説明

3D表示装置及び時分割方式3D表示システム

【課題】耐久性ムラが軽減された時分割方式3D表示装置及び時分割方式3D表示システムの提供。
【解決手段】視認側に配置される第1の偏光膜と、第1の偏光膜の視認側表面に配置される、λ/4機能を有する保護部材とを少なくとも有する3D表示装置であって、保護部材が、40℃90%RHでの透湿度が100g/m2/day以下である第1のフィルムを少なくとも含む。また、第1のフィルムが、環状オレフィン系フィルムであることが好ましく、λ/4機能を有していてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3D表示装置及び時分割方式3D表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
立体(3D)表示方法には従来からさまざまな方式が提案されており、その一つに液晶シャッターメガネ等を使用する時分割方式がある。この方式では、左目用と右目用の画像を時間的に交互に表示しながら、画像の表示に同期してメガネのシャッターを開閉し、それぞれの画像が対応する眼に入るように制御する方式である(例えば、特許文献1)。この方式による3D表示装置として、表示モニタに液晶パネルを利用するものが提案されている(例えば、特許文献2)。この3D表示方式では、観察者が顔を傾けた時に生じる、輝度低下やクロストークの悪化の問題があるが、画像表示装置側表面及びシャッターメガネの表面に、λ/4板をそれぞれ配置し、円偏光画像を利用することでこの問題を解決することも提案されている(例えば、特許文献3)。
【0003】
しかし、上記構成の3D表示装置では、高湿度下に長期間保存すると、画面にサークルムラや画面隅にムラが生じることがあり、改善が求められている。
従来、液晶表示装置に用いられる偏光板の耐久性向上のために、低透湿度のフィルムを保護フィルムとして用いることが提案されている(例えば、特許文献3)。しかし、従来の2D用の液晶表示装置では、λ/4板のように高い位相差のあるフィルムを視認側の保護フィルムとして配置することは想定されていない。3D表示装置では、画面の大型化、ベゼルの薄型化のニーズがあることから、透湿度が低い光学補償フィルムを貼り合わせただけでは耐久性ムラを改善できないといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭53−51917号公報
【特許文献2】特開2003−259395号公報
【特許文献3】特開2009−237376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであって、λ/4板を利用した3D表示装置及び時分割3D表示システムの、耐久性を改善することを課題とする。
具体的には、高湿度下における表示ムラの発生が軽減された3D表示装置及び時分割方式3D表示システムを提供することを課題とする。
【0006】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 視認側に配置される第1の偏光膜と、前記第1の偏光膜の視認側表面に配置される、λ/4機能を有する保護部材とを少なくとも有する3D表示装置であって、前記保護部材が、40℃90%RHでの透湿度が100g/m2/day以下である第1のフィルムを少なくとも含むことを特徴とする3D表示装置。
[2] 前記第1のフィルムが、環状オレフィン系ポリマーフィルムである[1]の3D表示装置。
[3] 前記保護部材が、視認側表面に反射防止層を有する[1]又は[2]の3D表示装置。
[4] 前記第1のフィルムが、λ/4機能を有する[1]〜[3]のいずれかの3D表示装置。
[5] 前記保護部材が、液晶化合物を含む組成物からなる光学異方性層を含む[1]〜[4]のいずれかの3D表示装置。
[6] 前記第1のフィルムと前記反射防止層との間、及び前記第1のフィルムと前記光学異方性層との間の少なくも一方に、セルロースアシレート系フィルムを有する[3]〜[5]のいずれかの3D表示装置。
[7] 前記第1の偏光膜の前記保護部材が配置された側と反対側表面に、40℃90%RHでの透湿度が10〜2000g/m2/dayである第2のフィルムを有する[1]〜[5]のいずれかの3D表示装置。
[8] 前記第2のフィルムが、セルロースアシレート系フィルムである[7]の3D表示装置。
[9] [1]〜[8]のいずれかの3D表示装置と、該3D表示装置と同期して作動する時分割画像表示遮断機器と、を少なくとも有する時分割方式3D表示システム。
[10] 前記時分割画像表示遮断機器が、前記3D表示装置に対向する側より、λ/4板、液晶セル、及び偏光膜を少なくとも有する[9]の時分割方式3D表示システム。
[11] 前記時分割画像表示遮断機器が、前記λ/4板と前記液晶セルとの間に、偏光膜をさらに有する[10]の時分割方式3D表示システム。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、λ/4板を利用した3D表示装置及び時分割3D表示システムの、耐久性を改善することができる。
具体的には、本発明によれば、高湿度下における表示ムラの発生が軽減された3D表示装置及び時分割方式3D表示システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の時分割方式3D表示装置の一例を、液晶シャッターメガネとともに示した模式図である。
【図2】本発明の時分割方式3D表示装置の一例の断面模式図である。
【図3】本発明の時分割方式3D表示装置の一例の断面模式図である。
【図4】保護部材の態様の一例の断面模式図である。
【図5】保護部材及びλ/4層の一例の断面模式図である。
【図6】保護部材及びλ/4層の一例の断面模式図である。
【図7】保護部材及びλ/4層の一例の断面模式図である。
【図8】本発明の時分割方式3D表示システムの一例の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について、実施の形態を挙げて詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
まず、本明細書で用いられる用語について説明する。
【0010】
Re(λ)、Rth(λ)は、各々、波長λにおける面内のレターデーション、及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH、又はWR(王子計測機器(株)製)において、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。測定されるフィルムが、1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)が算出される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH、又はWRが算出する。なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基に、以下の式(A)、及び式(B)よりRthを算出することもできる。
【0011】
【数1】

