化合物又はその製薬学的に許容され得る塩の治療的に有効な量を投与することを含んでなる。
【0047】
TRPA1が媒介する状態又は疾患は、例えば痛み、慢性痛、触覚過敏症(touch
sensitivity)、かゆみ過敏症(itching sensitivity)、皮膚刺激、術後痛、ガン痛、ニューロパシー痛、炎症痛、片頭痛、糖尿病性ニューロパシー、乾癬、湿疹、皮膚炎、ヘルペス後神経痛、尿失禁、膵臓炎、変形性関節症、慢性関節リウマチ、口内粘膜炎(oral mucositis)、毛髪成長の阻害又は刺激、涙液分泌、眼の損傷、眼瞼痙攣及び肺の刺激(咳)ならびに創傷治癒の刺激である。
【0048】
本明細書で用いられる場合、「処置する」及び「処置」という用語は、そのような用語が適用される疾患、障害又は状態あるいはそのような疾患、障害又は状態の1つもしくはそれより多い症状を逆転させるか、緩和するか、その進行を妨げるか、又は予防することを含む、治癒的、緩和的及び予防的処置を指す。
【0049】
さらに本発明は、少なくとも1種の製薬学的に許容され得る担体及び式(I)の化合物の治療的に有効な量を含んでなる製薬学的組成物を提供する。
【0050】
本発明の製薬学的組成物の調製のために、塩基又は酸付加塩の形態にある特定の化合物の活性成分として有効な量を、少なくとも1種の製薬学的に許容され得る担体と緊密な混合物において合わせ、その担体は、投与のために望ましい調製物の形態に依存して多様な形態をとることができる。望ましくはこれらの製薬学的組成物は、好ましくは経口的投与、直腸的投与、経皮的投与、非経口的注入又は局所的投与に適した単位投薬形態にある。
【0051】
例えば経口的投薬形態における組成物の調製において、懸濁剤、シロップ、エリキシル剤及び溶液のような経口用液体調製物の場合、通常の液体の製薬学的担体のいずれか、例えば水、グリコール、油、アルコールなど;あるいは粉剤、丸薬、カプセル及び錠剤の場合、澱粉、糖類、カオリン、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などのような固体の製薬学的担体を用いることができる。それらの容易な投与のために、錠剤及びカプセルは最も有利な経口的投薬単位形態物を与え、その場合には固体の製薬学的担体が用いられるのは明らかである。非経口的注入組成物の場合、製薬学的担体は主に無菌水を含んでなるであろうが、活
性成分の溶解性を向上させるための他の成分が含まれることができる。例えば食塩水、グルコース溶液又は両者の混合物を含んでなる製薬学的担体を用いることにより、注入可能な溶液を調製することができる。適した液体担体、懸濁化剤などを用いることにより、注入可能な懸濁剤を調製することもできる。経皮的投与に適した組成物において、製薬学的担体は場合により浸透促進剤及び/又は適した湿潤剤を含んでなることができ、それらは場合により皮膚に有意な悪影響を引き起こさない小さい割合の適した添加剤と組み合わされていることができる。該添加剤は、皮膚への活性成分の投与を促進するように及び/又は所望の組成物の調製の助けとなるように選ばれることができる。これらの局所用組成物を種々の方法で、例えば経皮パッチ、スポット−オン又は軟膏として投与することができる。式(I)の化合物の付加塩は、対応する塩基形態より向上したそれらの水溶性のために、水性組成物の調製において明らかにより適している。
【0052】
投与の容易さ及び投薬量の均一性のために、本発明の製薬学的組成物を投薬単位形態物において調製するのが特に有利である。本明細書で用いられる「投薬単位形態物」は、1回の投薬量として適した物理的に分離された単位を指し、各単位は所望の治療効果を生むために計算されたあらかじめ決められた量の活性成分を、必要な製薬学的担体と一緒に含有する。そのような投薬単位形態物の例は錠剤(刻み付き又はコーティング錠を含む)、カプセル、丸薬、粉剤小包、ウェハース、注入可能な溶液又は懸濁剤、小さじ一杯、大さじ一杯など、ならびに分離されたそれらの複数である。
【0053】
経口的投与のために、本発明の製薬学的組成物は、製薬学的に許容され得る賦形剤及び担体、例えば結合剤(例えば予備ゼラチン化トウモロコシ澱粉、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、充填剤(例えばラクトース、微結晶性セルロース、リン酸カルシウムなど)、滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカなど)、崩壊剤(例えばポテト澱粉、ナトリウム澱粉グリコレートなど)、湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)などを用いて通常の手段により調製される固体の投薬形態物、例えば錠剤(嚥下可能及びチュワブル形態の両方)、カプセル又はゲルカップの形態をとることができる。そのような錠剤を当該技術分野において周知の方法によりコーティングすることもできる。
【0054】
経口的投与のための液体調製物は、例えば溶液、シロップ又は懸濁剤の形態をとることができるか、あるいはそれらを使用前に水及び/又は他の適した液体担体と混合するための乾燥生成物として調製することができる。そのような液体調製物は通常の方法により、場合により懸濁化剤(例えばソルビトールシロップ、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又は水素化食用脂肪)、乳化剤(例えばレシチン又はアラビアゴム)、非−水性担体(例えばアーモンド油、油性エステル又はエチルアルコール)、甘味料、風味料、隠蔽剤及び防腐剤(例えばp−ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはプロピル又はソルビン酸)のような他の製薬学的に許容され得る添加剤を用いて調製することができる。
【0055】
