説明

3Dインクジェットプリンティングによるセラミック成形本体の生産力のある調製のためのプロセス

【課題】高い機械的負荷容量および良好な視覚的特性(すなわち、できるだけ自然な外観)を有する歯科修復物の調製を可能にするプロセスを提供すること。
【解決手段】本発明は、成形本体の生産力のある調製のためのプロセスであって、ここで(a)セラミックスリップは、層をなして支持体に付与されて、硬化され、(b)さらなる層は、工程(a)からの硬化された層に付与されて、硬化され、(c)工程(b)は所望される幾何学的形を有する本体が得られるまで反復され、(d)上記本体は次に、化学処理または熱処理に供されて、結合剤を除去(脱脂)され、そして(e)工程(d)からの上記本体が焼結され、ここで少なくとも2つの異なって構成されたセラミックスリップが層の調製のために工程(a)および(b)において使用される、プロセスを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック成形部分、および特に三次元プリンティングによる歯科修復物の調製のためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる「建設的プロセス」は、成形本体の調製のために、ますます使用されている。用語「生産力のある製造プロセス」は、これらの「建設的」可能性に対する同義語として、しばしば使用される。これらの用語は、種々の生産力のある製造プロセスを含み、ここで三次元モデルまたは構成要素は、コンピューター援用設計データ(CADデータ)から調製される(A.Gebhardt,Vision of Rapid Prototyping,Ber.DGK 83(2006)7−12)。代表的な生産力のある製造プロセスの例は、ステレオリソグラフィー、3Dプリンティング、およびインクジェットモデリングである。ラピッドプロトタイピングの原理は、三次元の構成要素の層状構築物に基づく。二次元の層(xy面)は、互いの上に置かれる。層の厚さに依存して、構成要素のより大きな、またはより小さなグラデーションが、構築の方向をもたらす(z方向)。
【0003】
概して、インクジェットプリンティングの2つの異なる方法が、現在、三次元本体の調製のために使用されている。第一の方法において、結合剤溶液は、粉末ベッド(powder−bed)層の上へとプリンティングされる。この結合剤は、粉末粒子を「接着し」、従って、それらを適所に固定する。さらなる粉末層の新たな付与およびその粉末層への結合剤の新たなプリンティングによって、三次元の本体は、従って、層をなして生成され得る。一旦、プリンティングプロセスが完了すると、成形本体は粉末充填ベッドから取り出され、余剰の粉末が除去される。生成された成形本体は、例えば、プラスチックから調製されている場合に、即座に使用され得る。成形本体がセラミック粒子からなり、最終的に高密度セラミック構成要素を作り出すべき場合、熱によるプロセス工程は、依然として行われなければならず、ここで成形本体は、脱脂(debinder)され、高密度に焼結される。脱脂の間に、有機結合剤は、熱分解される。この場合の脱脂および焼結のプロセスパラメーターは、結合剤のタイプおよび割合およびセラミック材料に、とりわけ、基づく。最終の表面処理(例えば、研磨または艶出し)は、しばしば必要である。
【0004】
特許文献1は、歯科修復物の調製のためのこのようなプロセスの使用を記載する。このプロセスの不利な点は、粉末ベッドの低い充填密度および結合剤が燃え尽きた後の3D物体の結果として生じる高い多孔性に起因して、高密度焼結成形体を得ることが非常に難しいことである。このプロセスに従って、理論上の密度の50%未満の成形本体の密度は、通常、脱脂後に達成され得、理論上の密度の95%未満の密度は、高密度焼結後に達成され得る。低密度の成形本体は、不十分な最終強度をもたらすのみであり、その結果、本体は歯科用ワークピースとして、ほとんど使用できない。
【0005】
第二の方法において、固体粒子で満たされたインクが使用され、三次元本体は、それらから直接プリンティングされる。この方法において、粉末充填ベッドは、必要とされない。ここでまた、三次元本体は、それぞれの場合に、二次元層(xy面)をプリンティングし、硬化することによって、層をなして構築される。硬化は、例えば、重合、乾燥、または冷却による凝固によって行われ得る。同時に、容易に取り出し可能な支持材料がプリンティングされ得、それは張り出した領域をプリンティングすることを可能にする。互いの上への、モデリングの層および必要に応じて支持材料の層の反復プリンティング(z方向)は、三次元の物体を作り出す。例えば、支持材料の選択的な化学的溶解によって、プリンティングされた物体を支持構造物から分離後、3D構成要素が存在する。
【0006】
特許文献2は、50重量%〜80重量%のセラミック粒子、水性ベーマイトゾル、低分子アルコール、乾燥抑制剤および有機液化剤(liquefier)を含む懸濁物の層状インクジェットプリンティング、その後、層状複合材の乾燥および硬化によるセラミック成形本体の調製のためのプロセスを開示する。個々の層のそれぞれは、好ましくは、次の層が付与される前に乾燥され、完全な三次元本体の構築後の最終の乾燥が、同様に好ましい。上記プロセスは、歯のインプラント、インレー、クラウン、およびブリッジの調製に適しているべきである。不利な点は、個々のプリンティングされた層のそれぞれが乾燥されなければならないように、このプロセスに必要とされる例外的に長い時間である。
【0007】
特許文献3は、ホットメルトインクジェットプロセスによるセラミック成形部分の調製を記載する。この場合、セラミック粒子で満たされたワックス含有スリップは、60℃〜140℃の範囲での温度でプリンティングされる。構築プラットフォームにぶつかった後すぐに、温度の低下に起因して、スリップは凝固する。さらに、各層は、光重合によって硬化される。このように得られた未焼結の本体は、さらに脱脂および焼結によって、さらに処理される。
【0008】
記載されたプロセスは、セラミックから均質に構築されるセラミック成形本体をもたらす。しかし、天然の歯の外観をできるだけ本物らしく模倣するために、例えば、色および半透明性について互いに異なる、種々の材料を組み合わせることが必要である。
【0009】
特許文献4は、セラミック歯科修復物の調製のためのプロセスを開示し、ここで異なる色のセラミック粉末が、所望される層の厚さおよび色の進行に依存して、プレスモールドへと層をなして均質に連続して注がれる。粉末は、次に冷間等方加工プレスにかけられ、次にブランクまで焼結される。ブランクは次に、CAD/CAMユニットによるミリングまたは粉砕によって歯科成形部分へと成形される。このプロセスにおいて、層の数は、実用的な理由で限定され、色の進行は、1つの空間的方向においてのみ達成され得る。
【0010】
傾斜材料(Gradientenwerkstoffe)とは、体積にわたって徐々に組成、構造、およびテクスチャが変化する材料を意味し、それは材料の特性において対応する変化を含む。このことは、特定の使用に適合する材料を調製する可能性を生み出す。傾斜材料はまた、傾斜材料(gradierte Werkstoffe)またはFGM(functionally graded material:傾斜機能材料)と呼ばれる。
【0011】
傾斜材料は、それらの特定の物理的特性のため、多くの分野において、とても興味深い。技術分野において、使用のそれぞれの分野における特定の必要性を満たすために、傾斜機能成形本体の助けで、標的化材料設計が実現され得る。傾斜材料を調製するために多くの努力がなされてきた。傾斜機能は、2つまたはそれより多くの材料によるワークピースの標的化構築物からもたらされる。この場合の最も広く使用される材料対は、セラミック−金属、セラミック−セラミック、およびセラミック−ガラスである。
【0012】
非特許文献1は、水中にZrO粒子および鋼粉末を分散させることによって得られる傾斜機能材料を開示する。固体含有量は、70重量%と80重量%との間にある。これらの分散物は、プラスチック管に注がれ、乾燥され、次に焼結される。傾斜は、粒子の異なる沈降速度からもたらされる。
【0013】
非特許文献2は、セッコウ粒子およびコランダム粒子の混合物の遠心分離によって、傾斜材料の調製を調査する。上記材料は、コンピュータシミュレーションを試験するためのモデリング材料として働く。
【0014】
非特許文献3は、TiおよびTiO粉末の層状レーザー照射(laser engineered net shaping)によるTi−TiO傾斜材料の調製を開示し、ここでTiO含有量は、層から層へと増加する。チタン表面上のTiOの存在は、超高分子量ポリエチレンに対するそれらの湿潤性を改善し、従って摩擦係数を減らすためである。上記材料は、人工股関節の調製に有利であるべきである。
【0015】
非特許文献4は、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)/Pt圧電性複合材および傾斜材料で作られた調整ユニットの調製を開示する。複合材および調整ユニットは、等方加工プレスおよび焼結によってPZTおよび白金粉末から調製される。調整ユニットは、中心対称プロフィールを有する7層からなる。白金含有量は、中心の層から表面層まで、30%の白金〜0%の白金へと次第に減少する。
【0016】
非特許文献5は、三次元プリンティングプロセスによるSiC−Si傾斜材料の調製を記載する。このために、多孔性本体であって、その多孔性が、プリンティングプロセスによって変動する、多孔性本体は、まず、三次元プリンティングによって炭素粉末から調製される。多孔性炭素成形本体は、次に減圧においてSi溶融物に浸され、溶融シリコンを用いて浸透させられる。三次元プリンティングの間、結合剤は、インクジェットプリンティングによって、選択的に粉末ベッドへと導入される。新しい粉末層は、このように形成された層へと付与され、これは次に、結合剤を導入することによって、再び、選択的に硬化される。プロセス工程のこの連続は、所望される本体が完成されるまで反復される。
【0017】
非特許文献6は、電気泳動堆積法によってAl−ZrO/Al傾斜材料の調製を開示する。この場合、棒の形をした鋼の電極がまず、二酸化ジルコニウムおよびベーマイトの懸濁物中へと浸される。ベーマイトおよび二酸化ジルコニウム粒子は、電圧をかけることによって、電極上に堆積される。電極は、次にAl分散物中へと移動され、酸化アルミニウム層がベーマイトおよび二酸化ジルコニウムの層上に堆積される。このように得られた管状の本体は次に乾燥され、焼結された。
【0018】
非特許文献7は、電気泳動堆積法による、層をなして構築された傾斜材料の調製を記載する。上記材料は、70%のAlおよび30%のZrOからなる1つの内側の層ならびにそれぞれが90%のAlおよび10%のZrOからなる2つの外側の層を有する。