なお、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。また、式(A)におけるnxは、面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは、面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzは、nx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d・・・・・・・・・・・式(B)
【0012】
測定されるフィルムが、1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法により、Rth(λ)は算出される。Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。また、上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0013】
本明細書において、透湿度は、JIS Z 0208に記載の方法に則り、各試料の透湿度を測定し、面積1m2あたり24時間で蒸発する水分量(g)として算出したものを意味する。
【0014】
本明細書において、「平行」、「直交」とは、厳密な角度±10゜未満の範囲内であることを意味する。この範囲は厳密な角度との誤差は、±5゜未満であることが好ましく、±2゜未満であることがより好ましい。また、「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味する。
なお、屈折率の測定波長は、特に断らない限り、可視光域のλ=550nmでの値であり、Re及びRthの測定波長については、特に断らない限り、550nmとする。
【0015】
また、本明細書では、「偏光膜」及び「偏光板」を区別して用いるが、「偏光板」は「偏光膜」の少なくとも片面に該偏光膜を保護する透明保護膜を有する積層体を意味するものとする。透明保護膜は、液晶セルと偏光膜の間に配置された自己支持性のある膜を意味する。(レターデーションの大小は関係ない。)なお、「λ/4板」と「λ/4フィルム」は同義である。
【0016】
以下、本発明の時分割方式3D表示装置の実施態様について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の時分割方式3D表示装置の一態様の概略模式図である。図1に示す時分割方式3D表示装置は、画像表示装置1と、シャッター機能を有するメガネ2(時分割画像表示遮断機器)とを備え、画像表示装置1の画像を、メガネ2を装着した観察者が観察する。図1中には示さないが、画像表示装置1の表示面側には、偏光膜とλ/4機能を有する保護部材が配置されていて、画像表示装置1からは、円偏光画像が観察者側に表示され、且つメガネ2もλ/4層を含み、円偏光画像の透過率をON−OFFするシャッター機能を有する。
【0017】
画像表示装置1には、例えば、所定の周波数(例えば、60Hz以上の周波数)で左目用画像及び右目用画像が交互に表示される。一例では、立体視用の画像信号は、画像処理部において、左目用画像信号と右目用画像信号とに処理された後、表示用モニタ駆動回路に送られ、画像表示装置1の各々の画素部に、左目用画像信号と右目用画像信号とがフィールド毎に交互に割り当てられて、所定の時間毎に、左目用画像と右目用画像とが画像表示装置1の同一画面上に交互に表示され、視認側表面に配置されている偏光膜とλ/4機能を有する保護部材によって、左目用円偏光画像と右目用円偏光画像に変換される。
【0018】
画像表示装置1の左目用及び右目用画像表示の切り替えに同期回路3により同期させて、メガネ2に、駆動電圧等が印加され、具体的には、左目用画像が表示されているときは、左目シャッター2aの円偏光に対する透過率が最大になり、左目に画像が入力され、且つ右目シャッター2bの円偏光に対する透過率は最小になり、右目には画像は入力されず、一方、右目用画像が表示されているときは、右目シャッター2bの円偏光透過率が最大になり、右目に画像が入力され、且つ左目シャッター2aの円偏光透過率は最小になり左目には画像は入力されなくなっている。観察者は、左目用画像を左目だけで、右目用画像を右目だけで選択的に見ることで、表示画像を立体画像として認識する。なお、メガネ2の透過率のON/OFFの機構については特に制限はない。液晶セルによるシャッター機能を利用したメガネが好ましい。
【0019】
上記した通り、画像表示装置1の表示面側には、偏光膜とλ/4機能を有する保護部材が配置されていて、円偏光画像が観察者に対して表示され、またメガネ2もλ/4板を含み、円偏光画像の透過率をON−OFFするシャッター機能を有する。本発明では、保護部材中に、40℃90%RHでの透湿度が100g/m2/day以下である、高湿度下で発生する表示ムラ(サークルムラ及び対角ムラ)を抑制している。第1のフィルムが、λ/4機能を有していても、また第1のフィルムとは別にλ/4機能を有する位相差フィルムが配置されていても、同様に表示ムラを軽減できる。また、保護部材は第1のフィルムのみからなっていても、また第1のフィルムとともに他の部材(位相差フィルム、反射防止フィルム等)を含んでいてもよい。
【0020】
図2に、画像表示装置1として液晶パネルを、メガネ2として、液晶シャッターメガネをそれぞれ利用した構成例を、断面模式図として示す。なお、図中、各層の厚みの相対的関係は、実際の液晶表示装置の各層の厚みの相対的関係と必ずしも一致しているものではない。
【0021】
画像表示装置1の構成については特に制限はない。例えば、液晶層を含む液晶パネルであっても、有機EL層を含む有機EL表示パネルであってもよい。いずれの態様でも、種々の可能な構成を採用することができる。また、メガネ2のシャッター機能についても特に制限はなく、種々の構成を採用できる。好ましくは液晶セルのシャッター機能を利用したメガネである。
【0022】
画像表示装置1は、液晶セル13を有する液晶パネルであることが好ましく、その視認側に第1の偏光膜12、さらにその視認側表面に保護部材11を有する。液晶シャッターメガネ2は、液晶セル13、及びその視認側にλ/4層21を有する液晶シャッターメガネである。保護部材11はλ/4機能を有する。保護部材11は、40℃90%RHでの透湿度が100g/m2/day以下である第1のフィルムを少なくとも含む。
【0023】
画像表示装置1の液晶セル13の後方には、バックライト4が配置され、バックライト4と液晶セル13との間には第2の偏光膜14が配置され、透過モードとして構成されている。
第2の偏光膜14の吸収軸は、第1の偏光膜12の吸収軸と直交になっている。また、第1の偏光膜12と液晶セル13との間には、視野角補償のための、及び/又は偏光膜12の保護のための第2のフィルム15が配置されている。第2の偏光膜14も、偏光膜の液晶セル側表面に第3のフィルム16が配置されており、バックライト側表面には、必要に応じて保護フィルム17を有している。
【0024】
液晶セル13の構成については特に制限はなく、一般的な構成の液晶セルを採用することができる。液晶セル13は、例えば、図示しない対向配置された一対の基板と、該一対の基板間に挟持された液晶層とを含み、必要に応じて、カラーフィルタ層などを含んでいてもよい。液晶セル13の駆動モードについても特に制限はなく、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等の種々のモードを利用することができる。
【0025】
表示側に配置される第1の偏光膜12は、視認側表面に、λ/4機能を有する保護部材11を有する。保護部材11の構成については特に制限はなく、単層構造であっても、積層構造であってもよい。λ/4機能を有する部材としては、位相差ポリマーフィルム、位相差ポリマーフィルムの積層体、液晶組成物の配向を固定して形成される光学異方性層、及び該光学異方性層とそれを支持するポリマーフィルムとの積層体が挙げられる。保護部材11が、ポリマーフィルムを含んでいると、偏光膜12の保護フィルムとしても利用できるので好ましい。また、保護部材11は、視認側表面に反射防止層を有しているのも好ましい。これらの部材の詳細については、後述する。
【0026】
保護部材11は、40℃90%RHでの透湿度が100g/m2/day以下である第1のフィルムを含む。保護部材11が位相差フィルムのみの単層構造である態様では、該位相差フィルムの透湿度が上記範囲であり、且つ該位相差フィルムがλ/4機能を示す必要がある。保護部材11が積層構造である態様では、少なくとも一つの層が、透湿度が上記範囲であるフィルムである必要がある。該フィルムは位相差フィルムであってもよく、該フィルム単独で、又は他の位相差フィルム等とともに、λ/4機能を達成していてもよい。また、該フィルムは、位相差がない、光学的に等方性のフィルムであってもよい。
【0027】
一方、第1の偏光膜12の液晶セル側表面には第2のフィルム15が配置され、及びバックライト4側に配置される偏光膜14の液晶セル側表面にも、第3のフィルム16が配置されている。これらのフィルム15及び16は、偏光膜12及び14それぞれの保護フィルムとして機能するとともに、液晶セル13の視野角補償に寄与する位相差を有する位相差フィルムであってもよい。高湿度下における表示ムラをさらに軽減するためには、フィルム15及び16のうち少なくとも一方は、高透湿度のフィルムであるのが好ましく、具体的には、40℃90%RHでの透湿度が10〜2000g/m2/dayのフィルムであるのが好ましい。
【0028】
メガネ2は、λ/4板21、偏光膜22、液晶セル23、及び偏光膜24を有し、画像表示装置1の画像表示と同期するシャッター機能を備えている。メガネ2の構成としては、図2に示すような偏光板2枚方式であってもよく、図2に示す構成以外に、図3(a)、図3(b)に示す偏光板1枚方式の構成であってもよい。また、図8に示すように、液晶セル23を画像表示装置1の表示面側に配置させても、同様の効果を有する。この場合、液晶セル23は画像表示装置1の出射光を右円偏光と左円偏光に時分割で変換するアクティブリターダー用のセルとして機能する。
【0029】
λ/4板21の構成についても特に制限はない。単層構造であっても、積層構造であってもよい。観察者が装着することを考慮すると、軽量且つ薄層であるのが好ましく、従って、単層構造であるのが好ましい。λ/4板21に利用可能な部材としては、位相差ポリマーフィルム、位相差フィルムの積層体、液晶組成物の配向を固定して形成される光学異方性層、及び該光学異方性層とそれを支持するポリマーフィルムとの積層体が挙げられる。λ/4板21が、ポリマーフィルムを含んでいると、偏光膜22の保護フィルムとしても利用できるので好ましい。これらの部材の詳細については、後述する。また、λ/4板21は、表面にハードコート層や反射防止層を有しているのも好ましい。これらの部材の詳細については、後述する。
【0030】
画像表示装置1の第1の偏光膜12の吸収軸と、λ/4機能を有する保護部材11の遅相軸とは、45°を中心として±10°、即ち35〜55°であるか、又は135°を中心として±10°、即ち125〜145°であるのが好ましい。また、第1の偏光膜11の吸収軸及び偏光膜22の吸収軸は、直交又は平行に配置するのが好ましく、且つ保護部材11及びλ/4板21の遅相軸は直交又は平行であるのが好ましい。
なお、保護部材11及びλ/4板21が複数の位相差層及び/又は位相差フィルムを含む態様では、遅相軸は、保護部材11及びλ/4板21全体で測定したときの遅相軸として特定される。
【0031】
本発明の時分割方式3Dシステムは、図2に示す部材以外に、さらに、立体視用の画像信号を左目用画像信号と右目用画像信号とに処理する画像処理部、当該画像信号をディスプレイに送る表示用モニタ駆動回路、当該画像信号に応じて、液晶シャッターメガネに信号を送り、左右液晶シャッターの透過率をON/OFFさせる、同期回路を備えているのが好ましい。
【0032】
以下、本発明の時分割方式3D表示システムに用いられる種々の部材について詳細に説明する。
【0033】
1.λ/4機能を有する部材
本発明では、画像表示装置の視認側に配置される第1の偏光膜の、視認側表面に配置あされる保護部材として、及び時分割画像表示遮断器が有するλ/4板として、λ/4機能を有する部材が用いられる。なお、λ/4板は、図2及び図3(a)に示す態様では、液晶セルよりも画像表示装置側にある層すべての総称であり、図3(b)に示す態様では、偏光膜と液晶セルの間にある層すべての総称である。
【0034】
本発明では、前記保護部材は、40℃90%RHでの透湿度が100g/m2/day以下である第1のフィルムを少なくとも含む。
前記保護部材の構成としては、例えば、図4(a)に示すように、λ/4機能を有し、且つ40℃90%RHでの透湿度が100g/m2/day以下である第1のフィルムを有する構成であってもよく、図4(b)に示すように、λ/4機能を有する部材(λ/4フィルム)とともに、40℃90%RHでの透湿度が100g/m2/day以下である第1のフィルムを有する構成であってもよく、保護部材内に少なくとも第1のフィルムを有していれば、構成は特に限定されない。また、最表面には、必要に応じて反射防止層などの表面層を有していてもよい。
【0035】
保護部材及びλ/4層はそれぞれ、単層構造であっても、積層構造であってもよい。λ/4層は、メガネとして観察者が装着する時分割画像表示遮断機器に含まれるので、より軽量且つ薄層であるのが好ましい。また、保護部材及びλ/4層が、ポリマーフィルムを含んでいると、隣接して配置される偏光膜の保護フィルムとしても利用できるので好ましい。また、表面に反射防止層を含んでいるのも好ましい。λ/4機能を有する部材としては、位相差ポリマーフィルム、位相差ポリマーフィルムの積層体、液晶組成物の配向を固定して形成される光学異方性層、及び該光学異方性層とそれを支持するポリマーフィルムとの積層体が挙げられ、いずれも用いることができる。位相差ポリマーフィルムの例には、ポリマーフィルムを延伸してフィルム中の高分子を配向させて発現させた光学異方性を有するフィルムが含まれる。1枚又は2枚以上の二軸性フィルムによって構成することができるし、またCプレートとAプレートとの組合せ等、一軸性フィルムを2枚以上組合せることでも構成することができる。勿論、1枚以上の二軸性フィルムと、1枚以上の一軸性フィルムとを組み合わせることによっても構成することもできる。前記光学異方性層は、液晶性化合物の分子の配向によって発現された光学異方性を示す層である。光学異方性層単独でλ/4機能を有していてもよいし、支持体となるポリマーフィルムとともに、全体として、λ/4機能を有していてもよい。
【0036】
図5及び以下に、保護部材及びλ/4板の構成例を示す。なお、図中及び以下の説明では、「光学異方性支持体」とは、位相差ポリマーフィルムを意味し、「支持体」とは、位相差ポリマーフィルムと低位相差の光学的に等方性に近いポリマーフィルムの双方を含む意味とする。後述する図6〜図7においても同様である。、図5〜7中、第1のフィルムは、「光学異方性支持体」及び「支持体」として保護部材内に配置される。
光学異方性支持体(図5(i))
光学異方性支持体/ハードコート層(図5(ii))
光学異方性支持体/低屈折率層(図5(iii))
光学異方性支持体/ハードコート層/低屈折率層(図5(iv))
光学異方性支持体/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層(図5(v))
光学異方性支持体/支持体/ハードコート層(図5(vi))
光学異方性支持体/支持体/低屈折率層(図5(vii))
光学異方性支持体/支持体/ハードコート層/低屈折率層(図5(viii))
光学異方性支持体/支持体/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層(図5(ix))
支持体/光学異方性層(図5(x))
支持体/光学異方性層/支持体/ハードコート層(図5(xi))
支持体/光学異方性層/支持体/低屈折率層(図5(xii))
支持体/光学異方性層/支持体/ハードコート層/低屈折率層(図5(xiii))
支持体/光学異方性層/支持体/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層(図5(xiv))
光学異方性層/支持体(図5(xv))
光学異方性層/支持体/支持体/ハードコート層(図5(xvi))
光学異方性層/支持体/支持体/低屈折率層(図5(xvii))
光学異方性層/支持体/支持体/ハードコート層/低屈折率層(図5(xviii))
光学異方性層/支持体/支持体/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層(図5(xix))
光学異方性層/支持体/ハードコート層(図5(xx))
光学異方性層/支持体/低屈折率層(図5(xxi))
光学異方性層/支持体/ハードコート層/低屈折率層(図5(xxii))
光学異方性層/支持体/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層(図5(xxiii))
支持体/光学異方性層/ハードコート層(図5(xxiv))
支持体/光学異方性層/低屈折率層(図5(xxv))
支持体/光学異方性層/ハードコート層/低屈折率層(図5(xxvi))
支持体/光学異方性層/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層(図5(xxvii))
【0037】
保護部材の面内レターデーションRe(550)は100〜175nmであることが好ましく、110〜165nmであることがより好ましく、115〜155nmであることが更に好ましい。
厚み方向のレターデーションRth(550)は−400〜260nmであることが好ましく、−200〜160nmがより好ましく、−90〜90nmが更に好ましい。以上のような範囲にすることで、光の波長依存性や入射角度依存性が小さい、λ/4機能を有する保護部材を得ることができる。また、理想的には450nm、550nm、630nmのいずれにおいてもReがλ/4となる波長分散となることが好ましい。すなわち、理想的な保護部材は、Re(450)=112.5nm、Re(550)=137.5nm、Re(630)=157.5nmを満足する。理想的にはRthはどの波長においても0nmとなるのが好ましい。すなわち、理想的には、Rth(450)=0nm、Rth(550)=0nm、Rth(630)=0nmを満足する。
【0038】
保護部材全体のReにおける波長分散は、0.80≦Re(450)/Re(550)≦1.21で、0.82≦Re(630)/Re(550)≦1.11が好ましく、(IV)1.00≦Re(450)/Re(550)≦1.18で、(V)0.92≦Re(630)/Re(550)≦1.00がより好ましい。この範囲であると、視野角輝度及び視野角クロストークは表示側偏光板保護部材全体のRthに主に依存し、保護部材全体のReの波長分散によらない3D表示装置となる。
【0039】
(1)第1のフィルム
第1のフィルムとしては、40℃90%RHでの透湿度が100g/m2/day以下である必要がある。
前記40℃90%RHでの透湿度としては、100g/m2/day以下である。40℃90%RHでの透湿度が、100g/m2/dayを超えると、耐久性ムラを改善することができないという点で好ましくなく、その観点では、5〜100g/m2/dayが好ましく、15〜80g/m2/dayがより好ましい。透湿度が低すぎると、わずかな耐久性ムラが発生したときに、耐久性ムラの消失に時間がかかる場合がある。
【0040】
第1のフィルムの材料としては、40℃90%RHでの透湿度が100g/m2/day以下であれば特に制限されないが、環状オレフィン系樹脂を主成分として含有する環状オレフィン系ポリマーフィルムが好ましい。
【0041】
環状オレフィン系樹脂としては、環状オレフィン構造を有する重合体樹脂からなることが好ましい。環状オレフィン構造を有する(共)重合体樹脂の例には、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィンの重合体、(3)環状共役ジエンの重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及び(1)〜(4)の水素化物などがある。
第1のフィルムに使用される好ましい重合体は、下記一般式(1)からなる群より選ばれる少なくとも1種の極性基を持つ環状オレフィン系モノマーの(共)重合体を含有する環状オレフィン系樹脂であり、特に好ましくは下記一般式(1)からなる群より選ばれる少なくとも1種の極性基を持つ環状オレフィン系モノマーの付加(共)重合体を含有する環状オレフィン系樹脂である。
【0042】
【化1】