本発明の製薬学的組成物において有用な製薬学的に許容され得る甘味料は、好ましくは少なくとも1種の強力甘味料、例えばアスパルテーム、アセスルフェームカリウム、シクラミン酸ナトリウム、アリテーム、ジヒドロカルコン甘味料、モネリン、ステビオシドスクラロース(4,1’,6’−トリクロロ−4,1’,6’−トリデオキシガラクトスクロース)又は、好ましくはサッカリン、サッカリンナトリウムもしくはカルシウム及び場合により少なくとも1種のバルク甘味料(bulk sweetener)、例えばソルビトール、マンニトール、フルクトース、スクロース、マルトース、イソマルト、グルコース、水素化グルコースシロップ、キシリトール、カラメル又はハチミツを含む。強力甘味料は、簡便に低濃度で用いられる。例えばサッカリンナトリウムの場合、該濃度は、最終的な調剤の約0.04%〜0.1%(重量/容量)の範囲であることができる。バルク
甘味料は、約10%〜約35%、好ましくは約10%〜15%(重量/容量)の範囲の比較的高い濃度で有効に用いられ得る。
【0056】
低−投薬量調剤において苦い味の成分を隠蔽することができる製薬学的に許容され得る風味料は、好ましくはフルーツ風味料、例えばチェリー、ラズベリー、黒スグリ又はストロベリー風味料である。2種の風味料の組み合わせは、非常に良い結果を与えることができる。高−投薬量の調剤においては、より強い製薬学的に許容され得る風味料、例えばカラメルチョコレート(Caramel Chocolate)、ミントクール(Mint
Cool)、ファンタジー(Fantasy)などが必要であり得る。各風味料は、約0.05%〜1%(重量/容量)の範囲の濃度で、最終的な組成物中に存在することができる。該強い風味料の組み合わせは、有利に用いられる。好ましくは、調剤の環境下で味及び/又は色の変化又は喪失を経ない風味料が用いられる。
【0057】
式(I)の化合物を、注入、簡便には静脈内、筋肉内又は皮下注入による、例えば大量注入又は継続的静脈内輸液による非経口的投与用に調製することができる。注入用の調剤は、単位投薬形態物において、例えばアンプル中で、又は加えられた防腐剤を含む多投薬量容器中で存在することができる。それらは、油性又は水性ビヒクル中の懸濁剤、溶液又は乳剤のような形態をとることができ、等張化剤、懸濁化剤、安定剤及び/又は分散剤のような調製剤を含有することができる。あるいはまた、活性成分は、使用前に適したビヒクル、例えば発熱物質を含まない無菌水と混合するための粉末形態で存在することができる。
【0058】
式(I)の化合物を、例えば通常の座薬基剤、例えばココアバター及び/又は他のグリセリドを含有する座薬又は保持浣腸(retention enema)のような直腸用組成物において調製することもできる。
【0059】
式(I)の化合物を眼への局所的適用のための眼用組成物、例えば等張、非−刺激性水溶液において調製することもできる。
【0060】
TRPA1受容体の媒介に結び付けられる疾患の処置における熟練者は、本明細書下記に示される試験結果から、式(I)の化合物の治療的に有効な量を容易に決定するであろう。一般に治療的に有効な投薬量は、処置されるべき患者の体重のkg当たり約0.001mg〜約50mg、より好ましくは体重のkg当たり約0.01mg〜約10mgであろうと思われる。治療的に有効な投薬量を、1日を通じて適した間隔における2回かもしくはそれより多い細分−投薬量の形態で投与するのが適しているかも知れない。該細分−投薬量を、例えばそれぞれ単位投薬形態物当たりに約0.1mg〜約1000mg、さらに特定的に約1〜約500mgの活性成分を含有する単位投薬形態物として調製することができる。
【0061】
本明細書で用いられる場合、化合物の「治療的に有効な量」は、患者又は動物に投与されると、その患者又は動物において、TRPA1受容体の刺激における識別可能な増加又は減少を引き起こすのに十分に高いレベルのその化合物を生ずる化合物の量である。
【0062】
投与の正確な投薬量及び頻度は、当該技術分野における熟練者に周知の通り、用いられる特定の式(I)の化合物、処置されている特定の状態、処置されている状態の重度、特定の患者の年令、体重及び一般的な身体条件ならびに患者が摂取しているかも知れない他の投薬に依存する。さらに、処置される患者の反応に依存して及び/又は本発明の化合物を処方する医師の評価に依存して、該「治療的に有効な量」を減少させるか又は増加させることができる。従って本明細書上記で挙げた有効な1日の量の範囲は、単に指針である。
【実施例】
【0063】
実験の部
「DIPE」はジイソプロピルエーテルとして定義され、「DMF」はN,N−ジメチルホルムアミドとして定義され、「DMSO」はジメチルスルホキシドとして定義され、「DCM」又は「CHCl」はジクロロメタンとして定義され、「THF」はテトラヒドロフランとして定義される。「CHCN」という用語はアセトニトリルを意味し、「KCO」という用語は炭酸カリウムを意味し、「CHOH」という用語はメタノールを意味し、「MgSO」という用語は硫酸マグネシウムを意味し、「NaH」という用語は水素化ナトリウムを意味し、「EtOH」という用語はエタノールを意味し、「TFA」という用語はトリフルオロ酢酸を意味し、「EtOAc」という用語は酢酸エチルを意味する。
【0064】
高性能液体クロマトグラフィー精製法:
−精製法A
生成物を逆相高性能液体クロマトグラフィー(Shandon Hyperprep(R) C18 BDS(塩基不活性化シリカ)8μm,250g,内径 5cm)により精製した。3種の移動相を用いる勾配を適用した(相A:水中の0.25%NHHCO溶液;相B:CHOH;相C:CHCN)。所望の画分を集め、仕上げた。
−精製法B
生成物を逆相高性能液体クロマトグラフィー(Shandon Hyperprep(R) C18 BDS(塩基不活性化シリカ)8μm,250g,内径 5cm)により精製した。3種の移動相を用いる勾配を適用した(相A:水中の0.5%NHOAc溶液の90%+10% CHCN;相B:CHOH;相C:CHCN)。所望の画分を集め、仕上げた。
【0065】
A.中間体の合成
実施例A.1
【0066】
【化9】