【0019】
非特許文献8は、レーザーを用いての、焼結された共融NiO/ZrOセラミックの表面溶融による、ZrO/NiO傾斜材料の調製を開示する。
【0020】
非特許文献9は、三次元プリンティングプロセスによるジルコニア添加アルミナ(ZTA)に基づいた多層セラミック傾斜材料の調製を記載する。この場合、硝酸イットリウム水溶液は、AlおよびZrO粒子の粉末ベッドへとプリントされる。続く焼結および冷却の間に、形成されたYは、ZTA中で正方晶から単斜晶のZrO相への転移およびそれに従って、材料の強度を制御する。プリンティングの間の異なる量でのYのドーピングは、異なる割合の正方晶相および単斜晶相の形成をもたらす。5つまでの層を有する成形本体は、調製され得たが、必要な未焼結密度を達成するために、プリンティング後、依然として等方加工プレスされなければならなかった。熱機械的応力は、冷却の間に、単斜晶相と正方晶相との間の境界表面において割れをもたらした。
【0021】
非特許文献10は、ガラスセラミックに基づいた、傾斜材料の調製のための異なるプロセスを比較する。いわゆるパーコレーション法において、ガラスは、焼結された酸化アルミニウムに付与され、次に溶融され、その結果、酸化アルミニウムに浸透し得る。第二の方法において、ガラスおよび酸化アルミニウムの層は、プラズマトーチを用いてアルミニウム基材上に堆積される。このプロセスは、パーコレーションプロセスよりも制御可能および再現可能であると示している。
【0022】
非特許文献11は、セラミックインクの直接的なインクジェットプリンティングによる二酸化ジルコニウム/酸化アルミニウム傾斜材料の調製を記載する。傾斜は、まず、プリントヘッドのインクレザバーを、酸化ジルコニウムインクで満たし、次にプリンティングの間に使用される上記インクを、酸化アルミニウムインクと置き換えることによって作り出され、その結果、インク中の酸化アルミニウムの割合が、プリンティング手順の間に増加する。使用されるインク中の固体含有量は、この場合、2.5体積%である。この手順は、限定された程度までのみ制御可能である。1,200層を有する小さなプレートが調製され、これはプリンティング後、室温で120時間乾燥され、次に焼結される。得られた成形本体は、顕著な多孔性を有した。
【0023】
技術用語において、傾斜成形本体の調製は、非常に費用のかかるプロセスである。記載されたプロセスはどれも、全ての点において満足のいくものではない。実際には、傾斜ワークピースは、現在、主に乾式プレスプロセスを介して調製される。乾式プレス技術において、雌のモールドは、異なる材料で次第に満たされなければならず、ブランクは、軸の方向に圧縮され、必要に応じて、次に冷間等方加工プレスされる。乾式プレス傾斜成形本体は、二次元傾斜のみを有し、三次元傾斜は、このプロセスにおいて、実用的には実行され得ない。構成要素は、異なる材料の数層から構築され、従って、層状の傾斜を有する。個々の層のそれぞれは、それぞれの場合において同じ材料からなるか、またはそれぞれの層について画定される異なる材料の混合物からなるかのいずれかである。他の製造プロセス(例えば、電気泳動、浸透技術、プラズマ溶射プロセス、または表面レーザー処理)は、依然として試行段階にあり、ようやく、最新の研究の対象である。主に、選択されたプロセスの可能性および限界の評価、ならびにこのように生成された成形本体の特定の特性の特徴付けが重要視される。これらのプロセスは、当該分野の現在の状態[に従うと]、傾斜材料の構築にのみ適しており、そのグラデーションは、空間方向において変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】米国特許第6,322,728号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2006 015 014号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第2 233 449号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1 859 757号明細書
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】Lopez−Esteban et al.,Journal of the European Ceramic Society 22(2002)2799−2804
【非特許文献2】Watanabe et al., Composites Part A 29A (1998) 595−601
【非特許文献3】Balla et al., Acta Biomaterials 5 (2009) 1831−1837
【非特許文献4】Takagi et al.,Journal of the European Ceramic Society 23(2003)1577−1583
【非特許文献5】Moon et al.,Materials Science and Engineering A298(2001)110−119
【非特許文献6】C.Kaya, Journal of the European Ceramic Society 23(2003)1655−1660
【非特許文献7】Hvizdos et al.,Journal of the European Ceramic Society 27(2007)1365−1371
【非特許文献8】Merino et al.,Journal of the European Ceramic Society 30(2010)147−152
【非特許文献9】Yoo et al.,J. Am. Ceram. SOC.,81(1)21−32(1998)
【非特許文献10】Cannillo et al., Journal of the European Ceramic Society 27 (2007) 1293−1298
【非特許文献11】Mott and Evans,Materials Science and Engineering A271(1999)344−352
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明の目的は、高い機械的負荷容量および良好な視覚的特性(すなわち、できるだけ自然な外観)を有する歯科修復物の調製を可能にするプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の目的は、当該分野の公知の状態の不利な点を克服することであり、歯科修復物の調製に特に適しているセラミック成形本体の調製のためのプロセスを提供することである。上記プロセスは、3つの空間方向全てにおける材料特性の標的化された独立した変動(例えば、色、半透明性、および/または機械的強度)を可能にするため、ならびに高い最終密度を有する、高密度に焼結された成形本体を作り出すためのものである。特に、本発明の目的は、高い機械的負荷容量および良好な視覚的特性(すなわち、できるだけ自然な外観)を有する歯科修復物の調製を可能にするプロセスを提供することである。
【0028】
上記目的は、本発明に従って、成形本体の生産力のある調製のためのインクジェットプリンティングプロセスによって達成され、ここで
(a)セラミックスリップが、層をなして支持体に付与されて、硬化され、
(b)さらなる層が、硬化された層に付与されて、硬化され、
(c)工程(b)が所望される幾何学的形を有する本体が得られるまで反復され、
(d)上記本体が次に、化学処理または熱処理に供されて、結合剤を除去(脱脂)され、そして
(e)工程(d)からの上記本体が焼結される。
【0029】
上記プロセスは、少なくとも2つの異なって構成されたセラミックスリップが成形本体を調製するために使用されることを特徴とする。上記セラミックスリップは、スリップの相対的割合が、位置に依存して制御されるように付与され、その結果、層内における付与されたスリップの相対的割合は、予め決定可能な様式で層面における少なくとも1つの方向に沿って変動し、ここでスリップについての付与パターンは、層から層へと変動し得る。組成物における変動の結果として、成形本体であって、その材料特性が3つの空間方向(x、y、z)において変動する、成形本体が調製され得る。このような成形本体は、以下において、傾斜成形本体とも呼ばれる。変動する組成を有する層の他に、成形本体はまた、均質な組成を有する層を含み、すなわち1つのセラミックスリップのみを含むか、または異なるスリップの均質な混合物を含む層を含む。
【0030】
層内におけるスリップの相対的割合が、予め決定可能な様式で層面における少なくとも1つの方向に沿って変動する処方物はまた、実施形態を含み、ここで少なくとも1つの方向において変動する領域の他に、この層はまた、一定の組成の領域を含む。
【0031】
本発明に従うプロセスによって調製される成形本体はまた、本発明の対象である。
【0032】
セラミックスリップは、好ましくは、例えば、いわゆるインクジェットプリンターの助けを用いるインクジェットプリンティングプロセスによって、層をなして付与される。セラミックスリップをプリントするのに適したインクジェットプリンターからなるシステム、および少なくとも2つの異なるセラミックスリップは、同様に本発明の対象である。
【0033】
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
【0034】
(項目1)
成形本体の生産力のある調製のためのプロセスであって、ここで
(a)セラミックスリップが、層をなして支持体に付与されて、硬化され、
(b)さらなる層が、硬化された層に付与されて、硬化され、
(c)工程(b)が所望される幾何学的形を有する本体が得られるまで反復され、
(d)該本体が次に、化学処理または熱処理に供されて、結合剤を除去(脱脂)され、そして
(e)工程(d)からの該本体が焼結され、
少なくとも2つの異なって構成されたセラミックスリップが該成形本体を調製するために使用され、ここで該セラミックスリップは、該スリップの相対的割合が、位置に依存して制御されるように付与され、その結果、層内における付与された該スリップの相対的割合は、予め決定可能な様式で層面における少なくとも1つの方向に沿って変動し、そしてここで該スリップについての付与パターンは、層から層へと変動し得ることを特徴とする、
プロセス。
【0035】
(項目2)
支持材料が、工程(a)および(b)において、前記セラミックスリップと一緒に付与されるか、またはこれらの工程に引き続いて付与される、上記項目に記載のプロセス。
【0036】
(項目3)
前記セラミックスリップ、および必要に応じて、前記支持材料が、インクジェットプリンティングプロセスによって、層をなして付与される、上記項目のうちのいずれか1項に記載のプロセス。