【0043】
一般式(1)において、mは0〜4の整数を表し、R1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1つは極性基を表し、残りは非極性基であり、前記非極性基は、水素原子;ハロゲン原子;炭素数1〜20の直鎖状または分岐状アルキル、ハロアルキル、アルケニルまたはハロアルケニル;炭素数3〜12の直鎖状または分岐状アルキニルまたはハロアルキニル;アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン原子、ハロアルキル、ハロアルケニルまたはハロアルキニルで置換または非置換の炭素数3〜12のシクロアルキル;アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン原子、ハロアルキル、ハロアルケニルまたはハロアルキニルで置換または非置換の炭素数6〜40のアリル;またはアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン原子、ハロアルキル、ハロアルケニルまたはハロアルキニルで置換または非置換の炭素数7〜15のアラルキルであり、前記極性基は、少なくとも1つ以上の酸素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子、ケイ素原子またはホウ素原子を含む非炭化水素極性基であって、−R5OR6、−OR6、−OC(O)OR6、−R5OC(O)OR6、−C(O)R6、−R5C(O)OR6、−C(O)OR6、−R5C(O)R6、−OC(O)R6、−R5OC(O)R6、−(R5O)k−OR6、−(OR5k−OR6、−C(O)−O−C(O)R6、−R5C(O)−O−C(O)R6、−SR6、−R5SR6、−SSR6、−R5SSR6、−S(=O)R6、−R5S(=O)R6、−R5C(=S)R6、−R5C(=S)SR6、−R5SO36、−SO36、−R5N=C=S、−NCO、R5−NCO、−CN、−R5CN、−NNC(=S)R6、−R5NNC(=S)R6、−NO2、−R5NO2
【0044】
【化2】

【0045】
から選ばれるものであり、ここでR5及びR11は、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状アルキレン、ハロアルキレン、アルケニレン、ハロアルケニレン;炭素数3〜20の直鎖状または分岐状アルキニレン、ハロアルキニレン;アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン原子、ハロアルキル、ハロアルケニルまたはハロアルキニルで置換または非置換の炭素数3〜12のシクロアルキレン;アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、ハロアルケニル基またはハロアルキニル基で置換または非置換の炭素数6〜40のアリーレン;またはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、ハロアルケニル基またはハロアルキニル基で置換または非置換の炭素数7〜15のアラルキレンであり、R6、R12、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;炭素数1〜20の直鎖状または分岐状アルキル、ハロアルキル、アルケニルまたはハロアルケニル;炭素数3〜20の直鎖状または分岐状アルキニルまたはハロアルキニル;アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン原子、ハロアルキル、ハロアルケニルまたはハロアルキニルで置換または非置換の炭素数3〜12のシクロアルキル;アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン原子、ハロアルキル、ハロアルケニルまたはハロアルキニルで置換または非置換の炭素数6〜40のアリル;アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン原子、ハロアルキル、ハロアルケニルまたはハロアルキニルで置換または非置換の炭素数7〜15のアラルキル;またはアルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシであり、kは、1〜10の整数を表す。
【0046】
本発明に使用される保護フィルムは、環状オレフィン構造を有する重合体樹脂からなることが好ましい。環状オレフィン構造を有する重合体樹脂の例には、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィンの重合体、(3)環状共役ジエンの重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及び(1)〜(4)の水素化物などがある。本発明の保護フィルムに使用される好ましい重合体はノルボルネン系(共)重合体である。
【0047】
ノルボルネン系(共)重合体としては、具体的にはノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、及びそれらの水素添加物、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーとの付加型共重合体などが挙げられる。これらの中でも、透明性や透湿性の観点から、ノルボルネン系モノマーの付加(共)重合体及び開環(共)重合体水素添加物が最も好ましい。
【0048】
ノルボルネン系付加(共)重合体は、特開平10−7732号公報、特表2002−504184号公報、米国特許出願公開第2004/229157号明細書あるいは国際公開第2004/070463号パンフレット等に開示されている。ノルボルネン系多環状不飽和化合物同士を付加重合する事によって得られる。また、必要に応じ、ノルボルネン系多環状不飽和化合物と、エチレン、プロピレン、ブテン;ブタジエン、イソプレンのような共役ジエン;エチリデンノルボルネンのような非共役ジエン;アクリロニトリル、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイミド、酢酸ビニル、塩化ビニルなどの線状ジエン化合物とを付加重合することもできる。このノルボルネン系付加(共)重合体は、三井化学(株)よりアペルの商品名で発売されており、ガラス転移温度(Tg)の異なる例えばAPL8008T(Tg70℃)、APL6013T(Tg125℃)あるいはAPL6015T(Tg135℃)などのグレードがある。ポリプラスチックス(株)よりTOPAS8007(Tg80℃)、同6013(Tg140℃)、同6015(Tg160℃)などのペレットが発売されている。更に、Ferrania社よりAppear3000(Tg330℃)が発売されている。
【0049】
ノルボルネン系開環重合体水素化物は、特開平1−240517号、特開平7−196736号、特開昭60−26024号、特開昭62−19801号、特開2003−1159767号あるいは特開2004−309979号等の各公報に開示されているように、多環状不飽和化合物を付加重合あるいはメタセシス開環重合したのち水素添加することにより作られる。これらのノルボルネン系樹脂は、JSR(株)からアートン(Arton)GあるいはアートンFという商品名で発売されており、また日本ゼオン(株)からゼオノア(Zeonor)750R、1020R、1600、ゼオネックス(Zeonex)250あるいは280という商品名で市販されており、これらを使用することができる。
【0050】
第1のフィルムには、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、劣化防止剤、紫外線防止剤、微粒子、剥離促進剤、赤外吸収剤など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に劣化防止剤の混合などである。さらにまた、赤外吸収染料としては例えば特開2001−194522号公報に記載されている。またその添加する時期は環状オレフィン系樹脂溶液(ドープ)作製工程において何れの段階で添加してもよいが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、環状オレフィン系樹脂フィルムが多層構成で形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。
【0051】
第1のフィルムが、環状オレフィン系ポリマーフィルムである態様では、表面層として配置される反射防止層との接着性、又は後述する液晶組成物からなる光学異方性層との接着性が弱い場合がある。したがって、第1のフィルムとして用いられる環状オレフィン系ポリマーフィルムは、表面処理を施すことによって、又は易接着層を表面に形成することによって、表面層等との接着性を改善するのが好ましい。また、反射防止層等の表面層と前記環状オレフィン系ポリマーフィルムとの間、又は前記環状オレフィン系ポリマーフィルムと前記光学異方性層との間に、セルロースアシレート系フィルムを配置して、接着性を改善してもよい。
【0052】
(2)ポリマーフィルム
前記位相差ポリマーフィルム、又は前記光学異方性層の支持体として用いられるポリマーフィルムの材料については、特に制限はない。種々のポリマーフィルム、例えば、セルロースアシレート(例えば、セルローストリアセテートフィルム、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム)、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ノルボルネン等の環状オレフィン系ポリマー、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は前記ポリマーを混合したポリマー等が挙げられる。1種又は2種以上のポリマーを、主成分として用いることができる。市販品を用いても良く、環状オレフィン系ポリマーであるアートン(JSR社製)、非晶質ポリオレフィンであるゼオネックス(日本ゼオン社製))などを用いてもよい。このうちトリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、環状オレフィン系ポリマーが好ましく、特にトリアセチルセルロースが好ましい。
【0053】
前記位相差ポリマーフィルム等の製造方法については特に制限はない。溶液製膜方法及び溶融製膜方法のいずれも利用することができる。所望の特性とするために、製膜後に延伸処理を行ってもよい。また、その上に、液晶組成物からなる光学異方性層を形成する場合は、ポリマーフィルムを表面処理(例、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、火炎処理、鹸化処理)等してもよい。
【0054】
前記位相差ポリマーフィルムの厚みについては特に制限はないが、通常25μm〜1000μm程度のものが使用される。
【0055】
なお、後述する液晶組成物からなる光学異方性層の支持体として用いるポリマーフィルムは、低Reであってもよく、例えば、0〜50nm、0〜30nm、又は0〜10nmであってもよい。また、支持体として用いられるポリマーフィルムのRthについても、特に制限はなく、例えば、−300nm〜300nm、−100nm〜200nm、又は−60nm〜60nmであってもよい。支持体の光学特性は、その上に設けられる光学異方性層との組み合わせによって選択することが好ましい。
【0056】
支持体のRe、Rthについては各種公知のレターデーション調整剤、延伸などにより調整することもできる。
【0057】
(3)液晶性化合物を含む光学異方性層
前記保護部材又はλ/4層は、液晶化合物を含有する組成物からなる光学異方性層を1以上有していてもよい。液晶性化合物の種類については特に制限されない。例えば、低分子液晶性化合物を液晶状態においてネマチック配向に形成後、光架橋や熱架橋によって固定化して得られる光学異方性層や、高分子液晶性化合物を液晶状態においてネマチック配向に形成後、冷却することによって当該配向を固定化して得られる光学異方性層を用いることもできる。なお本発明では、光学異方性層に液晶性化合物が用いられる場合であっても、光学異方性層は、該液晶性化合物が重合等によって固定されて形成された層であり、層となった後はもはや液晶性を示す必要はない。重合性液晶性化合物は、多官能性重合性液晶でもよいし、単官能性重合性液晶性化合物でもよい。また、液晶性化合物は、ディスコティック液晶性化合物でもよいし、棒状液晶性化合物でもよい。
【0058】
前記光学異方性層において、液晶化合物の分子は、垂直配向、水平配向、ハイブリッド配向及び傾斜配向のいずれかの配向状態に固定化されていることが好ましい。一例は、ディスコティック液晶性化合物の円盤面がフィルム面(光学異方性層面)に対して実質的に垂直に配向している例であり、他の例は、棒状液晶性化合物の長軸がフィルム面(光学異方性層面)に対して実質的に水平に配向している例である。ディスコティック液晶性化合物が実質的に垂直とは、フィルム面(光学異方性層面)とディスコティック液晶性化合物の円盤面とのなす角度の平均値が70°〜90°の範囲内であることを意味する。80°〜90°がより好ましく、85°〜90°が更に好ましい。棒状液晶性化合物が実質的に水平とは、フィルム面(光学異方性層面)と棒状液晶性化合物のダイレクターとのなす角度が0°〜20°の範囲内であることを意味する。0°〜10°がより好ましく、0°〜5°が更に好ましい。
液晶化合物の分子をハイブリッド配向させて視野角依存性が非対称である光学補償フィルムを作製する場合、液晶化合物のダイレクターの平均傾斜角は5〜85°であることが好ましく、10〜80°であることがより好ましく、15〜75°であることが更に好ましい。
【0059】
前記光学異方性層は、棒状液晶性化合物又は円盤状(ディスコティック)液晶性化合物等の液晶性化合物と、所望により、後述する重合開始剤や配向制御剤や他の添加剤を含む塗布液を、支持体上に塗布することで形成することができる。支持体上に配向膜を形成し、該配向膜表面に前記塗布液を塗布して形成するのが好ましい。
【0060】
[棒状液晶性化合物]
λ/4フィルムが有する光学異方性層の形成に棒状液晶性化合物を用いてもよい。棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。棒状液晶性化合物を重合によって配向を固定することがより好ましい。液晶性化合物には活性光線や電子線、熱などによって重合や架橋反応を起こしうる部分構造を有するものが好適に用いられる。その部分構造の個数は好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個である。重合性棒状液晶性化合物としては、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開WO95/22586号公報、同95/24455号公報、同97/00600号公報、同98/23580号公報、同98/52905号公報、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、及び特開2001−328973号公報などに記載の化合物を用いることができる。
【0061】
[ディスコティック液晶性化合物]
本発明では、前記光学フィルムが有する光学異方性層の形成に、ディスコティック液晶性化合物を用いるのが好ましい。ディスコティック液晶性化合物は、様々な文献(C.Destrade et al.,Mol.Crysr.Liq.Cryst.,vol.71,page 111(1981);日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B.Kohne et al.,Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.,page 1794(1985);J.Zhang et al.,J.Am.Chem.Soc.,vol.116,page 2655(1994))に記載されている。ディスコティック液晶性化合物の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。
【0062】
ディスコティック液晶性化合物は、重合により固定可能なように、重合性基を有するのが好ましい。例えば、ディスコティック液晶性化合物の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させた構造が考えられるが、但し、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に連結基を有する構造が好ましい。即ち、重合性基を有するディスコティック液晶性化合物は、下記式で表される化合物であることが好ましい。
D(−L−P)n
式中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Pは重合性基であり、nは1〜12の整数である。前記式中の円盤状コア(D)、二価の連結基(L)及び重合性基(P)の好ましい具体例は、それぞれ、特開2001−4837号公報に記載の(D1)〜(D15)、(L1)〜(L25)、(P1)〜(P18)であり、同公報に記載の内容を好ましく用いることができる。なお、液晶性化合物のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、30〜300℃が好ましく、30〜170℃が更に好ましい。
【0063】
下記式(I)で表わされるディスコティック液晶性化合物は、面内レターデーションの波長分散性が低く、高い面内レターデーションを発現可能であり、また特殊な配向膜や添加剤を使用しなくても高い平均傾斜角で均一性に優れた垂直配向を達成できるので、光学異方性層の形成に利用するのが好ましい。更に該液晶性化合物を含有する塗布液は、その粘度が比較的低くなる傾向があり、塗布性が良好である点でも好ましい。
【0064】
(1)−1 一般式(I)で表されるディスコティック液晶化合物
【化3】