【0067】
アセトニトリル(30ml)中のウレア(8ミリモル)、インデン−1,3(2H)−ジオン(7ミリモル)、3−メトキシベンズルデヒド(4ミリモル)及び濃HCl水溶液(20滴)の混合物を、マイクロ波オーブン中で110℃において20分間加熱した。生成物を濾過し、真空下で終夜乾燥した。生成物をアセトニトリル中に懸濁させ、1時間還流させた。固体生成物を濾過し、真空下で終夜乾燥し、中間体(1)を与え、さらなる精製なしで次の反応段階において用いた。
実施例A.2
【0068】
【化10】

【0069】
メタノール(3ml)中の3−ヒドロキシベンズアルデヒド(10ミリモル)、3−メトキシ−1−ブロモプロパン(12ミリモル)及びKCO(10ミリモル)の混合物を、マイクロ波オーブン中で100℃において15分間撹拌し且つ加熱した。得られる混合物を110℃においてさらに25分間加熱した。窒素流下で溶媒を除去し、固体残留物をヘキサンで抽出した(3x50ml)。有機相を濃縮し、1.44gの中間体(2)を与えた。
実施例A.3
【0070】
【化11】

【0071】
メタノール(6ml)中の3−ヒドロキシベンズアルデヒド(2.88g)、1−ブロモブタン(3g)及びKCO(2.8g)の混合物をマイクロ波オーブン中で110℃において30分間反応させた。真空下で溶媒を蒸発させた。得られる固体沈殿をヘプタン(50ml)で処理し、上澄み液をデカンテーションして捨て(3回)、中間体(3)を与え、さらなる分析なしで次の段階においてそのまま用いた。
実施例A.4
【0072】
【化12】

【0073】
メタノール(7ml)中の3−ヒドロキシベンズアルデヒド(21.5ミリモル)、1−(3−ブロモプロポキシ)−4−フルオロ−ベンゼン(21.5ミリモル)及びKCO(23ミリモル)の混合物を、マイクロ波中で100℃において60分間撹拌し且つ加熱した。母液を減圧下で濃縮し、次いで水とDCMの間に分離した。有機層を乾燥し(MgSO)、濃縮し、残留物をシリカゲルカラム上で精製した(溶離剤CHCl/CHOH 100/0から99/1)。生成物画分を集め、溶媒を蒸発させ、2.65gの中間体(4)を与えた。
実施例A.5
【0074】
【化13】

【0075】
メタノール(8ml)中の3−ヒドロキシベンズアルデヒド(25ミリモル)、4−ブロモ−1−ブタノール 1−アセテート(30ミリモル)及びKCO(30ミリモル)の混合物を、マイクロ波中で100℃において60分間撹拌し且つ加熱した。母液を減圧下で濃縮し、次いで水とDCMの間に分離した。有機層を乾燥し(MgSO)、濃縮し、残留物をシリカゲルカラム上で精製した(溶離剤CHCl/CHOH 100
/0から97/3)。所望の生成物画分を集め、溶媒を蒸発させ、1.65gの中間体(5)を与えた。
実施例A.6
【0076】
【化14】

【0077】
アセトニトリル(20ml)中のインデン−1,3(2H)−ジオン(7.5ミリモル)、3−メトキシベンズアルデヒド(5ミリモル)、チオウレア(5ミリモル)及び濃HCl(15滴)の混合物を、マイクロ波中で110℃において30分間加熱した。反応混合物を熱濾過した。固体のフィルター残留物を沸騰するアセトニトリル中で撹拌し、次いで濾過し、真空下に50℃において乾燥した。反応を5回繰り返し、3.3gの中間体(6)を与えた。
【0078】
【化15】

【0079】
DMF(5ml)中の中間体(6)(1.551ミリモル)の溶液を、窒素雰囲気下で撹拌し、次いでNaH(1.6ミリモル)を加え、得られる反応混合物を50℃で30分間撹拌し、次いで冷却した。1−(ブロモメチル)−4−メトキシベンゼン(1.6ミリモル)を加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌した。溶媒を蒸発させた。残留物をCHClとHOに分配した。有機層を分離し、乾燥し(MgSO)、濾過し、溶媒を蒸発させた。残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにより精製した(溶離剤:CHCl/CHOH 99/1)。生成物画分を集め、溶媒を蒸発させた。残留物を真空下に50℃で乾燥し、170mgの中間体(7)を与えた。
【0080】
【化16】

【0081】
窒素雰囲気下における反応。DMF(25ml)中の中間体(7)(4.52ミリモル)、ヨードメタン(5ミリモル)及びKCO(10ミリモル)の混合物を80℃で1時間撹拌した。混合物を冷却し、溶媒を蒸発させた。残留物をDCMと水に分配した。有機層を分離し、乾燥し(MgSO)、濾過し、溶媒を蒸発させた。残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにより精製した(溶離剤:CHCl)。2つの生成物画分を集め、それらの溶媒を蒸発させ、1gの中間体(8)及び0.1gの中間体(9)を与えた。
【0082】
B.化合物の製造
実施例B.1
【0083】
【化17】

【0084】
アセトニトリル(20ml)中の3−メトキシベンズアルデヒド(5ミリモル)、インデン−1,3(2H)−ジオン(7.5ミリモル)及びチオウレア(5ミリモル)の混合物を、室温で撹拌した。濃HCl(10滴)を加え、反応混合物をマイクロ波オーブン中で110℃において22分間加熱した。反応混合物を濾過し、沈殿をアセトニトリルで洗浄し、真空中で乾燥し、0.62gの化合物(1)を与えた。
実施例B.2
【0085】
【化18】

【0086】
化合物(1)(1.5g)を、超臨界流体クロマトクラフィー(SFC,カラム:Diacel AS−H 20x250mm,移動相:40%MeOH/60%CO+0.2%イソプロピルアミン,40℃及び100バールにおけるアイソクラチック)を介するエナンチオマー分離に供した。2つの生成物画分のグループを集め、それらの溶媒を蒸発させ、化合物(2)及び化合物(3)を与えた。
実施例B.3
【0087】
【化19】

【0088】
中間体(1)(0.8ミリモル)、(ブロモメチル)ベンゼン(1ミリモル)及びKCO(1ミリモル)をアセトニトリル(40ml)に加えた。反応混合物を室温で終夜撹拌し、次いで水で2回洗浄した。生成物の混合物を最初にシリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し(溶離剤:CHCl/CHOH 90/10)、次いでHPLC方法Aによりさらに精製した。所望の生成物画分を集め、溶媒を蒸発させた。残留物にメタノールを加え、混合物を蒸発させた。固体残留物を真空下で乾燥し、化合物(4)を与えた。
実施例B.4
【0089】
【化20】

【0090】
アセトニトリル(20ml)中の3,5−ジメトキシベンズアルデヒド(6.5ミリモル)、インデン−1,3(2H)−ジオン(9.7ミリモル)及びチオウレア(6.5ミ
リモル)の混合物を、室温で撹拌した。濃HCl(15滴)を加え、反応混合物をマイクロ波オーブン中で110℃において22分間加熱した。反応混合物を濾過し、赤色の沈殿をアセトニトリルで洗浄し、真空中で乾燥した。この画分をメタノール及びいくらかの2−プロパノン下で磨砕し、濾過し、乾燥し、0.6gの化合物(5)を与えた。
実施例B.5
【0091】
【化21】