【0037】
(項目4)
工程(a)および(b)において、スリップは、
(A)25体積%〜55体積%のセラミック粒子、および
(B)45体積%〜75体積%のラジカル重合可能結合剤、
を含むスリップ
および/または
(A)25体積%〜55体積%のセラミック粒子、
(B)6体積%〜50体積%のラジカル重合可能結合剤、および
(C)25体積%〜69体積%のろう
を含むスリップが使用される、上記項目のうちのいずれか1項に記載のプロセス。
【0038】
(項目5)
第一および/または第二のスリップが、ラジカル重合のための開始剤をさらに含み、そして前記層が、光での照射によって硬化される、上記項目のうちのいずれか1項に記載のプロセス。
【0039】
(項目6)
ZrOに基づいたセラミック粒子を含む少なくとも1つの第一のスリップ、およびAlに基づいたセラミック粒子を含む少なくとも1つの第二のスリップが使用される、上記項目のうちのいずれか1項に記載のプロセス。
【0040】
(項目7)
Y−TZPに基づいた少なくとも1つの第一のスリップ(基礎スリップ)、および20重量%〜100重量%のAlおよび0重量%〜80重量%のY−TZP、好ましくは40重量%〜60重量%のAlおよび60重量%〜40重量%のZrO、特に好ましくは20重量%のAlおよび80重量%のY−TZPを含む少なくとも1つの第二のスリップ(第二スリップ)が使用される、上記項目のうちのいずれか1項に記載のプロセス。
【0041】
(項目8)
ガラスセラミック粒子に基づいたスリップが使用される、上記項目のうちのいずれか1項に記載のプロセス。
【0042】
(項目9)
白榴石、リン灰石、および/またはリチウムジシリケートガラスセラミック粒子に基づいたスリップが使用される、上記項目のうちのいずれか1項に記載のプロセス。
【0043】
(項目10)
異なって着色されたセラミック粒子を含む、少なくとも2つのスリップが使用される、上記項目のうちのいずれか1項に記載のプロセス。
【0044】
(項目11)
前記成形本体が化粧張りされる、上記項目のうちのいずれか1項に記載のプロセス。
【0045】
(項目12)
前記成形本体が歯科修復物、特に、ブリッジ、ブリッジフレーム、インレー、アンレー、クラウン、インプラント、アバットメント、またはベニアである、上記項目のうちのいずれか1項に記載のプロセス。
【0046】
(項目13)
前記成形本体が、該成形本体の三次元コンピューターモデルに基づいて作り出される、上記項目のうちのいずれか1項に記載のプロセス。
【0047】
(項目14)
上記項目のうちのいずれか1項に記載されるプロセスを用いて調製され得る成形本体。
【0048】
(項目15)
セラミックスリップおよび少なくとも2つの異なるセラミックスリップをプリントするのに適したインクジェットプリンターを備えるシステム。
【0049】
(項目1A)
成形本体の生産力のある調製のためのプロセスであって、ここで
(a)セラミックスリップが、層をなして支持体に付与されて、硬化され、
(b)さらなる層が、硬化された層に付与されて、硬化され、
(c)工程(b)が所望される幾何学的形を有する本体が得られるまで反復され、
(d)該本体が次に、化学処理または熱処理に供されて、結合剤を除去(脱脂)され、そして
(e)工程(d)からの該本体が焼結され、
少なくとも2つの異なって構成されたセラミックスリップが該成形本体を調製するために使用され、ここで該セラミックスリップは、該セラミックスリップの相対的割合が、位置に依存して制御されるように付与され、その結果、層内における付与された該セラミックスリップの相対的割合は、予め決定可能な様式で層面における少なくとも1つの方向に沿って変動し、そしてここで該セラミックスリップについての付与パターンは、層から層へと変動し得ることを特徴とする、
プロセス。
【0050】
(項目2A)
支持材料が、工程(a)および(b)において、前記セラミックスリップと一緒に付与されるか、またはこれらの工程に引き続いて付与される、上記項目に記載のプロセス。
【0051】
(項目3A)
前記セラミックスリップ、および必要に応じて、前記支持材料が、インクジェットプリンティングプロセスによって、層をなして付与される、上記項目のうちのいずれか1項に記載のプロセス。
【0052】
(項目4A)
工程(a)および(b)において、
(A)25体積%〜55体積%のセラミック粒子、および
(B)45体積%〜75体積%のラジカル重合可能結合剤、
を含む第一のセラミックスリップが使用される、上記項目のうちのいずれか1項に記載のプロセス。
【0053】
(項目5A)
工程(a)および(b)において、
(A)25体積%〜55体積%のセラミック粒子、
(B)6体積%〜50体積%のラジカル重合可能結合剤、および
(C)25体積%〜69体積%のろう
を含む第二のセラミックスリップが使用される、上記項目のうちのいずれか1項に記載のプロセス。
【0054】
(項目6A)
第一および/または第二のセラミックスリップが、ラジカル重合のための開始剤をさらに含み、そして前記層が、光での照射によって硬化される、上記項目のうちのいずれか1項に記載のプロセス。
【0055】
(項目7A)
ZrOに基づいたセラミック粒子を含む少なくとも1つの第一のスリップ、およびAlに基づいたセラミック粒子を含む少なくとも1つの第二のスリップが使用される、上記項目のうちのいずれか1項に記載のプロセス。
【0056】
(項目8A)
Y−TZPに基づいた少なくとも1つの第一のスリップ(基礎スリップ)、および20重量%〜100重量%のAlおよび0重量%〜80重量%のY−TZP、好ましくは40重量%〜60重量%のAlおよび60重量%〜40重量%のZrO、特に好ましくは20重量%のAlおよび80重量%のY−TZPを含む少なくとも1つの第二のスリップ(第二スリップ)が使用される、上記項目のうちのいずれか1項に記載のプロセス。
【0057】
(項目9A)
ガラスセラミック粒子に基づいたスリップが使用される、上記項目のうちのいずれか1項に記載のプロセス。
【0058】
(項目10A)
白榴石、リン灰石、および/またはリチウムジシリケートガラスセラミック粒子に基づいたスリップが使用される、上記項目のうちのいずれか1項に記載のプロセス。
【0059】
(項目11A)
異なって着色されたセラミック粒子を含む、少なくとも2つのスリップが使用される、上記項目のうちのいずれか1項に記載のプロセス。
【0060】
(項目12A)
前記成形本体が化粧張りされる、上記項目のうちのいずれか1項に記載のプロセス。
【0061】
(項目13A)
前記成形本体が歯科修復物、特に、ブリッジ、ブリッジフレーム、インレー、アンレー、クラウン、インプラント、アバットメント、またはベニアである、上記項目のうちのいずれか1項に記載のプロセス。
【0062】
(項目14A)
前記成形本体が、該成形本体の三次元コンピューターモデルに基づいて作り出される、上記項目のうちのいずれか1項に記載のプロセス。
【0063】
(項目15A)
上記項目のうちのいずれか1項に記載されるプロセスを用いて調製され得る成形本体。
【0064】
(項目16A)
セラミックスリップおよび少なくとも2つの異なるセラミックスリップをプリントするのに適したインクジェットプリンターを備えるシステム。
(摘要)
成形本体の生産力のある調製のためのプロセスであって、ここで(a)セラミックスリップは、層をなして支持体に付与されて、硬化され、(b)さらなる層は、工程(a)からの硬化された層に付与されて、硬化され、(c)工程(b)は所望される幾何学的形を有する本体が得られるまで反復され、(d)上記本体は次に、化学処理または熱処理に供されて、結合剤を除去(脱脂)され、そして(e)工程(d)からの上記本体が焼結され、ここで少なくとも2つの異なって構成されたセラミックスリップが層の調製のために工程(a)および(b)において使用される、プロセス。
【発明の効果】
【0065】
本発明によって、高い機械的負荷容量および良好な視覚的特性(すなわち、できるだけ自然な外観)を有する歯科修復物の調製を可能にするプロセスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1は、インクジェットプリントヘッド3での構築プラットフォーム(支持体)2上の成形本体の層1の形成を概略的に示す。プリントヘッドは、2つのプリントヘッドセット4および5を有する。それぞれ、スリップAまたはスリップBで満たされたレザバー6または7は、プリントヘッドセットのそれぞれに割り当てられる。
【図2】図2は、上面図において、図1において生成された層を概略的に示す。
【図3】図3は、プリントされた、立方成形本体を概略的に示し、その組成は、材料Bから作られる球形コア(100%材料B)から、縁に向かって材料A(100%材料A)へと連続して変わる。
【図4】図4は、歯科ブリッジのための、8および9(連結部)で強化されたブリッジフレームの概略的な代表物を示す。
【発明を実施するための形態】
【0067】
本発明に従い使用されるスリップは、分散剤におけるセラミック粒子の懸濁物である。スリップはまた、ここで、セラミックが満たされたインクジェットインク、または単にインクと呼ばれる。
【0068】
3Dインクジェットプリンティングプロセスにおいて、標的化投与およびセラミックが満たされたインクの個々の滴の位置付けが行われる。本発明に従うプロセスにおいて、いわゆるマルチノズルが好ましくは使用され(例えば、ピエゾDoD(drop on demand)マルチノズル高温プリントヘッド)、そのノズルは、個々に制御され得る(図1)。このようなプリントヘッドは、例えば、Menzel et al.,MEMS Solutions for Precision Micro−Fluidic Dispensing Application, NIP20:International Conference on Digital Printing Technologies,Salt Lake City,UT,October 2004,Volume 20,ページ169−175に記載される。滴の形および数は、ここで、異なる制御パラメーター(例えば、とりわけ、温度、応力、パルス進行および頻度)によって制御可能である。滴の生成の頻度は、プリントヘッド(複数可)の供給速度に直接的に関係づけられ、その結果、接近した層の構築が、多くの個々の滴を互いのそばに置くことによって達成される(図2)。滴の体積は、例えば、ノズルの直径50μmおよび36体積%のろうベースのZrOインクで、90plである。このことから、プリントされ、凝固された滴の高さを形成する高さ、および従って、最終的には個々の層の、層の厚さは、滴の体積およびその特定の特性(例えば、表面張力、ぬれ挙動、粘度、および重合挙動)に起因する。個々の層の、層の厚さは、個々の滴のプリンティングを重ねることによって変動し得、この層の厚さは、上の例において、約15μm〜約30μmである。プリンティングプロセスの有効性は、レザバーから一緒に供給される数個のマルチノズル(高温)プリントヘッドの使用を介してさらに増加され得る。このプロセスでの解像度は、例えば、500dpiであり、位置上の精度±50μmで、反復精度±30μmを有する。