【0065】
式中、Y11、Y12及びY13は、それぞれ独立に置換されていてもよいメチン又は窒素原子を表し;L1、L2及びL3は、それぞれ独立に単結合又は二価の連結基を表し;H1、H2及びH3は、それぞれ独立に一般式(I−A)又は(I−B)の基を表し;R1、R2及びR3は、それぞれ独立に下記一般式(I−R)を表す;
【化4】

【0066】
一般式(I−A)中、YA1及びYA2は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し;XAは、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し;*は上記一般式(I)におけるL1〜L3側と結合する位置を表し;**は上記一般式(I)におけるR1〜R3側と結合する位置を表す;
【0067】
【化5】

【0068】
一般式(I−B)中、YB1及びYB2は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し;XBは、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し;*は上記一般式(I)におけるL1〜L3側と結合する位置を表し;**は上記一般式(I)におけるR1〜R3側と結合する位置を表す;
【0069】
一般式(I−R)
*−(−L21−Q2n1−L22−L23−Q1
一般式(I−R)中、*は、一般式(I)におけるH1〜H3側と結合する位置を表す;L21は単結合又は二価の連結基を表す;Q2は少なくとも1種類の環状構造を有する二価の基(環状基)を表す;n1は、0〜4の整数を表す;L22は、**−O−、**−O−CO−、**−CO−O−、**−O−CO−O−、**−S−、**−NH−、**−SO2−、**−CH2−、**−CH=CH−又は**−C≡C−を表す;L23は、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−及び−C≡C−並びにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す;Q1は重合性基又は水素原子を表す。
【0070】
前記式(I)で表される3置換ベンゼン系ディスコティック液晶化合物の各符号の好ましい範囲、及び前記式(I)の化合物の具体例については、特開2010−244038号公報の段落[0013]〜[0077]記載を参照することができる。但し、本発明に使用可能なディスコティック液晶化合物は、前記式(I)の3置換ベンゼン系ディスコティック液晶化合物に限定されるものではない。
【0071】
トリフェニレン化合物としては、特開2007−108732号公報の段落[0062]〜[0067]記載の化合物等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0072】
なお、前記3置換ベンゼン又はトリフェニレン化合物とともに、下記一般式(II)(より好ましくは一般式(II’))で表されるピリジニウム化合物の少なくとも1種、及び下記一般式(III)で表されるトリアジン環基を含む化合物の少なくとも1種を含有させてもよい。前記ピリジニウム化合物の添加量は、ディスコティック液晶性化合物100質量部に対し、0.5〜3質量部であるのが好ましい。また、前記トリアジン環基を含む化合物の添加量は、ディスコティック液晶性化合物100質量部に対し、0.2〜0.4質量部であるのが好ましい。
【0073】
【化6】

【0074】
式中、L23及びL24はそれぞれ二価の連結基であり;R22は水素原子、無置換アミノ基、又は炭素原子数が1〜20の置換アミノ基であり;Xはアニオンであり;Y22及びY23はそれぞれ、置換されていてもよい5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基であり;Z21はハロゲン置換フェニル、ニトロ置換フェニル、シアノ置換フェニル、炭素原子数が1〜10のアルキル基で置換されたフェニル、炭素原子数が2〜10のアルコキシ基で置換されたフェニル、炭素原子数が1〜12のアルキル基、炭素原子数が2〜20のアルキニル基、炭素原子数が1〜12のアルコキシ基、炭素原子数が2〜13のアルコキシカルボニル基、炭素原子数が7〜26のアリールオキシカルボニル基および炭素原子数が7〜26のアリールカルボニルオキシ基からなる群より選ばれる一価の基であり;pは1〜10の数であり;並びにmは1又は2である。
【0075】
【化7】

【0076】
式中、R31、R32及びR33は、末端にCF3基を有するアルキル基又はアルコキシ基を表し、但し、アルキル基(アルコキシ基中のアルキル基も含む)中の隣接していない2以上の炭素原子は、酸素原子又は硫黄原子に置換されていてもよい;X31、X32及びX33は、アルキレン基、−CO−、−NH−、−O−、−S−、−SO2−及びそれらの群より選ばれる二価の連結基を少なくとも二つ組み合わせた基を表し;m31、m32及びm33はそれぞれ、1〜5の数である。上記式(III)中、R31、R32及びR33はそれぞれ、下記式で表される基であるのが好ましい。
−O(Cn2nn1O(Cm2mm1−Ck2k+1
式中、n及びmはそれぞれ1〜3であり、n1及びm1はそれぞれ1〜3であり、kは1〜10である。
【化8】