【0092】
アセトニトリル(20ml)中の3−ヒドロキシベンズアルデヒド(5ミリモル)、インデン−1,3(2H)−ジオン(7.5ミリモル)及びチオウレア(5ミリモル)の混合物を、室温で撹拌した。濃HCl(15滴)を加え、反応混合物をマイクロ波オーブン中で110℃において22分間加熱した。反応混合物をマイクロ波オーブン中で110℃においてさらに22分間加熱した。反応混合物を室温で撹拌し、DIPE(±5ml)をゆっくり滴下した。室温で撹拌を続け、10分後に赤色の沈殿が生成した。これを濾過し、CHCN/DIPE(3/1)の混合物で洗浄し、続いてDIPEで洗浄し、次いで真空中で乾燥した。得られる画分をCHOH/CHCNから再結晶し、濾過し、乾燥し、0.122gの化合物(6)を与えた。
実施例B.6
【0093】
【化22】

【0094】
アセトニトリル(20ml)中の中間体(2)(5ミリモル)、インデン−1,3(2H)−ジオン(7.5ミリモル)及びチオウレア(5ミリモル)を、室温で撹拌した。濃HCl(15滴)を加え、反応混合物をマイクロ波オーブン中で110℃において25分間加熱した。沈殿が生成し、それを濾過し、アセトニトリルで洗浄した。生成物画分の一部(0.5g)をエタノール(20ml)下で磨砕し、濾過し、乾燥し、0.47gの化合物(7)を与えた。
実施例B.7
【0095】
【化23】

【0096】
アセトニトリル(20ml)中の3−フルオロベンズアルデヒド(5ミリモル)、イン
デン−1,3(2H)−ジオン(7.5ミリモル)及びチオウレア(5ミリモル)の混合物に濃HCl(15滴)を加えた。得られる反応混合物をマイクロ波オーブン中で110℃において25分間加熱した。沈殿が生成し、それを濾過し、アセトニトリルで洗浄し、350mgの化合物(8)を与えた。
実施例B.8
【0097】
【化24】

【0098】
濃HCl(15滴)を含むアセトニトリル(20ml)中のインデン−1,3(2H)−ジオン(5ミリモル)、インデン−1,3(2H)−ジオン(7.5ミリモル)及びチオウレア(5ミリモル)の混合物を、マイクロ波オーブン中で110℃において22分間加熱した。反応混合物を80℃で終夜撹拌し、次いで沈殿を熱濾過し、アセトニトリルで洗浄し、次いで乾燥した。この画分を80℃においてメタノール(8ml)下に2時間磨砕し、濾過し、乾燥し、0.29gの化合物(9)を与えた。
実施例B.9
【0099】
【化25】

【0100】
アセトニトリル(20ml)中の2−フルオロ−5−メトキシベンズアルデヒド(5ミリモル)、インデン−1,3(2H)−ジオン(7.5ミリモル)及びチオウレア(5ミリモル)の混合物を、室温で撹拌した。濃HCl(15滴)を加え、反応混合物をマイクロ波オーブン中で110℃において25分間加熱した。沈殿が生成し、それを濾過し、アセトニトリルで洗浄した。この画分をメタノール下に磨砕し、濾過し、乾燥し、0.53gの化合物(10)を与えた。
実施例B.10
【0101】
【化26】

【0102】
アセトニトリル(20ml)中の3−ブロモベンズアルデヒド(5ミリモル)、インデン−1,3(2H)−ジオン(7.5ミリモル)及びチオウレア(5ミリモル)の混合物を、室温で撹拌した。濃HCl(15滴)を加え、反応混合物をマイクロ波オーブン中で110℃において25分間加熱した。反応混合物を80℃でさらに2時間撹拌し、次いで
熱時に濾過し、アセトニトリルで洗浄した。得られる画分をメタノール(10ml)下に80℃で2時間磨砕した。沈殿を濾過し、乾燥し、0.73gの化合物(11)を与えた。
実施例B.11
【0103】
【化27】

【0104】
アセトニトリル(20ml)中の1,3−ベンゾジオキソール−4−カルボキシアルデヒド(5ミリモル)、インデン−1,3(2H)−ジオン(7.5ミリモル)及びチオウレア(5ミリモル)の混合物を、室温で撹拌した。濃HCl(15滴)を加え、反応混合物をマイクロ波オーブン中で110℃において22分間加熱した。次いで反応混合物をマイクロ波オーブンの外で80℃においてさらに2時間撹拌した。黄オレンジ色の沈殿が生成し、それを濾過し、アセトニトリルで洗浄した。この生成物画分の一部を、80℃において1N HCl水溶液(4ml)及びメタノール(2ml)で1.5時間処理した。冷却及び濾過の後、生成物画分をメタノール下で磨砕し、濾過し、乾燥し、0.081gの化合物(12)を与えた。
実施例B.12
【0105】
【化28】

【0106】
アセトニトリル(20ml)中の3−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンズアルデヒド(5ミリモル)、インデン−1,3(2H)−ジオン(7.5ミリモル)及びチオウレア(5ミリモル)の混合物を撹拌した。濃HCl(15滴)を加え、反応混合物をマイクロ波オーブン中で110℃において22分間加熱した。反応混合物を80℃でさらに2時間撹拌した。沈殿が生成し、それを熱時に濾過し、アセトニトリルで洗浄した。この画分をメタノール下で磨砕し、次いで沈殿を濾過し、乾燥し、0.366gの化合物(13)を与えた。
実施例B.13
【0107】
【化29】

【0108】
アセトニトリル(20ml)中の3−(ヒドロキシメチル)ベンズアルデヒド(5ミリ
モル)、インデン−1,3(2H)−ジオン(7.5ミリモル)及びチオウレア(5ミリモル)の混合物を室温で撹拌した。濃HCl(15滴)を加え、反応混合物をマイクロ波オーブン中で110℃において22分間加熱した。次いで反応混合物を、マイクロ波オーブンの外で80℃においてさらに2時間撹拌した。室温でさらに24時間撹拌した後、黄オレンジ色の沈殿が生成し、それを濾過し、アセトニトリルで洗浄した。この生成物画分をメタノール下で磨砕し、濾過し、乾燥し、0.200gの化合物(14)を与えた。
実施例B.14
【0109】
【化30】

【0110】
アセトニトリル(20ml)中の2,5−ジメトキシベンズアルデヒド(5ミリモル)、インデン−1,3(2H)−ジオン(7.5ミリモル)及びチオウレア(5ミリモル)の混合物を室温で撹拌した。濃HCl(15滴)を加え、反応混合物をマイクロ波オーブン中で110℃において22分間加熱した。反応混合物を80℃でさらに2時間撹拌した。沈殿が生成し、それを熱時に濾過し、アセトニトリルで洗浄した。得られる画分をメタノール下で磨砕し、濾過し、乾燥し、0.380gの化合物(15)を与えた。
実施例B.15
【0111】
【化31】