【0069】
三次元成形本体は、空間方向xおよびy、ならびにそれぞれのx−y面の完了後のz方向における構築プラットフォーム(支持体)に対するプリントヘッド(複数可)の位置において、制御されたシフトを介した層状構築物によるプリンティングプロセスの間に生成される。例えば、互いの上にプリントされる個々の層の化学的組成が変動する場合、空間傾斜は、化学的組成において作り出される。このことは、図3に概略的に示されている。図3は、立方体の縁に向かって、材料Bへと別々に変わる材料Aの球形コアを有する立方形の成形本体を示す。コア材料の形状および空間的広がりは、前もって画定され得る。
【0070】
本発明に従って、数個のプリントヘッドを有するプリンターが、好ましくは使用される。上記プリンターは、好ましくは、少なくとも2つのプリントヘッドを有し、そのそれぞれは、異なるレザバーから供給され、その結果、2つまたはそれより多くの異なるスリップがプリントされ得る。これらのプリントヘッドは、好ましくは、それぞれ数個のノズルを有し、すなわち、それらは、いわゆるマルチノズルのプリントヘッドである。特に好ましくは、プリンターは、異なるレザバーから個々に、またはグループで充填される(例えば、2個のプリントヘッドは、レザバーAから充填され、さらなる2個のプリントヘッドは、レザバーBから充填される)、3〜20個のプリントヘッド、および特に好ましくは、6〜10個のプリントヘッドを有する。
【0071】
傾斜本体を調製するために、支持材料は、セラミックスリップと一緒に、好ましくは、工程(a)および(b)、または以下のこれら工程において、別個のプリントヘッドからプリントされる。支持材料は、ここで、特に、プリントされた本体のアンダーカットおよび張り出しを支持するのを助ける材料である。特に、スリップを調製するために使用される結合剤およびろうは、支持材料として適している。支持材料は、セラミックフィラー(filler)を含まず、支持構造の機械的除去を容易にする非強化無機フィラー(例えば、チョーク、滑石)を含み得る。
【0072】
支持材料のプリンティングは、好ましくは、例えば、レザバーCから供給される1つまたは2つのさらなるプリントヘッドで行われる。レザバーAおよびBは、それぞれ、それらの組成において異なるセラミックスリップを含む(例えば、インクAで満たされたレザバーA、レザバーBはインクBを含む)。二次元層は、それぞれ、レザバーAおよびBのプリントヘッドの標的化始動作用を介してプリントされ(図1を参照のこと)、その化学的組成物は、層の広がりにわたって変動する(図2を参照のこと)。焼結された成形本体における空隙に[対応する]領域[は、支持材料でプリントされる]。ここでまた、マルチノズルプリントヘッドが好ましい。
【0073】
層状構築によって得られる焼結されていない本体は、未焼結の本体または未焼結の成形体と呼ばれる。本発明に従って、未焼結の成形体は、2つまたはそれより多くのスリップを、例えば、インクジェットプリンティングプロセスにおいて、所望される幾何学的形へと成形することによって、調製される。未焼結の成形体は、ここで、個々の滴の生成を介して構築される。本発明に従うプロセスの利点は、成形本体の組成が、使用されるスリップの変動によって、場所を正確に設定され得ることである。
【0074】
粒子が満たされたインクの生成された滴または支持材料の生成された滴の硬化は、好ましくは、温度変化によって、特にラジカル重合によって、特に好ましくは光重合によって行われる。硬化は、層をなして行われ得る。しかし、本発明に従うプロセスの特に好ましい実施形態に従って、生成された滴のそれぞれは、構築プラットフォームまたは先行する層にぶつかった直後に硬化され、従って、その位置および広がりが、固定される。ろう含有スリップは、冷却および重合によって硬化され、ろうを含まないスリップは、もっぱら重合によって硬化される。生成された滴または層は好ましくは、例えば、プリントヘッドの側方に配置される光源によって(例えば、UVまたは青色光のランプによって)、プリンティングプロセスに並行して照明される。照明は、好ましくは200nm〜550nmの波長範囲における光で、好ましくは少なくとも500mW/cm2の発光力で行われる。
【0075】
工程(a)および(b)において使用されるろうを含まないスリップは、好ましくは、以下のそれぞれの組成物を有する。
(A)25体積%〜55体積%、好ましくは30体積%〜45体積%、特に好ましくは30体積%〜38体積%のセラミック粒子、および
(B)45体積%〜75体積%、好ましくは55体積%〜70体積%、特に好ましくは62体積%〜70体積%のラジカル重合可能結合剤。
【0076】
工程(a)および(b)において使用されるろう含有スリップは、好ましくは、以下のそれぞれの組成物を有する。
(A)25体積%〜55体積%、好ましくは30体積%〜45体積%、特に好ましくは30体積%〜38体積%のセラミック粒子、
(B)6体積%〜50体積%、好ましくは8体積%〜30体積%、特に好ましくは10体積%〜30体積%のラジカル重合可能結合剤、および
(C)25体積%〜69体積%、好ましくは30体積%〜60体積%、特に好ましくは35体積%〜45体積%のろう。
【0077】
30体積%超のセラミック粒子(A)の含有量を有するスリップは、本発明に従って特に好ましい。
【0078】
本発明に従って、少なくとも2つの異なって構成されたスリップが使用される。異なって構成されたスリップとは、スリップであって、その異なる組成が、脱脂および焼結後に成形本体において実証され得る、スリップを意味する。例えば、脱脂の間に除去可能である結合剤(B)の組成においてのみ異なる2つのスリップは、本発明の意味内での、異なって構成されたスリップではない。
【0079】
本発明に従って、セラミック粒子の組成において異なる2つまたはそれより多くのスリップの使用が好ましい。このことは、セラミック粒子が異なるセラミック[からなる]こと(スリップAは、セラミックAの粒子を含み;スリップBはセラミックBの粒子を含むなど)、および/またはセラミック粒子の異なって構成された混合物を含むこと(スリップAは、例えば、30%のセラミックAの粒子および70%のセラミックBの粒子を含み;スリップBは、70%のセラミックAの粒子および30%のセラミックBの粒子を含み;またはスリップAはセラミックAの粒子を含み、スリップBは、セラミックAの粒子およびセラミックBの粒子の混合物を含むなど)を意味するとして理解されるべきである。セラミックは、それらの化学的組成、それらの色、それらの半透明性、それらの機械的特性において、単独で、または同時に数個のパラメーターにおいて、異なり得る。また、これらが異なって着色されるときにセラミック粒子の異なる組成物が存在する。好ましくは、使用されるスリップのセラミック粒子の異なる着色は、さらに下で記載されるように、粒子を発色団構成要素でコーティングすることによって達成される。
【0080】
他の点は、同一の組成物とともに本発明に従って使用されるスリップの異なる組成物はまた、異なる発色団構成要素をスリップに加えることによって達成され得る。このために、脱脂および焼結の間に、調製された成形本体の着色、好ましくは歯の色の着色をもたらす物質が、特に適している。好ましい発色団構成要素は、欧州特許出願公開第2 151 214号の段落[0062]および欧州特許出願公開第2 233 449号の段落[0043]に記載される。
【0081】
発色団構成要素として好ましい遷移金属化合物は、とりわけ、鉄、セリウム、プラセオジム、テルビウム、ランタン、タングステン、オスミウム、テルビウムおよびマンガン元素のアセチルアセトネートまたはカルボン酸塩である。カルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸、2−エチルヘキシルカルボン酸、ステアリン酸、およびパルミチン酸)の塩が好ましい。特に好ましいのは、とりわけ、対応するFe、Pr、MnおよびTb化合物(例えば、酢酸鉄(III)もしくはアセチルアセトネート鉄(III)、酢酸マンガン(III)もしくはマンガン(III)アセチルアセトネート、酢酸プラセオジム(III)もしくはプラセオジム(III)アセチルアセトネート、または酢酸テルビウム(III)もしくはテルビウム(III)アセチルアセトネート、ならびに対応するカルボン酸塩)である。発色団構成要素は、セラミック粒子(A)の合計質量に対して、好ましくは0.00001重量%〜2.0重量%、特に好ましくは0.001重量%〜1.0重量%、および非常に特に好ましくは0.01重量%〜0.5重量%の量で使用される。
【0082】
酸化セラミック粒子の場合、発色団構成要素は、好ましくは、上記セラミック粒子へと付与される。欧州特許出願公開第1 859 757号に従うプロセスは、特に好ましい。このプロセスにおいて、発色団物質は、流体ベッド反応器内において、着色されていない酸化セラミック粉末に付与される。上に記載された塩の水溶液は、好ましくは、発色団物質として使用され得る。周期表のd−ブロックまたはf−ブロックの元素の水溶性の塩が好ましい。ニトレートまたはクロリドの水和物が特に好ましい。使用可能な塩の例は、Pr(NO・5HO、Fe(NO・9HO、またはTb(NO・5HOである。発色団物質に入れられた酸化セラミック粉末は、次に、好ましくは選別される(例えば、90μm未満のメッシュサイズのふるいでふるわれる)。これは、特に粉末の凝集塊が大きすぎるときに実施される。
【0083】
流動ベッドにおいて着色された粒子は、インクへと処理される前に前もって、か焼され得る。粒子のか焼は、1時間〜10時間、好ましくは2時間〜[…]時間、特に好ましくは2時間〜4時間の期間、100℃〜600℃、好ましくは200℃〜550℃、特に好ましくは300℃〜500℃の温度で行われる。
【0084】
別個のインクの形態での1つまたはそれより多くの別個のプリントヘッドからセラミック粒子を着色するために使用される構成要素をプリントすることも可能である。
【0085】
ガラスおよびガラスセラミックの粒子は、遷移元素の酸化物で、当該分野の状態に従って着色され得る。
【0086】