式(II’)中、式(II)と同一の符号は同一の意義であり;L25はL24と同義であり;R23、R24及びR25はそれぞれ、炭素原子数が1〜12のアルキル基を表し、n3は0〜4、n4は1〜4、及びn5は0〜4を表す。
る。
【0077】
前記光学異方性層の形成に用いられる重合性液晶性組成物は、少なくとも1種以上含有しており、また、前記組成物とともに添加剤の1種以上を含有していてもよい。使用可能な添加剤の例として、空気界面配向制御剤、ハジキ防止剤、重合開始剤、重合性モノマー等について説明する。
【0078】
空気界面配向制御剤:
前記組成物は、空気界面においては空気界面のチルト角で配向する。このチルト角は、液晶性組成物に含まれる液晶性化合物の種類や添加剤の種類等で、その程度が異なるため、目的に応じて空気界面のチルト角を任意に制御する必要がある。
【0079】
前記チルト角の制御には、例えば、電場や磁場のような外場を用いることや添加剤を用いることができるが、添加剤を用いることが好ましい。このような添加剤としては、炭素原子数が6〜40の置換もしくは無置換脂肪族基、又は炭素原子数が6〜40の置換もしくは無置換脂肪族置換オリゴシロキサノキシ基を、分子内に1本以上有する化合物が好ましく、分子内に2本以上有する化合物が更に好ましい。例えば、空気界面配向制御剤としては、特開2002−20363号公報に記載の疎水性排除体積効果化合物を用いることができる。
また、特開2009−193046号公報等に記載のフルオロ脂肪族基含有ポリマーも同様な作用があるので空気界面配向制御剤として添加することができる。
【0080】
空気界面側の配向制御用添加剤の添加量としては、前記組成物(塗布液の場合は固形分、以下同様である)に対して、0.001質量%〜20質量%が好ましく、0.01質量%〜10質量%が更に好ましく、0.1質量%〜5質量%がより更に好ましい。
【0081】
ハジキ防止剤:
前記組成物に添加し、該組成物の塗布時のハジキを防止するための材料としては、一般に高分子化合物を好適に用いることができる。
使用するポリマーとしては、前記組成物の傾斜角変化や配向を著しく阻害しない限り、特に制限はない。
ポリマーの例としては、特開平8−95030号公報に記載があり、特に好ましい具体的ポリマー例としてはセルロースエステル類を挙げることができる。セルロースエステルの例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロース及びセルロースアセテートブチレートを挙げることができる。
前記組成物の配向を阻害しないように、ハジキ防止目的で使用されるポリマーの添加量は、前記組成物に対して一般に0.1〜10質量%の範囲にあり、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましく、0.1〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
【0082】
重合開始剤:
前記組成物は、重合開始剤を含有しているのが好ましい。重合開始剤を含有する前記組成物を用いると、液晶相形成温度まで加熱した後、重合させ冷却することによって液晶状態の配向状態を固定化して、光学異方性層を作製することもできる。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応と電子線照射による重合反応が含まれるが、熱により支持体等が変形、変質するのを防ぐためにも、光重合反応又は電子線照射による重合反応が好ましい。
【0083】
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)等が挙げられる。
光重合開始剤の使用量は、前記組成物の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0084】
重合性モノマー:
前記組成物には、重合性のモノマーを添加してもよい。本発明で使用できる重合性モノマーとしては、併用される液晶化合物と相溶性を有し、液晶性組成物の配向阻害を著しく引き起こさない限り、特に限定はない。これらの中では重合活性なエチレン性不飽和基、例えばビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基などを有する化合物が好ましく用いられる。上記重合性モノマーの添加量は、併用される液晶化合物に対して一般に0.5〜50質量%の範囲にあり、1〜30質量%の範囲にあることが好ましい。また反応性官能基数が2以上のモノマーを用いると、配向膜との密着性を高める効果が期待できるため、特に好ましい。
【0085】
前記組成物は、塗布液として調製してもよい。塗布液の調製に使用する溶剤としては、汎用の有機溶剤が好ましく用いられる。汎用の有機溶剤の例には、アミド系溶剤(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド系溶剤(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環系溶剤(例、ピリジン)、炭化水素系溶剤(例、トルエン、ヘキサン)、アルキルハライド系溶剤(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル系溶剤(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン系溶剤(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル系溶剤(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。エステル系溶剤及びケトン系溶剤が好ましく、特にケトン系溶剤が好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0086】
前記光学異方性層は、前記組成物を、配向状態とし、その配向状態を固定することで、作製することができる。以下に、製造方法の一例について説明するが、この方法に限定されるものではない。
まず、重合性液晶性化合物を少なくとも含有する組成物を支持体の表面上(配向膜を有する場合は配向膜表面)に塗布する。所望により加熱等して、所望の配向状態で配向させる。次に、重合反応等を進行させて、その状態を固定して、光学異方性層を形成する。この方法に用いられる前記組成物に添加可能な添加剤の例としては、前記した空気界面配向制御剤、ハジキ防止剤、重合開始剤、重合性モノマー等が挙げられる。
【0087】
塗布は、公知の方法(例えば、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により行うことができる。
【0088】
均一に配向した状態を実現するためには、配向膜を利用するのが好ましい。配向膜は、ポリマー膜(例えば、ポリビニルアルコール膜及びイミド膜等)の表面をラビング処理することで形成されるものが好ましい。本発明に利用するのに好ましい配向膜の例には、特開2006−276203号公報の[0130]〜[0175]に記載のあるアクリル酸コポリマー又はメタクリル酸コポリマーの配向膜が含まれる。当該配向膜を利用すると、液晶化合物のゆらぎを抑制でき高コントラスト化が達成できるので好ましい。
【0089】
次に、配向状態を固定するために、重合を実施するのが好ましい。前記組成物中に光重合開始剤を含有させ、光照射により重合を開始するのが好ましい。光照射には、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、10mJ/cm2〜50J/cm2であることが好ましく、50mJ/cm2〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。また、雰囲気の酸素濃度は重合度に関与するため、空気中で所望の重合度に達しない場合には、窒素置換等の方法により酸素濃度を低下させることが好ましい。好ましい酸素濃度としては、10%以下が好ましく、7%以下がさらに好ましく、3%以下がよりさらに好ましい。
【0090】
本発明で配向状態が固定化された状態とは、その配向が保持された状態が最も典型的、且つ好ましい態様ではあるが、それだけには限定されず、具体的には、通常0℃〜50℃、より過酷な条件下では−30℃〜70℃の温度範囲において、該固定化された組成物に流動性が無く、また外場や外力によって配向形態に変化を生じさせることなく、固定化された配向形態を安定に保ち続けることができる状態を指すものである。なお、配向状態が最終的に固定化され光学異方性層が形成された際に、前記組成物はもはや液晶性を示す必要はない。例えば、結果的に熱、光等による反応により重合又は架橋反応が進行し、高分子量化して、液晶性化合物が液晶性を失ってもよい。
【0091】
前記光学異方性層の厚さについては特に制限されないが、一般的には、0.1〜10μm程度であるのが好ましく、0.5〜5μm程度であるのがより好ましい。
【0092】
前記光学異方性層の形成には、配向膜を利用してもよく、配向膜としては、ポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールを主成分とする膜の表面をラビング処理したもの等を利用することができる。
【0093】
なお、本発明に利用する前記位相差フィルム及び光学異方性層は、長尺の状態で連続的に製造されることが好ましい。更に、長手方向に対して遅相軸が平行でも直交でもない方向にあることが、ロールツーロールの方式で、偏光膜と、その遅相軸を偏光膜の吸収軸に対して45°又は135°として貼り合わせできるので好ましい。すなわち、位相差フィルム及び光学異方性層の遅相軸と長辺とのなす角度は、5〜85°であることが好ましい。
液晶組成物から形成される光学異方性層の遅相軸の角度は、ラビングの角度で調整できる。延伸フィルムの遅相軸は、延伸方向によって遅相軸の角度が調整できる。
【0094】
(3)表面層
前記保護部材及びλ/4層の表面には、目的に応じて必要な表面層を単独又は複数層設けてもよい。好ましい態様としては、光学異方性層の上にハードコート層が積層された態様、光学異方性層の上に反射防止層が積層された態様、光学異方性層の上にハードコート層が積層され、その上に更に反射防止層が積層された態様、等が挙げられる。
【0095】
[反射防止層]
反射防止層は、光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して設計された,少なくとも一層以上の層からなる層である。
反射防止層は、最も単純な構成では、フィルムの最表面に低屈折率層のみを塗設した構成である。更に反射率を低下させるには、屈折率の高い高屈折率層と、屈折率の低い低屈折率層を組み合わせて反射防止層を構成することが好ましい。構成例としては、下側から順に、高屈折率層/低屈折率層の2層のものや、屈折率の異なる3層を、中屈折率層(下層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているもの等があり、更に多くの反射防止層を積層するものも提案されている。中でも、耐久性、光学特性、コストや生産性等から、ハードコート層上に、中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層の順に有することが好ましく、例えば、特開平8−122504号公報、特開平8−110401号公報、特開平10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等に記載の構成が挙げられる。また、膜厚変動に対するロバスト性に優れる3層構成の反射防止フィルムは特開2008−262187号公報に記載されている。上記3層構成の反射防止フィルムは、画像表示装置の表面に設置した場合、反射率の平均値を0.5%以下とすることができ、映り込みを著しく低減することができ、立体感に優れる画像を得ることができる。また、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層、帯電防止性のハードコート層、防眩性のハードコート層としたもの(例、特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報、特開2007−264113号公報等)等が挙げられる。
【0096】
ハードコート層や反射防止層を有する場合の具体的な層構成の例を下記に示す。以下表記中−*/は表面層が積層される基材を表す。具体的には、−*/は、上述の光学異方性支持体、光学異方性層、支持体などを表す。
・−*/ハードコート層、
・−*/低屈折率層、
・−*/防眩層/低屈折率層
・−*/ハードコート層/低屈折率層、
・−*/ハードコート層/防眩層/低屈折率層
・−*/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
・−*/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
・−*/ハードコート層/防眩層/高屈折率層/低屈折率層
・−*/ハードコート層/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
・−*/防眩層/高屈折率層/低屈折率層
・−*/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
上記の各構成のなかでも、光学異方性層の上にハードコート層、防眩層、反射防止層等の表面層を直接形成することが好ましい。また、光学異方性層を含む光学フィルムと、別途、支持体上にハードコート層、防眩層、反射防止層等の層を設けた光学フィルムとを貼合積層して製造してもよい。
【0097】
[ハードコート層]
保護部材に設ける表面フィルムには、フィルムの物理的強度を付与するために、ハードコート層を設けることができる。本発明においては、ハードコート層を設けなくてもよいが、ハードコート層を設けた方が鉛筆引掻き試験などの耐擦傷性面が強くなり、好ましい。
好ましくは、ハードコート層上に低屈折率層が設けられ、更に好ましくはハードコート層と低屈折率層の間に中屈折率層、高屈折率層が設けられ、反射防止フィルムを構成する。ハードコート層は、二層以上の積層から構成されてもよい。
【0098】
本発明におけるハードコート層の屈折率は、反射防止性の表面フィルムを得るための光学設計から、屈折率が1.48〜2.00の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.48〜1.70である。
【0099】
ハードコート層の膜厚は、表面フィルムに充分な耐久性、耐衝撃性を付与する観点から、通常0.5μm〜50μm程度とし、好ましくは1μm〜20μm、更に好ましくは5μm〜20μmである。
ハードコート層の強度は、鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましく、3H以上であることが最も好ましい。更に、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
【0100】
ハードコート層は、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む塗布組成物を透明支持体上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の重合性官能基を有する化合物が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基及び−C(O)OCH=CH2が好ましい。
【0101】
電離放射線硬化性化合物の具体例としては、アルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、ポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、エチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類、エポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。
【0102】
(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレート系化合物類は市販されているものを用いることもでき、新中村化学工業(株)社製NKエステル A−TMMT、日本化薬(株)製KAYARAD DPHA等を挙げることができる。多官能モノマーについては、特開2009−98658号公報の段落[0114]〜[0122]に記載されており、本発明においても同様である。
【0103】
電離放射線硬化性化合物としては、水素結合性の置換基を有する化合物であることが、支持体との密着性、低カール性の点から好ましい。水素結合性の置換基とは、窒素、酸素、硫黄、ハロゲンなどの電気陰性度が大きな原子と水素結合とが共有結合で結びついた置換基を指し、具体的にはOH−、SH−、−NH−、CHO−、CHN−などが挙げられ、ウレタン(メタ)アクリレート類や水酸基を有する(メタ)アクリレート類が好ましい。市販されている化合物を用いることもでき、新中村化学工業(株)社製NKオリゴ U4HA、同NKエステルA−TMM−3、日本化薬(株)製KAYARAD PET−30等を挙げることができる。
【0104】
ハードコート層には、内部散乱性付与の目的で、平均粒径が1.0〜10.0μm、好ましくは1.5〜7.0μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子又は樹脂粒子を含有してもよい。
【0105】
ハードコート層のバインダーには、ハードコート層の屈折率を制御する目的で、各種屈折率モノマー又は無機粒子、或いは両者を加えることができる。無機粒子には屈折率を制御する効果に加えて、架橋反応による硬化収縮を抑える効果もある。本発明では、ハードコート層形成後において、前記多官能モノマー及び/又は高屈折率モノマー等が重合して生成した重合体、その中に分散された無機粒子を含んでバインダーと称する。
【0106】
[防眩層]
防眩層は、表面散乱による防眩性と、好ましくは表面フィルムの硬度、耐擦傷性を向上するためのハードコート性をフィルムに寄与する目的で形成される。
防眩層については特開2009−98658号公報の段落[0178]〜[0189]に記載されており、本発明においても同様である。
【0107】
[高屈折率層及び中屈折率層]
高屈折率層の屈折率は、1.70〜1.74であることが好ましく、1.71〜1.73であることがより好ましい。中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整される。中屈折率層の屈折率は、1.60〜1.64であることが好ましく、1.61〜1.63であることが更に好ましい。
高屈折率層及び中屈折率層の形成方法は化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、特に物理蒸着法の一種である真空蒸着法やスパッタ法により、無機物酸化物の透明薄膜を用いることもできるが、オールウェット塗布による方法が好ましい。
【0108】
上記中屈折率層は、上記高屈折率層と屈折率を異ならせた以外は同様の材料を用いて同様に調整できるので、以下、特に高屈折率層について説明する。
上記高屈折率層は、無機微粒子、3官能以上の重合性基を有する硬化性化合物(以下、「バインダー」と称する場合もある)、溶媒及び重合開始剤を含有する塗布組成物を塗布し、溶媒を乾燥させた後、加熱、電離放射線照射あるいは両手段の併用により硬化して形成されたものであるのが好ましい。硬化性化合物や開始剤を用いる場合は、塗布後に熱及び/又は電離放射線による重合反応により硬化性化合物を硬化させることで、耐傷性や密着性に優れる中屈折率層や高屈折率層が形成できる。
【0109】
[低屈折率層]
本発明における低屈折率層は、屈折率が1.30〜1.47であることが好ましい。表面フィルムが多層薄膜干渉型の反射防止フィルム(中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層)の場合の低屈折率層の屈折率は1.33〜1.38であることが望ましく、更に望ましくは1.35〜1.37が望ましい。上記範囲内とすることで反射率を抑え、膜強度を維持することができ、好ましい。低屈折率層の形成方法も化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、特に物理蒸着法の一種である真空蒸着法やスパッタ法により、無機物酸化物の透明薄膜を用いることもできるが、低屈折率層用組成物を用いてオールウェット塗布による方法を用いることが好ましい。
低屈折率層は、含フッ素硬化性ポリマー、含フッ素硬化性モノマー、非含フッ素硬化性モノマー、低屈折率粒子などを構成成分として形成することができる。これら化合物は、特開2010−152311号公報[0018]〜[0168]段落に記載のものを用いることができる。
【0110】
低屈折率層のヘイズは、3%以下であることが好ましく、2%以下であることが更に好ましく、1%以下であることが最も好ましい。
低屈折率層まで形成した反射防止フィルムの強度は、500g荷重の鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
また、反射防止フィルムの防汚性能を改良するために、表面の水に対する接触角が95゜以上であることが好ましい。更に好ましくは102゜以上である。特に、接触角が105°以上であると、指紋に対する防汚性能が著しく良化するため、特に好ましい。また、水の接触角が102°以上で、かつ、表面自由エネルギーが25dyne/cm以下であることがより好ましく、23dyne/cm以下であることが特に好ましく、20dyne/cm以下であることが更に好ましい。最も好ましくは、水の接触角が105°以上で、かつ、表面自由エネルギーが20dyne/cm以下である。
【0111】
(4)紫外線吸収剤
本発明では、保護部材及びλ/4層は、紫外線吸収剤を含有しているのが好ましい。紫外線吸収剤は、保護部材及びλ/4層が積層構造体である態様では、少なくとも1つの層が紫外線吸収剤を含有しているのが好ましい。例えば、透明支持体、光学異方性層、反射防止層、又はそれらを接着する接着剤を有する態様では、これらのいずれかに紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。また、表面フィルムのハードコート層及び/又は反射防止層には、紫外線吸収剤を含有させることができる。紫外線吸収剤としては、紫外線吸収性を発現できるもので、公知のものがいずれも使用できる。そのような紫外線吸収剤のうち、紫外線吸収性が高く、電子画像表示装置で用いられる紫外線吸収能(紫外線カット能)を得るためにベンゾトリアゾール系又はヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤が好ましい。また、紫外線の吸収幅を広くするために、最大吸収波長の異なる紫外線吸収剤を2種以上併用することができる。
【0112】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−tert−ブチル−3′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−ニトロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−ter―ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、ベンゼンプロパン酸−3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1、1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−,C7〜9−ブランチ直鎖アルキルエステル、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール等が挙げられる。
【0113】
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2’−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブチルオキシフェニル)−6−(2,4−ビス−ブチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−アセトキシエトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシ−5,5′−ジスルホベンゾフェノン・2ナトリウム塩等が挙げられる。
【0114】
紫外線吸収剤の含有量は、求める紫外線透過率や紫外線吸収剤の吸光度にもよるが、前記紫外線硬化型樹脂100質量部に対して、通常20質量部以下、好ましくは1〜20質量部である。紫外線吸収剤の含有量が20質量部よりも多い場合には、硬化性組成物の紫外線による硬化性が低下する傾向があると共に、光学フィルムの可視光線透過率が低下するおそれもある。一方、1質量部より少ない場合には、光学フィルムの紫外線吸収性を十分に発揮することができなくなる。
【0115】
2.第2及び第3のフィルム
本発明の3D表示装置、第1の偏光膜の保護部材が配置されている側の反対側表面に、保護フィルム(第2のフィルム)を有していてもよい。また、表示装置が液晶セルを有する液晶表示装置である態様では、液晶セルのバックライト側にも第2の偏光膜を有するのが一般的である。従って、第2の偏光膜についても、液晶セル側表面に保護フィルム(第3のフィルム)を有していてもよく、またバックライト側表面にも保護フィルムを有していてもよい。第2及び第3のフィルムとしては、種々のポリマーフィルム、例えば、セルロースアシレート(例えば、セルローストリアセテートフィルム、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム)、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ノルボルネン等の環状オレフィン系ポリマー、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は前記ポリマーを混合したポリマー等が挙げられる。1種又は2種以上のポリマーを、主成分として用いることができる。市販品を用いても良く、環状オレフィン系ポリマーであるアートン(JSR社製)、非晶質ポリオレフィンであるゼオネックス(日本ゼオン社製))などを用いてもよい。
【0116】
本発明者が鋭意検討した結果、第2及び第3のフィルムが、高透湿度のフィルムであるほうが、高湿度下において発生する表示ムラをより軽減できることがわかった。従来、通常の液晶表示装置では、低透湿度のフィルムを配置することが、高湿度下における耐久性の観点では好ましいとされているので、第2及び第3のフィルムとして、高透湿度のフィルムを使用したほうが、高湿度下において発生する表示ムラをより軽減できるという効果は、予期し得ぬ効果であった。具体的には、第2及び第3のフィルムの少なくとも一方の透湿度が、40℃90%RHでの透湿度が10〜2000g/m2/dayであることが好ましく、15〜1500g/m2/dayであることがより好ましく、200〜1300g/m2/dayであることがさらに好ましい。この特性を満足するフィルムの例には、セルロースアシレートフィルムが含まれ、特にセルロースアセテートフィルムが好ましい。
【0117】
なお、第2及び第3のフィルムは、液晶セルの視野角補償に寄与していてもよい。視野角補償に寄与する第2及び第3のフィルムのRe及びRthの好ましい範囲は、液晶セルのモードに応じて決定することができる。また、第2及び第3のフィルムは、2以上のポリマーフィルムの積層体であってもよく、また液晶組成物の配向を固定して形成される光学異方性層を有していてもよい。
【0118】
3.偏光膜
本発明の時分割方式3D表示システムに利用される画像表示装置は、その視認側に少なくとも1つの偏光膜(第1の偏光膜)を有する。画像表示装置が、透過モードの液晶パネルである態様では、液晶セルのバックライト側にも偏光膜を有する。また、本発明のシステムに利用される、時分割画像表示遮断器が液晶セルのシャッター機能を利用した態様では、偏光膜を1枚、又は液晶セルを挟んで2枚配置する。
【0119】
本発明の3D表示装置に用いられる偏光膜については特に制限はなく、通常用いられている偏光膜を利用することができ、例えば、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を利用した染料系偏光膜、及びポリエン系偏光膜のいずれも用いることができる。ヨウ素系偏光膜、及び染料系偏光膜は、一般に、ポリビニルアルコールにヨウ素又は二色性染料を吸着させ、延伸することで作製される。
【0120】
なお、偏光膜は、その両面に保護フィルムが貼合された偏光板として用いられることが一般的である。本発明でも、偏光板を用いてもよい。図6及び図7に、保護部材又はλ/4層を有する偏光板の例を示すがこれに限定されるものではない。図7中の光学補償フィルムは、液晶セルの視野角を補償する機能を有するものであり、第2のフィルムを表す。
【0121】
3.液晶セル
本発明の時分割方式3D表示システムに用いられる画像表示装置、及び時分割画像表示遮断器の構成については特に制限はない。一例は、いずれも液晶セルを利用した態様である。利用可能な液晶セルの構成については特に制限はない。液晶セルは、一対の基板及び液晶層の他に、各種の方式の液晶セルとするのに必要な各種の構成要素を備えていてもよい。液晶セルの方式としては、TN(Twisted Nematic)方式、STN(SuperTwisted Nematic)方式、ECB(Electrically Controlled Birefringence)方式、IPS(In−Plane Switching)方式、VA(Vertical Alignment)方式、MVA(Multidomain Vertical Alignment)方式、PVA(Patterned Vertical Alignment)方式、OCB(Optically Compensated Birefringence)方式、HAN(Hybrid Aligned Nematic)方式、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)方式、ハーフトーングレイスケール方式、ドメイン分割方式、あるいは強誘電性液晶、反強誘電性液晶を利用した表示方式等の各種の方式が挙げられる。また、液晶セルの駆動方式も特に制限はなく、STN−LCD等に用いられるパッシブマトリクス方式、並びにTFT(Thin Film Transistor)電極、TFD(Thin Film Diode)電極等の能動電極を用いるアクティブマトリクス方式、プラズマアドレス方式等のいずれの駆動方式であってもよい。カラーフィルタを使用しないフィールドシーケンシャル方式であってもよい。
【0122】
画像表示装置に利用される液晶セルは、VAモード、OCBモード、IPSモード、又はTNモードであることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech.Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)及び(4)SURVIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。また、PVA(Patterned Vertical Alignment)型、光配向型(Optical Alignment)、及びPSA(Polymer-Sustained Alignment)のいずれであってもよい。これらのモードの詳細については、特開2006−215326号公報、及び特表2008−538819号公報に詳細な記載がある。
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置は、米国特許4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
IPSモードの液晶セルは、棒状液晶分子が基板に対して実質的に平行に配向しており、基板面に平行な電界が印加することで液晶分子が平面的に応答する。IPSモードは電界無印加状態で黒表示となり、上下一対の偏光板の透過軸は直交している。光学補償シートを用いて、斜め方向での黒表示時の漏れ光を低減させ、視野角を改良する方法が、特開平10−54982号公報、特開平11−202323号公報、特開平9−292522号公報、特開平11−133408号公報、特開平11−305217号公報、特開平10−307291号公報などに開示されている。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、更に60〜120゜にねじれ配向している。TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
【0123】
例えば、画像表示装置用の液晶セルは、表示性能の観点で選択されるであろうし、また時分割画像表示遮断器のシャッター機能に利用する液晶セルは、右目と左目の映像に対応した応答を行うので、応答速度及び透過率の観点で選択され、速いTNモードの液晶セルを用いることが好ましい。
【実施例】
【0124】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
なお、実施例および比較例において、Re(550)、Rth(550)及びRe波長分散は、特に断りがない限り、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。
透湿度は、JIS Z 0208に記載の方法に則り、各試料の透湿量を測定し、面積1m2あたり24時間で蒸発する水分量(g)として算出した。
【0125】
1.λ/4フィルム(λ/4機能を有するフィルム)の作製
(λ/4フィルム1Aの作製)
市販のノルボルネン系ポリマーフィルム「ZEONOR ZF14」((株)オプテス製)を、温度156℃にて、延伸倍率45%で自由端一軸延伸を行いうことで、ノルボルネン系λ/4フィルム1Aを作製した。λ/4フィルム1AのRe(550)は138nm、Rth(550)は85nmであった。ここで、Re(550)及びRth(550)は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。
また、λ/4フィルム1Aの40℃90%RHでの24時間あたりの透湿度は、25g/m2/dayであった。
【0126】
(λ/4フィルム2Aの作製)
下記環状オレフィン系樹脂溶液をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
【0127】
______________________________________
環状オレフィン系樹脂溶液組成
────────────────────────―───―─────────
アートンG(JSR(株)製) 150質量部
ジクロロメタン 600質量部
______________________________________
【0128】
次に上記方法で作製した環状オレフィン系樹脂溶液を含む下記組成物を分散機に投入し、マット剤分散液を調製した。
【0129】
────────────────────────────────────
マット剤分散液組成
────────────────────────────────────
1次平均粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル(株)製) 2質量部
ジクロロメタン 80質量部
前記環状オレフィン系樹脂溶液 10質量部
____________________________________
【0130】
上記環状オレフィン系樹脂溶液を100質量部、マット剤分散液を3.8質量部混合し、製膜用ドープを調製した。上述のドープをバンド流延機で流延して作製したフィルムを、自由端一軸延伸を行うことでλ/4フィルム2Aを作製した。λ/4フィルム2AのRe(550)は138nm、Rth(550)は85nmであった。ここで、Re(550)及びRth(550)は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。
また、λ/4フィルム2Aの40℃90%RHでの24時間あたりの透湿度は、100g/m2/dayであった。
【0131】
(λ/4フィルム5Aの作製)
<アルカリ鹸化処理>
市販のセルロールアシレートフィルム「TD80UL」(富士フイルム(株)製)を、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムのバンド面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14ml/m2で塗布し、110℃に加熱した(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間搬送した。続いて、同じくバーコーターを用いて、純水を3ml/m2塗布した。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、アルカリ鹸化処理したセルロースアシレートフィルムを作製した。
【0132】
────────────────────────────────────
アルカリ溶液組成(質量部)
────────────────────────────────────
水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.8質量部
イソプロパノール 63.7質量部
界面活性剤
SF−1:C1429O(CH2CH2O)20H 1.0質量部
プロピレングリコール 14.8質量部
────────────────────────────────────
【0133】
<配向膜の形成>
上記のように鹸化処理した長尺状のセルロースアシレートフィルムに、下記の組成の配向膜塗布液を#14のワイヤーバーで連続的に塗布した。60℃の温風で60秒、更に100℃の温風で120秒乾燥した。――――――――――――――――――――――――――――――――――――
配向膜塗布液の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
光重合開始剤(イルガキュアー2959、チバ・ジャパン製) 0.3質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0134】
【化9】