【0112】
アセトニトリル(20ml)中の2−フルオロ−3−メトキシベンズアルデヒド(5ミリモル)、インデン−1,3(2H)−ジオン(7.5ミリモル)及びチオウレア(5ミリモル)の混合物を撹拌した。濃HCl(15滴)を加え、反応混合物をマイクロ波オーブン中で110℃において22分間加熱した。反応混合物を80℃でさらに2時間撹拌した。沈殿が生成し、それを熱時に濾過し、アセトニトリルで洗浄した。画分をメタノール下で磨砕し、濾過し、乾燥し、0.340gの化合物(16)を与えた。
実施例B.16
【0113】
【化32】

【0114】
アセトニトリル(15ml)中の中間体(2)(2.3ミリモル)、インデン−1,3(2H)−ジオン(3.5ミリモル)及びウレア(2.3ミリモル)の混合物を室温で撹
拌した。濃HCl(7滴)を加え、反応混合物をマイクロ波オーブン中で110℃において30分間加熱した。次いで反応混合物を、マイクロ波オーブンの外で80℃において終夜撹拌した。黄色の沈殿を濾過し、アセトニトリルで洗浄し、真空中で乾燥し、0.180gの化合物(17)を与えた。
実施例B.17
【0115】
【化33】

【0116】
化合物(17)(0.329ミリモル)を調製的SFC精製(カラム:Diacel AS−H 20x250mm,移動相:35%MeOH/65%CO+0.2%イソプロピルアミン,40℃及び100バールにおけるアイソクラチック)により、エナンチオマーに分離した。2つの生成物画分のグループを集めた。両画分を蒸発させ、各残留物をアセトニトリルから結晶化させ、濾過し、真空下で乾燥し、43mgの化合物(18)及び35mgの化合物(19)を与えた。
実施例B.18
【0117】
【化34】

【0118】
アセトニトリル(20ml)中の2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキシン−5−カルボキシアルデヒド(2.5ミリモル)、1,3−シクロペンタンジオン(3.75ミリモル)及びチオウレア(2.5ミリモル)の混合物を室温で撹拌した。濃HCl(10滴)を加え、反応混合物をマイクロ波オーブン中で110℃において22分間加熱した。反応混合物を80℃でさらに2時間撹拌した。沈殿が生成し、それを熱時に濾過し、アセトニトリルで洗浄した。この画分を熱メタノール下で磨砕し、濾過し、乾燥し、0.195gの化合物(20)を与えた。
実施例B.19
【0119】
【化35】

【0120】
アセトニトリル(20ml)中のチオウレア(5ミリモル)、中間体(3)(5ミリモル)、インデン−1,3(2H)−ジオン(5ミリモル)及びHCl(6滴)の混合物を、マイクロ波オーブン中で110℃に25分間加熱し、次いでマイクロ波オーブンの外で80℃において終夜撹拌し且つ加熱した。混合物を熱時に濾過し、固体を80℃の還流においてメタノールで2時間処理した。得られる沈殿を熱時に濾過し、0.650gの化合物(21)を与えた。
実施例B.20
【0121】
【化36】

【0122】
アセトニトリル(20ml)中の3−(2−ジエチルアミノエトキシ)ベンズアルデヒド(5ミリモル)、インデン−1,3(2H)−ジオン(7.5ミリモル)及びチオウレア(5ミリモル)の混合物を室温で撹拌した。濃HCl(15滴)を加え、反応混合物をマイクロ波オーブン中で110℃において30分間加熱した。反応混合物を110℃でさらに30分間撹拌し、次いで真空中で濃縮した。残留物をHPLC方法Bにより精製した。所望の生成物画分を、デカンテーションにより別々に集めた。得られる固体をメタノール中に溶解し、溶液を再び濃縮し、0.075gの化合物(22)を与えた。
実施例B.21
【0123】
【化37】

【0124】
アセトニトリル(20ml)中の中間体(4)(2.5ミリモル)、インデン−1,3(2H)−ジオン(3.75ミリモル)及びチオウレア(2.5ミリモル)の混合物を室温で撹拌した。濃HCl(10滴)を加え、反応混合物をマイクロ波オーブン中で110℃において25分間加熱した。反応混合物を80℃でさらに2時間撹拌した。沈殿が生成し、それを熱時に濾過し、アセトニトリルで洗浄し、濾過し、乾燥した。この画分を熱メタノール下で磨砕し、濾過し、乾燥し、0.423gの化合物(23)を与えた。
実施例B.22
【0125】
【化38】

【0126】
アセトニトリル(20ml)中の3−[3−(ジメチルアミノ)プロポキシ]ベンズアルデヒド(4.8ミリモル)、1,3−シクロペンタンジオン(7.2ミリモル)及びチオウレア(4.8ミリモル)の混合物を室温で撹拌した。濃HCl(25滴)を加え、反応混合物をマイクロ波オーブン中で110℃において30分間加熱した。反応混合物を80℃でさらに2時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、HPLC方法Bにより精製した。生成物を含有する画分を濃縮し、残留物をメタノール下に80℃において磨砕し、次いで濾過し、乾燥し、0.050gの化合物(24)を与えた。
実施例B.23
【0127】
【化39】

【0128】
アセトニトリル(20ml)中の中間体(5)(2.5ミリモル)、インデン−1,3(2H)−ジオン(3.75ミリモル)及びチオウレア(2.5ミリモル)の混合物を室温で撹拌した。濃HCl(10滴)を加え、反応混合物をマイクロ波オーブン中で110℃において22分間加熱した。反応混合物を80℃でさらに2時間撹拌した。沈殿が生成し、それを熱時に濾過し、アセトニトリルで洗浄した。この画分を熱メタノール下で磨砕し、次いでHPLC方法Aによりさらに精製した。2つの生成物画分を集め、それらの溶媒を蒸発させ、0.135gの化合物(25)及び0.020gの化合物(26)を与えた。
実施例B.24
【0129】
【化40】

【0130】
TFA(15ml)中の中間体(8)(2.19ミリモル)の混合物を、マイクロ波オーブン中で110℃において10分間撹拌し、次いで反応混合物を冷却し、溶媒を蒸発させた。残留物をEtOAc中で撹拌した。沈殿を濾過し、新しい沸騰酢酸エチル中で撹拌し、次いで生成物画分を濾過し、乾燥し(真空,50℃)、190mgの化合物(27)を与えた。
実施例B.25
【0131】
【化41】