本発明に従って使用されるスリップの構成要素(A)は、セラミック粒子であり、ここで「セラミック粒子」とは、酸化セラミック粒子およびガラスセラミック粒子だけではなくガラス粒子をも意味し、好ましくは酸化セラミックもしくはガラスセラミック粒子、またはガラスセラミック粒子およびガラス粒子の混合物を意味する。酸化セラミックは、酸化物または酸化化合物の、好ましくは金属酸化物粉末(例えば、ZrOおよび/またはAl)の、固体多結晶のケイ酸を含まない材料であり、それは分解することなく焼結され得る。ガラスセラミックは、1つまたはそれより多くの結晶相の他に、ガラス相の割合をも追加的に含む多結晶の固体である。ガラスセラミックは、制御された結晶化によってガラスから形成される。白榴石、リン灰石、またはリチウムジシリケートを含むガラスセラミックが好ましい。結晶化によってガラスセラミックに転換され得るガラスの粒子は、ガラス粉末として好ましい。このために、ガラスは、必要な結晶化の核を必ず含まなければならない。結晶化は、脱脂、焼結、または別個の温度処理によって開始され得る。
【0087】
構成要素(A)として使用される酸化セラミック粒子は、好ましくは、ZrOおよび/またはAlに基づいた酸化セラミック粒子であり、例えば、ZrO、AlもしくはZrO−Alの酸化粒子、またはYまたはMgOで安定化された、ZrOもしくはZrO−Alの酸化粒子である。
【0088】
ベース酸化物であるZrOの他に、安定剤を含む安定化酸化セラミックは、特に好ましい。Y、CeO、または2つの安定剤の混合物は、好ましくは、安定剤として使用される。Yは、5モル%までの濃度で、ここで慣習的に使用される。安定化セラミックの質量に対して12モル%までのドーピングは、CeOによくある。これらのZrOセラミックは、それぞれ、Y−TZP(イットリウム安定化正方晶二酸化ジルコニウム多結晶体)またはCe−TZP(セリウム安定化正方晶二酸化ジルコニウム多結晶体)と呼ばれる。Y−TZPの強度は、Alを加えることによってさらに増加され得る。このようなセラミックは、AZT(アルミナ添加ジルコニア)と呼ばれる。好ましいAZTは、80重量%のY−TZPおよび20重量%のAlを含み、2,000MPaの機械的曲げ強さを有する。
【0089】
もっぱら挙げられた物質からなる酸化セラミックが好ましい。
【0090】
一方で、歯科修復物の調製において、高い機械的負荷容量が、例えば、ブリッジの調製において探し求められるが、他方、歯科修復物は、できるだけ自然な外観を有するべきである。通常は、単一の材料で、どちらの特性も、最良な実現はなされ得ない。しかし、例えば、異なる熱膨張係数が、熱機械的応力をもたらし得、異なる焼結温度が、望ましくない高い多孔性をもたし得るように、どちらも、可能であるこれらの特性を最大限に利用するための異なる材料の任意の組み合わせではない。
【0091】
本発明に従って、高い機械的強度および良好な視覚的特性は、プロセス工程(a)〜(c)におけるスリップのような、ZrOに基づいた、特にY−TZPに基づいた少なくとも1つの第一のスリップ(基礎スリップ)、およびAlに基づいた少なくとも1つの第二のスリップ(第二スリップ)を用いることによって、挙げられた不利な点なしで達成され得ることが、現在見出されている。
【0092】
基礎スリップは、好ましくは、セラミック粒子として、もっぱらY−TZP粒子を含む。このプロセスにおいて、数個の異なって着色された基礎スリップも使用され得、ここで異なって着色されたY−TZP粒子を含むスリップの使用が好ましい。
【0093】
第二スリップは、好ましくは、20重量%〜100重量%のAlおよび0重量%〜80重量%のY−TZP、好ましくは40重量%〜60重量%のAlおよび60重量%〜40重量%のY−TZP、特に好ましくは20重量%のAlおよび80重量%のY−TZPを含むセラミックの粒子を含む。もっぱらAlまたはAlおよびY−TZPの粒子を含むスリップが好ましい。数個の異なって着色された第二スリップは使用され得、ここでまた、異なって着色されたAlおよび/またはY−TZP粒子を含むスリップの使用が好ましい。
【0094】
セラミック成形本体の局所強化は、例えば、総セラミックブリッジフレームの調製において、非常に重要である。例えば、Y−TZPの、セラミックブリッジフレームの標的化強化は、図4において概略的に示されるように、機械的に特に応力を加えられた連結部要素領域において、2つのセラミック(Y−TZPおよびATZセラミック)の熱膨張係数は、互いに著しく異ならないので、例えば、ATZの使用を介して有利に可能である。対照的に、審美的に重要な領域(キャップおよびブリッジ要素)において、より半透明なY−TZPが使用される。
【0095】
80重量%のY−TZPおよび20重量%のAlを有するATZ(アルミナ添加ジルコニア)セラミックは、その機械的特性に起因して、歯科修復物の機械的に応力を加えられた領域の標的化強化に特に適している。本発明に従って、これは、強化されるべき領域において、20重量%のAl対80重量%のY−TZPの比が達成されるように基礎スリップおよび第二スリップをプリンティングすることによって達成され得る。混合物の比は、プリンティング手順の間に調整され得る。それぞれの場合において、スリップにおけるセラミックの割合に対して、100重量%のY−TZPもしくは100重量%のAlを含むスリップの使用を介して、または、例えば、100重量%のY−TZPもしくは20重量%のAlおよび80重量%のY−TZPを含むスリップによっても達成され得、ここで2つ目の場合において、強化されるべき領域は、第二スリップのみをプリントすることによって形成される。この改変物は、本発明に従って好ましい。強化された連結部領域(ATZセラミック)からより半透明なキャップへの転移は、2つの材料間の滑らかな転移を達成し、従って、均質なセラミック構造体を達成するために、好ましくは漸進的である。
【0096】
本発明に従うプロセスによって標的化される色のグラデーションはまた、酸化セラミック歯科補てつ物の調製において実現され得る。このために、数個の異なって着色されたスリップが、上に記載されたプロセスにおいて使用される。好ましくは2個またはそれより多く、特に好ましくは2個〜10個、および非常に特に好ましくは3個〜6個の異なって着色されたスリップが、色のグラデーションのために使用される。自然な歯が、色、色の強度および明るさに関してだけではなく、半透明性においても異なるように、自然に見える歯の色をした総セラミック歯科修復物の調製に対して、傾斜の構築のために2個超のスリップを使用することが有利であり、ここでその数は、最終的に歯の色、および歯科修復物からなされる審美的要求に依存する。着色されたZrOまたはY−TZP粒子に基づくインクは、好ましくは、高い機械的負荷容量を有する色傾斜のある歯科修復物の構築のために使用される。
【0097】
特に自然な色の進行を有する歯科修復物は、ガラスセラミック粒子、またはガラス粒子およびガラスセラミック粒子の混合物が、構成要素(A)として使用される場合に調製され得る。白榴石、リン灰石、および/またはリチウムジシリケートガラスセラミック粒子が特に好ましい。色のグラデーションは、好ましくは、異なって着色された粒子とともに、2個またはそれより多く、特に好ましくは2個〜10個、および非常に特に好ましくは3個〜6個のインクをプリントすることによって行われる。ここで、自然な歯の色の進行と同様に、縁領域および中心領域における修復物の領域は、より激しく着色された粒子および曇らせた粒子から構築され、他方、切端領域および周縁領域においては、あまり強く着色されていない粒子およびあまり曇らせていない粒子が使用される。
【0098】
セラミック粒子は、スリップがプリントされるインクジェットプリンターのプリントヘッドのノズルの平均直径よりも明らかに小さくあるべきである。例えば、約100μmまたはそれより小さいノズルの直径を有する一般的なインクジェットプリンターでプリントするのを可能にするために、本発明に従うスリップにおいて、いわゆるサブミクロン粉末、すなわち、5μm未満または5μmに等しい、特に1μm未満または1μmに等しい最大粒径を有するセラミック粒子が、好ましくは使用される。粒子は、好ましくは0.01μm〜5μm、特に好ましくは0.1μm〜1μm、および非常に特に好ましくは0.3μm〜0.6μmのサイズを有する。
【0099】
「粒径」とは、スリップに存在するときのセラミック粒子の実際のサイズを意味する。代表的に、これは、セラミック粉末において存在する可能性がある凝集体が、スリップの調製の間に一次粒子へと、大部分は壊されるので、一次粒径である。しかし、スリップにおけるセラミックの一次粒子の凝集体も、それらが所望されるインクジェットノズルでプリント可能なほど十分に小さい場合に存在し得、すなわち、好ましい実施形態において、凝集体は、全体として上の粒径条件を満たす。
【0100】
Alの場合、構成要素(A)として使用される一次粒子のサイズは、好ましくは、50nm〜500nmの範囲、特に好ましくは75nmと200nmとの間の範囲にあり;Y−TZPの場合、50nm〜500nmの範囲、非常に好ましくは50nmと350nmとの間の範囲にある。使用されるガラス/ガラスセラミック粒子は、0.1μm〜10μm、特に好ましくは0.5μm〜5μmの一次粒径を有する。一次粒径は、絶対上限および絶対下限である。
【0101】
セラミック粒子は、好ましくは、おおよそ球形である。粒子が凝集されていない形態、例えば、完全に、または主に、一次粒子の形態で存在する場合、さらに有益である。
【0102】
ラジカル重合可能モノマーまたはその混合物は、本発明に従って使用されるスリップのラジカル重合可能結合剤(構成要素B)として好ましい。モノマーは、好ましくは、20℃で液体である。融点は、好ましくは、0℃より下である。モノマーは、好ましくは、均質に、すなわち、相の分離なく、必要に応じてろう(C)と混和できる。モノマーは、インクジェットプリンティングの場合に、処理温度(おおよそ、後に記載される温度)で分解すべきではない。モノマーは、代表的に、大きな非極性残基(例えば、C〜C20残基)を有する。
【0103】
特に、1つまたはそれより多く(例えば、2つ)の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーが、スリップにおいて使用され、ここで、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するモノマーが好ましい。適切なラジカル重合可能モノマーの例は、C〜C18のアルコール残基の鎖長を有する(メタ)アクリレートおよびジ(メタ)アクリレート、例えば、オクタデシルアクリレート;マルチ−(メタ)アクリル化グリコール、特にマルチ−(メタ)アクリル化プロピレングリコール;200〜2000、特に好ましくは300〜1000の好ましいMを有するマルチ−(メタ)アクリル化短鎖〜中鎖ポリプロピレングリコール、例えば、ジプロピレングリコールジアクリレートおよびポリプロピレングリコールジアクリレート、例えば、ポリプロピレングリコール400ジアクリレート;C〜C18の鎖長を有するペンタエリトリトールジ(メタ)アクリレートモノカルボキシレート、例えば、ペンタエリトリトールジアクリレートモノステアレート、およびそれらの混合物である。アクリル化モノマーは、メタクリル化モノマーに比べて好ましく、特に以前に挙げられたアクリル化モノマーが好ましい。本発明の実施形態において、構成要素(B)は、オクタデシルアクリレートおよびペンタエリトリトールジアクリレートモノステアレートの混合物である。