【0135】
<ディスコティック液晶性化合物を含む光学異方性層の形成>
上記作製した配向膜に連続的にラビング処理を施した。このとき、長尺状のフィルムの長手方向と搬送方向は平行であり、フィルム長手方向に対して、ラビングローラーの回転軸は時計回りに45°の方向とした。
【0136】
下記の組成のディスコティック液晶化合物を含む塗布液Aを上記作製した配向膜上にワイヤーバーで連続的に塗布した。フィルムの搬送速度(V)は36m/minとした。塗布液の溶媒の乾燥及びディスコティック液晶化合物の配向熟成のために、120℃の温風で90秒間加熱した。続いて、80℃にてUV照射を行い、液晶化合物の配向を固定化し厚さ1.77μmの光学異方性層を形成し、λ/4フィルム5Aを得た。作製したλ/4フィルム5Aは、550nmにおけるRe(550)が138nm、Rth(550)が−5nmであった。遅相軸の方向はラビングローラーの回転軸と直交していた。すなわち、支持体の長手方向に対して、遅相軸は反時計回りに45°の方向であった。ディスコティック液晶性分子の円盤面のフィルム面に対する平均傾斜角は90°であり、ディスコティック液晶がフィルム面に対して垂直に配向していることを確認した。なお、Re(550)及びRth(550)は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。λ/4フィルム5Aの40℃90%RHでの24時間あたりの透湿度は、330g/m2/dayであった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
光学異方性層塗布液(A)の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
下記のディスコティック液晶化合物 91質量部
アクリレートモノマー *1 5質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 3質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1質量部
下記のピリジニウム塩 0.5質量部
下記のフッ素系ポリマー(FP1) 0.2質量部
下記のフッ素系ポリマー(FP3) 0.1質量部
メチルエチルケトン 189質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
*1:エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)
【0137】
【化10】