【0132】
TFA(1.5ml)中の中間体(9)(0.219ミリモル)の混合物を、マイクロ波オーブン中で110℃において20分間加熱した。溶媒を蒸発させ、残留物を酢酸エチル中に溶解した。有機溶液を水で洗浄し、次いで有機層を分離し、乾燥し(MgSO)、濾過し、溶媒を蒸発させた。残留物をHPLC方法Bにより精製した。生成物画分を集め、溶媒を蒸発させた。残留物を真空下に、50℃において乾燥し、7mgの化合物(28)を与えた。
実施例B.26
【0133】
【化42】

【0134】
アセトニトリル(20ml)中のインデン−1,3(2H)−ジオン(7.527ミリモル)、3−(3−メトキシプロポキシ)ベンズアルデヒド(4.994ミリモル)、チオウレア(0.4992ミリモル)及び濃HClの混合物を、マイクロ波中で110℃において25分間加熱した。得られる沈殿を濾過し、沸騰EtOH中に懸濁させた。沈殿を濾過し(混合物がまだ熱い間に)、次いで真空下に50℃において乾燥した。得られる画分を調製的SFC精製(カラム:Diacel AS−H 30x250mm,移動相:40%MeOH/60%CO+0.2%イソプロピルアミン,40℃及び100バールにおけるアイソクラチック)により、そのエナンチオマーに分離した。2つの生成物画分のグループを集め、それらの溶媒を蒸発させた。各残留物をアセトニトリルから結晶化させ、濾過し、真空下で乾燥し、化合物(29)及び化合物(30)を与えた。
実施例B.27
【0135】
【化43】

【0136】
アセトニトリル(20ml)中のインデン−1,3(2H)−ジオン(6ミリモル)、4’−トリフルオロメチルビフェニル−3−カルボキシアルデヒド(3.996ミリモル)、チオウレア(3.996ミリモル)及び濃HClの混合物を、マイクロ波オーブン中で110℃において30分間加熱した。得られる固体を濾過し、真空下で乾燥した。この生成物画分を沸騰メタノール中で撹拌し、熱時に濾過し、次いで真空下に50℃において乾燥し、340mgの化合物(31)を与えた。
実施例B.28
【0137】
【化44】

【0138】
DMF(6ml)中のインデン−1,3(2H)−ジオン(5.5ミリモル)、5−ブロモ−3−ピリジンカルボキシアルデヒド(5ミリモル)、チオウレア(20ミリモル)及び塩化カルシウム(0.5ミリモル)の混合物を、マイクロ波オーブン中で130℃において80分間反応させた。反応混合物を冷却し、次いで水中に注いだ。得られる沈殿を濾過し、沸騰アセトニトリル中で撹拌した。沈殿を再び濾過し、乾燥した(真空,50℃)。得られる画分を高性能液体クロマトグラフィーにより精製した。生成物画分を集め、生成する沈殿を濾過し、水で洗浄し、次いで真空下に50℃において乾燥した。生成物画分を沸騰メタノール中で撹拌し、熱時に濾過し、次いで真空下に50℃において乾燥し、100mgの化合物(32)を与えた。
【0139】
表1は、上記の実施例の1つに従って製造された化合物を挙げている。
【0140】
【表1−1】

【0141】
【表1−2】

【0142】
【表1−3】

【0143】
HPLC方法A
生成物を逆相高性能液体クロマトグラフィー(Shandon Hyperprep(R) C18 BDS(塩基不活性化シリカ)8μm,250g,内径 5cm)により精製した。3種の移動相を用いた(相A:水中の0.5%NHOAc溶液の90%+10% CHCN;相B:CHOH;相C:CHCN)。最初に、40ml/分の流
量を用いて75%A及び25%Bを0.5分間保持した。次いで80ml/分の流量を用いて、41分内に50%B及び50%Cへの勾配を適用した。次いで80ml/分の流量を用いて20分内に100%Cへの勾配を適用し、4分間保持した。
HPLC方法B
生成物を逆相高性能液体クロマトグラフィー(Shandon Hyperprep(R) C18 BDS(塩基不活性化シリカ)8μm,250g,内径 5cm)により精製した。3種の移動相を用いた(相A:水中の0.25%NHHCO溶液;相B:CHOH;相C:CHCN)。最初に40ml/分の流量を用いて、75%A及び25%Bを0.5分間保持した。次いで80ml/分の流量を用いて、41分内に50%B及び50%Cへの勾配を適用した。次いで80ml/分の流量を用いて20分内に100%Cへの勾配を適用し、4分間保持した。
HPLC方法C
生成物を逆相高性能液体クロマトグラフィー(Shandon Hyperprep(R) C18 BDS(塩基不活性化シリカ)8μm,250g,内径 5cm)により精製した。3種の移動相を用いた(相A:水中の0.25%NHHCO溶液;相B:CHOH;相C:CHCN)。最初に40ml/分の流量を用いて、75%A及び25%Bを0.5分間保持した。次いで80ml/分の流量を用いて、41分内に100%Bへの勾配を適用した。次いで80ml/分の流量を用いて20分内に100%Cへの勾配を適用し、4分間保持した。
【0144】
C.分析の部
C.1.LC−MS 一般的方法1
LC測定は、バイナリーポンプ、サンプルオルガナイザー、カラムヒーター(55℃に設定)、ダイオードアレー検出器(DAD)及び下記のそれぞれの方法において特定されるカラムを含んでなるAcquity UPLC(Waters)システムを用いて行なわれた。カラムからの流れはMS分光計に分けられた。MS検出器は、エレクトロスプレーイオン化源を用いて形成された。0.02秒の滞留時間を用いて0.18秒内に100から1000まで走査することにより、質量スペクトルを取得した。毛管針電圧は3.5kVであり、源温度は140℃に保たれた。ネブライザーガスとして窒素を用いた。Waters−Micromass MassLynx−Openlynxデータシステムを用いてデータ取得を行なった。
【0145】
架橋エチルシロキサン/シリカハイブリッド(BEH) C18カラム(1.7μm,2.1x50mm;WatersAcquity)上で、0.8ml/分の流量を用い、逆相UPLC(超性能液体クロマトグラフィー(Ultra Performance Liquid Chromatography))を行なった。2種の移動相(移動相A:HO中の0.1%ギ酸/メタノール 95/5;移動相B:メタノール)を用い、1.3分内に95%A及び5%Bから5%A及び95%Bにし、0.2分間保持する勾配条件を実施した。0.5μlの注入容積を用いた。コーン電圧は、正のイオン化モードの場合に10Vであり、負のイオン化モードの場合に20Vであった。
【0146】
【表2】