【0104】
必要に応じて、本発明に従って使用されるスリップの構成要素(C)は、ろうである。本発明において、用語「ろう」は、DGF standard method M−I 1(75)において、Deutsche Gesellschaft fuer Fettwissenschaftによって定義される通りに理解されるべきである。異なるろうの化学的組成および由来が大きく異なるように、ろうは、それらの機械的−物理的特性によってのみ定義される。物質は、20℃で練られ得る場合にろうと呼ばれ、強固な堅さ〜もろい堅さであり、粗い〜微細な結晶性構造を有し、色に関して半透明〜不透明であり、しかし、ガラス様ではなく;40℃超で分解することなく溶解し、融点よりも少し上で容易に(低粘度の)液体であるが、粘質ではなく;それは、強く温度に依存している粘稠度および溶解度を有し、光圧下で、研磨され得る。ろうは、代表的に、40℃と130℃との間で溶融状態に変わり;ろうは、通常、水に溶けない。本発明に従うスリップにおける使用のためのろうは、好ましくは、40℃〜80℃未満、特に好ましくは45℃〜65℃、および非常に特に好ましくは54℃〜56℃の範囲の融点を有する。80℃および1000s−1のずり速度において、好ましいろうは、10mPa・s以下、特に5mPa・s〜10mPa・s、および特に好ましくは3mPa・s〜4mPa・sの粘度を有する。
【0105】
それらの由来に依存して、ろうは、3つの主要な群に分けられる:天然ろう(ここで、再度、植物ろうと動物ろうとの間、鉱ろうと石油化学ろう(petrochemical wax)との間の区別がつけられる);化学的改変ろうおよび合成ろう。本発明に従うスリップにおいて構成要素(C)として使用されるろうは、1つのろうのタイプからなり得、または異なるろうのタイプの混合物からもなり得る。本発明において、好ましくは石油化学ろう(例えば、パラフィンろう(固形パラフィン))、ペトロラタム、微結晶性ろう(ミクロパラフィン)、およびそれらの混合物)、特に好ましくはパラフィンろうが使用される。熱成形プロセス(低圧射出成形)において、酸化セラミックおよび非酸化セラミック構成要素の製造のための射出成形結合剤として市販されているパラフィンろうは、非常に適している(例えば、とりわけ、SILIPLASTという名称でZschimmer & Schwarz(Lahnstein,DE)から得られ得る、約54℃〜56℃の融点、80℃で3mPa・s〜4mPa・sの粘度、および1000s−1のずり速度を有するパラフィンろう)。市販されているろうは、しばしばすでに乳化剤および/またはレオロジーを調整するためのさらなる構成要素を含む。
【0106】
ろう構成要素(C)として、植物ろう(例えば、カンデリラろう、カルナウバろう、木ろう、エスパルトろう、コルクろう(Korkwachs)、グアルマ(Guarumawachs)ろう、米胚芽油ろう、サトウキビろう、オーリクリーろう、モンタンろう);動物ろう(例えば、みつろう、セラックろう、鯨ろう、ラノリン(羊毛ろう)、臀部脂(Buerzelfett));鉱ろう(例えば、セレシン、臭ろう(土ろう));化学的改変ろう(例えば、モンタンエステルろう、サソールろう、水素化ホホバろう)、または合成ろう(例えば、ポリアルキレンろう、ポリエチレングリコールろう)を使用することも可能である。
【0107】
乳化剤(構成要素(D))は、構成要素(C)に加えて、または好ましくは構成要素(C)の代替として使用され得、特に好ましい組成物において、脂肪酸のグリセリド、および特にポリプロピレングリコールが使用される。ポリプロピレングリコールは、ここで、好ましくは100〜1000、特に好ましくは100〜600、非常に特に好ましくは200〜400の鎖長を有する。乳化剤Dは、好ましくは、それぞれの場合において、スリップの合計質量に対して、0.5体積%〜10体積%の量、非常に特に好ましくは1体積%〜5体積%の量で使用される。
【0108】
スリップは、好ましくは、構成要素(E)として重合開始剤を含む。
【0109】
適切な重合開始剤は、ラジカル重合開始剤、特に光開始剤である。可視範囲で公知のラジカル光開始剤(J.P.Fouassier,J.F.Rabek (ed.),Radiation Curing in Polymer Science and Technology,Vol.II,Elsevier Applied Science,London and New York 1993を参照のこと)が使用され得る(例えば、アシルまたはビスアシルホスフィン酸化物、好ましくは、α−ジケトン(例えば、9,10−フェナントレンキノン、ジアセチル、フリル、アニシル、4,4’−ジクロロベンジルおよび4,4’−ジアルコキシベンジル、およびカンファーキノン))。開始を促進するために、好ましくは芳香族アミンと組み合わせてα−ジケトンが使用される。特に価値があると証明されているレドックス系は、アミンとのカンファーキノンの組み合わせ(例えば、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル)、または構造的に関連した系の組み合わせである。
【0110】
NorrishI型光開始剤は、とりわけ、モノアシルトリアルキル−またはジアシルジアルキルゲルマニウム化合物(例えば、ベンゾイルトリメチルゲルマニウム、ジベンゾイルジエチルゲルマニウム、またはビス(4−メトキシベンゾイル)ジエチルゲルマニウム)は、特に好ましい光開始剤である。異なる光開始剤の混合物も使用され得る(例えば、カンファーキノンおよび4−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルと組み合わされたジベンゾイルジエチルゲルマニウム)。
【0111】
重合開始剤(E)は、それぞれの場合において、スリップの合計質量に対して、0.001体積%〜3.0体積%、好ましくは0.01体積%〜1体積%、非常に特に好ましくは0.05体積%〜0.8体積%の量で使用される。
【0112】
前に挙げられた構成要素に加えて、スリップは、必要に応じて、さらなる添加剤(F)(例えば、安定剤(抑制剤)、分散補助剤、溶融粘度低下物質(レオロジーを調整するための構成要素)、およびそれらの組み合わせ)を含む。これらは、0.01体積%〜5体積%の量でスリップに加えられる。
【0113】
安定剤(抑制剤)は、スリップの保存安定性を改善し、さらに制御されていないポリ反応(Polyreaktion)を防ぐ。抑制剤は、好ましくは、スリップが、約2年〜約3年の期間にわたって保存上安定であるような量で加えられる。適切な抑制剤の例は、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルラジカル(TEMPO)、フェノチアジン、ヨウ素およびヨウ化銅(I)を含む。抑制剤は、それぞれの場合において、モノマー(複数可)の合計質量に対して、好ましくは、5重量ppm〜500重量ppmの量、特に好ましくは50重量ppm〜200重量ppmの量で使用される。スリップの合計組成物に対して、抑制剤は、好ましくは、0.03体積%〜3体積%の量、好ましくは0.3体積%〜1.2体積%の量で使用される。
【0114】
非極性媒体において酸化粒子を分散させるための全ての通常の分散補助剤は、分散補助剤として使用され得る。適切な分散補助剤は、代表的に、粒子表面に結合され得る極性「アンカー基」、および懸濁物の最大立体安定性を成し遂げる粒子から離れて向いている非極性基を有する。好ましい分散補助剤は、ポリエステルベースの分散補助剤(例えば、Uniqema,GBからのHypermer LP−1)である。分散補助剤は、好ましくは、それぞれの場合において、セラミック粒子の合計質量に対して、0.1重量%〜5重量%の量、好ましくは0.5重量%〜2重量%の量、および特に1.1重量%〜1.5重量%の量で使用される。スリップの合計組成物に対して、分散補助剤は、好ましくは、0.3体積%〜16体積%の量、好ましくは1.6体積%〜6.4体積%の量、および特に2.0体積%〜4.8体積%の量で使用される。
【0115】
構成要素(複数可)(F)の合計量は、好ましくは、スリップの全組成物に対して、0.1体積%〜15体積%、特に好ましくは0.1体積%〜10体積%、非常に特に好ましくは0.5重量%〜9重量%、および特に1.5体積%〜5体積%である。
【0116】
溶融粘度低下物質は、液体状態におけるスリップの粘度を低減するために、本発明に従って、スリップに加えられ得る。室温で固体であり、低い融点を有する、より長鎖(C〜C20)のオレフィン(例えば、ヘキサデセンおよびオクタデセン)は、例えば、これに適している。
【0117】
ろう含有スリップは、通常、20℃で、ペースト状〜濃密な粘稠度を有する。従って、セラミック粒子の沈降は避けられ、高い保存安定性が保証される。80℃および1000s−1のずり速度において、200mPa・s以下の粘度、特に好ましくは100mPa・s以下の粘度を有する。本発明に従うスリップは、好ましくは、約100μmの直径を有するプリントヘッドノズルを有するインクジェットプリンターに対応する温度でプリントされ得る。
【0118】
スリップは、結合剤においてセラミック粒子を分散させることによって調製され得る(例えば、ろう、モノマー、および必要に応じて添加剤の混合物)。分散は、好ましくは、ろうおよび好ましくはまたモノマーが液体である温度、好ましくは70℃〜110℃で行われる。さらなる好ましい実施形態に従って、分散は、高いずり速度(例えば、500s−1〜5,000s−1)を付与することによって行われる。フィラーは、例えば、ろう、モノマー、および必要に応じて添加剤の混合物において、3,000/分までの回転速度、および好ましくは、70℃〜110℃の増加させた温度で、溶解機(例えば、VMA−Getzmann GmbH,Reichshof,DEからのDispermat(登録商標))を使用することによって分散され得る。これらの条件下で、好ましいセラミック粉末の凝集体は、一次粒子へと、大部分は壊される。万一、液体スリップにおける粘度が高すぎる場合、それは、粘度低下物質を加えることによって、1000s−1のずり速度および80℃の温度で測定される、好ましくは200mPa・s以下、特に好ましくは100mPa・s以下の値まで低減される。
【0119】