【0138】
【化11】

【0139】
(表面層(反射防止層)付き光学フィルム1Bの作製)
<ハードコート層用塗布液の調製>
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用塗布液(固形分濃度58質量%)とした。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
ハードコート層用塗布液
―――――――――――――――――――――――――――――――――
酢酸メチル 36.2質量部
メチルエチルケトン 36.2質量部
(a)下記構造のモノマー:PETA*1 77.0質量部
(b)下記構造のウレタンモノマー*2 20.0質量部
光重合開始剤*3 3.0質量部
下記構造のレベリング剤(SP-13) 0.02質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
*1:新中村化学工業(株)製、下記構造の化合物。質量平均分子量は325で、1分子中の官能基の数は3.5(平均値)。
*2:質量平均分子量は596で、1分子中の官能基の数は4。
*3:イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製
【0140】
【化12】

【0141】
【化13】

【0142】
【化14】

【0143】
<低屈折率層用塗布液の調製>
各成分を下記のように混合し、MEK/MMPG−Acの85/15混合物(質量比)に溶解して固形分5質量%の低屈折率層塗布液を調製した(MEKは、メチルエチルケトンを意味し、MMPG−Acは、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを意味する。)。
【0144】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
低屈折率層塗布液の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記構造のパーフルオロオレフィン共重合体 15質量部
DPHA*1 7質量部
ディフェンサMCF−323 *2 5質量部
下記の含フッ素重合性化合物 20質量部
中空シリカ粒子固形分として 50質量部
イルガキュア127 *3 3質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
*1:DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物、日本化薬(株)製
*2:フッ素系界面活性剤、大日本インキ化学工業(株)製
*3:イルガキュア127:光重合開始剤、チバ・ジャパン(株)製
中空シリカ:中空シリカ粒子分散液(平均粒子サイズ45nm、屈折率1.25、表面をアクリロイル基を有するシランカップリング剤で表面処理、MEK分散液濃度20%)
【0145】
【化15】

【0146】
<ハードコート層及び低屈折率層の形成>
市販のセルロールアシレートフィルム「TD80UL」(富士フイルム(株)製)に、前記ハードコート層用塗布液をダイコーターを用いて塗布した(固形分塗布量:12g/m2)。100℃で60秒乾燥した後、酸素濃度が0.1体積%の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量150mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、ハードコート層付き光学フィルムを作製した。このハードコート層の上に、上記低屈折率層用塗布液を塗布した。低屈折率層の乾燥条件は70℃、60秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm2、照射量300mJ/cm2の照射量とした。このようにして、表面層(反射防止層)付き光学フィルム1Bを作製した。低屈折率層の屈折率は1.34、膜厚は95nmであった。なお、使用したセルロールアシレートフィルム「TD80UL」の40℃90%RHでの24時間あたりの透湿度は、430g/m2/dayであった。
【0147】
(表面層(反射防止層)付き光学フィルム5Bの作製)
表面層(反射防止層)付き光学フィルム1Bと同様の表面層をガラス基板上に作製した後、ガラス基板から剥離した表面層を市販の環状オレフィン系樹脂フィルムである膜厚100μmのゼオノアフィルムZF14((株)オプテス製)に貼合し、表面層(反射防止層)付き光学フィルム5Bとして使用した。使用したゼオノアフィルムZF14の40℃90%RHでの24時間あたりの透湿度は、20g/m2/dayであった。
【0148】
(λ/4フィルム7Aの作製)
λ/4フィルム2Aの作製において、延伸時の温度と倍率を変更した以外はλ/4フィルム2Aの作製と同様にしてλ/4フィルム7Aを作製した。λ/4フィルム7AのRe(550)は138nm、Rth(550)は85nmであった。λ/4フィルム7Aの40℃90%RHでの24時間あたりの透湿度は、110g/m2/dayであった。
【0149】
(λ/4フィルム9Aの作製)
<配向膜の形成>
市販のセルロールアシレートフィルム「TD80UL」(富士フイルム(株)製)をケン化後、下記の組成の配向膜塗布液をワイヤーバーで連続的に塗布した。60℃の温風で60秒、更に100℃の温風で120秒乾燥し、膜を形成した。次に、上記作製した配向膜に連続的にラビング処理を施した。このとき、長尺状のフィルムの長手方向と搬送方向は平行であり、フィルム長手方向に対して、ラビングローラーの回転軸は時計回りに45°の方向とした。
【0150】
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
配向膜塗布液の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
光重合開始剤(イルガキュアー2959、チバ・ジャパン製) 0.3質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0151】
【化16】

【0152】
<棒状液晶性化合物を含む光学異方性層の形成>
下記の組成の棒状液晶化合物を含む塗布液を、上記作製した配向膜上にワイヤーバーで連続的に塗布した。
【0153】
棒状液晶化合物を含む塗布液(S1)の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の棒状液晶性化合物 1.8g
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 0.2g
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 0.06g
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 0.02g
メチルエチルケトン 3.9g
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0154】
【化17】

【0155】
これを125℃の恒温槽中で3分間加熱し、棒状液晶性化合物を配向させた。次に、120W/cm高圧水銀灯を用いて、30秒間UV照射し棒状液晶性化合物を架橋した。UV硬化時の温度を80℃として、光学異方性層を得た。光学異方性層の厚さは、1.7μmであった。その後、室温まで放冷した。このようにして、λ/4フィルム9Aを得た。作製したλ/4フィルム9Aは、550nmにおけるRe(550)が138nm、Rth(550)が108nmであった。遅相軸の方向はラビングローラーの回転軸と直交していた。すなわち、支持体の長手方向に対して、遅相軸は反時計回りに45°の方向であった。棒状液晶がフィルム面に対して垂直に配向していることを確認した。λ/4フィルム9Aの40℃90%RHでの24時間あたりの透湿度は、330g/m2/dayであった。
【0156】
2.保護部材の作製
(保護部材1の作製)
λ/4フィルム1Aに易接着層を介して表面層(反射防止層)付き光学フィルム1Bの支持体面を貼合し、保護部材1を作製した。保護部材1全体のRe(550)は138nm、Rth(550)は125nmであった。
【0157】
(保護部材2の作製)
λ/4フィルム2Aに易接着層を介して表面層(反射防止層)付き光学フィルム1Bの支持体面を貼合し、保護部材2を作製した。保護部材2全体のRe(550)は138nm、Rth(550)は125nmであった。
【0158】
(保護部材3の作製)
表面層(反射防止層)付き光学フィルム1Bと同様の表面層をガラス基板上に作製した後、ガラス基板から剥離した表面層をλ/4フィルム1Aに貼合し、保護部材3として使用した。保護部材3全体のRe(550)は138nm、Rth(550)は85nmであった。
【0159】
(保護部材4の作製)
表面層(反射防止層)付き光学フィルム1Bと同様の表面層をガラス基板上に作製した後、ガラス基板から剥離した表面層をλ/4フィルム2Aに貼合し、保護部材4として使用した。保護部材4全体のRe(550)は138nm、Rth(550)は85nmであった。
【0160】
(保護部材5の作製)
λ/4フィルム5Aの支持体側に易接着層を介して表面層(反射防止層)付き光学フィルム5Bの支持体面を貼合し、保護部材5を作製した。保護部材5全体のRe(550)は138nm、Rth(550)は−3nmであった。
【0161】
(保護部材6の作製)
λ/4フィルム5Aの支持体側に易接着層を介して表面層(反射防止層)付き光学フィルム1Bの支持体面を貼合し、保護部材6を作製した。保護部材6全体のRe(550)は138nm、Rth(550)は35nmであった。
【0162】
(保護部材7の作製)
光学フィルム1Bの作製において、光学フィルム1Bのハードコート層及び低屈折率層をセルロールアシレートフィルム「TD80UL」上に塗布するのをガラス基板上に作製した以外は光学フィルム1Bの作製と同様にして、ガラス基板上に表面層を作製させた。ガラス基板から剥離した表面層をλ/4フィルム7Aに貼合し、保護部材7として使用した。保護部材7全体のRe(550)は138nm、Rth(550)は85nmであった。
【0163】
(保護部材8の作製)
λ/4フィルム1Aに易接着層を介して市販のセルロールアシレートフィルム「TD80UL」(富士フイルム(株)製)を貼合し、保護部材8を作製した。保護部材8全体のRe(550)は138nm、Rth(550)は125nmであった。
【0164】
(保護部材9の作製)
λ/4フィルム9Aの支持体側に易接着層を介して表面層(反射防止層)付き光学フィルム1Bの支持体面を貼合し、保護部材9を作製した。保護部材9全体のRe(550)は138nm、Rth(550)は148nmであった。
【0165】
(保護部材10の作製)
λ/4フィルム5Aの支持体側に易接着層を介して市販の環状オレフィン系樹脂フィルムである膜厚100μmのゼオノアフィルムZF14((株)オプテス製)を貼合し、保護部材10を作製した。保護部材10全体のRe(550)は138nm、Rth(550)は−3nmであった。ゼオノアフィルムZF14の40℃90%RHでの24時間あたりの透湿度は、20g/m2/dayであった。
【0166】
(保護部材11の作製)
保護部材5の作製において、λ/4フィルム5Aをλ/4フィルム9Aに変更した以外は保護部材5の作製と同様にして、保護部材11を作製した。保護部材11全体のRe(550)は138nm、Rth(550)は108nmであった。
【0167】
(保護部材12の作製)
保護部材10の作製において、λ/4フィルム5Aをλ/4フィルム9Aに変更した以外は保護部材10の作製と同様にして、保護部材12を作製した。保護部材12全体のRe(550)は138nm、Rth(550)は106nmであった。
【0168】
3.光学補償フィルムの作製
(光学補償フィルムAの作製)
SHARP製の液晶テレビLC−46LX1に使用されていたセルロースアシレート系光学補償フィルムを剥がし、光学補償フィルムAとして使用した。使用した光学補償フィルムAの40℃90%RHでの24時間あたりの透湿度は、500g/m2/dayであった。
【0169】
(光学補償フィルムBの作製)
SONY製の液晶テレビKDL−46HX800に使用されていたノルボルネン系光学補償フィルムを剥がし、光学補償フィルムBとして使用した。使用した光学補償フィルムBの40℃90%RHでの24時間あたりの透湿度は、22g/m2/dayであった。
【0170】
(光学補償フィルムCの作製)
SONY製の液晶テレビKDL−52W5に使用されていたセルロースアシレート系光学補償フィルムを剥がし、光学補償フィルムCとして使用した。使用した光学補償フィルムCの40℃90%RHでの24時間あたりの透湿度は、1020g/m2/dayであった。
【0171】
(光学補償フィルムDの作製)
<環状オレフィン系重合体P−1の合成>
精製トルエン180質量部と5−ノルボルネン−2−酢酸アリル(NB−CH2−OC(O)−CH3:NBはノルボルネン)60質量部を反応釜に投入した。次いでジクロロメタン20質量部中に溶解した酢酸パラジウム(II)0.005質量部、トリシクロヘキシルホスホニウム(テトラキスペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩0.05質量部を反応釜に投入した。90℃で攪拌しながら18時間反応させた。反応終了後、精製トルエン1000質量部を加え、重合体溶液を希釈した後、過剰のエタノール中に投入し、白色の重合物沈殿を得た。沈殿を精製し得られた重合体を真空乾燥で80℃24時間乾燥した。
【0172】
得られた重合体をテトラヒドロフランに溶解し、ゲルパーエミションクロマトグラフによる分子量を測定したところ、ポリスチレン換算の数平均分子量は95,000、重量平均分子量は260,000であった。
【0173】
<フィルム製膜>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して、各成分を溶解した後、平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過し、環状オレフィン系樹脂溶液を調製した。
【0174】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
環状オレフィン系樹脂溶液Aの組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
環状オレフィン系重合体P−1 150質量部
ARUFON UH−2041(東亜合成製) 13.5質量部
ARUFON UH−2180(東亜合成製) 31.5質量部
ジクロロメタン 420質量部
メタノール 40質量部
IRGANOX1010
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製) 0.45質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0175】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
環状オレフィン系樹脂溶液Bの組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
環状オレフィン系重合体P−1 100質量部
ジクロロメタン 276質量部
メタノール 24質量部
IRGANOX1010
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製) 0.3質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0176】
次に上記方法で作製した環状オレフィン系樹脂溶液Bを含む下記組成物を分散機に投入し、マット剤分散液Cを調製した。
【0177】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤分散液Cの組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均一次粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル(株)製) 2質量部
ジクロロメタン 73質量部
メタノール 10質量部
環状オレフィン系樹脂溶液B 10質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0178】
上記環状オレフィン系樹脂溶液Aを100質量部、マット剤分散液Cを1.43質量部混合し、製膜用ドープを調製し、バンド流延機にて流延した。残留溶剤量約30質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムを、テンターを用いて延伸率18%まで拡幅した後、延伸率が14%となるように140℃で60秒間緩和させ、乾燥した。その後テンター搬送からロール搬送に移行し、更に120℃から140℃で乾燥し、1440mm幅の環状オレフィン系フィルムを得た。このフィルムを環状オレフィン系光学補償フィルムDとして使用した。環状オレフィン系光学補償フィルムDのRe(550)は53nm、Rth(550)は115nmであった。ここで、Re(550)及びRth(550)は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。また、40℃90%RHでの24時間あたりの透湿度は、290g/m2/dayであった。
【0179】
(光学補償フィルムEの作製)
市販のノルボルネン系ポリマーフィルム「ZEONOR ZF14」((株)オプテス製)を固定端二軸延伸し、ノルボルネン系光学補償フィルムEを作製した。ノルボルネン系光学補償フィルムEのRe(550)は70nm、Rth(550)は210nmであった。ここで、Re(550)及びRth(550)は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。また、40℃90%RHでの24時間あたりの透湿度は、20g/m2/dayであった。
【0180】
(光学補償フィルムFの作製)
下記表に記載のアシル基の種類、置換度のセルロースアシレートを調製した。これは、触媒として硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)を添加し、アシル置換基の原料となるカルボン酸を添加し40℃でアシル化反応を行った。この時、カルボン酸の種類、量を調整することでアシル基の種類、置換度を調整した。またアシル化後の40℃で熟成を行った。さらにこのセルロースアシレートの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去した。なお、表中、Acとはアセチル基であり、CTAとは、セルローストリアセテート(アシル基がアセテート基のみからなるセルロースエステル誘導体)を意味する。
【0181】
【表1】