【0147】
C.3 融点
複数の化合物に関し、DSC823e(Mettler−Toledo)を用いて融点(m.p.)を決定した。30℃/分の温度勾配を用いて融点を測定した。報告される値はピーク値である。最高温度は400℃であった。値は、この分析法に通常伴う実験的な不確かさを以て得られる。
【0148】
【表3】

【0149】
C.4 旋光度
Perkin Elmer 341偏光計を用いて旋光度を測定した。[α]20は、20℃の温度でナトリウムのD−線の波長(589nm)における光を用いて測定される旋光度を示す。セルの路長は10cmである。実際の値の後に、旋光度の測定に用いられた溶液の濃度及び溶媒を挙げる。
【0150】
【表4】

【0151】
D.薬理学的実施例
細胞及び培養
ヒトTRPA1遺伝子をpT−REx−Dest30誘導可能ベクター(inducible vector)中にクローニングし、後にT−RexTM−293細胞(Invitrogen,Merelbeke,Belgiumから購入した)中に安定にトランスフェクションした。持続的なTRPA1発現の故の培養細胞におけるCa2+過剰負荷(overload)を妨げるために、このテトラサイクリン誘導hTRPA1発現系を用いた。hTRPA1/TREx−HEK293細胞(以下の文中ではhTRPA1細胞と言う)を標準的な無菌の細胞培養条件下に保持した。hTRPA1−HEK細胞のための培地は、0.5g/lのジェネテシン(geneticin)(Gibco)、5mg/lのブラスチシジン(blasticidin)(invitrogen)、14.6g/lのL−グルタミン(200mM;Gibco)、5g/lのペニシリン/ストレプトマイシン(5.10−6IU/l,Gibco)、5.5g/lのピルビン酸(Gibco)及び10%の胎児ウシ血清(Hyclone,Logan UT,USA)が補足されたDMEM(Gibco BRL,Invitrogen,Merelbeke,Belgium)であった。
【0152】
Ca2+蛍光分析
TRPA1イオン−チャンネルへのアゴニストの結合はイオン−チャンネルを活性化して開き、それは細胞内Ca2+濃度を大きく増加させる(cause a robust
increase)。細胞内Ca2+濃度の検出及び測定のために、細胞にCa2+−感受性染料を負荷した。細胞内のCa2+濃度における変化に対応する細胞内の蛍光における変化を、FDSS測定器(Hamamatsu)を用いて速度論的に監視することができ、それはTRPA1イオンチャンネルに向かうアゴニズムを示しており、これをTRPA1−受容体アンタゴニストにより減少させることができる。
【0153】
蛍光分析的Ca2+測定のために、hTRPA1−HEK細胞をHBSS播種培地中に再懸濁させた:14.6g/lのL−グルタミン(200mM;Gibco)、5g/lのペニシリン/ストレプトマイシン(5.10−6IU/l,Gibco)、5.5g/lのピルビン酸(Gibco)、5mMのHEPES(Gibco)、5mlのインスリン−トランスフェリン−クセレニウム−x(Gibco)及び10%の胎児ウシ血清(56℃において30分間熱不活化,Hyclone,Logan UT,USA)が補足されたHBSS(CaCl及びMgClを含む;Gibco)。ポリ−D−リシンがコーティングされた384−ウェル丸底ポリプロピレンプレート(Costar Corning,Data Packaging,Cambridge MA,USA)中に、ウェル当たり12000個の細胞において細胞を播種した。実験から24時間前に、50n
g/mlのテトラサイクリンを加え、hTRPA1発現を誘導した。
【0154】
0.7g/lのProbenecid(Sigma)が補足されたHBSS播種培地中に溶解された5mg/lのFluo4−AM(Molecular Probes,Invitrogen,Merelbeke,Belgium)を細胞に負荷し、37℃で1時間及び続いて20℃で1〜2時間インキュベーションした。FDSS 6000画像法に基づくプレートリーダー(Hamamutsu Photonics K.K.,Hamamutsu City,Japan)において蛍光を測定した。励起波長は488nmであり、発光波長は540nmであった。12秒間の制御時間(control period)の後、JNJ化合物を加え、Ca2+シグナルを適用から後の14分以内に測定した。最後に、標準のTRPA1アゴニストである11H−ジベンゾ[b,e]アゼピン−10−カルボン酸メチルエステル[その合成を本明細書下記に化合物(D−6)として記載する]又はBITC(ベンジルイソチオシアナート,FLUKA)を、25nMの最終的な濃度で加えた。この案は、アゴニズム(TRPA1アゴニスト化合物が加えられた時間枠(time window)内に)及びアンタゴニズム(化合物の予備−適用が標準アゴニストのアゴニスト効果を減じるかどうかを調べることにより)の研究を可能にする。背景蛍光を補償するために、発光シグナル(Em540)を制御時間の最初のEm540シグナルで割ることにより、発光比を計算した。384ウェルプレート毎に4系列のDMSO標準実験を行い、その中の2系列は標準アゴニストである11H−ジベンゾ[b,e]アゼピン−10−カルボン酸メチルエステル又はBITCを含み、2系列は含まなかった。細胞内Ca2+測定のために、化合物の倍液(10又は100mM)をさらにDMSO中で希釈して、最終的に細胞外溶液中の1%DMSOを得た。
【0155】
11H−ジベンゾ[b,e]アゼピン−10−カルボン酸メチルエステル又はBITCを用いて決定される記載される化合物のアンタゴニズム値は、互いに良く一致することが見出された。TRPA1アゴニストとして11H−ジベンゾ[b,e]アゼピン−10−カルボン酸メチルエステルを用いて測定されたIC50値を表5に挙げる。
【0156】
【表5】

【0157】
TRPA1アゴニスト11H−ジベンゾ[b,e]アゼピン−10−カルボン酸メチルエステル(化合物(D−6))の合成
【0158】
【化45】

【0159】
2−プロパノール(100mL)中の2−アミノ−ベンゼンメタノール(0.073モル)及び3−ブロモ−ベンズアルデヒド(0.073モル)の混合物を室温で3時間撹拌した。溶媒を蒸発させた。残留物(20.5g)の一部(3g)をヘキサンから結晶化させた。沈殿を濾過し、乾燥し、1.37gの化合物(D−1)を与えた。
【0160】
【化46】