ろうを含まないインクは、室温まで冷却することによって凝固せず、従って、室温で液体であるという点で、ろう含有インクと異なる。調製は、例えば、40℃〜60℃の温度で、溶解機(例えば、VMA−Getzmann GmbH,Reichshof,DEからのDispermat(登録商標))を用いて3,000/分までの回転速度で行われ得る。インクは、1000s−1のずり速度で測定されて、好ましくは、室温で、5,000mPa・s以下の粘度、特に500mPa・s以下の粘度を有し、温度が、40℃〜90℃まで増加される場合、これは、好ましくは、200mPa・s以下まで低減される。
【0120】
スリップを調製するための特に好ましいプロセスに従って、セラミック粒子は、粒子の有効なデアグロメレーションを達成するために、まず、Turbulaミキサー(例えば、Willy. A. Bachhofen AG Maschinenfabrik,Muttenz,CHからのタイプT2C)において混合され、この混合物は、次に上に列挙された条件下で溶解機において処理される。均質化された混合物は、次に、さらなる混合および均質化工程において、構成要素Bおよび必要に応じてC〜Fで、プリンティングに必要な固体含有量まで希釈され、溶解機または他の混合装置で、例えば、SpeedMixer DAC400FVZ(Hauschild & Co.KG, Hamm,DEから)において、3000/分までの回転速度で10分間混合することによって、均質な混合物へと加工される。
【0121】
ろう含有スリップは、好ましくは、60℃〜140℃、特に好ましくは70℃〜120℃、および非常に特に好ましくは80℃〜100℃の範囲における温度でプリントされ、これは、プリントノズルにおける温度を意味する。滴が構築プラットフォーム、またはすでにプリントされた層にぶつかった直後に、スリップに含まれるろう部分が凝固するので、プリントされた滴は硬化する。この場合、構築プラットフォームの温度は、好ましくは、20℃〜100℃、特に好ましくは20℃〜70℃、非常に特に好ましくは20℃〜40℃の温度範囲にある。硬化手順は、プリンティング温度とプラットフォームの温度との間の温度における違いによって制御され得る。さらに、各層は、重合によって硬化され、成形本体は、結果として生じるポリマーネットワークに起因して、体積全体にわたって凝固される。重合による硬化は、層をなして、または好ましくはプリンティングに対して並行に行われ得る。2つ目の場合、各滴は、例えば、光での照射によって、プリンティング直後に硬化される。
【0122】
ろうを含まないスリップは、好ましくは、40℃〜140℃、特に好ましくは50℃〜120℃、および非常に特に好ましくは60℃〜110℃の範囲における温度でプリントされる。各滴は、好ましくは、滴が構築プラットフォーム、またはすでにプリントされた層にぶつかった後に重合によって硬化される。あるいは、硬化は、層をなして行われ得る。この場合、構築プラットフォームの温度は、好ましくは、20℃〜100℃、特に好ましくは20℃〜70℃、非常に特に好ましくは20℃〜40℃の範囲にある。
【0123】
一旦、プリンティングプロセスが終わると、支持材料は、必要に応じて、機械的に、または化学的に除去される。成形本体は次に、化学的および/または熱によって脱脂され、最後に焼結される。
【0124】
脱脂(d)は、一時的な結合剤、および存在する可能性のある、ろう、および添加剤を未焼結の本体から除去することに役立つ。支持材料の除去は、特に好ましくは、未焼結の成形体の脱脂と一緒に行われる。前焼結体は、脱脂を介して未焼結の成形体から作り出される。
【0125】
支持材料および結合剤は、好ましくは、熱により(例えば、溶融、蒸発または燃焼プロセスによって)除去され得る。このために、未焼結の成形体は、好ましくは、50℃〜600℃、特に好ましくは60℃〜500℃、および非常に特に好ましくは150℃〜500℃の温度まで加熱される。加熱は、好ましくは、3時間〜7時間の期間行われる。
【0126】
得られた前焼結体は、工程(e)において、高密度セラミック成形本体へと焼結される。Y−TZPおよびATZセラミックの前焼結体の焼結は、焼結炉において、好ましくは、1200℃と1700℃との間、好ましくは1300℃と1600℃との間、特に好ましくは1350℃と1500℃との間の温度で行われる。ガラス粉末またはガラスセラミック粉末の前焼結体は、好ましくは、500℃〜1200℃の範囲、特に好ましくは600℃と1000℃との間、特に好ましくは700℃と900℃との間の温度で焼結される。焼結時間は、好ましくは、2時間〜6時間、特に好ましくは、4時間〜5.5時間である。
【0127】
焼結(e)は、できるだけ孔を含まずに成形本体を凝固するのに役立つ高温プロセスである。この場合、材料の再配置および粒の成長プロセスが、(酸化セラミックの場合には主に分散によって)行われ、それを介して、個々のセラミック粒子が互いに向かって「移動し」、高密度な、固体の、孔を含まない構造を形成する。焼結手順は、セラミックの理論密度の、好ましくは98%超、好ましくは98.5%超、および非常に特に好ましくは99%超の圧縮をもたらす。
【0128】
特に好ましい実施形態において、脱脂および焼結は、20℃と1700℃との間、好ましくは20℃と1600℃との間、特に好ましくは20℃と1500℃との間の温度範囲において、1段階プロセスで行われる。1段階の熱によるプロセスの持続時間は、2時間〜12時間、好ましくは4時間〜10時間、特に好ましくは6時間〜10時間に達する。
【0129】
脱脂および焼結に起因して、成形本体は、充填の程度に依存して変動する体積収縮を受ける。この体積収縮は、脱脂および焼結された構成要素の適合の精度を保証するために、プリントされるべき成形本体を前もって過大寸法することによって、考慮される。例えば、36体積%のインクについて、収縮は64%であり、換言すると、90plの滴は、焼結された構成要素において32plの計算体積を最終的に生成し、それは、生成され得る焼結されたセラミック構成要素のボクセル(三次元画素)サイズに等しい。滴の体積は、生成され得る最小ボクセルサイズを予め決定する。
【0130】
本発明に従うセラミックスリップのための3Dインクジェットプリンティングプロセスは、個別化された三次元材料傾斜セラミック未焼結本体および/または個別化された三次元色傾斜セラミック未焼結本体を調製することを可能にし、この未焼結本体は、次に、異なって構成された(すなわち、例えば、異なって着色された)スリップで満たされたレザバーから供給される数個のプリントヘッドを用いてセラミック本体へと高密度に焼結され得る。本発明に従うプロセスは、あらゆるセラミック成形部分を調製するのに適している。プロセスの好ましい応用は、歯科修復物(例えば、ブリッジ、特にブリッジフレーム、インレー、アンレー、クラウン、インプラント、アバットメント、およびベニア)の調製である。色のグラデーションを用いたこのプロセスの応用により、歯科技術者または歯科医が、自動製造によって義歯の個々の色の設計を調製することが可能となる。
【0131】
公知のCAD/CAMプロセスによる歯科修復物の調製において、仮想上設計された歯科フレームは、集められたブランクからミリングまたは粉砕される。これらの集められたブランクは、100%1つの材料からなり、部分的に焼結されたY−TZPからなることがもっとも多い。このY−TZPは、焼結された状態において、900MPa超の破壊強さを有する。これらの機械的特性は、これにより、必要な最小限の壁およびコネクターの厚さを作り出し、これらは、材料供給者によって予め設定され、ミリング技術による義歯の自動調製において考慮される。「コネクター」とは、例えば、図4における8および9に見られ得るように、クラウン間および/または2つより多くの要素を用いたブリッジの場合におけるブリッジ要素間の連結部である。これらの値は、義歯の仮想上の設計のために使用されるCADソフトウェアに実装され、いつでも達成される。
【0132】
本発明に従って、構成要素の機械的信頼度の増加は、より高い強度の材料を用いた歯科セラミックフレームの標的化強化を介して達成され、それらの破壊の見込みは、それにより低減される。しかし、他方、本発明に従うプロセスの応用は、機械的負荷容量に有害に影響することなく、ブリッジ連結部をより繊細に設計することを可能にする。製造されるべき総セラミック義歯の美しさからなされる要求は、アバットメントクラウンとブリッジ要素との間のはっきりと改善された分離が現在、可能にされているので、従って、増加され得る。
【0133】
本発明に従うプロセスは、審美的および機械的の両方に満足のいくものである歯科修復物が経済的に調製されるのを、初めて可能にする。これは、視覚的特性および機械的特性が、成形本体の異なる領域において数個のインクを同時にプリントすることによる標的化様式で設定され得る点で、達成される。重要な領域の標的化強化のために、例えば、Y−TZPを、半透明性がより低いが、より高い機械的負荷容量を有するATZと組み合わせることによって、機械的および審美的の両方に満足のいくものである歯科修復物が調製され得る。歯科修復物は、いくつかの材料特性(例えば、視覚的特性および機械的特性)が、それぞれの場合に、三次元において徐々に変化することにより特徴付けられ、ここで、傾斜は、通常、並行に起こらない。ガラスセラミックベニア材料での必要に応じての化粧張り後でさえ個々の歯のよりはっきりとした分離を可能にする、連結部のより繊細な設計が、これにより審美的に特に重要な前歯領域において可能である。特に機械的応力に供される側方の歯の領域において本発明に従うプロセスを応用するとき、構成要素のより高い強度および信頼度は、視覚的特性を無視することなく達成される。
【0134】
本発明に従うプロセスはまた、さらなる実施形態に従って、好ましくはガラスセラミックベニア材料での、焼結された成形本体(例えば、歯科ブリッジのための基礎構造)を化粧張りする工程を含む。化粧張りする工程は、標準方法(例えば、手動の層状化技術、プレスすることまたはCAD/CAMプロセスによる(独国特許出願公開第10 2005 023 105号および独国特許出願公開第10 2005 023 106号に記載される))を用いて行われる。
【0135】
本発明に従うプロセスの特に好ましい実施形態に従って、ベニアは、構成要素(A)としてガラスセラミック粒子を含むスリップを用いて、別個の成形本体として、上に記載された様式で調製される。プリンティング後、ベニアは、脱脂され、焼結され、次に、化粧張りされるべき骨格構造に結合(例えば、接着)される。この様式で、好ましくは、骨格構造を調製するために使用される酸化セラミックの高い機械的負荷容量は、好ましくはベニアのために使用されるガラスセラミックの非常に優れた視覚的特性と組み合わせられ得る。酸化セラミックおよびガラスセラミックの同時プリンティングは、このような混合物の焼結は不十分な結果をもたらすので、本発明に従って好ましくない。
【0136】