表中の略称は下記の通りである。
CTA:セルローストリアセテート、
TPP:トリフェニルホスフェイト、
BDP:ビフェニルジフェニルホスフェイト。
【0182】
【化18】

【0183】
<セルロースアシレート溶液の調製>
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、更に90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液
―――――――――――――――――――――――――――――――――
上記表中のCTA 100.0質量部
トリフェニルホスフェイト(TPP) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェイト(BDP) 3.9質量部
メチレンクロライド 403.0質量部
メタノール 60.2質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0184】
<マット剤分散液の調製>
次に上記方法で調製したセルロースアシレート溶液を含む下記組成物を分散機に投入し、マット剤分散液を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤分散液
――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル(株)製 2.0質量部
メチレンクロライド 72.4質量部
メタノール 10.8質量部
セルロースアシレート溶液 10.3質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0185】
<添加剤溶液の調製>
次に上記方法で調製したセルロースアシレート溶液を含む下記組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して溶解し、添加剤溶液を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
添加剤溶液
―――――――――――――――――――――――――――――――――
レターデーション発現剤(1) 20.0質量部
メチレンクロライド 58.3質量部
メタノール 8.7質量部
セルロースアシレート溶液 12.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0186】
上記セルロースアシレート溶液を100質量部、マット剤分散液を1.35質量部、更にセルロースアシレート系フィルム中のレターデーション発現剤(1)の添加量が7質量部となる量の添加剤溶液を混合し、製膜用ドープを調製した。添加剤の添加割合はセルロースアシレート量を100質量部とした時の質量部で示した。
【0187】
上述のドープをバンド流延機を用いて流延した。上記表に記載の残留溶剤量でバンドから剥ぎ取ったフィルムを、剥ぎ取りからテンターまでの区間で上記表に記載の延伸倍率で縦方向に延伸し、ついでテンターを用いて下記表に記載の延伸倍率で幅方向に延伸し、横延伸直後に、下記表に記載の倍率で幅方向に収縮(緩和)させた後にフィルムをテンターから離脱し、セルロースアシレート系フィルムを製膜した。テンター離脱時のフィルムの残留溶剤量は、上記表に記載のとおりであった。巻取り部前で両端部を切り落とし幅2000mmとし、長さ4000mのロールフィルムとして巻き取った。上記表に、延伸倍率を示してある。
【0188】
この様にして作製したセルロースアシレート系フィルムを光学補償フィルムFとして用いた。セルロースアシレート系光学補償フィルムFのRe(550)は70nm、Rth(550)は208nmであった。ここで、Re(550)及びRth(550)は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。また、40℃90%RHでの24時間あたりの透湿度は、300g/m2/dayであった。
【0189】
4. 偏光板の作製
厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ素濃度0.05質量%のヨウ素水溶液中に30℃で60秒浸漬して染色し、次いでホウ酸濃度4質量%濃度のホウ酸水溶液中に60秒浸漬している間に元の長さの5倍に縦延伸した後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ20μmの偏光膜を得た。
貼合面が環状オレフィン系フィルムおよびノルボルネン系フィルムの場合にはグロー放電処理(周波数3000Hz、4200Vの高周波数電圧を上下電極間に引加、20秒処理)を行い、セルロースアシレート系フィルムの場合にはケン化処理を施した後、片面を光学補償フィルムAで、もう片面を保護部材1で偏光膜を挟み、粘着剤を用いて貼り合せ、視認側に配置される第1の偏光板1を作製した。なお、光学補償フィルムAの遅相軸が偏光膜の吸収軸と直交するように貼合した。
続いて、片面を光学補償フィルムAで、もう片面を市販のセルロースアシレート系フィルム「TD80UL」で偏光膜を挟んで、粘着剤を用いて貼り合せ、光源側に配置される第2の偏光板1を作製した。なお、TD80ULの遅相軸が偏光膜の吸収軸と平行になるように貼合した。
下記表に示すように、光学補償フィルム、保護部材及びλ/4フィルムを変えた以外は上記方法と同様にして第1及び第2の偏光板2〜83を作製した。
【0190】
5.3D表示装置の作製
SAMSUNG製の3D液晶テレビ(VAモード)UN46C7000を用意し、フロント偏光板をはがし、作製した第1の偏光板1を貼り合わせた。続いて、リア偏光板をはがし、作製した第2の偏光板1を貼合しすることで3D表示装置1を作製した。
下記表に示すように、第1及び第2の偏光板1を変えた以外は上記方法と同様にして3D表示装置2〜83を作製した。
【0191】
6.評価
作製した3D表示装置1〜83を温度50℃、相対湿度95%の環境下で7日間放置した。処理後、温度25℃、相対湿度60%の環境下で1日間放置後、バックライトを連続点灯してから24時間後の正面から見たときの面状を暗室で観察して、以下の基準で耐久性ムラ(サークルムラや画面隅のムラを含めたムラ)を評価した。
◎:視認されない(実験前と同等)
○:光漏れが認識されるが、許容できる程度
△:光漏れがはっきり認識され、許容できない
×:激しい光漏れが認識され、許容できない
【0192】
【表2】

【0193】
【表3】

【0194】
【表4】

【0195】
【表5】

【0196】
【表6】

【0197】
【表7】

【0198】
【表8】

【0199】
【表9】

【0200】
【表10】

【0201】
【表11】

【0202】
【表12】

【0203】
表より、保護部材に40℃90%RHでの透湿度が100g/m2/day以下である第1のフィルムを少なくとも1層含むことで耐久性ムラが改善されていることがわかる。
【0204】
上記実施例及び比較例はVAモードの液晶セルを使用したが、IPSモードの液晶セルに代えた以外は上記実施例及び比較例と同様にして3D表示装置を作製し、同様の試験をしたところ、同様の結果を得た。
また、光学フィルム1Bの代わりに低反射フィルムのクリアAR(SONYケミカル製)、写りこみ抑制フィルムのAGA1(サンリッツ製)を使用した以外は上記実施例及び比較例と同様にして3D表示装置を作製し、同様の試験をしたところ、同様の結果を得た。
【0205】
また、図8のように作製した3D表示システムを作製し、上記実施例及び比較例と同様の試験をしたところ、同様の結果を得た。
【符号の説明】
【0206】
1 画像表示装置
2 時分割画像表示遮断機器(メガネ)
2a 左目液晶シャッター
2b 右目液晶シャッター
21 λ/4層
22 偏光膜
23 液晶セル
24 偏光膜
3 同期回路
4 バックライト
11 保護部材
12 第1の偏光膜
13 液晶セル
14 第2の偏光膜
15 第2のフィルム
16 第3のフィルム
17 保護フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
視認側に配置される第1の偏光膜と、
前記第1の偏光膜の視認側表面に配置される、λ/4機能を有する保護部材とを少なくとも有する3D表示装置であって、
前記保護部材が、40℃90%RHでの透湿度が100g/m2/day以下である第1のフィルムを少なくとも含むことを特徴とする3D表示装置。
【請求項2】
前記第1のフィルムが、環状オレフィン系ポリマーフィルムである請求項1に記載の3D表示装置。
【請求項3】
前記保護部材が、視認側表面に反射防止層を有する請求項1又は2に記載の3D表示装置。
【請求項4】
前記第1のフィルムが、λ/4機能を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の3D表示装置。
【請求項5】
前記保護部材が、液晶化合物を含む組成物からなる光学異方性層を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の3D表示装置。
【請求項6】
前記第1のフィルムと前記反射防止層との間、及び前記第1のフィルムと前記光学異方性層との間の少なくも一方に、セルロースアシレート系フィルムを有する請求項3〜5のいずれか1項に記載の3D表示装置。
【請求項7】
前記第1の偏光膜の前記保護部材が配置された側と反対側表面に、40℃90%RHでの透湿度が10〜2000g/m2/dayである第2のフィルムを有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の3D表示装置。
【請求項8】
前記第2のフィルムが、セルロースアシレート系フィルムである請求項7に記載の3D表示装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の3D表示装置と、
該3D表示装置と同期して作動する時分割画像表示遮断機器と、
を少なくとも有する時分割方式3D表示システム。
【請求項10】
前記時分割画像表示遮断機器が、前記3D表示装置に対向する側より、λ/4板、液晶セル、及び偏光膜を少なくとも有する請求項9に記載の時分割方式3D表示システム。
【請求項11】
前記時分割画像表示遮断機器が、前記λ/4板と前記液晶セルとの間に、偏光膜をさらに有する請求項10に記載の時分割方式3D表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−189686(P2012−189686A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51606(P2011−51606)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】