【0161】
窒素雰囲気下における反応。エタノール(200mL)中の化合物(D−1)(0.0586モル)の混合物に、水素化ホウ素ナトリウム(0.1172モル)をゆっくり加えた。反応混合物を1時間撹拌し且つ還流させた。混合物を氷−水浴上で冷却し、NHCl 20%でクエンチングし、CHClで抽出した。有機層を乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させ、14.8gの化合物(D−2)を与えた。
【0162】
【化47】

【0163】
CHCl(50mL)中の化合物(D−2)(0.180モル)の溶液を、冷却された(±−10〜−20℃)濃HSOの溶液(500mL)に1時間かけて加えた。次いで氷−浴を除去し、混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物を氷−水に加え、氷上で冷却し、50%NaOH水溶液を用いてアルカリ性化した。得られる混合物(±3L)をCHClで抽出した。有機層を分離し、MgSO上で乾燥し、濾過し、濾液を真空中で濃縮した。この残留物の一部(8g)を、超臨界流体クロマトグラフィー(SFC,カラム:Diacel AD−H 30x250mm,移動相:55%MeOH/45%CO+0.2%イソプロピルアミン,40℃,100バール)を介して精製し、2gの化合物(D−4)(7−ブロモ−異性体)及び4.65gの化合物(D−3)(9−ブロモ−異性体を与えた。
【0164】
【化48】

【0165】
メタノール(100mL)及びTHF(100mL)中の化合物(D−4)(0.008モル)、酢酸カリウム(4g)、Pd(OAc)(0.04g)及び1,1’−(1,3−プロパンジイル)ビス[1,1−ジフェニル−ホスフィン(0.16g)の混合物を圧力反応器中に入れ、COガスで50kg/平方cmまで加圧した。反応混合物を125℃で16時間加熱し、次いで冷却し、ジカライト上で濾過し、溶媒を蒸発させた。残留物をCHClと水に分配した。有機層をMgSO上で乾燥し、濾過し、次いで濾液を濃縮した。残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにより精製した(溶離剤:CHCl)。所望の画分を集め、溶媒を蒸発させ、1.86gの化合物(D−5)を与えた。
【0166】
【化49】

【0167】
トルエン(20mL)中の化合物(D−5)(0.00735モル)及び酸化マンガン(0.0367モル)の混合物を90℃で4時間撹拌した。反応混合物をシリカゲルパッド上で濾過した(溶離剤:トルエン、次いでCHCl)。(黄色の)CHCl層を濃縮した。残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにより精製した(溶離剤:ヘプタン/EtOAc 100/0から70/30)。生成物画分を集め、溶媒を蒸発させた。残留物をDIPE下で磨砕し、濾過し、乾燥し、1.35gの11H−ジベンゾ[b,e]アゼピン−10−カルボン酸メチルエステルを化合物(D−6)として与えた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体化学的異性体を含む式(I)
【化1】

[式中、
及びAは両方ともCRであるか、あるいはA又はAの1つはNであり、他はCRであり、ここで各Rは独立して水素、ハロ、C1−6アルキル、C1−6アルキルオキシ、ポリハロC1−6アルキル又はポリハロC1−6アルキルオキシから選ばれ;B、B、B及びBはすべてCHであるか、又はB、B、B及びBの1つはNであり、他はCHであり;
XはO又はSであり;
はハロ、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、C1−6アルキル、ヒドロキシC1−6アルキル、C1−6アルキルオキシ、ポリハロC1−6アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ又はORであり、ここでRはヒドロキシ、C1−4アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、C1−4アルキルカルボニル、C1−4アルキルカルボニルオキシ又はNRで置換されたC1−6アルキルであり、ここでR及びRはそれぞれ独立して水素又はC1−4アルキルから選ばれ;
は水素、フルオロ、C1−4アルキル又はC1−4アルキルオキシであり;
且つR及びRは一緒になって−O−CH−O−又は−O−CH−CH−O−基を形成することができ;
は水素、C1−4アルキル又はアリールC1−2アルキルであり;
は水素、C1−4アルキル又はアリールC1−2アルキルであり;
各アリールは互いに独立して、水素、ハロ、ヒドロキシ、C1−4アルキル、ポリハロC1−4アルキル、C1−4アルキルオキシ、ポリハロC1−4アルキルオキシ、シアノ、ニトロ、アミノ又はモノ−もしくはジ−(C1−4アルキル)アミノからそれぞれ独立して選ばれる1、2又は3個の置換基で置換されたフェニルから選ばれ;
但し、XがOであり、且つA及びAが両方ともCRであり、ここでRが水素であり、且つRが水素又はC1−4アルキルオキシであり、且つR及びRが水素である場合、Rはハロ、C1−6アルキル又はC1−6アルキルオキシではない]
の化合物あるいはその製薬学的に許容され得る酸付加塩又はその溶媒和物又はそのN−オキシド。
【請求項2】
、B、B及びBがすべてCHである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
XがSである請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
及びAが両方ともCRであり、ここで各Rは独立して水素又はハロから選ばれる請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
化合物がで記されるキラル炭素原子においてR−立体配置を有する請求項1に記載の化合物。
【化2】

【請求項6】
少なくとも1種の製薬学的に許容され得る担体及び請求項1〜5のいずれかに従う化合物の治療的に活性な量を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに従う化合物の治療的に活性な量を製薬学的に許容され得る担体と緊密に混合する請求項6に従う製薬学的組成物の調製方法。
【請求項8】
薬剤として使用するための請求項1〜5のいずれかに従う化合物。
【請求項9】
a)1,3−ジカルボニル中間体(III)、アルデヒド(IV)及び(チオ)ウレア(V)の間の縮合反応によるか、
【化3】

あるいは
b)式(I)の化合物を当該技術分野において既知の変換反応に従って互いに転換するか;あるいは必要なら;式(I)の化合物を製薬学的に許容され得る酸付加塩に転換するか、又は逆に、アルカリを用いて式(I)の化合物の酸付加塩を遊離の塩基形態に転換し;そして必要なら、その立体化学的異性体を製造する
式(I)の化合物の製造方法。

【公表番号】特表2011−521928(P2011−521928A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511021(P2011−511021)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056593
【国際公開番号】WO2009/147079
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(390033008)ジヤンセン・フアーマシユーチカ・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (616)
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN PHARMACEUTICA NAAMLOZE VENNOOTSCHAP
【Fターム(参考)】