ATZセラミックの完全なブリッジ構造の調製は、同様に可能であるが、ATZセラミックは、Y−TZPと比較して、より低い半透明性を有し、その結果、このようなセラミックは、前歯領域に関して、審美的理由であまり好ましくない。
【0137】
成形本体の調製のために、成形本体における2つまたはそれより多くのスリップの空間分布のモデルが作られ、次に、2つまたはそれより多くのスリップは、空間分布によって予め決定された様式で空間の各点(x、y、z)において分配される。このモデルは、三次元コンピューターモデル、すなわちデータセット、またはマップであり得、これにより、1つまたはそれより多くのスリップの特定の組成物が、各点(x、y、z)または各ボクセルに割り当てられる。このデータセットまたはこのマップは、本発明に従うプロセスを制御するために使用され、すなわち、成形本体が、例えば、成形本体の三次元コンピューターモデルに基づいてコンピューター制御されて生成される。
【0138】
3Dプリンティングプロセスによる傾斜歯科セラミック義歯の調製について、例えば、口内の状況は、まず、プラスターモデルにおける走査を用いて、または口腔内走査によってデジタル記録される。口内における状況の口腔内記録の場合、適合を調べるために、マスターモデルはまた、好ましくは、自動製造技術(ミリング、ステレオリソグラフィー、またはインクジェットプリンティング)の助けで生成される。デジタル3D走査データを用いて、生成されるべきブリッジフレームは、CADソフトウェアで設計される。ブリッジフレームの設計は、ここで、焼結縮み、最小限の壁およびコネクターの厚さの数値補正に関する、材料特異的なプリセットに従って行われる。
【0139】
設計されたブリッジフレームの出力フォーマットは、追加の属性(例えば、色の情報)が割り当てられ得るデータフォーマットである(例えば、IGESフォーマット、Nurbs)。これがプリンターに送られる前に、それは、「スライス」され、すなわち、三次元仮想上設計が、ディスクへと「切断」される。それぞれのディスクの高さは、構築またはプリンティングプロセスの間の層の高さに対応し、側面の広がりは、z方向における、それぞれの位置における設計された構成要素のそれぞれの側面の広がりに対応する。ブリッジは、次に、一層ずつ積み重ねて、個々の層(ディスク)を連続プリントすることによって、層をなして構築される。このように得られた未焼結の本体は、次に記載されたように、脱脂および焼結される。
【0140】
本発明は、次に、図および実施形態の実施例を用いて、より詳細に説明される。
【実施例】
【0141】
実施例1
ろう含有スリップ組成物
2つの異なるスリップを、以下の表に与えられた構成要素を混合することによって調製した。これらのスリップは、本発明に従うプロセスにおける共同使用に適している。
【0142】
【表1】

略語説明:
1) Tosoh Corporation,Tokyo,JPからのTZ−3YS−E(商業用グレード)(Yで安定化されたZrO、一次粒径300nm〜350nm)
2) Taimei Chemicals CO.LTD.Tokyo,JPからのTM−DAR(α−Al>99.99%、一次粒径100nm)
3) 融点54℃〜56℃、(80℃および1000s−1のずり速度での)粘度3mPa・s〜4mPa・s(Siliplast;Zschimmer & Schwarz,Lahnstein,DE;合計約0.5%の乳化剤を含む)
4) 中鎖ポリエステルに基づいた分散補助剤(Uniqema, GB.)
5) ポリプロピレングリコール−400−ジアクリレート
6) トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート
7) ジエチレングリコールジメタクリレート
8) 1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
9) ホスフィン酸化物、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)
10) 2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシル
実施例2
ろうを含まないスリップ組成物
2つの異なるスリップを、以下の表に与えられた構成要素を混合することによって調製した。これらのスリップは、本発明に従うプロセスにおける共同使用に適している。
【0143】
【表2】

略語説明:
11) 分散補助剤、酸性基を有するコポリマー(Byk Chemie,DE)
12) ポリプロピレングリコール200
(他のものについては実施例1を参照のこと)。
【0144】
実施例3
成形本体の調製
実施例1からのインクAを以下のパラメーター下で、ピエゾDoDマルチノズルプリントヘッド(Ricoh,Simi Valley,California,USAからのE1 GEN3)においてプリントした:
【0145】
【表3】

未焼結の本体を次に、以下の条件で脱脂および焼結した:
【0146】
【表4】

【0147】
【表5】

あるいは、脱脂および焼結を、以下の条件下で、1つのプロセス工程で実施した。
【0148】
【表6】

【符号の説明】
【0149】
1 成形本体の層
2 構築プラットフォーム(支持体)
3 インクジェットプリントヘッド
4、5 プリントヘッドセット
6 スリップAで満たされたレザバー
7 スリップBで満たされたレザバー
8、9 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形本体の生産力のある調製のためのプロセスであって、ここで
(a)セラミックスリップが、層をなして支持体に付与されて、硬化され、
(b)さらなる層が、硬化された層に付与されて、硬化され、
(c)工程(b)が所望される幾何学的形を有する本体が得られるまで反復され、
(d)該本体が次に、化学処理または熱処理に供されて、結合剤を除去(脱脂)され、そして
(e)工程(d)からの該本体が焼結され、
少なくとも2つの異なって構成されたセラミックスリップが該成形本体を調製するために使用され、ここで該セラミックスリップは、該セラミックスリップの相対的割合が、位置に依存して制御されるように付与され、その結果、層内における付与された該セラミックスリップの相対的割合は、予め決定可能な様式で層面における少なくとも1つの方向に沿って変動し、そしてここで該セラミックスリップについての付与パターンは、層から層へと変動し得ることを特徴とする、
プロセス。
【請求項2】
支持材料が、工程(a)および(b)において、前記セラミックスリップと一緒に付与されるか、またはこれらの工程に引き続いて付与される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記セラミックスリップ、および必要に応じて、前記支持材料が、インクジェットプリンティングプロセスによって、層をなして付与される、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
工程(a)および(b)において、
(A)25体積%〜55体積%のセラミック粒子、および
(B)45体積%〜75体積%のラジカル重合可能結合剤、
を含む第一のセラミックスリップが使用される、請求項1〜3のうちの1項に記載のプロセス。
【請求項5】
工程(a)および(b)において、
(A)25体積%〜55体積%のセラミック粒子、
(B)6体積%〜50体積%のラジカル重合可能結合剤、および
(C)25体積%〜69体積%のろう
を含む第二のセラミックスリップが使用される、請求項1〜3のうちの1項に記載のプロセス。
【請求項6】
第一および/または第二のセラミックスリップが、ラジカル重合のための開始剤をさらに含み、そして前記層が、光での照射によって硬化される、請求項4または5に記載のプロセス。
【請求項7】
ZrOに基づいたセラミック粒子を含む少なくとも1つの第一のスリップ、およびAlに基づいたセラミック粒子を含む少なくとも1つの第二のスリップが使用される、請求項1〜6のうちの1項に記載のプロセス。
【請求項8】
Y−TZPに基づいた少なくとも1つの第一のスリップ(基礎スリップ)、および20重量%〜100重量%のAlおよび0重量%〜80重量%のY−TZP、好ましくは40重量%〜60重量%のAlおよび60重量%〜40重量%のZrO、特に好ましくは20重量%のAlおよび80重量%のY−TZPを含む少なくとも1つの第二のスリップ(第二スリップ)が使用される、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
ガラスセラミック粒子に基づいたスリップが使用される、請求項1〜6のうちの1項に記載のプロセス。
【請求項10】
白榴石、リン灰石、および/またはリチウムジシリケートガラスセラミック粒子に基づいたスリップが使用される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
異なって着色されたセラミック粒子を含む、少なくとも2つのスリップが使用される、請求項1〜10のうちの1項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記成形本体が化粧張りされる、請求項1〜11のうちの1項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記成形本体が歯科修復物、特に、ブリッジ、ブリッジフレーム、インレー、アンレー、クラウン、インプラント、アバットメント、またはベニアである、請求項1〜12のうちの1項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記成形本体が、該成形本体の三次元コンピューターモデルに基づいて作り出される、請求項1〜13のうちの1項に記載のプロセス。
【請求項15】
請求項1〜14のうちの1項に記載されるプロセスを用いて調製され得る成形本体。
【請求項16】
セラミックスリップおよび少なくとも2つの異なるセラミックスリップをプリントするのに適したインクジェットプリンターを備えるシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−250022(P2012−250022A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−94972(P2012−94972)
【出願日】平成24年4月18日(2012.4.18)
【出願人】(501151539)イフォクレール ヴィヴァデント アクチェンゲゼルシャフト (54)
【氏名又は名称原語表記】Ivoclar Vivadent AG
【住所又は居所原語表記】Bendererstr.2 FL−9494 Schaan Liechtenstein
【Fターム(参考)】